(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アンテナ保持機構は、前記電波暗箱の前記内部空間の底面に設置され、鉛直方向に沿った前記回転軸によって水平方向の面に沿って回転可能な前記回転体によって構成されることを特徴とする請求項4に記載のアンテナ装置。
前記アンテナ保持機構は、前記各アンテナの受信面が前記回転軸側を向くように前記各アンテナを保持していることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のアンテナ装置。
前記アンテナ保持機構は、前記各アンテナの受信面が前記回転軸側に対して反対側を向くように前記各アンテナを保持していることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のアンテナ装置。
前記アンテナ保持機構は、前記アンテナが前記焦点位置に停止されたときに、前記リフレクタに対向し、前記アンテナの受信面が前記無線信号のビーム軸に対して垂直となる角度で前記アンテナを保持していることを特徴とする請求項4から請求項7のいずれかに記載のアンテナ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述した、CATR及び複数の試験用アンテナを用いる従来の測定装置では、各試験用アンテナが使用する周波数帯ごとにDUTの送信及び受信特性を測定するにあたって、各試験用アンテナを1つずつ電波暗箱内のリフレクタの焦点位置に手動で付け替える作業が必要であった。この場合、複数の試験用アンテナを格納する場所を電波暗箱内に確保する必要があり、さらにその場所から1つを取り出して上記焦点位置に設置する手間も必要となることから、電波暗箱の大型化を招来し、及び試験用アンテナの付け替えのための煩雑な作業が強いられることとなった。また、この種の従来の測定装置では、各試験用アンテナの付け替えに際して測定の中断を余儀なくされ、測定処理が煩雑にならざるを得なかった。
【0011】
なお、特許文献1には、マルチビームアンテナを構成する各アンテナから放射された電波を鏡面で反射させて測定する技術、並びに各アンテナを回転させる技術が開示されているものの、各アンテナが鏡面の焦点位置に切り換えられるものではなかった。また、特許文献1に記載のものは、各アンテナの回転に関しても、単に、各アンテナの位置を変更するために行うものであって、それぞれのアンテナを鏡面の焦点位置に順次配置するようにはなっていなかった。
【0012】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、電波暗箱の大型化、試験用アンテナの付け替え作業の煩雑化を回避しつつ、被試験対象の複数の試験用アンテナに対応する周波数帯についての送信及び受信特性を効率よく測定可能なアンテナ装置及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係るアンテナ装置は、周囲の電波環境に影響されない内部空間(51)を有する電波暗箱(50)と、前記内部空間に収容され、所定の回転放物面を有し、被試験対象(100)が備える被試験対象アンテナ(110)により送信あるいは受信される無線信号が該回転放物面を介して反射されるリフレクタ(7)と、前記被試験対象の送信及び受信特性を測定するための複数の測定対象周波数帯の無線信号を各々使用する複数のアンテナ(6)と、前記測定対象周波数帯に応じて、前記複数のアンテナを、前記回転放物面から定まる焦点位置(F)に、順次、配置するアンテナ配置手段(60、60A、60B、80)と、を有する構成である。
【0014】
この構成により、本発明の請求項1に係るアンテナ装置は、電波暗箱にアンテナ配置手段を設けたため、被測定対象(DUT)の送信及び受信特性の測定中に、ユーザが、上記複数のアンテナをリフレクタの焦点位置に順次付け替える作業が不要となる。また、リフレクタを設けて信号伝搬路を短くしたうえでアンテナ配置手段を付加するため、電波暗箱のコンパクト化の大きな障害とはならない。また、各アンテナを焦点位置に配置する手間を低減しつつ各測定対象周波数帯の被測定対象の送信及び受信特性の測定を間断なく行うことができ、測定処理の効率を高めることができる。
【0015】
また、本発明の請求項2に係るアンテナ装置は、前記被試験対象アンテナは、規定の周波数帯の無線信号を使用し、前記複数のアンテナのうちの1つが前記焦点位置に配置されるごとに、前記焦点位置に配置中の前記アンテナを介して前記被試験対象に試験信号を出力するとともに、前記試験信号が入力された前記被試験対象から出力される被測定信号を前記配置中の前記アンテナで受信し、受信した前記被測定信号に基づき、前記被試験対象における前記配置中の前記アンテナが使用する前記測定対象周波数帯の送信及び受信特性の測定を行う模擬測定装置(20)をさらに備える構成である。
【0016】
この構成により、本発明の請求項2に係るアンテナ装置は、規定の周波数帯の無線信号を使用する被試験対象アンテナを有するDUTについて、該規定の周波数帯における異なる複数の周波数帯群の周波数帯について、試験用アンテナの付け替えに多くの手間をかけることなくかつ円滑に送信及び受信特性を測定することができる。
【0017】
また、本発明の請求項3に係るアンテナ装置は、前記規定の周波数帯は5G NRのバンドであり、前記複数の測定対象周波数帯は、それぞれ、前記
規定の周波数帯における異なる複数の周波数帯群である、n77、n78、n79の群、n258、n257の群、n259の群のうちのいずれか1つの周波数帯群の周波数帯である。
【0018】
この構成により、本発明の請求項3に係るアンテナ装置は、5G NRのバンドの無線信号を使用する被試験対象アンテナを有するDUT(5G無線端末)について、n77、n78、n79の群、n258、n257の群、n259の群のうちのいずれか1つの周波数帯群の周波数帯について、試験用アンテナの付け替えに多くの手間をかけることなくかつ円滑に送信及び受信特性を測定することができる。
【0019】
また、本発明の請求項4に係るアンテナ装置は、前記アンテナ配置手段は自動的に動作し、回転軸(63、63B)を中心に回転可能な回転体(62、62B)に、前記回転軸を中心とした円周上に前記各アンテナが配置され、前記焦点位置は前記円周上に位置し、前記回転体の回転により前記各アンテナが前記焦点位置を通過するように、前記電波暗箱の前記内部空間内に設置されるアンテナ保持機構(61、61B)と、前記回転軸を介して前記回転体を回転駆動する駆動用モータ(65、65B)を有する動力部(64、64B)と、前記測定対象周波数帯に応じて、前記各アンテナが、順次、前記焦点位置に停止されるように前記駆動用モータを制御するアンテナ自動配置制御部(16)と、を有する構成である。
【0020】
この構成により、本発明の請求項4に係るアンテナ装置は、回転軸を中心に回転可能な回転体に対し、回転軸を中心とした円周上に各アンテナが配置されたアンテナ保持機構を採用しているため、電波暗箱のコンパクト化を維持したまま、アンテナ保持機構の設置スペースを削減することができる。
【0021】
また、本発明の請求項5に係るアンテナ装置は、前記アンテナ保持機構が、前記電波暗箱の前記内部空間の底面に設置され、鉛直方向に沿った前記回転軸によって水平方向の面に沿って回転可能な前記回転体によって構成される。
【0022】
この構成により、本発明の請求項5に係るアンテナ装置は、電波暗箱の内部空間の底面に対して水平なスペースをアンテナ保持機構の設置スペースとして確保することで、電波暗箱の高さの増大を防ぐことができる。
【0023】
また、本発明の請求項6に係るアンテナ装置は、前記アンテナ保持機構が、前記各アンテナの受信面が前記回転軸側を向くように前記各アンテナを保持している構成である。
【0024】
この構成により、本発明の請求項6に係るアンテナ装置は、アンテナ保持機構を電波暗箱の内部空間の底面の中央部に配置し、各アンテナが配置された円周の径を小さくすることができ、アンテナ保持機構、及び電波暗箱のコンパクト化を維持することができる。
【0025】
また、本発明の請求項7に係るアンテナ装置は、前記アンテナ保持機構が、前記各アンテナの受信面が前記回転軸側に対して反対側を向くように前記各アンテナを保持している構成である。
【0026】
この構成により、本発明の請求項7に係るアンテナ装置は、アンテナ保持機構を電波暗箱の内部空間の底面の中央部を避けた側面寄りの位置に配置し、各アンテナが配置される円周の径を小さくすることができ、アンテナ保持機構、及び電波暗箱のコンパクト化を維持することができる。
【0027】
また、本発明の請求項8に係るアンテナ装置は、前記アンテナ保持機構が、前記アンテナが前記焦点位置に停止されたときに、前記リフレクタに対向し、前記アンテナの受信面が前記無線信号のビーム軸に対して垂直となる角度で前記アンテナを保持している構成である。
【0028】
この構成により、本発明の請求項8に係るアンテナ装置は、リフレクタの焦点位置に配置された各アンテナの受信精度を高め、DUTの送信及び受信性能の測定精度も向上させることができる。
【0029】
また、本発明の請求項9に係るアンテナ装置は、前記アンテナ保持機構が、前記電波暗箱の前記内部空間の底面に設置され、水平方向に沿った前記回転軸によって鉛直方向の面に沿って回転可能な前記回転体によって構成される。
【0030】
この構成により、本発明の請求項9に係るアンテナ装置は、電波暗箱の内部空間の底面に垂直なスペースをアンテナ保持機構の設置スペースとして確保することで、電波暗箱の幅の増大を防ぐことができる。
