(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記他のジエンエラストマーが、シス−1,4−ポリブタジエンマトリックス中に5%〜25%のシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンを含む複合ポリブタジエンを主として含む、請求項1または2記載のタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
“エラストマー100質量部当りの質量部”(またはphr)なる表現は、本発明の意義の範囲内において、エラストマーまたはゴム100質量当りの質量部を意味するものと理解すべきである。
【0012】
本明細書においては、他で明確に断らない限り、示す全ての百分率(%)は、質量パーセント(%)である。さらにまた、“aとbの間”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、aよりも大きくからbよりも小さいまでに及ぶ値の範囲を示し(即ち、限界値aとbは除外する)、一方、“a〜b”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、aからbまでに及ぶ値の範囲を意味する(即ち、厳格な限定値aおよびbを包含する)。本明細書においては、値の間隔が“a〜b”の表現で示される場合、“aとbの間”の表現も、同様にまた好ましく示される。
【0013】
本明細書においては、“ベースとする”組成物なる表現は、使用する各種ベース構成成分の混合物おまたは現場反応物を意味するものと理解されたい;これらのベース構成成分の幾つかは、互いに、少なくとも部分的に、上記組成物の種々の製造段階中に、特に、その架橋または加硫中に反応し得るかまたは反応するように意図する。
【0014】
本明細書においては、“主として含む”なる表現は、50%よりも多くを含むことを意味するものと理解されたい。例えば、この表現は、例えば、60%、70%、80%、90%よりも多くであって、実際には100%でもあり得る。他で断らない限り、上記パーセントは、質量パーセントとして表現する。
【0015】
他で断らない限り、本明細書において説明する各成分は、本発明に従う航空機タイヤのトレッドの組成物の1部を構成する。それらそれぞれの混入含有量は、本発明に従うタイヤトレッド組成物中のそれら成分の含有量に相応する。
【0016】
エラストマーマトリックス
本発明によれば、上記エラストマーマトリックスは、下記の成分:
・15〜75phr (エラストマー100質量部当りの質量部)のイソプレンエラストマー、および
・25〜85phrのスズ官能化されたブタジエンとスチレンのコポリマー、
を含み、イソプレンエラストマーとスズ官能化されたブタジエンとスチレンとのコポリマーとの総含有量は、45〜100phrの範囲内である。
【0017】
“イソプレンエラストマー”とは、知られているとおり、イソプレンホモポリマーまたはコポリマー、換言すれば、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、各種イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれるジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。特に、イソプレンコポリマーのうちでは、イソブテン/イソプレン(ブチルゴム、IIR)、イソプレン/スチレン(SIR)、イソプレン/ブタジエン(BIR)またはイソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)の各コポリマーが挙げられる。このイソプレンエラストマーは、好ましくは天然ゴムまたは合成シス−1,4−ポリイソプレン、好ましくは天然ゴムである。例えば、上記合成ポリイソプレンは、90%よりも多くの、さらにより好ましくは98%よりも多くのシス−1,4−結合含有量(モル%)を有するポリイソプレンであり得る。
【0018】
本発明の意義の範囲内で使用する上記エラストマーは、例えば、ブロック、ランダム、序列または微細序列エラストマーであり得、分散液中または溶液中で調製し得る;これらのエラストマーは、カップリング剤および/または星型枝分れ化剤或いは官能化剤によってカップリングしおよび/または星型枝分れ化しおよび/または官能化し得る。
【0019】
好ましくは、本発明によれば、イソプレンエラストマーの含有量は、20〜70phr、例えば20〜65または30〜65phr、例えば25〜60phr、例えば25〜50phrの範囲内であり得る。
【0020】
上記イソプレンエラストマーは、天然ゴム、合成ポリイソプレンおよびこれらの混合物からなる群から選択し得る。好ましくは、上記イソプレンエラストマーは、天然ゴムである。
【0021】
