(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
素子実装部と、前記素子実装部に搭載されたセンサチップと、前記センサチップ及び前記素子実装部を封止する樹脂封止部と、を有するパッケージ構造を少なくとも1つ含み、
前記第1の受光部及び前記第2の受光部は、前記センサチップに含まれており、
前記第1の封止部及び前記第2の封止部は、前記樹脂封止部に含まれている請求項1〜10のいずれか1項に記載の光センサ装置。
前記素子実装部に隣接してリードを有し、前記リードの一端側はワイヤにより前記センサチップに接続され、前記リードの他端側は前記樹脂封止部の外部に露出されて外部端子となり、前記リードの表面には低反射メッキが施されている請求項11〜15のいずれか1項に記載の光センサ装置。
前記第1の受光部から出力される第1の出力と、前記第2の受光部から出力される第2の出力と、の差分を識別して、前記光センサ装置に入射した紫外線の強度を求める機能を有する請求項1〜17のいずれか1項に記載の光センサ装置。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態である光センサ装置について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために模式的に示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0026】
(第1実施形態)
図1及び
図2に、第1実施形態の光センサ装置11の構成を模式的に示す。
図1は、2つの受光部2a,2bを含む平面に沿った断面図である。
図2は、樹脂封止部3側の表面を示す上面図である。
【0027】
本実施形態の光センサ装置11は、2つのセンサチップ1a,1bが樹脂封止部3により封止されたパッケージ構造11aを含む。このパッケージ構造11aは、第1の受光部2aを含む第1のセンサチップ1aと、第2の受光部2bを含む第2のセンサチップ1bと、センサチップ1a,1bを搭載する素子実装部8と、センサチップ1a,1b及び素子実装部8の表面を封止する樹脂封止部3と、を有する。
【0028】
受光部2a,2bは、紫外線に感度を有し、入射光量に応じた出力信号を出力する光センサ素子である。受光部2a,2bとしては、例えばフォトダイオード等の半導体素子が挙げられる。受光部2a,2bの出力は、増幅回路によって増幅されてもよい。
【0029】
各受光部2a,2bは、少なくとも紫外線波長帯の一部に感度を有すればよい。受光部2a,2bが可視光線波長帯の少なくとも一部に感度を有してもよい。受光部2a,2bが可視光線波長帯の全域に感度を有してもよい。受光部2a,2bが赤外線波長帯の少なくとも一部に感度を有してもよい。2つの受光部2a,2bが同一の波長帯に感度を有してもよい。
【0030】
2つの受光部2a,2bは、紫外線及び可視光線に対する受光特性が互いに同一であることが好ましい。これにより、受光部2a,2bの生産工程を共通化することができ、生産性を高めることができる。受光特性としては、例えば、受光部2a,2bに入射する光の波長及び強度に対する出力特性が挙げられる。受光特性という場合は、封止部3a,3bによる入射光への影響を考慮せず、受光部2a,2b自体に入射する光に対する特性を意味する。
【0031】
受光部2a,2bの受光特性が互いに同一である波長帯の範囲は、紫外線波長帯の少なくとも一部及び可視光線波長帯の少なくとも一部を含むことが好ましく、更に赤外線波長帯の少なくとも一部を含んでもよい。受光特性が考慮される波長帯は、例えば近紫外線波長帯の少なくとも一部から近赤外線波長帯の少なくとも一部までの範囲であり、具体例として200〜900nmの範囲等が挙げられる。
【0032】
各受光部2a,2bを保護するため、それぞれ封止部3a,3bが受光部2a,2bの上を覆っている。第1の受光部2aを覆う部分が第1の封止部3aであり、第2の受光部2bを覆う部分が第2の封止部3bである。本実施形態の樹脂封止部3は一体化されており、第1の封止部3a及び第2の封止部3bの両方を含む。
【0033】
樹脂封止部3は、互いに隣接する複数の透明樹脂から構成することができる。本実施形態の樹脂封止部3は、2つの受光部2a,2bに密着した第1の封止樹脂4aと、第1の封止樹脂4aの上に重ねて配置された第2の封止樹脂4bと、を有する。受光部2a,2bの上に樹脂封止部3を設けることにより、耐熱性、耐衝撃性、耐湿性等の信頼性を確保することができる。封止樹脂4a,4bが互いに隣接していることにより、優れた密着性を確保することができる。
【0034】
第1の封止樹脂4aは、少なくとも各センサチップ1a,1bの周囲を封止している。各センサチップ1a,1bの間が、第1の封止樹脂4aにより充填されてもよい。部分的に厚さが変化する第1の封止樹脂4aは、例えばトランスファーモールド法により成形することができる。各受光部2a,2bが1種類の封止樹脂4aで覆われていることにより、樹脂封止加工時における受光部2a,2bのダメージを抑制することができる。
【0035】
第1の封止樹脂4aが各受光部2a,2b上を覆う厚さは異なっていてもよい。
図1に示す例では、受光部2a上における第1の封止樹脂4aの厚さが、受光部2b上における第1の封止樹脂4aの厚さよりも厚くなっている。この場合、封止部3aが、第1の封止樹脂4aからなる1層の樹脂層から構成されてもよい。
図1に示す例とは逆に、受光部2b上における第1の封止樹脂4aの厚さが、受光部2a上における第1の封止樹脂4aの厚さよりも厚くなっていてもよい。この場合、封止部3bが、第1の封止樹脂4aからなる1層の樹脂層から構成されてもよい。
【0036】
第2の封止樹脂4bは、2つの受光部2a,2bのいずれか一方の受光部の上方において、第1の封止樹脂4aの厚さが薄い側に積層されている。第2の封止樹脂4bは、例えばトランスファーモールド法、ポッティング法等により成形することができる。
図1に示す例では、受光部2b上の封止部3bが、第1の封止樹脂4a及び第2の封止樹脂4bの2層積層構造から構成されている。
図1に示す例とは逆に、受光部2a上の封止部3aが、第1の封止樹脂4a及び第2の封止樹脂4bの2層積層構造から構成されてもよい。
【0037】
第1の封止部3aの厚さと、第2の封止部3bの厚さとは、互いに同程度としてもよい。例えば、
