特許第6886217号(P6886217)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6886217物品の原産資格情報を管理する方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6886217
(24)【登録日】2021年5月18日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】物品の原産資格情報を管理する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20210603BHJP
【FI】
   G06Q50/10
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-561942(P2020-561942)
(86)(22)【出願日】2019年8月9日
(86)【国際出願番号】JP2019031779
【審査請求日】2020年11月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518430041
【氏名又は名称】株式会社東京共同トレード・コンプライアンス
(74)【代理人】
【識別番号】100114797
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 竜男
(72)【発明者】
【氏名】内山 ▲隆▼太郎
【審査官】 大野 朋也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0138256(US,A1)
【文献】 韓国登録特許第10−0973462(KR,B1)
【文献】 特表2016−500867(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/042604(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータにより第1の部品と第2の部品を含む物品の原産資格を管理する方法であって、
前記コンピュータが、
前記第1の部品の原産資格についての第1の使用許可期限を受信し、
前記第2の部品の原産資格についての第2の使用許可期限を受信し、
前記物品の原産資格についての使用許可期限を受信し、
前記物品の原産資格についての使用許可期限と前記第1の使用許可期限及び前記第2の使用許可期限とをそれぞれ比較し、
前記物品の原産資格についての使用許可期限が前記第1の使用許可期限及び前記第2の使用許可期限のいずれよりも遅くないことを決定する、
原産資格管理方法。
【請求項2】
前記第2の部品が第3の部品と第4の部品を含み、
前記コンピュータが、
前記第3の部品の原産資格についての第3の使用許可期限を受信し、
前記第4の部品の原産資格についての第4の使用許可期限を受信し、
前記第2の使用許可期限と前記第3の使用許可期限及び前記第4の使用許可期限とをそれぞれ比較し、
前記第2の物品の原産資格についての使用許可期限が前記第3の使用許可期限及び前記第4の使用許可期限のいずれよりも遅くないことを決定する、
請求項1の原産資格管理方法。
【請求項3】
前記コンピュータが、
さらにユーザ希望使用許可期限を受信し、
前記ユーザ希望使用許可期限と前記物品の原産資格についての使用許可期限とを比較し、
前記ユーザ希望使用許可期限が前記物品の原産資格についての使用許可期限より遅い場合、
前記ユーザ希望使用許可期限と前記第1の使用許可期限とを比較し、
前記ユーザ希望使用許可期限と前記第2の使用許可期限とを比較し、
前記第1の使用許可期限及び前記第2の使用許可期限のうち前記ユーザ希望使用許可期限より早いもののすべてについて使用許可期限延長対象としてアラートを送信する、
請求項1の原産資格管理方法。
【請求項4】
前記コンピュータが、
さらにユーザ希望使用許可期限を受信し、
前記ユーザ希望使用許可期限と前記物品の原産資格についての使用許可期限とを比較し、
前記ユーザ希望使用許可期限が前記物品の原産資格についての使用許可期限より遅い場合、
前記ユーザ希望使用許可期限と前記第1の使用許可期限とを比較し、
前記ユーザ希望使用許可期限と前記第2の使用許可期限とを比較し、
さらに前記第1の使用許可期限及び前記第2の使用許可期限のうちいずれも前記ユーザ希望使用許可期限より早くない場合、前記ユーザ希望使用許可期限を前記物品の原産資格についての使用許可期限とする、
請求項1の原産資格管理方法。
