特許第6886263号(P6886263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6886263エキスパンションジョイントカバーの支持装置、およびエキスパンションジョイント床構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886263
(24)【登録日】2021年5月18日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】エキスパンションジョイントカバーの支持装置、およびエキスパンションジョイント床構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/68 20060101AFI20210603BHJP
【FI】
   E04B1/68 100A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-176724(P2016-176724)
(22)【出願日】2016年9月9日
(65)【公開番号】特開2018-40219(P2018-40219A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110479
【氏名又は名称】ナカ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093986
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 雅男
(74)【代理人】
【識別番号】100128864
【弁理士】
【氏名又は名称】川岡 秀男
(72)【発明者】
【氏名】永谷 有弘
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 諒
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和彰
(72)【発明者】
【氏名】塩澤 正則
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−095385(JP,A)
【文献】 特開平03−081437(JP,A)
【文献】 特開2013−019267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
免震建造物と該免震建造物に移動用間隙を隔てて隣接する隣接構造体のいずれか一方に一端縁部において連結されて前記移動用間隙を閉塞するエキスパンションジョイントカバーの他端縁部側を進退移動自在に支承するエキスパンションジョイントカバーの支持装置であって、
高さ調整可能に形成されて前記免震建造物と隣接構造体のいずれか他方の設置基部上に立設され、上端部に上方に向けて開放される略コ字形状に形成される挟持片を設けた支持脚と、
2本の横桟間に複数の縦桟を固定して梯子状に枠組みして形成され、前記支持脚の挟持片に縦桟が挟持されて水平姿勢に支持されてエキスパンションジョイントカバーの他端縁部側を支承する受台とを有するエキスパンションジョイントカバーの支持装置。
【請求項2】
前記支持脚がネジあるいは接着剤からなる固定手段により設置基部に固定される請求項1記載のエキスパンションジョイントカバーの支持装置。
【請求項3】
前記受台は、縦桟と横桟とをビスにより枠組みして形成され、設置基部上に充填される充填材により支持脚とともに埋設される請求項1または2記載のエキスパンションジョイントカバーの支持装置。
【請求項4】
前記受台は、型材を枠組みして形成されるとともに、前記受台の型材には、固化状態の充填材に係止して該充填材との熱膨張率差による浮き上がり方向への移動を抑制する抜け止め片が形成される請求項1ないし3記載のエキスパンションジョイントカバーの支持装置
【請求項5】
免震建造物と該免震建造物に移動用間隙を隔てて隣接する隣接構造体のいずれか一方に設置される連結装置と、
前記免震建造物と隣接構造体のいずれか他方の設置基部上に設置される請求項1ないし4記載のエキスパンションジョイントカバーの支持装置と
前記連結装置に一端縁部が連結されるとともに、他端縁部側が前記支持装置により進退移動自在に支承されて前記移動用間隙を閉塞するエキスパンションジョイントカバーとを有するエキスパンションジョイント床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキスパンションジョイントカバーの支持装置、およびエキスパンションジョイント床構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
