特許第6886323号(P6886323)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886323
(24)【登録日】2021年5月18日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】電動開閉装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/665 20150101AFI20210603BHJP
   E06B 9/264 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   E05F15/665
   E06B9/264 C
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-61693(P2017-61693)
(22)【出願日】2017年3月27日
(65)【公開番号】特開2018-162641(P2018-162641A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2020年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109923
【氏名又は名称】トーソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】植本 雄司
【審査官】 加々美 一恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−124428(JP,A)
【文献】 特開2005−351042(JP,A)
【文献】 特開2002−194948(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1639695(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00−15/79
E06B 9/00−9/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
日よけ具を昇降させる電動開閉装置であって、
前記日よけ具を昇降する駆動軸と、
前記駆動軸を回転駆動させる電動モータと、
前記電動モータの回転角度に応じた検出信号を出力する回転角度検出装置と、
前記回転角度検出装置から出力された前記検出信号に基づいて算出した前記電動モータの回転速度に基づいて、前記電動モータに印加すべきパルス電圧のデューティ比を決定するデータ処理制御部と、
前記データ処理制御部によって決定されたデューティ比の前記パルス電圧を前記電動モータに印加するモータ駆動回路と、を備え、
前記データ処理制御部は、
算出した最新の前記回転速度と過去に算出した前記回転速度とに基づいて、将来の前記回転速度を推定し、その推定した推定速度が目標速度に近づくように、前記パルス電圧のデューティ比を決定し、
前記データ処理制御部は、
前記電動モータの前記回転速度の平均速度が前記目標速度を基準とした所定の範囲内にある場合に、予め設定された基準デューティ比を前記モータ駆動回路に指示し、前記平均速度が前記所定の範囲外にある場合に、前記基準デューティ比を前記推定速度と前記目標速度との差に応じて補正し、補正後のデューティ比を前記モータ駆動回路に指示する
電動開閉装置。
【請求項2】
請求項に記載の電動開閉装置において、
前記データ処理制御部は、前記基準デューティ比の補正を、前記回転速度の算出周期よりも長い周期で行う
ことを特徴とする電動開閉装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電動開閉装置において、
前記データ処理制御部は、
前記推定速度と前記目標速度との間の速度を制御目標速度に設定し、前記制御目標速度と前記推定速度との差に基づいて、前記パルス電圧のディーティ比の補正量を決定する
ことを特徴とする電動開閉装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の電動開閉装置において、
前記回転角度検出装置から出力される前記検出信号はパルス信号であって、
前記データ処理制御部は、
前記パルス信号の1周期に基づいて前記電動モータの前記回転速度を算出する速度算出部と、
前記回転角度検出装置から出力された前記検出信号をn回検出する毎に、n回分の前記回転速度の前記平均速度を算出する平均速度算出部と、
前記速度算出部によって算出された最新の前記回転速度と、前記電動モータの1/n回点前の前記回転速度とに基づいて、前記電動モータの1/m(mは1以上の整数)回転後の前記回転速度を算出し、前記推定速度とする推定速度算出部と、
前記推定速度と前記目標速度との差分を算出する差分算出部と、
前記平均速度が安定したか否かを判定する平均速度判定部と、
前記平均速度が安定していない場合に、前記差分に基づいて前記パルス電圧のデューティ比の補正量を決定し、前記平均速度が安定している場合に、前記補正量をゼロとする補正量決定部と、
前記パルス電圧のデューティ比の基準値と前記補正量とに基づいて、前記電動モータに印加すべき前記パルス電圧のデューティ比を決定するデューティ比決定部と、を含む
ことを特徴とする電動開閉装置。
【請求項5】
請求項に記載の電動開閉装置において、
前記回転角度検出装置から出力される前記検出信号はパルス信号であって、
前記データ処理制御部は、
前記パルス信号の1周期に基づいて前記電動モータの前記回転速度を算出する速度算出部と、
前記回転角度検出装置から出力された前記検出信号をn回検出する毎に、n(nは1以上の整数)回分の前記回転速度の前記平均速度を算出する平均速度算出部と、
前記速度算出部によって算出された最新の前記回転速度と、前記電動モータの1/n回点前の前記回転速度とに基づいて、前記電動モータの1/m(mは1以上の整数)回転後の前記回転速度を算出し、前記推定速度とする推定速度算出部と、
前記推定速度と前記目標速度とに基づいて、前記制御目標速度を算出する制御目標速度算出部と、
前記推定速度と前記制御目標速度との差分を算出する差分算出部と、
前記平均速度が安定したか否かを判定する平均速度判定部と、