【請求項5】
前記コンピュータが、
さらにユーザ希望使用許可期限を受信し、
前記ユーザ希望使用許可期限と前記物品の原産資格についての使用許可期限とを比較し、
前記ユーザ希望使用許可期限が前記物品の原産資格についての使用許可期限より遅い場合、
前記ユーザ希望使用許可期限と前記第1の使用許可期限とを比較し、
前記ユーザ希望使用許可期限と前記第2の使用許可期限とを比較し、
さらに前記第1の使用許可期限及び前記第2の使用許可期限のうちいずれも前記ユーザ希望使用許可期限より早くない場合、前記第1の使用許可期限及び前記第2の使用許可期限のうちいずれか遅くない方を前記物品の原産資格についての使用許可期限とする、
請求項1の原産資格管理方法。
【請求項6】
前記コンピュータが、
さらに、品目別規則を記憶するデータベースから、前記物品に対応する一つの品目別規則を抽出し、前記物品が前記一つの品目別規則を満たしていることを判定する、
請求項1の原産資格管理方法。
【請求項7】
前記物品が前記一つの品目別規則を満たしていることを判定することが、前記物品の材料費、利益、製造方法、材料リスト、部品リストのうち少なくとも1つを含む根拠情報が前記一つの品目別規則を満たしていることを判定することを含む、
請求項6の原産資格管理方法。
【請求項8】
前記根拠情報が前記一つの品目別規則を満たしていることを判定することが、
前記根拠情報の一部分が前記一つの品目別規則を満たしていることを判定することと、
前記根拠情報の他の部分が前記一つの品目別規則を満たしていることを受信することを含む、
請求項7の原産資格管理方法。
【請求項9】
前記根拠情報が特定のユーザによってのみアクセス可能である、
請求項7の原産資格管理方法。
【請求項10】
前記根拠情報が特定のユーザによってのみアクセス可能であるデータベースに記憶されている、
請求項9の原産資格管理方法。
【請求項11】
前記コンピュータが、
さらに、前記物品と同一の物品についての原産資格についての調査依頼を受信し、
前記物品の原産資格についての使用許可期限及び根拠情報を前記物品と同一の物品について再利用可能にする、
請求項7の原産資格管理方法。
【請求項12】
第1の部品と第2の部品を含む物品の原産資格をサーバにより管理するシステムであって、
前記物品の原産資格調査依頼を前記サーバに送信する輸出者端末と、
前記第1の部品の原産資格についての第1の使用許可期限を前記サーバに送信する第1のサプライヤ端末と、
前記第2の部品の原産資格についての第2の使用許可期限を前記サーバに送信する第2のサプライヤ端末とを含み
前記サーバが、前記第1の使用許可期限及び前記第2の使用許可期限に基づき前記物品の原産資格についての使用許可期限を決定する、
原産資格管理システム。
【請求項13】
コンピュータに、
第1の部品の原産資格についての第1の使用許可期限を受信することと、
第2の部品の原産資格についての第2の使用許可期限を受信することと、
第1の部品及び第2の部品を含む物品の原産資格についての使用許可期限を受信することと、
前記物品の原産資格についての使用許可期限と前記第1の使用許可期限及び前記第2の使用許可期限とをそれぞれ比較することと、
前記物品の原産資格についての使用許可期限が前記第1の使用許可期限及び前記第2の使用許可期限のいずれよりも遅くないことを決定することと、
を実行させるためのプログラムを記録した、コンピュータ読取り可能な記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、物品の原産資格情報を管理する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
幅広い経済関係の強化を目指して、貿易や投資の自由化・円滑化の実現を図るべく、世界中で自由貿易協定(Free Trade Agreement: FTA)の締結は加速する傾向にある。近年では2国間のFTAに留まらず、メガFTAとよばれる広域の自由貿易圏を構築する動きも、活発になってきている。我が国においても環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership: CPTPP)、日EU・経済連携協定(Economic Partnership Agreement: EPA)が発効され、メガFTA時代の幕開けを迎えている。貿易障壁撤廃に伴う域内貿易の更なる拡大効果により、輸入国の消費者は同じ輸入財・サービスをより安く国内に流通させることができ、一方、輸出者はサプライチェーンの再設計によるコスト削減や商機拡大によるメリットを享受できる可能性が広がってきている。今後、FTAの活用は、国際商取引の標準となることが予測され、実務を担う輸出国側では、事業全体に大きな影響を与えるテーマとして輸出者・生産者・サプライヤを巻き込んだ対応が求められることが想定される。このように、国際通商ルールの変革のさなか、企業の通商戦略の策定は急務とされており、関税削減効果を享受するための全体での仕組みづくりが重要となってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−160671号公報
