特許第6886410号(P6886410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6886410核酸含有組成物の作製および精製のためのプロセス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886410
(24)【登録日】2021年5月18日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】核酸含有組成物の作製および精製のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/02 20060101AFI20210603BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20210603BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20210603BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20210603BHJP
   C12N 15/43 20060101ALI20210603BHJP
   B01D 15/34 20060101ALI20210603BHJP
   B01D 15/36 20060101ALI20210603BHJP
   G01N 30/02 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   C12N7/02ZNA
   C12Q1/6851 Z
   C12N15/10 100Z
   C12N15/63 Z
   C12N15/43
   B01D15/34
   B01D15/36
   G01N30/02 B
【請求項の数】19
【全頁数】111
(21)【出願番号】特願2017-563547(P2017-563547)
(86)(22)【出願日】2016年6月10日
(65)【公表番号】特表2018-527885(P2018-527885A)
(43)【公表日】2018年9月27日
(86)【国際出願番号】US2016036888
(87)【国際公開番号】WO2016201224
(87)【国際公開日】20161215
【審査請求日】2019年4月19日
(31)【優先権主張番号】62/173,777
(32)【優先日】2015年6月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508285606
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ブロード, トレバー レーン
(72)【発明者】
【氏名】シャバン, シミール フセイン
(72)【発明者】
【氏名】シェ, ユエチン
(72)【発明者】
【氏名】ジュー, ジャンウェイ ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ミトラ, ジョージ
【審査官】 池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】 特表昭58−500589(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第1616095(CN,A)
【文献】 特表2006−528886(JP,A)
【文献】 特表平05−503634(JP,A)
【文献】 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1996) vol.93, no.6, p.2370-2375
【文献】 村松正實編, 分子細胞生物学辞典, 2002年2月, 株式会社東京化学同人, p.486
【文献】 TaKaRaバイオ総合カタログ2002−2003, p.R-21
【文献】 Mol. Ther. (2008) vol.16, no.11, p.1865-1872
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 − 15/90
C12N 7/
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PVS−RIPOウイルスを含む組成物を得るための精製プロセスであって、
該生PVS−RIPOウイルスを含む水性流体をサイズ分離クロマトグラフィーカラムで分離するステップと、
該サイズ分離カラムからの溶出液の少なくとも1つの画分中の、該生PVS−RIPOウイルスにおいて見いだされる1つまたは複数の核酸配列を定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によって測定するステップと、
該生PVS−RIPOウイルスにおいて見いだされる該1つまたは複数の核酸配列を含有する、該サイズ分離カラムからの該溶出液の少なくとも1つの陽性画分を収集するステップと、
該少なくとも1つの陽性画分をプールするステップと、
プールされた該少なくとも1つの陽性画分を陰イオン交換クロマトグラフィーカラムで分離するステップと、
該生PVS−RIPOウイルスを含有する、該陰イオン交換クロマトグラフィーカラムからのフロースルー溶出液の少なくとも1つの陽性画分を収集するステップと
を含む精製プロセス。
【請求項2】
PVS−RIPOウイルスを含む組成物を得るための精製プロセスであって、
該生PVS−RIPOウイルスを含む水性流体をSepharose 6 fast flow(FF)分離クロマトグラフィーカラムで分離するステップと、
該Sepharose 6 FF分離カラムからの溶出液の少なくとも1つの画分中の、該生PVS−RIPOウイルスにおいて見いだされる1つまたは複数の核酸配列を定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によって測定するステップと、
該生PVS−RIPOウイルスにおいて見いだされる1つまたは複数の核酸配列を含有する、該Sepharose 6 FF分離カラムからの溶出液の少なくとも1つの陽性画分を収集するステップと、
該少なくとも1つの陽性画分をプールするステップと、
プールされた該少なくとも1つの陽性画分をSuper Q 650M樹脂陰イオン交換クロマトグラフィーカラムで分離するステップと、
該生PVS−RIPOウイルスを含有する、該Super Q 650M樹脂陰イオン交換クロマトグラフィーカラムからのフロースルー溶出液の少なくとも1つの陽性画分を収集するステップと
を含む精製プロセス。
【請求項3】
PVS−RIPOウイルスを含む組成物を得るための精製プロセスであって、
該生PVS−RIPOウイルスの鋳型配列を含むプラスミドDNAを1つまたは複数の細菌細胞に導入し、それにより、該プラスミドDNAで形質転換された1つまたは複数の細菌細胞を生成するステップと、
該1つまたは複数の形質転換された細菌細胞の固相培養物を成長させ、それにより、1つまたは複数の細菌コロニーを生成するステップと、
該1つまたは複数の細菌コロニーの少なくとも1つにおける該生PVS−RIPOウイルスの該鋳型配列に由来する1つまたは複数の核酸配列の存在を検出するステップと、
該1つまたは複数の核酸配列の存在が検出された該少なくとも1つの細菌コロニーに由来する細菌細胞の培養物を繁殖させるステップ、および
該繁殖した細菌細胞から該生PVS−RIPOウイルスの該鋳型配列を含む該プラスミドDNAを抽出するステップであって、該繁殖させるステップと該抽出するステップとの間に該細菌細胞を凍結させない、ステップと、
哺乳動物宿主細胞に該プラスミドDNAを感染させるステップと、
該プラスミドDNAを有する該哺乳動物宿主細胞を培養するステップと、
PVS−RIPOウイルスを含む、該哺乳動物宿主細胞、該哺乳動物宿主細胞のデブリ、またはその両方に由来する液体細胞培養培地を得るステップと、
該哺乳動物宿主細胞、該哺乳動物宿主細胞のデブリ、またはその両方に由来する該液体細胞培養培地を、溶液中の遊離核酸は消化することができるが封入されたウイルス核酸を消化することはできないヌクレアーゼ酵素と一緒にインキュベートし、それにより、該生PVS−RIPOウイルスを含む水性流体を生成するステップと、
該生PVS−RIPOウイルスを含む該水性流体をサイズ分離クロマトグラフィーカラムで分離するステップと、
該サイズ分離カラムからの溶出液の少なくとも1つの画分中の、該生PVS−RIPOウイルスにおいて見いだされる1つまたは複数の核酸配列を定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によって測定するステップと、
該生PVS−RIPOウイルスにおいて見いだされる該1つまたは複数の核酸配列を含有する、該サイズ分離カラムからの溶出液の少なくとも1つの陽性画分を収集するステップと、
該少なくとも1つの陽性画分をプールするステップと、
プールされた該少なくとも1つの陽性画分を陰イオン交換クロマトグラフィーカラムで分離するステップと、
該生PVS−RIPOウイルスを含有する、該陰イオン交換クロマトグラフィーカラムからのフロースルー溶出液の少なくとも1つの陽性画分を収集するステップと
を含む精製プロセス。
【請求項4】
前記陰イオン交換クロマトグラフィー分離ステップの後にいかなる別のクロマトグラフィー分離ステップも含有しない、請求項1から3までのいずれか一項に記載の精製プロセス。
【請求項5】
2つのクロマトグラフィー分離ステップを含有する、請求項1から4までのいずれか一項に記載の精製プロセス。
【請求項6】
前記フロースルー溶出液中に溶出した前記生PVS−RIPOウイルスを透析濾過によって濃縮するステップをさらに含む、請求項1から5までのいずれか一項に記載の精製プロセス。
【請求項7】
8時間未満で行われる、請求項1から6までのいずれか一項に記載の精製プロセス。
【請求項8】
前記精製プロセスの精製収率が少なくとも50%であり、該プロセスからの生PVS−RIPOウイルスの収率が少なくとも5×1011pfuであり、前記フロースルー溶出液中に溶出した前記生PVS−RIPOウイルスの感染力が少なくとも1×1012組織培養感染量(TCID)50である、またはこれらの組合せである、請求項1から5までのいずれか一項に記載の精製プロセス。
【請求項9】
前記生PVS−RIPOウイルスを含む前記水性流体が、該PVS−RIPOウイルスに感染した宿主細胞を1ラウンドまたは複数ラウンドの細胞培養で培養するステップを含むプロセスによって得られる液体細胞培養培地である、請求項1から2までまたは請求項4から8までのいずれか一項に記載の精製プロセス。
【請求項10】
前記液体細胞培養培地が、培養後に、前記宿主細胞、該宿主細胞のデブリ、またはその両方から該液体細胞培養培地を分離するステップをさらに含む前記プロセスによって得られる、請求項9に記載の精製プロセス。
【請求項11】
前記液体細胞培養培地が、溶液中の遊離核酸は消化することができるが、封入されたウイルス核酸を消化することはできないヌクレアーゼ酵素と一緒に該液体細胞培養培地をインキュベートするステップをさらに含む前記プロセスによって得られる、請求項9または10に記載の精製プロセス。
【請求項12】
前記生PVS−RIPOウイルスが、
該生PVS−RIPOウイルスの鋳型配列を含むプラスミドDNAを1つまたは複数の細菌細胞に導入し、それにより、該プラスミドDNAで形質転換された該1つまたは複数の細菌細胞を生成するステップと、
該1つまたは複数の形質転換された細菌細胞の固相培養物を成長させ、それにより、1つまたは複数の細菌コロニーを生成するステップと、
該1つまたは複数の細菌コロニーの少なくとも1つにおける該生PVS−RIPOウイルスの該鋳型配列に由来する1つまたは複数の核酸配列の存在を検出するステップと、
該1つまたは複数の核酸配列の存在が検出された該少なくとも1つの細菌コロニーに由来する細菌細胞の培養物を繁殖させるステップと、
該繁殖した細菌細胞から該生PVS−RIPOウイルスの該鋳型配列を含む該プラスミドDNAを抽出するステップであって、該繁殖させるステップと該抽出するステップとの間に該細菌細胞を凍結させない、ステップと
を含むプロセスによって得られる、請求項9から11までのいずれか一項に記載の精製プロセス。
【請求項13】
前記生PVS−RIPOウイルスに感染した前記宿主細胞が、
生PVS−RIPOウイルスの鋳型配列を含むプラスミドDNAを1つまたは複数の細菌細胞に導入し、それにより、該プラスミドDNAで形質転換された該1つまたは複数の細菌細胞を生成するステップと、
該1つまたは複数の形質転換された細菌細胞の固相培養物を成長させ、それにより、1つまたは複数の細菌コロニーを生成するステップと、
該1つまたは複数の細菌コロニーの少なくとも1つにおける該生PVS−RIPOウイルスの該鋳型配列に由来する1つまたは複数の核酸配列の存在を検出するステップと、
1つまたは複数の核酸配列の存在が検出された該少なくとも1つの細菌コロニーに由来する細菌細胞の培養物を繁殖させるステップと、
該繁殖した細菌細胞から該生PVS−RIPOウイルスの該鋳型配列を含む該プラスミドDNAを抽出するステップであって、該繁殖させるステップと該抽出するステップとの間に該細菌細胞を凍結させない、ステップと、
該鋳型配列のin vitro転写によって該生PVS−RIPOウイルスの裸のRNAを生成するステップと、
生PVS−RIPOウイルスの該裸のRNAを宿主細胞に導入し、それにより、該生PVS−RIPOウイルスに感染した宿主細胞を生成するステップと
を含むプロセスによって得られる、請求項9から11までのいずれか一項に記載の精製プロセス。
【請求項14】
前記プラスミドが、E.coli複製開始点を含む細菌プラスミドであり、前記1つまたは複数の細菌細胞が、E.coli細胞である、請求項3、12または13に記載の精製プロセス。
【請求項15】
前記宿主細胞が、哺乳動物宿主細胞である、請求項9から14までのいずれか一項に記載の精製プロセス。
【請求項16】
前記哺乳動物宿主細胞が、Vero細胞である、請求項3または13に記載の精製プロセス。
【請求項17】
PVS−RIPOについてのDNA鋳型を含むウイルス鋳型核酸分子を含む安定なプラスミドを生成する方法であって、
該ウイルス鋳型核酸分子を含むプラスミドDNAを1つまたは複数の宿主E.coli K12株細胞に導入し、それにより、該プラスミドDNAで形質転換された該1つまたは複数の宿主E.coli K12株細胞を生成するステップと、
該1つまたは複数の形質転換された細胞の固相培養物を成長させ、それにより、1つまたは複数のコロニーを生成するステップと、
該1つまたは複数のコロニーの少なくとも1つにおける該ウイルス鋳型核酸分子に由来する1つまたは複数の核酸配列の存在を検出するステップと、
該ウイルス鋳型核酸分子に由来する1つまたは複数の核酸配列の存在が検出された少なくとも1つのコロニーからの細胞の培養物を繁殖させるステップと、
該繁殖した細胞から該ウイルス鋳型核酸分子を含む該プラスミドDNAを抽出するステップであって、該繁殖させるステップと該抽出するステップとの間に、該形質転換された細胞を凍結させない、ステップと
を含む方法。
【請求項18】
PVS−RIPO鋳型プラスミドを含む組成物であって、25%未満の、トランスポゾン挿入事象を伴うプラスミド、25%未満の、二量体化したプラスミド、25%未満の、ウイルス鋳型配列を伴わない空のプラスミド、またはこれらの組合せを含む組成物。
【請求項19】
請求項18に記載の組成物を含むキット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2015年6月10日に出願された米国仮出願第62/173,777号の優先権を主張し、これは、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書には、抗がん剤またはワクチンとして使用することができる、RNAに基づく組換えウイルス(例えば、組換えポリオウイルス)等のウイルスに基づく核酸組成物を高純度で含む核酸含有組成物を製造するためのプロセスが開示されている。そのような方法を使用して生成された組成物も提供される。
【背景技術】
【0003】
核酸に基づく生物製剤は、種々の疾患および状態に対する防御またはそれらの処置に有用である。例えば、DNAに基づくワクチンを感染症の処置または防止において使用される防御用ワクチンまたは治療用ワクチンとして使用することができ、組換えレトロウイルスベクターを遺伝子治療(genetic therapy)に使用することができ、また、腫瘍細胞を選択的に破壊する腫瘍溶解性ウイルスを作製することができきる。いくつかの型のウイルス、例えば、アデノウイルス、ワクシニアウイルスおよび単純ヘルペスウイルスが、潜在的な腫瘍溶解剤であると同定されている。
【0004】
ヒトにおいて灰白髄炎を引き起こすポリオウイルスは、Picornaviridae科の低分子RNAウイルスである。Gromeierら(Virology、2000年、273巻(2号):248〜57頁)において考察されている通り、ポリオウイルスは、中枢神経系に、おそらく血液脳関門を渡り、CD155受容体に結合することによって感染するので、改変された弱毒化形態のポリオウイルスは、ヒト脳に核酸配列を送達するためのビヒクルとして潜在的に有用である。改変された弱毒化形態のポリオウイルスの潜在的な適用の1つは、神経膠腫および髄芽腫等の脳悪性腫瘍を処置するための治療用腫瘍溶解性組成物の作製である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Gromeierら、Virology、2000年、273巻(2号):248〜57頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
核酸に基づく生物製剤の分野では、腫瘍溶解性ウイルス等の臨床用製品の臨床的適用および製造のために、高度に精製された核酸材料が大量に必要になる。したがって、高純度の核酸材料が十分な量で生成される、複雑さが低減し、費用が低減した効率的な作製および精製プロセスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書には、(i)ウイルス鋳型プラスミドを生成するための改善されたプロセス、および(ii)カラムクロマトグラフィー分離の間またはその後に迅速な検出ステップを含む、生ウイルスを精製するための改善されたプロセスを別々にまたは組み合わせて使用する、精製された生ウイルス(例えば、組換えポリオウイルス)を作製するためのプロセスまたは方法が開示されている。ウイルス鋳型プラスミドを生成するための改善されたプロセス(例えば、RNAウイルスに対するDNA鋳型を含むもの)は、ウイルスゲノム(例えば、組換えポリオウイルスのもの)を含有するプラスミドの、一般に当該プラスミドを増やす宿主(例えば、細菌)細胞における遺伝的不安定性に関する問題に対処するものである。例えば、そのような鋳型の遺伝的不安定性に関する問題が存在する場合に、このプロセスを細菌細胞におけるウイルスDNA鋳型の作製に適用することができる。得られる産物の収率および/または純度を増加させ、かつ、精製時間を低減することが本明細書において示されている改善されたウイルス精製プロセスを、ウイルスに基づく組成物等の任意の核酸分子含有組成物の精製に一般に適用することが可能であり、また、臨床的適用に必要なもの等のネイティブなまたは組換え生ウイルスを精製するために使用することができる。
【0008】
一実施例では、ウイルス鋳型プラスミドを作製するための改善されたプロセスは、「ウイルス鋳型プラスミド」またはより詳細には「組換えポリオウイルスプラスミドDNA鋳型」と称することができるウイルス鋳型配列(例えば、組換えポリオウイルス等のRNAウイルスに対応するDNA配列)を含有するプラスミドDNA(例えば、細菌プラスミド)を生成する方法である。改善されたプロセスは、宿主細胞(例えば、細菌宿主細胞)をウイルス鋳型プラスミド(例えば、弱毒化組換えポリオウイルスプラスミドDNA)で形質転換するステップと、形質転換された細胞を固形培地上で成長させるステップと、適当なプラスミド配列(例えば、組換えポリオウイルスプラスミドDNA配列)を含有するコロニーを選択するステップとを含む。適当なプラスミド配列を含有する宿主細胞(例えば、プラスミドが空でなく、組換えは起こらなかった)を液体培養物中で繁殖させ、繁殖した宿主細胞からウイルス鋳型プラスミド(例えば、組換えポリオウイルスプラスミドDNA)を抽出する。細胞繁殖ステップおよび抽出ステップは、繁殖ステップにおいて作製された材料を凍結せずに実施し、これにより、プラスミドの遺伝的不安定性およびその結果生じるウイルス鋳型配列のエラーのリスクが低減する。一部の実施例では、抽出されたウイルス鋳型プラスミドを線状化し、in vitroにおいて転写して、感染性の裸のウイルスRNAを生成し、次にそれを使用して哺乳動物細胞に感染させる。感染哺乳動物細胞を、培養物中、「増大(expansion)」と称することができる多段階プロセスで増幅させ、成長させて生ウイルスを作製し、次にそれを精製する(例えば、開示されている改善された方法を使用して)ことができる。
【0009】
1つまたは複数のウイルス鋳型配列を含むプラスミドを含有する単離されたプラスミドDNA組成物を生成するための方法は、ウイルス鋳型配列(複数可)を含むプラスミドDNAを、1つまたは複数の宿主細胞(例えば、細菌細胞)に、例えば形質転換によって導入し、それにより、1つまたは複数の、単離されたプラスミドDNAで形質転換された細胞を生成するステップを含む。一部の実施例では、宿主細胞に導入されるプラスミドDNAは、ストックに由来するもの(例えば、細胞バンクに由来するもの)である。他の実施例では、宿主細胞に導入されるプラスミドDNAは、精製または単離されたものである。形質転換された細胞を、固相培養物上、例えば、選択的条件下で成長させ、それにより、1つまたは複数のコロニー(例えば、細菌コロニー)を生成する。1つまたは複数のコロニーを、1つまたは複数のウイルス鋳型配列に由来する1つまたは複数の核酸配列の存在について試験する(例えば、プラスミド内に所望のウイルス配列が存在することを確実にするため)。1つまたは複数の核酸配列の存在が検出されたコロニー(複数可)由来の宿主細胞の液体培養物を、例えば発酵条件下で、繁殖させる。繁殖した形質転換された細胞に由来する1つまたは複数のウイルス鋳型配列を含むプラスミドDNAを、形質転換された細胞から抽出するかまたは取り出し、それにより、単離されたプラスミドDNA組成物を作製する。そのような方法では、繁殖させるステップと抽出するステップとの間に、形質転換された細胞を凍結条件(例えば、−20℃またはそれ未満の温度)に曝露させない。
【0010】
本開示は、生ウイルス、例えば、組換え生ポリオウイルス等の核酸含有組成物を精製するための改善されたプロセスも提供する。そのような方法を使用して、精製された、ウイルス等の核酸分子含有組成物を得ることができる。この改善されたプロセスを、完全にまたは一部において、これだけに限定されないが、弱毒化ウイルスに基づく核酸組成物および非生ウイルスに基づく核酸組成物の作製および精製ならびにプラスミドDNA精製を含めた、種々の核酸含有組成物の作製および精製に適用することができる。プロセスは、2つのカラムクロマトグラフィー分離ステップ(サイズ分離、その後、陰イオン交換)、および、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)等の迅速な検出プロセスによる、カラムクロマトグラフィー画分中の標的核酸(例えば、組換え生ポリオウイルス)の検出を含む。クロマトグラフィー画分中の標的核酸の特異的配列の迅速な検出により、全体的な精製の一貫性および頑強性が強化され、また、使用されるクロマトグラフィーステップの数が減少し、したがって、その複雑さおよび費用が低減する。迅速な検出により、全体的な精製時間も低減され、また、標的核酸(例えば、組換え生ポリオウイルス)の収率および/または純度も改善される。したがって、例示的な精製プロセスは、迅速であり、効率的であり、かつ、予想外に改善された標的核酸分子(例えば、組換え生ポリオウイルス)の収率および/または純度をもたらすものである。
【0011】
特定の実施例では、天然に存在しないRNAに基づくウイルス(例えば、天然に存在しないポリオウイルス)に感染したウイルス宿主細胞を生成するためのプロセスが提供される。そのような方法は、天然に存在しないRNAに基づくウイルスの鋳型配列を含有するプラスミドDNA(例えば、細菌プラスミドのもの)を1つまたは複数の宿主細胞(例えば、細菌細胞)に導入し、それにより、プラスミドDNAで形質転換された宿主細胞を生成するステップを含み得る。一部の実施例では、宿主細胞に導入されるプラスミドDNAは、ストック(例えば、細胞バンクに由来する)に由来する。他の実施例では、宿主細胞に導入される単離されたプラスミドDNAは、精製または単離される。形質転換された細胞を、固相培養物中、例えば選択的条件下で成長させ、それにより、1つまたは複数のコロニー(例えば、細菌コロニー)を生成する。1つまたは複数のコロニーを、天然に存在しないRNAに基づくウイルスに由来する1つまたは複数の核酸配列の存在について試験する(例えば、プラスミド内に所望のウイルス配列が存在することを確実にするため)。天然に存在しないRNAに基づくウイルスに由来する1つまたは複数の核酸配列の存在が検出されたコロニー(複数可)に由来する宿主細胞の液体培養物を、例えば発酵条件下で、繁殖させる。繁殖した形質転換された細胞に由来する天然に存在しないRNAに基づくウイルスの鋳型配列を含むプラスミドDNAを形質転換された細胞から抽出する。任意選択で、天然に存在しないRNAに基づくウイルスの裸のRNAを鋳型配列のin vitro翻訳によって生成する。得られた、天然に存在しないRNAに基づくウイルスの裸のRNAをウイルス宿主細胞(例えば、哺乳動物宿主細胞)に導入し、それにより、天然に存在しないRNAに基づくウイルスに感染したウイルス宿主細胞を生成する。そのような方法は、繁殖させるステップと抽出するステップとの間に、形質転換された細胞を凍結条件(例えば、−20℃またはそれ未満の温度)に曝露することを含まない。
【0012】
ウイルス含有組成物等の、精製された核酸組成物を作製するプロセスは、核酸組成物を含有する溶液をクロマトグラフィーカラム(例えば、サイズ分離カラム)で分離するステップ、次いで、クロマトグラフィーカラムから溶出した1つまたは複数の画分中の核酸内に存在する少なくとも1つの核酸配列を検出する(例えば、qPCRを使用して)ステップ、次いで、少なくとも1つの核酸配列が閾値を超える量で存在することが検出される1つまたは複数の画分をプールするステップを含み得る。
【0013】
一実施形態では、ポリオウイルスを感染させた哺乳動物宿主細胞を1ラウンドまたは複数ラウンドの細胞培養で培養してポリオウイルスを含有する液体細胞培養培地を作製するステップと、哺乳動物宿主細胞、哺乳動物宿主細胞のデブリ、またはその両方に由来する液体細胞培養培地を分離し、それにより、ポリオウイルスを含有する上清を生成するステップと、ポリオウイルスを含有する上清をクロマトグラフィーカラムで分離するステップと、クロマトグラフィーカラムから溶出した1つまたは複数の画分中に存在するポリオウイルスを、ポリオウイルスにおいて見いだされる核酸配列を検出することによって検出するステップと、核酸配列が閾値を超える量で検出される画分をプールするステップとによって、天然に存在しない生ポリオウイルスを精製するためのプロセスが提供される。
【0014】
別の実施形態では、天然に存在しないRNAに基づくウイルスの鋳型配列を含有する細菌プラスミドの単離されたプラスミドDNAのストックをもたらすステップと、単離されたプラスミドDNAのストックを1つまたは複数の細菌細胞に導入し、それにより、単離されたプラスミドDNAのストックで形質転換された細菌細胞を生成するステップと、単離されたプラスミドDNAのストックで形質転換された1つまたは複数の細菌細胞の固相培養物を成長させ、それにより、1つまたは複数の細菌コロニーを生成するステップと、細菌コロニーの少なくとも1つにおけるRNAに基づくウイルスの鋳型配列に由来する1つまたは複数の核酸配列の存在を検出するステップと、1つまたは複数の核酸配列の存在が検出された細菌コロニーに由来する細菌細胞の培養物を繁殖させるステップであって、繁殖させるステップと抽出するステップとの間に細菌細胞を凍結させない、ステップと、繁殖した細菌細胞に由来するRNAに基づくウイルスの鋳型配列を含有するプラスミドDNAを抽出するステップと、RNAに基づくウイルスの裸のRNAを鋳型配列のin vitro翻訳によって生成するステップと、RNAに基づくウイルスの裸のRNAをウイルス宿主細胞に導入し、それにより、RNAに基づくウイルスに感染したウイルス宿主細胞を生成するステップと、RNAに基づくウイルスに感染したウイルス宿主細胞を1ラウンドまたは複数ラウンドの細胞培養で培養してRNAに基づくウイルスを含有する液体細胞培養培地を作製するステップと、哺乳動物宿主細胞、哺乳動物宿主細胞のデブリ、またはその両方に由来する液体細胞培養培地を分離し、それにより、RNAに基づくウイルスを含有する上清を生成するステップと、天然に存在しないRNAに基づく生ウイルスを含有する上清をクロマトグラフィーカラム(例えば、サイズ分離カラム)で分離するステップと、クロマトグラフィーカラムから溶出した1つまたは複数の画分中に存在するRNAに基づく生ウイルスを、RNAに基づくウイルスにおいて見いだされる1つまたは複数の核酸配列を検出する(例えば、qPCRを使用して)ことによって検出するステップと、核酸配列が閾値を超える量で存在する画分をプールするステップとによって、精製された、天然に存在しないRNAに基づく生ウイルスを得るためのプロセスが提供される。方法は、プールした画分を陰イオン交換クロマトグラフィーカラムに適用するステップと、陽性フロースルー溶出液を濃縮するステップとをさらに含み得る。
【0015】
一実施例では、天然に存在しない生ポリオウイルスを含む組成物を得るための精製プロセスは、天然に存在しない生ポリオウイルスを含有する水性流体をサイズ分離クロマトグラフィーカラムで分離するステップと、天然に存在しない生ポリオウイルスにおいて見いだされる1つまたは複数の核酸配列を定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によって検出するステップと、天然に存在しない生ポリオウイルスにおいて見いだされる1つまたは複数の核酸配列を含有する、前記サイズ分離カラムからの溶出液の少なくとも1つの陽性画分を収集し、プールするステップと、プールされた陽性画分を陰イオン交換クロマトグラフィーカラムで分離するステップとを含む。天然に存在しない生ポリオウイルスは、陰イオン交換クロマトグラフィーカラムからの溶出液の少なくとも1つの陽性画分中に収集される。一部の実施例では、この精製プロセスは、陰イオン交換クロマトグラフィー分離ステップの後にいかなる別のクロマトグラフィー分離ステップも含有しない。したがって、一部の実施例では、方法は、クロマトグラフィー分離ステップを2つのみ有する。精製プロセスは、フロースルー溶出液中に溶出した天然に存在しない生ポリオウイルスを透析濾過(diafilatration)によって濃縮するステップをさらに含み得る。一部の実施例では、精製プロセスは、8時間未満、例えば4〜8時間で行うことができる。一部の実施形態では、精製プロセスの収率は、50%以上、例えば、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも83%、例えば、50〜60%、50〜80%、60〜80%、70〜85%、または50〜85%である。陰イオン交換クロマトグラフィーカラムからの溶出液の少なくとも1つの陽性画分に由来する天然に存在しない生ポリオウイルスの収率は、50%以上であり得る。
【0016】
生ウイルス(例えば、天然に存在しない生ポリオウイルス)を含有する水性流体は、ウイルスに感染したウイルス宿主細胞を1ラウンドまたは複数ラウンドの細胞培養で培養するステップを含むプロセスによって得られる液体細胞培養培地であってよい。液体細胞培養培地は、培養後に、ウイルス宿主細胞、ウイルス宿主細胞のデブリ、またはその両方から液体細胞培養培地を分離することによって得ることができる。細胞培養培地は、溶液中の遊離核酸は消化することができるが封入されたウイルス核酸を消化することはできないヌクレアーゼ酵素と一緒に液体細胞培養培地をインキュベートするステップによって得ることができる。ウイルスに感染したウイルス宿主細胞は、ウイルスの鋳型配列を含む細菌プラスミドの単離されたプラスミドDNAのストックをもたらすステップと、単離されたプラスミドDNAのストックを1つまたは複数の細菌細胞に導入し、それにより、単離されたプラスミドDNAのストックで形質転換された1つまたは複数の細菌細胞を生成するステップと、1つまたは複数の形質転換された細菌細胞の固相培養物を成長させ、それにより、1つまたは複数の細菌コロニーを生成するステップと、1つまたは複数の細菌コロニーの少なくとも1つにおけるウイルスの鋳型配列に由来する1つまたは複数の核酸配列の存在を検出するステップと、1つまたは複数の核酸配列の存在が検出された少なくとも1つの細菌コロニーに由来する細菌細胞の培養物を繁殖させるステップと、繁殖した細菌細胞からウイルスの鋳型配列を含むプラスミドDNAを抽出するステップであって、繁殖させるステップと抽出するステップとの間に細菌細胞を凍結させない、ステップと、ウイルスの裸のRNA(例えば、天然に存在しないポリオウイルスのもの)を鋳型配列のin vitro翻訳によって生成するステップと、ウイルスの裸のRNAをウイルス宿主細胞に導入し、それにより、ウイルスに感染したウイルス宿主細胞を生成するステップとを含むプロセスによって得ることができる。細菌プラスミドは、E.coli複製開始点を有するプラスミドであってよく、1つまたは複数の細菌細胞は、E.coli細胞である。ウイルス宿主細胞は、Vero細胞等の哺乳動物宿主細胞であってよい。
【0017】
開示されている方法を使用して精製したウイルスは、RNAウイルスであっても一本鎖DNAウイルス等のDNAウイルスであってもよい。一実施例では、ウイルスは、ネイティブなポリオウイルスであってもSabinウイルスまたは腫瘍溶解性ポリオウイルス、例えば、PVS−RIPO等の天然に存在しないポリオウイルスである。
【0018】
開示されている方法を使用して生成された精製されたウイルス(または他の分析物)を含有する組成物およびキットも提供される。
本発明は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
生ウイルスを含む組成物を得るための精製プロセスであって、
該生ウイルスを含む水性流体をサイズ分離クロマトグラフィーカラムで分離するステップと、
該サイズ分離カラムからの溶出液の少なくとも1つの画分中の、該生ウイルスにおいて見いだされる1つまたは複数の核酸配列を定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によって測定するステップと、
該生ウイルスにおいて見いだされる該1つまたは複数の核酸配列を含有する、該サイズ分離カラムからの該溶出液の少なくとも1つの陽性画分を収集するステップと、
該少なくとも1つの陽性画分をプールするステップと、
プールされた該少なくとも1つの陽性画分を陰イオン交換クロマトグラフィーカラムで分離するステップと、
該生ウイルスを含有する、該陰イオン交換クロマトグラフィーカラムからのフロースルー溶出液の少なくとも1つの陽性画分を収集するステップと
を含む精製プロセス。
(項目2)
生ウイルスを含む組成物を得るための精製プロセスであって、
該生ウイルスを含む水性流体をSepharose 6 fast flow(FF)分離クロマトグラフィーカラムで分離するステップと、
該生ウイルスにおいて見いだされる1つまたは複数の核酸配列を含有する、該Sepharose 6 FF分離カラムからの溶出液の少なくとも1つの陽性画分を収集するステップと、
該少なくとも1つの陽性画分をプールするステップと、
プールされた該少なくとも1つの陽性画分をSuper Q 650M樹脂陰イオン交換クロマトグラフィーカラムで分離するステップと、
該生ウイルスを含有する、該Super Q 650M樹脂陰イオン交換クロマトグラフィーカラムからのフロースルー溶出液の少なくとも1つの陽性画分を収集するステップと
を含む精製プロセス。
(項目3)
生ウイルスを含む組成物を得るための精製プロセスであって、
該生ウイルスの鋳型配列を含むプラスミドDNAを1つまたは複数の細菌細胞に導入し、それにより、該プラスミドDNAで形質転換された1つまたは複数の細菌細胞を生成するステップと、
該1つまたは複数の形質転換された細菌細胞の固相培養物を成長させ、それにより、1つまたは複数の細菌コロニーを生成するステップと、
該1つまたは複数の細菌コロニーの少なくとも1つにおける該ウイルスの該鋳型配列に由来する1つまたは複数の核酸配列の存在を検出するステップと、
該1つまたは複数の核酸配列の存在が検出された該少なくとも1つの細菌コロニーに由来する細菌細胞の培養物を繁殖させるステップ、および
該繁殖した細菌細胞から該ウイルスの該鋳型配列を含む該プラスミドDNAを抽出するステップであって、該繁殖させるステップと該抽出するステップとの間に該細菌細胞を凍結させない、ステップと、
哺乳動物宿主細胞に該プラスミドDNAを感染させるステップと、
該プラスミドDNAを有する該哺乳動物宿主細胞を培養するステップと、
生ウイルスを含む、該哺乳動物宿主細胞、該哺乳動物宿主細胞のデブリ、またはその両方に由来する液体細胞培養培地を得るステップと、
該哺乳動物宿主細胞、該哺乳動物宿主細胞のデブリ、またはその両方に由来する該液体細胞培養培地を、溶液中の遊離核酸は消化することができるが封入されたウイルス核酸を消化することはできないヌクレアーゼ酵素と一緒にインキュベートし、それにより、該生ウイルスを含む水性流体を生成するステップと、
該生ウイルスを含む該水性流体をサイズ分離クロマトグラフィーカラムで分離するステップと、
該サイズ分離カラムからの溶出液の少なくとも1つの画分中の、該生ウイルスにおいて見いだされる1つまたは複数の核酸配列を定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によって測定するステップと、
該生ウイルスにおいて見いだされる該1つまたは複数の核酸配列を含有する、該サイズ分離カラムからの溶出液の少なくとも1つの陽性画分を収集するステップと、
該少なくとも1つの陽性画分をプールするステップと、
プールされた該少なくとも1つの陽性画分を陰イオン交換クロマトグラフィーカラムで分離するステップと、
該生ウイルスを含有する、該陰イオン交換クロマトグラフィーカラムからのフロースルー溶出液の少なくとも1つの陽性画分を収集するステップと
を含む精製プロセス。
(項目4)
前記陰イオン交換クロマトグラフィー分離ステップの後にいかなる別のクロマトグラフィー分離ステップも含有しない、項目1から3までのいずれか一項に記載の精製プロセス。
(項目5)
2つのクロマトグラフィー分離ステップを含有する、項目1から4までのいずれか一項に記載の精製プロセス。
(項目6)
前記フロースルー溶出液中に溶出した前記生ウイルスを透析濾過によって濃縮するステップをさらに含む、項目1から5までのいずれか一項に記載の精製プロセス。
(項目7)
8時間未満で行われる、項目1から6までのいずれか一項に記載の精製プロセス。
(項目8)
前記精製プロセスの精製収率が少なくとも50%であり、該プロセスからの生ウイルスの収率が少なくとも5×1011pfuであり、前記フロースルー溶出液中に溶出した前記生ウイルスの感染力が少なくとも1×1012組織培養感染量(TCID)50である、またはこれらの組合せである、項目1から5までのいずれか一項に記載の精製プロセス。
(項目9)
前記生ウイルスを含む前記水性流体が、該ウイルスに感染した宿主細胞を1ラウンドまたは複数ラウンドの細胞培養で培養するステップを含むプロセスによって得られる液体細胞培養培地である、項目1から2までまたは項目4から8までのいずれか一項に記載の精製プロセス。
(項目10)
前記液体細胞培養培地が、培養後に、前記宿主細胞、該宿主細胞のデブリ、またはその両方から該液体細胞培養培地を分離するステップをさらに含む前記プロセスによって得られる、項目9に記載の精製プロセス。
(項目11)
前記液体細胞培養培地が、溶液中の遊離核酸は消化することができるが、封入されたウイルス核酸を消化することはできないヌクレアーゼ酵素と一緒に該液体細胞培養培地をインキュベートするステップをさらに含む前記プロセスによって得られる、項目9または10に記載の精製プロセス。
(項目12)
前記生ウイルスが、
該生ウイルスの鋳型配列を含むプラスミドDNAを1つまたは複数の細菌細胞に導入し、それにより、該プラスミドDNAで形質転換された該1つまたは複数の細菌細胞を生成するステップと、
該1つまたは複数の形質転換された細菌細胞の固相培養物を成長させ、それにより、1つまたは複数の細菌コロニーを生成するステップと、
該1つまたは複数の細菌コロニーの少なくとも1つにおける該ウイルスの該鋳型配列に由来する1つまたは複数の核酸配列の存在を検出するステップと、
該1つまたは複数の核酸配列の存在が検出された該少なくとも1つの細菌コロニーに由来する細菌細胞の培養物を繁殖させるステップと、
該繁殖した細菌細胞から該ウイルスの該鋳型配列を含む該プラスミドDNAを抽出するステップであって、該繁殖させるステップと該抽出するステップとの間に該細菌細胞を凍結させない、ステップと
を含むプロセスによって得られる、項目9から11までのいずれか一項に記載の精製プロセス。
(項目13)
前記ウイルスに感染した前記宿主細胞が、
該ウイルスの鋳型配列を含むプラスミドDNAを1つまたは複数の細菌細胞に導入し、それにより、該プラスミドDNAで形質転換された該1つまたは複数の細菌細胞を生成するステップと、
該1つまたは複数の形質転換された細菌細胞の固相培養物を成長させ、それにより、1つまたは複数の細菌コロニーを生成するステップと、
該1つまたは複数の細菌コロニーの少なくとも1つにおける該ウイルスの該鋳型配列に由来する1つまたは複数の核酸配列の存在を検出するステップと、
1つまたは複数の核酸配列の存在が検出された該少なくとも1つの細菌コロニーに由来する細菌細胞の培養物を繁殖させるステップと、
該繁殖した細菌細胞から該ウイルスの該鋳型配列を含む該プラスミドDNAを抽出するステップであって、該繁殖させるステップと該抽出するステップとの間に該細菌細胞を凍結させない、ステップと、
該鋳型配列のin vitro翻訳によって該ウイルスの裸のRNAを生成するステップと、
該ウイルスの該裸のRNAを宿主細胞に導入し、それにより、該ウイルスに感染した宿主細胞を生成するステップと
を含むプロセスによって得られる、項目9から11までのいずれか一項に記載の精製プロセス。
(項目14)
前記プラスミドが、E.coli複製開始点を含む細菌プラスミドであり、前記1つまたは複数の細菌細胞が、E.coli細胞である、項目3、12または13に記載の精製プロセス。
(項目15)
前記宿主細胞が、哺乳動物宿主細胞である、項目9から14までのいずれか一項に記載の精製プロセス。
(項目16)
前記哺乳動物宿主細胞が、Vero細胞である、項目3または13に記載の精製プロセス。
(項目17)
前記ウイルスが、RNAウイルスまたは一本鎖DNAウイルスである、項目1から16までのいずれか一項に記載のプロセス。
(項目18)
前記RNAウイルスが、天然に存在しない生ポリオウイルスである、項目17に記載のプロセス。
(項目19)
前記天然に存在しない生ポリオウイルスが、腫瘍溶解性ポリオウイルスまたはSabinポリオウイルスである、項目18に記載のプロセス。
(項目20)
前記天然に存在しない生ポリオウイルスが、PVS−RIPOである、項目18に記載のプロセス。
(項目21)
ウイルス鋳型核酸分子を含むプラスミドを生成する方法であって、
該ウイルス鋳型核酸分子を含むプラスミドDNAを1つまたは複数の宿主細胞に導入し、それにより、該プラスミドDNAで形質転換された該1つまたは複数の宿主細胞を生成するステップと、