図1に示す例では、第2の受光部2b上における第1の封止樹脂4a及び第2の封止樹脂4bの合計厚さが、第1の受光部2a上における第1の封止樹脂4aの厚さと同程度となるようにしてある。各封止部3a,3bの透過スペクトル特性に応じて、各封止部3a,3bの厚さを調整してもよい。
【0038】
第2の受光部2b上及びその周辺部における第1の封止部3aと第2の封止部3bとの界面は、第2の受光部2bの受光面に対して略平行であってもよく、あるいは第2の受光部2bを含むセンサチップ1bの上面に対して略平行であってもよい。これにより、第2の封止樹脂4bが略水平面上に形成されるので、第2の封止樹脂4bの成形が容易になる。
【0039】
第1の封止樹脂4aと第2の封止樹脂4bとの界面は、第2の受光部2bの上方で略水平に設けられるのみならず、両受光部2a,2bの中間部で、略垂直にも設けられることが好ましい。これにより、界面の面積が拡大され、第1の封止樹脂4aと第2の封止樹脂4bとの密着性が向上する。また、第1の封止樹脂4aが、第1の受光部2a側で厚く、第2の受光部2b側で薄くなるように、L字状の断面を有することにより、ポッティング等で第2の封止樹脂4bを形成する際に、第2の封止樹脂4bが流動性を有しても、第1の封止樹脂4a上から側方に漏出しにくくなる。
【0040】
光センサ装置11に対する入射光が各封止部3a,3bを通して各受光部2a,2bに入射する際、少なくとも紫外線波長帯における各封止部3a,3bの透過スペクトル特性は互いに異なる。例えば、第1の封止部3aの透過波長帯の下限値を第1の波長λ
1とし、第2の封止部3bの透過波長帯の下限値を第2の波長λ
2として、各封止部3a,3bの透過波長帯の下限値であるλ
1とλ
2とが互いに異なってもよい。
【0041】
ここで、λ
1>λ
2であれば、λ
2より長くλ
1より短い波長帯は、第2の封止部3bのみを通過して、第2の受光部2bのみに受光される。逆に、λ
2>λ
1であれば、λ
1より長くλ
2より短い波長帯は、第1の封止部3aのみを通過して、第1の受光部2aのみに受光される。つまり、λ
1とλ
2との間の波長帯は、封止部3a,3bの一方のみを透過し、他方は実質的に透過しない結果となる。λ
1又はλ
2の一方が紫外線波長帯に含まれればよく、λ
1又はλ
2の他方が可視光線波長帯に入ってもよい。透過波長帯の下限値としては、例えば光の透過率が検出下限程度となる波長が挙げられる。
【0042】
上述の封止部3a,3bの透過スペクトル特性が異なるため、光センサ装置は、2つの受光部2a,2bにおいて互いに異なる分光特性を有する。ここで、分光特性とは、光センサ装置に入射する光の波長と、各受光部2a,2bの出力との対応関係を意味し、分光感度、あるいは分光感度特性などと呼ばれることもある。すなわち、受光部2a,2bの出力と、光センサ装置に入射する光の波長との間には依存関係がある。分光特性は、受光部2a,2bの受光特性だけでなく、封止部3a,3bの透過スペクトル特性にも影響される。例えば、いずれかの受光部2a,2bが特定の波長に対して感度を有しても、その特定の波長の光が、当該受光部2a,2b上の封止部3a,3bにより実質的に阻止される場合は、その特定の波長に対する分光感度を有しないこととなる。
なお、受光部2a,2bの分光特性の差異は、封止部3a,3bの透過スペクトル特性の差異のみにより付与されてもよいが、封止部3a,3bの透過スペクトル特性の差異と受光部2a,2bの受光特性の差異との両方により付与されてもよい。
【0043】
第1の受光部2aから出力される第1の出力と、第2の受光部2bから出力される第2の出力との差分を識別することにより、λ
1とλ
2との間の、封止部3a,3bの一方のみを透過した波長帯の光強度を求めることができる。光センサ装置11に入射した紫外線の強度を求めることができる。差分を識別する手法は特に限定されず、例えば各受光部2a,2bで生じる光電流の差分をとってもよい。あるいは、特許文献2に開示されるように、電圧の差分をとってもよい。
【0044】
本実施形態によれば、各受光部2a,2bを覆う封止部3a,3bを透過スペクトル特性が異なる樹脂から構成することにより、半導体を樹脂封止する段階で各受光部2a,2bの分光特性を変更することができる。これにより、複雑な構造、高価な部品、材料等を使用しなくても、紫外線を直接受光して検知することが可能な光センサ装置を得ることができる。本実施形態の光センサ装置は、小型、薄型とすることも可能であり、生産性が高く、低コストで製造が可能である。
【0045】
特許文献2の「第2の実施の形態」に開示されているように、光の波長によって透過率が異なるフィルタ層をポリシリコンから形成する場合、400℃等の高温を要し、半導体製造プロセスにて形成が必要である。しかし、ポリシリコンは、シリコーン樹脂とは異なり、硬くて脆いので、封止樹脂のような柔軟性が乏しい。また、CVD法を用いても、ポリシリコン層を厚く堆積することは困難である。さらに、ポリシリコンの中に不純物が拡散するので、封止樹脂のように光センサ装置の内部を外部からの汚染から守る性質をほとんど有しない。
本実施形態によれば、樹脂からなる封止部3a,3bにより受光部2a,2bの分光特性が調整されているため、より低温で封止部3a,3bを形成することが可能であり、加熱による受光部2a,2bのダメージを抑制することができる。
【0046】
本実施形態のように、第1の封止樹脂4a上の一部に第2の封止樹脂4bが積層される場合、第2の封止樹脂4bの透過波長帯の下限値λbは、第1の封止樹脂4aの透過波長帯の下限値λaよりも長いことが好ましい。この場合、第1の封止樹脂4aの上に第2の封止樹脂4bが積層された封止部3bの透過波長帯の下限値は、第2の封止樹脂4bの透過波長帯の下限値λbと同等になる。そして、第1の封止樹脂4aのみからなる封止部3aの透過波長帯の下限値は、第1の封止樹脂4aの透過波長帯の下限値λaと同等になる。各受光部2a,2bの出力の差分を識別することにより、λaより長く、λbより短い波長帯が光センサ装置の検出対象となる。このとき、第2の封止樹脂4bは、検出対象の波長帯が、第2の受光部2bに入射することを阻止する光フィルタとして機能する。
【0047】
