特許第6886491号(P6886491)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6886491前立腺特異幹細胞抗原に対する抗体およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886491
(24)【登録日】2021年5月18日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】前立腺特異幹細胞抗原に対する抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20210603BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20210603BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20210603BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20210603BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20210603BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20210603BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20210603BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20210603BHJP
   A61K 50/00 20060101ALI20210603BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20210603BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20210603BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20210603BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20210603BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20210603BHJP
【FI】
   C12N15/13ZNA
   C07K16/28
   C12N15/63 Z
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   A61K39/395 T
   A61K50/00 200
   A61P13/08
   A61P35/00
   G01N33/531 A
   G01N33/574 A
   !C12P21/08
【請求項の数】17
【外国語出願】
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2019-117977(P2019-117977)
(22)【出願日】2019年6月26日
(62)【分割の表示】特願2017-2983(P2017-2983)の分割
【原出願日】2012年6月29日
(65)【公開番号】特開2019-193652(P2019-193652A)
(43)【公開日】2019年11月7日
【審査請求日】2019年7月23日
(31)【優先権主張番号】102011118022.6
(32)【優先日】2011年6月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514073008
【氏名又は名称】ジェモアブ・モノクローナルズ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】バッハマン・ミヒャエル
【審査官】 坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6549622(JP,B2)
【文献】 特表2008−500833(JP,A)
【文献】 特表2007−537714(JP,A)
【文献】 J. Clin. Oncol.,2005年,Vol.23, No.16S,p.4722
【文献】 The Prostate,2011年 6月15日,Vol.71, No.9,p.998-1011
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/13
C07K 16/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二つの異なる結合単位を含有する抗体であって、
−それらの結合単位の少なくとも一つは、前立腺特異幹細胞抗原(PSCA)に結合し、−軽鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)が以下のアミノ酸配列:CDR1配列番号1、CDR2配列番号2、CDR3配列番号3を含み、
−重鎖可変領域のCDRが以下のアミノ酸配列:CDR1配列番号4、CDR2配列番号5、CDR3配列番号6を含み、
−それらの結合単位の他の少なくとも一つはCD3を対象とし、
CD3に対する前記結合単位が
−配列番号66、配列番号67、配列番号68のアミノ酸配列を含む抗体の重鎖可変領域、および
−配列番号58、配列番号59、配列番号60のアミノ酸配列を含む抗体の軽鎖可変領域を含む、
前記抗体。
【請求項2】
その可変領域がヒト化されている、請求項に記載の抗体。
【請求項3】
前立腺特異幹細胞抗原(PSCA)に結合する前記結合単位が
(i)配列番号26による抗体の重鎖可変領域であるか、または配列番号26による抗体の重鎖可変領域に対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を示すアミノ酸配列;および
(ii)配列番号24による抗体の軽鎖可変領域であるか、または配列番号24による抗体の軽鎖可変領域に対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を示すアミノ酸配列を含む、請求項に記載の抗体。
【請求項4】
CD3に結合する前記結合単位が、配列番号57による抗体の軽鎖可変領域および配列番号65による抗体の重鎖可変領域を含む、請求項2または3に記載の抗体。
【請求項5】
二重特異性抗体、三重特異性抗体、または四重特異性抗体の形態の、請求項1〜のいずれか一つに記載の抗体。
【請求項6】
前立腺特異幹細胞抗原(PSCA)に結合する前記結合単位が、V−リンカーペプチド−V構造を有するscFv断片であり、
は軽鎖可変領域であり、Vは重鎖可変領域である、請求項1〜5のいずれか一つに記載の抗体。
【請求項7】
前立腺特異幹細胞抗原(PSCA)に結合する前記結合単位がV−GSGSGASAAGSGS−V構造を有するscFv断片であり、
は軽鎖可変領域であり、Vは重鎖可変領域であり、GSGSGASAAGSGSは配列番号130によるリンカーペプチドである、請求項1〜6のいずれか一つに記載の抗体。
【請求項8】
CD3に対する前記結合単位がV−リンカーペプチド−V構造を有し、Vは軽鎖可変領域であり、Vは重鎖可変領域である、請求項1〜7のいずれか一つに記載の抗体。
【請求項9】
CD3に対する前記結合単位がV−(GS)−V構造を有し、Vは軽鎖可変領域であり、Vは重鎖可変領域であり、(GS)は配列番号131によるリンカーペプチドである、請求項1〜8のいずれか一つに記載の抗体。
【請求項10】
前立腺特異幹細胞抗原(PSCA)に結合する前記結合単位が、CD3に対する前記結合単位のN末端に結合されている、請求項6〜9のいずれか一つに記載の抗体。
【請求項11】
前立腺特異幹細胞抗原(PSCA)に結合する前記結合単位が、CD3に対する前記結合単位のC末端に結合されている、請求項6〜9のいずれか一つに記載の抗体。
【請求項12】
前立腺特異幹細胞抗原(PSCA)に結合する前記結合単位が、CD3に対する前記結合単位のN末端またはC末端に配列番号133のアミノ酸配列を介して結合されている、請求項10または11に記載の抗体。
【請求項13】
特に、腫瘍疾患、好ましくは前立腺癌を治療するための医薬品として、または診断薬として使用するための、請求項1〜12のいずれか一つに記載の抗体。
【請求項14】
そのヌクレオチド配列が、請求項1〜12のいずれか一つに記載の組換え抗体をコードする核酸。
【請求項15】
請求項14に記載のヌクレオチド配列を含有するベクター。
【請求項16】
請求項14に記載のヌクレオチド配列もしくは請求項15に記載のベクターを含有する宿主細胞または非ヒト宿主生物。
【請求項17】
好ましくは静脈内投与に適した形態の、請求項1〜12のいずれか一つに記載の抗体、並びに、薬学的に許容される希釈剤または担体を含有する医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前立腺特異幹細胞抗原(PSCA)に結合する組換え抗体、ならびに診断法および治療におけるその使用に関する。この抗体は、医学、薬学、および生物医学研究の分野での使用に適している。
【背景技術】
【0002】
前立腺癌は、ドイツにおいて、癌に起因する最も頻繁な死因の一つである。原発性臓器限局性前立腺癌での標準治療は、目下のところ、根治的前立腺全摘除術、つまり前立腺、精嚢、およびリンパ節の完全除去である。その対案となる方法は、前立腺に放射性物質を挿入すること(密封小線源療法)によって行われる放射線療法である。原発性局所前立腺癌を患うたいていの患者は、根治的前立腺全摘除術および放射線療法によって効果的に治療することができる。再発は、該当者のおよそ20〜40%において起こる[Roehl 2004](非特許文献1)。
