(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886465
(24)【登録日】2021年5月18日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】冶金容器の吐出口上の摺動閉鎖部
(51)【国際特許分類】
B22D 41/22 20060101AFI20210603BHJP
B22D 11/10 20060101ALI20210603BHJP
B22D 21/00 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
B22D41/22
B22D11/10 340Z
B22D21/00 B
【請求項の数】13
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-526679(P2018-526679)
(86)(22)【出願日】2016年11月29日
(65)【公表番号】特表2018-536541(P2018-536541A)
(43)【公表日】2018年12月13日
(86)【国際出願番号】EP2016079100
(87)【国際公開番号】WO2017093236
(87)【国際公開日】20170608
【審査請求日】2019年11月6日
(31)【優先権主張番号】15197202.3
(32)【優先日】2015年12月1日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】314016535
【氏名又は名称】リフラクトリー・インテレクチュアル・プロパティー・ゲーエムベーハー・ウント・コンパニ・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ヴコヴィッチ,ゴラン
(72)【発明者】
【氏名】ガンヴェガー,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ジバノビッチ,ボージャン
【審査官】
米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−030468(JP,A)
【文献】
特表2001−502607(JP,A)
【文献】
特開平02−030369(JP,A)
【文献】
特表2012−502247(JP,A)
【文献】
特表2011−506102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 33/00〜47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(9)を備える冶金容器の吐出口上の摺動閉鎖部ユニットであって、前記ハウジング(9)内には耐火閉鎖部板(6、8)および少なくとも1つの接続する耐火内部ケーシング(13)が配置され、
少なくとも1つの誘導コイル(15)が埋め込まれた支持体(17)と内部に冷却剤が充填される中空のケーシング部材からなる冷却室(18、19)とを備える誘導加熱炉(14)が、前記支持体(17)が前記冷却室(18、19)とともに前記吐出口(5)へ分離可能に装着されることで取り外し可能に構成されており、
前記誘導コイル(15)は、少なくとも部分的に、前記ハウジング(9)の外部および/または内部にある前記少なくとも1つの耐火内部ケーシング(13)を囲むことで前記吐出口(5)を囲み、
前記冷却室(18、19)は、前記吐出口の中心軸の周りに形成される前記支持体(17)の壁面を囲む冷却室(18)と前記冶金容器の内部に向くように形成される前記支持体の壁面に隣接する冷却室(19)とを含むことを特徴とする、摺動閉鎖部ユニット。
【請求項2】
前記冶金容器は、銅陽極炉(1)であることを特徴とする、請求項1に記載の摺動閉鎖部ユニット。
【請求項3】
前記誘導コイル(15)は、フェライト材料からなる前記支持体(17)に埋め込まれることを特徴とする、請求項2に記載の摺動閉鎖部ユニット。
【請求項4】
前記支持体(17)は、前記支持体(17)を囲む前記冷却室(18、19)と共に、分離可能に支持板(23)に装着され、前記支持板(23)は前記吐出口(5)に留められ、スペーサリング(24)は前記支持体(17)に対して支持され、前記支持体(17)は前記支持板と摺動閉鎖部(6)との間に挿入されることを特徴とする、請求項3に記載の摺動閉鎖部ユニット。
【請求項5】
