特許第6886207号(P6886207)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6886207
(24)【登録日】2021年5月18日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】ポケットコイル
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/07 20060101AFI20210603BHJP
   A47C 27/045 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   A47C27/07
   A47C27/045
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-99975(P2020-99975)
(22)【出願日】2020年6月9日
【審査請求日】2020年6月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000187714
【氏名又は名称】松下工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 忠行
(72)【発明者】
【氏名】池野 浩司
【審査官】 西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公開第02576216(GB,A)
【文献】 特開2005−065726(JP,A)
【文献】 特開2012−095785(JP,A)
【文献】 特開2019−162203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/04−27/07
B68G 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マットレスに内設されるポケットコイルであって、
多数のコイルバネ収容室が列設された袋体と、
該コイルバネ収容室に1つずつ収容される多数のコイルバネと
を備え、
前記袋体が不織布からなり、前記袋体を開放して前記コイルバネを取り出すための無貫通溶融線からなる切断線を有し
前記袋体は、帯状の不織布により形成され、当該不織布の幅方向の両端部を融着して当該ポケットコイルの長手方向に形成された長手方向融着線と、前記長手方向融着線と直交し、隣接するコイルバネ収容室を仕切る上下方向融着線と、前記コイルバネの軸方向の両端を覆う上壁、及び下壁と、前記コイルバネの側方を覆う側壁とを有し、
前記コイルバネは、前記上下方向融着線と軸方向を同じくして前記コイルバネ収容室に収容されており、
前記切断線が、前記上壁、又は下壁に、前記長手方向に沿って設けられており、
前記上下方向融着線は、前記袋体の上下方向の少なくも一部に非融着部を残して設けられており、
前記切断線が、前記非融着部を通るようにして設けられていることを特徴とするポケットコイル。
【請求項2】
マットレスに内設されるポケットコイルであって、
多数のコイルバネ収容室が列設された袋体と、
該コイルバネ収容室に1つずつ収容される多数のコイルバネと
を備え、
前記袋体が不織布からなり、前記袋体を開放して前記コイルバネを取り出すための無貫通溶融線からなる切断線を有し、
前記袋体は、帯状の不織布により形成され、当該不織布の幅方向の両端部を融着して当該ポケットコイルの長手方向に形成された長手方向融着線と、前記長手方向融着線と直交し、隣接するコイルバネ収容室を仕切る上下方向融着線と、前記コイルバネの軸方向の両端を覆う上壁、及び下壁と、前記コイルバネの側方を覆う側壁とを有し、
前記コイルバネは、前記上下方向融着線と軸方向を同じくして前記コイルバネ収容室に収容されており、
前記切断線が、前記側壁に、前記長手方向に沿って設けられており、
前記上下方向融着線は、前記袋体の上下方向の少なくも一部に非融着部を残して設けら
れており、
前記切断線が、前記非融着部を通るようにして設けられていることを特徴とするポケットコイル。
【請求項3】
前記切断線は平行して2本設けられている請求項1、又は請求項2に記載のポケットコイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マットレス内部に装填されるいわゆるポケットコイルに関し、特にコイルバネを装填する袋に切断線を有するポケットコイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄されたマットレスからポケットコイルの不織布やコイルバネをリサイクルするために、ポケットコイルの分解を容易にすべく不織布にミシン目を設けることが提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
例えば特許文献1では、コイルを収容する袋体の上下の壁にコイルの並ぶ方向に沿ってミシン目を入れたポケットコイルが提案されている。
特許文献1のポケットコイルでは、袋体の上下の壁にミシン目を設けることで、使用時にコイルばねの伸縮による力がミシン目に加わらないようにしている。
【0004】