【0003】
現在では、抗体ベースの様々な治療方法が開発されている。その際、抗体ベースの治療薬用の攻撃部位として利用され得る、癌細胞上の標的構造を同定することが決定的に重要である。前立腺癌を治療するための攻撃部位として適した標的構造は、主に前立腺組織中に存在し正常細胞と比べて悪性細胞上で過剰発現を示す表面タンパク質である。
【0004】
前立腺特異幹細胞抗原(PSCA)は、そのような表面分子であって、前立腺細胞上に特異的に存在し、前立腺癌細胞中では、正常組織と比べていっそう多く発現している(腫瘍関連抗原)。ヒトPSCAは、123個のアミノ酸を含み、N末端のシグナル配列、C末端のグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー配列、および複数のN−グリコシル化部位を有する。PSCAは、GPIアンカー型細胞表面分子のThy−1/Ly−6ファミリーに数えられるが、なぜなら、中でも、このファミリーに特徴的な保存システイン残基を有するからである[Reiter 1998](非特許文献2)。
【0005】
前立腺腫瘍中での高い発現ゆえ、PSCAは、前立腺癌を治療するために適した標的分子であって、PSCAを標的として目指す様々な治療戦略がこれまでのところ開発された。ヒトでの癌療法における治療標的としてのPSCAの有効性の証明が、中でも、あらかじめPSCAペプチドを含ませた樹状細胞を用いたワクチン接種によりもたらされた。ホルモン療法および化学療法に不応性の12名の前立腺癌患者での臨床試験(第1相および第2相)は、PSCAペプチドを含ませた樹状細胞を用いたワクチン接種が、五名の患者においてPSCAに対するT細胞応答を引き起こし、このT細胞応答は、平均すると、生存期間の延長と相関していたということを示した。しかも、一名の患者では、腫瘍量の減少を認めることができた[Thomas−Kaskel 2006](非特許文献3)。
【0006】
国際特許第2009/032949号A2(特許文献1)は、腫瘍ターゲティング用およびその検出用に使用される抗PSCAモノクローナル抗体(1G8)を開示する。この抗体のCDR領域は、以下のアミノ酸配列を有する:
【0007】
【表1】
【0008】
1G8抗体の細胞毒性特性ゆえに、この抗体は、エフェクター細胞のリクルーティングに基づくターゲティング戦略には適さない(Gu 2005)(非特許文献4)。
【0009】
国際特許第2009/032949号A2(特許文献1)に開示される抗体は、診断上、好ましくは、機能性マウスモノクローナル抗体および機能性ヒト化モノクローナル抗体、ならびに放射性核種で標識されたPSCA特異的ミニ抗体(Minibody)および二重特異性抗体(Diabody)の形態で使用される。
【0010】
[Feldmann 2010](非特許文献5)は、PSCAに結合するパラトープおよびCD3に結合するパラトープを含む組換え型二重特異性抗体を開発した。この二重特異性抗体のPSCA結合性パラトープは、PSCA抗体7F5から誘導されており[Morgenroth 2007](非特許文献6)、以下のアミノ酸配列を有するCDR領域を含む。
【0011】
【表2】
【0012】
[Feldmann 2010](非特許文献5)で開示された抗体は、in vitroで、T細胞が仲介する、PSCA陽性腫瘍細胞の特異的溶解を効果的にもたらした。使用されたPSCA陽性腫瘍細胞のおよそ40%を特異的溶解するためには、エフェクター細胞の、PSCA陽性腫瘍細胞に対する、20:1という比率において、[Feldmann 2010](非特許文献5)で開示された二重特異性抗体を少なくとも5ng使用するべきである。In vitroでは、[Feldmann 2010](非特許文献5)において開示された抗体を用いて、使用されたPSCA陽性腫瘍細胞の最大限およそ60%の特異的溶解を達成することができた(50〜100ngの抗体の存在下において)。効率のさらなる上昇は証明できなかった。1000ngの二重特異性抗体の存在下でさえも、さらに高い割合のPSCA陽性腫瘍細胞を溶解することはできなかった。
【0013】
公知のin vitroおよびin vivoデータは、PSCAが、前立腺癌の免疫療法用の標的抗原として多大な潜在能力を有し、診断上の標的として適していることを示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際特許第2009/032949号A2
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Roehl 2004
【非特許文献2】Reiter 1998
【非特許文献3】Thomas−Kaskel 2006
【非特許文献4】Gu 2005
【非特許文献5】Feldmann 2010
【非特許文献6】Morgenroth 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、特に組換え型二重特異性抗体の形態で、低い濃度で治療上有効である上に、PSCA陽性腫瘍細胞を効果的に溶解することができる、改善された、PSCAに対する抗体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この課題は、本発明によると、以下のアミノ酸配列:
−軽鎖の可変領域のCDR:CDR1配列番号1、CDR2配列番号2、CDR3配列番号3、および
−重鎖の可変領域のCDR:CDR1配列番号4、CDR2配列番号5、CDR3配列番号6
を含む相補性決定領域(CDR)を含有する、前立腺特異幹細胞抗原(PSCA)に結合する抗体(ここでは、抗PSCA抗体とも呼ばれる)によって解決される。
【0018】
前記のCDRsを特徴とする、本発明による抗体は、ここでは簡略化してMB1とも呼ばれる。本発明者は、広範囲に及ぶ検査の枠内で、意外なことに、組換えにより製造された二重特異性抗体の形態の、本発明による抗体が、非常にわずかな量においてもPSCA陽性腫瘍細胞の特異的溶解を仲介できることを確認した。さらには、意外なことに、新規抗体によって仲介される、PSCA陽性腫瘍細胞の特異的溶解は、より効果的であることが確認された。つまり、本発明による抗PSCA抗体を含有する二重特異性抗体を用いたin vitro検査では、使用されたPSCA陽性腫瘍細胞の90%超を溶解することができた。したがって、新規の抗PSCA抗体を用いることで、使用される抗体量を明らかに減少させることができる。同時に、本発明による抗体を用いると、PSCA陽性腫瘍細胞をより効果的に溶解することができるため、治療上の有効性が上昇する。本発明の抗体を用いることで有効性が達成可能である濃度は低いため、本発明の抗体によると、転移性PSCA陽性細胞の殺滅の改善も可能である。従来技術から公知の、匹敵する二重特異性コンストラクト中の抗PSCA 7F5を用いた比較検査は、in vitro試験(図3)でもin vivo試験(図4)でも、本発明による抗体の優位性を明らかに証明する。
【0019】
好ましい、本発明による抗PSCA抗体は、前記で定義されたようなCDR領域を含有し、ただし、軽鎖および重鎖の可変領域のアミノ酸配列は、以下のアミノ酸配列:
−軽鎖の可変領域配列番号24、重鎖の可変領域配列番号26、または
−軽鎖の可変領域配列番号20、重鎖の可変領域配列番号22
に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を示す。
【0020】
そのうち好ましいのは、上記で定義されたCDR領域を含む、その可変領域がヒト化構造を有する抗PSCA抗体である。特に好ましいのは、その軽鎖可変領域が配列番号24によるアミノ酸配列を含有し、その重鎖可変領域が配列番号26によるアミノ酸配列を含有する抗PSCA抗体である。
【0021】
本発明の主旨での「抗体」という用語は、抗原に特異的に結合することができるすべての抗体または抗体断片を含む。その際、組換え抗体とは、遺伝子工学的に変化させた生物を利用して製造される抗体のことである。抗体という用語は、完全なモノクローナル抗体と同様にそのエピトープ結合性断片も含む。その際、エピトープ結合性断片(ここでは抗体断片とも呼ばれる)は、抗原に結合することができる抗体部分を含む。本発明の主旨での抗体断片は、Fab、Fab‘、F(ab‘)、Fd、一本鎖(single−chain)可変断片(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド結合された可変断片(sdFv)、および軽鎖可変領域(V)または重鎖可変領域(V)のいずれか一方を含有する断片を含む。抗体断片は、可変領域を、単独か、またはヒンジ領域および定常領域の第一ドメイン、第二ドメイン、第三ドメイン(C1、C2、C3)から選択される別の領域と組み合わせてのいずれか一方で含有する。
【0022】
さらに、抗体という用語は、二重特異性抗体、三重特異性抗体、および四重特異性抗体のような、組換えにより製造された抗体を含む。同じく抗体という用語に含まれているのは、その抗体の異なる部分が様々な種に由来する、例えば、ヒト定常領域と組み合わされているマウス可変領域を含む抗体のようなキメラ抗体である。ここでは、ヒト化抗体も同じく、抗体という用語に含まれている。抗体をヒト化することの目的は、ヒト系で使用するために、例えばマウス抗体のような異種抗体の免疫原性を低下させることにあって、ただし、完全な結合親和性および抗原特異性は維持されたままである。ヒト化抗体は、例えば、リサーフェシング(Resurfacing)およびCDRグラフティングのような、様々な公知のやり方で製造することができる。リサーフェシングでは、分子モデリング、統計分析、および突然変異誘発の組み合わせにより、抗体表面上のすべての非CDR領域を変化させるため、これらの非CDR領域が、標的生物の抗体の表面に類似するようになる。CDRグラフティングでは、ヒト化されるべき抗体のCDR領域を、ヒトの可変領域に導入する。
