(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1歯車装置および前記第2歯車装置は、前記第1内歯歯車と一体化され、相手部材を取り付け可能な第1取付部材と、前記第2内歯歯車と一体化され、相手部材を取り付け可能な第2取付部材と、を備え、前記第1取付部材と前記第2取付部材は同一形状であることを特徴とする請求項1に記載の歯車装置のシリーズ。
前記第1取付部材および前記第2取付部材は、起振体を支持する入力軸受が配置される軸受ハウジングであることを特徴とする請求項2または3に記載の歯車装置のシリーズ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、工程には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0013】
実施の形態に係る歯車装置のシリーズ(歯車装置の製品群)は、第1歯車装置と、第2歯車装置と、を備える。第1歯車装置および第2歯車装置は、いわゆる筒型の撓み噛合い式の歯車装置である。
【0014】
まず、第1歯車装置について説明する。
【0015】
図1は、実施の形態に係る歯車装置のシリーズの第1歯車装置100の断面図である。第1歯車装置100は、入力された回転を減速して出力する。第1歯車装置100は、いわゆる筒型の撓み噛合い式歯車装置であり、波動発生器110と、波動発生器110により撓み変形される外歯歯車130と、外歯歯車130と噛み合う第1内歯歯車140と、第1内歯歯車140と軸方向に並んで(隣接して)配置され、外歯歯車130と噛み合う第2内歯歯車150と、2つの規制部材160と、第1内歯歯車140と第2内歯歯車150との間に配置される主軸受162と、第1軸受ハウジング164と、第2軸受ハウジング166と、を備える。第1歯車装置100には、潤滑剤(例えばグリース)が封入されており、外歯歯車130と第1内歯歯車140および第2内歯歯車150との噛合い部や各軸受等を潤滑する。
【0016】
波動発生器110は、起振体軸112と、起振体軸112と外歯歯車130との間に配置される2つの起振体軸受120と、を含む。起振体軸112は、入力軸であり、例えばモータ等の回転駆動源に接続され、回転軸Rを中心に回転する。起振体軸112には、回転軸Rに直交する断面が略楕円形状である起振体114が一体に形成されている。
【0017】
2つの起振体軸受120はそれぞれ、複数の転動体122と、複数の転動体122を保持する保持器124と、外歯歯車130に内嵌される外輪部材126と、を含む。複数の転動体122はそれぞれ、略円柱形状を有し、軸方向が回転軸R方向と略平行な方向を向いた状態で周方向に間隔を空けて設けられる。転動体122は、保持器124により転動自在に保持され、起振体114の外周面114aを転走する。つまり、起振体軸受120の内輪は起振体114の外周面114aと一体的に構成されているが、これに限られず、起振体軸受120は起振体114とは別体の専用の内輪を備えてもよい。
【0018】
外輪部材126は、複数の転動体122を環囲する。外輪部材126は、可撓性を有し、複数の転動体122を介して起振体114により楕円状に撓められる。外輪部材126は、起振体114(すなわち起振体軸112)が回転すると、起振体114の形状に合わせて連続的に撓み変形する。2つの起振体軸受120の外輪部材126は、互いに別体として形成されるが、一体に形成されてもよい。
【0019】
外歯歯車130は、可撓性を有する環状の部材であり、その内側には起振体114および起振体軸受120が嵌まる。外歯歯車130は、起振体114および起振体軸受120が嵌まることによって楕円状に撓められる。外歯歯車130は、起振体114が回転すると、起振体114の形状に合わせて連続的に撓み変形する。外歯歯車130は、第1外歯部132と、第1外歯部132と軸方向に並んで配置される第2外歯部134と、基材136と、を含む。第1外歯部132と第2外歯部134とは単一の基材である基材136に形成されており、同歯数である。
【0020】
第1内歯歯車140は、剛性を有する筒状の部材であり、その内周に第1内歯部142が形成されている。第1内歯部142は、楕円状に撓められた外歯歯車130の第2外歯部134を環囲し、起振体114の長軸近傍の所定領域(2領域)で第2外歯部134と噛み合う。第1内歯部142は、第2外歯部134および第2内歯部156(後述)よりも多くの歯を有する。