【0031】
また、本発明の請求項10に係るアンテナ装置は、前記アンテナ配置手段(80)が、前記アンテナが各々設置された複数のアンテナ台座(82)を、所定の間隔を保ったまま一方向にスライド可能に保持する第1のスライド機構(81a、81b、81c)と、前記第1のスライド機構を、台座部(85)を介して前記一方向と直交する他方向にスライド可能に保持する第2のスライド機構(84)と、を有し、前記各アンテナが前記焦点位置を通過できるように前記電波暗箱の前記内部空間内に設置されるアンテナ保持機構(81)と、前記各アンテナ台座を前記一方向にスライドさせるための第1の駆動軸(87a、87b、87c)を回転駆動する第1の駆動用モータ(88a、88b、88c)、及び、前記台座部を前記直交方向にスライドさせるための第2の駆動軸(89a)を回転駆動する第2の駆動用モータ(89b)を含む動力部(87)と、前記測定対象周波数帯に応じて、前記各アンテナが、順次、前記焦点位置に停止されるように、前記第1及び第2の駆動用モータを制御する前記アンテナ自動配置制御部と、を有する構成である。
【0032】
この構成により、本発明の請求項10に係るアンテナ装置は、電波暗箱の内部空間の底面に水平なスペースをアンテナ保持機構の設置スペースとして確保することで電波暗箱の高さの拡張を防ぐことができる。また、各アンテナが水平面上を互いに直交する方向にスライド移動するため、焦点位置へ向けての安定した移動が可能となる。
【0033】
また、本発明の請求項11に係るアンテナ装置は、前記第1のスライド機構が、前記一方向に対して並行に、かつ、前記他方向に所定間隔離間して複数設けられ、前記動力部は、前記各第1のスライド機構にそれぞれ対応する前記第1の駆動用モータを含む構成である。
【0034】
この構成により、本発明の請求項11に係るアンテナ装置は、電波暗箱の底面上の水平方向のスペースを最大限に活用しつつ、電波暗箱の大型化を避けながら、各アンテナの増設に容易に対応可能となる。
【0035】
また、本発明の請求項12に係る測定方法は、請求項1から請求項11のいずれかに記載のアンテナ装置を用いる測定方法であって、前記被試験対象を、前記電波暗箱内の被試験対象保持部に保持させる保持ステップ(S1)と、所定の測定開始指令に基づき、前記測定対象周波数帯に応じて、前記複数のアンテナを、前記焦点位置に、順次、配置するアンテナ配置ステップ(S3、S4)と、前記模擬測定装置により、前記焦点位置に配置された前記アンテナを介して前記被試験対象に試験信号を出力させる試験信号出力ステップ(S6)と、前記試験信号が入力された前記被試験対象から出力される前記被測定信号を、前記焦点位置に配置された前記アンテナを介して受信させる信号受信ステップ(S7)と、前記信号受信ステップで受信した前記被測定信号に基づいて、前記焦点位置に配置された前記アンテナが使用する前記測定対象周波数帯の無線信号に対する前記被試験対象の送信及び受信特性を測定させる測定ステップ(S8)と、を含む構成である。
【0036】
この構成により、本発明の請求項11に係る測定方法は、アンテナ配置手段を設けた電波暗箱を有するアンテナ装置を用いるため、被測定対象の送信及び受信特性の測定中に、ユーザが、上記複数のアンテナをリフレクタの焦点位置に順次付け替える作業が不要となる。また、リフレクタを設けて信号伝搬路を短くしたうえでアンテナ配置手段を付加するため、電波暗箱のコンパクト化の大きな障害とはならない。また、各アンテナを配置する手間を低減しつつ各測定対象周波数帯の被測定対象の送信及び受信特性の測定を間断なく行うことができ、測定処理の効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明は、電波暗箱の大型化、試験用アンテナの付け替え作業の煩雑化を回避しつつ、被試験対象の複数の試験用アンテナに対応する周波数帯についての送信及び受信特性を効率よく測定可能なアンテナ装置及び測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明に係る測定装置及び測定方法の実施形態について図面を用いて説明する。
【0040】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態に係る測定装置1の構成について、
図1〜
図9を参照して説明する。なお、測定装置1は、本発明のアンテナ装置に相当している。本実施形態に係る測定装置1は、全体として
図1に示すような外観構造を有し、かつ、
図2に示すような機能ブロックにより構成されている。但し、
図1においては、OTAチャンバ50について側面から透視した状態における各構成要素の配置態様を示している。
【0041】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る測定装置1は、統合制御装置10、NRシステムシミュレータ20、信号処理部40、OTAチャンバ50を有している。
【0042】
統合制御装置10は、NRシステムシミュレータ20と、例えばイーサネット(登録商標)等のネットワーク19を介して相互に通信可能に接続されている。さらに統合制御装置10は、ネットワーク19を介して、OTAチャンバ50における被制御系要素とも接続されている。測定装置1は、OTAチャンバ50における被制御系要素として、アンテナ自動配置制御部16、DUT姿勢制御部17を有している。
【0043】
統合制御装置10は、ネットワーク19を介して、NRシステムシミュレータ20、及びOTAチャンバ50における被制御系要素を統括的に制御するものであり、例えば、パーソナル・コンピュータ(PC)により構成される。なお、アンテナ自動配置制御部16、DUT姿勢制御部17は、例えば、
図3に示すように、統合制御装置10に設けられていてもよい。以下においては、統合制御装置10が
図3に示す構成を有するものとして説明する。
【0044】
測定装置1は、例えば、
図1に示すような複数のラック90aを有するラック構造体90を用い、各ラック90aに各構成要素を載置した態様で運用される。
図1においては、ラック構造体90の各ラック90aに、それぞれ、統合制御装置10、NRシステムシミュレータ20、OTAチャンバ50を載置した例を挙げている。
【0045】
ここでは、便宜上、OTAチャンバ50の構成から先に説明する。OTAチャンバ50は、5G用の無線端末の性能試験に際してのOTA試験環境を実現するものであって、上述したCATRの一例として用いられる。
【0046】
OTAチャンバ50は、
図1、
図2に示すように、例えば、長方体形状の内部空間51を有する金属製の筐体本体部52により構成され、内部空間51に、DUT100と、DUT100のアンテナ110と対向可能な複数の試験用アンテナ6を、外部からの電波の侵入及び外部への電波の放射を防ぐ状態に収容する。OTAチャンバ50の内部空間51には、さらに、DUT100のアンテナ110から放射された無線信号を試験用アンテナ6の受光面へと折り返す電波経路を実現するリフレクタ7が配置されている。複数の試験用アンテナ6は、本発明における複数のアンテナを構成する。また、OTAチャンバ50の内面全域、つまり、筐体本体部52の底面52a、側面52b及び上面52c全面には、電波吸収体55が貼り付けられ、外部への電波の放射規制機能が強化されている。このように、OTAチャンバ50は、周囲の電波環境に影響されない内部空間51を有する電波暗箱を実現している。本実施形態で用いる電波暗箱は、例えば、Anechoic型のものである。
【0047】
被試験対象とされるDUT100は、例えばスマートフォンなどの無線端末である。DUT100の通信規格としては、セルラ(LTE、LTE−A、W−CDMA(登録商標)、GSM(登録商標)、CDMA2000、1xEV−DO、TD−SCDMA等)、無線LAN(IEEE802.11b/g/a/n/ac/ad等)、Bluetooth(登録商標)、GNSS(GPS、Galileo、GLONASS、BeiDou等)、FM、及びデジタル放送(DVB−H、ISDB−T等)が挙げられる。また、DUT100は、IEEE802.11adや5Gセルラ等に対応したミリ波帯の無線信号を送受信する無線端末であってもよい。
【0048】
本実施形態において、DUT100は5G NRの無線端末である。5G NRの無線端末については、ミリ波帯の他、LTE等で使用する他の周波数帯も含む
規定の周波数帯(
図8における「5G NRバンド」参照)を通信可能周波数範囲とすることが5G NR規格によって規定されている。要するに、DUT100のアンテナ110は、
規定の周波数帯(5G NRバンド)の無線信号をしようするものである。DUT100のアンテナ110は、本発明における被試験対象アンテナに相当する。
【0049】
上述した通信可能周波数範囲を有する5G NR無線端末は、例えば出荷時に、
図8に示す表図中の番号1、2、3で識別される各バンドのうちのいずれか1つを使用して通信可能となるように設定され、その後、所定の設定変更操作により使用可能な周波数帯を切り換え設定し得る構成を有している。このような無線端末において、使用可能に設定されたバンドをインバンド、使用可能に設定されていないバンドをアウトバンドと称することもある。当該無線端末をDUT100としてOTAチャンバ50内でのOTA環境下で送信及び受信特性測定を行う場合には、前述したインバンド及びアウトバンドの全てのバンドについての測定が要求される。
【0050】
図8は、本実施形態に係るOTAチャンバ50内に配置される3つの試験用アンテナ6の使用可能な周波数範囲分類を示す表図である。