【0023】
抗体断片は、場合によっては、リンカーを介して互いに結合されている。このリンカーは、短い(好ましくは10〜50個のアミノ酸残基長の)ペプチド配列を含み、このペプチド配列は、その抗体断片が完全な抗体の抗原特異性を示すように、抗体断片がVおよびVの三次元フォールディングを有するように、選択される。好ましいのは、グリシン−セリンリンカー、または配列番号130もしくは配列番号131によるアミノ酸配列を有するリンカーペプチドである。
【0024】
「可変領域」という名称は、ここでは、その配列において抗体間で異なり抗体の特異性およびその抗体の抗原への結合を特定する、抗体の重鎖および軽鎖の部分を意味する。その際、その多様性は、可変領域中に均一に分布しているのではなく、通例は、可変領域の三つの定められた区間、相補性決定領域(CDRs、超可変領域とも呼ばれる)内に集中しており、この領域は、軽鎖の可変領域と同様に重鎖の可変領域中にも含有されている。抗体の抗原結合部位、いわゆるパラトープは、抗体の軽鎖および重鎖の超可変領域(CDR)によって特徴づけられている。
【0025】
抗体を記載する際に、ここでは、その抗体が、その名称の中で記載される抗原に特異的に結合する抗体であることを表すために、抗「抗原」抗体という簡略化された名称も使用される。つまり、例えば、「抗PSCA抗体」とは、本発明の主旨では、抗原PSCAに特異的に結合する抗体と理解することができる。ある特定の抗原への、抗体の特異的結合とは、ここでは、ある抗体が、特定の抗原に高い親和性で結合し、別の抗原には明らかに低い親和性で結合し、好ましくは別の抗原には結合しないと理解される。
【0026】
好ましい抗体は、scFv断片またはF(ab‘)断片の形態で存在する。さらに好ましい抗体は、組換えにより製造され二つの異なるパラトープを含有する二重特異性抗体であって、そのパラトープのうちの一方は、PSCAに対してであって、もう一方はPSCAに対してではない。その際、二重特異性抗体の他方のパラトープは、好ましくは、エフェクター細胞上の表面構造に対するか、または10〜50個のアミノ酸長のペプチド(好ましくは、ヒトLaタンパク質の10〜50個アミノ酸長配列、特に好ましくは配列番号75または配列番号76によるアミノ酸配列の一つを有するペプチド)に対する。
【0027】
好ましくは、本発明による抗PSCA抗体(ナイーブ抗体または組換え抗体)はエフェクター群と共役している。共役とは、ここでは、ある物質、つまりエフェクター群の、抗体への結合を意味する。エフェクター群への抗体の結合は、好ましくは、融合タンパク質の形態での組換え発現によるか、またはin vitro法により製造され、ただし、エフェクター群は、好ましくは、化学リンカー群を介して抗体に結合される(例えば、チオエーテル結合またはジスルフィド結合を介して)。エフェクター群は、中間担体分子、例えば血清アルブミンを介して抗体に結合されていることも可能である。場合によっては、本発明による抗体は、複数のエフェクター群を含有する。その際、エフェクター群は、好ましくは、有効成分、ペプチド(10〜100個のアミノ酸長)、タンパク質(100個超のアミノ酸長)、共刺激分子、色素、または造影剤から選択される。
【0028】
好ましい本発明による抗PSCA抗体は、有効成分、つまり薬学上有効な物質と共役している。好ましい有効成分は、毒素、好ましくは細胞分裂阻害剤を含み、そのうち好ましくはメイタンシノイドおよびメイタンシノイド類似体、タキソイド、CC−1065およびCC−1065類似体、ドラスタチンおよびドラスタチン類似体、メトトレキサート、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メルファラン、ミトマイシンC、クロラムブシル、ならびにカリケアミシンから選択される。
【0029】
さらに好ましい本発明による抗PSCA抗体は、造影剤と共役している。好ましい造影剤は、放射性核種であって、そのうち好ましいのは、テクネチウム、レニウム、イットリウム、銅、ガリウム、インジウム、ビスマス、および白金の放射性同位体、特に99mTc、90Y、186Re、188Re、68Gaおよび111Inである。
【0030】
さらに好ましい本発明による抗PSCA抗体は、タンパク質、好ましくは酵素、好ましくはADEPT系に適した酵素、共刺激分子、好ましくはToll様受容体のリガンド、そのうち好ましくはCpG、または核酸と共役している。
【0031】
さらに好ましい抗PSCA抗体は、色素、好ましくは蛍光色素と共役している。
【0032】
さらに好ましい本発明による抗体は、ペプチドと共役しており、このペプチドは、そのペプチドに対して特異的な抗体が特異的に結合する結合領域を含有する。好ましくは、このペプチドは、ヒトLaタンパク質のアルファへリックス領域の、10〜50個のアミノ酸長のペプチド配列を含む(ヒトLaタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号77に相応する)。特に好ましいのは、配列番号75または配列番号76によるアミノ酸配列の一つに対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するペプチドである。
【0033】
特に好ましくは、本発明による抗PSCA抗体は、組換えにより製造される。好ましくは、本発明による組換え抗PSCA抗体は、少なくとも二つの異なる結合単位を含有し、ただし、
−それらの結合単位の少なくとも一つは、PSCAに特異的に結合し、この結合単位は、本発明による抗PSCA抗体のパラトープを含有し、
−それらの結合単位の少なくとももう一つは、PSCAとは異なる一つの抗原、好ましくはエフェクター細胞の表面構造に結合する。
【0034】
したがって、PSCA結合性の結合単位は、本発明による抗PSCA抗体を含み、それに応じて、少なくとも以下のCDR領域:
−以下のアミノ酸配列:CDR1配列番号1、CDR2配列番号2、CDR3配列番号3を含む、軽鎖可変領域のCDR、および
−以下のアミノ酸配列:CDR1配列番号4、CDR2配列番号5、CDR3配列番号6を含む、重鎖可変領域のCDR
を含有する。
【0035】
本発明の主旨での「結合単位」とは、定められた物質または構造を特異的に結合するあらゆる分子構造を意味する。その際、結合される物質または構造に依存して、この結合単位は、様々な構造を有する。したがって、本発明の主旨での「結合単位」という名称により、抗体が含まれている(この場合、結合単位は、少なくとも、抗体の機能性パラトープを含有する)と同様に、抗原と特異的に結合する別の分子、好ましくはタンパク質も含まれている。そのような分子は、好ましくは、細胞、特にエフェクター細胞上の表面構造(例えば表面受容体)に特異的に結合するリガンドである。
【0036】
本発明による抗体に含有されている好ましい結合単位は、エフェクター細胞に特異的に結合する。本発明の主旨でのエフェクター細胞の定義は、免疫反応を仲介するか、または免疫反応に能動的に関与している、自然免疫系および獲得免疫系の全細胞を含む。好ましくは、エフェクター細胞は、Tリンパ球、NK細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、および顆粒球から選択される。特に好ましいのは、Tリンパ球上の表面構造に対して結合する結合単位である。
【0037】
本発明による組換え抗体が、少なくとも二つの異なる抗体(少なくとも一つの本発明による抗PSCA抗体、および少なくとももう一つの、PSCAに特異的に結合するのではない抗体)を含有する場合、この組換え抗体は、好ましくは、二重特異性抗体、三重特異性抗体、または四重特異性抗体の形態で存在する。そのうち好ましいのは、一本鎖抗体に由来する二重特異性抗体(single chain bispecific diabody、scBsDb)、または一本鎖抗体に由来する二重特異性タンデム抗体(single chain bispecific tandem antibody、scBsTaFv)である。特に好ましくは、本発明による組換え抗体は、scBsTaFvの形態で存在する。
【0038】
本発明による組換え抗体中に含有されている好ましい非PSCA結合性抗体は(この場合は、組換え抗体は二重特異性抗体である)、エフェクター細胞の表面構造に特異的に結合する抗体である。この場合、非PSCA結合性結合単位は、少なくとも、エフェクター細胞の表面構造に結合する抗体のパラトープを含有する。特に好ましくは、この抗体は、エフェクター細胞上の以下の表面構造、つまり、CD3、CD8、CD4、CD25、CD28、CD16、NKG2D、NKp46、NKp44、活性化KIR受容体(activating Killer Cell Immunoglobulin−like Receptors)に対する。特に好ましいのは、CD3に対する抗体であって(抗CD3抗体)、ただし、抗CD3抗体は、以下のアミノ酸配列:
−重鎖可変領域のCDR:CDR1配列番号66、CDR2配列番号67、CDR3配列番号68、および
−軽鎖可変領域のCDR:CDR1配列番号58、CDR2配列番号59、CDR3配列番号60
を含むCDR領域を含有する。
【0039】
