(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、このような仮締切工の施工性を高め、迅速に作業を行うための様々な工夫が求められている。例えば施工に必要な資材をクレーン等で井筒内に吊り降ろすことも多いが、クレーン台船等の大掛かりな装置が必要になり、作業にも手間がかかっていた。
【0006】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、仮締切工等の施工性を向上することができる吊降装置、およびこれを用いた間詰方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するための第1の発明は、対象物を吊り降ろすための吊降装置であって、壁体を上から挟み、前記吊降装置を前記壁体の上に引掛けて取付けるための取付部と、前記取付部に接続された、前記対象物を吊り降ろすための吊降部と、を有
し、前記吊降部は、前記取付部内の異なる複数の平面位置で前記取付部に接続可能であることを特徴とする吊降装置である。
【0008】
前記取付部は、前記壁体を挿入するためのスリットを有することが望ましい。
例えば前記取付部は、前記吊降部を接続するための孔を、異なる平面位置に複数有する。
さらに、前記吊降部は、先端にフックを有するチェーンブロックであることも望ましい。
【0009】
第2の発明は、仮締切体と前記仮締切体の内側に設置した支保工との間に間詰を行う間詰方法であって、
対象物を吊り降ろすための吊降装置であって、壁体を上から挟み、前記吊降装置を前記壁体の上に引掛けて取付けるための取付部と、前記取付部に接続された、前記対象物を吊り降ろすための吊降部と、を有する吊降装置を、前記取付部によって前記壁体である前記仮締切体を上から挟み、前記仮締切体の上に引掛けて取付ける工程(a)と、前記吊降部によって前記対象物であるブロックを吊り降ろし、前記支保工と前記仮締切体の間に配置する工程(b)と、を有することを特徴とする間詰方法である。
【0010】
前記取付部は、前記仮締切体を挿入するためのスリットを有し、前記工程(a)において、前記仮締切体を前記スリットに挿入することが望ましい。
また、前記吊降装置は、前記吊降部の平面位置が可変であり、前記工程(b)では、前記ブロックを前記支保工と前記仮締切体の間に配置した際の前記ブロックの重心と前記仮締切体の距離に応じて、前記吊降部の平面位置を異なるものとすることも望ましい。
【0011】
さらに、前記工程(b)では、前記ブロックを水中で吊り降ろすことも望ましい。
また、前記工程(b)では、複数の前記吊降装置を前記仮締切体に取付け、複数の前記吊降装置のそれぞれで前記ブロックを吊り降ろすことも望ましい。
加えて、前記ブロックには袋体が設けられ、前記工程(b)では、前記ブロックを前記支保工と前記仮締切体の間に配置した後、前記袋体に充填材を充填することも望ましい。
【0012】
本発明では、上記の吊降装置を仮締切体等の壁体の上に取付けることで、施工に必要なブロック等の資材を壁体に沿って吊り降ろすことができ、小型且つ簡易な装置で小回りの利く迅速な作業が可能となって施工性が向上する。また、吊降装置は取付部を壁体の上に引掛けるだけで容易に取付けることができ、壁体を上から挟むように取付部を配置することで吊降装置を壁体に確実に取付けることができる。
【0013】
特に本発明では、上記の吊降装置によってブロックを吊り降ろして支保工と仮締切体の隙間に配置することで、間詰を容易に行うことができ、間詰作業の施工性、特に水中における施工性を向上させ、ダイバー作業も軽減することができる。
【0014】
ブロックの平面形状は、上記の隙間に関する各種の条件によって異なり、ブロックを隙間に配置した際のブロックの重心と仮締切体の距離が変わるが、本発明の吊降装置は、上記の距離に応じて吊降部の平面位置を変えることで、平面形状の異なる各ブロックをそれぞれの重心から吊り下げて姿勢を鉛直方向に保った状態で、ほぼそのまま配置箇所まで正しく吊り降ろすことができる。吊降部の位置の変更は、例えば吊降部を接続する取付部の孔の位置を変えることで、容易に行うことができる。
【0015】
また、本発明では取付部のスリットに仮締切体等の壁体を挿入するだけで、吊降装置の取付を容易且つ確実に行うことができる。さらに、先端にフックを有するチェーンブロックを吊降部として用いることで、ブロック等の対象物を好適に吊り降ろすことができる。
