特許第6886248号(P6886248)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6886248セルロースナノファイバー・顔料分散液の製造方法、およびセルロースナノファイバー・顔料分散液の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886248
(24)【登録日】2021年5月18日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】セルロースナノファイバー・顔料分散液の製造方法、およびセルロースナノファイバー・顔料分散液の製造装置
(51)【国際特許分類】
   C09D 17/00 20060101AFI20210603BHJP
   B01J 13/00 20060101ALI20210603BHJP
   B01F 17/52 20060101ALI20210603BHJP
   B01F 3/12 20060101ALI20210603BHJP
   B01F 5/12 20060101ALI20210603BHJP
   C08B 11/12 20060101ALI20210603BHJP
   C09B 67/46 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   C09D17/00
   B01J13/00 C
   B01F17/52
   B01F3/12
   B01F5/12
   C08B11/12
   C09B67/46 B
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-113081(P2016-113081)
(22)【出願日】2016年6月6日
(65)【公開番号】特開2017-218493(P2017-218493A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2019年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000229047
【氏名又は名称】日本スピンドル製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100091591
【弁理士】
【氏名又は名称】望月 秀人
(72)【発明者】
【氏名】中谷 丈史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸治
(72)【発明者】
【氏名】浅見 圭一
(72)【発明者】
【氏名】高木 啓次
【審査官】 仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−531479(JP,A)
【文献】 特開2017−048274(JP,A)
【文献】 特表2017−502097(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/016755(WO,A1)
【文献】 特開2002−143662(JP,A)
【文献】 特開2015−037009(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0203219(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/042652(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 17/00
B01F 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースナノファイバーを分散安定剤として含む分散系によるセルロースナノファイバー分散液に顔料を供給することによるセルロースナノファイバー・顔料分散液の製造方法において、
粉体混合ポンプに該粉体混合ポンプの吸込口から供給される前記セルロースナノファイバー分散液に、前記顔料を前記粉体混合ポンプの粉体供給口からケーシング内に供給しながら、該ケーシング内でセルロースナノファイバー分散液中のセルロースナノファイバーと顔料とを混合させることを特徴とするセルロースナノファイバー・顔料分散液の製造方法。
【請求項2】
前記粉体混合ポンプから吐出されたセルロースナノファイバー・顔料分散液をタンクに貯留させ、該タンク内に配設した攪拌装置によりセルロースナノファイバーと顔料との混合を継続させることを特徴とする請求項1に記載のセルロースナノファイバー・顔料分散液の製造方法。
【請求項3】
前記タンクから次工程へセルロースナノファイバー・顔料分散液を給送する送出ポンプから吐出されるセルロースナノファイバー・顔料分散液の一部を、前記粉体混合ポンプの吸込口側に返戻させることを特徴とする請求項2に記載のセルロースナノファイバー・顔料分散液の製造方法。
【請求項4】
前記セルロースナノファイバーが、セルロースナノファイバーのグルコース単位当たりのカルボキシメチル基置換度が0.01〜0.50であるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のセルロースナノファイバー・顔料分散液の製造方法。
【請求項5】
前記セルロースナノファイバーの配合比率が、前記分散系中で0.05〜2重量%であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のセルロースナノファイバー・顔料分散液の製造方法。
