(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
自動車などでは、各種の部品を潤滑するためのオイルが使用されている。オイルには、例えば、エンジンオイル、ミッションオイル、デフオイルなどがある。エンジンオイルはオイルパンに、ミッションオイルはミッションケースに、デフオイルはデフケースに貯留されている。オイルが貯留されている各ケースは車両の下方に備えられている。
【0016】
図1は、貯留ケース12(ケース)の部分断面図である。
図1に示すように、オイル10(例えば、エンジンオイル)が貯留される貯留ケース12には、オイルを排出するための排出孔14が設けられている。排出孔14は、通常、貯留ケース12の底面または側面に設けられていることが多い。本実施形態では、
図1に示すように、排出孔14が、貯留ケース12の底面のうち地面に対して傾斜した部位に設けられている場合を例に挙げる。排出孔14には、ねじ溝が形成されている。排出孔14はドレンプラグ20により閉塞され、これによって貯留ケース12内にオイル10が貯留されている。
【0017】
オイル交換を行う場合、作業者は、ドレンプラグ20を取り外してオイル10を排出させる。しかし、ドレンプラグ20を外した際に、作業者の手などにオイル10がかかってしまうことがある。本実施形態のドレンプラグ20は、オイル10が作業者の手にかかるのを防止するべく、次のように構成されている。
【0018】
図2は、ドレンプラグ20の斜視図であり、
図3は、ドレンプラグ20の正面図である。ドレンプラグ20は、例えば金属製である。
図2および
図3に示すように、ドレンプラグ20は、頭部22と、フランジ部23と、軸部24と、テーパ部26とを含んで構成される。
【0019】
頭部22は、六角形に形成されている。頭部22の径方向の幅は、排出孔14の直径と大凡同等であり、ドレンプラグ20が排出孔14に螺合された状態では、貯留ケース12の外側に頭部22が位置する。
【0020】
フランジ部23は、ドレンプラグ20のうち最も大きい直径をもつ。フランジ部23は円形に形成されており、頭部22よりも径方向に突出している。
【0021】
軸部24は、ねじ山が外周面に形成されている。軸部24は、頭部22と大凡径が等しく、つまり、排出孔14の直径とも大凡同等であり、フランジ部23から軸方向に延設されている。軸部24は、ドレンプラグ20の頭部22、軸部24、テーパ部26のうち、軸方向に最も長い。軸部24が排出孔14のねじ溝に螺合されることにより、排出孔14が閉塞され、オイル10が貯留ケース12に貯留される。軸部24の径の大きさは、例えば16mmである。
【0022】
テーパ部26は、軸部24の先端から軸方向に連続する部位であり、先端に向かうにつれ、径が小さくなる。換言すれば、テーパ部26は、軸部24の軸中心に向かうように、傾斜している。また、テーパ部26の外周面と、ドレンプラグ20の軸中心に垂直な断面とのなす角度は、大凡45°である。換言すれば、テーパ部26の外周面は、軸部24の軸心に対して大凡45°の角度を有している。また、テーパ部26の先端26aの径の大きさは、軸部24の径の大きさの1/2である。言い換えると、テーパ部26の軸方向の長さは、テーパ部の先端26aが鋭角(円錐)になるまでテーパ部を延長した場合の1/2の長さとなる。
【0023】
図4は、貯留ケース12からドレンプラグ20を取り外す際の、オイル10とドレンプラグ20の動きを示す図である。なお、以下では、
図4に示すL方向を左側(左方向)とし、R方向を右側(右方向)として説明する。また、図中破線矢印は、ドレンプラグ20の動きを示している。
【0024】
図4(a)は、ドレンプラグ20が排出孔14に螺合されている状態を示している。ドレンプラグ20は、排出孔14に固く螺合されているため、作業者はスパナなどの工具を用いてドレンプラグ20を緩める。一旦ドレンプラグ20の螺合が緩められると、ドレンプラグ20は素手で容易に回せるようになる。ここで、スパナなどの工具は不要となり、作業者は、頭部22を掴んでドレンプラグ20を開方向に回していく。
【0025】
図示は省略するが、ここでは、作業者が、排出孔14に対して図中左側に位置しており、図中左側から右側へ腕を伸ばして、ドレンプラグ20を開方向に回しているものとする。この場合、作業者の手は、掌を上方に臨ませるようにして、排出孔14の直下に位置しており、下方から上方に向けて伸ばした指で、頭部22の外周面を把持することとなる。そして、ドレンプラグ20を回し、軸部24に形成されたねじ山が排出孔14のねじ溝から外れたところでは、
図4(b)に示すように、テーパ部26のみが排出孔14内に位置している。この状態では、ドレンプラグ20と排出孔14との隙間量は僅かであり、オイル10が飛散するようなことはない。
【0026】
この状態から、作業者は、ドレンプラグ20の一部を排出孔14の周縁である排出孔縁16に接触させ、この接触部分を支点として、
図4(c)に示すようにドレンプラグ20を傾ける。具体的には、上記のように、作業者は、排出孔14の左側に位置している。ここでは、テーパ部26、または、テーパ部26と軸部24との境界近傍部分のうち、作業者側となる左側の一部を排出孔縁16に接触させた状態で、頭部22を左側に引くように傾ける。
