(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
昨今、農業用フィルムは、地温の上昇や保温を目的とする用途に多く使用されている。特に地温の上昇を目的とする場合は、無色透明マルチフィルムが使用されている。他方、地温の上昇よりも雑草の繁茂抑制を重視する場合には黒色マルチフィルムが使用されている。
【0003】
しかし、無色透明なフィルムは、太陽光線を良く透過するため地温が高くなり、作物の生育促進に有利ではあるが、雑草が肥料や地熱を吸収して繁茂し、繁茂した雑草はフィルムを持ち上げて損傷させてしまう。その結果マルチフィルムの効果は低下する。また、しばしばマルチフィルム内の除草が必要となるため、多大の労力が必要となる。
【0004】
一方、黒色マルチフィルムを使用すると、太陽光がほぼ完全に遮蔽されるために雑草の生育が大いに抑制されるが、地温の上昇をはかることは困難である。
【0005】
この結果、雑草の抑制機能と地温上昇機能の両方を兼ね備えたものとして、緑色のマルチフィルムが開発され、近年、多く使用されている。この緑色のマルチフィルムに使用される顔料の多くにおいては、フタロシアニングリーンやピグメントグリーンなどの緑色系の顔料や、フタロシアニンブルーなどの青色系顔料などに他の顔料を組み合わせる等の技術が使用されている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、これらの技術に使用される顔料には銅が含有されている。銅成分は、「農用地の土壌汚染等に関する法律」において、稲の生育を阻害する物質の一つとされており、田の土壌については銅の基準値が設けられているため、本来、農業用フィルムとして使用する成分としては好ましいとは言えない。
【0007】
また、昨今の廃棄物問題等や、農業用マルチフィルムの回収作業を軽減するための解決手段の一つとして、生分解性を有する材料を用いた研究が数多くなされてきている。生分解性材料の代表例としては、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンスクシネートアジペートといった脂肪族ポリエステル系樹脂やポリブチレンアジペートテレフタレートといった芳香族−脂肪族共重合ポリエステル系樹脂が挙げられ、種々検討が行なわれている。
【0008】
これらの生分解性材料は、土中に生息する微生物により分解することができるため、この生分解性材料を使用した農業用マルチフィルムなどは、回収する必要が無く、使用後は土中で分解させることを可能とするものである。
【0009】
これらの生分解性材料を、農業用マルチフィルムとして使用する場合、上述するような銅成分を含む顔料を使用した場合、マルチフィルムは使用後に土中の微生物などにより分解されるが、フィルムに使用した顔料中の銅成分については、土中に多く残留してしまうという問題があった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の農業用フィルムは、銅成分を含まない顔料を含有し、かつ640〜690nmの波長域の全光線透過率の平均値(A)が40%以下、400〜700nmの波長域の全光線透過率の平均値(B)が15%以上であることが重要である。
【0016】
本発明の農業用フィルムは、640〜690nmの波長域の全光線透過率の平均値(A)が40%以下であることが重要であり、35%以下であることが好ましく、32%以下であることより好ましく、30%以下であることが更に好ましい。640〜690nmの波長域の全光線透過率の平均値(A)を上記の範囲とすることにより、雑草の光合成を効率的に抑制することができ、雑草の成長を抑制することができる。
【0017】
また、本発明の農業用フィルムは、400〜700nmの波長域の全光線透過率の平均値(B)が15%以上であることが重要であり、16%以上であることが好ましく、17%以上であることがより好ましく、19%以上であることが更に好ましく、25%以上であることが特に好ましい。400〜700nmの波長域の全光線透過率の平均値(B)を上記の範囲とすることで、農業用フィルムで覆った箇所において、土中の温度上昇に必要な光を透過させることができ、日中、地温の上昇をより好ましいものとすることができる。
【0018】
本発明の農業用フィルムは、5〜25μmの波長域における全光線透過率の平均値(C)が55%以下であることが好ましく、53%以下であることがより好ましく、50%以下であることが更に好ましい。5〜25μmの波長域における全光線透過率の平均値(C)を上記の範囲とすることにより、農業用フィルムで覆った箇所における土中の温度は、日が落ちた後においても地温の温度の低下を効率よく抑制することができる。
【0019】
本発明の農業用フィルムは、420〜470nmの波長域の全光線透過率の平均値(D)が50%以下であることが好ましく、48%以下であることがより好ましく、45%以下であることが更に好ましく、30%以下であることが特に好ましい。420〜470nmの波長域の全光線透過率の平均値(D)を上記の範囲とすることで、雑草の葉の正常な形態形成を抑制することができ、雑草の成長をより抑制することができる。
【0020】
本発明の農業用フィルムに使用する顔料は、銅成分を含まない顔料であれば特に限定することはなく、640〜690nmの波長域の全光線透過率の平均値(A)が40%以下であり、400〜700nmの波長域の全光線透過率の平均値(B)が15%以上であるという条件を満たすように調合した顔料を使用することができる。
【0021】
たとえば、二酸化チタン、酸化亜鉛や酸化鉄などの酸化物類や、タルク、クレーや群青、紺青などの珪酸塩類などの無機系顔料や、アゾ系顔料や多環式系顔料などの有機系顔料などを使用することができ、これらの顔料は単独で使用することもでき、2種類以上を組み合わせて使用することもできる。なかでも、有機系顔料であるピグメントイエロー系顔料を使用することが好ましい。ピグメントイエロー系顔料を使用することで、ピグメントイエロー系顔料の補色波長に近い640〜690nmの波長域の全光線透過率の平均値(A)や、420〜470nmの波長域の全光線透過率の平均値(D)の値を効率よく低減することができる。
【0022】
