(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る蓄電素子の一実施形態について、
図1〜
図6を参照しつつ説明する。蓄電素子には、二次電池、キャパシタ等がある。本実施形態では、蓄電素子の一例として、充放電可能な二次電池について説明する。尚、本実施形態の各構成部材(各構成要素)の名称は、本実施形態におけるものであり、背景技術における各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
【0016】
本実施形態の蓄電素子1は、非水電解質二次電池である。より詳しくは、蓄電素子1は、リチウムイオンの移動に伴って生じる電子移動を利用したリチウムイオン二次電池である。この種の蓄電素子1は、電気エネルギーを供給する。蓄電素子1は、単一又は複数で使用される。具体的に、蓄電素子1は、要求される出力及び要求される電圧が小さいときには、単一で使用される。一方、蓄電素子1は、要求される出力及び要求される電圧の少なくとも一方が大きいときには、他の蓄電素子1と組み合わされて蓄電装置100に用いられる。前記蓄電装置100では、該蓄電装置100に用いられる蓄電素子1が電気エネルギーを供給する。
【0017】
蓄電素子1は、
図1〜
図6に示すように、正極11と負極12とを含む電極体2と、電極体2を収容するケース3と、ケース3の外側に配置される外部端子7であって電極体2と導通する外部端子7と、を備える。また、蓄電素子1は、電極体2、ケース3、及び外部端子7の他に、電極体2と外部端子7とを導通させる集電体5等を有する。
【0018】
電極体2は、正極11と負極12とがセパレータ4によって互いに絶縁された状態で積層された積層体22が巻回されることによって形成される。
【0019】
正極11は、金属箔111(集電箔)と、金属箔111の表面に重ねられ且つ導電助剤を含む中間層113と、中間層113の表面に重ねられ且つ活物質を含む正極活物質層112と、を有する。本実施形態では、中間層113は、金属箔111の両方の面にそれぞれ重なる。正極活物質層112は、各中間層113の一方の面にそれぞれ重なる。正極活物質層112は、金属箔111の厚さ方向の両側にそれぞれ配置され、同様に、中間層113は、金属箔111の厚さ方向の両側にそれぞれ配置される。なお、正極11の厚さは、通常、40μm以上150μm以下である。
【0020】
金属箔111は帯状である。本実施形態の正極11の金属箔111は、例えば、アルミニウム箔である。正極11は、帯形状の短手方向である幅方向の一方の端縁部に、正極活物質層112の非被覆部(正極活物質層が形成されていない部位)115を有する。
【0021】
正極活物質層112は、粒子状の活物質(活物質粒子)と、粒子状の導電助剤と、バインダとを含む。正極活物質層112(1層分)の厚さは、通常、10μm以上70μm以下である。正極活物質層112(1層分)の目付量は、6mg/cm
2以上17mg/cm
2 以下である。正極活物質層112の密度は、1.5g/cm
3 以上3.0g/cm
3 以下である。目付量及び密度は、金属箔111の一方の面を覆うように配置された1層分におけるものである。
【0022】
正極11の活物質は、リチウムイオンを吸蔵放出可能な化合物である。正極11の活物質の平均粒子径D50は、通常、3μm以上8μm以下である。
【0023】
正極11の活物質は、例えば、リチウム金属酸化物である。具体的に、正極の活物質は、例えば、Li
pMeO
t(Meは、1又は2以上の遷移金属を表す)によって表される複合酸化物(Li
pCo
sO
2、Li
pNi
qO
2、Li
pMn
rO
4、Li
pNi
qCo
sMn
rO
2等)、又は、Li
pMe
u(XO
v)
w(Meは、1又は2以上の遷移金属を表し、Xは例えばP、Si、B、Vを表す)によって表されるポリアニオン化合物(Li
pFe
uPO
4、Li
pMn
uPO
4、Li
pMn
uSiO
4、Li
pCo
uPO
4F等)である。
【0024】
本実施形態では、正極11の活物質は、Li
pNi
qMn
rCo
sO
tの化学組成で表されるリチウム遷移金属複合酸化物(ただし、0<p≦1.3であり、q+r+s=1であり、0≦q≦1であり、0≦r≦1であり、0≦s≦1であり、1.7≦t≦2.3である)である。なお、0<q<1であり、0<r<1であり、0<s<1であってもよい。
【0025】
上記のごときLi
pNi
qMn
rCo
sO
tの化学組成で表されるリチウム遷移金属複合酸化物は、例えば、LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2、LiNi
1/6Co
1/6Mn
2/3O
2、LiCoO
2 などである。
【0026】
正極活物質層112に用いられるバインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレンとビニルアルコールとの共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレンブタジエンゴム(SBR)である。本実施形態のバインダは、ポリフッ化ビニリデンである。
