特許第6886230号(P6886230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6886230プロバイオティックによって部分的又は全体的に発酵されたプレバイオティクスを含む低糖アイスクリーム及び当該アイスクリームの作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886230
(24)【登録日】2021年5月18日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】プロバイオティックによって部分的又は全体的に発酵されたプレバイオティクスを含む低糖アイスクリーム及び当該アイスクリームの作製方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 9/00 20060101AFI20210603BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20210603BHJP
【FI】
   A23G9/00 101
   A23L33/10
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-157063(P2014-157063)
(22)【出願日】2014年7月31日
(65)【公開番号】特開2015-29513(P2015-29513A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2017年7月20日
【審判番号】不服2019-7022(P2019-7022/J1)
【審判請求日】2019年5月29日
(31)【優先権主張番号】MI2013A001348
(32)【優先日】2013年8月6日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518089540
【氏名又は名称】エイエルアイ グループ ソチエタ ア レスポンサビリタ リミタータ カルピジャーニ
【氏名又は名称原語表記】ALI GROUP S.r.l.CARPIGIANI
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【弁理士】
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア コッキ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ラッザリーニ
【合議体】
【審判長】 佐々木 秀次
【審判官】 村上 騎見高
【審判官】 大熊 幸治
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−508891号公報(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0286248号明細書(US,A1)
【文献】 米国特許第4626441号明細書(US,A)
【文献】 特開平4−218340号公報(JP,A)
【文献】 CULTURED DAIRY PRODUCTS JOURNAL,1990年,pp.4−6,8−9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L2/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)牛乳及びクリームと、3〜20重量%の少なくとも1つのプレバイオティクス原料と、0〜20重量%の添加糖を混合する工程と、
b)ビフィズス菌類、乳酸菌類又は連鎖球菌類の中から選択される少なくとも1つのプロバイオティクスまたは少なくとも1つの加水分解酵素を加えた混合物を、前記プレバイオティクス原料を部分的又は全体的に発酵または加水分解させるために決めた0.5から24時間の間、20〜40℃の温度にする工程と、
c)前記b)工程により得られる混合物に、アイスクリームの最終的な風味を得るために必要な原料をさらに添加した混合物を得る工程と、
