特許第6886698号(P6886698)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886698
(24)【登録日】2021年5月19日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】熱伝導液パック
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20210603BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   H01L23/36 D
   H05K7/20 N
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-127158(P2017-127158)
(22)【出願日】2017年6月29日
(65)【公開番号】特開2019-12720(P2019-12720A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2020年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 謙
(72)【発明者】
【氏名】由見 英雄
【審査官】 正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−064731(JP,A)
【文献】 特表2012−503890(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0282380(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0308781(US,A1)
【文献】 特開2006−024719(JP,A)
【文献】 特開平07−266356(JP,A)
【文献】 特開2015−067713(JP,A)
【文献】 特開2002−294192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1接触面および当該第1接触面と異なる第2接触面を有する閉じられた状態の中空の可撓性外装体の内部に、液状の熱伝導材が充填されてなる熱伝導液パックであって、
前記可撓性外装体は、前記第1接触面を有する第1シートと、前記第2接触面を有するとともに前記第1シートと対向配置される第2シートとを備えており、
前記第1シートおよび前記第2シートの少なくとも一方に、前記熱伝導材を漏出可能な微細な漏出孔が複数設けられるとともに、前記漏出孔を外側から塞ぐ剥離シートが剥離可能に積層されている熱伝導液パック
【請求項2】
前記可撓性外装体は、前記第1接触面を有する第1シートと、前記第2接触面を有するとともに前記第1シートと対向配置される第2シートとを備えており、
前記第1シートおよび前記第2シートの少なくとも一方は不織布またはメッシュからなるとともに、当該不織布またはメッシュに前記熱伝導材の漏出を外側から抑える剥離シートが剥離可能に積層されている請求項1に記載の熱伝導液パック。
【請求項3】
第1接触面および当該第1接触面と異なる第2接触面を有する閉じられた状態の中空の可撓性外装体の内部に、液状の熱伝導材が充填されてなる熱伝導液パックであって、
前記可撓性外装体は、前記第1接触面を有する第1シートと、前記第2接触面を有するとともに前記第1シートと対向配置される第2シートとを備えており、
前記第1シートおよび前記第2シートには、前記熱伝導材を漏出可能な微細な漏出孔が複数設けられるとともに、前記漏出孔を外側から塞ぐ剥離シートが剥離可能に積層されており、
前記第2シートの内面に、不織布またはメッシュからなる第3シートが積層されている熱伝導液パック。
【請求項4】
前記第1シートに設けられた前記漏出孔の孔径は前記第2シートに設けられた前記漏出孔の孔径よりも大きく設定されている請求項3に記載の熱伝導液パック。
【請求項5】
