(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1回路部、および、前記第1回路部から突出する第2回路部を含む電子ユニットと、前記電子ユニットを収容するハウジングとが一体に形成されたハウジング構造体の製造方法であって、
前記電子ユニットが収められるインサート成形用の金型であって、前記第2回路部の上面と対向する上壁面と前記第2回路部の側面と対向する側壁面とを含み、前記第2回路部の側面と前記側壁面との間を流れる樹脂の流動抵抗が前記第2回路部の上面と前記上壁面との間を流れる樹脂の流動抵抗よりも小さい金型を準備する準備工程と、
前記金型内に前記電子ユニットを配置する配置工程と、
前記電子ユニットを配置した前記金型内に樹脂を注入する注入工程とを含むことを特徴とする、ハウジング構造体の製造方法。
前記第2回路部の側面と前記側壁面との間の距離が、前記第2回路部の上面と前記上壁面との間の距離よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載のハウジング構造体の製造方法。
前記金型は、前記電子ユニットの前記第1回路部が収められる第1室と、前記第2回路部が収められ前記第1室に連通する第2室と、前記第1室に樹脂を注入するためのゲートとを含み、
前記ゲートから前記第1室に注入される樹脂は、前記第2回路部の上方から前記第2室に流入することを特徴とする、請求項1または2に記載のハウジング構造体の製造方法。
前記準備工程では、上方に向けて先細りのテーパ部によって構成される前記第2回路部の上面と対向する前記上壁面を含む前記金型が準備されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のハウジング構造体の製造方法。
環状の第1回路部、および、前記第1回路部から径方向の外方に突出する第2回路部を含む電子ユニットと、前記電子ユニットを収容し、前記電子ユニットと一体に形成されたハウジングとを含むハウジング構造体であって、
前記第2回路部が、前記第1回路部から前記径方向の外方に延びる本体部を含み、
前記本体部が、一対の側面部と、一対の前記側面部を連結し、前記第1回路部の中心軸線が延びる方向に前記本体部から突出する先細り状のテーパ部と、一対の前記側面部を連結する下面部とを含み、
前記ハウジングは、前記第1回路部を収容する筒状部と、前記筒状部の外周面から前記径方向の外方に突出し、前記第2回路部の前記本体部を保持する本体保持部とを含み、
前記本体保持部は、前記テーパ部を覆う上壁部と、一対の前記側面部のそれぞれを覆う一対の側壁部と、前記下面部を覆う下壁部とを含み、
前記側壁部の厚みは、前記上壁部の厚みよりも大きいことを特徴とする、ハウジング構造体。
環状の第1回路部、および、前記第1回路部から径方向の外方に突出する第2回路部を含む電子ユニットと、前記電子ユニットを収容し、前記電子ユニットと一体に形成されたハウジングとを含むハウジング構造体であって、
前記第2回路部が、前記第1回路部から前記径方向の外方に延びる本体部と、前記本体部から前記径方向の外方に延びる端子と、前記端子よりも前記径方向の外方に延びる延設部とを含み、
前記本体部が、一対の側面部と、一対の前記側面部を連結する上面部および下面部を有し、
前記ハウジングは、前記第1回路部を収容する筒状部と、前記筒状部の外周面から前記径方向の外方に突出し、前記第2回路部の前記本体部を保持する本体保持部とを含み、
前記本体保持部は、前記上面部を覆う上壁部と、一対の前記側面部のそれぞれを覆う一対の側壁部と、前記下面部を覆う下壁部とを含み、
前記側壁部の厚みは、前記上壁部の厚みよりも大きいことを特徴とする、ハウジング構造体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、金型内にセンサユニットを配置した状態で外部ハウジングを成形する際、すなわちインサート成形の際、金型内でセンサユニットのケースの上面に沿って流れる樹脂から受ける力(樹脂圧)よって、集磁ホルダから径方向の外側に向けて延びるケースが変形するおそれがある。
この発明は、かかる背景のもとでなされたものであり、インサート成形における電子ユニットの変形が抑制されるハウジング構造体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、第1回路部(51)、および、前記第1回路部から突出する第2回路部(52)を含む電子ユニット(2)と、前記電子ユニットを収容するハウジング(3)とが一体に形成されたハウジング構造体(1)の製造方法であって、前記電子ユニットが収められるインサート成形用の金型(90)であって、前記第2回路部の上面(67)と対向する上壁面(100)と前記第2回路部の側面(68)と対向する側壁面(101)とを含み、前記第2回路部の側面と前記側壁面との間を流れる樹脂(120)の流動抵抗(R1)が前記第2回路部の上面と前記上壁面との間を流れる樹脂の流動抵抗(R2)よりも小さい金型を準備する準備工程と、前記金型内に前記電子ユニットを配置する配置工程と、前記電子ユニットを配置した前記金型内に樹脂を注入する注入工程とを含むことを特徴とする、ハウジング構造体の製造方法である。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記第2回路部の側面と前記側壁面との間の距離(d1)が、前記第2回路部の上面と前記上壁面との間の距離(d2)よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載のハウジング構造体の製造方法である。
請求項3に記載の発明は、前記金型は、前記電子ユニットの前記第1回路部が収められる第1室(96)と、前記第2回路部が収められ前記第1室に連通する第2室(97)と、前記第1室に樹脂を注入するためのゲート(93)とを含み、前記ゲートから前記第1室に注入される樹脂は、前記第2回路部の上方から前記第2室に流入することを特徴とする、請求項1または2に記載のハウジング構造体の製造方法である。
【0007】
請求項4に記載の発明は、前記第2回路部は、前記第1回路部によって片持ち梁として支持されており、前記電子ユニットが前記金型内に配置された状態では、前記第2回路部は、前記金型の内壁面(90a)とは非接触であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のハウジング構造体の製造方法である。
