特許第6886367号(P6886367)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886367
(24)【登録日】2021年5月18日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】セメント製品及びモルタルの作製方法
(51)【国際特許分類】
   B28C 5/02 20060101AFI20210603BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20210603BHJP
   B28C 7/04 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   B28C5/02
   C04B28/02
   B28C7/04
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-157867(P2017-157867)
(22)【出願日】2017年8月18日
(65)【公開番号】特開2019-34491(P2019-34491A)
(43)【公開日】2019年3月7日
【審査請求日】2020年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】野村 展生
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−063769(JP,A)
【文献】 特開2015−010333(JP,A)
【文献】 特開平07−032350(JP,A)
【文献】 特開2005−068865(JP,A)
【文献】 特開2011−230777(JP,A)
【文献】 特開2002−234552(JP,A)
【文献】 特開2003−305712(JP,A)
【文献】 特開平10−258845(JP,A)
【文献】 米国特許第04395162(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C 5/00 − 7/16
B65D 30/00 − 33/38
C04B 2/00 − 32/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント材と、
透水性を有し、前記セメント材を収容した扁平状の第1袋体と、
非透水性を有し、前記第1袋体を密封した第2袋体と、
を備え、
前記第1袋体は、縦ピロー型に形成されることにより、前記セメント材を収容する内部空間を構成する袋本体と、前記袋本体の面に設けられ、前記袋本体を縦方向に沿ってシールする縦シール部と、前記袋本体の前記縦方向に対向する両端部に設けられ、前記縦方向とは交差する横方向に沿って前記両端部をシールする一対の横シール部と、を有し、
前記縦シール部の少なくとも1箇所には切り込みが設けられている、
セメント製品。
【請求項2】
前記第1袋体は、前記第1袋体の内部空間の容積よりも少ない体積の前記セメント材を収容し、
前記第2袋体は、真空脱気された状態で前記第1袋体を収容する、
請求項1に記載のセメント製品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセメント製品を用いたモルタルの作製方法であって、
前記第2袋体を開封して、前記第1袋体を取り出す第1ステップと、
前記縦シール部の設けられた面を上に向けた状態で、前記セメント材を収容した前記第1袋体を水の中に浸漬する第2ステップと、
前記第1袋体から気泡が出なくなるまで待機した後、前記水の中から前記第1袋体を取り出す第3ステップと、
取り出した前記第1袋体を、前記縦シール部の設けられた面を上に向けた状態で、開封した前記第2袋体上に配置する第4ステップと、
前記切り込みから切り裂くことで、前記第1袋体を開封する第5ステップと、
を備える、
モルタルの作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント製品及びモルタルの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、セメント、骨材等を含む充填材と、透水性材料で形成され、当該充填材を収容する細長の袋体と、を備え、袋体の略全長に亘って破断誘発部が設けられている鉄筋定着材が提案されている。この鉄筋定着材は、袋体が透水性材料で形成されているため、袋体を開封せずにそのまま水の中に浸漬させることで、充填材に適正量の水分を吸水させることができる。そして、水に浸漬させた後に、鉄筋定着材を削孔内に挿入し、鉄筋を打ち込むことで、袋体を破断誘発部で破断させて、吸水した充填材を攪拌しつつ鉄筋の周囲に回り込ませることができる。そのため、この鉄筋定着材によれば、鉄筋を容易に定着させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−010333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の鉄筋定着材は、既存コンクリート躯体に形成される穿孔に鉄筋を定着させる目的で用いられるため、充填材を収容する袋体が棒状に形成されている。そのため、袋体の径が大きくなるほど、袋体を十分に浸漬するために水面の高さを上げる分だけ多くの水を使うことになり、また、袋体内の充填材に水を浸透させるのに長い時間がかかってしまうことになる。これにより、モルタルの作製に手間がかかってしまうという問題点があった。
