(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のデータ取得装置と、これを適用した生体センサの実施の形態について説明する。
【0011】
<データ取得装置>
図1は、実施形態のデータ取得装置150を示す図である。データ取得装置150は、センサ300等の任意の機器の端子、電極などに接続されて、目的とするデータを取得する。センサ300は、例えば、心電波形、脳波、脈拍等を表す生体信号を検出するセンサであるが、この例に限定されない。以下では、センサ300が心電波形を表す生体信号(アナログ心電データ)を検出するセンサである形態について説明するが、センサ300は温度、光、圧力、地磁気等、生体信号以外の信号を検出するセンサであってもよい。
【0012】
データ取得装置150は、ASIC(application specific integrated circuit、特定用途向け集積回路)150A、MPU(Micro Processing Unit)150B、メモリ150C、バス150D、150E、水晶振動子60、70、RCオシレータ80、及び、スイッチ90を有する。バス150D、150Eは、一例として、SPI(Serial Peripheral Interface)バスである。
【0013】
ASIC150Aはセンサ300に接続されており、データ取得装置150の内部ではバス150Dを介してMPU150Bに接続されている。また、ASIC150Aには水晶振動子60が接続されている。
【0014】
ASIC150Aは、ADC(Analog to Digital Converter、AD変換器)151A及び端子152Aを有する。ASIC150AのADC151A及び端子152A以外の構成要素については、
図2を用いて後述する。
【0015】
ASIC150Aは、SPIインターフェイスに対応した端子を有する。ASIC150Aは、MPU150Bに対してマスタデバイス及びスレーブデバイスのいずれか一方になり得る。以下では、マスタデバイスであることをマスタと称し、スレーブデバイスであることをスレーブと称する。マスタ/スレーブの切り替えは、MPU150Bによって行われる。ここで、マスタとは、複数の機器が協調動作を行う際に、複数の機器の制御を司る機器である。スレーブとは、複数の機器が協調動作を行う際に、マスタからの指令又は制御に従って動作する機器である。データ取得装置150がセンサ300からデータを取得する間は、ASIC150Aはマスタに設定され、MPU150Bはスレーブに設定されて消費電力を抑制する。
【0016】
ADC151Aは、一例として、SAR(Successive Approximation Register、逐次比較)/SF(Stochastic Flash)型のAD変換器であり、例えば、特開2016-092648号公報に記載されたA/D変換装置を用いることができる。
【0017】
ADC151Aは、センサ300によって取得されるアナログ心電データをデジタル心電データに変換してMPU150Bに出力する。
【0018】
端子152Aは、バス150Dを介してMPU150Bに接続される。実際には、端子152Aは複数あり、切替信号を出力するM/S端子、SS(Slave Select)端子、MISO(Master In Slave Out)端子、MOSI(Master Out Slave In)端子、CLK端子等を含む。
【0019】
端子152AのうちのM/S端子は、MPU150Bからマスタ/スレーブを切替る切替信号が入力される第1端子の一例である。端子152AのうちのMOSI端子は、ASIC150AがマスタであってMPU150Bがスレーブであるときに、ASIC150AがMPU150Bにデジタル心電データを出力する出力端子の一例である。
【0020】
また、ASIC150Aは、水晶振動子60が発振する32MHzのクロックを分周して、内部で用いる4MHzのシステムクロックを生成する。この構成についは
図2を用いて後述する。
【0021】
MPU150Bは、情報処理装置の一例であり、バス150Dを介してASIC150Aに接続されるとともに、バス150Eを介してメモリ150Cに接続されている。MPU150Bには、スイッチ90を介してRCオシレータ80と水晶振動子70が接続されている。スイッチ90は、水晶振動子70及びRCオシレータ80のいずれか一方を選択的にMPU150Bに接続するスイッチであり、MPU150Bによってマスタ-スレーブ間の切り替えが行われる。
【0022】
RCオシレータ80は、水晶振動子70が出力するクロックよりも周波数が低いクロックを出力する。RCオシレータ80は、水晶振動子70よりもクロックの周波数が低く、精度が低いが、水晶振動子70よりも消費電力が少ない。
【0023】
水晶振動子70とRCオシレータ80のオン/オフはMPU150Bによって切り替えられる。水晶振動子70がオンのときにはRCオシレータ80はオフにされ、RCオシレータ80がオンのときには水晶振動子70はオフにされる。
【0024】
MPU150Bは、主制御部151B、切替設定部152B、演算部153B、メモリ154B、及び端子155B、156Bを有する。主制御部151B、切替設定部152B、演算部153Bは、MPU150Bを実現するコンピュータによって実現される機能を表したものであり、メモリ154Bは、MPU150Bを実現するコンピュータのメモリを機能的に表したものである。
【0025】
主制御部151Bは、MPU150Bの処理を統括する処理部であり、切替設定部152B、演算部153Bが実行する処理以外の処理を実行する。
【0026】
切替設定部152Bは、MPU150Bをマスタ及びスレーブのいずれか一方に設定する。また、切替設定部152Bは、ASIC150Aのマスタ/スレーブの切り替えを行う切替信号を生成し、ASIC150Aに切替信号を出力する。
【0027】
演算部153Bは、ASIC150Aから入力されるデジタル心電データの加算値を算出する処理と、加算値の平均値を算出する処理とを実行する。ここでは一例として、演算部153Bは、ASIC150Aからデジタル心電データを取得する度に加算処理を行い、8つのデジタル心電データの加算値が得られる度に、平均値を算出する。演算部153Bは、平均値を算出すると、メモリ150Cに格納する。
【0028】
メモリ154Bは、MPU150Bの主制御部151B、切替設定部152B、演算部153Bが処理を実行するのに必要なプログラムやデータを格納する。また、メモリ154Bは、演算部153Bの加算処理によって得られる加算値を保持する。
【0029】
端子155Bは、実際には複数あり、切替信号を出力するM/S端子、SS端子、MISO端子、MOSI端子、CLK端子等を含む。M/S端子は、切替信号を出力する第2端子の一例であり、MOSI端子は、ASIC150Aの端子152Aに接続され、ASIC150Aがマスタであり、MPU150Bがスレーブであるときに、ASIC150Aからデジタル心電データが入力される入力端子の一例である。
【0030】
端子156Bは、メモリ150C及びケーブル51を介してPC50に接続され、MPU150Bがスレーブであるときにメモリ150Cに心電データを出力する。
【0031】
また、MPU150Bは、水晶振動子70又はRCオシレータ80が発振するクロックに基づいて、内部で用いるシステムクロックを生成する。より具体的には、主制御部151Bが水晶振動子70を発振させる処理を行う。主制御部151B、及び水晶振動子70は、水晶発振器を構築する。
【0032】
主制御部151Bは、MPU150Bがマスタのときには、動作周波数を高く設定するためにシステムクロックの周波数を高く(一例として32MHz)に設定し、MPU150Bがスレーブのときには、動作周波数を低くするためにシステムクロックの周波数を低く(一例として4MHz)に設定する。
【0033】
この際に、主制御部151Bは、水晶振動子70とRCオシレータ80のオン/オフを切り替える。水晶振動子70が出力するクロックの周波数は、一例として32MHzであり、RCオシレータ80が出力するクロックの周波数は一例として16MHzである。主制御部151Bは、スイッチ90を切り替えることにより、水晶振動子70及びRCオシレータ80のいずれか一方から出力されるクロックからMPU150Bのシステムクロックを生成する。
【0034】
