特許第6886487号(P6886487)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6886487対象となるユーザに対して化粧品を選択する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886487
(24)【登録日】2021年5月18日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】対象となるユーザに対して化粧品を選択する方法
(51)【国際特許分類】
   A45D 44/00 20060101AFI20210603BHJP
【FI】
   A45D44/00 A
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-73366(P2019-73366)
(22)【出願日】2019年4月8日
(65)【公開番号】特開2019-195619(P2019-195619A)
(43)【公開日】2019年11月14日
【審査請求日】2019年7月3日
(31)【優先権主張番号】62/657,269
(32)【優先日】2018年4月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508283406
【氏名又は名称】シャネル パフュームズ ビューテ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ラサール アストリッド
(72)【発明者】
【氏名】クーデール サンドリーヌ
【審査官】 東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−520551(JP,A)
【文献】 特表2017−522124(JP,A)
【文献】 特開2006−189394(JP,A)
【文献】 特開2016−161767(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0356661(US,A1)
【文献】 特開2008−162939(JP,A)
【文献】 特開2014−159550(JP,A)
【文献】 特開2006−110075(JP,A)
【文献】 特開2007−144194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 44/00
G06T 1/00
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人を対象とする化粧品を選択する方法であって、
制御照明環境における人の画像を取得(100)し、前記人の顔の一部又は全部の比色分析パラメータを測定及び記録するステップと、
前記人の肌の色調の絶対値を特定(200)するために、標準化された手段によって前記画像を処理するステップと、
個人専用のカラーマトリクス(MTP)を特定(300)するために、各化粧品の使用条件下における各化粧品の色を測定することによって、前記人の肌の色調の前記絶対値をデータベースの複数の化粧品の各々に対して確立された使用色マップに相関付けるステップと、
色測定値が前記個人専用のカラーマトリクスの一部である化粧品を前記データベースから抽出(410)するステップと、
紙文書及びデジタルインターフェースの中から選択される情報媒体を用いて、前記個人専用のカラーマトリクスにおいて構成される前記化粧品を前記人に提示(420)するステップと
を備える前記方法。
【請求項2】
前記人の画像を取得するステップ(100)は、前記人の画像を撮影(110)するステップを備え、
前記撮影は、制御照明環境における前記人の顔の完全な観察を備え、
前記画像を処理(200)するステップは、デジタル処理により、前記顔の画素の一部又は全部の各々の比色分析パラメータL及びhを分析(210)し、L,hによって指定される前記顔の色の前記絶対値を特定するのに前記L及びhの各々の平均を用いることを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記比色分析パラメータの前記分析は、0と100の間のL軸に沿った前記画像の前記画素の分布図(D)及び−15°と105°の間のh軸に沿った前記画像の前記画素の分布図(D)を得ることをさらに備える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記制御照明環境は、
全体的又は部分的に前記人に対向するように位置決めされ、前記画像の対象となる前記人の周辺に均一な制御照明環境を提供可能な標準化された光源(10)と、
前記人の顔から20cmと50cmの間の距離又は25cmと35cmの間の距離に載置されたレンズを備える撮影デバイス(20)と、