なお、「銅成分を含まない顔料」とは、顔料の中に実質的に銅成分を含んでいないことを意味し、前記顔料を使用することにより、本発明の農業用フィルム中にも実質的に銅成分を含まないことを意味する。よって、本発明の農業用フィルムには、非行為的に含まれた銅成分や、土壌中の環境に影響を及ぼさない程度のごくわずかな量の銅成分を含有するものも含まれる。
【0023】
また、本発明に使用する顔料成分は、樹脂成分の全質量に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.2〜7質量部であることがより好ましく、0.3〜5質量部であることが更に好ましい。さらに、顔料成分の全質量に対して、ピグメントイエローを5〜95質量部含有することが好ましく、10〜90質量部含有することがより好ましく、19〜80質量部含有することが特に好ましい。樹脂成分の全質量に対する顔料成分の含有量を上記の範囲とすることにより、640〜690nmの波長域の全光線透過率の平均値(A)が40%以下であり、かつ、400〜700nmの波長域の全光線透過率の平均値(B)が15%以上である農業用フィルムの製作がしやすくなる。
【0024】
本発明の農業用フィルムに使用する材質は、特に限定することはなく公知の熱可塑性樹脂を使用することができる。たとえば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルや、脂肪族芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどの生分解性樹脂を使用することができる。中でも、生分解性樹脂は、農業用フィルムとして使用した後、土中で分解させることができるため、本発明においては好ましく使用することができる。
【0025】
本発明の農業用フィルムに使用できる生分解性樹脂は、特に限定することはなく、一般的に入手することができる生分解性樹脂を使用することができる。例えば、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、セルロースエステル、乳酸系ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂などがあげられる。なかでもフィルムを作製する時の生産性や圃場に展張する際の作業性、また使用後の生分解性を考慮すると、脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、乳酸系ポリエステル系樹脂などを使用することが好ましい。
【0026】
<脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂>
本発明に使用できる脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂は、脂肪族ジカルボン酸単位と、芳香族ジカルボン酸単位と、鎖状脂肪族及び/または脂環式ジオール単位とを含み、芳香族ジカルボン酸単位の含有量は、脂肪族ジカルボン酸単位と芳香族ジカルボン酸単位の全量を基準(100モル%)として、5〜60モル%である。
【0027】
本発明に使用できる脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂は、具体的には、例えば、下記式(1)で表される脂肪族ジオ−ル単位、下記式(2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位、及び、下記式(3)で表される芳香族ジカルボン酸単位を必須成分とするものである。
【0028】
−O−R1−O− (1)
(式中、R1は2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/または2価の脂環式炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。)
−OC−R2−CO− (2)
(式中、R2は直接結合を示すか、2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/または2価の脂環式炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。)
−OC−R3CO− (3)
(式中、R3は2価の芳香族炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。)
式(1)のジオール単位を与えるジオール成分は、炭素数が通常2〜10のものであり、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。中でも、炭素数2以上4以下のジオールが好ましく、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールがより好ましく、1,4−ブタンジオールが特に好ましい。
【0029】
式(2)のジカルボン酸単位を与えるジカルボン酸成分は、炭素数が通常2以上10以下のものであり、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられる。中でも、コハク酸またはアジピン酸が好ましい。
【0030】
式(3)の芳香族ジカルボン酸単位を与える芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、中でも、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましく、テレフタル酸が特に好ましい。また、芳香環の一部がスルホン酸塩で置換されている芳香族ジカルボン酸が挙げられる。なお、脂肪族ジカルボン酸成分、脂肪族ジオール成分及び芳香族ジカルボン酸成分は、それぞれ2種類以上を用いることもできる。
【0031】
本発明における脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂には、脂肪族オキシカルボン酸単位が含有されていてもよい。脂肪族オキシカルボン酸単位を与える脂肪族オキシカルボン酸の具体例としては、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、またはこれらの混合物等が挙げられる。さらに、これらの低級アルキルエステル又は分子内エステルであってもよい。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体またはラセミ体の何れでもよく、形態としては固体、液体または水溶液のいずれであってもよい。これらの中で好ましいものは、乳酸またはグリコール酸である。これら脂肪族オキシカルボン酸は単独でも、2種以上の混合物としても使用することができる。