主制御部151Bは、MPU150Bがマスタのときは、水晶振動子70が出力する32MHzのクロックをシステムクロックとしてそのまま利用する。また、主制御部151Bは、MPU150Bがマスタのときに、32MHzのシステムクロックとは別に、水晶振動子70が出力する32MHzのクロックを分周して4MHzのクロックを生成する。MPU150Bは、MPU150Bがマスタのときは、切替信号等をASIC150Aに出力するときには、4MHzのクロックを切替信号等とともにASIC150Aに出力する。4MHzのクロックは、端子155BのうちのCLK端子からASIC150Aに出力される。
【0035】
主制御部151Bは、MPU150Bがスレーブのときは、RCオシレータ80のクロックを分周して4MHzのシステムクロックを生成し、ASIC150Aから入力されるCS(Chip Select)信号をトリガにしてシステムクロックのタイミングを補正する。このようにして主制御部151Bは、MPU150Bがスレーブのときは、RCオシレータ80のクロックを分周した4MHzのシステムクロックをCS信号に同期させる。また、MPU150Bは、MPU150Bがスレーブのときに、切替信号等をASIC150Aに出力するときには、4MHzのシステムクロックを切替信号等とともにASIC150Aに出力する。4MHzのクロックは、端子155BのうちのCLK端子からASIC150Aに出力される。
【0036】
MPU150BがスレーブのときにRCオシレータ80のクロックに基づいて4MHzのシステムクロックを生成するのは、システムクロックの周波数を低下させることでMPU150Bの消費電力を低減させるためである。水晶振動子70は、MPU150Bがマスタのときに利用され、MPU150Bがスレーブのときには利用されない。
【0037】
メモリ150Cは、バス150Eを介してMPU150Bに接続されている。メモリ150Cは、一例として、NAND型フラッシュメモリであり、目的とするデータの保存に必要な容量を有する。センサ300が貼付型生体センサである場合は、貼付型生体センサから取得された心電データを必要な分量保存できる容量を有する。貼付型生体センサは、一例として、24時間ほど生体の胸部に貼り付けられ、アナログ心電データを取得する。この場合、メモリ150Cは、少なくとも24時間分の心電データを格納可能な容量を有する。MPU150Bは、ASIC150Aから入力されたデジタル心電データに加算平均処理を行ってから処理後のデータをメモリ150Cに格納してもよい。
【0038】
メモリ150Cは、端子151Cを有する。端子151CにはPC50に接続されるケーブル51を接続することができる。メモリ150Cに格納される心電データは、ケーブル51を介してPC50に転送することができる。
【0039】
図2は、ASIC150Aの構成を示す図である。ASIC150Aは、入力端子(VINP)201、入力端子(VINN)202、CLK端子203、端子152A、LNA(Low Noise Amplifier)210、BUF(Buffer、バッファ)220、LPF(Low Pass Filter)230、ADC151A、バイアス回路240、クロック発生器250、発振器260、制御部270、レベルシフタ280を含む。
【0040】
ASIC150Aは、これらの他に、VREG端子、VCOM端子、VMID端子、VCC端子、TAB端子(GND電位)、GND端子、VDD端子(1.2)、VDDLV端子(1.5V〜2.5V)等を含む。
【0041】
入力端子201、202は、センサ300に接続される。入力端子201には+(正)の信号が入力され、入力端子201には−(負)の信号が入力される。
【0042】
CLK端子203は、ASIC150Aの外部に設けられる水晶振動子60に接続される。
【0043】
端子152Aは、
図1を用いて説明した通りMPU150Bに接続されており、M/S端子、SS端子、MISO端子、MOSI端子、CLK端子である。
【0044】
LNA210は、入力端子201、202とBUF220との間に接続されており、入力端子201、202から入力されるアナログ心電データを増幅して出力する。
【0045】
BUF220は、LNA210とADC151Aとの間に接続されており、LNA210で増幅されたアナログ心電データの波形を整形してLPF230に出力する。
【0046】
LPF230は、BUF220とADC151Aとの間に接続されており、ノイズを除去するために、BUF220から入力されるアナログ心電データの低周波数側の所定の帯域成分のみを通過させる。
【0047】
ADC151Aは、クロック発生器250から入力されるクロック信号に基づいて動作し、LPF230から入力されるアナログ心電データをデジタル心電データに変換して制御部270に出力する。クロック発生器250から入力されるクロック信号は、ADC151Aのサンプリング周期を決めるクロック信号であり、一例として4MHzである。クロック発生器250から入力されるクロック信号は、MPU150BがマスタであるときにMPU150Bの内部で用いるシステムクロック(一例として32MHz)よりも周波数が低く設定されている。
【0048】
バイアス回路240は、VCC端子に入力される電源電圧(1.2V)をADC151Aが必要とする電圧(一例として0.5Vと0.25V)に変換して出力する。バイアス回路240は、一例として分圧回路である。
【0049】
クロック発生器250は、PLL(Phase Locked Loop)や分周器を含み、水晶振動子60及び発振器260から入力されるクロックから所定の周波数(一例として4MHz)のクロックを生成してADC151A及び制御部270等に出力する。クロック発生器250は、水晶振動子60から出力される32MHzのクロックを分周して、ASIC150Aが内部で利用する4MHzのシステムクロックを生成する。クロック発生器250は、分周した4MHzのシステムクロックをADC151A及び制御部270等に出力する。
【0050】
発振器260は、水晶振動子60を発振させるIC(Integrated Circuit)である。発振器260及び水晶振動子60は、水晶発振器を構築する。発振器260及び水晶振動子60は、一例として32MHzのクロックを発振する。
【0051】
制御部270は、組み合わせ回路によって実現され、レジスタ271を有する。制御部270は、ADC151Aとレベルシフタ280との間でデータのやり取りを行う。制御部270は、端子152Aからレベルシフタ280を介して入力されるコマンドに基づいて、コマンドの内容に従った動作を行う。例えば、制御部270は、M/S端子からレベルシフタ280を介して入力される切替信号に基づいてASIC150Aのマスタ/スレーブを切り替える。
【0052】
制御部270は、MPU150Bからの切替信号に基づいてASIC150Aをマスタに切り替えると、ADC151Aにデジタル変換処理を開始させるためのスタート信号をADC151Aに出力するとともに、CS信号をMPU150Bに出力する。制御部270は、ASIC150Aをマスタに切り替えると、クロック発生器250にAD変換の同期用のクロックを出力させ、AD変換の同期用のクロックをMPU150Bに出力する。スタート信号、CS信号、及びAD変換の同期用のクロックは、ASIC150Aのシステムクロックに同期している。ここでは、一例としてAD変換の同期用のクロックとシステムクロックは、ともに4MHzのクロックであり、同一のクロックである。
【0053】
スタート信号は、ADC151Aにデジタル変換処理を開始させるときに1度だけレジスタ271からADC151Aに出力される。より具体的には、ADC151Aにデジタル変換処理を開始させるときに、1度だけHレベルのパルスがレジスタ271からADC151Aに出力される。
【0054】
CS信号は、制御部270からレベルシフタ280を介して端子152AのSS端子からMPU150Bに出力される。CS信号は、制御部270がMPU150Bに出力する信号である。CS信号は、MPU150Bにデジタル心電データを取得させるための同期信号である。
【0055】
AD変換の同期用のクロックは、ADC151AがAD変換を行うときに用いる同期用のクロックであり、クロック発生器250からADC151Aに出力される。ADC151Aは、AD変換の同期用のクロックがHレベルに立ち上がるときに、AD変換を行う。
【0056】