また、特許文献2では、コイルを収容する袋体の周面に沿ってミシン目を設けたポケットコイルが提案されている。特許文献2のポケットコイルは、袋体の上下の壁をマットレスの表装に接着しておくことで、表装を剥がす際に、同時にポケットコイルの袋体が破れるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−65726号公報
【特許文献2】特開2012−95785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、及び特許文献2のポケットコイルでは、切断線がミシン目で構成されているため、製作時や使用時に不意に破れてしまう虞がある。また、ミシン目のスリットが不織布を貫通しているため、該スリットから袋体の内部にダニや南京虫の幼虫等の虫や塵が侵入する虞がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、製作時や使用時に不意に破断することがなく、かつ虫や塵が袋体に侵入しにくいポケットコイルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、マットレスに内設されるポケットコイルであって、多数のコイルバネ収容室が列設された袋体と、該コイルバネ収容室に1つずつ収容される多数のコイルバネとを備え、前記袋体が不織布からなり、前記袋体を開放して前記コイルバネを取り出すための無貫通溶融線からなる切断線を有する。
【0008】
本発明のポケットコイルは、このように、切断線をミシン目のような不織布を貫通する孔やスリットを有さない無貫通溶融線により形成したので、製作時や使用時に切断線が不意に破断することを抑制できる。また、これにより、袋体の内部に虫や塵が侵入することを抑制できる。
【0009】
本発明のポケットコイルは、前記袋体が、帯状の不織布により形成され、当該不織布の幅方向の両端部を融着して当該ポケットコイルの長手方向に形成された長手方向融着線と、前記長手方向融着線と直交し、隣接するコイルバネ収容室を仕切る上下方向融着線と、前記コイルバネの軸方向の両端を覆う上壁、及び下壁と、前記コイルバネの側方を覆う側壁とを有し、前記コイルバネは、前記上下方向融着線と軸方向を同じくして前記コイルバネ収容室に収容されており、前記切断線が、前記上壁、又は下壁に、前記長手方向に沿って設けられている。
このように、切断線をコイルバネ収容室の上壁、又は下壁に設けることで、例えば、コイルポケットを多数の列に折りかえして並べた状態で解体する場合に、上壁、又は下壁から1列ずつ袋体を解体することができる。
【0010】
あるいは、本発明のポケットコイルは、前記切断線が、前記側壁に、前記長手方向に沿って設けられていてもよい。
このように、コイルバネ収容室の側壁に長手方向に沿って切断線を設けることで、コイルバネを1列に広げた状態で解体する際に、側方から一息に袋体を解体することができる。
【0011】
本発明のポケットコイルは、前記上下方向融着線が、前記袋体の上下方向の少なくも一部に非融着部を残して設けられており、前記切断線が、前記非融着部を通るようにして設けられている。
このように切断線が非融着部を通るようにすることで、不織布が2枚融着されて切断しにくい上下方向融着線を回避できるため、容易に切断線に沿って袋体を切断することができる。
【0012】
前記切断線は平行して2本設けられていることが好ましい。これにより、2本の切断線の間の帯状部分を切りとるようにして、容易に袋体を解体できる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明のポケットコイルによれば、切断線が、製作時や使用時に不意に破断してしまうことを抑制でき、また、内部に虫や塵が侵入することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係るポケットコイルを示す斜視図である。
図2図1のポケットコイルの平面図である。
図3図1のポケットコイルを示す部分断面正面図である。
図4図2のY−Y線断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係るポケットコイルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面を用いながら本発明の実施形態について詳述する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限られるものではない。
【0016】
(第1実施形態)
図1から図4は、本発明の第1実施形態に係るポケットコイル100を示している。ポケットコイル100は、図1に示すように、コイルバネを収容する袋体10と、多数のコイルバネ3,3,3…とを備え、ベッド等に載置されるマットレスにクッション材として内設されるものである。本発明のポケットコイル100は、リサイクルのための分解を容易にすべく、袋体10に切断線4が設けられている。
【0017】
袋体10は、帯状の不織布1により形成され、不織布1の幅方向の両端部11a,11bを重ねて融着する2条の破線状の長手方向融着線5,5と、長手方向融着線5,5と直交する多数の上下方向融着線6,6,…と、上下方向融着線6,6,…(図3参照)により仕切られる多数のコイルバネ収容室2,2,…とを有している。袋体10に用いる不織布1としては、超音波、高周波、レーザーその他の公知の融着方法で融着可能であれば、特に限定されない。