センサチップ1a,1bは、ダイアタッチ剤7により素子実装部8の表面に固着されている。センサチップ1a,1bに設けられた電極と、素子実装部8に設けられた貫通電極6a,6bとの間は、ワイヤ5a,5bを介して電気的に接続されている。素子実装部8の表面及びワイヤ5a,5bは、樹脂封止部3により封止されてもよい。さらに、本実施形態では、各受光部2a,2b及びワイヤ5a,5bを含むセンサチップ1a,1bの周囲が、第1の封止樹脂4aにより封止されている。
各受光部2a,2b及びワイヤ5a,5bが1種類の封止樹脂4aで覆われていることにより、第2の封止樹脂4bを形成するための金型を容易に作製できる。また、第1の封止樹脂を形成するときに、受光部2a,2b及びワイヤ5a,5bが1回の工程で覆われるので、通常の樹脂封止型のパッケージの形成と同等のストレスしか与えない。
【0048】
貫通電極6a,6bは、素子実装部8の表面から裏面に貫通している。素子実装部8の裏面側は、樹脂封止部3に覆われておらず、外部に露出している。裏面側に露出された貫通電極6a,6bは、外部端子として機能する。
【0049】
素子実装部8は、絶縁性樹脂、樹脂を含浸させた繊維積層板、セラミック、ガラス、シリコン等から構成することができる。繊維積層板としては、例えばガラス繊維積層板が挙げられる。素子実装部8を構成する樹脂は、素子実装部8の表面で光を吸収し、低反射となるように、カーボン、シリカなどを含有してもよい。同様の目的で、繊維積層板に含浸させる樹脂が、カーボン、シリカなどを含有してもよい。素子実装部8の表面には、特に図示しないが、金属配線を設けることができる。この場合、金属配線の表面には、低反射メッキが施されていてもよい。なお、低反射メッキは、メッキを有しない金属配線の表面よりも反射率が低下するようなメッキであればよい。このように、素子実装部8の表面が、低反射性及び光吸収性を有することにより、樹脂封止部3の内部における光反射を抑制することができる。
【0050】
(第2実施形態)
図3に、第2実施形態の光センサ装置12の構成を模式的に示す。
図3は、2つの受光部2a,2bを含む平面に沿った断面図である。樹脂封止部3側の表面は、第1実施形態の
図2と同様にしてもよい。なお、本実施形態において、第1実施形態と共通する構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0051】
本実施形態の光センサ装置12は、2つの受光部2a,2bを有するセンサチップ1が樹脂封止部3により封止されたパッケージ構造12aを含む。このパッケージ構造12aは、第1の受光部2a及び第2の受光部2bを含むセンサチップ1と、センサチップ1を搭載する素子実装部8と、センサチップ1及び素子実装部8の表面を封止する樹脂封止部3と、を有する。
【0052】
本実施形態の樹脂封止部3は、2つの受光部2a,2bに密着した第1の封止樹脂4aと、第1の封止樹脂4aの上に重ねて配置された第2の封止樹脂4bと、を有する等の点では、第1実施形態と同様である。本実施形態は、1つのセンサチップ1に複数の受光部2a,2bを有する点で、第1実施形態と異なる。すなわち、第1実施形態では、各受光部2a,2bが別々のセンサチップ1a,1bに含まれているが、第2実施形態では、各受光部2a,2bが1つのセンサチップ1a,1bに含まれている。
【0053】
本実施形態の場合、素子実装部8上に1つのセンサチップ1が搭載されるので、素子実装部8上に2つのセンサチップ1a,1bが搭載される第1実施形態と比べて、センサチップ1が占有する実装面積を少なくすることができる。本実施形態は、省スペース化した設計に有利であり、パッケージ構造12aを小型化することができる。
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、各受光部2a,2b及びワイヤ5a,5bが1種類の封止樹脂4aで覆われていることにより、樹脂封止加工時における受光部2a,2b及びワイヤ5a,5bのダメージを抑制することができる。
【0054】
(樹脂封止部の上面構造)
図4は、第1又は第2実施形態における樹脂封止部3の上面に、例えば複数の六角形を組み合わせて配置した表面構造部9を設けた例を示す。樹脂封止部3を透過する紫外線を受光部2a,2bで検知する光センサ装置の実使用環境においては、樹脂封止部3の外側に紫外線を透過するカバー部材を設けることも可能である。カバー部材は、例えばガラス、樹脂等から構成してもよい。あるいは、樹脂封止部3を外部に露出させることも可能である。
【0055】
上述したように、光センサ素子の内部構造である、受光部、センサチップ、表面配線等は樹脂封止部3に覆われている。樹脂封止部3を構成する樹脂材料が可視光線に対して高い透過率を有する場合、樹脂封止部3に封止された内部構造をユーザーに視認可能とすることもできる。アプリケーション又は用途によっては、樹脂封止部3の内部構造がユーザーに視認されにくいことが求められる場合もある。樹脂封止部3の上面に表面構造部9を設けることにより、樹脂封止部3がユーザーに対して露出される場合においても、樹脂封止部3の透過率を低下させることなく、内部構造が視認されにくい構成とすることができる。さらに、表面構造部9により、樹脂封止部3の上面に装飾性、意匠性を付与することもできる。
【0056】
表面構造部9は、凹溝、突起等の表面起伏を含んでもよい。表面構造部9の形状は特に限定されないが、1種又は2種以上の多角形等が繰り返し配置された形状であってもよく、不規則なパターンを含む形状であってもよい。表面構造部9を形成する方法も特に限定されず、樹脂封止部3を成形する際に、表面構造部9を含む形状としてもよい。上面が平坦な樹脂封止部3を成形した後に、エンボス加工等によって表面構造部9を形成することも可能である。
なお、
図4には、2種類の封止樹脂4a,4bの配置が
図2と同様の例が示されているが、封止樹脂4a,4bの配置が異なる場合にも、表面構造部9を採用することが可能である。表面構造部9の線幅、間隔、線数等も適宜変更可能である。
【0057】
(第3実施形態)
図5及び
図6に、第3実施形態の光センサ装置13の構成を模式的に示す。
図5は、2つの受光部2a,2bを含む平面に沿った断面図である。
図6は、樹脂封止部3側の表面を示す上面図である。なお、本実施形態において、第1又は第2実施形態と共通する構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0058】