【0021】
第2内歯歯車150は、本体部152と、延長部154と、を含む。本体部152は、第1内歯歯車140と軸方向に並んで(隣接して)配置される。本体部152は、剛性を有する環状の部材であり、その内周側に第2内歯部156が設けられている。第2内歯部156は、楕円状に撓められた外歯歯車130の第1外歯部132を環囲し、起振体114の長軸方向の所定領域(2領域)で第1外歯部132と噛み合う。第2内歯部156は、第1外歯部132と同数の歯を有する。したがって、第2内歯歯車150は、第1外歯部132ひいては外歯歯車130の自転と同期して回転する。
【0022】
延長部154は、略円筒状の部材である。延長部154には、本体部152がインロー嵌合されボルト(不図示)により一体化される。延長部154は、本体部152から第1内歯歯車140の径方向外側まで延び、第1内歯歯車140を環囲する。なお、本体部152と延長部154は、単一の部材により一体的に形成されてもよい。
【0023】
2つの規制部材160は、平たいリング状の部材であり、外歯歯車130および2つの起振体軸受120を挟み込むように配置される。2つの規制部材160により、外歯歯車130および2つの起振体軸受120の軸方向の移動が規制される。
【0024】
主軸受162は、その軸方向が回転軸Rと一致するように、延長部154と第1内歯歯車140との間に配置される。主軸受162は、本実施の形態ではクロスローラ軸受であり、第1内歯歯車140の外周に第1内歯歯車140と一体化された内輪170と、延長部154の内周に延長部154と一体化された外輪172と、内輪170と外輪172との間に周方向に間隔を空けて設けられる複数のローラ(転動体)174と、を含む。複数のローラ174は、内輪170および外輪172を転走する。延長部154ひいては第2内歯歯車150は、主軸受162を介して、第1内歯歯車140を相対回転自在に支持する。なお、主軸受162の種類は特に限定されるものではなく、例えば4点接触ボール軸受であってもよい。
【0025】
第1軸受ハウジング164は、環状の部材であり、起振体軸112を環囲する。同様に、第2軸受ハウジング166は、環状の部材であり、起振体軸112を環囲する。第1軸受ハウジング164と第2軸受ハウジング166とは、外歯歯車130、2つの起振体軸受120、2つの規制部材160を軸方向に挟むように配置される。第1軸受ハウジング164と第2軸受ハウジング166は、共通(つまり、形状、寸法、およびタップ穴Hのピッチ円直径が設計上同じ)の部材である。
【0026】
第1軸受ハウジング164は、第1内歯歯車140に対してインロー嵌合し、さらにボルト固定され、第1内歯歯車140と一体化される。第2軸受ハウジング166は、第2内歯歯車150の本体部152に対してインロー嵌合し、さらにボルト固定され、第2内歯歯車150と一体化される。
【0027】
第1軸受ハウジング164の内周には入力軸受180が組み込まれている。第2軸受ハウジング166の内周には入力軸受182が組み込まれている。第1軸受ハウジング164および第2軸受ハウジング166は、入力軸受180および入力軸受182を介して、起振体軸112を回転自在に支持する。
【0028】
第1軸受ハウジング(第1取付部材)164は、その外周が相手部材としての固定壁12対してインロー嵌合し、さらにタップ穴Hにボルトが挿入されてボルト固定される。これにより、第1軸受ハウジング164ひいては第1内歯歯車140が、固定壁12に取り付けられる。第2軸受ハウジング(第2取付部材)166は、その外周が相手部材としての出力装置14に対してインロー嵌合し、さらにタップ穴Hにボルトが挿入されてボルト固定される。これにより、第2軸受ハウジング166ひいては第2内歯歯車150が、出力装置14に取り付けられる。なお、
図1で点線で示すように、第2内歯歯車150に出力装置14が直接に取り付けられてもよい。
【0029】
起振体軸112と第1軸受ハウジング164の間にはオイルシール184が配置され、第1軸受ハウジング164と第1内歯歯車140の間にはOリング186が配置され、第1内歯歯車140と第2内歯歯車150の延長部154の間にはオイルシール188が配置され、第2内歯歯車150の延長部154と本体部152の間にはOリング190が配置され、第2内歯歯車150の本体部152と第2軸受ハウジング166の間にはOリング192が配置され、第2軸受ハウジング166と起振体軸112の間にはオイルシール194が配置される。これにより、第1歯車装置100内の潤滑剤が漏れるのを抑止できる。