前記平均速度が安定していない場合に、前記差分に基づいて前記パルス電圧のデューティ比の補正量を決定し、前記平均速度が安定している場合に、前記補正量をゼロとする補正量決定部と、
前記パルス電圧のデューティ比の基準値と前記補正量とに基づいて、前記電動モータに印加すべき前記パルス電圧のデューティ比を決定するデューティ比決定部と、を更に含む
ことを特徴とする電動開閉装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の電動開閉装置において、
前記補正量決定部は、前記差分が所定の閾値よりも大きい場合に、前記補正量を第1値に設定し、前記差分が前記所定の閾値よりも小さい場合に、前記補正量を、前記第1値の絶対値よりも小さい絶対値を有する第2値に設定する
ことを特徴とする電動開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電動開閉装置に関し、例えばブラインドまたはスクリーン等の日よけ具を電動で昇降させる電動開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、オフィス等の窓一面には、日よけ具としてのブラインドが複数設置されている。ブラインドは、電動開閉装置によって同時に昇降される場合が多い。その場合、各ブラインドの昇降速度が異なると、見栄えが悪くなる。そのため、各ブラインドの昇降速度を揃えることが求められている。
【0003】
しかしながら、各ブラインドの昇降速度を揃えることは容易ではない。例えば、ブランドを昇降させる電動モータへの印加電圧を12Vや24Vなどの複数の電圧に切り替えることにより電動モータの回転数を可変することは可能である。しかしながら、電動モータの回転数は電動モータの特性に依存し、その特性は電動モータ毎にばらつきがあるため、ブラインドを駆動するすべての電動モータの回転数が必ずしも同じになるとは限らない。また、電動モータに対する負荷の大きさにより、電動モータの印加電圧が同じであっても、回転数が一致するとは限らない。
【0004】
そこで、複数の電動ブラインドの昇降速度を揃えることを可能にした従来技術が、特許文献1に開示されている。具体的に、特許文献1には、ブラインドを昇降させる電動モータの回転速度を検出するとともに、その検出した回転速度と予め定められた所定の回転速度(目標速度)とを比較し、その比較結果に基づいて電動モータを駆動するパルス電圧のデューティ比を変化させることにより、複数のブラインド間での昇降速度を揃える技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−124428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された従来技術では、検出した電動モータの回転速度と目標速度との差が大きい場合に、電動モータを駆動するためのパルス電圧のデューティ比が大きく変化するため、電動モータが唸るおそれがある。また、デューティ比の更新頻度が高くなるほど、電動モータが唸り易くなる傾向がある。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、複数の日よけ具を同時に昇降させる場合に、電動モータのうなりを抑えつつ、各日よけ具の昇降速度を揃えることが可能な電動開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る、日よけ具を昇降させる電動開閉装置は、日よけ具を昇降する駆動軸と、駆動軸を回転駆動させる電動モータと、電動モータの回転角度に応じた検出信号を出力する回転角度検出装置と、回転角度検出装置から出力された検出信号に基づいて算出した電動モータの回転速度に基づいて、電動モータに印加すべきパルス電圧のデューティ比を決定するデータ処理制御部と、データ処理制御部によって決定されたデューティ比のパルス電圧を電動モータに印加するモータ駆動回路とを備え、データ処理制御部は、最新の回転角度と過去に算出した回転速度とに基づいて、将来の回転速度を推定し、その推定した推定速度が目標速度に近づくように、パルス電圧のデューティ比を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の電動ブラインドを同時に昇降させる場合に、電動モータのうなりを抑えつつ、各電動ブラインドの昇降速度を揃えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態1に係る電動開閉装置を備えたシステムの構成を示す図である。
図2図2は、実施の形態1に係る電動開閉装置における日よけ具の昇降を実現するための機能ブロックを示す図である。
図3図3は、回転角度検出装置から出力される検出信号の一例を示す図である。
図4図4は、実施の形態1に係る電動開閉装置のデータ処理制御部の具体的な構成を示す図である。
図5図5は、実施の形態1に係る電動開閉装置における推定速度算出部による将来の電動モータの回転速度の推定方法の概念を示す図である。
図6図6は、平均速度判定部による判定方法の概念を示す図である。
図7A図7Aは、実施の形態1に係る電動開閉装置における、日よけ具の昇降制御の処理手順を示すフロー図である。
図7B図7Bは、実施の形態1に係る電動開閉装置における、日よけ具の昇降制御の処理手順を示すフロー図である。
図8図8は、実施の形態2に係る電動開閉装置におけるデータ処理制御部の具体的な構成を示す図である。
図9図9は、制御目標速度の概念を示す図である。
図10A図10Aは、実施の形態2に係る電動開閉装置における、日よけ具の昇降制御の処理手順を示すフロー図である。
図10B図10Bは、実施の形態2に係る電動開閉装置における、日よけ具の昇降制御の処理手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0012】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係る、日よけ具を昇降させる電動開閉装置(101)は、日よけ具(200)を昇降する駆動軸(1)と、駆動軸を回転駆動させる電動モータ(2)と、電動モータの回転角度に応じた検出信号を出力する回転角度検出装置(3)と、回転角度検出装置から出力された検出信号に基づいて算出した電動モータの回転速度に基づいて、電動モータに印加すべきパルス電圧のデューティ比を決定するデータ処理制御部(4)と、データ処理制御部によって決定されたデューティ比のパルス電圧を電動モータに印加するモータ駆動回路(5)と、を備え、データ処理制御部は、算出した最新の回転速度と過去に算出した回転速度とに基づいて、将来の回転速度を推定し、その推定した推定速度が目標速度に近づくように、パルス電圧のデューティ比を決定することを特徴とする。
