(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
低圧ポンプから供給される低圧燃料を高圧ポンプにより加圧して内燃機関へ高圧燃料を供給する燃料供給系において、前記低圧燃料が流通する低圧配管に接続されるコネクタであって、
筒状に形成され、内周面に環状弁座を有するコネクタ本体と、
前記コネクタ本体の内部に収容され、前記コネクタ本体の流路方向に往復移動可能に配置された弁体と、
を備え、
前記弁体は、
外周面に形成され、前記高圧燃料が逆流しない場合には前記低圧燃料の圧力によって前記コネクタ本体の前記環状弁座から軸方向に離間して前記コネクタ本体の前記環状弁座との間に順方向流路を形成し、前記高圧燃料が逆流する場合には前記コネクタ本体の前記環状弁座に当接可能な弁座当接面と、
前記弁座当接面よりも径方向内方に形成され、前記順方向流路よりも流路断面積が小さなオリフィス流路を形成し、前記高圧燃料が逆流する場合に前記高圧燃料の逆流を許容するテーパ状貫通孔と、
を備える、コネクタ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(1.燃料供給系1の構成)
燃料供給系1の構成について、
図1を参照して説明する。
図1に示すように、燃料供給系1は、燃料タンク11から内燃機関20へ供給する系である。特に、燃料供給系1においては、低圧ポンプ12から供給される低圧燃料が高圧ポンプ16により加圧され、加圧された高圧燃料が内燃機関20へ供給される。燃料供給系1は、燃料タンク11、低圧ポンプ12、プレッシャレギュレータ13、第一低圧配管14、コネクタ15、高圧ポンプ16、高圧配管17、コモンレール18、インジェクタ19、内燃機関20を備える。
【0016】
低圧ポンプ12は、燃料タンク11の内部に配置され、低圧ポンプ12の吐出側には、例えば樹脂製の第一低圧配管14の第一端が接続されている。つまり、低圧ポンプ12は、燃料タンク11に貯留されている燃料を第一低圧配管14側に圧送する。プレッシャレギュレータ13は、燃料タンク11内において、第一低圧配管14における低圧ポンプ12側に配置されている。プレッシャレギュレータ13によって、第一低圧配管14を流通する低圧燃料が一定の圧力に調圧される。
【0017】
第一低圧配管14の第二端(低圧ポンプ12とは反対側)は、コネクタ15の第一端(後述する第一筒部31)に接続されている。コネクタ15の第二端(後述する第二筒部32)は、高圧ポンプ16に一体に設けられている第二低圧配管16aに接続されている。つまり、コネクタ15は、低圧燃料が流通する2つの低圧配管(第一低圧配管14および第二低圧配管16a)を連結する。詳細には、コネクタ15は、第一低圧配管14と第二低圧配管16aとを接続すると共に、第一低圧配管14および第二低圧配管16aと共に低圧燃料を供給する流路を構成する。
【0018】
高圧ポンプ16は、低圧ポンプ12およびプレッシャレギュレータ13から供給される一定圧の低圧燃料を、第一低圧配管14、コネクタ15および第二低圧配管16aを介して導入する。高圧ポンプ16は、導入した低圧燃料を加圧し、加圧した高圧燃料を吐出する。
【0019】
高圧ポンプ16は、例えば、上述した第二低圧配管16aと、第二低圧配管16aに接続されたポンプ本体16bと、ポンプ本体16b内に往復移動可能に設けられたプランジャ16cとを備える。従って、ポンプ本体16bに導入された低圧燃料が、プランジャ16cの往復動によって加圧される。ただし、高圧ポンプ16は、プランジャ16cに限られず、燃料を加圧することができれば、種々の構成を採用できる。
【0020】
また、高圧ポンプ16は、例えば、内燃機関20の動作に連動する機構である場合がある。この場合、内燃機関20が動作している最中は、高圧ポンプ16は、高圧燃料を吐出するか否かに関わりなく動作し続けることになる。例えば、高圧ポンプ16がプランジャ16cを有する構成である場合において、プランジャ16cが、内燃機関20を構成するクランクシャフトと連動するカムによって往復動する構成が存在する。この場合、プランジャ16cは、クランクシャフトが動作している間、継続して往復動することになる。
【0021】
