特許第6886544号(P6886544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6886544
(24)【登録日】2021年5月18日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】発振回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 3/03 20060101AFI20210603BHJP
   H03K 4/12 20060101ALN20210603BHJP
   H03K 5/04 20060101ALN20210603BHJP
   G05F 3/26 20060101ALN20210603BHJP
【FI】
   H03K3/03
   !H03K4/12
   !H03K5/04
   !G05F3/26
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-74621(P2020-74621)
(22)【出願日】2020年4月20日
【審査請求日】2020年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】511062254
【氏名又は名称】ウィンボンド エレクトロニクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】中谷 真史
(72)【発明者】
【氏名】村上 洋樹
【審査官】 渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−069825(JP,A)
【文献】 特開2014−075744(JP,A)
【文献】 特開2003−101389(JP,A)
【文献】 特開2007−074190(JP,A)
【文献】 特開2013−038744(JP,A)
【文献】 特表2018−517955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 4/12
H03K 3/03
H03K 5/04
G05F 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧の変動に依存しない基準電流を生成する生成回路と、当該生成回路に接続され、かつ前記基準電流とカレントミラーを構成する第1の電流を第1の電流経路に生成する第1のカレントミラー回路とを含む定電流回路と、
前記定電流回路に接続され、前記第1の電流経路に生成された第1の電流に応じてクロック信号を生成する発振器と、
前記第1の電流経路に接続され、前記定電流回路の電源電圧が動作保証範囲の下限よりも低下したときに生成される前記第1の電流の上限を制限する電流制限回路とを含み、
前記電流制限回路は、前記第1の電流経路を流れる第1の電流とカレントミラーを構成する第2の電流を第2の電流経路に生成する第2のカレントミラー回路と、前記第2の電流経路に接続された抵抗とを含み、前記抵抗は、前記定電流回路の電源電圧が動作保証の下限よりも低下したとき、前記第2の電流経路を流れる第2の電流を制限することにより前記第1の電流の上限を制限する、発振回路。
【請求項2】
前記生成回路は、ユニティゲインバッファとして機能するオペアンプと、電源電圧と基準電位の間に接続され、かつ前記オペアンプの出力に接続されたトランジスタとを含み、前記第1のカレントミラー回路は、前記トランジスタと前記第1の電流経路に接続されたトランジスタとを含む、請求項1に記載の発振回路。
【請求項3】
前記定電流回路はさらに、前記第1の電流経路を流れる第1の電流とカレントミラーを構成する第3の電流を第3の電流経路に生成する第3のカレントミラー回路と、
前記第3の電流経路を流れる第3の電流とカレントミラーを構成する第4の電流を第4の電流経路に生成する第4のカレントミラー回路を含み、
前記発振器は、第4の電流経路により生成された第4の電流に基づきクロック信号を生成する、請求項に記載の発振回路。
【請求項4】
前記第2のカレントミラー回路は、前記第1の電流経路に接続された第1のトランジスタと、第2の電流経路に前記抵抗と直列に接続された第2のトランジスタを含み、