該1つまたは複数の形質転換された細胞の固相培養物を成長させ、それにより、1つまたは複数のコロニーを生成するステップと、
該1つまたは複数のコロニーの少なくとも1つにおける該ウイルス鋳型核酸分子に由来する1つまたは複数の核酸配列の存在を検出するステップと、
該ウイルス鋳型核酸分子に由来する1つまたは複数の核酸配列の存在が検出された少なくとも1つのコロニーからの細胞の培養物を繁殖させるステップと、
該繁殖した細胞から該ウイルス鋳型核酸分子を含む該プラスミドDNAを抽出するステップであって、該繁殖させるステップと該抽出するステップとの間に、該形質転換された細胞を凍結させない、ステップと
を含む方法。
(項目22)
前記ウイルス鋳型核酸分子が、PVS−RIPO、Sabinポリオウイルス、またはネイティブなポリオウイルスをコードする、項目21に記載の方法。
(項目23)
項目1から22までに記載の方法のいずれかを使用して生成された組成物。
(項目24)
ウイルス鋳型プラスミドを含む組成物であって、25%未満の、トランスポゾン挿入事象を伴うプラスミド、25%未満の、二量体化したプラスミド、25%未満の、ウイルス鋳型配列を伴わない空のプラスミド、またはこれらの組合せを含む組成物。
(項目25)
項目23または24に記載の組成物を含むキット。
【0019】
本開示の前述および他の目的および特徴は、付属図を参照して進められる以下の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A図1Aは、組換え腫瘍溶解ポリオウイルスPVS−RIPOの鋳型プラスミドDNAによって形質転換した凍結E.coliストックから成長させたE.coliの液体培養物から単離したpUC19ベースのE.coliプラスミドベクター構築物の電気泳動による分離(エチジウムブロミド染色アガロースゲル)結果のデジタル画像を示す。略図は、培養物から単離した正確なベクター配列と不正確なベクター配列を説明する(1−PVS−RIPO配列にトランスポゾン挿入を有するベクター;2−正確なベクター配列((「PVSRIPO_kan」);3−ウイルス鋳型配列を有しないpUC19二量体;4−ウイルス鋳型配列を有しない「空の」pUC19ベクター)。
【0021】
図1B図1Bは、図1Aのゲルの拡大版を示すデジタル画像であり、PVS−RIPO受託バンク対照ロットL0305006(左側のレーン2〜4)における正確なベクター配列と比較した、組込まれたトランスポゾンIS10Rを含有するPVS−RIPOプラスミド生産ロットL0311005(右側のレーン6〜8)のアガロースゲル分析である。レーン7(試験)からレーン3(対照)ではトランスポゾン組込みにより中央のバンドサイズがシフトすることに注目すべきであり、同様に、レーン4と比較してレーン8において線状化プラスミドの分子量が増加したことも注目すべきである。レーン1、5、および9は、1KbプラスDNA分子量マーカー(Invitrogen Inc.)であり、上のマーカーバンドのサイズはおよそ12Kbpである。レーン2および6は、切断されていない超らせん型および開環型PVS−RIPOであり、レーン3および7は、Mun I切断プラスミドであり、レーン4および8は、Sal I切断線状化プラスミドである。
【0022】
図2図2は、ウイルス鋳型プラスミド(例えばPVS−RIPO)を生産するための開示の改善されたプロセス(左)と、これまで使用されている手順(右)とを比較する図を示す。
【0023】
図3図3は、PVS−RIPOの鋳型プラスミドDNAを生産するための改善されたプロセスの略図を示す。
【0024】
図4図4は、開示の改善されたプロセスによって生産されたPVS−RIPOの鋳型プラスミドDNAの2つのロット(ロット1およびロット2)の寒天電気泳動による分離を示すデジタル画像である。参照物質は、ACBロットL0305006のプラスミドDNAである。2つの試験試料は、プラスミド不安定性を示さなかったPVSRIPO開発ロットL0401014の2つの異なるフラスコである。
【0025】
図5図5は、ウイルスを含有する宿主細胞培養培地からのウイルス(例えば、PVS−RIPO)の改善された精製プロセスの略図である。
【0026】
図6図6は、Vero細胞培養培地からのPVS−RIPOウイルスの改善された精製プロセスに使用されるサイズ分離クロマトグラフィーを示す。グラフは、254nmでの吸光度を測定することによるSepharose 6FFクロマトグラフィー画分における核酸の連続的な光学的検出(上の線)と、RT−qPCRによるPVS−RIPO配列の検出(下の線)の比較を説明する。表は、クロマトグラフィー画分において検出されたPVS−RIPOの量を示す。
【0027】
図7図7は、PVSRIPO最終バイアル充填製品ロットL0904010の生産の概要を提供するフローチャートである。
【0028】
図8図8は、PVSRIPO(PVSRIPO−kan/pUC19)プラスミドDNAの地図である。
【0029】
図9図9は、PVSRIPOプラスミドDNAロットL0401014の生産を示すプロセスフローチャートである。
【0030】
図10図10は、E.coli DH5αマスターセルバンクロットL0301014の分析証明書である。
【0031】
図11図11は、E.coli DH5αワーキングセルバンクロットL0303011の分析証明書である。
【0032】
図12図12は、PVSRIPOプラスミドDNAロットL0401014の分析証明書である。
【0033】
図13図13は、PVSRIPO初回ウイルスシードロットL0402026(P0)製造の要約を示すフローチャートである。
【0034】
図14図14は、Vero MCBロット2003−0049の分析証明書である。
【0035】
図15図15は、Veroワーキングセルバンク、ロット217002−2の分析証明書である。
【0036】
図16図16は、PVSRIPOマスターウイルスシードロットL0403006(P1)のウイルス製造プロセスのフローチャートである。
【0037】
図17図17は、PVSRIPOマスターウイルスシードロットL0403006の分析証明書である。
【0038】
図18A図18A〜18Bは、細胞増大ロットL0903010、感染細胞溶解物ロットL0904008、およびPVSRIPO精製滅菌バルクロットL0904009(P2)の精製のプロセスフローチャートである。
図18B図18A〜18Bは、細胞増大ロットL0903010、感染細胞溶解物ロットL0904008、およびPVSRIPO精製滅菌バルクロットL0904009(P2)の精製のプロセスフローチャートである。
【0039】
図19図19は、PVSRIPO採取プールロットL0904008の分析証明書である。
【0040】
図20図20は、PVSRIPO精製滅菌バルクロットL0904009の分析証明書である。
【0041】
図21図21は、PVSRIPO最終バイアル充填製品ロットL0904010の分析証明書である。
【0042】
図22図22は、PVSRIPO毒性学ロットL0603006の分析証明書である。
【0043】
図23図23は、製造されたPVSRIPOのロットの履歴である。
【0044】
図24図24は、最終バイアル充填製品ロットL1402001の生産プロセスの要約を示すフローチャートである。
【0045】
図25A図25A〜25Bは、細胞増大物ロットL1310003、感染細胞溶解物ロットL1311003、およびPVSRIPO精製滅菌バルクロットL1405001の精製を示すプロセスフローチャートである。
図25B図25A〜25Bは、細胞増大物ロットL1310003、感染細胞溶解物ロットL1311003、およびPVSRIPO精製滅菌バルクロットL1405001の精製を示すプロセスフローチャートである。
【0046】
図26図26は、PVSRIPO採取プールロットL1311003の分析証明書である。
【0047】
図27図27は、PVSRIPO精製滅菌バルクロットL1405001の分析証明書である。
【0048】
図28図28は、PVSRIPO最終バイアル充填製品ロットL1402001の分析証明書である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
配列表
核酸配列およびアミノ酸配列は、37 C.F.R.1.822において定義されている通り、ヌクレオチド塩基については標準の文字略語、およびアミノ酸については3文字コードを使用して示されている。各核酸配列の一方の鎖のみが示されているが、示されている鎖への言及のいずれにも相補鎖が含まれると理解されたい。2016年6月10日に作成され、これにより提出される配列表(3.08kb)は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
配列番号1〜13は、リアルタイムRT−PCRアッセイにおいて使用される核酸プライマー配列およびプローブ配列である。
【0051】
特に断りのない限り、技術用語は、従来の使用に従って使用されている。分子生物学における一般的な用語の定義は、Benjamin Lewin、Genes VII、Oxford University Pressにより出版、1999年;Kendrewら(編)、The Encyclopedia of Molecular Biology、Blackwell Science Ltd.により出版、1994年;およびRobert A. Meyers(編)、Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference、VCH Publishers, Inc.により出版、1995年;ならびに他の同様の参考文献において見いだすことができる。
【0052】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「この(the)」は、文脈によりそうでないことが明白に示されない限り、単数ならびに複数の両方を指す。本明細書で使用される場合、「含む(comprises)」という用語は、「含む(includes)」を意味する。したがって、「核酸分子を含む(comprising a nucleic acid molecule)」とは、他の要素を排除することなく、「核酸分子を含む(including a nucleic acid molecule)」を意味する。核酸に関して示されている任意のかつ全ての塩基サイズは、別段の指定のない限り、おおよそのものであり、説明のために提供されるものであることもさらに理解されたい。本明細書に記載のものと同様または同等である多くの方法および材料を使用することができるが、特定の適切な方法および材料が下に記載されている。矛盾する場合は、用語の説明を含めた本明細書により支配される。さらに、材料、方法および実施例は単に例示的なものであり、それに限定されるものではない。特許出願および特許を含めた全ての参考文献、および列挙されているGenBank(登録商標)受託番号(2016年6月10日時点)を伴う配列は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0053】
本開示の種々の実施形態の精査を容易にするために、以下の特定の用語の説明を提供する:
【0054】
アジュバント:免疫原性因子(例えば、開示されている方法を使用して精製したウイルス)と組み合わせて使用した場合に、結果として生じる免疫応答を強化するまたは他のように変化させるまたは改変する化合物、組成物、または物質。一部の実施例では、アジュバントにより、被験体において免疫原性因子によって誘導される抗体の力価が増加する。別の実施例では、抗原性因子が多価抗原性因子である場合、アジュバントにより、被験体において誘導される抗体が特異的に結合する特定のエピトープの配列が変更される。
【0055】
例示的なアジュバントとしては、これだけに限定されないが、フロイント不完全アジュバント(IFA)、フロイント完全アジュバント、B30−MDP、LA−15−PH、モンタニド、サポニン、水酸化アルミニウム(Amphogel、Wyeth Laboratories、Madison、NJ)等のアルミニウム塩、alum、脂質、キーホールリンペットタンパク質、ヘモシアニン、MF59マイクロエマルション、マイコバクテリア抗原、ビタミンE、非イオン性ブロックポリマー、ムラミルジペプチド、ポリアニオン、両親媒性物質、ISCOM(免疫刺激複合体、例えば、欧州特許EP109942に開示されているもの)、植物油、Carbopol、酸化アルミニウム、油乳剤(例えば、Bayol FまたはMarcol 52)、E.coli易熱性毒素(LT)、コレラ毒素(CT)、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0056】
一実施例では、アジュバントは、免疫活性化、例えば、T細胞、B細胞、単球、樹状細胞、およびナチュラルキラー細胞による自然免疫応答または適応免疫応答を刺激するDNAモチーフを含む。特異的な、免疫活性化を刺激するDNAモチーフの非限定的な例として、米国特許第6,194,388号;同第6,207,646号;同第6,214,806号;同第6,218,371号;同第6,239,116号;同第6,339,068号;同第6,406,705号;および同第6,429,199号に記載されているCGオリゴデオキシヌクレオチド、ならびにIL−2または他の免疫調節物質が挙げられる。
【0057】
投与:被験体に、例えば、開示されている方法を使用して精製したウイルス等の因子を任意の有効な経路によって提供するまたは与えること。例示的な投与経路としては、これだけに限定されないが、注射経路(例えば、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、腫瘍内、および静脈内)、経口経路、経皮経路、鼻腔内経路、および吸入経路が挙げられる。
【0058】
弱毒化病原体:疾患を生じさせる能力は低下しているまたは弱まっているが、免疫応答を刺激する能力は天然の病原体と同様である病原体。別の実施例では、病原体は、ある特定の成長条件下で非病原性バリアントを選択することにより弱毒化される(例えば、SabinおよびBoulger. J. Biol. Stand.、1巻:115〜8頁;1973年;Sutterら、2003年、Poliovirus vaccine -- live、651〜705頁、S. A. PlotkinおよびW. A. Orenstein(編)、Vaccines、第4版、W.B. Saunders Company、Philadelphiaを参照されたい)。例示的な弱毒化病原体は、Sabinポリオウイルスである。
【0059】
接触:固体または液体の形態を含めた、直接の物理的結合状態(physical association)に置くこと。接触は、in vitroもしくはex vivoにおいて、例えば、試薬を試料(例えば、ウイルス鋳型プラスミドを発現する細菌細胞を含有するもの)に添加することによって、または、in vivoにおいて、被験体への投与(例えば、開示されている方法を使用して精製したウイルスの投与)によって起こり得る。
【0060】
有効量:有益なまたは所望の結果、例えば、抗がん応答等の防御免疫応答をもたらすために十分な因子(例えば、開示されている方法を使用して精製したウイルス)の量。
【0061】
治療有効量は、処置される被験体および疾患状態、被験体の体重および年齢、疾患状態の重症度、投与の様式等の1つまたは複数に応じて変動し得、当業者が容易に決定することができる。有益な治療効果としては、診断的決定を使用可能にすること;疾患、症状、障害、または病態の好転;疾患、症状、障害または状態の発症の低減または防止;および疾患、症状、障害または病態を大体打ち消すことを挙げることができる。一実施形態では、「有効量」(例えば、開示されている方法を使用して精製したウイルスの)は、腫瘍(例えば、神経膠芽腫)の体積/サイズ、腫瘍の重量、転移の数を低減する、転移の体積/サイズ、転移の重量、またはこれらの組合せを、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%低減する(治療剤を投与しない場合と比較して)ために十分な量である。一実施形態では、「有効量」(例えば、開示されている方法を使用して精製したウイルスの)は、in vivoにおける免疫応答を増加させる、例えば、免疫原に特異的な抗体の産生を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、または少なくとも600%増加させる(治療剤を投与しない場合と比較して)ために十分な量である。
【0062】
宿主細胞:ベクターを増やし、その核酸を発現させることができる細胞。細胞は、原核細胞であっても真核細胞であってもよい。この用語は、対象宿主細胞の任意の後代も包含する。したがって、宿主細胞は、ウイルス鋳型プラスミド核酸分子等の、細胞に導入されている核酸分子を含むという点で、トランスジェニックであり得る。一実施例では、宿主細胞は、ウイルス(例えば、PVS−RIPO)が増殖する細胞(例えば、哺乳動物細胞)である。宿主細胞におけるウイルスの増殖を、ウイルス材料の作製のため(例えば、PVS−RIPOを作製するためにVero細胞が使用される)、または、一部の場合では、タンパク質の発現のために使用することができる。例えば、組換えバキュロウイルスを、昆虫細胞における組換えタンパク質の発現のために使用することができる(「バキュロウイルス発現系」)。ウイルス増殖は、in vitroにおいて、例えば細胞培養中で、または、ウイルス宿主細胞が生物体の一部である場合にはin vivoにおいて起こり得る。
【0063】
免疫応答:被験体における、B細胞、T細胞、マクロファージ、単球、または多形核細胞等の免疫系の細胞の、免疫原性因子(例えば、開示されている方法を使用して精製したウイルス)に対する応答。免疫応答は、インターフェロンまたはサイトカインを分泌する上皮細胞等の、宿主防衛応答に関与する身体の任意の細胞を含み得る。免疫応答としては、これだけに限定されないが、自然免疫応答または炎症が挙げられる。
【0064】
応答は、特定の抗原に特異的(「抗原特異的応答」)であり得る。特定の実施例では、免疫応答は、CD4+応答またはCD8+応答等の、T細胞応答である。別の実施例では、応答は、B細胞応答であり、免疫原性因子に対する特異的抗体の産生をもたらす。
【0065】
一部の実施例では、そのような免疫応答は、被験体を免疫原性因子または免疫原性因子の供給源からの保護を提供する。例えば、応答は、ヒトまたは動物被験体等の被験体を病原体による感染から保護する、または病原体による感染の進行に干渉することができる。免疫応答は、能動的で被験体の免疫系の刺激を伴い得、または受動的に獲得された免疫によって生じる応答であり得る。
【0066】
増加または低減:それぞれ、対照値(例えば、治療剤なしを表す値)からの、量の統計的に有意な正または負の変化。増加は、対照値と比較して少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%または少なくとも500%の増加等の、正の変化である。低減は、対照値と比較して少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%の低減等の、負の変化である。一部の実施例では、低減は、100%未満、例えば、90%以下、95%以下、または99%以下の低減である。
【0067】
単離された:「単離された」生物学的構成成分(例えば、開示されている方法を使用して精製したウイルス)は、構成成分が存在する細胞または培地中の他の生物学的構成成分、例えば、他の核酸分子およびタンパク質(例えば、宿主細胞染色体および染色体外DNAおよびRNA、ならびにタンパク質)から実質的に分離された、それらとは別に作製された、またはそれらから離して精製されている。開示されている方法を使用して精製した単離されたウイルス、または開示されている方法を使用して増大させたウイルス鋳型プラスミドは、一部の実施例では、例えば、残留宿主細胞(HC)DNAによって測定して、少なくとも50%純粋、例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.9999%、または少なくとも100%純粋である。一部の実施例では、開示されている方法を使用して精製した単離されたウイルス、または開示されている方法を使用して増大させたウイルス鋳型プラスミドは、例えば、総PFUの増加が望まれる場合に、残留HCタンパク質(HCP)によって測定して、より低い純度を有し、例えば、少なくとも3%純粋である、少なくとも4%純粋である、または少なくとも5%純粋である(例えば、3〜4%純粋)である。約3%のタンパク質純度であっても、HCPのレベルは治療用製品に対して許容される限度内に入る。一部の実施例では、開示されている方法を使用して精製した単離されたウイルス、または開示されている方法を使用して増大させたウイルス鋳型プラスミドは、残留HCPによって測定して、少なくとも50%純粋、例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.9999%純粋である。
【0068】
薬学的に許容されるキャリア:本発明において有用な薬学的に許容されるキャリアは、従来のものである。Remington's Pharmaceutical Sciences、E. W. Martin、Mack Publishing Co.、Easton、PA、第15版(1975年)には、開示されている方法を使用して精製したウイルスの薬学的送達に適した組成物および製剤が記載されている。
【0069】
一般に、キャリアの性質は、使用される特定の投与形式に左右される。例えば、非経口用製剤は、通常、例えば、水、生理的食塩水、平衡塩類溶液、水性デキストロース、グリセロール等の、薬学的にかつ生理的に許容される流体をビヒクルとして含む注射用流体を含む。生物学的に中性のキャリアに加えて、投与される医薬組成物は、微量の無毒性の補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、防腐剤、およびpH緩衝剤等、例えば、酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレートを含有してよい。
【0070】
ポリオウイルス(PV):灰白髄炎(ポリオ)の原因物質である、Picornaviridae科のエンテロウイルス。ポリオウイルスには3種の血清型がある。例示的なポリオ配列は、Toyodaら、J. Mol. Biol.、174巻:561〜85頁、1984年に提示されている。
【0071】
ポリオウイルスの非天然形態としては、組換え腫瘍溶解性ポリオウイルスPVS−RIPOおよび弱毒化Sabin経口ポリオワクチン(OPV)が挙げられ、また、開示されている方法を使用して生成することができる。PVS−RIPOは、潜在的な抗新生物活性を有する、内部リボソーム侵入部位(IRES)がヒトライノウイルス2型(HRV2)に由来するIRESで置き換えられた経口用ポリオウイルスSabin 1型を含有する、組換え弱毒化生非病原性腫瘍溶解性ウイルスである(例えば、Brownら、Cancer、120巻:3277〜86頁、2014年およびGoetzら、Cytokine Growth Factor Rev.、2010年、21巻(2〜3号):197〜20頁を参照されたい)。OPVは、弱毒化Sabin 1株をその病毒力の強い親(Mahoney血清型)と区別する57カ所のヌクレオチド置換を含み、2カ所のヌクレオチド置換はSabin 2株を弱毒化し、10カ所の置換がSabin 3株の弱毒化に関与する。
【0072】
3種のSabinワクチン全てに共通する主要な弱毒化因子は、当該ウイルスの内部リボソーム侵入部位(IRES)に位置する変異であり、これは、ステムループ構造を変化させ、ポリオウイルスのそのRNA鋳型を宿主細胞内で翻訳する能力を低減する。例示的なSabin配列は、GenBank(登録商標)受託番号E01572.1、E01571.1およびE01570.1、ならびにNomotoら、Proc Natl Acad Sci U S A.、79巻(19号):5793〜5797頁、1982年に提示される。
【0073】
PVの別の形態は、Dr Jonas Salkにより開発された、化学的に不活化されたポリオワクチン(IPV)である。これは、3種のビルレント株、Mahoney(1型ポリオウイルス)、MEF−1(2型ポリオウイルス)、およびSaukett(3型ポリオウイルス)に基づくものである。そのようなPV株は、開示されている方法を使用して生成することができる。
【0074】
精製された:精製されたという用語は、絶対的な純度を必要とするものではなく、相対的な用語として意図されている。したがって、例えば、開示されている方法を使用して生成された精製されたウイルス調製物とは、ウイルスが宿主細胞または宿主細胞抽出物中にある状態よりも富化された、ウイルス調製物である。一実施例では、調製物を、精製されたウイルスが調製物の総核酸含有量の少なくとも50%になるように精製する。他の実施例では、ウイルスを、医薬キャリア、賦形剤、バッファ、吸収促進剤、安定剤、防腐剤、アジュバントまたは他の副成分等の他の製剤成分と混和する前の精製された調製物中に存在する全高分子種の少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またはさらには少なくとも99%になるように精製する。一部の実施例では、精製された調製物は、基本的に均一なものになり、他の高分子種は従来の技法によって検出可能ではない。そのような精製された調製物は、活性薬剤(active agent)と混和またはコンジュゲートした材料等の、活性薬剤と共有結合により結びついた材料を含んでよく、活性薬剤の改変された誘導体または類似体をもたらすまたはコンビナトリアル治療用製剤またはコンジュゲートを生じることが望ましい場合がある。
【0075】
組換え:組換え核酸分子は、天然に存在しない配列を有する、または、そうでなければ分離している2つの配列のセグメントの人工的な組合せによって作出された配列を有するものである。この人工的な組合せは、例えば、化学合成によって、または、単離された核酸のセグメントを、例えばSambrookら(編)、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、1〜3巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989年に記載されているもの等の遺伝子工学の技法により人工的に操作することによって等、常套的な方法を使用して実現することができる。組換えという用語は、単に核酸分子の一部の付加、置換、または欠失によって変更された核酸分子を包含する。同様に、組換えタンパク質とは、組換え核酸分子によりコードされるものである。組換えウイルスとは、遺伝子が、例えば発現のために、例えば組換え操作技法を使用して、天然ではない環境において構築され、かつ/または配置されたものを含む。
【0076】
被験体:脊椎動物、例えば、哺乳動物、例えば、ヒト。哺乳動物としては、これだけに限定されないが、マウス、サル、ヒト、農場動物、競技動物、および愛玩動物が挙げられる。一実施形態では、被験体は、サルまたは他の非ヒト霊長類、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシ等の非ヒト哺乳動物被験体である。一部の実施例では、被験体は、開示されている方法を使用して生成されたポリオウイルスを使用して処置することができる、神経膠芽腫等の腫瘍を有する。一部の実施例では、被験体は、マウス、ウサギ、またはラット等の実験動物/生物体である。
【0077】
形質転換またはトランスフェクト:ウイルスまたはベクターにより宿主細胞に核酸が移行されれば、ウイルスまたはベクターにより宿主細胞が「形質転換」または「形質導入」される。細胞ゲノムへの核酸の組入れによって、またはエピソーム複製によってのいずれかで細胞によりDNAが安定に複製されるようになるときに、細胞に形質導入された核酸により細胞が「形質転換」または「トランスフェクト」される。
【0078】
化学的方法(例えば、カルシウム−リン酸トランスフェクション)、物理的方法(例えば、電気穿孔、マイクロインジェクション、微粒子銃)、融合(例えば、リポソーム)、受容体媒介性エンドサイトーシス(例えば、DNA−タンパク質複合体、ウイルスエンベロープ/カプシド−DNA複合体)、および、組換えウイルス等のウイルスによる生物学的感染によるもの等の、多数のトランスフェクション方法が当業者に公知である(Wolff, J. A.編、Gene Therapeutics、Birkhauser、Boston、USA、1994年)。レトロウイルスによる感染の場合では、感染性レトロウイルス粒子が標的細胞により吸収され、その結果、レトロウイルスのRNAゲノムが逆転写され、得られたプロウイルスが細胞内DNAに組み込まれる。
【0079】
導入遺伝子:ベクターから供給される外因性遺伝子。一実施例では、導入遺伝子は、ポリオ(天然のポリオウイルスまたは天然に存在しないポリオウイルス)等のRNAウイルスのウイルスDNA鋳型配列等のウイルス鋳型配列を含む。
【0080】
処置すること(treating)、処置(treatment)、および治療(therapy):減退、寛解、症状を低減することまたは状態を患者にとってより耐容性のあるものにすること、変性もしくは衰弱の速度を遅くすること、変性の最終点をより消耗性の低いものにすること、被験体の身体的もしくは精神的健康状態を改善すること、または生存の長さを延長すること等の任意の客観的または主観的パラメータを含めた、傷害、病的状態または状態の減弱または好転における任意の成功または成功の兆候。処置は、身体検査、血液検査および他の臨床検査等の結果を含めた客観的または主観的パラメータによって評価することができる。一部の実施例では、開示されている方法を用いた処置により、腫瘍(例えば、脳腫瘍)および/または転移の数、体積、および/または重量の低減がもたらされる。
【0081】
十分な条件下:所望の活性を可能にする任意の環境を記載するために使用される句。一実施例では、所望の活性とは、ウイルス鋳型プラスミドによる宿主細胞の形質転換、またはそのような形質転換された宿主細胞の成長である。一実施例では、所望の活性とは、例えばqPCRを使用した、標的ウイルス核酸分子の検出である。一実施例では、所望の活性とは、例えば、開示されている方法を使用して精製したウイルスを使用した、in vivoにおける腫瘍の処置および/または免疫応答の刺激である。
【0082】
ワクチン:動物またはヒトに、疾患または他の病態に対する能動免疫等の免疫を付与するために投与することができる免疫原性組成物。ワクチンは、予防的にまたは治療的に使用することができる。したがって、ワクチンは、感染の可能性を低減するため、または疾患もしくは状態の症状の重症度を低減するため、または疾患もしくは状態の進行を限定するために使用することができる。一実施例では、ワクチンは、開示されている方法を使用して精製した1つまたは複数のウイルス(例えば、天然のポリオウイルスまたは天然に存在しないポリオウイルス)を含む。
【0083】
ベクター:宿主細胞に導入されると、それにより、形質転換された宿主細胞を生じさせる核酸分子。ベクターは、複製開始点等の、宿主細胞における複製を可能にする核酸配列を含み得る。ベクターは、1つまたは複数の治療用遺伝子または選択マーカー遺伝子および当技術分野で公知の他の遺伝子エレメントも含み得る。ベクターは、細胞に対する形質導入、形質転換または感染をなし、それにより、細胞に、細胞にネイティブな核酸分子またはタンパク質以外の核酸分子またはタンパク質を発現させることができる。ベクターは、任意選択で、細胞への核酸の進入の実現を補助する材料、例えば、ウイルス粒子、リポソーム、タンパク質コーティング等を含む。一実施例では、ベクターは、細菌プラスミド等のプラスミドである。
【0084】
核酸分子含有組成物
本開示は、核酸分子を含有する組成物を作製および精製するための改善されたプロセスまたは方法を提供し、ここでは、核酸分子含有組成物、製剤、材料等を作製する、単離する、精製するまたは得るための方法またはプロセスと称する。一部の実施例は、ネイティブなウイルスまたは組換えウイルスを作製するための核酸DNA鋳型(例えば、ウイルスのプラスミドDNA鋳型)を作製するための改善されたプロセスを提供する。他の実施例は、一般に、核酸分子含有組成物を精製するための改善されたプロセス、および、精製された核酸分子含有組成物を得るための改善されたプロセスを提供する。「核酸分子含有組成物」という用語および関連する用語は、ポリマーヌクレオチドを含有する種々の組成物および分子を包含する。核酸分子含有組成物の例は、DNA、RNA、DNA/RNA二重鎖、ウイルス、プラスミド、ベクターおよび核タンパク質を含有する組成物である。核酸分子含有組成物は、天然に存在する核酸を含有してもよく、改変された(遺伝子改変または選択もしくは化学修飾等の他のプロセスによって)、人工的な、人工的に作り出した、合成の、遺伝子改変された、遺伝子操作された(genetically engineered)、操作された(engineered)、組換えの、組換えによって作製されたまたは他の関連する用語によっても称される、天然に存在しない核酸を含有してもよい。核酸分子含有組成物としては、これだけに限定されないが、ウイルスに基づく核酸組成物、組換えウイルス、RNAに基づく組換えウイルス(例えば、組換えポリオウイルス)、弱毒化ウイルス、ウイルス配列を含有するプラスミド、およびウイルスDNA鋳型が挙げられる。
【0085】
本開示は、天然に存在するウイルスおよび天然に存在しないウイルスを含めたウイルスを作製および精製するための改善されたプロセスを提供する。天然に存在しないウイルスは、天然に存在するウイルスと種々の程度で異なり得る。天然に存在しないウイルスは、例えば、組換え技法によって、人工的に作製された(「操作された」)、天然に存在するウイルスに由来するものであり得、その場合、天然に存在しないウイルスは、「組換え体」と称することができる。天然に存在しないウイルスの1つの例は、病原性が低減するまたは破壊されるように遺伝子操作(genetic manipulation)または選択もしくは化学修飾等の他のプロセスによって改変された病原性ウイルスである。このプロセス、または、それぞれ、得られる改変されたウイルスは、「弱毒化(attenuation)」、「弱毒化された(attenuated)」と称されるまたは他の関連する用語により称することができる。
【0086】
天然に存在しないウイルスとしては、これだけに限定されないが、ウイルスベクター、腫瘍溶解性ウイルスおよびワクチンとして使用される弱毒化または組換えウイルスが挙げられる。腫瘍溶解性ウイルスは、がん細胞に選択的に感染させ、かつ/またはそれを破壊するために使用されるウイルスである。ウイルスベクターは、種々の適用のためにin vivoまたはin vitro(細胞培養物において)のいずれかで遺伝子材料を細胞に送達するために使用されるウイルスである。例えば、ウイルスベクターは、遺伝子改変、遺伝子治療のため、タンパク質を発現させるため、またはウイルスワクチンとして、使用することができる。ウイルスワクチンは、防御免疫応答または治療的免疫応答を誘発する目的で、遺伝子材料を細胞または生物体に送達するために使用される。例えば、弱毒生ウイルスを、同じウイルス(例えば、ポリオウイルス、風疹ウイルス、麻疹ウイルス)の天然に存在する病原性型に対する免疫応答を誘発するためのワクチンとして使用することができる。腫瘍溶解性ウイルス、ウイルスベクターおよびウイルスワクチンという用語は、時には意味が重複するが、それらの全てが、例えば、組換え操作技法を使用した天然に存在するウイルスの遺伝子改変によって人工的に作り出され得る。腫瘍溶解性ウイルスは、これらに限定されないが、エンテロウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、レオウイルス、セネカウイルスまたはワクシニアウイルスに基づくものであり得る。ウイルスベクターとしては、これだけに限定されないが、レンチウイルスベクター等のレトロウイルスベクターおよびモロニーマウス白血病ウイルスに基づくベクター、アデノウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスに基づくベクターが挙げられる。ウイルスワクチンとしては、これだけに限定されないが、インフルエンザワクチン、麻疹ワクチン株、流行性耳下腺炎ワクチン、風疹ワクチン、水痘(鶏痘)ワクチン、天然痘ワクチン、ヒトパピローマウイルスワクチン、HIVおよびHTLVワクチン、出血熱ワクチンまたは任意の生ウイルスワクチン、弱毒化ウイルスワクチンまたは不活化ウイルスワクチンが挙げられる。
【0087】
一実施例では、開示されている方法によって作製および/または精製された天然に存在しないウイルスは、PVS−RIPOにより例示される腫瘍溶解性弱毒化組換えポリオウイルス等の組換えポリオウイルスである。PVS−RIPOは、ポリオウイルスのコグネイト内部リボソーム侵入部位(IRES)をヒトライノウイルス2型(HRV 2)に由来するその対応物と交換して、正常なニューロン細胞では複製しないが、脳腫瘍細胞に対する腫瘍溶解性活性を示すポリオウイルス株をもたらすことによって作り出された、Sabin I型ポリオウイルスの弱毒化形態である。組換え腫瘍溶解性ポリオウイルスPVS−RIPOを腫瘍内投与すると、ポリオウイルスは、CD155(ポリオウイルス受容体、PVRまたはNECL5)を発現する腫瘍細胞に選択的に取り込まれ、そこで複製し、最終的に腫瘍細胞溶解を引き起こす。癌胎児性細胞接着分子および腫瘍抗原であるCD155は、多形神経膠芽腫(GMB)等の、ある特定のがんにおいて異所的に発現する。この組換えウイルスにおける異種HRV2 IRESに起因して、PVS−RIPOは、感染しやすい非ニューロン細胞(例えば、GBM)においてのみ繁殖する。PVS−RIPOおよびその性質および適用は、例えば、Goetzら、Cytokine Growth Factor Rev.、2010年21巻(2〜3号):197〜20頁、Yangら、J. Virol. Methods.、2009年、155巻(1号):44〜54頁、Celloら、J. Med. Virol.、2008年、80巻(2号):352〜9頁、およびDobrikovaら、Molecular Therapy、2008年、16巻(11号):1865〜1872頁に記載されている。
【0088】
一実施例では、開示されている方法によって作製および/または精製された天然に存在しないウイルスは、弱毒化Sabinポリオウイルス(例えば、適切な変異を伴う1型、2型および/または3型ポリオウイルス)である。一実施例では、開示されている方法によって作製および/または精製されたウイルスは、開示されている方法を使用して産生した後に化学的に不活化することができる(例えば、ホルマリンを用いて)、不活化ポリオワクチン(例えば、1型、2型および/または3型ポリオウイルス)に使用されるものである。
【0089】
改善されたウイルス精製方法と先行方法の比較
生PVS−RIPOを作製および精製するための先行方法は、例えば、Ouelletteら、BioProcessing J.、2005年、4巻(2号):31〜38頁(「Oueletteら」)に記載されている。Oueletteらに記載されているプロセスは、PVS−RIPOプラスミドストックで形質転換した細菌細胞由来のPVS−RIPOプラスミドDNAの調製、その後の制限エンドヌクレアーゼによるプラスミドDNAの線状化、T7 RNAポリメラーゼを使用したウイルスRNAのin vitroにおける合成、および、Vero細胞培養物においてPVS−RIPOウイルスを産生させるために使用するウイルスシードストックを生成するためのウイルスRNAのVero細胞への電気穿孔を伴った。Ouelletteらに記載されている精製プロセスでは、PVS−RIPOウイルスが、Vero細胞培養上清から単離され、Benzonase(登録商標)酵素によって処理され、一連の4つのカラムクロマトグラフィー分離ステップに供された。第1のステップは、Sepharose 4FFを使用したサイズ排除クロマトグラフィーであり、カラム溶出液が280nmにおけるUV吸光度および伝導率についてモニタリングされた。第2のステップは、Super Q 650M樹脂を使用した陰イオン交換カラムクロマトグラフィーであり、これは、ウイルス非結合性(すなわち、ウイルスはフロースルー中に収集された)であった。第3のステップは、ウイルス結合性CDM樹脂を使用した陰イオン交換カラムクロマトグラフィーであった。第2のステップおよび第3のステップはタンデムに実施され、CDMカラムから溶出した画分がPVS−RIPOの存在についてSDS−PAGEによって試験され、以下のステップのために、検出されたPVS−RIPOの存在に基づいて選択され、プールされた。第4のステップは、Sephadex G−25樹脂を使用したサイズ排除クロマトグラフィーであり、先のステップと同様に画分が試験され、選択され、プールされた。第4のステップは、さらなるPVS−RIPO精製のため、および、ポリオウイルスは高塩に持続的に曝露されると感染力を失うので、CDMカラムからPVS−RIPOを溶出させた高塩の緩衝液を除去するために、含められた。
【0090】
ウイルスを精製するための改善されたプロセスが本明細書に提示される。これらの方法を使用して生成および精製することができる例示的なウイルスとしては、これだけに限定されないが、DNAウイルス(例えば、以下の科、Anelloviridae、Bacillariodnaviridae、Bidnaviridae、Circoviridae、Geminiviridae、Inoviridae、Microviridae、Nanoviridae、ParvoviridaeおよびSpiraviridaeのうちの1つに入るもの等の一本鎖DNAウイルス)、RNAウイルス(例えば、Picrornavirus、例えば、Aphthovirus(例えば、口蹄疫ウイルスおよびウシ鼻炎ウイルス)、Aquamavirus、Avihepatovirus、Cardiovirus、Cosavirus、Dicipivirus、Enterovirus(例えば、エンテロウイルスA〜JまたはライノウイルスA〜Cのいずれか)、Erbovirus、Hepatovirus(例えば、A型肝炎)、Kobuvirus、Megrivirus、Parechovirus(例えば、ヒトパレコウイルスまたはLjunganウイルス)、Piscevirus、Salivirus、Sapelovirus、Senecavirus、Teschovirus、またはTremovirus;Rhabdovirus(例えば、狂犬病);Paramyxovirus(例えば、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、およびパラインフルエンザウイルス);Flavivirus(例えば、デングウイルス、ジカウイルス、ウエストナイルウイルス、C型肝炎ウイルス、および日本脳炎ウイルス)、およびFiloviridae(例えば、エボラ))、またはHIVもしくはHTLV等のレトロウイルスが挙げられる。一実施例では、これらの方法を使用して生成および精製されるウイルスは、C型肝炎、E型肝炎、ライノウイルス、またはHIV等のIV群またはVI群ウイルスである。
【0091】
一実施例では、これらの方法を使用して生成および精製されるウイルスは、天然に存在するポリオウイルスまたは天然に存在しないポリオウイルス(例えば、PVS−RIPOにより例示される腫瘍溶解性弱毒化組換えポリオウイルス)である。一実施例では、これらの方法を使用して生成および精製されるウイルスは、SabinポリオウイルスまたはネイティブなSalkウイルス(精製後に化学的に不活化することができるもの)等のポリオウイルスまたはワクチンである。
【0092】