免震建造物と隣接構造体との間に形成される移動用間隙を閉塞するエキスパンションジョイントとしては、従来、特許文献1に記載のものが知られている。この従来例において、建築物と該建築物に溝を介して隣接するコンクリート躯体のそれぞれからは、差し筋が突設され、溝蓋(エキスパンションジョイントカバー)は、それぞれの差し筋に高さ調整して溶接固定される一対の受枠(受台)に一端を連結されるとともに、他端を摺動自在に支持されて設置される。この他端側を支持する受枠は、例えば、複数の鋼板を差し筋等にそれぞれ溶接することで枠状に組み上げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4778391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来例は、受台の施工に溶接作業を要するために、溶接技能者を手配しなければならない上に、溶接技能者の熟練度に応じて出来が左右されてしまいやすいという欠点がある。
【0005】
本発明は以上の欠点を解消すべくなされたものであって、施工をより容易にすることのできるエキスパンションジョイントカバーの支持装置の提供を目的とする。また、本発明の他の目的は、施工をより容易にすることのできるエキスパンションジョイント床構造の提供にある。
【0006】
一方、上述の従来例は、受台に鋼板を用いるために、その重量によって施工が手間がかかるという欠点がある。本発明のさらに他の目的は、このような欠点の解消を可能にし、施工をより容易にすることのできるエキスパンションジョイントカバーの支持装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上記目的は、
免震建造物1と該免震建造物1に移動用間隙2を隔てて隣接する隣接構造体3のいずれか一方に一端縁部において連結されて前記移動用間隙2を閉塞するエキスパンションジョイントカバー4の他端縁部側を進退移動自在に支承するエキスパンションジョイントカバーの支持装置であって、
高さ調整可能に形成されて前記免震建造物1と隣接構造体3のいずれか他方の設置基部5上に立設され、上端部に上方に向けて開放される略コ字形状に折曲して形成される挟持片35aを設けた支持脚6と、
2本の横桟9a間に複数の縦桟9bを固定して梯子状に枠組みして形成され、前記支持脚6の挟持片35aに縦桟9bが挟持されて水平姿勢に支持されてエキスパンションジョイントカバー4の他端縁部側を支承する受台7とを有するエキスパンションジョイントカバーの支持装置を提供することにより達成される。
【0008】
本発明によれば、エキスパンションジョイントカバー4の支持装置は、高さ調整可能に形成された支持脚6に受台7を組み付けて構成される。この組み付けは、例えばビス等によってすることが可能である。
【0009】
これにより、エキスパンションジョイントカバー4の水平支持は、支持脚6の高さを調整することで担保される。また、受台7は、進退移動自在にエキスパンションジョイントカバー4を支承するために面積を広く確保する必要があり、このため支持脚6の複数を用いて支承することによって設置基部5の不陸の影響を受けやすくなるが、このような不陸も支持脚6の高さを設置位置に応じて調整することにより吸収することができる。さらに、支持脚6による不陸の吸収により、複数枚のエキスパンションジョイントカバー4、4、・・の表面を面一に揃えることも容易にでき、これらを跨いで人や車両が通行しやすくなる。
【0010】
したがって本発明によれば、エキスパンションジョイントカバーの支持装置の施工は、専門技能や熟練度の要求される溶接作業を用いることなく、一般作業者によってより容易に進めることができる。また、施工時における手直しも、溶接による場合よりも極めて簡単になる。
【0011】