請求項5に記載の発明は、前記金型が、前記第2回路部を支持可能な回路支持部(92,98)を含み、前記注入工程では、前記回路支持部に下方から前記第2回路部を支持させた状態で、前記金型内に樹脂を注入することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のハウジング構造体の製造方法である。
請求項6に記載の発明は、前記回路支持部が、防水性のコネクタ(30)と嵌合可能なコネクタ部(83)の内部空間(83a)を前記ハウジングに形成するための内部空間形成部(98)を含み、前記第2回路部が前記内部空間形成部によって支持された状態で、前記金型内に注入された樹脂を固化させることを特徴とする、請求項5に記載のハウジング構造体の製造方法である。
請求項
7に記載の発明は、前記電子ユニットは、車載用のトルクセンサ(4)に用いられ、前記第1回路部が、環状の集磁リング(53)および前記集磁リングを取り囲む集磁ホルダ(55)を含み、前記第2回路部が、電子部品(60)を有する電子回路部(52)を含むことを特徴とする、請求項1〜
6のいずれか一項に記載のハウジング構造体の製造方法である。
【0008】
請求項
8に記載の発明は、前記電子ユニットは、前記集磁ホルダの内周面が前記金型内に突出する支持部(94)によって支持されるように、前記金型内に配置されることを特徴とする、請求項
7に記載のハウジング構造体の製造方法である。
請求項
9に記載の発明は、前記準備工程では、上方に向けて先細りのテーパ部(64)によって構成される前記第2回路部の上面と対向する前記上壁面を含む前記金型が準備されることを特徴とする、請求項1〜
8のいずれか一項に記載のハウジング構造体の製造方法である。
【0010】
請求項10に記載の発明は、環状の第1回路部(51)、および、前記第1回路部から径方向(r)の外方に突出する第2回路部(52)を含む電子ユニット(2)と、前記電子ユニットを収容し、前記電子ユニットと一体に形成されたハウジング(3)とを含むハウジング構造体(1)であって、前記第2回路部が、前記第1回路部から前記径方向の外方に延びる本体部(63)
を含み、前記本体部が、一対の側面部と、一対の前記側面部を連結し、前記第1回路部の中心軸線(C1)が延びる方向(X)に前記本体部から突出する先細り状のテーパ部(64)と
、一対の前記側面部を連結する下面部とを含み、前記ハウジングは、前記第1回路部を収容する筒状部と、前記筒状部の外周面から前記径方向の外方に突出し、前記第2回路部の前記本体部を保持する本体保持部とを含み、前記本体保持部は、前記テーパ部を覆う上壁部と、一対の前記側面部のそれぞれを覆う一対の側壁部と、前記下面部を覆う下壁部とを含み、前記側壁部の厚みは、前記上壁部の厚みよりも大きいことを特徴とする、ハウジング構造体である。
【0011】
請求項11に記載の発明は、環状の第1回路部(51)、および、前記第1回路部から径方向(r)の外方に突出する第2回路部(52)を含む電子ユニット(2)と、前記電子ユニットを収容し、前記電子ユニットと一体に形成されたハウジング(3)とを含むハウジング構造体(1)であって、前記第2回路部が、前記第1回路部から前記径方向の外方に延びる本体部(63)と、前記本体部から前記径方向の外方に延びる端子(72)と、前記端子よりも前記径方向の外方に延びる延設部(58)とを含
み、前記本体部が、一対の側面部と、一対の前記側面部を連結する上面部および下面部を有し、前記ハウジングは、前記第1回路部を収容する筒状部と、前記筒状部の外周面から前記径方向の外方に突出し、前記第2回路部の前記本体部を保持する本体保持部とを含み、前記本体保持部は、前記上面部を覆う上壁部と、一対の前記側面部のそれぞれを覆う一対の側壁部と、前記下面部を覆う下壁部とを含み、前記側壁部の厚みは、前記上壁部の厚みよりも大きいことを特徴とする、ハウジング構造体である。
【0012】
請求項12に記載の発明は、前記ハウジングが、内部空間(83a)を有し防水性のコネクタ(30)と嵌合可能なコネクタ部(83)を含み、前記延設部が、前記内部空間を介して外部に露出されていることを特徴とする、請求項11に記載のハウジング構造体である。
請求項13に記載の発明は、前記電子ユニットは、車載用のトルクセンサ(4)に用いられ、前記第1回路部が、集磁リング(53)および前記集磁リングを取り囲む集磁ホルダ(55)を含み、前記第2回路部が、電子部品(60)を有する電子回路部(52)を含むことを特徴とする、請求項10〜12のいずれか一項に記載のハウジング構造体である。
【0013】
なお、上記において、括弧内の数字等は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、電子ユニットが収められるインサート成形用に準備される金型では、第2回路部の側面と側壁面との間を流れる樹脂の流動抵抗が第2回路部の上面と上壁面との間を流れる樹脂の流動抵抗よりも小さい。そのため、電子ユニットが配置された金型内に注入された樹脂は、第2回路部の上面と上壁面との間よりも第2回路部の側面と側壁面との間に流れやすいので、第2回路部の上面と上壁面との間に充填されるよりも先に、第2回路部の側面と側壁面との間に流れる。したがって、第1回路部から突出する第2回路部が、第2回路部の上面と上壁面との間に充填された樹脂から受ける力を低減できる。これにより、第2回路部の変形を抑制できる。すなわち、インサート成形の際に電子ユニットが変形するのを抑制しつつ、電子ユニットと電子ユニットを収容するハウジングとを一体に形成することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、第2回路部の側面と側壁面との間の距離が、第2回路部の上面と上壁面との間の距離よりも大きい金型を準備することで、第2回路部の側面と側壁面との間を流れる樹脂の流動抵抗を、第2回路部の上面と上壁面との間を流れる樹脂の流動抵抗よりも小さくできる。
