【実施例】
【0018】
次に、本発明の実施例に係る定電流回路を用いた発振回路について図面を参照して説明する。
図4は、本実施例の定電流回路を用いた発振回路の構成を示す図であり、
図2および
図3(A)と同一構成については同一参照番号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
本実施例の発振回路100は、
図2に示すような定電流回路10と発振器20とを含み、発振回路20を構成する遅延回路22、24の出力電流I
MIRRORを生成する電流経路に新たに電流制限回路110が設けられる。
図4には、一方の遅延回路22のみを例示するが、他方の遅延回路22も電流制限回路110を含んで構成される。
【0020】
電流制限回路110は、定電流回路10が異常に大きい定電流を流すときに発振器20が生成するクロック信号CLKの周波数の上限を制限するように動作する。例えば、定電流回路10の電源電圧VDD(例えば、1.8V)が、何らかの原因により基準電圧VREF(例えば、バンドギャップリファレンス回路により生成される1.2V)近傍まで降下すると、オペアンプOPの出力電圧Vgが非常に小さくなり過ぎ、出力ドライバーであるトランジスタPMOS1、PMOS2が飽和領域で動作しなくなる。そうすると、カレントミラー回路が正常に動作せず、トランジスタPMOS2の出力電流I
MIRRORがカレントミラー比に従わず、非常に大きくなることがある。
【0021】
発振器20の遅延回路22、24は、
図3(A)に示すようにキャパシタCを含み、キャパシタCに電荷が充電される時間は、出力電流I
MIRRORに依存する。出力電流I
MIRRORが大きくなると充電時間が速くなり、遅延回路22、24による遅延時間が短くなり、クロック信号CLKの周波数が高くなる。
【0022】
本実施例の電流制限回路110は、電源電圧VDDが低下したときの定電流回路10の出力電流I
MIRRORの上限を規定し、遅延回路22、24のキャパシタCの電荷の充電時間が速くなることで遅延時間が一定以上に短くなるのを防ぎ、クロック信号CLKの周波数が必要以上に上昇しないようにする。これにより、発振回路100からのクロック信号CLKに同期して動作する同期回路の動作を保証する。
【0023】
電流制限回路110は、
図4に示すように、P型のトランジスタPMOS4、PMOS5および抵抗R
LIMとを含む。出力電流I
MIRRORを流す電流経路には、トランジスタPMOS3とトランジスタNMOS1との間に直列にトランジスタPMOS5が接続される。電流制限回路110はさらに、電源電圧VDDとGNDとの間にもう1つの電流経路を含み、この電流経路にはトランジスタPMOS4と抵抗R
LIMとが直列に接続される。トランジスタPMOS4と抵抗R
LIMとを接続するノードN4がトランジスタPMOS4とトランジスタPMOS5とのゲートに共通に接続され、トランジスタPMOS4とトランジスタPMOS5とがカレントミラー回路を構成する。トランジスタPMOS5のゲートのバイアスは、トランジスタPMOS4と抵抗R
LIMとを流れる電流I
LIMによって決定され、トランジスタPMOS5を流れる電流は、電流I
LIMによって決定される。もし、電源電圧VDDが高くなれば、電流I
LIMが大きくなり、電源電圧VDDが低くなれば、電流I
LIMが小さくなる。また、抵抗R
LIMを小さくすれば、電流I
LIMが大きくなり、抵抗R
LIMを大きくすれば、電流I
LIMが小さくなる。
【0024】
電源電圧VDDが基準電圧V
REFよりも十分に高いとき、すなわち定電流回路10の動作保証範囲の下限を満たしているとき、トランジスタPMOS1は飽和領域で動作し、トランジスタPMOS3は、カレントミラー比に従いトランジスタPMOS1が流す基準電流I
REFに応じた出力電流I
MIRRORを生成する。もし、電源電圧VDDが何らかの原因により基準電圧V
REF近傍またはそれよりも低く降下すると、トランジスタPMOS1が線形領域で動作し、トランジスタPMOS2はもはや基準電流I
REFのカレントミラーとして機能しない。こうした異常な状態では、定電流回路10が正常に動作できなくなり、トランジスタPMOS3にはカレントミラー比に従わない大きな出力電流I
MIRRORが流れる。このとき、電流制限回路110は、トランジスタPMOS5を流れる過剰な出力電流I
MIRRORを制限する電流リミッターとして機能する。
【0025】
電流I
LIMは、電源電圧VDDが定電流回路10の動作保証範囲の下限を満たす場合には、出力電流I
MIRRORを上回る程度に大きく、かつ電源電圧VDDが定電流回路10の動作保証範囲の下限より低い場合には、トランジスタPMOS5が流すドレイン電流によるキャパシタCの充電時間が一定よりも早くならない程度に小さく調整される。例えば、抵抗R
LIMは、電源電圧VDDが定電流回路10の動作保証範囲の下限であるとき、電流I
LIMが出力電流I