本発明の意義の範囲内において、ブタジエン単位とスチレン単位のコポリマーとは、1種以上のブタジエンの1種以上のスチレン化合物との共重合によって得られた任意のコポリマーを称する。以下は、例えば、スチレン化合物として適している:スチレン;オルト−、メタ−またはパラ−メチルスチレン;“ビニルトルエン”市販混合物;パラ−(tert−ブチル)スチレン;メトキシスチレン;クロロスチレン;ビニルメシチレン;ジビニルベンゼンまたはビニルナフタレン。これらのエラストマーは、使用する重合条件、特に、変性剤および/またはランダム化剤の存在または不存在並びに使用する変性剤および/またはランダム化剤の量に依存する任意のミクロ構造を有し得る。これらのエラストマーは、例えば、ブロック、ランダム、序列または微細序列エラストマーであり得、分散液中または溶液中で調製し得る。
【0022】
スズ(Sn)官能化された、即ち、C−Sn結合を含む(Sn官能化としても知られている)ブタジエンとスチレンとのコポリマーは、官能化剤および/またはカップリング剤および/または星型枝分れ化剤によって単独に官能化し(連鎖末端でのC−Sn結合)および/またはカップリングし(2本の連鎖間でのSn原子)および/または星型枝分れ化し(3本以上の連鎖間でのSn原子)得る。一般的に、スズに結合させたこれらのエラストマーの全てをまとめるには、用語“スズ官能化エラストマーを使用する。これらのエラストマーは、当業者にとって既知である;例えば、文献 WO 2011/042507号に記載されているエラストマー。
【0023】
シラノールまたはシラノール末端を有するポリシロキサン、またはエポキシ化したスチレンとブタジエンとのコポリマーのような他のタイプの官能化は、スチレンとブタジエンとのコポリマーにおいて存在する。そのような官能化は、スズによる官能化以外に、本発明の意義の範囲内において可能である。
【0024】
当業者であれば、本発明の関連において使用し得る官能剤および/またはカップリング剤および/または星型枝分れ化剤は周知であろう。官能化剤の例としては、一般式(X
11R
12Sn)−O−(SnR
13-yX
1y)または(X
11R
12Sn)−O−(CH
2)
n−O−(SnR
13-yX
1y)に相応し得るスズ誘導型官能化剤を挙げることができる:上記式中、yは、値0または1を有する整数を示し;R
1は、1〜12個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アリールまたはビニル基、好ましくはブチルを示し;X
1は、ハロゲン原子、好ましくは塩素であり;nは、1〜12の整数、好ましくは4である。さらにまた、スズ含有カップリング剤または星型枝分れ化剤としては、式 SnR
xX
4-xのスズ誘導体を挙げることができ;xは、0〜2の値を有する整数を示し;Rは、1〜10個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリル、アラルキルまたはビニル基、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を示し;Xは、ハロゲン原子、好ましくは塩素である。好ましいスズ誘導体としては、ジブチルスズジクロリド或いはスズテトラクロリドを挙げることができ、後者は極めて特に好ましい。
【0025】
上記スズ官能化されたブタジエンとスチレンとのコポリマーは、それ自体知られているとおり、スズ誘導体と上記ブタジエンとスチレンのコポリマーとの反応によって得ることができる。星型枝分れジエンエラストマーの調製は、例えば、特許US 3 393 182号に記載されている。
【0026】
上記スズ官能化されたブタジエンとスチレンとのコポリマーは、好ましくは、ランダムブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)である。以下、スズ官能化SBR (Sn−SBR)と称する。上記Sn−SBRは、例えば、エマルジョン中で調製したSBR (“ESBR”)または溶液中で調製したSBR (“SSBR”)のいずれであってもよい。上記SBRのブタジエン成分のビニル(1,2−)、トランス−1,4−およびシス−1,4−結合の含有量は、変動し得る。例えば、上記ビニル含有量は15%と80%(モル%)の間であり得、トランス−1,4−結合含有量は15%と80%(モル%)の間であり得る。
【0027】
好ましくは、本発明によれば、スズ官能化されたブタジエンとスチレンとのコポリマーの含有量は、30〜80phr、例えば35〜80phr、例えば40〜75phr、例えば50〜75phrの範囲内である。
【0028】
好ましくは、上記スズ官能化されたブタジエンとスチレンとのコポリマーは、低スチレン分を含むスズ官能化されたブタジエンとスチレンとのコポリマーである。低スチレン分を含む上記スズ官能化されたブタジエンとスチレンとのコポリマーのスチレン含有量は、5%〜25%、好ましくは5%〜20%、さらに好ましくは10%〜19%の範囲内であり得る。