前記誘導加熱炉(14)の前記誘導コイル(15)および前記冷却室(18、19)には冷却システム(16)によって前記冷却剤が供給され、前記冷却システム(16)は冷却ユニット(29)を前記冶金容器の周囲に有することを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1つに記載の摺動閉鎖部ユニット。
【請求項6】
前記吐出口の溶融物および/またはスラグの固化は、前記誘導コイルの前記冷却システム(16)によって実現可能であることを特徴とする、請求項5に記載の摺動閉鎖部ユニット。
【請求項7】
前記冷却ユニット(29)を備える前記冷却システム(16)はまた、発電器(27)および変圧器(28)を提供し、冷却剤を備える前記誘導コイル(15)に電源を提供することを特徴とする、請求項5または6に記載の摺動閉鎖部ユニット。
【請求項8】
冶金容器上の吐出口への着脱が可能な誘導加熱炉であって、
前記吐出口の前記少なくとも1つの耐火内部ケーシング(13)を少なくとも部分的に囲む少なくとも1つの誘導コイル(15)と、この誘導コイル(15)が埋め込まれた支持体(17)と、内部に冷却剤が充填される中空のケーシング部材として構成される冷却室(18、19)とを備え、
前記冷却室(18、19)は、前記吐出口の中心軸の周りに形成される前記支持体(17)の壁面を囲む冷却室(18)と前記冶金容器の内部に向くように形成される前記支持体の壁面に隣接する冷却室(19)とからなり、
前記支持体(17)は、前記冷却室(18、19)とともに前記吐出口(5)へ分離可能に装着される、誘導加熱炉。
【請求項9】
請求項1または7の1または複数に記載の摺動閉鎖部ユニットを有する冶金容器の吐出口であって、耐火炉内張りに配置される有孔のレンガを有し、
前記有孔のレンガ(11)は、前記吐出口の流出チャネル(12)を形成する耐火内部ケーシング(13)に接続され、前記内部ケーシングは、環状の耐火挿入部(30)を備える前記誘導コイル(15)の領域に提供され、前記環状の耐火挿入部(30)は加熱効果を増強する材料からなり、適切な電気および熱的性質を有することを特徴とする、吐出口。
【請求項10】
前記挿入部(30)はグラファイトまたはグラファイトを含有する材料から製造され、または少なくとも部分的に炭化ケイ素(SiC)または被膜グラファイトから製造されることを特徴とする、請求項9に記載の吐出口。
【請求項11】
前記内部ケーシング(13)は、前記環状の挿入部(30)の領域に硬層(31)と共に提供され、前記硬層(31)は、粘土またはSiCからなる前記挿入部の内面を保護することを特徴とする、請求項9または10に記載の吐出口。
【請求項12】
前記硬層(31)は前記環状の挿入部(30)を超えて延在することを特徴とする、請求項11に記載の吐出口。
【請求項13】
前記挿入部(30)を備える前記少なくとも1つの内部ケーシング(13)は、前記有孔のレンガ(11)に外側から挿入可能であることを特徴とする、請求項9〜12のいずれか1つに記載の吐出口。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文による冶金容器の吐出口上の摺動閉鎖部に関する。
【背景技術】
【0002】
この種類の摺動閉鎖部は、たとえば銅陽極炉に関する特許文献1に開示されている。溶融銅は銅陽極炉内で乾式精錬によって精製されて、陽極銅を形成し、次に銅が陽極形式で注湯される。銅の流速は、吐出口端部に配置される摺動閉鎖部によって、流出量を制御することにより規制される。このように、炉ドラムをさらに回転することなく、鋳造プロセスを実施することができる。ただし、この種類の炉では、摺動閉鎖部が閉鎖しているとき、または大幅に制限されているとき、また開口しているときも、吐出チャネル内の溶融物が凍結することもあり、注湯機能が影響を受け、システムの稼働が妨害されるという不利点がある。
【0003】
ある種の冶金炉を使用すると、注湯が行われる前の操作中に、炉内に詰まった溶融物を含有する塊によって吐出口の流出チャネルは閉鎖され続ける。その結果として、この詰まった塊を流出チャネルから取り出さねばならず、流出チャネル内で凍結していた溶融物および/またはスラグはランスで溶融しなければならない。この結果として、一般に、吐出口を形成する耐火材料の摩耗が無制御かつ迅速に起きる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第2318559号
【発明の概要】
【0005】
本発明の根底をなす目的は、上記の不利点を排除することであり、全注湯プロセス中に容器が完全に機能することを保証する、冒頭に記載した冶金容器のための摺動閉鎖部を考案することである。