テストパターンを用いて前記画像を校正する画像校正デバイス(30)であって、前記テストパターンは、前記人の顔と同じ制御照明環境においてかつ前記人の顔と同じ前記レンズからの距離で画像において撮影される、前記画像校正デバイス(30)と
を備える手段(1)の使用によって制御される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記制御照明環境はさらに、撮影中に前記撮影デバイスからの前記人の顔までの実際の距離を制御するように適合された視線追跡デバイス(40)の使用によって制御される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記使用色マップは、
前記化粧品の一定の厚さの均質的な膜を参照媒体上に拡げ(910)、
得られた各膜を20℃と45℃の間の温度で乾燥させ(920)、
分光光度計によって、前記人の画像を取得するステップで用いられたものと同一又は略同一の標準化された照明条件下で、先行する前記ステップで得られた各膜の比色分析パラメータL及びhを測定する(930)
ことによって各化粧品に対して得られ、
前記人の肌の色調の前記絶対値を前記使用色マップに相関付ける(300)ステップは、
前記人の肌の色調の前記絶対値の値L及びhを各化粧品に対して測定されたL/hの対のセットによって定義された前記使用色マップの色空間内に位置決め(310)するステップと、
と各Lとの間のΔL絶対差が±10に等しく、と各hとの間のΔh絶対差が0°と90°の間となるように前記L/hの対を選択(320)するステップと、
直前の前記選択(320)ステップで得られた前記L及びh座標上の前記色空間内にある前記人の個人専用のカラーマトリクスを特定(330)するステップと
を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記相関付けるステップ(300)は、
所望のメイクアップ効果と、
カバー力の大小と、
艶又はマット効果と、
ナチュラル又は重ね効果と、
顔の比色分析データの測定において考慮しない顔領域の選択と、
演色性と
からなるグループの中から少なくとも1つの前記人の個人的嗜好基準を統合するステップ(340)、及び/又は
記人の顔に顔の色の欠陥又は不規則性がある場合に、異なる画素のL及びhに変動の分散の領域を除外するために分布図(D)又は(D)を考慮するステップ(350)
をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
画像処理方法であって、
人の肌の色調の絶対値を特定(200)するステップと、
使用色マップを得る(900)ために、使用条件下及び標準化照明条件下における複数の化粧品の色を測定するステップと、
個人専用のカラーマトリクスを特定するために、前記人の肌の色調の前記絶対値を前記使用色マップに相関付ける(300)ステップと
を備えることを特徴とする前記画像処理方法。
【請求項9】
前記人の肌の色調の前記絶対値を前記使用色マップに相関付ける(300)ステップは、
前記人の肌の色調の前記絶対値の値L及びhをL/hの対のセットによって定義された前記使用色マップの色空間内に位置決め(310)するステップと、
と各Lとの間のΔL絶対差が±10に等しく、hと各hとの間のΔh絶対差が0°と90°の間となるように前記L/hの対を選択(320)するステップと、
直前の前記選択(320)ステップで得られた前記L及びh座標上の前記色空間に対応する前記人の個人専用のカラーマトリクスを特定(330)するステップと
を備える、請求項に記載の方法。
【請求項10】
化粧品の使用色マップを特定する方法(900)であって、
一定の厚さの均質的な膜として前記化粧品を参照媒体上に拡げるステップ(910)と、
得られた前記膜を20℃と45℃の間の温度で乾燥させる(920)ステップと、
分光光度計によって、標準化された照明条件下で、先行する前記ステップにおいて得られた前記膜の比色分析パラメータL及びhを測定する(930)ステップと
を備え、
点L/hの各対は、複数の化粧品の各々の前記使用色マップを表し、前記点L/hの対のセットは、前記使用マップの色空間を形成する、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、彼又は彼女のニーズ及び好みに対応する製品の個人専用の推奨について、人を対象とする化粧品を選択する方法に関する。それはまた、化粧品を選択する方法において実行される画像取得方法及び画像処理方法も含む。
【背景技術】
【0002】
本方法は、カスタマーエクスペリエンスの背景内で適用され、その目的は、その人の実際の肌の色調に基づいてかつ彼又は彼女の個人的な好みを適宜考慮しながら、化粧品を選択する際の、より詳細には色を有する化粧品の色を選択する際の助言を対象者に提供可能とし、及びその人の肌に塗布可能とすることにある。