開示されている方法は、ウイルス(例えば、天然に存在しない生ポリオウイルス等の生ウイルス)を含有する水性流体をサイズ分離クロマトグラフィーカラムで分離する、第1のクロマトグラフィー分離ステップと、サイズ分離クロマトグラフィーカラムから溶出した1つまたは複数の画分中のウイルス(例えば、天然に存在しない生ポリオウイルス等の生ウイルス)において見いだされる1つまたは複数の核酸配列を定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によって検出するステップと、1つまたは複数のウイルス核酸配列が検出される1つまたは複数の画分の画分をプールし、それにより、プールした画分を生成するステップとを含む。使用することができるqPCRおよび他の迅速な検出方法は、本明細書で考察されており、当技術分野で公知の方法を含む。
【0093】
開示されている方法は、第2の、陰イオン交換クロマトグラフィー分離ステップを含む。第2のクロマトグラフィー分離ステップは、第1のクロマトグラフィーステップでプールされた陽性画分をさらに精製するものである。したがって、第1のクロマトグラフィーステップの後に得られるプールした画分を陰イオン交換クロマトグラフィーカラムに適用することができる。陰イオン交換クロマトグラフィーカラムに使用される樹脂は、ウイルスとは有意に結合しない、つまり、ウイルス(例えば、天然に存在しない生ポリオウイルス等の生ウイルス)は陰イオン交換クロマトグラフィーカラムからフロースルー溶出液中に溶出するが、夾雑物は樹脂に結合する。このステップでは、ウイルス非結合性樹脂およびフロースルー溶出を使用することにより、ウイルス結合性樹脂とは対照的に、ウイルス結合性樹脂からウイルスを溶出するために必要になる高塩の溶出緩衝液へのウイルスの曝露が回避される。高塩の緩衝液への曝露によりウイルス不活化という結果をもたらし得るが、高塩の緩衝液への曝露を回避することにより、生ウイルスの収率が改善される。一実施例では、開示されている改善された精製プロセスは、陰イオン交換クロマトグラフィー分離ステップの後にいかなる追加的なクロマトグラフィー分離ステップも含有しない。したがって、特定の実施例では、改善された精製プロセスは、クロマトグラフィー分離ステップを2つ(サイズ分離およびイオン交換、ウイルスはフロースルー中に溶出する)のみ含有する(例えば、それらからなる)。一部の実施例では、改善された精製プロセスは、ウイルス結合性CDM樹脂を利用するステップを含まない。改善された精製プロセスは、第2のクロマトグラフィー分離ステップ後に、例えば透析濾過による濃縮ステップをさらに含み得る。これにより、ウイルス(例えば、天然に存在しない生ポリオウイルス等の生ウイルス)のフロースルー溶出液中への溶出がもたらされる。
【0094】
本明細書に記載されている改善された精製プロセスでは、サイズ分離カラムに適用されるウイルス(例えば、天然に存在しない生ポリオウイルス等の生ウイルス)を含有する水性流体は、ウイルス(例えば、天然に存在しないポリオウイルス)に感染したウイルス宿主細胞を1ラウンドまたは複数ラウンドの細胞培養において培養するステップによって得られる液体細胞培養培地であってよい。精製されるウイルスに感染したウイルス宿主細胞は、本明細書に記載されているプロセスによって得ることができる。ウイルスに感染したウイルス宿主細胞の培養後、かつ第1のクロマトグラフィー分離ステップの前に、ウイルスに感染したウイルス宿主細胞を含有する細胞培養培地を、ウイルス宿主細胞、ウイルス宿主細胞のデブリ、またはその両方から、例えば遠心分離または濾過によって分離することができる。液体細胞培養培地を、Benzonase(登録商標)酵素等の、溶液中の遊離核酸は消化することができるが封入されたウイルス核酸を消化することはできないヌクレアーゼ酵素を用いて処理することもできる。1つまたは複数のDNアーゼ、1つまたは複数のRNアーゼ、またはDNアーゼとRNアーゼの混合物等の他のヌクレアーゼを使用することができる。ヌクレアーゼ処理により、安全性を改善するため、採取粘度を低減させるため、および本明細書で考察されている検出方法である、精製プロセスにおいて使用されるウイルス検出方法のシグナル対ノイズ比を改善するために、遊離核酸を除去するまたは実質的に低減させる。
【0095】
本明細書に記載されている改善された精製プロセスは、Oueletteらに記載されているプロセス等の、精製されたウイルス(例えば、天然に存在しないポリオウイルス)を大規模に製造するために使用される以前に記載された精製プロセスと比較して、含まれるステップ、および作製されるウイルスに多数の差異がある。例えば、本明細書に記載されている改善された精製プロセスでは、改善されたウイルス収率、実行間の高い再現性、実行時間の低減(すなわち、改善されたプロセスは以前から公知のものよりも速い)、および産物の収率と純度の間の望ましい折り合いを選択する能力(すなわち、より高いプロセス柔軟性)のうちの1つまたは複数が提供される。改善されたプロセスの実行時間の低減は、少なくとも一部において、改善されたプロセスに含有される精製ステップが少ないという事実に起因する。プロセスのステップの数が低減されると、材料費の低減にもつながり、ウイルス分解の機会が低減される。第1のクロマトグラフィーステップ後に収集されるカラム画分のサイズは、ウイルス産物の存在についての迅速かつ特異的な画分試験(例えば、qPCRによる)を伴って細かく調整する(より大きくするまたはより小さくする)ことができるので、画分サイズを変動させ、いずれの画分を第1のクロマトグラフィーステップ後の精製のためにプールするかを選択することにより、改善されたプロセスを、より純度の高いウイルス産物が生成されるように、より純度の低いウイルス産物が改善された収率で生成されるように、または収率と純度の所望の組合せが容易に選択されるように調整することができる。
【0096】
ウイルス作製の新しい方法と旧式の方法の間の1つの差異は、ステップの数、すなわち、クロマトグラフィー分離ステップの数の低減を含めた、ステップの数の低減である。単に例示のために、表1は、改善された精製プロセスの例示的な実施形態とOueletteらに記載されているプロセスの例示的な実施形態を並べた比較を示す。方法のプロセスのステップは表1の上から下に順番に列挙されている。Oueletteらのものは、4つのクロマトグラフィー精製ステップを含有する。対照的に、表1に例示されている改善された精製プロセスでは、2つのクロマトグラフィー分離ステップ、すなわち、最初のサイズ分離クロマトグラフィーステップ、その後、最終的なクロマトグラフィーステップとしてウイルス非結合性樹脂でのイオン交換クロマトグラフィーのみが使用される。これらのステップの後に濃縮ステップを続けることができる。Oueletteらのものとは対照的に、改善された精製プロセスは、陰イオン交換CDM樹脂クロマトグラフィーステップ(「CDM捕捉」)もSephadex G25樹脂でのサイズ分離クロマトグラフィーも含まない。改善された精製プロセスでは、CDM捕捉ステップを排除することにより、ウイルスがCDM樹脂カラムの溶出のために使用される高塩の緩衝液と接触することがないので、生ウイルスの収率が改善される。CDM樹脂カラムを使用しないことにより、Oueletteらのプロセスで使用する最終的なサイズ分離ステップを排除することも可能となる。なぜなら、この最終的なサイズ分離ステップは前のCDM捕捉ステップの結果もたらされる高塩緩衝液を除去する必要があったからである。CDM捕捉および最終的なサイズ分離クロマトグラフィーステップを省略することにより、今度は、これらのカラムから溶出した画分を試験し、画分を、検出されたウイルスの存在に基づいて選択し、プールする必要性が排除される。したがって、本明細書に記載されている改善された精製プロセスでは、ステップの数が低減し(例えば、クロマトグラフィー分離ステップの数の2分の1の低減)、これにより、より合理化された、かつあまり複雑でないプロセスがもたらされる。ステップの数の低減により、プロセスを実施するために必要な時間の低減ももたらされる。例えば、一部の実施形態では、改善された精製プロセスは、8時間もしくはそれ未満、または8時間未満(例えば、4〜8時間、4〜6時間、6〜8時間または7〜8時間)で実施することができる。
【表1】
【0097】
さらに、開示されている方法は、Thomassenら(Plos One、8巻:83374頁、2013年)の方法とは異なる。例えば、Thomassenらは2つのクロマトグラフィーステップを使用するが、サイズ排除クロマトグラフィーの間にウイルスの正確な位置を決定するためにインプロセスリアルタイム(PAT)分析ステップ(例えば、リアルタイムRT−PCR)は組み入れない。その代わりに、Thomassenらは、ポストホックSDS−PAGEの結果に基づいて、カラムにおける吸光度値がウイルスカプシドタンパク質のみに起因すると仮定する。しかし、本発明者らは、これが必ずしも当てはまらないことを見いだし、(例えば図6を参照されたい)、プールする前に、ウイルスを最も多く含有する画分を同定するためにリアルタイムRT−qPCR等の方法を組み入れる。さらに、Thomassenらは、ウイルスプラスミド鋳型から開始しない。その代わりに、Thomassenらは、ウイルスストックから開始する。これらの差異の結果として、結果生成されるウイルスは、開示されている方法を用いて得られるものほど純粋でない。
【0098】
改善された精製プロセスは、複雑さが低減することにより、大規模製造、例えば、臨床使用のためのPVS−RIPOの生成に適したものになる。「大規模製造プロセス」という用語は、プロセスによって作製される生ウイルス産物の総量(プロセスアウトプット)を指し得る。PVS−RIPO等の生ウイルス産物については、プロセスアウトプットは、一般には、プラーク形成単位(PFU)または組織培養感染量(TCID50)単位で表される。対照的に、不活化ウイルス材料収率のアウトプットは、質量および/またはコピー数として表すことができる。
【0099】
さらに、改善された精製プロセスでは、生ウイルスの変動する不十分な収率をもたらす2つのクロマトグラフィー分離ステップが排除される。これらの2つのクロマトグラフィー分離ステップを排除して、それでもなお、改善された精製プロセスにより実現された、精製された天然に存在しないポリオウイルス産物の純度がOueletteらに記載されているプロセスによって実現される純度と同等であったことは予想外である。従来のクロマトグラフィーによるモニタリング技法、例えば、254nmまたは280nmにおけるUV吸光度をモニタリングすること(例えば、核酸分子を検出するため)では、サイズ分離クロマトグラフィー、その後の、第2の陰イオン交換カラムからのウイルスのフロースルー溶出の後に、追加的なクロマトグラフィー分離ステップを使用することが必要になることが発見された。以前に記載された精製プロセスでは、254nmまたは280nmにおけるUV吸光度をモニタリングすることによって選択されたウイルス陽性サイズ分離カラムクロマトグラフィー画分からは、溶出液の総吸光度に対する所望のウイルスの寄与は比較的小さいことが理由で、高レベルの夾雑DNA、非ウイルスRNA、およびタンパク質を含有する画分が収集された。したがって、以前の方法では、大量の収集された材料が、所望のウイルス核酸分子(例えば、ポリオウイルスのウイルスRNA)には関連しなかった。さらに、以前の方法を使用すると、結果得られる、回収されるウイルス収率(例えば、PFUでの)は高度に変動し、予測不可能なものであった(例えば、数%しか回収できない場合もあり、約50%までの回収率になる場合もある)。この問題は、第1のクロマトグラフィーステップ(サイズ分離)において溶出した画分中のウイルス核酸をリアルタイムqPCR等の迅速かつ特異的な検出手順によって検出する、開示されている方法により解決される。この解決法の前には、クロマトグラフィーカラム画分中のウイルス産物の存在は特異的に決定されておらず、電気泳動、ウイルスプラークアッセイおよび他の特異的なアッセイは、特定の精製ステップ後に得られた産物中のウイルスの存在を検証するために画分をプールした後に完了させなければならなかった。例えば、Oueletteらのプロセス(表1に例示されている)は、ウイルス産物を検出するために2つのSDS−PAGEアッセイステップを含むものであった。Oueletteらで使用されるこれらのアッセイは、プロセスの持続時間を増加させ、また、試験される画分のサイズ(体積)がカラムサイズに対して比較的大きなものであることが理由で、限られた価値の情報に依拠するものであった。対照的に、本明細書に記載のプロセスにおいてクロマトグラフィー画分(例えば、qPCR、例えば、リアルタイムRT−qPCR)を試験するために迅速かつ特異的な検出方法を使用することにより、第1のクロマトグラフィーステップ後に収集されたより小さな体積画分を迅速に試験することが可能になり、また、高コピー数のウイルスを含有する画分の選択が可能になる。リアルタイムqPCR等の迅速かつウイルス特異的な検出技法を使用することにより、いずれのサイズ分離カラム画分が最も高い力価のウイルスを含有するかを迅速に決定し、定量すること、ならびに、そのような画分を、プールおよびその後のウイルス非結合性イオン交換カラムへの適用のために選択することが可能になる。第1のクロマトグラフィーステップ後にその結果得られた、実現された精製の改善により、生ウイルス収率の改善ならびに複雑さおよび費用の低減がもたらされる。
【0100】
精製されたウイルス(例えば、PVS−RIPOにより例示される腫瘍溶解性弱毒化組換えポリオウイルス等の天然に存在しない生ポリオウイルス)を作製するための改善されたプロセスにより、予想外なことに、Ouelletteらに記載されているプロセス等の以前から公知のプロセスと比較して感染性生ウイルスの収率の増加が実現される。精製収率(プロセス収率とも称される)は、最後のプロセスのステップ後に得られた精製されたウイルスからの総プラーク形成単位(pfu)と宿主細胞培養物(例えば、精製されるウイルスの供給源として使用される、Vero細胞等の哺乳動物細胞中のウイルス)から採取されたウイルスの総プラーク形成単位(pfu)の比として算出される。あるいは、精製収率は、コピー数(qPCRによる)またはTCID50に基づく。開示されている方法を使用して実現される精製収率は、一貫して、例えばPVS−RIPOについての理論的な最大値の50%以上、例えば、50%〜60%である。理論的な最大値は、採取物におけるpfu価の100%が最終的な精製された「バルク」原薬において保持される(すなわち、総pfuベースで感染力が失われない)ことである。したがって、改善されたプロセスでは、予想外なことに、およそ50%以上の感染性生ウイルスの精製収率、例えば、少なくとも50%、少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、または少なくとも85%の精製収率、例えば、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、または85%の精製収率、例えば、50%〜60%、50〜80%、50〜83%、50〜85%、60〜83%、60〜85%、70〜83%、または70〜85%の精製収率がもたらされる。対照的に、Ouelletteらに記載されているプロセスによりもたらされる感染性生ウイルスの全収率はたった29%である。20〜30%未満の収率は、一般に、経済的とはみなされず、プロセスをより大きな体積にスケールアップしようとする際に困難が生じる。単純ヘルペスウイルス(HSV)、アデノウイルス(例えば、血清型5)および麻疹ウイルス等のウイルスについて他の公知のウイルスクロマトグラフィー精製プロトコールを使用してもたらされる収率は、一般には50%未満であり、多くの場合、20%未満であり得る。種々の精製プロセスの収率を、同等量のインプット材料ごとに生成される産物の総量を比較することによって比較することもできる。例えば、Oueletteらと同じまたは同等量のインプット材料(例えば、約1×1013PFUから開始する)を使用した本明細書に記載の改善されたプロセスでは、5×1012pfuの範囲の収率を確実に生成することができる。対照的に、Oueletteらに記載されているプロセスでは、およそ1×10〜5×1010pfu(例えば、約3×1010超〜約1.5×1012超のPFUから開始して)の収率しか生成されず、再現性が低い。したがって、本明細書に記載の改善されたプロセスでは、以前から公知のプロセスによって生成される最大で500億pfuの高収量とは対照的に、5兆pfuの生ウイルス産物を確実に生成することができる。
【0101】
Oueletteらに記載されているもの等の以前に記載されたプロセスでは、溶出したカラム画分中のウイルスの「位置」および量が、方法が完了した後まで正確に分からなかったので、純度レベルは所望のものであったにもかかわらず、改善された精製プロセスによって実現された収率は実現可能でなかった。Oueletteらでは、最後の2つのクロマトグラフィーステップ(ウイルス結合性イオン交換およびサイズ分離クロマトグラフィー)の間に溶出した画分中のウイルスを検出するために、時間のかかる検出方法、すなわち、SDS−PAGEが使用された。Oueletteらに記載の方法における第3のクロマトグラフィーステップおよび第4のクロマトグラフィーステップおよび遅い検出の組合せにより、感染性生ウイルスの収率の低減がもたらされることが発見された。クロマトグラフィーステップ(特に、高塩の緩衝液を用いた溶出が必要とされるウイルス結合性イオン交換クロマトグラフィー)およびSDS−PAGE検出手順によって引き起こされる遅延により、ウイルス不活化(感染力の喪失)が引き起こされる可能性がある。改善された精製方法では、第1のクロマトグラフィーステップの間に溶出画分中のウイルスを検出するための迅速かつ特異的な方法を使用して、不活化をもたらす可能性がある、その後の精製ステップを排除すること、および総精製時間を低減することが可能になり、その結果、PVS−RIPOにより例示される腫瘍溶解性弱毒化組換えポリオウイルス等の天然に存在しない感染性生ポリオウイルスの収率の予想外の改善がもたらされる。予想外に改善された精製収率の結果として、本明細書に提示される作製プロセスにより、本明細書に記載のものと同等の10個の10段「セルファクトリー」の製造スケールでおよそ3×1012組織培養感染量(TCID)50のPVS−RIPOを製造することができる。そのような高いアウトプットに起因して、改善された精製プロセスは、PVS−RIPOにより例示される腫瘍溶解性弱毒化組換えポリオウイルス等の天然に存在しない生ポリオウイルスを生成する大規模製造プロセスに適合させるまたは組み入れることができる。
【0102】
一部の実施例では、以前に記載されたプロセスと比較して、改善された精製方法を使用して得られる最終産物の全体的な純度(例えば、残留宿主細胞タンパク質(HCP)の検出およびBenzonase(登録商標)酵素によって測定される)の低下が観察されたが、作製されたウイルス(例えば、天然に存在しない生ポリオウイルス)の、その結果得られた純度の程度は、大規模な臨床的製造に関して許容されるものであった。以前のプロセスに対して5〜10倍の収率の増加が実現され、同時に生じる、残留HCPおよびBenzonase(登録商標)酵素によって測定される全体的な純度の低下は、臨床的製造に関して許容される限度内にとどまることが本明細書に示されている。一部の実施例では、最終産物中のBenzonase(登録商標)酵素の量が、50ng/mL未満(例えば、20ng/mL未満、10ng/mL未満、5ng/mL未満、または1ng/mL未満)であり、最終産物中のHCPの量が、10mg/mL未満(例えば、5mg/mL未満、2mg/mL未満、1mg/mL未満または0.5mg/mL未満)である、またはこれらの組合せである。本明細書における教示に基づいて、第1のクロマトグラフィーステップ後の画分の選択に使用するパラメータを変動させることにより、ウイルス産物の純度の改善を実現することができることが当業者には理解されよう。
【0103】
ウイルス鋳型プラスミドの生成
本開示は、ウイルス鋳型配列を含有するプラスミドDNAを生成するための改善されたプロセスを提供する。新しい方法と旧式の方法の比較が図2に提示されており、新しい方法の詳細が図3に提示されている。ウイルスDNA鋳型プラスミドを生成するための改善されたプロセスにより、ウイルス配列を生成するために使用されるウイルスDNA鋳型が適当なウイルス鋳型配列を含有することを確実なものにする。開示されている方法は、以下により詳細に記載される以下のステップのうちの1つまたは複数を含む:ウイルス鋳型プラスミドを1つまたは複数の宿主細胞(例えば、細菌細胞)に導入するステップ(例えば、形質転換);ウイルス鋳型プラスミドで形質転換された1つまたは複数の宿主細胞の固形培地培養物を成長させるステップ;固形培地培養物上で成長した1つまたは複数のコロニー中の1つまたは複数のウイルス配列の存在を検出するステップ;1つまたは複数のウイルス鋳型配列の存在が検出された1つまたは複数のコロニーの細胞を繁殖させるステップ(例えば、液体培養物中での発酵によって)、および繁殖した宿主細胞からウイルスプラスミドを抽出するステップ。一部の実施例では、繁殖ステップと抽出ステップの間に、宿主細胞(例えば、細菌細胞)または宿主細胞(例えば、細菌細胞)に由来する材料の凍結(例えば、−20℃もしくはそれ未満または−80℃もしくはそれ未満の温度への曝露、またはその温度でのインキュベーション)は意図的に実施しない。繁殖時間も限定することができる。一部の実施例では、開示されているプラスミド調製の方法は、形質転換された宿主細胞を、一般には貯蔵媒体(例えば、DMSO)に添加されたグリセロールまたは他の試薬に曝露させることを含まない。したがって、一部の実施例では、開示されているプラスミド調製の方法は、形質転換された宿主細胞を、一般には貯蔵媒体(例えば、DMSO)に添加されたグリセロールまたは他の試薬を含有する培地中でインキュベートすることを含まず、また、形質転換された宿主細胞を凍結させない。
【0104】
旧式の方法と新しい開示されている方法の比較の概要が図2に提示されている。どちらの方法においても、ウイルス配列および選択マーカー(例えば、カナマイシン耐性)を含有するウイルス鋳型プラスミドを宿主細胞(例えば、E.coli)に形質導入する。形質転換された細胞を、形質転換体の選択を可能にするために、カナマイシン等の選択化合物を含有する適切な成長培地の存在下で成長させる。新しい方法では、この成長は固形培地上でなされるが、以前の方法では、この成長は、液体培地中でなされる。固形培養物上での成長により、所望の、欠陥がないプラスミドが同定された、個々の形質転換されたクローンの選択が可能になる(PAT管理)。新しい方法におけるPAT(Process Analytics Technology)管理ステップにより、製造プロセスの間にリアルタイムにモニタリングすることおよびデータに基づく決定を行うことが可能になる。例えば、PATは、発酵および発酵後の「バルク試料」分析の前に、クローン選択により、プラスミドがインタクトであり、適当なサイズであることを確実にするための、プラスミドの迅速な電気泳動的分析を含み得る。対照的に、旧式の方法では、形質転換された細胞を液体培地中で成長させ、その結果、欠陥があるプラスミドおよび欠陥がないプラスミドの両方が増える。先行方法では、形質転換、液体培養での成長、および選択マーカー(例えば、抗生物質耐性)によるコロニー選択の後に、細胞を高力価まで経過させ、次いで、細胞バンキングを実施する。この段階で、形質転換された細胞を貯蔵媒体(一般には、グリセロールを含有する)に入れて、その後の製造のための凍結細胞バンクを作り出す。非GMPバンクは、一般にはAccession Cell Banks(ACB)とみなされ、その一部を使用して、液体培地発酵によって第1のGMP Master Cell Bank(MCB)を作り出す。細胞バンクは、図2の≠符号によって示される通り、無期限に保管することができる。MCBロットの一部は、一般には、産物発酵プロセスにおいて使用される、液体培地発酵によるWorking Cell Bank(WCB)を生成するために使用される。新しい方法では、固形培地上での成長、および適当なプラスミドを有する検証されたクローンの選択の後、形質転換された細胞を、プラスミドを製造するために、液体成長培地中、最適化された条件下で再増大させる(発酵)。以前の方法では、バンク化細胞(それらのプラスミドが検証されていない)を、プラスミドを製造するために、液体成長培地中、最適化された条件下で増大させる(発酵)。その後、どちらの方法でも、液体培養物をペレット化し、細胞を破壊してプラスミドDNAを放出させる(プラスミド精製)。その後のクロマトグラフィー、濾過、洗浄、緩衝液交換、および濃度ステップを使用して、宿主細胞染色体DNA、内毒素(LPS)、および/または宿主細胞タンパク質の残留濃度が低い精製されたプラスミドDNAを生成することができる。
【0105】
改善されたプロセスは、宿主(例えば、細菌)細胞において増やしたウイルス鋳型プラスミドの遺伝的不安定性に関する問題に対処する。以前の精製方法を使用すると、PVS−RIPOプラスミドをE.coli培養物において増やすときに、PVS−RIPO鋳型配列が不安定であり、細菌トランスポゾン挿入事象を起こしやすい。例えば、大多数のグラム陰性菌に存在する細菌トランスポゾンTN10/ISR10は、自身をウイルス鋳型配列に迅速に挿入し得、その結果、欠陥があるウイルス鋳型がもたらされる。細菌培養物中で繁殖し、凍結した形質転換E.coliストック(例えば、プラスミド精製前に発酵させた、Oueletteらにおいて使用されるウイルスプラスミドストック−Oueletteら、32頁、コラム1を参照)として提供されるPVS−RIPOプラスミド産物は、一般には、空のpUC19ベクター、二量体化pUC19ベクター、またはE.coliトランスポゾンDNA挿入物を含め、かなりの数の不純物を含有する(図1に模式的に例示されている)。
【0106】
ウイルス鋳型配列を含有するプラスミドDNAを生成する先行方法はまた、ウイルス鋳型プラスミドを1つまたは複数の宿主(例えば、細菌)細胞に導入するが、その後、そのような細胞を液体培地中で成長させ、次いで、「バンク化」または凍結させることも含んだ(図2を参照されたい)。さらに、プラスミドがインタクトなままであることを確認するための検証プロセスは実施されなかった。典型的なプラスミド産物は、製造目的の発酵の前に最大3つまたはそれ超の細胞バンキング発酵および凍結手順を受け得る。得られた、ウイルス鋳型を含有するプラスミドDNAのバンクは、分解された(例えば、例えば望ましくないトランスポゾン事象に起因して適当なウイルス鋳型配列を含まなかった)プラスミドの大集団を含有し、したがって、最適ではないことが決定されている。これらのバンクの出発材料から全長クローンを得ることは難しかった。一部の実施例では、以前の精製方法を使用したときに、プラスミド集団の少なくとも70%(例えば、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%またはさらには時には100%)が、適当なウイルス鋳型配列を含まなかった。バンキングステップを回避する(例えば、凍結ステップがない)新しい方法を使用することにより、おそらくトランスポゾン挿入事象がより少ないことに起因して、分解されたプラスミドの集団がより少なくなることが示されている。例えば、開示されている、ウイルス鋳型プラスミドを作製する方法を使用することにより、適当なウイルス鋳型配列を含有するプラスミド集団(またはプラスミド集団の50%未満が不適当なウイルス鋳型配列を含有する(例えば、40%未満、45%未満、30%未満または25%未満)のアガロースゲル電気泳動(AGE)およびRE地図作成によって示される通り、コロニーの少なくとも50%が遺伝的に「安定」である(例えば、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、または少なくとも75%)、ウイルス鋳型配列を含有するプラスミドDNAの集団を生成することができる。
【0107】
本明細書に記載の改善されたプロセスでは、以前の方法に関連する問題が、以下の特徴のうちの1つまたは複数によって対処された。一部の実施例では、改善されたプロセスは、最初のウイルス鋳型プラスミドストック(例えば、PVS−RIPOウイルスDNA鋳型プラスミド)を、形質転換された宿主細胞(例えば、E.coli)を使用する代わりに、単離されたウイルス鋳型プラスミドストック(例えば、PVS−RIPOプラスミドDNA)を含有する組成物として提供し、単離されたウイルス鋳型プラスミドストック(例えば、PVS−RIPOプラスミドDNA)を使用して宿主細胞(例えば、E.coli)の新鮮な形質転換を実施する。一部の実施例では、改善されたプロセスは、形質転換された細胞を、適当なプラスミド配列の存在について試験すること(例えば、アガロースゲル電気泳動およびRE地図作成を使用して)を含む。本明細書に記載されている例示的な方法では、試験は、固形培地で成長させた細菌細胞のコロニーに対して実施されるが、任意の適切な技法を使用して、形質転換された細菌細胞を適当なウイルス鋳型配列の存在について試験し、そのような配列が存在する細胞をさらなる繁殖のために選択することができる。最初のプラスミドストックから形質転換された細胞から成長させた細菌コロニーにおける1つまたは複数のウイルス鋳型配列の検出によって例示される試験ステップまたは選択ステップを含めることによって、改善されたプロセスは、適当なまたは実質的に適当なウイルス鋳型プラスミド配列を含有する細菌細胞がさらなる繁殖のために選択されることを確実にする。一部の実施例では、改善されたプロセスは、繁殖ステップおよび単離ステップを行っている間、または繁殖ステップと単離ステップの間に、形質転換された宿主細胞を凍結させることを含まず、これによっても、細菌細胞に存在するウイルス鋳型配列の遺伝的不安定性のリスクが低減する。改善されたプロセスにおいて、欠陥があるウイルス鋳型配列を含有するプラスミドクローンが増幅するリスクを低減するために、意図的に限定した繁殖時間を使用することもできる。
【0108】
開示されている方法の概要が図3、100に提示されている。ウイルス鋳型配列を含有するプラスミドDNA 110、120は、プラスミドウイルスDNA鋳型、ウイルスDNA鋳型プラスミド、ウイルス鋳型プラスミド、プラスミド、ウイルスDNA鋳型と称すること、および他の関連する用語によって称することもでき、ウイルスDNA配列またはRNA配列を特定する(それと相補的であるまたは一致することを意味する)1つまたは複数のウイルスDNA鋳型配列を含有するプラスミドである。ウイルス鋳型プラスミドは、プラスミドバンク(110)からのプラスミド等の精製されたプラスミドストックの形態で得ることもでき、いくつかの他の形態で得ることもできる。一実施例では、プラスミドは、単離された形態(120)で提供され、これは、細菌細胞に含有された状態ではないことを意味する。ウイルスDNA配列またはRNA配列は、ネイティブなウイルス配列、操作されたもしくは改変されたウイルス配列、または非ウイルス配列、例えば、宿主細胞において発現させる非ウイルスタンパク質をコードする配列を含有し得る。ウイルスDNA鋳型は、ウイルス配列を、in vitroで合成するため(例えば、RNAポリメラーゼを使用して、in vitroにおいてウイルスDNA鋳型配列からウイルスRNA配列を合成することができる)、または、ウイルスDNA鋳型配列を宿主細胞に導入する際にin vivoで合成するために使用される。
【0109】
開示されている方法を用いて、任意のウイルス鋳型プラスミドを精製することができる。一部の実施例では、ウイルス鋳型プラスミドは、ポリオウイルス等のRNAウイルスに対するDNA鋳型(例えば、PVS−RIPO、不活化ポリオウイルス(IPV)、弱毒化ポリオウイルス(すなわち、Sabinワクチン)に対する鋳型)を含む。一実施例では、ウイルス鋳型プラスミドは、ピコルナウイルス(例えば、Aphthoviridae[例えば、口蹄疫ウイルス(FMDV)]、A型肝炎、またはポリオ)、Cardioviridae;Enteroviridae(例えば、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、エンテロウイルス、およびポリオウイルス);Rhinoviridae(ライノウイルス、例えばライノウイルスA、BまたはC));トガウイルス(例えば、風疹;アルファウイルス(例えば、西部ウマ脳炎ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、およびベネズエラウマ脳炎ウイルス));Flavivirus(例えば、デングウイルス、ジカウイルス、ウエストナイルウイルス、C型肝炎ウイルス、および日本脳炎ウイルス);ならびにCoronavirus(例えば、SARSコロナウイルス、例えば、Urbani株)等のプラス鎖RNAウイルスに対するDNA鋳型を含む。一実施例では、ウイルス鋳型プラスミドは、Orthomyxyovirus(例えば、A型インフルエンザまたはB型インフルエンザ等のインフルエンザ)、Rhabdovirus(例えば、狂犬病)、Filoviridae(例えば、エボラ)、およびParamyxovirus(例えば、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、およびパラインフルエンザウイルス)等のマイナス鎖RNAウイルスに対するDNA鋳型を含む。一部の実施例では、ウイルス鋳型プラスミドは、Herpesvirus(例えば、水痘帯状疱疹ウイルス、例えば、Oka株;サイトメガロウイルス;および単純ヘルペスウイルス(HSV)1型および2型)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス1型、14型、5型、40型、または41型)、Poxvirus(例えば、ワクシニアウイルス)、B型肝炎ウイルス、およびParvovirus(例えば、Parvovirus B19)に由来するもの等のDNAウイルス配列を含む。一部の実施例では、ウイルス鋳型プラスミドは、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)、例えば亜型C、HIV−2;ウマ伝染性貧血ウイルス;ネコ免疫不全ウイルス(FIV);ネコ白血病ウイルス(FeLV);サル免疫不全ウイルス(SIV);およびトリ肉腫ウイルス等のレトロウイルスに対するDNA鋳型またはRNA鋳型を含む。
【0110】
図3に示されている通り、ウイルス鋳型プラスミドを1つまたは複数の宿主細胞に導入する(例えば、形質転換)、130。使用することができる例示的な宿主細胞としては、これだけに限定されないが、細菌細胞、古細菌細胞、植物細胞、真菌細胞、酵母細胞、および昆虫細胞、例えば、Lactobacillus、Lactococcus、Bacillus(例えば、B.subtilis)、Escherichia(例えば、E.coli、例えば、DH5α、K12、またはE.coliのK12に由来する株)、Clostridium、SaccharomycesまたはPichia(例えば、S.cerevisiaeまたはP.pastoris)、Kluyveromyces lactis、Salmonella typhimurium、SF9細胞、C129細胞、293細胞、Neurospora細胞、および哺乳動物細胞が挙げられる。宿主細胞へのウイルス鋳型プラスミドの導入は、任意の適切な方法によって実現することができる。例示的な形質転換方法としては、これだけに限定されないが、電気穿孔または宿主細胞の二価カチオン、例えばCa2+への曝露、その後の熱ショックが挙げられる。
【0111】
形質転換130の後、形質転換された宿主細胞を固形培地(例えば、寒天プレート)上、選択マーカー(例えば、抗生物質)の存在下で成長させる。ウイルス鋳型プラスミドを用いて形質転換された1つまたは複数の細胞の固形培地培養物の成長は、任意の適切な方法によって実現することができる。例えば、形質転換された細胞を寒天に基づく細菌成長培地等の固形培地上に画線または希釈プレーティングすることができる。個々のコロニーを選択し、液体培地中(例えば、50mLの培地中)で別々に増大させる、140。液体培地または固形培地における適切な選択マーカーを使用した形質転換された細胞についての選択を使用することができる。例えば、ウイルスプラスミドDNAに含有される、抗生物質耐性を付与する遺伝子についての選択は、これだけに限定されないが、プラスミド形質転換体のKanR選択のためのカナマイシンを含有する培地(または他のもの、例えば、プラスミド形質転換体のAmpR選択のためのアンピシリンを含有する培地)等の、抗生物質を含有する成長培地を使用することによって実現することができる。使用することができる他の抗生物質耐性マーカーとしては、ハイグロマイシン、クロラムフェニコール、およびピューロマイシンが挙げられる。さらに、ベータ−ガラクトシダーゼアルファ相補(E.coli lacZΔM15を宿主として使用する)およびX−galと共にプレーティングすること等の、他の選択方法を使用することができる。
【0112】
形質転換された宿主細胞を成長させた後(例えば、選択条件下で)、いずれの細菌コロニーが適当なウイルス鋳型配列を含有するかを決定する、150。固形培地培養物で成長させた1つまたは複数の細菌コロニーにおける1つまたは複数のウイルス鋳型配列の存在の検出は、1つまたは複数の適切な検出方法によって実現することができる。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase change reaction)(PCR)、DNA配列決定、制限分析、ゲル電気泳動、ブロッティングまたは他の方法のうちの1つまたは複数を実施することができる。一実施例では、制限地図作成アガロースゲル電気泳動、その後、最終的に完全なプラスミド配列決定を使用する。1つまたは複数のウイルス鋳型配列の存在の検出を実施して、試験した1つまたは複数のコロニーの細胞が適当なまたは実質的に適当なウイルス鋳型のDNA配列を含有すること、および、例えばウイルス鋳型配列を含有しない「空の」プラスミドベクター、プラスミド二量体等の実質的な量の不純物を含有しないこと、または欠失、挿入または置換等のウイルスDNA配列の変動またはエラー、を検証する。
【0113】
1つまたは複数のウイルス鋳型プラスミド配列の存在が検出された1つまたは複数のコロニーの形質転換された細胞の繁殖、ならびに、繁殖した細胞からのウイルスプラスミドの抽出は、任意の適切な方法によって実現することができる。例えば、ステップ160に示されている通り、1つまたは複数のウイルス鋳型プラスミド細胞の存在が検出されたコロニーを使用して、形質転換された細胞の液体培養物に接種することができ、次いで、それを適切な程度まで成長(「発酵」)させることができる。次いで、プラスミドを含有する細胞を、精製すること、例えば、沈降、濾過または他の適切な分離プロセスによって成長培地から分離することができる。適切な技法によってウイルスDNA鋳型プラスミドを細胞から抽出(例えば、精製または単離)することができる、170。得られた単離されたウイルスDNA鋳型プラスミドを、プラスミドの量およびプラスミドの品質について(例えば、プラスミドが適当な配列を含むかどうかを決定するために)分析することができる、180。例えば、ステップ180は、得られた試料のDNA濃度、E.coli LAL(内毒素)濃度、得られた試料中のプラスミドDNA純度、またはこれらの組合せを決定することを含み得る。そのような方法は、制限酵素消化分析および/または配列決定分析を含み得る。精製、透析濾過、および滅菌濾過の後、得られたプラスミドを、例えば、2〜3mLのガラスバイアル中1mLとしてパッケージングすることができる、190。一部の場合では、開示されている方法は、繁殖ステップと抽出ステップの(例えば、ステップ130〜170)間にいかなる凍結ステップまたは期間も意図的に含まない。繁殖時間をおよそ14時間のプラスミドスターター培養およびおよそ20時間の主発酵に意図的に限定することができる。
【0114】
改善されたプロセスの特定の実施例では、E.coli細胞を、熱ショックを使用して、PVS−RIPOウイルスDNA鋳型プラスミド(2つの異なるロットを使用した)で形質転換した。形質転換された細胞を固形培地上で成長させた。AGEを使用して、得られたE.coli細胞のコロニーをスクリーニングして適当なPVS−RIPOプラスミドを含有するコロニーを同定した(scDNAおよびRE地図作成分析)。プラスミドDNA配列決定によって追加的なスクリーニングを実施することができる。適当なPVS−RIPOプラスミドを含有するE.coli細胞をさらなる繁殖のために選択し、LB−Soytoneを50μg/mLのカナマイシンと共に含有する液体E.coli細胞培養培地中で繁殖させ、PVS−RIPOプラスミドを、繁殖したE.coli細胞(細胞ペーストを遠心分離し、Qiagen(登録商標)EndoFree GigaPrepキットを使用して溶解/精製した)から単離し、細菌を凍結しなかった。OD600nmを測定すること、スターター種培養と主発酵の間にゲルに基づく確認を使用すること、スターターおよび主発酵の両方について並行培養を使用すること、およびプラスミドを即時処理する(すなわち、凍結細胞ペーストではない)ことにより、繁殖を所定の細胞密度に限定する。図4は、図1Aおよび1Bと比較した、改善されたプラスミド作製プロセスによって得られるPVS−RIPOプラスミドの改善された純度を例示する。開示されている方法を使用すると、高いスーパーコイル(sc)DNAの百分率(例えば、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%、例えば、70〜95%、75〜85%、または80〜90%)を伴うインタクトな全長(約10kbp)プラスミドの回収が実現された。さらに、AGEおよびAGE/RE地図作成分析を使用して、完全なまたは部分的なプラスミドの喪失、プラスミドインサートの喪失、組換え、またはトランスポゾン組込みの徴候はなかった。
【0115】
開示されている方法を使用して作製されたウイルス鋳型プラスミドDNAも提供される。例えば、開示されている方法を使用して作製されたウイルス鋳型プラスミドDNAを含有する組成物は、10mMのTris、1mMのEDTA、pH8.0等の緩衝液を含み得る。一部の実施例では、得られたウイルス鋳型プラスミドDNAはプラスミドを含み、その少なくとも50%が、適切なウイルスDNA鋳型プラスミドを含有する(例えば、クローンの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、例えば、50〜75%、50〜85%、または50〜60%が、開示されている方法に従って、例えば、PVSRIPO pDNAについて、所望のサイズおよび制限地図作成パターンの唯一のプラスミド構築物を含有する)。一部の実施例では、開示されている方法を使用して作製されたウイルス鋳型プラスミドDNAを含有する組成物に含まれるトランスポゾン挿入事象を伴うプラスミド、二量体化したプラスミド、ウイルス鋳型配列を伴わない空のプラスミド、またはこれらの組合せは、他の精製方法を使用した場合に観察されるそのような事象と比較して少ない。したがって、一部の実施例では、開示されている方法を使用して作製されたウイルス鋳型プラスミドDNAを含有する組成物は、約50%未満(例えば、45%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、または1%未満等、例えば、10〜50%、20〜40%、または1〜20%)の、トランスポゾン挿入事象を伴うプラスミド、約25%未満(例えば、20%未満、15%未満、10%未満、または5%未満等、例えば、1〜25%、または10〜20%)の、二量体化したプラスミド、約25%未満(例えば、20%未満、15%未満、10%未満、または5%未満、例えば、1〜25%、または10〜20%)の、ウイルス鋳型配列を伴わない空のプラスミド、またはこれらの組合せを含む。
【0116】