【0027】
その結果、図中白抜き矢印線で示すように、オイル10は、テーパ部26に沿って排出される。つまり、排出孔縁16にドレンプラグ20の先端側を当てたまま傾けると、頭部22が排出孔14の中心から離れる。そうすると、図中白抜き矢印線で示すように、オイル10は、テーパ部26のうち、排出孔縁16から離隔した部分に沿って排出される。ここでは、排出孔14に対して頭部22が左側に移動することから、作業者の手も頭部22と同様に、排出孔14に対して左側に移動する。このとき、排出孔縁16に対するドレンプラグ20の接点も、排出孔14の左側にある。つまり、排出孔縁16とドレンプラグ20とが接触している側に作業者の手が移動する。
【0028】
図5は、
図4(c)の状態を直上から見た図である。なお、ここでは貯留ケース12内に貯留されているオイル10は図示せず、ドレンプラグ20を傾けることによって排出孔14の間にできた隙間より排出されるオイル10のみ図示することとする。オイル10は、ドレンプラグ20と排出孔縁16の接触部分の周辺からは排出されず、ドレンプラグ20を傾けたことによってできた隙間から、図中白抜き矢印で示すように排出される。上述したように、この状態では、作業者の手が左側にあり、ドレンプラグ20と排出孔縁16との接触部分も左側にある。これに対して、オイル10は、
図5中白抜き矢印で示すように、排出孔14の中心に対して、作業者の手が位置するのと反対側となる右側に向かって大量に排出される。このとき、
図5中、上下方向にも、オイル10の一部が排出されるが、左側には殆どオイル10が排出されない。仮に、オイル10の一部が
図5中上下方向に排出されたとしても、オイル10の一部は、フランジ部23に当たって垂れ落ちる。また、排出孔14が地面に対して傾斜している場合には、よりオイル10が手にかかりにくくなる。したがって、ドレンプラグ20を外す際に、作業者の手にオイル10が殆どかからない。
【0029】
このように、本実施形態のドレンプラグ20によれば、オイル10が作業者の手にかかることなくドレンプラグ20を抜き取れるだけでなく、オイル10の飛散を抑制できるので、車体や路面へのオイル10の付着を回避することも可能となる。また、ドレンプラグ20は、鍛造、転造、切削加工等、安価かつ簡素に製造することが可能である。また、排出孔14が地面に対して傾斜していることで、ドレンプラグ20を外す作業が容易となる。
【0030】
なお、テーパ部26の軸方向の長さは適宜設計可能である。しかしながら、テーパ部26の外周面の角度や長さによっては、
図4(c)に示すようにドレンプラグ20を傾けた際に、テーパ部26の先端26aが排出孔14の内周面に当たってしまい、ドレンプラグ20を傾かせる角度が制限されてしまう。ドレンプラグ20の傾き角度が制限されると、頭部22を把持する手が排出孔14に近くなり、オイル10が手にかかりやすくなってしまう。加えて、テーパ部26の軸方向の長さが長くなると、流出するオイル10から受圧する面積が大きくなるため、ドレンプラグ20を傾けた際に、ドレンプラグ20を落下させてしまうおそれが高まる。
【0031】
したがって、上記実施形態のように、軸部24の螺合が解除された直後に、ドレンプラグ20の一部を排出孔縁16に接触させ、このときの接点を支点として回動(傾斜)させたときに、排出孔14の内周面に当たらない長さおよび角度にテーパ部26を設計することが望ましい。ドレンプラグ20の傾き角度が大きくなるほど、頭部22を把持する作業者の手が排出孔14から離隔し、オイル10が手にかかりにくくなる。つまり、テーパ部26の軸方向の長さは、テーパ部26の先端26aの径の大きさが軸部24の1/2の大きさになるようにするとよく、テーパ部26の外周面は、外周面とドレンプラグ20の軸中心に垂直な断面とのなす角度が、大凡45°であるとよい。
【0032】
図6は、本実施形態の第1の変形例にかかるドレンプラグ30を説明する図である。なお、上述したドレンプラグ20と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
図6に示すように、ドレンプラグ30は、軸部24とテーパ部26との間に、小径部32が設けられている。小径部32は、軸部24の先端から軸方向に延設されている。小径部32は、軸部24よりも径が小さく、小径部32と軸部24との直径の差により、段差部34が形成されている。段差部34は、軸部24の先端面であり、ドレンプラグ30の軸心に垂直な環状の面となっている。また、小径部32の先端には、上記実施形態と同様にテーパ部26が形成されている。
【0033】
図7は、第1の変形例における、貯留ケース12からドレンプラグ30を取り外す際の、オイル10とドレンプラグ30の動きを示す図である。なお、
図4同様に、以下では、
図7に示すL方向を左側(左方向)とし、R方向を右側(右方向)として説明する。また、図中破線矢印は、ドレンプラグ30の動きを示している。図示は省略するが、ここでは、作業者が、排出孔14に対して図中左側に位置しており、図中左側から右側へ腕を伸ばして、ドレンプラグ30を開方向に回しているものとする。