を含む、凍結させたアイスクリームの作製方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのプレバイオティクス原料は、前記a)工程の前に温殺されるか、又は、前記a)工程の前に少なくとも1つのプロバイオティクスによる発酵されるか又は少なくとも1つの加水分解酵素によって加水分解される請求項1の方法。
【請求項3】
前記c)工程の後に得られる前記混合物を、均一化、熟成、曝気、混合、凝固、攪拌及び硬化にさらす、請求項1又は2の方法。
【請求項4】
前記添加糖は、スクロース、グルコース・シロップ、D型グルコース、及びそれらの混合物から選択される、請求項1〜3のいずれか一項の方法。
【請求項5】
前記a)工程の後に得られる混合物は、前記b)工程の前の段階で、低温殺菌される、
請求項4の方法。
【請求項6】
前記低温殺菌は、80℃〜110℃の温度で実行する高い低温殺菌サイクル、及び/又は、60℃〜70℃の温度で実行される低い低温殺菌サイクルを含む、請求項5の方法。
【請求項7】
前記低温殺菌は、両方の処理サイクルを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記a)工程の後に得られる混合物は、前記b)工程の前の段階で、低温殺菌される、請求項6または7の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのプロバイオティクスは、混合物1ml当たり103から10の細胞を含む分量で、添加される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのプレバイオティクス原料は、5〜15重量%の分量で添加される、請求項1〜9のいずれか一項の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つのプレバイオティクス原料は、ガラクト−オリゴ糖(GOS)、トランス−ガラクト−オリゴ糖、難消化性マルトデキストリン、ポリデキストロース、アラビノガラクタン、キシロオリゴ糖、焙焼デキストリン、フルクト多糖、イヌリン、フルクトオリゴ糖(FOS)、オリゴフルクトース、大豆タンパク質、イソマルト及びこれらの混合物からなる群より選択される、
請求項1〜10のいずれか一項の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのプレバイオティクス原料は、イヌリン、フルクト−オリゴ糖(FOS)、オリゴフルクトース、大豆タンパク質、イソマルト及びこれらの混合物からなる群より選択される、
請求項11の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレバイオティクスと、任意にプロバイオティクス及び/又は酵素を含む低糖アイスクリームに関し、当該プレバイオティクスは、プロバイオティクスによって部分的又は全体的に発酵されるか又は酵素によって加水分解される。本発明は、アイスクリームの作製方法にも関連する。
【背景技術】
【0002】
プロバイオティクスの用語は、腸内の微生物バランスを維持又は改善することによってヒトの健康に有益な影響をもたらす微生物食品サプリメントを意味するものとして用いる。当該用語は、乳酸菌及びビフィズス菌を主に意味するが、それのみに限られず、連鎖球菌及びサッカロミセスのような他の細菌を意味するものでもある。
【0003】
一方、プレバイオティクスの用語は、複雑性に変化をもたらす糖物質で、かつヒトに消費されないので大腸で消化されずに通過する糖物質を意味し、プレバイオティクスは、いくつかの微生物群、特にビフィズス菌及び乳酸菌によって選択的に消費される。プレバイオティクスは、デザート、パン及びパン製品、朝食シリアル、チョコレート等を作る食品産業で広く用いられる。
【0004】
プレバイオティクスとして分類されるために、原料は小腸で加水分解又は吸収されてはいけないし、選択的な基質として機能しなければならないので、大腸中に内在する少なくとも1つの微生物群の成長を促進しなければならないし、ヒトの健康に前向きな役割を果たさなければならない。
【0005】
プレバイオティクスは、一般的に消化されない多糖類であり、食品産業で最も広範に用いられる多糖類は、フルクト多糖類、フルクトース高分子である。これらの中で、イヌリンは、20から数百のフルクトース単位を含み得る天然高分子であり、60及びそれ以上の重合度を有していてもよい。一方で、フルクト−オリゴ糖(FOS)は、フルクトース単位を減少させたオリゴマーであるため、10以下の重合度である。オリゴフルクトースは、2、3のフルクトース単位で構成される短鎖ポリマーである。