開示されている方法を使用して作製されたウイルス鋳型プラスミドDNAをさらに処理すること、例えば、線状化してウイルスDNA鋳型を作製し、宿主細胞に導入することができる。例えば、RNAに基づくウイルスについては、ウイルスDNA鋳型からin vitro転写を使用してウイルスRNA配列を生成し、ウイルス宿主細胞をトランスフェクトするために使用することができる。トランスフェクトされた宿主細胞から清澄化されたウイルスを収集し、これを「マスターウイルスバンク」(MVB)と称することができる。MVBは、ウイルスを含有し、宿主細胞は含有しない。感染細胞は、寿命が短いので、通常は細胞バンクに収集されない。MVBは、清澄化されたウイルスを含有するトランスフェクション後細胞溶解物を含有する。次いで、感染ウイルス宿主細胞を、in vitro細胞培養において等の適切なやり方で成長させる。感染細胞の成長は、細胞を培養物中で成長させることを意味する、感染哺乳動物細胞を培養物中で1ラウンドまたは複数ラウンド増幅(増大)させること、次いで、成長させた細胞を使用してさらなる細胞培養物を「播種する」(開始する)ことを含み得るが、これは、感染後の細胞変性効果および細胞死の迅速性に起因して可能でない場合がある。
【0117】
改善されたプロセスの一例では、マスターウイルスシード(MVS)を、IVTにより生成されたウイルスRNAで形質転換されたVero細胞において作り出す;MVBウイルスを、MVSを感染させた増大させたVero細胞を使用して作り出し、その後、清澄化するが精製はしない;作製ロットでは、MVBロットからのウイルスを感染させたVero細胞を使用する;全ての場合において、トランスフェクション(MVSへのウイルスRNA)または感染(MVB)および作製の前にVeroの増大を行う。しかし、必要な細胞増大は、一般には、小さなMVS/MVBバンクの生成では、より大きなスケールのウイルスの製造ロットと比較して少ない。したがって、上記の通り作製されたPVS−RIPOプラスミドDNAを使用し、得られた裸のウイルスRNA配列を使用してVero哺乳動物細胞をトランスフェクトした。Vero培養物を、RNAトランスフェクションまたはウイルス感染前に所望の細胞カウントまで増大させる。PVS−RIPOおよび他のウイルスについては、感染後に細胞を増大させない。感染Vero細胞においてウイルス複製および増幅を行って、PVS−RIPOの採取ロットを生成する。
【0118】
クロマトグラフィー画分中の核酸配列の迅速な検出方法を使用する精製プロセス
精製されたまたは単離された核酸分子含有組成物を得るための改善されたプロセスまたは方法が本明細書に提示される。改善された精製プロセスは、ウイルス等の所望の核酸分子を含有する試料のクロマトグラフィーによる分離を含む。溶出したクロマトグラフィーカラム画分中の精製される所望の核酸分子含有組成物(例えば、「分析物」)を定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)等の迅速な検出方法を使用して検出すること、および検出結果に基づいて画分を選択すること(例えば、所望の核酸分子を含有する画分を選択し、組み合わせること)により、試料検出が従来のクロマトグラフィーによるモニタリング技法、例えば、クロマトグラフィーカラム溶出液の吸光度および伝導率のモニタリングにより行われるプロセスに比べ精製の改善が実現されたことが本明細書に示されている。本明細書に記載されている改善された精製プロセスで感染性生ウイルスの収率の増加が実現されたが、方法は、生ウイルスの精製に限定されない。例えば、開示されている方法を使用して、不活化ウイルス(例えば、ワクチンに使用されるもの)等の他の分析物および精製されたウイルス核酸を精製することができる。
【0119】
改善された精製プロセスにより、分析物のより高い収率、分析物の純度の増加、および精製時間の低減のうちの1つまたは複数をもたらすことができる(表2参照)。精製時間の低減により、精製効率の改善、および一部の場合では、精製された分析物の品質の改善がもたらされる。例えば、改善された精製プロセスを使用したPVS−RIPOの精製は、4〜8時間で実現され(Oueletteらの方法では少なくとも2日間または少なくとも3日間であることと比較して)、これにより、精製されたPVS−RIPOの感染力(力価)の改善がもたらされる。言い換えれば、精製時間がより短いことにより、感染性生ウイルスの収率および安定性の改善がもたらされる。改善された精製プロセスによって得られる分析物の収率および純度、または精製時間等のパラメータは、精製パラメータを調整することによって操作することができる。例えば、収集および/または分析物の存在について迅速な検出方法によって試験されるいくつかのクロマトグラフィー画分を調整する(増加または低減させる)こと、クロマトグラフィーカラム分解能を増加させること、さらなる精製および/または検出ステップを追加すること、または異なる型の迅速な検出方法を選択することができる。一実施例では、多数のクロマトグラフィー画分を試験し、さらなる調製ステップのために、分析物を含有する画分をより多くプールすることによって、分析物の全体的な収率を改善することができる。別の実施例では、より小さな画分を収集し、分析物含有量が最も多い少数の画分をさらなる調製ステップのためにプールすることによって分析物の純度を改善することができる。
【表2-1】
【表2-2】
【0120】
改善された方法の概要が図5に提示されている、200。ポリオウイルス(例えば、PVS−RIPO)を感染させたVero細胞等の、ウイルス鋳型プラスミドを予め感染させ、培養物中で成長させた宿主細胞を、ウイルスにより溶解する。得られた上清を、ヌクレアーゼ酵素と一緒にインキュベートする、210。ヌクレアーゼは、溶液中の遊離RNAおよびDNAを消化するが、封入されたウイルス核酸(すなわち、インタクトなウイルス粒子に含有されるもの)はインタクトなままにすることができる。したがって、ヌクレアーゼを、所望のウイルスを含有する上清と一緒に、宿主細胞DNA(例えば、gDNA、mtDNA)およびRNA(例えば、tRNA、rRNA)、存在する場合には他の潜在的な夾雑DNA/RNA(例えば、内因性/外因性ウイルス)、ならびに封入されていない遊離のウイルスRNAの消化(したがって、低減および/または除去)を可能にする条件下でインキュベートする。一実施例では、ヌクレアーゼを50単位/ml(またはそれ未満)の濃度で、例えば、2〜8℃で16〜24時間存在させる。一部の実施例では、ヌクレアーゼをより高い温度(例えば、25〜37℃)でより短い時間にわたって使用するが、ウイルスカプシド分解が起こり得る。一実施例では、ヌクレアーゼは、Benzonase(登録商標)酵素等のエンドヌクレアーゼである。一実施例では、ヌクレアーゼは、1つもしくは複数のDNase、1つもしくは複数のRNアーゼ、または1つもしくは複数のDNaseと1つもしくは複数のRNアーゼの組合せである。
【0121】
次いで、ヌクレアーゼ消化した上清をサイズ分離(またはゲル濾過)クロマトグラフィーに供す、220。例えば、ヌクレアーゼ消化した上清を、アガロースに基づく樹脂(例えば、Sepharose)を含有するもの等のサイズ分離カラムに適用することができる。一実施例では、サイズ分離カラムは、流速が大きいSepharose 6 Fast Flow(FF)樹脂である。一部の実施例では、4FFカラムの代わりに6FFを使用することにより、ウイルスの純度を改善すること、および/または精製のスピードを増加させることができる。カラムから収集された1つまたは複数の画分を、qPCR(例えば、リアルタイムRT−qPCR)を使用して標的核酸分子の存在について(例えば、標的ウイルスの標的配列の検出によって)分析する、230。一部の実施例では、吸光度(例えば、280nm、215nm、もしくは254nmの1つもしくは複数の波長におけるもの)および/または伝導率等の、溶出液の他のパラメータもモニタリングする。次いで、標的核酸分子(例えば、ウイルス)を含有する同定された画分をプールするまたは合わせる、240。一実施例では、陽性画分は、10コピー/mL超を有するものである(コピーは、ウイルスRNAまたはcDNAゲノムコピーを指す)。
【0122】
プールした画分を陰イオン交換クロマトグラフィーに供す、250。例えば、プールした画分を、Super Q 650M樹脂を含有するカラムに適用することができる。一部の実施例では、吸光度(例えば、280nm、215nm、もしくは254nmの1つもしくは複数の波長におけるもの)および/または伝導率等の、陰イオン交換からの溶出液のパラメータをモニタリングする。一部の実施例では、陰イオン交換からの溶出液を、ウイルスの存在について、例えば、PCR(例えば、リアルタイムRT−PCR)を使用してモニタリングする。例えば、少なくとも5×10コピー/mLを含有する画分を維持およびプールすることができるが、これを、少なくとも2×10コピー/mLを含有する画分に増大させて、費用対純度(例えば、高純度よりも収率の方が所望される場合)に関して収率を改善することができる。
【0123】
結果得られる、陰イオン交換カラムから収集された、標的核酸分子(複数可)を含有するフロースルーピークを、透析濾過を使用して濃縮することができる、260。得られた透過液および/またはフラッシュ液(flush)を収集する、プールする、滅菌濾過する、またはこれらを組み合わせることができる。所望であれば、得られた透過液および/またはフラッシュ液をさらに分析する、例えば、pH、BCA(タンパク質含有量)、Vero HCP含有量、HC DNA含有量、LALを決定する、プラーク(PFU)試験を実施する、またはこれらを組み合わせることができる。一部の実施例では、得られた精製された核酸分子調製物に、アジュバント、ヒト血清アルブミン(HSA)、糖(マンニトール、スクロース等)、界面活性物質(例えば、Tween/Polysorbate)等のうちの1つまたは複数等の追加的な材料を添加する。
【0124】
クロマトグラフィー
精製されたウイルス等の核酸分子を含有する組成物を得るための、開示されている方法は、所望の核酸分子を含有する試料を液体カラムクロマトグラフィーで分離するステップと、カラムクロマトグラフィーから溶出した画分を収集するステップと、リアルタイムRT−qPCR等の迅速な検出方法を使用して画分のうちの1つまたは複数における核酸混合物中の標的核酸配列を検出するステップと、標的核酸分子の所定の閾値(「カットオフ」)濃度(例えば、>10コピー/mLの閾値(すなわち、リアルタイムRT−qPCRによって決定されるウイルスゲノムのコピー数)に基づいて、標的核酸分子が検出される画分のうちの1つまたは複数を選択するステップとを含む。カラムクロマトグラフィーは、核酸分子を含有する試料の構成成分の分離を可能にし、試料が可溶性である固定相(クロマトグラフィー媒体)および移動相(液体溶離液)を充填したカラムを伴う全ての方法を包含する。試料をカラムに適用し、その後、溶離液を適用する。固定相および移動相は、試料の種々の構成成分が固定相を通って異なって移動するように選択する。核酸を含有する試料の分離に適した例示的な液体クロマトグラフィー法は公知であり、例えば、McLaughlin、TrAC Trends in Analytical Chemistry、5巻(8号):215〜219頁(1986年)またはMcGrathら、J Virol.、25巻(3号):923〜927頁(1978年)に記載されている。例えば、液体カラムクロマトグラフィー法は、媒体の型および/または必要な分離プロセスに基づいて分類することができる。一部の例は、サイズ排除(ゲル濾過)クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィーおよびアフィニティークロマトグラフィーである。開示されている方法で使用することができる適切なクロマトグラフィー媒体の一部の例は、Q−Sepharose FF、SP−Sepharose、Superdex−75、Capto−Q、Source−Q、DEAE−Sephacel、Zenix−C、Source−S、Phenyl/Butyl/Octo−Capto等である。
【0125】
カラムからの溶出液は、一般には、一連の画分(所定の体積の試料)中に収集される。画分は、分析物と称することができる試料構成成分のうちの1つまたは複数の存在または非存在を決定するための種々の検出方法に供すことができる。溶出液の継続的なモニタリングも使用することができ、したがって、カラム溶出液に対して検出を連続的に行い、次いで、それを画分中に収集する。例示的な検出方法は、核酸および/もしくはタンパク質を検出するために適した波長における吸光度による検出、または塩等の電解質を検出するための伝導率のモニタリングである。画分を、例えば酵素活性試験、電気泳動、ブロッティング等の適切な分析技法の1つまたは複数を使用して、生体分子の存在または非存在について分析することができる。核酸を含有する試料の分離中に一般に使用される検出技法は特異性を欠く。例えば、RNAについて254nm等の適切な波長における吸光度を測定することによる検出を使用することができるが、これは、特異的な核酸配列(例えば、ウイルス標的配列)の検出を可能にするものではなく、したがって、得られる試料は、宿主細胞RNA等の望ましくない夾雑物を含有する可能性がある。しかし、より特異的な検出方法は、時間がかかり、それにより、検出結果を得る間に試料の望ましくない分解をもたらす可能性がある。
【0126】
開示されている改善された精製プロセスでは、核酸分子を含有する試料(例えば、ウイルス核酸)を分離するために使用されるクロマトグラフィー媒体の型にかかわらず、方法は、画分のうちの1つまたは複数中の標的核酸分子を、核酸分子を含有する分析物中の1つまたは複数の配列を特異的に検出することができる迅速な検出方法を使用して検出または測定するステップを含む。そのような方法の例は、リアルタイムRT−qPCR検出である。吸光度および伝導率のモニタリング等の他の検出技法を迅速な検出と併せて使用することができる。例えば、迅速な検出にリアルタイムRT−qPCRを使用する場合、リアルタイムRT−qPCR検出のための画分を吸光度および伝導率のモニタリングの結果に基づいて選択することができる。しかし、標的核酸分子が存在する画分のうちの1つまたは複数の選択は、試料中の標的核酸配列のリアルタイムRT−qPCR検出に基づく。画分を、試料中に存在する標的核酸配列の所定の閾値(「カットオフ」)濃度に基づいて選択する。すなわち、閾値またはそれを上回る濃度の標的核酸配列を含有する画分を選択する。次いで、複数の画分を合わせることができる。得られた組成物は、クロマトグラフィーカラムに最初に適用された試料よりも高い濃度の標的核酸分子を含有する。得られた組成物はまた、所望の核酸以外の試料構成成分をより低い濃度で含有し得る。
【0127】
開示されている精製方法を、Vero細胞から得たPVS−RIPOの精製プロセスにおいて例示的に使用した。PVS−RIPO作製プロセスは、マスターウイルスバンクから得た第1継代(P1)PVS−RIPOを感染させたVero細胞の多数の10段セルファクトリーを伴った。採取した材料(細胞培地上清)をBenzonase(登録商標)酵素で処理し、2つのカラムクロマトグラフィーステップ、Sepharose 6FFサイズ分離クロマトグラフィーおよびSuper−Q 650M陰イオン交換クロマトグラフィーによって精製した。どちらのクロマトグラフィーステップもPVS−RIPOについては「フロースルー」であった、つまり、PVS−RIPOはカラム媒体に結合せず、したがって、フロースルー溶出液中に溶出した。第1のクロマトグラフィーステップでは、Sepharose 6FFカラムを、細胞培養培地中のより小さい分子量の夾雑物を分離するため、および緩衝液交換ステップとして使用した。連続的な吸光度モニタリング(260nm/280nmにおけるUV吸収)を使用して主要なウイルスピークを同定することに加えて、当該ピークにわたって画分を収集し、リアルタイムRT−qPCRを使用してさらに分析した。クロマトグラムは、通常、2つの定義されたUV吸光度ピークを含有した。Oueletteらに記載されているもの(Sepharose 6FFではなくSepharose 4FFが使用される)等の以前のPVS−RIPO精製プロセスでは、画分プール決定は、吸収モニタリングに基づくものであり、この段階でおよそ80%の精製収率をもたらした。対照的に、RT−qPCR検出では、この段階でおよそ100%の収率をもたらした。驚いたことに、リアルタイムRT−qPCRによる画分分析から、主要なPVS−RIPOウイルスピークは小さな最初のUV吸光度ピークのほぼ近くに位置するが、より大きなその後の吸光度ピークは痕跡量のPVS−RIPOにのみ含有されることが示された。一部の場合では、A254「小さな最初のピーク」とRT−qPCR結果は完全には重複せず、これにより、最初のA254nmのピークがウイルスRNAのみに起因するものではない可能性が示された。したがって、RT qPCR検出は、さらなる処理のために収集するのに適した画分(>10コピー/mL閾値を使用した)の確認において予想外に重要であった。Sepharose 6FFクロマトグラフィー後に得られた予想外のPVS−RIPO濃度の増加および夾雑物の低減により、Oueletteらに記載されているCMD陰イオン交換クロマトグラフィーステップおよびSephadex G−25クロマトグラフィーステップが不必要になった。選択された画分をプールし、第2のSuperQ 650Mクロマトグラフィーステップにおいてさらに精製した。SuperQ 650Mカラムを使用して、宿主細胞タンパク質夾雑物を非結合性ウイルスから除去した。精製後、PVS−RIPO組成物を濃縮し、濾過し、バイアルに入れた。
【0128】
開示されているプロセスによって得られる感染性生PVS−RIPOの平均作製収率は、再現性よく50%以上、例えば、50%〜80%の範囲であった。カラムクロマトグラフィーステップを2つのみ使用するので、Oueletteらに記載されている4つのクロマトグラフィーステップと比較して、精製プロセスの時間、費用および複雑さは有意に低減した。この改善された作製および精製プロセスを組換えポリオウイルスまたは他のウイルスの臨床的製造に使用することができ、その結果、最終的な精製産物の作製収率、感染力、および純度の改善のうちの1つまたは複数がもたらされる。例えば、開示されている方法を、他の組換えウイルス、例えば、不安定なプラスミドベクターから作製された組換えウイルスの臨床的製造のために使用することができる。インタクトなネイティブなRNAウイルス配列(特に、ssRNAウイルスに由来するもの)を含有するE.coliにおいて増やしたプラスミドはいずれも、本質的に不安定である。例としては、これだけに限定されないが、HIV、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス(HTLV)、狂犬病ウイルス、C型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、エボラウイルスおよび他の出血性ウイルスが挙げられる。
【0129】
クロマトグラフィー画分中の標的の検出
クロマトグラフィー画分中の分析物を検出するための種々の迅速な検出方法を改善された精製プロセスにおいて使用することができる。検出方法は、核酸を含有する分析物中の核酸配列(例えば、DNA配列、cDNA配列またはRNA配列)の検出を可能にすることができるものである。例示的な検出方法は、核酸配列決定、核酸の増幅(例えば、PCR)、および標識された配列特異的核酸プローブを使用した直接検出を含む。一実施例では、標識は、蛍光または酵素的/比色定量に基づく。したがって、一部の実施例では、検出方法として、ウイルス配列に結合するプローブを使用した、迅速な直接配列決定(例えば、Illuminaまたはナノポアに基づく方法からのもの)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、BIAcore(表面プラズモン共鳴)およびOctet(干渉法)が挙げられる。一部の実施形態では、定量的PCR(qPCR)を使用する。定量的PCRとは、一般に、PCR反応の開始時に使用される標的核酸配列の量の定量を可能にする方法を指す。
【0130】
定量的PCR技法では、定量のための種々の手法を使用する。定量的PCR法の1つの例は、RT−qPCR(逆転写定量的PCR)である。本明細書では、「定量的PCR」という用語は、最初に存在する標的核酸配列の定量を可能にするPCRに基づく技法を全て包含する。「リアルタイムPCR」という用語は、PCR反応全体を通して、またはリアルタイムでのPCR産物の検出を可能にする定量的PCR技法のサブセットを意味する。リアルタイムPCRの原理は、一般に、Heldら、Genome Research、6巻:986〜994頁(1996年)に記載されている。一般に、リアルタイムPCRでは、各増幅サイクルでシグナルを測定する。従来のリアルタイムPCR技法は、増殖サイクル(multiplication cycle)が完了するごとにシグナルを放射するフルオロフォアに依拠する。そのようなフルオロフォアの例は、SYBRグリーン等の、二本鎖DNAに結合すると定義された波長で蛍光を放射する蛍光色素である。したがって、各増幅サイクルの間の二本鎖DNAの増加により、PCR産物の蓄積に起因した蛍光強度の増加がもたらされる。リアルタイムPCRにおいて使用されるフルオロフォアの別の例は、配列特異的蛍光レポータープローブである。そのようなプローブの例は、TaqMan(登録商標)プローブおよびFRETプローブである。TaqMan(登録商標)プローブは、フルオロフォアおよびフルオロフォアにより放射される蛍光を低減する蛍光クエンチャーを含有する。PCRの伸長相の間、プローブは、DNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性によって切断され、それにより、フルオロフォアが放出される。フルオロフォア放出により、PCR産物の量に比例する蛍光シグナルの増加がもたらされる。FRETプローブは、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を使用する。2つの標識された配列特異的プローブを設計して、PCRのアニーリング相の間にPCR産物に結合させ、それにより、ドナーフルオロフォアからアクセプターフルオロフォアへのエネルギー移動が生じる。その結果、アニーリング相の間の蛍光の増加がもたらされ、これは、PCR産物の量に比例する。配列特異的レポータープローブの使用により、標的配列の検出が高い特異性でもたらされ、非特異的DNA増幅の存在下であっても定量が可能になる。異なる色の標識を有する特異的なプローブに基づいて同じ反応でいくつかの遺伝子を検出するための多重アッセイにおいて蛍光プローブを使用することもできる。例えば、多重アッセイでは、種々のフルオロフォア(これだけに限定されないが、FAM、JA270、CY5.5、およびHEXを含む)で標識された、いくつかの配列特異的プローブを同じPCR反応混合物において使用することができる。
【0131】
精製されたウイルスの使用
開示されている方法を用いて精製されたウイルスは、臨床的に、例えば、がん免疫療法等において、または、防御免疫応答をもたらすために、ワクチンとして使用することができる。
【0132】
一実施例では、PVS−RIPO等の精製されたポリオウイルスを使用して、神経膠芽腫等のがんを有する被験体を処置する。例えば、被験体に、直接腫瘍投与当たり約1×10 TCID50を投与することができる。少なくとも2週間後に、被験体は、生検を受けて、がんの診断/再発を確認することができる。診断が確認されたら、被験体に、PVS−RIPO(5×10 TCID50)を対流増強送達(convection−enhanced delivery)するためのカテーテルを設置することができる。カテーテルの設置後、被験体に、PVS−RIPOを6.5時間にわたって注入する。注入の完了後にカテーテルを取り出すことができる。治療をモニタリングするためにMRIを実施することができる。
【0133】
一実施例では、ポリオからの保護のために、弱毒化Sabinポリオウイルス等の精製されたポリオウイルスを使用して被験体にワクチン接種する。例えば、精製された弱毒化Sabinポリオウイルスを、単回用量で経口投与することができる(通常、1,000,000感染単位のSabin 1(PV1に対して有効)、100,000感染単位のSabin 2株、および600,000感染単位のSabin 3を含有する2滴)。そのようなワクチンは、微量の抗生物質(例えば、ネオマイシンおよびストレプトマイシン)も含み得るが、防腐剤は含まない。
【0134】
一実施例では、ポリオからの保護のために、不活化ポリオウイルス等の精製されたポリオウイルスを使用して被験体にワクチン接種する。例えば、精製されたOPVを、単回用量で注射により投与することができる(例えば、ジフテリア、破傷風、および無細胞百日咳ワクチンと一緒に)。
【実施例】
【0135】
(実施例1)
細胞培養でのPVS−RIPOの生産
【0136】
細胞培養
Veroワーキングセルバンク細胞(ロット217002−2)の2個のバイアルを解凍した。それぞれのバイアルの内容物を、10%ウシ胎児血清(FBS、Hyclone)を有する加温した完全培地(ダルベッコ改変イーグル培地、DMEM、Invitrogen)9mLに添加した。細胞カウントを行って、細胞を1000rpm、4℃で10分間遠心分離した。全ての細胞を再懸濁させて、1つの75cmフラスコに入れた。フラスコのキャップを緩めてインキュベータに入れた。これは、継代数142(解凍後の継代数1)であった。新しい培地を2回再供給して(two re-feeds)1週間後、細胞をトリプシン処理し、新しい75cmフラスコに20,000個/cmで播種して再分散させた(継代数143)。この時点で細胞の生存率は92%であった。
【0137】
75cmフラスコの細胞を、2個の225cmフラスコにスケールアップして、33,280個/cmで播種した(継代数144)。この時点で、細胞は94%生存であった。3日後、細胞は100%生存であった。両方の225cmフラスコを共にプールした。プールの前後の両方で得られたいくつかの試料の最終細胞密度は、213,000〜234,000個の細胞/cmの範囲であり、試料中の細胞生存率は86%〜96%の範囲であった。
【0138】
2個の225cmフラスコの細胞から得た培養物を、3個の225cmフラスコに播種して(継代数145)、「セルファクトリー」(Corning(登録商標)Inc.、Corning、New York)とも記述されうる10段CellSTACK(登録商標)細胞培養チャンバーにスケールアップした。最初に、3個の225cmからの細胞を6個の225cmフラスコに増大させた。これらの6個のフラスコの細胞(継代数147)をトリプシン処理して、共にプールした。このプールから、1個の5段CellSTACK(登録商標)チャンバー、1個の1段CellSTACK(登録商標)チャンバー、および5個の225cmフラスコに、細胞39,000個/cm(全て、継代数148)で播種した。
【0139】
5段CellSTACK(登録商標)チャンバー(継代数148)を使用して、1個の10段および4個の1段CellSTACK(登録商標)チャンバーに42,000個の細胞/cmで播種した。10段CellSTACK(登録商標)チャンバーを感染の1つのために使用した。1個の10段CellSTACK(登録商標)チャンバーの播種から感染までの時間は、90時間であった。4個の1段CellSTACK(登録商標)チャンバーのうちの1個の細胞をカウントして、10段CellSTACK(登録商標)チャンバーを感染させるために必要なウイルス量を決定した。この時点での細胞カウントは、332,932個の細胞/cmであり、細胞は96%生存であった。もう1つの1段CellSTACK(登録商標)チャンバーを、対照として使用した。
【0140】
最初の225cmフラスコから作製した1段CellSTACK(登録商標)(継代数148)を使用して、5段CellSTACK(登録商標)チャンバー(継代数149)を作製した。次に、この5段CellSTACK(登録商標)チャンバーを使用して、2個の10段CellSTACK(登録商標)チャンバー(継代150)に42,000個/cmで播種した。2個の10段CellSTACK(登録商標)チャンバーの播種から感染までの時間は94時間であった。これらの2個の10段CellSTACK(登録商標)チャンバーを、他の2つの感染のために使用した。
【0141】
感染
MVBロットを使用して産生細胞を感染させた。PVS−RIPOロットおよびMVBロットを生産するための手順を以下に要約する。Vero MCBロットを、世界保健機構のシードのVero細胞を使用して作製した。Vero細胞をトリプシン処理によって採取した。遠心分離後、細胞を、90%ウシ胎児血清(FBS)および10%ジメチルスルホキシド(DMSO)の凍結保護剤溶液におよそ1×10個の細胞/mLの濃度で再懸濁させた。Vero WCBロットを、以下のようにVero MCBロットの増大によって生産した。Vero MCBロットの1個のバイアルを使用してVero WCBを開始した。高グルコース、L−グルタミン、Hepes、およびFBSを含むDMEM中で4回継代後、WCBを体積1mL/バイアルおよび濃度4.7×10個の細胞/mLでバイアルに充填した。VeroマスターWCBロットを含有するバイアルを、気相式液体窒素に入れた。PVS−RIPOプラスミドDNAロットを使用して、in vitro転写によってPVS−RIPO RNAロットを生産した。PVS−RIPOプラスミドDNAロット40μgをSal I消化によって線状にした。線状化DNAをフェノールおよびクロロホルムで抽出して、エタノール沈殿を、−70℃以下で一晩実施した。DNAを、DNアーゼ/RNアーゼフリーの蒸留水40μLに再懸濁させた。消化/精製前および消化/精製後のプラスミドDNAの試料を、アガロースゲル電気泳動によって分析して、産物サイズおよび回収率を確認した。
【0142】
線状化DNA 20μgを鋳型として使用して、PVS−RIPO RNAを2つの同一の反応で合成した。それぞれの反応を、線状化DNA 10μgを使用して実施した。反応を開始するために、線状化プラスミドDNA 10μgをin vitro転写反応ミックス(RiboMAX大規模RNA産生システム、Promega)に添加して、最終体積を100μlとした。転写反応物を37℃で2.5〜3時間インキュベートした。反応が完了したときに、反応チューブを保存のため−70℃以下に置いた。適格なワーキングセルバンク(WCB)からのVero細胞を電気穿孔ステップに使用した。Vero細胞WCBロットの2個のバイアルを、L−グルタミンを有し10%FBSを富化した、フェノールレッド不含DMEM中で増大させて、37℃および5%COでインキュベートして3回継代した。
【0143】
トリプシン−EDTA(0.05%トリプシン、0.5mM EDTA)を添加して、Vero細胞をトリプシン処理して、37℃および5%COで4〜6分間インキュベートした。トリプシン処理した細胞を収集しておよそ4℃および1000RPMで10分間遠心分離した。収集した細胞をPBS(カルシウムおよびマグネシウムを含まない)100±2mLに懸濁させた。細胞懸濁液の試料を使用して細胞カウントを決定した。残りの細胞を1000RPMおよび4℃の設定で10分間の遠心分離によって収集した。清澄化したPBSを除去して、細胞ペレットを、最終的な計算細胞密度1.25×10個の細胞/mLとなるように新しいPBSに再懸濁させた。PVS−RIPO RNAおよそ55μgおよび増大させたVero細胞9mLを混合して、0.8mLアリコートでキュベットに移した。キュベットの内容物に、Bio−Rad Gene Pulser II電気穿孔ユニットを使用して、0.5キロボルトおよび0.25マイクロファラッドで2回の電気ショックを与えた。室温で15〜20分間インキュベートした後、キュベットの内容物を、DMEM/F12培地(Invitrogen)を含むT75フラスコに移した。T75フラスコを33℃および5%COでインキュベートした。完全な細胞変性効果がインキュベーションの3日目に観察された。
【0144】
フラスコの内容物を、遠心分離によって採取して清澄化して、初回ウイルスシード(IVS)ロットを得た。Vero細胞増大は以下の通りであった:Vero細胞を、L−グルタミンおよび10%FBS(Hyclone)を含む、フェノールレッド不含DMEM(DMEM、Invitrogen)を含有する2個のT25フラスコに播種して、37℃および5%COのCOインキュベータでインキュベートした。Vero細胞を、3回の細胞継代後に50個のT162フラスコへとさらに増大させた。3回目の継代の3日目に、50個のT162フラスコの内容物を顕微鏡下で調べて、細胞の状態を決定した。純粋な培養物で少なくとも95%コンフルエントである43個のフラスコを選択した。選択したT162フラスコの1つにおける細胞を調べて、細胞数および生存率を決定し、もう1つのフラスコを細胞の品質管理フラスコとしてインキュベートした。残りの41個のフラスコのうち1つを、フェノールレッド不含DMEM:栄養混合物F12の1:1混合物(DMEM/F−12、Invitrogen)の接種後に陰性対照として維持した。PVS−RIPO電気穿孔後シードロットを、保管庫から取り出して室温で解凍し、DMEM/F−12培地を使用して希釈した。40個のT162フラスコ(増大させたVero細胞を含有する)にPVS−RIPO電気穿孔後シードロットを感染多重度(MOI)0.5で感染させた。新しいDMEM/F−12細胞培養培地を添加した後、接種したフラスコを、33℃および5%COでインキュベートした。ウイルス感染フラスコおよび対照フラスコを、目に見える汚染、細胞の状態、およびパーセントコンフルエンシーなどの属性に関して、インキュベーションの間モニターした。
【0145】
感染の70時間後、インキュベーションを終了して、フラスコを、目に見える汚染、細胞状態、およびパーセントコンフルエンシーなどの属性に関して調べた後、採取した。フラスコの内容物を遠心ボトルに移して、4℃および2500RPMで33分間遠心分離して、細胞デブリを除去した。PVS−RIPOウイルスを含有する上清を、850cmローラーボトルにプールした。プールした上清を2個の30mLおよび24個の125mL PETGボトルにそれぞれ、20mLおよび80mLアリコートで移した。さらに、12個の2mLクライオバイアルに1mLアリコートを充填した。残りの上清(全体で3.8mL)を、3個の2mLクライオバイアルに移し、全体で15個の2mLクライオバイアルを得て、これらをPVS−RIPOマスターウイルスシードロットとしてラベル表示した。11個の2mLクライオバイアル、23個の125mL PETGボトル、および2個の30mL PETGボトルを−70℃以下で凍結した後、−70℃以下の制御保管庫(controlled storage)に移した。2mLクライオバイアルのうちの4個を、力価(pfuおよびTCID50による)、ウイルス粒子、およびDNA配列放出試験に関するプロセス解析/生物学的製剤品質管理に提出した。放出試験の残りを必要に応じて実施し、PVS−RIPO材料取り扱い手順を開発した。
【0146】
先の章で産生された細胞培養物を有する3個の10段CellSTACK(登録商標)チャンバーを、ダルベッコリン酸緩衝食塩水(DPBS、Invitrogen)によって洗浄した後、DMEM/F−12(Invitrogen)中、感染多重度(MOI)0.1で感染させた。P1マスターウイルスバンク(ロット番号L0403006)の80mLアリコート1個を解凍し、21mLアリコートを使用して、5%COインキュベータにおいて33℃で72時間、それぞれの10段細胞チャンバーに感染させた。10段のセルファクトリーを、顕微鏡を使用して100%の細胞変性効果(CPE)を視覚的に確認した後、感染の70時間後に採取した。採取した材料を4℃、3,800rpmで20分間遠心分離した。上清を直ちに処理するか(ロット番号L1308002B、表3を参照されたい)、または精製するまで最大9日間−70℃で保存した(ロット番号L1308002CおよびL1308002D、表3を参照されたい)。
【0147】
(実施例2)
PVS−RIPOの精製
3個の10段CellSTACK(登録商標)チャンバーのそれぞれからの採取物を、図5に模式的に図示するプロトコールに従って、すなわちヌクレアーゼ処理後にゲル濾過クロマトグラフィーを行い、その後にqPCR分析を行い、その後に陰イオン交換クロマトグラフィーを行い、その後に透析濾過による濃縮を行うことによって精製した。精製プロトコールを3回の産生実行のそれぞれに関して繰り返した。
【0148】
ヌクレアーゼ処理
Benzonase(登録商標)酵素(Sigma−Aldrich、Saint Louis、MO)は、溶液中の遊離のRNAおよびDNAの両方を消化するエンドヌクレアーゼである。完全に封入されたウイルス核酸(すなわち、インタクトウイルス粒子に含有される)は、影響を受けない。Benzonase(登録商標)酵素は、1)宿主細胞DNA(gDNA、mtDNA)およびRNA(tRNA、rRNA);2)存在する場合、他の可能性がある混入DNA/RNA(例えば、内因性/外因性ウイルス);3)封入されていない遊離のウイルスRNA、を低減および/または除去するために必要である。遊離の核酸の除去は、安全性、採取粘度の低減、ならびにA254nmおよびRT−qPCRなどの下流のウイルス検出方法のシグナル対ノイズ比の改善という理由から必要である。Benzonase(登録商標)酵素の性能は、それが含有される緩衝溶液に左右される。
【0149】
100mM塩化マグネシウム(MgCl)を、1mM MgClの最終濃度が得られるように、Benzonase(登録商標)酵素の添加前に3つの清澄化採取物のそれぞれに添加した。Benzonase(登録商標)酵素の添加は、それぞれの採取物において50μg/mLの最終Benzonase(登録商標)酵素濃度が達成されるように採取物の体積に基づいた。次に、それぞれの採取ボトルを2〜8℃で16〜24時間インキュベートした。
【0150】
ゲル濾過クロマトグラフィー
10cm(内径(i.d.))BPGカラム(GE Healthcare−Biosciences、Pittsburgh、PA)にSepharose 6 Fast Flow(FF)樹脂(GE Healthcare−Biosciences)3140mLを40cmのベッド高まで充填した。使用前に、充填したカラムを0.5N NaOHによって消毒して、周囲温度で26〜28時間静置した。カラムに水を流して、カラムを精製プロセスまで0.05M NaOH中で保存した。精製前に、カラムに5M NaClを流して、精製プロセスを開始するまで5M NaCl溶液中で24時間静置した。次に、カラムを2カラム容積の4.7mM NaHPO、1M NaCl pH 7.5で飽和し、3カラム容積の4.7mM NaHPO、42mM NaCl、pH 7.5によって流速50mL/分で平衡化した。
【0151】
3つの精製のそれぞれに関して、Benzonase(登録商標)酵素処理採取物を、1カラム注入において25%カラム容積、30cm/時間でアプライした。カラムを4.7mM NaHPO、42mM NaCl、pH 7.5の緩衝液を使用して溶出させた。溶出液の吸光度を、3波長(280/215/254nm)を使用して連続的にモニターし、伝導率も同様に連続的に測定した。それぞれのSepharose 6 FFクロマトグラフィーカラムステップからの溶出画分を、150〜200mLの体積で収集した。3つの実行全てからの選択画分を、リアルタイムRT−qPCR(実施例3を参照されたい)によって分析して、リアルタイムRT−qPCR分析からのPVS−RIPOコピー数(>1×10コピー/mL)に基づいてプールした。プールした材料を第2のクロマトグラフィーステップで精製した。
【0152】
陰イオン交換クロマトグラフィー
2.6cm(i.d.)XKカラムにSuper Q650M樹脂(Toyopearl(登録商標)、Tosoh Bioscience、Tessenderlo、Belgium)53mLを、最終ベッド高10cmとなるように充填した。充填したカラムを0.5N NaOHによって消毒して、周囲温度で1時間静置した。充填したカラムに水を流してNaOHを除去した後、カラムに5M NaClを流して、5M NaCl溶液中で24時間静置した。
【0153】
カラムを、4.7mM NaHPO、1M NaCl、pH 7.5で飽和し、4.7mM NaHPO、42mM NaCl、pH 7.5によって10mL/分の流速で平衡化した。3回の精製のそれぞれに関して、Sepharose 6 FFプール画分を単一カラム注入でアプライした。カラムを、4.7mM NaHPO、42mM NaCl、pH 7.5の緩衝液を使用して溶出した。溶出液の吸光度を、3波長(280/215/254nm)を使用して連続的にモニターして、伝導率も同様に連続的にモニターした。収集したメインピークは、フロースルーピークであり、夾雑物はカラムに結合した。メインピークの収集後、カラムを4.7mM NaHPO、1M NaCl pH 7.5を使用してストリップして、二次容器にストリップピークを収集し、一例において、SDS−PAGEによって分析した。
【0154】
濃縮/透析濾過
次に、Super Q650Mカラム後に収集したフロースルーピークをおよそ50mLまで濃縮して、50mM NaHPO、150mM NaCl、pH 7.4 500mLによって透析濾過した。それぞれの濃縮ステップにおいて、接線流濾過(TFF)フィルターに50mM NaHPO、150mM NaCl、pH 7.4を2×25mL流した。透過液を収集して、一例において、SDS−PAGEによって分析した。フラッシュ液および濃縮精製PVS−RIPOを共にプールして、20%ヒト血清アルブミン(HSA)(Baxter Pharmaceuticals、Deerfield、IL)を、50mM NaHPO、150mM NaCl、pH 7.4を、0.2%HSAの最終調合物となるように精製PVS−RIPOに添加した。
【0155】
プールおよびバイアル充填
最終調合したPVS−RIPOの3個のロットを共にプールして、0.2μm Millipak(登録商標)20フィルターを使用して濾過滅菌した。次に、濾過滅菌材料を、体積0.5mLで3mLガラスバイアルに分配した。バイアルを−70℃で保存した。
【0156】
(実施例3)
精製PVS−RIPOの分析
ゲル濾過ステップおよびクロマトグラフィーステップから選択した画分を、プラークアッセイ(NIH、National Cancer Institute−Frederick、生物学的製剤開発プログラム(BDP)標準業務手順書(SOP)22163 ポリオウイルスのプラークアッセイ)において試験した。TCID50(BDP SOP 22165、Hep−2C細胞を使用したポリオウイルスのTCID50アッセイ)を、プールする前の最終バルク材料についての、3つの精製実行のそれぞれの終了時に実施した。PVS−RIPOをモニターするために、Sepharose 6 Fast Flowクロマトグラフィーの画分を、リアルタイムqPCR(BDP SOP22195、核酸の検出および定量のための定量的PCR(qPCR)法)によってアッセイした。
【0157】
Sepharose 6 FF画分を、PVS−RIPOのHRV−2 IRES領域を標的とするTaqMan(登録商標)ベースのRT−qPCR(Applied Biosystems(登録商標)Inc.、Foster City、CA)アンプリコンを使用して総PVS−RIPOウイルスRNAに関して試験した。リアルタイムRT−qPCR増幅の前に、画分試料を、Qiagen(登録商標)(Valencia、CAQ)ウイルスRNAミニプレップキットを使用して抽出した。TaqMan(登録商標)プライマーおよび二重蛍光色素標識プローブを、ABI Primer Expressソフトウェア(Applied Biosystems Inc.)を使用して設計した。71−bpのHRV−2 IRES(PVS1)アンプリコンは、フォワードプライマー:5’- (AAC CCA ATG TGT ATC TAG TCG TAA TGA) (配列番号1);リバースプライマー: 5’- (TGA AAC ACG GAC ACC CAA AG) (配列番号2);およびTaqMan(登録商標)プローブ: 5’-[6FAM]-( CAA TTG CGG GAT GGG ACC AAC T)-[TAMRA] (配列番号3)からなった。プライマーおよびプローブをそれぞれ、ヌクレアーゼフリー水(NFW)によって10および5pmol/μlに希釈した。反応は、ROX色素を含むTaqMan(登録商標)1−ステップRT−PCR 2Xマスターミックス25μl、RNアーゼ阻害剤1μl、NFW 1μl、フォワードプライマー1μl、リバースプライマー1μl、TaqMan(登録商標)プローブ1μl、および試料20μlからなり、最終反応体積は50μlであった。(ROX色素を含む1−ステップRT−PCR 2Xマスターミックスは、Applied Biosystems Inc.から販売されている)。反応混合物を96ウェルプレートにロードして、光学フィルムで覆い、5−ステップqPCRプロファイル(2.00分、50.0℃;60.0℃で45分間(RT−ステップ);5.00分、95.0℃;94.0℃で20秒を45サイクル、62.0℃で1.00分)を使用して、ABIモデル7900HT 96ウェル配列検出システム(Applied Biosystems,Inc.)によって増幅した。定量のためのアンプリコンcDNA標準曲線は、PVS−RIPOプラスミドDNAから作製され、NFWに10倍連続希釈して反応あたり1ng〜1fgとした。PCR阻害、抽出、緩衝液/NTC、および逆転写対照をそれぞれのアッセイに使用した。