本実施形態の樹脂封止部3は、2つの受光部2a,2bに密着した第1の封止樹脂4aと、片方の受光部2b上において第1の封止樹脂4aの上に重ねて配置された第2の封止樹脂4bと、を有する等の点で、第1又は第2実施形態と同様である。本実施形態は、樹脂封止部3の側面部3cに、第2の封止樹脂4bが積層されることなく、第1の封止樹脂4aの厚さが封止部3aと同程度の部分を有する点で、第1又は第2実施形態と異なる。
【0059】
第2の封止樹脂4bが設けられる範囲は、樹脂封止部3のうち、少なくとも第2の受光部2bに入射する光が透過する領域を含めばよい。このため、側面部3cに第2の封止樹脂4bが設けられなくても、第1又は第2実施形態と同様の機能を有することができる。第2の封止樹脂4bが設けられる範囲は、
図5及び
図6の例示より更に狭くてもよく、例えばセンサチップ1の上方のうち受光部2b側の半分のみであってもよい。
【0060】
また、本実施形態においては、2種類の封止樹脂4a,4bの界面が側面部3cに露出されないため、側面からの衝撃に対する樹脂封止部3の強度を向上することができる。また、第2の封止樹脂4bが封止部3a及び側面部3cの第1の封止樹脂4aの間に挟み込まれる構造となり、封止樹脂4a,4bの界面の面積が拡大するので、封止樹脂4a,4b間の密着性を高めることができる。
【0061】
なお、
図5には、第2実施形態と同様に、2つの受光部2a,2bを有するセンサチップ1が樹脂封止部3により封止されたパッケージ構造13aが例示されている。しかし、本実施形態は、第1実施形態と同様に、2つのセンサチップ1a,1bが樹脂封止部3により封止されたパッケージ構造を有してもよい。
【0062】
(第4実施形態)
図7〜9に、第4実施形態の光センサ装置14の構成を模式的に示す。
図7は、2つの受光部2a,2bを含む平面に沿った縦方向の断面図である。
図8及び
図9は、センサチップ1a,1bに沿った横方向の断面図である。なお、本実施形態において、第1実施形態と共通する構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0063】
本実施形態の樹脂封止部3は、2つの受光部2a,2bに密着した第1の封止樹脂4aと、片方の受光部2b上において第1の封止樹脂4aの上に重ねて配置された第2の封止樹脂4bと、を有する等の点で、第1又は第2実施形態と同様である。また、本実施形態のパッケージ構造14aは、複数のセンサチップ1a,1bが樹脂封止部3により封止されている点で、第1実施形態と同様である。
【0064】
本実施形態の樹脂封止部3は、第1の封止樹脂4aと第2の封止樹脂4bとの界面に角度を付けて第2の封止樹脂4bの厚さが増加するように、下方に突出した突出構造4c,4dを有する点で、第1実施形態と異なる。つまり、突出構造4c,4dにおいて、第2の封止樹脂4bが下方に延長される。封止樹脂4a,4bの界面に付けられる角度の向きは、いずれかの受光部2a,2bから離れるほど、第2の封止樹脂4bの厚さが増加する向きであってもよい。ここで、「受光部2a,2bから離れる」とは、例えば素子実装部8の表面に沿った水平距離が遠くなることであってもよい。また、「第2の封止樹脂4bの厚さが増加する」とは、素子実装部8の上面から、第1の封止樹脂4aと第2の封止樹脂4bとの界面までの垂直距離が減少することであってもよい。ここで、垂直距離とは、素子実装部8の表面に垂直な上下方向の距離である。
【0065】
第2の封止樹脂4bの上面は、全体的に略水平であってもよく、例えば素子実装部8の上面に略平行であってもよい。このとき、突出構造4c,4dにおける第2の封止樹脂4bの厚さは、受光部2bの上方における第2の封止樹脂4bの厚さよりも大きい。
【0066】
突出構造4cは、第2のセンサチップ1bの周囲のうち、第1のセンサチップ1a側と異なる側に設けられている。
図8に示す例では、第2のセンサチップ1bの周囲のうち、第1のセンサチップ1a側と反対の一方の側に突出構造4cが設けられている。
図9に示す例では、第2のセンサチップ1bの周囲のうち、第1のセンサチップ1a側とは異なる三方に突出構造4cが設けられている。
【0067】
突出構造4cは、第2の受光部2bから離れるほど、第2の封止樹脂4bの厚さが増加するように角度を付けた構造を有する。あるいは、突出構造4cが、第2の封止樹脂4bの上面の形状にかかわらず、封止樹脂4a,4bの界面が素子実装部8に近づくように角度を付けた構造を有してもよい。樹脂封止部3への入射光のうち、受光部2a,2bに直接受光されなかった光が迷光となり、第1の封止樹脂4a内で反射を繰り返す場合がある。第2の受光部2bの上方に封止樹脂4a,4bの界面が存在するため、例えば迷光が封止樹脂4a,4bの界面における反射を経て第2の受光部2bに向かうと、第2の受光部2bの出力の誤差を増加させる可能性がある。
【0068】
そこで、突出構造4cが迷光に対して臨界角として働き、あるいは迷光を低反射の素子実装部8に向けて反射させることにより、迷光が第2の受光部2bに入射することを抑制することができる。この場合、
図9に示す例のように、突出構造4cが形成される範囲を拡大することにより、迷光が第2の受光部2bに入射することを、より抑制することができる。
【0069】
また、突出構造4cが設けられた箇所では、第2の受光部2bの周囲において、第1の封止樹脂4aの外周側の側面が樹脂封止部3の外部に露出される面積をより狭く、あるいは無くすことができる。これにより、樹脂封止部3の外周側の側面から入射した光が、第1の封止樹脂4aのみを透過して第2の受光部2bに入射することを抑制することができる。このため、第1の封止樹脂4aのみを透過した光が第1の受光部2aに入射して生じる出力と、第2の封止樹脂4bを透過した光が第2の受光部2bに入射して生じる出力との差分をとる際に、第1の封止樹脂4aのみを透過した光が第2の受光部2bに入射して生じる出力による誤差を抑制することができる。
【0070】
突出構造4dは、複数の受光部2a,2bの間の領域に設けられている。突出構造4dのうち第2の受光部2bに近い側の界面は、第2の受光部2bから離れるほど、第2の封止樹脂4bの厚さが増加するように角度を付けた構造を有する。これにより、迷光が第2の受光部2bの側から第1の受光部2aの側に向かう際に、突出構造4dによる反射等により迷光の向きを変えることができるので、迷光が界面反射などにより第1の受光部2aに入射することを抑制することができる。
【0071】