【0016】
また、複数の吊降装置で複数のブロックを吊り降ろすことで、間詰作業をさらに迅速に行うことができる。さらに本発明では、ブロックに設けた袋体に充填材を充填することで、支保工と仮締切体の間を確実に間詰することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、仮締切工等の施工性を向上することができる吊降装置、およびこれを用いた間詰方法等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0020】
本発明の実施形態は、鋼管矢板等の仮締切体によって水域の仮締切を行う際に、仮締切体の内側に設置する支保工と仮締切体の間に間詰を行う例を挙げて説明する。
【0021】
本実施形態では、まず
図1(a)に示すように、仮締切体である鋼管矢板4(壁体)を水底の地盤2に打設して平面において閉領域を形成し、工事を行う水域3を締切る。鋼管矢板4は
図1(b)に示すように井筒状に設けられる。
図1(b)は
図1(a)を上から見た図である。
【0022】
この例では、鋼管矢板4による井筒の内部で、鋼管矢板5を水底の地盤2に打設して隔壁を形成している。鋼管矢板5は、鋼管矢板4による井筒の対向する一組の辺同士を接続するように一列に設けられる。必要に応じて、鋼管矢板4、5の鉛直方向の所定区間(例えば後述する頂版コンクリートから敷石層付近までの区間や鋼管矢板4、5の下端部など)において鋼管内に鉄筋を配置しコンクリートを充填するなどして補強を行うことも可能である。また図示は省略するが、隣り合う鋼管矢板4、5同士は継手により接続され、井筒を形成する鋼管矢板4の継手部には止水処理が施される。
【0023】
鋼管矢板4、5は導枠6を用いて打設される。導枠6は、鋼管矢板4による井筒の外周に沿って配置された外枠6aと、鋼管矢板4による井筒の内周及び鋼管矢板5による隔壁の両側に沿って配置された2つの内枠6bから構成される。各内枠6bの隅部には斜材61が配置される。鋼管矢板4、5の打設後、導枠6は鋼管矢板4、5の頂部に取り付ける。
【0024】
この後、
図2に示すように水位を維持したまま鋼管矢板4による井筒内部の地盤2を所定深度まで水中掘削し、掘削底部に敷石層71および底盤コンクリート72を構築する。水中掘削は浚渫船(不図示)のクレーンにグラブなどの掘削機を設けて行う。鋼管矢板5は、地盤2を掘削して底盤コンクリート72を打設した後に、底盤コンクリート72の上面に当たる位置で切断し、その上方の部分を撤去しておく。
【0025】
本実施形態では、地盤2の掘削は導枠6を残したまま行い、掘削後、後述する支保工設置時の支障とならないように内枠6bを撤去する。これにより、地盤2の掘削時に、導枠6を、周辺を航行する船舶により生じる航走波等に対し鋼管矢板4の変形等を抑制するための補強工として機能させる。底盤コンクリート72を構築して内枠6bを撤去した後は、外枠6aと底盤コンクリート72とで鋼管矢板4を保持し、鋼管矢板4の変形等を抑制する。
【0026】
本実施形態では、この後、周囲の水圧に抵抗させるため、鋼管矢板4の内側に支保工を設置する。支保工には、
図3(a)に平面を示すトラス支保工1を用いる。
【0027】
トラス支保工1は略ロの字状の環状平面を有し、中央部に大面積の開口15を有する。トラス支保工1の平面は、複数の縦材11および横材12を格子状に組み合わせ、格子内に斜材14を設けたトラス構造を有する。斜材14は開口15の四隅にも設けられる。
【0028】
本実施形態では、
図3(b)に示すように、複数の鉛直材16及び斜材17の上下に水平材18を設けたトラス構造によってトラス支保工1を上下に連結し、支保工ユニット10として用いる。支保工ユニット10は地上や水上等で予め組立てて製作する。
【0029】
斜材17は隣り合う鉛直材16の間で略X字状に配置される。また水平材18の平面は矩形枠状である。鉛直材16、斜材17、水平材18および上記の縦材11、横材12、斜材14にはH形鋼などの鋼材が用いられる。
【0030】
本実施形態では、この支保工ユニット10を現場に搬入し、起重機船のクレーン等から吊り下げて鋼管矢板4の内側に吊り込み、
図4(a)に示すように鋼管矢板4の内側で支保工ユニット10を吊り降ろして下降させる。