前記熱伝導材は接着性を有している請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の熱伝導液パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導液パックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば基板上に配された電子部品と、電子部品のうち前記基板と反対側に配された放熱部材との間の隙間を埋めるように設けられる熱伝導部材として、熱伝導シートがしばしば使用されている。熱伝導シートは、弾性を付与することにより電子部品や放熱部材に密着させることができたり、取扱性が容易であるという利点がある。
【0003】
一方熱伝導シートは、例えば基板からの立ち上がり高さが異なる複数の電子部品に一括に密着させることが困難であり、使用する個々の箇所(電子部品)に応じて大きさや厚さを変更しなければならない。
【0004】
そこで、熱伝導性部材としてパテやグリースを使用する場合がある。パテやグリースは使用する量を調節可能であるとともに、熱伝導シートでは対応できない複雑な構造にも密着させ、隙間を埋めることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−62953号公報
【特許文献2】特開2016−143634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしパテやグリースは、複雑な構造に対応させるべく粘度を下げると、使用箇所から流れ落ちてしまう場合がある。また、パテやグリースは一般的に温度が上昇すると粘度が低下するため、粘度の低下を見越して粘度の比較的高いものを塗布しようとすると、逆に微細な構造に対応不可となり、密着性が低下する場合がある。
【0007】
さらにパテやグリースは、使用量が適正量より少なかったり逆に多すぎると、密着不足や空気の巻き込み等の不具合が生じるため、使用量のコントロールが比較的重要であり、作業性に改善の余地があった。
【0008】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、複雑な構造に対応可能で、伝熱性や作業性にも優れる熱伝導部材である熱伝導液パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1接触面および当該第1接触面と異なる第2接触面を有する閉じられた状態の中空の可撓性外装体の内部に、液状の熱伝導材が充填されてなる熱伝導液パックである。
【0010】
本発明によれば、熱伝導液パックは柔軟な可撓性外装体およびその内部に充填される液状の熱伝導材により、自在に変形可能である。従って、発熱体や放熱体が複雑な形状をなしている場合でも、それらに押し付けられることにより、第1接触面および第2接触面がそれらに沿う形状に容易に変形し、密着することができる。
【0011】
しかも、設置環境や発熱体の温度が上昇した場合でも、グリースやパテとは異なって流れ落ちることがないから、被着体に密着し続けて良好な伝熱性を保つことができる。またパック状であるので、パテやグリースのように使用量のコントロールが不要であって、設置箇所に配置するだけでよく、作業性にも優れる。
【0012】
なお、液状とは、例えばハチミツのようにそれ自体で形状を保持することが困難な粘度以下のものを含み、所謂粘稠体を指すこととする。
【0013】
上記熱伝導液パックは、以下の構成を備えていてもよい。
【0014】
可撓性外装体は、第1接触面を有する第1シートと、第2接触面を有するとともに第1シートと対向配置される第2シートとを備えており、第1シートおよび第2シートの少なくとも一方に、熱伝導材を漏出可能な微細な漏出孔が複数設けられるとともに、漏出孔を外側から塞ぐ剥離シートが剥離可能に積層されている構成としてもよい。
【0015】
上記構成によれば、熱伝導液パックを使用する際には、剥離シートを剥離して第1シート及び/又は第2シートの第1接触面及び/又は第2接触面を被着体に押し付ける。すると、漏出孔から徐々に熱伝導材が漏れ出し、第1接触面及び/又は第2接触面と被着体との間に広がる。これにより、熱伝導液パック(可撓性外装体および熱伝導材)はより確実に被着体と密着するとともに、広がった熱伝導材の粘性および表面張力によって、被着体からよりずれ難くなる。また熱伝導材が接着性を有する場合には、被着体に固定される。
【0016】