高圧ポンプ16によって加圧された高圧燃料は、高圧配管17を介してコモンレール18に供給される。コモンレール18には、内燃機関20の気筒数に対応するインジェクタ19が設けられており、インジェクタ19は、内燃機関20に装着されている。従って、高圧燃料は、コモンレール18およびインジェクタ19を介して内燃機関20に噴射される。
【0022】
(2.燃料供給系1の動作)
燃料供給系1の動作について、
図1を参照して説明する。内燃機関20に高圧燃料の供給が必要な場合には、低圧ポンプ12および高圧ポンプ16が動作する。すなわち、低圧ポンプ12が動作して第一低圧配管14、コネクタ15および第二低圧配管16aには低圧燃料が順方向(低圧ポンプ12から高圧ポンプ16に向かう方向)に流通し、当該低圧燃料が高圧ポンプ16にて加圧される。そして、高圧ポンプ16で加圧された高圧燃料が、高圧配管17、コモンレール18およびインジェクタ19を介して、内燃機関20に供給される。
【0023】
一方、内燃機関20の動作中において、内燃機関20に高圧燃料の供給が不要の場合がある。この場合には、インジェクタ19から内燃機関20に高圧燃料が供給されないようにされている。しかし、内燃機関20が動作中であるため、内燃機関20を構成するクランクシャフトは動作し続けている。
【0024】
そして、高圧ポンプ16のプランジャ16cは、内燃機関20を構成するクランクシャフトと連動するカムによって動作する。そのため、内燃機関20に高圧燃料の供給が不要の場合であっても、クランクシャフトが動作している間は、高圧ポンプ16のプランジャ16cも動作し続ける。
【0025】
このとき、低圧ポンプ12が動作し続けていると、低圧燃料が第一低圧配管14、コネクタ15および第二低圧配管16aを介して高圧ポンプ16に供給され続ける。高圧ポンプ16では、低圧燃料を加圧するが、加圧した高圧燃料を内燃機関20側へ供給することはできない。そのため、高圧ポンプ16によって加圧された高圧燃料が第二低圧配管16a、コネクタ15および第一低圧配管14へ逆流する現象が、発生することがある。
【0026】
高圧燃料の逆流によって、第一低圧配管14に脈動が発生することがある。第一低圧配管14における脈動に起因して第一低圧配管14が振動すると、異音等が発生するおそれがある。ただし、以下に説明するように、コネクタ15は、第一低圧配管14における脈動を低減する機能を有する。そのため、第一低圧配管14における脈動が低減し、異音等の発生が抑制される。
【0027】
(3.コネクタ15の構成)
コネクタ15の構成について、
図2および
図3を参照して説明する。コネクタ15は、
図2に示すように、第一低圧配管14と第二低圧配管16aとを接続し、第一低圧配管14と第二低圧配管16aとの間で燃料を流通させる。コネクタ15の第一端側には、第一低圧配管14の端部が外挿され、コネクタ15の第二端側には、第二低圧配管16aの端部が挿入される。
【0028】
ここで、第一低圧配管14は、例えば樹脂により形成され、且つ、薄肉筒状に形成されている。従って、第一低圧配管14は、コネクタ15に比べて拡径変形可能に形成されている。また、第二低圧配管16aは、例えば金属または硬質樹脂により形成され、且つ、筒状に形成されている。第二低圧配管16aの端部は、先端から軸方向に距離を隔てた位置に径方向外方に突出形成された環状フランジ16a1(ビードとも称する)と、環状フランジ16a1より先端側の小径部位である先端部16a2とを備える。
【0029】
コネクタ15は、以下において、クイックコネクタタイプを例に挙げて説明するが、クイックコネクタタイプに限られず、配管同士を連結することができればよい。また、コネクタ15は、クイックコネクタタイプにおいて、以下に例示する構成に限られず、種々のクイックコネクタタイプを適用することが可能である。
【0030】
コネクタ15は、例えば、コネクタ本体30と、リテーナ40と、シールユニット50と、弁体60、付勢部材70、固定用ブッシュ80とを備える。コネクタ本体30は、両端に第一開口31aおよび第二開口32aを有する筒状に形成されている。そして、コネクタ本体30は、第一低圧配管14に接続される第一開口31aと第二低圧配管16aに接続される第二開口32aとの間で、燃料を流通させる。換言すると、コネクタ本体30は、第一開口31aと第二開口32aとの間で燃料を流通するための部材である。
【0031】