さらに、従来においては、鋼材を現場でガス切断、溶接するなどして受台7自体を製作していたが、予め受台7を用意しておくことにより、このような手間も省くことができるし、受台7の高さが異なるような現場においても、高さ調整機能を利用することで共通の受台7を使用することができる。同様に、従来においては、鋼材を現場でガス切断して事前に打ち込まれたアンカーに溶接するなどし、更にこの鋼材を受台7と溶接して、受台7の高さ調整を行っていたが、予め高さ調整可能な支持脚6を用意しておくことにより、このような手間も省くことができる。加えて、エキスパンションジョイントカバー4の厚さが異なるために受台7の高さが異なるような現場においても、支持脚6の高さ調整機能を利用することにより、エキスパンションジョイントカバー4の水平支持及びエキスパンションジョイントカバー4の表面の高さ調整も容易なものとなる。
【0012】
また、上記支持脚6の設置基部5上への設置は、ネジあるいは接着剤からなる固定手段8によることが可能である。具体的には例えば、コンクリートビスやコンクリート用接着剤を利用することが可能である。
【0013】
上記受台7は、例えば適宜の金属板材によって構成することが可能であるが、上述した従来例のようにコンクリート等の充填材10をより充填しやすくするための開口を備えた枠状にすることも可能である。このような枠状の受台7、すなわち受枠は、型材9をビス組みして構成することで施工が容易になる。この場合、型材9にビス穴等のビス受けを予め形成しておけば、ビス組みが容易になる。なお、このようにビス組みして構成する場合、受台7を予め工場で組み上げてから現場に搬入しても、あるいは、型材9を現場搬入した上で、現場において組み上げるようにしても足りる。
【0014】
また、エキスパンションジョイント床構造は、
免震建造物1と該免震建造物1に移動用間隙2を隔てて隣接する隣接構造体3のいずれか一方に設置される連結装置11と、
前記免震建造物1と隣接構造体3のいずれか他方の設置基部5上に設置される上述した支持装置12と、
前記連結装置11に一端縁部が連結されるとともに、他端縁部側が前記支持装置12により進退移動自在に支承されて前記移動用間隙2を閉塞するエキスパンションジョイントカバー4とを有し、
前記支持装置12は、高さ調整可能に形成されて連結装置11との水平位置においてエキスパンションジョイントカバー4の他端縁部を支持して構成することができ、支持装置12を連結装置11に合わせて高さ調整することにより、施工を容易に進めることができる。
【0015】
一方、本発明に係るエキスパンションジョイントカバー用の受台は、上述のように受台の重量による施工性の低下を改善できるもので、
型材9を枠組みして形成され、設置基部5上に設置されて該設置基部5上に充填される充填材10により埋設されるエキスパンションジョイントカバー用の受台であって、
前記型材9には、固化状態の充填材10に係止して該充填材10との熱膨張率差による浮き上がり方向への移動を抑制する抜け止め片13が押出成形により形成して構成される。
【0016】
本発明によれば、枠状の受台7である受台は、固化状態の充填材10に係止して浮き上がり方向への移動を抑制する抜け止め片13を備えて構成される。この抜け止め片13は、充填材10と熱膨張率差が高い材料によりエキスパンションジョイントカバー用の受台7を形成した場合に、施工後の温度環境の変化により充填材10との膨張差によって長手方向により延伸してしまい、太鼓状に浮き上がってしまうことを防止する。
【0017】
したがって本発明によれば、受台7の材料選択の幅を広げることができ、このような材料選択の高い自由度を通じて、より軽量の材料を採用することによる施工性の向上に貢献できる。言い換えれば、このような材料選択の自由度を向上させる過程で生じる、充填材10との熱膨張率差に起因する不具合の発生をも抑制することができるものである。
【0018】
具体的には例えば、充填材10として一般に用いられるモルタルやコンクリートなどと熱膨張率が近似する鋼ではなく、アルミニウム等のより軽量ではあるものの熱膨張率が相違する材料によって受台7を形成することにより、比重が格段に大きい鋼で受台7を形成する従来例に比べて、施工性が格段に向上する。
【0019】
また、上述の抜け止め片13が押出成形により形成されることによって、型材9の生産効率を良好に維持することもできる。
【発明の効果】
【0020】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、施工をより容易にすることのできるエキスパンションジョイントカバーの支持装置、エキスパンションジョイント床構造、およびエキスパンションジョイントカバー用の受台を提供することができ、免震施設のより簡易な構築に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】免震建造物の基礎周りの構造を説明する図で、(a)は要部縦断面図、(b)は(a)の要部拡大図である。