【0027】
正極活物質層112の導電助剤は、炭素を98質量%以上含む炭素質材料である。炭素質材料は、例えば、ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、黒鉛等である。本実施形態の正極活物質層112は、導電助剤としてアセチレンブラックを有する。
【0028】
中間層113は、粒子状の導電助剤と、バインダ(結着剤)とを含む。なお、中間層113は、正極活物質を含まない。中間層113は、導電助剤の間の間隙によって多孔質に形成されている。中間層113は、導電助剤を含むことから、導電性を有する。中間層113は、金属箔111と正極活物質層112との間における電子の経路となり、これらの間の導電性を保つ。中間層113の導電性は、通常、正極活物質層112の導電性よりも高い。
【0029】
中間層113は、金属箔111及び正極活物質層112の間に配置される。バインダ(結着剤)を含む中間層113は、金属箔111に対して十分な密着性を有する。中間層113は、正極活物質層112に対しても十分な密着性を有する。
【0030】
中間層113の厚さは、通常、0.1μm以上2.0μm以下である。中間層113の目付量は、通常、0.001mg/cm
2以上0.20mg/cm
2 以下である。中間層113の目付量は、正極活物質層112の外縁部に重なる部分において0.001mg/cm
2以上0.05mg/cm
2 以下であってもよい。一方、正極活物質層112の外縁部よりも内側部分に重なる中間層113において、目付量は、0.03mg/cm
2以上0.14mg/cm
2 以下であってもよく、0.10mg/cm
2 以下であってもよい。中間層113の目付量[mg/cm
2]は、正極活物質層112の外縁部に重なる部分において、中央部よりも小さくてもよい。このとき、目付量の差が0.03mg/cm
2以上0.05mg/cm
2 以下であってもよい。
【0031】
中間層113の導電助剤は、炭素を98質量%以上含む炭素質材料である。炭素質材料の電気伝導率は、通常、10
−6 S/m以上である。炭素質材料は、例えば、ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、黒鉛等である。本実施形態の中間層113は、導電助剤としてアセチレンブラックを有する。導電助剤の平均粒子径D50は、通常、20nm以上150nm以下である。導電助剤の平均粒子径D50は、レーザ回折式の粒子径測定装置を用いて測定することができる。
【0032】
中間層113のバインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、エチレンとビニルアルコールとの共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエチレンオキサイド(ポリエチレングリコール)、ポリプロピレンオキサイド(ポリプロピレングリコール)、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリオレフィン、ニトリル−ブタジエンゴムなどの合成高分子化合物が挙げられる。また、中間層113のバインダとしては、例えば、キトサンやキトサン誘導体(例えばヒドロキシエチルキトサン)、セルロースやセルロース誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース)などの天然高分子化合物が挙げられる。
【0033】
中間層113は、通常、導電助剤としての炭素質材料と、バインダと、を含む。中間層113は、ピロメリット酸などの硬化剤を含んでもよい。後に詳述する正極活物質層112での電気抵抗値を小さくすることを目的とする場合、中間層113の導電助剤の含有率は、20質量%以上80質量%以下であるとよく、バインダの含有率は、20質量%以上80質量%以下であるとよい。導電助剤の含有率が20質量%以上である場合、中間層113の目付量を、正極活物質層112の外縁部に重なる部分で小さくすることによって、上記の電気抵抗値をより確実に高くできる。導電助剤の含有率が80質量%以下であることによって、バインダ量が相対的に多くなり、金属箔111に対する中間層113の剥離強度が低下することを抑制できる。一方、正極活物質層112の電気抵抗値を大きくすることを目的とする場合、中間層113の導電助剤の含有率は、20質量%未満であるとよく、バインダの含有率は80質量%を超えるとよい。この場合、少なくとも、正極活物質層112の外縁部に重なる部分に形成される中間層113の導電助剤の含有率を20質量%未満とするとよい。また、正極活物質層112の外縁部に重なる部分にのみ中間層113を形成してもよい。
【0034】
負極12は、金属箔121(集電箔)と、金属箔121の上に形成された負極活物質層122と、を有する。本実施形態では、負極活物質層122は、金属箔121の両面にそれぞれ重ねられる。金属箔121は帯状である。本実施形態の負極12の金属箔121は、例えば、銅箔である。負極12は、帯形状の短手方向である幅方向の一方の端縁部に、負極活物質層122の非被覆部(負極活物質層が形成されていない部位)非被覆部125を有する。負極12の厚さは、通常、40μm以上150μm以下である。