図8に示すように、番号1、2及び3によって識別される3つの周波数帯域は、それぞれ、3.3MHz〜5.0MHz、24.25MHz〜40.0MHz、40.5MHz〜43.5MHzに割り当てられている。番号1に割り当てられた3.3MHz〜5.0MHzの周波数帯幅は、3GPP(3rd Generation Partnership Project)により規定される周知の5G NRのバンド一覧の中の、例えば、n77、n78、n79の周波数帯を含む一群の周波数帯域幅(周波数帯群)に相当している。同様に、番号2及び3に割り当てられた24.25MHz〜29.5MHz、及び40.5MHz〜43.5MHzの周波数帯幅は、例えば、上記バンド一覧に規定されるn258、n260の周波数帯を含む一群の周波数帯域幅、及びn259の周波数帯を含む一群の周波数帯域幅に相当している。
【0051】
本実施形態において、OTAチャンバ50は、例えば、
図8に示す周波数帯域分類中、番号1、2、3にそれぞれ対応する周波数数帯を使用する3つの試験用アンテナ6を内部空間51内に配置しているものである。この3つの試験用アンテナ6は、アンテナ自動配置手段60によって、1つずつ順番にリフレクタ7の焦点位置(
図1において、符号Fで示す)に自動配置されるようになっている。一方で、本実施形態に係るDUT100は、上記番号1、2、3にそれぞれ対応する周波数帯を使用可能周波数帯として選択的に設定可能な構成を有している。DUT100は、OTAチャンバ50内での送受信に関する測定中、上記番号1、2、3にそれぞれ対応する周波数帯を順番に使用して、焦点位置Fに順次配置される試験用アンテナ6を介して試験信号及び被測定信号を送受信できるようになっている。
【0052】
次に、OTAチャンバ50の内部空間51におけるDUT保持部56、試験用アンテナ6及びリフレクタ7の配置態様について説明する。OTAチャンバ50において、内部空間51における筐体本体部52の底面52aには、鉛直方向に延びるDUT保持部56が設けられている。DUT保持部56は、底面52aに設置される駆動部56aと、駆動部56aに連結される支持台56bと、支持台56bの側面から例えば水平方向に延びるDUT載置部56cとを有する。駆動部56aは、例えば、2軸方向に回転する回転機構を備える2軸ポジショナにより構成されている。以下、駆動部56aを2軸ポジショナと称することもある(
図3参照)。これにより、DUT保持部56は、DUT載置部56cに保持されているDUT100を、例えば、球体の中心にあって、球体表面の全ての点に対してアンテナ110が向く状態に順次姿勢を変化させ得るように回転させることを可能とする。
【0053】
OTAチャンバ50において、筐体本体部52の底面52a下方位置にはアンテナ保持機構61が設けられ、該アンテナ保持機構61は、複数の試験用アンテナ6を互いに離間した状態で保持している。本実施形態では、アンテナ保持機構61は、例えば、
図8に示す表図中の番号1から3により識別される3つの測定対象周波数帯の無線信号を送受信可能な3つの試験用アンテナ6を保持している。
【0054】
アンテナ保持機構61は、動力部64を介して、OTAチャンバ50の内部空間51における底面52aに取り付けられている。アンテナ保持機構61は、動力部64、アンテナ自動配置制御部16(
図2参照)とともに、アンテナ自動配置手段60を構成している。アンテナ自動配置手段60は、本発明のアンテナ配置手段を構成する。なお、アンテナ自動配置手段60の構成については、後で詳述する。
【0055】
OTAチャンバ50において、リフレクタ7は、後述するオフセットパラボラ(
図7参照)型の構造を有するものである。リフレクタ7は、
図1に示すように、OTAチャンバ50の側面52bの所要位置にリフレクタ保持具58を用いて取り付けられている。リフレクタ7は、回転放物面の焦点位置Fに配置されている1つの試験用アンテナ6から放射された試験信号を回転放物面で受け、DUT保持部56に保持されているDUT100に向けて反射させるとともに、上記試験信号を受信したDUT100がアンテナ110から放射する被測定信号を回転放物面で受け、該試験信号を放射した試験用アンテナ6に向けて反射させることが可能な位置及び姿勢で配設されている。本実施形態では、上述した試験信号及び被測定信号を送受信する試験用アンテナ6としては、アンテナ保持機構61に保持されている3つの試験用アンテナ6が、アンテナ自動配置手段60によって順番に1つずつ上記焦点位置Fに自動配置されるようになっている。
【0056】
ここで、OTAチャンバ50にリフレクタ7を搭載することのメリット、及びリフレクタ7の好ましい形態について
図5〜
図7を参照して説明する。
図5は、例えば、試験用アンテナ6と同等のアンテナATから放射された電波の無線端末100Aに対する電波の伝わり方を示す模式図である。無線端末100Aは、DUT100と同等のものである。
図5において、(a)は、電波がアンテナATから無線端末100Aへ直接伝わる場合(Direct FAR Field)の例を示し、(b)は、電波がアンテナATから回転放物面を有する反射鏡7Aを介して無線端末100Aへ伝わる場合の例を示している。
【0057】
図5(a)に示すように、アンテナATを放射源とする電波は、放射源を中心にして波面が球状に拡がりながら伝搬する性質がある。また、放射源から近い距離では、波の同位相の点を結んだ面(波面)は湾曲した球面(球面波)であるが、放射源から遠くなると波面は平面(平面波)に近くなることも知られている。一般に、波面を球面と考える必要のある領域が近傍界(NEAR FIELD)と呼ばれ、波面を平面とみなしてよい領域が遠傍界(FAR FIELD)と呼ばれている。
図5(a)に示す電波の伝搬にあって、無線端末100Aは、良好な受信を行ううえで、球面波を受信するよりも、平面波を受信することが好ましい。
【0058】
平面波を受信するためには、無線端末100Aが遠傍界に存在する設置される必要がある。ここで、無線端末100Aの最大直線サイズをD、波長をλとするとき、遠傍界は、アンテナATから2D
2/λ以遠の距離となる。具体的に、D=0.4メートル(m)、波長λ=0.01m(28GHz帯の無線信号に相当)とした場合には、アンテナATからおおよそ30mの位置が近傍界と遠傍界との境界となり、それより遠い位置に無線端末100Aを置く必要が生じる。なお、本実施形態においては、最大直線サイズDが、例えば、5cm(センチメートル)から33cm程度のDUT100の測定を想定している。
【0059】
このように、
図5(a)に示すDirect Far Field法にあっては、アンテナATと無線端末100A間の伝搬距離が大きく、しかも、伝搬ロスの大きいという特性がある。そこで、その対処法として、例えば、
図5(b)に示すように、アンテナATの電波を反射させて無線端末100Aの導入し得る位置に回転放物面を有する反射鏡7Aを配置する方法がある。この方法によれば、アンテナATと無線端末100A間の距離を短縮し得るのみならず、反射鏡7Aの鏡面での反射後直ぐの距離から平面波の領域が拡がるため、伝搬ロスの低減効果も見込むことができる。伝搬ロスは、同位相の波の位相差で表すことができる。伝搬ロスとして許容し得る位相差は、例えば、λ/16である。位相差は、例えば、ベクトル・ネットワーク・アナライザ(VNA)で評価することを前提としている。
【0060】
図5(a)に示す反射鏡7Aとして用い得るものとして、例えば、パラボラ(
図6参照)、あるいはオフセットパラボラ(
図7参照)がある。パラボラは、
図6に示すように、アンテナ中心Oを通る軸に対して対称な鏡面(回転放物面)を有し、その回転放物面から定まる焦点位置Fに回転放物面の方向に指向性を有する一次放射器を設置することで、一次放射器から放射された電波を上記軸方向と平行な方向に反射する機能を有する。逆に、パラボラは、焦点位置Fに例えば本実施形態に係る試験用アンテナ6を配置することで、上記軸方向と平行な方向に回転放物面に対して入射する電波(例えば、DUT100が送信した無線信号)を反射させ、試験用アンテナ6へと導くことができることが理解できる。しかしながら、パラボラは、正面(Z方向)から見た平面形状が真円であって、構造が大きく、OTAチャンバ50のリフレクタ7として配置するには不向きである。
【0061】
これに対し、オフセットパラボラは、
図7に示すように、回転放物面の軸に対して非対称な鏡面(真円型のパラボラ(
図6参照)の回転放物面の一部を切り出した形状)を有し、一次放射器を、そのビーム軸が回転放物面の軸に対して、例えば、角度α傾いた状態で設置することで、一次放射器から放射された電波を回転放物面の軸方向と平行な方向に反射する機能を有する。このオフセットパラボラは、焦点位置Fに例えば本実施形態に係る試験用アンテナ6を配置することで、該試験用アンテナ6から放射された電波(例えば、DUT100に対する試験信号)を回転放物面で該回転放物面の軸方向と平行な方向に反射させるとともに、回転放物面の軸方向と平行な方向に回転放物面に対して入射する電波(例えば、DUT100から送信された被測定信号)を該回転放物面で反射させ、試験用アンテナ6へと導くことができることが理解できる。オフセットパラボラは、鏡面が垂直に近づくような配置が可能であり、パラボラ(
図6参照)よりも構造が大幅に小さくて済む。
【0062】
上述した知見に基づき、本実施形態に係るOTAチャンバ50では、
図1に示すように、オフセットパラボラ(
図7参照)を用いたリフレクタ7を、DUT100と試験用アンテナ6間の電波伝搬経路に配置している。リフレクタ7は、図中、符号Fで示す位置が焦点位置となるように筐体本体部52の側面52bに取り付けられている。