【0031】
支保工ユニット10の現場への搬入は台船によって行われ、支保工ユニット10は格子状の吊枠(不図示)を介して吊り下げられる。支保工ユニット10を鋼管矢板4の内側に吊り込む際は、支保工ユニット10をガイドするために、必要に応じて鋼管矢板4の上端にH形鋼等のガイド材が設けられる。なお、クレーンによって台船上に支保工ユニット10を積み込む際や支保工ユニット10を鋼管矢板4の内側に吊り込む際の位置合わせを、支保工ユニット10に取付けたワイヤをチルホール等のウインチで操作するなどして行うこともできる。
【0032】
本実施形態では、支保工ユニット10を鋼管矢板4の内側で下降させる際、
図4(a)に示すように支保工ユニット10の外周部に棒状の支持材7が取付けられる。支持材7には総ネジの鋼棒が用いられ、下方にゆくにつれ内側へと向かうように傾斜して配置される。
【0033】
本実施形態では、支持材7として複数本の鋼棒をカプラー等で順次継ぎ足しながら、
図4(b)に示すように支保工ユニット10を所定位置まで下降させる。支保工ユニット10の位置(深さ)は、支保工ユニット10に取付けた検尺用のテープ(不図示)や、継ぎ足した鋼棒の長さ、本数などにより把握できる。
【0034】
なお、支保工ユニット10の下降時には、支保工ユニット10の平面における位置決め用のスペーサ(不図示)を、支保工ユニット10の上部のトラス支保工1の外周部の各辺の外側に取付けておくことができる。
【0035】
支保工ユニット10が所定位置に配置されると、支持材7の上端部を、鋼管矢板4の上端に設けた支持材受け部9で保持する。支持材受け部9はセンターホールジャッキ91等を有し、センターホールジャッキ91によって支持材7を保持してその緊張力の調整を行い、支保工ユニット10の吊り支持を行う。
【0036】
上記した鋼棒の継ぎ足し、および支持材受け部9の設置については、鋼管矢板4の上端部に仮設足場(不図示)を予め設けておき、そこで作業を行う。またセンターホールジャッキ91は重量物であるため、その設置作業は、鋼管矢板4の上端に設けた架台(不図示)にチェーンブロックを取付け、これによりセンターホールジャッキ91を吊り下げて行うことができる。
【0037】
本実施形態では、複数箇所(例えば20箇所程度)から支持材7による支保工ユニット10の支持が行われる。この際の支持材7の緊張力は管理値を超えないよう管理され、最終的に適切な値となるように調整される。
【0038】
これにより、支保工ユニット10が鋼管矢板4による井筒の内周に沿って環状に配置される。こうして支保工ユニット10の設置を行った後、当該支保工ユニット10の上方で
図4(c)に示すように鋼管矢板4の内側にブラケット8を取付ける。ブラケット8は鋼管矢板4による井筒の内周に沿って複数設けられる。
【0039】
本実施形態では、次に、新たな支保工ユニット10を、前記と同様、起重機船のクレーン等から吊り下げて鋼管矢板4の内側に吊り込み、鋼管矢板4の内側で吊り降ろして下降させ、
図4(d)に示すようにブラケット8上に設置する。支保工ユニット10の下降時には、支保工ユニット10の下部のトラス支保工1の外周部の各辺の外側に、前記と同様のスペーサ(不図示)を取付けておくことができる。
【0040】
その後、本実施形態では各段のトラス支保工1と鋼管矢板4の間の間詰を行う。ここでは最上段のトラス支保工1を除いて水中で間詰を行うことになり、その際、
図5に示すプレキャストブロック31(以下、単にブロックという)をトラス支保工1に取付け、トラス支保工1と鋼管矢板4の間に配置する。
【0041】
図5(a)はブロック31の斜視図であり、
図5(b)はブロック31を上から見た図である。本実施形態では、ブロック31の背面に引掛部32が取付けられ、引掛部32によってブロック31をトラス支保工1の外周部の縦材11や横材12(以下、縦材11等という)のフランジ面に引掛けて配置する。ブロック31の上面には略U字状の鉄筋等による吊り部33が設けられる。ブロック31の前面には上部に注入口35を有する袋体34がアンカーボルトやナット等で取付けられる。
【0042】
図5は通常のブロック31の例であり、鋼管矢板4間の形状に合わせて凸型の平面形状を有するが、本実施形態ではトラス支保工1と鋼管矢板4の間の隙間に関する各種の条件によってブロック31の平面形状が異なっている。
【0043】
その例が