【0035】
負極活物質層122は、粒子状の活物質(活物質粒子)と、バインダと、を含む。負極活物質層122は、セパレータ4を介して正極11と向き合うように配置される。負極活物質層122の幅は、正極活物質層112の幅よりも大きい。
【0036】
負極12の活物質は、負極12において充電反応及び放電反応の電極反応に寄与し得るものである。例えば、負極12の活物質は、グラファイト、非晶質炭素(難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素)などの炭素材料、又は、ケイ素(Si)及び錫(Sn)などリチウムイオンと合金化反応を生じる材料である。本実施形態の負極の活物質は、非晶質炭素である。より具体的には、負極の活物質は、難黒鉛化炭素である。
【0037】
負極活物質層122(1層分)の厚さは、通常、10μm以上70μm以下である。負極活物質層122の目付量(1層分)は、通常、3mg/cm
2以上10mg/cm
2以下である。負極活物質層122の密度(1層分)は、通常、0.7g/cm
3以上1.2g/cm
3以下である。
【0038】
負極活物質層122に用いられるバインダは、正極活物質層112や中間層113に用いられるバインダと同様のものである。本実施形態の負極活物質層122は、スチレンブタジエンゴム(SBR)とカルボキシメチルセルロース(CMC)とをバインダとして含む。
【0039】
負極活物質層122では、バインダの割合は、活物質粒子とバインダとの合計質量に対して、2質量%以上10質量%以下であってもよい。
【0040】
負極活物質層122は、ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、黒鉛等の導電助剤をさらに有してもよい。本実施形態の負極活物質層122は、導電助剤を有していない。
【0041】
本実施形態の電極体2では、以上のように構成される正極11と負極12とがセパレータ4によって絶縁された状態で巻回される。即ち、本実施形態の電極体2では、正極11、負極12、及びセパレータ4の積層体22が巻回される。セパレータ4は、絶縁性を有する部材である。セパレータ4は、正極11と負極12との間に配置される。これにより、電極体2(詳しくは、積層体22)において、正極11と負極12とが互いに絶縁される。また、セパレータ4は、ケース3内において、電解液を保持する。これにより、蓄電素子1の充放電時において、リチウムイオンが、セパレータ4を挟んで交互に積層される正極11と負極12との間を移動する。
【0042】
図6に示すように、電極体2では、正極11の金属箔111は、正極活物質層112の外縁部よりも外側にはみ出したはみ出し部を有する。はみ出し部は、帯状の正極11の幅方向(巻回された電極体2の巻回軸方向)の一方に向けてはみ出している。負極活物質層122の少なくとも一部は、正極活物質層112の外縁部よりも外側にはみ出してはみ出し部と対向する。本実施形態では、負極活物質層122の幅方向における両方の外縁部は、正極活物質層122の幅方向における両方の外縁部よりも外側にそれぞれはみ出している。
【0043】
電極体2では、外縁部における正極活物質層112の表面から金属箔111までの厚さ方向の電気抵抗値は、外縁部よりも内側の部分(以下、内側部ともいう)における電気抵抗値よりも高い。詳しくは、正極活物質層112の表面から正極11の金属箔111における厚さ方向の電気抵抗値であって各外縁部での電気抵抗値は、各外縁部よりも内側の各内側部での電気抵抗値よりも高い。電気抵抗値の測定方法の詳細は、後述する。
【0044】
正極活物質層112の外縁部は、通常、正極活物質層112の外縁から内側へ10mmまでの部分である。斯かる外縁部は、正極活物質層112の外縁に沿う帯状の部分である。正極活物質層112の内側部は、通常、外縁から10mm以上内側の部分である。
【0045】
正極活物質層112の外縁部での電気抵抗値は、外縁部よりも内側の内側部での電気抵抗値に比べて、10Ω以上200Ω以下高くてもよい。外縁部での電気抵抗値は、通常、40Ω以上350Ω以下である。内側部での電気抵抗値は、通常、30Ω以上150Ω以下である。
【0046】
中間層113の目付量は、正極活物質層112の内側部に重なる部分よりも、正極活物質層112の外縁部に重なる部分において、小さくてもよい。導電助剤を比較的多く含む中間層113の目付量がより小さいことによって、上記の電気抵抗値をより高くすることができる。また、中間層113における導電助剤の含有率は、正極活物質層112の内側部に重なる部分よりも、正極活物質層112の外縁部に重なる部分において、低くてもよい。中間層113の導電助剤の含有率をより低くすることによって、上記の電気抵抗値をより高くすることができる。正極活物質層112の目付量を変えること、正極活物質層112の密度を変えること、正極活物質層112中に含まれる導電助剤の含有率を変えることによっても、上記の電気抵抗値を調整することができる。なお、中間層113の外縁部の端縁は、負極活物質層122の外縁部の端縁よりも外側にはみ出てもよい。
【0047】