【0006】
他の多糖のプレバイオティクスとして、例えばガラクト−オリゴ糖(GOS)、トランス−ガラクト−オリゴ糖、消化抵抗マルトデキストリン、ポリデキストロース、アラビノガラクタン、キシロオリゴ糖及び焙焼デキストリンがある。非単糖類プレバイオティクスは、大豆タンパク質及びイソマルトを含む。
【0007】
プレバイオティクス原料に加えて、いわゆる機能性食品は、既に述べたように、主にビフィズス菌類、乳酸菌類及び連鎖球菌類の生細菌からなるプロバイオティック原料も含んでもよい。食品産業におけるプロバイオティクとして用いられる最も重要な種類は、狭義のビフィズス菌、乳児の腸内菌叢由来のビフィズス菌、成人の腸内菌叢由来のビフィズス菌、青年期の腸内菌叢由来のビフィズス菌、幼児の腸内菌叢由来のビフィズス菌、連鎖状のビフィズス菌、疑似連鎖状のビフィズス菌、乳酸ビフィズス菌、カセイ菌、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・ロイテリ、好酸性乳酸桿菌、発酵乳酸杆菌、ラクトバチルス‐プランタルム、デルブリュック乳酸杆菌亜種、ブルガリア菌、乳酸短杆菌及びサーモフィルス菌である。
【0008】
プロバイオティックス細菌によって人間の健康に機能する有用な役割は、病原菌の成長を抑制するバクテリオシンの生産、高い免疫修飾活性及び高い免疫刺激活性、腸上皮への付着能力、腸内pHを低下させ、病原菌の活動に抵抗する乳酸及び酢酸等の有機酸の生産、抗突然変異性特性及び抗発癌性、及びコレステロール値を下げる能力等の諸特性がある。
【0009】
牛乳及び乳製品は、人の健康に有益なプレバイオティクス原料及び/又はプロバイオティクス原料を最も拡散させる媒体であり続けている。これらの原料を含む食品は、機能性食品と称されることもあるし、プレバイオティクス及びプロバイオティクスの両方を含む場合には、共生食品と称される。
【0010】
乳製品の中でも、アイスクリームは、特に幅広く公知の食品で、栄養価が高い。アイスクリームの基本的な原料は、全乳と無脂肪乳と砂糖とクリームである。牛乳とクリームは、脂肪分を供給する。
【0011】
アイスクリームは、O/W(水中の油の)乳濁液として考えられてもよく、つまり、脂肪分は、(部分結晶であってもよい)分散相及び水の連続相であり、凍結によって固定化された両方の相である。
【0012】
アイスクリームの製造方法で重要なことは、アイスクリーム混合物に空気を混入することである。
【0013】
空気の存在は、感覚刺激特性に影響するだけでなく、アイスクリームの感覚刺激特性の保温特性及び物理特性に影響するものでもある。このため、アイスクリームを作るために、2以上の相G/L(気体/液体)の形があり、ガス相(空気)は、前述の乳濁液中に分散している。
【0014】
砂糖は、アイスクリームの感覚刺激特性に影響するだけでなく、凝固点及び混合物の粘度にも影響する。脂肪は力学的特性、沸点及び最終製品のおいしさに影響する。
【0015】
食品市場において、生命体の健康に有用なプロバイオティクス及びプレバイオティクス減量を含む新しい機能性食品に常に関心がある。アイスクリームは、幅広く消費されているし、栄養的にも完成度が高い食品と考えられているので、乳製品の中でアイスクリームはプロバイオティクス原料及びプレバイオティクス原料のための最適な媒体である。
【0016】
このような市場の背景の中で、出願人は、本発明によって、必要な場合はプロバイオティクス原料又は酵素も一緒に含むプレバイオティクス原料の媒体に適した低糖の新しい機能性製品のニーズに合う可能性を見出した。
【0017】
したがって、本発明は、機能性アイスクリームに関し、添加糖が部分的又は全体的に1以上のプレバイオティクス原料に置換されており、当該プレバイオティクス原料は、部分的又は全体的にプロバイオティクスによって発酵されるか又は部分的又は全体的に酵素によって加水分解されてもよい。このため、本発明のアイスクリームは、添加糖の分量を減らすことを意味する低糖であることを特徴とする。
【0018】