【0063】
リフレクタ7と、アンテナ保持機構61により保持されている3つの試験用アンテナ6のうちの1つ(焦点位置に配置中のもの)とは、リフレクタ7の軸RS1に対して試験用アンテナ6のビーム軸BS1が所定の角度α傾いたオフセット状態となっている。ここでいう1つの試験用アンテナ6とは、アンテナ保持機構61を覆うカバー部67の開口67aを介してリフレクタ7から見透しが確保できる試験用アンテナ6のことである。
【0064】
リフレクタ7は、試験用アンテナ6のビーム軸BS1上に焦点位置Fを有し、アンテナ保持機構61の回転体62に保持された各試験用アンテナ6は、上述した見透しを確保可能な1つの試験用アンテナ6の位置、すなわち、リフレクタ7の焦点位置Fを順次通過できるようになっている。上述した傾き角度αは、例えば、30度に設定することができる。この場合、試験用アンテナ6は、仰角30度でリフレクタ7に対向するように、すなわち、リフレクタ7に対向し、試験用アンテナ6の受信面が無線信号のビーム軸に対して直角となる角度でアンテナ保持機構61に保持されることになる。オフセットパラボラ型のリフレクタ7を採用することで、リフレクタ7自体が小さくて済むうえに、鏡面が垂直に近づくような姿勢での配置が可能となり、OTAチャンバ50の構造を縮減させ得るというメリットが生まれる。
【0065】
次に、リフレクタ7の焦点位置Fに対して複数の試験用アンテナ6を順次自動配置するアンテナ自動配置手段60の構成について詳しく説明する。
【0066】
OTAチャンバ50に搭載されるアンテナ自動配置手段60は、例えば、
図1、
図2に示すように、アンテナ保持機構61、動力部64、カバー部67、及びアンテナ自動配置制御部16を有している。アンテナ保持機構61は、回転軸63を中心に回転可能な回転体62により構成され、回転体62には、回転軸63を中心とした円周上に例えば3つの試験用アンテナ6が配置されている。
【0067】
より具体的な例としては、例えば、
図9(a)に示すように、回転体62には、上述した円周を規定する円C1の外周に沿って、等間隔で、例えば、水平面上で回転軸63を中心に120度ずつの間隔をおいて配置されている。ここでアンテナ保持機構61は、回転体62の回転により円C1の円周上の周方向に位置移動(周回)する各試験用アンテナ6の受信面がリフレクタ7の焦点位置Fを通過するように内部空間51内に設置されている。本実施形態で用いる3つの試験用アンテナ6は、例えば、
図8に示す表図中、それぞれ、番号1から3で識別される各周波数帯の無線信号を送受信可能なものである。なお、3つの試験用アンテナ6の上記円周上の配置は、
図9(a)に示す態様(数及び離間角度)配置に限らず、例えば、
図9(b)に示すように、回転軸63を中心に60度ずつの間隔をおいて近接配置される態様であってもよい。なお、本発明は、試験用アンテナ6の数については、本実施形態で挙げている3つに限るものではなく、DUT100が有するインバンド、及びアウトバンドの割振りに応じた任意の数とし得る(
図13参照)ことはいうまでもない。
【0068】
動力部64は、回転軸63を介して回転体62を回転駆動する駆動用モータ65、及び該駆動用モータ65と回転軸63間に配設されるギヤ等の連結部材66を有している。カバー部67は、アンテナ保持機構61及び動力部64を、外部からの電波の侵入及び外部への電波の放射を規制できるように覆うものである。
【0069】
カバー部67には、開口67aが形成されている。開口67aは、アンテナ保持機構61に保持された試験用アンテナ6のうちの1つがリフレクタ7の焦点位置Fに配置されたときに、当該試験用アンテナ6からリフレクタ7の回転放物面に対する見透しを確保できる位置に形成されている。
【0070】
アンテナ自動配置制御部16は、例えば、統合制御装置10の制御部11(
図3参照)からの指令に基づき、
図8に示す表図中の番号1から3で識別される各測定対象周波数帯に応じて、各試験用アンテナ6が、順次、リフレクタ7の焦点位置Fまで移動し、かつ、停止されるように駆動用モータ65を駆動するようになっている。
【0071】
ここで
図2〜
図4を参照し、本実施形態に係る測定装置1の機能構成についてさらに詳しく説明する。本実施形態に係る測定装置1(
図2参照)において、統合制御装置10は、例えば、
図3に示すような機能構成を有し、NRシステムシミュレータ20は、例えば、
図4に示すような機能構成を有する。NRシステムシミュレータ20は、本発明の模擬測定装置を構成する。
【0072】
図3に示すように、統合制御装置10は、制御部11、操作部12、表示部13を有している。制御部11は、例えば、コンピュータ装置によって構成される。このコンピュータ装置は、例えば、
図3に示すように、測定装置1の機能を実現するための所定の情報処理や、NRシステムシミュレータ20を対象とする統括的な制御を行うCPU(Central Processing Unit)11aと、CPU11aを立ち上げるためのOS(Operating System)やその他のプログラム及び制御用のパラメータ等を記憶するROM(Read Only Memory)11bと、CPU11aが動作に用いるOSやアプリケーションの実行コードやデータ等を記憶するRAM(Random Access Memory)11cと、所定の信号が入力される入力インターフェース機能と所定の信号を出力する出力インターフェース機能を有する外部インターフェース(I/F)部11dと、図示しないハードディスク装置などの不揮発性の記憶媒体と、各種入出力ポートとを有する。外部I/F部11dは、ネットワーク19を介して、NRシステムシミュレータ20に対して通信可能に接続されている。また、外部I/F部11dは、OTAチャンバ50における駆動用モータ65及び駆動部(2軸ポジショナ)56aともネットワーク19を介して接続されている。入出力ポートには、操作部12、表示部13が接続されている。操作部12は、コマンドなど各種情報を入力するための機能部であり、表示部13は、上記各種情報の入力画面や測定結果など、各種情報を表示する機能部である。
【0073】
上述したコンピュータ装置は、CPU11aがRAM11cを作業領域としてROM11bに格納されたプログラムを実行することにより制御部11として機能する。制御部11は、
図3に示すように、呼接続制御部14、信号送受信制御部15、アンテナ自動配置制御部16、DUT姿勢制御部17を有している。呼接続制御部14、信号送受信制御部15、アンテナ自動配置制御部16及びDUT姿勢制御部17も、CPU11aがRAM11cの作業領域でROM11bに格納された所定のプログラムを実行することにより実現されるものである。
【0074】
呼接続制御部14は、リフレクタ7の焦点位置Fへ自動配置された試験用アンテナ6を駆動してDUT100との間で制御信号(無線信号)を送受信させることにより、NRシステムシミュレータ20とDUT100との間に呼(無線信号を送受信可能な状態)を確立する制御を行う。
【0075】
信号送受信制御部15は、操作部12におけるユーザ操作を監視し、ユーザによりDUT100の送信及び受信特性の測定に係る所定の測定開始操作が行われたことを契機に、呼接続制御部14での呼接続制御を経て、NRシステムシミュレータ20に対して信号送信指令を送信し、試験用アンテナ6を介して試験信号を送信させる制御、及び信号受信指令を送信し、試験用アンテナ6を介して被測定信号を受信させる制御を行う。
【0076】
アンテナ自動配置制御部16は、アンテナ自動配置手段60のアンテナ保持機構61に保持されている複数の試験用アンテナ6を、リフレクタ7の焦点位置Fに対して、順次、自動的に配置する制御を行う。この制御を実現するために、例えば、ROM11bには、予め、アンテナ自動配置制御テーブル16aが格納されている。アンテナ自動配置制御テーブル16aは、例えば、駆動用モータ65としてステッピングモータを採用している場合には、該ステッピングモータの回転駆動を決定する駆動パルス数(運転パルス数)を制御データとして格納するものである。本実施形態において、アンテナ自動配置制御テーブル16aは、
図8に示す例えば番号1から3で識別される3つの測定対象周波数帯にそれぞれ対応して各試験用アンテナ6をそれぞれリフレクタ7の焦点位置Fまで移動させるための駆動用モータ65の運転パルス数を上記制御データとして記憶している。
【0077】
アンテナ自動配置制御部16は、アンテナ自動配置制御テーブル16aをRAM11cの作業領域に展開し、該アンテナ自動配置制御テーブル16aに基づき、各試験用アンテナ6にそれぞれ対応する測定対象周波数帯に応じて、アンテナ自動配置手段60の動力部64における駆動用モータ65を回転駆動する制御を行う。この制御により、各試験用アンテナ6を、順次、リフレクタ7の焦点位置Fに停止(配置)させるアンテナ自動配置制御が実現可能となる。なお、本実施形態では、アンテナ自動配置制御部16が、試験用アンテナ6が一方向に回転するように(
図1、
図9参照)駆動用モータ65を回転駆動する例を挙げているが、これに限らず、逆方向、あるいは、双方向に回転駆動可能な構成としてもよい。この点は第2及び第3の実施形態においても同様である。
【0078】
DUT姿勢制御部17は、DUT保持部56に保持されているDUT100の測定時の姿勢を制御するものである。この制御を実現するために、例えば、ROM11bには、予め、DUT姿勢制御テーブル17aが記憶されている。DUT姿勢制御テーブル17aは、例えば、DUT保持部56を構成する2軸ポジショナ56aの制御データを格納している。
【0079】