本例においては、コネクタ本体30は、直線状の筒状に形成されている。ただし、コネクタ本体30は、直線状に限られることなく、L字筒状等のように、屈曲部(図示せず)を有する筒状に形成されるようにしてもよい。また、コネクタ本体30は、硬質樹脂により一体成形されており、一つの部材により構成されている。例えば、コネクタ本体30は、射出成形により一体成形されている。コネクタ本体30は、例えばガラス繊維強化ポリアミド製である。なお、コネクタ本体30は、複数の部材を一体化させることにより形成するようにしてもよい。
【0032】
コネクタ本体30は、流路方向に区分した場合、第一筒部31、第二筒部32、および、第三筒部33を備える。流体の順方向において、第一筒部31、第三筒部33、第二筒部32の順に接続されている。
【0033】
第一筒部31は、第一低圧配管14に接続される部位である。第一筒部31は、第一開口31aを備える部分であって、直線筒状に形成されている。第一開口31aは、第一低圧配管14の端部が外装される側の開口である。第一筒部31は、第一低圧配管14の端部を第一筒部31の第一開口31a側の外周側に嵌装した状態において、流路方向において第一低圧配管14と重なる範囲である。つまり、第一筒部31の外周面は、全長において、第一低圧配管14の内周面と径方向において対向する。
【0034】
第一筒部31の内周面は、例えば円筒状に形成されている。そして、第一筒部31の内周面は、燃料が直接接触する面を構成する。一方、第一筒部31の外周面は、第一低圧配管14を外装した状態で抜けないようにするために、流路方向断面において凹凸状に形成されている。なお、第一筒部31の外周面に環状シール部材を配置して、第一筒部31の外周面と第一低圧配管14の内周面との間でシール性能を有するようにされている。
【0035】
ここで、第一筒部31は、第一低圧配管14より変形しにくい材料により形成されている。従って、第一筒部31に第一低圧配管14が外装された状態において、第一筒部31は、ほとんど変形せず、第一低圧配管14が拡径する。つまり、第一低圧配管14が、第一筒部31の外周面の凹凸に倣って変形する。
【0036】
第二筒部32は、第二低圧配管16aに接続される部位であると共に、リテーナ40およびシールユニット50が配置される部位である。第二筒部32は、第二開口32aを備える部分であって、直線筒状に形成されている。第二開口32aは、第二低圧配管16aの先端部16a2および環状フランジ16a1が挿入される側の開口である。第二筒部32は、第二低圧配管16aが挿入された状態において、流路方向において第二低圧配管16aと重なる範囲である。
【0037】
第二筒部32は、第二開口32a側にリテーナ配置部32bを備える。リテーナ配置部32bは、径方向に貫通する孔を有し、リテーナ40を配置する部位である。リテーナ40に対して、径方向に係止可能に構成されている。リテーナ配置部32bは、リテーナ40の構造に応じて適宜異なる形状に形成される。本例では、コネクタ本体30とリテーナ40とが別体に形成されているが、リテーナ40の機能がコネクタ本体30に一体的に設けられる構成とすることもできる。
【0038】
第二筒部32は、リテーナ配置部32bを基準として第二開口32aとは反対側に、シール部32cを備える。シール部32cの内周面は、例えば、円筒状に形成されている。シール部32cの内周側には、シールユニット50が配置される。ここで、第二筒部32の内周面の直径は、第一筒部31の内周面の直径はより大きい。例えば、第一筒部31の内周面の直径と第二低圧配管16aの内周面の直径とが同等となるように、第二筒部32の内周面の直径は、第二低圧配管16aの厚みおよびシールユニット50の厚みを考慮して決定されている。
【0039】
第三筒部33は、弁体60、付勢部材70および固定用ブッシュ80が配置される部位である。第三筒部33は、第一筒部31における第一開口31aとは反対側と、第二筒部32における第二開口32aとは反対側とを、流路方向において接続する。第三筒部33は、第一低圧配管14も第二低圧配管16aも存在しない範囲である。
【0040】
また、第三筒部33は、小径筒部33aと大径筒部33bと拡径部33cとを備える。小径筒部33aは、第一筒部31と同軸に接続される。従って、小径筒部33aは、第三筒部33において第一開口31a側に位置する。小径筒部33aの内周面の直径は、第一筒部31の内周面の直径と同等である。従って、小径筒部33aは、第三筒部33において小径流路を形成する。