また、可撓性外装体は、第1接触面を有する第1シートと、第2接触面を有するとともに第1シートと対向配置される第2シートとを備えており、第1シートおよび第2シートの少なくとも一方は不織布またはメッシュからなるとともに、当該不織布またはメッシュに熱伝導材の漏出を外側から抑える剥離シートが剥離可能に積層されている構成としてもよい。
【0017】
上記構成によれば、熱伝導液パックを使用する際には、剥離シートを剥離して第1シート及び/又は第2シートの第1接触面及び/又は第2接触面を被着体に押し付ける。すると、不織布またはメッシュから徐々に熱伝導材が滲み出し、第1接触面及び/又は第2接触面と被着体との間に広がる。これにより、熱伝導液パック(可撓性外装体および熱伝導材)はより確実に被着体と密着するとともに、広がった熱伝導材の粘性および表面張力によって、被着体からよりずれ難くなる。また熱伝導材が接着性を有する場合には、被着体に固定される。
【0018】
また、可撓性外装体は、第1接触面を有する第1シートと、第2接触面を有するとともに第1シートと対向配置される第2シートとを備えており、第1シートおよび第2シートには、熱伝導材を漏出可能な微細な漏出孔が複数設けられるとともに、漏出孔を外側から塞ぐ剥離シートが剥離可能に積層されており、第2シートの内面に、不織布またはメッシュからなる第3シートが積層されていてもよい。
【0019】
このような構成によれば、第1シート側からの熱伝導材の漏出のタイミング、漏出速度、および漏出量と、第2シート側からの熱伝導材の漏出のタイミング、漏出速度、および漏出量が異なるようにコントロールすることができる。すなわち、第1シート側からは可撓性外装体の内部から熱伝導材が直接漏出し、第2シート側からは、可撓性外装体の内部から熱伝導材が第3シート(不織布またはメッシュ)に滲み出した後に第2シートの漏出孔を通過して滲み出すようになる。したがって、例えば先に第2シート側から押圧して第1シートを第1被着体に押し付けて密着させ、その後、第2シート側に被着体を押し付けて第2シート側を密着させればよい。この時、第2シート側から押圧する際には、第2シート側には未だ熱伝導材は漏れ出していないから、押し付ける手や道具を汚さなくても済む。
【0020】
また、第1シートに設けられた漏出孔の孔径を第2シートに設けられた漏出孔の孔径よりも大きく設定することにより、第1シート側からの熱伝導材の漏出速度および漏出量と、第2シート側からの熱伝導材の漏出速度および漏出量が異なるようにコントロールすることがより容易になる。
【0021】
なお、熱伝導液パックから熱伝導材が漏出する構成とする場合には、熱伝導材は、水のように簡単に垂れ落ちない程度の粘度を有していることが好ましい。
【0022】
また、熱伝導材は接着性を有していてもよい。このような構成によれば、可撓性外装体から漏れ出した熱伝導材により、熱伝導液パックと被着体とが接着状態とされる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、複雑な構造(形状)に対応可能で、伝熱性や作業性にも優れる熱伝導液パックが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態1の熱伝導液パックの断面図
図2】熱伝導液パックの分解斜視図
図3】熱伝導液パックの使用形態を示す断面図
図4】実施形態2の熱伝導液パックの断面図
図5】実施形態3の熱伝導液パックの分解斜視図
図6】熱伝導液パックの断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
<実施形態1>
実施形態1を図1ないし図3によって説明する。本実施形態の熱伝導液パック10は、一対の矩形の第1シート11および第2シート12の縁部を熱溶着して閉じた状態とした中空の外装体(可撓性外装体の一例)の内部に、液状の熱伝導材13が充填されてなる。
【0026】
第1シート11および第2シート12は、例えば15mm角のHS−PETフィルム(耐熱温度125度以上)等の柔軟な可撓性樹脂からなり、膜厚は27〜52μmの範囲内に設定されている(本実施形態では32μm)。また一対のシートのうち第1シート11には、直径1.5mmの複数の円形の漏出孔14が4.0mm間隔で全面に均等に設けられている。
【0027】
また第1シート11の外面11Aには、剥離可能な剥離シート16が積層されている。複数の漏出孔14は、剥離シート16により塞がれている。
【0028】