【特許文献2】特開2002−73760号公報
【特許文献3】特開2003−323522号公報
【特許文献4】特表2003−535401号公報
【特許文献5】特許第5650090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
FTAのメリットを適切な法令遵守のもとで享受するためには、実務を担う輸出国の主体者(輸出者)が生産者、サプライヤとの協力体制を構築し、対応を図ることが必要とされてきている。その準備は発効済みの既存協定に加え、新たに発効したCPTPP、日EU・EPAへの正確な理解、リスク対策など多岐に及ぶ。FTA利用における「原産品」となるためには、協定で定められた原産地規則を満たすことが条件とされている。但し、原産地規則が複雑である為、原産資格の証明作業は煩雑で想像以上に負荷のかかる作業となっている。また、一企業の担当者が、サプライチェーンに関連する各協定の原産地規則すべてをマンパワーで把握するには自ずと限界があると推測される。原産資格の証明は、企業責任に基づく証明であり、正しい証明を行うには、リスクと効率性を考慮した仕組み作りが重要となってくる。さらにCPTPP、日EU・EPAにおいては、従来の第三者機関による判定証明でなく自己申告制度を取り入れている。
【0005】
このように、各企業として証明する方法の確立、これにかかるコンプライアンス体制の整備は益々深い課題となってきている。また、原産資格を証明する書類が妥当な内容であったか、書類は適切に保管されているかなどの管理体制が問われる場合も多くなってくることが推測される。
【0006】
したがって、原産地申告の有効性が容易に確認できる方法及びシステムが望まれる。
【0007】
さらに、根拠となる原産資格やその根拠書類が容易に確認できる方法及びシステムが望まれる。
【0008】
さらに、物品が複数のサプライヤから供給された部品を含む場合でも、原産地申告の有効性が容易に確認できる方法及びシステムが望まれる。
【0009】
さらに、輸出産品情報に基づいて、対応する品目別規則を容易に参照できる方法及びシステムが望まれる。
【0010】
さらに、輸出産品が品目別規則を充足しているかを判断できる方法及びシステムが望まれる。
【0011】
さらに、輸出産品が品目別規則の一部分を充足しているかを判断できる方法及びシステムが望まれる。
【0012】
さらに、営業秘密が含まれている根拠資料を取引先に開示することなく、第三者が根拠資料を確認し、原産資格を満たしているかを代行確認できる方法及びシステムが望まれる。
【0013】
さらに、営業秘密を含む資料を保管して、輸入国側通関から提示を求められ(検認)た際に第三者が対応を代行できるサービス方法及びシステムが望まれる。
【0014】
さらに、原産資格を調査済みの産品について、実施済み調査を再利用することができる方法及びシステムが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本技術は、例えば、コンピュータにより第1の部品と第2の部品を含む物品の原産資格を管理する方法であって、前記第1の部品の原産資格についての第1の使用許可期限を受信し、前記第2の部品の原産資格についての第2の使用許可期限を受信し、前記物品の原産資格についての使用許可期限を受信し、前記物品の原産資格についての使用許可期限と前記第1の使用許可期限及び前記第2の使用許可期限とをそれぞれ比較し、前記物品の原産資格についての使用許可期限が前記第1の使用許可期限及び前記第2の使用許可期限のいずれよりも遅くないことを決定する、原産資格管理方法を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本技術の実施例による原産資格管理システムを示す図である。
図2】本技術の実施例による原産資格管理方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に本技術の実施例による原産資格管理システム100を示す。