【0041】
大径筒部33bは、第二筒部32と同軸に接続される。従って、大径筒部33bは、第三筒部33において第二開口32a側に位置する。大径筒部33bの内周面の直径は、第二筒部32における第二低圧配管16aの最先端(先端部16a2の開口を有する部分)が内挿される部位の内周面の直径とほぼ同等である。大径筒部33bは、第三筒部33において大径流路を形成する。また、本例においては、大径筒部33bと小径筒部33aとは、同軸状に位置する。また、大径筒部33bの内周面は、軸方向の中央付近または第二筒部32側において、環状溝および環状凸部を有する。
【0042】
拡径部33cは、小径筒部33aと大径筒部33bとを接続する。拡径部33cは、内周面に環状弁座33c1を有する。環状弁座33c1は、小径筒部33aの内周面と大径筒部33bの内周面とを接続するテーパ状に形成されている。環状弁座33c1は、小径筒部33aの内周面から大径筒部33bの内周面に向かって拡径している。環状弁座33c1は、弁体60に当接する部位である。
【0043】
リテーナ40は、例えばガラス繊維強化ポリアミド製である。リテーナ40は、コネクタ本体30のリテーナ配置部32bに保持される。リテーナ40は、コネクタ本体30と第二低圧配管16aとを連結するための部材である。なお、リテーナ40は、以下に説明する構成に限られず、種々の公知の構成を採用できる。
【0044】
リテーナ40は、作業者による押し込み操作および引き抜き操作によって、リテーナ配置部32bの径方向に移動可能である。第二低圧配管16aが第二筒部32の正規位置に挿入された場合に、リテーナ40が
図2に示す初期位置(
図2に示す位置)から確認位置(
図2の下方へ向かう位置、
図5に示す位置)へ移動可能となる。従って、作業者は、リテーナ40が押し込み操作できる場合には、第二低圧配管16aが第二筒部32の正規位置に挿入されたことを確認できる。
【0045】
さらに、リテーナ40が確認位置へ押し込み操作された状態において、リテーナ40は、第二低圧配管16aの環状フランジ16a1に配管引き抜き方向に係止して、リテーナ40は第二低圧配管16aを抜け止めする。つまり、作業者は、リテーナ40を押し込み操作することによって、第二低圧配管16aが第二筒部32の正規位置に挿入され、且つ、第二低圧配管16aがリテーナ40によって抜止されていることを、確認することができる。
【0046】
シールユニット50は、コネクタ本体30の第二筒部32の内周面と第二低圧配管16aの外周面との間における燃料の流通を規制する。シールユニット50は、例えば、フッ素ゴム製の環状シール部材51,52と、環状シール部材51,52の軸方向の間に挟まれるようにして樹脂製のカラー53と、環状シール部材51,52およびカラー53を第二筒部32のシール部32cに位置決めする樹脂製のブッシュ54とから構成される。シールユニット50の内周側には、第二低圧配管16aの先端部16a2が挿入され、第二低圧配管16aの環状フランジ16a1は、シールユニット50より第二開口32a側に位置する。
【0047】
弁体60は、高圧燃料が逆流しない定常状態の場合には低圧燃料を順方向に流通し、高圧燃料が逆流する場合には脈動を低減するように機能する。弁体60は、コネクタ本体30の第三筒部33の内部に収容されており、第三筒部33の軸方向に往復移動可能である。つまり、弁体60は、第三筒部33において、流路方向に往復移動可能である。弁体60は、金属または硬質樹脂により一体に形成されている。
【0048】
弁体60は、弁本体部61と、大径規制部62と、小径規制部63と、装着部64とを備える。弁本体部61は、
図2−
図4に示すように、板状または有底筒状に形成されている。本例においては、弁本体部61は、板状に形成されている。
【0049】
弁本体部61の外周面は、
図3および
図4に示すように、弁座当接面61aを備える。弁座当接面61aは、部分球面状に形成されている。弁座当接面61aは、コネクタ本体30の第三筒部33の環状弁座33c1に当接可能である。つまり、弁座当接面61aは、環状弁座33c1に対して、当接する位置と離間する位置との間で往復移動可能である。
【0050】