【0158】
3つの精製実行のそれぞれからの精製産物は、一貫した結果を示した。表3は、精製収率を示す。全体的なPVS−RIPO収率は60%またはそれ超であった。検出された回収率の変動はおそらく、部分的にプラークアッセイの変動によるものであった。その結果、プロセスの重要な段階では、エンドポイント希釈アッセイによって試料を分析した。このアッセイからの最終調合精製バルクの結果はそれぞれ、5.83×1011、3.77×1011、および2.98×1011TCID50であった。これらの結果は、3つの精製に関して一定の収率および濃度を示す。
【0159】
3つの精製実行からのSepharose 6 FFカラムとSuper Q 650Mカラムのクロマトグラフィープロファイルの比較から、ゲル濾過ステップおよび陰イオン交換クロマトグラフィーステップの両方で精製の一貫性が示された。Sepharose 6 FFクロマトグラムは、2つの明白なピークを含有した。リアルタイムRT−qPCRによる画分分析により、図6に説明されるように、PVS−RIPOのメインピークが最初の小さいピーク内に位置することが示された。この直後の大きいピークは、残留塩であるようであった。波長254nmで特異的にモニターする場合、光学的にモニターしたクロマトグラムとリアルタイムRT−qPCR結果とを比較できるように重ねると、PVS−RIPO含有画分の一部が光学的に検出されるピーク内に出現しなかったことが示された。したがって、リアルタイムRT−qPCR結果は、どの画分がPVS−RIPOを含有し(>10コピー/mLのカットオフを使用した)、さらなる処理のためにプールすべきであるかを確認するために重要であった。SuperQ 650Mクロマトグラムは、1つの大きいフロースルーピークを示した。SuperQ 650M精製ステップにおいて、フロースループロセスに何らかの余分な夾雑物が存在した。カラムを4.7Mm NaHPO、1M NaCl、pH 7.5の緩衝液でストリップすると、メインピーク収集の直後に大きいピークが出現した。PVS−RIPO材料がプロセスを通して失われなかったことを確認する試みで、このピークから収集した試料ならびに濃縮ステップからの透過物試料について、SDS−PAGE分析を実施した。両方のアッセイから、PVS−RIPOがいずれの試料にも存在しないことが示された。
【0160】
最終濃縮/透析濾過プロセスの際に、ウイルスの外観は、濃縮されるにつれて半透明から乳白色に変化した。3つ全ての最終濃縮試料が同じ外観を示した。それらを共にプールして濾過すると、外観は、乳白色から透明/半透明の産物へと変化した。濾過前のTCID50が1.4×1012であり、濾過後に2.4×1012であったことから、濾過プロセスによる産物の損失がないことが示された。バイアルに分配する前のPVS−RIPO産物の最終濃度は、6.09×10 TCID50/mLであると決定された。
【表3-1】
【表3-2】
【0161】
(実施例4)
ワクチン組成物の精製
臨床で使用するための単純ヘルペスウイルス(HSV−1)の精製は、Benzonase(登録商標)酵素処理の後にQ−Sepharose XLおよびSepharose 4FFクロマトグラフィーを利用する。HSVキャプシドのサイズにより、濾過滅菌は使用しない。この問題は、宿主細胞DNA/RNAまたはタンパク質と比較して、ウイルス画分の位置が、カラムのA280またはA260測定によって直ちに明らかとならないという点において、PVS−RIPOと同じである。このため、HSV−1含有画分の同定を助けるために、qPCRを本明細書において記述されるように使用することができる。リアルタイムRT−qPCRに対する代替として、表面プラズモン共鳴(BIAcore)または表面干渉法(Octet)アプローチを使用して、BIAコアチップまたはOctetセンサー上のHSV−1カプシドエピトープ(結合)密度を定量してもよい。このようにして、カラム画分におけるウイルスの位置および量を独自に同定する。
【0162】
(実施例5)
非病原性腫瘍溶解性ポリオウイルスキメラ(PVSRIPO)最終バイアル充填製品ロットL0904010のケミストリー、製造、および管理情報
本実施例は、神経膠芽腫の治療に使用するためのPVS−RIPOロットL0904010を生産するために使用される方法を記述する。図7に要約を提供する。簡単に説明すると、精製PVS−RIPOプラスミドDNAロットL0401014を転写してPVS−RIPO RNAを産生した。次に、PVS−RIPO RNAを、適格なVero細胞に電気穿孔して、増大させ、初回ウイルスシードロットL0402026(P0)を生産した。初回ウイルスシードロットL0402026を、適格なVero細胞において増大させて、マスターウイルスシードロットL0403006(P1)を生産した。マスターウイルスシードロットL0403006を増大させて精製し、精製濾過バルクロットL0904009(P2)を生産した。精製濾過バルクロットL0904009を充填してFVPロットL0904010を生産した。得られた濃縮精製ウイルスを、0.9%塩化ナトリウム中の50mMリン酸ナトリウム、pH7.4+0.2%ヒト血清アルブミンにおいて調合して、濾過滅菌した。
【0163】
PVSRIPO−kan/pUCプラスミドDNA配列(ロットL0401014)に関して完全長の配列決定を行った。ロットL0401014を、現行の医薬品等の製造管理および品質管理に関する基準(CGMP)下で生産および精製して、これをさらに使用してマスターウイルスシードロットL0403006を生産し、次いでPVS−RIPO精製滅菌バルクロットL0904009および最終のバイアル充填製品ロットL0904010を生産した。配列は、PVS−RIPOプラスミド参照配列ロットL0305007と100%相同であることが見出された。プラスミドDNAについて実施したBLASTn検索から、腫瘍形成性、毒性、または予想外のウイルス配列が存在しないことが示された。
【0164】
PVS−RIPOゲノム配列の配列決定もまた、マスターウイルスシードロットL0403006、精製滅菌バルクロットL0904009、および最終バイアル充填製品ロットL0904010からの材料を使用して実施し、PVS−RIPO参照配列ロットL0401014と100%の相同性を確認した。
【0165】
材料
PVSRIPOの製造に使用した動物起源の原材料には、Benzonase(登録商標)、ウシ胎児血清(FBS)、ヒト血清アルブミン、およびトリプシン−EDTAが挙げられる。原材料の製造元は、以下を示す文書を提供した:
(1)Benzonase(登録商標)酵素調製物は、発酵増殖培地中で牛乳からカザミノ酸を使用する微生物発酵によって組換えにより産生した。牛乳は、1990年以降その地域で飼育された動物においてBSE症例が記録されていない国を起源とし、ヒトによる消費にとって適合すると考えられる。
(2)FBSは、米国内のUSDA監査屠畜場で収集したウシ胎児血液から製造され、検査したウシウイルスに関して陰性であった。
(3)HSAは、ヒトでの使用に関する販売のために血漿誘導体を製造および調製することがUS FDAにより認可された施設であるBaxter Healthcare Corporation製であった。血漿は、USAにおいてUSドナーに限って収集され、関係するUS FDA規則に従った。
(4)トリプシンはブタ起源であり、米国/カナダを起源とした。原料トリプシンを試験して、ブタパルボウイルスに関して陰性であることが見出され、調合前に放射線照射した。
【0166】
遺伝子構築物
a.PVSRIPOプラスミド
組換えPVSRIPO DNA(7.7kb)を改変pUC19ベクター(アンピシリン耐性遺伝子の代わりにカナマイシン耐性遺伝子を有する)にクローニングした後、E.coli DH5αコンピテント細胞に形質転換して、プラスミドDNAを増幅した。PVSRIPO−kan/pUC19プラスミド地図を図8に示す。
【0167】
b.PVS−RIPOウイルスゲノム
PVS−RIPOウイルスゲノムは、5’非翻訳領域(5’−NTR)、PVS−RIPOオープンリーディングフレーム(ORF)、および3’非翻訳領域(3’−NTR)からなる。5’−NTRは、ヒトライノウイルス2型内部リボソーム侵入部位(HRV−IRES)を含有する。PVS−RIPOオープンリーディングフレームは、単一のタンパク質をコードし、これはタンパク質分解によってウイルス構造タンパク質(P1)および非構造タンパク質(P2およびP3)へとプロセシングされる。P1、P2、およびP3は、さらにプロセシングを受ける。PVS−RIPOゲノムは、HRV−IRES領域を除き、弱毒化ポリオウイルスI型Sabin株と同じである。PVS−RIPOの遺伝子型は、5’−クローバー葉構造[PV1(M);Genbank(登録商標)受託番号NC_002058;ヌクレオチド1〜109]−制限エンドヌクレアーゼEcoRIの切断部位−IRES[HRV2;Genbank(登録商標)受託番号XO2316;ヌクレオチド105〜610]−オープンリーディングフレーム[PV1(S);Genbank(登録商標)受託番号V01150;ヌクレオチド743〜7369;ヌクレオチド748(tからa)]−3’UTR[PV1(S);ヌクレオチド7370〜7441]−ポリ(A)である。
【0168】
PVSRIPOプラスミドDNAの生産
ロットL0401014 PVSRIPOプラスミドDNA生産プロセスを図9に説明する。
【0169】
a.宿主細胞系の説明および試験
宿主細胞系であるE.coli DH5αを、Invitrogenから得た後、適格であることを確認して、BDPで増大させて、E.coli DH5αマスターセルバンク(MCB)ロットL0301014を生産し、その後E.coli DH5αワーキングセルバンク(WCB)ロットL0303011を生産した。
【0170】
E.coli DH5α MCBロットL0301014は、InvitrogenのE.coli DH5αロット1159251の1つのバイアル(およそ1mL)を、それぞれが滅菌調製培養培地(塩化ナトリウム10g/mL、ソイトン10g/mL、および酵母抽出物5g/mL)150mLを含有する3個の500mLフラスコ中での増大によって生産した。凍結したバイアルを37±1℃のインキュベータ内で5分間解凍した。接種した培養培地を37±1℃でおよび150±10rpmでおよそ18時間インキュベートした。グリセロール溶液を、最終グリセロール濃度が20%となるように、フラスコ1の内容物(OD600=4.31)と混合した。細胞懸濁液を1.0±0.2mL/バイアルでバイアルに充填して、144個の充填済みバイアルを得た。充填済みバイアルを、速度制御凍結(controlled-rate freeze)を使用して−70℃以下に凍結して、−70℃以下の制御保管庫に入れた。E.coli DH5α MCBロットL0301014の規格および放出試験結果を図10の分析証明書に提供する。
【0171】
E.coli DH5α WCBロットL0303011は、E.coli DH5α MCBロットL0301014の2個のバイアル(2個のバイアルのおよそ全量=2mL)を、それぞれが滅菌調製培養培地(塩化ナトリウム10g/mL、ソイトン10g/mL、酵母抽出物5g/mL、および硫酸マグネシウム七水和物5g/mL)40mLを含有する3個の125mL第1段階シードフラスコ(接種容積はおよそ400μL)、次いでそれぞれが同じ滅菌調製培養培地390mLを含有する2個の2L第2段階シードフラスコ(接種容積はおよそ4mL)において増大させることによって生産した。凍結バイアルを37±1℃のインキュベータで5分間解凍した。接種した培養物を37±1℃および235rpmに設定した速度でインキュベートした。第1段階シードフラスコをOD600=2.5となるまで一晩(およそ16時間)インキュベートし、第2段階シードフラスコを、OD600=0.361となるまでおよそ2.6時間インキュベートした。第2段階シードフラスコ1の内容物を、以下の設定で7分間遠心分離した:1600×gおよび4℃。細胞ペレットを100mM塩化カルシウム/15%v/vグリセロール溶液中に再懸濁させて、以下の設定で5分間遠心分離した:1100×gおよび4℃。得られた細胞ペレットを、100mM塩化カルシウム/15%v/vグリセロール溶液中に再懸濁させて(最終グリセロール濃度は15%)、0.15mL/バイアルの体積でバイアルに充填し、95個の充填済みバイアルを得た。充填済みバイアルをドライアイス/エタノール浴中で凍結させて、−70℃以下の制御保管庫に入れた。E.coli DH5α WCBロットL0303011の規格および放出試験結果を図11の分析証明書に提供する。
【0172】
b.精製PVS−RIPOプラスミドDNAロットL021217を生産するための起源のPVS−RIPOプラスミドDNAの精製
起源のPVS−RIPOプラスミドDNAは、Duke University Medical Schoolにより提供された。この材料を使用してさらなるプラスミドDNAを作製して精製した。起源のPVS−RIPOプラスミドDNA 10マイクロリットル(μL)を、E.coli DH5αコンピテント細胞(Invitrogenカタログ番号18263−012)に形質転換した。プラスミドミニキットおよびマキシキット(それぞれ、Qiagenカタログ番号27104および12165)を使用して、得られた18個の形質転換体から抽出したプラスミドDNA、およびDuke University Medical Schoolから得た起源のPVS−RIPOプラスミドDNAを、アガロースゲル電気泳動および制限酵素消化によって分析した。分析結果により、2.5kbから10.3kbの範囲で多数のバンドが観察されることが示された。さらに調べるために形質転換体10個を選択した。制限酵素消化分析に基づいて、S−1と同定された形質転換体の1つからのDNAを配列決定すると、1.3キロベース(Kb)の挿入を有することが見出され、これはBLASTnによって細菌ミニトランスポゾンIS10Rであると決定された。他のコロニーは、空のベクター(およそ2.5kb)、二量体ベクター(およそ5.0kb)、またはPVSRIPOプラスミドDNA(およそ10kb)のいずれかとして出現した。
【0173】
アガロースゲル電気泳動を使用して、Duke University Medical Schoolから得た起源のPVS−RIPOプラスミドDNAのバンド形成パターンをさらに分析した。8個のバンドをゲルから切り出して、MiniEluteゲル抽出キット(Qiagenカタログ番号27104)を使用して精製し、−20℃で保存した。8個のバンドのそれぞれからの精製したDNAを、DH5αコンピテント細胞に形質転換して、選択した形質転換体を、50μg/mLカナマイシンを補充した液体ソイ−LB培地中で、37℃で一晩成長させた。QIAprepスピンミニキット(Qiagenカタログ番号27106)を使用して精製したDNAを、アガロースゲル電気泳動および制限酵素消化によって分析した。#6−3(バンド#6の形質転換から)および#5−3(バンド#5の形質転換から)として同定された2つのクローンは、正確なプラスミドサイズを保有するようであり、さらに調べるために選択した。
【0174】
2つのクローン#6−3および#5−3をそれぞれ、50μg/mLカナマイシンを含有するソイ−LB培地において37℃および120回/分(RPM)で増大させ、細胞を収集した。QIAfilterプラスミドメガキット(Qiagenカタログ番号12281)をDNA精製のために使用した。制限酵素消化分析により、2つのクローンのそれぞれからの精製プラスミドDNAが、正確な制限酵素パターンを有することおよび1.3Kbのインサートが存在しないことが示された。クローン#6−3から増大させたロットにロット番号L021217を割付し、精製したロットL021217のDNAを配列決定した。得られた配列は、予想される正確な配列と100%相同であることが見出された。ロットL021217を1mLアリコートで、−70℃以下で凍結した。
【0175】
c.精製PVS−RIPOプラスミドDNA受託バンクロットL0305007の生産および試験
精製PVS−RIPOプラスミドDNAロットL0305007受託バンクを、精製PVS−RIPOプラスミドDNAロットL021217から生産した。精製プラスミドDNAロットL0212017の2個のバイアルおよびDH5αコンピテントワーキングセルバンクロットL030301の6個のバイアルを、−70℃以下の制御保管庫から取り出して、クールパック(0〜−20℃)上で解凍した。6個の解凍DH5αコンピテントワーキングセルバンクロットL0303011バイアルの内容物を合わせて、100μLを3本の冷却チューブのそれぞれに分注した。精製DNAロットL021017を、エンドトキシンフリーの10mMトリス−HCl、1mM EDTA、pH8.0中で5倍希釈した。希釈したDNAロットL021217の1μLを2本の冷却チューブに加え、第3のチューブを陰性対照として使用した。3本のチューブを密封してクールパック上でおよそ30分間インキュベートした。次に、3本のチューブを40±2℃の水浴中におよそ42秒間入れて熱ショックを与えた。チューブをクールパック上でおよそ4分間冷却した。バイオセーフティキャビネット(BSC)内で作業して、ソイトン−LB培地(ソイ−LB培地の調合に関しては表4を参照されたい)およそ900μLを3本のチューブのそれぞれに添加して、チューブを37℃および120RPMの設定でおよそ1時間インキュベートした。プラスミド調製溶液を含有する2本のチューブのそれぞれからのアリコート(100、200、および400μL)を、ソイトン−LB+50μg/mLカナマイシン寒天プレート(ソイ−LB寒天プレートの調合に関しては表5を参照されたい)上に、全体で6個のプレートについて均一に分配した。陰性対照チューブ(200μL)の内容物をソイトン−LB+50μg/mLカナマイシン寒天プレート上に均一に分配した。7個のプレートを37℃の設定で一晩インキュベートした。
【表4】
【表5】
【0176】
それぞれが、50μg/mLカナマイシンを補充した滅菌のソイトンLB培地50±1mLを含有する、250mLシェークフラスコを使用して6個のスターター培養物を調製した。接種したソイトン−LB+50μg/mLカナマイシン寒天プレートをコロニーの成長に関して調べ、6個のスターター培養物のそれぞれに単一のコロニーを接種した。接種したフラスコを37℃および120RPMの設定で一晩インキュベートした。
【0177】
1ミリリットル試料を、アガロースゲル電気泳動によるDNA分析のために各スターター培養フラスコから取り出し、培養フラスコを2〜8℃で保存した。1個のフラスコを選択して、4個の2L培養フラスコ(50μg/mLカナマイシンを補充したソイトン−LB培地600mLを含有する)のそれぞれにおよそ3mL(0.5%)の接種物を与えた。接種したフラスコを、37℃および120RPMの設定で一晩インキュベートした。
【0178】
培養物を、4℃、6000×gの設定でおよそ15分間の遠心分離によって採取した。上清を廃棄物としてデカントして捨て、細胞ペーストを全体で16.1グラム収集した。細胞ペーストを4個のサブバッチに分けて、Qiagen EndoFreeプラスミドギガキット(Qiagenカタログ番号12391)を使用して精製した。精製後、4個のサブバッチのそれぞれを2〜8℃で保存した。4個のサブバッチをプールして、エンドトキシンフリーの10mMトリスHCl、1mM EDTA、pH8.0を使用して、最終濃度0.5±0.2mg/mLに希釈した。精製PVS−RIPOプラスミドDNAを、2mLクライオバイアルに1.0±0.1mLアリコートで充填してPVS−RIPOプラスミドDNAロットL0305007としてラベル表示し、さらなる製造での使用のために−70℃以下で保存した。PVS−RIPOプラスミドDNAロットL0305007の試験の要約を表6に提供する。
【表6】
【0179】
d.精製PVSRIPOプラスミドDNAロットL0401014を生産するための発酵およびDNA精製
精製PVS−RIPOプラスミドDNAロットL0305007およびGMP DH5アルファコンピテントワーキングセルバンクロットL0303011を、DNA形質転換のために使用して、精製PVSRIPOプラスミドDNAロットL0401014を生産した。コンピテント細胞(DH5αコンピテントワーキングセルバンクロットL0303011)を解凍して、穏やかに混合し、冷却したポリプロピレン微量遠心チューブ(濡れた氷上)に100μLアリコートで移した。
【0180】
精製DNAロットL0305007を、エンドトキシンフリーの10mMトリス−HCl、pH8.0、1mM EDTA中で10倍希釈した。希釈したDNA 1マイクロリットルを、コンピテント細胞アリコートを含有する微量遠心チューブに添加した。微量遠心チューブの内容物を穏やかに混合した。コンピテント細胞/精製DNA懸濁液を氷上で30±1分間インキュベートした後、40±2℃に設定した水浴中で45±2秒間の熱ショックステップに供した。コンピテント細胞/精製DNA懸濁液を濡れた氷上に2分間置いた。室温のソイ−LB培地(0.9mL)をそれぞれの微量遠心チューブに添加した。ソイ−LB培地調合を表4に記述する。懸濁液を120RPMの速度設定で37±1℃で61分間振とうさせて、50μg/mLカナマイシンと共に調製した選択的寒天プレート(ソイ−LB寒天プレート)に100μL、200μL、および400μLアリコートを広げた。選択的寒天培地を表5に記述する。プレートを37±1℃で20時間58分間インキュベートして、翌日、コロニーの成長に関して調べた。
【0181】
250mLバッフル付きフラスコ中で50μg/mLカナマイシンを含有するソイ−LB培地50mLを使用して、12個のスターター培養物を調製した。12個のスターター培養物のそれぞれに、選択的寒天プレートからの新しい単一コロニーを接種した。12個のスターター培養物を、600nmの吸光度(OD600)での光学密度が1超または1に等しくなるまで22時間成長させた。インキュベーションは、120RPMの速度に設定した37±1℃のシェーカー/インキュベータ中で実施した。翌日、12個のスターター培養物のそれぞれを、Mun Iを使用する制限酵素消化によって分析すると、バンドは予測されるサイズの10%以内であることが見出された(試験報告QC−020628)。スターター培養物の1つを使用して、50μg/mLカナマイシンを富化したソイ−LB培地600mLを含有する4個の2Lシェークフラスコのそれぞれに接種物3mL(0.5%)を与えた。接種した2Lシェークフラスコをシェーカー/インキュベータ内で18.5時間成長させた。インキュベーションは、120RPMの速度に設定して37±1℃で実施した。培養物を制限酵素消化によって調べると、対照および予想されるパターンと一致することが見出された。培養物を4℃および6,000×gで15分間の遠心分離によって採取した。細胞を収集して、4個のサブバッチに分割し、Qiagen EndoFreeプラスミドギガキット(Qiagenカタログ番号12391)を使用して精製した。4個のサブバッチのそれぞれを制限酵素消化によって試験すると、対照および予想パターンと一致することが見出された。4個のサブバッチをプールして、エンドトキシンフリーの10mMトリス−HCl、1mM EDTA、pH8.0を使用して、最終濃度0.3±0.2mg/mLとなるように希釈した。精製PVSRIPOプラスミドDNAを、2mLクライオバイアルに1.0±0.1mLアリコートで充填して、PVSRIPOプラスミドDNAロット0401014としてラベル表示し、さらなる製造での使用のために−70℃以下で保存した。
【0182】
PVSRIPOプラスミドDNAロットL0401014が適格であることを確認するために実施した試験、方法、規格、および結果を、分析証明書(図12)に示す。
【0183】
PVSRIPO初回ウイルスシードロットL0402026(P0)の生産
BDPウイルス生産施設で実施されたPVSRIPO初回ウイルスシードロットL0402026(P0)を生産するための製造プロセスを、図13に要約して、以下に記述する。
【0184】
a.宿主細胞系の説明および試験
Vero細胞(世界保健機構[WHO]シード、継代数134、1987年10月)を使用して、Vero MCBロット2003−0049を作製した。Vero細胞をトリプシン処理によって採取した。遠心分離後、Vero細胞を、90%ウシ胎児血清(FBS)および10%ジメチルスルホキシド(DMSO)の凍結保護剤溶液中で濃度およそ1×10個の細胞/mLで再懸濁させた。Vero MCBロット2003−0049の放出試験、方法、規格、および結果の要約を、図14に示す分析証明書に含める。
【0185】
Vero WCBロット217002−2は、Vero MCBロット2003−0049の増大によって生産した。Vero MCBロット2003−0049の1個のバイアルを使用してVero WCBを開始した。高グルコース、L−グルタミン、Hepes、およびFBSを含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で4回継代後、WCBを体積1mL/バイアルおよび濃度4.7×10個の細胞/mLでバイアルに充填した。VeroマスターWCBロット217002−2としてラベル表示されるバイアルを気相式液体窒素に入れた。Vero WCBロット217002−2の放出試験、方法、規格、および結果の要約を、図15に含める。放出試験の1つは、4回継代されている細胞を使用してVeroワーキングセルバンクロット217002−2について実施した腫瘍形成能試験であった。試験結果から、Vero WCBがこれらの条件下で非腫瘍形成性であることが示された。Vero WCB、ロット217002−2を、PVSRIPOウイルス生産を通して使用した。WCBからの開始継代数は、継代数142であった。
【0186】
b.PVS−RIPO RNAを合成するためのin vitro転写(L0402001)
PVS−RIPOプラスミドDNAロットL0401014を使用して、in vitro転写によってPVS−RIPO RNAロットL0402001を生産した。PVS−RIPOプラスミドDNAロットL0401014 40μgをSal I消化によって線状にした。線状化DNAをフェノールおよびクロロホルムで抽出し、エタノール沈殿を−70℃以下で一晩実施した。DNAを、DNアーゼ/RNアーゼフリーの蒸留水40μL中に再懸濁させた。消化/精製前および消化/精製後のプラスミドDNAの試料を、アガロースゲル電気泳動によって分析して、産物サイズおよび回収率を確認した。
【0187】
線状化DNA 20μgを鋳型として使用して、2つの同一の反応においてPVSRIPO RNAを合成した。それぞれの反応は、線状化DNA 10μgを使用して実施した。反応を開始するために、線状化プラスミドDNA 10μgを、in−vitro転写反応ミックス(RiboMAX大規模RNA産生システム、Promega、カタログ番号P1300)に、最終体積100μLとなるように添加した。転写反応を37±1℃で2.5〜3時間インキュベートした。反応が完了したとき、反応チューブを−70℃以下の保管庫に入れた。
【0188】
産物サイズをチェックして反応からのRNAの収率を推定するために、反応混合物をDNアーゼ/RNアーゼフリーの蒸留水およびRNA試料緩衝液を使用して1対10または1対20で希釈した。次に、希釈した反応混合物を、RNA変性アガロースゲル[Reliantゲル、1×MOPS緩衝液中の1.25% SeaKem Gold、Lonza(以前にCambrexとして公知)カタログ番号54948]にRNAラダー標準物質(RNAラダー、0.24〜9.5kb、Invitrogen、カタログ番号15620−016)と共にロードした。アガロースゲルにおいて観察されたRNA in vitro転写産物は、予想されるサイズを有することが見出された。反応混合物中のRNAの推定濃度は6.6mg/mLであった。
【0189】
c.PVSRIPO初回ウイルスシード(ロットL0402026)を生産するための電気穿孔
適格のワーキングセルバンク(WCB)ロット217002−2からのVero細胞を、電気穿孔ステップで使用した。Vero WCBは、BDPで確立され、本明細書において記載される。Vero細胞WCBロットL217002−2の2個のバイアルを、L−グルタミンおよび10%ウシ胎児血清を含むフェノールレッド不含ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)において増大させて、37℃および5%COの設定で3回継代の間インキュベートした。トリプシン−EDTA(0.05%トリプシン、0.53mM EDTA)を添加して、37℃および5%COの設定で4〜6分間インキュベートすることによって、Vero細胞をトリプシン処理した。トリプシン処理細胞を収集して、およそ4℃および1000RPMで10分間遠心分離した。収集した細胞をPBS(カルシウムおよびマグネシウムを含まない)100±2mLに懸濁させた。細胞懸濁液の試料を使用して細胞カウントを決定した。残りの細胞を、1000RPMおよび4℃の設定で10分間の遠心分離によって収集した。清澄化したPBSを除去して、細胞ペレットを、最終計算細胞密度1.25×10個の細胞/mLとなるように新しいPBSに再懸濁させた。
【0190】
PVS−RIPO RNA(in vitro転写ロットL0402001)およそ55μgと、増大させたVero細胞9±0.2mLとを混合して、0.8±0.01mLアリコートでキュベットに移した。キュベットの内容物を、Bio−Rad Gene Pulser II電気穿孔ユニットを使用して、0.5キロボルト(kv)および0.25マイクロファラッド(μF)で2回の電気ショックに供した。室温で15〜20分間インキュベーション後、キュベットの内容物を、次に、DMEM/F12培地(Invitrogen、カタログ番号21041−025)を含むT75フラスコに移した。T75フラスコを33℃および5%COの設定でインキュベートした。同じプロセスを繰り返して、PVS−RIPO RNAをトランスフェクトしたVero細胞のT75フラスコを全体で20個作製した。2つのさらなる対照フラスコは、電気穿孔後のVero細胞、および電気穿孔に供しなかったVero細胞のみを含有した。フラスコの内容物を、インキュベーション期間の間、細胞変性効果(CPE)に関してモニターした。PVS−RIPO RNAをトランスフェクトしたVero細胞を含有する全てのフラスコにおいて、完全なCPEがインキュベーションの3日目に観察された。
【0191】
バイオセーフティキャビネットにおいて作業して、フラスコの内容物を採取した後、遠心分離によって清澄化して、最初のウイルスシードロットL0402026(P0)を得た。2500RPMの設定での32分間の遠心分離後、PVS−RIPOウイルスを含有する上清を収集した。次に、上清をプールして、6個の125mLポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)ボトルに60mLアリコートで移し、4個の2mLクライオバイアルに1mLアリコートで移した。試料を、インプロセス試験のためのプロセス解析(生物学的製剤品質管理としても公知である)に提出した。6個のボトルをPVS−RIPO電気穿孔後シードロットL0402026としてラベル表示し、−70℃以下の保管庫に移した。
【0192】
PVSRIPOマスターウイルスシードロットL0403006(P1)の生産および試験
PVSRIPOマスターウイルスシードロットL0403006(P1)製造プロセスを図16に要約する。
【0193】
a.Vero細胞の増大
Vero細胞(WCBロット217002−2)の2個のバイアルを、L−グルタミンおよび10%FBS(Hycloneカタログ番号SH30070.03IR)を含むフェノールレッド不含DMEM(DMEM、Invitrogenカタログ番号21063)を含有する2個の25cm(T25)フラスコに播種して、37℃および5%COに設定したCOインキュベータにおいてインキュベートした。Vero細胞を3回継代後、該Vero細胞をさらに50個の162cm(T162)フラスコに増大させた。3回目の継代のインキュベーションの3日目に、50個のT162フラスコの内容物を、顕微鏡下で調べて、細胞の状態を決定した。純粋な培養物で少なくとも95%コンフルエントである43個のフラスコを選択した。選択したT162フラスコのうちの1つ中の細胞を調べて、細胞数および生存率を決定し、選択したフラスコのもう1つを「細胞品質管理」フラスコとしてインキュベートした。選択したT162フラスコの残りの41個のうち、1つのフラスコを、フェノールレッド不含のDMEM:栄養混合物F12の1:1混合物(DMEM/F12、Invitrogen、カタログ番号21041)の接種後に陰性対照として維持した。
【0194】
b.PVS−RIPOマスターウイルスシード(L0403006)の感染および採取
PVS−RIPO電気穿孔後シードロットL0402026を−70℃以下の保管庫から取り出して室温で解凍した。PVS−RIPO電気穿孔後シードロットL0402026を、DMEM/F12培地を使用して希釈し、40個のT162フラスコ(増大させたVero細胞を含有する)に、PVS−RIPO電気穿孔後シードロットL0402026を感染多重度(MOI)0.5で感染させた。接種したフラスコを、新しいDMEM/F12細胞培養培地の添加後、33℃および5%COでインキュベートした。
【0195】
ウイルス感染フラスコおよび対照フラスコを、インキュベーションの間、目に見える汚染、細胞の状態、およびパーセントコンフルエンシーなどの属性に関してモニターした。感染の70時間後、インキュベーションを終了して、フラスコを、目に見える汚染、細胞状態、およびパーセントコンフルエンシーなどの属性に関して調べた後、採取するためにバイオセーフティキャビネット(BSC)に移した。フラスコの内容物を遠心ボトルに移して、4℃および2500RPMの設定で33分間遠心分離して、細胞デブリを除去した。PVS−RIPOウイルスを含有する上清を850cmローラーボトルにプールした。プールした上清を2個の30mLおよび24個の125mL PETGボトルにそれぞれ、20±1mLおよび80±5mLアリコートで移した。さらに、12個の2mLクライオバイアルに1±0.2mLアリコートで充填した。残りの上清(全体で3.8mL)を3個の2mLクライオバイアルに移して全体で15個の2mLクライオバイアルを得た。PETGボトルおよびバイアルをそれぞれ、PVSRIPOマスターウイルスシードロットL0403006としてラベル表示した。11個の2mLクライオバイアル、23個の125mL PETGボトル、および2個の30mL PETGボトルを−70℃以下で凍結して、その後−70℃以下の制御保管庫に移した。2mLクライオバイアルのうち4個を、力価(pfuおよびTCID50による)、ウイルス粒子、およびDNA配列放出試験に関してプロセス解析(PA)/生物学的製剤品質管理(BQC)に提出した。放出試験の残りを、適切なアッセイとして実施し、PVSRIPO材料取り扱い手順を開発した。残りの125mL PETGボトル(20±1mL充填)を−70℃以下で凍結した。
【0196】
偽感染フラスコ(陰性対照)の上清もまた収集してバイアルに充填した。プロセスコントロール材料20±1mLをそれぞれ含む2個の30mL PETGボトルと、プロセスコントロール材料1±0.2mLをそれぞれ含む4個の2mLクライオバイアルを作製して、「PVSRIPOプロセスコントロール」としてラベル表示した。2個の30mL PETGボトルを、試験のためにPA/BQCに移した。4個の2mLクライオバイアルを−70℃以下で凍結して、−70℃以下の制御保管庫に入れた。
【0197】
PVSRIPOマスターウイルスシードロットL0403006の放出試験を、図17に含める分析証明書に要約する。
【0198】
c.in vitro外来ウイルスアッセイ
in vitro外来ウイルス試験を、PVS−RIPOマスターウイルスシードロットL0403006について実施した。アッセイは、細胞変性効果(CPE)、血球吸着(HAD)、および血球凝集(HA)に関して3つのタイプの指標細胞株の観察を通して外来ウイルス夾雑物の存在に関して試験品目を評価するために実施した。外来因子を検出するために利用した細胞は、Vero、MRC−5、およびA549である。全てが、PVS−RIPOによる感染に対して感受性であり、結果としてCPEを有する。したがって、試験を実施するためには、試験試料中のPVS−RIPOを中和しなければならない。本発明者らは、アッセイに干渉対照を含めて、アデノウイルス5、パラインフルエンザ3およびヘルペスウイルスを利用した。ウイルスを10pfuおよび100pfuに希釈して、PVS−RIPOと同じ中和手順に供した。偽中和対照を含めた。全てのウイルスが、偽中和対照と同じ期間および同じ濃度で検出された。抗体によって検出可能な効果はなく、またはこれらの他のモデルウイルスの検出に及ぼす中和手順そのものの効果はないようであった。
【0199】
試験を実施するために、使用した3つの指標細胞培養物は:MRC−5、正常なヒト男性胚細胞培養物;Vero、アフリカミドリザル(Cercopithecus aethiops)腎臓株、およびA549、ヒト成人男性肺癌であった。これらの指標細胞培養物を、ポリオウイルスI型抗血清で中和されている試験試料に接種して、週に少なくとも3回、少なくとも28日間調べた。[中和手順は、以下の手順を使用して接種前に実施した:試験品目を、2〜8℃、1400rpmで10分間遠心分離した後、FDA(Evgenia Dragunsky/CBER)から得たポリオウイルスI型抗血清の1:2.5倍希釈物の等量(3.0mL)と混合して、36±2℃で1時間インキュベートした。それぞれの細胞株に、この溶液の0.2mL/ウェルを添加して、36±2℃で1時間インキュベートした後、接種物を除去して、細胞を適当な培地2.0mLで洗浄した。次に、この洗浄液を除去して、新しい培地2.0mLと交換して、細胞を36±2℃のインキュベータに戻した。]
【0200】
培養物を、ウイルス因子の存在に起因する形態の任意の変化の発生に関して調べた。インキュベーション期間のおわりに、培養物を、ニワトリ赤血球、モルモット赤血球、およびヒト赤血球を使用して血球凝集および血球吸着に関して調べた。パラインフルエンザ3をアッセイの陽性対照として使用した。干渉対照のために利用したウイルスは、FDAから得たポリオウイルスI型抗血清によって中和したアデノウイルス5、ヘルペスウイルス、およびパラインフルエンザウイルス3であった。10%FBSを含むDMEMをVeroおよびMRC−5細胞の陰性対照として使用し、10%FBSを含むF−12KをA549細胞の陰性対照として使用した。
【0201】
d.in vivo外来ウイルスアッセイ(AVA)
PVS−RIPOマスターウイルスシードロットL0403006を、in vivoでモルモット(改良ヨーロッパ型)、成体マウス、哺乳期マウス、および孵化鶏卵において、承認された手順に従って外来ウイルスに関して評価した。このアッセイの目的は、細胞株に存在しうるが、細胞培養系においていかなる区別可能な効果も引き起こさないウイルスの存在に関して試験試料を評価することであった。MVSロットL0403006に対するin vivo AVA試験を完了するために、試験試料を中和して、アッセイで使用するPVS−RIPO試験試料の高濃度に起因する試験動物における潜在的な非特異的毒性を回避した。PVS−RIPOウイルス負荷に起因する非特異的毒性は、試料に存在しうる他の外来因子の検出を妨害しうる。抗体が、他の外来因子の検出に及ぼす効果を有しうるかどうかを決定するために、上記のようにin vitroアッセイにおいて抗体に関して干渉対照を設定した。
【0202】
モルモットは、パラミクソウイルス(センダイ)およびレオウイルスを含む多数のウイルス因子に感染しやすい。モルモットに筋肉内および腹腔内経路の両方を使用して試験品目を接種して、少なくとも28日間試験のために維持した。試験試料を、37℃に設定した水浴中で解凍し、次に、中和抗体の等量と混合した。試験品目/中和抗体混合物を、20分毎に穏やかに混合しながら37℃に設定した水浴中で1時間維持した。5匹の成体モルモットに、調製した試験品目を、0.2mLの筋肉内注射および5.0mLの腹腔内注射により接種した。5匹の他の成体モルモットに、陰性対照としてイーグル最少必須培地を、0.2mLの筋肉内注射および5.0mLの腹腔内注射により接種した。各動物を有病率または死亡率に関して28日間毎日観察した。
【0203】
成体マウスは、コクサッキーウイルスおよびフラビウイルス群のメンバー(セントルイス脳炎ウイルスおよび日本脳炎ウイルス)を含む多数のウイルス因子に感染しやすい。新生児哺乳期マウスは、トガウイルス、ブニヤウイルス、フラビウイルス、ピコルナウイルス(ポリオウイルス、コクサッキーウイルスAおよびB群、エコーウイルス)、およびヘルペスウイルスを含む広範囲のウイルスに感染しやすい。孵化鶏卵には、尿膜および卵黄嚢の両方を通して接種する。尿膜経路による接種は、尿膜の内胚葉細胞におけるオルトミクソウイルス(インフルエンザウイルス)およびパラミクソウイルス(パラインフルエンザ、ムンプス、および麻疹)の複製にとって都合がよい。卵黄嚢を通しての接種は、ヘルペスウイルス、リケッチア、マイコプラズマ、および細菌の繁殖にとって都合がよい。接種した哺乳期マウスおよび接種した孵化鶏卵からの材料を、新しい試験系への副次継代(subpassage)は、このアッセイの感度を増加させる役割を果たす。なぜなら、元の接種物に存在するいかなるウイルス因子も新しい試験系において増幅されるからである。
【0204】
孵化鶏卵
試験品目および中和抗体を37±2℃の水浴を使用して解凍した。試験品目および中和抗体を1:1の比率で混合して60分間インキュベートした。接種の前に、陰性対照のために使用したイーグル最少必須培地(EMEM)と、試験品目抗体希釈物の両方を、0.45ミクロンの酢酸セルロース低タンパク質結合フィルターを通して濾過した。
【0205】
接種経路あたり6個の鶏卵を送達対照とした。これらを、各作業日にろうそくの光を当てて生存能について調べ、孵化期間の終わりに冷却した。これらの鶏卵は、採取しなかったか、または冷却後に調べた。
【0206】
尿膜試験:12個の鶏卵(10日齢)の尿膜腔に、調製した試験品目0.5mLを接種した。鶏卵を37〜38℃で3日間孵化した。胚を各作業日にろうそくの光を当てて生存能について調べた。孵化期間の終了前に死んだ胚は冷却し、全ての胚を孵化期間の終わりに調べた。継代1(P1)の尿膜腔液を採取して、プールし、血球凝集活性(HA)に関してアッセイするまで、または10個の鶏卵(11日齢)の第2の組に副次継代するまで−60℃またはそれ未満で保存した。第2の組の鶏卵に接種する前に、副次継代した材料を、低速遠心分離によって清澄化して、0.45ミクロン酢酸セルロース低タンパク質結合フィルターを通して濾過した。第2の組の鶏卵を、第1の組と同じ条件下で孵化した。次に、継代2(P2)の尿膜腔液を採取して、プールし、HAに関してアッセイするまで−60℃またはそれ未満で保存し、その時点の後に胚を調べた。陰性対照を確立するために、0.45ミクロン濾過したEMEMを初回接種物として使用して、さらに2組の孵化鶏卵に関してこの手順を並行して実施した。
