【実施例1】
【0010】
図1に本発明の真空管アンプの構成例を示す。真空管アンプ100は、第1入力信号sと第1入力信号sと位相が反転している第2入力信号s
−から出力信号Sを生成する。真空管アンプ100は、バイアス生成部120、(第1)合成部130−1、(第2)合成部130−2、(第1)真空管増幅部140−1、(第2)真空管増幅部140−2、差動増幅部150を備える。真空管アンプ100は、第1入力信号sと第2入力信号s
−を入力としてもよいし、第1入力信号sのみを入力とし、位相反転部110も備えてもよい。位相反転部110は、第1入力信号sから第2入力信号s
−を生成する。例えば、位相反転部110は、
図2に示すようにオペアンプ111、抵抗112,113で反転増幅器を構成すればよい。増幅率が1で反転させれば、端子110
inに第1入力信号sを入力すると、端子110
outから第2入力信号s
−が出力される。
【0011】
バイアス生成部120は、第1入力信号sの振幅が大きいほど、第1入力信号sが無いときからの変化が大きいバイアス電圧を生成する。例えば、バイアス生成部120は、第1入力信号sまたは第2入力信号s
−を整流して平滑化した電圧とあらかじめ定めた電圧からバイアス電圧v
bを生成すれば、第1入力信号sの振幅が大きいほど第1入力信号sが無いときに比べたバイアス電圧v
bの変化を大きくできる。より具体的には、
図3のように構成すればよい。
図3の例では、バイアス生成部120は、ダイオード121、抵抗122,124,126,128−1〜3、コンデンサ123,127、オペアンプ125で構成されている。ダイオード121は、端子120
inに入力された第1入力信号sを整流する。抵抗122とコンデンサ123はローパスフィルタとして機能し、整流された第1入力信号sを平滑化する。ノード120
sの電圧は、第1入力信号sを整流して平滑化した電圧となる。なお、端子110
inに第2入力信号s
−を入力してもよい。オペアンプ125、抵抗124,126、コンデンサ127で積分回路(ローパスフィルタ)が構成される。オペアンプ125の+入力側に接続される端子120
bbには、あらかじめ定めた電圧V
bbが接続される。この積分回路は、第1入力信号sまたは第2入力信号s
−を整流して平滑化した電圧とあらかじめ定めた電圧V
bbとを入力とし、バイアス電圧v
bを生成する。そして、端子120
outからバイアス電圧v
bが出力される。このような構成なので、バイアス生成部120は、第1入力信号の振幅が大きいほど低いバイアス電圧を生成する。
図5に示された真空管増幅部140−1,140−2の構成の場合、バイアス電圧が低い方が消費電力は小さいので、この例では、第1入力信号の振幅が大きいほど低いバイアス電圧を生成した。しかし、第1入力信号の振幅が大きいほど高いバイアス電圧を生成しても、本発明の効果は得られる。なお、電源電圧+V
ccと接地との間に直列に接続された抵抗128−1〜3は、真空管増幅部140−1,140−2の個体差を考慮して、バイアス電圧v
bを調整する部分である。例えば工場出荷時に調整しておけばよい。
【0012】
合成部130−1は、第1入力信号sとバイアス電圧v
bを合成し、第1バイアス付加入力信号v
1を生成する。合成部130−2は、第2入力信号s
−とバイアス電圧v
bを合成し、第2バイアス付加入力信号v
2を生成する。
図4に、合成部130−1(130−2)の具体例を示す。合成部130−1(130−2)は、コンデンサ131、抵抗132,133を備えればよい。合成部130−1の場合は、端子130
inから第1入力信号sが入力され、端子130
bからバイアス電圧v
bが入力される。コンデンサ131は、第1入力信号sの交流成分のみを透過する。そして、抵抗132,133によって第1入力信号sの交流成分とバイアス電圧v
bが合成され、端子130
outから第1バイアス付加入力信号v
1が出力される。合成部130−2の場合は、端子130
inから第2入力信号s
−が入力され、端子130
outから第2バイアス付加入力信号v
2が出力される。抵抗132,133の値は、真空管増幅部140−1,140−2の特性などを考慮し、合成部130−1と合成部130−2とで異なる値としてもよいし、可変抵抗などを用いて工場出荷時などに調整できるようにしてもよい。
【0013】
真空管増幅部140−1は、熱電子を放出するフィラメント142−1を有し、第1バイアス付加入力信号v
1をグリッド143−1への入力信号とし、アノード144−1から出力信号V
1を得る。真空管増幅部140−2は、熱電子を放出するフィラメントを有し、第2バイアス付加入力信号をグリッドへの入力信号とし、アノードから出力信号を得る。