弁座当接面61aが環状弁座33c1に当接する状態においては、燃料は、弁座当接面61aと環状弁座33c1との間の領域を流通することが規制される。一方、弁座当接面61aが環状弁座33c1から離間する状態においては、燃料は、弁座当接面61aと環状弁座33c1との間の領域を流通可能となる。
【0051】
ここで、第三筒部33の環状弁座33c1は、テーパ状であるのに対して、弁本体部61の弁座当接面61aは、部分球面状である。そのため、環状弁座33c1と弁座当接面61aとは、線状に接触する。さらに、仮に、弁本体部61の姿勢が僅かに変化したとしても、弁座当接面61aが部分球面状であることから、環状弁座33c1と弁座当接面61aとは確実に当接する。
【0052】
弁本体部61は、弁座当接面61aよりも径方向内方に形成されたテーパ状貫通孔61bを備える。テーパ状貫通孔61bは、オリフィス流路を形成する。そして、テーパ状貫通孔61bは、コネクタ本体30において、第一筒部31と第二筒部32との間における燃料の流通を常時流通する。従って、テーパ状貫通孔61bは、低圧燃料が第一筒部31から第二筒部32側への順方向に流通することを許容すると共に、高圧燃料が第二筒部32から第一筒部31側への逆方向に流通することを許容する。
【0053】
さらに、テーパ状貫通孔61bは、弁本体部61に1つ形成されるようにしてもよいし、弁本体部61に複数形成されるようにしてもよい。テーパ状貫通孔61bが1つ形成される場合には、テーパ状貫通孔61bは、例えば、弁本体部61の中心に形成される。また、テーパ状貫通孔61bは、テーパ状に形成されているため、小径開口と大径開口とを有する。本例では、テーパ状貫通孔61bの小径開口は、低圧ポンプ12側に配置されており、大径開口は、高圧ポンプ16側に配置されている。ただし、小径開口が高圧ポンプ16側に配置され、大径開口が低圧ポンプ12側に配置されるようにしてもよい。
【0054】
大径規制部62は、弁本体部61に一体に形成されており、弁本体部61における第二筒部32側の面のうち外周縁から、第二筒部32側に向かって延びるように形成されている。
図3に示すように、大径規制部62は、複数の爪状に形成されており、周方向に隣接する大径規制部62の間には、燃料が流通可能な隙間が形成されている。本例においては、大径規制部62は、6個の例を示すが、任意の数とすることができる。
【0055】
大径規制部62の径方向外面は、弁本体部61の外周面の弁座当接面61aと同心の部分球面状に形成されている。大径規制部62の径方向外面は、第三筒部33の大径筒部33bの内周面に当接し得る。これにより、大径規制部62は、第三筒部33に対して弁体60の姿勢を規制する機能を発揮する。ただし、弁体60は第三筒部33の内部において軸方向に移動可能に配置されている。そのため、大径規制部62は、第三筒部33の大径筒部33bに対して僅かに径方向隙間を有して配置されている。従って、弁体60の姿勢は、僅かではあるが変化し得る。
【0056】
小径規制部63は、弁本体部61に一体に形成されており、弁本体部61における第一筒部31側の面から、第一筒部31に向かって軸方向に平行に延びるように形成されている。
図3に示すように、小径規制部63は、複数の爪状に形成されており、周方向に隣接する小径規制部63の間には、燃料が流通可能な隙間が形成されている。本例においては、小径規制部63は、4個の例を示すが、任意の数とすることができる。
【0057】
小径規制部63の径方向外面は、第三筒部33の小径筒部33aの内周面に当接し得る。これにより、小径規制部63は、第三筒部33に対して弁体60の姿勢を規制する。ただし、弁体60は第三筒部33の内部において軸方向に移動可能に配置されている。そのため、小径規制部63は、第三筒部33の小径筒部33aに対して僅かに径方向隙間を有して配置されている。従って、この点においても、弁体60の姿勢は、僅かではあるが変化し得る。
【0058】
装着部64は、大径規制部62の径方向内面から第二筒部32側に向かって軸方向に平行に延びるように形成されている。
図3に示すように、装着部64は、複数の爪状に形成されており、周方向に隣接する装着部64の間には、燃料が流通可能な隙間が形成されている。本例においては、装着部64は、大径規制部62と同数の6個の例を示すが、任意の数とすることができる。さらに、装着部64の径方向外面は、大径規制部62の径方向内面に対して径方向に隙間を介して対向している。