【0029】
本発明の特定の実施態様においては、イソプレンエラストマーと、スズ官能化されたブタジエンとスチレンとのコポリマーとの総含有量は、100phrであり得る。換言すれば、この実施態様によれば、本発明に従う航空機タイヤのトレッドの組成物のエラストマーマトリックスは、専ら、イソプレンエラストマーおよびスズ官能化されたブタジエンとスチレンとのコポリマーを含む。
【0030】
本発明のもう1つの特定の実施態様においては、イソプレンエラストマーと、スズ官能化されたブタジエンとスチレンとのコポリマーとの総含有量は、45phrから100phr未満でもあり得る。換言すれば、この実施態様によれば、本発明に従う航空機タイヤのトレッドの組成物は、イソプレンエラストマーおよびスズ官能化されたブタジエンとスチレンとのコポリマー以外に、0phrよりも多くから55phrまでの他のジエンエラストマーを含む。イソプレンエラストマーと、スズ官能化されたブタジエンとスチレンとのコポリマーとの総含有量は、例えば、50phrから100phr未満まで、好ましくは45〜90phr、好ましくは70〜80phrの範囲内であり得る。用語“他のジエンエラストマー”は、イソプレンエラストマー以外およびスズ官能化されたブタジエンとスチレンとのコポリマー以外のジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。
【0031】
用語“ジエンエラストマー”は、知られている通り、ジエンモノマー(共役型または非共役型炭素−炭素二重結合を担持するモノマー)に少なくとも一部由来する1種以上のエラストマー(即ち、ホモポリマーまたはコポリマー)を意味するものと理解すべきである。
【0032】
これらのジエンエラストマーは当業者にとって周知であり、上記組成物において使用することのできるジエンエラストマーは、さらに詳細には、下記を意味するものと理解されたい:
・4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーを重合させることによって得られる任意のホモポリマー;
・1種以上の共役ジエンの相互間または8〜20個の炭素原子を有する1種以上のビニル芳香族化合物との共重合によって得られる任意のコポリマー;
・エチレンおよび3〜6個の炭素原子を含有するα‐オレフィンを、6〜12個の炭素原子を含有する非共役ジエンモノマーと共重合させることによって得られる3成分コポリマー、例えば、上記タイプの非共役ジエンモノマー、例えば、特に、1,4‐ヘキサジエン、エチリデンノルボルネンまたはジシクロペンタジエンと一緒のエチレンおよびプロピレンから得られるエラストマーのような;
・イソブテンとイソプレンのコポリマー(ブチルゴム)、さらにまた、このタイプのコポリマーのハロゲン化形、特に、塩素化または臭素化形。
【0033】
以下は、共役ジエン類として特に適している:1,3−ブタジエン;2−メチル−1,3−ブタジエン;例えば、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−3−エチル−1,3−ブタジエンまたは2−メチル−3−イソプロピル−1,3−ブタジエンのような2,3−ジ(C
1〜C
5アルキル)−1,3−ブタジエン;アリール−1,3−ブタジエン;1,3−ペンタジエンまたは2,4−ヘキサジエン。ビニル芳香族化合物として適しているのは、例えば、スチレン;オルト−、メタ−またはパラ−メチルスチレン;“ビニルトルエン”市販混合物;パラ−(tert−ブチル)スチレン;メトキシスチレン;クロロスチレン;ビニルメシチレン;ジビニルベンゼンまたはビニルナフタレンである。
【0034】
好ましくは、本発明のこの実施態様によれば、上記他のジエンエラストマーは、スズ官能化されたブタジエンとスチレンとのコポリマー、ポリブタジエン、およびこれらのジエンエラストマーの少なくとも2種、例えば、さらに実際には、2種、3種、4種、5種の混合物を含むまたはからなる群から選択し得る。
【0035】
スズで官能化されていないブタジエンとスチレンとのコポリマーは、例えば、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)であり得る。このコポリマーは、例えば、エマルジョン中で調製したSBR (“ESBR”)または溶液中で調製したSBR (“SSBR”)のいずれであってもよい。上記SBRのブタジエン成分のビニル(1,2−)、トランス−1,4−およびシス−1,4−結合の含有量は、変動し得る。例えば、上記ビニル含有量は15%と80%(モル%)の間であり得、トランス−1,4−結合含有量は15%と80%(モル%)の間であり得る。
【0036】
好ましくは、本発明のこの実施態様によれば、上記他のジエンエラストマーは、主として、ポリブタジエンを含む。