請求項3に記載の発明によれば、ゲートから第1室に注入される樹脂は、第2回路部の上方から第2室に流入する。そのため、第2回路部の上面と上壁面との間に流入する樹脂は、第2回路部の上面と上壁面との間に充填されるよりも先に、第2回路部の側面と側壁面との間に流れる。したがって、第2回路部の上方から第2室に樹脂が流入する構成において、第2回路部の上面と上壁面との間に充填された樹脂から受ける力に起因する第2回路部の変形を抑制することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、第2回路部は、電子ユニットが金型内に配置された状態では、金型の内壁面とは非接触である。そのため、電子ユニットが配置された金型内に注入された樹脂は、第2回路部の上面と上壁面との間に充填されるよりも先に、第2回路部の側面と側壁面との間から第2回路部の下方に回り込んで、第2回路部と第2回路部の下方に位置する内壁面との間を埋める。したがって、第2回路部の下方に回り込んだ樹脂が第2回路部を受けるので、下方への第2回路部の変形を抑制できる。
請求項5に記載の発明によれば、注入工程では、第2回路部を金型の回路支持部に下方から支持させた状態で、金型内に樹脂が注入される。そのため、第2回路部の下方への変形を一層抑制できる。
請求項6に記載の発明によれば、回路支持部が、ハウジングのコネクタ部の内部空間を形成するための内部空間形成部を含む。そのため、コネクタ部の内部空間を形成するための内部空間形成部に第2回路部を支持させた状態で金型内の樹脂を固化させたとしても、第2回路部は、コネクタ部の内部空間を介して、外部に露出されるだけである。ハウジング構造体が製造された後にコネクタ部と防水性のコネクタとを嵌合させることによってコネクタ部が塞がれるので、ハウジング構造体の防水性を容易に確保することができる。したがって、第2回路部において外部に露出された部分に、コネクタとコネクタ部との嵌合とは別の防水処理を施す必要がない。
また、金型内に樹脂を注入した後、かつ、樹脂が固化する前に、内部空間形成部を第2回路部からわざわざ離間させることによって金型内において内部空間形成部が配置されていた部分に樹脂を充填させることも考え得る。しかし、コネクタとコネクタ部との嵌合により防水性を確保することができるため、内部空間形成部を第2回路部からわざわざ離間させる必要はない。
このように、第2回路部が下方へ変形するのを抑制し、かつ、ハウジング構造体の防水性を容易に確保することができる。
【0017】
請求項
7に記載の発明によれば、集磁ホルダから突出する電子回路部がインサート成形の際に変形するのを抑制しつつ、車載用のトルクセンサに用いられる電子ユニットを収容するハウジングを成形することができる。
請求項
8に記載の発明によれば、集磁ホルダの内周面が金型内に突出する支持部によって支持されるように電子ユニットが配置されるので、金型内において電子ユニットを位置決めしやすい。
【0018】
請求項
9に記載の発明によれば、準備工程では、上方に向けて先細りのテーパ部によって構成される第2回路部の上面と対向する上壁面を含む金型が準備される。そのため、金型の上壁面と第2回路部の上面との間に流れ込んだ樹脂が、先細りのテーパ部に沿って水平方向に対して傾斜する方向に流れる。これにより、第1回路部から突出する第2回路部が第2回路部の上面と上壁面との間に充填された樹脂から受ける力を分散させることができる。よって、第2回路部の変形を一層抑制できる。
【0021】
請求項10に記載の発明によれば、電子ユニットの第2回路部は、第1回路部から径方向の外方に延びる本体部と、前記第1回路部の中心軸線が延びる方向に本体部から突出する先細り状のテーパ部とを含む。そのため、電子ユニットとハウジングとを一体成形する際に、インサート成形用の金型に、テーパ部の先端を上方に向けて電子ユニットを収めた
状態で金型内に樹脂を注入すると、樹脂は、先細りのテーパ部に沿って水平方向に対して傾斜する方向に流れる。したがって、第1回路部から突出する第2回路部が樹脂から受ける力を分散させることができる。これにより、第2回路部の変形が抑制される。よって、インサート成形における電子ユニットの変形が抑制されたハウジング構造体を提供できる。
【0022】
請求項11に記載の発明によれば、第2回路部が、第1回路部から径方向の外方に延びる本体部と、本体部から径方向の外方に延びる端子と、端子よりも径方向の外方に延びる延設部とを含む。そのため、電子ユニットとハウジングとを一体成形する際に、インサート成形用の金型に延設部を支持させた状態で金型内に樹脂を注入することで、金型内に注入された樹脂から第2回路部が受ける力による第2回路部の変形が抑制される。よって、インサート成形における電子ユニットの変形が抑制されたハウジング構造体を提供できる。
【0023】
請求項12に記載の発明によれば、ハウジングが、内部空間を有し防水性のコネクタと嵌合可能なコネクタ部を含み、延設部が、内部空間を介して外部に露出されている。そのため、電子ユニットとハウジングとを一体成形する際に、金型に延設部を支持させた状態で金型内に樹脂を注入すると、金型内に注入された樹脂から受ける力による第2回路部の変形が抑制される。一方、ハウジング構造体が製造された後にコネクタ部と防水性のコネクタとを嵌合させることによってコネクタ部が塞がれるので、ハウジング構造体の防水性を容易に確保することができる。したがって、防水性が確保され、かつ、インサート成形における電子ユニットの変形が抑制されたハウジング構造体を提供できる。
【0024】
請求項13に記載の発明によれば、集磁ホルダから突出する電子回路部がインサート成形の際に変形するのを抑制しつつ、車載用のトルクセンサに用いられる電子ユニットを収容するハウジングを成形することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るハウジング構造体1が備えられた電動パワーステアリング装置5の概略構成を示す模式図である。
ハウジング構造体1は、電子ユニット2と、電子ユニット2を収容するハウジング3とを一体に含む。電子ユニット2は、例えば、車載用のトルクセンサ4に用いられるセンサユニットであり、ハウジング3は、例えば、トルクセンサ4を収容するセンサハウジングである。
【0027】