本発明のアイスクリームの作製方法にも関連し、アイスクリーム原料内で糖を一部又は全部を置換して1以上のプレバイオティクス原料を添加する工程と、任意にプレバイオティクス原料(原料群)をプロバイオティクスで発酵させるか又は酵素で加水分解する工程を含む方法に関連する。
【0019】
アイスクリーム原料にプロバイオティクスを加えた後にプレバイオティクスの発酵を実行してもよいし、アイスクリーム原料とは別個に発酵又は酵素で加水分解したプレバイオティクス及びプロバイオティクスの混合物を他のアイスクリーム原料に加えた後に、プレバイオティクスの発酵を実行してもよい。
【0020】
本発明は、添付の図面を参照しつつ以下に詳述される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】10%のFOSを含むプレーンアイスクリーム混合物の糖の構成を示す。
図2】ビフィズス菌類の発酵前後のプレーンアイスクリーム中の単糖及び複合糖類(FOS)の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の内容において、「アイスクリーム」の用語は、異なる香料を得るために果物又は他の原料を加えたミルク又はクリームベースの食品を意味するものとして用いられる。本発明の目的として、アイスクリームの定義は、(ミルク及びクリームの代わりに)多種類の果物を添加することで所望の香料を加えた水に基づく食品も含む。この食品は、一般にシャーベットとして知られている。
【0023】
本発明の目的として、「添加糖」の用語は、スクロース、D型グルコース、グルコース・シロップのような単糖類又は二糖類を意味する。本発明の記述において、これらの添加糖は、単糖と記すこともある。
【0024】
1以上のプレバイオティクスを含み、任意にプロバイオティクス又は加水分解酵素をともに含む本発明のアイスクリームの作製方法は、以下の工程を含む。
a)少なくとも1つのプレバイオティクス原料(又はプレバイオティクス原料の混合物)を1%から20%まで変動する分量で混合したアイスクリーム混合物を作製するのに必要な原料(例えば、牛乳及びクリーム、又は水)と、0%から20%の重量比の分量で単糖類(例えば、ショ糖、グルコース・シロップ、D型グルコース)を混合する工程、
b)任意に、前記工程a)の混合物を低温殺菌にさらす工程、
c)もし低温殺菌を実行したらその完了時に、ビフィズス菌類、乳酸菌類又は連鎖球菌類の中から選択される少なくとも1つのプロバイオティクス、又は、少なくとも1つの加水分解酵素を任意に加える工程と、前記プロバイオティクスを増加させるか又は前記酵素を活性化させて、結果として、プレバイオティクス原料を部分的又は全体的に発酵させるか又は加水分解させるために必要な時間の間、20℃から40℃の間の温度に前記混合物を調整する工程、
d)工程c)の混合物に対し、アイスクリームの最終的な風味(例えばプレーンアイスクリーム、新鮮な果実、殻の固い果物、チョコレート等)を得るために必要な原料をさらに加える工程。
【0025】
段階d)の完了時に、その混合物を、均一化、熟成、曝気、混合、凝固、攪拌及び硬化にさらしてもよい(工程e))。このようにして得られたアイスクリームは、もし加えたなら、高濃度のプロバイオティクスを含むし、単糖類の代替として加えた部分的又は全体的に発酵又は加水分解されたプレバイオティクスを含む。
【0026】
上述の方法の代替について、プレバイオティクスは、好ましくは、酵母エキスの割合が豊富で、0.05%から0.5%の間で可変の、微生物成長因子として機能するアミノ酸混合物であり、工程a)の混合物に添加するものではなく、工程a)の混合物と別個に低温殺菌にさらすものであり、好ましくは、熱安定性の低温殺菌装置で低温殺菌にさらすものであり、好ましくは、20秒から5分の間で可変の時間の長さである。低温殺菌は、85℃から110℃の間の高温で行なわれ、もし添加したら通常ビフィズス菌に毒性を示す酸素の少なくとも一部を除去する。低温殺菌の後、プロバイオティクス又は酵素は好ましくは、懸濁液又は凍結乾燥粉末の形式で、プレバイオティクスに加えられ、このようにして得られた混合物は、プロバイオティクスを増殖させるために必要な時間の長さ、及び添加したプレバイオティクスを発酵させるのに必要な時間の長さ、20℃から40℃の間を含む温度、好ましくは37℃に維持される。使用したプロバイオティクスがビフィズス菌からなる場合、使用したプロバイオティクス微生物の量は、混合物1ml当たり103細胞から106細胞の間で含まれる。