また、突出構造4dのうち第1の受光部2aに近い側の界面は、第1の受光部2aから離れるほど、第2の封止樹脂4bの厚さが増加するように角度を付けた構造を有してもよい。これにより、迷光が第1の受光部2aの側から第2の受光部2bの側に向かう際に、突出構造4dによる反射等により迷光の向きを変えることができるので、迷光が界面反射などにより第2の受光部2bに入射することを抑制することができる。
【0072】
突出構造4c,4dの下端部と素子実装部8との距離は、受光部2a,2bの受光面と素子実装部8との距離より近くてもよい。さらに、突出構造4c,4dの下端部が、少なくとも一部において、素子実装部8に接してもよい。
【0073】
突出構造4c,4dの少なくとも一部において、第2の封止樹脂4bが素子実装部8と接触していることにより、第2の封止樹脂4bの密着強度、機械的強度を向上することができる。この場合、
図9に示す例のように、受光部2bの周囲に突出構造4cが形成される範囲が大きいと、第2の封止樹脂4bと素子実装部8との接触面積が増加し、第2の封止樹脂4bの密着強度、機械的強度を、より向上することができる。
【0074】
(第5実施形態)
図10に、第5実施形態の光センサ装置15の構成を模式的に示す。
図10は、2つの受光部2a,2bを含む平面に沿った断面図である。なお、本実施形態において、第1、第2又は第4実施形態と共通する構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0075】
本実施形態の樹脂封止部3は、封止樹脂4a,4bの界面に突出構造4c,4dを有する点では、第4実施形態と同様である。第2の封止樹脂4bの外周側の側面に設けられる突出構造4cは、第4実施形態と同様の効果を備えている。
また、本実施形態のパッケージ構造15aは、第2実施形態と同様に、1つのセンサチップ1に複数の受光部2a,2bを有する点で、第4実施形態と異なる。このため、本実施形態の場合、複数の受光部2a,2bの間の領域に設けられている突出構造4dは、センサチップ1の上方に配置されている。
【0076】
複数の受光部2a,2bを有するセンサチップ1が用いられる場合、迷光がセンサチップ1の表面と封止樹脂4a,4bの界面との間で反射を繰り返し、複数の受光部2a,2bの一方の側から他方の側に向かうおそれがある。樹脂封止部3に突出構造4dを設けることにより、第4実施形態と同様の効果として、第1の受光部2a側に入射した光が第2の受光部2bに入射すること、あるいは、第2の受光部2b側に入射した光が第1の受光部2aに入射することを抑制することができる。突出構造4dの下端部は、センサチップ1の上面に接してもよい。
【0077】
なお、第4又は第5の実施形態のように突出構造4cを有する樹脂封止部3において、第3の実施形態と同様に、第2の封止樹脂4bが積層されることなく、第1の封止樹脂4aの厚さが大きくされた側面部3cを組み合わせることも可能である。例えば、受光部2bの周囲の三方のうち、側面部3cとは異なる側に突出構造4cを設けてもよい。
【0078】
(第6実施形態)
図11に、第6実施形態の光センサ装置16の構成を模式的に示す。
図11は、2つの受光部2a,2bを含む平面に沿った断面図である。なお、本実施形態において、第1又は第2実施形態と共通する構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0079】
図11に示すパッケージ構造16aは、第2実施形態の
図3に示される貫通電極6a,6bを備えた素子実装部8の代わりに、素子実装部10cに隣接したリード10a,10bを有する点で、第2実施形態と異なる。本実施形態のリード10a,10b及び素子実装部10cは、例えば銅、鉄、アルミニウム等の金属から形成することができる。センサチップ1がダイアタッチ剤7により素子実装部10cに固着されている点は、第1又は第2実施形態と同様である。
【0080】
各受光部2a,2bに対応して設けられるワイヤ5a,5bは、それぞれ異なるリード10a,10bに接続されている。リード10aには、第1の受光部2aからの出力が接続され、リード10bには、第2の受光部2bからの出力が接続される。リード10a,10bと素子実装部10cとの間には、樹脂封止部3の樹脂により絶縁される隙間10dを有してもよい。製造工程中において、樹脂封止部3の完成前には、リード10a,10bと素子実装部10cとが、外枠又はテープ等により連結されていてもよい。リード10a,10bは、リードフレームを用いて構成してもよい。
【0081】
リード10aの一端側はワイヤ5a,5bによりセンサチップ1に接続され、樹脂封止部3により封止されている。本実施形態では、ワイヤ5a,5b等と同様に、リード10aの一端側まで第1の封止樹脂4aに覆われている。リード10a,10bの他端側は、樹脂封止部3の外部に露出されて外部端子となっている。
【0082】
リード10a,10bの表面、及び素子実装部10cの表面はメタライズされていてもよい。これらのメタライズには低反射メッキが好ましい。低反射メッキとしては、光沢度を下げて光の反射率を低下させた銀メッキ等が挙げられる。リード10a,10bの表面、及び素子実装部10cの表面が、低反射性を有することにより、樹脂封止部3の内部における光反射を抑制することができる。これにより、迷光が受光部2a,2bに入射することによる誤差を低減することができる。
【0083】
なお、
図11には、第2実施形態と同様に、2つの受光部2a,2bを有するセンサチップ1が樹脂封止部3により封止されたパッケージ構造13aが例示されている。しかし、本実施形態は、第1実施形態と同様に、2つのセンサチップ1a,1bが樹脂封止部3により封止されたパッケージ構造を有してもよい。また、本実施形態のリード10a,10bを、第3実施形態のような第1の封止樹脂4aの側面部3cと組み合わせることもできる。また、本実施形態のリード10a,10bを、第4又は第5の実施形態の突出構造4c,4dと組み合わせることもできる。
【0084】
(第7実施形態)
図12に、第7実施形態の光センサ装置17の構成を模式的に示す。
図12は、各受光部2a,2bを含む平面に沿った断面図である。なお、本実施形態において、第1実施形態と共通する構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0085】