好ましくは、上記ポリブタジエンは、例えば、シス−1,4−ポリブタジエンマトリックス中に5%〜25%のシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンを含む複合ポリブタジエン、例えば、シス−1,4−ポリブタジエンマトリックス中に12%のシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンを含むUbe社からの“VCR412 Ubepol”であり得る。
【0037】
上記他のジエンエラストマーの含有量は、この他のジエンエラストマーの性質に依存し得る。この含有量は、0よりも多くから50phrまで、好ましくは10〜55phr、好ましくは20〜30phrの範囲内である。
【0038】
上記他のジエンエラストマーが、主として、シス−1,4−結合を主として含むポリブタジエンを含む場合、ジエンエラストマーの含有量は、10〜30phr、好ましくは15よな25phrの範囲内であり得る。
【0039】
上記他のジエンエラストマーが、主として、シス−1,4−ポリブタジエンマトリックス中に5%〜25%のシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンを含む複合ポリブタジエンを含む場合、上記他のジエンエラストマーの含有量は、10〜55phr、好ましくは30〜55phr、好ましくは40〜55phr、好ましくは45〜50phrの範囲内である。
【0040】
補強用充填剤
補強用充填剤は、タイヤの製造において使用し得るゴム組成物を補強するその能力について知られている。
【0041】
本発明によれば、補強用充填剤は、カーボンブラックを主として含むか、さらに実際にはカーボンブラックから専らなり得る。また、補強用充填剤は、補強用無機充填剤を主として含むか、さらに実際には補強用無機充填剤から専らなり得る。
【0042】
そのような補強用充填剤は、典型的には、ナノ粒子からなり、その(質量)平均粒度は、一般に500nmよりも低く、最も多くは20nmと200nmの間、特にまたはさらに好ましくは20nmと150nmの間である。
【0043】
カーボンブラックは、好ましくは少なくとも90m
2/g、さらに好ましくは少なくとも100 m
2/gのBET比表面積を示す。タイヤまたはそのトレッドにおいて通常使用するブラック類(“タイヤ級”ブラック類)が、そのようなものとして適している。さらに詳細には、それらのブラック類のうちでは、例えば、N115、N135、N234またはN375ブラック類のような100、200または300シリーズの補強用カーボンブラック類(ASTM級)が挙げられる。これらのカーボンブラックは、商業的に入手し得るような個々の状態で、或いは、例えば、使用するある種のゴム添加剤用の支持体のような任意の他の形で使用し得る。カーボンブラックのBET比表面積は、規格 D6556−10 [多点(少なくとも5点)法;ガス:窒素;相対圧力 p/p
o範囲:0.1〜0.3]に従って測定する。
【0044】
用語“補強用無機充填剤”は、この場合、カーボンブラックに対比して“白色充填剤”、“透明充填剤”または実際には“非黒色充填剤”としても知られており、それ自体で、中間カップリング剤以外の手段によることなく、タイヤの製造を意図するゴム組成物を補強し得る、換言すれば、その補強機能において、通常のタイヤ級カーボンブラックと置換わり得る任意の無機または鉱質充填剤(その色合およびその由来(天然または合成)の如何を問わない)を意味するものと理解すべきである;そのような充填剤は、一般に、知られている通り、その表面でのヒドロキシル基(−OH基)の存在に特徴を有する。
【0045】
上記補強用無機充填剤を提供する物理的状態は、この充填剤が粉末、微細真珠状物、顆粒、ビーズまたは任意の他の適切な高密度化形のいずれであれ、重要ではない。勿論、用語“補強用無機充填剤”は、種々の補強用無機充填剤、特に、下記で説明するような高分散性シリカ質および/またはアルミナ質充填剤の混合物も意味するものと理解されたい。
【0046】
シリカ質タイプの鉱質充填剤、好ましくは、シリカ(SiO
2)は、特に補強用無機充填剤として適している。使用するシリカは、当業者にとって既知の任意の補強用シリカ、特に、共に40〜450m
2/g未満、好ましくは30〜400m
2/g、特に60m
2/gと300m
2/gの間であるBET比表面積とCTAB比表面積を有する任意の沈降またはヒュームドシリカであり得る。
【0047】
本説明においては、シリカに関しては、上記BET比表面積を、知られている通り、The Journal of the American Chemical Society, Vol.60, page 309 (1938年2月)に記載されているBrunauer‐Emmett‐Teller法を使用するガス吸着によって、さらに詳細には、1996年12月のフランス規格NF ISO 9277 (多点 (5点)容積法;ガス 窒素;脱ガス 160℃で1時間;degassing: 1 hour at 160°C ;相対圧力p/po範囲 0.05〜0.17)に従って測定する。CTAB比表面積は、1987年11月のフランス規格NF T 45‐007 (方法B)に従って測定した外表面積である。