【0005】
本発明は、一側面では、このような点を考慮してなされたものであり、その目的は、モルタルを容易に作製可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0007】
すなわち、本発明の一側面に係るセメント製品は、セメント材と、透水性を有し、前記セメント材を収容した扁平状の第1袋体と、非透水性を有し、前記第1袋体を密封した第2袋体と、を備える。
【0008】
当該構成では、第2袋体を開封することで、セメント材を収容した第1袋体を取り出す。そして、取り出した第1袋体を水の中に浸漬する。第1袋体は透水性を有するため、第1袋体を水の中に浸漬すると、第1袋体内のセメント材に水が浸透する。これにより、セメント材と水が混合し、モルタルを作製することができる。
【0009】
ここで、当該構成では、セメント材を収容する第1袋体が扁平状(平板状)に形成されているため、少なくとも一方向に第1袋体の長さを短くすることができる。これにより、セメント材の量を増やしても、水の量をそれほど多くしなくても、第1袋体を水の中に十分に浸漬することができ、また、セメント材に水を浸透させるのにかかる時間が長くならないようにすることができる。したがって、当該構成によれば、モルタルを容易に作製することができる。
【0010】
なお、当該構成によれば、セメント材を収容する第1袋体は、使用するまで、非透水性を有する第2袋体により密封される。これによって、透水性を有する第1袋体内のセメント材が湿気により固まるのを抑制することができる。すなわち、セメント材の保存期間を長くすることができる。
【0011】
また、上記一側面に係るセメント製品の別の形態として、前記第1袋体は、前記第1袋体の内部空間の容積よりも少ない体積の前記セメント材を収容してもよく、前記第2袋体は、真空脱気された状態で前記第1袋体を収容してもよい。
【0012】
第1袋体の内部空間の容積よりもセメント材の体積を少なくすることで、セメント材内に適宜隙間が形成されるようにすることができる。これにより、第1袋体を水に浸漬させたときに、セメント材の中心部分まで水を浸透しやすくすることができ、モルタルの作製にかかる時間を短くすることができる。
【0013】
一方で、第1袋体の内部空間の容積よりもセメント材の体積を少なくすると、第1袋体内でセメント材が移動しやすくなるため、搬送中等の衝撃に伴いセメント材が激しく変動することで、第1袋体が破れてしまう可能性がある。そこで、当該構成では、真空脱気された状態で第2袋体が第1袋体を収容するようにすることで、セメント製品の硬度を増して変形を防止し、セメント材を利用するために第2袋体を開封するまで、第1袋体及び第2袋体内に隙間が生じるのを抑制することができる。これにより、第1袋体及び第2袋体が破れてしまうのを防止することができる。
【0014】
また、上記一側面に係るセメント製品の別の形態として、前記第1袋体は、縦ピロー型に形成されることにより、前記セメント材を収容する内部空間を構成する袋本体と、前記袋本体の面に設けられ、前記袋本体を縦方向に沿ってシールする縦シール部と、前記袋本体の前記縦方向に対向する両端部に設けられ、前記縦方向とは交差する横方向に沿って前記両端部をシールする一対の横シール部と、を有してもよく、前記縦シール部の少なくとも1箇所には切り込みが設けられていてもよい。当該構成によれば、第1袋体と共にセメント材を水に浸漬した後、作製されたモルタルを第1袋体から取り出す際に、切り込みにより当該第1袋体を容易に開封することができる。これにより、使いやすさを高めることができる。
【0015】
また、本発明の一側面に係るモルタルの作製方法は、上記形態に係るセメント製品を用いたモルタルの作製方法であって、前記第2袋体を開封して、前記第1袋体を取り出す第1ステップと、前記縦シール部の設けられた面を上に向けた状態で、前記セメント材を収容した前記第1袋体を水の中に浸漬する第2ステップと、前記第1袋体から気泡が出なくなるまで待機した後、前記水の中から前記第1袋体を取り出す第3ステップと、取り出した前記第1袋体を、前記縦シール部の設けられた面を上に向けた状態で、開封した前記第2袋体上に配置する第4ステップと、前記切り込みから切り裂くことで、前記第1袋体を開封する第5ステップと、を備える。当該構成によれば、モルタルを容易にかつ適切に作製することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、モルタルを容易に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施の形態に係るセメント製品を模式的に例示する斜視図である。