本実施形態の光センサ装置17では、各受光部2a,2bを有するセンサチップ1a,1bが、それぞれ異なる封止部3a,3bにより封止されている。すなわち、光センサ装置17は、第1のセンサチップ1aを第1の封止部3aにより封止した第1のパッケージ構造17aと、第2のセンサチップ1bを第2の封止部3bにより封止した第2のパッケージ構造17bと、を有する。
【0086】
各パッケージ構造17a,17bにおいて、各センサチップ1a,1bは、第1実施形態と同様に、例えばダイアタッチ剤7等により素子実装部8に固着され、ワイヤ5a,5b等により貫通電極6a,6bと接続されている。ワイヤ5a,5bは封止部3a、3bにより封止されている。裏面側に露出された貫通電極6a,6bは、外部端子として機能する。各封止部3a,3bは、1層又は2層以上の樹脂からなる樹脂封止部である。
【0087】
本実施形態の場合、各封止部3a,3bが、それぞれ1種類の封止樹脂4a,4bから構成されていてもよい。具体的には、第1の封止部3aは第1の封止樹脂4aから構成し、第2の封止部3bは第2の封止樹脂4bから構成することができる。このため、例えばエポキシ樹脂等の液状樹脂を、各センサチップ1a,1b及び素子実装部8の表面に塗布又は滴下した後、熱硬化する方法により、連続的に大量生産が可能となる。ポッティングの場合は、ペースト状、又はスラリー状の樹脂が用いられる。封止樹脂4a,4bをトランスファーモールド法により成形してもよい。
【0088】
第1の受光部2aを封止する第1の封止部3aと、第2の受光部2bを封止する第2の封止部3bとは、互いに異なる透過スペクトル特性を有する。本実施形態の場合、各各封止部3a,3bが、それぞれ異なる1種類の封止樹脂4a,4bから構成されているため、第1の封止樹脂4aの透過スペクトル特性と、第2の封止樹脂4bの透過スペクトル特性とが異なっている。
【0089】
例えば、第1の封止部3aの透過波長帯の下限値を第1の波長λ
1とし、第2の封止部3bの透過波長帯の下限値を第2の波長λ
2とする場合、λ
1>λ
2であれば、λ
2〜λ
1間の波長帯は、第2の封止部3bのみを通過して、第2の受光部2bのみに受光される。逆に、λ
2>λ
1であれば、λ
1〜λ
2間の波長帯は、第1の封止部3aのみを通過して、第1の受光部2aのみに受光される。
【0090】
第1の受光部2aから出力される第1の出力と、第2の受光部2bから出力される第2の出力との差分を識別すれば、λ
1とλ
2との間の、封止部3a,3bの一方のみを透過した波長帯の光強度を求めることができる。これにより光センサ装置17に入射した紫外線の強度を求めることができる。差分を識別する手法は特に限定されず、例えば各受光部2a,2bで生じる光電流の差分をとってもよい。あるいは、特許文献2に開示されるように、電圧の差分をとってもよい。
【0091】
本実施形態によれば、各受光部2a,2bを覆う封止部3a,3bを、透過スペクトル特性が異なる封止樹脂から構成することにより、半導体を樹脂封止する段階で各受光部2a,2bの分光特性を変更することができる。これにより、複雑な構造、高価な部品、材料等を使用しなくても、紫外線を直接受光して検知することが可能な光センサ装置を得ることができる。本実施形態の光センサ装置17は、小型、薄型とすることも可能であり、生産性が高く、低コストで製造が可能である。
【0092】
第1のパッケージ構造17aにおいて、受光部2a及びワイヤ5aが1種類の封止樹脂4aで覆われ、第2のパッケージ構造17bにおいて、受光部2b及びワイヤ5bが1種類の封止樹脂4bで覆われていてもよい。各パッケージ構造17a,17bがそれぞれ1種類の封止樹脂4a,4bで封止されていることにより、樹脂封止加工時における受光部2a,2b及びワイヤ5a,5bのダメージを抑制することができる。
【0093】
(第8実施形態)
図13に、第8実施形態の光センサ装置18の構成を模式的に示す。
図13は、各受光部2a,2bを含む平面に沿った断面図である。なお、本実施形態において、第1又は第7実施形態と共通する構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0094】
本実施形態は、各受光部2a,2bを有するセンサチップ1a,1bが、それぞれ異なるパッケージ構造18a,18bに封止されている点で、第7実施形態と同様である。
本実施形態のパッケージ構造18a,18bは、
図12に示される貫通電極6a,6bを備えた素子実装部8の代わりに、素子実装部10cに隣接したリード10a,10bを有する点で、第7実施形態と異なる。
【0095】
素子実装部10cは、樹脂、樹脂を含浸させた繊維積層板、セラミック、ガラス、シリコン等から構成することができる。繊維積層板としては、例えばガラス繊維積層板が挙げられる。素子実装部10cを構成する樹脂は、素子実装部10cの表面で光を吸収し、低反射とするため、カーボン、シリカなどを含有してもよい。同様の目的で、繊維積層板に含浸させる樹脂が、カーボン、シリカなどを含有してもよい。素子実装部10cの表面には、特に図示しないが、金属配線を設けることができる。この場合、金属配線の表面には、低反射メッキが施されていてもよい。このように、素子実装部10cの表面が、低反射性及び光吸収性を有することにより、樹脂封止部3a,3bの内部における光反射を抑制することができる。
【0096】
素子実装部10cは、リード10a,10bと同様に、金属から形成されていてもよい。この金属としては、銅、鉄、アルミニウム等が挙げられる。リード10a,10bの表面、及び素子実装部10cの表面は、低反射メッキ等によりメタライズされていてもよい。
【0097】
(封止樹脂)
従来の半導体パッケージの多くは、半導体素子の周囲全体が樹脂によりモールドされたパッケージである。例えば、多数個取りを可能とする大面積のリードフレームの上に多数の半導体素子を搭載し、各半導体素子の周囲を樹脂で封止するパッケージ構造により、優れた生産性と、低コスト化、小型化、薄型化が実現されている。
IC、LSI等の多くの半導体素子において、封止樹脂は黒色に着色され、非透光性である。
発光素子、受光素子、光センサ素子等の光半導体素子においても、封止樹脂として赤外線、可視光線等の光に対して透光性を有する樹脂を用いることにより、非透光性の封止樹脂と同様に、優れた生産性と、低コスト化、小型化、薄型化を実現することができる。
【0098】