【0003】
本方法は、その人の肌の色調に合うファンデーションの色を選択する際の推奨及び補助を与えるのに特に適する。
【0004】
肌の色及びファンデーションの色に基づいて、最適な製品を提案するために、人の肌の色調を特定する方法は従来から知られている。しかしながら、これらの方法は、制限を有し又は選択的過ぎる手段を利用する。例えば、分光光度計を用いることによって、又は顔の局所的領域を撮影して測定することによって、その人の肌の色を測定することに基づく方法が周知である(米国特許第9442973号)。これらの方法には、主に2つの欠点があり、それは、顔の特定の領域しか考慮されないこと、またさらに、分光光度計の場合には、測定手段の肌への直接の接触が一部の人々にとってはカスタマーエクスペリエンスの一部として許容できないことである。
【0005】
また、任意の対象の色の知覚は、それを照らす光及びそれらを記録するシステムのパラメータ設定に依存する。この問題を解決するために、対象が位置する照明環境を校正する手段、及び参照システムに対して校正された環境に測定値を変換するための参照手段を有する必要がある。
【0006】
したがって、標準化された参照システムにおける画像取得及び画像処理手段は、同じ参照システムにおける人の肌の色の測定と化粧品の色の測定との間の正確な相関関係を得るために不可欠な要素である。
【0007】
化粧品の色は、時とともに進化し得ることも知られている。特に、ボトル、ジャー、ポットなどのような容器内の化粧品は、「バルクカラー」と呼ばれる知覚色を有し、(容器内の化粧品よりも薄い)連続被膜で表面に拡がるこの同じ化粧品は、「フィルムカラー」と呼ばれるバルクカラーとは異なる知覚色を有する。一般に従来技術の方法では化粧品の「バルクカラー」のみが測定されるが、一般に製品はその容器から少量取り出されて顔の全部又は一部に化粧品を拡げて塗布することによって使用されるので、フィルムカラーの方が化粧品の使用条件に近い。
【0008】
多くの化粧品は、例えば化粧品の組成に最初に存在する揮発性の成分の蒸発に起因して、使用中に色の変動を呈する場合があることも知られている。この蒸発は、その後に初期組成の変化を引き起こし、特に化粧品の分野で周知の「黒ずみ」現象の一因となり得る。
【0009】
したがって、人の肌の色調パラメータのみならず、これらを使用条件下での化粧品の色パラメータに相関付けることを考慮する効果的かつ正確な再現可能な方法を有する必要がある。
【0010】
本発明は、このニーズを満たし、既存の方法の欠点を解決することを目的とする。
【0011】
したがって、本発明は、人に対して化粧品の個人専用の推奨を提供する目的で、人の肌の色調、及びおそらくはメイクアップ効果に関する彼又は彼女の好みに基づいて、人を対象とする化粧品を選択する方法を備える。また本発明は、標準化されかつ再現可能な態様によって肌の色調の正確な測定値を得るための手段を用いる画像取得方法を備える。
【0012】
第2の実施形態において、本発明はまた、人の肌の色調の測定値を使用条件下で予め測定された化粧品の色と相関付ける手段を用いる画像処理方法を備える。
【0013】
第3の有利な実施形態において、本発明は、本発明に係る画像取得方法と本発明に係る画像処理方法の組み合わせを備え、上記人の肌の色調の正確な測定値及び使用条件下で測定された最も近い色を有する上記化粧品の色と調和する化粧品の選択のための推奨を人に提供することを可能とする。
【0014】
本実施形態の代替形態では、本発明は、推奨を提案する際にそれらを統合するために、濃淡、色効果、仕上り及び期待されるメイクアップ結果に関する人の好みを収集する追加のステップを選択的に備える。
【0015】
第4の実施形態において、本発明は、化粧品の使用色マップを特定する方法を備える。
【0016】
第5の実施形態において、本発明は、人の肌の色調の絶対値を特定する方法を備える。
【0017】
より具体的には、本発明は、人を対象とする化粧品を選択する方法であって、
化粧品に関する情報を備えるデータベースを有するステップと、
制御照明環境において人の画像を取得するステップと、
上記人の肌の色調の絶対値を特定するために、標準化された手段によって上記画像を処理するステップと、
使用色マップを得るために、データベースに統合された化粧品の色を彼らの使用条件下で測定するステップと、
上記肌の色調の絶対値を上記使用色マップに相関付けるステップと、
使用色マップ内のその色測定値が人の肌の色調の絶対値と相関する化粧品を上記データベースから抽出するステップと、
電子媒体を用いて、彼又は彼女が抽出製品のリストから選ばれた化粧品を選択できるように、上記ステップで得られた抽出製品を人に提示するステップと
を備える方法である。
【0018】
