(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886340
(24)【登録日】2021年5月18日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】レンズ及びそれを備えた照明装置
(51)【国際特許分類】
G02B 17/08 20060101AFI20210603BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20210603BHJP
F21V 5/00 20180101ALI20210603BHJP
F21K 9/232 20160101ALI20210603BHJP
F21K 9/69 20160101ALI20210603BHJP
【FI】
G02B17/08 Z
G02B3/00 Z
F21V5/00 510
F21K9/232
F21K9/69
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-92888(P2017-92888)
(22)【出願日】2017年5月9日
(65)【公開番号】特開2018-189832(P2018-189832A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2019年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000131430
【氏名又は名称】シチズン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097043
【弁理士】
【氏名又は名称】浅川 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100128071
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 正樹
(72)【発明者】
【氏名】萱沼 安昭
【審査官】
殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−143234(JP,A)
【文献】
特開2013−038031(JP,A)
【文献】
特開2012−252994(JP,A)
【文献】
特開2015−002018(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0298826(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 − 17/08
G02B 19/00
G02B 25/00 − 25/04
G02B 1/00 − 3/14
F21K 9/00 − 9/90
F21S 2/00 − 45/70
F21V 1/00 − 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源の配光分布を調整する環状のレンズにおいて、
下方に向って凸面となり、外周側端部と内周側端部とを有する下部入射面と、
前記下部入射面の上方に設けられ上方に向って凸面となり、外周側端部と内周側端部とを有する上部反射面と、
前記上部反射面の外周側端部から下方に向って垂れ下がようにして設けられた外周側出射面と、
前記下部入射面の内周側端部より内周側であって、下方に垂れ下がるようにして設けられた内周側入射面と、
前記上部反射面の内周側端部から内周側に広がるようにして設けられた内周側出射面と、
前記内周側入射面よりさらに内周側に設けられた内周側反射面と、を備え、
前記下部入射面の内周側端部が前記上部反射面の内周側端部よりも内周側にあり、前記
光源から出射して、前記下部入射面の前記内周側端部周辺に入射した光は、前記内周側出
射面から上方に出射することを特徴とするレンズ。
【請求項2】
前記下部入射面の内周側端部と前記内周側入射面の上端との間には、平坦な領域が設けられる請求項1に記載のレンズ。
【請求項3】
前記請求項1又は請求項2に記載のレンズを用いた照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDの上部に配置され、配光分布を調整するレンズ及びそのレンズを備えた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光源としてLEDを使用するLED電球が、広く上市されている。ところが、LEDは強い指向性があるため、LED電球の口金方向(背面側)が暗くなりやすい。そこで、LEDの直上にレンズを配置し、配光分布が口金方向まで広がるように調整することがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、環状に配列したLEDを覆うように配置された環状のレンズが示されている。このレンズは、LEDの発光がレンズ内に入り込む背面側入射面と、背面側入射面を透過した光が半径方向外方に反射される内部反射面と、内部反射面で反射された光を背面側に出射させる外周出射面を備えている。特許文献1に示された光学ユニット(LED電球)は、LEDの発光の一部をレンズに取り込み、この光を、屈折と反射により背面方向(口金方向)及び半径方向外方(側方)に向かわせ、配光分布を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−142892号公報 (