【0018】
原産資格管理システム100は、インターネット110に有線又は無線で通信可能に接続された、サーバ120、輸出者(生産者)端末130、サプライヤ端末140、150を含む。
【0019】
インターネット110は、インターネットのほか、プライベートネットワーク、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、LTE(Long Term Evolution)ネットワーク等の通信ネットワークも含むものとする。サーバ120は、プロセッサ及びメモリを含み、インターネット110を介して輸出者端末130、サプライヤ端末140、150と通信する機能を有するコンピュータである。輸出者端末130は、プロセッサ及びメモリを含み、インターネットを介してサーバ120と通信する機能を有するコンピュータ、タブレット端末又はスマートフォン等であり、サプライヤ端末140、150も同様である。サプライヤ端末140、150に限らず、さらに多くのサプライヤ端末が接続可能である。
【0020】
輸出者端末130は、輸出者又は生産者が輸出しようとする産品や生産物、加工品等の物品がFTA、CPTPP、EPA等の協定において自国で生産されたものとして認定される原産資格を有するか否かについて、調査依頼をサーバ120に送信する。調査依頼は、物品名及び/又はHSコード(「商品の名称及び分類についての統一システム(Harmonized Commodity Description and Coding System)に関する国際条約(HS条約)」に基づいて定められたコード番号)を含んでもよい。調査依頼は、さらに、物品を構成する部品のそれぞれの部品名及び/又はHSコード、部品を生産・供給するサプライヤ名及び/又はサプライヤコードを含んでもよい。調査依頼は、さらに、調査依頼日及び/又は原産資格についての希望使用許可期限を含んでもよい。
【0021】
サプライヤ端末140、150は、それぞれ、輸出者端末130からの調査依頼に応答して、又は調査依頼に先立って、物品を構成する部品のそれぞれの部品名及び/又はHSコード、原産資格の有無及びその使用許可期限を調査回答としてサーバ120に送信する。調査回答は部品を供給するサプライヤ名及び/又はサプライヤコードを含んでもよい。調査回答は、さらに、部品についての材料費、利益、製造方法、材料リスト、部品リスト、原価を含んでもよい。
【0022】
サプライヤ端末は部品のサプライヤ(生産者又は供給者)毎に1つの端末を有してもよく、複数のサプライヤが1つの端末を共有してもよく、1つのサプライヤが複数の端末を有してもよい。
【0023】
さらに、部品が複数のサブコンポーネントを含む場合、部品のサプライヤ(一次サプライヤ)が調査依頼をサーバ120に送信し、サブコンポーネントのサプライヤ(二次サプライヤ)が調査回答をサーバ120に送信してもよい。
【0024】
図2に本技術の実施例による原産資格管理方法200を示す。
【0025】
ステップ210で、第1の部品と第2の部品を含む物品の原産資格管理方法200をサーバ120において開始する。
【0026】
ステップ220で、サーバ120は、サプライヤ端末140から第1の部品についての第1の使用許可期限を受信する。第1の部品についての原産資格はサーバ120からの調査依頼に応じて調査されてもよく、予め調査されていてもよい。既に調査結果がある場合にはそれを再利用してもよい。
【0027】
第1の部品についての原産資格がサーバ120からの調査依頼により調査される場合、対象とするEPAの品目別規則を記憶するデータベースから、第1の部品に対応する一つの品目別規則を抽出し、その品目別規則を満たしていることを判定する。
【0028】
判定は、部品の材料費、利益、製造方法、材料リスト、部品リストのうち少なくとも1つを含む根拠情報が一つの品目別規則を満たしていることを判定することにより行ってもよい。
【0029】
また、根拠情報が一つの品目別規則を満たしていることを判定することが、根拠情報の一部分についてはサーバ120により判定し、他の部分については他の手段により既に行われた判定を受信するようにしてもよい。
【0030】
さらに、根拠情報又はそれを記憶したデータベース(図示せず)は、サプライヤ端末140及びサーバ120のユーザによってのみアクセス可能にし、輸出者端末130や他のサプライヤ端末150のユーザからはアクセスできないようにして営業秘密等の不必要な開示を防止してもよい。
