特許第6886213号(P6886213)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6886213半導体発光素子チップ集積装置およびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6886213
(24)【登録日】2021年5月18日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】半導体発光素子チップ集積装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/38 20100101AFI20210603BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20210603BHJP
   H01L 33/40 20100101ALI20210603BHJP
   H01L 25/00 20060101ALI20210603BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   H01L33/38
   H01L33/00 J
   H01L33/40
   H01L25/00 Z
   H01L23/12 F
【請求項の数】17
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2020-194227(P2020-194227)
(22)【出願日】2020年11月24日
【審査請求日】2021年1月6日
(31)【優先権主張番号】特願2020-106632(P2020-106632)
(32)【優先日】2020年6月20日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518271743
【氏名又は名称】アルディーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120640
【弁理士】
【氏名又は名称】森 幸一
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 元伸
【審査官】 嵯峨根 多美
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6694222(JP,B1)
【文献】 特開2010−087453(JP,A)
【文献】 特開2013−004792(JP,A)
【文献】 特開2003−216052(JP,A)
【文献】 特開2018−170339(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/008253(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0062393(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0170086(US,A1)
【文献】 特開2012−195406(JP,A)
【文献】 特開平08−137413(JP,A)
【文献】 特開2016−025205(JP,A)
【文献】 特開2006−135367(JP,A)
【文献】 特開2001−257218(JP,A)
【文献】 特開2020−025064(JP,A)
【文献】 特許第6803595(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00
H01L 23/12
H01L 25/00
H01L 21/60
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の主面に下部電極を有する基板と、
半導体発光素子チップ集積装置を構成する個々の回路ユニットそれぞれについての個別の発光領域における上記下部電極の上面の一部または上面の一部に設けられた凸部もしくは凹部により構成され、半導体発光素子チップを結合させるべきチップ結合部と、
上記チップ結合部に結合した、上下にp側電極およびn側電極を有し、上記p側電極および上記n側電極のうちの一方が他方に比べてより強く磁場に引き寄せられるように構成された縦型の複数の半導体発光素子チップと、
上記複数の半導体発光素子チップの上層の、薄膜ヒューズにより互いに接続された幹線部と上記チップ結合部に跨がる複数の支線部とを有する上部電極とを有し、
上記半導体発光素子チップは、上記p側電極および上記n側電極のうちの上記一方を上記チップ結合部に向けて上記チップ結合部に結合し、上記p側電極および上記n側電極のうちの上記一方と上記下部電極とが互いに電気的に接続され、少なくとも一つの上記半導体発光素子チップの上記p側電極および上記n側電極のうちの他方と上記上部電極の上記支線部とが互いに電気的に接続されている半導体発光素子チップ集積装置。
【請求項2】
上記下部電極が薄膜ヒューズにより互いに接続された幹線部と複数の支線部とを有する請求項1記載の半導体発光素子チップ集積装置。
【請求項3】
一方の主面に薄膜ヒューズにより互いに接続された幹線部と複数の支線部とを有する下部電極を有する基板と、
半導体発光素子チップ集積装置を構成する個々の回路ユニットそれぞれについての個別の発光領域における上記下部電極の上記複数の支線部の上面により構成され、半導体発光素子チップを結合させるべきチップ結合部と、
上記チップ結合部に結合した、上下にp側電極およびn側電極を有し、上記p側電極および上記n側電極のうちの一方が他方に比べてより強く磁場に引き寄せられるように構成された縦型の複数の半導体発光素子チップと、
上記複数の半導体発光素子チップの上層の上部電極とを有し、
上記半導体発光素子チップは、上記p側電極および上記n側電極のうちの上記一方を上記チップ結合部に向けて上記チップ結合部に結合し、上記p側電極および上記n側電極のうちの上記一方と上記下部電極の上記支線部とが互いに電気的に接続され、少なくとも一つの上記半導体発光素子チップの上記p側電極および上記n側電極のうちの他方と上記上部電極とが互いに電気的に接続されている半導体発光素子チップ集積装置。
【請求項4】
それぞれの上記回路ユニットに対して上記下部電極および上記上部電極が設けられている請求項1〜3のいずれか一項記載の半導体発光素子チップ集積装置。
【請求項5】
互いに隣接する3つ以上の上記回路ユニットを含む領域により1画素が構成されている請求項記載の半導体発光素子チップ集積装置。
【請求項6】
上記上部電極の上記支線部または上記下部電極の上記支線部の面積が上記半導体発光素子チップの上記p側電極および上記n側電極のうちの上記一方の面積の10倍以上である請求項1または3記載の半導体発光素子チップ集積装置。
【請求項7】
上記上部電極の上記支線部または上記下部電極の上記支線部の面積が上記回路ユニットの面積の30%以下である請求項1または3記載の半導体発光素子チップ集積装置。
【請求項8】
上記p側電極および上記n側電極のうちの上記一方は軟磁性体を含む請求項1〜7のいずれか一項記載の半導体発光素子チップ集積装置。
【請求項9】
上記薄膜ヒューズは350℃以下の融点を有する金属からなる請求項1〜8のいずれか一項記載の半導体発光素子チップ集積装置。
【請求項10】
上記複数の支線部は互いに平行に、かつ上記幹線部に対して垂直に設けられ、上記複数の支線部の各支線部の幅は5〜100μm、支線部の間の隙間の幅は1〜5μm、支線部の本数は3〜10本である請求項1〜9のいずれか一項記載の半導体発光素子チップ集積装置。
【請求項11】
上記半導体発光素子チップはチップサイズが10μm×10μm以下、厚さが10μm以下である請求項1〜10のいずれか一項記載の半導体発光素子チップ集積装置。
【請求項12】
上記チップ結合部は周辺部より親水性または親油性が高く構成されている請求項1〜11のいずれか一項記載の半導体発光素子チップ集積装置。
【請求項13】
互いに隣接する所定の一群の上記チップ結合部は上記チップ結合部と同等に親水性または親油性が高く構成された領域により互いに連結されている請求項12記載の半導体発光素子チップ集積装置。
【請求項14】
上下にp側電極およびn側電極を有し、上記p側電極および上記n側電極のうちの一方が他方に比べてより強く磁場に引き寄せられるように構成された縦型の複数の半導体発光素子チップと液体とを含有する液滴状のインクを、一方の主面に下部電極を有する基板の、半導体発光素子チップ集積装置を構成する個々の回路ユニットそれぞれについての個別の発光領域における上記下部電極の上面の一部または上面の一部に設けられた凸部もしくは凹部により構成され、半導体発光素子チップを結合させるべきチップ結合部に供給する工程と、
上記基板に関して上記チップ結合部と反対側から外部磁場を印加することにより上記インク中の上記半導体発光素子チップを、上記p側電極および上記n側電極のうちの上記一方を上記チップ結合部に向けて上記チップ結合部に結合し、上記p側電極および上記n側電極のうちの上記一方と上記下部電極とを互いに電気的に接続する工程と、
上記複数の半導体発光素子チップの上層として、薄膜ヒューズにより互いに接続された幹線部と上記チップ結合部に跨がる複数の支線部とを有する上部電極を少なくとも一つの上記半導体発光素子チップの上記p側電極および上記n側電極のうちの他方と上記上部電極の上記支線部とが互いに電気的に接続されるように形成する工程とを有する半導体発光素子チップ集積装置の製造方法。
【請求項15】
上下にp側電極およびn側電極を有し、上記p側電極および上記n側電極のうちの一方が他方に比べてより強く磁場に引き寄せられるように構成された縦型の複数の半導体発光素子チップと液体とを含有する液滴状のインクを、一方の主面に薄膜ヒューズにより互いに接続された幹線部と複数の支線部とを有する下部電極を有する基板の、半導体発光素子チップ集積装置を構成する個々の回路ユニットそれぞれについての個別の発光領域における上記下部電極の上記複数の支線部の上面により構成され、半導体発光素子チップを結合させるべきチップ結合部に供給する工程と、
上記基板に関して上記チップ結合部と反対側から外部磁場を印加することにより上記インク中の上記半導体発光素子チップを、上記p側電極および上記n側電極のうちの上記一方を上記チップ結合部に向けて上記チップ結合部に結合し、上記p側電極および上記n側電極のうちの上記一方と上記下部電極の上記支線部とを互いに電気的に接続する工程と、
上記複数の半導体発光素子チップの上層として、上部電極を少なくとも一つの上記半導体発光素子チップの上記p側電極および上記n側電極のうちの他方と上記上部電極とが互いに電気的に接続されるように形成する工程とを有する半導体発光素子チップ集積装置の製造方法。
【請求項16】
上記上部電極を形成した後、上記半導体発光素子チップの検査を行い、不良の半導体発光素子チップが接続された上記支線部と上記幹線部との間の上記薄膜ヒューズを切断する工程をさらに有する請求項14または15記載の半導体発光素子チップ集積装置の製造方法。
【請求項17】
インクジェットプリンティング方式によりノズルの先端から上記インクを上記チップ結合部に吐出する請求項14〜16のいずれか一項記載の半導体発光素子チップ集積装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は半導体発光素子チップ集積装置およびその製造方法に関し、例えば、微小化した縦型(あるいは垂直型)マイクロ発光ダイオード(LED)チップを基板上に多数集積したマイクロLEDディスプレイに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
現在、薄型テレビやスマートフォンなどの表示装置(ディスプレイ)の主流は、液晶ディスプレイ(LCD)および有機ELディスプレイ(OLED)である。このうちLCDの場合、画素の微細化に伴い、出力される光量はバックライトの光量の10分の1程度である。OLEDも、理論上の電力効率は高いが、実際の製品はLCDと同等の水準に留まっている。
【0003】
LCDおよびOLEDを遥かに凌ぐ高輝度、高効率(低消費電力)のディスプレイとしてマイクロLEDディスプレイが注目されている。直接発光のマイクロLEDディスプレイは高効率であるが、マイクロLEDディスプレイの実現のためには、数μmから数十μmオーダーのサイズのマイクロLEDチップを実装基板上に数千万個配列させる必要がある。
【0004】
このように大量のマイクロLEDチップを実装基板上に配列させる方法として従来、チップソーターを用いる方法、マルチチップ転写装置を用いる方法(特許文献1、2参照)、レーザ照射によるチップ吐出と液体を利用したチップ配列方法(特許文献3参照)、磁性体膜を利用した素子(チップ)の配列方法(特許文献4、5参照)などが提案されている。
【0005】
チップソーターを用いる方法では、チップをAの位置からBの位置へ移動させるタイプのものは、Aのチップが予めある程度整列されている必要があり、転写の際、チップの位置確認などで時間を要し、1チップ当たりの転写速度は100〜400msecが限界である。また、この方法では真空吸着式のヘッドを用いるのが一般的であり、扱えるチップの最小サイズは〜100μm□程度である。製造に要する時間と扱えるチップサイズの限界から、チップサイズ100μm□以下で、画素数が数百万のマイクロLEDディスプレイの製造には不向きである。
【0006】
特許文献1、2記載のマルチチップ転写装置では一度に大量のチップ転写を行うため、製造速度はチップソーターに比べて数百〜数千倍速くできるが、転写前のチップは高精度で整列されている必要がある。このために、チップを基板から切り離せるように、基板側に高度な加工を施している。しかし、この基板加工には特別な技術が必要となり、低コスト化の障害になる。
【0007】
特許文献3記載のチップ配列方法では、レーザ照射により1画素領域にチップを供給し、チップは液体により所定の位置に結合する方法が開示されているが、レーザ照射前のチップは整列している必要がある。また、高価なレーザ照射装置と、レーザ照射によるチップ吐出が可能なように基板(チップ)の加工が必要であり、低コスト化の障害になると考えられる。
【0008】
特許文献4記載の素子の配列方法は、基板上の素子の配列位置および素子の底部に磁性体膜を形成し、基板上に素子を多数散乱させて素子の底部の磁性体膜を素子の配列位置の磁性体膜に磁力で付着させることにより基板上に素子を配列する。この方法は、転写前の素子、すなわちチップの整列を前提としない技術である。しかし、マイクロLEDディスプレイにおける素子の占有面積は1%以下(0.01%〜0.1%程度)であり、ランダム散布された1素子が所望の位置に到達する確率は1%以下である。そのため、ランダム散布では、大量のチップが必要になる。磁性体膜を厚さ数μmと厚く成膜し、有効磁場の到達範囲を広げると素子の配列位置への結合確率は増大するが、基板の製造コストの増大を招く。
【0009】