【0006】
本発明によれば、本目的は、少なくとも1つの誘導コイルを有する取り外し可能な誘導加熱炉を提供することによって実現される。少なくとも1つの誘導コイルは、少なくとも部分的に、ハウジング外部および/または内部の少なくとも1つの耐火内部ケーシングを囲む。
【0007】
このようにして、溶融物の注湯前および/または注湯中に、溶融物を常に暖かいまま維持して、吐出口の流出チャネルに位置する溶融物が凍結しないように、または凍結した金属および/またはスラグが吐出口内で溶融できるようにする。
【0008】
したがって、流出チャネル内に凍結した溶融物および/またはスラグは、摺動閉鎖部が閉鎖されている場合は、注湯前に誘導コイルによってすでに溶融されている。このように全鋳造プロセスをより安全に実施することができ、制御または監視もしやすくなり、さらに、吐出口の耐火材料の寿命が長くなる。このように、詰まった塊の使用およびその除去をなくすことができ、または従来のランスで凍結した溶融物またはスラグを溶融する手間を省くことができる。
【0009】
また、本発明によって、誘導加熱炉は吐出口を囲む誘導コイルと、吐出口を含む冷却システムから構成される。これによって、摺動閉鎖部は操作中に過熱されながら、誘導コイルが炉の内張りまたは外部被覆を通じて加熱されることを防ぐ。
【0010】
誘導コイルの熱出力をなるべく損失せずに吐出チャネルに集中させるために、本発明によって、誘導コイルは、フェライト材料からなる支持体に埋め込まれ、冷却システムは支持体周囲を囲む冷却室と、炉に向かう支持体の側壁に隣接する冷却室とを備える。
【0011】
誘導コイルの冷却システムはさらに有利点を提供する。つまり、目標とする炉の吐出口の溶融物またはスラグの固化は、摺動閉鎖部が閉鎖しているときに可能となる。これはまた、たとえば破裂に対する保護として機能し、2つの鋳造プロセス間に炉を安全に操作できることが保証される。これは、たとえば吐出口が操作中に槽の水面よりも低くなるときにある種の冶金炉では重要となりえる。
【0012】
本発明によると支持体はその周囲の冷却室と共に、鋼鉄製被覆に留められる支持板にはめ込まれる。たとえば銅材料からなるスペーサリングは、誘導コイルの支持体に対して支持され、支持板と摺動閉鎖部との間に挿入される。吐出口の摺動閉鎖部または耐火材料は、したがって、支持体と誘導コイルと、冷却室とからなるアセンブリに装着され、アセンブリから取り外し可能である。
【0013】
本発明によると、吐出口は、耐火炉内張りに配置される有孔のレンガと、有孔のレンガに接続し、吐出口の流出チャネルを形成する耐火材料からなる内部ケーシングとからなる。この内部ケーシングは、環状の挿入部を備える誘導コイルの領域に設けられる。環状の挿入部は適切な電気および熱的性質を有し、たとえばグラファイトまたはグラファイトを含有する材料などからなる。吐出口チャネルに位置する溶融物および/またはスラグに対する誘導コイルの加熱効果は、このように増加する。
【0014】
鋳造される溶融金属および/またはスラグによって、内部ケーシングは硬層を備える挿入部の領域に提供される。硬層は、たとえば、粘土材料またはSiCからなる挿入部の内面を保護する。したがって、流出する溶融物および/またはスラグおよび/またはたとえば空気などの酸化気体は、挿入部を攻撃しない。この保護効果はまた、挿入部を超えて硬層を延在させることによって、内部ケーシング全体に拡大されてもよい。
【0015】
以下、図面を参照し、代表的な実施形態を用いて本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明による摺動閉鎖部および銅陽極炉の吐出口の部分断面図または部分図である。
【
図2】
図1による摺動閉鎖部の誘導加熱炉の拡大概略断面図である。
【
図3】装置を備える本発明による銅陽極炉の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、冶金炉の吐出口5上の摺動閉鎖部10を示す。冶金炉は、好ましくは銅陽極炉1であり、外部鋼鉄被覆2と、耐火内張り3とを備える。内張り3内には、本吐出口5が径方向に外側に向かって形成され、排出口12を備える有孔のレンガ11を有する。
【0018】
銅陽極炉の代わりに、摺動閉鎖部または類似する閉鎖装置を有する別の容器も提供されえる。たとえば、位置合わせされた、有孔のレンガを持たない複数のケーシングから形成され、流出液を有する転換炉、自溶製錬炉、電器溶融炉または類似する冶金容器であってもよい。