第2のトランジスタと前記抵抗とを接続する第1のノードが第1および第2のトランジスタのゲートに共通に接続され、前記第1の電流の上限は、前記第2の電流経路を流れる第2の電流により規定される、請求項に記載の発振回路。
【請求項5】
前記抵抗は、電源電圧が前記定電流回路の動作保証範囲の下限を満たす場合には第1のトランジスタが前記第1の電流経路を流れる第1の電流を抑制せず、かつ電源電圧が前記定電流回路の動作保証範囲の下限より低い場合には第1のトランジスタが前記第1の電流経路を流れる第1の電流を抑制する、請求項4に記載の発振回路。
【請求項6】
前記定電流回路の電源電圧が動作保証範囲の下限を満たすとき、前記第2の電流経路を流れる第2の電流が前記基準電流よりも大きくなるように前記抵抗の抵抗値が調整される、請求項4に記載の発振回路。
【請求項7】
前記発振器は、前記第1のカレントミラー回路および前記電流制限回路を包含する、請求項2に記載の発振回路。
【請求項8】
前記発振器は、キャパシタへの充電により遅延時間を規定する遅延回路を含み、前記クロック信号の周波数は前記遅延時間に応答し、
前記キャパシタは、前記第1の電流経路を流れる第1の電流または前記第4の電流経路を流れる第4の電流により充電される、請求項1またはに記載の発振回路。
【請求項9】
前記発振器は、前記遅延回路を複数含み、複数の遅延回路の各々が前記第1のカレントミラー回路および前記電流制限回路を含む、請求項8に記載の発振回路。
【請求項10】
前記第1の電流経路は、直列に接続された第1のトランジスタと第3のトランジスタとを含み、
第1のトランジスタと第3のトランジスタとを接続する第2のノードが前記発振器に接続され、前記キャパシタが第1のトランジスタと直列に接続される、請求項8または9に記載の発振回路。
【請求項11】
前記遅延回路はさらに、基準電圧と前記キャパシタの充電電圧とを比較するコンパレータを含み、前記充電電圧は、前記第1の電流経路または前記第4の電流経路に接続される、請求項8に記載の発振回路。
【請求項12】
前記発振器は、フリップフロップ回路を介して相互に接続された一対の遅延回路を含み、一方の遅延回路の出力が前記フリップフロップ回路のセット入力に接続され、前記フリップフロップ回路の正転データ出力が前記一方の遅延回路に入力され、他方の遅延回路の出力が前記フリップフロップ回路のリセット入力に接続され、前記フリップフロップ回路の反転データ出力が前記他方の遅延回路に入力され、前記一対の遅延回路のいずれか一方の出力から前記クロック信号が生成される、請求項1ないし11いずれか1つに記載の発振回路。
【請求項13】
第1および第2のトランジスタはP型MOSトランジスタであり、第3のトランジスタはN型MOSトランジスタである、請求項4または10に記載の発振回路。
【請求項14】
請求項1ないし13いずれか1つに記載の発振回路と、
前記発振回路で生成されたクロック信号に同期して動作する回路と、
を含む半導体集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振回路に関し、特に定電流回路を用いた発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
定電流回路にカレントミラー回路を用いたものが従来から知られており、こうした定電流回路が、例えば特許文献1に開示されている。また、電源電圧に依存せずに一定の電流を出力する定電流回路が、例えば特許文献2に開示されている。さらに特許文献3には、定電流回路(V/I変換回路)を用いた発振回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−234890号公報
【特許文献2】特開2013−97751号公報