【0030】
図2は、外歯歯車130の各歯部、第1内歯歯車140の第1内歯部142および第2内歯歯車150の第2内歯部156の形状を説明するための図である。
図2は、外歯歯車130の各歯部のピッチ円を通る仮想円筒で切断した、外歯歯車130の各歯部、第1内歯部142および第2内歯部156の断面図を示す。
図2では、理解を容易にするため、第1内歯部142および第2内歯部156を外歯歯車130の各歯部から離れるように周方向にスライドさせた状態を示し、また歯部の歯面の形状を誇張して描いている。
図2において、横軸は、ある基準位置からの軸方向の位置である。縦軸には、参考のために周方向の寸法目盛(1目盛りが10μm)を示す。本実施の形態では、第1内歯部142は、第2外歯部134よりも軸方向の長さが短く、軸方向における全範囲で第2外歯部134と噛み合っている。したがって、第1内歯部142と第2外歯部134との噛み合い範囲の軸方向の長さは第1内歯部142の軸方向の長さと等しい。また、本実施の形態では、第2内歯部156は、第1外歯部132よりも軸方向の長さが短く、軸方向における全範囲で第1外歯部132と噛み合っている。したがって、第2内歯部156と第1外歯部132との噛み合い範囲の軸方向の長さは第2内歯部156の軸方向の長さと等しい。
【0031】
第1外歯部132は、いずれかの歯丈方向位置(すなわち径方向位置)に、当該歯丈方向位置において歯厚が最大となる第1外歯最厚部132aと、第1外歯最厚部132aから軸方向外側に向かって(すなわち第1外歯部132と第2外歯部134の間の中央から遠ざかる方向に向かって)歯厚が減少する第1外側歯厚減少部132bと、第1外歯最厚部132aから軸方向内側に向かって(すなわち第1外歯部132と第2外歯部134の間の中央に近づく方向に向かって)歯厚が減少する第1内側歯厚減少部132cと、を有する。第1外歯部132は、第1外歯最厚部132a、第1外側歯厚減少部132bおよび第1内側歯厚減少部132cを、好ましくは第2内歯部156と噛み合う歯丈方向位置に有し、代表的には歯丈方向の中央位置に有する。本実施の形態では、第1外歯部132は、歯先位置から歯底位置までのすべての歯丈方向位置に、第1外歯最厚部132a、第1外側歯厚減少部132bおよび第1内側歯厚減少部132cを有する。
【0032】
第1外歯部132は、その歯厚中心面S130に対して対称な形状を有する。ここで「歯厚中心面」は、回転軸Rを含む面であって、歯厚が最大である最厚部の歯厚方向における中央を通る面をいう。第1外歯部132は、その2つの歯面がいずれも、第1外側歯厚減少部132bでは、第1外歯最厚部132aから軸方向外側に向かって歯厚中心面S130との距離が減少し、第1内側歯厚減少部132cでは、第1外歯最厚部132aから軸方向内側に向かって歯厚中心面S130との距離が減少するように形成される。
【0033】
第2外歯部134は、いずれかの歯丈方向位置に、当該歯丈方向位置において歯厚が最大となる第2外歯最厚部134aと、第2外歯最厚部134aから軸方向外側に向かって歯厚が減少する第2外側歯厚減少部134bと、第2外歯最厚部134aから軸方向内側に向かって歯厚が減少する第2内側歯厚減少部134cと、を有する。第2外歯部134は、第2外歯最厚部134a、第2外側歯厚減少部134bおよび第2内側歯厚減少部134cを、好ましくは第1内歯部142と噛み合う歯丈方向位置に有し、代表的には歯丈方向の中央位置に有する。本実施の形態では、第2外歯部134は、歯先位置から歯底位置までのすべての歯丈方向位置に、第2外歯最厚部134a、第2外側歯厚減少部134bおよび第2内側歯厚減少部134cを有する。
【0034】
第2外歯部134は、歯厚中心面S130に対して対称となるように形成される。つまり、第2外歯部134は、その2つの歯面がいずれも、第2外側歯厚減少部134bでは、第2外歯最厚部134aから軸方向外側に向かって歯厚中心面S130との距離が減少し、第2内側歯厚減少部134cでは、第2外歯最厚部134aから軸方向内側に向かって歯厚中心面S130との距離が減少するように形成される。
【0035】