さらに好ましいのは、少なくとも二つの異なる結合単位を含有する組換え抗PSCA抗体であって、ただし、結合単位の少なくとももう一つは、エフェクター細胞上の表面構造に特異的に結合するリガンド(好ましくはタンパク質またはグリカン)である。好ましいリガンドは、(エフェクター)細胞表面への、その結合によって、エフェクター細胞の活性に影響を及ぼす。その際、このリガンドは、リガンドがエフェクター細胞の表面構造に特異的に結合し、その結合によりエフェクター細胞を活性化するためのシグナルカスケードを引き起こすように選択されている。リガンドとして好ましいのは、エフェクター細胞の表面上で特異的に発現される受容体に特異的に結合するタンパク質構造またはグリカンであって、ただし、このリガンドは、受容体へのその結合によって、エフェクター細胞の活性化を引き起こす。特に好ましいのは、ULB−Ps(例えば、ULB−P2)、MICA、MICB、および(例えば、IL2およびIL15のような)サイトカインから選択されるタンパク質構造である。
【0040】
本発明による抗体、特に本発明による組換え抗体は、in vivoおよびin vitroでのPSCA陽性細胞への特異的結合に適している。したがって、本発明は、本発明による抗PSCA抗体の、特に、腫瘍疾患好ましくは前立腺癌を治療するための医薬品として、または診断薬としての使用も含む。
【0041】
本発明は、さらに、腫瘍疾患、特に前立腺癌を治療するための、本発明による抗体を含む。同じく本発明によって含まれているのは、腫瘍疾患、特に前立腺癌の治療薬を製造するための、本発明による抗体の使用である。
【0042】
本発明による(好ましくは組換え)抗体の好ましい治療的適用は、腫瘍疾患、好ましくは前立腺癌の治療である。治療的適用においては、本発明による抗体を、好ましくは、治療上有効な物質またはエフェクター細胞の、腫瘍組織へのターゲティングに使用する。治療上有効な物質の、腫瘍組織へのターゲティングには、好ましくは、有効成分と共役している本発明による組換え抗体が使用される。エフェクター細胞の、腫瘍組織へのターゲティングには、好ましくは、少なくとも二つの異なる結合単位を含有する本発明による組換え抗体が使用され、ただし、結合単位の少なくとも一つは本発明による抗PSCA抗体であって、結合単位のもう一方は、エフェクター細胞、好ましくはT細胞上のCD3に特異的に結合する。そのために、好ましくは、上記の抗体を使用する。
【0043】
本発明によって、薬学的に許容される希釈剤または担体と関連して本発明による抗体を含有する医薬組成物も含まれている。好ましくは、本発明による医薬組成物は、静脈内投与に適した形態で存在する。
【0044】
好ましくは、本発明による医薬組成物中の抗体は、組換え形態で、キメラ抗体として、または特に好ましくは、低下した免疫原性を有するヒト化抗体として存在する。
【0045】
本発明による医薬組成物は、様々な剤形を含み、好ましくは、腸管外投与、特に好ましくは静脈内投与に適している。好ましくは、腸管外医薬組成物は、注入用に適した剤形で存在する。したがって、特に好ましい医薬組成物は、薬学的に許容される希釈剤または担体中での、抗体の溶液、乳濁液、または懸濁液である。
【0046】
薬学的に許容される担体は、好ましくは無菌液、特に水、緩衝水、0.4%塩溶液、0.3%グリシン等々である。この医薬組成物は、従来の、よく知られた技術によって滅菌される。この組成物は、好ましくは、薬学的に許容される、例えば、およそ生理学的条件をもたらすため、および/または組成物中に含有されている抗体の安定性を上げるために必要とされるような、例えば、pH値調整剤、および緩衝剤、毒性調整剤(Mittel zur Einstellung der Toxizitaet)等々のような補助物質を含有し、好ましくは、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、および乳酸ナトリウムから選択される。
【0047】
好ましくは、この医薬組成物は、0.1〜500mg/mlの抗体、特に好ましくは0.1〜250mg/mlの抗体を、特に、1〜500mMol/lの緩衝液と共に含有する、注入可能な緩衝溶液である。この注入可能な溶液は、好ましくは、液体剤形でも凍結乾燥剤形でも存在する。緩衝液は、好ましくは、ヒスチジン、スクシン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、およびリン酸カリウムから選択される。
【0048】
好ましくは、本発明による医薬組成物は、少なくとも二つの異なる(好ましくは組換え)抗体を含有し、ただし、少なくとも一つの本発明による抗PSCA抗体、および本発明による抗PSCA抗体と特異的結合をするもう一つの組換え抗体が含有されている。特に好ましいのは、以下の組み合わせ:
a)10〜50個のアミノ酸長のペプチドと共役している組換え抗PSCA抗体、およびそのペプチドに特異的に結合するもう一つの組換え抗体、または
b)10〜50個のアミノ酸長のペプチドに結合するさらに一つの抗体を含有する二重特異性抗PSCA抗体、およびPSCAとは異なる抗原に対して結合し、二重特異性抗PSCA抗体が結合するペプチドを含有するもう一つの組換え抗体
である。
【0049】
その際、少なくとも二つの異なる抗体は、本発明による医薬組成物中に、好ましくは個別に包装されて存在する。
【0050】
a)で定義される組み合わせを含有する、好ましい医薬組成物は、以下を含む:
−ヒトLaタンパク質のアルファへリックス領域の、10〜50個のアミノ酸長のアミノ酸配列を含有するペプチドと共役している組換え抗PSCA抗体(ヒトLaタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号77に相応する)。好ましくは、抗PSCA抗体は、配列番号75または配列番号76によるアミノ酸配列の一つに対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するペプチドと共役している。
−抗PSCA抗体のペプチドに対して特異的に結合するパラトープを含有し、エフェクター細胞の表面構造に特異的に結合するもう一つの結合単位を含有する、もう一つの(好ましくは組換え)抗体。そのうち好ましい結合単位は、上記で定義されたものに対応する。組換え抗PSCA抗体が、配列番号75または配列番号76によるアミノ酸配列の一つに対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するペプチドと共役している場合には、さらなる組換え抗体は、好ましくは、このペプチドに結合するパラトープとして、以下のアミノ酸配列:
○軽鎖可変領域のCDR:CDR1配列番号78、CDR2配列番号79、CDR3配列番号80、および重鎖可変領域のCDR:CDR1配列番号81、CDR2配列番号82、CDR3配列番号83(ここでは「5B9」パラトープとも呼ばれる)、または
○軽鎖可変領域のCDR:CDR1配列番号84、CDR2配列番号85、CDR3配列番号86、および重鎖可変領域のCDR:CDR1配列番号87、CDR2配列番号88、CDR3配列番号89(ここでは「7B6」パラトープとも呼ばれる)
を含有する。
【0051】
そのうち好ましい組み合わせは、
−配列番号75によるアミノ酸配列の一つに対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するペプチドを含有する抗PSCA抗体、および5B9パラトープを含有するもう一つの抗体、または
−配列番号76によるアミノ酸配列の一つに対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するペプチドを含有する抗PSCA抗体、および7B6パラトープを含有するもう一つの抗体である。
【0052】
b)で定義される組み合わせを含有する、好ましい医薬組成物は、
−エフェクター細胞の表面構造に特異的に結合し、ヒトLaタンパク質のアルファへリックス領域の、10〜50個のアミノ酸長のアミノ酸配列、好ましくは配列番号75または配列番号76によるアミノ酸配列の一つに対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するペプチドを含有するもう一つの抗体
−ヒトLaタンパク質のアルファへリックス領域の、10〜50個のアミノ酸長のアミノ酸配列を特異的に結合する抗体と共役している二重特異性抗PSCA抗体を含む。さらなる組換え抗体が、配列番号75または配列番号76によるアミノ酸配列の一つに対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するペプチドを含有する場合、二重特異性抗PSCA抗体は、好ましくは、上記で定義された5B9パラトープまたは7B6パラトープを含有する。
【0053】
そのうち好ましい組み合わせは、
−5B9パラトープを含有する二重特異性抗PSCA抗体、および配列番号75によるアミノ酸配列の一つに対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するペプチドを含有するもう一つの組換え抗体、または
−7B6パラトープを含有する二重特異性抗PSCA抗体、および配列番号76によるアミノ酸配列の一つに対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するペプチドを含有するもう一つの組換え抗体である。
【0054】
好ましい診断的適用は、in vivo診断法であって、造影剤と共役した本発明による抗PSCA抗体が、造影剤を、腫瘍組織へと意図的に輸送するために使用される。本発明による抗PSCA抗体の、さらに好ましい診断的適用は、in vitro診断法であって、好ましくは、色素と共役した本発明による抗PSCA抗体が、サンプル中、特に組織サンプル中のPSCA陽性細胞を検出するために使用される。
【0055】
本発明によって、本発明による抗PSCA抗体を含有する診断用組成物も含まれている。その診断用組成物中で、抗PSCA抗体は、好ましくは緩衝溶液中、好ましくは緩衝された塩溶液中に存在する。
