(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態にかかる鎖用手指保護具(以下、保護具100)を示した図である。
図1(a)〜
図1(e)は保護具100の一方側を構成するオス部品102の4面図であり、
図1(f)〜
図1(j)は保護具100の他方側を構成するメス部品130の4面図である。これらオス部品102とメス部品130によって構成される当該保護具100は、後述する
図2(b)に示すように、鎖環162の内側空間にはめ込まれて使用され、鎖環162に手や指が挟まるのを防止する。
【0017】
図1(a)はオス部品102の平面図であり、オス部品102の外表面104を示している。オス部品102および後述するメス部品130は、共に樹脂材料から形成されている。オス部品102は、全体として角丸長方形に形成されている。長辺106、108は鎖環162(
図2(a)参照)の平行部分164、166に沿っていて、この平行部分164、166を把持する。角丸部分110、112は、隣の鎖環168、170(
図2(b)参照)を避ける部分であり、隣の鎖環168、170がスムーズに動くように滑らかな円弧を描いている。
【0018】
図1(b)は
図1(a)のオス部品102のA−A断面図である。オス部品102は、メス部品130(
図2(a)参照)と対向する底面114に、ツメ116、118を有している。ツメ116、118は、底面114のうち、オス部品102の長手方向の両端に計2つ設けられている。ツメ116、118は、底面114から垂直に突出し、先端に外側に向けたかえし120、122を有している。このかえし120、122を設ける方向に制限はなく、例えばかえし120、122は内側に向けることも可能である。
【0019】
図1(c)は
図1(a)のオス部品102の正面図である。オス部品102は、長辺106、108から底面114にかけての傾斜した領域で鎖環162(
図2(a)参照)を把持する。この領域の一部には、丸溝124、126も設けられている。鎖環162の表面からは溶接部が突出していることがあり、丸溝124、126はこの鎖環162の溶接部を避けるために設けられている。また、外表面104は、中央が膨らみ、そこから長辺106、108に向かって薄くなるよう、全体的に丸みを帯びた曲面になっている。この構成によって、鎖環162に取り付けたときに、鎖環162に向かって滑らかに連続する曲面が形成され、人が鎖160を握りやすくなる。
【0020】
図1(d)は
図1(c)のオス部品102の右側面図である。
図1(d)からも、底面114の近傍に丸溝124が設けられていること、および外表面104が全体的に丸みを帯びていることが確認できる。
【0021】
図1(e)は
図1(a)のオス部品102の底面図である。底面114は平らであり、後述するメス部品130の底面146(
図1(j)参照)と面接触する。上述したように、底面114の長手方向の両端にはツメ116、118が設けられている。また、底面114の短手方向の両脇には丸溝124、126が設けられている。
【0022】
図1(f)はメス部品130の平面図であり、メス部品130の外表面132を示している。メス部品130は、嵌合孔134、136以外、上記説明したオス部品102と対になる構造を有している。メス部品130もまた、角丸長方形であり、長辺138、140は鎖環162の平行部分164、166に沿ってこれを把持し、角丸部分142、144は円弧を描いている。
【0023】
図1(g)は
図1(f)のメス部品130のB−B断面図である。メス部品130は、オス部品102のツメ116、118が嵌合する部位として、長方向の両端に嵌合孔134、136を有している。嵌合孔134、136は、メス部品130の底面146側から外表面132へと貫通している。嵌合孔134、136の角丸部分142、144側にはブリッジ148、150が形成されていて、
図1(b)のツメ116、118のかえし120、122が引っ掛かる構造になっている。
【0024】
図1(h)は
図1(f)のメス部品130の正面図である。メス部品130もまた、長辺138、140から底面146にかけての傾斜した領域で鎖環162(
図2(a)参照)を把持し、鎖環162の溶接部を避ける丸溝152、154が設けられている。メス部品130の外表面132もまた、中央が膨らみ、そこから長辺138、140に向かって薄くなるよう、全体的に丸みを帯びた曲面になっている。
【0025】
図1(i)は
図1(h)のメス部品130の右側面図である。
図1(i)からも、底面146の近傍に丸溝152が設けられていること、および外表面132が全体的に丸みを帯びていることが確認できる。
【0026】
図1(j)は
図1(f)のメス部品130の底面図である。底面146は平らであり、オス部品102の底面114と面接触する。上述したように、底面146の長手方向の両端には嵌合孔134、136が設けられ、底面146の短手方向の両脇には丸溝152、154が設けられている。