【0048】
補強用無機充填剤をジエンエラストマーにカップリングさせるためには、知られている通り、無機充填剤(その粒子表面)とジエンエラストマー間に化学的および/または物理的性質の十分な結合を確保することを意図する少なくとも二官能性のカップリング剤(または結合剤)、特に、少なくとも二官能性のオルガノシランまたはポリオルガノシロキサン類を使用する。
【0049】
カップリング剤の含有量は、有利には12phr未満である;できる限り少ないカップリング剤を使用することが一般に好ましいことを理解されたい。典型的には、カップリング剤の含有量は、無機充填剤の量に対して0.5質量%〜15質量%を示す。その含有量は、好ましくは0.5phrと9phrの間、さらに好ましくは3〜9phrの範囲内である。この含有量は、当業者であれば、上記組成物において使用する無機充填剤の含有量に応じて容易に調整するであろう。
本発明によれば、補強用充填剤の含有量は、20〜70phr、好ましくは25〜55phr、好ましくは45〜55phrの範囲内であり得る。
【0050】
架橋系
架橋系は、一方のイオウまたは他方のイオウ供与剤、および/またはペルオキシド、および/またはビスマレイミドをベースとし得る。架橋系は、好ましくは、加硫系、即ち、イオウ(またはイオウ供与剤)と一次加硫促進剤をベースとする系である。このベース加硫系に、各種既知の二次加硫促進剤または加硫活性化剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸もしくは等価の化合物、またはグアニジン誘導体(特にジフェニルグアニジン)、或いは既知の加硫遅延剤を追加する;これらの加硫系は、後述するような第1非生産段階および/または生産段階において混入する。
【0051】
イオウは、0.5phrと12phrの間、特に1phrと10phrの間の好ましい含有量で使用する。一次加硫促進剤は、0.5phrと10phrの間の好ましい含有量、さらに好ましくは0.5phrと5.0phrの間で使用する。
【0052】
各種添加剤
また、上記ゴム組成物は、例えば、可塑剤;顔料;オゾン劣化防止ワックス、化学オゾン劣化防止剤または酸化防止剤のような保護剤または疲労防止剤のような、トレッドを構成することを意図するエラストマー組成物において慣用的に使用する通常の添加剤の全部または1部も含み得る。
【0053】
航空機タイヤ
本発明は、航空機に装着することを意図するタイヤに関する。航空機タイヤは、その使用に関連した高度に特異的な応力を被り、乗用車、大型車、土木機械または地上車のような他のタイプのタイヤに対してある種の顕著な特徴を示す。
【0054】
一般に、タイヤは、走行表面を介して地面と接触することを意図し且つ2枚の側壁を介して2本のビードに連結したトレッドを含み、2本のビードは、タイヤとタイヤを取付けているリム間に機械的連結をもたらすことを意図する。
【0055】
ラジアルタイヤは、さらに詳細には、トレッドに対して半径方向内側のクラウン補強材およびクラウン補強材に対して半径方向内側のカーカス補強材を含む。
航空機タイヤのカーカス補強材は、一般に、2本のビード間に延びており且つ第1群および第2群に分割された複数のカーカス層を含む。
【0056】
第1群は、各ビード内で、タイヤの内側から外側に向って、ビードスレッドとして知られている円周方向補強要素の周りに巻き付けられて上返しを形成しているカーカス層からなり、上返しの末端は、一般に、上記ビードスレッドの半径方向最外点に対して半径方向外側である。上返しは、上記カーカスの半径方向最内側点とその末端との間の上記カーカス層部分である。第1群のカーカス層は、側壁内において、タイヤの内部空洞に対して最も近い、従って、軸方向に最も内部のカーカス層である。
【0057】
第2群は、各ビード内で、外側からタイヤの内側に向って、層末端が、一般に、ビードスレッドの半径方向最外点に対して半径方向内部である所まで延びているカーカス層からなる。第2群のカーカス層は、側壁内において、タイヤの外表面に対して最も近い、従って、軸方向に最も外部のカーカス層である。
【0058】
通常、第2群のカーカス層は、層の全長に亘って、第1群のカーカス層の外側に配置する、即ち、第2群のカーカス層は、特に、第1群のカーカス層の上返しを覆っている。第1および第2群の各カーカス層は、互いに平行であって、円周方向と80°と100°の間の角度をなす補強用要素からなっている。
本発明によれば、上記タイヤは、2〜12本、好ましくは5〜10本の範囲の本数のカーカス層を含み得る。
【0059】