外歯歯車130は、後述のように減速回転を出力する第2内歯歯車150の第2内歯部156と噛み合う第1外歯部132の歯筋修正量が、第2外歯部134の歯筋修正量よりも大きくなるよう形成される。歯筋修正量とは、軸方向外側端部での修正量をいい、本実施の形態では、外歯部の外歯最厚部と軸方向外側端部との歯厚の差をいう。したがって、具体的には外歯歯車130は、
図2の例では、第1外歯部132の第1外歯最厚部132aと第2外歯部134の第2外歯最厚部134aが同じ厚みで、かつ、第1外歯部132の第1外歯最厚部132aと第1外側歯厚減少部132bの軸方向外側端部との歯厚の差が、第2外歯部134の第2外歯最厚部134aと第2外側歯厚減少部134bの軸方向外側端部との歯厚の差よりも大きくなるよう形成される。
【0036】
以上のように構成された第1歯車装置100の動作を説明する。ここでは、第1外歯部132、第2外歯部134および第2内歯部156の歯数が100、第1内歯部142の歯数が102の場合を例に説明する。
【0037】
第1内歯部142と第2外歯部134とが楕円形状の長軸方向の2箇所で噛み合っている状態で、起振体軸112が回転すると、これに伴って第1内歯部142と第2外歯部134との噛合い位置も周方向に移動する。第1内歯部142と第2外歯部134とは歯数が異なるため、この際、第1内歯部142に対して第2外歯部134が相対的に回転する。第1内歯歯車140および第1軸受ハウジング164が固定状態にあるため、第2外歯部134は第1内歯部142との歯数差に相当する分だけ自転することになる。つまり、起振体軸112の回転が大幅に減速されて第2外歯部134に出力される。その減速比は以下のようになる。
減速比=(第2外歯部134の歯数−第1内歯部142の歯数)/第2外歯部134の歯数
=(100−102)/100
=−1/50
【0038】
第1外歯部132は、第2外歯部134と一体的に形成されているため、第2外歯部134と一体に回転する。第1外歯部132と第2内歯部156は歯数が同一であるため、相対回転は発生せず、第1外歯部132と第2内歯部156とは一体に回転する。このため、第2外歯部134の自転と同一の回転が第2内歯部156に出力される。結果として、第2内歯歯車150から出力装置14に、起振体軸112の回転を−1/50に減速した回転が出力される。
【0039】
続いて、第2歯車装置について説明する。
【0040】
図3は、実施の形態に係る歯車装置のシリーズの第2歯車装置200の断面図である。第2歯車装置200は、第1歯車装置100と同様の構成部材を備える。第2歯車装置200は、波動発生器110と、外歯歯車130と、第1内歯歯車240と、本体部252と延長部154とを含む第2内歯歯車250と、2つの規制部材160と、主軸受162と、第1軸受ハウジング164と、第2軸受ハウジング166と、を備える。なお、第1歯車装置100と第2歯車装置200とで符号が同一の構成要素は、第1歯車装置100および第2歯車装置200に共通(形状および寸法が同じ)の構成要素である。したがって、第1歯車装置100と第2歯車装置200は、第1内歯歯車および第2内歯歯車を除いて、同一の構成要素を備える。以下、第1歯車装置100との相違点を中心に説明する。
【0041】
第1内歯歯車240、第2内歯歯車250はそれぞれ、基本的には第1内歯歯車140、第2内歯歯車150と同様の構成を有するが、第1内歯歯車240の第1内歯部242が外歯部と同数の歯を有し、第2内歯歯車250の第2内歯部256が外歯部および第1内歯部242よりも多くの歯を有する。
【0042】
第1軸受ハウジング164は、出力装置14に対してインロー嵌合し、さらにタップ穴Hにボルトが挿入されてボルト固定される。第2軸受ハウジング166は、固定壁12に対してインロー嵌合し、さらにタップ穴Hにボルトが挿入されてボルト固定される。したがって、第2歯車装置200では、第1内歯歯車240は出力装置14に対して取り付けられ、第2内歯歯車250は固定壁12に対して取り付けられる。したがって、第2歯車装置200では、第1内歯歯車240から減速回転が出力される。なお、
図4で点線で示すように、第2内歯歯車250に固定壁12が直接取り付けられてもよい。
【0043】