【0027】
このため、発酵又は加水分解した混合物は、任意に工程b)で既に低温殺菌した、原料の混合物に取り込まれる。
【0028】
そして、所望の香料のアイスクリームを作るために必要とされる他の原料を、上述の(工程d))のように加える。
【0029】
そして、混合物を、工程e)で述べたように、均一化、熟成、曝気、混合、凝固、攪拌及び硬化にさらす。それによって、任意にプロバイオティックスによって部分的又は全体的に発酵されるか、又は酵素によって加水分解されたプレバイオティクスを含む本発明のアイスクリームを得る。この実施形態において、工程c)は、別々に実行されるので省略される。
【0030】
本発明のアイスクリームは、水ベース(つまり、実質的にシャーベット)であるなら、最初の低温殺菌する工程b)は省略される。(プロバイオティクス又は酵素による)プレバイオティクスの発酵分解又は加水分解する場合、いかなる場合でもプレバイオティクスは、発酵前に低温殺菌にさらされる。
【0031】
上述の両方の場合、その方法の両方の実施形態において、本発明のアイスクリームを作製する間に、原料混合物に加えられるプレバイオティクスの合計量は、重量比で1%から20%の間で含まれ、好ましくは重量比で3%から20%の間で含まれ、より好ましくは、5%から15%の重量比で含まれる。
【0032】
プレバイオティクス原料は、標準的なアイスクリームの作成に通常用いる単糖を部分的又は全体的に置換して加えられる。これらの糖(以下において「添加糖」と言う)は、好ましくは、単糖類又は二糖類である。添加糖は、例えばスクロース、グルコース・シロップ及びD型グルコースの1以上であってもよい。典型的な普通のアイスクリームの作製時には、重量比で14%から25%の間の分量で使われる添加糖を一部置換することによって、任意にプロバイオティクスで発酵されるか又は酵素で加水分解されるプレバイオティクスのように人間の体内に有益な原料を含む機能性アイスクリームを作ることができる。本発明の機能性アイスクリームに添加される単糖類の分量は、重量比で、最小値で約0%から最大で20%までの間で、好ましくは3%から20%の間で、より好ましくは4%から10%である。添加糖の残りは、重量比で14%から25%までの間で含まれる標準的なアイスクリームに存在するパーセンテージまで、プレバイオティクスで置換される。
【0033】
本発明の内容で、前記プレバイオティックス原料は、腸内で有用な常在細菌を成長させる生息環境として機能するので、消化されずに人体に有益な影響を及ぼす原料である。必須ではないが、プレバイオティクス原料は、天然複合多糖であることが好ましい。本発明のアイスクリームに好ましく使用されるプレバイオティクス原料は、ガラクトオリゴ糖(GOS)、トランス−ガラクトオリゴ糖、難消化性マルトデキストリン(ファイバーソルの商品名で公知である)、ポリデキストロース、アラビノガラクタン、キシロオリゴ糖、焙焼デキストリン、フルクト多糖の中から選択され、好ましくは、イヌリン、フルクト−オリゴ糖(FOS)、オリゴフルクトース及びこれらの混合物の中から選択される。本発明のアイスクリームに好ましく使用される非単糖類プレバイオティクスは、大豆タンパク質及びイソマルトである。
【0034】
より好ましくは、本発明のアイスクリームに使用されプレバイオティクス原料は、ガラクトオリゴ糖(GOS)、トランス−ガラクトオリゴ糖、難消化性マルトデキストリン(ファイバーソルの商品名で公知である)、ポリデキストロース、アラビノガラクタン、キシロオリゴ糖、焙焼デキストリン、大豆タンパク質、イソマルト及びそれらの混合物の中から選択される。好ましい実施形態において、プレバイオティクス原料は、ガラクトオリゴ糖(GOS)、難消化性マルトデキストリン、ポリデキストロース、及びこれらの混合物の中から選択されるか、又はイヌリン及びFOS若しくはそれらの混合物の中から選択される。別の実施形態において、プレバイオティクス原料は、イヌリンとGOS、FOS、難消化性マルトデキストリン、ポリデキストロースそれぞれとの混合物であるか;又はFOSとGOSの混合物であるか;又は難消化性マルトデキストリンとポリデキストロースの混合物であるか;又はFOSと難消化性マルトデキストリンの混合物である。