【0013】
〔2〕上記電動開閉装置において、データ処理制御部は、電動モータの回転速度の平均速度が目標速度を基準とした所定の範囲内にある場合に、予め設定された基準のデューティ比をモータ駆動回路に指示し、平均速度が所定の範囲外にある場合に、予め設定された基準のデューティ比を推定速度と目標速度との差に応じて補正し、補正後のデューティ比をモータ駆動回路に指示する。
【0014】
〔3〕上記電動開閉装置において、データ処理制御部は、基準デューティ比の補正を、回転速度の算出周期よりも長い周期で行う。
【0015】
〔4〕上記電動開閉装置において、データ処理制御部は、推定速度と目標速度との間の速度を制御目標速度に設定し、制御目標速度と推定速度との差に基づいて、パルス電圧のディーティ比の補正量を決定する。
【0016】
〔5〕上記電動開閉装置において、回転角度検出装置から出力される検出信号はパルス信号であって、データ処理制御部は、パルス信号の1周期に基づいて電動モータの回転速度を算出する速度算出部(41)と、回転角度検出装置から出力された検出信号をn(nは2以上の整数)回検出する毎に、n回分の回転速度の平均速度を算出する平均速度算出部(42)と、速度算出部によって算出された最新の回転速度と、電動モータの1/n回点前の回転速度とに基づいて、電動モータの1/m(mは1以上の整数)回転後の回転速度を算出し、推定速度とする推定速度算出部(43)と、推定速度と目標速度との差分を算出する差分算出部(44)と、平均速度が安定したか否かを判定する平均速度判定部(45)と、平均速度が安定していない場合に、差分に基づいてパルス電圧のデューティ比の補正量を決定し、平均速度が安定している場合に、補正量をゼロとする補正量決定部(46)と、パルス電圧のデューティ比の基準値と前記補正量とに基づいて、電動モータに印加すべきパルス電圧のデューティ比を決定するデューティ比決定部(47)とを含む。
【0017】
〔6〕上記電動開閉装置において、回転角度検出装置から出力される検出信号はパルス信号であって、データ処理制御部は、パルス信号の1周期に基づいて電動モータの回転速度を算出する速度算出部(41)と、回転角度検出装置から出力された検出信号をn回検出する毎に、n回分の回転速度の平均速度を算出する平均速度算出部(42)と、速度算出部によって算出された最新の回転速度と、電動モータの1/n回点前の回転速度とに基づいて、電動モータの1/m(mは1以上の整数)回転後の回転速度を算出し、推定速度とする推定速度算出部(43)と、推定速度と目標速度とに基づいて制御目標速度を算出する制御目標速度算出部(49)と、推定速度と制御目標速度との差分を算出する差分算出部(44)と、平均速度が安定したか否かを判定する平均速度判定部(45)と、平均速度が安定していない場合に、差分に基づいてパルス電圧のデューティ比の補正量を決定し、平均速度が安定している場合に、補正量をゼロとする補正量決定部(46)と、パルス電圧のデューティ比の基準値と補正量とに基づいて、電動モータに印加すべきパルス電圧のデューティ比を決定するデューティ比決定部(47)とを更に含む。
【0018】
〔7〕上記電動開閉装置において、補正量決定部は、差分が所定の閾値よりも大きい場合に、補正量を第1値(−A,+C)に設定し、差分が所定の閾値よりも小さい場合に、補正量を、第1値の絶対値よりも小さい絶対値を有する第2値(−B,−D)に設定する。
【0019】
2.実施の形態の具体例
次に、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0020】
≪実施の形態1≫
図1は、実施の形態1に係る電動開閉装置を備えたシステムの構成を示す図である。
同図に示される電動開閉システム100は、複数の電動開閉装置101と外部コントローラ102とを備える。なお、同図には、一例として、2つの電動開閉装置101が示されているが、電動開閉システム100が備える電動開閉装置101の個数は、上記の例に限定されるものではない。また、同図では、2つの電動開閉装置101が縦方向に並んで配置されている場合が例示されているが、横方向に並んで配置されていてもよく、電動開閉装置101の並び方に特に制限はない。
【0021】
電動開閉装置101は、日よけ具200としてのブラインドを昇降させる電動ブラインドである。外部コントローラ102は、各電動開閉装置101と配線ケーブル103によって電気的に接続され、各電動開閉装置101を制御する装置である。たとえば、外部コントローラ102には、複数のスイッチ104が設けられており、ユーザがそれらのスイッチ104を操作することにより、複数の電動開閉装置101に対する日よけ具200の昇降の指示を、個別にまたは同時に行うことが可能となっている。
【0022】
電動開閉装置101は、日よけ具200の昇降を実現するための電動モータの回転速度が目標速度に近づくように電動モータを制御することにより、日よけ具200の昇降速度を一定とする機能を備えている。以下、電動開閉装置101の具体的な構造について、詳細に説明する。
【0023】
図1に示されるように、電動開閉装置101は、日よけ具200、ヘッドボックス201を有する。日よけ具200は、上述したようにブラインドであり、複数の短冊状のスラット20が連結されて構成されている。
【0024】
ヘッドボックス201は、日よけ具200の昇降を制御するための各種の機能部を収容する筐体である。具体的に、ヘッドボックス201には、シャフト1、モータユニット202、センサユニット203、制御ユニット204、および電源ユニット205等が収容されている。
【0025】