外歯歯車130は、第1外歯部132が第1内歯歯車240の第1内歯部242に環囲されて第1内歯部242と噛み合い、第2外歯部134が第1内歯歯車240の第2内歯部256に環囲されて第2内歯部256と噛み合うように、すなわち歯筋修正量が大きい第1外歯部132が減速回転を出力する第1内歯歯車240の第1内歯部242と噛み合うように、組み込まれる。したがって、第1歯車装置100と第2歯車装置200では、第1外歯部132および第2外歯部134と、第1内歯歯車および第2内歯歯車との噛み合い関係は反対となる。具体的には、第1歯車装置100を製造する工程は、第1外歯部132が第2内歯歯車150の第2内歯部156と噛み合い、第2外歯部134が第1内歯歯車140の第1内歯部142と噛み合うように外歯歯車130を組み込む工程を含み、第2歯車装置200を製造する工程は、第1外歯部132が第1内歯歯車240の第1内歯部242と噛み合い、第2外歯部134が第2内歯歯車250の第2内歯部256と噛み合うように外歯歯車130を組み込む工程を含む。
【0044】
以上のように構成された第2歯車装置200の動作を説明する。
第2内歯部256と第2外歯部134とが楕円形状の長軸方向の2箇所で噛み合っている状態で、起振体軸112が回転すると、これに伴って第2内歯部256と第2外歯部134との噛合い位置も周方向に移動する。第2内歯部256と第2外歯部134とは歯数が異なるため、この際、第2内歯部256に対して第2外歯部134が相対的に回転する。第2内歯歯車250および第2軸受ハウジング166が固定状態にあるため、第2外歯部134は第2内歯部256との歯数差に相当する分だけ自転することになる。つまり、起振体軸112の回転が大幅に減速されて第2外歯部134に出力される。その減速比は第1歯車装置100と同様である。
【0045】
第1外歯部132は、第2外歯部134と一体的に形成されているため、第2外歯部134と一体に回転する。第1外歯部132と第1内歯部242は歯数が同一であるため、相対回転は発生せず、第1外歯部132と第1内歯部242とは一体に回転する。このため、第2外歯部134の自転と同一の回転が第1内歯部242に出力される。結果として、第1内歯歯車240から出力装置14に、起振体軸112の回転を減速した回転が出力される。
【0046】
続いて、本実施の形態に係る歯車装置のシリーズが奏する効果について述べる。撓み噛み合い式の歯車装置では、出力装置14からの外部モーメント荷重により、特に出力装置14に減速回転を出力する内歯歯車にミスアライメントが生じ、当該内歯歯車と外歯歯車130とが片当たりし、歯車が摩耗しうる。また、外歯歯車130と、外歯歯車130と歯数が異なる内歯歯車とは、噛み合い位置がずれながら相対回転するため、同歯数の場合と比べて摩耗する。したがって、外歯歯車130と歯数が異なる内歯歯車から減速回転を出力すると、当該内歯歯車と外歯歯車130とが過度に摩耗しうる。これに対し、本実施の形態に係る歯車装置のシリーズによると、第2内歯歯車から減速回転を出力する場合は第1歯車装置100を採用し、第1内歯歯車から減速回転を出力する場合は第2歯車装置200を採用することで、第1内歯歯車および第2内歯歯車のうちのどちらの内歯歯車から減速回転を出力する場合も、外歯歯車130と歯数が異なる内歯歯車から減速回転を出力するのを避けることができ、歯車の過度な摩耗が生じるのを避けられる。
また、実施の形態に係る歯車装置のシリーズによると、歯筋修正量が大きい第1外歯部132が減速回転を出力する内歯歯車の内歯部と噛み合うように外歯歯車130が組み込まれる。これにより、第1外歯部132の歯幅端に生じる片当たり荷重を低減でき、第1外歯部132と、減速回転を出力する内歯歯車の内歯部とに生じる摩耗を低減できる。そのため、第1内歯歯車の第1内歯部と外歯歯車130の対応する外歯部との間に生じる摩耗と、第2内歯歯車の第2内歯部と外歯歯車130の対応する外歯部との間に生じる摩耗とを、同程度に低減することが可能となる。
以上より、歯車に過度な摩耗が生じるのを抑えつつ、第1内歯歯車から減速回転を出力することも、第2内歯歯車から減速回転を出力することもでき、相手機械への取り付け自由度が向上する。
【0047】
また、実施の形態に係る歯車装置のシリーズによると、外歯歯車130は組み込む向きを変更するのみで共通(物としては別であるが、設計形状が同じ)であり、したがって、第1歯車装置100と第2歯車装置200とで第1内歯歯車および第2内歯歯車の本体部のみ変更することでシリーズを構成できるため、比較的低コストで歯車装置のシリーズを提供できる。
【0048】