ADC151Aは、クロック発生器250から出力されるAD変換の同期用クロックに同期してAD変換を行っており、MPU150Bは、CS信号がH(High)レベルからL(Low)レベルに切り替わるタイミングでデジタル心電データを取り込む。このため、ADC151Aにおけるデジタル変換処理と、MPU150Bのデータの取り込みとを同期させることができる。なお、CS信号の周波数は、ASIC150A側のシステムクロックの周波数よりも一例として2倍〜8倍高い。
【0057】
制御部270は、ASIC150Aがマスタのときに、ADC151Aから出力されるデジタル心電データをレベルシフタ280に出力する。デジタル心電データは、レベルシフタ280からMOSI端子を経てMPU150Bに出力される。制御部270は、レベルシフタ280及び端子152Aを介して、MPU150Bとの間でその他のコマンドやデータのやり取りを行う。
【0058】
レジスタ271は、ADC151Aから出力されるデジタル心電データや、制御部270がADC151Aに出力するスタート信号やCS信号等を保持する。レジスタ271はデータ保持部の一例である。
【0059】
レベルシフタ280は、制御部270と端子152Aとの間でデータやコマンド等の信号レベルの調整を行う。
【0060】
図3は、MPU150Bの処理を示すタイミングチャートである。
図3(A)は、MPUがデータx
0〜x
7を取得した後に加算処理と平均化処理を行う参考例のタイミングを示す。
図3(B)は、MPU150Bがデータx
0〜x
7の各々を取得する度に加算処理と、その加算値に対して平均化処理を行う実施例のタイミングを示す。
【0061】
データx
0〜x
7はデジタル心電データであり、
図3(A)、(B)における横軸は、時間を表す。
【0062】
図3(A)に示すように、参考例のMPUの動作は、システムクロックに従ってデータx
0〜x
7を順番に取得する。データx
0〜x
7の各々を取得するのに必要な区間T
0〜T
7の長さは互いに等しい。また、各区間T
0〜T
7の間に挿入される区間Tsaは、取得したデータをメモリに転送する処理を行う区間である。参考例のMPUは、1番目のデータx
0から8番目のデータx
7までを取得してメモリに転送すると、区間TAにおいてメモリからデータx
0〜x
7を読み出し、次式(1)に従ってデータx
0〜x
7の加算値Aを求め、加算値Aの平均値(A/8)をさらに求める。
【0064】
参考例のMPUは、加算値Aの平均値(A/8)を求めた後に、次のサイクルでデータx
0の取得から再び処理を開始し、
図3(A)に示す処理を繰り返し実行する。
【0065】
これに対し、実施例では
図3(B)に示すように、MPU150Bは、区間T
0〜T
7のそれぞれの開始点でCS信号がHレベルからLレベルに遷移するタイミングで、ASIC150Aからデータx
0〜x
7の各々を取得する。データx
0〜x
7の各々を取得する度に、区間Tsbにおいて、次式(2)に従って加算処理を行う。加算処理では、データx
0〜x
7の各々が取得される度に前回の加算値A
nに加算される。
【0067】
ただし、A
0=0,n=0,1,2,・・・,7である。
【0068】
データx
0〜x
7をそれぞれ取得した後の8つの区間Tsbで、加算値A
1〜A
8が得られる。加算値A
8は、データx
0〜x
7を加算した値である。なお、区間TBの開始時は、次のサイクルの区間T
0の開始時であるため、MPU150Bは、区間T
0の開始時にCS信号がHレベルからLレベルに遷移すると、ASIC150Aからデータx
0を取得する。
【0069】
MPU150Bは、8番目のデータx
7を取得して加算値A
8を求めると、その次の区間TBにおいて加算値A
8の平均値(A
8/8)を求める。
【0070】
このように、MPU150Bは、データx
0〜x
7をそれぞれ取得した後の8つの区間Tsbにおいて、式(2)に従って加算する加算処理を行う。ここで、
図3(B)の区間Tsbと、
図3(A)の区間Tsaとは、ともにMPU150Bがバックグラウンドで処理する際に割り込み処理ができるようにタスクの間を空けておく時間である。このため、
図3(B)の区間Tsbと、
図3(A)の区間Tsaとは略等しい。
【0071】
加算値A
8を求めた区間T
7の次の区間TBでは、加算値A
8の平均値(A
8/8)を求めるだけなので、
図3(A)に示す区間TAに比べて区間TBを大幅に短縮することができる。
【0072】
図3(A)に示す処理を参考例のMPUを用いた貼付型生体センサが行う場合の消費電力と、
図3(B)に示す処理を貼付型生体センサが行う場合の消費電力とをシミュレーションによって求めたところ、6.1mAから5.8mAに低減できることが分かった。
【0073】
これは、例えば、参考例のMPUを用いた貼付型生体センサと実施例のMPUを用いた貼付型生体センサとで同一の電池160を用いた場合に、連続使用可能時間が約33時間から約40時間に延びたことに相当する。実施例のMPUを用いた貼付型生体センサは、消費電力が参考例のMPUを用いた貼付型生体センサよりも少ないため、連続使用可能時間が約2割延びる。
【0074】
加算値A
8の平均値(A
8/8)が求まると、MPU150Bの主制御部151Bは、加算値A
8の平均値(A
8/8)をメモリ150Cに転送して格納する。このように加算平均処理を行うのは、デジタル心電データのノイズレベルを下げるため(S/N比を改善するため)である。
【0075】
図4は、MPU150Bの処理を示すフローチャートである。
図4のフローチャートは、MPU150Bがセンサ300からのデータの取得及び記録を開始してから終了するまでの処理であり、一例として、一定期間にわたって繰り返し実行される。
【0076】
処理がスタートすると、MPU150Bは、データの取得開始か否かを判断する(ステップS0)。データの取得開始か否かは、データ取得装置150がセンサ300に接続されたか否か、センサ300からのデータ転送があったか否か、所定の時間になったか否か、等によって、判断することができる。データの取得開始となるまで(S0:NO)、S0を繰り返す。データの取得開始であれば(S0:YES)、切替設定部152Bは、切替信号のレベルを"1"に設定してASIC150Aに出力するとともに、MPU150Bをスレーブに設定する(ステップS1)。レベルが"1"の切替信号によって、ASIC150Aはマスタに設定される。
【0077】
演算部153Bは、n=0に設定する(ステップS2)。
【0078】
演算部153Bは、CS信号に従ってASIC150Aからデジタルデータを取り込む(ステップS3)。
【0079】
演算部153Bは、式(2)に従って加算処理を行う(ステップS4)。
【0080】
演算部153Bは、nが7以上であるかどうかを判定する(ステップS5)。
【0081】
演算部153Bは、nが7以上ではない(S5:NO)と判定すると、nをインクリメントする(ステップS6)。
【0082】
演算部153Bは、ステップS5でnが7以上である(S5:YES)と判定すると、加算値A
8の平均値(A
8/8)を求める(ステップS7)。
【0083】
演算部153Bは、求めた平均値(A
8/8)をメモリ150Cに格納する(ステップS8)。
【0084】
主制御部151Bは、データ取得が終了したか否かを判断する(ステップS9)。データ取得の終了か否かは、データ取得装置150がセンサ300から切断(disconnect)されたか否か、センサ300からのデータ転送が一定時間以上行われていないか否か、データ取得開始から所定時間が経過したか否か、メモリ150Cのデータ保存領域のデータ占有率が一定レベルを超えたか否か、等で判断することができる。センサ300が貼付型の生体センサである場合、一例として、デジタル心電データの記録を開始してから24時間が経過したときに、データ取得終了と判断してもよい。
【0085】
主制御部151Bは、データ取得が終了していない(S9:NO)と判定すると、フローをステップS2に戻して、S2〜S9を繰り返す。
【0086】
主制御部151Bによってデータ取得が終了した(S9:YES)と判定されると、切替設定部152Bは、切替信号のレベルを"0"に設定してASIC150Aに出力するとともに、MPU150Bをマスタに設定する(ステップS10)。レベルが"0"の切替信号によって、ASIC150Aはスレーブに設定される。ASIC150Aは、"0"レベルの切替信号によってスレーブに設定されるとADC151Aにデジタル変換処理を終了させる。このため、ASIC150Aは、切替信号が"1"レベルである間はADC151Aにデジタル変換処理を行わせ、切替信号が"0"レベルに切り替わると、ADC151Aにデジタル変換処理を終了させることになる。すなわち、ADC151Aは、ASIC150Aがマスタである間は、デジタル変換処理を行い続けることになる。