シャフト1は、日よけ具200の昇降を行う駆動軸である。シャフト1は、日よけ具200を構成する複数のスラット20と連結されている。例えば、シャフト1が第1方向に回動すると、複数のスラット20が巻き上げられて、日よけ具200が上昇し、ヘッドボックス201内に収容される。一方、シャフト1が第1方向と逆の第2方向に回動すると、ヘッドボックス201内に収容された複数のスラット20が巻き下げられて、日よけ具200がヘッドボックス201から下降する。
【0026】
モータユニット202は、シャフト1を回転駆動させるためのユニットであり、後述する電動モータ2およびモータ駆動回路5を含む。センサユニット203は、モータユニット202の動作を監視するためのユニットであり、後述する回転角度検出装置3を含む。制御ユニット204は、電動開閉装置101の統括的な制御を司るユニットであり、後述するデータ処理制御部4を含む。電源ユニット205は、モータユニット202、センサユニット203、および制御ユニット204等の動作に必要な電源電圧を供給するユニットである。以下、上記ユニットに含まれる各種機能ブロックのうち、日よけ具200の昇降を実現するための機能ブロックについて詳細に説明する。
【0027】
図2は、電動開閉装置101における、日よけ具200の昇降を実現するための機能ブロックを示す図である。
【0028】
電動モータ2は、駆動軸としてのシャフト1を回転駆動させる部品である。電動モータ2の出力軸は、図示されない減速機を介してシャフト1に連結されている。
【0029】
モータ駆動回路5は、電動モータ2に電圧を印加することにより、電動モータ2の出力軸を回転駆動する機能部である。モータ駆動回路5は、後述するデータ処理制御部4によって決定されたデューティ比のパルス電圧を電動モータ2に印加するPWM(Pulse Width Modulation)制御によって、電動モータ2の出力軸の回転を制御する。以下、電動モータ2の出力軸の回転を、単に「電動モータ2の回転」と称することがある。
【0030】
回転角度検出装置3は、電動モータ3の回転角度に応じた検出信号を出力する機能部である。ここで、回転角度検出装置3は、例えばロータリエンコーダ(例えば、インクリメンタル方式)であり、電動モータ3の回転方向の機械的変位量に応じたパルス列を検出信号として出力する。本実施の形態では、一例として、回転角度検出装置3がロータリエンコーダであるとして説明する。
【0031】
図3は、回転角度検出装置3から出力される検出信号の一例を示す図である。
回転角度検出装置3は、上記検出信号として、電動モータ3の回転速度に応じた周期を有するA相パルス信号と、A相パルス信号に対して位相差が90度のB相パルス信号とをそれぞれ出力する。同図に示されるように、回転角度検出装置3は、電動モータ3が回転方向に所定量変位する毎にパルスを出力する。
【0032】
データ処理制御部4は、モータ駆動回路5を介して電動モータ2の回転を制御する機能部である。データ処理制御部4は、回転角度検出装置3から出力された検出信号例えば、A相パルス信号およびB相パルス信号の少なくとも一方、に基づいて電動モータ2の回転速度を算出し、算出した回転速度に基づいて電動モータ2に印加すべきパルス電圧のデューティ比を決定する。このとき、データ処理制御部4は、電動モータ2の最新の回転角度と、過去に算出した電動モータ2の回転速度とに基づいて、将来の電動モータ2の回転速度を推定し、その推定した推定速度が目標速度に近づくように、パルス電圧のデューティ比を決定する。以下、データ処理制御部4について、詳細に説明する。
【0033】
図4は、実施の形態1に係る電動開閉装置のデータ処理制御部4の具体的な構成を示す図である。
同図に示されるように、データ処理制御部4は、速度算出部41、平均速度算出部42、推定速度算出部43、差分算出部44、平均速度判定部45、補正量決定部46、デューティ比決定部47、および記憶部40を含む。
【0034】
データ処理制御部4は、例えば、CPU、RAMやROM等の各種のメモリ、および外部の周辺機器と通信を行うための各種入出力回路等を備えたマイクロコントローラである。上述した速度算出部41、平均速度算出部42、推定速度算出部43、差分算出部44、平均速度判定部45、補正量決定部46、デューティ比決定部47、および記憶部40は、上記マイクロコントローラが上記メモリに記憶されたプログラムに従って各種演算を実行することによって実現される。
【0035】
記憶部40は、データ処理制御部4による、電動モータ2に印加すべきパルス電圧のデューティ比を決定するための各種データ処理に必要な種々のパラメータや、演算結果等を記憶するための機能部である。例えば、上記パラメータとして、電動モータ2の回転速度の目標速度vtの情報を含む目標速度データ404、電動モータ2の回転速度が安定したか否かを判定するための基準となる速度判定基準データ406、および電動モータ2に印加すべきパルス電圧のデューティ比の基準値(基準デューティ比Dm)の情報を含む基準デューティ比データ407等が記憶部40に記憶されている。
【0036】
速度算出部41は、回転角度検出装置3から出力された検出信号(パルス信号)の1周期に基づいて電動モータ2の回転速度を算出する機能部である。具体的には、A相パルス信号またはB相パルスのエッジが検出される毎に、電動モータ2の回転速度を算出する。
例えば、図3に示すように、A相パルス信号の立ち上がりエッジを検出する毎に、そのA相パルス信号の立ち上がりエッジからその直前の立ち上がりエッジまでの期間(A相パルス信号の1周期)の長さに基づいて、電動モータ2の回転速度を算出する。また、A相パルス信号の立ち下がりエッジを検出する毎に、そのA相パルス信号の立ち下がりエッジからその直前の立ち下がりエッジまでの期間の長さに基づいて、電動モータ2の回転速度を算出する。速度算出部41によって算出された回転速度のデータは、速度データ401として、記憶部40に記憶される。以下、記憶部40に記憶された速度データ401に含まれる回転速度のうち、最新の回転速度を参照符号vcで表し、それ以外の回転速度を参照符号vpで表す。
【0037】