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されたLED電球では、レンズがLEDに対し位置ずれを起こすと、配光分布の変動が目立ってしまう。つまり、レンズがずれたとき、レンズの内周側に位置するようになるLEDからは、レンズを通らずにレンズのずれ方向とは反対側上方に放射させる光が増加する。この一方で、ずれた結果、レンズの外周側に位置するようになるLEDからは、レンズを通って、ずれ方向の反対側上方に放射される光が増加する。例えば、レンズが右側にずれると、右側のLEDからは左斜め上方に向う放射光が増加するとともに、左側のLEDからも左斜め上方に向う放射光が増加する(反対に右斜め上方に放射される光は減少する)。すなわち、特許文献1に示されたLED電球は、レンズに位置ずれが生じたとき、環状に配列したLEDのうち中心線上で対となるLEDの相乗効果により、配光に係る左右のバランスが大きく崩れるという課題を有している。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、配光分布を調整するレンズに位置ずれが生じても、配光分布のバランスが大きく崩れないレンズ及びそのレンズを備えた照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のレンズは、配光分布を調整する環状のレンズにおいて、下部入射面と、前記下部入射面の上方に設けられた上部反射面と、前記上部反射面の外周側端部から下方に向って垂れ下がようにして設けられた外周側出射面と、前記下部入射面より内周側であって、下方に垂れ下がるようにして設けられた内周側入射面と、前記上部反射面の内周側端部から内周側に広がるようにして設けられた内周側出射面と、前記内周側入射面よりさらに内周側に設けられた内周側反射面とを備えていることを特徴とする。
【0008】
前記下部入射面、前記上部反射面、前記外周側出射面又は前記内周側反射面のうち、少なくとも1つは、凸面であっても良い。
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の照明装置は、配光分布を調整するために環状に配列したLEDを覆うように配置される環状のレンズを備える照明装置において、前記レンズは、前記LEDの直上部から外周側に至るよう設けられる下部入射面と、前記下部入射面の上方に設けられ、凸面となる上部反射面と、外周面に設けられる外周側出射面と、前記LEDより内周側であって、前記LEDに対し直立するように形成された内周側入射面と、前記上部反射面より内周側で、前記内周側入射面の上方に設けられる内周側出射面と、前記内周側入射面よりさらに内周側に設けられる内周側反射面とを備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明のレンズにおいて、LEDの外周側から上方に出射する光は、下部入射面からレンズに入射し、主に、上部反射面で外周方向に反射し、外周側出射面から外周外方及び外周下方に放射される。LEDの内周側から出射する光のうち内周側入射面からレンズに入射する光は、一部分が内周側反射面で反射し内周側出射面から外周側斜め上方に放射され、残りの部分が内周側出射面から内周側斜め上方に放射される。LEDの内周側から下部入射面の内周側端部周辺に入射する光は、その一部分が下部入射面で屈折し外周側斜め上方に放射され、残りの一部分が内周側出射面から内周側斜め上方に放射される。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明のレンズは、LEDの外周側から発する光を、外周外側から外周下側に向けて放射し、配光を改善する。これと並行して、LEDの内周側から発する光を外周側斜め上方と内周側斜め上方に放射する。このとき、LEDの内周側からレンズを通って放射される光が外周側斜め上方と内周側斜め上方に向う成分を有するため、LEDに対しレンズの位置ずれが生じたとき、円環状の配列で対となるLED同士が放射光の量を補い合いあう。したがって、本発明のレンズ及びそのレンズを備えた照明装置は、レンズに位置ずれが生じても配光分布のバランスが大きく崩れない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態として示すレンズを備えた発光部の斜視図である。
【
図4】本発明の第2実施形態として示すLED電球の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1〜4を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一又は相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。()には特許請求の範囲に記載した発明特定事項を示す。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態として示すレンズ10を組み込んだ発光部20の斜視図である。なお、レンズ10は円環状であるが、レンズ10の下部の状態を明示するため、レンズ10の一部分を切断して描いている。
図1に示すように、円盤状の基板22上にはLED21が円環状に配列して配置されている。基板22は、白色のセラミックや、表全を絶縁処理したアルミニウムなどを基材とし、上面に配線が形成されている。LED21は、サブマウント基板上にLEDダイを実装し、LEDダイを蛍光樹脂で被覆したパッケージ品である。
【0015】
図2は、
図1のAA´線に沿って描いた発光部20の断面図である。レンズ10は、下面の一部分に、下方に向って凸面となる下部入射面11を備えている。下部入射面11の上方には、上方に向って凸面となる上部反射面12が設けられている。レンズ10の外周面として、上部反射面12の外周側端部から下方に向って垂れ下がり、外周外側に向って凸面となる外周側出射面13が設けられている。
【0016】
下部入射面11より内周側には、下部入射面11の内周側端部から内周側に平坦面が広がり、その平坦面から下方に垂れ下がるようにして内周側入射面14が設けられている。上部反射面12の内周側端部からは、内周側に広がるようにして内周側出射15が設けられている。内周側入射面14よりさらに内周側には、凸面となる内周側反射面16が設けられている。
【0017】
基板22上には、前述のようにLED21が実装されるとともに、レンズ10が配置されている。レンズ10は、LED21の直上部から外周側に至る部分に下部入射面11が設けられている。下部入射面11の上方に設けられた上部反射面12の内周側端部は、下部入射面11の内周側端部よりも外周側にある。同様に下部入射面11の外周側端部は、上部反射面12の外周側端部よりも内周側にある。上部反射面12の外周側端部を上端として、レンズ10の外周面が外周側出射面13となっている。
【0018】