セパレータ4は、帯状である。セパレータ4は、多孔質なセパレータ基材を有する。セパレータ4は、正極11及び負極12間の短絡を防ぐために正極11及び負極12の間に配置されている。セパレータ4は、セパレータ基材41と、無機粒子を含む無機層42とを有してもよい。
【0048】
セパレータ基材41は、多孔質である。セパレータ基材41は、例えば、織物、不織布、又は多孔膜などである。セパレータ基材の材質としては、高分子化合物、ガラス、セラミックなどが挙げられる。高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などのポリオレフィン(PO)、又は、セルロースが挙げられる。
【0049】
無機層42は、セパレータ基材41の一方の面に重ねられる。無機層42は、通常、無機粒子を10質量%以上99質量%以下含む、無機粒子としては、酸化鉄、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2、BaTiO
2、ZrO、アルミナ−シリカ複合酸化物などの酸化物粒子;窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの窒化物粒子;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶粒子;シリコン、ダイヤモンドなどの共有結合性結晶粒子;タルク、モンモリロナイトなどの粘土粒子;ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、マイカなどの鉱物資源由来物質あるいはそれらの人造物の粒子;などが挙げられる。無機層42は、通常、バインダ等をさらに含む。
【0050】
セパレータ4は、例えば、セパレータ基材41が負極活物質層122と接触し、無機層42が正極活物質層112と接触するように、正極11及び負極12の間に配置される。
【0051】
セパレータ4の幅(帯形状の短手方向の寸法)は、負極活物質層122の幅より僅かに大きい。セパレータ4は、正極活物質層112及び負極活物質層122が重なるように幅方向に位置ずれした状態で重ね合わされた正極11と負極12との間に配置される。このとき、
図4に示すように、正極11の非被覆部115と負極12の非被覆部125とは重なっていない。即ち、正極11の非被覆部115が、正極11と負極12との重なる領域から幅方向に突出し、且つ、負極12の非被覆部125が、正極11と負極12との重なる領域から幅方向(正極11の非被覆部115の突出方向と反対の方向)に突出する。積層された状態の正極11、負極12、及びセパレータ4、即ち、積層体22が巻回されることによって、電極体2が形成される。正極11の非被覆部115又は負極12の非被覆部125のみが積層された部位によって、電極体2における非被覆積層部26が構成される。
【0052】
非被覆積層部26は、電極体2における集電体5と導通される部位である。非被覆積層部26は、巻回された正極11、負極12、及びセパレータ4の巻回中心方向視において、中空部27(
図4参照)を挟んで二つの部位(二分された非被覆積層部)261に区分けされる。
【0053】
以上のように構成される非被覆積層部26は、電極体2の各極に設けられる。即ち、正極11の非被覆部115のみが積層された非被覆積層部26が電極体2における正極11の非被覆積層部を構成し、負極12の非被覆部125のみが積層された非被覆積層部26が電極体2における負極12の非被覆積層部を構成する。
【0054】
ケース3は、開口を有するケース本体31と、ケース本体31の開口を塞ぐ(閉じる)蓋板32と、を有する。ケース3は、電極体2及び集電体5等と共に、電解液を内部空間に収容する。ケース3は、電解液に耐性を有する金属によって形成される。ケース3は、例えば、アルミニウム、又は、アルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料によって形成される。ケース3は、ステンレス鋼及びニッケル等の金属材料、又は、アルミニウムにナイロン等の樹脂を接着した複合材料等によって形成されてもよい。
【0055】
電解液は、非水溶液系電解液である。電解液は、有機溶媒に電解質塩を溶解させることによって得られる。有機溶媒は、例えば、プロピレンカーボネート及びエチレンカーボネートなどの環状炭酸エステル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート類である。電解質塩は、LiClO
4、LiBF
4、及びLiPF
6等である。本実施形態の電解液は、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートを所定の割合で混合した混合溶媒に、0.5〜1.5mol/LのLiPF
6を溶解させたものである。
【0056】
ケース3は、ケース本体31の開口周縁部と、長方形状の蓋板32の周縁部とを重ね合わせた状態で接合することによって形成される。また、ケース3は、ケース本体31と蓋板32とによって画定される内部空間を有する。本実施形態では、ケース本体31の開口周縁部と蓋板32の周縁部とは、溶接によって接合される。