平均速度算出部42は、回転角度検出装置3から出力された検出信号をn(nは2以上の整数)回検出する毎に、電動モータ2のn回分の回転速度の平均速度を算出する機能部である。例えば、図3に示すように、A相パルス信号の立ち上がりエッジの検出に同期して算出した回転速度と、A相パルス信号の立ち下がりエッジに同期して算出した回転速度の合計10回分を取得した場合、その10回分の回転速度を平均して平均速度vaを算出する。平均速度算出部42は、算出した平均速度vaを平均速度データ402として記憶部40に記憶する。
【0038】
推定速度算出部43は、電動モータ2の最新の回転速度vcと、過去に算出した電動モータ2の回転速度vpとから、将来の電動モータ2の回転速度を推定する機能部である。
【0039】
図5は、実施の形態1に係る電動開閉装置における推定速度算出部43による将来の電動モータ2の回転速度の推定方法の概念を示す図である。
同図に示されるように、推定速度算出部43は、速度算出部41によって算出された最新の回転速度vcと、速度算出部41によって算出された電動モータ2の1/n回転前の回転速度vpとに基づいて、1/m回転後の回転速度vfを算出する。
【0040】
ここで、mは1以上の整数であり、m=nであってもよい。
【0041】
具体的に、推定速度算出部43は、最新の回転速度vcと1/n回転前の回転速度vpとから近似式(例えば、直線近似式)300を算出し、近似式300を用いて1/m回転後の回転速度vfを算出する。推定速度算出部43は、算出した回転速度vfを推定速度データ403として記憶部40に記憶する。
【0042】
以下、推定速度算出部43によって推定される将来の電動モータの回転速度vfを「推定速度vf」とも称する。
【0043】
差分算出部44は、推定速度算出部43によって算出された推定速度vfと目標速度vtとの差分を算出する機能部である。例えば、差分算出部44は、目標速度vtから推定速度vfを減算し、その減算結果を差分Δvとする。差分算出部44は、算出した差分Δvを差分データ405として記憶部40に記憶する。
【0044】
平均速度判定部45は、電動モータ2の回転速度が安定したか否かを判定する機能部である。
図6は、平均速度判定部45による判定方法の概念を示す図である。
同図に示されるように、平均速度判定部45は、平均速度算出部42によって算出された平均速度vaが、目標速度vtを基準として±α(α>0)の範囲301にあるか否かを判定することにより、電動モータ2の回転速度が安定したか否かを判定する。平均速度vaが範囲301内にある場合には、平均速度判定部45は、電動モータ2の回転速度が安定したと判定する。一方、平均速度vaが範囲301外にある場合には、平均速度判定部45は、電動モータ2の回転速度が安定していないと判定する。
【0045】
ここで、範囲301を規定する“α”の値は、速度判定基準データ406として記憶部40に予め記憶されている。
【0046】
補正量決定部46は、平均速度判定部45による判定結果と、差分算出部44によって算出された差分Δvとに基づいて、電動モータ2に印加すべきパルス電圧のデューティ比の補正量を決定する。具体的に、補正量決定部46は、平均速度vaが安定していない場合に、差分Δvに基づいてパルス電圧のデューティ比の補正量を決定し、平均速度vaが安定している場合に、補正量をゼロとする。
【0047】
より具体的には、補正量決定部46は、差分Δvの大きさに応じて、補正量を段階的に切り替える。例えば、補正量決定部46は、推定速度vfが目標速度vtよりも大きく、かつ差分Δvの絶対値が閾値vt1よりも大きい場合には、補正量を第1値“−A”に設定し、推定速度vfが目標速度vtよりも大きく、かつ差分Δvの絶対値が閾値vt1よりも小さい場合には、補正量を第2値“−B”に設定する。ここで、A>Bである。
【0048】
一方、補正量決定部46は、推定速度vfが目標速度vtよりも小さく、かつ差分Δvの絶対値が閾値vt2よりも大きい場合には、補正量を第3値“+C”に設定し、推定速度vfが目標速度vtよりも小さく、かつ差分Δvの絶対値が閾値vt2よりも小さい場合には、補正量を第4値“+D”に設定する。
ここで、C>Dである。なお、本実施の形態では、説明の便宜上、A=C,B=Dとするが、これに限定されるものではない。また、閾値vt1と閾値vt2とは、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよく、特に制限されない。
【0049】
このように、補正量決定部46は、差分Δvの大きさに応じて、電動モータ2に印加するパルス電圧のデューティ比の補正量を段階的に切り替える。
【0050】
デューティ比決定部47は、電動モータ2に印加すべきパルス電圧のデューティ比を決定する機能部である。デューティ比決定部47は、記憶部40に予め記憶された基準デューティ比データ407と、補正量決定部46によって決定された補正量とに基づいて、電動モータ2に印加すべきパルス電圧のデューティ比を決定し、モータ駆動回路5に指示する。例えば、基準デューティ比がDm、補正量決定部46によって決定された補正量が“−A”の場合、デューティ比決定部47は、デューティ比“Dm−A”のパルス電圧の出力をモータ駆動回路5に指示する。また、補正量決定部46によって決定された補正量が“0(ゼロ)”である場合、デューティ比決定部47は、デューティ比の補正を行わずに、基準デューティ比Dmのパルス電圧の出力をモータ駆動回路5に指示する。
【0051】
また、デューティ比決定部47は、上記パルス電圧のデューティ比の更新を所定の周期で繰り返し実行する。具体的に、デューティ比決定部47は、上記パルス電圧のデューティ比を更新する周期を示すPWM更新時間をタイマ(図示せず)に設定し、そのタイマによるカウント値がPMW更新時間に到達したら、上記パルス電圧のデューティ比の更新を実行するとともに、上記タイマのカウント値をリセットしてカウント動作を再開させる。
【0052】
ここで、PWM更新時間は、上述の速度算出部41による回転速度の算出周期よりも長い期間である。例えば、PWM更新時間が100msの場合、100ms毎に、パルス電圧のデューティ比の更新が行われ、その100msの間に、回転速度の算出が複数回行われる。
【0053】
次に、電動開閉装置101における、日よけ具200の昇降制御の具体的な処理手順について説明する。
図7A,7Bは、電動開閉装置101における、日よけ具200の昇降制御の処理手順を示すフロー図である。