以上、実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置について説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0049】
(変形例1)
実施の形態では、外歯歯車130には、歯厚方向の歯筋修正が適用された例を説明したが、これに限られず、歯厚方向に代えてあるいは歯厚方向に加えて歯丈方向の歯筋修正が適用されてもよい。以下、歯丈方向の歯筋修正について説明する。
【0050】
図4は、変形例に係る第1歯車装置の外歯歯車130の各歯部、第1内歯歯車140の第1内歯部142および第2内歯歯車150の第2内歯部156の形状を説明するための図である。
図4では、周方向から見た、外歯歯車130の各歯部の歯先、第1内歯歯車140の第1内歯部142の歯先、第2内歯歯車150の第2内歯部156の歯先を示す。
図4では、理解を容易にするため、第1内歯部142の歯先および第2内歯部156の歯先を、外歯歯車130から離れるように径方向外側にスライドさせた状態を示す。
図4において、横軸は、ある基準位置からの軸方向の位置である。縦軸には、参考のために径方向の寸法目盛(1目盛りが10μm)を示す。本実施の形態では、第1内歯歯車140の第1内歯部142は、第2外歯部134よりも軸方向の長さが短く、軸方向における全範囲で第2外歯部134と噛み合っている。また、第2内歯歯車150の第2内歯部156は、第1外歯部132よりも軸方向の長さが短く、軸方向における全範囲で第1外歯部132と噛み合っている。
【0051】
第1外歯部132の歯先は、第1外歯部132において外径が最大となる第1最外径部132xと、第1最外径部132xから軸方向外側に向かって(すなわち第1外歯部132と第2外歯部134の間の中央から遠ざかる方向に向かって)外径が減少する第1外側外径減少部132yと、第1最外径部132xから軸方向内側に向かって(すなわち第1外歯部132と第2外歯部134の間の中央に近づく方向に向かって)外径が減少する第1内側外径減少部132zと、を有する。
【0052】
第2外歯部134の歯先は、第2外歯部134において外径が最大となる第2最外径部134xと、第2最外径部134xから軸方向外側に向かって外径が減少する第2外側外径減少部134yと、第2最外径部134xから軸方向内側に向かって外径が減少する第2内側外径減少部134zと、を有する。
【0053】
外歯歯車130は、第1外歯部132の歯筋修正量が第2外歯部134の歯筋修正量よりも大きくなるよう形成される。歯筋修正量は、本変形例では、外歯部の軸方向外側端部と最外径部との外径の差をいう。したがって、具体的には外歯歯車130は、
図4の例では、第1外歯部132の第1最外径部132xと第2外歯部134の第2最外径部134xが同じ外径で、かつ、第1外歯部132の第1最外径部132xと第1外側外径減少部132yの軸方向外側端部との外径の差が、第2外歯部134の第2最外径部134xと第2外側外径減少部134yの軸方向外側端部との外径の差よりも大きくなるよう形成される。
【0054】
本変形例によれば、実施の形態と同様に、第1外歯部132の歯幅端に生じる片当たり荷重を低減でき、第1外歯部132と、減速回転を出力する内歯歯車の内歯部とに生じる摩耗を低減できる。
【0055】
(変形例2)
実施の形態および上述の変形例では、外歯歯車130に歯厚方向および/または歯丈方向の歯筋修正が適用された例を説明したが、これに限られず、内歯歯車に適用してもよい。具体的には、第1歯車装置100では、第1内歯歯車140および第2内歯歯車150は、第2内歯歯車150の第2内歯部156の歯筋修正量が第1内歯歯車140の第1内歯部142の歯筋修正量よりも大きくなるよう形成される。また、第2歯車装置200では、第1内歯歯車240および第2内歯歯車250は、第1内歯歯車240の第1内歯部242の歯筋修正量が第2内歯歯車250の第2内歯部256の歯筋修正量よりも大きくなるよう形成される。本変形例では、歯厚方向の歯筋修正量は、内歯部の歯厚が最大となる内歯最厚部と、内歯部の軸方向外側端部との歯厚の差をいい、歯丈方向の歯筋修正量は、内歯部の内径が最小となる最内径部と、内歯部の軸方向外側端部との内径の差をいう。
【0056】
本変形例によれば、実施の形態または上述の変形例と同様の効果を奏することができる。
【0057】
なお、本発明は、歯車装置のシリーズの構築方法や、歯車装置群の製造方法と捉えることもできる。