【0032】
この脂肪族オキシカルボン酸の量は、脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂を構成する全構成成分中、0〜30モル%であるのが好ましく、更に0.01〜20モル%であるのが好ましい。
【0033】
本発明における脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、190℃、2.16kg荷重で測定した場合、好ましくは0.1〜100g/10分であり、更に好ましくは0.1〜50g/10分であり、特に好ましくは0.1〜30g/10分である。
【0034】
このような脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂の具体例としては、BASF社製「Ecoflex」、S−EnPol社製「EnPol」などが挙げられる。
【0035】
<脂肪族ポリエステル系樹脂>
本発明に使用できる脂肪族ポリエスエステル系樹脂は、ジカルボン酸単位としてアジピン酸単位を含む脂肪族ポリエステル系樹脂やジカルボン酸単位としてアジピン酸単位を含まない脂肪族ポリエステル系樹脂等を使用することができる。
【0036】
本発明に使用できる脂肪族ポリエステル系樹脂の構成成分である脂肪族ポリエステル系樹脂は、脂肪族ジオール単位と脂肪族ジカルボン酸単位を主成分とする脂肪族ポリエステル系樹脂であることが好ましい。ここで、「主成分」とは、脂肪族ポリエステルを構成する単量体単位全体を基準(100モル%)として、脂肪族ジオール単位と脂肪族ジカルボン酸単位が70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上であることをいう。
【0037】
脂肪族ポリエステル系樹脂を具体的に示すと、例えば下記式(4)で表される鎖状脂肪族及び/または脂環式ジオール単位、並びに、下記式(5)で表される鎖状脂肪族及び/または脂環式ジカルボン酸単位からなるものである。
【0038】
−O−R4−O− (4)
(式中、R4は2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/または2価の脂環式炭化水素基を示す。共重合されている場合には、樹脂中に二種以上のR4が含まれていてもよい。)
−OC−R5−CO− (5)
(式中、R5は2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/または2価の脂環式炭化水素基を示す。共重合されている場合には、樹脂中に二種以上のR5が含まれていてもよい。)
なお、上記式(4)、式(5)において、「2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/または2価の脂環式炭化水素基」とは、2価の鎖状脂肪族炭化水素基と2価の脂環式炭化水素基の両方を含んでいてもよいという意味である。また、以下「鎖状脂肪族及び/または脂環式」を単に「脂肪族」と略記する場合がある。
【0039】
前記脂肪族ポリエステル系樹脂は、上記式(4)のジオール単位として、1,4ブタンジオール単位を必須成分として含むものである。1,4ブタンジオール単位の含有量は、脂肪族ポリエステル系樹脂を構成する単量体単位全体を基準(100モル%)として、30〜60モル%、特に40〜50モル%であるのが好ましい。
【0040】
1,4ブタンジオール単位以外のジオール単位としては特に限定されないが、炭素数3〜10個の脂肪族ジオール単位が好ましく、炭素数4〜6個の脂肪族ジオール単位が特に好ましい。具体的には1,3−プロパンジオール、1,4−ヘキサンジメタノール等が挙げられる。前記脂肪族ジオール単位を与えるジオール成分は2種類以上を用いることもできる。
【0041】
前記脂肪族ポリエステル系樹脂は、更に、ジカルボン酸単位としてコハク酸単位を必須成分として含むものである。
【0042】
また、脂肪族ポリエステル系樹脂はジカルボン酸単位としてアジピン酸を必須成分として含む場合、アジピン酸単位の含有量は、脂肪族ポリエステル系樹脂を構成する単量体単位全体を基準(100モル%)として、0.5〜20モル%であるのが好ましく、1〜15モル%であるのが更に好ましい。
【0043】
コハク酸単位、アジピン酸単位以外のジカルボン酸単位としては特に限定されないが、炭素数2〜10個の脂肪族ジカルボン酸単位が好ましく、炭素数4〜8個の脂肪族ジカルボン酸単位が特に好ましい。具体的には、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられる。前記脂肪族ジカルボン酸単位を与えるジカルボン酸成分は2種類以上を用いることもできる。
【0044】
更に、前記脂肪族ポリエステル系樹脂は、脂肪族オキシカルボン酸単位を含有していてもよい。脂肪族オキシカルボン酸単位を与える脂肪族オキシカルボン酸の具体例としては、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸等、またはこれらの低級アルコールもしくは分子内エステルが挙げられる。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体またはラセミ体の何れでもよく、形態としては固体、液体または水溶液の何れであってもよい。これらの中で特に好ましいのは、乳酸またはグリコール酸である。これらの脂肪族オキシカルボン酸は単独でも、2種以上の混合物としても使用することもできる。
【0045】
脂肪族オキシカルボン酸単位の含有量は、脂肪族ポリエステル系樹脂を構成する単量体単位全体を基準(100モル%)として、0〜30モル%であるのが好ましく、更に0.01〜20モル%であるのが好ましく、特に0.01〜10モル%であるのが好ましい。
【0046】
このような脂肪族ポリエステル系樹脂の具体例としては、三菱化学社製「GSPla」、昭和電工社製「ビオノーレ」などが挙げられる。