【請求項6】
セルロースナノファイバーを分散安定剤として含む分散系によるセルロースナノファイバー分散液が吸込口から供給されると共に、粉体供給口から顔料が供給されて、ケーシング内でセルロースナノファイバー分散液中のセルロースナノファイバーと顔料とを混合させてセルロースナノファイバー・顔料分散液を調製する粉体混合ポンプと、
粉体混合ポンプの吐出口から吐出されたセルロースナノファイバー・顔料分散液を貯留するタンクと、
前記タンクに設置された攪拌装置と、
からなり、
タンクに貯留されたセルロースナノファイバー・顔料分散液を攪拌することを特徴とするセルロースナノファイバー・顔料分散液の製造装置。
【請求項7】
前記タンクから次工程へセルロースナノファイバー・顔料分散液を給送する送出ポンプを備え、該送出ポンプから吐出されるセルロース・顔料分散液の一部を、前記粉体混合ポンプに返戻させることを特徴とする請求項6に記載のセルロースナノファイバー・顔料分散液の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
溶液中の顔料を分散させると共に、分散している状態が安定して維持されるセルロースナノファイバー・顔料分散液の製造方法およびセルロースナノファイバー・顔料分散液の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸カルシウム等の難溶性のミネラルは、例えば、飲食品のミネラル強化のために利用されているが、飲食品が液体製品である場合に、保存中にこのミネラルが沈殿を起こさないことが要求される。このため、炭酸カルシウムや二酸化チタン等の無機物質およびキナクリドン等の有機物質の極性溶媒中での分散には、水溶性アクリル樹脂や水溶性スチレン・アクリル樹脂、水溶性スチレン・マイレン酸樹脂等の合成水溶性高分子、または水溶性大豆多糖類あるいはアラビアガム、キサンタンガム、ペクチン、各種澱粉等の水溶性多糖類やゼラチン、カゼインナトリウム、ホエー等の蛋白質等の天然水溶性高分子、もしくはカルボキシメチルセルロース(CMC)やメチルセルロース(MC)あるいは可溶性澱粉に代表される加工澱粉等の半天然半合成水溶性高分子が、用途に応じて分散安定剤として使用される場合がある。
【0003】
しかし、合成水溶性高分子を用いる場合には、長時間の放置によって二酸化チタンやキナクリドンが沈殿して良好な分散状態が維持されない場合がある。
【0004】
また、天然または半天然半合成水溶性高分子を用いる場合には、分散状態を維持するための大量の分散安定剤が必要となり、分散液の粘度が上昇するために製造時の作業性と製品の品質を損なうおそれがあり、また、製造コストが高くなってしまう。
【0005】
一方、セルロースナノファイバー(CNF)も微粒物質の分散安定剤として効果を有することが知られている。CNFは微細な結晶構造を有する繊維であるため、分散液中では、攪拌時には流動性を有し、静置時には物理的なネットワーク構造を形成することから、前記水溶性高分子のような長時間放置時の沈降や攪拌時の粘度状を伴うことなく分散安定性を有する。
【0006】
しかしながら、CNFによって形成される物理的なネットワーク構造は、弱い攪拌でも簡単に崩されるものの、均一にせん断力が付与される攪拌機や分散機を使用しない場合にはゲル状の粒が含まれた不十分な分散状態となり、当該粒が大きいほど分散・安定効果が小さくなる問題があった。
【0007】
また、CNFは顔料の分散剤として利用できることが知られているが、前述したように、均一なせん断力を付与できる攪拌機・分散機を用いなければ、分散状態が不十分になってしまうことも知られている。そのため、CNFを顔料に対する分散剤として利用する場合には、用途が限定されて実施されることになる。
【0008】
ところで、CNFは木材繊維から生成される植物繊維由来のものであるから、再生可能な資源である。しかも、生産・廃棄に関する環境負荷が小さく、軽量で、弾性率が高く、温度変化に伴う伸縮率が小さく、高いガスバリア性を示す等の優れた特徴を備えていることから、種々の分野において注目されている。
【0009】
このようなCNFの利点に着目し、本願出願人は、前記変性セルロースナノファイバーの製造方法を提案した(特許文献1参照)。また、顔料とセルロースナノファイバーとを含む製紙用コーティング材を提案した(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2014−70204号公報
【特許文献2】特開2013−256546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前述したように、顔料とCNFとを十分な攪拌を行わずに混合させた状態で、これら顔料の分散状態が不十分となってしまって、コーティング材として利用する際には制限を受けてしまっている。
【0012】
そこで、この発明は、CNF分散液に顔料を混合させて分散状態を安定して維持させることができるようにしたセルロースナノファイバー・顔料分散液の製造方法とセルロースナノファイバー・顔料分散液の製造装置とを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的のため、この発明に係るセルロースナノファイバー・顔料分散液の製造方法は、セルロースナノファイバーを分散安定剤として含む分散系によるセルロースナノファイバー分散液に顔料を供給することによるセルロースナノファイバー・顔料分散液の製造方法において、粉体混合ポンプに該粉体混合ポンプの吸込口から供給される前記セルロースナノファイバー分散液に、前記顔料を前記粉体混合ポンプの粉体供給口からケーシング内に供給しながら、該ケーシング内でセルロースナノファイバー分散液中のセルロースナノファイバーと顔料とを混合させることを特徴としている。