上記カーカス層の補強用要素は、一般に、好ましくは脂肪族ポリアミドまたは芳香族ポリアミド製の、伸長中のその機械的性質に特徴を有する紡糸繊維フィラメントからなるコードである。これらの補強用要素は、400mmの初期長に亘って200mm/分の公称速度での引張を受ける。
【0060】
使用に当っては、航空機タイヤは、高度の、典型的には30%よりも高い(例えば32%または35%よりも高い曲げを誘発する荷重と圧力の組合せを受ける。タイヤの曲げの度合は、定義によれば、タイヤが、例えばTyre and Rim Association即ちTRAの規格によって定義されているような圧力および荷重条件下に、未荷重膨張状態から静的に荷重した膨張状態に変化したときの、タイヤの半径方向の変形または半径方向高さの変化である。上記度合は、タイヤの半径方向高さの変化と、参照圧まで膨張させた未荷重状態での静的条件下に測定したタイヤの外径とリムフランジ上で測定したリムの最高直径と間の差の半分との比によって定義されている。TRA規格は、特に、タイヤ押しつぶし半径による、即ち、タイヤの車輪軸とタイヤが参照圧力および荷重条件下に接触している地面との間の距離による航空機タイヤの押しつぶしを定義している。
【0061】
航空機タイヤは、さらにまた、典型的には9バールよりも高い高膨張圧も受けている。この高圧レベルは、カーカス補強材としての多数のカーカス層を割り振ってこの圧力レベルに対するタイヤ抵抗性を高安全係数でもって確保することを暗示している。例えば、操作圧力が、TRA規格によって推奨されているように、15バールに等しいタイヤのカーカス補強材は、60バールに等しい圧力に抵抗して4に等しい安全係数を想定するように割り振らなければならない。従って、本発明によれば、上記タイヤは、9バールよりも高い、好ましくは9〜20パールの膨張圧を有し得る。
【0062】
本発明に従う航空機タイヤは、任意のタイプの航空機において使用し得る。これらのタイヤは、大型タイヤを使用する航空機において特に有利である。何故ならば、航空機タイヤのサイズが大きいほど、タイヤの摩耗全体に亘って着陸時の摩耗衝撃は大きいからである。従って、本発明によれば、上記タイヤは、45.72cm (18インチ)以上、好ましくは50.8〜58.42cm (20〜23インチ)のサイズを有し得る。
【0063】
使用に当っては、走行機械的応力は、リムフランジの周りに巻付くタイヤのビード内での曲げサイクルを含む。これらの曲げサイクルは、特に、リム上の曲げ領域に位置するカーカス層の1部において、カーカス層の補強用要素の伸びの変化を伴った曲率の変化を発生させる。特に軸方向最外のカーカス層におけるこれらの伸びの変化または変形は、圧縮内に置かれるのに相当する負の最小値を有し得る。この圧縮内での位置付けは、補強用要素の疲労欠陥、ひいてはタイヤの早期劣化を誘発し得る。
【0064】
そのように、本発明に従う航空機タイヤは、好ましくは、その使用中に、30よりも大きい曲げ度合を誘発する荷重と圧力の組合せを受けている航空機タイヤである。
【0065】
同様に、本発明に従う航空機タイヤは、好ましくは、上記トレッド以外に、2本のビード間に延びており、そして、第1および第2群に分割されている複数のカーカス層を含み、第1群は、各ビード内で、タイヤの内側から外側に向けて巻付けられているカーカス層からなり、そして、第2群は、各ビード内で、タイヤの外側から内側に向けて伸びているカーカス層からなる内部構造体を含む航空機タイヤである。
【0066】
ゴム組成物の製造
本発明の航空機タイヤトレッドにおいて使用する組成物は、適切なミキサー内で、当業者にとって周知である2つの連続する製造段階、即ち、130℃と200℃の間、好ましくは145℃と185℃の間の最高温度までの高温において熱機械的に加工または混練する第1段階(“非生産”段階とも称する)、および、その後の、典型的には120℃よりも低い、例えば、60℃と100℃の間の低めの温度において機械的加工する第2段階(“生産”段階とも称する)を使用して製造し得、この仕上げ段階において、化学架橋剤、特に加硫系を混入する。
【0067】
本発明に従うタイヤのトレッドの組成物は、生状態(架橋または加硫前)または硬化状態(架橋または加硫後)のいずれかであり得、また、タイヤにおいて、特にタイヤトレッドにおいて使用することのできる半製品であり得る。
【0068】
本発明の上述の特徴、さらにまた、他の特徴は、例示によって示され、限定するものではない本発明の以下の幾つかの実施例の説明を読取ることでより良好に理解されるであろう。
【0069】
実施例
I. 使用する測定および試験法
I. 1.引張試験
これらの試験は、弾性率および破壊点特性の測定を可能にし、タイプ−2ダンベル試験標本での2005年12月の規格 NF ISO 37に基づく。そのようにして60℃において測定した破断点伸びは、伸びの%として表す。
【0070】
I. 2. 重量損失
この試験は、航空機タイヤトレッド組成物のサンプルの、このサンプルを高速摩耗試験機での摩耗試験に供したときの重量損失の測定を可能にする。