【特許文献3】特開2017−69825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1に、従来の定電流回路の構成を示す。同図に示すように、定電流回路10は、オペアンプOP、PMOSトランジスタPMOS1、PMOS2、可変抵抗Rを含み、オペアンプOPの反転入力端子(−)には基準電圧VREFが入力され、非反転入力端子(+)にはノードNの電圧Vが入力される。電源電圧VDDとGNDとの間にトランジスタPMOS1と可変抵抗Rが直列に接続され、トランジスタPMOS1のゲートがオペアンプOPの出力に接続される。可変抵抗Rは、回路素子のバラツキ等に応じて抵抗値がトリミングされる。また、トランジスタPMOS1とカレントミラー回路を構成するようにトランジスタPMOS2のゲートがオペアンプOPの出力に接続される。オペアンプOPは、ノードNの電圧Vが基準電圧VREFに等しくなるように(V=VREF)トランジスタPMOS1のゲート電圧を制御する。つまり、オペアンプOPは、ユニティゲインバッファとして機能する。その結果、トランジスタPMOS1を流れる基準電流は、IREF=VREF/Rで表され、基準電流IREFは、電源電圧の変動に依存しない定電流となる。また、トランジスタPMOS2は、トランジスタPMOS1を流れる電流IREFに応じた出力電流IMIRRORを生成し、この電流が負荷に供給される。
【0005】
図2は、図1に示す定電流回路を利用した発振回路の一例を示している。定電流回路10のオペアンプOPの出力Vgが電流源バイアスとして発振器20に提供される。発振器20は、一対の遅延回路22、24と、フリップフロップ回路26とを含む。遅延回路22、24の出力OUT1、OUT2がフリップフロップ回路26の入力S、Rに接続され、出力Q、Qbが遅延回路22、24の入力端子に接続されるように構成され、出力Qにクロック信号CLKが生成される。出力Qbは出力Qの反転である。
【0006】
図3(A)は、発振器の一方の遅延回路の構成を示し、図3(B)、(C)、(D)は、遅延回路の各部の動作波形である。遅延回路22は、電源電圧VDDとGNDとの間の電流経路に直列に接続されたP型トランジスタPMOS3とN型トランジスタNMOS1とを含む。トランジスタPMOS3のゲートには、オペアンプOPの出力VGが印加される。遅延回路22はさらに、トランジスタPMOS3とトランジスタNMOS1の間のノードN3に接続されたキャパシタCと、コンパレータCMPとを含む。コンパレータCMPの反転入力端子(−)には基準電圧VREFが入力され、非反転入力端子(+)にはノードN3の電圧が入力され、コンパレータCMPは、ノードN3の電圧と基準電圧VREFとを比較し、ノードN3の電圧が基準電圧VREFよりも低いとき、Lレベルを出力し、ノードN3の電圧が基準電圧VREFより高いとき、Hレベルを出力する。コンパレータCMPの出力OUT1は、フリップフロップ回路26の入力Sに接続され、トランジスタNMOS1のゲートには、フリップフロップ回路26の出力Qが入力INとして印加される。もう1つの遅延回路24も同様に構成される。
【0007】
時刻t1〜t4の期間、フリップフロップ回路26の出力QがLレベルであり、この間、トランジスタNMOS1がオフし、キャパシタCがトランジスタPMOS2を介してVDDに接続される期間であり、言い換えればキャパシタCに電荷が充電される期間である。
【0008】
時刻t1の開始前、トランジスタNMOS1がオン状態であり、トランジスタNMOS1を介してキャパシタCに充電された電荷がノードN3からGNDに向けて放電される。このとき、バイアス電圧VgによってトランジスタPMOS2が流す電流は、トランジスタNMOS1が流すことのできる電流よりも十分に小さく、それ故、ノードN3はほぼGNDと等しい電位となり、キャパシタCに電荷は充電されない。時刻t1でトランジスタNMOS1がオフすると、トランジスタPMOS2を介してVDDからキャパシタCに電荷が充電される。充電速度は、トランジスタPMOS2が流す出力電流IMIRRORに依存する。
【0009】
キャパシタCの電荷の充電が開始され、ノードN3の電圧が基準電圧VREFよりも高くなると、コンパレータCMPの出力OUT1がHレベルになる。その後、出力OUT1を受けたフリップフロップ回路26によって時刻t4で入力INがHレベルになるとトランジスタNMOS1がオンし、キャパシタCの放電が開始され、ノードN3の電圧が基準電圧VREFよりも低くなると、コンパレータCMPの出力OUT1がLレベルになる。このとき、同時に他方の遅延回路24の入力INは、フリップフロップ回路26によりLレベルに変化しており、充電動作が開始している。こうして遅延回路22、24のフリップフロップ回路26を介した相互接続による発振によりフリップフロップ回路26の出力Qからクロック信号CLKが生成される。