特許文献5記載の素子の配列方法は、p型半導体層上にp側電極層を形成し、その上に強磁性体層を形成し、n型半導体層上にn側電極層を形成し、その上に反磁性体層を形成し、強磁性体層に磁場を印加して強磁性体層を飽和磁化(自発磁化)させたLED素子が溶媒中に分散された素子分散溶液を作製し、LED素子を少なくとも一つ含有する液滴として、実装基板の基板電極上に滴下し、その滴下された液滴を撥水膜が囲う領域に拘束し、実装基板の裏面側に磁場発生手段を設置し、この磁場発生手段により、基板電極の上方に保持されるLED素子に磁場を印加することで、飽和磁化した強磁性体層を下方に強く引き寄せ、最終的に強磁性体層を基板電極に接触させ、液滴の溶媒を蒸発させ、実装基板を加熱してLED素子を基板電極に融着させる。しかし、特許文献5の実施例に示されているように、LED素子を一つだけ含有する液滴を作り出すことは高度な技術的制御を必要とする。更に液滴の広がりを拘束することによりLED素子を特定の位置に留めるには、マイクロLED素子のような微細な素子の場合は非常に微小な液滴量の制御が必要となる。液滴量1ピコリットルであっても、液滴形状がほぼ半球状になると仮定した場合、直径16μm程度に広がるため、10μm□以下のマイクロLED素子を配列するには更に液滴量を抑える必要がある。液滴中のLED素子の数や液滴量に対する高度な制御を行うことは技術的難易度が高く、製造コストの増大を招く。また、液滴中のLED素子が複数の場合に関しては、特許文献5に特段の記述はない。液滴中に複数のLED素子が存在する場合、それらを磁場の印加によりそれぞれ特定の位置に誘導することは容易ではなく、液滴中のLED素子が複数の場合にどのように扱うのか別途解決策が必要である。
【0010】
上述のように、これまで、マイクロLEDディスプレイを低コストで実現することは困難であった。
【0011】
上述のような背景の下、本発明者は、マイクロLEDディスプレイを低コストで実現することが可能な半導体チップ集積装置の製造方法を提案した(特許文献6参照)。特許文献6では、例えばp側電極側がn側電極側に比べてより強く磁場に引き寄せられるように構成されたマイクロLEDチップを液体に分散させたインクを基板の主面のチップ結合部に吐出し、基板の下方から外部磁場を印加することによりマイクロLEDチップのp側電極側をチップ結合部に結合させることによりマイクロLEDディスプレイを製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2017−531915号公報
【特許文献2】特表2017−500757号公報
【特許文献3】特開2005−174979号公報
【特許文献4】特開2003−216052号公報
【特許文献5】特開2016−25205号公報
【特許文献6】特許第6694222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献6に記載のマイクロLEDディスプレイの製造方法によれば、マイクロLEDディスプレイを低コストで実現することが可能であるが、検査によりマイクロLEDチップの不良が発見された場合、その修理を行うことは必ずしも容易ではなく、改善の余地があった。
【0014】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、マイクロLEDディスプレイをはじめとする各種の半導体発光素子チップ集積装置を低コストで製造することができるだけでなく、マイクロLEDチップなどの半導体発光素子チップを基板上に実装した後、検査により半導体発光素子チップの不良が発見された場合、その修理を容易に行うことができる半導体発光素子チップ集積装置およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、この発明は、
上下にp側電極およびn側電極を有し、上記p側電極および上記n側電極のうちの一方が他方に比べてより強く磁場に引き寄せられるように構成された縦型の複数の半導体発光素子チップと液体とを含有する液滴状のインクを、一方の主面に下部電極を有する基板の上記下部電極の上面の一部または上面の一部に設けられた凸部もしくは凹部により構成され、半導体発光素子チップを結合させるべきチップ結合部に供給する工程と、
上記基板に関して上記チップ結合部と反対側から外部磁場を印加することにより上記インク中の上記半導体発光素子チップを、上記p側電極および上記n側電極のうちの上記一方を上記チップ結合部に向けて上記チップ結合部に結合し、上記p側電極および上記n側電極のうちの上記一方と上記下部電極とを互いに電気的に接続する工程と、
上記複数の半導体発光素子チップの上層として、薄膜ヒューズにより互いに接続された幹線部と複数の支線部とを有する上部電極を少なくとも一つの上記半導体発光素子チップの上記p側電極および上記n側電極のうちの他方と上記上部電極の上記支線部とが互いに電気的に接続されるように形成する工程とを有する半導体発光素子チップ集積装置の製造方法である。
【0016】
この半導体発光素子チップ集積装置の製造方法は、典型的には、上部電極を形成した後、半導体発光素子チップの検査を行い、不良の半導体発光素子チップが接続された支線部と幹線部との間の薄膜ヒューズを切断する工程をさらに有する。半導体発光素子チップの検査により不良の半導体発光素子チップが発見されなかった場合には薄膜ヒューズを切断する必要がないことは言うまでもない。
【0017】
半導体発光素子チップを含むインクが含有する液体は、使用する半導体発光素子チップを分散させることができる限り特に限定されず、極性溶媒であっても無極性溶媒であってもよく、必要に応じて選ばれる。極性溶媒は、極性非プロトン性溶媒であってもプロトン性溶媒であってもよい。あるいは、この液体は、水であっても非水溶媒(水を除く二種類以上の溶媒の混合物、水と水を除く二種類以上の溶媒との混合物を含む)であってもよく、非水溶媒は不活性溶媒であっても活性溶媒であってもよい。不活性溶媒は、例えば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、四塩化炭素、アセトニトリルなどである。活性溶媒は、両性溶媒であっても酸性溶媒であっても塩基性溶媒であってもよいが、両性溶媒が望ましい。両性溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、ホルムアミド、アセトアミドなどである。
【0018】
半導体発光素子チップを含むインクには、必要に応じて、ツェナーダイオードおよび/または複数の低融点金属粒子を含有させることができる。ツェナーダイオードは、p型層とn型層とからなるpn接合を有し、上下にp側電極およびn側電極を有し、p側電極およびn側電極のうちの一方が他方に比べてより強く磁場に引き寄せられるように構成されている。インクが複数のツェナーダイオードを含有する場合、このツェナーダイオードを下部電極と上部電極との間に逆バイアスが印加されるように接続することにより、何らかの理由により下部電極と上部電極との間にサージ電圧などが印加されても、ツェナーダイオードを通して電流を逃がすことができるため、半導体発光素子チップの静電破壊(ESD)を効果的に防止することができる。典型的には、ツェナーダイオードの混合割合は半導体発光素子チップに対して10分の1以下の割合とされる。また、ツェナーダイオードの代わりに、上下にp側電極およびn側電極を有する半導体発光素子チップを用いてもよい。この場合、発光を担当する半導体発光素子チップに対して逆バイアスが印加されるように接続されるようにp側電極およびn側電極のうちより強く磁場に引き寄せられる側を変更する。また、インクが複数の低融点金属粒子を含有する場合、チップ結合部に半導体発光素子チップのp側電極およびn側電極のうちの一方を結合するときに予めチップ結合部上に低融点金属を形成しておかないでも、インクをチップ結合部に供給する際に半導体発光素子チップに加えて低融点金属粒子もチップ結合部に付着させることができるため、事前に低融点金属を形成しておく必要がなく、製造工程の簡略化を図ることができる。インクには、必要に応じて、半導体発光素子チップ、あるいはさらに複数のツェナーダイオードおよび/または複数の低融点金属粒子と液体とに加えて他の成分を含有させるようにしてもよい。他の成分は、例えば、フィラーや界面活性剤や接着剤成分である。フィラーは、インクの液体に分散させることができる限り、材質、形状、大きさなどは特に限定されず、必要に応じて選ばれる。例えば、フィラーの材質はシリコーン樹脂等の各種の樹脂である。フィラーの形状は球、楕円体など、大きさは半導体発光素子チップの大きさなどに応じて選択され、平均粒径は1〜10μm程度である。インクにフィラーを含有させることにより、次のような種々の利点を得ることができる。すなわち、液体中に半導体発光素子チップを容易に均一に分散させることができるだけでなく、均一な分散状態を保ちやすくする。また、インクの単位容積当たりのフィラーおよび半導体発光素子チップの濃度を調整することにより、インクをノズルによる吐出などにより一回供給する際に液滴中の半導体発光素子チップの個数を調節することが容易になる。また、フィラーは、インク中での半導体発光素子チップ同士の衝突による破損を防ぐ緩衝材としての役割を果たすことができる。さらに、フィラーは潤滑剤の役割も果たすことができるため、例えばインクジェットプリンティング方式を用いてインクを供給する場合にノズルの吐出口の詰まりを防止することができる。界面活性剤は、液体中に半導体発光素子チップを容易に均一に分散させることができるだけでなく、均一な分散状態を保ちやすくする役割も果たすことができる。界面活性剤は特に限定されず、必要に応じて選ばれ、例えばC1735COONaなどのアニオン界面活性剤、例えばC1225N(CH3 3 Clなどのカチオン界面活性剤、例えばC1225NHCH2 CH2 SO3 Naなどの両性界面活性剤、例えばC9 19(C6 4 )(OCH2 CH2 6 OHなどの非イオン界面活性剤のいずれであってもよい。接着剤成分は、インクの液体を乾燥させた際に、半導体発光素子チップをチップ結合部上に保持してくれる役割を果たすことができる。
【0019】
インク中の半導体発光素子チップの濃度は必要に応じて選ばれるが、典型的には、半導体発光素子チップが液体中に100ピコリットルの体積中に10〜10000個存在するように分散されている。インク中の半導体発光素子チップの体積分率は必要に応じて選ばれるが、典型的には30%以下である。インクの粘度は必要に応じて選ばれるが、例えば0.001〜100Pa・sの範囲である。
【0020】
基板のチップ結合部にインクを供給する方法は特に限定されず、必要に応じて選ばれる。チップ結合部に供給される液滴状のインクの形態はインクのチップ結合部に対する濡れ性などにより変化し、曲率が大きく球状の液滴から曲率が小さく平坦な液滴まで様々な形態を取りうる。典型的には、ノズルの先端からインクをチップ結合部に吐出する。好適には、インクジェットプリンティング方式によりノズルの先端からインクをチップ結合部に吐出する。この場合、吐出するインクの量は、一つのチップ結合部当たり複数(例えば2〜100個、場合によってはそれ以上)の半導体発光素子チップを含む量であればよく、典型的には10ピコリットル以上であるが、必要に応じて選ばれる。基板のチップ結合部に供給されたインクは、加熱などによる強制乾燥または自然乾燥により液体成分が除去される。供給されたインク中に含まれていた半導体発光素子チップは、後述する方法により、p側電極およびn側電極のうちの一方をチップ結合部に向けてチップ結合部と接触する。本方式では液滴中に複数個の半導体発光素子チップを含み、その個数に柔軟性を持たせることによりインクジェットプリンティング方式などの適用性を向上させ、更に後述するように、チップ結合部の面積を半導体発光素子チップの面積よりも大きく設定し、複数の半導体発光素子チップとチップ結合部との結合位置にかなりの自由度を与えてチップ結合位置の制御の煩雑さを解消することにより製造工程を飛躍的に簡単化させている。また、チップ結合部は基板内に占める割合の少ない限定された領域であるが、複数の半導体発光素子チップは、吐出された液滴の広がりの範囲内に留まり基板全体に散乱されることは無く、効率的にチップ結合部との結合を行える。
【0021】
チップ結合部に液滴状のインクを供給した後、外部磁場を印加することによりチップ結合部にインク中の半導体発光素子チップをp側電極およびn側電極のうちの一方をチップ結合部に向けて結合させる。半導体発光素子チップのp側電極およびn側電極のうちの一方と下部電極との電気的接続は、例えば、p側電極およびn側電極のうちの一方の上または下部電極のチップ結合部上に予め低融点金属(例えば、半田や低融点金属粒子など)を形成しておき、半導体発光素子チップをp側電極およびn側電極のうちの一方をチップ結合部に向けて結合させた後に低融点金属を加熱溶融する。こうすることで、半導体発光素子チップのp側電極およびn側電極のうちの一方と下部電極とが互いに電気的および機械的に結合する。
【0022】
半導体発光素子チップのp側電極およびn側電極のうちの一方は、典型的には、軟磁性体を含む。軟磁性体は、保磁力が小さく透磁率が大きい材料であり、磁場の影響下では強く磁化されるが、磁場が存在しない場合は磁力を持たない性質を有する。軟磁性体は、例えば、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、パーマロイ(Fe−78.5Ni合金)、スーパーマロイ(Fe−79Ni−5Mo合金)、センダスト(Fe−10Si−5Al合金)、Fe−4%Si合金、SUS410L、パーメンジュール(Fe−50Co合金)、ソフトフェライト(50Mn−50Zn)、アモルファス磁性合金(Fe−8B−6C合金)などであるが、これに限定されるものではない。
【0023】
半導体発光素子は、発光ダイオード(LED)のほか、レーザダイオード(LD)(特に垂直共振器面発光レーザー(VCSEL))や有機EL素子などであってもよい。半導体発光素子は、AlGaInN系半導体発光素子やAlGaInP系半導体発光素子などであるが、これに限定されるものではない。AlGaInN系半導体発光素子は、青紫、青色から緑色の波長帯(波長390nm〜550nm)の発光を得る場合に使用され、AlGaInP系半導体発光素子は、赤色の波長帯(波長600nm〜650nm)の発光を得る場合に使用される。青色、緑色、赤色の波長帯を得るためにはAlGaInN系半導体発光素子と蛍光体を組み合わせて実現してもよい。
【0024】
半導体発光素子チップのチップサイズは必要に応じて選ばれるが、一般的には20μm×20μm以下、典型的には10μm×10μm以下、最も典型的には5μm×5μm以下に選ばれ、一般的には0.1μm(100nm)×0.1μm(100nm)以上、あるいは0.5μm(500nm)×0.5μm(500nm)以上である。また、半導体発光素子チップの厚さも必要に応じて選ばれるが、一般的には10μm以下、好適には5μm以下である。半導体発光素子チップは、基板上に半導体発光素子を構成する半導体層の結晶成長を行った後、基板を半導体層から分離したものであることが望ましく、厚さは例えば10μm以下であることが望ましい。半導体発光素子チップは、好適には、チップ面に垂直な軸に関し回転対称性を有し、例えば、円形、正方形、正六角形、正八角形などであり、この場合、半導体発光素子チップは全体としてそれぞれ円柱、正四角柱、正六角柱、正八角柱などであるが、これに限定されるものではない。半導体発光素子チップは、半円錐(円錐の頂部を切除したもの)や半多角錘(多角錐の上部を切除したもの)などであってもよい。特に、半導体発光素子チップが円柱状である場合、半導体発光素子チップは、好適には直径10μm以下、厚さ10μm以下である。また、半導体発光素子チップのp側電極およびn側電極の数は典型的にはそれぞれ1つであり、電極サイズはチップサイズと同等かそれ以下であるが、p側電極およびn側電極のどちらか一方または両方がチップサイズよりも小さいサイズの複数の電極により形成されていてもよい。
【0025】