【0057】
以下では、
図1に示すように、蓋板32の長辺方向をX軸方向とし、蓋板32の短辺方向をY軸方向とし、蓋板32の法線方向をZ軸方向とする。ケース本体31は、開口方向(Z軸方向)における一方の端部が塞がれた角筒形状(即ち、有底角筒形状)を有する。蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐ板状の部材である。
【0058】
蓋板32は、ケース3内のガスを外部に排出可能なガス排出弁321を有する。ガス排出弁321は、ケース3の内部圧力が所定の圧力まで上昇したときに、該ケース3内から外部にガスを排出する。ガス排出弁321は、X軸方向における蓋板32の中央部に設けられる。
【0059】
ケース3には、電解液を注入するための注液孔が設けられる。注液孔は、ケース3の内部と外部とを連通する。注液孔は、蓋板32に設けられる。注液孔は、注液栓326によって密閉される(塞がれる)。注液栓326は、溶接によってケース3(本実施形態の例では蓋板32)に固定される。
【0060】
外部端子7は、他の蓄電素子1の外部端子7又は外部機器等と電気的に接続される部位である。外部端子7は、導電性を有する部材によって形成される。例えば、外部端子7は、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料、銅又は銅合金等の銅系金属材料等の溶接性の高い金属材料によって形成される。
【0061】
外部端子7は、バスバ等が溶接可能な面71を有する。面71は、平面である。外部端子7は、蓋板32に沿って拡がる板状である。詳しくは、外部端子7は、Z軸方向視において矩形状の板状である。
【0062】
集電体5は、ケース3内に配置され、電極体2と通電可能に直接又は間接に接続される。本実施形態の集電体5は、クリップ部材50を介して電極体2と通電可能に接続される。即ち、蓄電素子1は、電極体2と集電体5とを通電可能に接続するクリップ部材50を備える。
【0063】
集電体5は、導電性を有する部材によって形成される。
図2に示すように、集電体5は、ケース3の内面に沿って配置される。集電体5は、蓄電素子1の正極11と負極12とにそれぞれ配置される。本実施形態の蓄電素子1では、集電体5は、ケース3内において、電極体2の正極11の非被覆積層部26と、負極12の非被覆積層部26とにそれぞれ配置される。
【0064】
正極11の集電体5と負極12の集電体5とは、異なる材料によって形成される。具体的に、正極11の集電体5は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金によって形成され、負極12の集電体5は、例えば、銅又は銅合金によって形成される。
【0065】
本実施形態の蓄電素子1では、電極体2とケース3とを絶縁する袋状の絶縁カバー6に収容された状態の電極体2(詳しくは、電極体2及び集電体5)がケース3内に収容される。
【0066】
次に、上記実施形態の蓄電素子の製造方法について説明する。
【0067】
蓄電素子1の製造方法では、まず、金属箔111(集電箔)に活物質を含む合剤を塗布し、活物質層を形成し、電極(正極11及び負極12)を作製する。次に、正極11、セパレータ4、及び負極12を重ね合わせて電極体2を形成する。続いて、電極体2をケース3に入れ、ケース3に電解液を入れることによって蓄電素子1を組み立てる。
【0068】
電極(正極11)の作製では、金属箔111の両面に、導電助剤とバインダと溶媒とを含む組成物をそれぞれ塗布することによって中間層113を形成する。各中間層113の表面に、活物質とバインダと溶媒とを含む合剤をそれぞれ塗布することによって正極活物質層112を形成する。上記組成物や合剤の塗布量を変化させることによって、中間層113及び正極活物質層112の厚さや目付量をそれぞれ調整できる。中間層113や正極活物質層112を形成するための塗布方法としては、一般的な方法が採用される。例えば、正極活物質層112の外縁部に重なる中間層113の目付量を変化させることによって、上述した電気抵抗値を調整することができる。具体的に、導電助剤を25質量%以上含む中間層113であって上記外縁部に重なる中間層113の目付量を小さくすることによって、上記の電気抵抗値を高めることができる。さらに、中間層113及び正極活物質層112を所定の圧力でロールプレスする。プレス圧を変化させることにより、中間層113及び正極活物質層112の厚さや密度を調整できる。なお、中間層113を形成せずに、上記と同様にして、負極12を作製する。
【0069】
電極体2の形成では、正極11と負極12との間にセパレータ4を挟み込んだ積層体22を巻回することにより、電極体2を形成する。詳しくは、正極活物質層112と負極活物質層122とがセパレータ4を介して互いに向き合うように、正極11とセパレータ4と負極12とを重ね合わせ、積層体22を作る。積層体22を巻回して、電極体2を形成する。
【0070】