熱伝導材13は、例えば、アクリル樹脂に熱伝導フィラーおよび添加剤等を混合させたものであって、例えばハチミツのようにそれ自体で形状を保持することが困難な低粘度の液状であり、かつ、水のように簡単に垂れ落ちない程度の粘度を有している。また併せて、接着性を有している。この熱伝導材13は、原料を混合後ポンプにより吸い上げ、縦型ピロー包装機(三光機械製:液体・粘体自動MR−8)を用いることにより、第1シート11および第2シート12の間に充填させることができる。
【0029】
なお図2においては熱伝導材13を便宜的に固体状に示してある。また熱伝導材13は、使用前の状態において、微細な漏出孔14の内部にはほぼ入り込まず、概ねが第1シート11と第2シート12との間に保持される程度の粘度は有している(図1参照)。
【0030】
本実施形態の熱伝導液パック10を使用する際には、まず、剥離シート16を剥離して第1シート11の外面11A(第1接触面の一例)を露出させる。そして、露出された外面11Aを被着体Cと対向させ、第2シート12側から押圧して被着体Cに押し付ける。
【0031】
すると、図3に示すように、熱伝導液パック10の内部に充填されている熱伝導材13が漏出孔14に進入するとともに外部に漏出し、外面11A(第1接触面)と被着体Cとの間に徐々に広がる。これにより、熱伝導液パック10は、広がった熱伝導材13の粘性および表面張力によって、ずれ難い状態で被着体Cと密着する。その後乾燥させることにより、熱伝導液パック10は被着体Cに接着した状態とされる。なお熱伝導材13は、乾燥しないままで接着性を有するタイプのものを使用することもできる。
【0032】
このような本実施形態の熱伝導液パック10は、柔軟な可撓性を有する第1シート11および第2シート12と、その内部に充填される液状の熱伝導材13により、自在に変形可能である。従って、被着体Cが複雑な形状をなしている場合でも、それらに押し付けられることにより、それらに沿う形状に容易に変形して密着することができる。逆に隙間が大きい場合でも、液状の熱伝導材を使用しながら、流れ落ちる心配がない。
【0033】
しかも第1シート11には微細な漏出孔14が複数設けられており、内部の熱伝導材13が第1シート11の外面11Aに漏出するようになっているから、より細かい部分まで熱伝導材13を接触させることができるとともに、その粘性および表面張力により、乾燥して接着状態となるまで被着体とずれ難い状態とすることができる。
【0034】
またこのような熱伝導液パック10は、設置環境や被着体Cの温度が上昇した場合でも、グリースやパテとは異なって流れ落ちることがないから、被着体Cに密着し続けて良好な伝熱性を保つことができる。また、パック状であるので、組み立てラインにおいて液体定量吐出装置がなくても設置箇所に配置するだけでよく、作業性にも優れる。
【0035】
<実施形態2>
次に、実施形態2を図4によって説明する。なお、以下においては実施形態1と異なる構成についてのみ説明するものとし、実施形態1と同様の構成に実施形態1の各構成に付した符号の数字に10を加えた数字の符号を用いるものとする。
【0036】
本実施形態の熱伝導液パック20は、第2シート22がHS−PETフィルムに替えてポリエルテル製の不織布で構成されているところが上記実施形態1と異なっている。本実施形態において不織布は、目付50g/m2のものを使用している。
【0037】
第1シート21および第2シート22の縁部は、熱溶着により閉じられた状態とされ、その内側に熱伝導材23が充填されている。また第2シート22の外面22Aには、剥離可能な剥離シート27が積層されている。熱伝導材23は、使用前の状態において、一部が第2シート22(不織布)に滲みていても、概ねが第1シート21と第2シート22(不織布)との間に保持される程度の粘度を有している。
【0038】
本実施形態の熱伝導液パック20を使用する際には、まず、剥離シート27を剥離して第2シート22の外面22A(第2接触面の一例)を露出させる。そして、外面22Aを被着体と対向させ、第1シート21側から押圧して被着体に押し付ける。
【0039】
すると、熱伝導液パック20の内部に充填されている熱伝導材23が第2シート22(不織布)に滲みわたるとともに、外面22Aに徐々に滲み出し、外面22A(第2接触面)と被着体との間に徐々に広がる。これにより、熱伝導液パック20は、広がった熱伝導材23の粘性および表面張力によって、ずれ難い状態で被着体と密着する。その後乾燥させることにより、熱伝導液パック20を被着体に接着した状態とする。