【0035】
「プロバイオティクス原料」の用語は、乳酸菌類又はビフィズス菌類の少なくとも1つの細菌を規定するために用いられ、好ましくは、成人の腸内菌叢由来のビフィズス菌、乳児の腸内菌叢由来のビフィズス菌、狭義のビフィズス菌、連鎖状のビフィズス菌、乳酸ビフィズス菌、青年期の腸内菌叢由来のビフィズス菌、幼児の腸内菌叢由来のビフィズス菌、疑似連鎖状のビフィズス菌、カセイ菌、ラクトバチルス・ラムノサス、好酸性乳酸桿菌、ラクトバチルス・ロイテリ、発酵乳酸杆菌、ラクトバチルス‐プランタルム、デルブリュック乳酸杆菌亜種、ブルガリア菌、乳酸短杆菌並びにそれらの混合物及び/又はサーモフィルス菌種株の中から選択される。ビフィズス菌株は、必要があれば、少量の酸素の存在に対抗する能力に基づいて選択される。
【0036】
好ましくは、プロバイオティクス細菌の分量は、混合物1mlあたり、103細胞から106細胞の間で含まれる。
【0037】
本発明の方法の好ましい実施形態において、プレバイオティクス原料は、ガラクトオリゴ糖(GOS)、トランス−ガラクトオリゴ糖、難消化性マルトデキストリン(ファイバーソルの商品名で公知である)、ポリデキストロース、アラビノガラクタン、キシロオリゴ糖、焙焼デキストリン、大豆タンパク質、イソマルト及びそれらの混合物の中から選択され、乳酸菌種若しくはビフィズス菌種又はそれらの混合物のプロバイオティクスである。
【0038】
プロバイオティクス細菌の代わり、又は、プロバイオティクス細菌に加えて、酵素を用いる場合、当該酵素は、グリコシル−ヒドロナーゼ型であり、好ましくは、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ及びフラクトフラノシダーゼの中から選択される。
【0039】
上述の2つの方法で起こり得る、発酵工程中のプロバイオティクスの発酵作用の影響によって、又は酵素の加水分解作用の影響によって、プレバイオティクス原料は、部分的又は全体的に加水分解され、短鎖中間体又は単糖を作製する。
【0040】
工程a)の混合物の他の原料について、牛乳は全乳及び/又は脱脂粉乳であることが好ましい。全乳は、重量比で50%から70%の間で含まれる分量で使用される。脱脂粉乳は、重量比で2%から6%の間で含まれる分量で使用される。
【0041】
生クリームは重量比8%から15%の間で含む分量で加えられる。もし水ベースの(シャーベットと定義される)アイスクリームを作製するなら、水は重量比で20%から30%の間で含む分量で用いる。
【0042】
低温殺菌工程b)は、80℃から110℃の間を含む温度で、好ましくは85℃くらいで、20秒から40秒の間を含む時間で実行される高い低温殺菌サイクルを含んでいてもよいし、60℃から70℃の間を含む温度で、好ましくは65℃くらいの温度で、15分から40分の間を含む時間で実行される低い低温殺菌サイクルを含んでいてもよい。一実施形態において、低温殺菌は、これらのサイクルの処理の両方である。
【0043】
低温殺菌は、好ましくは、電気抵抗機で加熱することによって、又は、還元した高温ガスサイクルによって行なわれる。
【0044】
低温殺菌は、アイスクリームの生の食材に存在する可能性がある細菌性チャージを破壊するために必要である。このため、もしアイスクリームのベースが牛乳やクリームではなく水であるなら、工程b)の低温殺菌は省略される。
【0045】
上述のプレバイオティクスを他の原料から分離しても同じ低温殺菌方法が適用されるし、好ましくは熱安定性の低温殺菌装置で低温殺菌にさらす場合でも適用される。
【0046】
混合物にプロバイオティクスを混入した後、発酵温度は37℃くらいが好ましい。発酵時間は、0.5から48時間であることが好ましく、より好ましくは、0.5から24時間であり、プレバイオティクスが発酵するために十分に細菌が繁殖するために必要とされる時間である。もし酵素を使う場合、加水分解の時間は、0.5から24時間で可変であってもよく、温度は20℃から40℃の間である。プレバイオティクスの発酵は、部分的又は全体的に加水分解できることを必要とし、短鎖中間体又は単糖を作製する。より具体的には、もしプレバイオティクス原料が多糖である場合、つまり、上述の中から選択されたものである場合、プロバイオティクスによる発酵によって、短鎖オリゴ糖が形成されるか、又は短鎖オリゴ糖及び単糖の混合物が作製される。それ故、プロバイオティクス及び部分的又は全体的に置換する添加糖とともに、本発明の機能性アイスクリームの内部に、プレバイオティクスを部分的又は全体的な加水分解によって得られる短鎖オリゴ糖及び単糖が作製される。