【0207】
卵黄嚢試験:12個の孵化鶏卵(6日齢)の卵黄嚢に、調製した試験品目0.5mLを接種した。鶏卵を37〜38℃で9日間孵化した。胚を各作業日にろうそくの光を当てて生存能について調べた。孵化期間の終了前に死んだ胚を冷却し、全ての胚を孵化期間の終わりに調べた。P1の卵黄嚢を採取して、洗浄し、プールした。10%卵黄嚢懸濁液を調製して、12個の鶏卵(6日齢)の第2の組に副次継代するまで−60℃またはそれ未満で保存した。第2の組の鶏卵に接種する前に、副次継代した材料を、低速遠心分離によって清澄化して、0.45ミクロン酢酸セルロース低タンパク質結合フィルターを通して濾過した。第2の組の鶏卵を、第1の組と同じ条件下で孵化させて、その時点の後に胚を調べた。陰性対照を確立するために、0.45ミクロン濾過したEMEMを初回接種物として使用して、さらに2組の孵化鶏卵に関してこの手順を並行して実施した。
【0208】
P1およびP2の両方のプールした尿膜腔液、対応するP1およびP2陰性対照、陽性対照の役割を果たすストックのインフルエンザA型ウイルスの連続2倍希釈物を作製することによって、血球凝集アッセイをマイクロタイタープレートにおいて実施した。EMEMは、アッセイの陰性対照としての役割を果たした。洗浄したニワトリ赤血球、モルモット赤血球、およびヒトO型の赤血球を0.5%懸濁液として個別に添加した。反復実験のプレート(replicate plate)を、2〜8℃および37±2℃の両方で1〜2時間インキュベーション後にHA活性に関して観察した。
【0209】
試験品目は、接種した胚の少なくとも80%が試験期間に生存すれば(外傷または細菌の汚染により死んだ胚を除く)、外観が正常であれば、および接種した胚から収集した尿膜腔液が血球凝集を生じなければ、検出可能な外来ウイルス夾雑物の存在に関して陰性であるとみなされた。
【0210】
成体および哺乳期のマウス
凍結した試験品目を37℃に設定した水浴中で解凍した後、等量の中和抗体と混合した。試験品目/中和抗体混合物を37℃に設定した水浴中で、15分毎に穏やかに混合しながら1時間維持した。20匹の成体マウスに、調製した試験品目を接種し、5匹の成体マウスに対照品目(EMEM)を接種した。各試験マウスまたは対照マウスに、適切な材料の0.03mLの脳内注射および0.5mLの腹腔内注射を行った。動物を、感染を示唆する臨床徴候に関して毎日観察した。接種後21日目に、マウスを屠殺した。
【0211】
20匹の新生児哺乳期マウスに、調製した試験品目を接種し、20匹の新生児哺乳期マウスに対照品目を接種した。各マウスに、適切な材料の0.01mLの脳内注射および0.1mLの腹腔内注射を行った。動物を、異常な臨床徴候に関して毎日観察した。接種後14日目に、マウスを屠殺して組織を採取し、ホモジナイズして、試験群または対照群内でプールした。組織をEMEMでホモジナイズし、低速で遠心分離した。組織ホモジネートを、適切なサイズの注射用シリンジに取り付けた低タンパク質結合0.45ミクロン酢酸セルロースフィルターを通して濾過した。20匹の新生児哺乳期マウスに、試験マウス組織上清を接種し、20匹のマウスに対照マウス組織上清(0.01mLの脳内注射および0.1mLの腹腔内注射)を注射した。組織ホモジネートの注射後14日目に、マウスを屠殺した。
【0212】
試験品目は、哺乳期マウスの少なくとも80%および成体マウスの少なくとも80%が、夾雑物である外来の伝染性因子と整合する有害な臨床知見を示すことなく、試験期間に生存していれば、検出可能な外来のウイルス夾雑物の存在に関して陰性であるとみなされた。
【0213】
PVSRIPO精製滅菌バルクロットL0904009(P2)の生産
PVS−RIPO精製滅菌バルクロットL0904009(P2)を生産するための製造プロセスを図18A〜18Bに説明する。PVS−RIPO精製滅菌バルクロットL0904009を、出発材料としてVeroワーキングセルバンク(WCB)ロット217002−2およびMVSロットL0403006を使用して製造した。Vero WCBロット217002−2の3個のバイアルを増大させて、10個の6360cmセルファクトリーにおいて細胞増大ロットL0903010を生産した。細胞増大ロットL0903010にPVSRIPO MVSロットL0403006を感染させ、採取した材料(採取プールロットL0904008)を、PVSRIPO精製バルクロットL0903007およびその後のPVSRIPO精製滅菌バルクロットL0904009の生産のために使用した。
【0214】
a.Vero細胞の開始および増大
細胞増大ロットL0903010からのVero細胞を、細胞採取ロットL0904008の生産のために使用した。増大を通して、Vero細胞を、L−グルタミンおよび10%放射線照射ウシ胎児血清(FBS)を補充したDMEMにおいて成長させて、37℃および5%COの設定でインキュベートした。Veroワーキングセルバンク(WCB)ロット217002−2の3個のバイアルを、37±2℃の水浴中で解凍して、これを使用して、およそ50,864個の細胞/cmの密度で1つのT−162cmフラスコに播種した(凍結からの継代数1)。上記の増殖培地および条件を使用して、細胞をT−162cmフラスコから6360cmセルファクトリー、636cmセルファクトリー、およびT−150cmフラスコへと増大させ、全体で凍結物から5回の継代を行った(図18A〜18Bを参照されたい)。
【0215】
b.Vero細胞の感染
感染細胞溶解物ロットL0904008を生産するために、95〜100%コンフルエンスの健康な細胞を含有し、目に見える汚染の兆候を有しないVero細胞ロットL0903010(10個の6360cmセルファクトリー、3個の636cmセルファクトリー、および5個のT−150cmフラスコ)を使用した。4個のPVS−RIPOマスターウイルスシード(MVS)ロットL0403006ボトル(MVSアリコート80mLを有する125mL PETGボトル)を、−70℃以下の制御保管庫から取り出して、33〜38℃の水浴中で解凍し、感染プロセスにおいて感染多重度(MOI)0.1pfu/細胞で使用した。解凍したMVSロットL0403006 265mLを、調製された感染培地(L−グルタミンを含む、Hepesおよびフェノールレッド不含DMEM/F12)に添加して、全量およそ8リットルの感染培地調合物を調製した。
【0216】
洗浄培地(L−グルタミンを含む、Hepesおよびフェノールレッド不含DMEM/F12)およそ750mLで洗浄した後、調製し調合された感染培地およそ750mLを満たすことによって、10個の6360cmセルファクトリーを感染のために調製した。陽性対照および陰性対照も同様に調製した。感染したセルファクトリーおよび対照を、33℃、5%CO濃度、および80%湿度の設定でインキュベートした。感染の70時間後に、100%の細胞変性効果(CPE)が9個のセルファクトリーにおいて、および1つのセルファクトリーにおいて80%CPEが示され、対照フラスコのそれぞれにおいて予想された結果が示された。
【0217】
c.感染細胞溶解物の採取および清澄化
PVS−RIPOウイルス感染細胞懸濁液ロットL0904008を、それぞれのセルファクトリーから採取して、滅菌培地バッグにプールした。PVSRIPO採取プールロットL0904008の放出試験のために、感染細胞懸濁液から試料を採取した。PVSRIPO採取プールロットL0904008の放出試験の試験、規格、方法、および結果を要約する分析証明書を、図19に含める。
【0218】
感染細胞懸濁液を、1Lポリカーボネート遠心ボトルにおよそ750mLアリコートで移した。感染細胞懸濁液を4℃および3800×gの設定でおよそ20分間遠心分離した。遠心ボトルのそれぞれからの清澄化上清を滅菌10L培地バッグにプールして、室温で精製群(Purification Group)に移した。
【0219】
d.最終採取物のBenzonase処理
PVS−RIPO精製バルクロットL0903007の生産の際の宿主ゲノムDNAのレベルを低減させるために、清澄化したPVSRIPOロットL0904008採取物をBenzonase(登録商標)酵素とともにインキュベートした。Benzonase(登録商標)酵素の添加前に、塩化マグネシウムを、1mM最終濃度となるように、清澄化したPVSRIPOロットL0904008採取物に混合しながら添加した。Benzonase(登録商標)酵素を、混合しながら最終濃度50単位/mLとなるように添加した。バッグを2〜8℃で16時間インキュベートした。Benzonase(登録商標)酵素処理溶解物を2〜8℃で除去して試料を採取した。プラークアッセイを使用して試料を分析し、ウイルス力価を決定した。
【0220】
e.Sepharose 6 Fast Flowクロマトグラフィー
Sepharose 6 FFクロマトグラフィーステップは、PVS−RIPO精製バルクロットL0903007の生産の際の緩衝液交換、および低分子量の宿主細胞夾雑物からのウイルスプールの部分精製を提供する。Sepharose 6 Fast Flow(FF)樹脂(GE Healthcare−Biosciences、Piscataway、NJ)を充填したクロマトグラフィーカラムを使用して、さらに精製するための用意として、ウイルスの緩衝液を、低伝導度リン酸緩衝液に交換した。Benzonase(登録商標)酵素処理溶解物をロードする前に、Sepharose 6FFカラムに5M NaClを流し、4.7mM NaPO、1M NaCl、pH 7.5を満たし、4.7mM NaPO、42mM NaCl、pH 7.5によって平衡化した。Benzonase処理溶解物を、2009年5月19日に2回の等量の注入でSepharose 6FFカラムにロードした。産物を4.7mM NaPO、42mM NaCl、pH 7.5によって溶出し、両方の注入からのPVS−RIPOメインピーク画分を、同じ受容バッグに収集した。収集した溶出物の試料を、プラークアッセイを使用して分析して、ウイルス力価を決定した。PVS−RIPOメインピークを2〜8℃で保存した。
【0221】
f.Q650Mフロースルークロマトグラフィー
Sepharose 6 FFステップの後、ロットL0903007の溶出物を、Q650Mフロースルークロマトグラフィーカラムにアプライして、残りの宿主細胞タンパク質夾雑物を非結合ウイルスから除去した。クロマトグラフィーカラムにSuper Q 650M樹脂を充填して、5M NaClを流した後に、4.7mM NaPO、1M NaCl、pH 7.5を満たし、4.7mM NaPO、42mM NaCl、pH 7.5を使用して平衡化することによってカラムを調製した。カラムに、PVS−RIPO Sepharose 6FFメインピークをロードして、ウイルス産物を含有するフロースルーを収集した。溶出の際に使用した緩衝液は、4.7mM NaPO、42mM NaCl、pH 7.5であった。収集したQ650MメインピークのNaCl濃度を、5M NaClを使用して150mM NaClに調節した。Q650Mメインピーク材料をサンプリングした後、2〜8℃で保存した。試料を、プラークアッセイを使用して分析して、ウイルス力価を決定した。
【0222】
g.接線流濾過による濃縮および透析濾過
Q650MメインピークロットL0903007材料を2〜8℃の保管庫から取り出して、限外濾過中空繊維メンブレン(GE Healthcare、UFP−50−C−4MA)を使用して濃縮した。次に、濃縮したウイルス材料を調合緩衝液(50mM NaPO、150mM NaCl、pH 7.4)に対して透析濾過した。透析濾過したPVS−RIPO溶液の試料をプラークアッセイによって分析して、ウイルス力価を決定した。HSA(25%)を、透析濾過したPVS−RIPOロットL0903007に最終濃度0.2%となるように添加した。調合したPVS−RIPOの試料をプラークアッセイおよび微生物含有量によって分析した。
【0223】
h.PVS−RIPOのバルクアリコート、サンプリング、および保存
調合したPVS−RIPO精製バルクロットL0903007をクラス100バイオセーフティキャビネットに移して、9個の125mL PETGボトルにそれぞれおよそ30mLの体積で分配した。PVS−RIPO精製バルクロットL0903007の9個のボトルを、ラベルを貼ってエタノール/ドライアイス浴中で凍結して、さらに製造に使用するために−70℃以下で保存した。PVS−RIPO精製バルクロットL0903007を−70℃以下の制御保管庫に移した。
【0224】
i.精製滅菌バルクロットL0904009(P2)
PVS−RIPO精製バルクロットL0903007の9個のボトルを、−70℃以下の制御保管庫から取り出して、−70℃以下のフリーザーに移した。PVS−RIPO精製バルクロットL0903007の9個のボトルを、24〜31℃の水浴中で解凍した。産物の温度は11〜17℃であった。総解凍時間は43分であった。9個の容器の内容物を1L PETGボトルにプールして、最終総体積271.09mLを得た。プールしたPVS−RIPO精製バルクロットL0903007をポンプで送って、使用前試験に合格し希釈剤(0.9%NaCl、pH 7.4中に50mM NaPO+0.2%HSA)で予め湿らせた0.2ミクロン滅菌Millipak 20(Millipore)フィルターに通した。産物の濾過後、フィルターに同じ希釈剤を流して全量283.24mLの濾過産物を得た。フィルターは、濾過後の完全性試験に合格した。試料を収集し(25.5mL)、精製滅菌バルクロットL0904009放出試験に関するプロセス解析/生物学的製剤品質管理に提供し、総最終体積257.74mLを残した。次に、精製滅菌バルクロットL0904009を、充填ステップに進めた。PVSRIPO採取プールロットL0904008の放出試験、方法、規格、および結果を図19に提供する。
【0225】
PVSRIPO採取プールロットL0904008の試験方法の説明
【0226】
a.ウイルス力価(TCID50アッセイ)
このアッセイは、PVS−RIPO採取プールロットL0904008、精製滅菌バルクロットL0904009、および最終バイアル充填製品ロットL0904010におけるPVS−RIPOウイルス力価を、Hep−2C指標細胞のTCID50によって決定するために実施した。希釈培地(4mM L−グルタミンおよび1%FBSを含むRPMI−1640)100マイクロリットル(100μL)を、個別の96ウェルプレート(参照標準物質、陽性対照および試験試料に関してそれぞれ個別のプレートを提供する)の各ウェルに加えた。FDAポリオウイルス1型参照標準物質(1:10000)、Sabin原型1型(Sabin Original Type 1)陽性対照ポリオウイルス(1:1000000)、および試験試料(1:1000000)の初回希釈物を、希釈培地(4mM L−グルタミンおよび1%FBSを含むRPMI−1640)によって調製した。各最終希釈物の100μLアリコートを、それぞれの96ウェルプレートの最初の列の8個のウェルのそれぞれに加えた。較正したマルチチャンネルピペッターを使用して、1列目の各ウェルから100μLを採取して、2列目の隣接するウェルに移して十分に混合して、次の列へと連続してプロセスを繰り返すことによって、連続1:2倍希釈物をそれぞれの96ウェルプレートにおいて作製した。FDA参照標準物質に関して、希釈は11列目で終了し、12列目は陰性対照ウェル(希釈培地のみを含有する)として使用した。11列目の過剰な100μLを廃棄した。陽性対照および試験品目に関しては、希釈スキームを第2の96ウェルプレートにおいて継続して、23列目で終了し、24列目を陰性対照ウェルとして使用した。増殖培地(4mM L−グルタミンおよび10%FBSを含むRPMI−1640)中のHep−2C細胞10000個(1×10個の細胞/mLを0.1mL)を、各96ウェルプレートの各ウェルに加えて、加湿5%COインキュベータ内で36±1℃で10日間インキュベートした。プレートを、1、3、7および10日目に細胞変性効果(CPE)に関して調べた。アッセイの完了の際に、各試料に関してCPEを示すウェルの数を、FDAによって提供された計算プログラムテンプレートの適当なフィールドに記入した。プログラムは、FDAポリオウイルス1型参照標準物質の応答に基づいて、各試料に関してTCID50/mLを計算する。
【0227】
b.拡張バイオバーデン
バイオバーデンは、水性試料中に存在する生きた好気性微生物の数の推定である。PVS−RIPO採取プールロットL0904008のバイオバーデン試験を、微生物を検出および計数するための迅速なハイスループット濾過デバイスであるMilliflex−Sensor IIシステムを使用して実施した。
【0228】
2つ組(duplicate)の試験試料(2.5mL)を、滅菌リン酸緩衝食塩水(PBS)によって50mLに希釈して、個別のMilliflex濾過漏斗の上部に直接添加した。陰性対照は、PBS 100mLを濾過することによって調製した。真空を各濾過デバイスに適用して、試験試料または対照をフィルターメンブレンに吸収させた。漏斗を外して、存在するいかなる微生物の増殖も促進するために、フィルターメンブレンを適切なタイプの寒天に適用した。2つ組の試験試料からのフィルターメンブレンの1つをトリプチックソイ寒天(TSA)(細菌の増殖を助けるために使用する)に適用し、他のフィルターメンブレンをSabouraudデキストロース寒天(SDA)(酵母およびカビの増殖を助けるため)に適用した。TSAおよびSDA媒体の両方を、原材料放出試験の一部として成長促進に関して試験した。TSA試料を30〜35℃で120時間インキュベートし、SDA試料を20〜25℃で逆の位置で120時間インキュベートした。インキュベーション期間の後、寒天プレートを増殖に関して調べて、コロニー(観察されれば)の数を計数して、コロニー形成単位/mLとして報告した。
【0229】
c.NIH/3T3細胞を使用したマイコプラズマの検出(PTC)
マイコプラズマの検出は、間接的および直接的手順の両方を使用して採取プールロットL0904008について実施した。
【0230】
間接的検出法は、マイコプラズマをNIH/3T3細胞(Swissマウス胚細胞株)上で成長させ、次いでDNA結合蛍光色素染色を使用して染色することによって、マイコプラズマ、特に培養不能マイコプラズマの可視化を可能にする。陰性対照および陽性対照の両方をアッセイで使用した。陽性対照は、強い細胞吸着性(M.hyorhinis)および弱い細胞吸着性(M. orale)のマイコプラズマ種の両方を含んだ。DNA結合蛍光色素による培養物の染色により、観察された染色パターンに基づいてマイコプラズマを検出することができる。陰性培養物では、細胞核の蛍光のみが観察されるが、陽性培養物では核および核外蛍光が観察される。
【0231】
直接培養は高感度で特異的なマイコプラズマの検出法である。使用した寒天培地およびブロス培地は、培養可能マイコプラズマの成長にとって必要な炭素およびエネルギーと共に栄養を供給する。陽性対照および陰性対照の両方を直接アッセイで使用した。陽性対照は、発酵性マイコプラズマ(M. pneumoniae)および非発酵性マイコプラズマ(M. orale)を含んだ。この手順は、FDA、Center for Biologics Evaluation and Researchによって推奨される、添付文書#2の1993年「Points to Consider in the Characterization of Cell Lines Used to Produce Biologicals」に記載されるプロトコールに基づく。
【0232】
d.カブトガニ血球抽出成分(LAL)によるエンドトキシン
PVSRIPO採取プールロットL0904008、精製滅菌バルクロットL0904009、およびPVSRIPO最終バイアル充填製品ロットL0904010のエンドトキシン(LAL)含有量を、動態発色試験を使用して決定した。試験は、試験品目中のエンドトキシンを決定するために、Limulus polyphemusアメボサイトの誘導体であるカブトガニ血球抽出成分の反応性に基づく。手順は、1987年12月に発行された、「Validation of the Limulus Amebocyte Lysate Test (LAL) as an End-Product Endotoxin Test for Human and Animal Parenteral Drug, Biological Products, and Medical Devices」に関するFDA指針に記載の推奨を満たすように設計される。
【0233】
発熱物質は、グラム陰性細菌細胞壁を起源とすることが最も多い熱産生物質である。細菌細胞壁由来の発熱物質は、細菌エンドトキシンと呼ばれ、動態比色LAL試験システムによって容易に検出される。動態比色LAL法は、検出されたエンドトキシンレベルの直接定量を提供し、低レベルのエンドトキシンの検出にとって特に有用である。試薬および標準物質は、製造元の指示に従って調製される。
【0234】
試験は、試験試料25μLをピペットで採取して、Endosafe−Licensed PTSエンドトキシンカートリッジの4つの試料リザーバーのそれぞれに加えることによって実施する。PTSは、試験試料を引き出して2つのチャネルでLAL試薬と混合し、他の2つのチャネルでLAL試薬と製品陽性対照(PPC)と混合する。試料をインキュベートした後、色素産生基質と混合する。混合後、ウェルの光学密度を測定して、内部保管のバッチ特異的標準曲線に対して分析する。PTSは、2つ組の試験を同時に実施して、USPのガイドラインに従って結果を平均する。アッセイは、変動係数(CV)が2つの試料反復実験の間で25%未満であり、CVが2つのPPC反復実験(replicate)の間で25%未満であれば有効である。結果は、PPCの回収率が50〜200%であれば有効である。このアッセイの検出限界は、0.005EU/mLである。
【0235】
e.rct40によるウイルス安定性
アッセイを使用して、Vero指標細胞でのプラーク形成によって、36℃および40℃で、採取プールロットL0904008、最終バイアル充填製品ロットL0904010、および対照におけるPVSRIPOの力価を決定した。36℃および40℃でのウイルスの力価の常用対数(log10 titer)を比較して、36℃と40℃の間での対数の低減が少なくとも5である場合、試料は、40℃での成長に対して感受性があると決定され、試験に合格したとみなされる。33℃での試料の力価も同様に決定して、33℃での試料の既に決定された力価と比較することができる。陽性対照はRCT 40+対照:ポリオウイルス1 SabinクローンS33ロットL0406008およびRCT 40−対照:ポリオウイルス1 SabinクローンS71ロットL0406004を含んだ。陰性対照は、10%FBSを含有するDMEMであった。
【0236】
Vero細胞を蒔いて80〜100パーセントコンフルエンスが達成されるまで成長させた。増殖培地を除去して、Vero細胞に試験試料または対照試料0.2mLを添加した。次に、反復実験の培養皿を33℃、36℃、および40℃でおよそ1時間インキュベートした。接種物を除去して、細胞シートにアガロース/2×イーグル最少必須培地(EMEM)を重層した。アガロースを固化させて、プラークが陽性対照において完全に形成されるまで、反復実験の培養皿を33℃、36℃、および40℃でインキュベートした(2日)。次に培養皿に、ニュートラルレッドを含有するアガロース/2×EMEMを暗所で重層して、ニュートラルレッドが細胞シートを染色した後、プラークを計数した。平均プラーク値を決定した。式:平均プラーク値×希釈倍率/接種体積、を使用して、力価(pfu/mL)を計算した。
【0237】
f.in vivo外来因子
PVS−RIPO採取プールロットL0904008を、in vivoで成体マウス、哺乳期マウス、および孵化鶏卵において外来ウイルスに関して評価した。このアッセイの目的は、細胞株に存在しうるが細胞培養システムにおいていかなる区別できる効果も引き起こさないウイルスの存在に関して試験試料を評価することであった。PVS−RIPO採取プールロットL0904008のin vivo AVA試験の前に、この試験を完了するために使用したアプローチを評価するために、QC−040664の下で、R&D試験を実施した。これらのR&D試験から、PVS−RIPOウイルス溶解物の調製物を2×10pfu/mLの濃度で投与した場合に、哺乳期マウスにおいて有害効果が観察されないことが示された。したがって、中和抗体処置を含めることなく、in vivo AVA試験を、PVS−RIPO採取プールロットL0904008について実施した。孵化鶏卵では、材料を非希釈(2.14×10TCID50/mL)で試験した。材料を次に、2×10pfu/mLに希釈して、成体マウスおよび哺乳期マウスにおいて試験した。
【0238】
成体マウスは、コクサッキーウイルスおよびフラビウイルス群のメンバー(セントルイス脳炎ウイルスおよび日本脳炎ウイルス)を含む多数のウイルス因子に感染しやすい。哺乳期マウスは、トガウイルス、ブニヤウイルス、フラビウイルス、ピコルナウイルス(ポリオウイルス、コクサッキーウイルスAおよびB群、エコーウイルス)、およびヘルペスウイルスを含む広範囲のウイルスに感染しやすい。孵化鶏卵には、尿膜および卵黄嚢の両方を通して接種する。尿膜経路による接種は、尿膜の内胚葉細胞におけるオルトミクソウイルス(インフルエンザウイルス)およびパラミクソウイルス(パラインフルエンザ、ムンプス、および麻疹)の複製にとって都合がよい。卵黄嚢を通しての接種は、ヘルペスウイルス、リケッチア、マイコプラズマ、および細菌の繁殖にとって都合がよい。接種した哺乳期マウスおよび接種した孵化鶏卵からの材料を、新しい試験系に副次継代することは、元の接種物に存在するいかなるウイルス因子もこの連続継代を通して増幅されることから、このアッセイの感度を増加させる役割を果たす。
【0239】
孵化鶏卵
接種経路あたり6個の鶏卵を送達対照とした。これらを、各作業日にろうそくの光を当てて生存能について調べ、孵化期間の終わりに冷却した。これらの鶏卵は、採取しなかったか、または冷却後に調べた。
【0240】
尿膜試験:12個の鶏卵(10日齢)の尿膜腔に、試験品目0.5mLを接種した。鶏卵を37〜38℃で3日間孵化した。胚を各作業日にろうそくの光を当てて生存能について調べた。孵化期間の終了前に死んだ胚は冷却し、全ての胚を孵化期間の終わりに調べた。継代1(P1)の尿膜腔液を採取して、プールし、血球凝集活性(HA)に関してアッセイするまで、または12個の鶏卵(10日齢)の第2の組に副次継代するまで−60℃またはそれ未満で保存した。第2の組の鶏卵に接種する前に、副次継代した材料を、低速遠心分離によって清澄化して、0.45ミクロン酢酸セルロース低タンパク質結合フィルターを通して濾過した。第2の組の鶏卵を、第1の組と同じ条件下で孵化した。次に、継代2(P2)の尿膜腔液を採取して、プールし、HAに関してアッセイするまで−60℃またはそれ未満で保存し、その時点の後に胚を調べた。陰性対照を確立するために、0.45ミクロン濾過したEMEMを初回接種物として使用して、さらに2組の孵化鶏卵に関してこの手順を並行して実施した。HAアッセイは、P1およびP2両方のプールした尿膜腔液、対応するP1およびP2陰性対照、および陽性対照としての役割を果たすストックインフルエンザA型ウイルスの連続2倍希釈物を作成することによって、マイクロタイタープレートで実施した。EMEMはアッセイの陰性対照としての役割を果たした。洗浄したニワトリ赤血球、モルモット赤血球、およびヒトO型の赤血球を個別に0.5%懸濁液として添加した。反復実験のプレートを2〜8℃および37±2℃の両方で1〜2時間インキュベーション後にHA活性に関して観察した。
【0241】
卵黄嚢試験:12個の孵化鶏卵(6日齢)の卵黄嚢に、0.45ミクロン濾過した試験品目0.5mLを接種した。鶏卵を37〜38℃で9日間孵化した。胚を各作業日にろうそくの光を当てて生存能について調べた。孵化期間の終了前に死んだ胚を冷却し、全ての胚を孵化期間の終わりに調べた。P1の卵黄嚢を採取して、洗浄し、プールした。10%卵黄嚢懸濁液を調製して、12個の鶏卵(6日齢)の第2の組に副次継代するまで−60℃またはそれ未満で保存した。第2の組の鶏卵に接種する前に、副次継代した材料を、低速遠心分離によって清澄化して、0.45ミクロン酢酸セルロース低タンパク質結合フィルターを通して濾過した。第2の組の鶏卵を、第1の組と同じ条件下で孵化させて、その時点の後に胚を調べた。陰性対照を確立するために、0.45ミクロン濾過したEMEMを初回接種物として使用して、さらに2組の孵化鶏卵に関してこの手順を並行して実施した。
【0242】
試験品目は、接種した胚の少なくとも80%が試験期間に生存すれば(外傷または細菌の汚染により死んだ胚を除く)、外観が正常であれば、および接種した胚から収集した尿膜腔液が血球凝集を生じなければ、検出可能な外来ウイルス夾雑物の存在に関して陰性であるとみなされた。
【0243】
成体マウスおよび哺乳期マウス
20匹の成体マウスに調製した試験品目を接種して、5匹の成体マウスに対照品目を接種した。感染を示唆する臨床徴候に関して、動物を毎日観察した。接種後21日目にマウスを屠殺した。20匹の新生児哺乳期マウスに、調製した試験品目を接種し、20匹の新生児哺乳期マウスに対照品目を接種した。動物を異常な臨床徴候に関して毎日観察した。接種後14日目に、マウスを屠殺して、組織を採取し、液化して試験群または対照群内でプールした。組織をEMEMでホモジナイズし、低速で遠心分離した。20匹の新生児哺乳期マウスに試験マウス組織上清を接種し、20匹のマウスに対照マウス組織上清を注射した。組織上清を、最初に0.45μmのフィルターを通して濾過して、適切なサイズの注射用シリンジに充填した。注射後14日目に、マウスを屠殺した。哺乳期マウスの少なくとも80%および成体マウスの少なくとも80%が、伝染性因子の存在と整合する有害な臨床知見もなく試験期間に生存すれば、試験品目は、検出可能な外来ウイルス夾雑物の存在に関して陰性であるとみなされた。
【0244】
PVSRIPO精製滅菌バルクロットL0904009の放出試験、方法、規格、および結果を、図20の分析証明書に提供する。
【0245】
PVSRIPO精製滅菌バルクロットL0904009に関する試験法の説明
【0246】
a.完全なゲノムの配列決定
PVS−RIPO精製滅菌バルクロットL0904009および最終バイアル充填製品ロットL0904010の包括的4×配列分析を、承認された手順に従って実施した。ウイルスRNAを試験品目から単離して、ゲノムを逆転写し、およそ1200bpの部分を増幅した。アンプリコンのDNA配列分析を、オリゴヌクレオチドを使用して得た。プライマーを、およそ50%GC含有量を有し、長さ18〜24bpの間となるように、およそ250塩基離して設計し、増幅されたウイルスcDNAの両方の鎖がそれぞれの鎖からの2つのリードによって配列決定されるように配置した。
【0247】
試験品目およびpGEM3Z対照プラスミドの蛍光色素ターミネーターDNAサイクル配列決定を、BigDye v1.1配列決定キットを使用して実施した。試験試料に関して、5×BigDye配列決定緩衝液2.0μLを、2μMプライマー2μL、精製PCR産物20ng、およびddH2Oと混合して最終体積を10μLとした。反応および機器の対照としての役割を果たすpGEM3Z対照反応に関して、pGEM3Z 200ngを、M13F−20プライマー(5’ GTAAAACGACGGCCAGT−3’、配列番号4)20ng(およそ3.2pmol)を用いて配列決定した。対照反応をそれぞれの配列決定設定で実施して、ABI3130xlにおいて分析した。サイクル配列決定反応は、PTC−225 Peltierサーマルサイクラーを使用して実施した。分析前に、配列反応を、Centriflexゲル濾過カートリッジを使用して、取り込まれていない色素ターミネーター、塩、および低分子量化合物から精製した。配列データを配列決定コンピューターから収集して、データをトリミングし、Sequencherソフトウェアバージョン4.7(GeneCodes、Ann Arbor、MI)を使用して、連続する一連の断片(「コンティグ」として公知である)に整列させた。整列させたDNA配列を参照配列と比較して、試験試料の配列と参照配列との間の塩基ミスマッチまたは多型を、もし存在すれば同定した。
【0248】
DNA配列分析は、プロセス解析/生物学的製剤品質管理試験報告書QC037657(異種移植毒性試験(Toxicology Xenograph Study)ウイルスロット022208、試料は、Dr. M. Gromeier、Duke University、Durham、NCによって提供された)から得た参照配列を使用した。PVSRIPO精製滅菌バルクロットL0904009および最終バイアル充填製品ロットL0904010の配列は、QC020658からのPVSRIPOプラスミド参照配列(GMPプラスミドロットL0401014)に含有されるクローニングされたウイルスプラスミド配列、およびマスターウイルスシード(MVS)配列、ロットL0403006、QC022271からのウイルスcDNA配列と比較すると、全ての7303塩基位置において100%相同であることが見出された。
【0249】
b.宿主細胞DNA(Vero)
PVSRIPO精製滅菌バルクロットL0904009を、シングルコピー遺伝子であるCercopithecus aethiops(Vero)特異的ネクチン−1α遺伝子の遺伝子内重複(GenBank(登録商標)受託番号AF308635)を標的とするTaqMan(登録商標)ベースの定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)(Applied Biosystems Inc.、Foster City、CA)アンプリコンを使用して、VeroゲノムDNA負荷量に関して試験した。アッセイの検出限界は、1ng VeroゲノムDNA/mLである。Vero細胞ゲノムDNA(gDNA)を陽性対照(100ng〜1pg)として使用し、試験品目のVero gDNA 5ngのスパイクをPCR阻害対照として使用し、望まれる陰性対照結果は、ヌクレアーゼフリー水による試験なし対照反応(no test control reaction)であり、抽出対照は、リン酸緩衝食塩水(PBS)緩衝液/反応あたりVero gDNA 100pgの当量を含有するPBS緩衝液であった。
【0250】
リアルタイムqPCRは、試料中の低コピー数の残留DNAまたはRNAの定量を含む、遺伝子発現分析、遺伝子型決定、病原体検出/定量、変異スクリーニング、および正確なDNA検出のために利用することができる感度のよい定量的増幅方法である。Applied Biosystems 7900HT 96ウェル機器を使用して、増幅プロセスの際に連続的にPCR増幅産物の蓄積を検出し、PCRの対数期における正確な標的の定量が可能となった。96ウェルブロックを使用することにより、384ウェルブロックより大きい反応体積が可能となり、このように、残留DNAおよび夾雑物DNA試験に関するアッセイ感度が増加する。
【0251】
TaqMan(登録商標)qPCRケミストリーは、二重標識蛍光発生オリゴヌクレオチドTaqMan(登録商標)プローブを利用する。ヒトゲノムDNAを検出するために使用されるTaqMan(登録商標)プローブは、識別可能な放射極大を有する2つの蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチド末端で構成される。プローブの5’末端は、レポーター色素、6−カルボキシフルオレセイン(6−FAM)によって標識され、3’プローブ末端は、消光色素、カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)によって標識される。オリゴヌクレオチドプローブは、Cercopithecus aethiops(Vero)ネクチン−1α遺伝子PCRアンプリコン内の内部標的配列と相同であり、Vero細胞およびCV−1細胞に対して非常に特異的である。VeroのヒトgDNAに対する高い拒絶比は、プローブ標的の一部としてヒトgDNAに存在しないC. aethiopsにユニークな9塩基配列重複事象を利用することによって達成される。インタクトで遊離の溶液中では、プローブ消光色素は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を介して蛍光色素レポーターからの放射を低減させる。TaqMan(登録商標)PCR反応の伸長相において、プローブはTaq DNAポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性によって切断され、レポーター色素がプローブから放出されて、レポーターからの放射を増加させる。
【0252】
ABI Prism 7900HTは、2軸スキャンヘッドを使用して、アルゴンイオン(488nm)レーザーからの励起光を96ウェル全てに分配する。電荷結合素子(CCD)イメージャーが、それぞれのウェルからの蛍光スペクトルおよび強度を測定して、PCR増幅の際のリアルタイムスペクトルデータを作成する。ABI配列検出ソフトウェア(SDS)は、レポーター色素、クエンチャー色素、およびノーマライザー(ROX)色素の蛍光強度を逆畳み込みして、増幅の過程にわたって、正規化したレポーターからの放射強度の増加を計算する。
【0253】
それぞれのPCR反応における初回標的の正確な定量は、試薬が消耗する前または副産物による反応の阻害が起こる前に、増幅の対数(log2)期の間に起こる。しかし、反応のシグナル対ノイズ限界および一般的なバックグラウンド蛍光により、最も正確なデータは典型的に対数期後期に得られる。正規化レポーター蛍光を、PCRサイクル数によって表される時間に対してプロットする。標的コピー数または質量値は、バックグラウンドを超える蛍光閾値を割付することおよびそれぞれの試料の増幅プロットが閾値(閾値サイクルまたはCtとして定義される)に達するサイクル点を決定することによって得られる。それぞれの反応の閾値サイクル値を使用して、既知標準物質と比較した、それぞれの試験品目反応内に最初に含有される標的の量を定量する。
【0254】
PVS−RIPO精製滅菌バルクロットL0904009を、シングルコピー遺伝子であるCercopithecus aethiops(Vero)特異的ネクチン−1α遺伝子の遺伝子内重複(GenBank(登録商標)受託番号AF308635)を標的とするTaqMan(登録商標)ベースのqPCRアンプリコンを使用して、VEROゲノムDNA負荷量に関して試験した。TaqMan(登録商標)プライマーおよび二重蛍光色素標識プローブを、ABI Primer Expressソフトウェア(バージョン2.0.0)を用いて設計した。111bpのアンプリコンは、フォワードプライマー:5'-(CCT CTG CCC AGC GTG AAG;配列番号5); リバースプライマー: 5'-(CAC AGA CAC GCC CAT GGA T 配列番号6);およびTaqMan(登録商標)プローブ: 5'-[6FAM]-(CAC CCA AGC CAC CAA TGG CTC CAA)-[TAMRA]配列番号7からなる。プライマーおよびプローブをそれぞれ、ヌクレアーゼフリー水(NFW)によって10および5pmol/μLに希釈した。反応混合物は、UNGおよびROX色素を有するTaqMan(登録商標)PCR 2×マスターミックス25μL、NFW 2μL、フォワードプライマー1μL、リバースプライマー1μL、TaqMan(登録商標)プローブ1μL、および試料20μL(最終反応体積50μL)からなった。反応混合物を96ウェルプレートにロードして、光学フィルムで覆い、ABIモデル7900HT 96ウェル配列検出システムによって2−ステップqPCRプロファイル(2.00分、50.0°C;10.00分、95.0°C;0.15分、95.0°Cを40サイクル;1.00分、60.0°C)を使用して増幅した。精製DNA(ATCC、パート番号1587D)から作製したVEROゲノムDNA標準曲線は、NFWに100ngから1pgまで10倍連続希釈するものであった。およそ2.6および0.26遺伝子コピー/rxnと等価の10および1pg/rxn標準物質からの陽性反応が希に観察される。総試験試料DNAを緩衝液ALの1:2によって不活化して、qPCR反応の前に、Qiagen DNAミニプレップ法を使用して抽出した。試料の組成に起因する潜在的なPCR阻害は、抽出された試験品目試料にゲノムDNA 5ngを添加することによってモニターした。抽出効率をPBS緩衝液ブランクおよびqPCR反応あたりVERO gDNAの100pg当量を添加したPBS緩衝液試料を使用してモニターした。緩衝液(鋳型を含まないNFW)対照試料を、試験のために実施した。夾雑物(センチネル)対照を定期的に含める。試験試料における初回ゲノムDNA混入レベルを、試料閾値サイクル値をヒトDNA標準曲線の式と比較することによって、ABI 7900HTソフトウェアを使用して計算した。初回DNAレベルを、式:試料希釈係数(2)[(試験試料の平均質量(pg)−鋳型なしの平均質量(pg))÷(平均抽出前スパイク回収効率(抽出対照が10%以上の回収率を有する場合、100%に設定))]÷[(試料体積、μL/反応(20μL))1000μL/mL]を使用してpg DNA/mLに変換した。
【0255】
PVSRIPOウイルス採取プールを精製前にBenzonase(登録商標)酵素処理した。ヌクレアーゼ処理は、典型的に、平均で12ヌクレオチド以下のオリゴヌクレオチド断片を生成し、消化後の断片集団はカイ分布に従う。このアッセイに使用したC.aethiops(Vero細胞株およびCV−1細胞株)ネクチン−1 qPCRアンプリコンは111bpであった。アッセイから得られた結果は、インタクト一倍体C.aethiopsゲノムDNA(約3.88pg/一倍体コピー)の質量に基づく残留宿主細胞DNA濃度のワーストケースの推定値を表す。
【0256】
c.残留Benzonase(登録商標)酵素
PVSRIPO精製滅菌バルクロットL0904009を生産するために、Benzonase(登録商標)エンドヌクレアーゼを精製プロセスで使用したことから、承認された手順を使用して試験試料を調べて、残留Benzonase(登録商標)エンドヌクレアーゼレベルを決定した。残留Benzonase(登録商標)エンドヌクレアーゼの濃度は、Merck KGaA Benzonase(登録商標)エンドヌクレアーゼELISAキットIIを使用して決定した。標準物質、試料、および対照を、アフィニティ精製ポリクローナル捕捉抗体を予めコーティングしたマイクロタイターストリップに添加することによってアッセイを開始した。ウェルを室温で2時間の期間インキュベートした後洗浄した。Benzonase(登録商標)エンドヌクレアーゼに対する二次西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート抗体を各ウェルに添加して、プレートを室温で1時間インキュベートした。これによって、以下のサンドイッチ複合体:固相抗体−Benzonase(登録商標)エンドヌクレアーゼ−HRPコンジュゲート抗体が形成された。ウェルを洗浄して吸引し、いかなる未結合反応体も除去した。HRP基質である3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を各ウェルに添加することによって、残留Benzonase(登録商標)を検出した。ウェルを、15分間のインキュベーション期間の間に発色させた。得られた色の強度は検体の量に相関し、これを、較正したSpectra MAX 340プレートリーダーを使用して定量した。試料のシグナルを、同時にアッセイしたBenzonaseエンドヌクレアーゼ標準物質と比較することによって正確な測定が得られた。陽性対照は、0.25〜10ng/mLの範囲のBenzonase(登録商標)エンドヌクレアーゼ標準物質であった。アッセイ希釈物を陰性対照として使用した。アッセイの検出限界は、0.25ng/mLであった。