LED21より内周側には、LED21(図の横方向)に対し直立(図の縦方向)するように内周側入射面14が形成されている。前述のように、下部入射面11の内周側端部と内周側入射面14の上端との間には平坦な領域がある。上部反射面12より内周側で内周側入射面14の上方には内周側出射面15が設けられている。内周側入射面14よりさらに内周側には内周側反射面16が存在する。内周側出射面15は、下部入射面11の内周側端部、内周側入射面14及び内周側反射面16を覆っている。内周側反射面16の上端は、内周側出射面15の内周側端部と接続し、内周側反射面16の下端は、内周側入射面14の下端と接続している。なお、これらの面11〜16はそれぞれ円環を為している。
【0019】
図3は、
図2に示した断面図の左側の部分を拡大した拡大図であり、代表的な光線L1〜L6を書き加えたものである。
図3に示すように、LED21の外周側(図の左側)から発した光線L1は、下部入射面11からレンズ10に入射し、上部反射面12での反射を経て外周側出射面13からレンズ10の外周下方に向って放射される。LED21の外周側であって、光線L1の発した位置より内側の位置から、やや内周側に向って発した光線L2は、下部入射面11からレンズ10に入射し、上部反射面12での反射を経て外周側出射面13からレンズ10の外周外方(図の左方向)に放射される。すなわち、LED21の外周側から出射する大部分の光は、レンズ10の外周下方から外周外方に至る空間に放射される。
【0020】
LED21の内周側(図の右側)から上方に発する光線L3は、内周側入射面14からレンズ10に入射し、内周側反射面16での反射を経て内周側出射面15から外周側斜め上方に向って放射される。LED21の内周側であって、光線L3が発した位置よりやや外周側の位置から図の右上方に向って発する光線L4は、下部入射面11と内周側入射面14の間からレンズ10に入射し、内周側出射面15から内周側斜め上方に放射される。さらにLED21の内周側から出射し、下部入射面11を経て内周側出射面15からレンズ10の外周側斜め上方に放射される光線L5や、内周側入射面14に入射し内周側出射面15から内周側斜め上方に放射される光線L6も存在する。すなわち、LED21の内周側(図の右側)から出射する光は、レンズ10の外周側斜め上方に放射される成分と、内周側斜め上方に放射される成分を有する。
【0021】
以上のように、レンズ10は、LED21の外周側から発する光を、外周外方から外周下方の空間に放射し配光を改善している。これと並行して、
図3に示すようにレンズ10は、LED21の内周側から発する光を、外周側斜め上方と内周側斜め上方に振り分けて放射する。
図3においてレンズ10が右側にずれると、LED21が外周側出射面13に近づく。このため、外周側出射面15で屈折し外周側斜め上方(図の左斜め上方向)へ向かう光や、内周側反射面16で反射して外周側斜め上方へ向かう光は減少する。このとき内周側斜め上方(図の右斜め上方向)に放射される光も減少する。
【0022】
一方、この位置ずれに対し、図示していない反対側のLED21(円環配列で対となるLED21であり、
図2で右側に記載したLED21。)は、内周側反射面16に近づく。このとき、LED21の周りでは、内周側反射面16で反射し、外周側斜め上方に向かう光(図の右側斜め上方)が増加し、内周側斜め上方(図の左側斜め上方)に向かう光も増加する。
【0023】
この結果、レンズ10の位置ずれが生じても、1つのLED21と円環配列で対となる他のLED21が、上方に向う放射光の変化量を補い合う。このようにして発光装置20は、位置ずれに対してレンズ10の上方における配光分布のバランスが大きく崩れることがなくなる。このレンズ10の作用効果は、主に内周側入射面14と内周側反射面16を含む断面鎌形の部分が担っている。つまり、この断面鎌形の部分が、LED21の内周側の部分からレンズの内周側に向って出射する光をレンズ10に入射させ、当該作用効果を達成している。
【0024】
なお、レンズ10では、下部入射面11、上部反射面12、外周側出射面13及び内周側反射面16を凸面としていたが、これらの面は平坦な斜面であっても良い。しかしながらこれらの面を凸面とすると、屈折や反射を場所によって制御できるようになり所望の特性を得られやすくなる。
【0025】
以上の説明では、LED21の外周側から低い角度(基板22面に近い方向)で外周に向って出射する光、LED21の外周側から低い角度で内周に向って出射する光、LED21の内周側から低い角度で外周側に向かう光を無視し、レンズ10の定性的な挙動を説明してきた。なお、LED21の外周側から低い角度で外周に向って出射する光は、外周外方に向かう。LED21の外周側から低い角度で内周に向って出射する光は、光線L3と類似した挙動を示す。LED21の内周側から低い角度で外周側に向かう光は、外周外方及び外周下方に放射される。
【0026】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態として示すLED電球40(照明装置)の側面図である。LED電球40は、
図1に示した発光部20を含んでいる。また、
図4では、グローブ41の内部を示すため、LED電球40の上部を、グローブ41を通る断面図としている。
【0027】
図4に示すように、LED電球40は、グローブ41と、グローブ41を支持するケース42と、ケース42に取り付けられた口金43を備えている。ケース42の上部にはヒートシンク44が取り付けられている。発光部20は、ヒートシンク44上に載置されている。
【0028】
前述したように、LED21の外周側から発した光は、レンズ10を介してLED電球40の側方から口金43方向に至る空間に放射される。LED21の内周側から発した光は、レンズ10を介してLED電球40の上方に向かう。このLED電球40の上方における配光分布のバランスは、組み立て時にレンズ10の位置が多少ずれても大きく崩れな
い。
【符号の説明】
【0029】
10…レンズ、
11…下部入射面、
12…上部反射面、
13…外周側出射面、
14…内周側入射面、
15…内周側出射面、
16…内周側反射面、
20…発光部、
21…LED、
22…基板、
40…LED電球(照明装置)、
41…グローブ、
42…ケース、
43…口金、
44…ヒートシンク、
L1〜L6…光線。