トルクセンサ4が搭載される電動パワーステアリング装置5は、例えば、デュアルピニオン電動パワーステアリング装置である。電動パワーステアリング装置5は、ラック軸6の第1ラック6aと噛み合う第1ピニオン7aが形成された操舵補助力伝達用の第1ピニオン軸7と、ラック軸6の第2ラック6bと噛み合う第2ピニオン8aが形成されたマニュアル操舵力伝達用の第2ピニオン軸8とを含む。
【0028】
ハウジング3は、例えば、ラック軸6が収容されるラックハウジング10に取り付けられており、トルクセンサ4は、例えば、第2ピニオン軸8に取り付けられている。第2ピニオン軸8は、ステアリングシャフト11およびインターミディエイトシャフト12を介してステアリングホイール13に連結された入力軸15と、第2ピニオン8aが形成された出力軸16と、入力軸15および出力軸16を同軸上に連結するトーションバー17とを有している。入力軸15および出力軸16は、所定の角度範囲内で相対回転可能とされている。
【0029】
ラック軸6の両端部には、それぞれタイロッド18およびナックルアーム19を介して転舵輪20が連結されている。運転者がステアリングホイール13を操作することにより、ステアリングシャフト11、インターミディエイトシャフト12、第2ピニオン軸8、ラック軸6、タイロッド18およびナックルアーム19を介して転舵輪20が転舵される。運転者が転舵輪20を転舵させるためにステアリングホイール13を操作する際、第2ピニオン軸8の入力軸15および出力軸16が相対回転し、トーションバー17が捩れる。
【0030】
トルクセンサ4は、第2ピニオン軸8のトーションバー17の捩れ量を検出する。トルクセンサ4の検出信号は、ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)25に与えられる。ECU25は、トルク検出信号や車速センサ(図示せず)から与えられる車速検出信号等に基づいて、内蔵の駆動回路を介して電動モータ26を駆動制御する。電動モータ26の回転は、減速機構27を介して減速されて第1ピニオン軸7に伝達され、ラック軸6の直線運動に変換される。これにより、操舵が補助される。
【0031】
以下では、ハウジング構造体1の構成について詳しく説明する。
図2は、ハウジング構造体1の周辺の断面の模式図である。
図3は、電子ユニット2の分解斜視図である。
ハウジング構造体1の電子ユニット2が用いられるトルクセンサ4は、永久磁石40と、永久磁石40に磁気的に結合される一対の磁気ヨーク41とをさらに含む。永久磁石40は、入力軸15に同心にかつ一体回転するように固定されている。一対の磁気ヨーク41は、出力軸16に同心にかつ一体回転するように固定されている。入力軸15と出力軸16とが相対回転することによって、一対の磁気ヨーク41と永久磁石40との相対的な位置が変化し、磁束が変化する。
【0032】
電子ユニット2は、ECU25と電気的に接続されており、磁気ヨーク41からの磁束を検出する。電子ユニット2は、環状の第1回路部51を含む。第1回路部51は、入力軸15の中心軸線と一致する中心軸線C1を有する。中心軸線C1を中心とした半径方向を径方向rといい、径方向rのうち中心軸線C1に近づく方向を径方向内方といい、径方向のうち中心軸線C1から離れる方向を径方向外方という。また、中心軸線C1が延びる方向を軸方向Xという。電子ユニット2は、第1回路部51の外周から第1回路部51の径方向外方へ突出するブロック状の第2回路部52をさらに含む。第2回路部52は、第1回路部51によって、片持ち梁として支持されている。
【0033】
第1回路部51は、対応する磁気ヨーク41にそれぞれ磁気的に結合された一対の集磁リング53と、対応する集磁リング53をそれぞれ保持する環状の一対の集磁ホルダ55と、各集磁リング53、各磁気ヨーク41および永久磁石40により形成される磁気回路56に外部磁界が及ぼす影響を低減するC字状の磁気シールド57とを含む。磁気シールド57は、集磁ホルダ55の周囲に配置されている。
【0034】
また、第2回路部52は、電子部品60を有する電子回路部である。詳しくは、第2回路部52は、磁気回路56の磁束に応じた信号を出力する第1磁気素子61および第2磁気素子62と、一対の磁気素子61,62に電気的に接続された電子部品60と、一対の磁気素子61,62と電子部品60とを収容保持するホルダ63とを含む。
磁気素子61,62は、例えばホールICである。
図2の断面図では、一対の磁気素子61,62は、図面上には本来現れないが、説明の便宜上、一対の磁気素子61,62の両方を破線で図示している。一対の磁気素子61,62には、永久磁石40と各磁気ヨーク41との相対位置の変化に応じて変動した磁束が、一対の集磁リング53によって誘導される。
【0035】
各集磁リング53は、環状部53aと、環状部53aから径方向外方に突出し、第1磁気素子61に対向する第1素子対向部53bと、環状部53aから径方向外方に突出し、第2磁気素子62に対向する第2素子対向部53cとを含む。各集磁リング53は、対応する集磁ホルダ55と一体をなすように対応する集磁ホルダ55の樹脂によりモールドされて全体として環状をなしている。各集磁ホルダ55および各集磁リング53は、対応する磁気ヨーク41の外周を同心かつ非接触で取り囲んでいる。第1磁気素子61は、一対の集磁リング53の第1素子対向部53bの間に配置されている。第2磁気素子62は、一対の集磁リング53の第2素子対向部53cの間に配置されている。
【0036】
電子部品60は、基板70と、基板70に実装されたコンデンサ71とを含む。基板70には、金属製の端子72が電気的に接続されている。端子72は、基板70に連結され、径方向rに延びる第1部分72aと、第1部分72aの先端部から下方に延びる第2部分72bとを含む。端子72の一部(第1部分72aの先端部と第2部分72b)は、ホルダ63から径方向外方に延びている。電子部品60は、一対の磁気素子61,62と基板70とを連結するピン73と、コンデンサ71を覆うカバー74とをさらに含む。
【0037】
ホルダ63は、樹脂製であり、径方向外方に延びるブロック状(略直方体状)に形成されている。ホルダ63は、電子部品60を挟んで互いに突き合わされた一対の分割体63aを含む。各分割体63aは、対応する集磁ホルダ55と一体に形成されている。