【0047】
<乳酸系ポリエステル系樹脂>
本発明に使用できる乳酸系ポリエステル系樹脂は、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸またはそれらの混合物、ラクチドなどのホモポリマーまたはコポリマーなどが使用できる。乳酸系ポリエステル系樹脂は、これらの原料から直接脱水縮合またはラクチドの開環重合などによって製造することができるが、製法は特に限定されない。また、乳酸系ポリエステル系樹脂の性質を損なわない程度に、乳酸以外の他のヒドロキシカルボン酸、脂肪族多価アルコール、脂肪族多塩基酸等を共重合してもかまわない。
【0048】
このような乳酸系ポリエステル系樹脂の具体例としては、Nature Works社製「Ingeo Biopolymer」、浙江海正生物材料社製「REVODE」などが挙げられる。
【0049】
また、この様にして製造された乳酸系ポリエステル系樹脂を、他の脂肪族ポリエステル系樹脂、または、脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂と事前に混合した原料を用いることもできる。
【0050】
このような乳酸系ポリエステル系樹脂との混合系樹脂の具体例としては、BASFジャパン社製「Ecovio Fブレンド C2224」などが挙げられる。
【0051】
<その他の成分>
本発明の農業用フィルムに使用できる熱可塑性樹脂は、さらに、従来公知の各種添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、結晶核剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、紫外線吸収剤、耐光剤、可塑剤、安定剤、着色剤、難燃剤、離型剤、帯電防止剤、防曇剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、滑剤、分散剤や各種界面活性剤、加水分解防止剤等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。これらの中で特にスリップ剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤は配合した方が好ましい。
【0052】
スリップ剤としては、炭素数6〜30の不飽和脂肪酸からなる不飽和脂肪酸アマイド、不飽和脂肪酸ビスアマイドが挙げられ、エルカ酸アマイド、エルカ酸ビスアマイドが好ましい。
【0053】
アンチブロッキング剤としては、炭素数6〜30の飽和脂肪酸アマイド、または飽和脂肪酸ビスアマイド(例えばステアリン酸アマイド、ステアリン酸ビスアマイド)、メチロールアマイド、エタノールアマイド、天然シリカ、合成シリカ、合成ゼオライト、タルク等が挙げられる。
【0054】
紫外線吸収剤としては、トリアジン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸系、シアノアクリレート系等が挙げられ、その中でも、トリアジン系、ベンゾトリアゾール系またはベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましい。
【0055】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール:CAS Number2725−22−6で表される化合物(例えばCytecのCYASORB UV−1164)や、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール:CAS Number 147315−50−2(例えばBASFジャパンのTinuvin1577FF)、2−[4,6−ビス(ジフェニル−4−イル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−フェノール(例えば、BASFジャパンのTinuvin1600)を用いることができる。
【0056】
ベンゾトリアゾール系またはベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル6−(tert-ブチル)フェノール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、オクタベンゾン、2,2’−ジヒドロキシ−4−4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−4,4’−テトラヒドロベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0057】
酸化防止剤としては、BHT、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−α,α’,α”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H,5H)−トリオン、カルシウムジエチルビス[{3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル}メチル]ホスホネート、ビス(2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメチルフェニル)エタン、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオンアミド、n−オクタデシル3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、トリデシルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’―ジイルビスホスフォナイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等のリン系酸化防止剤、3−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン−2−オンとキシレンの反応生成物等のラクトン系酸化防止剤、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤及びこれらの2種以上の混合物などが例示できる。