DUT姿勢制御部17は、DUT姿勢制御テーブル17aをRAM11cの作業領域に展開し、該DUT姿勢制御テーブル17aに基づき、上述したように、アンテナ110が球体表面の全ての点に対して順次向くようにDUT100が姿勢変化するよう2軸ポジショナ56aを駆動制御する。
【0080】
また、本実施形態に係る測定装置1において、NRシステムシミュレータ20は、例えば、
図4に示すように、信号測定部21、制御部22、操作部23、表示部24を有している。信号測定部21は、信号発生部21a、デジタル/アナログ変換器(DAC)21b、変調部21c、RF部21dの送信部21eにより構成される信号発生機能部と、RF部21dの受信部21f、アナログ/デジタル変換器(ADC)21g、解析処理部21hにより構成される信号解析機能部とを有している。
【0081】
信号測定部21の信号発生機能部において、信号発生部21aは、基準波形を有する波形データ、具体的には、例えば、I成分ベースバンド信号と、その直交成分信号であるQ成分ベースバンド信号を生成する。DAC21bは、信号発生部21aから出力された基準波形を有する波形データ(I成分ベースバンド信号及びQ成分ベースバンド信号)をデジタル信号からアナログ信号に変換して変調部21cに出力する。変調部21cは、I成分ベースバンド信号と、Q成分ベースバンド信号とのそれぞれに対してローカル信号をミキシングし、さらに両者を合成してデジタル変調の周波数として出力する変調処理を行う。RF部21dは、変調部21cから出力されたデジタル変調の周波数を各通信規格の周波数に対応した試験信号を生成し、生成した試験信号を送信部21eによりDUT100に向けて出力する。
【0082】
また、信号測定部21の信号解析機能部において、RF部21dは、上記試験信号をアンテナ110により受信したDUT100から送信された被測定信号を受信部21fで受信したうえで、該被測定信号をローカル信号とミキシングすることで中間周波数帯の信号(IF信号)に変換する。ADC21gは、RF部21dの受信部21fでIF信号に変換された被測定信号を、アナログ信号からデジタル信号に変換して解析処理部21hに出力する。
【0083】
解析処理部21hは、ADC21gが出力するデジタル信号である被測定信号を、デジタル処理によって、I成分ベースバンド信号とQ成分ベースバンド信号とにそれぞれ対応する波形データを生成したうえで、該波形データに基づいてI成分ベースバンド信号及びQ成分ベースバンド信号を解析する処理を行う。
【0084】
制御部22は、上述した統合制御装置10の制御部11と同様、例えば、CPU、RAM、ROM、各種入出力インターフェースを含むコンピュータ装置によって構成される。CPUは、信号発生機能部、信号解析機能部、操作部23及び表示部24の各機能を実現するための所定の情報処理や制御を行う。
【0085】
操作部23、表示部24は、上記コンピュータ装置の入出力インターフェースに接続されている。操作部23は、コマンドなど各種情報を入力するための機能部であり、表示部24は、上記各種情報の入力画面や測定結果など、各種情報を表示する機能部である。
【0086】
次に、本実施形態に係る測定装置1によるDUT100の送信及び受信特性の測定処理について、
図10を参照して説明する。
図10においては、特に、5G NRバンドのうち(
図8参照)、それぞれ、番号1、番号2、番号3で示す各周波数帯をそれぞれ使用可能な3つの試験用アンテナ6を焦点位置Fに順次配置させつつDUT100の測定を行うものとする。以下の説明では、番号1で示す周波数帯をインバンド、番号2で示す周波数帯をアウトバンド1、番号3で示す周波数帯をアウトバンド2と呼称するものとする。
【0087】
また、
図10においては、DUT100の送信及び受信特性の測定処理を開始することを指示する測定開始操作を統御制御装置10の操作部12で行う場合について説明する。なお、測定開始操作は、NRシステムシミュレータ20の操作部23で行うようにしてもよい。
【0088】
測定装置1において、DUT100の送信及び受信特性の測定を行うためには、まず、OTAチャンバ50の内部空間51内にDUT100をセットする必要がある。これにより、測定装置1では、最初の処理として、ユーザにより、OTAチャンバ50のDUT保持部56のDUT載置部56cに対して試験対象のDUT100をセットする作業が行われる(ステップS1)。このとき、アンテナ自動配置手段60については、3つの測定対象周波数帯をカバーし得る複数(この例では、3つ)の試験用アンテナ6がアンテナ保持機構61に保持され、かつ、各試験用アンテナ6をリフレクタ7の焦点位置F(
図7参照)を順次通過させ得るような位置にアンテナ保持機構61が設置されている必要がある。
【0089】
DUT100のセット作業が行われた後、統合制御装置10では、例えば、アンテナ自動配置制御部16が、操作部12においてDUT100の送信及び受信特性の測定開始操作が行われたか否かを監視する(ステップS2)。
【0090】
ここで、上記測定開始操作が行われていないと判定された場合(ステップS2でNO)、アンテナ自動配置制御部16は上記ステップS1の監視を続行する。これに対し、上記測定開始操作が行われたと判定された場合(ステップS2でYES)、アンテナ自動配置制御部16は、測定対象周波数帯の測定順番を示すnを、1番目の測定対象周波数帯を示すn=1にセットする(ステップS3)。なお、この例においては、nの最大値は、3である。
【0091】
次いで、アンテナ自動配置制御部16は、n=1に対応する1番目の測定対象周波数帯に対応する試験用アンテナ6をリフレクタ7の焦点位置Fまで自動的に移動(配置)させる制御を行う(ステップS4)。このとき、アンテナ自動配置制御部16は、アンテナ自動配置制御テーブル16aから、n=1に対応する1番目の測定対象周波数帯(インバンド)に対応する試験用アンテナ6の運転パルス数を読み取り、該運転パルス数に基づいて駆動用モータ65を回転制御する。
【0092】
上記回転制御により、1番目の測定対象周波数帯に対応する試験用アンテナ6のリフレクタ7の焦点位置Fへの自動配置が終了すると、制御部11の呼接続制御部14は、自動配置が完了した当該試験用アンテナ6を使用し、DUT100との間で制御信号(無線信号)を送受信することにより呼接続制御を実施する(ステップS5)。ここでNRシステムシミュレータ20は、DUT100に対して試験用アンテナ6を介して1番目の送受信測定対象周波数帯の周波数を有する制御信号(呼接続要求信号)を無線送信させる一方で、該呼接続要求信号を受信したDUT100が接続要求された周波数を設定したうえで送信してくる制御信号(呼接続応答信号)を受信する呼接続制御を行う。この呼接続制御により、NRシステムシミュレータ20とDUT100との間には、リフレクタ7の焦点位置Fへ自動配置された試験用アンテナ6、及びリフレクタ7を介して1番目の送受信測定対象周波数帯の無線信号を送受信可能な状態が確立される。
【0093】
なお、呼接続制御の完了後のDUT100にあっては、NRシステムシミュレータ20から試験用アンテナ6及びリフレクタ7を介して送られてくる無線信号を受信する処理がダウンリンク(DL)処理とされ、逆に、リフレクタ7及び試験用アンテナ6を介してNRシステムシミュレータ20に対して無線信号を送信する処理がアップリンク(UL)処理とされる。試験用アンテナ6は、リンク(呼)を確立する処理、ならびにリンク確立後のダウンリンク(DL)及びアップリンク(UL)の処理を実行するために用いられるものであり、リンクアンテナと称されることもある。
【0094】
ステップS5での呼接続の確立後、統合制御装置10の信号送受信制御部15は、NRシステムシミュレータ20に対して信号送信指令を送信する。NRシステムシミュレータ20では、上記信号送信指令に基づき、DUT100に対し、リフレクタ7の焦点位置Fに自動配置されている試験用アンテナ6を介して試験信号を送信させる制御を行う(ステップS6)。
【0095】
NRシステムシミュレータ20による試験信号送信制御は以下のように実施される。NRシステムシミュレータ20(
図4参照)において、上記信号送信指令を受けた制御部22は、信号発生機能部を制御し、信号発生部21aで試験信号を生成するための信号を発生させる。その後、この信号をDAC21bでデジタル/アナログ変換処理し、さらに変調部21cで変調処理を行った後、RF部21dで該デジタル変調された周波数を各通信規格の周波数に対応した試験信号を生成し、当該試験信号(DLデータ)を送信部21eにより試験用アンテナ6を介してDUT100に向けて出力する。なお、信号送受信制御部15は、ステップS5で試験信号送信の制御を開始した後、当該試験用アンテナ6に対応する周波数帯のDUT100の送信及び受信特性の測定が終了するまでの間、試験信号を適宜なタイミングで送信するよう制御する。また、この間、統合制御装置10においては、DUT姿勢制御部17が、2軸ポジショナ56aを、DUT載置部56cに載置されたDUT100が上述した姿勢となるようにする制御を継続する。
【0096】
これに対し、DUT100は、試験用アンテナ6、リフレクタ7を介して送られてくる試験信号(DLデータ)を、上記姿勢制御に基づく逐次異なる姿勢の状態でアンテナ110により受信するとともに、該試験信号に対する応答信号である被測定信号を送信するように動作する。
【0097】
ステップS6で試験信号を送信開始した後、引き続き、信号送受信制御部15は、上記試験信号を受信したDUT100から送信され、リフレクタ7によって反射される被測定信号を、リフレクタ7の焦点位置Fに自動配置されている試験用アンテナ6により受信させる処理を行う(ステップS7)。