したがって、本発明に係る選択方法は、カスタマー等の人が彼又は彼女の選択による化粧品の販売時点で体験することを可能とし、これは化粧品の選択、より詳細には製品のファンデーションタイプの選択についての助言又は個人専用の提案を上記人に提供する。
【0019】
本発明の他の特徴及び効果は、添付図面を参照して、非限定的な例として与えられる以下の詳細な説明によって明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る化粧品の選択方法の主なステップを示す。
図2】本発明の実施形態に係る化粧品の使用色マップの特定方法の主なステップを模式的に示す。
図3】人の画像の取得又は化粧品色マップの確立に使用される制御照明環境を提供するセットアップを模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1を参照して、人を対象とする化粧品の選択方法について説明する。本方法は、コンピュータによって実行されると、制御照明環境において画像を取得するセットアップ1、取得された画像を処理するコンピュータ2、及び上述した方法を実行するためのコード命令を記憶するメモリ3を備え、図3に模式的に示すシステムによって実行される。
【0022】
メモリはまた、複数の化粧品に関する情報を備えるデータベースを記憶する。
【0023】
本選択法は、特に以下のシナリオのようなカスタマーエクスペリエンスの背景に関する。
【0024】
人(カスタマー)は、カスタマーのライフスタイル及び期待に対する深い理解を得るための一連の質問で始まる美容体験に誘導されるために、美容コンサルタントに迎えられる。次に、カスタマーの肌の色調の絶対値を特定(200)するために画像取得方法100を用いる肌色調測定を行い、その後に個人専用のカラーマトリクスの特定を行う(300)。これらのパラメータが特定された後、比色分析測定値(colorimetric measurement)、及び必要に応じてカスタマーの好み(よりピンクの、金色の、暗い又は明るい)の双方に基づいて、カスタマーに対してファンデーションの推奨が提供される(400)。
【0025】
選択方法の第1のステップで利用されるデータベースは、製品の画像、その構成成分が記載されたその仕様書、その濃淡範囲、そのメイクアップ効果(明るい、暗い、金色、ピンクがかった)(薄付き、明るい、中程度のカバー力)等の上記データベースに含まれる複数の化粧品に関する情報を備える。このデータベースは、データベースの各化粧品に対して、使用条件下における化粧品の色を測定することによって得られる使用色マップを追加することによって強化される。
【0026】
個人に対して個人専用のカラーマトリクスが得られると、ファンデーションの推奨400は、その色の測定値が個人専用のカラーマトリクスの一部である当該又は各化粧品のデータベースからの抽出410、及び紙文書又はデジタルインターフェース等の情報媒体を用いた個人専用のカラーマトリクスに備えられる製品の人への提示420を備える。そして、その人は、個人専用のカラーマトリクスに属する製品の中からその好みの製品を選択することができる。
【0027】
人の肌の色調を特定するために、本発明は撮影システムに基づく技術を使用する。これは、顔の色ムラを考慮して、人の顔への接触を回避し、顔全体の診断を行うことを可能とする。最後に、この技術の選択は、広範囲の撮影媒体を用いた、特に、撮影デバイスが設けられたスマートフォン、タブレット又は鏡等のツールを用いた実行を可能とする。
【0028】
したがって、選択方法は、人の画像を撮影するステップ110を備える人の画像を取得するステップ100であって、上記撮影は制御照明環境での人物の顔の完全な観察を備える、ステップと、人の肌の色調の絶対値を特定するように上記画像を処理するステップ200を備え、上記処理するステップは、デジタル処理により、顔の画素の一部又は全部の各々の比色分析パラメータL及びhを分析すること210を備え、L及びhの各々の平均はL,hによって指定される上記顔の色の絶対値を特定するのに使用される。
【0029】
パラメータL及びhを特定することに加えて、0と100の間のL軸に沿った画像の画素の分布図(D)及び−15°と105°の間のh軸に沿った画像の画素の分布図(D)を得ることができる。
【0030】
したがって、本方法は、撮影された画像に基づいて、正確で、信頼性が高く、反復可能で、再現性の高い人の肌の色調の測定を可能とする。いくつかの技術的なパラメータは、変動の測定の再現性及び正確性を確保するように考慮されなければならない。
【0031】
実際には、照明環境は、
・全体的又は部分的に人に対向するように位置決めされ、画像取得の対象となる人の周辺に均一な照明環境を提供可能な標準化された光源10と、
・人の顔から20cmと50cmの間の距離又は25cmと35cmの間の距離に載置されたレンズを備える撮影デバイス20と、