【0056】
本発明は、同様に、そのヌクレオチド配列が本発明による抗PSCA抗体をコードする核酸も含む。好ましくは、軽鎖および重鎖の可変領域のCDRをコードする断片は、以下のヌクレオチド配列:
−軽鎖可変領域のCDR:CDR1配列番号7、CDR2配列番号9、CDR3配列番号11および重鎖可変領域のCDR:CDR1配列番号13、CDR2配列番号15、CDR3配列番号17、または
−軽鎖可変領域のCDR:CDR1配列番号8、CDR2配列番号10、CDR3配列番号12および重鎖可変領域のCDR:CDR1配列番号14、CDR2配列番号16、CDR3配列番号18を含有する。
【0057】
本発明の主旨での「核酸」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)のほかに、塩基のアデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)およびチミン(T)またはウラシル(U)が適した順序で配置されている(核酸配列)別のすべての鎖状ポリマーも含む。その際、本発明は、(チミンがウラシルで置換されている)対応するRNA配列、相補性配列、および修飾された核酸骨格または3’末端または5’末端を有する配列も含む。その際、「変化した骨格をもつ核酸配列」という用語は、例えば、ホスホチオエート誘導体化、アミド亜リン酸エステル誘導体化、もしくはO−メチル−誘導体化された骨格、ペプチド核酸(PNA)、およびロックド核酸(LNA)、または混合骨格をもつ配列のような、そのポリマー中では塩基のアデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)およびチミン(T)またはウラシル(U)が適した順序で配置されている別のすべての鎖状ポリマーを含む。「修飾された3’末端または5’末端」という用語は、その際、安定化に役立つ修飾と同様にマーカーの結合も含む。マーカーの例は、酵素、色素、または蛍光色素、放射性ヌクレオチド、ならびに、例えばジゴキシゲニンまたはビオチンのようなハプテンである。
【0058】
本発明によって、本発明による核酸を含有するベクター(同じく:「発現ベクター」)も含まれている。本発明の主旨では、発現ベクターとは、本発明による核酸配列を挿入または取り込みにより組換えて含有するプラスミド、ウイルス、または別の担体と理解される。この発現ベクターは、典型的には複製開始点、プロモーター、ならびに発現ベクターを含有する宿主細胞の表現型選択を可能にする特異的遺伝子配列を含有する。
【0059】
さらに、本発明は、本発明によるヌクレオチド配列もしくは本発明によるベクターを含有する宿主細胞または非ヒト宿主生物を含む。その際、ヌクレオチド配列またはベクターは、宿主細胞または非ヒト宿主生物中に組換えにより含有されている。
【0060】
本発明の主旨での宿主細胞は、少なくとも一つの本発明によるベクターを含有する、自然に存在する細胞または形質転換細胞株もしくは遺伝子改変細胞株である。その際、本発明は、少なくとも一つの本発明による発現ベクターがプラスミドまたは人工染色体として含有されている一過性形質転換体(例えば、mRNAインジェクションによる)または宿主細胞、ならびに本発明の発現ベクターが宿主のゲノムに安定に組み込まれている宿主細胞を含む。
【0061】
この宿主細胞は、好ましくは、原核生物および真核生物の細胞から選択される。胚を破壊しながら獲得されたヒト胚性幹細胞は、本発明の主旨での宿主細胞ではない。好ましい原核生物細胞は、Escherichia coliおよびBacillus subtilisの細胞から選択される。好ましい真核生物細胞は、酵母細胞(好ましくはSaccharomyces cerevisiaeまたはPichia pastoris)、昆虫細胞、両生類細胞、および哺乳類細胞(好ましくはCHO、HeLa、HEK293)から選択される。
【0062】
非ヒト宿主生物は、宿主生物のゲノムまたは宿主生物の単一細胞のゲノムに安定に組み込まれている本発明によるベクターを含有する。好ましい宿主生物は、植物、無脊椎動物、または脊椎動物、特にBovidae、Drosophila melanogaster、Caenorhabditis elegans、Xenopus laevis、Medaka、ゼブラフィッシュもしくはMus musculus、または挙げた生物の細胞もしくは胚である。
【0063】
本発明は、それを使用するとヒトPSCAをより効率よく結合することができる、抗PSCA抗体およびその抗体に帰属の発現系を記載する。その結果、本発明による抗PSCA抗体は、エフェクター細胞のリクルーティングにより腫瘍細胞の殺滅が仲介可能である治療系での使用に特に適している。本発明の抗体はPSCAへの親和性がより高いため、(例えば、治療的適用における)結合には、本質的によりわずかな量の抗体しか必要とされない。本発明による抗PSCA抗体は、明らかにより低い濃度かつ明らかにより高い効率で、PSCA陽性腫瘍細胞の特異的溶解を仲介し得るということを示すことができた。このことは、一方では、抗体消費量を軽減できることから、コスト面での利点を有する。他方、治療的適用においては、中でも転移性細胞についても改善されたターゲティングが期待でき、ならびに使用量がよりわずかであるゆえに、見込まれる副作用はよりわずかである。
【0064】
以下の図および例示的実施形態を手がかりに、それらに本発明を制限することなしに本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】本発明による異なる組換え抗体の図解を示す。A)PSCAに対する結合単位およびCD3に対する結合単位を含有する、scBsTaFvの形態での二重特異性抗体。B)同じく図示されている、CD3に対する結合単位およびヒトLaタンパク質の5B9領域に対する結合単位を含有する、scBsTaFvの形態での二重特異性抗体と共に使用するための、ペプチドタグ(5B9)を含有する、本発明による、PSCAに対する組換え抗体。C)同じく図示されている、CD3に対する結合単位およびヒトLaタンパク質の7B6領域に対する結合単位を含有する、scBsTaFvの形態での二重特異性抗体と共に使用するための、ペプチドタグ(7B6)を含有する、本発明による、PSCAに対する組換え抗体。それぞれのVおよびVサブユニットは、図に記載されているアミノ酸配列を含むリンカーペプチドを介して結合されている。
図2】組換え抗体のSDS−PAGEを示す。レーン1:二重特異性ヒト化抗体CD3−7B6(scBsTaFv CD3−7B6);レーン2:二重特異性ヒト化抗体CD3−5B9(scBsTaFv CD3(GS)−5B9);レーン3:本発明による二重特異性マウス抗体CD3−PSCA(7F5)(scBsTaFv CD3−PSCA(7F5));レーン4:本発明による単独特異性ヒト化抗体scFv PSCA(MB1)−7B6;レーン5:二重特異性ヒト化抗体CD3−PSCA(MB1)(scBsTaFv CD3−PSCA(MB1));レーン6:本発明による単独特異性ヒト化抗体scFv PSCA(MB1)−5B9。M...断片サイズが(上から下に向かって)70kDa、55kDa、40kDa、35kDa、25kDa、15kDaのマーカー。
図3】例示的実施形態4に記載の実験における、51Crを含むPC3−PSCA腫瘍細胞の特異的溶解を示す。バーは、以下の実験に対応する:1(黒色)...例示的実施形態1に由来するヒト化二重特異性scBsTaFv CD3−PSCA(MB1);2(白色)...例示的実施形態1に由来するマウス二重特異性scBsTaFv CD3−PSCA(MB1);3(縞状)...ヒト化二重特異性scBsTaFv CD3−PSCA(7F5)(比較例);4(点状)...マウス二重特異性scBsTaFv CD3−PSCA(7F5)(比較例)。
図4】例示的実施形態5に記載されるようにPSCA陽性腫瘍細胞、T細胞および抗体を移入した後に形成された腫瘍表面積を示す。A)エフェクター/ターゲット比が1:1;B)エフェクター/ターゲット比が10:1。番号の付いたラインは、以下の実験に対応する:1...二重特異性対照抗体である抗CD3x抗5B9(対照);2...例示的実施形態1に由来する単独特異性ヒト化scFv抗PSCA(MB1)(対照);3...抗体を伴わない対照実験(陰性対照);4...例示的実施形態1に由来するヒト化二重特異性scBsTaFv CD3−PSCA(MB1)(本発明);5...例3に記載されているようなヒト化二重特異性scBsTaFv CD3−PSCA(7F5)(比較例);6...7F5抗体のPSCA結合性可変領域を含有するヒト化二重特異性scBsDb CD3xPSCA(7F5)(比較例)。
【発明を実施するための形態】
【0066】
例示的実施形態1:PSCAに特異的に結合する組換え型二重特異性抗体(scBsTaFv)の製造(直接的ターゲティング)
PSCA細胞へのターゲティング用に使用するために、一方の結合単位によりPSCAに、そして他方の結合単位によりCD3に結合する二重特異性抗体(single chain bispecific diabody、scBsTaFv)を製造した。この二重特異性抗体は、ここでは、簡略化してCD3−PSCA(MB1)とも呼ばれ、図1Aに図解されている。
【0067】
PSCA結合ドメインは、本発明による抗PSCA MB1抗体の可変領域(マウス抗PSCA抗体:重鎖配列番号22、軽鎖配列番号20;ヒト化抗PSCA抗体:重鎖配列番号26、軽鎖配列番号24)を含有する。このPSCA結合ドメインは、PSCA陽性腫瘍細胞への結合に利用される。別のドメインは、T細胞受容体複合体の構成要素であるCD3に結合し、T細胞の活性化に利用される。その結果、PSCA陽性細胞へのT細胞のリクルーティングが可能となり、このやり方で、T細胞によるPSCA陽性細胞の特異的溶解が仲介される。