【0087】
上述の処理により、データ取得期間にわたってデジタルデータの合計値が求められ、平均化処理が行われ、メモリ150Cに格納される。
【0088】
以上のように、データ取得装置150では、データx
0〜x
7をそれぞれ取得するごとに、データ取得に引き続く区間Tsbのそれぞれで、順次、式(2)に従って加算処理を行う。8番目の加算値A
8を得た後の区間TBでは、加算値A
8の平均値(A
8/8)を求めるだけなので、加算値の平均値を得るための処理時間を短縮でき、消費電力を低減することができる。
【0089】
したがって、消費電力を低減したデータ取得装置150を提供することができる。
【0090】
データ取得装置150は、MPU150Bが
図3(B)に示す加算値A
n+1を求め、加算値A
8の平均値(A
8/8)を求めている間は、ASIC150Aをマスタに設定し、MPU150Bをスレーブに設定する。この状態では、MPU150Bのシステムクロックの周波数は、ADC151Aのサンプリング周波数と等しい4MHzに低下される。このことによっても、消費電力を低減することができる。
【0091】
MPU150Bは、自己をスレーブに設定した状態でCS信号がLレベルに遷移するとASIC150Aからデジタル心電データを取り込むので、MPU150BがASIC150Aにデジタル心電データの送信を要求しなくてもデジタル心電データを取得することができる。このため、MPU150Bは、制御部270がADC151Aから取得したデジタル心電データを即座に取り込むことができ、リアルタイム性が良好である。したがって、リアルタイム性が良好なデータ取得装置150を提供することができる。
【0092】
以上では、MPU150Bが加算値の平均値を求める際に一つのサイクルで加算されるデータ数が8つである形態について説明したが、加算値の平均値を求める際の加算値のデータ数は、2以上であれば幾つであってもよい。
【0093】
以上では、MPU150Bがマスタのときに水晶振動子70が発振するクロックに基づいて、内部で用いるシステムクロックを生成する形態について説明した。しかしながら、MPU150Bは、自己がマスタのときにASIC150Aに接続される水晶振動子60が発振するクロックに基づいて、内部で用いるシステムクロックを生成してもよい。この場合は、MPU150BがASIC150Aから水晶振動子60が発振するクロックを入手すればよい。この場合には、データ取得装置150は、水晶振動子70及びスイッチ90を含まなくてよい。また、この場合には、主制御部151Bは、MPU150Bがマスタのときに水晶振動子60が発振するクロックに基づいてシステムクロックを生成し、MPU150BがスレーブのときにRCオシレータ80が発振するクロックに基づいてシステムクロックを生成すればよい。
【0094】
<生体センサへの適用>
データ取得装置150を生体センサ100に適用した構成例を説明する。
【0095】
図5は、実施の形態の生体センサ100を示す分解図である。
図6は、
図5のA−A矢視断面に対応する完成状態の断面を示す図である。生体センサ100は、主な構成要素として、感圧接着層110、基材層120、回路部130、基板135、プローブ140、固定テープ145、データ取得装置150、電池160、及びカバー170を含む。
【0096】
以下では、XYZ座標系を定義して説明する。説明の便宜上、積層方向と逆向きのZ軸負方向側を下側又は下、積層方向に沿ったZ軸正方向側を上側又は上と称すが、普遍的な上下関係を表すものではない。
【0097】
本実施の形態では、一例として、被検体としての生体に接触させて生体情報の測定を行う生体センサ100について説明する。生体とは、人体及び人体以外の生物等をいい、これらの皮膚、頭皮又は額等に貼付される。以下、生体センサ100を構成する各部材について説明する。
【0098】
被検体としての生体に接触する電極をプローブ140と称し、接合部の一例として固定テープ145を用いて説明する。プローブ140としての電極が一対設けられているのは、シングルチャンネルでの生体情報の測定を行うためである。シングルチャンネルとは、一対の(2つの)電極から1つの生体情報を取得するという意味である。
【0099】
生体センサ100は、平面視で略楕円状の形状を有するシート状のセンサである。生体センサ100の下面(−Z方向側の面)は、生体の皮膚10に貼り付けられる貼付面である。生体センサ100の上面(貼付面と反対側の面)は、カバー170によって覆われている。
【0100】
回路部130と基板135は、基材層120の上面に実装されている。また、プローブ140は、感圧接着層110の下面112で露出するように感圧接着層110に埋め込まれている。感圧接着層110の下面112(
図6参照)は、生体センサ100の貼付面である。
【0101】
感圧接着層110は、平板状の接着層である。感圧接着層110は、長手方向がX軸方向であり、短手方向はY軸方向である。感圧接着層110は、基材層120によって支持されており、基材層120の−Z方向側の下面121に貼り付けられている。
【0102】
感圧接着層110は、
図6に示すように、上面111と、下面112とを有する。上面111及び下面112は平坦面である。感圧接着層110は、生体センサ100が生体と接触する層である。下面112は、感圧接着性を有するため、生体の皮膚10に貼り付けることができる。
【0103】
感圧接着層110は、貫通孔113を有する。貫通孔113は、基材層120の貫通孔123と平面視でのサイズ及び位置が等しく、貫通孔123と連通している。
【0104】
感圧接着層110の材料としては、感圧接着性を有する材料であれば特に限定されず、生体適合性を有する材料等が挙げられる。感圧接着層110の材料として、アクリル系感圧接着剤、シリコーン系感圧接着剤等が挙げられる。好ましくは、アクリル系感圧接着剤が挙げられる。
【0105】
アクリル系感圧接着剤は、アクリルポリマーを主成分として含有する。
【0106】
アクリルポリマーは、感圧接着成分である。アクリルポリマーとしては、アクリル酸イソノニル、アクリル酸メトキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステルを主成分として含み、アクリル酸等の(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なモノマーを任意成分として含むモノマー成分を重合したポリマーを用いることができる。主成分のモノマー成分における含有量は、70質量%〜99質量%とし、任意成分のモノマー成分における含有量は、1質量%〜30質量%とする。アクリルポリマーとしては、例えば、特開2003−342541号公報に記載の(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー等を用いることができる。
【0107】
アクリル系感圧接着剤は、好ましくは、カルボン酸エステルをさらに含有する。
【0108】
アクリル系感圧接着剤に含まれるカルボン酸エステルは、アクリルポリマーの感圧接着力を低減して、感圧接着層110の感圧接着力を調整する感圧接着力調整剤である。カルボン酸エステルは、アクリルポリマーと相溶可能なカルボン酸エステルである。
【0109】
具体的には、カルボン酸エステルは、一例としてトリ脂肪酸グリセリルである。
【0110】
カルボン酸エステルの含有割合は、アクリルポリマー100質量部に対して、30質量部〜100質量部であることが好ましく、50質量部〜70質量部以下であることがより好ましい。
【0111】
アクリル系感圧接着剤は、必要により、架橋剤を含有してもよい。架橋剤は、アクリルポリマーを架橋する架橋成分である。架橋剤としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン化合物、過酸化化合物、尿素化合物、金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属塩化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、又はアミン化合物等が挙げられる。これらの架橋剤は、単独で使用してもよいし、併用してもよい。架橋剤としては、好ましくは、ポリイソシアネート化合物(多官能イソシアネート化合物)が挙げられる。