【0054】
電動開閉装置101は、外部コントローラ102から日よけ具200の昇降要求があるか否かを判定する(ステップS1)。昇降要求がない場合には、電動開閉装置101は、日よけ具200の昇降動作を行わずに、その状態のまま待機する。
【0055】
外部コントローラ102から日よけ具200の上昇または下降の要求があった場合には、電動開閉装置101は、その要求内容に応じた日よけ具200の昇降動作を開始する(ステップS2)。具体的には、デューティ比決定部47が、記憶部40に記憶されている基準デューティ比データ407を読み出し、基準デューティ比Dmをモータ駆動回路5に指示する。モータ駆動回路5は、指示されたデューティ比のパルス電圧を生成し、電動モータ2に印加する。これにより、電動モータ2の出力軸が、印加されたパルス電圧に応じた回転速度で回転し、その回転力がシャフト1に伝達され、シャフト1に連結された日よけ具200の昇降動作が開始される。
【0056】
次に、電動開閉装置101は、電動モータ2に印加するパルス電圧のデューティ比の更新時間を設定し、計時を開始する(ステップS3)。具体的には、上述したように、デューティ比決定部47が図示されていないタイマにPWM更新時間を設定し、上記タイマに対してPWM更新時間までの計時を実行させる。
【0057】
次に、電動開閉装置101は、電動モータ2の回転速度の情報を取得する(ステップS4)。具体的には、上述したように、速度算出部41が、回転角度検出装置3から出力される検出信号(A相パルス信号)のエッジを検出する毎に、電動モータ2の回転速度を算出し、速度データ401として記憶部40に順次記憶する。
【0058】
また、ステップS4において、平均速度判定部45が、上述したように、速度算出部41によって算出されたn回分の回転速度に基づいて平均速度vaを算出し、速度データ401として記憶部40に記憶する。
【0059】
次に、電動開閉装置101は、ステップS3で設定したPWM更新時間に到達したか経過したか否かを判定する(ステップS5)。PWM更新時間が経過していない場合には、電動開閉装置101は、引き続き、ステップS2で設定した基準デューティ比Dmのパルス電圧で電動モータ2を駆動し、速度データ401を取得する。一方、PWM更新時間が経過した場合には、電動開閉装置101は、最新の回転速度vcが取得できているか否かを判定する(ステップS6)。
【0060】
ステップS6において、PWM更新時間が経過したにも関わらず、最新の回転速度vcが取得できていない場合には、電動モータ2に印加されるパルス電圧のデューティ比が小さすぎて十分な回転速度に到達していない可能性が高いので、電動開閉装置101は、電動モータ2に印加するパルス電圧のデューティ比を大きくする方向に補正する(ステップS20)。具体的には、補正量決定部46が補正量を”+E(>A)”に設定し、デューティ比決定部47がデューティ比“Dm+E”のパルス電圧の出力をモータ駆動回路5に指示する。
【0061】
一方、最新の回転速度vcが取得できている場合には、電動開閉装置101は、1/n回転前の回転速度vpが取得できているか否かを判定する(ステップS7)。
ステップS7において、1/n回転前の回転速度vpが取得できていない場合には、電動モータ2に印加されるパルス電圧のデューティ比が小さすぎて十分な回転速度に到達していない可能性が高いので、電動開閉装置101は、上述したように、電動モータ2に印加するパルス電圧のデューティ比を大きくする方向に補正する(ステップS20)。
【0062】
一方、1/n回転後の回転速度vpが取得できている場合には、電動開閉装置101は、1/n回転後の回転速度(推定速度)vfを算出する(ステップS8)。具体的には、推定速度算出部43が、最新の回転速度vcと過去の回転速度vpとに基づいて、上述した手法により、推定速度vfを算出する。
【0063】
次に、電動開閉装置101は、推定速度vfと目標速度vtとの差分Δvを算出する(ステップS9)。具体的には、上述したように、差分算出部44が、記憶部40から推定速度vfおよび目標速度vtを読み出し、目標速度vtから推定速度vfを減算することにより、差分Δvを算出する。
【0064】
次に、電動開閉装置101は、電動モータ2の回転速度が安定したか否かを判定する(ステップS10)。具体的には、上述したように、平均速度判定部45が、平均速度算出部42によって算出された平均速度vaが範囲301にあるか否かを判定することにより、電動モータ2の回転速度が安定したか否かを判定する。
【0065】
ステップS10において、平均速度vaが安定していると判定した場合には、電動開閉装置101は、電動モータ2に対して、ステップS2において決定した基準デューティ比Dmのパルス電圧の出力を継続する(ステップS21)。具体的には、補正量決定部46が、補正量を“0(ゼロ)”に設定し、デューティ比決定部47が、引き続きデューティ比“Dm”のパルス電圧の出力をモータ駆動回路5に指示する。
【0066】
一方、ステップS10において、平均速度vaが安定していないと判定した場合には、電動開閉装置101は、推定速度vfが目標速度vtよりも大きいか否かを判定する(ステップS11)。具体的には、補正量決定部46が、差分算出部44によって算出された差分Δv(=va−vt)が正(>0)であるか否かを判定する。
【0067】
ステップS11において、差分Δvが正でない場合、すなわち推定速度vfが目標速度vtよりも大きくない場合には、ステップS13に移行する。
【0068】
一方、ステップS11において、差分Δvが正である場合、すなわち推定速度vfが目標速度vtよりも大きい場合には、補正量決定部46は、その差分Δvの絶対値が閾値vt1よりも大きいか否かを判定する(ステップS12)。
【0069】
ステップS12において、差分Δvの絶対値が閾値vt1よりも大きい場合には、補正量決定部46が補正量“−A”に設定し、デューティ比決定部47がデューティ比“Dm−A”のパルス電圧の出力をモータ駆動回路5に指示する(ステップS22)。これにより、電動モータ2の回転速度が低下し、電動モータ2の回転速度が目標速度vtに近づくように電動モータ2が制御される。
【0070】