ハウジング3は、第2ピニオン軸8の入力軸15を取り囲み、一対の集磁リング53および一対の集磁ホルダ55を収容する内部空間80aが形成された筒状の本体部80と、本体部80の外周面から径方向外方へ突出し、ホルダ63を保持するホルダ保持部82と、ホルダ保持部82の突出端から延び、防水性のコネクタ30が嵌合されるコネクタ部83とを単一の材料で一体に含む。コネクタ部83は、端子72の第2部分72bの先端が配置される内部空間83aを有する。端子72の第2部分72bは、コネクタ部83にコネクタ30が接続されることによって、ECU25と電気的に接続される。
【0038】
本体部80と入力軸15との間に設けられたシール部材31と、本体部80とラックハウジング10との間に設けられたシール部材32と、ラックハウジング10と出力軸16との間に設けられた軸受33と、コネクタ30とコネクタ部83との間に設けられたシール部材34とによって、ハウジング3は、内部に液体が進入しないように防水状態にされている。
【0039】
図4は、
図2におけるIV−IV線に沿った断面の模式図である。
ブロック状のホルダ63は、上面67、一対の側面68および下面69を含む。ホルダ63の上面67は、第2回路部52の上面でもあり、ホルダ63の側面68は、第2回路部52の側面でもあり、ホルダ63の下面69は、第2回路部52の下面でもある。ホルダ保持部82は、ホルダ63の上面67を覆う上壁部87と、ホルダ63の一対の側面68のそれぞれを覆う側壁部88と、ホルダ63の下面69を覆う下壁部89とを含む。側面68に垂直な方向における側壁部88の幅(側壁部88の厚みD1)は、上面67に垂直な方向における上壁部87の幅(上壁部87の厚みD2)よりも大きい。側壁部88の厚みD1は、上壁部87の厚みD2の1.1倍以上であることが好ましい。
【0040】
以下では、
図5〜
図8を参照して、このようなハウジング構造体1の製造方法について詳しく説明する。
図5(a)は、ハウジング構造体1の製造方法の一工程を説明するための模式図であり、
図5(b)は、
図5(a)のVb−Vb線に沿った断面に相当する模式図である。まず、
図5(a)および
図5(b)に示すように、電子ユニット2が収められるインサート成形用の金型90を準備する(準備工程)。
図5(a)および
図5(b)では、金型90内に収められた状態の電子ユニット2を二点鎖線で図示している。
【0041】
図5(a)および
図5(b)では、説明の便宜上、構成を省略して電子ユニット2を図示している(後述する
図6〜
図8においても同様)。具体的には、第1回路部51の集磁リング53および磁気シールド57と、第2回路部52の一対の磁気素子61,62および電子部品60との図示を省略し、ホルダ63と一対の集磁ホルダ55とを単一の部材のように図示している。
【0042】
図5(a)を参照して、金型90は、上下方向Zに互いに対向する上型91および下型92を含む。上型91の下面と下型92の上面とは上下方向Zに対向している。金型90は、上型91の下面の一部と下型92の上面の一部とが接触することで閉じられ、上型91の下面と下型92の上面とが互いに離間することで開かれる。金型90は、金型90が閉じられた状態で上型91の下面と下型92の上面とによって区画される内部空間95を含む。上型91の下面には、内部空間95を上方から区画する第1凹凸部91aが形成されている。下型92の上面には、内部空間95を下方から区画する第2凹凸部92aが形成されている。
【0043】
金型90は、下型92の上面から上方へ向けて突出し、電子ユニット2の第1回路部51を支持可能な柱状の支持部94と、下型92の上面から上方へ向けて突出し、コネクタ部83の内部空間83a(
図2を参照)を形成するための内部空間形成部98とを含む。支持部94および内部空間形成部98は、金型90が閉じられた状態で、上型91へ向けて突出している。金型90が閉じられた状態で、支持部94の表面94a、内部空間形成部98の表面98a、第1凹凸部91aおよび第2凹凸部92aが金型90の内壁面90aを構成する。内部空間95は、内壁面90aによって区画されている。
【0044】
内部空間95は、電子ユニット2が金型90内に配置された状態で第1回路部51が収められる第1室96と、電子ユニット2が金型90内に配置された状態で第2回路部52が収められ第1室96に連通する第2室97とを含む。電子ユニット2が金型90内に配置された状態とは、電子ユニット2の第1回路部51が支持部94に支持され、かつ、金型90が閉じられた状態のことをいう。支持部94は、第1回路部51を下方から支持する。
【0045】
金型90は、第1室96に樹脂を注入するためのゲート93を含む。ゲート93は、上型91の第1凹凸部91aにおいて最も上方に位置する部分に形成されていてもよい。ゲート93は、例えば、支持部94の周りを取り囲むように複数箇所に設けられている。ゲート93は、第1室96に連通している。第2室97は、第2回路部52が収められ、水平方向から見て略矩形状のホルダ形成部97aと、ホルダ63から延びる端子72の第2部分72bの先端側部分が収められるコネクタ形成部97bとを含む。
【0046】
本実施形態とは異なり、上型91が、下方に突出し支持部94の上端部に当接する凸部(図示せず)を含んでおり、ゲート93が、当該凸部において支持部94と当接する部分に設けられていてもよい。
図5(b)を参照して、金型90の内壁面90aは、ホルダ形成部97aを上方から区画する上壁面100と、ホルダ形成部97aを側方からそれぞれ区画する一対の側壁面101と、ホルダ形成部97aを下方から区画する下壁面102とを含む。
【0047】
電子ユニット2が金型90内に配置された状態で、上壁面100は、第2回路部52の上面67と間隔を隔てて対向し、各側壁面101は、第2回路部52の対応する側面68と間隔を隔てて対向し、下壁面102は、第2回路部52の下面69と間隔を隔てて対向する。上壁面100と第2回路部52の上面67との間の空間を上方流路110といい、各側壁面101と第2回路部52の対応する側面68との間の空間を側方流路111といい、下壁面102と第2回路部52の下面69との間の空間を下方流路112という。
【0048】
金型90は、電子ユニット2が金型90内に配置された状態で第2回路部52の側面68と側壁面101との距離d1が第2回路部52の上面67と上壁面100との距離d2よりも大きくなるように設計されている。
図6は、
図5の次の工程を説明するための模式図である。次に、