【0112】
架橋剤の含有量は、アクリルポリマー100質量部に対して、例えば、0.001質量部〜10質量部が好ましく、0.01質量部〜1質量部がより好ましい。
【0113】
感圧接着層110は、優れた生体適合性を有することが好ましい。例えば、感圧接着層110を角質剥離試験した時に、角質剥離面積率は、0%〜50%であることが好ましく、1%〜15%であることがより好ましい。角質剥離面積率が0%〜50%の範囲内であれば、感圧接着層110を皮膚10(
図2参照)に貼着しても、皮膚10(
図2参照)の負荷を抑制できる。なお、角質剥離試験は、特開2004−83425号公報に記載の方法によって、測定される。
【0114】
感圧接着層110の透湿度は、300(g/m
2/day)以上であることが好ましく、600(g/m
2/day)以上であることがより好ましく、1000(g/m
2/day)以上であることがさらに好ましい。感圧接着層110の透湿度が300(g/m
2/day)以上であれば、感圧接着層110を生体の皮膚10(
図2参照)に貼着しても、皮膚10(
図2参照)の負荷を抑制できる。
【0115】
感圧接着層110は、角質剥離試験の角質剥離面積率が50%以下であることと、透湿度が300(g/m
2/day)以上であることとの少なくともいずれかの要件を満たすことで、感圧接着層110は生体適合性を有する。感圧接着層110の材料は、上記要件の両方の要件を満たすことがより好ましい。これにより、感圧接着層110はより安定して高い生体適合性を有する。
【0116】
感圧接着層110の上面111と下面112との間の厚さは、10μm〜300μmであることが好ましい。感圧接着層110の厚さが10μm〜95μmであれば、生体センサ100の薄型化、特に、生体センサ100におけるデータ取得装置150及び電池160以外の領域の薄型化が図れる。
【0117】
基材層120は、感圧接着層110を支持する支持層であり、感圧接着層110は基材層120の下面に接着されている。基材層120の上面側には回路部130と基板135が配置されている。
【0118】
基材層120は、絶縁体製の平板状(シート状)の部材である。基材層120の平面視における形状は、
図2に示すように感圧接着層110の平面視における形状と同一であり、平面視において位置を合わせて重ねられている。
【0119】
基材層120は、下面121と上面122とを有する。下面121及び上面122は、平坦面である。下面121は、感圧接着層110の上面111に接触(感圧接着)している。基材層120は、適度な伸縮性、可撓性及び靱性を有する可撓性樹脂製であればよく、例えば、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、及びポリエステル樹脂系等の熱可塑性樹脂で作製すればよい。基材層120の厚さは、1μm〜300μmであることが好ましく、5μm〜100μmであることがより好ましく、10μm〜50μmであることがさらに好ましい。
【0120】
基材層120の破断伸度の下限値は、100%以上が好ましく、200%以上がより好ましく、300%以上がさらに好ましい。破断伸度が100%以上であれば、基材層120の材料が優れた伸縮性を有することができる。なお、基材層120の破断伸度の上限値は、基材層120の厚さ等に応じて適宜設計可能であり、2000%以下であればよい。なお、破断伸度は、JIS K 7127(1999年)に従い、引張速度5mm/分、試験片タイプ2で測定される。
【0121】
基材層120の20℃における引張強度(チャック間100mm、引張速度300mm/min、破断時の強度)の下限値は、0.1N/20mm以上であることが好ましく、1N/20mm以上であることがより好ましい。基材層120の20℃における引張強度の上限値は、基材層120の材料や厚さ等に応じて適宜設計可能であり、20N/20mm以下であればよい。なお、引張強度は、JIS K 7127(1999年)に基づいて、測定される。
【0122】
基材層120の20℃における引張貯蔵弾性率E'の上限値は、2,000MPa以下であることが好ましく、1,000MPa以下であることがより好ましく、100MPa以下であることがさらに好ましく、50MPa以下であることが特に好ましく、20MPa以下であることが最も好ましい。基材層120の引張貯蔵弾性率E'の上限値が2,000MPa以下であれば、基材層120は優れた伸縮性を有することができる。引張貯蔵弾性率E'の下限値は、基材層120の材料や厚さ等に応じて適宜設計可能であり、0.1MPa以上であればよい。基材層120の20℃における引張貯蔵弾性率E'は、周波数1Hz及び昇温速度10℃/分の条件で基材層120の動的粘弾性を測定することにより求められる。
【0123】
破断伸度が100%以上、引張強度が20N/20mm以下、及び引張貯蔵弾性率E'が2,000MPa以下であることの少なくともいずれか1つの要件を満たせば、基材層120が伸縮性を有する。基材層120が伸縮性をより発揮する点から、上記要件のうち、2つ以上の要件を満たしていることが好ましくは、3つの要件を満たすことがさらに好ましい。
【0124】
基材層120の銅箔に対する剥離強度(ピール強度)は、例えば、0.5N/cm以上が好ましく、1.0N/cm以上がより好ましく、2.0N/cm以上がさらに好ましく、2.5N/cm以上が最も好ましい。剥離強度が上記の下限値以上であれば、基材層120と配線131との剥離をより確実に抑制することができる。なお、剥離強度は、例えば、幅1cmのサンプル(基材層120及び銅箔の積層体)に対して、引張試験機を用いて、剥離角度180度、剥離速度30mm/分の条件で基材層120を銅箔から剥離することにより測定される。
【0125】
基材層120の厚さは、1μm〜300μmであることが好ましく、5μm〜100μmであることがより好ましく、10μm〜50μmであることがさらに好ましい。
【0126】
基材層120は、基材組成物から形成されている。基材組成物は、基材樹脂を主成分として含む。
【0127】
基材樹脂は、例えば、基材層120に適度な伸縮性、可撓性及び靱性を付与できる可撓性樹脂が用いられる。基材樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、及びポリエステル樹脂系等の熱可塑性樹脂が挙げられる。基材層120がより優れた伸縮性を確保する観点から、ポリウレタン系樹脂を用いることが好ましい。
【0128】
回路部130は、配線131、フレーム132、及び基板133を有する。回路部130は、詳しくは、フレーム132を介して電極と接続し、配線131を介してデータ取得装置150と接続する。生体センサ100は、このような回路部130を2つ含む。配線131及びフレーム132は、基板133の上面に設けられており、一体的に形成されている。配線131は、フレーム132と、データ取得装置150及び電池160とを接続する。
【0129】
配線131及びフレーム132は、銅、ニッケル、金、又はこれらの合金等で作製することができる。配線131及びフレーム132の厚さは、0.1μm〜100μmであることが好ましく、1μm〜50μmであることがより好ましく、5μm〜30μmであることがさらに好ましい。
【0130】
2つの回路部130は、それぞれ、感圧接着層110及び基材層120の2つの貫通孔113及び123に対応して設けられている。配線131は、基板135の配線を介して、データ取得装置150と、電池160用の端子135Aとに接続されている。フレーム132は、基材層120の貫通孔123の開口よりも大きな矩形環状の導電部材である。
【0131】
基板133は、平面視で配線131及びフレーム132と同様の形状を有する。基板133のうちフレーム132が設けられている部分は、基材層120の貫通孔123の開口よりも大きな矩形環状の形状を有する。フレーム132と、基板133のうちフレーム132が設けられている矩形環状の部分とは、基材層120の上面で貫通孔123を囲むように設けられている。基板133は、絶縁体製であればよく、例えばポリイミド製の基板又はフィルムを用いることができる。基材層120は、粘着性(タック性)を有するため、基板133は基材層120の上面に固定される。
【0132】