基板(あるいは実装基板)は、特に限定されないが、例えば、Si基板、ガラス基板、ガラスエポキシ基板、樹脂フィルム、プリント基板などである。基板は剛体であってもフレキシブルであってもよく、更に透明、半透明、不透明でもよく適宜選択される。基板の一方の主面に設けられる下部電極の上面に設けられたチップ結合部の配列パターン、大きさ、平面形状、間隔などは、半導体発光素子チップ集積装置の用途、実装する半導体発光素子チップなどに応じて適宜選択される。基板のチップ結合部の配列パターンの一例を挙げると、チップ結合部が二次元アレイ状に設けられる。この場合、二次元アレイ状に設けられたそれぞれのチップ結合部に複数の半導体発光素子チップが結合する。下部電極は、複数のチップ結合部に結合した半導体発光素子チップ間を電気的に接続するための配線となる。下部電極は、所定のパターン、配置、間隔で設けられる。チップ結合部の大きさおよび平面形状は、実装する半導体発光素子チップの大きさおよび平面形状に応じて、複数の半導体発光素子チップが結合することができるように適宜選択される。チップ結合部、従って半導体発光素子チップの間隔、個数などは、半導体発光素子チップ集積装置に要求される機能などに応じて適宜選択される。チップ結合部の面積をS、半導体発光素子チップのチップ面積をsとしたとき、一般的には10s≦S≦1000sが成立する。ここで、インクの広がりに対して半導体発光素子チップが結合することができる面積をある程度以上確保する必要があるため、10s≦Sとした。一方、Sは大きすぎても配線などのデバイス設計に支障が生じるため、S≦1000sが妥当である。
【0026】
複数の半導体発光素子チップの上層として形成する上部電極は、一つのチップ結合部に対し、このチップ結合部に跨がるように、好適にはこのチップ結合部の領域のほぼ全域に亘って延在した複数の支線部を有する。これらの複数の支線部は、典型的には、チップ結合部の領域の80%以上を覆い、各支線部の幅は5〜100μm、支線部の間の隙間の幅は1〜5μm、支線部の本数は3〜10本であるが、これらの数値は、チップ結合部に結合した複数の半導体発光素子チップを含む一つの回路ユニットあるいは画素の大きさ、チップ結合部の領域の面積や形状、チップサイズなどに合わせて適宜設計可能である。典型的には、これらの複数の支線部は互いに平行に設けられ、これらの支線部は幹線部に対して垂直に設けられるが、これに限定されるものではない。これらの複数の支線部のそれぞれは、一般的には、チップ結合部に結合した複数の半導体発光素子チップのうちの少なくとも一つ、典型的には二つ以上の半導体発光素子チップのそれぞれのp側電極およびn側電極のうちの一方と電気的に接続されるが、どの半導体発光素子チップのp側電極およびn側電極のうちの一方とも電気的に接続されていない支線部が含まれることもある。幹線部は、典型的には、複数のチップ結合部に沿って延在して設けられる。
【0027】
幹線部と複数の支線部とを互いに接続する薄膜ヒューズは、検査により不良と判定された半導体発光素子チップのp側電極およびn側電極のうちの他方と接続された上部電極の支線部と下部電極との間に電圧を印加して所定の電流を流すことにより溶かして切断することができるように材料、幅、厚さ、形状などが選ばれている。薄膜ヒューズの断面積(幅×厚さ) の最小値は0.5μm2 以下が望ましいが、これに限定されるものではない。薄膜ヒューズは、典型的には350℃以下の融点、典型的には150℃以上の融点を有する金属により構成される。このような金属は、単体金属としてはIn、Snなどが挙げられ、合金(共晶合金)としてはInSn、InSnAg、AgSn、AgSnなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0028】
必要に応じて、下部電極も、上部電極と同様に、薄膜ヒューズにより互いに接続された幹線部と複数の支線部とを有するようにしてもよい。
【0029】
典型的には、基板は、互いに独立駆動可能な複数の回路ユニットを有し、これらの複数の回路ユニットのそれぞれに対して上記の下部電極および上部電極が設けられる。回路ユニットはパルス幅変調(PWM)などによる定電流駆動によって制御されるため、半導体発光素子チップの発光効率が電流密度に対して一定であると仮定した場合、回路に接続された半導体発光素子チップの個数に変動があっても、一定の電流値に対しては同一の光量が得られる。実際のAlGaInN系半導体発光素子などの半導体発光素子チップは、結晶欠陥や貫通転移、オージェ再結合などの影響により、電流密度による発光効率の変動が存在する。しかし、急激な発光効率変動の生じない電流密度範囲で駆動できるように半導体発光素子チップの個数の変動幅や回路の電流値を適宜設計することが可能である。
【0030】
特に、半導体発光素子チップ集積装置がカラーディスプレイである場合には、典型的には、互いに隣接する3つ以上の回路ユニットを含む領域により1画素が構成される。この1画素の面積は必要に応じて選ばれる。1画素の面積は、典型的には、500μm×500μm程度に選ばれるが、500μm×500μmより大きくても小さくてもよい。この場合、3つ以上の回路ユニットにより、赤色、緑色、青色の3色の発光が行われるようにすることができる。また、個々の半導体発光素子チップの発光効率や波長などに差異があっても、大半の場合、一つの回路ユニット内に複数個の半導体発光素子チップが存在することにより、回路ユニット内での発光効率や波長などは平均化され、それにより同種の回路ユニット間同士の特性の差異も縮小化される。特定の効率差や波長差を持った半導体発光素子チップが特定の領域に集中せず、同種の回路ユニット間の特性の差異も縮小化できることは、極微細化した複数の半導体発光素子チップをインク状にして供給し、大半の回路ユニットで半導体発光素子チップが複数個接続されることによって得られるメリットである。勿論、場合によっては赤色、緑色、青色の各種の回路ユニットごとに異なる効率および光量や、それによって生じる色ムラなどを回路側の制御により最小化することも必要となるが、同種の回路ユニット間における光量や波長の平均化が行われているため、従来のカラーLEDディスプレイなどで見られるように、画素ごとにホワイトバランスなどの微細な調整をしなければならない制御の煩雑さは低減され、製品の低価格化に貢献することができる。
【0031】
上部電極の支線部または下部電極の支線部の面積は、典型的には、半導体発光素子チップのp側電極およびn側電極のうちの一方の面積の10倍以上に選ばれる。こうすることで、上部電極の支線部または下部電極の支線部と半導体発光素子チップのp側電極およびn側電極のうちの一方との接続を確実に行うことができる。また、上部電極の支線部または下部電極の支線部の面積は、典型的には、回路ユニットの面積の30%以下に選ばれる。
【0032】
必要に応じて、チップ結合部は、インクが親水性か親油性かに応じて、周辺部より親水性または親油性が高く構成される。こうすることで、インクが親水性の場合は、チップ結合部が周辺部より親水性が高いと、チップ結合部を含む広い領域にインクが滴下されたり、チップ結合部と一部重なってインクが滴下されたりした場合、インクを親水性がより高いチップ結合部に集中させることができる。同様に、インクが親油性の場合は、チップ結合部が周辺部より親油性が高いと、チップ結合部を含む広い領域にインクが滴下されたり、チップ結合部と一部重なってインクが滴下されたりした場合、インクを親油性がより高いチップ結合部に集中させることができる。必要に応じて、互いに隣接する所定の一群のチップ結合部が、チップ結合部と同等に親水性または親油性が高く構成された領域により互いに連結されるようにしてもよい。こうすることで、互いに隣接する所定の一群のチップ結合部の一部だけにインクが滴下されても、滴下されたインクを、連結路を通って一群のチップ結合部の全てに行き渡らせることができる。その結果、チップ結合部の大きさが小さくても、滴下するインクの量を過度に少なくしなくても済み、ノズル製作の難易度を高めることなく、ノズルの目詰まりなどを起こさずに、インクの滴下を支障なく行うことができる。標準的なインクジェットノズルから吐出される最小液滴量は10ピコリットル程度であるが、この時液滴は凡そ50μm程度に広がる。1000ppiなどの超高精細画素ではピクセルサイズが〜25μmであり、サブピクセルサイズは〜8μm強となる。このような微小領域に滴下された一つの液滴を留めることは容易ではない。この方法は、特に1画素内のサブピクセルの幅が50μm以下となるような超高精細画素などの製造時に有効である。
【0033】
半導体発光素子チップ集積装置は、基本的にはどのようなものであってもよく、半導体発光素子チップの種類に応じて適宜設計される。半導体発光素子チップ集積装置は、一種類の半導体発光素子チップを集積したものだけでなく、二種類以上の半導体発光素子チップを集積したものや蛍光体と組み合わせたものであってもよい。半導体発光素子チップ集積装置は、例えば、発光ダイオード照明装置、発光ダイオードバックライト、発光ダイオードディスプレイなどであるが、これに限定されるものではない。半導体発光素子チップ集積装置の大きさ、平面形状などは、半導体発光素子チップ集積装置の用途、半導体発光素子チップ集積装置に要求される機能などに応じて適宜選択される。
【0034】
また、この発明は、
一方の主面に下部電極を有する基板と、
上記下部電極の上面の一部または上面の一部に設けられた凸部もしくは凹部により構成され、半導体発光素子チップを結合させるべきチップ結合部と、
上記チップ結合部に結合した、上下にp側電極およびn側電極を有し、上記p側電極および上記n側電極のうちの一方が他方に比べてより強く磁場に引き寄せられるように構成された縦型の複数の半導体発光素子チップと、
上記複数の半導体発光素子チップの上層の、薄膜ヒューズにより互いに接続された幹線部と複数の支線部とを有する上部電極とを有し、
上記半導体発光素子チップは、上記p側電極および上記n側電極のうちの上記一方を上記チップ結合部に向けて上記チップ結合部に結合し、上記p側電極および上記n側電極のうちの上記一方と上記下部電極とが互いに電気的に接続され、少なくとも一つの上記半導体発光素子チップの上記p側電極および上記n側電極のうちの他方と上記上部電極の上記支線部とが互いに電気的に接続されている半導体発光素子チップ集積装置である。
【0035】
この半導体発光素子チップ集積装置の発明においては、特にその性質に反しない限り、上記の半導体発光素子チップ集積装置の製造方法の発明に関連して説明したことが成立する。
【0036】
また、この発明は、
上下にp側電極およびn側電極を有し、上記p側電極および上記n側電極のうちの一方が他方に比べてより強く磁場に引き寄せられるように構成された縦型の複数の半導体発光素子チップと液体とを含有する液滴状のインクを、一方の主面に薄膜ヒューズにより互いに接続された幹線部と複数の支線部とを有する下部電極を有する基板の上記下部電極の上記支線部の上面により構成され、半導体発光素子チップを結合させるべきチップ結合部に供給する工程と、
上記基板に関して上記チップ結合部と反対側から外部磁場を印加することにより上記インク中の上記半導体発光素子チップを、上記p側電極および上記n側電極のうちの上記一方を上記チップ結合部に向けて上記チップ結合部に結合し、上記p側電極および上記n側電極のうちの上記一方と上記下部電極の上記支線部とを互いに電気的に接続する工程と、
上記複数の半導体発光素子チップの上層として、上部電極を少なくとも一つの上記半導体発光素子チップの上記p側電極および上記n側電極のうちの他方と上記上部電極とが互いに電気的に接続されるように形成する工程とを有する半導体発光素子チップ集積装置の製造方法である。
【0037】
この半導体発光素子チップ集積装置の製造方法の発明では、上部電極ではなく下部電極を、薄膜ヒューズにより互いに接続された幹線部と複数の支線部とを有するように形成することが、上述の半導体発光素子チップ集積装置の製造方法の発明と異なる。必要に応じて、上部電極も、下部電極と同様に、薄膜ヒューズにより互いに接続された幹線部と複数の支線部とを有するようにしてもよい。この半導体発光素子チップ集積装置の製造方法の発明においては、特にその性質に反しない限り、上述の半導体発光素子チップ集積装置の製造方法の発明に関連して説明したことが成立する。
【0038】
また、この発明は、
一方の主面に薄膜ヒューズにより互いに接続された幹線部と複数の支線部とを有する下部電極を有する基板と、
上記下部電極の上記支線部の上面により構成され、半導体発光素子チップを結合させるべきチップ結合部と、
上記チップ結合部に結合した、上下にp側電極およびn側電極を有し、上記p側電極および上記n側電極のうちの一方が他方に比べてより強く磁場に引き寄せられるように構成された縦型の複数の半導体発光素子チップと、
上記複数の半導体発光素子チップの上層の上部電極とを有し、
上記半導体発光素子チップは、上記p側電極および上記n側電極のうちの上記一方を上記チップ結合部に向けて上記チップ結合部に結合し、上記p側電極および上記n側電極のうちの上記一方と上記下部電極の上記支線部とが互いに電気的に接続され、少なくとも一つの上記半導体発光素子チップの上記p側電極および上記n側電極のうちの他方と上記上部電極とが互いに電気的に接続されている半導体発光素子チップ集積装置である。
【発明の効果】
【0039】
この発明によれば、半導体発光素子チップを含むインクを基板のチップ結合部に供給し、基板に関してチップ結合部と反対側から外部磁場を印加することによりチップ結合部に半導体発光素子チップをp側電極およびn側電極のうちの一方がチップ結合部を向くようにして容易に接触させることができる。そして、例えばチップ結合部またはp側電極およびn側電極のうちの一方の上に予め低融点金属を形成しておき、半導体発光素子チップをp側電極およびn側電極のうちの一方を下にしてチップ結合部に接触させた後に低融点金属を加熱溶融することにより、半導体発光素子チップとチップ結合部とを電気的および機械的に結合させることができる。そして、例えば、チップ結合部を二次元アレイ状に設けることにより、大面積あるいは高集積密度の半導体発光素子チップ集積装置、例えば、発光ダイオード照明装置、大面積の発光ダイオードバックライト、大画面の発光ダイオードディスプレイなどを容易に実現することができる。更に、上部電極および下部電極と接続された半導体発光素子チップの一部に不良がある場合、その不良の半導体発光素子チップが接続された上部電極または下部電極の幹線部と支線部との間の薄膜ヒューズを通電により切断して、不良の半導体発光素子チップが接続された支線部を幹線部から切り離すことで容易に修理することが可能であり、リペア作業の簡略化と製品の高歩留化を実現することができる。この方法によれば、例えば発光ダイオードディスプレイなどの場合、1つの半導体発光素子チップの大きさを極微細化して一画素につき複数配置することにより、画素中に不良の半導体発光素子チップが混入した場合でも一部の支線部の切り離しにより、残りの支線部に接続された半導体発光素子チップは使用することが可能であるため、不要となる材料(半導体発光素子チップ) の損失も低減させることができ、リペア構造導入に伴う材料費の上昇が抑えられるという利点も存在する。また、超高精細画素も容易に実現することができる。この発明では、従来提案されてきた液滴を使った製造方法の課題を克服し、製品の歩留を確保するために欠かすことのできないリペアを容易に行える解決策を与えており、マイクロLEDディスプレイなどの高精細な半導体発光素子チップ集積装置の飛躍的な低価格化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】この発明の第1の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法に用いられる縦型マイクロLEDチップの製造方法を示す断面図である。