【0098】
この受信処理に際しては、試験用アンテナ6を介して受信された被測定信号が信号処理部40に入力される。信号処理部40は、アップコンバータ、ダウンコンバータ、増幅器、周波数フィルタ等により構成されている。信号処理部40は、試験用アンテナ6から入力される被測定信号に対して、周波数変換(アップコンバート、又はダウンコンバート)、増幅、周波数選択の各処理を施す。
【0099】
引き続き、NRシステムシミュレータ20は、周波数コンバータにより周波数変換された被測定信号を測定する処理を実行する(ステップS8)。この測定処理に際しては、周波数変換された被測定信号がNRシステムシミュレータ20(
図4参照)におけるRF部21dの受信部21fに入力する。
【0100】
NRシステムシミュレータ20において、制御部22は、信号解析機能部を制御して、まず、RF部21dの受信部21fに入力した被測定信号をIF信号に変換させる。次いで、制御部22は、ADC21gによりアナログ信号からデジタル信号に変換して解析処理部21hに入力させ、該解析処理部21hにより、I成分ベースバンド信号とQ成分ベースバンド信号とにそれぞれ対応する波形データを生成させるように制御する。さらに制御部22は、解析処理部21hを制御し、前述の生成された波形データに基づいて被測定信号を解析させるように制御する。
【0101】
NRシステムシミュレータ20において、制御部22は、解析処理部21hによる被測定信号の解析結果に基づいてDUT100の送信及び受信特性を測定する制御を実施する(ステップS8)。例えば、DUT100の送信特性については、制御部22は、NRシステムシミュレータ20から試験信号としてPing(ピング)リクエストフレームを送信させ、該Pingリクエストフレームに応答してDUT100が被測定信号として送信するPing Reply(ピング リプライ)フレームに基づいてDUT100の送信特性を評価する処理を行う。また、DUT100の受信特性については、制御部22は、NRシステムシミュレータ20から試験信号として送信した測定用フレームの送信回数と、測定用フレームに対してDUT100から被測定信号として送信されるACKの受信回数の割合をエラー率(BER)として算出する。ステップS8でのDUT100の送信及び受信特性の測定制御に合わせて、統合制御装置10では、例えば、制御部32が、NRシステムシミュレータ20による被測定信号の解析結果を、送信及び受信特性として図示しないRAM等の記憶領域に記憶させる制御を行う。
【0102】
引き続き、統合制御装置10では、例えば、アンテナ自動配置制御部16が、n=1に対応する1番目の測定対象周波数帯についてDUT100の送信及び受信特性の測定が終了したか否かを判定する(ステップS9)。ここで、1番目の測定対象周波数帯についての測定が終了していないと判定された場合(ステップS9でNO)、ステップS6以降の処理を続行する。
【0103】
これに対し、1番目の測定対象周波数帯についての測定が終了したと判定された場合(ステップS9でYES)、アンテナ自動配置制御部16は、上記nが、最後の測定対象周波数帯(アウトバンド2)であることを示すn=3に達したか否かを判定する(ステップS10)。ここで、n=3に達していないと判定された場合(ステップS10でNO)、アンテナ自動配置制御部16は、ステップS3に移行し、nを2番目の周波数帯(アウトバンド1)を示すn=2にセットする(ステップS3)。
【0104】
引き続き、アンテナ自動配置制御部16は、n=1のときと同様の方法で、n=2に対応する2番目の測定対象周波数帯に対応する試験用アンテナ6をリフレクタ7の焦点位置Fまで自動的に移動させる制御を行う(ステップS4)。さらに、呼接続制御部14は、新たにリフレクタ7の焦点位置Fに配置された試験用アンテナ6を駆動し、DUT100との間で呼を確立する呼接続制御を実施する(ステップS5)。
【0105】
その後、統合制御装置10は、n=2に対応する2番目の測定対象周波数帯に対応する試験用アンテナ6による試験信号及び被測定信号の送受信に合わせてS6〜S10の処理(1番目の測定対象周波数帯に対応する試験用アンテナ6による試験信号及び被測定信号の送受信に合わせて行った処理に同じ)を実行する。
【0106】
この間、統合制御装置10では、アンテナ自動配置制御部16が、2番目の測定対象周波数帯についてDUT100の送信及び受信特性の測定が終了したか否かを判定し(ステップS9)、ここで、該測定が終了していないと判定された場合(ステップS9でNO)、ステップS6以降の処理を続行する。
【0107】
これに対し、2番目の測定対象周波数帯についてのDUT100の送信及び受信特性の測定が終了したと判定された場合(ステップS9でYES)、アンテナ自動配置制御部16は、n=3に達したか否かを判定する(ステップS10)。n=3に達していないと判定された場合(ステップS10でNO)、アンテナ自動配置制御部16は、ステップS3に移行し、nを3番目の周波数帯(アウトバンド2)を示すn=3にセットする(ステップS3)。
【0108】
引き続き、アンテナ自動配置制御部16は、n=1、2のときと同様の方法で、n=3に対応する3番目の測定対象周波数帯に対応する試験用アンテナ6をリフレクタ7の焦点位置Fまで自動的に移動させる制御を行う(ステップS4)。次いで、呼接続制御部14は、新たにリフレクタ7の焦点位置Fに配置された試験用アンテナ6を駆動し、DUT100との間で呼を確立する呼接続制御を実施する(ステップS5)。
【0109】
その後、統合制御装置10は、n=3に対応する3番目の測定対象周波数帯に対応する試験用アンテナ6による試験信号及び被測定信号の送受信に合わせてS6〜S10の処理(1番目、2番目の測定対象周波数帯に対応する試験用アンテナ6による試験信号及び被測定信号の送受信に合わせて行った処理に同じ)を実行する。
【0110】
この間、統合制御装置10では、アンテナ自動配置制御部16が、3番目の測定対象周波数帯についてDUT100の送信及び受信特性の測定が終了したか否かを判定し(ステップS9)、ここで、該測定が終了していないと判定された場合(ステップS9でNO)、ステップS6以降の処理を続行する。
【0111】
これに対し、3番目の測定対象周波数帯についてDUT100の送信及び受信特性の測定が終了したと判定された場合(ステップS9でYES)、統合制御装置10は、n=3に達したと判定し(ステップS10でYES)、上記一連の測定処理を終了する。
【0112】
上述したように、本実施形態に係る測定装置(アンテナ装置)1は、周囲の電波環境に影響されない内部空間51を有するOTAチャンバ50と、内部空間51に収容され、所定の回転放物面を有し、DUT100が備えるアンテナ110により送信あるいは受信される無線信号が該回転放物面を介して反射されるリフレクタ7と、DUT100の送信及び受信特性を測定するための複数の測定対象周波数帯の無線信号を各々使用する複数の試験用アンテナ6と、測定対象周波数帯に応じて、複数の試験用アンテナ6を、回転放物面から定まる焦点位置Fに、順次、配置するアンテナ自動配置手段60と、を有している。
【0113】
この構成により、本実施形態に係る測定装置1は、OTAチャンバ50を用いたDUT100の送信及び受信特性の測定中に、ユーザが、複数の試験用アンテナ6をリフレクタ7の焦点位置Fに順次付け替える作業が不要となる。また、リフレクタ7を設けて信号伝搬路を短くしたうえでアンテナ自動配置手段60を付加するため、OTAチャンバ50のコンパクト化の大きな障害とはならない。また、各試験用アンテナ6を配置する手間を低減しつつ各測定対象周波数帯を対象とするDUT100の送信及び受信特性の測定を間断なく行うことができ、測定処理の効率を高めることができる。
【0114】
また、本実施形態に係る測定装置1において、DUT100のアンテナ110は、規定の周波数帯の無線信号を使用し、複数の試験用アンテナ6のうちの1つがリフレクタ7の焦点位置Fに配置されるごとに、焦点位置Fに配置中の試験用アンテナ6を介してDUT100に試験信号を出力するとともに、該試験信号が入力されたDUT100から出力される被測定信号を焦点位置Fに配置中の試験用アンテナ6で受信し、受信した被測定信号に基づき、焦点位置Fに配置中の試験用アンテナ6が使用する測定対象周波数帯の無線信号に対するDUT100の送信及び受信特性の測定を行うNRシステムシミュレータ20をさらに備えている。
【0115】
この構成により、本実施形態に係る測定装置1は、規定の周波数帯の無線信号を使用するアンテナ110を有するDUT100について、該規定の周波数帯における異なる複数の周波数帯群の周波数帯について、試験用アンテナ6の付け替えに多くの手間をかけることなくかつ円滑に送信及び受信特性を測定することができる。
【0116】
また、本実施形態に係る測定装置1において、規定の周波数帯は5G NRのバンドであり、複数の測定対象周波数帯は、それぞれ、5G NRのバンドにおける異なる複数の周波数帯群である、n77、n78、n79の群、n258、n257の群、n259の群のうちのいずれか1つの周波数帯群の周波数帯である。
【0117】
この構成により、本実施形態に係る測定装置1は、5G NRのバンドの無線信号を使用するアンテナ110を有するDUT(5G無線端末)について、n77、n78、n79の群、n258、n257の群、n259の群のうちのいずれか1つの周波数帯群の周波数帯について、試験用アンテナ6の付け替えに多くの手間をかけることなくかつ円滑に送信及び受信特性を測定することができる。
【0118】