【0047】
アイスクリームの残りの原料と別個に、プレバイオティクスを発酵又は加水分解する場合、上述のように低温殺菌工程を実行するときは、その工程の後に、発酵又は加水分解に必要なプロバイオティクス又は酵素を添加する。プロバイオティクス又は酵素は、凍結乾燥剤中の懸濁液の形式で加えられる。好ましくは、微生物の成長を促進するために、酵母エキス及び重量比で0.05%から0.5%の間で可変のアミノ酸の混合物にプレバイオティクスを混入する。処理温度及び時間は、発酵で上述したものと同一である。
【0048】
発酵を終えると(発酵は、プロバイオティクスがビフィズス菌からなる場合は酸素が部分的又は全体的に欠乏して得られなければならない)、プロバイオティクスと部分的又は全体的に加水分解されたプレバイオティクスを含む、得られた混合物を、低温殺菌工程b)を実行する場合はその後に、他の原料混合物に添加する。この場合、工程c)は、上述のように分離して実行されるので省略される。
【0049】
そして、所望の香料のアイスクリームを作るために必要な他の原料を加える。他の原料としては、例えば、プレーンアイスクリームのための生クリーム、新鮮果物、硬い殻の果物、チョコレート等(工程d))がある。
【0050】
原料の混合物を処理する次の工程は、工程e)として、つまり均一化、熟成、曝気、混合、凝固、攪拌及び硬化を、アイスクリーム製造業界で公知の慣習方法にしたがって実行する。それ故、これらの工程はさらに詳述しない。
【0051】
上記で述べた作製方法によって、任意に、プロバイオティクス又は酵素によって部分的又は全体的に加水分解されたプレバイオティクス原料を少なくとも1つ含む機能性アイスクリームを得ることができる。ここで、少なくとも1つのプレバイオティクス原料は、アイスクリームの作製で通常使われる添加糖、つまり、スクロース、D型グルコース及び/又はグルコース・シロップ、を部分的又は全体的に置換するものである。
【0052】
本発明のアイスクリームは、一定量の添加糖を含み、好ましくは、スクロース、D型グルコース及び/又はグルコース・シロップの中から選択される添加糖であり、重量比で0%から20%の間で含まれ、より好ましくは3%から20%の間で含まれ、さらに好ましくは4%から10%の間で含まれ、添加糖のこの分量は、少なくとも1つのプレバイオティクス原料と全体的又は部分的に同じ置換によって得られる。上記プレバイオティクス原料は、任意に、部分的又は全体的にプロバイオティクスによって発酵されるか、あるいは、部分的又は全体的に酵素によって加水分解される。プレバイオティクスの分量は、好ましくは重量比で3%から20%の間であり、より好ましくは5%から15%の間で含まれる。
【0053】
本発明のアイスクリームは、アイスクリームを作るために通常使用される添加糖の分量を一部又は全部置換することによって得られ、当該添加糖は、通常、重量比で14%から25%で含まれ、プレバイオティクス原料の1%から20%までの可変の分量に対応し、プロバイオティクスをも含む。好ましくは、添加糖は、プレバイオティクスの混合物に置換される。より好ましくは、プレバイオティクス原料は、部分的又は全体的に、プロバイオティクスによって発酵されるか、部分的又は全体的に、酵素によって加水分解され、つまり、部分的又は全体的に加水分解される。プレバイオティクス原料は、短鎖多糖及び/又は単糖並びに乳酸及び酢酸のような乳酸発酵の最終製品を作製するために、プロバイオティクス又は酵素によって加水分解されてもよい難消化性の多糖であることが好ましい。
【0054】
見た目、おいしさ、色合い、香り、味及び甘み等の特性に基づく専門家の評価者によって、提案するあらゆるアイスクリームの形態を知覚的に試験し、製品全体の受容性が良い又は優れていると考えられた。
【実施例】
【0055】
実施例1:異なるプレバイオティクスを10%含むプレーンアイスクリームの構成