一方、ステップS12において、差分Δvの絶対値が閾値vt1よりも小さい場合には、補正量決定部46が補正量“−B”に設定し、デューティ比決定部47がデューティ比“Dm−B”のパルス電圧の出力をモータ駆動回路5に指示する(ステップS23)。これにより、電動モータ2の回転速度が低下し、電動モータ2の回転速度が目標速度vtに近づくように電動モータ2が制御される。このとき、B<Aであるため、電動モータ2の回転速度の低下度は、ステップS22における電動モータ2の回転速度の低下度よりも小さくなる。
【0071】
また、ステップS13では、電動開閉装置101は、推定速度vfが目標速度vtよりも小さいか否かを判定する。具体的には、補正量決定部46が、差分算出部44によって算出された差分Δv(=va−vt)が負(<0)であるか否かを判定する。
【0072】
ステップS13において、差分Δvが負でない場合、すなわち推定速度vfが目標速度vtよりも小さくない場合には、補正量決定部46が、推定速度vfが目標速度vtに一致していると判断して補正量を“0(ゼロ)”に設定し、デューティ比決定部47が、引き続きデューティ比“Dm”のパルス電圧の出力をモータ駆動回路5に指示する(ステップS26)。
【0073】
一方、ステップS13において、差分Δvが負である場合、すなわち推定速度vfが目標速度vtよりも小さい場合には、補正量決定部46は、その差分Δvの絶対値が閾値vt2よりも大きいか否かを判定する(ステップS14)。
【0074】
ステップS14において、差分Δvの絶対値が閾値vt2よりも大きい場合には、補正量決定部46が補正量“+C”に設定し、デューティ比決定部47がデューティ比“Dm+C”のパルス電圧の出力をモータ駆動回路5に指示する(ステップS24)。これにより、電動モータ2の回転速度が上昇し、電動モータ2の回転速度が目標速度vtに近づくように電動モータ2が制御される。
【0075】
一方、ステップS14において、差分Δvの絶対値が閾値vt2よりも小さい場合には、補正量決定部46が補正量“+D”に設定し、デューティ比決定部47がデューティ比“Dm+D”のパルス電圧の出力をモータ駆動回路5に指示する(ステップS25)。これにより、電動モータ2の回転速度が低下し、電動モータ2の回転速度が目標速度vtに近づくように電動モータ2が制御される。このとき、D<Cであるため、電動モータ2の回転速度の上昇度は、ステップS24における電動モータ2の回転速度の上昇度よりも小さくなる。
【0076】
以上の処理手順により、電動モータ2の回転速度が目標速度vtとなるように、電動モータ2を制御することが可能となる。
【0077】
以上、実施の形態1に係る電動開閉装置101によれば、ロータリエンコーダ等の回転角度検出装置3から出力された電動モータ2の回転角度に応じた検出信号(A相パルス信号等)に基づいて電動モータ2の回転速度を検出し、その回転速度が目標速度vtに一致するように、電動モータ2に印加すべきパルス電圧のデューティ比を決定するので、電動モータ2によって駆動されるシャフト1に連結された日よけ具200の昇降速度を一定にすることが可能となる。これにより、図1に示すように、複数の電動開閉装置101を備える電動開閉システム100において、複数の電動開閉装置101のそれぞれの日よけ具200を一斉に昇降させる場合であっても、各日よけ具の昇降速度を揃えることが可能となる。
【0078】
また、電動開閉装置101によれば、最新の回転速度vcと過去に検出した回転速度vpとに基づいて推定した将来の回転速度(推定速度)vfと、目標速度vtとの差に基づいて電動モータ2に印加すべきパルス電圧のデューティ比を決定するので、従来技術のように最新の回転速度vcと目標速度vtとの差に基づいて電動モータ2に印加すべきパルス電圧のデューティ比を決定する場合に比べて、電動モータ2に印加するパルス電圧のデューティ比の変化を緩やかにすることができる。これにより、電動モータ2の最新の回転速度vcと目標速度vtとの差が大きい場合であっても、電動モータのうなり音の発生を低減することが可能となる。
【0079】
また、電動開閉装置101によれば、最新の回転速度vcと目標速度vtの差分に基づいてデューティ比を制御する手法(比例制御)に比べて、目標速度に収束し易くなる。すなわち、上記比例制御では、電動モータの負荷は一定ではないので、最新の回転速度vcと目標速度vtの差分が大きい場合、デューティ比の変化量(増減量)が大きくなり、目標速度に収束しないおそれがある。これに対し、電動開閉装置101では、推定速度vfと目標速度vtの差分で制御するので、デューティ比の変化量が緩やかになり、目標速度に収束し易くなる。
【0080】
特に、実施の形態1に係る電動開閉装置101では、電動モータ2の回転速度の平均速度vaが目標速度vtを基準とした所定の範囲301内にある場合には、予め設定された基準デューティ比Dmをモータ駆動回路5に指示し、平均速度vaが所定の範囲301外にある場合には、基準デューティ比Dmを推定速度vfと目標速度vtとの差分Δvに応じて補正したデューティ比をモータ駆動回路5に指示するので、電動モータ2の回転速度を目標速度により収束させることが可能となる。
【0081】
また、実施の形態1に係る電動開閉装置101によれば、電動モータ2に印加すべきパルス電圧のデューティ比の更新が、電動モータ2の回転速度の算出周期よりも長い周期で行われるので、回転速度の検出タイミングに合わせてデューティ比を随時更新する場合に比べて、デューティ比の更新頻度が抑えられる。これにより、電動モータ2の唸り音の発生を更に抑制することが可能となる。
【0082】
更に、実施の形態1に係る電動開閉装置101は、差分Δvが所定の閾値(vt1,vt2)よりも大きい場合に、デューティ比の補正量を第1値(−A/+C)に設定し、差分Δvが上記所定の閾値よりも小さい場合に、デューティ比の補正量を、第1値の絶対値よりも小さい絶対値を有する第2値(−B/+D)に設定する。すなわち、電動開閉装置101によれば、差分の大きさに応じてデューティ比の補正量(増減量)を可変させるので、電動モータ2の回転速度をより早く目標速度vtに収束させることが可能となる。
【0083】
≪実施の形態2≫
図8は、実施の形態2に係る電動開閉装置におけるデータ処理制御部の具体的な構成を示す図である。