従来の封止樹脂の中でもエポキシ樹脂は、取扱い性、性能、コスト等で優れ、長年にわたる使用実績がある。エポキシ樹脂等の透明樹脂を受光素子の封止に用いると、外部から入射する光は、直上方向から入射する光だけでなく、斜め方向から入射する光も受光可能となり、受光範囲を広げることが可能となる。
【0099】
しかし、可視光線波長帯において透光性を有する樹脂の多くは、紫外線波長帯の光を吸収して透過しない。そこで、例えば、紫外線の吸収を抑制するポリマー構造の採用、紫外線を吸収し得る不純物の低減等により、300nm程度又はそれ以下の短い波長帯を透過する樹脂を実現することができる。これにより、例えば特許文献3に記載された、サファイア、石英等の無機脆性材料を窓部材に用いるパッケージに比べて、生産性が高く、低コスト化、小型化、薄型化が可能な紫外線検知用光センサ装置を実現することができる。
【0100】
封止樹脂4a,4bに用いる透明樹脂は、例えば、
図14(a)に示すように、250nm程度の波長帯より透過を示す第1の透明樹脂、
図14(b)に示すように、315nm程度の波長帯より透過を示す第2の透明樹脂、
図14(c)に示すように、380nm程度の波長帯より透過を示す第3の透明樹脂、から選択される2種類の樹脂であってもよい。
【0101】
第1〜第6実施形態のように、第1の封止樹脂4aの上の一部の領域に第2の封止樹脂4bが積層される場合は、第2の封止樹脂4bの透過波長帯の下限値が、第1の封止樹脂4aの透過波長帯の下限値よりも長くなるように選択される。
【0102】
第7又は第8実施形態のように、第1の封止樹脂4aが第1の受光部2aのみを封止し、第2の封止樹脂4bが第2の受光部2bのみを封止する場合は、各封止樹脂4a,4bの透過波長帯の下限値に差があればよい。すなわち、第2の封止樹脂4bの透過波長帯の下限値が、第1の封止樹脂4aの透過波長帯の下限値より長くても、短くても構わない。
【0103】
第1の透明樹脂は、波長280nm程度において80%以上の透過率となり、280〜300nmにおいて80〜90%程度又はそれ以上の透過率を有してもよい。第1の透明樹脂の透過波長帯の下限値は、例えば240〜280nm程度が挙げられる。第1の透明樹脂は、300nmより長波長側の波長帯において、90%以上又は95%以上の透過率を有してもよい。
【0104】
第1の透明樹脂の透過スペクトル特性は、250nm程度から300nm程度までの範囲内に立ち上がり部を有し、立ち上がり部より長波長において透過率がほぼ変わらないピーク透過率を示す領域を有してもよい。第1の透明樹脂としては、トリグリシジルイソシアヌレートからなる第1のエポキシ樹脂が挙げられる。
【0105】
第2の透明樹脂は、波長320nm程度において80%以上の透過率となり、320〜350nmにおいて80〜90%程度又はそれ以上の透過率を有してもよい。第2の透明樹脂の透過波長帯の下限値は、例えば310〜320nm程度が挙げられる。第2の透明樹脂は、350nmより長波長側の波長帯において、90%以上又は95%以上の透過率を有してもよい。
【0106】
第2の透明樹脂の透過スペクトル特性は、310nm程度から350nm程度までの範囲内に立ち上がり部を有し、立ち上がり部より長波長において透過率がほぼ変わらないピーク透過率を示す領域を有してもよい。第2の透明樹脂としては、トリグリシジルイソシアヌレート及びビスフェノールAジグリシジルエーテルの混合物からなり、トリグリシジルイソシアヌレートが主成分である第2のエポキシ樹脂が挙げられる。
【0107】
第3の透明樹脂は、波長390nm程度において80%以上の透過率となり、390〜400nmにおいて80〜90%程度又はそれ以上の透過率を有してもよい。第3の透明樹脂の透過波長帯の下限値は、例えば380〜390nm程度が挙げられる。第3の透明樹脂は、400nmより長波長側の波長帯において、90%以上又は95%以上の透過率を有してもよい。
【0108】
第3の透明樹脂の透過スペクトル特性は、380nm程度から400nm程度までの範囲内に立ち上がり部を有し、立ち上がり部より長波長において透過率がほぼ変わらないピーク透過率を示す領域を有してもよい。第3の透明樹脂としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びトリグリシジルイソシアヌレートの混合物からなり、ビスフェノールAジグリシジルエーテルが主成分である第3のエポキシ樹脂が挙げられる。
【0109】
上述の透過スペクトル特性を有する樹脂としては、共役二重結合を含まない骨格を有する樹脂か、共役二重結合を含まない骨格を有する樹脂を含む樹脂混合物が挙げられる。共役二重結合は、例えばベンゼン環又は他の芳香環などに含まれる。共役二重結合を含まない骨格を有する樹脂としては、トリグリシジルイソシアヌレート等の飽和脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。飽和脂肪族の種類としては、非環式、脂環式、複素環式等が挙げられる。トリグリシジルイソシアヌレートを樹脂骨格に有する構造のエポキシ樹脂は、共役二重結合を持たないため、紫外線波長帯に透過特性を有する。
図14(a)に示す透過スペクトル特性は、その代表特性である。
【0110】
共役二重結合を含まない骨格を有する樹脂と、共役二重結合を含む骨格を有する樹脂とを混合した場合、紫外線波長帯に吸収特性が発現する。共役二重結合を含む骨格を有する樹脂としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ樹脂が挙げられる。
【0111】
共役二重結合を含まない骨格を有する樹脂が主成分であり、共役二重結合を含む骨格を有する樹脂の含有率が主成分の含有率より少ない場合は、紫外線波長帯の一部に透過特性を有するが、透過波長帯の下限値が長波長側に変化してくる。
図14(b)に示す透過スペクトル特性は、その代表特性である。
【0112】
共役二重結合を含む骨格を有する樹脂が主成分であり、共役二重結合を含まない骨格を有する樹脂の含有率が主成分の含有率より少ない場合は、透過波長帯の下限値が可視光線波長帯に入るか、可視光線と紫外線の境界部付近となる。
図14(c)に示す透過スペクトル特性は、その代表特性である。
【0113】
本明細書において、「主成分」とは、その成分の量が、他の成分の量より多いことを意味する。例えば質量が50%以上の割合である成分を主成分としてもよい。共通の特性を有する2種類以上の成分の合計量が、他の成分の量より多い場合においても、共通の特性を有する2種類以上の成分の合計をもって「主成分」とすることができる。