【0257】
d.BCAによる総タンパク質
核酸による干渉および/または低タンパク質濃度により分光光度法によって直接定量することができない溶液中の総タンパク質の検出は、ビシンコニン酸(BCA)反応および562nmでの比色定量を使用することによって達成することができる。高いpH条件下タンパク質の存在によりCu+2がCu+1に還元され、BCA 2分子が単一の第一銅Cu+1イオンとキレートを形成すると、水溶性の青紫色の反応産物が形成される。BCA Cu+1キレートは、562nmのλmaxを示し、吸光度は3logのタンパク質濃度(0.5μg/mL未満から500μg/mL超)にわたって強く相関するが、特異的反応条件および計測手段によってしばしば、有効線形範囲は2logのみに限定される。Cu+2の存在下でBCAと反応するタンパク質溶液の吸光度は、溶液の凝集タンパク質構造、ペプチド結合の総数、ならびに溶液中のシステイン/シスチン、トリプトファン、およびチロシン残基の相対的割合に依存することが公知である。
【0258】
20mMトリス、42mM NaClの緩衝溶液中の試験試料、PVS−RIPO精製バルクロットL0903007を、BCAアッセイを使用して総タンパク質に関して分析した。試験試料は、BCAアッセイを干渉する濃度の緩衝液構成成分を含有せず、PVS−RIPO精製バルクロットL0903007にHSAを添加する前に採取した。BCA作業用試薬およびBSAストック溶液ならびに標準曲線は、アッセイの直前にPierce BCAタンパク質アッセイキットから作製した。試料緩衝液による干渉がないことは、試験試料100μLをBSA(50μL/mL)500μLおよび緩衝液希釈剤400μLと共に、25μg/mL有効スパイク濃度となるようにBCA作業用試薬1mLに添加することによって生成される試料−BSAスパイク反応の生成によって確認した。100μLの2つ組の試験試料を、緩衝液希釈剤900μLおよびBCA作業用試薬1mLに添加した。BCA作業用試薬の添加後、試料および対照を室温で2時間インキュベートした後、562nmの吸光度を測定した。緩衝液希釈剤−BCA作業用試薬試料を使用して、分光光度計をゼロ(ブランク)に設定した。各反応を2つ組で測定して、BSA標準物質をさらなる分析の前に平均した。BSA標準曲線(0μg/mL〜100μg/mL)を線形回帰にフィットさせ、R2=0.989の結果を得て、標準曲線上のいかなる点も外れ値でないことが判明し、結果は有効であった。試験試料の反復実験は、平均値と比較して過度の変動を示さなかった。対照の25μg/mLのBSAスパイク試料は、114.61%(全体で28.65μg/mL)の回収率を示し、試料の組成がアッセイに干渉しないことを示した。PVS−RIPO精製バルクロットL0903007試験試料の全平均値は、BSA標準曲線の式:X=(((Y−A)/B)10)(式中、「X」はタンパク質濃度であり、「Y」は吸光度の値であり、「A」および「B」は曲線のパラメータであり、ならびに10は反応あたり試料100μLを使用したことを指す)を使用して計算した場合に、−0.0197 AU562であると計算され、これは検出レベル未満のタンパク質濃度(1μg/mL未満)に等しかった。方法の定量限界は5μg/mLであり、したがってBCAによって決定する場合、試験結果は5μg/mL未満のタンパク質として報告される。
【0259】
e.差別的殺滅
PVS−RIPO精製滅菌バルクロットL0904009のU87−MGヒト神経膠芽種およびHEK293ヒト胎児腎細胞に対する差別的殺滅活性(differential killing activity)を決定した。アッセイを、Promega CellTiter96(登録商標)AQueous One Solution細胞増殖アッセイを使用して、(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム、分子内塩(MTS)および電子カップリング試薬フェナジンエトスルファート(PES)を用いて実施した。
【0260】
アッセイを実施するために、U87−MG細胞を、L−グルタミン、10%ウシ胎児血清、および1%非必須アミノ酸溶液を含むDMEM中で培養した。HEK293細胞をL−グルタミンを有し10%FBSを補充したDMEM中で培養した。細胞を96ウェルプレートに4×10個/ウェル(4×10個の細胞/mL、0.1mL/ウェル)蒔いた。試験品目を初回推定力価2×10PFU/mLまで希釈した後、連続4倍希釈した。希釈したウイルス試料(100μL/ウェル)を、細胞を含むプレートに移した。試験品目の最終ウイルス力価(MOI)は、およそ50〜0.0002PFU/細胞(TCID50に基づいて計算したMOI)の範囲であった。プレートを5%CO、80%湿度の環境下、37℃で48時間インキュベートした。48時間のインキュベーション期間の後、CellTiter96(登録商標)AQueous One Solutionを添加して(20μL/ウェル)、5%COおよび湿度80%の環境下、37℃でさらに4時間インキュベートした。SDS(10%溶液を25μL/ウェル)をウェルに添加した。プレートをプレートリーダー(Molecular Devices)において490nmの吸光度で5分以内に読み取った。細胞増殖培地のみを有する(細胞を含まない)ウェルのバックグラウンドの読みを、試験試料ウェルの読みから差し引いた。データを非線形4−パラメータ曲線フィット(Molecular DevicesのSoftMax Pro)を使用して分析した。アッセイに使用した対照は、PVSRIPO毒性学ロットL0603006(陽性対照)および細胞増殖培地(陰性対照)を含んだ。
【0261】
f.無菌性(直接接種)
PVSRIPO精製滅菌バルクロットL0904009および最終バイアル充填製品ロットL0904010の無菌性試験を直接接種法によって実施した。
【0262】
g.静菌/静真菌(滅菌後)
静菌/静真菌(B&F)試験を、21 CFR 610.12に従って米国薬局方(USP)の浸漬法を使用して、PVSRIPO精製滅菌バルクロットL0904009滅菌後試験において実施した。B&F試験は、試験品目に固有のいかなる静菌および/または静真菌活性も、無菌性試験法の信頼性に有害な影響を及ぼさないことを確実にするために実施した。
【0263】
PVS−RIPO精製滅菌バルクロットL0904009の安定性
PVS−RIPO精製滅菌バルクロットL0904009を、バイアル充填前に保管庫に入れずに、PVS−RIPO最終バイアル充填生物学的製品ロットL0904010を生産した。したがって、PVSRIPO精製滅菌バルクロットL0904009に関しては、最後の濾過と同じ日にバイアルに充填したことから、安定性試験を実施しなかった。
【0264】
最終バイアル充填製品
0.9%塩化ナトリウム、pH 7.4+0.2%HSA中の50mMリン酸ナトリウム中で調合したPVSRIPO精製滅菌バルクロットL0904009を、0.2μm PVDFメンブレンフィルターを使用して濾過滅菌して、最終バイアル充填製品を生産した。最終バイアル充填製品は、米国連邦規則集21CFR 210、211および600に記載の現行の医薬品等の製造管理および品質管理に関する基準(CGMP)、ならびにフェーズI/II治験薬の製造および試験に関するFDA/ICHガイドラインに従って製造、試験、および維持した。
【0265】
PVSRIPO精製滅菌バルクロットL0904009を充填して、最終バイアル充填製品ロットL0904010を生産した。充填操作は、バイオセーフティキャビネット(BSC)内で、承認された手順に従って実施した。2mL−13mm I型ホウケイ酸ガラスバイアル(Wheatonカタログ番号223683、ロット番号1438174)を使用した。各バイアルの目標分配量は、0.57mL(0.564〜0.576mL)であった。インプロセス重量チェックを実施した。
【0266】
442個のバイアルを充填後、B2 Flurotec Westar RSストッパー(West Pharmaカタログ番号1970−0002、ロット番号J8281)を挿入して、圧着操作を行った。圧着操作の際の圧着の完全性を肉眼で検査し、拒絶されたバイアルはなかった。充填、栓封止、および圧着操作の完了後、ラベルを貼付していないバイアル(442個)を検査した。
【0267】
PVS−RIPO最終バイアル充填製品ロットL0904010の放出試験、方法、および規格を、以下の図21の分析証明書に提供する。PVS−RIPO最終バイアル充填製品ロットL0904010の試験に使用した方法[ウイルス力価(TCID50アッセイ)、LALによるエンドトキシン、およびrct40によるウイルス安定性、全ゲノム配列、および無菌性(直接接種)を除く]を以下に記載する。ウイルス力価(TCID50アッセイ)、LALによるエンドトキシン、およびrct40によるウイルス安定性の方法は、PVS−RIPO採取プールロットL0904008に関して記述されており、本明細書において見出すことができる。全ゲノム配列および無菌性(直接接種)の方法は、PVS−RIPO精製滅菌バルクロットL0904009に関して記述されており、本明細書において見出すことができる。
【0268】
a.外観
PVS−RIPO最終バイアル充填製品ロットL0904010の試料を肉眼で調べた。製品を、容器の完全性、溶液の清澄性、および容器ラベルの正確性に関して調べた。容器を、ひび割れまたは劣化に関して検査して、上部がしっかり閉じていることを確認した。溶液の清澄性を、肉眼での検査によって評価して、液体製剤中の可溶性産物が、任意の微粒子物質、不清澄性および容器中の流体の色合い、または容器中の流体の任意の濁りもしくは曇りを含まないかを決定した。容器のラベルを検査して、クライオバイアルに適切にラベルが貼付されておりかつラベルが確実に適合していることを確認した。
【0269】
b.RT−qPCR(HRV−2 IRESおよびポリオポリタンパク質)
組換えポリオウイルスPVSRIPO最終バイアル充填製品ロットL0904010を、PVSRIPO中のHRV−2 IRES(PVS−1)およびポリオポリタンパク質遺伝子(PO1)を標的とするTaqMan(登録商標)ベースのRT−qPCRアンプリコンを使用して、PVSRIPO HRV−2 IRES(PVS−1)およびポリオポリタンパク質(PO1)RNA負荷量に関して試験した。リアルタイム定量的PCR(qPCR)は、遺伝子発現分析、遺伝子型判定、病原体検出/定量、変異スクリーニング、および試料中の低コピー数の残留DNAまたはRNAの定量を含む正確なDNA検出のために利用することができる感度のよい定量的増幅法である。プロセス解析/生物学的製剤品質管理検査室は、増幅プロセスの際に連続的にPCR増幅産物の蓄積を検出するために、Applied Biosystems 7900HT 96ウェル機器を使用し、PCRの対数相における正確な標的の定量を可能にした。96ウェルブロックの使用により、384ウェルブロックより大きい反応体積が可能となり、このため、残留DNAおよび夾雑物DNA試験のアッセイ感度が増加した。
【0270】
TaqMan(登録商標)qPCRケミストリーは、それぞれのアンプリコンについて二重標識蛍光発生オリゴヌクレオチドTaqMan(登録商標)プローブを利用する。ヒトゲノムDNAの検出のために使用するTaqMan(登録商標)プローブは、識別可能な放射極大を有する2つの蛍光色素で標識したオリゴヌクレオチド末端で構成される。プローブの5’末端を、レポーター色素である6−カルボキシフルオレセイン(6−FAM)で標識し、プローブの3’末端を、消光色素であるカルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)で標識する。オリゴヌクレオチドプローブは、PVSRIPO HRV−2由来IRES内の内部標的配列およびポリオポリタンパク質RT−PCRアンプリコンと相同であり、共に使用する場合、PVSRIPOに対して特異的である。PVSRIPOは一本鎖RNAウイルスであることから、qPCR増幅の前に熱サイクルプロトコールの一部として、増幅プライマーを使用して試料をcDNAに逆転写する。インタクトで遊離の溶液中では、プローブ消光色素は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を介して蛍光色素レポーターからの放射を低減させる。TaqMan(登録商標)PCR反応の伸長相において、プローブはTaq DNAポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性によって切断され、レポーター色素がプローブから放出されて、レポーターからの放射を増加させる。
【0271】
ABI Prism7900HTは、2軸スキャンヘッドを使用して、アルゴンイオン(488nm)レーザーからの励起光を96ウェル全てに分配する。CCDイメージャーが、それぞれのウェルからの蛍光スペクトルおよび強度を測定して、PCR増幅の際のリアルタイムスペクトルデータを作成する。ABI配列検出ソフトウェア(SDS)は、レポーター色素、クエンチャー色素、およびノーマライザー(ROX)色素の蛍光強度を逆畳み込みして、増幅の過程にわたって、正規化したレポーターからの放射強度の増加を計算する。
【0272】
それぞれのPCR反応における初回標的の正確な定量は、試薬が消耗する前または副産物による反応の阻害が起こる前に、増幅の対数(log2)期の間に起こる。しかし、反応のシグナル対ノイズ限界および一般的なバックグラウンド蛍光に起因して、最も正確なデータは典型的に対数期後期に得られる。正規化レポーター蛍光を、PCRサイクル数によって表される時間に対してプロットする。標的コピー数または質量値は、バックグラウンドを超える蛍光閾値を割付することおよびそれぞれの試料の増幅プロットが閾値(閾値サイクルまたはCtとして定義される)に達するサイクル点を決定することによって得られる。それぞれの反応の閾値サイクル値を使用して、既知標準物質と比較した、それぞれの試験品目反応内に最初に含有される標的の量を定量する。
【0273】
BDPでアッセイを実施するために、TaqMan(登録商標)プライマーおよび二重蛍光色素標識プローブを、ABI Primer Expressソフトウェア(バージョン2.0.0)によって設計した。71bpのHRV−2 IRES(PVS−1)アンプリコンは、フォワードプライマー:5'- (AAC CCA ATG TGT ATC TAG TCG TAA TGA, 配列番号1);リバースプライマー: 5'- (TGA AAC ACG GAC ACC CAA AG 配列番号2);およびTaqMan(登録商標)プローブ: 5'-[6FAM]-(CAA TTG CGG GAT GGG ACC AAC T 配列番号3)-[TAMRA]からなる。PO1の70bpのアンプリコンは、フォワードプライマー:5'- (TTG GTG GGA ACG GTT CAC A SEQ ID NO: 8);リバースプライマー: 5'- (TCA CCT TGA CTC TGA GTG AAG TAT GA 配列番号9);およびTaqMan(登録商標)プローブ: 5'-[6FAM]-(TTG CAG CGG CCC TGA AGC G 配列番号10)-[TAMRA]からなる。プライマーおよびプローブをそれぞれ、ヌクレアーゼフリー水(NFW)によって10および5pmol/μLに希釈した。反応混合物は、ROX色素を有するTaqMan(登録商標)1−ステップRT PCR 2×マスターミックス25μL、RNアーゼ阻害剤1μL、NFW 1μL、フォワードプライマー1μL、リバースプライマー1μL、TaqMan(登録商標)プローブ1μL、および試験試料20μL(最終反応体積50μL)からなった。反応混合物を96ウェルプレートにロードして、光学フィルムで覆い、ABIモデル7900HT 96ウェル配列検出システムによって3−ステップqPCRプロファイル(2.00分、50.0°C;48.0℃で30分(RT−ステップ);10.00分、95.0°C;0.15分、95.0°Cを40サイクル、1.00分、60.0°C)を使用して増幅した。アンプリコンcDNA標準曲線をPVSRIPOプラスミドDNAから作製して、NFW中で1ngから10fgまで10倍連続希釈した。総試験試料RNAを緩衝液AVLの1:4によって不活化して、RT−qPCR反応の前に、QiagenウイルスRNAミニプレップ法を使用して抽出した。試料の組成に起因する潜在的なPCR阻害を、抽出された試験試料にPVSRIPOプラスミドDNA 500pgを添加することによってモニターした。緩衝液(鋳型を含まないNFW)陰性対照試料を、試験のために実施した。PVSRIPOプラスミドDNAロットL0305006を陽性対照として使用した。アッセイ間変動をなくすために、両方のPVSRIPOアンプリコンを同じ96ウェルプレートで実施した。試験試料中の初回PVSRIPO RNA濃度を、ABI 7900HTソフトウェアを使用して、試料閾値サイクル値をプラスミドDNA標準曲線の式と比較することによって計算した。初回RNAレベルを、式:試料希釈係数(2)[(試験試料の平均質量(pg)−鋳型なしの平均質量(pg))÷(平均抽出前スパイク回収効率(100%に設定))]÷[(試料体積、μL/反応(20μL))1000μL/mL]を使用してpgRNA/mLに変換した。
【0274】
c.pH
PVSRIPO最終バイアル充填製品ロットL0904010について、pH試験を実施した。pH値は、水素イオン活動度に対して感度が高い指示電極、ガラス電極、および適した参照電極を使用して、pH値を0.02pH単位に再現することができる適切に標準化された電位測定機器(pHメーター)から得た。機器は、電極対の間の電位を検知することができ、温度および/または勾配制御を通してpHの読みの単位変化あたりのミリボルトの変化を制御することができる。測定は25±2℃で行う。アッセイを実施するために、pHメーターを2つの標準化緩衝液2組を使用して標準化した:pH4.0と7.0、およびpH7.0と10.0。次に、プローブをすすぎ、水分を吸い取らせて乾燥させた(blotted dry)後、試験試料のpHを決定した。アッセイは、2つの標準化の勾配値が92.0%〜102.0%の範囲内に入ったことから、有効であった。陽性対照はpH4.0標準物質、pH7.0標準物質、pH10.0標準物質であった。
【0275】
d.電子顕微鏡法(EM)によるウイルス粒子
このアッセイは、ネガティブ染色電子顕微鏡法によって、試験試料(PVSRIPO最終バイアル充填製品ロットL0904010)中のウイルス粒子数/mLを定量するために設計された。10個のグリッド空間の写真を撮影して、各区画のウイルス粒子数を計数し、これを使用してウイルス粒子/mLを計算した。試験試料を等量の固定液(2×PBS中の8%ホルムアルデヒド)によって希釈して固定した。試験試料(0.5μL)をホルムバール処理/炭素被覆グリッドの上に置いて、風乾させた。次に試料を2回蒸留した水(DDHO)5μLによって洗浄して、試料から塩/リン酸緩衝液を洗浄した。次に、1%リンタングステン酸(PTA、pH7.0)水溶液(0.5μL)をグリッド上に添加して、風乾させた。グリッドを電子顕微鏡法で調べた。10個のグリッド空間の写真を撮影して、ウイルス粒子数を以下の計算によって決定した:
ウイルス粒子数(vp)=(平均vp数)×(グリッドの面積/写真の面積)×(1mL/μLで添加したウイルス量)
【0276】
e.感染単位あたりのウイルス粒子の比率
PVS−RIPO最終バイアル充填製品ロットL0904010に関する感染単位あたりのウイルス粒子の比率(vp/IU)は、ウイルス粒子濃度1.01×1011vp/mL(QC−042172)をウイルス力価3.98×109 TCID50/mL(QC−042165)で除することによって、計算した。
【0277】
f.安定性試験
【0278】
1.PVSRIPO最終バイアル充填製品ロットL0904010
PVSRIPO最終バイアル充填製品ロットL0904010の安定性試験は、プロトコールSP−137の下で4年の期間で実施されている。安定性試験のために指定されたバイアルを−70℃以下の制御保管庫で保存する。安定性に関して試験される最終バイアル充填PVS−RIPO製品の属性は、目に見える外観、効力(TCID50によるウイルス力価)、および安全性(エンドトキシン/LAL、pH、およびバイオバーデン)を含む。外観およびTCID50によるウイルス力価は、0、6、12、24、36、および48ヶ月の安定性時点で試験する。安全性(エンドトキシン/LAL、pH、およびバイオバーデン)試験は、0、12、24、36、および48ヶ月の安定性時点で実施する。PVSRIPO最終バイアル充填製品ロットL0904010に関して6ヶ月間の安定性時点で収集した安定性データの要約を表8に含める。結果は、PVSRIPO最終バイアル充填製品毒性学ロットL0904010が−70℃以下で6ヶ月間安定であることを示している。
【表8】
【0279】
2.PVSRIPO最終バイアル充填製品毒性学ロットL0603006
【0280】
これまでの試験的ロット(PVS−RIPO毒性学ロットL0603006)を製造した。PVS−RIPO毒性学ロットL0603006は、カニクイザルにおけるPVS−RIPOの範囲探索試験に使用した。PVS−RIPO毒性学ロットL0603006は、プロセスの規模に関連する問題のみが異なる、臨床ロットL0904010と同等のプロセスを使用して製造された。PVS−RIPO毒性学ロットL0603006の分析証明書を図22に含める。
【0281】
−70℃以下で保存したPVS−RIPO最終バイアル充填製品ロットL0603006の安定性試験を48ヶ月間実施した。プロトコールを、電子顕微鏡検査アッセイによるウイルス粒子を除外して(この方法は、安定性を示すものと考えられていないことから)、ウイルス粒子の感染単位に対する比(比VP/IU)の決定を除外し、年1回のバイオバーデン試験を追加するように改訂した。PVSRIPO最終バイアル充填製品毒性学ロットL0603006に関して48ヶ月間の安定性時点で収集された完全な安定性データの要約を、表9に含める。結果は、PVSRIPO最終バイアル充填製品毒性学ロットL0603006が、−70℃以下で48ヶ月間安定であることを示している。
【表9-1】
【表9-2】
【0282】
バイアルのラベルを作成して、1つのラベルをそれぞれのバイアルに貼付した。このプロセスにより、435個のラベル貼付済み充填バイアルを得た。ラベルを貼付したバイアルを箱に入れて、−70℃以下の保管庫に入れた。試料(ラベルを貼付したバイアル52個)を、BQC放出試験のために指定した。残りの383個のラベル貼付バイアルを製品として指定した。383個の産物バイアルを−70℃以下の制御保管庫に移した。
【0283】
1つのバッグラベルを383個のミニグリップバッグのそれぞれに挿入した。36個のミニグリップバッグ(それぞれが、挿入されたバッグラベルを含有する)を、それぞれラベルを貼付した梱包箱に入れた。ラベルを貼付した梱包箱を、バイオセーフティキャビネット(BSC)の中のドライアイスを満たしたトレイの上に置いて冷却し、梱包操作を通してドライアイス上で維持した。全体で383個のPVSRIPO最終バイアル充填製品ロットL0904010のラベル貼付バイアルを、−70℃以下の制御保管庫から取り出して、同じBSCのドライアイス上に置いた。これには、349個の製品バイアルが含まれ、3個を残し、31個の製品バイアルを安定性試験のために指定した。それぞれのPVS−RIPO最終バイアル充填製品ロットL0904010のバイアルを個々のミニグリップバッグ(それぞれが挿入されたバッグラベルを含有する)の中に入れた。
【0284】
梱包されたバイアルのそれぞれの箱を、吸収材料と共にバイオハザードバッグに入れて、−70℃以下(70℃ C)の保管庫に戻した。全体で383個のバイアルを−70℃以下の制御保管庫に入れた。
【0285】
(実施例6)
PVSRIPO最終バイアル充填製品ロットL1402001のケミストリー、製造、および管理の修正
図23は、本出願人が生産したPVSRIPO最終バイアル充填製品ロットの履歴を提供する。PVSRIPO最終バイアル充填製品ロットL1402001は、実施例5に記述された手順と同じであるが、以下の変更を加えた手順を使用して製造した。リアルタイムRT−qPCR試験を、Sepharose 6 FFクロマトグラフィーステップの際に使用して、高い力価(1×10コピー/mL以上)のPVSRIPOウイルスRNAを含有する画分を同定した。これによって、選択される画分の範囲がわずかに異なり、それによってこのロットに関して、より高い残留タンパク質および遊離のウイルスRNAが得られた。同様に、総感染性(TCID50IU)ウイルス収量のおよそ6倍の増加も可能となった。2つの追加のマイコプラズマ試験を採取プール試験に追加した。1つは、Vero細胞を使用したウイルス製品のマイコプラズマ検出試験であり、他方は、タッチダウン(TD)−PCRによるマイコプラズマ検出試験であった。全てのマイコプラズマ試験は、NIH/3T3細胞の代わりにVero細胞を最初に使用して採取プールについて実施した。次に、アッセイを、PVSRIPOによる感染に対して不応性であるNIH/3T3細胞を使用して実施した。タッチダウンPCRアッセイもまた、凍結試料保存後にマイコプラズマDNAが存在しないことを確認するために実施した。ポリオウイルスIRESに関する追加のRT−qPCR試験を、野生型ウイルスが存在しないことを確実にするために最終バイアル充填製品放出試験に追加した。精製滅菌バルクおよび最終バイアル充填製品放出試験のためのゲノム配列決定法は、Illumina次世代配列決定(NGS)法を使用した。
【0286】
図24は、製造プロセスの概要を提供する。PVSRIPO最終バイアル充填製品ロットL1402001は、上記のPVSRIPO最終バイアル充填臨床ロットL0904010に関して使用したものと同じマスターウイルスシードロットL0403006およびVeroワーキングセルバンクロット217002−2から作製した。上記の臨床ロットのために使用した手順と同じ手順(実施例5を参照されたい)に従って、Vero細胞を増大させて、10段セルファクトリーでマスターウイルスシードを感染させた。ウイルスを遠心分離によって採取してプールした。採取プールをBenzonase(登録商標)酵素によって処理して、宿主ゲノムDNAレベルを低減させ、2つのカラムクロマトグラフィーステップ(Sepharose 6 FFクロマトグラフィーおよびQ650Mフロースルークロマトグラフィー)を使用して精製した。次に材料を、中空繊維限外濾過メンブレンを使用して濃縮して、調合緩衝液(50mM NaPO、150mM NaCl、pH 7.4)に対して透析濾過した。この材料を、−70℃以下でおよそ3ヶ月間凍結した。解凍後、材料をプールして、0.2ミクロン濾過滅菌し、2mLガラスバイアルに充填した。製造プロセスの簡単な要約を以下に概要する。
【0287】
PVSRIPO最終バイアル充填製品は、0.2%HSA(HSA)を含有する、50mMリン酸ナトリウム、0.9%塩化ナトリウム、pH 7.4の緩衝液中で調合された無色の液体である。PVSRIPO最終バイアル充填製品をバイアルあたり0.5mLの体積、および4.48×10 TCID50/mL(2.2×10 TCID50/バイアル)の濃度で充填する。この製品を−70℃以下で保存する。
【0288】
生産材料
PVSRIPO最終バイアル充填製品ロットL1402001の製造に使用した生産材料/試薬は、実施例5に記載のものと同じであった。Benzonase(登録商標)酵素は、植物起源の酵素であり、発酵によって産生される。カゼインの酸加水分解産物を発酵培地に使用する。カゼインの酸加水分解産物の産生のために使用したミルクは、ヒトによる消費のために収集されたミルクと同じ条件下のオーストラリアおよびニュージーランドの健康な動物を起源とする。カゼインの酸加水分解産物は、牛乳以外の反芻動物材料を含まずに調製される。FBSは、米国内にあるUSDA監査屠畜場で収集したウシ胎児血液から製造され、検査したウシウイルスに関して陰性であった。HSAは、Octapharmaから購入した。HSAは、GMP規則に従って製造され、米国薬局方および欧州薬局方に従う製造および製品試験の判定基準を満たす。全ての供血の血漿を個々に試験して、HBAg、HIV−1/HIV−2 Ab、およびHCV Abに対して非反応性であった。それぞれの血漿プールを試験して、HBAg、HIV−1/HIV−2 Ab、およびポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)によるHCV−RNAに関して陰性であることが見出された。トリプシンは、カナダ起源の動物から収集したブタ膵腺起源であった。獣医師の監督下で、動物に死亡前および死後の検査を行い、動物は、見かけ上感染性疾患および伝染性疾患を有しない。原材料トリプシンを放射線照射する。供給業者は、1:250の強度を達成するために希釈剤としてウシ乳糖を使用した。この乳糖は、米国起源の健康なウシからの、ヒトによる消費に適合する牛乳を起源とする。この産生に使用される原材料トリプシンを試験して、ブタパルボウイルス、マイコプラズマ、ならびにPCV 1および2に関して陰性であることが見出された。
【0289】
生産の要約
PVSRIPO精製滅菌バルクロットL1405001(P2)を生産するための製造プロセスを、図25A〜25Bに説明する。PVSRIPO精製滅菌バルクロットL1311004は、出発材料として、Veroワーキングセルバンク(WCB)ロット217002−2およびMVSロットL0403006を使用してBDPで製造した。Vero WCBロット217002−2の2個のバイアルを増大させて、10個の6360cmセルファクトリーにおいて細胞増大ロットL1310003を生産した。細胞増大ロットL1310003に、PVSRIPO MVSロットL0403006を感染させ、採取材料(採取プールロットL1311003)をPVSRIPO精製滅菌バルクロットL1405001の生産のために使用した。
【0290】
a.Vero細胞の開始および増大
細胞増大ロットL1310003からのVero細胞を、細胞採取ロットL1311003の生産のために使用した。細胞増大活動は、ATRF Building A、GMP Virus Production FacilityのBDPで実施した。増大を通して、Vero細胞を、L−グルタミンおよびHEPESを含む、フェノールレッド不含DMEM中で成長させた。ウシ胎児血清(HyCloneカタログ番号SH30070.03IR)を10%濃度で添加した。細胞を、全細胞増大プロセスの間、37℃および5%COの設定でインキュベートした。
【0291】
Veroワーキングセルバンク(WCB)ロット217002−2の2個のバイアルを、一定に攪拌しながら37±2℃の水浴中で解凍した。それぞれのバイアルからの細胞を、15mL遠心チューブ中の完全に加温した培地9mLに添加した。混合後、試料を採取して計数し、生存率を決定した(79%および84%)。次に細胞を1000rpmの設定で、4℃で10分間遠心分離した。遠心分離後、上清を捨てて、細胞ペレットを、75cmフラスコにおいてDMEM培地(上記)30mLの総混合体積中で再懸濁させた。細胞を、上記の増殖培地および条件を使用して、凍結から全体で8回の継代で75cmフラスコから6360cmセルファクトリーへと増大させた。
【0292】
追加の腫瘍形成能試験を、産生に必要な追加のスケールアップ継代をモデル化するために、初回解凍から10継代のEOP細胞に実施した。ブタサーコウイルス試験も同様に追加した。加えて、野生型ポリオウイルスIRESの試験も追加した。
【0293】
b.Vero細胞の感染
Vero細胞ロットL1310003(10個の6360cmセルファクトリー、3個の636cmセルファクトリー)を、それぞれの容器が95〜100%コンフルエンスの健康な細胞を含有すること、および夾雑物の目に見える兆候がないことを確認後、感染細胞溶解物を産生するために使用した。4個のPVSRIPOマスターウイルスシード(MVS)ロットL0403006ボトル(80mL MVSアリコートを有する125mL PETGボトル)を−70℃以下の制御保管庫から取り出して、33〜38℃の水浴中で解凍し、感染プロセスにおいて感染多重度(MOI)0.1pfu/細胞で使用した。解凍したMVSロットL0403006 226mLを、調製した感染培地(L−グルタミン含む、Hepesおよびフェノールレッド不含DMEM/F12)に添加することによって、全体積およそ8リットルの調合感染培地を調製した。
【0294】
洗浄培地(L−グルタミンを含む、Hepesおよびフェノールレッド不含DMEM/F12)およそ750mLによって洗浄した後、調製し調合された感染培地およそ750mLを満たすことによって、10個の6360cmセルファクトリーを感染用に調製した。陽性対照および陰性対照も同様に調製した。感染セルファクトリーおよび対照を、33℃、5%CO濃度、および80%湿度の設定でインキュベートした。感染の70時間後、95〜100%の細胞変性効果(CPE)が10個全てのセルファクトリーにおいて示され、対照フラスコのそれぞれにおいて予想された結果が示された。
【0295】
c.感染細胞溶解物の採取および清澄化
PVSRIPOウイルス感染細胞懸濁液ロットL1311003を、それぞれのセルファクトリーから採取して、滅菌培地バッグに共にプールした。PVSRIPO採取プールロットL1311003の放出試験のために、感染細胞懸濁液の試料を採取した。PVSRIPO採取プールロットL1311003の放出試験の試験、規格、方法、および結果を要約する分析証明書を、図26に含めて示す。
【0296】
感染細胞懸濁液を、1Lポリカーボネート遠心ボトルにおよそ750mLアリコートで移した。感染細胞懸濁液を、4℃および3800×gの設定でおよそ20分間遠心分離した。遠心ボトルのそれぞれからの清澄化上清を10Lバッグに共にプールして、1L滅菌PETGボトル10個に分配して、凍結し、−70℃以下で保存するためにMMICに移した。
【0297】
d.最終採取物のBenzonase(登録商標)処理
PVS−RIPO精製バルクロットL1311004の生産の際の宿主ゲノムDNAのレベルを低減させるために、清澄化したPVS−RIPOロットL1311003採取物を、−70℃以下でおよそ3ヶ月間保存後に室温で21時間解凍した。解凍したPVS−RIPOを2個の10Lバッグにプールして穏やかに混合した。それぞれの個々のバッグからの3ミリリットル試料を、1個の15mL円錐チューブに合わせた。試料を以下の試験に関してそれぞれのバッグから採取した:TEM、Vero gDNA qPCR、プラークアッセイ、HCP、SDS−PAGE、および全ゲノム配列決定。
【0298】
Benzonase(登録商標)酵素の添加前に、100mM MgClを、1mM MgCl最終濃度となるように、清澄化したPVSRIPOロットL1311003採取物のそれぞれのバッグ(2個のバッグ)に混合しながら添加した。Benzonase(登録商標)酵素を、混合しながら最終濃度50単位/mLとなるように添加した。バッグを2〜8℃で18〜21時間インキュベートした。Benzonase(登録商標)処理溶解物を2〜8℃で除去して試料を採取した。試料を、SDS−PAGE、全ゲノム配列決定、HCP、TEM、Vero gDNA qPCR、プラークアッセイ、およびTCID50によって分析した。
【0299】
e.Sepharose 6 Fast−Flowクロマトグラフィー
Sepharose 6 FFクロマトグラフィーステップは、PVSRIPO精製バルクロットL1311004の生産の際の緩衝液交換、および低分子量の宿主細胞夾雑物からのウイルスプールの部分精製を提供する。Sepharose 6 Fast Flow(FF)樹脂(GE Healthcare−Biosciences、Piscataway、NJ)を充填したクロマトグラフィーカラムを使用して、さらに精製するための用意として、ウイルスの緩衝液を、低伝導度リン酸緩衝液に交換した。Benzonase(登録商標)処理溶解物をロードする前に、Sepharose 6 FFカラムに5M NaClを流して、4.7mM NaPO、1M NaCl、pH 7.5を満たし、4.7mM NaPO、42mM NaCl、pH 7.5によって平衡化した。
【0300】
Benzonase(登録商標)処理溶解物を、2回の等量の注入でSepharose 6 FFカラムにロードした。産物を4.7mM NaPO、42mM NaCl、pH 7.5によって溶出し、それぞれの注入からのPVS−RIPOメインピーク画分を、複数の2L PETGボトルに収集した。2つのクロマトグラフィー実行からの個々の画分の試料を、リアルタイム逆転写qPCR(RT−qPCR)によって分析した。PVS−RIPOメインピーク画分を2〜8℃で8〜17時間保存した。リアルタイムRT−qPCR結果および両方のSepharose 6FF実行からのUV吸光度に基づいて選択した画分を、20L滅菌バッグにプールした。プールしたクロマトグラフィー実行の試料を、以下に関して分析した:プラークアッセイ、RT−qPCR、SDS−PAGE、HCP、TEM、およびVero gDNA qPCR。
【0301】
f.Q650Mフロースルークロマトグラフィー
Sepharose 6 FFステップの後、ロットL1311004の溶出物を、Q650Mフロースルークロマトグラフィーカラムにアプライして、残存宿主細胞タンパク質夾雑物を非結合ウイルスから除去した。クロマトグラフィーカラムにSuper Q 650M樹脂を充填して、5M NaClを流した後に、4.7mM NaPO、1M NaCl、pH 7.5を満たし、4.7mM NaPO、42mM NaCl、pH 7.5を使用して平衡化することによってカラムを調製した。
【0302】
カラムに、PVS−RIPO Sepharose 6 FFメインピークをロードして、ウイルス産物を含有するフロースルーを収集した。溶出の際に使用した緩衝液は、4.7mM NaPO、42mM NaCl、pH 7.5であった。収集したQ650MメインピークのNaCl濃度を、5M NaClを使用して150mM NaClに調節した。Q650Mメインピーク材料をサンプリングした後、2〜8℃でおよそ16時間保存した。試料を、以下に関して分析した:ウイルス力価を決定するためのプラークアッセイ、TCID50、SDS−PAGE、HCP、TEM、およびVero gDNA qPCR。
【0303】
g.接線流濾過による濃縮および透析濾過
Q650MメインピークロットL1311004材料を2〜8℃の保管庫から取り出して、中空繊維限外濾過メンブレン(GE Healthcare、UFP−50−C−4MA)を使用して濃縮した。次に、濃縮したウイルス材料を調合緩衝液(50mM NaPO、150mM NaCl、pH 7.4)に対して透析濾過した。透析濾過したPVS−RIPO溶液の試料を、ウイルス力価を決定するためのプラークアッセイ、TCID50、SDS−PAGE、HCP、TEM、およびVero gDNA qPCRに関して分析した。HSA(25%)を、透析濾過したPVS−RIPOロットL1311004に最終濃度0.2%となるように添加した。調合したPVS−RIPOの試料を、拡張バイオバーデン(extended bioburden)、プラークアッセイ、TCID50、SDS−PAGE、HCP、TEM、およびVero gDNA qPCRに関して分析した。
【0304】
h.PVS−RIPOのバルクアリコート、サンプリング、および保存
調合したPVS−RIPO精製バルクロットL1311004をクラス100 BSCに移して、4個の500mL PETGボトルにそれぞれおよそ250mLを3個および167mLを1個の体積で分配した。PVS−RIPO精製バルクロットL1311004の4個のボトルを、ラベルを貼付してエタノール/ドライアイス浴中で凍結し、さらに製造に使用するために−70℃以下で保存した。PVS−RIPO精製バルクロットL1311004を−70℃以下の制御保存フリーザー(controlled storage freezer)に移した。
【0305】
i.精製滅菌バルクロットL1405001(P2)
PVS−RIPO精製バルクロットL1311004の250mLボトル3個および167mLボトル1個を、MMICでの−70℃以下の制御保管庫から取り出して、−70℃以下に移した。次に、PVSRIPO精製バルクロットL1311004の4個のボトルを、21〜25℃の水浴中で解凍した:室温および製品の温度は20℃であった。総解凍時間は195分であった。4個の容器の内容物を2L PETGボトルにプールして、最終総体積934.3mLを得た。精製PVS−RIPOの2.5mL試料を、0.5mLアリコートで分配し、−70℃以下で保存した。新たに作製した50mM NaPO、150mM NaCl、pH 7.4中の0.2%HSA 122mLを、プールしたPVS−RIPO精製バルクロットL1405001に添加した。0.2%HSAを含有する50mM NaPO、150mM NaCl、pH 7.4中のPVS−RIPO精製バルクロットL1405001をポンプで送って、使用前完全性試験に合格し希釈剤(50mM NaPO、150mM NaCl、pH 7.4+0.2%HSA)で予め湿らせた0.2ミクロン滅菌Millipak20(Millipore)フィルターに通した。産物の濾過後、フィルターに同じ希釈剤を流して全量1,054mLの最終濾過産物を得た。フィルターは、濾過後の完全性試験に合格した。滅菌ピペットを使用して、精製滅菌バルクロットL1405001 27mLを取り出して滅菌試料容器に分配した。試料を、精製滅菌バルクロットL1405001放出試験に提出し、総最終体積はおよそ1027mLを残した。次に、精製滅菌バルクロットL1405001を、充填ステップに進めた。
【0306】
バイアル充填してPVSRIPO最終バイアル充填製品ロットL1402001を生産する
PVSRIPO精製滅菌バルクロットL1405001を充填して最終バイアル充填製品ロットL1402001を生産した。手作業での充填操作は、バイオセーフティキャビネット(BSC)内で承認された手順に従って実施した。2ミリリットル、13mm USP/EP I型ホウケイ酸ガラスバイアルを使用した(West Pharmaceutical、カタログ番号6800314、ロット6102124826)。各バイアルの目標分配体積は、0.55mL(0.545〜0.556mL)であった。インプロセス重量チェックを実施した。
【0307】
1792個のバイアルを充填後、B2 Flurotec Westar RSストッパー(West Pharmaceutical、カタログ番号1970−0002、ロットD3161200)を挿入して、圧着操作を行った。圧着操作の際の圧着の完全性を肉眼で検査し、5個のバイアルを拒絶した。充填、栓封止、および圧着操作の完了後、ラベルを貼付していない状態でバイアルを検査した。ラベルを貼付していないバイアル21個を検査の際に拒絶し、残りが全体で1766個のバイアルになった。
【0308】
プロセスを継続してラベル貼付操作を行い、試験および保持のために確保した54個のバイアルを取り出した後、1712個のラベル貼付充填バイアルを使用のために得た。全てのバイアルを、ラベルを貼付した保存用の箱に入れて、−70℃以下で保存した。その後さらに2個のバイアルを試験用に採取して、残りは1710個のバイアルとなった。
【0309】
PVSRIPOを梱包した。ウイルス濃度が記されたさらなるラベルをプラスチックミニグリップバッグに挿入した。36個のミニグリップバッグ(それぞれが、挿入されたバッグラベルを含有する)をそれぞれのラベル貼付梱包箱に入れた。ラベル貼付梱包箱を、BSCの中のドライアイスを満たしたトレイ上に置いて、冷却し、梱包操作を通してドライアイス上に置いたままにした。全体で1710個のPVSRIPO最終バイアル充填製品ロットL1402001ラベル貼付バイアルを、−70℃以下の制御保管庫から取り出して、同じBSC内のドライアイス上でミニグリップバッグ(1つのバイアル/バッグ)に梱包した。ミニグリップバッグへの梱包の間、全てのバイアルおよび箱をドライアイス上で維持した。梱包したバイアルの36個のそれぞれをラベル貼付した箱に入れた。箱を−70℃以下の制御保管庫に入れた。