基板135は、データ取得装置150及び電池160を実装する絶縁体製の基板であり、基材層120の上面122に設けられる。基板135は基材層のタック性(粘着性)によって固定される。基板135としては、一例としてポリイミド製の基板又はフィルムを用いることができる。基板135の上面には、配線と電池160用の端子135Aとが設けられている。基板135の配線は、データ取得装置150及び端子135Aに接続されるとともに、回路部130の配線131に接続される。
【0133】
プローブ140は、2つ設けられており、被検体に接触する一対の電極である。具体的には、プローブ140は、感圧接着層110が皮膚10に貼付されたときに、皮膚10に接触して、生体信号を検出する電極である。生体信号は、例えば、心電波形を表す電気信号であり、アナログ心電データを表す信号である。生体信号は、2つのプローブ140で検出される電位差を表す。
【0134】
プローブ140として用いられる電極は、後述するように少なくとも導電性高分子およびバインダー樹脂を含む導電性組成物を用いて作製される。また、電極は、導電性組成物を用いて得られたシート状部材を金型等でパンチングすることによって作製され、プローブとして用いられる。
【0135】
プローブ140は、一例として、平面視で矩形であり、マトリクス状に配置される孔部140Aを有する。孔部140Aは、感圧接着層110及び基材層120の貫通孔113及び123よりも大きい。プローブ140のX方向及びY方向における端(四方の端の部分)では、プローブ140の梯子状の辺が突出していてもよい。プローブ140として用いる電極は、所定のパターン形状を有していてもよい。所定の電極パターン形状として、メッシュ状、ストライプ状、貼付面から電極が複数個所表出する形状等が挙げられる。
【0136】
固定テープ145は、本実施の形態の接合部の一例である。固定テープ145は、一例として、矩形環状の銅テープである。固定テープ145は、下面に粘着剤が塗布されている。固定テープ145は、平面視で貫通孔113及び123の開口の外側で、プローブ140の四方を囲むようにフレーム132の上に設けられ、プローブ140をフレーム132に固定する。固定テープ145は、銅以外の金属テープであってもよい。
【0137】
固定テープ145は、銅テープ等の金属層を有するテープ以外にも、非導電性の樹脂基材と粘着剤で構成される樹脂テープ等の非導電性テープとしてもよい。金属テープ等の導電性テープは、回路部130のフレーム132にプローブ140を接合(固定)するとともに、電気的に接続することができるため、好ましい。
【0138】
プローブ140は、四方の端の部分がフレーム132の上に配置された状態で、四方の端の部分の上に被せられる矩形環状の固定テープ145によってフレーム132に固定される。固定テープ145は、プローブ140の孔部140A等の隙間を通じてフレーム132に接着される。
【0139】
このように固定テープ145でプローブ140の四方の端の部分をフレーム132に固定した状態で、固定テープ145及びプローブ140の上に感圧接着層110A及び基材層120Aを重ね、感圧接着層110A及び基材層120Aを下方向に押圧すると、プローブ140は貫通孔113及び123の内壁に沿って押し込まれ、感圧接着層110Aがプローブ140の孔部140Aの内部にまで押し込まれる。
【0140】
プローブ140は、四方の端部が固定テープ145によってフレーム132に固定された状態で、中央部が感圧接着層110の下面112と略面一になる位置まで押し下げられる。このため、プローブ140を生体の皮膚10(
図2参照)に当てれば、感圧接着層110Aが皮膚10に接着され、プローブ140を皮膚10に密着させることができる。
【0141】
プローブ140の厚さは、感圧接着層110の厚さより薄いことが好ましい。プローブ140の厚さは、0.1μm〜100μmであることが好ましく、1μm〜50μm以下であることがより好ましい。
【0142】
また、感圧接着層110Aの平面視で中央部を囲む周囲の部分(矩形環状の部分)は、固定テープ145の上に位置する。
図2では感圧接着層110Aの上面は略平坦であるが、中央部が周囲の部分よりも下方に凹んでいてもよい。基材層120Aは、感圧接着層110Aの略平坦な上面の上に重ねられる。
【0143】
このような感圧接着層110A及び基材層120Aは、それぞれ、感圧接着層110及び基材層120と同じ材質で作製されていてもよい。また、感圧接着層110Aは、感圧接着層110とは異なる材質で作製されていてもよい。また、基材層120Aは、基材層120とは異なる材質で作製されていてもよい。
【0144】
なお、
図2では各部の厚さを誇張しているが、実際には、感圧接着層110及び110Aの厚さは10μm〜300μmであり、基材層120及び120Aの厚さは1μm〜300μmである。また、配線131の厚さは0.1μm〜100μmであり、基板133の厚さは数100μm程度であり、固定テープ145の厚さは10μm〜300μmである。
【0145】
また、
図2に示すようにプローブ140とフレーム132が直接接触して電気的な接続が確保されている場合には、固定テープ145は、導電性を有しない樹脂製等のテープであってもよい。
【0146】
また、
図2では、固定テープ145は、プローブ140に加えてフレーム132及び基板133の側面を覆い、基材層120の上面にまで到達している。しかしながら、固定テープ145はプローブ140とフレーム132を接合できればよいため、基材層120の上面にまで到達していなくてもよく、基板133の側面を覆っていなくてもよく、フレーム132の側面を覆っていなくてもよい。
【0147】
また、基板133と2つの基板135は一体化された1つの基板であってもよい。この場合は、1つの基板の表面に、配線131、2つのフレーム132、及び端子135Aが設けられ、データ取得装置150と電池160が実装される。
【0148】
プローブ140として用いられる電極は、次のような導電性組成物を熱硬化して成形し作製することが好ましい。導電性組成物は、導電性高分子と、バインダー樹脂と、架橋剤及び可塑剤のうちの少なくとも何れか一方とを含む。
【0149】
導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、又はポリフェニレンビニレン等を用いることができる。これらは、一種単独で用いてもよいし、二種以上併用してもよい。これらの中でも、ポリチオフェン化合物を用いることが好ましい。生体との接触インピーダンスがより低く、高い導電性を有する点から、ポリ3、4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)にポリスチレンスルホン酸(ポリ4−スチレンサルフォネート;PSS)をドープしたPEDOT/PSSを用いることがより好ましい。
【0150】
導電性高分子の含有量は、導電性組成物100質量部に対して、0.20質量部〜20質量部であることが好ましい。前記含有量が上記範囲内であれば、導電性組成物に優れた導電性、強靱性及び柔軟性を付与できる。導電性高分子の含有量は、導電性組成物に対して、2.5質量部〜15質量部であることがより好ましく、3.0質量部〜12質量部であることがさらに好ましい。
【0151】
バインダー樹脂としては、水溶性高分子又は水不溶性高分子等を用いることができる。バインダー樹脂としては、導電性組成物に含まれる他の成分との相溶性の観点から、水溶性高分子を用いることが好ましい。なお、水溶性高分子は、水には完全に溶けず、親水性を有する高分子(親水性高分子)を含む。
【0152】
水溶性高分子としては、ヒドロキシル基含有高分子等を用いることができる。ヒドロキシル基含有高分子としては、アガロース等の糖類、ポリビニルアルコール(PVA)、変性ポリビニルアルコール、又はアクリル酸とアクリル酸ナトリウムとの共重合体等を用いることができる。これらは、一種単独で用いてもよいし、二種以上併用してもよい。これらの中でも、ポリビニルアルコール、又は変性ポリビニルアルコールが好ましく、変性ポリビニルアルコールがより好ましい。
【0153】
変性ポリビニルアルコールとしては、アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール、ジアセトンアクリルアミド変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。なお、ジアセトンアクリルアミド変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開2016−166436号公報に記載されているジアセトンアクリルアミド変性ポリビニルアルコール系樹脂(DA化PVA系樹脂)を用いることができる。