【0068】
モノクローナル抗PSCA MB1抗体を生成するために、H−2d陽性C3HxBalb/c F1マウスを、PSCAを表面上で組換えにより発現するP815細胞で免疫化した。脾臓細胞とミエローマ細胞との融合により、モノクローナル抗PSCA抗体を分泌するハイブリドーマ細胞が生じた。このハイブリドーマ細胞を単一クローニングすると、クローンMB1を選択することができた。抗PSCA MB1組換え抗体を生成するために、抗体重鎖(V)および抗体軽鎖(V)の可変ドメインの核酸配列を同定した。そのためには、まず抗PSCA MB1を分泌するハイブリドーマ細胞からmRNAを単離し、cDNAに転写(umschreiben)した。続いて、アイソタイプIgG1の重鎖の可変ドメインを縮重プライマー(プライマーペア配列番号90および配列番号91)を用いて、ならびにκ軽鎖の可変ドメインを縮重プライマー(プライマーペア配列番号92および配列番号93)を用いて増幅した。これらのPCR産物をそれぞれ、ベクターpGEM T−easyにサブクローニングし、シークエンシングした。
【0069】
三つのグリシン−セリンリンカー(GS、配列番号131)を介して重鎖可変領域が軽鎖可変領域と結合されている、抗PSCA MB1抗体のマウス一本鎖断片(scFv)(ここでは簡略化して「scFv MB1」と呼ぶ)をクローニングするために、配列番号94および配列番号95によるプライマーペアを利用して、抗PSCA MB1抗体の重鎖可変領域の核酸配列を増幅した。抗PSCA MB1抗体の軽鎖可変領域の核酸配列は、配列番号96および配列番号97によるプライマーペアを利用して増幅した。増幅した核酸を、オーバーラップPCRを利用して、scFv PSCA MB1へと融合し、SfiIおよびNotIを介して、真核細胞発現ベクターpSecTag2Bにクローニングした(この発現ベクターは、ここでは、「pSecTag2B_scFv MB1マウス」とも呼ぶ)。
【0070】
PSCAおよびCD3を対象としておりマウスMB1抗体のCDR領域を含有する二重特異性タンデム抗体(scBsTaFv)をクローニングするために、マウス抗CD3 scFvの核酸配列を、配列番号98および配列番号99によるプライマーペアを利用して増幅し、ApaIを介してマウスscFv MB1の3‘側へと、あらかじめ製造した発現ベクター「pSecTag2B_scFv MB1マウス」にクローニングすると、ベクター「pSecTag2B_scBsTaFv PSCA(MB1)−CD3マウス」が生じた。
【0071】
PSCAおよびCD3を対象としておりヒト化MB1抗体のCDR領域を含有する二重特異性タンデム抗体(scBsTaFv)をクローニングするために、PSCA MB1抗体およびCD3抗体の骨格領域(FWR)をヒト化した。そのためには、マウス抗体可変ドメインのFWRを、高相同性のヒトIgG1のヒトFWR配列で置換した。さらに、ヒト化抗体配列を、その発現および分泌に関して、ヒト細胞株を介して最適化した。マウスscFv CD3ないしはscFv MB1をヒト化するために、まずヒト化V配列およびV配列を個別に、前記のように増幅してから、PCRを介してアセンブルした。その際、V配列ないしはV配列のヒト化は、重複するオリゴヌクレオチドをアニーリングさせ、続いてヒト化V核酸配列ないしはV核酸配列を増幅することによって行った。重複するオリゴヌクレオチドの配列を決定できるように、まずマウスV配列ないしはV配列をヒトIgGデータバンク(NCBI IgBlast)と比較し、相同性が最も高いヒトIgGを同定し、最終的にはヒト化V配列ないしはV配列を理論的に作成し、重複するオリゴヌクレオチドを合成した。長さの異なるリンカーペプチドが使用された様々な二重特異性抗体を構築した。
【0072】
抗CD3抗体のヒト化
抗CD3抗体の重鎖可変領域をヒト化するために、配列番号100〜配列番号105によるオリゴヌクレオチドをアニーリングさせた。続いて、この、抗CD3抗体の重鎖可変領域のヒト化核酸配列(GSリンカーペプチド、配列番号132を含む)を、配列番号105および配列番号106によるプライマーペアを利用して増幅した。抗CD3抗体の軽鎖可変領域をヒト化するためには、配列番号107〜配列番号112によるオリゴヌクレオチドをアニーリングさせた。この、抗CD3抗体の軽鎖可変領域のヒト化核酸配列を、配列番号112および配列番号113によるプライマーペアを利用して増幅した。
【0073】
重鎖可変領域が、一つのグリシン−セリンリンカー(GS)を介して軽鎖可変領域と結合されている、抗CD3抗体のヒト化scFvを生成するために、まず抗CD3抗体の重鎖可変領域のヒト化核酸配列を、SfiIおよびBamHIを介して、発現ベクターpSecTag2Bにクローニングし、続いてBamHIおよびNotIを介して、抗CD3抗体の軽鎖可変領域のヒト化核酸配列を、その重鎖可変領域ヒト化核酸配列の下流へと、同じ発現ベクターに挿入した。
【0074】
重鎖可変領域が、三つのグリシン−セリンリンカー(GS)を介して軽鎖可変領域と結合されている、抗CD3抗体のヒト化scFvを生成するために、まず、三つのグリシン−セリンリンカー(GS)を含む、抗CD3抗体の重鎖可変領域のヒト化核酸配列を製造した。そのためには、抗CD3抗体の重鎖可変領域のヒト化核酸配列(三つのGSリンカーペプチドを含む)を、配列番号105および配列番号114によるプライマーペアを利用して増幅し、SfiIおよびBamHIを介して、発現ベクターpSecTag2Bへとクローニングし、続いてBamHIおよびNotIを介して、抗CD3抗体の軽鎖可変領域のヒト化核酸配列を、その重鎖可変領域ヒト化核酸配列の下流へと、同じ発現ベクターに挿入した。
【0075】
抗PSCA MB1抗体のヒト化
抗PSCA MB1抗体の軽鎖可変領域をヒト化するために、配列番号115〜配列番号118によるオリゴヌクレオチドをアニーリングさせた。この、抗PSCA MB1抗体の軽鎖可変領域のヒト化核酸配列を、配列番号119および配列番号120によるプライマーペアを利用して増幅した。
【0076】
抗PSCA MB1抗体の重鎖可変領域をヒト化するために、配列番号121〜配列番号125によるオリゴヌクレオチドをアニーリングさせた。この、抗PSCA MB1抗体の重鎖可変領域のヒト化核酸配列を、配列番号126および配列番号127によるプライマーペアを利用して増幅した。
【0077】
二重特異性ヒト化抗体scBsTaFv CD3−PSCA(MB1)の製造
最終的には、MB1抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のヒト化核酸配列を、オーバーラップPCRを利用して、配列番号128および配列番号129によるプライマーを使用しながら、アニーリングさせて増幅した。そのようにして生成された、ヒト化scFv MB1をコードする核酸配列(V−GSGSGASAAGSGS−Vの構成、配列番号130によるリンカーペプチド)を、XhoIおよびApaIを介して、前記の、抗CD3抗体のヒト化scFv(三つのGSリンカーペプチドを含む)の下流にクローニングすると、発現ベクター「pSecTag2B_scBsTaFv PSCA(MB1)−CD3ヒト」が生じた。
【0078】
図1Aに記載の二重特異性ヒト化抗体を発現するために、Hek293T細胞をこの発現ベクターで形質転換し、分泌された抗体を、ニッケルアフィニティクロマトグラフィを利用し、場合によっては硫酸アンモニウム分別沈殿法と組み合わせて、細胞培養上清から精製した。図2のレーン5は、精製されたこの二重特異性抗体のSDSゲル電気泳動写真を示す。
【0079】
例示的実施形態2:PSCAに特異的に結合する組換え型二重特異性抗体の製造(モジュール式ターゲティング)
本発明による医薬組成物(「モジュール式ターゲティング系1」、図1Bに図解)を供給するために、以下の組換え抗体を製造した:
−配列番号75によるペプチド(ここでは「E5B9」とも呼ぶ)を含有する本発明による組換え抗PSCA抗体。この抗体は、以下では、scFv PSCA(MB1)−E5B9と呼ぶ。
−CD3および配列番号75によるペプチドを対象とする二重特異性抗体(scBsTaFv)。CD3に対するパラトープは、以下の可変領域アミノ酸配列:重鎖配列番号65、軽鎖配列番号57を含む。配列番号75によるペプチドに対するパラトープは、以下の可変領域超可変領域アミノ酸配列:軽鎖CDR1配列番号78、CDR2配列番号79、CDR3配列番号80、重鎖CDR1配列番号81、CDR2配列番号82、CDR3配列番号83を含む。この抗体を、以下では、scBsTaFv CD3−5B9と呼ぶ。抗CD3抗体のVHとVLとの間のリンカーペプチドの点でのみ互いに異なる二つの異なるscBsTaFv CD3−5B9を製造した(図1Bを参照)。
【0080】
ヒト化scFv PSCA(MB1)−E5B9のクローニング:
C末端にE5B9エピトープを有するヒト化scFv PSCA(MB1)(MB1[V−GSGSGASAAGSGS−MB1 V]−[GS−E5B9]、図1B下図に図解)を生成するために、例示的実施形態1に記載されたヒト化scFv PSCA(MB1)(MB1 V−GSGSGASAAGSGS−MB1 V−GS、配列番号130および配列番号132によるリンカーペプチド)を、配列番号134および配列番号135によるプライマーを利用して増幅し、続いてSfiIおよびNotIを介して、pSecTag2Bにクローニングした。配列番号136および配列番号137によるオリゴヌクレオチドをアニーリングさせてから、このE5B9用核酸配列を、NotIおよびXhoIを介して、ヒト化scFv PSCA(MB1)の3‘側にクローニングすると、コンストラクト「pSecTag2B_scFv PSCA(MB1)−E5B9ヒト化」が生じた。