図2】この発明の第1の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法に用いられる縦型マイクロLEDチップの製造方法を示す断面図である。
図3】この発明の第1の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法に用いられる縦型マイクロLEDチップの製造方法を示す断面図である。
図4】この発明の第1の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法に用いられる縦型マイクロLEDチップを示す断面図である。
図5】この発明の第1の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法に用いられる縦型マイクロLEDチップの平面形状の例を示す平面図である。
図6】この発明の第1の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法に用いられるインクを示す略線図である。
図7】この発明の第1の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法に用いられるインク吐出装置を示す略線図である。
図8】この発明の第1の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法に用いられる実装基板を示す平面図および断面図である。
図9】この発明の第1の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法に用いられる実装基板のチップ結合部の例を示す断面図である。
図10】この発明の第1の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法において実装基板のチップ結合部にインクが吐出された状態を示す断面図である。
図11】この発明の第1の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法において実装基板のチップ結合部に吐出されたインク中の縦型マイクロLEDチップがチップ結合部に接触した状態を示す断面図である。
図12】この発明の第1の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法において実装基板のチップ結合部に縦型マイクロLEDチップが結合した状態を示す平面図および断面図である。
図13】この発明の第1の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法を示す断面図である。
図14】この発明の第1の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法を示す平面図である。
図15図14に示す薄膜ヒューズおよびその近傍を拡大して示す平面図である。
図16】この発明の第1の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法により製造されたマイクロLED集積装置を検査する方法を説明するための平面図および断面図である。
図17】この発明の第1の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法により製造されたマイクロLED集積装置の修理方法を説明するための平面図および断面図である。
図18】この発明の第2の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法に用いられるインクを示す略線図である。
図19】この発明の第2の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法に用いられるインクに含まれるツェナーダイオードを示す断面図である。
図20】この発明の第2の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法において実装基板のチップ結合部にインクが吐出された状態を示す断面図である。
図21】この発明の第2の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法において実装基板のチップ結合部に吐出されたインク中の縦型マイクロLEDチップがチップ結合部に接触した状態を示す断面図である。
図22】この発明の第2の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法を示す断面図である。
図23】この発明の第3の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法に用いられるインクを示す略線図である。
図24】この発明の第3の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法において実装基板のチップ結合部にインクが吐出された状態を示す断面図である。
図25】この発明の第3の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法を示す断面図である。
図26】この発明の第4の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法に用いられるインクを示す略線図である。
図27】この発明の第4の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法において実装基板のチップ結合部にインクが吐出された状態を示す断面図である。
図28】この発明の第4の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法を示す断面図である。
図29】この発明の第5の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法に用いられるインク吐出装置を示す略線図である。
図30】この発明の第6の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法に用いられる縦型マイクロLEDチップを示す断面図である。
図31】この発明の第6の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法に用いられる縦型マイクロLEDチップの製造方法を示す断面図である。
図32】この発明の第6の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法に用いられる縦型マイクロLEDチップの製造方法を示す断面図である。
図33】この発明の第6の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法に用いられる縦型マイクロLEDチップの製造方法を示す断面図である。
図34】この発明の第6の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法に用いられる縦型マイクロLEDチップの製造方法を示す断面図である。
図35】この発明の第7の実施の形態によるパッシブ駆動方式のカラーマイクロLEDディスプレイの実装基板を示す断面図である。
図36】この発明の第7の実施の形態によるパッシブ駆動方式のカラーマイクロLEDディスプレイを示す断面図である。
図37】この発明の第8の実施の形態によるアクティブ駆動方式のカラーマイクロLEDディスプレイの実装基板を示す断面図である。
図38】この発明の第8の実施の形態によるアクティブ駆動方式のカラーマイクロLEDディスプレイを示す断面図である。
図39】この発明の第9の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法に用いられる実装基板を示す平面図および断面図である。
図40】この発明の第9の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法を示す平面図および断面図である。
図41】この発明の第9の実施の形態によるマイクロLED集積装置の製造方法を示す平面図および断面図である。
図42図7に示すインク吐出装置を用いてインクを吐出することにより極微細画素マイクロLEDディスプレイを製造する場合の課題を説明するための略線図である。
図43図7に示すインク吐出装置を用いてインクを吐出することにより極微細画素マイクロLEDディスプレイを製造する場合の課題を説明するための略線図である。
図44】この発明の第10の実施の形態による極微細画素カラーマイクロLEDディスプレイの製造方法を示す平面図および断面図である。
図45】この発明の第10の実施の形態による極微細画素カラーマイクロLEDディスプレイの製造方法を示す平面図および断面図である。
図46】この発明の第10の実施の形態による極微細画素カラーマイクロLEDディスプレイの製造方法を示す平面図および断面図である。
図47】この発明の第10の実施の形態による極微細画素カラーマイクロLEDディスプレイの製造方法を示す平面図および断面図である。
図48】この発明の第10の実施の形態による極微細画素カラーマイクロLEDディスプレイの製造方法を示す平面図および断面図である。
図49】この発明の第10の実施の形態による極微細画素カラーマイクロLEDディスプレイの製造方法を示す平面図および断面図である。
図50】この発明の第11の実施の形態による極微細画素カラーマイクロLEDディスプレイの製造方法を示す平面図および断面図である。
図51】この発明の第11の実施の形態による極微細画素カラーマイクロLEDディスプレイの製造方法を示す断面図である。
図52】この発明の第11の実施の形態による極微細画素カラーマイクロLEDディスプレイの製造方法を示す略線図である。
図53】この発明の第11の実施の形態による極微細画素カラーマイクロLEDディスプレイの製造方法を示す平面図および断面図である。
図54】この発明の第11の実施の形態による極微細画素カラーマイクロLEDディスプレイの製造方法を示す略線図である。
図55】この発明の第11の実施の形態による極微細画素カラーマイクロLEDディスプレイの製造方法を示す平面図および断面図である。
図56】この発明の第11の実施の形態による極微細画素カラーマイクロLEDディスプレイの製造方法を示す平面図である。
図57】この発明の第12の実施の形態による極微細画素カラーマイクロLEDディスプレイの製造方法を示す断面図である。
図58】この発明の第12の実施の形態による極微細画素カラーマイクロLEDディスプレイの製造方法を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」と言う)について説明する。
【0042】
〈第1の実施の形態〉
第1の実施の形態によるマイクロLED集積装置は実装基板上に縦型マイクロLEDチップを多数実装することにより製造するが、最初にまず、上下にp側電極およびn側電極を有する縦型マイクロLEDチップ、この縦型マイクロLEDチップを含有するインク、このインクの吐出に用いるインク吐出装置および実装基板について説明する。
【0043】
[マイクロLED集積装置の製造方法]
(1)縦型マイクロLEDチップ
縦型マイクロLEDチップの製造方法について説明する。この縦型マイクロLEDチップは、p側電極側がn側電極側に比べてより強く磁場に引き寄せられるように構成されたものである。
【0044】
図1Aに示すように、サファイア基板10上に、n型GaN層11、n+ 型GaN層12、障壁層としてのInx Ga1-x N層と井戸層としてのIny Ga1-y N層とが交互に積層されたInx Ga1-x N/Iny Ga1-y N多重量子井戸(MQW)構造(x<y、0≦x<1、0≦y<1)を有する発光層13およびp型GaN層14を順次エピタキシャル成長させる。n型GaN層11の厚さは例えば0.5〜1μm、n+ 型GaN層12の厚さは例えば0.8〜2.6μm、発光層13の厚さは例えば0.1〜0.2μm、p型GaN層14の厚さは例えば0.1〜0.2μmである。n+ 型GaN層12、発光層13およびp型GaN層14の合計の厚さは例えば1〜3μmである。発光層13を構成するInx Ga1-x N/Iny Ga1-y N MQW構造のIn組成比x、yは、縦型マイクロLEDチップの発光波長に応じて選ばれる。
【0045】
次に、図1Bに示すように、p型GaN層14の全面に例えば真空蒸着法によりp側電極形成用の金属膜15および低融点金属としてのSn膜16を順次形成する。金属膜15としては、例えば、Ti/Ni/Ti/Ni/Ti/Ni/Ti/Au膜などの多重積層膜を用いる。この金属膜15を構成する各膜の厚さは、例えば、下から順に、Ti膜は0.01μm、Ni膜は0.2μm、Ti膜は0.1μm、Ni膜は0.2μm、Ti膜は0.1μm、Ni膜は0.2μm、Ti膜は0.1μm、Au膜は0.05μmである。この金属膜15を構成する多層膜のうちNi膜は軟磁性体である。Sn膜16の厚さは、例えば0.5μmである。
【0046】
次に、図1Cに示すように、金属膜15およびSn膜16をリソグラフィーおよびエッチングによりパターニングすることによりp側電極17を形成するとともにSn膜16をこのp側電極17と同一平面形状に形成した後、これらのSn膜16およびp側電極17をマスクとして例えば反応性イオンエッチング(RIE)法によりサファイア基板10が露出するまでエッチングを行う。次に、必要に応じて、p側電極17をp型GaN層14にオーミック接触させるためのアロイ処理を行う。
【0047】
次に、図1Dに示すように、基板全面にレジストや透明樹脂などの被覆材18を塗布して覆った後、その上にフィルムやSi基板などの支持基板19を形成する。
【0048】
次に、図2Aに示すように、サファイア基板10の裏面側からレーザービームを照射することによりn型GaN層11とサファイア基板10との界面で剥離を生じさせ、n型GaN層11からサファイア基板10を分離する(レーザーリフトオフ)。この後、例えば化学機械研磨(CMP)法やRIE法などによりn型GaN層11を除去し、n+ 型GaN層12の表面を露出させる。
【0049】
次に、図2Bに示すように、n+ 型GaN層12の表面のn側電極形成領域に対応する部分に開口20aを有するレジストパターン20をリソグラフィーにより形成する。
【0050】
次に、基板全面に例えば真空蒸着法によりAl膜およびAu膜を順次形成する。このとき、図2Cに示すように、レジストパターン20の開口20aを通じて、n+ 型GaN層12にコンタクトしたn側電極(カソード)21が形成される。開口20aを除いたレジストパターン20の表面にはAl膜およびAu膜からなる積層膜22が形成される。ここで、このn側電極21を構成するAl膜およびAu膜の厚さは例えばそれぞれ0.3μmおよび0.05μmである。
【0051】
次に、レジストパターン20をその上に形成された積層膜22とともに除去する(リフトオフ)。必要に応じて、この後、n側電極21をn+ 型GaN層12にオーミック接触させるためのアロイ処理を行う。
【0052】
次に、図3Aに示すように、支持基板19上に被覆材18、Sn膜16、p側電極17、p型GaN層14、発光層13、n+ 型GaN層12およびn側電極21が形成されたものを容器30内に入れられた溶剤31に漬けることにより被覆材18を溶かす。こうして、図3Bに示すように、縦型マイクロLEDチップ40が得られる。
【0053】
こうして得られた縦型マイクロLEDチップ40を純水でリンスした後、乾燥させる。
【0054】