・テストパターン等の画像校正デバイス30であって、上記パターンは、人の顔と同じ制御照明環境においてかつ人の顔と同じレンズからの距離で画像において撮影される、画像校正デバイス30と、
・選択的に、撮影中に撮影デバイスから人の顔までの実際の距離を制御可能とする視線追跡デバイス40と
を備える画像取得のためのセットアップ1の使用によって制御される。
【0032】
標準化された光源10は、例えばD65,D55,D50参照システムによる光源から選択することができ、優先的にD65参照システムによって選択されることになる。この光源は、人の顔に対向する少なくとも1つの点を有することになるが、人の顔の周辺に異なる配向で分散されてもよい。したがって、光源は、顔の均一な照明が可能となるよう配置されなければならない。本発明の目的のためには、用語「均一」は顔の影となっている領域が全くないこと、言い換えると異なる態様で照明される領域が顔内にないことを意味する。
【0033】
したがって、画像取得方法100は、ここでより詳細に説明するテストパターン校正ステップ101を備える。
【0034】
肌の色のパッチ(合計N個)を備えるテストパターンは、最も明るいもの(大きいL)から最も暗いもの(小さいL)及び最もピンクのもの(小さいh)から最も黄色いもの(大きいh)まで世界中の全ての肌の色調をカバーするように、かつ各行に多少の同一性があるLを、各列に多少の同一性があるhを有するように作成される。
【0035】
テストパターンは、人と同じ照明条件下かつ人と同じカメラからの距離で撮影される。画像取得システムによって測定され、デジタル処理によって分析され、各パッチの全画素にわたって平均化された、このパターンのN個のパッチに対する比色分析データ(明度L及び色相角H)は、値Lpn及びhpnで示される(nは1からNまで変動する)。
【0036】
このパターンのN個のパッチに対する比色分析データ(明度及び色相角)はまた、撮像方法で用いられたものと同一又は実質的に同一の標準化された照明条件下で分光光度計によって予め測定され、量Lsn及びhsnで示される(nは1からNまで変動する)。
【0037】
変換行列は、撮影及び分光光度計測定によって得られた比色分析データ(Lpn,hpn,Lsn及びhsn)から計算され、これを画像の全ての画素に適用することにより、分光光度計の色空間において、画像において測定された全ての比色分析データの「置き換え」を可能とする。したがって、化粧品が表されているものと同じ使用色マップにおいて人の肌の色調の絶対値を並べることができる。
【0038】
その手段を活用するための一実施形態を、例えば、以下のように示すことができる。
1 良好な演色評価数及び顔の制限された影を有する自然かつ標準化された昼光(D65)の再現を可能とする照明されたフレームが開発及び選択された。この照明は、人が眩しくなりすぎたり、煩わしくなり過ぎたりすることなく販売時点での照明環境に対して優勢となるような態様で顔を照らすことを可能とする。
2 カメラから人の顔までの距離は特に顔(人が近いほど照明は明るくなる)の明度の観点で色に対して強い影響を有し、ISO、ホワイトバランス、露出時間のようなカメラ設定は画像の色に対して直接的な影響を有する。当業者に周知のカメラの自動調整手段は、特に顔が露光過度にも露光不足にもならないように、開始時に使用され、その後に経験を通して固定されたままとなる。距離の検証が、視線追跡手段を用いることによって実行されてもよい。
3 顔の一部の領域(額、頬・・・)は、生態認証によって自動的に検出され、分析に際して考慮することをカスタマーが望まない不一致が彼又は彼女の顔にある場合には、カスタマーはこれらの領域を修正する(拡張、縮小)又はこれらを除去することさえ可能である。
4 最後に、画像は、D65照明条件で知覚される「本当の」色を画像において得るように、テストパターンを用いて校正される。(分光光度計によって測定される)テストパターンパッチの既知の比色分析値及び撮影デバイスによって撮影された画像で実際に測定された比色分析値から計算される行列が、この校正を可能とする。
【0039】
選択方法はまた、人の肌の色調の絶対値を特定するステップ200、使用色マップを得るために使用条件下及び標準化された照明条件下における複数の化粧品の色を測定するステップ900、及び個人専用のカラーマトリクスを特定300するために人の肌の色調の絶対値を使用色マップに相関付けるステップを備える、撮影中に得られた画像を処理する手段を備える。
【0040】
より具体的には、使用色マップを特定するための測定ステップ900は、
・一定の厚さの均質的な膜として複数の化粧品の各々を参照媒体上に拡げるステップ910と、
・得られた各膜を20℃と45℃の間の温度で乾燥させるステップ920と、