図2図2は、実施の形態に係るセメント製品を模式的に例示する断面図である。
図3図3は、実施の形態に係るセメント製品の作製過程を模式的に例示する。
図4図4は、実施の形態に係るセメント製品の作製過程を模式的に例示する。
図5図5は、実施の形態に係るセメント製品の作製過程を模式的に例示する。
図6図6は、実施の形態に係るセメント製品の使用手順を模式的に例示する。
図7図7は、実施の形態に係るセメント製品の使用手順を模式的に例示する。
図8図8は、実施の形態に係るセメント製品の使用手順を模式的に例示する。
図9図9は、実施の形態に係るセメント製品の使用手順を模式的に例示する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形が行われてもよい。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0019】
§1 構成例
まず、図1及び図2を用いて、本実施形態に係るセメント製品1について説明する。図1及び図2は、本実施形態に係るセメント製品1を模式的に例示する斜視図及び断面図である。なお、図2は、セメント製品1を横方向(図1のY方向)に沿って切断した断面を模式的に例示する。
【0020】
図1及び図2に示されるとおり、本実施形態に係るセメント製品1は、セメント材2と、セメント材2を収容した第1袋体3と、第1袋体3を収容した第2袋体4と、を備える。セメント材2は、所定量の水を吸水させることによりモルタルを作製することができるように適宜構成され、空練り状態のドライミックス材料である。例えば、セメント材2は、セメントの粉末、砂等の骨材、及び分離低減剤、凝結・硬化調整剤等の混和材料を所定の配合で十分に混練したものである。
【0021】
第1袋体3は、透水性を有する材料で構成される。透水性を有する材料として、例えば、不織布、和紙等の吸水性材料が望ましい。また、第1袋体3は、扁平状(平板状)に形成される。図1に示されるとおり、本実施形態では、扁平状にするため、第1袋体3は、縦ピロー型に形成される。なお、セメント材2の収容量を90%〜95%程度に設定可能である。第1袋体3の寸法は、例えば、横10cm×縦20cm×高さ4cm(内容量800cm3)とすることができる。この場合、セメント材2の収容量を1.5kg(約750cm3)とすることができる。このケースでは、第1袋体3内には、約50cm3の空気が含まれることになる。この空気の量により、セメント材2に吸水させる水の量を調節することができる。
【0022】
具体的には、本実施形態に係る第1袋体3は、縦ピロー型に形成されることにより、袋本体31と、縦シール部32と、一対の横シール部(35、36)と、を備えている。袋本体31は、セメント材2を収容する内部空間311を構成する。収容されるセメント材2の体積(量)は、この内部空間311の容積よりも少なくなっている。すなわち、第1袋体3は、内部空間311の容積よりも少ない体積のセメント材2を収容する。
【0023】
縦シール部32は、袋本体31の面に設けられ、縦方向(図のX方向)に沿って袋本体31をシールする。本実施形態では、縦シール部32は、袋本体31の面において、横方向(図のY方向)の略中央に配置されており、袋本体31の面からひだのように延びている。この縦シール部32の縦方向の略中央には、端部から袋本体31の方に向けて切り込み321が設けられている。
【0024】
一対の横シール部(35、36)は、袋本体31の縦方向(図のX方向)に対向する両端部(33、34)に設けられ、縦方向とは交差する横方向(図のY方向)に沿って両端部(33、34)をシールする。なお、以下では、説明の便宜のため、両端部(33、34)をそれぞれ、第1端部33及び第2端部34と称し、これに応じて、一対の横シール部(35、36)をそれぞれ、第1横シール部35及び第2横シール部36と称することとする。また、第1横シール部35は、第2横シール部36よりも先に形成されるものとする。
【0025】
第2袋体4は、非透水性(遮水性)を有する材料で構成される。非透水性を有する材料として、例えば、ナイロン、ポリエチレン等の樹脂製の積層フィルム、ナイロンポリ(NYPE)等を挙げることができる。また、第2袋体4のタイプは、第1袋体3を密封可能であれば、特に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。例えば、第2袋体4のタイプは、横ピロー型であってもよい。本実施形態では、第2袋体4は、第1袋体3を収容する内部空間41を有しており、内部空間41の周囲は、シール部42等により密閉されている。これにより、第2袋体4は、第1袋体3を密封する。更に、この第2袋体4の内部空間41は、真空脱気された状態で第1袋体3を収容している。なお、シール部42には、端部から内側に向けて切り込み421が設けられている。