顔料をセルロースナノファイバーの分散液(CNF分散液)に混合させる際に、粉体混合ポンプを用いるものである。粉体混合ポンプとしては、例えば、粉体吸引連続溶解分散装置(粉体混合ポンプ:特許第4458536号「ジェットペースタ」(商標登録第5344672号)を用いることが好ましい。
【0014】
また、上述のセルロースナノファイバー・顔料分散液の製造方法であって、前記粉体混合ポンプから吐出されたセルロースナノファイバー・顔料分散液をタンクに貯留させ、該タンク内に配設した攪拌装置によりセルロースナノファイバーと顔料との混合を継続させることが好ましい。
前記粉体混合ポンプから吐出されたセルロースナノファイバー・顔料分散液(CNF・顔料分散液)を次工程へ供給することもできるが、安定した供給のためには貯留させたタンクを介して供給することが好ましい。この場合、タンク内においても攪拌を継続させるようにしたものである。
【0015】
また、上述のセルロースナノファイバー・顔料分散液の製造方法であって、前記タンクから次工程へセルロースナノファイバー・顔料分散液を給送する送出ポンプから吐出されるセルロースナノファイバー・顔料分散液の一部を、前記粉体混合ポンプの吸込口側に返戻させることが好ましい。
すなわち、セルロースナノファイバー・顔料分散液の一部をタンクと粉体混合ポンプとの間を循環させることで攪拌と混合とがより確実に行われるようにしたものである。
【0016】
また、上述のセルロースナノファイバー・顔料分散液の製造方法であって、前記セルロースナノファイバーが、セルロースナノファイバーのグルコース単位当たりのカルボキシメチル基置換度が0.01〜0.50であるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーであることが好ましい。
また、上述のセルロースナノファイバー・顔料分散液の製造方法であって、前記セルロースナノファイバーの配合比率が、前記分散系中で0.05〜2重量%であることが好ましい。
これらは、分散安定性が良好なCNF同士のネットワーク構造を構築するのに適した配合比率とするものである。
【0017】
また、上述の目的を達成するためのセルロースナノファイバー・顔料分散液の製造装置は、セルロースナノファイバーを分散安定剤として含む分散系によるセルロースナノファイバー分散液が吸込口から供給されると共に、粉体供給口から顔料が供給されて、ケーシング内でセルロースナノファイバー分散液中のセルロースナノファイバーと顔料とを混合させてセルロースナノファイバー・顔料分散液を調製する粉体混合ポンプと、粉体混合ポンプの吐出口から吐出されたセルロースナノファイバー・顔料分散液を貯留するタンクと、前記タンクに設置された攪拌装置と、からなり、タンクに貯留されたセルロースナノファイバー・顔料分散液を攪拌することを特徴としている。
なお、粉体混合ポンプには、例えば、粉体吸引連続溶解分散装置(粉体混合ポンプ:特許第4458536号「ジェットペースタ」(商標登録第5344672号)を用いることが好ましい。
【0018】
また、上述のセルロースナノファイバー・顔料分散液の製造装置であって、前記タンクから次工程へセルロースナノファイバー・顔料分散液を給送する送出ポンプを備え、該送出ポンプから吐出されるセルロース・顔料分散液の一部を、前記粉体混合ポンプに返戻させることが好ましい。
セルロースナノファイバー・顔料分散液の一部をタンクと粉体混合ポンプとの間を循環させて、攪拌と混合とを促進させるようにしたものである。
【0019】
また、前記製造方法または製造装置によって製造されたセルロースナノファイバー・顔料分散液は、前記セルロースナノファイバーが、セルロースナノファイバーのグルコース単位当たりのカルボキシメチル基置換度が0.01〜0.50であるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーであり、セルロースナノファイバーの配合比率、前記分散系中で0.05〜2重量%とすることが好ましい。
この配合比率は、分散安定性の良好なCNF同士のネットワーク構造を構築するのに適したものである。
【発明の効果】
【0022】
この発明に係る顔料分散液の製造方法によれば、粉体混合ポンプの攪拌・混合作用を受けて、均一なせん断力が付与されることになり、CNFと顔料とを均一に分散させることができると共に、長時間放置された場合であっても沈降を生じることなく、攪拌時の粘度状を伴うことなく安定した分散状態が維持される。しかも、多量のCNFを要することがない。
【0023】
また、請求項2の発明に係るCNF・顔料分散液に製造法によれば、該CNF・顔料分散液を、次工程へ安定して供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】この発明に係るセルロースナノファイバー・顔料分散液を製造する工程の概略を説明する図である。