図2】本発明に係るエキスパンションジョイント床構造を示す図で、(a)は平面図、(b)はエキスパンションジョイントカバー取り付け前の施工途上の斜視図である。
図3】受台の設置状態を示す図で、(a)は平面図、(b)は要部縦断面図である。
図4】受台を示す図で、(a)は分解斜視図、(b)は支持脚の拡大斜視図、(c)は型材の断面図、(d)は受台の斜視図である。
図5】受台の施工過程を示す図で、(a)は支持脚を設置した状態を示す斜視図、(b)は支持脚への受台の取り付け作業を示す斜視図、(c)は受台の設置が完了した状態を示す斜視図である。
図6】連結装置周辺を示す要部縦断面図である。
図7】補助用支持脚を示す斜視図である。
図8】地震発生時におけるエキスパンションジョイントの挙動を示す図で、(a)は移動用間隙が狭まったときを示す縦断面図、(b)は移動用間隙が広がったときを示す縦断面図である。
図9】補助用支持脚の施工状態を示す図で、(a)は補助用支持脚の受台への組み付け初期段階の作業を示す側面図、(b)は組み付け終期段階の作業を示す側面図、(c)は施工完了状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1ないし図8に本発明の実施の形態を示す。図1(a)に示すように、建造物(免震建造物1)は、地盤20を掘り下げて形成されたコンクリート躯体21上に設置されるアイソレータ等の免震装置22上に構築される。上記コンクリート躯体21は、地表面23下において建造物1の周囲まで延設され、建造物1から一定間隔離れた位置で地表面23に露出して建造物1の外側に舗装面(隣接構造物3)を提供する。
【0023】
また、この実施の形態においてコンクリート躯体21には、上記舗装面3よりも少し手前で免震装置22の設置面から地表面23近傍まで立ち上がるようにして縦壁21aが形成され、建造物1の下端には、この縦壁21aのほぼ直上位置まで周囲に向かって張り出すようにしてコンクリートが打設されて建造物1に付帯の犬走りを構成する張り出し部1aが形成される。コンクリート躯体21は、上記縦壁21aの上端よりもやや低い位置からさらに外側に向かって延設されて凹形状をなすようにして舗装面3へと連続し、これにより上記張り出し部1aと舗装面3との間において移動用間隙2が形成される。なお、移動用間隙2は、上述した免震装置22の設置面の深さのままコンクリート躯体21を舗装面3の直近まで水平方向に拡幅し、上述の縦壁21a等を省略して構成することも可能である。
【0024】
地震が発生した際には、上記舗装面3が振幅及び方向ともに地震動の大きさそのままに振動するのに対し、建造物1は免震装置22により地震動が吸収されるため、図8に示すように舗装面3と張り出し部1aとの間隔が拡縮するが、移動用間隙2がこの拡縮を吸収することにより舗装面3と張り出し部1aとの衝突が避けられる。本発明に係るエキスパンションジョイント床構造は、このような拡縮の吸収を妨げることなく、移動用間隙2をエキスパンションジョイントにより覆って構築される。
【0025】
上記エキスパンションジョイント床構造は、図1(b)に示すように、移動用間隙2を閉塞するエキスパンションジョイントカバー4と、エキスパンションジョイントカバー4の一端縁部が垂直回転自在に連結される連結装置11と、エキスパンションジョイントカバー4の他端縁部を進退移動自在に支承する支持装置12とを有する。この実施の形態において、上記エキスパンションジョイントカバー4は、図1(b)および図2(a)に示すように、グレーチング24の表面に縞鋼板からなる表面材25を溶接固定し、幅1m前後、長さ1.5m前後のサイズに形成される。このエキスパンションジョイントカバー4の先端の表面部には、縞鋼板からなるスロープ材26が垂直回転自在に連結される。なお、図2(a)において27は、後述する連結ボルト28をグレーチング24に締結しやすくするための表面材25の開口部分を覆うキャップ27である。
【0026】
上記連結装置11は、図2(b)および図6に示すように、金属材料からなる長尺のレール材29を有する。このレール材29は、円弧状に屈曲して形成される縦壁部29aを有し、該縦壁部29aには、その高さ方向に長寸に形成された透孔29bが長手方向に沿って所定ピッチで穿孔される。
【0027】