・分光光度計によって、画像取得方法で用いられたものと同一又は略同一の標準化されたD65照明条件下で、先行するステップで得られた各膜の比色分析パラメータL及びhを測定するステップ930とを備え、
・点L/hの各対は複数の化粧品の各々の使用色マップを表し、点L/hの対のセットは制限なく使用マップの色空間を形成する、図2に模式的に示す方法によって実行される。
【0041】
参照媒体は、任意の材料であり得る。それは、測定される化粧品の膜を拡げることに干渉しないように、好ましくは平坦でかつ粗さがないものであるべきである。
【0042】
人の肌の色調の絶対値及び化粧品の各々の使用色マップが特定されると、個人の好みを適宜考慮して、使用条件下で人の肌の色調に最大の類似性を有する化粧品を確立可能とするために、これらを相互に相関付ける必要がある。
【0043】
人の肌の色調の絶対値と使用色マップの相関関係300は、以下の:
・人の肌の色調の絶対値の値L及びhを、L/hの対のセットによって定義された使用色マップの色空間内に位置決めするステップ310と、
・Lと各Lとの間のΔL絶対差が±10に等しく、好ましくは±5に等しく、hと各hとの間のΔh絶対差が0°と90°の間、好ましくは0°と50°の間、より好ましくは0°と20°の間となるようにL/hの対を選択するステップ320と、
・上記選択ステップで得られたL及びh座標上の色空間内にある人の個人専用のカラーマトリクスを特定するステップ330と、
・場合によっては以下の追加の:
・例えば所望のメイクアップ効果、カバー力の大小、艶又はマット効果、ナチュラル又は重ね効果、顔の比色分析データの測定において考慮しない顔領域の選択、演色性などの、人の好ましい個人的な単数/複数の基準を統合するステップ340、及び/又は、
・特に人の顔に顔の色の欠陥又は不規則性がある場合に、異なる画素のL及びhに変動の分散の領域を除外するために分布図(D)又は(D)を考慮するステップ350を備える。
【0044】
したがって、本発明で説明した化粧品の選択方法により、化粧品及び好ましくは可能な限り人の肌の色調に近いファンデーション、又は彼若しくは彼女の好みに応じて、カスタマーエクスペリエンスの最初に美容コンサルタントから与えられ、推奨を提供するためにその回答がアプリケーションに直接的に実施され得る質問事項によって若干よりピンクの(より小さいh)、金色の(より大きいh)、明るい(より大きいL)又は暗い(より小さいL)ファンデーションを人に提供することができる。
【0045】
最後に、簡素化の理由だけではなく、彩度(C)はL及びhと比較してファンデーションの色の範囲に対する影響が小さく無視できることが分かっているため、本発明者らは、明度L及び色相角hを考慮して、3次元ではなく2次元色空間で作用することを選択したことが注記されるべきである。
【0046】
化粧品を選択する方法に加えて、本発明は、以下の:
・人の画像を撮影100するステップであって、上記撮影は:
・全体的又は部分的に人に対向するように位置決めされ、画像取得の対象となる人の周辺に均一な照明環境を提供可能な標準化された光源10と、
・人の顔から20cmと50cmの間の距離又は25cmと35cmの間の距離に載置されたレンズを備える撮影デバイス20と、
・テストパターン等の画像校正デバイス30であって、上記パターンは、人の顔と同じ制御照明環境においてかつ人の顔と同じレンズからの距離で画像内に撮影される、画像校正デバイス30と、
・選択的に、撮影中に撮影デバイスから人の顔までの実際の距離を制御可能とする視線追跡デバイス40と
を用いる制御照明環境における人の顔の完全な観察を備える、ステップと、
・デジタル処理により、顔の画素の一部又は全部の各々の比色分析パラメータL及びhを分析200するステップであって、L及びhの各々の平均はL及びhで指定される上記顔の色の絶対値を特定するのに用いられる、ステップと
を備える人の肌の色調の絶対値を特定する方法を含む。
【0047】
最後に、本発明は、
・人の肌の色調の絶対値を特定するステップと、
・使用色マップを得るために、使用条件下及び標準化照明条件下における複数の化粧品の色を測定するステップと、
・個人専用のカラーマトリクスを特定するために、人の肌の色調の絶対値を使用色マップに相関付けるステップとを備え、
上記相関付けるステップは、
・人の肌の色調の絶対値の値L及びhの値をL/hの対のセットによって定義された使用色マップの色空間内に位置決めするステップと、
・Lと各Lとの間のΔL絶対差が±10に等しく、好ましくは±5に等しく、hと各hとの間のΔh絶対差が0°と90°の間、好ましくは0°と50°の間、より好ましくは0°と20°の間となるようにLf/の対を選択するステップと、
・上記選択ステップで得られたL及びh座標上の色空間内に対応する人の個人専用のカラーマトリクスを特定するステップとを備える
ことを特徴とする画像処理方法を含む。
図1
図2
図3