【0031】
次に、ステップ230で、サーバ120は、サプライヤ端末150から第2の部品についての第2の使用許可期限を、ステップ220と同様の方法で受信する。
【0032】
次に、ステップ240で、サーバ120は、輸出者端末130から物品の原産資格についての使用許可期限を、ステップ220と同様の方法で受信する。物品の原産資格についての使用許可期限はすでに調査されたものであってもよく、新規に調査する場合には希望する使用許可期限であってもよい。既に調査結果がある場合にはそれを再利用してもよい。
【0033】
次に、ステップ250で、ステップ240で受信した物品の原産資格についての使用許可期限と、第1の使用許可期限及び第2の使用許可期限とをそれぞれ比較する。比較は、例えば、物品の原産資格についての使用許可期限が第1の使用許可期限より遅くないか、及び物品の原産資格についての使用許可期限が第2の使用許可期限より遅くないかについて行う。
【0034】
次に、ステップ260で、物品の原産資格についての使用許可期限が第1の使用許可期限及び第2の使用許可期限のいずれよりも遅くないことを決定する。これにより、物品の原産資格についての使用許可期限が有効であることを確認してもよい。
ステップ240で希望使用許可期限が受信された場合、当該希望使用許可期限を(有効性が確認された)物品の原産資格についての使用許可期限としてもよい。
【0035】
ステップ260において第1の使用許可期限及び第2の使用許可期限のいずれかが物品の原産資格についての使用許可期限よりも早い場合、第1の使用許可期限及び第2の使用許可期限のうち物品の原産資格についての使用許可期限より早いもののすべてについて使用許可期限延長対象としてアラートを送信し、使用許可期限延長のための必要な手続及び/又は調査を促すようにしてもよい。
【0036】
次にステップ270で、原産資格管理方法400を終了する。
【0037】
なお、本実施例において物品が2つの部品を含む場合について説明したところ、部品数が3つ以上の場合でも同様に比較、決定してよい。また、部品がサブコンポーネントを含む場合には、物品の原産資格についての使用許可期限と部品の原産資格についての使用許可期限とを比較したのと同様に、部品の原産資格についての使用許可期限とサブコンポーネントの原産資格についての使用許可期限とを比較し、当該部品の原産資格についての使用許可期限を決定してよい。
【0038】
表1に本技術で用いられる原産資格管理データの一例を示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1において、「物品ID」は輸出対象である物品を一意に識別するためのコードである。原産資格管理データは物品IDとともに物品名、対応するHSコードを有していてもよい。
【0041】
「輸出者」は、当該物品を輸出する者の氏名又は名称である。輸出者は法人コード等の識別コードを含んでもよい。輸出者は生産者と同一であってもよい。
【0042】
「部品ID」は物品を構成する部品を一意に識別するためのコードである。原産資格管理データは部品IDとともに部品名、対応するHSコードを有していてもよい。
【0043】
「サブコンポーネントID」は、部品がサブコンポーネントから構成される場合に当該サブコンポーネントを一意に識別するためのコードである。原産資格管理データはサブコンポーネントIDとともにサブコンポーネント名、対応するHSコードを有していてもよい。
【0044】
「サプライヤ」は、部品又はサブコンポーネントを生産する者の氏名又は名称若しくは法人コードである。サプライヤは法人コード等の識別コードを含んでもよい。
【0045】
「付加価値」は、物品、部品又はサブコンポーネントについての原産国における付加価値(材料費、非材料費(労務費等)及び利益の和)を物品のFOB(Free On Board)価格に対する割合(%)で示す。
【0046】
「原産資格」は、既に調査された又は新規に調査された調査結果による原産資格の有無を示す。
【0047】
「使用許可期限(YYYY/MM/DD)」は、原産資格が有る場合、その使用許可期限を示す。
【0048】
「利益累計」は、物品、部品又はサブコンポーネントについての付加価値を上の行から順次累計したものである。
【0049】
表1の例では、物品IDが「A001」の物品についての原産資格管理データが示される。
【0050】
物品A001は、A社によって組立・加工・輸出がされ、物品A001についてのFOB価格に対するA社による付加価値は20%であり、したがって付加価値の累計は20%である。原産資格は有り、その使用許可期限は2020年6月30日である。