以上のレール材29は縦壁部29aの両端から延設される一対の取付片29c、29cにおいてアングル材30に固定され、このアングル材30を介して張り出し部1aの上面に適宜の脚部材31等により高さ調整されて固定される。固定状態において、上記縦壁部29aは、円弧状の曲面が移動用間隙2に向けて凸となる姿勢で張り出し部1aの先端縁に沿って配置される。以上のようにしてレール材29の張り出し部1aへの設置が完了すると、図2(b)において2点鎖線で示すように、張り出し部1a上面にアングル材30の表面を露出させるようにしてモルタル(充填材10)が充填され、これによりレール材29等を外部に露出させた状態でアンカー材等が埋設されて連結装置11が完成する。なお、上記脚部材31等の張り出し部1aへの固定は、コンクリートビスとコンクリート用接着剤(固定手段8)を併用してなされ、また、上記脚部材31等は、後述する支持脚6同様、高さ調整機能を備える。
【0028】
上記支持装置12は、図2(b)および図3に示すように、型材9を枠組みして形成される受枠(受台7)を有する。上記型材9はアルミニウムからなり、その枠組みはビス12aによりなされる。また、上記型材9には、図4(a)および(d)に示すように、この実施の形態においてアングル材と、C型チャンネル材近似のものの2種類があり、アングル材を横桟9a、C型チャンネル材近似のものを縦桟9bとすることにより、組み上げられる受枠7が梯子状をなす。以上の受台7は上述した連結装置11同様、3m程度の長さでユニット化され、施工長さに応じて複数ユニットが連接される。
【0029】
また、上述のビス組みを容易にするために、上記縦桟9bにはビス受け32が予め形成される。このビス受け32は、図4(c)等に示すように、縦桟9bの一方のフランジを他方よりも長寸に形成した上で、その内壁面にフランジと協働してC字形状をなすように一対の突起を突設させた上で、これらの内周面にネジ溝を切って形成される。また、上述のビス12aとしてテクスビス等のセルフタッピング可能なビスを用いた場合には、横桟9aに現場でビス穴を開ける手間を省くことができる。
【0030】
また、上記一方のフランジには、後述する補助支持脚6'との嵌合部33が形成される。この嵌合部33は、上記一方のフランジの先端を外側に屈曲した後、基端側に折り返してL字状の折り返し片33aを形成するとともに、同様に基端側においても線対称となるようにウェブを延設、折り返して折り返し片33aを形成し、これら折り返し片33a間にスリット状に構成される。
【0031】
さらに、上記縦桟9bには、図4(c)に示すように、抜け止め片13が形成される。この抜け止め片13は、フランジの先端をウェブと平行に屈曲して形成されるもので、上述した一方のフランジは折り返し片33aの基端部分により、また、他方のフランジは先端を内側に屈曲して形成される。
【0032】
以上の受枠7を設置するために、上述したコンクリート躯体21の舗装面3の移動用間隙2側には、舗装面3よりも一段低い設置基部5が形成される。受枠7の設置は、上記設置基部5上に立設される支持脚6を介してなされ、この支持脚6により上記縦桟9bを支持してなされる。
【0033】
上記支持脚6は、図4(b)に示すように、設置基部5上に立設される脚部34と、該脚部34の上端部に取り付けられる支持部35とを有する。上記脚部34は、金属板材からなるベース板34aの中央から両切りボルト34bを立設して形成される。ベース板34aと両切りボルト34bとは溶接等により一体化され、上述の設置基部5への設置は、ベース板34aの四隅部に予め形成されたキリ穴36を貫通して設置基部5にコンクリートビス(固定手段8)をねじ込み、あるいは、ベース板34aの裏面をコンクリートボンド(固定手段8)により設置基部5に接着してなされる。
【0034】
上記支持部35は、金属板材を略コ字形状に折曲して形成される挟持片35aを備える。両縦壁に跨る横壁の中央には、上記両切ボルトよりもやや大径の通し穴が予め開設されており、この通し穴上に溶接等により固定されたナット35bによって上述の両切りボルト34bとの締結位置を調整することによって、ベース板34aからの高さを調整することができる。また、両縦壁は、基端部における間隔が縦桟9bの横幅よりもやや広く、先端に行くに従って漸次間隔が狭まるようにされ、先端における間隔が縦桟9bの横幅よりもやや狭くされることにより、縦桟9bをしっかりと挟持することができるようにされる。また、上記挟持片35aの両縦壁にはタップ穴35cが予め形成される。