【0154】
バインダー樹脂の含有量は、導電性組成物100質量部に対して、5質量部〜140質量部であることが好ましい。前記含有量が上記範囲内であれば、導電性組成物に優れた導電性、強靱性及び柔軟性を付与できる。バインダー樹脂の含有量は、導電性組成物に対して、10質量部〜100質量部であることがより好ましく、20質量部〜70質量部であることがさらに好ましい。
【0155】
架橋剤及び可塑剤は、導電性組成物に強靱性及び柔軟性を付与する機能を有する。導電性組成物の成形体に柔軟性を付与することにより、伸縮性を有する電極が得られた。これにより、伸縮性を有するプローブ140を作製することができる。
【0156】
なお、強靱性は、優れた強度及び伸度を両立する性質である。強靱性は、強度及び伸度のうち、一方が顕著に優れるが、他方が顕著に低い性質を含まず、強度及び伸度の両方のバランスに優れた性質を含む。
【0157】
柔軟性は、導電性組成物の成形体(電極シート)を屈曲した後、屈曲部分に破断等の損傷の発生を抑制できる性質である。
【0158】
架橋剤は、バインダー樹脂を架橋させる。架橋剤がバインダー樹脂に含まれることで、導電性組成物の強靱性を向上させることができる。架橋剤は、ヒドロキシル基との反応性を有することが好ましい。架橋剤がヒドロキシル基との反応性を有すれば、バインダー樹脂がヒドロキシル基含有ポリマーである場合、架橋剤はヒドロキシル基含有ポリマーのヒドロキシル基と反応できる。
【0159】
架橋剤としては、ジルコニウム塩等のジルコニウム化合物;チタン塩等のチタン化合物;ホウ酸等のホウ化物;ブロックイソシアネート等のイソシアネート化合物;グリオキサール等のジアルデヒド等のアルデヒド化合物;アルコキシル基含有化合物、メチロール基含有化合物等が挙げられる。これらは、一種単独で用いてもよいし、二種以上併用してもよい。中でも、反応性及び安全性の点から、ジルコニウム化合物、イソシアネート化合物又はアルデヒド化合物が好ましい。
【0160】
架橋剤の含有量は、導電性組成物100質量部に対して、0.2質量部〜80質量部であることが好ましい。前記含有量が上記範囲内であれば、導電性組成物に優れた強靱性及び柔軟性を付与できる。架橋剤の含有量は、1質量部〜40質量部であることがより好ましく、3.0質量部〜20質量部であることがより好ましい。
【0161】
可塑剤は、導電性組成物の引張伸度及び柔軟性を向上させる。可塑剤としては、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、これらの重合体等のポリオール化合物N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアルデヒド(DMF)、N−N'−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性化合物等が挙げられる。これらは、一種単独で用いてもよいし、二種以上併用してもよい。これらの中でも、他の成分との相溶性の観点から、グリセリンが好ましい。
【0162】
可塑剤の含有量は、導電性組成物100質量部に対して、0.2質量部〜150質量部が好ましい。前記含有量が上記範囲内であれば、導電性組成物に優れた強靱性及び柔軟性を付与できる。可塑剤の含有量は、導電性高分子100質量部に対して、1.0質量部〜90質量部であることがより好ましく、10質量部〜70質量部であることがさらに好ましい。
【0163】
架橋剤及び可塑剤は、これらのうちの少なくとも一方が導電性組成物に含まれていればよい。架橋剤及び可塑剤の少なくとも一方が導電性組成物に含まれることで、導電性組成物の成形体は、強靱性及び柔軟性を向上させることができる。
【0164】
導電性組成物に架橋剤は含まれるが可塑剤は含まない場合、導電性組成物の成形体は、強靱性、すなわち、引張強度及び引張伸度の両方をより向上させることができると共に、柔軟性を向上させることができる。
【0165】
導電性組成物に可塑剤は含まれるが架橋剤は含まれない場合、導電性組成物の成形体の引張伸度を向上させることができ、全体として導電性組成物の成形体は強靱性を向上させることができる。また、導電性組成物の成形体の柔軟性を向上させることができる。
【0166】
架橋剤及び可塑剤の両方が導電性組成物に含まれていることが好ましい。架橋剤及び可塑剤の両方が導電性組成物に含まれることで、導電性組成物の成形体にはより一層優れた強靱性が付与される。
【0167】
導電性組成物は、上記成分の他に、必要に応じて、界面活性剤、軟化剤、安定剤、レベリング剤、酸化防止剤、加水分解防止剤、膨張剤、増粘剤、着色剤、又は充てん剤等の公知の各種添加剤を適宜任意の割合で含むことができる。界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤等が挙げられる。
【0168】
導電性組成物は、上記した各成分を上記割合で混合することにより調製される。
【0169】
導電性組成物は、必要に応じて、溶媒を適宜任意の割合で含むことができる。これにより、導電性組成物の水溶液(導電性組成物水溶液)が調製される。
【0170】
溶媒としては、有機溶媒、又は水系溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類が挙げられる。水系溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール用のアルコール等が挙げられる。これらの中でも、水系溶媒を用いることが好ましい。
【0171】
導電性高分子、バインダー樹脂、及び架橋剤の何れか一つ以上は、溶媒に溶解した水溶液として用いてもよい。この場合、溶媒としては、上記の水系溶媒が好ましい。
【0172】
データ取得装置150は、基材層120の上面122に設置されており、配線131と電気的に接続されている。データ取得装置150は、プローブ140として用いられる電極を介して取得する生体信号を処理する。データ取得装置150は、断面視において矩形状である。データ取得装置150の下面(−Z方向)には、端子が設けられる。端子の材料としては、はんだ、導電性ペースト等が挙げられる。
【0173】
データ取得装置150は、
図5に示すように、一例としてASIC(application specific integrated circuit、特定用途向け集積回路)150A、MPU(Micro Processing Unit)150B、及びメモリ150Cに加えて、無線通信部150TRを含んでもよい。データ取得装置150は、回路部130を介してプローブ140及び電池160に接続されている。
【0174】
ASIC150Aは、
図1を参照して説明したように、A/D(Analog to digital)変換器を含む。データ取得装置150は、電池160から供給される電力によって駆動され、プローブ140によって測定されるアナログ心電データを取得する。データ取得装置150は、取得されたアナログ心電データに、フィルタ処理やデジタル変換等の処理を行う。MPU150Bは、複数回にわたって取得されデジタル変換された心電データの加算平均値を求めてメモリ150Cに格納する。データ取得装置150は、一例として24時間以上にわたって連続的にアナログ心電データを取得することができる。データ取得装置150は、長時間にわたって生体信号(アナログ心電データ)を測定する場合があるため、
図1〜
図4を参照して説明したように、消費電力を低減するための工夫が施されている。
【0175】
無線通信部150TRは、実際のセンシング前の評価試験においてメモリ150Cに格納されたデジタル心電データを評価試験の試験装置が無線通信で読み出す際に用いられるトランシーバであり、一例として2.4GHzで通信を行う。評価試験は、一例としてJIS 60601-2-47の規格の試験である。評価試験は、生体信号を検出する生体センサ100の完成後に行われる動作確認を行う試験である。評価試験は、生体センサ100が医療機器として用いられる場合は、生体センサ100が検知する生体信号に対する、生体センサから出力される信号の減衰率が5%未満であることを要求している。この評価試験は、すべての完成品に対して行われる。
【0176】