蓄電素子1の組み立てでは、ケース3のケース本体31に電極体2を入れ、ケース本体31の開口を蓋板32で塞ぎ、電解液をケース3内に注入する。ケース本体31の開口を蓋板32で塞ぐときには、ケース本体31の内部に電極体2を入れ、正極11と一方の外部端子7とを導通させ、且つ、負極12と他方の外部端子7とを導通させた状態で、ケース本体31の開口を蓋板32で塞ぐ。電解液をケース3内へ注入するときには、ケース3の蓋板32の注入孔から電解液をケース3内に注入する。
【0071】
上記のように構成された本実施形態の蓄電素子1は、積層された正極11と負極12とを備える。正極11は、金属箔111と、中間層113を介して金属箔111に重なる正極活物質層112とを有する。正極11の金属箔は、正極活物質層112の外縁部よりも外側にはみ出したはみ出し部を有する。負極12は、正極活物質層112に対向する負極活物質層122を有する。負極活物質層122の少なくとも一部は、正極活物質層112の外縁部よりも外側にはみ出してはみ出し部と対向する。正極活物質層112の外縁部での表面から金属箔111までの厚さ方向の電気抵抗値は、外縁部よりも内側の内側部での電気抵抗値に比べて高い。
斯かる構成により、正極活物質層112の外縁よりも負極活物質層122が外側にはみ出ている状態では、正極活物質層112の外縁部は、斯かる外縁部からはみ出ていない負極活物質層122だけでなく、はみ出た負極活物質層122の外縁部との間での充放電反応を行う。その分、正極活物質層112の外縁部では充放電の電気量が局所的に多くなり、正極活物質層112の外縁部が劣化し得ることとなる(例えば
図6における点線で電流経路を示す)。しかしながら、正極活物質層112の外縁部での厚さ方向の電気抵抗は、内側部での厚さ方向の電気抵抗よりも高いため、電気抵抗が高い分、充放電時に外縁部で電気が流れにくくなり、充放電の電気量が局所的に多くなることが抑制される。即ち、電気抵抗が高い分、外縁部を厚さ方向に流れる電流量を抑制できる。これにより、正極活物質層112の外縁部が充放電によって劣化することを抑制できる。
【0072】
上記の蓄電素子1では、外縁部での電気抵抗値は、内側部での電気抵抗値に比べて、10Ω以上200Ω以下高くてもよい。斯かる構成により、正極活物質層112の外縁部が充放電によって劣化することを、特に上記の数値範囲内で抑制できる。
【0073】
上記の蓄電素子1では、正極11は、金属箔111と正極活物質層112との間に配置され且つ導電助剤を含む中間層113を有し、中間層113の目付量は、正極活物質層112の内側部に重なる部分よりも、正極活物質層112の外縁部に重なる部分にて、小さくてもよい。
斯かる構成により、比較的単純な構成によって、上記の電気抵抗値の高低が制御されている。
【0074】
上記の蓄電素子1では、正極11は、金属箔111と正極活物質層112との間に配置され且つ導電助剤を含む中間層113を有し、中間層113における導電助剤の含有率は、正極活物質層112の内側部に重なる部分よりも、外縁部に重なる部分にて、低くてもよい。
斯かる構成により、比較的単純な構成によって、上記の電気抵抗値の高低が制御されている。
【0075】
上記の蓄電素子1では、正極11は、金属箔111と正極活物質層112との間に配置され且つ導電助剤を含み且つ正極11の金属箔111よりも電気抵抗が高い中間層113を有し、中間層113の外縁部の端縁は、負極活物質層122の外縁部の端縁よりも外側にはみ出ていてもよい。
斯かる構成により、負極活物質層122の外縁が正極11と接触して短絡が起こったとしても、正極11の金属箔111よりも抵抗の高い中間層113と接触することになる。接触する正極11の抵抗が高くなっている分、正極11と負極12とが短絡した場合に温度が上昇することを抑制できる。
【0076】
上記の蓄電素子1では、正極活物質層112及び負極活物質層122は、いずれも帯状であり、正極11の金属箔111は、正極活物質層112の幅方向の一方の外縁部よりも外側にはみ出したはみ出し部を有し、負極活物質層122の幅方向における両方の外縁部は、正極活物質層112の幅方向における両方の外縁部よりも外側にそれぞれはみ出し、各外縁部での電気抵抗値は、各外縁部よりも内側の各内側部での電気抵抗値に比べて高くてもよい。
斯かる構成により、正極活物質層112の外縁部が充放電によって劣化することを、より十分に抑制できる。
【0077】
尚、本発明の蓄電素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0078】
上記の実施形態では、バインダと導電助剤とを含む中間層であって活物質層と金属箔との間に配置された中間層を有する正極について詳しく説明したが、本発明の蓄電素子は、活物質を含む活物質層が金属箔に直接接した正極を有してもよい。
【0079】
上記実施形態では、活物質層が各電極の金属箔の両面側にそれぞれ配置された電極について説明したが、本発明の蓄電素子では、正極11又は負極12は、活物質層を金属箔の片面側にのみ備えてもよい。
【0080】
上記実施形態では、積層体22が巻回されてなる電極体2を備えた蓄電素子1について詳しく説明したが、本発明の蓄電素子は、巻回されない積層体22を備えてもよい。詳しくは、それぞれ矩形状に形成された正極、セパレータ、負極、及びセパレータが、この順序で複数回積み重ねられてなる電極体を蓄電素子が備えてもよい。
【0081】