【0019】
詳細すべてを図示しないが、摺動閉鎖部10は従来の方法で設計される。具体的には、摺動閉鎖部10は炉の外側に留められたハウジング9を備える。ハウジング内には少なくとも1つの耐火閉鎖部板6が挿入され、耐火閉鎖部板6上に隣接する内部ケーシング13は分離可能に留められる。この摺動閉鎖部10は移動可能な耐火摺動板8をさらに有する。移動可能な耐火摺動板8は、前述のようにユニット(詳細は記載しない)内に維持され、上部閉鎖部板6に対して押圧され、上部閉鎖部板6に対して、摺動閉鎖部の開放または閉鎖位置まで移動可能である。
【0020】
本発明によると、取り外し可能な誘導加熱炉14は吐出口5上に配置され、ハウジング9上の内部ケーシング13を囲む誘導コイル15を有する。有利には、ハウジング9には、支持リング23が割り当てられる。支持リング23は炉1の鋼鉄製被覆2に留められた保持板2’に固定される。
【0021】
吐出口の流出チャネル12における誘導コイル15の加熱効果を最適化するために、好ましくはグラファイトまたはグラファイトを含有する材料からなる環状の挿入部30が、誘導コイル15の領域内の内部ケーシング13に設けられる。有利には、挿入部30は絶縁層を裏側および/または両正面側に備える。
【0022】
注湯される溶融金属および/またはスラグによっては、内部ケーシング13が、好ましくは粘土アルミナ(Al
2O
3)または炭化ケイ素(SiC)からなる硬層31を挿入部30の領域に備えていると有利である。この硬層によって、挿入部の内面は、溶融物および/またはスラグの流出ならびに/または酸化気体、たとえば空気などに対して保護される。硬層31は状況に応じて、環状の挿入部30を超えて延在してもよい。適合性を高めるために、内部ケーシング13はハウジング9およびスペーサリング24内で中心に配置され、有孔のレンガ11に外側から挿入される。
【0023】
代替的に、環状の挿入部30は、硬層をその内側に設けずに少なくとも部分的にSiCから形成されえる。または環状の挿入部30は被膜グラファイトから形成されえる。
【0024】
図2から分かるように、誘導コイル15は、フェライト材料からなる支持体17に埋め込まれる。支持体17はその周囲の冷却室18、19と共に支持板23にはめ込まれる。さらに、誘導加熱炉14は有利には、後壁および側壁で絶縁層に囲まれる。さらに、好ましくは銅材料からなるスペーサリング24は、本支持体17と摺動閉鎖部10との間に挿入される。本スペーサリング24によって、同様に、内部ケーシング13は吐出口5の中央に配置される。ただし、2つの個別のリングも備えられえる。少なくとも1つの線26を受容するための、溝などを備える長手方向に延びる線は、支持板23と、保持板2’とハウジング9との間に設けられる。少なくとも1つの線26は、誘導コイル15用の電源線および冷却線などである。
【0025】
ハウジング9は、支持板23または保持板2’に留められ、支持体17と、誘導コイル15と、冷却室18、19とを備える誘導加熱炉14の内部ケーシング13に装着され、そこから取り外し可能である。
【0026】
図3は、吐出口に装着される摺動閉鎖部10を備える銅陽極炉1を例示する。摺動閉鎖部は、鋼鉄製被覆2と、充填口4とを有する炉ドラムを備える。特別な処理によって炉で精錬された銅溶融物は、次に炉ドラムの周囲の吐出口上に装着される摺動閉鎖部10を通じて注出される。
【0027】
銅陽極炉1では、外部発電器27と、外部発電器27に線25によって接続される変圧器28とが、誘導加熱炉14の操作のために、好ましくは吐出口に備えられる。変圧器はたとえば、炉1に取り付けられる。さらに、変圧器28から誘導コイル15まで伸びる電源線26および冷却線が設けられる。発電器および変圧器はまた、1つのユニットとして形成されて炉に取り付けられてもよく、または炉とは別に配置されてもよい。
【0028】
冷却ユニット29と、給電線および戻り線20、21と有する冷却システム16によって、一方では、冷却剤は誘導加熱炉14の誘導コイル15および冷却室18、19に送達され、他方では、十分な冷却能力を有する発電器27および変圧器28に送達される。
【0029】
本発明は基本的にすべての冶金炉で使用することができ、その吐出口は、吐出口の端部上に配置される摺動閉鎖部を備える。
【0030】
本発明による誘導加熱炉14は、摺動閉鎖部の装置の起動と協働して手動または自動いずれかで起動される。炉の種類および構造によって、吐出口の長さにわたって配置される多くの誘導コイルが含まれていてもよい。