図6であり、例えば
図6(a)は、鋼管矢板4間に支持材7がある場合に、支持材7を避けるようにL字型の平面を有するブロック31を間隔を空けて配置するものである。また
図6(b)は、鋼管矢板4間に仮設の排水管50を配置する場合に、これを避けるように更に小さいL字型平面のブロック31を用いるものである。この他、本実施形態では、トラス支保工1と鋼管矢板4の位置関係、鋼管矢板4に取付けられる各種機構等によってもブロック31の平面形状が異なっている。ブロック31には、その平面形状の違いに応じたマーキングを付しておくことが望ましい。
【0044】
前記の吊り部33は、各ブロック31の平面の重心位置近傍に設けられ、平面視における鋼管矢板4と吊り部33(ブロック31の重心)の距離Lはブロック31の平面形状に応じて異なる。
【0045】
ブロック31は、地上の製作ヤードにおいて型枠内にコンクリートを打設するなどして引掛部32や吊り部33を取付けた状態のものを予め製作し、これを台船等で現場に搬入した後、袋体34を前面に取付けて完成する。
【0046】
ブロック31をトラス支保工1に取付ける際は、吊降装置を用いてブロック31を水中で吊り降ろす。なお、前記のスペーサは事前に取外して撤去しておく。
【0047】
図7(a)は吊降装置40を示す図である。吊降装置40はH形鋼等により構成され、取付部41と、取付部41に接続されたチェーンブロック44(吊降部)を有する。
【0048】
取付部41は、鋼管矢板4の側壁を上から挟み、吊降装置40を鋼管矢板4の上に引掛けて取付けるための部分であり、鋼管矢板4の側壁を挿入するためのスリット411と、チェーンブロック44を接続するための孔412を有する。孔412は、スリット411からの距離が異なる複数の平面位置(図の例では3箇所)に設けられる。
【0049】
チェーンブロック44は、ブロック31(対象物)の吊り降ろしを行うための吊降部であり、先端にフックを有する。チェーンブロック44は、孔412に取付けた吊材43によって取付部41から吊り下げられる。上記の通り孔412は複数設けられるので、どの孔412を用いるかによってチェーンブロック44の平面位置が可変である。
【0050】
本実施形態では、必要に応じて仮設足場(不図示)の設置や盛り替えを行った後、
図8(a)に示すように複数のブロック31(図の例では6つ)を1段目(上から数えた場合の段数をいう。以下同様とする)のトラス支保工1の外周部の縦材11等の外側(鋼管矢板4側)に引掛けて仮置きする。
【0051】
次に、台船上のクレーン等で吊降装置40を吊り下げ、
図8(b)に示すように吊降装置40を鋼管矢板4の上に取付ける。ここでは、
図7(b)に示すように吊降装置40の取付部41のスリット411に鋼管矢板4の側壁を挿入し、鋼管矢板4の側壁を上から挟むように取付部41を配置して吊降装置40を鋼管矢板4の上端に引掛ける。
【0052】
そして、ブロック31の吊り部33にチェーンブロック44の先端のフックを取り付けて、2段目のトラス支保工1のやや上の所定位置までブロック31を吊り降ろす。前記の距離Lに応じてチェーンブロック44を接続する孔412の位置は異なるものとし、ブロック31を重心から吊り下げてその姿勢を鉛直方向に保った状態で、ほぼそのままブロック31の配置箇所(
図5(b)や
図6(a)、(b)に示すブロック31の位置)まで正しく吊り降ろすことができるようにしておく。
【0053】
図8(c)に示すように、他の各ブロック31に対応する位置にも同様に吊降装置40を配置し、各吊降装置40のチェーンブロック44によってブロック31を上記の所定位置までそれぞれ吊り降ろす。
【0054】
本実施形態では、この後、段階的にブロック31を吊り降ろし、各ブロック31を4段目のトラス支保工1に取付ける。
【0055】
すなわち、まず
図9(a)に示すように複数のブロック31を順次3段目のトラス支保工1のやや上の所定位置まで吊り降ろした後、これらのブロック31を
図9(b)に示すように4段目のトラス支保工1のやや上の所定位置まで順次吊り降ろす。トラス支保工1の上側から下側へとブロック31を吊り降ろす際は、ブロック31がトラス支保工1等と干渉しないように水中の潜水士によるブロック31の誘導が行われる。
【0056】
その後、