MIRRORと等しくなるよう調整されることが望ましい。もし、基準電流I
REFと出力電流I
MIRRORとが等しい場合(カレントミラー比が1の場合)には、I
LIM=I
REFとなるように抵抗R
LIMが調整される。そのように調整された場合、電源電圧VDDが正常なとき出力電流I
MIRRORは電流I
REFで制御される一方、電源電圧VDDが定電流回路10の動作保証範囲の下限を下回ると直ちに電流I
LIMが基準電流I
REFより低下して出力電流I
MIRRORが抑制される。
【0026】
出力電流I
MIRRORの上限を規定することで、
図3(C)に示すように、破線で示す電圧波形が実線で示す電圧波形のように制限され、クロック信号の周波数の上限が規制される。
【0027】
通常動作時、電流制限回路110の電流I
LIMは、基準電流I
REFよりも大きく、トランジスタPMOS5による出力電流I
MIRRORを制限しない。
【0028】
このように電流制限回路110の抵抗R
LIMを適切に調整することにより、電流制限回路110は、定電流回路10の出力電流I
MIRRORが通常よりも大きくなってしまう場合には、出力電流I
MIRRORの上限を制限する電流リミッターとして働き、定電流回路10が正常な定電流を出力している状態では、電流リミッターとして働くことなく基準電流I
REFに応じた出力電流I
MIRRORを供給する。これにより、本実施例の定電流回路を用いた発振回路では、発振器が予期しない高い周波数のクロック信号を生成することを抑制し、クロック信号と同期する回路の動作を保証することができる。
【0029】
次に、本発明の第2の実施例に係る定電流回路を用いた発振回路の構成を
図5に示す。本実施例の発振回路100Aでは、定電流回路10のトランジスタPMOS1とカレントミラー回路を構成するP型のトランジスタPMOS6を含む第1の電流経路K1に電流制限回路110が設けられる。第1の電流経路K1の電源電圧VDDとGNDとの間には、トランジスタPMOS1と共通のゲートに出力Vgが印加されたトランジスタPMOS6、電流制限回路110のトランジスタPMOS5およびN型のトランジスタNMOS2とが直列に接続される。第1の電流経路K1を流れる出力電流I
MIRRORは、トランジスタNMOS2を駆動するバイアス電圧BIASをノードN2に生成する。電流制限回路110は、先の実施例のときと同様に、電源電圧VDDが定電流回路10の動作保証範囲の下限より低くなったとき、トランジスタPMOS6によって発生し得る過剰な出力電流I
MIRRORが制限される。
【0030】
さらに、第1の電流経路K1のトランジスタNMOS2とカレントミラー回路を構成するN型のトランジスタNMOS3を含む第2の電流経路K2に発振回路20が接続される。第2の電流経路K2の電源電圧VDDとGNDとの間には、P型のトランジスタPMOS7と、トランジスタNMOS3とが直列に接続される。トランジスタNMOS2とトランジスタNMOS3とがカレントミラー回路を構成し、これらのゲートのノードN2にバイアス電圧BIASが印加される。このカレントミラー回路によって、第2の電流経路K2を流れる出力電流I
MIRRORは、第1の電流経路K1を流れる出力電流I
MIRRORによって規定される。また、トランジスタPMOS7とトランジスタNMOS3との間のノードN5にバイアス電圧BIASPが生成され、このバイアス電圧BIASPは、トランジスタPMOS7と
図3に示すトランジスタPMOS3の共通ゲートに印加される。トランジスタPMOS7とトランジスタPMOS3はカレントミラー回路を構成し、第2の電流経路K2を流れる出力電流I
MIRRORは、遅延回路22、24の電流源であるトランジスタPMOS3を流れる出力電流I
MIRRORを規定する。
【0031】
電源電圧VDDが定電流回路10の動作保証範囲の下限より低くなったとき、電流制限回路110によって第1の電流経路K1の出力電流I
MIRRORの上限が制限され、これに応答してより第2の電流経路K2の出力電流I
MIRRORがトランジスタNMOS3のドレイン電流によって制限され、これに応答して、遅延回路22、24のトランジスタPMOS3を流れる出力電流I
MIRRORが制限される。
【0032】
本実施例によれば、第1の実施例のように一対の遅延回路22、24の各々に個別に電流制限回路を設けることなく、1つの電流制限回路により一対の遅延回路22、24のキャパシタへの充電時間を制御することができる。
【0033】
上記実施例では、一対の遅延回路とこれに相互接続されたフリップフロップ回路とから発振器を構成するようにしたが、これは一例であり、他の構成であってもよい。要は、本発明は、定電流回路により生成された電流の電流量に基づきクロック信号の周波数を決定する発振器に適用される。
【0034】
本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。