【0058】
安定剤としては脂肪酸金属塩が挙げられる。脂肪酸金属塩の脂肪酸成分としてはカルボキシル基を有する通常炭素数が6〜30の鎖状のカルボン酸であり、直鎖状でも分岐状でもよく、また飽和結合のみでも不飽和結合を有していてもよい。脂肪酸の具体例としてはカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、モンタン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エイコセン酸、エルシン酸、エライジン酸、トランス11エイコセン酸、トランス13ドコセン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、エルカ酸等が挙げられる。
【0059】
一方、金属原子としては、周期表の1A、2A、2B及び3B族の原子が好ましい。好ましい例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、アルミニウム、亜鉛などが挙げられる。
【0060】
脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸アルミニウム、モンタン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは1種でもよく2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でもステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸マグネシウム及びラウリン酸アルミニウムが好ましい。
【0061】
分散剤としては、モンタンワックス等のエステル系ワックスが挙げられる。
【0062】
また、本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で生分解性樹脂及び天然物、例えば、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、セルロースエステル等や澱粉、セルロース、紙、木粉、キチン・キトサン質、椰子殻粉末、クルミ殻粉末等の動物/植物物質微粉末またはこれらの混合物を配合することができる。
【0063】
耐光剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−n−ブチル−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−n−ブチル−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)マロネート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチル−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチル−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)マロネート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスド(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスド(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスド{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−〔2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン〕ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスド{1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−〔2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン〕ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,2−ビス(3−オキソ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)エタン、1−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニル)ペンタン、ポリ〔1−オキシエチレン(2,2,6,6−テトラメチル−1,4−ピペリジル)オキシスクシニル〕、ポリ〔2−(1,1,4−トリメチルブチルイミノ)−4,6−トリアジンジイル−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノヘキサメチレン−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス〔N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ〕−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物及びそのN−メチル化合物、コハク酸と1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重縮合物、ポリ[{6−((1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、オレフィン(C20−C24)・無水マレイン酸・4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン共重合物等が挙げられる。
【0064】
また、本発明の農業用フィルムに使用できる熱可塑性樹脂は、無機充填材を含有してもよい。無機充填剤の含有量は、農業用フィルムの樹脂成分の全質量100質量部に対して、好ましくは0.05〜10質量部、より好ましくは0.1〜9.5質量部、更に好ましくは0.5〜9.0質量部である。無機充填材を上記のように含有させることで、農業用フィルムを生産する際、農業用フィルムの樹脂成分を適度な粘度とすることができ、より良好な成形性を得ることが可能となる。