上記実施形態では、蓄電素子1が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子1の種類や大きさ(容量)は任意である。また、上記実施形態では、蓄電素子1の一例として、リチウムイオン二次電池について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明は、種々の二次電池、その他、電気二重層キャパシタ等のキャパシタの蓄電素子にも適用可能である。
【0082】
蓄電素子1(例えば電池)は、
図7に示すような蓄電装置100(蓄電素子が電池の場合は電池モジュール)に用いられてもよい。蓄電装置100は、少なくとも二つの蓄電素子1と、二つの(異なる)蓄電素子1同士を電気的に接続するバスバ部材91と、を有する。この場合、本発明の技術が少なくとも一つの蓄電素子に適用されていればよい。
【実施例】
【0083】
以下に示すようにして、非水電解質二次電池(リチウムイオン二次電池)を製造した。
【0084】
(試験例1)
(1)正極の作製
まず、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と、導電助剤(アセチレンブラック)と、バインダ(ヒドロキシエチルキトサン)とを、混合し、混練することで、中間層用の組成物を調製した。導電助剤、バインダの配合量を、それぞれ質量比で1:2として、中間層用の組成物を調製した。調製した中間層用の組成物を、帯状のアルミニウム箔(厚さ15μm)の両面に、乾燥後の塗布量(目付量)が0.05mg/cm
2となるようにそれぞれ塗布した(中間層の中央部の形成)。また、塗布した中間層用の組成物の両外縁よりも外側に、幅が10mmとなるように、中間層用の組成物を、乾燥後の塗布量(目付量)が0.015mg/cm
2となるように塗布した(中間層の外縁部の形成)。そして、塗布した組成物を乾燥させた。
次に、有機溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と、導電助剤(アセチレンブラック)と、バインダ(PVdF)と、活物質(LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2)とを、混合し、混練することで、正極用の合剤組成物を調製した。導電助剤、バインダ、活物質の配合量は、固形分で、それぞれ4.5質量%、3.0質量%、92.5質量%とした。調製した正極用の合剤組成物を、塗布された中間層用の各組成物の上に、乾燥後の塗布量(目付量)が12.7mg/cm
2となるように塗布した。合剤組成物を塗布したあと、中間層用の組成物は、合剤組成物の端から2mm外側にはみ出していた。乾燥後、ロールプレスを行った。その後、真空乾燥して、水分等を除去した。活物質層(1層分)の厚さは、56μmであった。活物質層の密度は、2.27g/cm
3であった。プレス後の中間層の厚さは、0.5μmであった。中間層の密度は、1.0g/cm
3であった。作製した帯状の正極では、幅方向における一方の外縁まで正極活物質層が形成され、他方の外縁では、正極活物質層の外縁部よりもアルミニウム箔が外側にはみ出したはみ出し部が形成されていた。
【0085】
(2)負極の作製
活物質としては、粒子状の非晶質炭素(難黒鉛化炭素)を用いた。バインダとしては、スチレンブタジエンゴム及びCMCを用いた。負極用の合剤組成物は、溶剤として水と、スチレンブタジエンゴムと、CMCと、活物質とを混合、混練することで調製した。固形分で、スチレンブタジエンゴムを2.0質量%となるように配合し、CMCを1.0質量%となるように配合し、活物質を97.0質量%となるように配合した。調製した負極用の合剤組成物を、乾燥後の塗布量(目付量)が5.7mg/cm
2となるように、銅箔(厚さ8μm)の両面にそれぞれ塗布した。乾燥後、ロールプレスを行い、真空乾燥して、水分等を除去した。活物質層(1層分)の厚さは、53μmであった。活物質層の密度は、1.08g/cm
3であった。
【0086】
(3)セパレータ
厚さ15μmのポリエチレン微多孔膜をセパレータ基材として用意した。セパレータ基材の片面の上に、厚さが6μmの無機層を形成し、積層構造のセパレータを作製した。作成されたセパレータの厚さ(総厚さ)は、21μmであった。また、作成されたセパレータの透気度は、約100秒/100ccであった。
【0087】
(4)電解液の調製
電解液としては、以下の方法で調製したものを用いた。非水溶媒として、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートを、いずれも1容量部ずつ混合した溶媒を用い、この非水溶媒に、塩濃度が1mol/LとなるようにLiPF
6を溶解させ、電解液を調製した。
【0088】
(5)ケース内への電極体の配置
上記の正極、上記の負極、上記の電解液、セパレータ、及びケースを用いて、一般的な方法によって電池を製造した。