【0010】
定電流回路10において、もし、電源電圧VDDが基準電圧VREF近傍まで降下すると、オペアンプOPの出力に接続された出力ドライバーであるトランジスタPMOS1はもはや飽和領域で動作することができなくなり、オペアンプOPの出力電圧Vgが非常に低くなる。そうすると出力ドライバーPMOS3もまた飽和領域で動作することができなくなり、カレントミラー比とは無関係にPMOS1の基準電流IREFよりも非常に大きい出力電流IMIRRORを生成することがある。
【0011】
この様子を図3(C)の出力電流IMIRROR_L(破線)で示す。出力電流IMIRROR_Sから出力電流IMIRROR_Lに増加すると、それに応じてキャパシタCの充電時間が短くなる。その結果、図3(D)に示すように、出力電流IMIRROR_Sでは時刻t3でコンパレータCMPの出力OUT1がHレベルになるのに対し、出力電流IMIRROR_Lでは時刻t2で出力OUT1がHレベルに立ち上がる。このように出力電流IMIRRORが大きくなると、キャパシタCの充電による遅延時間が短くなり、発振するクロック信号CLKの周波数が高くなる。仮に発振器20が生成するクロック信号CLKの周波数が高くなり過ぎると、クロック信号CLKと同期する回路の動作を保証することができなくなってしまうという課題がある。
【0012】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、定電流回路の異常によるクロック信号の周波数の上限を抑制することができる発振回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る発振回路は、定電流を生成する定電流回路と、前記定電流回路により生成された定電流に応じた周波数のクロック信号を生成する発振器と、前記定電流回路の電源電圧が動作保証範囲の下限よりも低下したときに生成された定電流の上限を規定する電流制限回路とを含む。
【0014】
ある実施態様では、前記定電流回路は、基準電流に応答して第1の電流経路に電流を生成する第1のカレントミラー回路を含み、前記電流制限回路は、前記第1の電流経路を流れる電流に応答して第2の電流経路に電流を生成する第2のカレントミラー回路と、第2のカレントミラー回路に接続された抵抗とを含む。ある実施態様では、前記定電流回路はさらに、前記第1の電流経路を流れる電流に応答して第3の電流経路に電流を生成する第3のカレントミラー回路と、前記第3の電流経路を流れる電流に応答して第4の電流経路に電流を生成する第4のカレントミラー回路を含み、前記発振器は、第4の電流経路により生成された電流に基づきクロック信号を生成する。ある実施態様では、前記第2のカレントミラー回路は、前記第1の電流経路に接続された第1のトランジスタと、第2の電流経路に直列に接続された第2のトランジスタを含み、第2のトランジスタと前記抵抗とを接続する第1のノードが第1および第2のトランジスタのゲートに共通に接続され、前記定電流の上限は、前記第2の電流経路を流れる電流により規定される。ある実施態様では、前記抵抗は、電源電圧が前記定電流回路の動作保証範囲の下限を満たす場合には第1のトランジスタが前記第1の電流経路を流れる電流を抑制せず、かつ電源電圧が前記定電流回路の動作保証範囲の下限より低い場合には第1のトランジスタが前記第1の電流経路を流れる電流を抑制する。ある実施態様では、前記定電流回路の電源電圧が動作保証範囲の下限を満たすとき、前記第2の電流経路を流れる電流が前記基準電流よりも大きくなるように前記抵抗の抵抗値が調整される。ある実施態様では、前記発振器は、前記第1のカレントミラー回路および前記電流制限回路を包含する。ある実施態様では、前記発振器は、キャパシタへの充電により遅延時間を規定する遅延回路を含み、前記キャパシタは、前記第1の電流経路または前記第4の電流経路の電流により充電される。ある実施態様では、前記発振器は、前記遅延回路を複数含み、複数の遅延回路の各々が前記第1のカレントミラー回路および前記電流制限回路を含む。ある実施態様では、前記第1の電流経路は、直列に接続された第1のトランジスタと第3のトランジスタとを含み、第1のトランジスタと第3のトランジスタとを接続する第2のノードが前記発振器に接続され、前記キャパシタが第1のトランジスタと直列に接続される。