以上により、図4に示すように、p側電極17側がn側電極21側に比べてより強く磁場に引き寄せられるように構成された縦型マイクロLEDチップ40が製造される。
【0055】
図5A、BおよびCに縦型マイクロLEDチップ40の平面形状の例を示す。縦型マイクロLEDチップ40はある程度回転対称であれば良いが、図5Aは円形の場合、図5Bは正六角形の場合、図5Cは正方形の場合であり、それぞれ縦型マイクロLEDチップ30の全体形状が円柱状、正六角柱状、正四角柱状である。縦型マイクロLEDチップ40のサイズは、例えば(0.1〜10μm)×(0.1〜10μm)である。
【0056】
(2)インク
図6に示すように、容器100中において縦型マイクロLEDチップ40を液体50に分散させてインク200を作製する。インク200には、必要に応じて縦型マイクロLEDチップ40に加えてフィラーや界面活性剤などを含有させる。縦型マイクロLEDチップ40のサイズが上述のように(0.1〜10μm)×(0.1〜10μm)であるとインク200中の分散性が十分に高く、インク吐出装置の吐出ノズルからの吐出も容易に行うことができる。
【0057】
(3)インク吐出装置
図7はインク吐出装置300を示す。
【0058】
図7に示すように、インク吐出装置300は、インクジェットプリントヘッド301を有する。インクジェットプリントヘッド301は内部にインク室302を有し、上部にインク供給部303を有する。インクジェットプリントヘッド301の内部にはさらに、インク室302の上部側面とインク供給部303の底面に設けられた管部303aとを連結する流路305と、インク室302の下部側面に連結された流路306とを有する。インク供給部303の管部303aの途中には制御バルブ307が設けられている。インク室302の下方には吐出ノズル308が設けられている。吐出ノズル308の直径は必要に応じて選ばれるが、例えば10〜50μmである。インク室302の上には、一対の電極間に圧電体を挟んだ構造のピエゾアクチュエーター309が設けられている。流路306は、インク室302内のインク200を外部に排出したり、インク供給部303にインクを戻して循環させることにより吐出ノズル308の詰まりを防止したり、インク200の攪拌機能を持たせたりするためのものである。
【0059】
このインク吐出装置300においては、制御バルブ307を開いた状態でインク供給部303にインク200が供給される。こうしてインク供給部303に供給されたインク200は、管部303aおよび流路305を通ってインク室302に供給される。インク200は、流路305、インク室302および流路306が満タンになるまで供給され、その後、制御バルブ307が閉められる。
【0060】
このインク吐出装置300はさらに、このインク吐出装置300の吐出ノズル308から水平方向に少しずれた位置に磁場印加装置311を有する。インク200の吐出を行う後述の実装基板400は、インクジェットプリントヘッド301と磁場印加装置311との間の高さの位置を水平方向に移動するようになっている。
【0061】
(4)実装基板
図8AおよびBはマイクロLED集積装置の製造に用いられる実装基板400を示す。ここで、図8Aは平面図、図8Bは下部電極に沿った断面図である。図8AおよびBに示すように、基板410の一方の主面に所定の形状を有する下部電極420が設けられている。基板410は剛性を有するものであってもフレキシブルなものであってもよく、また透明であっても不透明であってもよく、必要に応じて選ばれる。基板410は、例えば、Si基板、ガラス基板、ガラスエポキシ基板などのほか、樹脂フィルムなどであってもよい。下部電極420は、例えば、基板410の全面にスパッタリング法や真空蒸着法などにより非磁性の金属膜を形成した後、この金属膜をリソグラフィーおよびエッチングにより所定形状にパターニングすることにより形成することができる。金属膜としては、非磁性の金属からなるもの、例えば、Ti/Al/Ti/Au/Ti積層膜が用いられるが、Cu(あるいはCu合金)/Au/Ti積層膜を用いてもよい。Ti/Al/Ti/Au/Ti積層膜を構成する膜の厚さは、例えば、下から順に5〜10nm、300〜1000nm、50nm、5〜100nm、50nmである。下部電極420上にはチップ結合部421が設けられている。チップ結合部421は縦型マイクロLEDチップ40を結合させる領域であり、1回路ユニットが形成される領域である。チップ結合部421は、下部電極420の上面が平坦である場合はその平坦な上面の一部の領域であり、図8Aにはこの領域の輪郭が一点鎖線で示されている。図9Aに示すように、チップ結合部421は、下部電極420の上面のチップ結合部421に対応する部分に凸部が設けられている場合はその凸部の上面である。図9Bに示すように、チップ結合部421は、下部電極420の上面のチップ結合部421に対応する部分に凹部が設けられている場合はその凹部の底面である。
【0062】
(5)マイクロLED集積装置の製造方法
以上のことを前提としてマイクロLED集積装置の製造方法について説明する。
【0063】
図7に示すように、インク吐出装置300の吐出ノズル308の下方に実装基板400を水平に配置する。この場合、インク吐出装置300を固定し、実装基板400を図示省略した搬送機構により水平面内で図7中矢印で示す方向に移動させるようにする。ピエゾアクチュエーター309を作動させることにより吐出ノズル308からインク200を実装基板400のチップ結合部421に吐出させる。必要に応じて、一つのチップ結合部421に複数回、インク200を吐出させてもよい。こうして形成された一滴のインク200には、少なくとも複数個の縦型マイクロLEDチップ40が含まれるようにする。一滴のインク200に含まれる縦型マイクロLEDチップ40の数は、インク200中の縦型マイクロLEDチップ40の濃度やインク200の吐出回数などによって調整することができる。この状態のインク200を図10に示す。この場合、一滴のインク200の体積は例えば1〜10ピコリットルである。縦型マイクロLEDチップ40の体積は一般に0.001〜0.5ピコリットルである。例えば、縦型マイクロLEDチップ40が直径10μmの円形の形状を有し、厚さが5μmであるとすると、体積は約0.4ピコリットルである。また、縦型マイクロLEDチップ40が直径1μmの円形の形状を有し、厚さが3μmであるとすると、体積は約0.0024ピコリットルである。
【0064】
次に、図7中矢印で示すように、実装基板400を図示省略した搬送機構により所定距離移動させ、インク200が吐出されたチップ結合部421を磁場印加装置311の上方に位置させた後、磁場印加装置311により磁場を印加することにより、インク200に含まれる複数の縦型マイクロLEDチップ40のp側電極17に含まれるNi膜を磁化させる。このため、各縦型マイクロLEDチップ40はインク200中を磁力により下方に引き寄せられ、最終的に各縦型マイクロLEDチップ40はp側電極17側が下になるようにしてチップ結合部421に接触する。この状態を図11に示す。この状態では、縦型マイクロLEDチップ40はチップ結合部421にランダム配置で接触している。振動や擾乱などの外的要因などにより縦型マイクロLEDチップ40が倒れたり位置がずれたりするのを防止するため、磁場印加装置310による磁場の印加は、好適には、インク200を吐出させる前あるいは吐出させた時点あるいはその時点からインク200の液体が蒸発する前、例えば60秒以内に行う。
【0065】
次に、磁力により各縦型マイクロLEDチップ40をチップ結合部421に接触させたまま、ランプなどにより加熱を行うことによりインク200の溶媒を蒸発させ、続いてランプやレーザーなどにより加熱を行うことにより各縦型マイクロLEDチップ40のSn膜16を溶融させる。その後、溶融Snが冷却することにより各縦型マイクロLEDチップ40のp側電極17が下部電極420のチップ結合部421に電気的および機械的に結合する。
【0066】
同様にして、下部電極420の各チップ結合部421に縦型マイクロLEDチップ40のp側電極17を電気的および機械的に結合させる。この状態を図12AおよびBに示す。ここで、図12Aは平面図、図12Bは断面図である。図12Aに示すように、各チップ結合部421において、縦型マイクロLEDチップ40はランダムに配置している。
【0067】
次に、図13Aに示すように、縦型マイクロLEDチップ40がチップ結合部421に結合した実装基板50の全面に絶縁膜422を表面がほぼ平坦となるように形成した後、この絶縁膜422をRIE法などによりエッチングすることによりn側電極21を露出させる。
【0068】
次に、図13Bに示すように、後述の上部電極幹線部431と複数の上部電極支線部432との間にそれぞれ接続される薄膜ヒューズ433を形成する。薄膜ヒューズ433は、例えば、絶縁膜422上にフォトリソグラフィーにより薄膜ヒューズ433に対応する所定形状の開口を有するフォトレジストを形成し、その上から真空蒸着により金属膜を形成した後、フォトレジストをリフトオフすることによって形成することができる。薄膜ヒューズ433は、融点が150℃以上350℃以下の金属薄膜からなる。金属薄膜は、具体的には、例えばIn、Snなどの単体金属またはInSn、InSnAg、AgSn、AuSnなどの合金からなる。
【0069】
次に、図13Cに示すように、絶縁膜422上に下部電極420と直交する方向に互いに平行に延在する複数の上部電極幹線部431を薄膜ヒューズ433の一端部と重なるように形成する。
【0070】
次に、図13Dに示すように、絶縁膜422上に、縦型マイクロLEDチップ40のn側電極21と上部電極幹線部431とを薄膜ヒューズ433を介して接続する上部電極支線部432を各チップ結合部421当たり複数本(この例では5本)互いに平行に形成する。上部電極支線部432はITOなどの透明電極材料からなる。これらの上部電極支線部432は薄膜ヒューズ433の他端部と重なるように、かつ各チップ結合部421のほぼ全体をカバーするように形成する。薄膜ヒューズ433を介して互いに接続された上部電極幹線部431と上部電極支線部432とにより上部電極430が構成される。この状態の平面図を図14に示す。図14に示すように、各チップ結合部421にランダムに配置された縦型マイクロLEDチップ40の上を走るように上部電極支線部432が形成されている。上部電極支線部432は、その一部が縦型マイクロLEDチップ40のn側電極21と接触しているものもあれば、ほとんど縦型マイクロLEDチップ40のn側電極21と接触していないものもあるが、少なくとも一つの上部電極支線部432は、その一部が少なくとも一つ、典型的には複数の縦型マイクロLEDチップ40のn側電極21と接触している。図14において、電気的にオン/オフ制御が可能な一つの回路ユニットがカバーする領域を一点鎖線で示す。一つの縦型マイクロLEDチップ40の発光面積は、典型的には、一つの回路ユニットがカバーする領域の面積の1000分の1以下に選ばれる。図15Aに、薄膜ヒューズ433およびその近傍の上部電極幹線部431および上部電極支線部432を拡大して示す。図15Aに示す薄膜ヒューズ433は長方形の形状を有するが、薄膜ヒューズ433は図15Bに示すような中央部がくびれた平面形状であってもよい。図15AおよびBに示すように、薄膜ヒューズ433の最も狭い部分の幅をWmin 、厚さをTmin とすると、Wmin 、Tmin はWmin ×Tmin <0.5μm2 が成立するように選ばれている。
【0071】
この後、上述のようにして製造されたマイクロLED集積装置の検査を行う。具体的には、上部電極430と下部電極420との間に下部電極420が上部電極430より高電位となるように電圧を印加することにより各縦型マイクロLEDチップ40に例えば1μA程度の電流を流して各縦型マイクロLEDチップ40の発光を画像解析し、縦型マイクロLEDチップ40のリーク不良に起因して光量不良のある上部電極支線部432を特定する。図16AおよびBにおいて、光量不良のある上部電極支線部432を符号432A、432Bで示す。
【0072】
次に、上述のようにして特定された、光量不良のある上部電極支線部432A、432Bと薄膜ヒューズ433を介して接続されたこれらの上部電極支線部432A、432Bと接続された上部電極幹線部431との間に縦型マイクロLEDチップ40の閾値電圧以下の電圧(例えば3V程度)を印加する。その結果、上部電極支線部432A、432Bと薄膜ヒューズ433を介してこれらの上部電極支線部432A、432Bと接続された上部電極幹線部431との間に大量の電流が流れることで薄膜ヒューズ433が融けて切断される。図17AおよびBは、上部電極幹線部431と上部電極支線部432A、432Bとの間の薄膜ヒューズ433が切断された状態を示す。
【0073】
この後、次のようにして再検査を行う。すなわち、上部電極430と下部電極420との間に例えば1μA程度の電流を流して各縦型マイクロLEDチップ40の発光を画像解析する。その結果、光量不良のある上部電極支線部432が見つからなかった場合に修理を終了する。こうしてマイクロLED集積装置の修理を行うことができる。
【0074】
(6)マイクロLED集積装置の構造
図13Dおよび図14に示すように、このマイクロLED集積装置は、一方の主面に下部電極420を有する実装基板400と、下部電極420上に設けられたチップ結合部421と、チップ結合部421にランダム配置で結合した、上下にn側電極21およびp側電極17を有し、p側電極17側がn側電極21側に比べてより強く磁場に引き寄せられるように構成された複数の縦型マイクロLEDチップ40と、これらの縦型マイクロLEDチップ40の上層の、上部電極幹線部431と薄膜ヒューズ433を介してこの上部電極幹線部431と接続された複数の上部電極支線部432とを有する上部電極430とを有する。そして、縦型マイクロLEDチップ40は、p側電極17側をチップ結合部421に向けてこのチップ結合部421に結合し、n側電極21と上部電極430とが互いに電気的に接続され、少なくとも一つの縦型マイクロLEDチップ40のn側電極21と上部電極430の上部電極支線部432とが互いに電気的に接続されている。
【0075】
以上のように、この第1の実施の形態によれば、縦型マイクロLEDチップ40のp側電極17に軟磁性体であるNi膜を含ませることにより、縦型マイクロLEDチップ40のp側電極17側がn側電極21側に比べてより強く磁場に引き寄せられるように構成するとともに、実装基板400の下部電極420にチップ結合部421を例えば二次元アレイ状に複数設け、複数、通常は多数の縦型マイクロLEDチップ40を含有するインク200をインク吐出装置300のインクジェットプリントヘッド301の吐出ノズル308から実装基板400の下部電極420のチップ結合部421に吐出し、縦型マイクロLEDチップ40のp側電極17側を磁力により引き付けて下部電極420のチップ結合部421に接触させ、その後Sn膜16を溶融固化させることにより縦型マイクロLEDチップ40と下部電極420のチップ結合部421とを電気的および機械的に結合させることで、縦型マイクロLEDチップ40の集積度によらず、マイクロLED集積装置、例えばマイクロLEDディスプレイ、マイクロLEDバックライト、マイクロLED照明装置などを低コストで容易に実現することができる。また、縦型マイクロLEDチップ40はチップ結合部421上にランダム配置で結合させれば足りるため、縦型マイクロLEDチップ40の高精度の位置制御が不要であり、マイクロLED集積装置の製造が容易となる。また、各チップ結合部421には複数の縦型マイクロLEDチップ40がランダム配置で結合し、各チップ結合部421の全域をカバーするように複数本の上部電極支線部432が延びているので、各回路ユニットにおいて下部電極420と上部電極430との間に一つの縦型マイクロLEDチップ40も接続されていない事態が発生するのを防止することができ、ひいてはマイクロLED集積装置の不良の発生を防止することができる。また、実装基板400上に縦型マイクロLEDチップ40の不良が生じた場合でも、その不良の縦型マイクロLEDチップ40が接続された上部電極支線部432と上部電極幹線部431との間の薄膜ヒューズ433を切断することにより容易に修理することができる。