【0065】
本発明に使用できる無機充填材としては、シリカ、雲母、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、ケイ藻土、アロフェン、ベントナイト、チタン酸カリウム、ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、カオリン、カオリナイト、ガラス、石灰石、カーボン、ワラステナイト、焼成パーライト、珪酸カルシウム及び珪酸ナトリウム等の珪酸塩、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸第二鉄、酸化亜鉛、酸化鉄、リン酸アルミニウム並びに硫酸バリウム等が挙げられ、これらのうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0066】
また、本発明の農業用フィルムの熱可塑性樹脂に生分解性樹脂を使用した、農業用生分解性フィルムは、顔料に銅成分を含まない顔料を使用することにより、使用後、農業用生分解性フィルムが分解した際においても、土中に銅成分を残留させない方法として特に好ましく使用することができる。
【0067】
本発明の農業用生分解性フィルムの厚さは、5μm〜50μmが好ましく、5μm〜40μmがより好ましく、5μm〜35μmが更に好ましく、5μm〜30μmがとりわけ好ましい。生分解性フィルムの厚さを5μm以上とすることでフィルムの成形をより安定させることができ、展張作業等に使用するときに強度が不十分になることを抑制することができる。また、フィルム厚さを50μm以下とすることで、本発明で規定する640〜690nmの波長域の全光線透過率の平均値(A)や400〜700nmの波長域の全光線透過率の平均値(B)の値をより好ましいものとすることができる。
【0068】
また、本発明の農業用フィルムの表面には、商品名や製造ロットなどの印字を印刷(マーキング)することができる。該印字に使用する色彩は、農業用フィルムの色彩に対して識別しやすい色彩とすることが好ましい。また、該印字に使用する顔料は、銅成分を含まない顔料を使用することが好ましい。
【0069】
本発明の農業用フィルムを作製する場合の、熱可塑性樹脂の混練方法は、樹脂組成物の混練方法として一般的な方法が使用できる。具体的には、ペレットや粉体、固体の細片等をヘンシェルミキサーやリボンミキサーで乾式混合し、単軸や2軸の押出し機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロールなどの公知の溶融混練機に供給して溶融混練することができる。
【0070】
熱可塑性樹脂組成物からフィルムを成形加工する方法は、押出機を用いてTダイにて押出ししたフィルムをキャストロールで冷却固化する押出成形や、インフレーション成形機により成形する方法が適している。
【実施例】
【0071】
以下本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0072】
[評価方法]
(1)全光線透過率(A)、(B)、(D)の測定方法(単位:%)
島津製作所社製(UV−2450)を用いて、得られたフィルムの測定波長域200〜900nmにおける全光線透過率を測定し、平均値算出方法にて0.5nm毎の測定データを取出し、640〜690nm(A)、400〜700nm(B)、420〜470nm(D)の各波長域の全光線透過率の平均値を算出した。
【0073】
(2)全光線透過率(C)の測定方法(単位:%)
日立製作所製赤外分光光度計(270−30形)を用いて、得られたフィルムの2.5〜25μmにおける全光線透過率を測定し、得られたチャートから5μm以上25μmまでの、1μm毎の透過率を読み取り、5〜25μmの波長域の全光線透過率の平均値(C)を算出した。
【0074】
(3)雑草抑制効果の評価
三重県松阪市の農地に平成26年9月から得られたフィルム(マルチフィルム)を展張し、約2か月後の雑草繁茂抑制効果について、黒色のフィルム(比較例2)を使用した場合の雑草の繁茂状態を基準とし、各フィルムの評価を下記の基準で評価した。
◎:雑草の繁茂状態が同等
○:雑草の繁茂状態が若干多い
×:雑草の繁茂状態が多い
【0075】
[使用原料]
・脂肪族芳香族ポリエステル(A):BASF社製 商品名「Ecoflex」
・脂肪族ポリエステル(B−1):三菱化学社製 商品名「GSPla FZ91PN」
・脂肪族ポリエステル(B−2):三菱化学社製 商品名「GSPla FD99WN」
・無機充填材(タルク):日本ミストロン社製 商品名「MISTRON850JS」
[使用顔料]
・ピグメントイエロー138
・カーボンブラック
・ピグメントブルー27
[実施例1〜2及び比較例1〜2]
顔料及び無機充填材については、事前に脂肪族ポリエステル(B−1)と一定量で混合したものを二軸の押出し機を用いて溶融混練してマスターバッチを作製し、各々表1に記載されている配合により、ペレット状態でドライブレンドし、シリンダ及びダイス温度は脂肪族芳香族ポリエステルの溶融温度+40℃に設定し、モダン社製のインフレーション成形機を用いて、厚み18μmのフィルムを成形した。
【0076】
得られたフィルムを上記の試験方法により、各波長域における全光線透過率の平均値を測定し、得られた結果を表1に示す。
【表1】
【0077】
表1より、実施例1及び2の農業用フィルムは、640〜690nmの波長域の全光線透過率の平均値(A)と、400〜700nmの波長域における全光線透過率の平均値(B)が本発明に規定する範囲であり、雑草の成長を抑制しつつ、地温上昇機能があることが分かる。
【0078】
これに対して、比較例1の透明の農業用フィルムは、640〜690nmの波長域の全光線透過率の平均値(A)が高く、雑草が成長しやすいことが分かり、また比較例2の黒色の農業用フィルムは、640〜690nmの波長域の全光線透過率の平均値(A)が低く、雑草の成長は抑制できるが、400〜700nmの波長域における全光線透過率の平均値(B)も低いことから、地温上昇機能が劣っていることが分かる。
【0079】
従って、本発明により、地温の上昇、雑草の生育抑制に優れ、更に、土壌中に銅成分を残留させない農業用フィルム及び農業用生分解性フィルムを提供することが可能となる。