図9(c)に示すように各ブロック31をさらに吊り降ろして4段目のトラス支保工1の外周部の縦材11等の外側に引掛部32で引掛けて設置する。4段目のトラス支保工1へのブロック31の設置も、水中の潜水士によって行われる。
【0057】
各ブロック31を4段目のトラス支保工1に設置すると、その隣の区間でも上記の作業を繰り返し、最終的に4段目のトラス支保工1の全周に沿ってブロック31を設置する。吊降装置40は各区間での作業を終えるごとに鋼管矢板4から取外し、繰り返し転用できる。
【0058】
2、3段目のトラス支保工1にも同様の手順によりブロック31が設置される。潜水士が作業を行っている地点では、水上の鋼管矢板4等に、下方でダイバー作業を行っている旨を示す看板等の目印を設けておき、上下作業を避けるようにしておくことが望ましい。
【0059】
さらに、チェーンブロック44の先端のフック等にブロック31の深度確認用のテープを取付けておき、当該テープにより水上からブロック31の現在の深度を把握することもできる。例えばブロック31が2〜4段目の各段のトラス支保工1の上の所定位置まで来たときに、テープに取付けた目印が鋼管矢板4の上端に来るようにする。この目印は、各段のトラス支保工1で異なるものとしておく。
【0060】
こうして2〜4段目のトラス支保工1にブロック31の設置を行った後、4段目のトラス支保工1に設置した各ブロック31の袋体34内に水中不分離モルタル等の充填材(不図示)を充填する。すると、
図5(b)に示したように袋体34が鋼管矢板4の形状に密着するように膨らみ、トラス支保工1と鋼管矢板4の間が間詰される。同様に、2、3段目のトラス支保工1に設置した各ブロック31についても充填材の充填が行われる。
【0061】
なお、本実施形態では、ブロック31を吊り降ろす際、
図10に示すように注入口35に注入口保護管351を挿入した状態とし、この時、トラス支保工1の鋼材等と注入口保護管351が干渉しないように、注入口保護管351に設けた線材352を吊り部33に掛けるなどして注入口保護管351を固定した状態とする。
【0062】
充填材の充填時には線材352を取外して注入口保護管351の固定を解除し、ホース等を介して圧送された充填材を注入口保護管351の先端から袋体34内に充填し、充填状況を目視等により確認する。これらの作業は水中の潜水士によって行われる。なお、水中でも注入口保護管351が視認しやすいように、反射テープなどを注入口保護管351に取付けておくことが望ましい。
【0063】
1段目のトラス支保工1は水上にあるので、コンクリートを現場打設するなどして気中で間詰を行うことができる。こうして各段のトラス支保工1と鋼管矢板4の間の間詰を行うと、上下4段のトラス支保工1が2つの支保工ユニット10に分けて鋼管矢板4による井筒の内周に沿って環状に配置された仮締切構造20(
図4(d)参照)が形成される。
【0064】
このように仮締切構造20を形成した後、構造物の構築を開始する。本実施形態では構造物として頂版コンクリートの上に橋脚を構築するものとする。
【0065】
ここでは、
図11(a)に示すように鋼管矢板4による井筒内部の排水を行ってドライアップし、1、3、4段目のトラス支保工1を支持する位置にブラケット8を取付ける。
【0066】
その後、
図11(b)に示すように、底盤コンクリート72の上に、鉄筋コンクリート製の頂版コンクリート73を構築する。
【0067】
そして、トラス支保工1の開口15(
図3(a)参照)内において、
図11(c)に示すように頂版コンクリート73上に鉄筋コンクリート製の橋脚74を構築する。作業の進捗に応じて支保工ユニット10は撤去する。
図11(c)は下方の支保工ユニット10を撤去した後の状態を示す。この後、
図11(d)に示すように鋼管矢板4による井筒の内部に注水を行い、支保工ユニット10や外枠6aを全て撤去する。
【0068】
以下、鋼管矢板4による井筒内部に土砂の埋戻しを行い、鋼管矢板4を撤去する。鋼管矢板4は、頂版コンクリート73の上面に当たる位置で切断しその上方の部分のみ撤去することで、残りの部分を鋼管矢板5と合わせて橋脚基礎として用いることが可能である。この状態を
図12に示す。
【0069】
以上説明したように、本実施形態では、吊降装置40を鋼管矢板4の上に取付けることで、ブロック31を鋼管矢板4に沿って吊り降ろすことができ、小型且つ簡易な装置で小回りの利く迅速な作業が可能となって施工性が向上する。また、吊降装置40は取付部41を鋼管矢板4の上に引掛けるだけで容易に取付けることができ、鋼管矢板4を上から挟むように取付部41を配置することで吊降装置40を鋼管矢板4に確実に取付けることができる。