【0076】
〈第2の実施の形態〉
[マイクロLED集積装置の製造方法]
第2の実施の形態においては、図18に示すように、容器100中において縦型マイクロLEDチップ40に加えてツェナーダイオード60を液体50に分散させてインク200を作製する。ツェナーダイオード60の一例を図19に示す。図19に示すように、ツェナーダイオード60はp型層61とn型層62とからなるpn接合を有し、p型層61上にp側電極63が形成され、n型層62上にn側電極64が形成され、n側電極64上にSn膜65が形成されている。この場合、n側電極64にNi膜が含まれており、従ってツェナーダイオード60はn側電極64側がp側電極63側に比べてより強く磁場に引き寄せられるように構成されている。インク200には必要に応じて縦型マイクロLEDチップ40およびツェナーダイオード60に加えてフィラーや界面活性剤などを含有させる。
【0077】
このインク200を第1の実施の形態と同様に、実装基板400の下部電極420のチップ結合部421に吐出する。チップ結合部421にインク200が吐出された状態を図20に示す。図20には、互いに隣接する二つのチップ結合部421に吐出されたインク200の一方には縦型マイクロLEDチップ40しか含まれておらず、他方には縦型マイクロLEDチップ40およびツェナーダイオード60が含まれている場合が示されている。この後、図21に示すように、第1の実施の形態と同様に、磁場印加装置311により磁場を印加することにより、インク200に含まれる複数の縦型マイクロLEDチップ40のp側電極17に含まれるNi膜を磁化させ、各縦型マイクロLEDチップ40をp側電極17側が下になるようにしてチップ結合部421に接触させるとともに、インク200に含まれる複数のツェナーダイオード60のn側電極64に含まれるNi膜を磁化させ、各ツェナーダイオード60をn側電極64側が下になるようにしてチップ結合部421に接触させる。
【0078】
この後、第1の実施の形態と同様に、チップ結合部421に吐出されたインク200を乾燥させ、さらに各縦型マイクロLEDチップ40のSn膜16およびツェナーダイオード60のSn膜65を溶融固化させることにより、これらの縦型マイクロLEDチップ40およびツェナーダイオード60をチップ結合部421に電気的および機械的に結合させる。
【0079】
この後、第1の実施の形態と同様に工程を進め、図22に示すように、マイクロLED集積装置を製造する。図22に示す状態の平面図は図16Aと同様である。
【0080】
[マイクロLED集積装置]
図22に示すように、このマイクロLED集積装置は、下部電極420と上部電極430との間に縦型マイクロLEDチップ40が接続されていることに加えて、ツェナーダイオード60が逆バイアスが印加されるように接続されていることが第1の実施の形態と異なることを除いて、第1の実施の形態によるマイクロLED集積装置と同様な構成を有する。
【0081】
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、下部電極420と上部電極430との間にツェナーダイオード60が逆バイアスが印加されるように接続されていることにより、下部電極420と上部電極430との間にサージ電圧などが印加されても、このツェナーダイオード60に電流を逃がすことができるため、マイクロLED集積装置の故障を防止することができるという利点を得ることができる。
【0082】
〈第3の実施の形態〉
[マイクロLED集積装置の製造方法]
第3の実施の形態においては、図23に示すように、容器100中において縦型マイクロLEDチップ40に加えてツェナーダイオード60およびAgナノ粒子70を液体50に分散させてインク200を作製する。ただし、縦型マイクロLEDチップ40としてはSn膜16を形成していないものを用い、ツェナーダイオード60としてはSn膜65を形成していないものを用いる。インク200には必要に応じて縦型マイクロLEDチップ40、ツェナーダイオード60およびAgナノ粒子70に加えてフィラーや界面活性剤などを含有させる。
【0083】
このインク200を第1の実施の形態と同様に、実装基板400の下部電極420のチップ結合部421に吐出する。チップ結合部421にインク200が吐出された状態を図24に示す。この後、図25に示すように、第1の実施の形態と同様に、磁場印加装置311により磁場を印加することにより、インク200に含まれる複数の縦型マイクロLEDチップ40のp側電極17に含まれるNi膜を磁化させ、各縦型マイクロLEDチップ40をp側電極17側が下になるようにしてチップ結合部421に接触させるとともに、インク200に含まれる複数のツェナーダイオード60のn側電極64に含まれるNi膜を磁化させ、各ツェナーダイオード60をn側電極64側が下になるようにしてチップ結合部421に接触させる。チップ結合部421にインク200が吐出された後、磁場を印加する前後に、インク200中のAgナノ粒子70はチップ結合部421に沈降する。縦型マイクロLEDチップ40およびツェナーダイオード60はこうして沈降したAgナノ粒子70を介してチップ結合部421に接触する。
【0084】
この後、第1の実施の形態と同様に、チップ結合部421に吐出されたインク200を乾燥させ、さらにAgナノ粒子70を溶融固化させることにより、縦型マイクロLEDチップ40およびツェナーダイオード60をチップ結合部421に電気的および機械的に結合させる。
【0085】
この後、第1の実施の形態と同様に工程を進め、図22に示すと同様に、マイクロLED集積装置を製造する。
【0086】
[マイクロLED集積装置]
このマイクロLED集積装置は、縦型マイクロLEDチップ40およびツェナーダイオード60がAgナノ粒子70の溶融固化によりチップ結合部421に電気的および機械的に結合されていることが第1の実施の形態と異なることを除いて第1の実施の形態によるマイクロLED集積装置と同様な構成を有する。
【0087】
この第3の実施の形態によれば、第1および第2の実施の形態と同様な利点を加えて、縦型マイクロLEDチップ40のp側電極17上にSn膜16を形成したり、ツェナーダイオード60のn側電極64上にSn膜65を形成したり、実装基板400の下部電極420のチップ結合部421に予め低融点金属を形成したりしないでも、縦型マイクロLEDチップ40およびツェナーダイオード60をAgナノ粒子70の溶融固化によりチップ結合部421に電気的および機械的に結合されることができるという利点を得ることができる。
【0088】
〈第4の実施の形態〉
[マイクロLED集積装置の製造方法]
第4の実施の形態においては、図26に示すように、容器100中において縦型マイクロLEDチップ40に加えてAgナノ粒子70を液体50に分散させてインク200を作製する。ただし、縦型マイクロLEDチップ40としてはSn膜16を形成していないものを用いる。インク200には必要に応じて縦型マイクロLEDチップ40およびAgナノ粒子70に加えてフィラーや界面活性剤などを含有させる。
【0089】
このインク200を第1の実施の形態と同様に、実装基板400の下部電極420のチップ結合部421に吐出する。チップ結合部421にインク200が吐出された状態を図27に示す。この後、図28に示すように、第1の実施の形態と同様に、磁場印加装置311により磁場を印加することにより、インク200に含まれる複数の縦型マイクロLEDチップ40のp側電極17に含まれるNi膜を磁化させ、各縦型マイクロLEDチップ40をp側電極17側が下になるようにしてチップ結合部421に接触させる。チップ結合部421にインク200が吐出された後、磁場を印加する前後に、インク200中のAgナノ粒子70はチップ結合部421に沈降する。縦型マイクロLEDチップ40はこうして沈降したAgナノ粒子70を介してチップ結合部421に接触する。
【0090】
この後、第1の実施の形態と同様に、チップ結合部421に吐出されたインク200を乾燥させ、さらにAgナノ粒子70を溶融固化させることにより、縦型マイクロLEDチップ40をチップ結合部421に電気的および機械的に結合させる。
【0091】
この後、第1の実施の形態と同様に工程を進め、図22に示すと同様に、マイクロLED集積装置を製造する。
【0092】
[マイクロLED集積装置]
このマイクロLED集積装置は、縦型マイクロLEDチップ40がAgナノ粒子70の溶融固化によりチップ結合部421に電気的および機械的に結合されていることが第1の実施の形態と異なることを除いて第1の実施の形態によるマイクロLED集積装置と同様な構成を有する。
【0093】
この第4の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を加えて、縦型マイクロLEDチップ40のp側電極17上にSn膜16を形成したり、実装基板400の下部電極420のチップ結合部421に予め低融点金属を形成したりしないでも、縦型マイクロLEDチップ40をAgナノ粒子70の溶融固化によりチップ結合部421に電気的および機械的に結合されることができるという利点を得ることができる。
【0094】
〈第5の実施の形態〉
[マイクロLED集積装置の製造方法]
第1の実施の形態においては、図7に示すインク吐出装置300および磁場印加装置311を用いてインク200の吐出およびその後の実装基板400への縦型マイクロLEDチップ40の実装を行っているが、この第5の実施の形態においては、図29に示すようなインク吐出装置300、磁場印加装置311、312、313および加熱装置321、322を用いてインク200の吐出およびその後の実装基板400への縦型マイクロLEDチップ40の実装を行うことが第1の実施の形態と異なる。
【0095】
図29に示すように、磁場印加装置311、312、313はインクジェットプリントヘッド301から水平方向に順に遠くなる位置に設けられている。磁場印加装置312の上方にはランプなどを用いた加熱装置321が設けられている。この加熱装置321は、インク200の溶媒を蒸発させるために用いられる。磁場印加装置313の上方にはランプやレーザーなどを用いた加熱装置322が設けられている。この加熱装置322は、縦型マイクロLEDチップ40のSn膜16を溶融させるためのものである。これらの加熱装置321、322は、磁場印加装置311、312、313とこれらの加熱装置321、322との間に実装基板400が挟まれる高さ位置に設けられる。実装基板400はインクジェットプリントヘッド301と磁場印加装置311、312、313との間の高さの位置を移動するようになっている。
【0096】
第5の実施の形態においては、第1の実施の形態と同様に、吐出ノズル308から実装基板400の下部電極420のチップ結合部421にインク200を吐出させ、吐出させる前あるいは吐出した時点あるいはその時点から例えば60秒以内に磁場印加装置311により磁場を印加して磁力により各縦型マイクロLEDチップ40をチップ結合部421に接触させたまま、実装基板400をさらに移動させて各縦型マイクロLEDチップ40が接触したチップ結合部421が加熱装置321の直下に来た時点でランプなどにより加熱を行うことによりインク200の液体を蒸発させる。このように縦型マイクロLEDチップ40が接触したチップ結合部421が加熱装置321の直下に来た状態では、磁場印加装置312により磁場を印加することにより縦型マイクロLEDチップ40のチップ結合部421への接触状態を維持する。続いて実装基板400をさらに移動させて各縦型マイクロLEDチップ40が接触したチップ結合部421が加熱装置322の直下に来た時点でランプやレーザーなどにより加熱を行うことにより各縦型マイクロLEDチップ40のSn膜16を溶融させる。その後、さらに実装基板400をさらに移動させる間に溶融Snが冷却されて固化することにより各縦型マイクロLEDチップ40のp側電極17が下部電極420に電気的および機械的に結合する。
【0097】
同様にして、下部電極420の各チップ結合部421に縦型マイクロLEDチップ40のp側電極17を下部電極420に電気的および機械的に結合させる。
【0098】
その他のことは第1の実施の形態と同様である。
【0099】
この第5の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、実装基板400の下部電極420のチップ結合部421へのインク200の吐出から縦型マイクロLEDチップ40をチップ結合部421に電気的および機械的に結合するまでの工程を連続的に容易に行うことができるという利点を得ることができる。
【0100】
〈第6の実施の形態〉
[マイクロLED集積装置の製造方法]
第6の実施の形態においては、縦型マイクロLEDチップ40として図30に示すものを用いることが第1の実施の形態と異なる。図30に示すように、この縦型マイクロLEDチップ40においては、p側電極17がITO膜により構成されていること、n側電極21がn+ 型GaN層12上に全面電極として形成されていること、n側電極21がAl/Ni/Au積層膜により形成されており、軟磁性体であるNi膜を含むこと、このn側電極21上にSn膜16が形成されていることが、第1の実施の形態で用いた縦型マイクロLEDチップ40と異なる。この縦型マイクロLEDチップ40は、n側電極側21がp側電極17側に比べてより強く磁場に引き寄せられるように構成されたものである。
【0101】
この縦型マイクロLEDチップ40の製造方法は次の通りである。
【0102】
すなわち、図31Aに示すように、第1の実施の形態と同様に、まず、サファイア基板10上に、n型GaN層11、n+ 型GaN層12、発光層13およびp型GaN層14を順次エピタキシャル成長させる。
【0103】
次に、図31Bに示すように、p型GaN層14の全面に例えば真空蒸着法によりp側電極形成用のITO膜23を形成する。
【0104】
次に、図31Cに示すように、ITO膜23上にワックスなどの接着剤24を塗布し、この接着剤24にフィルムやSi基板などの支持基板19を形成する。
【0105】
次に、図32Aに示すように、サファイア基板10の裏面側からレーザービームを照射することによりn型GaN層11とサファイア基板10との界面で剥離を生じさせ、n型GaN層11からサファイア基板10を分離する。
【0106】
次に、図32Bに示すように、例えばCMP法により研磨を行ったり、RIE法によりエッチングを行ったりすることによりn型GaN層11を除去してn+ 型GaN層12の表面を露出させる。
【0107】
次に、図32Cに示すように、n+ 型GaN層12の表面のn側電極形成領域に対応する部分に開口20aを有するレジストパターン20をリソグラフィーにより形成した後、基板全面に例えば真空蒸着法によりn側電極形成用の金属膜15およびSn膜16を順次形成する。金属膜15としては、第1のタイプの縦型マイクロLEDチップ40と同様に、例えばAl/Ni/Au構造の積層膜を用いる。
【0108】