【0114】
図14(a)〜(c)に示した透過スペクトル特性は、透過波長帯の下限値がそれぞれ第1の透明樹脂、第2の透明樹脂、第3の透明樹脂に対応して、240〜250nm程度、315〜320nm程度、375〜380nm程度にある。更に透過波長帯の下限値から10〜30nm程度の長波長側で高い透過率を示し、急峻な傾きでピーク透過率に達する立ち上がり部を有する。
【0115】
第1〜第3の透明樹脂から2種類を選択して組み合わせることにより、2種類の樹脂の透過スペクトル特性における立ち上がり部の差に相当する波長帯の紫外線照射量を選択的に求めることができる。
【0116】
例えば、第1の透明樹脂と第2の透明樹脂との組み合わせによる透過スペクトル特性を、
図15(a)に示す。樹脂封止部に第1の透明樹脂と第2の透明樹脂とを組み合わせて用いた光センサ装置によれば、250nm程度から320nm程度までの波長帯の紫外線照射量を選択的に求めることができる。
【0117】
同様にして、第1の透明樹脂と第3の透明樹脂との組み合わせによる透過スペクトル特性を、
図15(b)に示す。樹脂封止部に第1の透明樹脂と第3の透明樹脂とを組み合わせて用いた光センサ装置によれば、250nm程度から380nm程度までの波長帯の紫外線照射量を選択的に求めることができる。
【0118】
同様にして、第2の透明樹脂と第3の透明樹脂との組み合わせによる透過スペクトル特性を、
図15(c)に示す。樹脂封止部に第2の透明樹脂と第3の透明樹脂とを組み合わせて用いた光センサ装置によれば、320nm程度から380nm程度までの波長帯の紫外線照射量を選択的に求めることができる。
【0119】
樹脂封止部に用いられる透明樹脂としては、紫外線波長帯の光吸収を抑制するため、ナトリウムイオンや塩素イオン等のイオン性不純物の含有量が少ない樹脂が好ましい。不純物の含有量の減少は、紫外線波長帯の透過率向上に効果的である。
【0120】
以上により、上記実施形態の光センサ装置は、紫外線を透過する特性を有した樹脂封止部を備え、低コストであり、小型化又は薄型化も可能な樹脂パッケージ構造を有することができる。
【0121】
(信号処理回路)
上記実施形態の光センサ装置は、各受光部から出力される出力の差分を識別して、光センサ装置に入射した紫外線の強度を求める機能を有する信号処理回路を備えてもよい。信号処理回路は、各受光部から出力される出力を増幅する装置を備えてもよい。信号処理回路は、受光部を含む樹脂パッケージ構造の内部に設けられてもよい。信号処理回路が、樹脂パッケージ構造の外部に設けられてもよい。受光部を含む樹脂パッケージ構造と、信号処理回路を含む回路部品とが別々に供給され、適宜組み合わせて使用できるように構成されてもよい。
【0122】
信号処理回路としては、例えば特許文献2の
図3に示される回路が挙げられる。
上記実施形態の受光部2a,2bは、例えばフォトダイオードの受光部である。上記実施形態の封止部3a及び受光部2aにより第1のフォトダイオードが構成され、封止部3b及び受光部2bにより第2のフォトダイオードが構成されている。
各封止部3a,3bの透過スペクトル特性が異なるため、第1のフォトダイオードの分光特性と、第2のフォトダイオードの分光特性とは、互いに異なっている。各フォトダイオードのアノード端子は接地され、カソード端子の出力はアンプに接続されている。また、各カソード端子は、それぞれスイッチを介して直流電源に接続されている。
【0123】
各スイッチは、トランジスタなどのスイッチング素子で構成されており、リセット回路からのリセット信号によってフォトダイオードと直流電源との接続をオンオフする。第1のフォトダイオードのカソード端子は第1のスイッチを介して直流電源に接続され、第2のフォトダイオードのカソード端子は第2のスイッチを介して直流電源に接続されている。直流電源は、例えば、定電圧回路によって構成されており、各スイッチがオンすると、各フォトダイオードのカソード端子を基準電圧にする。
【0124】
アンプは、オペアンプなどの増幅回路によって構成されており、各フォトダイオードのカソード端子の電圧を検知してこれを増幅し、差分回路に出力する。第1のフォトダイオードのカソード端子は第1のアンプを介して差分回路に接続され、第2のフォトダイオードのカソード端子は第2のアンプを介して差分回路に接続されている。
【0125】
差分回路は、2つのアンプから出力された電圧を受け付け、これらの差分を生成し、これを判定部に出力する。判定部は、リセット回路のリセット信号と同期して差分回路から出力される電圧の差分をサンプリングして取得し、当該差分によって紫外線の光量を判定する。サンプリングは、例えばリセット直前に行うことができる。
【0126】
上述の回路は、次のように動作する。
リセット回路が各スイッチをオンすると、直流電源により、各フォトダイオードのカソード端子は基準電圧となり、各フォトダイオードに蓄積されている電荷が初期値にリセットされる。次に、リセット回路が各スイッチをオフすると、各フォトダイオードが直流電源から切り離され、アンプの入力インピーダンスが無限大であるため、カソード端子が電気的に回路から切り離された開放端状態となる。その結果、フォトダイオードは、光によって生じた電荷を蓄積する。そして、直流電源によって逆方向にバイアスされていたため、フォトダイオードに蓄積される電荷によってカソード端子の電圧が光の強度に応じた速さで下がっていく。
【0127】
リセット回路がスイッチのオンオフを繰り返すと、各フォトダイオードのカソード端子の電圧は、「基準電圧にリセット」→「電荷蓄積による電圧低下」→「基準電圧にリセット」→・・・、といった状態を繰り返す。
2つのフォトダイオードの分光特性が異なるため、電圧が低下する速さが異なる。そのため、各アンプにより各フォトダイオードの出力を増幅した後、差分回路で出力の差分をとると、その差分はフォトダイオードに蓄積された電荷の差、即ち、紫外線光量に応じた値となっている。そこで、判定部は、差分回路の出力を、リセットしてから所定時間後に検知する。検知のタイミングは、例えば、次のリセットの直前でもよい。差分回路の出力を検知することにより、リセットから検知までの間に各フォトダイオードに蓄積された電荷の差分を電圧差として検出することができ、これによって紫外線光量を判定することができる。