【0059】
付勢部材70は、装着部64の径方向外面側に装着され、弁体60を環状弁座33c1に向かって付勢する。付勢部材70は、コイルスプリングを例にあげるが、その他のスプリングを適用することもできる。付勢部材70は、姿勢が維持されているため、弁体60に対して環状弁座33c1に向かう方向への付勢力を確実に作用させることができる。また、付勢部材70の付勢力は、低圧燃料の圧力以下に設定されている。従って、付勢部材70は、低圧燃料の圧力が作用した場合には圧縮される。
【0060】
固定用ブッシュ80は、金属または硬質樹脂により形成されており、
図2に示すように、貫通孔を有する筒状に形成されている。固定用ブッシュ80の貫通孔が燃料の流路として機能する。固定用ブッシュ80の外周面には、大径筒部33bの内周面における環状溝および環状凸部に対応する、環状凸部および環状溝を有する。そして、両者が係合することにより、固定用ブッシュ80は、第三筒部33に対して軸方向に位置決めされている。
【0061】
さらに、固定用ブッシュ80は、径方向内方に突出する環状の内突起81、内突起81の外周側から弁体60側に延びる端筒部82、内突起81の内周側から弁体60側に突出し端筒部82に部分的に対向する環状の軸突起83を有する。付勢部材70が、端筒部82と軸突起83との径方向間に配置されており、内突起81の端面により支持されている。従って、固定用ブッシュ80は、弁体60および付勢部材70の移動範囲を規制することにより、弁体60の弁座当接面61aを環状弁座33c1に確実に当接可能としている。
【0062】
(4.弁体60の作用)
弁体60の作用について、
図2および
図5を参照して説明する。ここで、
図5は、弁体60が第一状態である場合を図示し、
図2は、弁体60が第二状態である場合を図示する。
【0063】
第一状態とは、高圧燃料が逆流しない定常状態の場合に、弁体60の弁本体部61の弁座当接面61aが、低圧燃料の圧力によってコネクタ本体30の第三筒部33の環状弁座33c1から軸方向に離間して、弁座当接面61aと環状弁座33c1との間に順方向流路P(
図5に示す)が形成される状態である。第二状態とは、高圧燃料が逆流する状態であって、弁体60の弁座当接面61aが環状弁座33c1に当接している状態であって、弁座当接面61aと環状弁座33c1との間における順方向流路Pが閉塞された状態である。
【0064】
まず、高圧燃料が逆流しない定常状態の場合には、弁体60は第一状態となる。第一状態の場合について、
図5を参照して説明する。高圧燃料が逆流しない定常状態の場合には、低圧ポンプ12およびプレッシャレギュレータ13により一定圧に調圧された低圧燃料が、第一低圧配管14、コネクタ15および第二低圧配管16aを介して、高圧ポンプ16のポンプ本体16bに供給される。このとき、コネクタ15において、低圧燃料の流通方向は、コネクタ本体30の第一筒部31から第二筒部32へ向かう方向(
図5の左から右)となる。従って、弁体60が低圧燃料から受ける力は、付勢部材70の付勢力に抗する方向となる。
【0065】
ここで、付勢部材70の付勢力は、調圧された低圧燃料の圧力以下に設定されている。従って、弁体60に低圧燃料の圧力が作用すると、付勢部材70が圧縮され、弁体60が高圧ポンプ16側へ移動する。そうすると、
図5に示すように、弁体60の弁本体部61の弁座当接面61aは、コネクタ本体30の第三筒部33の環状弁座33c1から離間した第一状態となる。
【0066】
従って、環状弁座33c1と弁座当接面61aとの間に順方向流路Pが形成される。順方向流路Pは、弁座当接面61aの周方向全周に形成されている。また、順方向流路Pの断面積は十分に大きく設定されているため、順方向流路Pにおいて、低圧燃料の圧力の低下がほとんどない。従って、低圧燃料は、所望の圧力の状態を維持した状態で、高圧ポンプ16のポンプ本体16bに供給される。
【0067】
ここで、テーパ状貫通孔61bは、常時、燃料の流通を許容する。従って、低圧燃料は、順方向流路Pに加えて、テーパ状貫通孔61bを流通する。ただし、テーパ状貫通孔61bの小径開口における流路断面積は、順方向流路Pの流路断面積に比べると非常に小さい。従って、低圧燃料の大部分は、順方向流路Pを流通する。
【0068】