評価試験の開始コマンドや、実際の測定の開始コマンド等は、例えば、生体センサ100の専用のアプリケーションプログラムをインストールしたスマートフォンや、PC(Personal Computer)のウェブブラウザ上の機能を通じて、無線通信部150TR経由でMPU150Bに入力されてもよい。
【0177】
なお、ここではデータ取得装置150が無線通信部150TRを含む形態について説明するが、無線通信部150TRの代わりに、試験装置のケーブルを接続するコネクタを含み、コネクタを介して生体信号を読み出してもよい。
【0178】
電池160は、
図6に示すように、基材層120の上面122に設けられている。電池160としては、鉛蓄電池又はリチウムイオン二次電池等を用いることができる。電池160は、ボタン電池型であってもよい。電池160は、バッテリの一例である。電池160は、その下面に設けられる2つの端子(図示せず)を有する。電池160の2つの端子は、それぞれ、回路部130を介してプローブ140とデータ取得装置150に接続される。電池160の容量は、一例として生体センサ100が24時間以上にわたって生体信号(アナログ心電データ)の測定を行えるように設定されている。
【0179】
カバー170は、基材層120、回路部130、基板135、プローブ140、固定テープ145、データ取得装置150、及び電池160の上を覆っている。カバー170は、基部170Aと、基部170Aの中央から+Z方向に突出した突出部170Bとを有する。基部170Aは、カバー170の平面視で周囲に位置する部分であり、突出部170Bよりも低い部分である。突出部170Bの内部(積層方向の下側)には凹部170Cが設けられている。カバー170は、基部170Aの下面が基材層120の上面122に接着される。凹部170C内には、基板135、データ取得装置150、電池160が収納される。カバー170は、データ取得装置150及び電池160等を凹部170Cに収納した状態で、基材層120の上面122に接着されている。
【0180】
カバー170は、基材層120上の回路部130、データ取得装置150、及び電池160を保護する役割の他に、生体センサ100に上面側から加えられる衝撃から内部の構成要素を保護する衝撃吸収層としての役割を有する。カバー170としては、例えば、シリコーンゴム、軟質樹脂、ウレタン等を用いることができる。
【0181】
図7は、生体センサ100の回路構成を示す図である。各プローブ140は、配線131、及び基板135の配線135Bを介してデータ取得装置150及び電池160に接続されている。2つのプローブ140は、データ取得装置150及び電池160に対して並列に接続されている。
【0182】
図8は、生体センサ100に適用されるデータ取得装置150の模式図である。データ取得装置150の詳細な構成と動作は、
図1〜
図4を参照して説明したとおりである。この例では、データ取得装置150を生体センサ100に適用しているため、ASIC150Aは、一対の端子153Aにより配線131を介して一対のプローブ140に接続されている。それ以外は、
図1と同じであり、重複する説明を省略する。データ取得装置150が無線通信部150TRを有する場合は、無線通信部150TRはメモリ150Cに接続される。
【0183】
図9は、データ取得装置150が生体センサ100に適用されるときのMPU150Bの処理を示すフローチャートである。
図9のフローチャートは、MPU150Bが心電データの取得、及び記録を開始してから終了するまでの処理であり、一例として一定時間にわたって繰り返し実行される。
【0184】
処理がスタートすると、MPU150Bは、心電データの取得開始か否かを判断する(ステップS30)。心電データの取得開始か否かは、プローブ140からアナログ心電データの入力があったか否か、所定の時刻になったか否か、等によって、判断することができる。心電データの取得開始となるまで(S30:NO)、S30を繰り返す。心電データの取得開始であれば(S30:YES)、切替設定部152Bは、切替信号のレベルを"1"に設定してASIC150Aに出力するとともに、MPU150Bをスレーブに設定する(ステップS31)。レベルが"1"の切替信号によって、ASIC150Aはマスタに設定される。ASIC150Aは、マスタに設定されるとADC151Aにデジタル変換処理を開始させる。
【0185】
演算部153Bは、n=0に設定する(ステップS32)。演算部153Bは、CS信号に従ってASIC150Aからデジタル心電データを取り込む(ステップS33)。演算部153Bは、式(2)に従って加算処理を行う(ステップS34)。
【0187】
演算部153Bは、nが7以上であるかどうかを判定する(ステップS35)演算部153Bは、nが7以上ではない(S35:NO)と判定すると、nをインクリメントする(ステップS36)。演算部153Bは、ステップS5でnが7以上である(S35:YES)と判定すると、加算値A
8の平均値(A
8/8)を求め(ステップS37)、平均値(A
8/8)をメモリ150Cに格納する(ステップS38)。
【0188】
主制御部151Bは、心電データの取得終了か否かを判断する(ステップS39)。心電データ取得終了か否かは、プローブ140から一定時間以上、心電データの入力がないか否か、心電データの取得開始から所定時間が経過したか否か、メモリ150Cの心電データ保存領域の占有率が一定レベルを超えたか否か、等で判断することができる。一例として、データ取得装置150はタイマを内蔵し、主制御部151Bはデジタル心電データの記録を開始してから24時間が経過したときに心電データの取得終了と判断してもよい。
【0189】
主制御部151Bは、心電データの取得が終了していない(S39:NO)と判定すると、フローをステップS32に戻して、S32〜S39を繰り返す。一方、主制御部151Bによって心電データの取得が終了した(S39:YES)と判定されると、切替設定部152Bは、切替信号のレベルを"0"に設定してASIC150Aに出力するとともに、MPU150Bをマスタに設定する(ステップS410)。レベルが"0"の切替信号によって、ASIC150Aはスレーブに設定される。ASIC150Aは、"0"レベルの切替信号によってスレーブに設定されるとADC151Aにデジタル変換処理を終了させる。このため、ASIC150Aは、切替信号が"1"レベルである間はADC151Aにデジタル変換処理を行わせ、切替信号が"0"レベルに切り替わると、ADC151Aにデジタル変換処理を終了させる。すなわち、ADC151Aは、ASIC150Aがマスタである間は、デジタル変換処理を行い続ける。
【0190】
上述の処理により、心電データの取得期間にわたってデジタル心電データの合計値が求められ、平均化処理が行われ、メモリ150Cに格納される。
【0191】
データ取得装置150を用いた生体センサ100は、心電データ取得区間Ti(たとえば、iは0〜7の整数)のそれぞれで心電データxi(iは0〜7の整数)を取得した後の各区間Tsbにおいて、上記の式(2)に従って加算処理を行う(
図3参照)。心電データ(x
0〜x
7)の加算値A
8を得た後の区間TBでは、加算値A
8の平均値(A
8/8)を求めるだけなので、消費電力を低減した生体センサ100を提供することができる。
【0192】
生体センサ100は、MPU150Bが
図3(B)に示す加算値A
n+1を求め、加算値A
8の平均値(A
8/8)を求めている間は、ASIC150Aをマスタに設定し、MPU150Bをスレーブに設定する。この状態では、MPU150Bのシステムクロックの周波数は、ADC151Aのサンプリング周波数と等しい4MHzに低下される。このことによっても、消費電力を低減することができる。
【0193】
MPU150Bは、自己をスレーブに設定した状態でCS信号がLレベルに遷移するとASIC150Aからデジタル心電データを取り込むので、MPU150BがASIC150Aにデジタル心電データの送信を要求しなくてもデジタル心電データを取得することができる。このため、MPU150Bは、制御部270がADC151Aから取得したデジタル心電データを即座に取り込むことができ、リアルタイム性が良好である。したがって、リアルタイム性が良好な生体センサ100を提供することができる。
【0194】
以上、本発明の例示的な実施の形態のデータ取得装置について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。