図2】セルロースナノファイバー・顔料分散液を製造した試験結果を示す図面代用写真であり、この発明に係る製造方法を実施して製造したセルロースナノファイバー・顔料分散液の実施例と、この製造方法以外の方法で製造したセルロースナノファイバー・顔料分散液の比較例とを示し、(a)は実施例1を、(b)は比較例1を、(c)は比較例2を、(d)は比較例3を、(e)は比較例4を、それぞれ示している。
図3図2に示す試験結果を評価した分散安定性評価表である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係るセルロースナノファイバー・顔料分散液の製造方法とセルロースナノファイバー・顔料分散液の製造装置を説明する。
【0026】
図1は、この発明に係る製造方法を実施するために適した製造装置を、製造工程と共に説明する図である。後述する解繊工程を経て製造されたセルロースナノファイバー(CNF)を分散剤として含有するCNF分散液が送液ポンプ1によって、粉体混合ポンプ2に給送される。一方、ホッパー3内に貯留された顔料は、定量ポンプ等の計量手段4を介して前記粉体混合ポンプ2に供給される。この粉体混合ポンプ2の内部に配されて、モータ5によって回転しているローターによってCNF分散液と顔料が該粉体混合ポンプ2のケーシング内で攪拌されながら混合され、前記CNF分散液中でCNFと顔料とが分散されたCNF・顔料分散液が製造される。
【0027】
前記粉体混合ポンプ2には、例えば、粉体吸引連続溶解分散装置(粉体混合ポンプ:特許第4458536号「ジェットペースタ」(商標登録第5344672号)を用いることが好ましい。
【0028】
製造されたCNF・顔料分散液は粉体混合ポンプ2の吐出口から吐出されてタンク6に給送される。なお、このタンク6には攪拌装置6aが備えられており、給送されたCNF・顔料分散液は攪拌されながら、送出ポンプ7によって次工程へ給送される。なお、このタンク6から前記送液ポンプ1の吸込口側に返戻させて、粉体混合ポンプ2にCNF・顔料分散液を循環させることで攪拌と混合をより確実に行わせるようにすることもできる。
【0029】
前記分散させる顔料としては、炭酸カルシウムやカーボンブラック、鉄黒、複合金酸化物ブラック、クロム酸亜鉛、クロム酸鉛、鉛丹、リン酸亜鉛、リン酸バナジウム、リン酸カルシウム、リンモリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム、トリポリリン酸アルミニウム、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、塩基性炭酸ビスマス、硝酸ビスマス、ケイ酸ビスマス、ハイドロタルサイト、亜鉛末、雲母状酸化鉄、硫酸バリウム、アルミナホワイト、シリカ、ケイソウ土、カオリン、タルク、クレー、マイカ、バリタ、有機ベントナイト、ホワイトカーボン、酸化チタン、亜鉛華、酸化アンチモン、リトポン、鉛白、ペリレンブラック、モリブデン赤、カドミウムレッド、ベンガラ、硫化セリウム、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ビスマスイエロー、シェナ、アンバー、緑土、マルスバイオレット、群青、紺青、塩基性硫酸鉛、塩基性ケイ酸鉛、硫化亜鉛、三酸化アンチモン、カルシウム複合物、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、オーカ、アルミニウム粉、銅粉、真鍮粉、ステンレス粉、酸化チタン被膜雲母、酸化鉄被膜雲母、亜鉛酸化銅、銀粒子、アナターゼ型酸化チタン、酸化鉄系焼成顔料、導電性金属粉、電磁波吸収フェライト等の無機顔料、またはキナクリドンレッド、ポリアゾイエロー、アンスラキノンレッド、アンスラキノンイエロー、ポリアゾレッド、アゾレーキイエロー、ベリレン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、イソインドリノンイエロー、ウォッチングレッド、パーマネントレッド、パラレッド、トルイジンマルーン、ベンジジンイエロー、ファーストスカイブルー、ブリリアンカーミン6B等の有機顔料あるいはこれらの2種類以上の混合物が挙げられる。なお、分散させる対象となる顔料の形状は、板状や球状、鱗片状その他任意の形状で構わず、特に限定されない。
【0030】
前記セルロースナノファイバー(CNF)は、繊維幅が4〜500nm程度、アスペクト比が100以上の微細繊維であり、化学処理(アニオン化:カルボキシル化(酸化)、カルボキシメチル化)した化学変性セルロースを解繊することによって得ることができる。
【0031】
また、化学変性セルロースを製造するためのセルロース原料には、例えば、木材や竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙)等の植物性材料、またはホヤ類等の動物性材料、藻類、例えば酢酸菌(アセトバクター)等の微生物、微生物生産物を起源とするもの等、これらのいずれをも使用できる。なお、好ましくは植物または微生物由来のセルロース繊維であり、植物由来のセルロース繊維がより好ましい。
【0032】
前記化学変性セルロースにカルボキシル化させたセルロースを用いる場合、該セルロースには、前述のセルロース原料を公知の方法でカルボキシメチル化させたものであっても、市販されているものであっても構わない。なお、いずれの場合も、セルロースの無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル基置換度が0.01〜0.50となるものが好ましい。
【0033】
(カルボキシメチル化)
カルボキシメチル化させたセルロースを製造する前述の公知の方法として、次のような方法がある。