【表1】
【0056】
混合物を85℃で30秒低温殺菌して6℃に冷却する。それを4℃で少なくとも3時間熟成させる。
【0057】
生クリーム及びスクロースを、レシピの最終結果の合計重量に対してそれぞれ15.9%のスクロース及び24.34%の生クリームで添加する。
【0058】
このようにしてアイスクリームを作製し、それから混合し、冷凍庫に−18℃で保管して凍らせる。
【0059】
実施例2:各5%ずつの割合で10%の異なるプレバイオティクス混合物を含むプレーンアイスクリームの構成
【表2】
【0060】
混合物を85℃で30秒低温殺菌して6℃に冷却する。それを4℃で少なくとも3時間熟成させる。
【0061】
生クリーム及びスクロースを添加してプレーンアイスクリームを得る。
【0062】
このようにしてアイスクリームを作製し、それから混合し、冷凍庫に−18℃で保管して凍らせる。
【0063】
実施例3:各6%ずつの割合で12%の異なるプレバイオティクス混合物を含むプレーンアイスクリームの構成
【表3】
【0064】
混合物を85℃で30秒低温殺菌して6℃に冷却する。それを4℃で少なくとも3時間熟成させる。
【0065】
生クリーム及びスクロースを添加してプレーンアイスクリームを得る。
【0066】
このようにしてアイスクリームを作製し、それから混合し、冷凍庫に−18℃で保管して凍らせる。
【0067】
実施例4:各5%ずつの割合で10%の異なるプレバイオティクス混合物を含むチョコレートアイスクリームの構成
【表4】
【0068】
各混合物を85℃で30秒低温殺菌して6℃に冷却する。それを4℃で少なくとも3時間熟成させる。
【0069】
このようにしてアイスクリームを作製し、それから混合し、冷凍庫に−18℃で保管して凍らせる。
【0070】
実施例5:異なる濃度でプレバイオティクスを含むカスタードアイスクリームの構成
【表5】
【0071】
各混合物を85℃で30秒低温殺菌して6℃に冷却する。それを4℃で少なくとも3時間熟成させる。
【0072】
このようにしてアイスクリームを作製し、それから混合し、冷凍庫に−18℃で保管して凍らせる。
【0073】
実施例6:異なるプレバイオティクス10%を含むイチゴシャーベットの構成
【表6】
【0074】
シャーベットを冷凍庫に−18℃で保管して凍らせる。図1は、単糖を部分的に置換した10%のFOSを含むプレーンアイスクリーム混合物中の糖の構成を示している。
【0075】
図2は、ビフィズス菌類での発酵前後のプレーンアイスクリーム中の単糖及び複合糖類(FOS)の構成を示している。
【0076】
本発明で規定されるものは、重量比で0%から20%の添加糖を含むアイスクリームであって、アイスクリームを作製するために通常使われる添加糖を部分的又は全体的に少なくとも1つのプレバイオティクス原料又はプレバイオティクス混合物に置換して得られるアイスクリームであり、前記プレバイオティクス原料は、少なくとも1つのプロバイオティクス原料で部分的又は全体的に発酵されるか又は少なくとも1つの酵素によって加水分解されることに留意すべきである。
【0077】
有益かつ驚くべきことに、ポロバイオティクスの発酵又は酵素の加水分解によって得られるプレバイオティクスの添加により、感覚刺激特性の観点で高品質のアイスクリームを得ることができ、特に高いクリーミーなものである。
【0078】
さらに、このようにして作られたアイスクリームは、かなり消化しやすく、あらゆる領域の消費者に魅力あるものにする。
【0079】
その上、プロバイオティクスの発酵又は酵素の加水分解によって得られるプレバイオティクスによって、特に高い超過でアイスクリームを作製することができる。
【0080】
アイスクリーム製品に関連する利点であって、これらの特定的かつ明確に定義された利点は、出願人によって初めて実験的に見出されたものである。
【0081】
温度、温度勾配及び時間は、アイスクリームの作製方法の分類が曖昧な側面があることを強調する。
【0082】
本発明で規定されるものは、糖の全部又は一部置換でプレバイオティクス原料を含むアイスクリームであることに留意すべきである。
【0083】
図2の凡例
GF2=ケストース
GF3=ニストース
GF4=フルクトフラノシルニストース
図1
図2