【0026】
(作製方法)
次に、図3図5を用いて、本実施形態に係るセメント製品1の作製方法の一例を説明する。図3図5は、本実施形態に係るセメント製品1の作製過程を模式的に例示する。なお、以下で説明するセメント製品1の作製方法は、その一例に過ぎず、各ステップは可能な限り変更されてもよい。また、以下で説明する作製方法について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、及び追加が行われてもよい。
【0027】
まず、第2横シール部36を形成する手前まで、第1袋体3を作製する。例えば、不織布等の透水性のシート材の両側縁を縦方向にシールすることで、縦シール部32を形成する。縦シール部32には、適宜切り込み321を設ける。そして、形成された筒状のシート材の第1端部33側を横方向にシールすることで、第1横シール部35を形成する。これにより、図3に示されるとおり、第2端部34側が開放された第1袋体3を作製することができる。
【0028】
続いて、第2端部34側の開口から袋本体31の内部空間311にセメント材2を入れる。上記のとおり、セメント材2の量は、内部空間311の容積よりも少なくする。そして、所定の量のセメント材2を入れ終わった後、第2端部34側を横方向にシールすることで、第2横シール部36を形成する。これにより、図4に示されるとおり、セメント材2を収容した第1袋体3を作製することができる。
【0029】
なお、各部のシール方法は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。各部のシール方法には、公知の方法が適宜採用されてよい。各部のシール方法には、ヒートシール、縫う等の方法が採用されてよい。また、このような第1袋体3の作製には、公知の縦ピロー包装機が利用されてもよい。
【0030】
続いて、非透水性を有するシート材から第2袋体4を作製し、作製した第2袋体4の内部空間41に第1袋体3を収容した上で、内部空間41の真空脱気を行う。図5に示されるとおり、真空脱気は、適宜、公知の脱気包装機5が用いられてよい。真空脱気した後、開放されている部分を適宜シールする。これにより、図1及び図2に示されるセメント製品1を作製することができる。
【0031】
§2 使用方法
次に、図6図9を用いて、本実施形態に係るセメント製品1の使用方法について説明する。図6図9は、本実施形態に係るセメント製品1の使用手順を模式的に例示する。利用者は、以下で説明する使用方法に従ってセメント製品1を使用することで、モルタルを作製することができる。なお、以下で説明するセメント製品1の使用方法は、本発明の「モルタルの作製方法」に相当する。ただし、以下で説明する使用方法は一例に過ぎず、各ステップは可能な限り変更されてもよい。また、以下で説明する使用方法について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、及び追加が行われてもよい。
【0032】
(第1ステップ)
まず、第1ステップでは、図6に示されるとおり、第2袋体4を開封して、第2袋体4から第1袋体3を取り出す。本実施形態では、シール部42に切り込み421が設けられているため、利用者は、切り込み421から第2袋体4を破ることで、第2袋体4を容易に開封することができる。
【0033】
(第2ステップ)
続いて、第2ステップでは、図7に示されるとおり、水7を入れた容器6を用意する。そして、縦シール部32の設けられた面を上に向けた状態で、セメント材2を収容した第1袋体3を容器6の水7の中に浸漬する。これにより、縦シール部32の跡形がセメント材2に残るのを防止することができる。なお、水7の量は、第1袋体3を十分に浸漬可能なように適宜決定されてよい。また、水7を入れた容器6を用意するタイミングは、第1ステップの前であってもよいし、第1ステップの後であってもよい。
【0034】
第1袋体3は、透水性を有しているため、第1袋体3を水7の中に浸漬すると、水7は、第1袋体3の内部空間311に浸入し、セメント材2に徐々に浸透する。このセメント材2に水7が浸透する際には、セメント材2内の隙間に水7が入り込むため、セメント材2から第1袋体3を介して外側に気泡8が放出される。
【0035】
(第3ステップ及び第4ステップ)