図5に真空管増幅部140−1,140−2の具体例を示す。真空管増幅部140−1,140−2は、例えば、特許文献1に示された真空管141を用いればよい。特許文献1に示された真空管141には、所定以上の温度で熱電子を放出する直線状に張られたフィラメント142−1,142−2と、2組のグリッド143−1,143−2とアノード144−1,144−2を有する。端子140
F−1,140
F−2に、直流電圧源+V
F(例えば0.7V)が接続され、端子140
Gは接地されることで、フィラメント142−1,142−2は、熱電子を放出する所定の温度(例えば650度)まで加熱される。端子140
v−1,140
v−2には電源電圧+V
ccが接続され、アノード144−1,144−2には抵抗145−1,145−2を介しては電源電圧+V
ccが接続される。そして、アノード144−1からはグリッド143−1に入力される第1バイアス付加入力信号v
1に応じた出力信号V
1が出力され、アノード144−2からはグリッド143−2に入力される第2バイアス付加入力信号v
2に応じた出力信号V
2が出力される。なお、
図5の構成の場合、第1バイアス付加入力信号v
1と出力信号V
1の位相は反転し、第2バイアス付加入力信号v
2と出力信号V
2の位相は反転する。また、入力信号の振幅が大きいほどバイアス電圧を大きく変化させるので、振幅が大きい入力信号の場合に第1真空管増幅部と第2真空管増幅部の出力が飽和状態になりやすくなり、十分な増幅を得にくくなる。さらに、
図5のように1つの真空管で2回路を構成すれば2つの回路の特性を近くしやすい。
【0014】
差動増幅部150は、真空管増幅部140−1の出力信号V
1と真空管増幅部140−2の出力信号V
2との差分を増幅する。例えば、差動増幅部150は、
図6に示した構成にすればよい。
図6の例では、差動増幅部150は、コンデンサ151−1,151−2、オペアンプ153、抵抗152−1,152−2,154,155で構成されている。真空管増幅部140−1の出力信号V
1は端子150
in−1から入力され、真空管増幅部140−2の出力信号V
2は端子150
in−2から入力される。コンデンサ151−1,151−2は、出力信号V
1と出力信号V
2の交流成分のみを透過する。オペアンプ153、抵抗152−1,152−2,154,155で差動増幅器が構成されており、端子150
outから出力信号Sが出力される。
【0015】
図7に本発明の真空管アンプでの信号の様子を示す。(A)は第1入力信号sの振幅が小さい場合、(B)は第1入力信号sの振幅が大きい場合であってバイアス生成部が第1入力信号の振幅が大きいほど低いバイアス電圧を生成するとき、(C)は第1入力信号sの振幅が大きい場合であってバイアス生成部が第1入力信号の振幅が大きいほど高いバイアス電圧を生成するときの例を示している。どの図でも、第1入力信号sと第2入力信号s
−は位相が反転している。(A)のバイアス電圧v
bは第1入力信号sが無いときに近いバイアス電圧であり、(B)のバイアス電圧v
bは低く、(C)のバイアス電圧v
bは高くなっていることが分かる。なお、バイアス生成部120の設計では、第1入力信号sが無いときのバイアス電圧v
bが真空管増幅部140−1,140−2の歪が小さくなるバイアス電圧になるように設計すればよい。第1バイアス付加入力信号v
1は第1入力信号sとバイアス電圧v
bを合成した信号であり、第2バイアス付加入力信号v
2は第2入力信号s
−とバイアス電圧v
bを合成した信号である。真空管増幅部140−1の出力信号V
1と真空管増幅部140−2の出力信号V
2は、第1バイアス付加入力信号v
1と第2バイアス付加入力信号v
2とは位相が反転している。また、(B),(C)では、真空管増幅部140−1,140−2が飽和状態になるために出力信号V
1,V
2が歪む。したがって、差動増幅部150の出力Sは、(A)の場合は歪んでいないが、(B),(C)の場合は歪んでいる。なお、
図2から6には回路の具体例を示したが、
図7に示したような信号が得られれば、他の回路構成でも構わない。
【0016】
このように、本発明の真空管アンプによれば、入力信号の振幅が大きいほどバイアス電圧を大きく変化させる。したがって、入力信号の振幅が小さいときには歪の少ない増幅ができ、入力信号の振幅が大きいときには第1真空管増幅部と第2真空管増幅部の出力が飽和状態になりやすくなり、十分な増幅を得にくくなる。よって、従来の真空管に近い特性にできる。特に、ギターアンプとして好まれる特性にできる。