【0081】
T細胞およびE5B9ペプチドに結合する二種のエフェクターモジュール「scBsTaFv CD3(GS)−5B9」および「scBsTaFv CD3(3xGS)−5B9」のクローニング
図1Bに図解されているように、scFv PSCA(MB1)−5B9を含むモジュール式ターゲティング系Iを構築するために、二つの、いわゆるエフェクターモジュール(二重特異性抗体scBsTaFv CD3−5B9)を製造し、これらのエフェクターモジュールは、抗CD3ドメインのV鎖とV鎖との間のリンカーペプチドのグリシン−セリン(GS)要素の数の点で異なるため、「scBsTaFv CD3(GS)−5B9」ないしは「scBsTaFv CD3(3xGS)−5B9」と呼ばれた。
【0082】
−「scBsTaFv CD3(GS)−5B9」ヒト化のクローニング(スケッチは図1B上図を参照):
5B9抗体(ペプチド5B9に対して特異的に方向づけられる)の重鎖可変領域をヒト化するために、配列番号138〜配列番号142によるオリゴヌクレオチドをアニーリングさせた。続いて、この、5B9抗体重鎖可変領域のヒト化核酸配列(GS−リンカーペプチド、配列番号132を含む)を、配列番号143および配列番号144によるプライマーペアを利用して増幅した。5B9抗体の軽鎖可変領域をヒト化するためには、配列番号145〜配列番号149によるオリゴヌクレオチドをアニーリングさせた。この、5B9抗体軽鎖可変領域のヒト化核酸配列を、配列番号150および配列番号151によるプライマーペアを利用して増幅した。
【0083】
最終的には、5B9Vおよび5B9Vのヒト化核酸配列を、オーバーラップPCRを利用して、配列番号152および配列番号153によるプライマーを使用しながら、アニーリングさせて増幅した。そのようにして生成された、ヒト化scFv 5B9(V−3xGS−V)の核酸配列を、XhoIおよびApaIを介して、ヒト化scFv CD3 V−GS−Vの下流へと「pSecTag2B_scFv CD3 V−GS−V」ヒト化にクローニングすると、ベクター「pSecTag2B_scBsTaFv CD3(GS)−5B9ヒト化」が生じた。
【0084】
−「scBsTaFv CD3(3xGS)−5B9」ヒト化のクローニング(スケッチは図1B中央図を参照):
scFv 5B9(V−3xGS−V)のヒト化配列を、XhoIおよびApaIを介して、ヒト化scFv CD3(V−3xGS−V)の下流へと「pSecTag2B_scFv CD3 V−3xGS−V」ヒト化にクローニングすると、ベクター「pSecTag2B_scBsTaFv CD3(3xGS)−5B9ヒト化」が生じた。
【0085】
本発明による医薬組成物(「モジュール式ターゲティング系2」、図1Cに図解)を供給するために、以下の組換え抗体を製造した:
−配列番号76によるペプチド(ここでは「E7B6」とも呼ぶ)を含有する本発明による組換え抗PSCA抗体。この抗体を、以下では、scFv PSCA(MB1)−E7B6と呼ぶ。
−CD3および配列番号76によるペプチドを対象とする二重特異性抗体(scBsTaFv)。CD3に対するパラトープは、以下の可変領域アミノ酸配列:重鎖配列番号65、軽鎖配列番号57を含む。配列番号76によるペプチドに対するパラトープは、以下の可変領域超可変領域アミノ酸配列:軽鎖CDR1配列番号84、CDR2配列番号85、CDR3配列番号86、重鎖CDR1配列番号87、CDR2配列番号88、CDR3配列番号89を含む。この抗体を、以下では、scBsTaFv CD3−7B6と呼ぶ。
【0086】
ヒト化scFv PSCA(MB1)−E7B6のクローニング:
C末端にE7B6エピトープを有するヒト化scFv PSCA(MB1)(MB1[V−GSGSGASAAGSGS−MB1 V]−[GS−E7B6]、図1C下図に図解)を生成するために、まず配列番号154および配列番号155によるオリゴヌクレオチドをアニーリングさせ、続いてこのE7B6核酸配列を、NotIおよびXhoIを介して、「pSecTag2B_scFv PSCA(MB1)ヒト化」(V−GSGSGASAAGSGS−V−GS、前記の、E5B9ペプチドを含むコンストラクトに類似)の3‘側にクローニングすると、ベクター「pSecTag2B_scFv PSCA(MB1)−E7B6ヒト化」が生じた。
【0087】
T細胞およびE7B6ペプチドに結合するエフェクターモジュール「scBsTaFv CD3(3xGS)−7B6」ヒト化のクローニング:
7B6抗体(ペプチドE7B6に対して特異的に方向づけられる)の重鎖可変領域をヒト化するために、配列番号156〜配列番号160による重複オリゴヌクレオチドをアニーリングさせた。続いて、この、7B6抗体重鎖可変領域のヒト化核酸配列(GS−リンカーペプチド、配列番号132を含む)を、配列番号161および配列番号162によるプライマーペアを利用して増幅した。7B6抗体の軽鎖可変領域をヒト化するためには、配列番号163〜配列番号167によるオリゴヌクレオチドをアニーリングさせた。この、7B6抗体軽鎖可変領域のヒト化核酸配列を、配列番号168および配列番号169によるプライマーペアを利用して増幅した。
【0088】
最終的には、7B6Vおよび7B6Vのヒト化核酸配列を、オーバーラップPCRを利用して、配列番号170および配列番号171によるプライマーを使用しながら、アニーリングさせて増幅した。そのようにして生成された、ヒト化scFv 7B6(V−3xGS−V)をコードする核酸配列を、XhoIおよびApaIを介して、ヒト化scFv CD3 V−GS−Vの下流へと「pSecTag2B_scFv CD3 V−GS−V」ヒト化にクローニングすると、ベクター「pSecTag2B_scBsTaFv CD3(GS)−7B6ヒト化」が生じた。
【0089】
モジュール式ターゲティング系1および2の個々の融合タンパク質を発現するために、Hek293T細胞をこれらの発現ベクターで形質転換し、分泌された組換えscFv(scFv PSCA−E5B9またはscFv PSCA−E7B6)および二重特異性抗体(scBsTaFv CD3(GS)−5B9ないしはscBsTaFv CD3(3xGS)−5B9およびscBsTaFv CD3−7B6)を、Ni−NTAアガロースを介するアフィニティクロマトグラフィ(Qiagen社、ヒルデン、ドイツ)を利用し(場合によっては硫酸アンモニウム分別沈殿法と組み合わせて)細胞培養上清から精製した。SDS−Pageおよびイムノブロットにより、組換え抗体誘導体の純度および安定性を確かめた(図2)。
【0090】
例示的実施形態3:PSCAへの結合の解離定数の特定
抗PSCA MB1抗体(本発明による)および抗PSCA 7F5抗体(比較例、[Feldmann 2010]に由来する抗体)を用いた、組換え型二重特異性抗体のそれぞれの抗PSCAドメインの親和定数の算定は、PSCA陽性PC3細胞への結合のフローサイトメトリー解析に基づいた。
【0091】
組換え型抗PSCA抗体ドメインの結合曲線を生成するために、それぞれ2x10個のPSCA陽性細胞を、100μlの二重特異性抗体(MB1および7F5)と1時間、4℃でインキュベートした。抗体は、それぞれ以下の濃度で使用した:
【0092】
調合ごとの抗体量(ng) 抗体濃度(pmol/l)
1000 90000
100 9000
50 4500
10 900
5 450
1 90
0.5 45
0.1 9
0.05 4.5
0.01 0.9
0.001 0.09
【0093】
組換え型CD3−PSCA抗体の特異的結合を検出するために、マウス抗c−myc IgG−FITC検出用抗体(AbD Serotec社、デュッセルドルフ、ドイツ)を使用し、この検出用抗体を、最初の染色ステップ終了後に、抗PSCA抗体で標識されたPSCA陽性細胞と30分間、4℃においてインキュベーションした。陰性対照としては、そのなかでPSCA陽性細胞が、検出用抗体であるマウス抗c−myc IgG−FITCでのみ染色されたサンプルを用いて共に行った。これらの細胞を、BD FACS Caliburフローサイトメトリー(BD Biosciences Pharmingen社、ハイデルベルク、ドイツ)を用いて解析し、それらのデータをソフトウェアWinMDI 2.8(Joseph Trotter、ラホヤ、米国カリフォルニア州)を用いて評価した。
【0094】
評価するために、算出されたMFI値(平均蛍光強度値)を、検査された抗体濃度に対してプロットし、それぞれ、二次多項式回帰型のトレンドラインを算出した。親和定数を算出するためには、二次多項式回帰型のトレンドラインを算出し、挿入した。その結果として生じる結合曲線を、最大MFI値の50%の値、それゆえ結合の半数飽和時に達成される濃度と定義されている親和定数Kを算出するための基盤として利用した。この定数を算出するためには、まず、二次関数に従う結合曲線の一次導関数を形成した。この方程式を起点として関数の最大値を算出するために、一次導関数を「ゼロ」とし、xについて解いた。得られたx値を出力方程式に挿入することにより、関数の最大値ymax、それゆえ結合部位の半数飽和時のMFI値に対応するymax/2値を算出した。K値は、ymax/2でのx値に対応するため、この値は、ymax/2を、結合曲線の二次関数に挿入し、この方程式をxに関して置き換えることにより、最終的に算出することができる。
【0095】
以下のK値は、このやり方で、PSCAへの結合に関して算出された:
【0096】
【表3】
【0097】
したがって、本発明による抗PSCA抗体の、抗原PSCAに対する親和性は、従来技術から公知の抗体7F5の親和性よりも一桁高いことを示すことができた。