【0034】
本実施形態同様に、ドレンプラグ30が排出孔14に螺合されている状態(
図7(a))から、ドレンプラグ30を開方向へ回し、軸部24に形成されたねじ山を排出孔14のねじ溝から外す。すると、
図7(b)に示すように、小径部32、段差部34、テーパ部26が排出孔14内に位置する。この状態では、ドレンプラグ30と排出孔14との隙間量は僅かであり、オイル10が飛散することはない。
【0035】
この状態から、作業者は、ドレンプラグ30を傾けずに左方向に移動させ、小径部32および段差部34が連続する部分、つまり、小径部32の基端部を排出孔縁16に接触させ、この接触部分を支点として、ドレンプラグ30を
図7(c)に示すように傾ける。ここでは、小径部32の左側の一部を排出孔縁16に接触させた状態で、頭部22を左側に引くように傾ける。
【0036】
このように、第1の変形例のドレンプラグ30においても、オイル10が作業者の手にかかることなくドレンプラグ30を抜き取れるだけでなく、オイル10の飛散を抑制することができる。また、ドレンプラグ30によれば、小径部32の基端部を排出孔縁16に引っ掛けることができるので、作業者はドレンプラグ30を傾けやすく、作業効率を向上させることができる。
【0037】
図8は、本実施形態の第2の変形例にかかるドレンプラグ40を説明する図である。なお、上述したドレンプラグ20と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
図8に示すように、ドレンプラグ40は、テーパ部26に溝部42が設けられている。溝部42は、テーパ部の外周面を一周するように環状に設けられる。
図8に示すように、溝部42は、テーパ部26に2本形成されている。
【0038】
本実施形態同様に、ドレンプラグ40が排出孔14に螺合されている状態から、ドレンプラグ40を開方向へ回し、軸部24に形成されたねじ山を排出孔14のねじ溝から外す。そして、ドレンプラグ40が傾けられると、オイル10は、溝部42を伝い流れることとなる。
【0039】
このように、第2の変形例のドレンプラグ40においても、オイル10が作業者の手にかかることなくドレンプラグ40を抜き取れるだけでなく、オイル10の飛散を抑制することができる。また、ドレンプラグ40によれば、溝部42が設けられることにより、オイル10が排出される方向を誘導することができるので、オイル10がより手にかかりにくくなる。
【0040】
なお、上述した第2の変形例では、2本の溝部42を設ける場合について説明したが、溝部42は、必ずしも2本でなくてもよい。
【0041】
また、上述した第2の変形例では、溝部42が環状である場合について説明したが、溝部42は、必ずしも環状でなくてもよく、例えば、複数の弧に形成されたり、フランジ部23に対して傾斜するように形成されたり、テーパ部26の先端側から軸部24へ放射線状に向かう直線状に形成されたり、螺旋状に形成されたりすることもできる。また、溝部42の本数は単数でも複数に形成されてもよく、溝部42の深さや長さは、必ずしも同じでなくてもよい。
【0042】
図9は、第2の実施形態にかかるドレンプラグ60を説明する図である。貯留ケース50には、排出孔52とシール部54が備えられる。排出孔52の上方(貯留ケース50内側)には、シール部54が備えられ、下方(排出孔縁16側)には、ねじ溝が形成されている。ドレンプラグ60は、頭部22、軸部24、パイロット部62を含んで構成される。パイロット部62は、軸部24から先端に向かって軸方向に延設されている。パイロット部62の軸方向の長さは、軸部24よりも長く形成される。この場合においても、ドレンプラグ60を排出孔52から取り外す際に、シール部54によって、オイル10が一旦せき止められるため、ドレンプラグ60を取り外してもオイル10が飛散することはないので、作業者の手にオイル10がかからない。
【0043】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0044】
例えば、上述した実施形態では、テーパ部26が円錐台の形状となっている場合について説明したが、テーパ部26は、テーパ部26の先端26aを鋭角にしてもよいし、湾曲形状としてもよい。
【0045】
また、上述した実施形態では、ドレンプラグ20は排出孔14が貯留ケース12の底面に設けられている場合について説明したが、排出孔14が貯留ケース12の側面に設けられている場合についても適用できる。
【0046】
また、上述した実施形態では、オイル10は例えばエンジンオイルと記述したが、ミッションオイルやデフオイルであってもよい。
【0047】
また、上述した第1の変形例では、軸部24よりも小径の小径部32を設け、小径部32の先端にテーパ部26を設けることとした。しかしながら、小径部32を設けずに、軸部24の先端にテーパ部26を直接設けることとしてもよい。この場合でも、テーパ部26の基端の直径が軸部24の直径よりも小さければ、上記の変形例のように段差部34が形成される。
【0048】
また、上述した第2の変形例では、テーパ部26の外周面に溝部42を設ける場合について説明したが、溝部42は第1の変形例や本実施形態にも適用できる。