【0070】
吊降装置40はブロック31に限らず、施工に必要な各種の資材を吊り降ろすことができるが、本実施形態では特に吊降装置40によってブロック31を吊り降ろしてトラス支保工1と鋼管矢板4の隙間に配置することで、間詰を容易に行うことができ、間詰作業の施工性、特に水中における施工性が向上し、ダイバー作業も軽減することができる。
【0071】
ブロック31の平面形状は、上記の隙間に関する各種の条件によって異なり、ブロック31を隙間に配置した際のブロック31の重心と鋼管矢板4の距離Lが変わるが、本実施形態の吊降装置40は、当該距離Lに応じてチェーンブロック44の平面位置を変えることで、平面形状の異なる各ブロック31をそれぞれの重心から吊り下げて姿勢を鉛直方向に保った状態で、ほぼそのまま配置箇所まで正しく吊り降ろすことができる。チェーンブロック44の位置の変更は、チェーンブロック44を接続する孔412の位置を変えることで、容易に行うことができる。
【0072】
また、本実施形態では取付部41のスリット411に鋼管矢板4を挿入するだけで、吊降装置40を鋼管矢板4に容易且つ確実に取付けることができる。さらに、先端にフックを有するチェーンブロック44を用いることで、ブロック31を好適に吊り降ろすことができる。
【0073】
また本実施形態では、複数の吊降装置40を鋼管矢板4に取付け、複数の吊降装置40で複数のブロック31を吊り降ろすことで、間詰作業をさらに迅速に行うことができる。なお、本実施形態では各ブロック31を3段目のトラス支保工1の上、4段目のトラス支保工1の上へと段階的に吊り降ろしたが、ブロック31を一度に4段目のトラス支保工1の位置まで吊り降ろしてもよい。
【0074】
また本実施形態では、ブロック31に設けた袋体34に充填材を充填することで、トラス支保工1と鋼管矢板4の間を確実に間詰することが可能になる。
【0075】
しかしながら、本発明はこれに限らない。例えば、本実施形態では上下のトラス支保工1を鉛直材16及び斜材17によるトラス構造によって連結した支保工ユニット10を施工に用い、上下4段のトラス支保工1を設置したが、これに限ることはない。
【0076】
例えば複数段のトラス支保工1のそれぞれを、連結すること無く単独で設置することも可能である。この場合は、各段のトラス支保工1を順次個別に吊り降ろすことになり、これらのトラス支保工1をブラケット8で支持し、前記と同様の方法で間詰を行うことが可能である。
【0077】
また、鋼管矢板4は平面において閉領域を形成していればよく、井筒状に水域3を締切るものに限らない。例えば円筒状に水域3を締切るものであってもよい。この場合、トラス支保工の平面を略円周状の環状平面とすればよい。さらに、鋼管矢板4の代わりに、鋼矢板やその他の部材を仮締切体として用いてもよい。
【0078】
また、本発明は前記したトラス支保工1あるいは支保工ユニット10と異なる構成を有する支保工に対しても適用可能であり、例えば平面あるいは鉛直面においてトラス構造を有しない場合でも適用可能である。ただし、本実施形態では平面においてトラス構造を有する支保工ユニット10(トラス支保工1)を用いて剛性を高め、鋼管矢板4による井筒の内部中央の橋脚74等の構造物の構築箇所に大開口を設けることが可能となり、構造物と支保工の干渉が無くなるという利点がある。また構造物の構築時などに大開口から長尺の鉄筋や大型の型枠等の投入が可能となり投入資材のサイズ制限が小さく、その他大開口を利用して作業環境の大幅な改善ができるため、作業全般において効率が良くなる。
【0079】
また、吊降装置40は水中で間詰作業を行うケース以外にも適用でき、対象物として各種の資材を鋼管矢板4の上端に取付けた吊降装置40から吊り降ろすことで、施工性の向上に寄与する。また吊降装置40を取付ける壁体は鋼管矢板4等の仮締切体に限定されず、場合によっては各種の山留壁等に取付けて気中での吊り降ろしに用いることも可能である。また吊り降ろしに用いる吊降部もチェーンブロック44に限定されることはない。
【0080】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。