【0035】
さらに、支持装置12は、上述のように地震により舗装面3と張り出し部1aとの間隔が狭まったときにエキスパンションジョイントカバー4の先端が設置基部5を通過して舗装面3の側面に衝突することを避けるために、図2(b)等に示すように、スロープ部37を有する。このスロープ部37は、アルミニウムの長尺の板材の両側縁を鈍角に谷折り、山折りして中央部のスロープ面37aの両端にそれぞれ平行な取り付け面37bを配置して形成される。以上のスロープ部37は、谷折り側の下方の取り付け面37bを上述の横桟9aにビス止めし、上方の取り付け面37bを舗装面3の移動用間隙2側の辺縁部にコンクリートビス12aでビス止めすることにより設置される。なお、横桟9aとのビス止めにも上述同様テクスビス等を用いることにより、ビス穴を穿孔する手間を軽減することができる。
【0036】
また、上記スロープ面37aを設置基部5上に強固に支持するために、支持装置12は補助支持部38を有する。この補助支持部38は、金属板材をクランク状に折曲して形成され、両端には舗装面3等に固定するための固定板部38aが形成される。補助支持部38は、舗装面3の移動用間隙2側の辺縁部に一方の固定板部38aを重ねると、ここから舗装面3の側面に沿って下方に垂下した後、設置基部5の表面に沿って移動用間隙2側に延びてから、さらに他方の固定板部38aが上方に向かって立ち上がる。
【0037】
したがって、一方の固定板部38aをスロープ部37の上側の取り付け面37bに重ねてコンクリートビス12aでビス止めし、他方の固定用面を横桟9aにビス止めすれば、地震発生時にエキスパンションジョイントカバー4が衝突しても、スロープ面37aが舗装面3側に容易に変形してしまうことが防がれる。この横桟9aへのビス止めに際してもテクスビス等を用いることが可能である。
【0038】
以上の支持装置12の設置は、図5(a)に示すように、まず最初に、支持脚6の設置位置を設置基部5に墨出しにより記した上で、この墨出し位置に合わせて支持脚6の脚部34を設置してなされる。脚部34を設置したら、次いで、連結装置11よりも受枠7の分だけ低い高さに合わせて支持部35を組み付けて支持脚6を完成させた後、この支持脚6に縦桟9bを組み付ける。この組み付けに際しては、図5(b)に示すように、支持部35のタップ穴35cを通して縦桟9bにテクスビス等12aを貫通させることにより、縦桟9bを強固に支持することができる。
【0039】
この後、縦桟9bの両端に横桟9aをビス止めすると受枠7が完成する。受枠7の施工が完了したら、補助支持部38の一端を横桟9aにネジ止めした後、横桟9aにスロープ部37の下端をネジ止めし、この状態で補助支持部38とスロープ部37の上端を舗装面3にビス止めする。図5(c)に示すように、以上のようにしてスロープ部37や補助支持部38の設置が完了したら、最後に、図2(b)にしめすように、受枠7の上面を外部に露出させるようにして枠内の開口部分から設置基部5の上面にモルタル10を流し込み、支持脚6等を埋設させれば、支持装置12が完成する。
【0040】
図3はモルタル10充填前の支持装置12の状態を示すもので、モルタル10は、図2(b)に示すように、受枠7の上面近傍、およびスロープ部37の表面近傍まで充填されることにより、受枠7やスロープ部37を補強する。
【0041】
以上のようにして支持装置12が完成したら、この上にエキスパンションジョイントカバー4を載せて荷重をやや支えるようにしながら連結装置11に連結すれば、エキスパンションジョイント床構造が完成する。エキスパンションジョイントカバー4と連結装置11との連結は、図6に示すように、レール材29の透孔29bに挿入された上述の連結ボルト28の先端をグレーチング24に形成されたボルト挿通部24aに貫通させた後、ダブルナット等からなる連結ナット39で締め付けることによりなされる。連結装置11を張り出し部1aに設置する前に予め連結ボルト28を挿入しておき、連結ナット39の締め付けに際しては上述のキャップ27を取り外すことにより、連結作業をスムーズに進めることができる。
【0042】
この後、地震が発生して図8(a)に示すように舗装面3と張り出し部1aとの間隔が縮小すると、エキスパンションジョイントカバー4は、連結ボルト28が透孔29b内を移動することで垂直回転することにより先端部がスロープ部37に乗り上げて舗装面3をかわし、反対に間隔が拡大したときにも、エキスパンションジョイントカバー4の先端部が支持装置12上に残ることにより、移動用間隙2が閉塞した状態に保持される。