【0098】
例示的実施形態4:二重特異性抗PSCA抗体を用いた、PSCA細胞の特異的溶解
クロム放出アッセイにおいて、あらかじめ活性化されたPBMCs 5x10個を、51Crを含むPC3−PSCA腫瘍細胞5x10個と一緒に(エフェクター/ターゲット比=10:1)、組換え抗体の存在下および不在下に、RPMI培地中におき総体積200μlで共培養した。それに加えて、例1に由来する本発明による抗体を使用した(マウス型同様にヒト化型も)。比較例としては、従来技術から公知のマウス抗PSCA(7F5)抗体を、同様に構成された二重特異性抗体中で使用した。7F5抗体の可変領域は、重鎖配列番号48、軽鎖配列番号50に対応する。以下の具体的な抗体コンストラクトを用いて実験を行った:
1.例示的実施形態1に由来するヒト化二重特異性scBsTaFv CD3−PSCA(MB1)
2.例示的実施形態1に由来するマウス二重特異性scBsTaFv CD3−PSCA(MB1)
3.ヒト化二重特異性scBsTaFv CD3−PSCA(7F5)(比較例)
4.マウス二重特異性scBsTaFv CD3−PSCA(7F5)(比較例)
【0099】
インキュベータ中におき37℃で20時間インキュベーションした後、培地中に放出されたクロムを測定した。特異的溶解を以下のように算出した:
特異的溶解(%)=[放出された51Cr−自然放出された51Cr(最小値)]/[最大限放出された51Cr(最大値)−最小値]x100%
【0100】
このin vitro実験の結果は、図3にグラフで図示されている。図示されているのは、溶解されたPC3細胞の、使用された総PC3細胞に対する百分率での比率である(y軸)。実験群1および2の、本発明による抗体が、1ng未満の量ですでに、PSCA陽性細胞の激しい溶解を示すのに対して、匹敵するコンストラクトにおける公知の7F5抗体の場合(実験群3および4)、数ngの抗体を使用してはじめて検出可能な溶解を認めることができる。最大限で、使用したPC3細胞のおよそ60%の溶解が認められた。本発明による抗体を用いると、明らかに少量の抗体量の使用においてすでに、使用したPC3細胞のおよそ80%の溶解を認めることができた。最大限で、使用したPC3細胞の90%超を、本発明による抗体(実験群1)を用いて溶解することができた。
【0101】
例示的実施形態5:scBsTaFv CD3−PSCA(MB1)ヒト化によるin vivoでの腫瘍成長阻害
本発明による抗PSCA MB1抗体の有効性を証明するために、その抗体から誘導された、例示的実施形態1に基づき製造された二重特異性抗体scBsTaFv CD3−PSCA(MB1)(図1A上図に図示)の効果を、マウス腫瘍モデルで検査した。モデル生物としては、PSCA陽性PC3腫瘍細胞の移入後に腫瘍を形成するヌードマウスを使用した。この実験では、PSCA陽性腫瘍細胞を、T細胞および抗体と組み合わせて移入した。
【0102】
そのために以下の抗体を使用し、ただし、マウスごとに10μgの抗体を注入した:
(1)二重特異性対照抗体、抗CD3x抗5B9(対照)
(2)例示的実施形態1に由来する単独特異性ヒト化scFv抗PSCA(MB1)(対照)
(3)抗体を伴わない対照実験(陰性対照)
(4)例示的実施形態1に由来するヒト化二重特異性scBsTaFv CD3−PSCA(MB1)
(5)例3に記載されるようなヒト化二重特異性scBsTaFv CD3−PSCA(7F5)(比較例)
(6)7F5抗体のPSCA結合性可変領域を含有するヒト化二重特異性scBsDb CD3xPSCA(7F5)(比較例)
【0103】
二重特異性抗体の効果は、CD3陽性T細胞の、PSCA陽性腫瘍細胞へのリクルーティング、およびそれによって仲介される腫瘍細胞の溶解に基づく。
【0104】
第一実験では、実験群ごとにそれぞれ8匹のヌードマウスに、5x10個のPSCA陽性腫瘍細胞および5x10個のT細胞を移入した(エフェクター/ターゲット比は1:1)。対照群(1)および(3)では、抗PSCA抗体の不在下において、迅速な腫瘍成長が認められた。単独特異性scFv抗PSCA(MB1)が注入された対照実験(2)も、迅速な腫瘍成長を示した。これにより、単独特異性抗体の細胞毒性効果を除外することができ、有効性の理由は、二重特異性コンストラクトにのみあると見なすことができる。形成された腫瘍の腫瘍表面積は、細胞移入から25日後に算出された。三つの対照群は、腫瘍表面積の著しい相違を示さなかった(図4A)。
【0105】
抗PSCA−7F5抗体の可変領域を含有する二重特異性比較抗体(タンデム抗体の形態での比較群(5)および二重特異性抗体の形態での(6))を移入すると、同じく迅速な腫瘍成長が認められた(データは示さない)。腫瘍細胞がエフェクター/ターゲット比10:1にある(つまり、10倍量のT細胞;5x10個のPSCA陽性腫瘍細胞および5x10個のT細胞の移入)第二実験においても迅速な腫瘍成長が認められ、この腫瘍成長は、対照群(1)に対して統計的に有意な相違を示さなかった(図4B)。腫瘍成長は、抗PSCA 7F5抗体により阻害されたのではなく、単にわずかに遅れただけであった。したがって、T細胞過剰下においても、抗PSCA 7F5抗体により腫瘍成長のin vivo阻害を認めることはできない。
【0106】
本発明による、例示的実施形態1に由来する二重特異性抗体scBsTaFv CD3−PSCA(MB1)の、エフェクター/ターゲット比1:1での移入は、腫瘍成長を著しく軽減させることができた。細胞移入から25日後に、8匹の実験動物のうちの2匹中では、明らかに表面積の少ない腫瘍(直径がおよそ2mm)が出現した一方で、8匹の実験動物のうちの6匹は、腫瘍を伴わなかった(図4A)。したがって、本発明による抗PSCA MB1抗体(実験群(4))は、in vivo有効性に関して、同一の実験条件下では、比較可能に構成されている抗PSCA 7F5抗体(実験群(5))を明らかに上回っている。
【0107】
引用された非特許文献
Feldmann A, Stamova S, BippesCC, Bartsch H, Wehner R, Schmitz M, Temme A, CartellieriM, Bachmann M. Retargeting of T cells toprostate stem cell antigen expressing tumor cells: comparison of differentantibody formats. Prostate. 2011 Jun 15;71(9):998-1011. doi:10.1002/pros.21315. Epub2010 Dec 28.
Gu Z, Yamashiro J, Kono E, Reiter RE. Anti-prostate stem cell antigenmonoclonal antibody 1G8 induces cell death in vitro and inhibits tumor growthin vivo via a Fc-independent mechanism. Cancer Res. 2005 Oct 15;65(20):9495-500.
Morgenroth A, CartellieriM, Schmitz M, Guenes S, WeigleB, Bachmann M, Abken H, RieberEP, Temme A. Targeting of tumor cells expressing theprostate stem cell antigen (PSCA) using genetically engineered T-cells.Prostate. 2007 Jul 1;67(10):1121-31.
Reiter, R.E., Gu, Z., Watabe,T., Thomas, G., Szigeti, K., Davis, E., Wahl, M., Nisitani,S., Yamashiro, J., Le Beau, M.M., Loda,M. und Witte, O.N. Prostate stem cell antigen: A cell surface markeroverexpressed in prostate cancer. Proc Natl AcadSci USA. 95(4): 1735-40(1998)
Roehl, K.A., M. Han, C. G. Ramos, J. A. V. Antenor,and W. J. Catalona. Cancer progression and survivalrates following anatomical radical retropubicprostatectomy in 3,478 consecutive patients: long-term results. J Urol, 172(3):910-4, Sep 2004.
Thomas-Kaskel, A.-K., R. Zeiser,R. Jochim, C. Robbel, W. Schultze-Seemann, C. F. Waller, and H. Veelken.Vaccination of advanced prostate cancer patients with PSCA and PSApeptide-loaded dendritic cells induces DTH responses that correlate withsuperior overall survival. Int J Cancer,119(10):2428-34, Nov 2006.
図1
図2
図3
図4
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]