【0071】
上記高速摩耗試験は、1,995年8月に公表されたS.K.Clarkによる論文 "Touchdown dynamics", Precision Measurement Company, Ann Arbor, MI, NASA, 35 Langley Research Center, Computational Modeling of Tires, pages 9−19に記載されている原理に従い実施する。トレッド材料は、Norton Vulcan A30S−BF42ディスクのような表面上ですり減る。接触中の線速度は、15〜20バールの平均接触圧によって70m/秒である。接触表面の10〜20 MJ/m
2のエネルギーを、試験中の遊隙(play)内にもたらす。
【0072】
S.K.Clarkによる上記論文に従う定エネルギー摩擦計量装置のコンポーネントは、モーター、クラッチ、回転プレートおよびサンプルホルダーである。
S.K.Clarkによる上記論文に従う定エネルギー摩擦計量装置のコンポーネント:
・小ホイール(溝付きプーリー上に取付けた試験材料製のトロイダルリング)、
・回転プレート、例えば、電気モーターおよびフライホイールの軸と一体になったノートン(Norton)ディスクからなる。
【0073】
性能を、下記の式に従う重量損失に基づき評価する:
[重量損失性能 = 重量損失対照/重量損失サンプル]
結果を基本点100で表す。100よりも高いサンプルの性能を対照よりも良好とみなす。
【0074】
I. 3. 動的特性(硬化後)
動的特性G*およびtan(δ)maxは、規格ASTM D 5992‐96に従って、粘度アナライザー(Metravib VA4000)において測定する。規格ASTM‐D‐1349‐99に従い、10Hzの周波数において、単純な交互正弦波剪断応力に60℃で供した加硫組成物のサンプル(4mmの厚さおよび400mm
2の断面積を有する円筒状試験標本)の応答を記録する。頂点間歪み振幅掃引を、0.1%から50%まで(前向きサイクル)、次いで、50%から0.1%まで(戻りサイクル)において実施する。使用する結果は、複素動的剪断モジュラス(G*)および損失係数tan(δ)である。観察されたtan(δ)の最高値(tan(δ)max)および0.1%および50%歪みにおける値間の複素モジュラスの差異(G*) (パイネ効果)は、戻りサイクルにおいて示される。60℃におけるtan(δ)max値における値が低いほど、上記組成物のヒステリシスは低く、ひいては、加熱も低い。
【0075】
II. 組成物の調製および硬化状態における組成物の性質
配合を表1および2においてphrで示している組成物I1〜I5、C1、C2およびC3を下記の通り調製した。
【0076】
ジエンエラストマー、補強用充填剤、さらにまた、加硫系を除いた各種他の成分を、初期容器温度がおよそ80℃である密閉ミキサー内に連続して導入する(最終充填度:およそ70容量%)。その後、熱機械的加工(非生産段階)を全体で約3〜4分間持続する1段階において、165℃の最高“落下”温度に達するまで実施する。そのようにして得られた混合物を回収し、冷却し、次いで、イオウおよびスルファミドタイプの促進剤をミキサー(ホモフィニッシャー)において70℃にて混入し、全てを適切な時間(例えば、約10分)混合する(生産段階)。
【0077】
その後、そのようにして得られた組成物を、それら組成物を物理的または機械的性質の測定のためのゴムのプラーグ(2〜3mm厚)または薄シートの形にカレンダー加工するか、或いは航空機タイヤトレッドの形に押出加工する。
【実施例1】
【0078】
実施例1
この実施例の目的は、航空機タイヤトレッド組成物中のスズ官能化SBRの取込み内容物の耐摩耗性と機械的および熱的性質の維持との間の性能妥協点に対する影響を証明することである。
【0079】
C1、C2およびC3は対照組成物である。C1は、当業者が通常使用する航空機トレッドの組成物に相当する;C1は、唯一のエラストマーとしての天然ゴムをベースとする。C2は、天然ゴムをスズ官能化SBRで置換えているトレッド組成物に相当する。C3は、天然ゴムの半分をポリブタジエンで置換えているトレッド組成物に相当する。
【0080】
試験物I1〜I3は、本発明に従っている。組成物I1〜I3は、天然ゴムとスズ官能化SBRのそれぞれの含有量において異なる。
【0081】
重量損失および60℃での破断点伸びについての性能結果はパーセントとして示す、基本点100は通常のトレッド組成物に相当する対照組成物C1に対する。
【0082】
表 1
(1) 天然ゴム
(2) スズ官能化溶液SBR;24%の1,2−ポリブタジエン単位、15.5%のスチレン単位を含む、Tg = −65°C
(3) ネオジム(Neodymium)ポリブタジエン、98%の1,4−シス−、Tg = −108℃