【0310】
許容限界と分析方法
PVSRIPO採取プール、精製滅菌バルク、および最終バイアル充填製品の試験および規格は、以下の変更を除き、実施例5の記述と同じであった。2つのさらなるマイコプラズマ試験を採取プール試験に追加した。1つは、Vero細胞を使用したウイルス産物のマイコプラズマ検出試験であり、他方は、タッチダウン(TD)−PCRによるマイコプラズマ検出試験であった。採取プールのマイコプラズマ検出は、最初、NIH/3T3細胞の代わりにVero細胞を使用した。次に、アッセイを、PVSRIPOによる感染に対して不応性であるNIH/3T3細胞を使用して実施した。タッチダウンPCRアッセイもまた実施して、試料の凍結保存後にマイコプラズマDNAが存在しないことを確認した。野生型またはワクチン株ポリオウイルスが存在しないことを確実にするために、ポリオウイルスIRESに関するRT−qPCR試験を最終バイアル充填製品放出試験に追加した。精製滅菌バルクおよび最終バイアル充填製品放出試験のゲノム配列決定方法を、より進化したIllumina次世代配列決定(NGS)法に変更した。
【0311】
PVSRIPO採取プールロットL1311003、精製滅菌バルクロットL1405001、および最終バイアル充填製品ロットL1402001に関する放出試験、方法、規格、および結果は、図27〜28の分析証明書に見出すことができる。
【0312】
分析方法の変更およびアッセイの説明
PVSRIPO採取プール、精製滅菌バルク、および最終バイアル充填製品の試験は、複数の追加のマイコプラズマ試験を採取プール試料に実施したことを除き、実施例5に記述されるとおりに実施した。これらの方法を、追加のマイコプラズマ試験および新しい次世代配列決定方法と共に以下に説明する。
【0313】
a.Vero細胞を使用したウイルス産物のマイコプラズマ
マイコプラズマの検出を、間接手順および直接手順の両方を使用して採取プールロットL1311003について実施した。Vero細胞を用いたこの試験は、この採取プールロットのみに関して偶発的に実施され、これまでの試験は、ポリオ感染に対して不応性であるNIH/3T3細胞を使用していた(NIH/3T3細胞についての試験も同様に実施した)。NIH/3T3細胞と共に使用した採取プール試料は、Vero細胞アッセイと比較して追加の期間凍結保存されていたことから、採取プール中にマイコプラズマDNAが存在しないことを確認するために、タッチダウンPCR(TD−PCR)アッセイも同様に実施した。
【0314】
間接的検出法は、Vero細胞上に接種した後、DNA結合蛍光色素染色を使用して染色することにより、マイコプラズマ、特に培養不能マイコプラズマの可視化を可能にする。陰性対照および陽性対照の両方をアッセイで使用した。陽性対照は、強い細胞吸着性(M.hyorhinis)および弱い細胞吸着性(M.orale)のマイコプラズマ種の両方を含んだ。DNA結合蛍光色素による培養物の染色により、観察された染色パターンに基づいてマイコプラズマを検出することができる。陰性培養物では、細胞核の蛍光のみが観察されるが、陽性培養物では核および核外蛍光が観察される。
【0315】
直接培養は高感度で特異的なマイコプラズマの検出法である。使用した寒天培地およびブロス培地は、培養可能マイコプラズマの成長にとって必要な炭素およびエネルギーと共に栄養を供給する。陽性対照および陰性対照の両方を直接アッセイで使用した。陽性対照は、発酵性マイコプラズマ(M.pneumoniae)および非発酵性マイコプラズマ(M.orale)を含んだ。
【0316】
間接的検出法に関して、採取プール試料を37±2℃で解凍して、滅菌リン酸緩衝食塩水を使用して、1:5および1:10倍希釈物を調製した。非希釈試験試料およびそれぞれの希釈物を、Vero細胞を含有する2個のカバーガラス(試料/希釈物あたり)それぞれの上に接種した。カバーガラスを、36±1℃および5〜10%COで1〜2時間インキュベートした。8%ウシ胎児血清を含有するEMEM 2mLをそれぞれのカバーガラスに添加した。カバーガラスを36±1℃および5〜10%COでインキュベートした。インキュベーションの3日後、カバーガラスを固定して染色し(ヘキスト染色)、落射蛍光顕微鏡を使用して読み取った。
【0317】
非希釈試験品目2ミリリットルを2つのSP−4寒天プレートのそれぞれに接種し、SP−4ブロス50mLを含有する75cmフラスコに10mLを接種した。プレートを36±1℃で最短で14日間嫌気的にインキュベートした。フラスコを36±1℃で嫌気的にインキュベートして、3、7、および14日目に、2個のSP−4寒天プレート(0.2mL/プレート)のそれぞれに副次培養した。これらのプレートを36±1℃で最短で14日間嫌気的にインキュベートした。ブロスフラスコを、それぞれの作業日に色または濁度の変化に関して14日間観察した。一般的に、マイコプラズマの成長は、ブロスの混濁を引き起こす。寒天プレートを、14日間のインキュベーション後に観察した(0日目)。SP−4ブロスで副次培養したプレート(3、7、および14日目)を14日間のインキュベーション後に観察した。マイコプラズマコロニーは寒天の中に成長し、コロニーの中心は不透明に見えるようになり、周辺表面の成長は半透明に見える。これらのコロニーは、光学顕微鏡下で容易に観察することができる。
【0318】
b.TD−PCRによるマイコプラズマ
マイコプラズマの検出を、タッチダウンポリメラーゼ連鎖反応(TD−PCR)試験を使用して採取プールロットL1311003について実施した。この試験は、PTCマイコプラズマVero細胞試験およびNIH−3T3細胞試験の実施の間の−70℃以下の試料保持時間によって、保持された採取プール試料における生存の可能性がある任意のマイコプラズマが失われうる場合に実施した。PCRベースのマイコプラズマアッセイは、凍結融解に影響されず、採取プールの超低温保存は維持される。
【0319】
PCRは、細胞試料、血清試料、または組織試料中のマイコプラズマDNAの検出にとって非常に感度のよいツールである。PCRは、その感染度にかかわらず、マイコプラズマDNAを増幅する。プライマーの組によってマイコプラズマ配列の選択された保存領域の境界を定義することによって、標的配列を数時間で1000万倍超に増幅することが可能である。増幅された標的DNAの存在を、エチジウム染色ゲル電気泳動によって確認する。このアッセイを使用して、1cfuもの少量のマイコプラズマDNAを検出することができる。タッチダウンPCRは、特異性および感度を大きく増加させるためにアニーリング勾配を使用する改変サイクリング法である。
【0320】
試験試料DNAは、細胞または上清の溶解および精製によって得られる。得られたDNAを、ある量のヌクレアーゼフリー水に再懸濁させて、0.1μg/μLのDNAを生成する。PCR増幅に関して、適切なプライマー、dNTP、緩衝液、水、MgCl、およびTaq DNAポリメラーゼを含有する試薬のマスターミックスを調製して、アッセイにおけるあらゆる反応物に添加した。偽プライミング事象の発生を低減させるために、反応物を8−メトキシソラレンによって処理し、U/V光に曝露した。試験品目の6個のアリコートをPCR反応チューブに分配した。3つのアリコートは、さらなる対照DNAを添加せずに処理した。他の3つのアリコートには、マイコプラズマDNA 1、10、および100cfuを添加した。試薬対照の4個のアリコートを処理した;1つの反応物は、試料を除く反応ミックスの全ての構成成分を含有した。他の反応チューブには、マイコプラズマDNA 1、10、および100cfuを添加した。精製ヒト細胞H9 DNAの1つのアリコートを陰性対照として使用した。H9 DNAの3つのアリコートに、マイコプラズマDNA 1、10、および100cfuを添加した。TD−PCR増幅後、アンプリコンをゲル電気泳動によって分離して、UV光によって調べた。
【0321】
c.ウイルス力価(TCID50
TCID50によるウイルス力価を、Hep−2C指標細胞を使用して実施して、PVSRIPO採取プール、精製滅菌バルク、および最終バイアル充填製品におけるPVSRIPOウイルス力価を決定した。希釈培地(4mM L−グルタミンおよび1%FBSを有するRPMI1640)100マイクロリットル(100μL)を個別の96ウェルプレート(それぞれの参照標準物質、陽性対照、および試験試料に関して個別のプレートを提供する)のそれぞれのウェルに添加した。FDAポリオウイルス1型参照標準物質、FDAロットTA4(1:10,000)、Sabin原型1型陽性対照ポリオウイルス(1:1,000,000)および試験試料(1:1,000,000)の初回希釈物を、希釈培地(4mM L−グルタミンおよび1% FBSを有するRPMI1640)で調製した。それぞれの最終希釈物100μLアリコートを、それぞれの96ウェルプレートの最初の列のウェル8個のそれぞれに添加した。較正したマルチチャンネルピペッターを使用して、1列目の各ウェルから100μLを採取して、2列目の隣接するウェルに移して十分に混合して、次の列へと連続してプロセスを繰り返すことによって、連続1:2倍希釈物をそれぞれの96ウェルプレートにおいて作製した。FDA参照標準物質に関して、希釈は11列目で終了し、12列目は陰性対照ウェル(希釈培地のみを含有する)として用いた。11列目からの過剰な100μLを廃棄した。陽性対照および試験品目に関しては、希釈スキームを第2の96ウェルプレートにおいて継続して、23列目で終了し、24列目を陰性対照ウェルとして用いた。増殖培地(4mM L−グルタミンおよび10%FBSを含むRPMI1640)中のHep−2C細胞10000個(1×10個の細胞/mLを0.1mL)を、各96ウェルプレートの各ウェルに加えて、36±1℃の加湿5%COインキュベータ内で10日間インキュベートした。プレートを、1、3、7および10日目に細胞変性効果(CPE)に関して調べた。アッセイの完了の際に、各試料に関してCPEを示すウェルの数を、FDAによって提供された計算プログラムテンプレートの適当なフィールドに記入した。プログラムは、FDAポリオウイルス1型参照標準物質の応答に基づいて、各試料に関してTCID50/mLを計算する。FDA参照標準物質の入手可能性によっては、他の良好に特徴付けされたPVSRIPOおよびSabin株標準物質を、陽性対照ウイルスとして使用してもよい。
【0322】
d.rct40によるウイルス安定性
アッセイは、Vero指標細胞でのプラーク形成によって、33℃、36℃および40℃で、PVSRIPO採取プールおよび最終バイアル充填製品、ならびに対照のウイルス力価を決定する。アッセイは、潜在的遺伝子変化の指標として成長特性の温度関連変化を使用するウイルスの安定性の間接的尺度である。アッセイは、2002年のWHO技術報告書シリーズ904号に基づく。報告書は、ウイルスの濾過バルク懸濁液を、同じウイルス型のポリオウイルスの適切なrct/40−およびrct/40+株と比較して、36℃および40℃の温度での再生特性に関して試験すべきであると述べている。インキュベーション温度は、±0.1℃内となるよう制御しなければならない。36℃でのバルク懸濁液および適切な参照標準物質の力価が、40℃で決定された力価より少なくとも5.0log大きい場合、濾過バルクは試験に合格である。参照材料の全ての力価が、予想される値の範囲内でなければならない。
【0323】
36℃および40℃でのウイルスのlog10力価を比較して、36℃と40℃の間での対数の低減が少なくとも5である場合、試料は、40℃での成長に対して感受性があると決定され、試験に合格したとみなす。33℃での試料の力価も同様に決定して、33℃での試料の過去に決定された力価と比較することができる。陽性対照は、RCT 40+対照:ポリオウイルス1 SabinクローンS33ロットL0406008およびRCT 40−対照:ポリオウイルス1 SabinクローンS71ロットL0406004を含む。陰性対照は、10%FBSを含有するDMEMである。
【0324】
Vero細胞を蒔いて80〜100パーセントコンフルエンスに達するまで成長させた。増殖培地を除去して、Vero細胞に試験試料または対照試料0.2mLを与えた。次に、反復実験の培養皿を33℃、36℃、および40℃でおよそ1時間インキュベートした。接種物を除去して、細胞シートに1.5%アガロース/2×EMEM/20%FBSを重層した。アガロースを固化させて、プラークが陽性対照において完全に形成されるまで、反復実験の培養皿を33℃、36℃、および40℃でインキュベートした(2日)。次に培養皿に、アガロース/ニュートラルレッドを含有する2×EMEMを暗所で重層して、ニュートラルレッドが細胞シートを染色したときに、プラークを計数した。平均プラーク値を決定した。式:平均プラーク値×希釈倍率/接種体積、を使用して、力価(pfu/mL)を計算した。
【0325】
e.全ゲノム配列
PVSRIPO精製滅菌バルクおよび最終バイアル充填製品ロットの包括的なディープシークエンス分析を実施した。
【0326】
1.RNA抽出および逆転写
ゲノムRNAを、Qiagen(Germantown、MD)のQIAampウイルスRNAミニキットを使用して、標準的なQiagenのプロトコールの改訂版に従って、試験試料から単離した。簡単に説明すると、キャリアRNAを含まない緩衝液AVL 560μLを、試料140μLに添加した。試料をボルテックスして、室温(23°±2℃)で10分間インキュベートした。100%エタノール 560マイクロリットルを試料に添加して、ボルテックスし、次に、試料の半分(約630μL)をQIAampミニカラムに添加して、6000×gで1分間遠心分離した。試料の残りをカラムに添加して、遠心分離を繰り返した。次に、カラムを2つの緩衝液で洗浄した。溶出緩衝液各40μLの2回溶出を実施して、最終総体積を約80μLとした。総RNAを、NanoDrop 8000分光光度計を使用して分光光度法によって定量した。次に、RNAを、Life Technologies(Carlsbad、CA)のThermoScript(商標)RT−PCRシステムを使用してcDNAを作製するために使用した。簡単に説明すると、RNA 9μL、オリゴ(dT)20プライマー1μL、およびdNTPを65℃で5分間インキュベートした。インキュベーション後、cDNA合成緩衝液、DTT、RNase OUTおよびThermoScript RTを試料に添加して、試料を50℃で45分間インキュベートした後、85℃で5分間インキュベートして反応を停止させた。RNアーゼHを試料に添加して、37℃で20分間インキュベートした。cDNAをNanoDrop 8000分光光度計を使用して分光光度法によって定量した。次に、New England BioLabsのNEBNext第二鎖合成キットを使用して、cDNA産物5μLを使用して第二鎖反応を実施した。cDNAを、第二鎖合成緩衝液および第二鎖合成酵素ミックスと混合し、16℃で2.5時間インキュベートした。産物をQiagenのQIAquick PCR精製キットを使用して精製し、ヌクレアーゼフリー水(NFW)30μlに溶出させた。ds−cDNAを、NanoDrop 8000分光光度計を使用して分光光度法によって定量して、短期間保存のために−20±4℃で保存した。
【0327】
2.ライブラリの調製
調製されたdscDNAを使用して、Illumina HiSeq2500において配列決定のためのライブラリを調製した。それぞれの元の試料から1つのライブラリを調製した。ライブラリは、Illumina(San Diego、CA)のNextera XTライブラリ調製キットを使用して調製した。dscDNAの出発時の総投入量は、1pg〜1ngの間の投入ds−cDNAを使用する開発前範囲探索努力に基づき、各ライブラリに関して1ngであった。ライブラリを、Illumina Nextera XTライブラリ調製プロトコールに従って調製した。簡単に説明すると、各試料を酵素によって断片化して、同時にNexteraタグ付断片化ケミストリーを使用して、アダプター配列でタグ付けを行った(ライゲートした)。プロセスは、投入されたDNAを断片化して、断片の末端に、下流のプロセシングで使用するためのアダプター配列を付加する。次に、ライゲーション酵素を中和し、短い12サイクルの増幅を実施して、各試料の5’末端および3’末端にバーコードを付加した。分析の際に異なる試料を同定して明確に示すために、それぞれのライブラリに異なるバーコードを割付した。PCR反応物を2ラウンドのAMPure XPビーズ洗浄を使用して洗浄した後、TE緩衝液に溶出させた。ライブラリの品質および量に関して評価するために、次に、ライブラリのそれぞれを、高感度DNAチップを使用してAgilentバイオアナライザで分析した。試料ライブラリを、短期間保存のために−20±4℃で保存した。
【0328】
3.Illumina cDNA配列決定と分析
それぞれの試料に関して、Illumina HiSeq 2500において1つのRapidフローセルを実行した。それぞれのフローセルに関して、機器上でのクラスタリング(on-instrument clustering)のために、ライブラリを変性させて希釈した。次に、ペアエンド2×150bpの配列決定を、Illumina SBS配列決定技術および試薬を使用してライブラリのそれぞれに実施した。得られたデータを、Illumina HiSeqソフトウェアを使用してデマルチプレックスした後、分析した。それぞれのフローセルは、単一試料を使用して実行した。配列決定した全ての画分に関してFastQファイルを作成した。Samtoolおよびmpileupソフトウェアを使用して、SAMからの出力ファイルをBAMフォーマットに変換し、Integrated Genome Viewerで検査ために出力ファイルにインデックスをつける。Mpileupは、ウイルスのカバレッジを調べて潜在的変種を探すために、それぞれの位置の深さを増加させるためにフラグと共に使用した。12サイクルのPCRプレ増幅がNextera XTライブラリ調製のために必要であったことから、所定の位置でウイルス配列バリアントをコールする閾値は、212=4096またはリードの0.1%のどちらか大きいほうであることが確立された。バリアントは以下の判定基準に従って定義され、所定の塩基位置での配列決定の深さが4,096,000に等しいかまたはそれを超えた場合、潜在的変種は、0.1%超でコールされ;深さが4,096,000未満であるが、4096超であった場合、4096またはそれ超の頻度を超えるバリアントがコールされた:所定の塩基位置でのカバレッジの深さが4096リード未満であった場合、それらが1.0%超からなる場合には、潜在的バリアントがコールされた。追加の配列決定努力(Illumina、Sanger、または他のNGS方法)が必要とされる前に、塩基位置あたりの最小のリードカバレッジを4X(規定の最小値)に設定した。
【0329】
リードを、Bowtie(ショートリード参照アライナー)を使用して各試料に関して、PVSRIPO参照配列と整列させた。それぞれの試料に関して、塩基総数、カバレッジ、ならびに平均リード長および参照と整列させたリードのパーセントを計算して、アッセイの妥当性に関して予め確立された規格と比較した。推定されるゲノムカバレッジは、総配列決定塩基を得て、PVSRIPO参照配列(7303塩基対)のサイズで除することによって見出された。それぞれの試料の参照全体の位置と比較したカバレッジのプロット、ならびに、それぞれの試料の試料リード長のプロットを作製した。分析を行って、参照配列と比較したときの、それぞれの試料中のバリアントを調べた。ポリオゲノムのこの領域(VPg結合およびStem a/b)は、in vivoで高い配列変動性を示すことが公知であることから、多型レベルの上昇がそれぞれのウイルスロットの5’末端(塩基位置1〜34位)で予想された(および観察された)。非整列リード配列を、NCBI BLASTnによって分析して、その同一性を決定した;非整列リード(non-aligned read)、特に非精製ウイルス試料からのリードはVero宿主細胞ゲノムまたはミトコンドリアDNA配列に由来するが、まれにヒトDNAまたは他の実験時の夾雑物DNA配列も同様に観察されうると予想される。
【0330】
f.宿主細胞DNA
PVS−RIPO精製滅菌バルクロットを、シングルコピー遺伝子であるCercopithecus aethiops(Vero)特異的ネクチン−1α遺伝子の遺伝子内重複(GenBank(登録商標)受託番号AF308635)を標的とするTaqMan(登録商標)ベースの定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)(Applied Biosystems Inc.、Foster City、CA)アンプリコンを使用して、VeroゲノムDNA負荷量に関して試験した。アッセイの検出限界は、5ng VeroゲノムDNA/mL未満であった。Vero細胞ゲノムDNA(gDNA)を陽性対照(100ng〜10pg)として使用し、内部陽性対照(IPC)の約2250コピーを試験品目に添加したものをPCR阻害対照として使用した。陰性の試験なし対照(Negative No Test Control)(NTC)の複数の対照(controls)は、ヌクレアーゼフリー水(NFW)を使用して実施し、それぞれの試料の核酸抽出対照は、反応あたりIPC約10,000コピーの等量を含有した。IPCは、VIC標識プローブを利用して、試験およびIPCアンプリコンの両方を同じPCR反応において定量することができる。Vero宿主細胞DNA法からのIPC結果はまた、同時に実施したウイルス定量RT−qPCR法のための抽出対照および阻害対照としての役割も果たす。
【0331】
リアルタイムqPCRは、試料中の低コピー数の残留DNAまたはRNAの定量を含む、遺伝子発現分析、遺伝子型決定、病原体検出/定量、変異スクリーニング、および正確なDNA検出のために利用することができる感度のよい定量的増幅方法である。Applied Biosystems7900HT 96ウェル機器を使用して、増幅プロセスの際に連続的にPCR増幅産物の蓄積を検出し、PCRの対数期における正確な標的の定量が可能となった。96ウェルブロックを使用することにより、384ウェルブロックより大きい反応体積が可能となり、このように、残留DNAおよび夾雑物DNA試験に関するアッセイ感度が増加する。
【0332】
TaqMan(登録商標)qPCRケミストリーは、二重標識蛍光発生オリゴヌクレオチドTaqMan(登録商標)プローブを利用する。ヒトゲノムDNAを検出するために使用するTaqMan(登録商標)プローブは、識別可能な放射極大を有する蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチド末端で構成される。プローブの5’末端を、レポーター色素、6−FAMによって標識し、3’プローブ末端は、消光色素によって標識した。内部陽性対照(IPC)アンプリコンは、標的アンプリコンからの放射干渉を回避するために非蛍光クエンチャーを有するVIC標識プローブを使用した。オリゴヌクレオチドプローブは、Cercopithecus aethiops(Vero)ネクチン−1α遺伝子PCRアンプリコン内の標的配列と相同であり、Vero細胞に対して非常に特異的である。VeroのヒトgDNAに対する高い拒絶比は、プローブ標的の一部としてヒトgDNAに存在しないC.aethiopsにユニークな9塩基配列重複事象を利用することによって達成された。インタクトで遊離の溶液中では、プローブ消光色素は、FRETを介して蛍光色素レポーターからの放射を低減させる。TaqMan(登録商標)PCR反応の伸長相において、プローブはTaq DNAポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性によって切断され、レポーター色素がプローブから放出されて、レポーターからの放射を増加させる。
【0333】
それぞれのPCR反応における初回標的の正確な定量は、試薬が消耗する前または副産物による反応の阻害が起こる前に、増幅の対数(log)期の間に起こる。しかし、反応のシグナル対ノイズ限界および一般的なバックグラウンド蛍光により、最も正確なデータは典型的に対数期後期に得られる。正規化レポーター蛍光を、PCRサイクル数によって表される時間に対してプロットする。標的コピー数または質量値は、バックグラウンドを超える蛍光閾値を割付することおよびそれぞれの試料の増幅プロットが閾値(閾値サイクルまたはCtとして定義される)に達するサイクル点を決定することによって得られる。それぞれの反応の閾値サイクル値を使用して、既知標準物質と比較した、それぞれの試験品目反応内に最初に含有される標的の量を定量する。
【0334】
PVS−RIPO精製滅菌バルクを、シングルコピー遺伝子であるCercopithecus aethiops(VERO)特異的ネクチン−1α遺伝子の遺伝子内重複(GenBank AF308635)を標的とするTaqMan(登録商標)ベースのqPCR(Applied Biosystems Inc.、Foster City、CA)アンプリコンを使用して、VEROゲノムDNA負荷量に関して試験した。TaqMan(登録商標)プライマーおよび二重蛍光色素標識プローブを、ABI Primer Expressソフトウェア(バージョン2.0.0)によって設計する。111−bpのアンプリコンは、フォワードプライマー:5'-(CCT CTG CCC AGC GTG AAG, 配列番号5);リバースプライマー: 5'-(CAC AGA CAC GCC CAT GGA T, 配列番号6);およびTaqMan(登録商標)プローブ: 5'-[6FAM]-(CAC CCA AGC CAC CAA TGG CTC CAA)-[クエンチャー], 配列番号7からなる。プライマーおよびプローブをヌクレアーゼフリー水(NFW)によってそれぞれ、10および5pmol/μLに希釈した。反応混合物は、UNGおよびROX色素を有するTaqMan(登録商標)PCR 2×マスターミックス25μL、IPCアンプリコンプライマー/プローブ(またはNFW)1.5μL、IPC DNA(またはNFW)0.5μL、フォワードプライマー1μL、リバースプライマー1μL、TaqMan(登録商標)プローブ1μL、および試料20μL(最終反応体積50μL)からなった。反応混合物を96ウェルプレートにロードして、光学フィルムで覆い、ABIモデル7900HT 96ウェル配列検出システムによって2−ステップqPCRプロファイル(2.00分、50.0°C;10.00分、95.0°C;0.15分、95.0°Cを40サイクル、1.00分、60.0°C)を使用して増幅した。精製および光学的に定量されたDNA抽出物から作製したVeroゲノムDNA標準曲線は、NFW中で100ngから10pgまで10倍連続希釈するものであった。およそ2.6遺伝子コピー/rxnに相当する10pg/rxn標準物質からの陽性反応がまれに観察される。総試験試料DNAを、qPCR反応の前に、承認されたQiagen洗浄剤スピンカラムミニプレップ法を使用して抽出した。試料の組成に起因する潜在的なPCR阻害は、適切な抽出された試験品目試料にIPC標的DNA約2250等量のコピーを添加することによってモニターした(すなわち、抽出効率をモニターするためにIPCを既に添加した試料ではない)。抽出効率を、IPC DNA 10,000コピーの等量を添加した試験試料を使用してモニターした。陰性(NTC)対照試料を、NFWを使用して試験のために実施した。標準物質、試験試料、IPCスパイク、および対照PCR反応は全て、2つ組で実施した。NTC Ctスコア、標準曲線Ctスコア、およびフィット(R)、ならびにIPC抽出および干渉スパイク回収率を含む試料の結果を報告するために、方法の管理およびシステム適格性判定基準を満たさなければならない。試験試料中の初回ゲノムDNA混入レベルを、ABIソフトウェアを使用して、試料閾値サイクル値をVero DNA標準曲線の式と比較することによって計算した。
【0335】
PVS−RIPOウイルス採取プールを、精製前にBenzonase(登録商標)酵素処理した。ヌクレアーゼ処理は典型的に、平均≦12ヌクレオチドのオリゴヌクレオチド断片を生成し、消化後の断片集団はカイ分布に従う。このアッセイに使用したC.aethiops(Vero細胞株)ネクチン−1 qPCRアンプリコンは、長さが111bpである。したがって、アッセイから得られた結果は、インタクトの一倍体C.aethiopsゲノムDNAの質量(約3.88pg/一倍体コピー)に基づく残留宿主細胞DNA濃度のワーストケースの推定値を表す。
【0336】
ポリオウイルスIRESのRT−qPCR
PVSRIPO最終バイアル充填製品ロットを、ネイティブポリオIRES配列を標的とするTaqMan(登録商標)ベースの逆転写定量的ポリメラーゼ連鎖反応(RT−qPCR)アンプリコン「POSA」を使用して、野生型ポリオウイルス1型および2型IRES配列の存在に関して試験した。PVSRIPOのIRES領域は、HRV−2に由来し、POSAアンプリコンプライマー配列およびプローブ配列とは異種である。アッセイの検出限界は、それぞれのPCR反応において2.6×10コピーのPVSRIPOあたり野生型ポリオIRESの100コピー未満であった。PVSRIPO試験品目のコピー数は、HRV−2 IRESおよび本明細書において他所で記述されるPVSRIPOにおけるポリタンパク質CDS領域を標的とするTaqManアンプリコン「PVS1」および「PO1」の使用を通して試験前に決定した。方法のLODを、Sabin 1型ポリオウイルスを添加した試料によって、アッセイ時に確認した。抽出したポリオSabin 1型ウイルスRNAを使用して標準曲線(100pg〜1fg/反応)を作成し、試験品目のポリオSabin 1型RNA 100コピーのスパイク(約0.41fg)を、アンプリコン阻害対照として、およびアッセイの検出限界を確立する手段として使用した。試験試料のウイルスRNAを、qPCR反応の前に、承認されたQiagenミニプレップ法を使用して抽出した。全ての標準物質および試験試料反応は2つ組で実施した。陰性対照は、ヌクレアーゼフリー水による試験なし対照(NTC)反応であった。一般的なPCR阻害対照および抽出対照は、残留Vero宿主細胞DNAに関して同時に実施されるTaqMan qPCR分析の際に試料抽出物と共に分析される、異種内部陽性対照(IPC)DNA、ならびに関連するIPC特異的プライマーおよびプローブからなった。
【0337】
Applied Biosystems 7900HT 96ウェル機器を使用して、増幅プロセスの際に連続的にPCR増幅産物の蓄積を検出し、それによってPCRの対数相における正確な標的の定量が可能となる。96ウェルブロックを使用することにより、384ウェルブロックより大きい反応体積が可能となり、このため残留DNAおよび夾雑物RNA試験に関するアッセイ感度が増加する。TaqMan(登録商標)qPCRケミストリーは、二重標識蛍光発生オリゴヌクレオチドTaqMan(登録商標)プローブを利用する。ヒトゲノムDNAを検出するために使用されるTaqMan(登録商標)プローブは、識別可能な放射極大を有する2つの蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチド末端で構成される。プローブの5’末端を、レポーター色素、6−FAMによって標識し、3’プローブ末端を、非蛍光消光色素によって標識する。オリゴヌクレオチドプローブは、ポリオ1型および2型IRES領域内の内部標的配列と相同であり、PVSRIPOにおけるHRV−2由来IRESと交叉反応しない。HRV−2 IRES配列のポリオIRES配列に対する高い拒絶比は、HRV−2に存在しないポリオIRESの高度異種領域を利用することによって達成される。インタクトで遊離の溶液中では、プローブ消光色素は、FRETを介して蛍光色素レポーターからの放射を低減させる。TaqMan(登録商標)PCR反応の伸長相において、プローブはTaq DNAポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性によって切断され、プローブからレポーター色素を放出し、レポーターからの放射を増加させる。それぞれのPCR反応における初回標的の正確な定量は、試薬が消耗する前または副産物による反応の阻害が起こる前に、増幅の対数(log)期の間に起こる。しかし、反応のシグナル対ノイズ限界および一般的なバックグラウンド蛍光に起因して、最も正確なデータは典型的に対数期後期に得られる。正規化レポーター蛍光を、PCRサイクル数によって表される時間に対してプロットする。標的コピー数または質量値は、バックグラウンドを超える蛍光閾値を割付することおよびそれぞれの試料の増幅プロットが閾値(閾値サイクルまたはCtとして定義される)に達するサイクル点を決定することによって得られる。それぞれの反応の閾値サイクル値を使用して、既知標準物質と比較した、それぞれの試験品目反応内に最初に含有される標的の量を定量する。NTC Ctスコア、標準曲線Ctスコア、およびフィット(R)、ならびに野生型ポリオRNA回収率を含む、試料の結果を報告するために、方法の管理およびシステム適格性判定基準を満たさなければならない。
【0338】
PVS−RIPO最終バイアル充填製品を、ポリオIRESを標的とするTaqMan(登録商標)ベースのRT−qPCR(Applied Biosystems Inc.、Foster City、CA)アンプリコンを使用して、野生型(またはワクチン株)ポリオ1型および2型IRES cDNA配列に関して試験した。TaqMan(登録商標)プライマーおよび蛍光色素標識プローブは、ABI Primer Expressソフトウェア(バージョン2.0.0)によって設計した。109−bpアンプリコンは、フォワードプライマー:5'-(TTG GCG GCC TAC CTA TGG, 配列番号11);リバースプライマー: 5'-(TGG GAT TAG CCG CAT TCA, 配列番号12);およびTaqMan(登録商標)プローブ: 5'-[6FAM]-(AGC CTA TTG AGC TAC ATA AGA ATC CTC CGG C)-[クエンチャー], 配列番号13からなる。プライマーおよびプローブをそれぞれ、ヌクレアーゼフリー水(NFW)によって10および5pmol/μLに希釈した。反応混合物は、UNGを有しないTaqMan(登録商標)RT−PCRユニバーサルマスターミックス25μL、NFW 1.5μL、フォワードプライマー1μL、リバースプライマー1μL、TaqMan(登録商標)プローブ0.5μL、および試料20μL(約2.6×10コピーPVSRIPOを含有する)からなり、最終反応体積は50μLであった。反応混合物を96ウェルプレートにロードして、光学フィルムで覆い、ABIモデル7900HT 96ウェル配列検出システムによって4−ステージqPCRプロファイル(2.00分、50.0°C;45.00分、60.0°C;5.00分、95.0°C;0.20分、94.0°Cを45サイクル、1.00分、62.0°C)を使用して増幅した。精製ウイルスRNA(WHO標準物質、BDPパート番号30374)から作製したポリオSabin 1型株の標準曲線は、NFW中で100pgから1fg(約2.43×10〜約243コピー/rxn)まで10倍連続希釈するものであった。
【0339】
HRV−2 IRESおよびポリオポリタンパク質のRT−qPCR
PVS−RIPO最終バイアル充填製品ロットを試験して、PVSRIPO中のHRV−2 IRES(PVS−1)およびポリオポリタンパク質遺伝子(PO1)を標的とするTaqMan(登録商標)ベースのRT−qPCR(Applied Biosystems Inc.、Foster City、CA)アンプリコンを使用して、PVSRIPO HRV−2 IRES(PVS−1)およびポリオポリタンパク質(PO1)RNA負荷量を決定した。
【0340】
TaqMan(登録商標)オリゴヌクレオチドプローブは、PVSRIPO HRV−2由来IRESおよびポリオポリタンパク質RT−PCRアンプリコン内の内部標的配列と相同であり、共に使用すると、PVSRIPOに対して特異的である。PVSRIPOは、一本鎖RNAウイルスであることから、qPCR増幅の前に熱サイクルプロトコールの一部として増幅プライマーを使用して、試料抽出物をcDNAに逆転写する。インタクトで遊離の溶液中では、プローブ消光色素は、FRETを介して蛍光色素レポーターからの放射を低減させる。TaqMan(登録商標)PCR反応の伸長相において、プローブはTaq DNAポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性によって切断され、レポーター色素をプローブから放出し、レポーターからの放射を増加させる。
【0341】
ABI Prism7900HTは、2軸スキャンヘッドを使用して、アルゴンイオン(488nm)レーザーからの励起光を96ウェル全てに分配する。CCDイメージャーが、それぞれのウェルからの蛍光スペクトルおよび強度を測定して、PCR増幅の際のリアルタイムスペクトルデータを作成する。ABI配列検出ソフトウェア(SDS)は、レポーター色素、クエンチャー色素、およびノーマライザー(ROX)色素の蛍光強度を逆畳み込みして、増幅の過程にわたって、正規化したレポーターからの放射強度の増加を計算する。陰性対照は、ヌクレアーゼフリー水による試験なし対照(NTC)反応であったが、一般的なPCR阻害対照および抽出対照は、異種内部陽性対照(IPC)および試料抽出物について使用される関連するIPCアンプリコンからなり、Vero宿主細胞DNA増幅の際に同時に実施される。
【0342】
それぞれのPCR反応における初回標的の正確な定量は、試薬が消耗する前または副産物による反応の阻害が起こる前に、増幅の対数(log)期の間に起こる。しかし、反応のシグナル対ノイズ限界および一般的なバックグラウンド蛍光により、最も正確なデータは典型的に対数期後期に得られる。正規化レポーター蛍光を、PCRサイクル数によって表される時間に対してプロットする。標的コピー数または質量値は、バックグラウンドを超える蛍光閾値を割付することおよびそれぞれの試料の増幅プロットが閾値(閾値サイクルまたはCtとして定義される)に達するサイクル点を決定することによって得られる。それぞれの反応の閾値サイクル値を使用して、既知標準物質と比較した、それぞれの試験品目反応内に最初に含有される標的の量を定量する。
【0343】
BDPでアッセイを実施するために、TaqMan(登録商標)プライマーおよび蛍光色素標識プローブをABI Primer Expressソフトウェア(バージョン2.0.0)によって設計した。71−bp HRV−2 IRES(PVS−1)アンプリコンは、フォワードプライマー:5'- (AAC CCA ATG TGT ATC TAG TCG TAA TGA, 配列番号1);リバースプライマー: 5'- (TGA AAC ACG GAC ACC CAA AG, 配列番号2);およびTaqMan(登録商標)プローブ: 5'-[6FAM]-(CAA TTG CGG GAT GGG ACC AAC T)-[BHQ], 配列番号3からなる。PO1の70−bpアンプリコンは、フォワードプライマー:5'- (TTG GTG GGA ACG GTT CAC A, 配列番号8);リバースプライマー: 5'- (TCA CCT TGA CTC TGA GTG AAG TAT GA, 配列番号9);およびTaqMan(登録商標)プローブ: 5'-[6FAM]-(TTG CAG CGG CCC TGA AGC G)-[BHQ], 配列番号10からなる。プライマーおよびプローブをそれぞれ、ヌクレアーゼフリー水(NFW)によって10および5 pmol/μLに希釈した。反応混合物は、ROX色素を有するTaqMan(登録商標)1−ステップRT PCR 2×マスターミックス25μL、RNアーゼ阻害剤1μL、NFW 1μL、フォワードプライマー1μL、リバースプライマー1μL、TaqMan(登録商標)プローブ1μL、および試験試料20μL(最終反応体積は50μL)からなった。反応混合物を96ウェルプレートにロードして、光学フィルムで覆い、ABIモデル7900HT 96ウェル配列検出システムによって3−ステップqPCRプロファイル(2.00分、50.0°C;48.0℃で30分(RTステップ);10.00分、95℃;0.15分、95.0℃を40サイクル、1.00分、60.0°C)を使用して増幅した。アンプリコンcDNA標準曲線をPVS−RIPOプラスミドDNAから作製して、NFW中で100pgから1fgまで10倍連続希釈した。標準対照試料を2回の複製実験で実施し、様々なPVS−RIPO試験試料抽出物の3つの連続log10希釈物(10から1000倍希釈)を使用して、RTステップの成績を確認して、1000倍試料希釈でのウイルス標的コピー数を定量した。対照および試料ウイルスRNAを、RT−qPCR反応の前に承認された手順に従ってQiagenミニプレップ法を使用して抽出した。一般的なPCR阻害対照および抽出対照は、残留Vero宿主細胞DNAに関して同時に実施されるTaqMan qPCR分析の際に試料抽出物と共に分析される、異種内部陽性対照(IPC)DNA、ならびに関連するIPC特異的プライマーおよびプローブからなった。緩衝液(NFW、鋳型なし)陰性対照試料を、試験のために実施した。両方のPVS−RIPOアンプリコンを、アッセイ間変動をなくすために同じ96ウェルプレートで実行した。試験試料中のPVS−RIPO RNA濃度を、ABI 7900HTソフトウェアを使用して、試料閾値サイクル値をプラスミドDNA標準曲線の式と比較することによって計算した。質量からウイルスコピー数への変換は、約10.8 ag/コピーのPVSRIPOプラスミド(PCR標準物質)質量および約4.1 ag/コピーのPVSRIPOウイルスゲノム質量に基づく。
【0344】
EMによるウイルス粒子
ネガティブ染色透過型電子顕微鏡検査(TEM)を使用して、試験試料中のウイルス粒子数/mL(PVSRIPO最終バイアル充填製品)を定量する。10個のグリッド空間の写真を撮影して、各区分におけるウイルス粒子数を計数し、ウイルス粒子/mLを計算した。
【0345】
試験試料を等量の固定液(2×PBS中の8%ホルムアルデヒド)によって希釈して固定した。試験試料(0.5μL)を、調製したEMS CF200−Cu被覆グリッドの上に置いて、風乾させた。次に試料を2回蒸留した水(DDH0)5μLによって3回洗浄して、試料から塩/リン酸緩衝液を洗浄した。次に、0.5%酢酸ウラニル水溶液(5μL)をグリッド上に添加して、風乾させた。グリッドを電子顕微鏡検査で調べた。10個のグリッド空間の写真を撮影して、ウイルス粒子数を以下の計算によって決定した:
ウイルス粒子数(vp)=(平均vp数)×(グリッドの面積/写真の面積)×(1mL/μLで添加したウイルス量)
【0346】
最終バイアル充填製品ロットL1402001の安定性試験
PVSRIPO最終バイアル充填製品ロットL1402001(−70℃以下で保存)の安定性試験は、外観、TCID50によるウイルス力価、エンドトキシン、pH、およびバイオバーデンを含む。全ての試験を、12、24、36、48、60、および72ヶ月に実施する。ウイルス力価は、6ヶ月に実施する。バイオバーデンは、無菌性が産物放出の一部として既に実施されていることからゼロ時点では実施しない。
【0347】
利用可能な安定性の結果を表10に含める。TCID50の結果に基づき、PVSRIPO最終バイアル充填製品ロットL1402001は−70℃以下で少なくとも6ヶ月安定である。
【表10】
【0348】
本開示の原理が適用されうる多くの可能な実施形態を考慮して、説明される実施形態は、本開示の例に過ぎず、本発明の範囲を制限すると解釈すべきではないと認識すべきである。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。したがって、本発明者らは、これらの特許請求の範囲の範囲および精神に含まれる全てを本発明として主張する。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25A
図25B
図26
図27
図28
【配列表】
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