次に、高圧燃料が逆流する場合には、弁体60は第二状態となる。第二状態の場合について、
図2を参照して説明する。高圧燃料が逆流する場合には、第二低圧配管16aに高圧燃料が存在することになる。一方、第一低圧配管14には、低圧燃料が存在する。弁体60の両側に作用する燃料は、圧力差を有する。そうすると、高圧燃料が、第二低圧配管16aから第一低圧配管14側へ流動しようとする。
【0069】
弁体60は、高圧燃料の圧力によって、低圧ポンプ12側に移動する。その結果、弁体60は、環状弁座33c1側に押し付けられる。従って、弁体60の弁本体部61の弁座当接面61aが環状弁座33c1に当接する第二状態となる。そのため、弁座当接面61aと環状弁座33c1との間においては、燃料の流通が規制される。ただし、弁本体部61には、常時、燃料の流通を許容するテーパ状貫通孔61bが形成されている。つまり、高圧ポンプ16側と低圧ポンプ12側との間において、高圧燃料が、テーパ状貫通孔61bを介して低圧ポンプ12側に僅かに流通する。このようにして、テーパ状貫通孔61bのみによって、高圧燃料の逆流が許容されている。
【0070】
そして、テーパ状貫通孔61bは、順方向流路Pよりも流路断面積が小さなオリフィス流路を形成する。従って、第二低圧配管16aにおける高圧燃料は、オリフィス流路としてのテーパ状貫通孔61bを介して第一低圧配管14へ流通することになる。そのため、テーパ状貫通孔61bのオリフィス流路作用によって、高圧ポンプ16のポンプ本体16bにおいて生じる高圧燃料の圧力変動が、第一低圧配管14に直接伝達されることを抑制できる。つまり、第一低圧配管14における脈動を低減することができる。
【0071】
また、弁体60が、コネクタ15に内蔵される構成としている。従って、弁体60の配置が容易となる。特に、コネクタ本体30の第三筒部33の内周面を、順方向流路Pを形成する面としている。コネクタ本体30の形成は、容易であるため、順方向流路Pをコネクタ本体30の内周面に形成することも容易である。従って、弁体60を内蔵するコネクタ15の設計および製造は、容易となる。
【0072】
ところで、弁体60を、コネクタ15に内蔵されるのではなく、第一低圧配管14に配置することが考えられる。しかしながら、第一低圧配管14に弁体60を配置することは、コネクタ本体30に弁体60を配置することに比べて容易ではない。そのため、第一低圧配管14に弁体60を配置することは、設計および製造が容易ではなく、高コスト化を招来する。従って、弁体60が、コネクタ本体30の内部に配置されることによって、容易に設計および製造が可能となり、確実に脈動低減効果を発揮することができる。
【0073】
また、弁本体部61の弁座当接面61aは、部分球面状としている。これにより、弁体60が第二状態である場合に、弁体60の姿勢が変化したとしても、弁座当接面61aが環状弁座33c1に確実に当接する。つまり、第二状態において、環状弁座33c1と弁座当接面61aとが高圧流体の流通を確実に規制できる。その結果、テーパ状貫通孔61bがオリフィス流路作用を確実に発揮でき、その結果、脈動低減効果を確実に発揮できる。
【0074】
(5.テーパ状貫通孔61bの詳細)
テーパ状貫通孔61bの詳細について
図4を参照して説明する。テーパ状貫通孔61bは、小径開口が低圧ポンプ12側に位置し、大径開口が高圧ポンプ16側に位置する。テーパ状貫通孔61bにおいて、燃料の流通抵抗は、大径開口から小径開口へ向かう方向が小さく、その逆方向が大きい。流通抵抗を大きくしたい方の入口側に、小径開口が位置するようにするとよい。
【0075】
本例では、低圧ポンプ12側に小径開口が位置するため、低圧ポンプ12側から高圧ポンプ16側への流通抵抗が大きい。従って、低圧燃料が順方向へ流通する第一状態においては、テーパ状貫通孔61bを流通する燃料は、順方向流路Pに比べると非常に小さくなる。
【0076】
一方、高圧ポンプ16側に大径開口が位置するため、高圧ポンプ16側から低圧ポンプ12側への流通抵抗は小さい。従って、高圧燃料が逆流する第二状態においては、テーパ状貫通孔61bのテーパ形状が、高圧燃料をテーパ状貫通孔61bに誘導するように作用する。つまり、最小流路断面積となる小径開口に、高圧燃料を誘導することができる。その結果、オリフィス流路としてのテーパ状貫通孔61bを、より効果的に機能させることができる。