ある実施態様では、前記遅延回路はさらに、基準電圧と前記キャパシタの充電電圧とを比較するコンパレータを含み、前記充電電圧は、前記第1の電流経路または前記第4の電流経路に接続される。ある実施態様では、前記発振器は、フリップフロップ回路を介して相互に接続された一対の遅延回路を含み、一方の遅延回路の出力が前記フリップフロップ回路のセット入力に接続され、前記フリップフロップ回路の正転データ出力が前記一方の遅延回路に入力され、他方の遅延回路の出力が前記フリップフロップ回路のリセット入力に接続され、前記フリップフロップ回路の反転データ出力が前記他方の遅延回路に入力され、前記一対の遅延回路のいずれか一方の出力から前記クロック信号が生成される。ある実施態様では、第1および第2のトランジスタはP型MOSトランジスタであり、第3のトランジスタはN型MOSトランジスタである。ある実施態様では、上記記載の発振回路と、前記発振回路で生成されたクロック信号に同期して動作する回路とを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電源電圧が定電流回路の動作保証範囲の下限を下回ったときの定電流の異常な電流を制限するようにしたので、クロック信号の周波数が必要以上に高くなるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来の定電流回路の構成を示す図である。
図2】従来の定電流回路を用いた発振回路の構成を示すブロック図である。
図3図3(A)は、発振器の遅延回路の構成を示す図、図3(B)ないし(D)は、遅延回路の各部の動作波形を示す図である。
図4】本発明の実施例に係る定電流回路を用いた発振回路の構成を示す図である。
図5】本発明の第2の実施例に係る定電流回路を用いた発振回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明に係る定電流回路を用いた発振回路は、フラッシュメモリ、ダイナミックメモリ(DRAM)、スタティックメモリ(SRAM)、抵抗変化型メモリ、磁気メモリ(MRAM)等の記憶装置や、ロジック、信号処理等の種々の半導体装置において利用することができる。
【実施例】
【0018】
次に、本発明の実施例に係る定電流回路を用いた発振回路について図面を参照して説明する。図4は、本実施例の定電流回路を用いた発振回路の構成を示す図であり、図2および図3(A)と同一構成については同一参照番号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
本実施例の発振回路100は、図2に示すような定電流回路10と発振器20とを含み、発振回路20を構成する遅延回路22、24の出力電流IMIRRORを生成する電流経路に新たに電流制限回路110が設けられる。図4には、一方の遅延回路22のみを例示するが、他方の遅延回路22も電流制限回路110を含んで構成される。
【0020】
電流制限回路110は、定電流回路10が異常に大きい定電流を流すときに発振器20が生成するクロック信号CLKの周波数の上限を制限するように動作する。例えば、定電流回路10の電源電圧VDD(例えば、1.8V)が、何らかの原因により基準電圧VREF(例えば、バンドギャップリファレンス回路により生成される1.2V)近傍まで降下すると、オペアンプOPの出力電圧Vgが非常に小さくなり過ぎ、出力ドライバーであるトランジスタPMOS1、PMOS2が飽和領域で動作しなくなる。そうすると、カレントミラー回路が正常に動作せず、トランジスタPMOS2の出力電流IMIRRORがカレントミラー比に従わず、非常に大きくなることがある。
【0021】
発振器20の遅延回路22、24は、図3(A)に示すようにキャパシタCを含み、キャパシタCに電荷が充電される時間は、出力電流IMIRRORに依存する。出力電流IMIRRORが大きくなると充電時間が速くなり、遅延回路22、24による遅延時間が短くなり、クロック信号CLKの周波数が高くなる。
【0022】