まず、セパレータの無機層が正極活物質と接するように、正極及び負極の間にセパレータを配置して、正極と負極とセパレータとが積層されたシート状物を巻回した。次に、巻回されてなる電極体を、ケースとしてのアルミニウム製の角形電槽缶のケース本体内に配置した。続いて、正極及び負極を2つの外部端子それぞれに電気的に接続させた。さらに、ケース本体に蓋板を取り付けた。上記の電解液を、ケースの蓋板に形成された注液口からケース内に注入した。最後に、ケースの注液口を封止することにより、ケースを密閉した。
【0089】
(試験例2〜13)
下記の変更点以外は、試験例1と同様にして電池を製造した。詳しくは、中間層の外縁部(正極活物質層の外縁部に重なる部分)を形成するときの中間層用の組成物の目付量を変更すること、該組成物の導電助剤の含有率を変更すること、また、中間層の中央部(正極活物質層の外縁部よりも内側に重なる部分)を形成するときの中間層用の組成物の目付量を変更すること等によって、表1に示す正極をそれぞれ作製した。
【0090】
<正極活物質層の表面から金属箔までの厚さ方向の電気抵抗値>
帯状の正極を幅方向に切断し、切断した箇所の間の長さが2cmとなった試料を準備した。当該試料について、抵抗率計(三菱化学アナリテック社 「ロレスターEP MCP−T360」)を用いて、2端子(いずれもφ2mmのもの)を試料の活物質層の表面に対してバネ圧240g/本の力でそれぞれ押し当てた。
図8において、端子を押し当てた箇所を黒丸で示す。端子の先端が活物質層の端縁を向くように端子を押し当てた(
図8の破線矢印で端子の押し当て方向を示す)。このとき、押し当てた2端子の間の距離は10mmとした。そして、抵抗値が安定するまで約10秒待ち、安定したときの値を当該測定箇所の抵抗値とした。正極活物質層の外縁部と、当該外縁部よりも内側の部分と、においてそれぞれ測定を10回行い、それぞれの平均値を抵抗値a及びbとした。測定箇所を変えてこのような測定を計3回おこない、各試料の抵抗値a及びbのそれぞれについて、3回の測定値を平均して電気抵抗値を算出した。
なお、正極活物質層の外縁部での測定箇所は、正極活物質層の外縁から内側に向けて5mm離れた箇所であった。また、当該外縁部よりも内側での測定箇所は、正極活物質層の外縁から内側に向けて30mm離れた箇所であった。帯状の正極及び負極が積層され巻回された電極体において、負極活物質層の外縁は、正極活物質層の外縁よりも2mmほど巻回軸方向(幅方向)にはみ出していた。正極の中間層の外縁は、幅方向の一方において、負極活物質層の外縁よりも外側にはみ出していた。
【0091】
【表1】
【0092】
<25℃抵抗増加率の測定>
・放電容量の確認
各電池について、25℃の恒温槽中で5Aの充電電流、4.2Vの定電流定電圧充電を3時間行い、10分の休止後、5Aの放電電流にて2.4Vまで定電流放電を行うことで、電池の放電容量を測定した。
・初期の抵抗確認試験
放電容量を測定した電池を、25℃の恒温槽中で2.5Aの電流値で充電することによりSOC(充電状態、State Of Charge)50%に調整し、60Aの電流値で10秒間放電した。60秒間の休止後、2.5Aの電流値で斯かる放電による電気量と同じ電気量を充電した。300秒間の休止後、放電電流値を90A、120A、150A、200Aと変化させた点以外、同じ条件で各電流値での放電を実施した。その後、各放電電流値を横軸に、各電流値の1秒目の電圧を縦軸に、それぞれプロットし、最小二乗法により、直線線形による近似直線を作成した。その直線の傾きを当該電池の初期の抵抗Rとした。
・充放電サイクル試験(繰り返し充放電試験)
充放電サイクル試験の試験条件を決めるために、SOC50%に調整した電池を55℃にて4時間保持し、SOC80%になるまで40Aの定電流充電を行い、その後、SOC80%からSOC20%まで40Aの定電流放電を行うことで、SOC80%の充電電圧V80とSOC20%の放電電圧V20を決定した。
55℃サイクル試験は、40Aの定電流にて行い、充電時のカットオフ電圧をV80とし、放電時のカットオフ電圧をV20として、休止時間を設定せずに連続して行った。サイクル時間は合計4000時間とした。4000時間のサイクル試験終了後、25℃で4時間保持し、前述の抵抗確認試験を行った。抵抗増加率は、初期の抵抗をR1、サイクル試験後の抵抗をR2としたとき、抵抗増加率=[(R2/R1)×100]−100の式から算出した。
【0093】
表1が示すように、外縁部における正極活物質層の表面から正極集電箔までの厚さ方向の電気抵抗値が、外縁部よりも内側における電気抵抗値に比べて高くなるにつれて、抵抗増加率を抑制できることが確認された。その効果は、当該電気抵抗値が外縁部よりも内側における電気抵抗値に比べて10Ω以上高く200Ω以下低いことにより、顕著になることが確認された。
【0094】
また、表1の試験例1〜5を参照すると、中間層の外縁部における導電助剤の含有率と中間層の中央部における導電助剤の含有率の差が10質量%以上25質量%以下として、且つ、中間層の中央部における導電助剤の含有率よりも小さくすることにより、上記効果は、顕著になることが確認された。
【0095】
さらに、表1の試験例1、6〜8を参照すると、中間層の外縁部の目付量[mg/cm
2]が、中間層の中央部における目付量[mg/cm
2]よりも小さく、且つ、その目付量の差が0.03mg/cm
2以上であることにより、上記効果は、顕著になることが確認された。