【0077】
ここで、
図4に示すように、テーパ状貫通孔61bの小径開口の内径DSは、0.1mm〜2.0mmであり、好適には0.1mm〜1.0mmである。この小径開口が、オリフィス流路としての機能に大きく影響を与える。従って、小径開口の内径は、オリフィス流路としての機能の程度に応じて設定される。
【0078】
テーパ状貫通孔61bの大径開口の内径DLは、1.0mm以上であり、好適には2.0mm以上であり、より好適には3.0mm以上である。大径開口は、テーパ状貫通孔61bへの高圧燃料の誘導する機能を発揮する。従って、大径開口の内径DLは、高圧燃料の誘導機能の程度に応じて設定され、且つ、小径開口の内径DSに応じて設定される。
【0079】
また、テーパ状貫通孔61bのテーパ角度θは、5°〜45°であり、好適には10°〜30°である。テーパ角度θは、テーパ状貫通孔61bの円錐の頂角に相当する。テーパ角度θが5°よりも小さくなると、後述する金型120(
図6に示す)の寿命を低下させる原因となる。テーパ角度θが45°よりも大きくなると、弁本体部61の厚みの薄い部分が存在することに起因して、弁本体部61の耐久性を低下させる原因となる。
【0080】
また、テーパ状貫通孔61bにおいて小径開口と大径開口との軸方向距離Hは、1.0mm〜4.0mmである。軸方向距離Hが1.0mmよりも小さくなると、弁本体部61の耐久性を低下させる原因となる。軸方向距離Hが4.0mmより大きくなると、後述する金型120の寿命を低下させる原因となる。
【0081】
(6.金型110,120)
弁体60を成形するための金型110,120について、
図6を参照して説明する。弁体60は、第一金型110と第二金型120とにより形成される。すなわち、弁体60は、溶融材料、例えば溶融樹脂を金型110,120のキャビティに供給することにより形成される。
【0082】
第一金型110は、小径規制部63側に対応する第一キャビティ面111を有し、第二金型120は、装着部64側を対応する第二キャビティ面121を有する。さらに、第二金型120は、テーパ状貫通孔61bを転写した突起部122を有する。突起部122の基端は、テーパ状貫通孔61bの大径開口に対応し、突起部122の先端は、テーパ状貫通孔61bの小径開口に対応する。また、第一金型110は、第二金型120の突起部122の先端が挿入されることで、突起部122を位置決めするための凹所112を有する。
【0083】
ここで、テーパ状貫通孔61bを弁本体部61に形成するためには、金型110,120の何れかにテーパ状貫通孔61bを転写した部分を設けることが必要となる。本例では、第二金型120に突起部122を設けている。そして、テーパ状貫通孔61bが小径である場合には、第二金型120の突起部122も小径となり、第二金型120の突起部122の耐久性が課題となる。
【0084】
しかし、オリフィス流路としてのテーパ状貫通孔61bは、テーパ状に形成されている。従って、テーパ状貫通孔61bを形成するための第二金型120の突起部122も、テーパ状となる。そして、第二金型120は、テーパ状の突起部122の大径側を基端側とし、テーパ状の突起部122の小径側を先端側とするように設計することができる。
【0085】
第二金型120の突起部122が全長に亘って同一径に形成される場合に比べて、突起部122をテーパ状とすることで、突起部122の剛性が高くなる。特に、突起部122に溶融材料の圧力が作用したとしても、突起部122は剛性を有するため、突起部122の耐久性は向上する。つまり、弁体60のテーパ状貫通孔61bをテーパ状とすることによって、第二金型120の長寿命化を図ることができる。
【0086】
さらに、突起部122の先端側によって、テーパ状貫通孔61bの小径開口が形成される。従って、小径開口の内径を非常に小さくすることができる。突起部122をテーパ状にすることによって、小径開口の内径DSを、0.1mm〜2.0mmであり、好適には0.1mm〜1.0mmを実現することが可能となる。
【0087】
また、突起部122の先端は、第一金型110の凹所112に挿入された状態で支持されている。従って、溶融材料の圧力が突起部122のうち小径である先端部分に作用したとしても、凹所112により支持されることで、突起部122の耐久性を向上することができる。