図6に示すように、金型90内に電子ユニット2を配置する(配置工程)。
図6では、金型90が開いた状態の上型91および下型92を二点鎖線で図示している。
【0049】
電子ユニット2を上型91と下型92との間に配置し、上型91と下型92とを互いに近づけて金型90を閉じることによって、第1回路部51の一対の集磁ホルダ55の内周面が支持部94によって支持されるように電子ユニット2が金型90内に配置される。電子ユニット2が金型90内に配置された状態では、第2回路部52は、金型90の内壁面90aとは非接触である。
【0050】
図7(a)は、
図6の次の工程を説明するための模式図であり、
図7(b)は、
図7(a)のVIIb−VIIb線に沿った断面に相当する模式図である。次に、
図7(a)および
図7(b)に示すように、電子ユニット2を配置した金型90内に溶融した樹脂120を注入する(注入工程)。樹脂120は、ゲート93から第1室96に注入される(
図7(a)の太線矢印参照)。第1室96に注入された樹脂120は、第2回路部52の上方から第2室97に流入し、上方流路110、一対の側方流路111および下方流路112に流れる。そして、金型90と電子ユニット2との間が樹脂120によって充填される。
図7(a)および
図7(b)は、金型90内に樹脂120を注入している途中の状態を図示している。詳しくは、第2室97内に樹脂120が流れ込んでいる状態を図示しており、第2室97内に流れ込んだ樹脂120を二点鎖線で示している。
【0051】
ここで、第2室97内を流れる樹脂120の体積流量をQとし、樹脂120の粘度をμとし、樹脂120が流れる流路の幅(流路幅)の半分の値をbとし、樹脂120の圧力をPとすると、体積流量Qは、2次元Poiseuille Flowにより下記の式(1)で表すことができる。
Q=−(2b
3/3μ)×ΔP …(1)
上記式(1)のうち3μ/2b
3が、第2室97内を流れる樹脂120の流動抵抗Rを表している(下記式(2)参照)。上記式(1)および下記式(2)に基づいて、下記式(3)のように、流動抵抗Rを用いて体積流量Qを表すことができる。
R=3μ/2b
3 …(2)
Q=−ΔP/R …(3)
上記式(3)に示すように、流動抵抗Rが大きくなると体積流量Qの絶対値が小さくなり、流動抵抗Rが小さくなると体積流量Qの絶対値が大きくなる。また、上記式(2)に示すように、流路幅が大きくなると流動抵抗Rが小さくなり、流路幅が小さくなると流動抵抗Rが大きくなる。
【0052】
次に、本実施形態の距離d1および距離d2を流路幅として、側方流路111を流れる樹脂120の流動抵抗R1と、上方流路110を流れる樹脂120の流動抵抗R2とを比較する。流動抵抗R1は、下記式(4)で表され、流動抵抗R2は、下記式(5)で表される。
R1=12μ/(d1)
3 …(4)
R2=12μ/(d2)
3 …(5)
前述したように、距離d1は、距離d2よりも大きい。そのため、側方流路111を流れる樹脂120の流動抵抗R1は、上方流路110を流れる樹脂120の流動抵抗R2よりも小さい(R1<R2)。したがって、注入される樹脂120は、第1室96から第2室97に流入する際に、上方流路110よりも側方流路111との間に優先的に流れる。
【0053】
図8(a)は、
図7の次の工程を説明するための模式図であり、
図8(b)は、
図8(a)のVIIIb−VIIIb線に沿った断面に相当する模式図である。次に、
図8(a)および
図8(b)に示すように、金型90に樹脂120が充填された状態で金型90を介して樹脂120を冷却することによって樹脂120を固化させる(冷却工程)。これにより、ハウジング3が電子ユニット2と一体に成形される。
【0054】
詳しくは、
図8(a)を参照して、第1室96に充填された樹脂120が固化することによってハウジング3の本体部80が成形される。また、第2室97のホルダ形成部97aに充填された樹脂120が固化することによってハウジング3のホルダ保持部82が成形される。また、第2室97のコネクタ形成部97bに充填された樹脂120が固化することによってハウジング3のコネクタ部83が成形される。
【0055】
より詳しくは、
図8(b)を参照して、上方流路110に充填された樹脂120が固化することによってハウジング3のホルダ保持部82の上壁部87が成形される。また、側方流路111に充填された樹脂120が固化することによってホルダ保持部82の側壁部88が成形される。また、下方流路112に充填された樹脂120が固化することによってホルダ保持部82の下壁部89が成形される。そして、金型90を上下方向Zに開き、一体に形成されたハウジング3および電子ユニット2を金型90から取り出す(取出工程)。これにより、電子ユニット2と、電子ユニット2を収容するハウジング3とが一体に形成されたハウジング構造体1が完成する。
【0056】
この実施形態によれば、電子ユニット2が収められるインサート成形用に準備される金型90は、第2回路部52の側面68と側壁面101との間(すなわち側方流路111)を流れる樹脂120の流動抵抗R1が第2回路部52の上面67と上壁面100との間(すなわち上方流路110)を流れる樹脂120の流動抵抗R2よりも小さい。そのため、電子ユニット2が配置された金型90内に注入された樹脂120が、第2回路部52の上面67と上壁面100との間に充填されるよりも先に、第2回路部52の側面68と側壁面101との間に流れる。したがって、第1回路部51から突出する第2回路部52が、第2回路部52の上面67と上壁面100との間に充填される樹脂120から受ける力(樹脂圧)を低減することができる。これにより、第2回路部52の変形を抑制できる。すなわち、インサート成形の際に電子ユニット2が変形するのを抑制しつつ、電子ユニット2と電子ユニット2を収容するハウジング3とを一体に形成することができる。
【0057】
また、本実施形態のように、第2回路部52の側面68と側壁面101との距離d1が第2回路部52の上面67と上壁面100との距離d2よりも大きくなるように金型90を準備することで、第2回路部52の側面68と側壁面101との間を流れる樹脂120の流動抵抗R1を、第2回路部52の上面67と上壁面100との間を流れる樹脂120の流動抵抗R2よりも小さくできる。