【0018】
コイルバネ収容室2,2,…には、上下方向融着線6,6,…と軸方向を同じくして、コイルバネ3が1つずつ収容される。
袋体10は、コイルバネ3の軸方向の両端を覆う上壁12、及び下壁13と、コイルバネ3の側方を覆う側壁14,14とを有している。
コイルバネ3は、ステンレス、ばね鋼等の金属からなる。
【0019】
袋体10は、図3に示すように、帯状の不織布1の幅方向の両端部11a,11bが、一方の側壁14上で重ね合わせるよう折り曲げられて、長手方向融着線5,5が、一方の側壁14を通るように設けられている。
また、上下方向融着線6,6,…は、上端(図3上側)が上方に非融着部71を残した状態で途切れるのに対し、下端側(図3下側)は、袋体10の下端まで延びている。非融着部71は、側壁14と上壁12の不織布を重ねて設けた一方側(図4右側)のマチ71aと他方側(図1左側)のマチ71bが融着されていないのに対し、下壁13側の一方側のマチ72aと他方側のマチ72bは、上下方向融着線6により互いに融着されて、側壁14を下壁13の内側に三角形に折り込んだ三角形状のマチを形成している。
【0020】
切断線4は、図1図2図4に示すように、上壁12を非融着部71を通るようにして、ポケットコイル100の長手方向に沿って延びるよう設けられている。切断線4は、上壁12を構成する不織布を厚み方向に貫通するスリットや貫通孔を有さない無貫通溶融線からなる。切断線4は、超音波、レーザー、高周波その他の溶着と同様の方法により形成される。図示の例では、切断線4は2本平行に設けられているが、1本でもよく3本以上を平行に設けてもよい。また、図示の例では、切断線4は融着部が破線状であるが、直線状に連続して設けてもよい。
【0021】
ポケットコイル100を分解する際には、長手方向の端のコイルバネ収容室2の非融着部71から2本の切断線4,4の間の帯状部分を切り取るようにして、袋体10を開放し、内部からコイルバネ3を取り出して、コイルバネ3と袋体10(不織布1)とを分離する。
このように、切断線4が袋体10の上壁12をポケットコイル100の長手方向に沿って延びるよう設けられているので、ポケットコイル100が隣接する列と側壁を接するように列を折り返して並べられている場合に、1列ずつ袋体10を分解できる。
【0022】
また、切断線4が、非融着部71を通ることで、不織布が2枚重なった上下方向融着線6と交差することを回避できるので、より切断線4に沿った切断が容易になる。
【0023】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態に係るポケットコイル200を示している。ポケットコイル200は、図5に示すように、切断線204が、2本平行に袋体10の側壁14を通るように設けられている。
このように、袋体10の側壁14に切断線204を設けることで、ポケットコイル200を横倒しにして一本の線状に床面に載置したような場合には、全てのコイルバネ収容室2を連続して分解できる。
【0024】
また、側壁14を通る切断線204においても、非融着部71を通るようにすることで、不織布が2枚重なった上下方向融着線6と交差することを回避できるので、切断線204に沿った切断が容易になる。
また、上下方向融着線6の途中に非溶着部を設け、切断線204がこの非溶着部を通るようにしてもよい。
尚、第2実施形態において、第1実施形態と共通する部材は、同一符号を付して説明を省略する。
【0025】
以上、本発明のポケットコイルは、上述した実施形態に限らず、例えば、切断線は、袋体の下壁に設けてもよく、袋体の上壁、又は下壁と、側壁の両方に設けてもよいし、上壁、下壁、側壁の全てに設けてもよい。切断線は、上下方向融着線と交差するように設けてもよく、長手方向融着線と交差する方向に設けてもよい。
袋体10は、上壁、又は下壁に不織布の幅方向の合わせ目である長手方向融着線が設けられてもよく、非融着部を備えなくとも良いし、上下方向融着線の上方と下方の両側に非融着部を備えていてもよい。
また、袋体10は、融着の代わりに、ミシンや接着剤により形成してもよい。
【符号の説明】
【0026】
100,200 ポケットコイル
10 袋体
1 不織布
2 コイルバネ収容室
3 コイルバネ
4,204 切断線
11a,11b 両端
5 長手方向融着線
6 上下方向融着線
12 上壁
13 下壁
14 側壁
71 非融着部
【要約】      (修正有)
【課題】リサイクル解体用の切断線が、製作時や使用時に破断することを防止し、かつ当該切断線から虫や塵がポケットコイル内部に侵入しないようにする。
【解決手段】本発明は、マットレスに内設されるポケットコイル100である。ポケットコイル100は、多数のコイルバネ収容室2が列設された袋体10と、コイルバネ収容室2に1つずつ収容される多数のコイルバネ3とを備えている。袋体10は不織布1からなり、無貫通溶融線からなる切断線4を有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5