【0040】
本実施形態の熱伝導液パック20によっても、上記実施形態1と同様に、複雑な構造に対応可能で、伝熱性や作業性にも優れる。
【0041】
<実施形態3>
次に、実施形態3を図5および図6によって説明する。なお、以下においては実施形態1と異なる構成についてのみ説明するものとし、実施形態1と同様の構成に実施形態1の各構成に付した符号の数字に20を加えた数字の符号を用いるものとする。
【0042】
本実施形態の熱伝導液パック30は、一対の矩形の第1シート31および第2シート32の縁部を熱溶着して閉じた状態とした中空の外装体(可撓性外装体の一例)の内部に、液状の熱伝導材33が充填されてなる。熱伝導材33は、接着性を有している。
【0043】
第1シート31には、直径1.5mmの複数の円形の第1漏出孔34が5.0mm間隔で全面に均等に設けられている。また第2シート32には、直径1.0mmの複数の円形の第2漏出孔35が5.0mm間隔で全面に均等に設けられている。すなわち、第1漏出孔34の孔径の方が第2漏出孔35の孔径より大きく設定されている。
【0044】
また第1シート31の外面31A(第1接触面)には、剥離可能な第1剥離シート36が積層されている。同じく第2シート32の外面32A(第2接触面)には、剥離可能な第2剥離シート37が積層されている。複数の漏出孔34および35は、剥離シート36および37により塞がれている。
【0045】
また、第2シート32の内面(第2接触面の反対側の面)には、図示しない接着剤を介してメッシュからなる第3シート38が積層されている。そして、第1シート31と第3シート38の間には、熱伝導材33が充填されている。熱伝導材33は、使用前の状態において、一部が第3シート38(メッシュ)に滲みわたっていても、概ねが第1シート31と第3シート38との間に保持される程度の粘度を有している。なお図6においては、熱伝導材33を便宜的に固体状に示してある。
【0046】
本実施形態の熱伝導液パック30を使用する際には、まず、第1剥離シート36を剥離して第1シート31の外面31A(第1接触面の一例)を露出させるとともに、第2剥離シート37を剥離して第2シート32の外面32A(第2接触面の一例)を露出させる。そして、外面31Aを被着体と対向させ、第2シート32側から押圧して被着体に押し付ける。
【0047】
すると、熱伝導液パック30の内部に充填されている熱伝導材33は、まず第1シート31の漏出孔34側から漏出し、外面31Aと被着体との間に徐々に広がる。この時、熱伝導材33は押圧側(第2接触面側)においては、未だ第3シート38(メッシュ)に滲みわたっている最中であり、外部(外面32A)までは漏出していない。
【0048】
次に、第2シート32側に別の被着体を宛がい、第1シート31側に向けて押圧する。しばらくすると、第3シート38(メッシュ)に滲みわたった熱伝導材33が第2漏出孔35に到達し、第2漏出孔35から漏出して、外面32A(第2接触面)と被着体との間に徐々に広がる。
【0049】
このように、本実施形態によれば、第1シート31側(外面31A)からの熱伝導材33の漏出のタイミングと第2シート32側(外面32A)からの熱伝導材33の漏出のタイミングが異なるようにコントロールすることができる。
【0050】
すなわち、第1シート31側からは第1漏出孔34により熱伝導材33が直接漏出し、第2シート32側からは、熱伝導材33は、第3シート38(メッシュ)から滲み出した後に第2シート32の第2漏出孔35を通過して漏出する。
【0051】
したがって、先に第2シート32側から押圧して第1シート31の外面31Aを被着体に押し付けて密着させる際には、第2シート32側には未だ熱伝導材33は漏れ出していないから、押圧する手や道具を汚さなくても済む。その後、第2シート32の外面32Aに被着体を押し付けて、遅れて漏出してきた熱伝導材33により第2シート32側を密着させればよい。
【0052】