【0058】
また、本実施形態によれば、ゲート93から第1室96に注入される樹脂120は、第2回路部52の上方から第2室97に流入する。そのため、第2回路部52の上面67と上壁面100との間に流入する樹脂120は、第2回路部52の上面67と上壁面100との間に充填されるよりも先に第2回路部52の側面68と側壁面101との間に流れる。したがって、第2回路部52の上方から第2室97に樹脂120が流入する構成において、第2回路部52の上面67と上壁面100との間に充填された樹脂120から受ける力に起因する第2回路部52の変形を抑制することができる。
【0059】
また、ゲートは、通常、金型の上型の上側部分に形成されており、ゲートの位置を変更することは困難である。しかし、本実施形態では、ゲート93が上型91の第1凹凸部91aに形成されているため、通常用いられる金型の構造を大きく変更することなく金型90を準備することができる。
第2回路部52は、電子ユニット2が金型90内に配置された状態では、金型90の内壁面90aとは非接触である。そのため、電子ユニット2が配置された金型90内に注入された樹脂120は、第2回路部52の上面67と上壁面100との間に充填されるよりも先に、第2回路部52の側面68と側壁面101との間から第2回路部52の下方に回り込んで、第2回路部52と、第2回路部52の下方に位置する内壁面90a(下壁面102)との間を埋める。したがって、第2回路部52の下方に回り込んだ樹脂120が第2回路部52を受けるので、下方への第2回路部52の変形を抑制できる。
【0060】
集磁ホルダ55の内周面が金型90内に突出する支持部94によって支持されるように電子ユニット2が配置されるので、金型90内に対して電子ユニット2を位置決めしやすい。したがって、電子ユニット2の第2回路部52の側面68と側壁面101との間の距離d1が第2回路部52の上面67と上壁面100との間の距離d2よりも大きくなるように、金型90内に電子ユニット2を配置するのが容易である。
【0061】
また、ホルダ63を厚肉化することで剛性を向上させて第2回路部52の変形を抑制する構成と比較して、ホルダ63を小型化することができ、ホルダ63に使用する樹脂の量を低減できる。
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0062】
例えば、上述の実施形態とは異なり、
図9を参照して、第2回路部52が、第1回路部51から径方向外方へ延びる本体部としてのホルダ63に加えて、第1回路部51の中心軸線C1が延びる方向(軸方向X)に向けてホルダ63から突出する先細りのテーパ部64を含んでいてもよい。テーパ部64は、径方向rから見て、三角形状である。テーパ部64は、一対の側面68が対向する対向方向Fに対して互いに逆向きに傾斜した一対の傾斜面64aを含む。各傾斜面64aは、互いに離れるにしたがって側面68に近づくように、対向方向Fに対して傾斜している。テーパ部64は、ホルダ63が延びる方向(径方向r)において、ホルダ63の全域に設けられている。
【0063】
テーパ部64の一対の傾斜面64aは、第2回路部52の上面でもあり、ホルダ63の側面68は、第2回路部52の側面でもあり、ホルダ63の下面69は、第2回路部52の下面でもある。ホルダ保持部82の上壁部87は、テーパ部64の一対の傾斜面64aを覆う。側壁部88の厚みD1は、上壁部87の厚みD2よりも大きい。この変形例において、上壁部87の厚みD2とは、対向方向Fに直交する方向(軸方向X)における上壁部87の寸法のことである。上壁部87の厚みD2は、対向方向Fにおける上壁部87の両端部において最も大きい。側壁部88の厚みD1は、対向方向Fにおける上壁部87の両端部の厚みD2よりも大きい。
【0064】
この変形例に係るハウジング構造体1の製造方法では、先細りのテーパ部64を上方に向けて電子ユニット2を金型90に配置する。これにより、金型90の上壁面100と上方に向けて先細りのテーパ部64とが対向する(
図10参照)。
電子ユニット2が金型90内に配置された状態で、第2回路部52の側面68と側壁面101との距離d1がテーパ部64の一対の傾斜面64aと上壁面100との距離d2よりも大きい。距離d2は、対向方向Fに直交する方向における傾斜面64aと上壁面100との間の距離である。距離d2は、対向方向Fにおけるテーパ部64の両端部において最も大きい。距離d1は、対向方向Fにおけるテーパ部64の両端部と上壁面100との間の距離d2よりも大きい。
【0065】
この製造方法によれば、先細りのテーパ部64を上方に向けた状態で金型90内に電子ユニット2を収容することで、金型90の上壁面100は、先細りのテーパ部64によって構成される第2回路部52の上面と対向する。そのため、注入工程では、金型90の上壁面100とテーパ部64(第2回路部52の上面)との間に流れ込んだ樹脂120が、テーパ部64に沿って水平方向(対向方向F)に対して傾斜する方向に流れる(
図10の太線矢印を参照)。これにより、第1回路部51から突出する第2回路部52が、テーパ部64(第2回路部52の上面)と上壁面100との間に充填された樹脂120から受ける力を分散させることができる。よって、第2回路部52の変形を抑制できる。
【0066】
テーパ部64は、必ずしも対向方向Fにおけるホルダ63の全域に設けられている必要はなく、対向方向Fにおけるホルダ63の中央付近に設けられていればよい。たとえば、上述の変形例とは異なり、第2回路部52の上面は、テーパ部64の一対の傾斜面64aと、対向方向Fにおける一対の傾斜面64aの両外側に設けられた平坦面とによって構成されていてもよい。また、テーパ部64は、ホルダ63が延びる方向(径方向r)において部分的に設けられている場合も有り得る。また、テーパ部64は、径方向rから見て、上底をホルダ63とは反対側(上方)に向けた台形状であってもよい。
【0067】
また、上述の実施形態とは異なり、電子ユニット2が金型90内に配置された状態で、第2回路部52が、金型90の下壁面102に接触することによって金型90の下型92(回路支持部)に支持されていてもよい。たとえば、第2回路部52における第1回路部51側とは反対側の先端が、金型90の下壁面102と部分的に接触していてもよい。この場合、径方向r(第2回路部52が延びる方向)における第2回路部52の中央部は、下型92によって受けられていない。しかし、この場合であっても、第2回路部52の側面68と側壁面101との距離d1が第2回路部52の上面67と上壁面100との距離d2よりも大きくなるように金型90が設計されていれば、径方向rにおける第2回路部52の中央部が下方に変形することを抑制できる。