また、本実施形態に測定装置1において、アンテナ自動配置手段60は、回転軸63を中心に回転可能な回転体62に、回転軸63を中心とした円周上に各試験用アンテナ6が配置され、回転体62の回転により各試験用アンテナ6の受信面がリフレクタ7の焦点位置Fを通過するようにOTAチャンバ50の内部空間51内に設置されるアンテナ保持機構61と、回転軸63を介して回転体62を回転駆動する駆動用モータ65を有する動力部64と、測定対象周波数帯に応じて、各試験用アンテナ6が、順次、焦点位置Fに停止されるように駆動用モータ65を制御するアンテナ自動配置制御部16と、を有する構成である。
【0119】
この構成により、本実施形態に係る測定装置1は、回転軸63を中心とした円周上に各試験用アンテナ6を配置したアンテナ保持機構61を採用したことで、OTAチャンバ50のコンパクト化を維持したまま、アンテナ保持機構61の設置スペースを削減することができる。
【0120】
また、本実施形態に係る測定装置1は、アンテナ保持機構61は、OTAチャンバ50の内部空間51の底面52aに設置され、鉛直方向に沿った回転軸63によって水平方向の面に沿って回転可能な回転体62によって構成される。この構成により、本実施形態に係る測定装置1は、OTAチャンバ50の内部空間51の底面52aに対して水平なスペースをアンテナ保持機構61の設置スペースとして確保することで、OTAチャンバ50の高さの増大を防ぐことができる。
【0121】
また、本実施形態に係る測定装置1は、アンテナ保持機構61は、各試験用アンテナ6の受信面が回転軸63側を向くように当該各試験用アンテナ6を保持している構成である。この構成により、本実施形態に係る測定装置1は、アンテナ保持機構61をOTAチャンバ50の内部空間51の底面52aの中央部に配置し、各試験用アンテナ6が配置された円周の径を小さくすることができ、アンテナ保持機構61、及びOTAチャンバ50のコンパクト化を維持することができる。
【0122】
また、本実施形態に係る測定装置1において、アンテナ保持機構61は、試験用アンテナ6がリフレクタ7の焦点位置Fに停止されたときに、リフレクタ7に対向し、試験用アンテナ6の受信面が無線信号のビーム軸に対して直角となる角度、例えば仰角30度となるように試験用アンテナ6を保持している構成である。この構成により、本実施形態に係る測定装置1は、リフレクタ7の焦点位置Fに配置された試験用アンテナ6の受信精度を高め、DUT100の送信及び受信特性の測定精度も向上させることができる。
【0123】
また、本実施形態に係る測定方法は、上述した構成を有する測定装置1を用いる測定方法であって、DUT100を、OTAチャンバ50内のDUT保持部56に保持させる保持ステップ(
図10におけるステップS1)と、所定の測定開始指令に基づき、測定対象周波数帯に応じて、複数の試験用アンテナ6を、焦点位置Fに、順次、配置するアンテナ配置ステップ(
図10におけるステップS3、S4)と、NRシステムシミュレータ20により、焦点位置Fに配置された試験用アンテナ6を介してDUT100に試験信号を出力させる試験信号出力ステップ(
図10におけるステップS6)と、試験信号が入力されたDUT100から出力される被測定信号を、前記焦点位置に配置された前記アンテナを介して受信させる信号受信ステップ(
図10におけるステップS7)と、信号受信ステップで受信した被測定信号に基づいて、焦点位置Fに配置された試験用アンテナ6が使用する測定対象周波数帯の無線信号に対するDUT100の送信及び受信特性を測定させる測定ステップ(
図10におけるステップS8)と、を含むものである。
【0124】
この構成により、本実施形態に係る測定方法は、アンテナ自動配置手段60を設けたOTAチャンバ50を有する測定装置(アンテナ装置)1を用いるため、DUT100の送信及び受信特性の測定中に、ユーザが、上記複数の試験用アンテナ6をリフレクタ7の焦点位置Fに順次付け替える作業が不要となる。また、リフレクタ7を設けて信号伝搬路を短くしたうえでアンテナ自動配置手段60を付加するため、電波暗箱のコンパクト化の大きな障害とはならない。また、各試験用アンテナ6を焦点位置Fに配置する手間を低減しつつ各測定対象周波数帯のDUT100の送信及び受信特性の測定を間断なく行うことができ、測定処理の効率を高めることができる。
【0125】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る測定装置1Aは、
図11に示すように、第1の実施形態に係る測定装置1で用いるOTAチャンバ50に代えて、アンテナ自動配置手段60Aを採用したOTAチャンバ50Aを用いるものである。アンテナ自動配置手段60Aにおいて、第1の実施形態に係るOTAチャンバ50に搭載されるアンテナ自動配置手段60(
図1、
図2参照)と同等の構成要素には同一の符号を付している。
【0126】
図11に示すように、本実施形態に係るアンテナ自動配置手段60Aは、第1の実施形態に係るアンテナ自動配置手段60と同様、回転軸63を中心に回転可能な回転体62に、回転軸63を中心とした円周上に各試験用アンテナ6が配置され、回転体62の回転により各試験用アンテナ6の受信面がリフレクタ7の焦点位置Fを通過するようにOTAチャンバ50Aの内部空間内に設置されるアンテナ保持機構61と、回転軸63を介して回転体62を回転駆動する駆動用モータ65を有する動力部64と、を有している。つまり、本実施形態に係るアンテナ自動配置手段60Aにおいても、アンテナ保持機構61は、OTAチャンバ50Aの内部空間51の底面に設置され、鉛直方向に沿った回転軸63によって水平方向の面に沿って回転可能な回転体62により構成されている。
【0127】
本実施形態に係るアンテナ自動配置手段60Aが、第1の実施形態に係るアンテナ自動配置手段60と異なる点は、回転体62に対する試験用アンテナ6の配置態様であり、それ以外の構成は、第1の実施形態に係るアンテナ自動配置手段60と同様である。第1の実施形態に係るアンテナ自動配置手段60は、アンテナ保持機構61が、各試験用アンテナ6の受信面が回転軸63側(内側)を向くように当該各試験用アンテナ6を保持しているものであったのに対し(
図1参照)、本実施形態に係るアンテナ自動配置手段60Aは、
図11に示すように、アンテナ保持機構61が、各試験用アンテナ6の受信面が回転軸63の側に対して反対側(外側)を向くように当該各試験用アンテナ6を保持している構成である。
【0128】
本実施形態に係るアンテナ自動配置手段60Aにおいても、動力部64を構成する駆動用モータ65は、アンテナ自動配置制御部16に接続されている。また、本実施形態においても、各試験用アンテナ6に対応してそれぞれリフレクタ7の焦点位置Fに配置し得る運転パルス数(但し、第1の実施形態とは異なる値となる)を格納したアンテナ自動配置制御テーブル16aが予め用意されている。これにより、本実施形態に係る測定装置1Aにおいても、第1の実施形態と同様、
図10に示すフローチャートに沿って、アンテナ自動配置制御部16が、アンテナ自動配置制御テーブル16aから各試験用アンテナ6の運転パルス数を読み取り、該パルス数に基づいて駆動用モータ65を回転制御することにより、各試験用アンテナ6を、順次、リフレクタ7の焦点位置Fに配置する(
図10のステップS4参照)ことが可能となる。
【0129】
本実施形態に係る測定装置(アンテナ装置)1Aでは、試験用アンテナ6をリフレクタ7の焦点位置Fに、順次、自動的に配置するアンテナ自動配置手段60Aを有するため、第1の実施形態と同様、複数の試験用アンテナ6を付け替える作業をユーザに強いることなく、DUT100の送信及び受信特性の測定を容易に行うことができるという効果を奏する。特に、本実施形態に係るアンテナ自動配置手段60Aを有するOTAチャンバ50Aの構成によれば、例えば、アンテナ保持機構61Aを内部空間51の底面52aの中央部を避けた位置に配置し、試験用アンテナ6が配置される円周の径を小さくし、アンテナ保持機構61Aを小型化する場合に有用である。
【0130】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る測定装置1Bは、
図12に示すように、第1及び第2の実施形態に係る測定装置1、1Aで用いるOTAチャンバ50、50Aに代えて、アンテナ自動配置手段60Bを採用したOTAチャンバ50Bを用いるものである。
図12(a)は、アンテナ自動配置手段60Bの正面から見た概略構成を示し、
図12(b)は、
図12(a)の右側面から見たアンテナ自動配置手段60Bの概略構成を示している。
【0131】
第1及び第2の実施形態に係る測定装置1、1Aのアンテナ自動配置手段60、60Aは、水平面に対して直角な回転軸63を介して水平面上を回転可能な回転体62の周方向の円周上に複数の試験用アンテナ6を保持するアンテナ保持機構61を有しているのに対して、本実施形態に係るアンテナ自動配置手段60Bは、
図12に示すように、水平方向に延びる中心軸63Bを介して鉛直方向の面に沿って回転可能な回転体62Bの外周に沿って円周上に複数の試験用アンテナ6を保持するアンテナ保持機構61Bを有している。また、アンテナ自動配置手段60Bの動力部64Bは、第1及び第2の実施形態に係る駆動用モータ65と同等の駆動用モータ65Bと、該駆動用モータ65Bと回転体62Bの回転軸63B間に介挿される連結部材66Bにより構成されている。
【0132】