また、熱伝導材33が第3シート38(メッシュ)に滲みわたり、その後第2漏出孔35から漏出する際中にも、第1漏出孔34からの熱伝導材33の漏出が徐々に進んでいる。すなわち、熱伝導材33の第1漏出孔34からの漏出量は、第2漏出孔35からの漏出量と比較して、多くなる。従って、例えば熱伝導材33がより多く必要な基板側等の凹凸を有する側に第1シート31を配し、例えば放熱板等の平坦な側に第2シート32を配することにより、それぞれ適量の熱伝導材33を密着させることができる。
【0053】
さらに、第1漏出孔34からは熱伝導材33は直接漏れ出すが、第2漏出孔35からは第3シート38から滲み出した分しか漏れ出ないから、熱伝導材33の漏出速度が異なっている。
【0054】
しかも、第1漏出孔34の孔径が第2漏出孔35の孔径よりも大きく設定されていることによっても、第1シート31側からの熱伝導材33の漏出速度と第2シート32側からの熱伝導材33の漏出速度が異なっており、もって、より第1漏出孔34からの漏出量が多くなっている。
【0055】
本実施形態によっても、複雑な構造に対応可能で、伝熱性や作業性に優れる熱伝導液パック30が得られる。
【0056】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0057】
(1)上記実施形態では、熱伝導液パックに漏出孔を設けたり、不織布やメッシュを設けることにより、熱伝導液を被着体との間に漏出させる形態を示したが、必ずしも外部に漏出させなくてもよく、閉じられた状態のまま被着体に密着させる構成の熱伝導液パックとしてもよい。その場合、可撓性外装体の内部に空間を有さないように熱伝導材を充填することが好ましい。
【0058】
(2)上記実施形態では、外装体は一対の矩形のシート(第1シートおよび第2シート)の縁部を溶着あるいは接着することにより形成したが、一枚のシートを二つ折りにすることにより第1シートおよび第2シートを構成し、重なった縁部を溶着あるいは接着するようにしてもよい。
【0059】
(3)完成形態の熱伝導液パックは上記実施形態に限るものでなく、被着体の形態や設置する位置に合わせて適宜変更してもよい。例えば複数のシートを繋ぎ合わせた多面体状の形態としたり、大きい凹凸にも対応可能なマチ付き(厚みが大きい)形態としてもよい。
【0060】
(4)また実施形態1および実施形態2では、一面側だけに熱伝導材が漏出する構成の熱伝導液パックを示したが、表裏両面を同様の構成として、両面に熱伝導材が漏出する構成の熱伝導液パックとしてもよい。また、一面側に漏出孔を設け、他面側に不織布またはメッシュを配する構成としてもよい。
【0061】
(5)また、実施形態3において、表裏の漏出孔の孔径を同等とし、メッシュまたは不織布の効果だけで表裏の漏出量が異なるようにした熱伝導液パックとすることもできる。
【0062】
(6)漏出孔の孔径や形状、不織布またはメッシュの目開きは上記実施形態に限るものでなく、適宜変更することができる。また漏出孔を設ける位置もシートの全面に限るものでなく、一部に設けてもよい。
【0063】
(7)上記実施形態では、熱伝導材は、熱伝導液パックの使用前においては漏出孔に進入したり不織布またはメッシュに滲みわたらない程度の粘度を有する構成としたが、例えば水のようなさらに低粘度の液状の熱伝導材を使用してもよい。その場合には、熱伝導材は熱伝導液パックの使用前において、漏出孔内や不織布またはメッシュの一部または全部に入り込んだ形態とされる。
【0064】
(8)熱伝導材は必ずしも接着性を有していなくてもよい。
【0065】
(9)上記実施形態2では、第2シート22(不織布)の縁部を第1シート21とともに熱溶着して閉じた状態の可撓性外装体を形成する構成を示したが、第2シート22を内側に積層した剥離シート27の縁部を第1シート21とともに熱溶着し、閉じた状態の可撓性外装体を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10,20,30:熱伝導液パック
11,21,31:第1シート(可撓性外装体)
11A,21A,31A:外面(第1接触面)
12,32:第2シート(可撓性外装体)
13,23,33:熱伝導材
14,34,35:漏出孔
16,36,37;剥離シート
22:第2シート(可撓性外装体、不織布)
22A,32A:外面(第2接触面)
27:剥離シート
38:第3シート(メッシュ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6