セルロースを発底原料にし、溶媒として3〜20質量倍の水および/または低級アルコール、具体的には、水、メタノール、エタノール、N−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N−ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール等の、単独または2種以上の混合媒体を使用する。なお、低級アルコールを混合する場合の低級アルコールの混合割合は、60〜95質量%である。マーセル化剤としては、発底原料の無水グルコース残基当たり0.5〜20倍モルの水酸化アルカリ金属、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを使用する。発底原料と溶媒、マーセル化剤を混合し、反応温度0〜70℃、好ましくは10〜60℃、かつ反応時間15分〜8時間、好ましくは30分〜7時間、マーセル化処理を行う。その後、カルボキシルメチル化剤をグルコース残基当たり0.05〜10.0倍モル添加し、反応温度30〜90℃、好ましくは40〜80℃、かつ反応時間30分〜10時間、好ましくは1〜4時間、エーテル化反応を行う。
【0034】
(エステル化)
前記化学変性セルロースとして、リン酸基を導入したセルロースを用いる場合、セルロース原料に、リン酸基を有する化合物として、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、メタリン酸アンモニウム等が挙げられる。これらは1種、あるいは2種以上を併用してリン酸基を導入することができる。
セルロース原料に対するリン酸基を有する化合物の割合は、セルロース原料の固形分100質量部に対して、リン元素に換算した添加量が0.1〜500質量部であることが好ましく、1〜400質量部であることがより好ましく、2〜200質量部であることがさらに好ましい。
【0035】
(解繊)
アニオン変性セルロースを解繊する際に用いる装置は特に限定されないが、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式等の装置等の装置を用いることができる。解繊の際にはアニオン変性セルロースの水分散体に強力なせん断力を印加することが好ましい。特に、効率よく解繊するには、前記水分散体に50MPa以上の圧力を印加し、かつ、強力なせん断力を印加できる湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。前記圧力は、より好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。また、高圧ホモジナイザーでの解繊および分散処理に先立って、必要に応じて、高速せん断ミキサーなどの公知の混合、攪拌、乳化、分散装置を用いて、前記水分散体に予備処理を施してもよい。
【0036】
(分散液)
本発明において、CNFの配合比率は、分散液中で0.05〜2重量%であることが好ましい。0.05重量%未満であるとCNF同士によりネットワーク構造を作れなくなり分散安定化能が低いことがあり、2重量%以上であると分散液の粘度が上昇して、粉体混合ポンプ2における攪拌に支障が生じる場合がある。また、顔料およびCNFを含有する分散液の濃度(固形分)は、通常0.1〜50質量%で調製される。
【実施例】
【0037】
(実施例1)
あらかじめ分散系中のCNF最終濃度が0.2%になるように調製した3LのCNF分散液中に重質炭酸カルシウム(エスカロン1500「三共精粉株式会社製」)60gを投入し、粉体混合ポンプ2にて6000rpmで2分間攪拌した。その後、50mlを比色管に移し替え、23℃の室内にて1週間静置し、沈降性を評価した。
(比較例1)
粉体混合ポンプ2に替えて二重円筒型ホモミキサー(MARKII「プライミックス社製」)を攪拌装置として用い、CNFを添加せずに実施例1と同様に行った。
(比較例2)
粉体混合ポンプ2に替えて二重円筒型ホモミキサー(MARKII「プライミックス社製」)を攪拌装置として用い、6000rpmで2分間攪拌した以外は実施例1と同様に行った。
(比較例3)
粉体混合ポンプ2に替えてホモディスパー(高速分散機)を用い、1000rpmで2分間攪拌した以外は実施例1と同様に行った。
(比較例4)
分散剤にセオラス(旭化成ケミカルズ社製)を用いた以外は比較例3と同様に行った。
【0038】
これら実施例と比較例の分散安定性について行った結果を、図2の図面代用写真に示してある。また、この結果に基づいて行った評価を、分散安定性評価表として図3に示してある。すなわち、実施例1で顔料およびCNFの沈降が認められず、良好な分散安定性を示していると判断でき、分散安定剤としてCNFを用いると共に、粉体混合ポンプにより攪拌し混合させて得られたCNF・顔料分散液が最も良好な分散安定性を備えている。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明に係るセルロースナノファイバー・顔料分散液の製造方法によれば、分散安定性に優れたセルロースナノファイバー・顔料分散液を得ることができ、例えば製紙用コーティング材として利用する場合、印刷適正等が良好な良質のコーティング紙を提供することに寄与する。
【符号の説明】
【0040】
1 送液ポンプ
2 粉体混合ポンプ
3 ホッパー
4 計量手段
5 モータ
6 タンク
6a 攪拌装置
7 送出ポンプ
図1
図2
図3