【0051】
物品A001は、B社により生産される部品B001及び部品B002を含む。部品B001についての物品A001のFOB価格に対するB社による付加価値は10%である。原産資格は有り、その使用許可期限は2020年9月30日である。上述の物品A001から部品B001までの付加価値の累計は30%である。
【0052】
部品B002についての物品A001のFOB価格に対するB社による付加価値は5%である。原産資格は有り、その使用許可期限は2020年9月30日である。部品B002までの付加価値の累計は35%である。
【0053】
物品A001は、さらに、C社により生産される部品C001及びD社により生産される部品D001を含む。部品C001についての物品A001のFOB価格に対するC社による付加価値は5%である。原産資格はなく、したがってその使用許可期限もない。部品C001は原産資格がないので、付加価値の累計にはカウントしない。
【0054】
部品D001についての物品A001のFOB価格に対するD社による付加価値は5%である。原産資格は有り、その使用許可期限は2020年6月30日である。部品D001までの付加価値の累計は40%である。
【0055】
部品D001は、さらにE社により生産されるサブコンポーネントE001及びF社により生産されるサブコンポーネントF001を含む。
【0056】
サブコンポーネントE001についての物品A001のFOB価格に対するE社による付加価値は5%である。原産資格は未調査であり、したがってその使用許可期限もない。サブコンポーネントE001は原産資格がないので、付加価値の累計にはカウントしない。
【0057】
サブコンポーネントF001についての物品A001のFOB価格に対するF社による付加価値は5%である。原産資格は有り、その使用許可期限は2020年9月30日である。部品F001までの付加価値の累計は45%である。
【0058】
特定の協定において、物品が当該協定の対象の国の原産資格を有するための条件が、当該国における物品の付加価値の合計が当該物品の原価の40%以上であるとすると、物品A001はかかる条件を満たしており、原産資格を有することが確認される。また、その使用許可期限は、図2で説明した方法により、物品A001の原産資格についての使用許可期限(2020年6月30日)がそれを構成する部品の原産資格についての使用許可期限よりも遅くないことが決定され、その有効性を確認することができる。
【0059】
なお、部品C001とサブコンポーネントE001は原産資格を有しないが、他の物品や部品、サブコンポーネントによる等付加価値の合計が当該物品の原価の40%以上なので、物品全体が原産資格を有することに対する影響はない。
【0060】
また、物品A001の原産資格についての使用許可期限を2020年6月30日から2020年9月30日まで延長したい場合、A社による物品A001の加工等についての原産資格と、D社による部品D001についての原産資格を、それぞれ2020年9月30日まで延長するよう必要な調査・手続を行えばよい。あるいは、A社による物品A001の加工等についての原産資格が2020年9月30日まで延長されれば、部品D001についての原産資格の有無にかかわらず、付加価値の合計が当該物品の原価の40%以上なので、物品全体の原産資格を2020年9月30日まで延長することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本技術は、例えば、原産地申告の有効性を容易に確認することを可能にする。
【符号の説明】
【0062】
100 原産資格管理システム
110 インターネット
120 サーバ
130 輸出者(生産者)端末
140、150 サプライヤ端末
【要約】
原産地申告の有効性が容易に確認できる方法及びシステムを提供する。
本技術による原産資格管理方法は、コンピュータにより第1の部品と第2の部品を含む物品の原産資格を管理する方法であって、第1の部品の原産資格についての第1の使用許可期限を受信し、第2の部品の原産資格についての第2の使用許可期限を受信し、物品の原産資格についての使用許可期限を受信し、物品の原産資格についての使用許可期限と第1の使用許可期限及び第2の使用許可期限とをそれぞれ比較し、物品の原産資格についての使用許可期限が第1の使用許可期限及び第2の使用許可期限のいずれよりも遅くないことを決定する。
図1
図2