【0043】
また、設置後において、夏場など高温になった際には、モルタル10よりも熱膨張率の高いアルミニウムの縦桟9bが伸長し、両端が支持脚6に拘束されることにより長手方向中央部を太鼓状に膨らませるようにして変形するおそれもある。この点、この実施の形態においては、上述のように縦桟9bが抜け止め片13を備えることにより、浮き上がり方向の移動が抑制されるために、かかる変形を抑制することができる。
【0044】
また、この実施の形態において、上述した支持装置12は、支持脚6による受枠7の支持を補うための補助支持脚6'を備える。この補助支持脚6'は、移動用間隙2の幅をより広く設定した際に、支持脚6の配置されない縦桟9bの長手方向中間部において連結装置11との水平が十分に確保できないおそれが受枠7の施工後に認められたときに、後施工により上記中間部において受枠7を支持する。
【0045】
上記補助支持脚6'は、図7に示すように、支持脚6とほぼ同じ構造の脚部34'と、上述した縦桟9bの嵌合部33に嵌合可能な支持部35'とを有する。上記支持部35'は、金属板材を折曲して形成され、脚部34'に取り付けられる取付片40と、上述の嵌合部33に嵌合可能な嵌合片41を有する。上記取付片40は、略U字形状をなし、中央部に脚部34'のボルト部分よりもやや幅広の切欠部40aを有する。上記嵌合片41は、対角線上に位置する一対の角取りした略長方形形状をなし、その長辺が嵌合部33のスリットに嵌合可能な長さ寸法に形成される。
【0046】
以上の支持部35'は、取付片40の開放端とは反対端縁を直交方向に折曲して形成される中間部42をさらに有し、嵌合片41は、この中間部42と取付片40の双方に直交する方向に屈曲されて形成される。嵌合部33への組み付けは、図9(a)ないし(c)に示すように、縦桟9bの側方において予め脚部34'を設置基部5に固定した上で、嵌合片41の長辺部分を嵌合部33に合わせて挿入した後、スリット40aに脚部34'のボルト部分を通すようにして支持部35'を90度垂直回転させてなされる。この垂直回転に際し、嵌合片41は角取り部分によって嵌合部33を通過し、これにより短辺が嵌合部33に嵌合するとともに、取付片40が脚部34'のボルト部分に直交する位置をとる。
【0047】
この後、嵌合片41をテクスビス等12aで縦桟9bにビス止めするとともに、取付片40の高さに合わせて脚部34'にナット43を締結すれば、補助支持脚6'の設置が完了する。なお、図7において43'は円盤ナットである。
【0048】
なお、以上の実施の形態においては、型材9を支持脚6に組み付けながら受枠7を構築する場合を示したが、図4(d)に示すように、受枠7を工場において予め組み上げた上で施工現場に搬入し、この受枠7を支持脚6に組み付けて支持装置12を構築することも可能である。また、上述の実施の形態においては、エキスパンションジョイントカバー4としてグレーチング24の表面に表面材25を溶接固定したものを採用したが、箱状の金属ケース内にグレーチング24を収容した上で内部にモルタル10を充填して構成したり、あるいは、あまり強度を要しない場所においては、金属板材等の適宜の強度を備えたシート材により構成したりすることも可能である。
【0049】
さらに、上述の実施の形態においては、エキスパンションジョイントを免震建造物1と舗装面3との間に設置する場合を示したが、免震建造物1、1同士の連絡通路(渡り廊下)に設置しても足りる。加えて、上述の実施の形態においては、エキスパンションジョイントカバー4を一端縁部側を中心に垂直回転させるために、連結装置11に形成された透孔29b内で垂直回転移動する連結ボルト28を用いる場合を示したが、連結ボルト28を水平姿勢に固定しておいてエキスパンションジョイントカバー4側に長孔を設けたり、あるいは、鉛直姿勢に固定された連結ボルト28をエキスパンションジョイントカバー4の一端縁部底面側に形成したボルト挿入部に遊挿させても足りる。
【符号の説明】
【0050】
1 免震建造物
2 移動用間隙
3 隣接構造体
4 エキスパンションジョイントカバー
5 設置基部
6 支持脚
7 受台
8 固定手段
9 型材
10 充填材
11 連結装置
12 支持装置
13 抜け止め片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9