続いて、第3ステップでは、第1袋体3(セメント材2)から気泡8が出なくなるまで待機した後、水7の中から第1袋体3を取り出す。そして、第4ステップでは、取り出した第1袋体3を、縦シール部32の設けられた面を上に向けた状態で、適当な場所に配置する。図8の例では、水7の中から取り出した第1袋体3を、第1ステップで開封した第2袋体4の上に配置している。すなわち、開封後の第2袋体4は、作業場を汚さないための敷物として利用することができる。
【0036】
(第5ステップ)
続いて、図8に示されるとおり、縦シール部32の切り込み321から第1袋体3を切り裂くことで、当該第1袋体3を開封する。第3ステップにおいて、気泡8が出なくなるまで待機することで、第1袋体3の内部空間311では、セメント材2に水が十分に浸透して、モルタル20が作製されている。そのため、図9に示されるとおり、第1袋体3を開封することで、当該第1袋体3の内部空間311からモルタル20を取り出すことができる。
【0037】
§3 特徴
以上のとおり、本実施形態に係るセメント製品1では、セメント材2を収容する第1袋体3が扁平状に形成されているため、少なくとも一方向(例えば、図2の上下方向)に第1袋体3の長さを短くすることができる。これにより、セメント材2の量を増やしても、図7に示されるとおり、水7の量をそれほど増やさなくても、第1袋体3を水7の中に十分に浸漬することができる。また、セメント材2に水7を浸透させるのにかかる時間が長くならないようにすることができる。したがって、本実施形態によれば、モルタルを容易に作製することができる。
【0038】
また、本実施形態では、セメント材2を収容した第1袋体3は、上記第2ステップにより当該第1袋体3を水7の中に浸漬するまで、非透水性を有する第2袋体4により密封されている。これによって、透水性を有する第1袋体3内に湿気が侵入して、セメント材2が固まってしまうのを抑制することができる。すなわち、セメント材2の保存期間を長くすることができる。
【0039】
また、本実施形態では、第1袋体3の内部空間311の容積よりもセメント材2の体積を少なくすることで、セメント材2に水7を浸透しやすくすることができ、モルタルの作製に係る時間を短くすることができる。更に、真空脱気された状態で第2袋体4が第1袋体3を収容するようにすることで、内部空間311の容積よりもセメント材2の体積が少ないことに起因して生じ得る上記問題点を解消することができる。また、圧縮状態で輸送されるため、ドライミックス材料として十分に空練りされたセメント材2の配合原料のうち一定のものが内部空間311の下部或いは上部に移動して材料に偏りができることが防止される。
【0040】
また、本実施形態では、第1袋体3は、縦ピロー型に形成されており、縦シール部32には、切り込み321が設けられている。そのため、第1袋体3と共にセメント材2を水に浸漬した後、作製されたモルタル20を第1袋体3から取り出す際(すなわち、上記第5ステップを実施する際)には、切り込み321により第1袋体3を容易に開封することができる。これにより、使いやすさを高めることができる。
【0041】
§4 変形例
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。例えば、以下のような変更が可能である。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、上記実施形態と同様の点については、適宜説明を省略した。以下の変形例は適宜組み合わせ可能である。
【0042】
例えば、上記実施形態では、縦シール部32に、一つの切り込み321が設けられている。しかしながら、切り込み321の数は、このような例に限定されなくてもよい。切り込み321は省略されてもよいし、2つ以上の切り込み321が縦シール部32に設けられてもよい。縦シール部32の少なくとも1箇所に切り込み321を設けるようにすることで、第1袋体3の開封を容易にすることができる。
【0043】
また、例えば、上記実施形態では、第1袋体3は、縦ピロー型に形成されている。しかしながら、第1袋体3のタイプは、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。
【0044】
また、例えば、第2袋体4の内部空間41は、脱気真空された状態で第1袋体3を収容する。しかしながら、第2袋体4の構成は、このような例に限定されなくてもよく、内部空間41は、脱気真空されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…セメント製品、
2…セメント材、20…モルタル、
3…第1袋体、
31…袋本体、311…内部空間、
32…縦シール部、321…切り込み、
33…第1端部、34…第2端部、
35…第1横シール部、36…第2横シール部、
4…第2袋体、
41…内部空間、
42…シール部、421…切り込み、
5…脱気包装機、6…容器、7…水、8…気泡
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9