本実施例の電流制限回路110は、電源電圧VDDが低下したときの定電流回路10の出力電流IMIRRORの上限を規定し、遅延回路22、24のキャパシタCの電荷の充電時間が速くなることで遅延時間が一定以上に短くなるのを防ぎ、クロック信号CLKの周波数が必要以上に上昇しないようにする。これにより、発振回路100からのクロック信号CLKに同期して動作する同期回路の動作を保証する。
【0023】
電流制限回路110は、図4に示すように、P型のトランジスタPMOS4、PMOS5および抵抗RLIMとを含む。出力電流IMIRRORを流す電流経路には、トランジスタPMOS3とトランジスタNMOS1との間に直列にトランジスタPMOS5が接続される。電流制限回路110はさらに、電源電圧VDDとGNDとの間にもう1つの電流経路を含み、この電流経路にはトランジスタPMOS4と抵抗RLIMとが直列に接続される。トランジスタPMOS4と抵抗RLIMとを接続するノードN4がトランジスタPMOS4とトランジスタPMOS5とのゲートに共通に接続され、トランジスタPMOS4とトランジスタPMOS5とがカレントミラー回路を構成する。トランジスタPMOS5のゲートのバイアスは、トランジスタPMOS4と抵抗RLIMとを流れる電流ILIMによって決定され、トランジスタPMOS5を流れる電流は、電流ILIMによって決定される。もし、電源電圧VDDが高くなれば、電流ILIMが大きくなり、電源電圧VDDが低くなれば、電流ILIMが小さくなる。また、抵抗RLIMを小さくすれば、電流ILIMが大きくなり、抵抗RLIMを大きくすれば、電流ILIMが小さくなる。
【0024】
電源電圧VDDが基準電圧VREFよりも十分に高いとき、すなわち定電流回路10の動作保証範囲の下限を満たしているとき、トランジスタPMOS1は飽和領域で動作し、トランジスタPMOS3は、カレントミラー比に従いトランジスタPMOS1が流す基準電流IREFに応じた出力電流IMIRRORを生成する。もし、電源電圧VDDが何らかの原因により基準電圧VREF近傍またはそれよりも低く降下すると、トランジスタPMOS1が線形領域で動作し、トランジスタPMOS2はもはや基準電流IREFのカレントミラーとして機能しない。こうした異常な状態では、定電流回路10が正常に動作できなくなり、トランジスタPMOS3にはカレントミラー比に従わない大きな出力電流IMIRRORが流れる。このとき、電流制限回路110は、トランジスタPMOS5を流れる過剰な出力電流IMIRRORを制限する電流リミッターとして機能する。
【0025】
電流ILIMは、電源電圧VDDが定電流回路10の動作保証範囲の下限を満たす場合には、出力電流IMIRRORを上回る程度に大きく、かつ電源電圧VDDが定電流回路10の動作保証範囲の下限より低い場合には、トランジスタPMOS5が流すドレイン電流によるキャパシタCの充電時間が一定よりも早くならない程度に小さく調整される。例えば、抵抗RLIMは、電源電圧VDDが定電流回路10の動作保証範囲の下限であるとき、電流ILIMが出力電流IMIRRORと等しくなるよう調整されることが望ましい。もし、基準電流IREFと出力電流IMIRRORとが等しい場合(カレントミラー比が1の場合)には、ILIM=IREFとなるように抵抗RLIMが調整される。そのように調整された場合、電源電圧VDDが正常なとき出力電流IMIRRORは電流IREFで制御される一方、電源電圧VDDが定電流回路10の動作保証範囲の下限を下回ると直ちに電流ILIMが基準電流IREFより低下して出力電流IMIRRORが抑制される。
【0026】
出力電流IMIRRORの上限を規定することで、図3(C)に示すように、破線で示す電圧波形が実線で示す電圧波形のように制限され、クロック信号の周波数の上限が規制される。
【0027】
通常動作時、電流制限回路110の電流ILIMは、基準電流IREFよりも大きく、トランジスタPMOS5による出力電流IMIRRORを制限しない。
【0028】
このように電流制限回路110の抵抗RLIMを適切に調整することにより、電流制限回路110は、定電流回路10の出力電流IMIRRORが通常よりも大きくなってしまう場合には、出力電流IMIRRORの上限を制限する電流リミッターとして働き、定電流回路10が正常な定電流を出力している状態では、電流リミッターとして働くことなく基準電流IREFに応じた出力電流IMIRRORを供給する。これにより、本実施例の定電流回路を用いた発振回路では、発振器が予期しない高い周波数のクロック信号を生成することを抑制し、クロック信号と同期する回路の動作を保証することができる。