(4) 規格 ASTM D−1765に従うN234級のカーボンブラック
(5) N−(1,3−ジメチルブチル)−N−フェニル−パラ−フェニレンジアミン、Flexsys社からのSantoflex 6−PPD
(6) Umicore社からの工業級酸化亜鉛
(7) N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、Flexsys社からのSantocure CBS。
【0083】
上記表1に示す結果は、組成物I1〜I3の着陸段階におけるより良好な耐摩耗性を代表する重量損失性能が対照に対して常に有意に改良されていることを証明している。
【0084】
さらにまた、これらの組成物I1〜I3は、機械的性質に対して許容し得るレベルを残している対照C1 (航空機タイヤトレッドを製造するために当業者が通常使用する航空機トレッド組成物)に対して20%低い60℃での破断点伸びを示している。C1に対する20%低下を越えると、その機械的性質は航空機タイヤにおいて使用するトレッド組成物にとってもはや十分とは考えられないとみなし得る。
【0085】
また、上記の結果は、60℃におけるtan(δ)maxによって示される組成物の熱安定性が対照C1に対して実際にさらに改良されて維持されていることを証明している。
【0086】
組成物C2における結果が証明しているように、組成物における天然ゴムの不存在は機械的性質の強い落込みをもたらしている。さらに、天然ゴムの半分をポリブタジエンによって置換えているトレッド組成物に相当する組成物C3は耐摩耗性を有意に改良することを可能にしていない。
【0087】
従って、本発明に従う組成物のみ、航空機の着陸段階においてより良好な耐摩耗性を可能にする利点を有すると共に、上記組成物の熱的性質を維持し、実際には改良さえし且つ機械的性質を許容し得るレベルに保っている。上記組成物における45〜75phrのスズ官能化SBRの使用は耐摩耗性と熱的および機械的性質の維持との間でより良好な性能妥協点をもたらしていることが観察されている。
【実施例2】
【0088】
実施例2
この実施例の目的は、スズ官能化SBR以外の他のジエンエラストマーの混入の耐摩耗性と熱的および機械的性質の維持との間でより良好な性能妥協点に対する影響を証明することである。
【0089】
I2は、実施例1の組成物I2に相当する。I2は、本発明の実施態様であり、スズ官能化SBRのみがジエンエラストマーに以外に存在する。
【0090】
また、試験I4およびI5も本発明に従う。組成物I4およびI5は、下記の表2に示すように、天然と異なる更なる合成エラストマーを含む。
【0091】
重量損失および60℃での破断点伸びについての性能結果はパーセントとして示す、基本点100は実施例1の対照組成物C1に対する。
【0092】
表 2
(1) 天然ゴム
(2) スズ官能化溶液SBR;24%の1,2−ポリブタジエン単位、15.5%のスチレン単位を含む、Tg = −65°C
(3) スズ官能化溶液SBR;24%の1,2−ポリブタジエン単位、26.5%のスチレン単位を含む、Tg = −48°C
(4) ネオジム(Neodymium)ポリブタジエン、98%の1,4−シス−、Tg = −108℃
(5) Ube社からのVCR412 Ubepol、複合ポリブタジエン:シス−1,4−ポリブタジエンマトリックス中の12%シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン
(6) 規格 ASTM D−1765に従うN234級のカーボンブラック
(7) N−(1,3−ジメチルブチル)−N−フェニル−パラ−フェニレンジアミン、Flexsys社からのSantoflex 6−PPD
(8) Umicore社からの工業級酸化亜鉛
(9) N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、Flexsys社からのSantocure CBS。
【0093】
上記表2に示す結果は、組成物I4およびI5の着陸段階におけるより良好な耐摩耗性を代表する重量損失性能が対照C1に対して常に有意に改良され、さらに、本発明に従う組成物I2と匹敵するか、実際には優れてさえいることを証明している。
【0094】
さらにまた、これらの組成物は、対照C1に対して、20%よりも大幅に小さい低下の60℃の破断点伸び、実際にはC1よりさらに高い60℃における破断点伸びさえ示し、また、組成物の熱安定性も対照C1に対して維持されている。これらの結果は、本発明に従う組成物I2と匹敵しており、実際には優れてさえいる。
従って、本発明に従う組成物は、これらの組成物が上記イソプレンエラストマーおよびスズ官能化SBR以外の他のジエンエラストマーを含むまたは含まないのいずれであれ、航空機の着陸段階においてより良好な耐摩耗性をもたらすと共に組成物の熱的性質を維持し、実際には改良さえし、さらに、良好な機械的性質を保持しているという利点を有する。