本実施形態に係るアンテナ自動配置手段60Bは、アンテナ保持機構61Bに保持されている複数の試験用アンテナ6は、回転体62Bの回転に伴って鉛直方向の面に沿って周回するという点で第1及び第2の実施形態と異なっているが、各試験用アンテナ6の周回上の所定の位置、特に、リフレクタ7の焦点位置Fまで移動させるには、駆動用モータ65Bの回転量、つまり、駆動用モータ65Bに与える運転パルス数で制御できることは第1及び第2の実施形態と同様である。
【0133】
これにより、本実施形態においても、各試験用アンテナ6に対応してそれぞれリフレクタ7の焦点位置Fに配置し得る運転パルス数(但し、第1及び第2の実施形態とは異なる値となる)を格納したアンテナ自動配置制御テーブル16aが予め用意されている。そのうえで、アンテナ自動配置手段60Bの動力部64Bを構成する駆動用モータ65Bが接続されるアンテナ自動配置制御部16において、アンテナ自動配置制御テーブル16aに基づいて駆動用モータ65Bを駆動制御させるようになっている。この場合、アンテナ自動配置制御部16は、アンテナ自動配置制御テーブル16aから各試験用アンテナ6の運転パルス数を読み取り、該パルス数に基づいて駆動用モータ65を回転制御することにより、各試験用アンテナ6を、順次、リフレクタ7の焦点位置Fに配置する(
図10のステップS4参照)ことが可能となる。
【0134】
本実施形態に係る測定装置(アンテナ装置)1Bでは、試験用アンテナ6をリフレクタ7の焦点位置Fに、順次、自動的に配置するアンテナ自動配置手段60Bを有するため、第1の実施形態と同様、複数の試験用アンテナ6を付け替える作業をユーザに強いることなく、DUT100の送信及び受信特性を容易に測定できるという効果を奏する。特に、本実施形態に係るアンテナ自動配置手段60Bを有するOTAチャンバ50Bの構成によれば、内部空間51の底面52aに垂直なスペースをアンテナ保持機構61Bの設置スペースとして確保することで、筐体本体部52の幅の増大を防ぐことができる。
【0135】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る測定装置1Cは、
図13に示すように、第1の実施形態に係る測定装置1で用いるOTAチャンバ50に代えて、アンテナ自動配置手段80を採用したOTAチャンバ50Cを用いるものである。本実施形態では、アンテナ自動配置手段80について、それぞれ異なる測定対象周波数帯を使用可能な9つの試験用アンテナ6を自動配置する構成例を挙げているが、以下に述べるように、第1ないし第3実施形態で例示した3つの試験用アンテナ6を用いる場合にも適用し得ることは言うまでもない。
【0136】
図13に示すように、本実施形態に係るアンテナ自動配置手段80は、アンテナ保持機構81、動力部87を有している。アンテナ保持機構81は、複数の第1のスライド機構81a、81b、81cと、該第1のスライド機構81a、81b、81cに対して直交するように配設される第2のスライド機構84と、により構成されている。第1のスライド機構81a、81b、81cは、複数のアンテナ台座82を有し、該アンテナ台座82を、例えば、一対のガイドレール83に沿って、所定の間隔を保ったまま一方向にスライド可能に保持する構成を有している。ここで、一方向とは、例えば、互いに直交するX軸とY軸で構成される平面上のY軸方向である。アンテナ台座82には、それぞれ、試験用アンテナ6が取り付けられている。
【0137】
図13においては、9個のアンテナ台座82にそれぞれ取り付けられた9つの試験用アンテナ6が焦点位置Fに自動配置する構成を例示しているが、このアンテナ自動配置手段80は、構成の変更あるいは変形によって、任意の数の試験用アンテナ6の自動配置に対応し得るものである。例えば、アンテナ自動配置手段80において、第1ないし第3の実施形態のように3つの試験用アンテナ6を自動配置するには、
図13における任意の3つのアンテナ台座82に各試験用アンテナ6をそれぞれ設置すればよい。また、
図13に示すアンテナ自動配置手段80において、第1のスライド機構を1つ(例えば、81a)のみ備えた構成、あるいは、第2のスライド機構84のみを備えた構成とすることによっても、3つの試験用アンテナ6に自動配置に対応可能である。
【0138】
一方、第2のスライド機構84は、第1のスライド機構81a、81b、81cを載置する台座部85を有し、該第1のスライド機構81a、81b、81cを、例えば、一対のガイドレール86に沿って、Y軸方向とは直交する他方向にスライド可能に保持するようになっている。
【0139】
動力部87は、第1のスライド機構81a、81b、81cを構成する各アンテナ台座82の貫通孔82aを貫いてY軸方向に沿って設けられる駆動軸87a、87b、87cと、該駆動軸87a、87b、87cを回転駆動する第1の駆動用モータ88a、88b、88cと、を有する。動力部87はまた、第2のスライド機構84を構成する台座部85の貫通孔85aを貫いてX軸方向に沿って設けられる駆動軸89aと、該駆動軸89aを回転駆動する第2の駆動用モータ89bと、を有する。なお、上述した各アンテナ台座82の貫通孔82a、及び各台座部85の貫通孔85aには、それぞれ、駆動軸87a、87b、87c、及び駆動軸89aに形成されたねじに嵌合するねじが形成されている。これにより、動力部87においては、第1の駆動用モータ88a、88b、88cを正逆両方向に回転駆動し、駆動軸87a、87b、87cを同方向に回転駆動させることで、各アンテナ台座82をY軸に沿って正逆回転方向に対応する双方向に移動させることができる。同様に、第2の駆動用モータ89bを正逆両方向に回転駆動し、駆動軸89aを同方向に回転駆動させることで、各台座部85をX軸に沿って正逆回転方向に対応する双方向に移動させることができる。
【0140】
図13に示すアンテナ自動配置手段80において、アンテナ保持機構81は、各アンテナ台座82に載置された各試験用アンテナ6が、リフレクタ7の焦点位置Fを通過できるように、当該OTAチャンバ50Cの内部空間51内の例えば底面52a上に設置されている。
図13の構成において、リフレクタ7の焦点位置Fは、XY平面上の座標で表わすことができる。また、X軸方向の台座部85の移動量は、第2の駆動用モータ89bの運転パルス数に対応し、Y軸方向のアンテナ台座82の移動量は、第1の駆動用モータ88a、88b、88cの運転パルス数に対応している。
【0141】
このような条件を踏まえ、本実施形態に係る測定装置1Cでは、アンテナ自動配置制御テーブル16aとして、各試験用アンテナ6に対応してそれぞれリフレクタ7の焦点位置Fに配置し得る第1の駆動用モータ88a、88b、88cの運転パルス数、及び第2の駆動用モータ89bの運転パルス数を制御データとして格納しておく。これにより、アンテナ自動配置制御部16では、アンテナ自動配置制御テーブル16aに基づいて第1の駆動用モータ88a、88b、88c、及び第2の駆動用モータ89bをそれぞれ駆動制御することができる。この駆動制御において、アンテナ自動配置制御部16は、アンテナ自動配置制御テーブル16aから各試験用アンテナ6に対応する第1の駆動用モータ88a、88b、88cの運転パルス数、及び第2の駆動用モータ89bの運転パルス数を読み取り、該パルス数に基づいて第1の駆動用モータ88a、88b、88c、及び第2の駆動用モータ89bをそれぞれ回転制御することにより、各試験用アンテナ6を、順次、リフレクタ7の焦点位置Fに配置する(
図10のステップS4参照)ことが可能となる。
【0142】
本実施形態に係る測定装置(アンテナ装置)1Cでは、XY平面上で、試験用アンテナ6をリフレクタ7の焦点位置Fに、順次、自動的に配置するアンテナ自動配置手段80を有するため、第1〜第3の実施形態と同様、複数の試験用アンテナ6を付け替える作業をユーザに強いることなく、DUT100の送信及び受信特性を容易に測定できるという効果を奏する。特に、本実施形態に係るアンテナ自動配置手段80を有するOTAチャンバ50Cの構成によれば、OTAチャンバ50Cの内部空間51の底面52aに水平なスペースをアンテナ保持機構81の設置スペースとして確保することでOTAチャンバ50C(筐体本体部52)の高さ方向への構造拡張を防ぐことができる。また、各試験用アンテナ6が水平面上を互いに直交する方向にスライド移動するため、リフレクタ7の焦点位置Fへ向けての安定移動が可能となる。
【0143】
本実施形態に係る測定装置1Cでは、第1のスライド機構81a、81b、81cが、Y軸方向に対して並行に、かつ、前記X軸方向に所定間隔離間して複数設けられ、動力部87は、第1のスライド機構81a、81b、81cにそれぞれ対応する第1の駆動用モータ88a、88b、88cを含む構成である。この構成により、測定装置1は、OTAチャンバ50Cの筐体本体部52の底面52a上の水平方向のスペースを最大限に活用しつつ、OTAチャンバ50Cの大型化を避けながら、試験用アンテナ6の増設に容易に対応可能となる。本実施形態においては、第1のスライド機構及び第1の駆動用モータは、必ずしも複数設ける必要はなく、1つずつ設けた構成であってもよい。
【0144】
なお、上記各実施形態では、5G NRバンド内の3つのバンド(
図8参照)におけるDUT100の送受信測定を、例えば、3つの試験用アンテナ6(第4実施形態にあっては最大9つ)でカバーする例を挙げているが、本発明は、これに限らず、5G NRバンド内の複数のバンドについてのDUT100の送信及び受信特性の測定を任意の数の試験用アンテナ6を使用して実施する構成としてもよい。また、試験用アンテナ6を自動配置する手段(60、60A、60B、60C)についても、上記各実施形態で説明した態様に限らず、手動で配置する手段を含め、種々の態様が適用可能であることはいうまでもない。
なお、本発明は、電波暗箱だけではなく電波暗室にも適用できる。