【0029】
次に、本発明の第2の実施例に係る定電流回路を用いた発振回路の構成を図5に示す。本実施例の発振回路100Aでは、定電流回路10のトランジスタPMOS1とカレントミラー回路を構成するP型のトランジスタPMOS6を含む第1の電流経路K1に電流制限回路110が設けられる。第1の電流経路K1の電源電圧VDDとGNDとの間には、トランジスタPMOS1と共通のゲートに出力Vgが印加されたトランジスタPMOS6、電流制限回路110のトランジスタPMOS5およびN型のトランジスタNMOS2とが直列に接続される。第1の電流経路K1を流れる出力電流IMIRRORは、トランジスタNMOS2を駆動するバイアス電圧BIASをノードN2に生成する。電流制限回路110は、先の実施例のときと同様に、電源電圧VDDが定電流回路10の動作保証範囲の下限より低くなったとき、トランジスタPMOS6によって発生し得る過剰な出力電流IMIRRORが制限される。
【0030】
さらに、第1の電流経路K1のトランジスタNMOS2とカレントミラー回路を構成するN型のトランジスタNMOS3を含む第2の電流経路K2に発振回路20が接続される。第2の電流経路K2の電源電圧VDDとGNDとの間には、P型のトランジスタPMOS7と、トランジスタNMOS3とが直列に接続される。トランジスタNMOS2とトランジスタNMOS3とがカレントミラー回路を構成し、これらのゲートのノードN2にバイアス電圧BIASが印加される。このカレントミラー回路によって、第2の電流経路K2を流れる出力電流IMIRRORは、第1の電流経路K1を流れる出力電流IMIRRORによって規定される。また、トランジスタPMOS7とトランジスタNMOS3との間のノードN5にバイアス電圧BIASPが生成され、このバイアス電圧BIASPは、トランジスタPMOS7と図3に示すトランジスタPMOS3の共通ゲートに印加される。トランジスタPMOS7とトランジスタPMOS3はカレントミラー回路を構成し、第2の電流経路K2を流れる出力電流IMIRRORは、遅延回路22、24の電流源であるトランジスタPMOS3を流れる出力電流IMIRRORを規定する。
【0031】
電源電圧VDDが定電流回路10の動作保証範囲の下限より低くなったとき、電流制限回路110によって第1の電流経路K1の出力電流IMIRRORの上限が制限され、これに応答してより第2の電流経路K2の出力電流IMIRRORがトランジスタNMOS3のドレイン電流によって制限され、これに応答して、遅延回路22、24のトランジスタPMOS3を流れる出力電流IMIRRORが制限される。
【0032】
本実施例によれば、第1の実施例のように一対の遅延回路22、24の各々に個別に電流制限回路を設けることなく、1つの電流制限回路により一対の遅延回路22、24のキャパシタへの充電時間を制御することができる。
【0033】
上記実施例では、一対の遅延回路とこれに相互接続されたフリップフロップ回路とから発振器を構成するようにしたが、これは一例であり、他の構成であってもよい。要は、本発明は、定電流回路により生成された電流の電流量に基づきクロック信号の周波数を決定する発振器に適用される。
【0034】
本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0035】
10:定電流回路
20:発振器
22、24:遅延回路
100:発振回路
110:電流制限回路
【要約】
【課題】 定電流回路の異常によるクロック信号の周波数の上限を抑制することができる発振回路を提供する。
【解決手段】 本発明の発振回路100は、定電流回路10と、定電流回路10で生成された出力電流IMIRRORに基づきクロック信号を生成する発振器20と、出力電流IMIRRORの上限を規定する電流制限回路110とを有する。電流制限回路110は、出力電流IMIRRORの電流経路に接続されたカレントミラー回路を含み、カレントミラー回路の電流を制限することで出力電流IMIRRORを制限し、発振器20の最大周波数を制限する。
【選択図】 図4
図1
図2
図3
図4
図5