実施の形態2に係る電動開閉装置101Aは、推定速度と目標速度との差に基づいて電動モータ2に印加すべきパルス電圧のデューティ比を決定するのではなく、推定速度と目標速度との間の速度を制御目標速度に設定し、その制御目標速度と推定速度との差に基づいて上記パルス電圧のデューティ比を決定する点において、実施の形態1に係る電動開閉装置101と相違し、その他の点おいては、実施の形態1に係る電動開閉装置101と同様である。
【0084】
具体的には、実施の形態2に係る電動開閉装置101Aのデータ処理制御部4Aは、上述したデータ処理制御部4の各機能部に加えて、制御目標速度算出部49を更に有する。
【0085】
制御目標速度算出部49は、推定速度算出部43によって算出された推定速度vfと目標速度vtとに基づいて、制御目標速度vtcを算出する機能部である。
【0086】
図9は、制御目標速度vtcの概念を示す図である。
同図に示されるように、制御目標速度vtcは、推定速度vfと目標速度vtとの間の速度である。例えば、制御目標速度vtcは、推定速度vfと目標速度vtの中間の速度である。制御目標速度算出部49は、推定速度vfと目標速度vtとに基づいて算出した制御目標速度vtcを制御目標速度データ409として記憶部40に記憶する。
【0087】
差分算出部44Aは、制御目標速度vtcと推定速度vfとの差分Δvを算出する。例えば、差分算出部44は、制御目標速度vtcから推定速度vfを減算し、その減算結果を差分Δvとして記憶部40に記憶する。補正量決定部46は、記憶部40に記憶された制御目標速度vtcと推定速度vfとの差分Δvの大きさに応じて、パルス電圧のデューティ比の補正量を段階的に切り替える。
【0088】
次に、実施の形態2に係る電動開閉装置101Aにおける、日よけ具200の昇降制御の具体的な処理手順について説明する。
【0089】
図10A,10Bは、電動開閉装置101Aにおける、日よけ具200の昇降制御の処理手順を示すフロー図である。
電動開閉装置101Aは、外部コントローラ102から日よけ具200の昇降要求があるか否かを判定する(ステップS1)。昇降要求がない場合には、電動開閉装置101は、日よけ具200の昇降動作を行わずに、その状態のまま待機する。
【0090】
外部コントローラ102から日よけ具200の上昇または下降の要求があった場合には、電動開閉装置101Aは、実施の形態1に係る電動開閉装置101と同様に、ステップS2からステップS8までの処理を実行する。
【0091】
ステップS8において、推定速度算出部43が1/n回転後の回転速度(推定速度)vfを算出したら、制御目標速度算出部49が、上述した手法により、推定速度vfと目標速度vtとに基づいて制御目標速度vtcを算出する(ステップS9A)。
【0092】
次に、差分算出部44が、推定速度vfと目標速度vtとの差分Δvを算出する(ステップS9)。具体的には、上述したように、目標速度vtから推定速度vfを減算し、その減算結果を差分Δvとする。
【0093】
その後の処理(ステップS10〜ステップS26)は、実施の形態1に係る電動開閉装置101と同様である。
【0094】
以上、実施の形態2に係る電動開閉装置101Aによれば、推定速度vfと目標速度vtとの間の制御目標速度vtcを算出し、その制御目標速度vtcと推定速度vfとの差に基づいて電動モータ2に印加すべきパルス電圧のデューティ比を決定するので、デューティ比の変化量がより緩やかになる。
したがって、電動開閉装置101Aによれば、最新の回転速度vcと目標速度vtの差分に基づいてデューティ比を制御する手法(比例制御)に比べて、電動モータ2の回転速度を目標速度に更に安定して収束させることが可能となる。
【0095】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0096】
例えば、上記実施の形態では、電動開閉装置101が日よけ具200としてのブラインドを昇降させる電動ブラインドである場合を例示したが、これに限られない。例えば、電動開閉装置101は、日よけ具200としてのスクリーンを昇降させる電動スクリーンであってもよい。
【0097】
また、上記実施の形態では、過去に検出した1点の回転速度vpと最新の回転速度vcとから、推定速度vfを算出する場合を例示したが、これに限られず、2点以上の過去の回転速度vpと最新の回転速度vcとから推定速度vfを算出してもよい。この場合には、一次の近似関数ではなく、2次以上の近似関数であってもよい。
【0098】
また、上記実施の形態では、回転角度検出装置3から出力される検出信号(A相パルス信号)のエッジを検出する毎に電動モータ2の回転速度を算出する場合を例示したが、これに限られない。例えば、検出信号の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジのみを検出する毎に、電動モータ2の回転速度を算出してもよい。
【0099】
また、上記実施の形態では、差分Δvに応じてデューティ比の補正量を2段階(−Aと−B(または、+Cと+D)に分ける場合を例示したが、これに限られず、3段階以上に分けてもよい。この場合には、差分Δvと比較すべき閾値(vt1やvt2)を更に増やせばよい。
【符号の説明】
【0100】
100…電動開閉システム、101,101A…電動開閉装置、102…外部コントローラ、103…配線ケーブル、104…スイッチ、200…日よけ具、20…スラット、1…シャフト、2…電動モータ、3…回転角度検出装置、4,4A…データ処理制御部、5…モータ駆動回路、40…記憶部、41…速度算出部、42…平均速度算出部、43…推定速度算出部、44,44A…差分算出部、45…速度判定部、46…補正量決定部、デューティ比決定部47、401…速度データ、402…平均速度データ、403…推定速度データ、404…目標速度データ、405…差分データ、速度判定基準データ406、基準デューティ比データ407、制御目標速度データ409、vt…目標速度、vc…最新の回転速度、vf…将来の回転速度、vc…過去の回転速度、vtc…制御目標速度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B