次に、図33Aに示すように、レジストパターン20をその上に形成された積層膜15およびSn膜16とともに除去する(リフトオフ)。これによって、n+ 型GaN層13にコンタクトしたn側電極21およびその上のSn膜16が形成される。次に、n側電極21をn+ 型GaN層13にオーミック接触させるためのアロイ処理を行う。
【0109】
次に、図33Bに示すように、このn側電極21をマスクとして例えばRIE法により接着剤24が露出するまでエッチングを行う。この際、ITO膜23がn側電極21と同様な形状にパターニングされ、p側電極17が形成される。
【0110】
次に、図34Aに示すように、支持基板19上に接着剤24、p側電極17、p型GaN層14、発光層13、n+ 型GaN層12、n側電極21およびSn膜16が形成されたものを容器30内に入れられた溶剤31に漬けることにより接着剤24を溶かす。こうして、図34Bに示すように、縦型マイクロLEDチップ40が得られる。
【0111】
こうして得られた縦型マイクロLEDチップ40を純水でリンスした後、乾燥させる。
【0112】
以上により、図30に示すように、n側電極21側がp側電極17側に比べてより強く磁場に引き寄せられるように構成された縦型マイクロLEDチップ40が製造される。この縦型マイクロLEDチップ40の平面形状は図5A、BおよびCに示すものと同様である。
【0113】
この第6の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0114】
〈第7の実施の形態〉
[カラーマイクロLEDディスプレイ]
第7の実施の形態においては、パッシブマトリクス駆動方式のカラーマイクロLEDディスプレイについて説明する。
【0115】
図35はこのカラーマイクロLEDディスプレイの実装基板400上の下部電極420を示す。図35に示すように、行方向に下部電極420が互いに平行に複数設けられている。各下部電極420に沿ってRGBの各発光領域が互いに隣接して配置されて構成されるRGB−1画素単位が配列しており、実装基板400全体として画素が二次元マトリクス状に配列している。各画素においては、下部電極420上に三つのチップ結合部421A、421B、421Cが形成されており、例えば、それぞれB、R、Gの発光領域になる。
【0116】
図36は、実装基板400上に第1の実施の形態と同様にしてRGBの各発光用の縦型マイクロLEDチップを実装し、上部電極430を形成した状態を示す。具体的には、チップ結合部421Aには青色発光の縦型マイクロLEDチップ510がランダム配置で複数結合し、チップ結合部421Bには赤色発光の縦型マイクロLEDチップ520がランダム配置で複数結合し、チップ結合部421Cには緑色発光の縦型マイクロLEDチップ530がランダム配置で複数結合している。列方向の各チップ結合部421Aに沿って上部電極430が設けられている。各上部電極430の上部電極幹線部431に薄膜ヒューズ433を介して接続された上部電極支線部432は、チップ結合部421A上においては縦型マイクロLEDチップ510のn側電極と接続され、チップ結合部421B上においては縦型マイクロLEDチップ520のn側電極と接続され、チップ結合部421C上においては縦型マイクロLEDチップ530のn側電極と接続されている。各画素の発光領域の選択は下部電極420および上部電極430の選択により行われる。図36に1回路ユニットを示す。1回路ユニット中の縦型マイクロLEDチップの数は典型的には10個以上である。
【0117】
青色発光の縦型マイクロLEDチップ510および緑色発光の縦型マイクロLEDチップ530は発光層13の組成が互いに異なるが、第1の実施の形態による縦型マイクロLEDチップ40と同様な構造を有する。また、赤色発光の縦型マイクロLEDチップ520はAlGaInP系半導体を用いたものであり、縦型マイクロLEDチップ40のn+ 型GaN層12の代わりにn+ 型AlGaInP層、発光層13の代わりにInx Ga1-x P/Iny Ga1-y P MQW構造の発光層、p型GaN層14の代わりにp型AlGaInP層を用いたものであり、p型AlGaInP層上にp側電極が形成され、n+ 型AlGaInP層上にn側電極が形成されている。そのp側電極には、p側電極17と同様に、軟磁性体としてNi膜などを含む。赤色発光のAlGaInP系半導体縦型マイクロLEDチップの製造方法としては幾つかの方法が知られており、工程の詳細は省略するが、基板にはGaAs基板が使用され、例えば、GaAs基板上にまず犠牲層として例えばAlAs層を形成してからその上にAlGaInP系半導体層をエピタキシャル成長させ、電極形成や素子分離工程等を経た後、AlAs層をフッ酸系エッチャントによりウェットエッチングしてGaAs基板を分離することにより製造することができる。
【0118】
青色発光の縦型マイクロLEDチップ510、赤色発光の縦型マイクロLEDチップ520および緑色発光の縦型マイクロLEDチップ530をそれぞれ液体に分散させることによりインクを作製することができる。インク吐出装置としては、例えば、図7に示すインク吐出装置300のインクジェットプリントヘッド301に互いに隣接して三つのインク室を設け、3種類のインクをこれらのインク室にそれぞれ充填するとともに、インクジェットプリントヘッドにこれらの3種類のインクを互いに独立に吐出することができる三つの吐出ノズルを設け、ピエゾアクチュエーターを作動させることにより各吐出ノズルからこれらの3種類のインクを吐出する。
【0119】
この第7の実施の形態によれば、実装基板400上にRGBの各発光用の縦型マイクロLEDチップを容易にしかも極めて短時間に能率的に実装することができ、不良の縦型マイクロLEDチップの影響も容易に除去することができることにより、高性能のパッシブ駆動方式のカラーマイクロLEDディスプレイを低コストで実現することができる。また、それぞれB、R、Gの発光領域になるチップ結合部421A、421B、421Cにはそれぞれ複数の縦型マイクロLEDチップが結合していることにより、縦型マイクロLEDチップのサイズが小さくても輝度を確保することができるだけでなく、個々の縦型マイクロLEDチップに発光波長の差があっても全体として発光波長が平均化されるため、発光波長の許容範囲にある縦型マイクロLEDチップはそのまま使用することができ、ひいてはカラーマイクロLEDディスプレイの製造コストの低減を図ることができる。同様に、個々の縦型マイクロLEDチップに発光強度の差があっても全体として発光強度が平均化されるため、このこともカラーマイクロLEDディスプレイの製造コストの低減に繋がる。また、画素サイズなどの仕様の変更があっても、縦型マイクロLEDチップのサイズを変えないでも、チップ結合部421A、421B、421Cに結合させる縦型マイクロLEDチップの数を増減させることにより容易に対処することができる。
【0120】
〈第8の実施の形態〉
[カラーマイクロLEDディスプレイ]
第8の実施の形態においては、アクティブマトリクス駆動方式のカラーマイクロLEDディスプレイについて説明する。
【0121】
図37はこのカラーマイクロLEDディスプレイの実装基板400上の下部電極配線を示す。下部電極配線のうち下部電極420は、第7の実施の形態と同様に、行方向に互いに平行に複数設けられている。そして、各下部電極420に沿ってRGBの各発光領域が互いに隣接して配置されて構成されるRGB−1画素単位が配列しており、実装基板400全体として画素が二次元マトリクス状に配列している。各画素においては、下部電極420上に三つのチップ結合部421A、421B、421Cが形成されており、例えば、それぞれB、R、Gの発光領域になる。下部電極配線としては、列方向に延在した電源線610およびデータ線620に加え、行方向に延在した走査線630も設けられている。各データ線620と各画素の各発光領域との間にはアクティブ駆動回路が設けられ、このアクティブ駆動回路により各画素の各発光領域を選択することができるようになっている。アクティブ駆動回路はトランジスタT1、T2およびコンデンサCからなる。トランジスタT1、T2は一般的には多結晶Si薄膜などの半導体薄膜を用いた薄膜トランジスタにより構成され、コンデンサCは下部電極、絶縁膜および上部電極を積層することにより構成される。トランジスタT1のソースはデータ線620に接続され、ドレインはトランジスタT2のゲートに接続され、ゲートは走査線630に接続されている。トランジスタT2のソースは電源線610に接続され、ドレインは下部電極420に接続されている。コンデンサCはトランジスタT1のドレインと電源線610との間に接続されている。走査線630とデータ線620との選択により各画素の各発光領域を選択する。
【0122】
図38は、実装基板400上に第7の実施の形態と同様にして青色発光の縦型マイクロLEDチップ510、赤色発光の縦型マイクロLEDチップ520および緑色発光の縦型マイクロLEDチップ530を実装し、上部電極430を形成した状態を示す。上部電極430は各上部電極幹線部431を接続する共通電極部433を有する。図38に1回路ユニットを示す。1回路ユニット中の縦型マイクロLEDチップの数は典型的には3個以上である。
【0123】
青色発光の縦型マイクロLEDチップ510、赤色発光の縦型マイクロLEDチップ520および緑色発光の縦型マイクロLEDチップ530は第7の実施の形態で用いたものと同様である。3種類のインクやインク吐出装置も第7の実施の形態と同様である。
【0124】
この第8の実施の形態によれば、実装基板400上にRGBの各発光用の縦型マイクロLEDチップを容易にしかも極めて短時間に能率的に実装することができ、不良の縦型マイクロLEDチップの影響も容易に除去することができることにより、高性能のアクティブ駆動方式のカラーマイクロLEDディスプレイを低コストで実現することができる。加えて、第7の実施の形態と同様な利点を得ることもできる。
【0125】
〈第9の実施の形態〉
第1の実施の形態においては、上部電極430の上部電極幹線部431と複数の上部電極支線部432との間に薄膜ヒューズ433が接続されたマイクロLED集積装置について説明したが、第9の実施の形態においては、下部電極420の下部電極幹線部と複数の下部電極支線部との間に薄膜ヒューズが接続されたマイクロLED集積装置について説明する。
【0126】
(1)実装基板
図39AおよびBはこのマイクロLED集積装置の製造に用いられる実装基板400を示す。ここで、図39Aは平面図、図39Bは下部電極支線部とその近傍の下部電極幹線部とを横断する断面図である。図39AおよびBに示すように、基板410の一方の主面に下部電極420が設けられている。この場合、下部電極420は、一方向に延在する幅広の下部電極幹線部4201と、この下部電極幹線部4201からこの下部電極幹線部4201と直交する方向に分岐した、この下部電極幹線部4201より幅狭の複数の下部電極幹線部4202と、この下部電極幹線部4202と近接して設けられ、この下部電極幹線部4202と直交する方向、すなわち下部電極幹線部4201と平行な方向に延在する複数の下部電極支線部4203とからなる。下部電極幹線部4202とこの下部電極幹線部4202に近接する複数の下部電極支線部4203との間に薄膜ヒューズ4204が接続されている。下部電極支線部4203の上面によりチップ結合部421が構成されている。基板410の詳細や下部電極420の材料の詳細については第1の実施の形態と同様である。薄膜ヒューズ4204は第1の実施の形態における薄膜ヒューズ433と同様である。また、下部電極支線部4203の本数、幅、間隔などは第1の実施の形態における上部電極支線部432と同様である。
【0127】
(2)マイクロLED集積装置の製造方法
マイクロLED集積装置の製造に用いる縦型マイクロLEDチップ40およびインク吐出装置300は第1の実施の形態と同様である。
【0128】
第1の実施の形態と同様に、実装基板400の、下部電極支線部4203の上面により構成されるチップ結合部421にインク200を吐出し、こうしてインク200が吐出されたチップ結合部421を磁場印加装置311の上方に位置させた後、磁場印加装置311により磁場を印加することにより、各縦型マイクロLEDチップ40をp側電極17側が下になるようにしてチップ結合部421に接触させる。
【0129】
次に、第1の実施の形態と同様に、各縦型マイクロLEDチップ40のp側電極17を下部電極420のチップ結合部421に電気的および機械的に結合する。同様にして、下部電極420の各チップ結合部421に縦型マイクロLEDチップ40のp側電極17を電気的および機械的に結合させる。この状態を図40AおよびBに示す。ここで、図40Aは平面図、図40Bは断面図である。
【0130】
次に、図41AおよびBに示すように、縦型マイクロLEDチップ40がチップ結合部421に結合した実装基板400の全面に絶縁膜422を表面がほぼ平坦となるように形成した後、この絶縁膜422をRIE法などによりエッチングすることによりn側電極21を露出させる。
【0131】
次に、絶縁膜422上に、下部電極420の各下部電極幹線部4202に対応させて、この下部電極幹線部4202に平行な複数の上部電極幹線部431を形成する。この後、この上部電極幹線部431に一部重なって電気的に接続されるように幅広の単一の上部電極支線部432を形成する。上部電極支線部432はITOなどの透明電極材料からなる。この上部電極支線部432は、1本の下部電極幹線部4202に対して薄膜ヒューズ4204を介して接続された複数の下部電極支線部4203のほぼ全体をカバーするように形成する。
【0132】
この後、第1の実施の形態と同様に、上述のようにして製造されたマイクロLED集積装置の検査を行い、光量不良のある下部電極支線部4203が発見されたら、この光量不良のある下部電極支線部4203と薄膜ヒューズ4204を介して接続された下部電極幹線部4202との間に縦型マイクロLEDチップ40の閾値電圧以下の電圧(例えば3V程度)を印加する。その結果、下部電極支線部4203と薄膜ヒューズ4204を介してこの上部電極支線部4203と接続された上部電極幹線部4202との間に大量の電流が流れることで薄膜ヒューズ4204が融けて切断される。
【0133】
この後、第1の実施の形態と同様に再検査を行い、光量不良のある下部電極支線部4203が見つからなかった場合に修理を終了する。こうしてマイクロLED集積装置の修理を行うことができる。
【0134】
(3)マイクロLED集積装置の構造
図41AおよびBに示すように、このマイクロLED集積装置は、一方の主面に薄膜ヒューズ4204により互いに接続された下部電極幹線部4202と下部電極支線部4203とを含む下部電極420を有する実装基板400と、下部電極支線部4203の上面により構成されたチップ結合部421と、チップ結合部421にランダム配置で結合した、上下にn側電極21およびp側電極17を有し、p側電極17側がn側電極21側に比べてより強く磁場に引き寄せられるように構成された複数の縦型マイクロLEDチップ40と、これらの縦型マイクロLEDチップ40の上層の、上部電極幹線部431とこの上部電極幹線部431と接続された上部電極支線部432とを有する上部電極430とを有する。そして、縦型マイクロLEDチップ40は、p側電極17側をチップ結合部421に向けてこのチップ結合部421に結合し、n側電極21と上部電極430とが互いに電気的に接続され、少なくとも一つの縦型マイクロLEDチップ40のn側電極21と上部電極430の上部電極支線部432とが互いに電気的に接続されている。
【0135】
この第9の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0136】