【0068】
このように、注入工程において、第2回路部52を金型90の下型92(回路支持部)に下方から支持させた状態で、金型90内に樹脂が注入される製造方法であれば、第2回路部52の下方への変形を一層抑制できる。
ただし、上述の実施形態のように電子ユニット2がトルクセンサ4に用いられる構成では、電子ユニット2とハウジング3との間に液体が進入しないようにハウジング3を形成する必要がある。そのため、電子ユニット2が金型90内に配置された状態では、第2回路部52は、金型90の内壁面90aとは非接触であることが好ましい。
【0069】
そこで、トルクセンサ4に用いられる電子ユニット2が金型90内に配置された状態で、第2回路部52を金型90で支持するために、金型90内で移動可能なピン(図示せず)等の回路支持部が用いられてもよい。当該回路支持部によって下方から第2回路部52を支持しておき、樹脂120が金型90内に充填された後、かつ、樹脂120が固化する前に、当該回路支持部が第2回路部52から離間するように当該回路支持部の位置を制御してもよい。これにより、金型90内(内部空間95)において当該回路支持部が配置されていた部分にも樹脂120が回り込む。したがって、ホルダ保持部82に穴を設けることなくハウジング3を成形することができる。
【0070】
また、第2回路部52の下方への変形を抑制し、かつ、電子ユニット2とハウジング3との間に液体が進入しない、すなわち防水性が確保されたハウジング構造体1として、
図11および
図12に示す変形例に係るハウジング構造体1が挙げられる。
図11を参照して、この変形例に係るハウジング構造体1の電子ユニット2の第2回路部52は、内部空間形成部98(
図12参照)によって支持される部分として、端子72とは別に、コネクタ部83の内部空間83aに露出された延設部58を含んでいる。延設部58は、ホルダ63の少なくとも一方の分割体63aと一体に形成されている。延設部58は、ホルダ63の径方向外方端から径方向外方に延びている。延設部58は、端子72よりも径方向外方(第1回路部51とは反対側)まで延びている。言い換えると、延設部58は、第2回路部52の先端である。延設部58は、その全体が内部空間83aに露出されている必要はなく、コネクタ部83の内部空間83aの開口側から見たときに、視認可能な面を有していればよい。内部空間83aは、端子収容室83bと、端子収容室83bの上端から第2回路部52の延設部58まで延び、内部空間83aを介して延設部58を外部に露出させる露出部83cとを含む。
【0071】
図12を参照して、この変形例に係るハウジング構造体1の製造方法では、コネクタ部83の内部空間83aを形成するための内部空間形成部98が、下方から第2回路部52を支持可能な回路支持部として機能する。この製造方法に用いられる金型90の内部空間形成部98は、コネクタ部83の内部空間83aにおいて端子72の第2部分72bの先端が収容される端子収容室83bを形成する収容室形成部122と、収容室形成部122の上端から上方に延び、第2回路部52に当接する当接部121とを含む。
【0072】
この変形例に係るハウジング構造体1の製造方法では、準備工程において、第2回路部52を下方から支持可能な内部空間形成部98を含む金型90を準備する。そして、注入工程において延設部58を内部空間形成部98に支持させた状態で金型90内に樹脂120を注入する。
そのため、
図12に示すように第2回路部52を内部空間形成部98に支持させた状態で金型90内の樹脂を固化させたとしても、
図11に示すように第2回路部52は、コネクタ部83を介して、外部に露出されるだけである。ハウジング構造体1が製造された後にコネクタ部83と防水性のコネクタ30とを嵌合させることによって、コネクタ部83の開口が塞がれるので、ハウジング構造体1の防水性を容易に確保することができる。したがって、第2回路部52において外部に露出された部分にコネクタ30とコネクタ部83との嵌合とは別の防水処理を施す必要がない。
【0073】
また、金型90内に樹脂を注入した後、かつ、樹脂が固化する前に、内部空間形成部98を第2回路部52からわざわざ離間させることによって金型90内において内部空間形成部98の当接部121が配置されていた部分に樹脂を充填させることも考え得る。しかし、コネクタ30とコネクタ部83との嵌合により防水性を確保することができるため、内部空間形成部98を第2回路部52からわざわざ離間させる必要はない。
【0074】
このように、インサート成形における電子ユニット2の変形を抑制し、かつ、ハウジング構造体1の防水性を容易に確保することができる。
また、内部空間形成部98は、収容室形成部122と当接部121とを含むため、水平方向に関して収容室形成部122よりも当接部121を小さく形成しておくことで、コネクタ部83の内部空間83aを必要以上に広げることなくハウジング構造体1の防水性を容易に確保することができる。
【0075】
また、本実施形態とは異なり、電子ユニット2は、第2ピニオン軸8に取り付けられるトルクセンサ4に用いられる必要はなく、例えば、ステアリングシャフト11に取り付けられるトルクセンサに用いられてもよいし、車載用の他の機器に用いられてもよい。また、電子ユニットは、車載用以外の機器に用いられてもよく、電子ユニットを収容するハウジングと一体に形成されたあらゆるハウジング構造体に適用することができる。
【0076】
また、前述した式(4)および式(5)に示すように、金型90内を流れる樹脂120の粘度μを部分的に変化させることによって、側方流路111を流れる樹脂120の流動抵抗R1を、上方流路110を流れる樹脂120の流動抵抗R2よりも小さくすることもできる。具体的には、側方流路111の周辺(特に、側方流路111を区画する側壁面101)の温度を上昇させることで、側方流路111を流れる樹脂120の粘度μを小さくし、それにより流動抵抗R1を小さくすることができる。