〈第10の実施の形態〉
[極微細画素カラーマイクロLEDディスプレイの製造方法]
図42は、インク200の液滴が半球になると仮定した場合のインク200の吐出量と液滴の直径との関係を示す。例えば、図7あるいは図29に示すインク吐出装置のインクジェットプリントヘッド301の吐出ノズル308から吐出されるインク200の液滴の最小吐出量は10pl以上が一般的である。スーパーインクジェット技術を用いて可能となる吐出量1plであってもインク200の液滴は16μm程度に広がる。図43AおよびBはそれぞれ画素密度が458ppi、1000ppiの場合のRGB−1画素単位を示す。図43Bに示すように、画素密度が1000ppi(25μm□)の場合はインク200の液滴の広がりを5μmφ程度にする必要がある。そのためには、吐出量を0.03plまで抑えなければならない。しかし、インク200の吐出量をこのように極微小量に制御することは技術的難易度が高く、製造コストの増大を招くだけでなく、吐出ノズル308の目詰まりなどが起きやすい。そこで、この第10の実施の形態においては、このような問題を回避して極微細画素のカラーマイクロLEDディスプレイを製造する方法について説明する。
【0137】
図44AおよびBはこの極微細画素カラーマイクロLEDディスプレイの製造に用いられる実装基板400を示す。ここで、図44Aは平面図、図44Bは下部電極支線部とその近傍の下部電極幹線部とを横断する断面図である。図44AおよびBに示すように、基板410の一方の主面に下部電極420が画素領域を横断するように互いに平行に設けられている。各画素領域の縦方向および横方向の幅は例えば25μm程度、下部電極420の幅は例えば12μm程度である。基板410および下部電極420の詳細は第1の実施の形態と同様である。下部電極420の表面は親水性である。
【0138】
次に、図45AおよびBに示すように、実装基板400の全面に疎水性感光レジスト700を塗布する。ここで、図45Aは平面図、図45Bは断面図である。
【0139】
次に、従来公知のフォトリソグラフィー技術により疎水性感光レジスト700の露光および現像を行うことにより、図46AおよびBに示すように、各画素領域に互いに隣接する三つの開口801と、一つの画素内の開口801同士、さらには異なる画素の開口801を互いに連結する連結路802とを有する疎水性感光レジストレジストパターン800を形成する。ここで、図46Aは平面図、図46Bは断面図である。この場合、各開口801の内部に露出する下部電極420の上面がチップ結合部421を構成する。連結路802により互いに連結される一群の開口801の範囲は、供給されるインク200が各開口801に適切に分配されるように設計される。こうして、開口801の内部のチップ結合部421および連結路802の内部の基板410の表面は親水性、このチップ結合部421の周辺部は疎水性の状態が実現される。開口801、従ってチップ結合部421の幅は例えば5μmである。
【0140】
次に、図47AおよびBに示すように、第1の実施の形態と同様にして実装基板400上にインク200を吐出する。ここで、図47Aは平面図、図47Bは断面図である。この場合、一つのチップ結合部421は小さいため、インク200は、一群のチップ結合部421を含む広い領域に跨がるように吐出する。図47AおよびBにおいては、8個のチップ結合部421に跨がるようにインク200が吐出された状態が示されている。インク200の直径は例えば35μm程度、インク200の体積は例えば10pl程度である。インク200には青色発光または紫外発光の縦型マイクロLEDチップ40が含有されている。
【0141】
図47AおよびBに示すようにインク200が吐出されると、図47A内のチップ結合部421は全て、チップ結合部421と同様に親水性の連結路802により互いに連結されているため、図48A、BおよびCに示すように、インク200は連結路802を通って各チップ結合部421に行き渡るようになる。ここで、図48Aは平面図、図48B図48AのB−B線に沿っての断面図、図48C図48AのC−C線に沿っての断面図である。
【0142】
次に、第1の実施の形態と同様に、外部磁場の印加により、図49AおよびBに示すように、下部電極420の各チップ結合部421に縦型マイクロLEDチップ40のp側電極17を接触させる。図49AおよびBはそれぞれは図48BおよびCに対応する。次に、第1の実施の形態と同様に、下部電極420の各チップ結合部421に縦型マイクロLEDチップ40のp側電極17を電気的および機械的に結合する。
【0143】
この後、第1の実施の形態と同様に工程を進める。最終的には、図示および詳細は省略するが、縦型マイクロLEDチップ40が青色発光である場合には、各画素のRの発光領域における各チップ結合部421に結合した縦型マイクロLEDチップ40の上方およびGの発光領域における各チップ結合部421に結合した縦型マイクロLEDチップ40の上方にそれぞれ赤色蛍光体および緑色蛍光体を塗布することでRGBの発光を実現させ、縦型マイクロLEDチップ40が紫外発光である場合には、各画素のRの発光領域における各チップ結合部421に結合した縦型マイクロLEDチップ40の上方、Gの発光領域における各チップ結合部421に結合した縦型マイクロLEDチップ40の上方および各画素のBの発光領域における各チップ結合部421に結合した縦型マイクロLEDチップ40の上方にそれぞれ赤色蛍光体、緑色蛍光体および青色蛍光体を塗布することでRGBの発光を実現させる。以上により、目的とする極微細画素カラーマイクロLEDディスプレイを製造する。
【0144】
この第10の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて次のような利点を得ることができる。すなわち、インク200の吐出時に、開口801の内部のチップ結合部421および連結路802の内部の基板410の表面は親水性、このチップ結合部421の周辺部は疎水性としているため、チップ結合部421の大きさが小さくても、滴下するインク200の量を過度に少なくしなくても一群のチップ結合部421にインク200を容易に行き渡らせることができ、吐出ノズル308の製作の難易度を高めることもなく、吐出ノズル308の目詰まりなども起こさないで済む。このため、極微細画素カラーマイクロLEDディスプレイを容易にしかも低コストで製造することができる。
【0145】
〈第11の実施の形態〉
[極微細画素カラーマイクロLEDディスプレイの製造方法]
第10の実施の形態においてはインクジェット技術によりインク200をチップ結合部421に吐出しているが、第11の実施の形態においては、インクジェット技術を使用せずに極微細画素カラーマイクロLEDディスプレイを製造する方法について説明する。
【0146】
すなわち、まず、第10の実施の形態と同様に、実装基板400の全面に図45AおよびBに示すように疎水性感光レジスト700を塗布する。この後、従来公知のフォトリソグラフィー技術により疎水性感光レジスト700の露光および現像を行うことにより、図50AおよびBに示すように、各画素領域の中央に位置し、下部電極420の長手方向に細長い長方形状の開口801と、異なる画素の開口801を互いに連結する連結路802とを有する疎水性感光レジストレジストパターン800を形成する。ここで、図50Aは平面図、図50Bは断面図である。なお、開口801の形状は長方形以外の形状であってもよい。また、連結路802は省略可能であるが、連結路802により親水性領域が繋がっている方が、後述のように液体901が各開口801に溜まる量が均一化しやすい。
【0147】
次に、図51に示すように、疎水性感光レジストレジストパターン800が形成された実装基板400を容器900中に入れられた水などの液体50中にディッピング(浸漬)する。あるいは、図52に示すように、上方から実装基板400の表面にシャワー装置910により水などの液体50を液滴の形で浴びせる。実装基板400を容器900中の液体50から取り出した後、あるいは、実装基板400の表面に液体901を液滴の形で浴びせた後の実装基板400を図53AおよびBに示す。ここで、図53Aは平面図、図53Bは断面図である。図53AおよびBに示すように、液体50は、疎水性感光レジストレジストパターン800の上を避け、親水性である、開口801の内部のチップ結合部421および連結路802の内部の基板410の上に凝集し、特にチップ結合部421上では液滴状に凝集する。
【0148】
次に、図54に示すように、図53AおよびBに示す実装基板400を空気などの気体中に縦型マイクロLEDチップ40が分散する空間に入れる。こうして分散した縦型マイクロLEDチップ40の一部は実装基板400の各開口801内の液滴状の液体50に捕獲される。分散状態の縦型マイクロLEDチップ40の個数密度や実装基板400を晒す時間などにより、疎水性感光レジストレジストパターン800の各開口801内の液滴状の液体50に捕獲される縦型マイクロLEDチップ40の平均的な個数の調節を行う。必要に応じて、静電破壊対策のため、縦型マイクロLEDチップ40に加えて、この縦型マイクロLEDチップ40と逆極性のマイクロLEDチップまたはツェナーダイオードを例えば0.1%〜1%の割合で混合して分散させ、各開口801内の液滴状の液体50に捕獲させるようにする。こうして、図55AおよびBに示すように、縦型マイクロLEDチップ40あるいはさらに縦型マイクロLEDチップ40と逆極性のマイクロLEDチップまたはツェナーダイオードが各開口801内の液体50に捕獲される。
【0149】
次に、第1の実施の形態と同様に、外部磁場の印加により、図56に示すように、下部電極420の各チップ結合部421に縦型マイクロLEDチップ40のp側電極17を接触させる。次に、第1の実施の形態と同様に、下部電極420の各チップ結合部421に縦型マイクロLEDチップ40のp側電極17を電気的および機械的に結合する。
【0150】
この後、第10の実施の形態と同様に工程を進め、目的とする極微細画素カラーマイクロLEDディスプレイを製造する。
【0151】
第11の実施の形態によれば、第10の実施の形態とほぼ同様な利点を得ることができるほか、インクジェット技術を使わずに、極微細画素カラーマイクロLEDディスプレイを容易にしかも低コストで製造することができる。
【0152】
〈第12の実施の形態〉
[極微細画素カラーマイクロLEDディスプレイの製造方法]
第12の実施の形態においては、第11の実施の形態と同様に、インクジェット技術を使用せずに極微細画素カラーマイクロLEDディスプレイを製造する方法について説明する。
【0153】
すなわち、まず、第11の実施の形態と同様に、図50AおよびBに示すように、実装基板400上に疎水性感光レジストレジストパターン800を形成する。次に、図57に示すように、容器900中に水などの液体50に縦型マイクロLEDチップ40を分散させたインク200を入れ、疎水性感光レジストレジストパターン800が形成された実装基板400をこのインク200中にディッピング(浸漬)する。必要に応じて、静電破壊対策のため、インク200中に、縦型マイクロLEDチップ40に加えて、この縦型マイクロLEDチップ40と逆極性のマイクロLEDチップまたはツェナーダイオードを例えば0.1%〜1%の割合で混合して分散させる。あるいは、図58に示すように、上方から実装基板400の表面にシャワー装置910によりインク200を液滴の形で浴びせる。実装基板400を容器900中のインク200から取り出した後、あるいは、実装基板400の表面にインク200を液滴の形で浴びせた後の実装基板400は図55AおよびBに示すものと同じである。
【0154】
次に、第1の実施の形態と同様に、外部磁場の印加により、図56に示すと同様に、下部電極420の各チップ結合部421に縦型マイクロLEDチップ40のp側電極17を接触させる。次に、第1の実施の形態と同様に、下部電極420の各チップ結合部421に縦型マイクロLEDチップ40のp側電極17を電気的および機械的に結合する。
【0155】
この後、第10の実施の形態と同様に工程を進め、目的とする極微細画素カラーマイクロLEDディスプレイを製造する。
【0156】
第12の実施の形態によれば、第11の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0157】
以上、この発明の実施の形態について具体的に説明したが、この発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0158】
例えば、上述の実施の形態において挙げた数値、構成、形状、材料、方法などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構成、形状、材料、方法などを用いてもよい。
【0159】
例えば、上述の第7の実施の形態においては、青色発光の縦型マイクロLEDチップ510を分散させたインク、赤色発光の縦型マイクロLEDチップ520を分散させたインクおよび緑色発光の縦型マイクロLEDチップ530を分散させたインクを三つの吐出ノズルから同時に吐出する場合について説明したが、これらのインクを一種類ずつ分けて吐出してもよい。
【0160】
また、実施の形態として図示はしないが、三つのチップ結合部421A、421B、421C全てに例えば青色発光の縦型マイクロLEDチップ510を分散させ、上部電極形成、検査および修理後にチップ結合部421B、421C上にそれぞれ赤色蛍光体、緑色蛍光体を塗布してRGBの発光を実現させてもよいし、チップ結合部421A、421Bには青色発光の縦型マイクロLEDチップ510がランダム配置で複数結合し、チップ結合部421Cには緑色発光の縦型マイクロLEDチップ530がランダム配置で複数結合し、上部電極形成、検査および修理後にチップ結合部421B上に赤色蛍光体を塗布してRGBの発光を実現させてもよい。
【符号の説明】
【0161】
10…サファイア基板、11…n型GaN層、12…n+ 型GaN層、13…発光層、14…p型GaN層、16…Sn膜、17…p側電極、18…被覆材、19…支持基板、21…n側電極、40…縦型マイクロLEDチップ、200…インク、300…インク吐出装置、311〜313…磁場印加装置、400…実装基板、410…基板、420…下部電極、421…チップ結合部、430…上部電極、431…上部電極幹線部、432…上部電極支線部、433、4204…薄膜ヒューズ 4201、4202…下部電極幹線部、4203…下部電極支線部
【要約】
【課題】半導体発光素子チップ集積装置を低コストで製造可能で、半導体発光素子チップを基板上に実装した後、検査により半導体発光素子チップの不良が発見された場合、その修理を容易に行うことができる半導体発光素子チップ集積装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】上下にp側電極およびn側電極を有し、一方が他方より強く磁場に引き寄せられる縦型の複数の半導体発光素子チップ40を含有する液滴状のインクを、基板400上の下部電極420のチップ結合部421に供給し、磁場印加によりインク中の半導体発光素子チップ40を、一方の電極側をチップ結合部に向けてそこにランダム配置で結合し、半導体発光素子チップの上層として、薄膜ヒューズ433により互いに接続された幹線部431と複数の支線部432とを有する上部電極430を半導体発光素子チップのp側電極およびn側電極の他方と支線部とが電気的に接続されるように形成する。
【選択図】図14
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