【0027】
図2は、鎖用手指保護具(保護具100)を鎖160に取り付ける様子を示した図である。
図2(a)はオス部品102とメス部品130の嵌合前の様子であり、
図2(b)はそれらの嵌合後の様子である。
図2(a)に示すように、オス部品102とメス部品130は、鎖160を構成している個々の鎖環162の内部空間に対して、一方側および他方側のそれぞれからはめ込んで取り付ける。そして、互いのツメ116、118と嵌合孔134、136とを挿し込んで嵌合させる。これによって、
図2(b)に示すように、オス部品102およびメス部品130は、互いの長辺(長辺106等)から底面(平面114等)にかけての傾斜した領域で、鎖環162の平行部分164、166を両側から把持した状態となり、保護具100の取付けが完了する。
【0028】
以上のように、当該保護具100は、鎖環162の両側からオス部品102とメス部品130をはめ込むだけの簡単な作業で、既設の鎖160にも短時間で装着することができる。特に、オス部品102とメス部品130の全体が角丸長方形であるため、鎖環162の内側空間を効率よく塞ぐことができる。また、オス部品102とメス部品130の互いに向かい合う底面114および底面146(
図1(j)参照)にツメ116、118と嵌合孔134、136を設けているため、いたずらによって外されることも防止できる。もし保護具100を鎖環162から外す場合には、所定の治具でツメ116、118をたわませる必要があり、人の手でオス部品102とメス部品130とを解除するのは難しくなっている。また、ツメ116、118は、さらに太くして剛性を高めることも可能であり、これによって子供の手での解除を限りなく困難にすることも可能である。
【0029】
上述したように、オス部品102の外表面104(
図1(c)参照)およびメス部品130の外表面132は、中央が膨らみ、そこから鎖環162に向かって滑らかに連続する曲面を形成している。これによって当該保護具100は、鎖160と共に人に把持されたときに、滑らかな曲面によって異物感を減らし、鎖160をより握りやすくすることもできる。また、当該保護具100は、個々の鎖環162ごとに取り付けることができるため、鎖160のうちの任意の範囲のみ、例えば人の手に触れる範囲のみに取り付けることも可能である。
【0030】
当該保護具100であれば、オス部品102とメス部品130とを鎖環162の両側からはめ込むだけで取り付けられるため、現場施工費を安価に済ませることができる。また製造コストの面でも、当該保護具100は樹脂材料のみから形成されているため、金属材料を用いる場合のプレス加工やインサート成形に比べて非常に安価である。
【0031】
なお、当該保護具100は樹脂材料から形成されるため、着色剤を用いて色分けをすることができる。したがって、明るく目立つ色に成形することも可能である。また、蓄光材料で成形することも可能である。これらによって、例えば車止め用や進入禁止用の鎖など、雨天時や夜間でも目立つ色や素材にして、人に注意を促すことが可能になる。
【0032】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態にかかる鎖用手指保護具(以下、保護具200)を示した図である。以降の実施形態において、オス部品202とメス部品230の構成は、第1実施形態のオス部品102およびメス部品130と比べて、ツメや嵌合孔といった特徴的な部分が異なるのみのほぼ同じ構成である。そのため、既に説明した構成要素と同じものについては、同じ符号を付することによって説明を省略する。また、既に説明した構成要素と同じ名称のものについては、異なる符号を付していても、特に明記しない場合は第1実施形態と同じ機能を有するものとする。
【0033】
図3(a)〜
図3(e)は保護具200のオス部品202の4面図であり、
図3(f)〜
図1(j)は保護具200のメス部品230の4面図である。
図3(a)〜
図3(j)はすべて、
図1(a)〜
図1(j)に対応して同じ方向から示している。本実施形態は、ツメ216、218と嵌合孔234、236の構造の点において、第1実施形態の保護具100と異なっている。
【0034】
図3(b)は、
図3(a)のオス部品202のC−C断面図である。ツメ216、218は、底面114の長手方向の両端設けられ、外側を向いたかえし220、222を有している。ツメ216、218は、
図1(b)のツメ116、118と比べて、長さがやや短くなっている。
図3(c)〜
図3(e)においては、ツメ216、218が短いこと以外は、
図1(c)〜
図1(e)のオス部品202と同様の構成である。
【0035】
図3(f)はメス部品230の平面図であり、メス部品230の外表面232を示している。メス部品230は、
図1(f)のメス部品130と異なり、嵌合孔234、236(
図3(g)参照)が外表面232側に貫通していない。
【0036】
図3(g)は、
図3(f)のメス部品230のD−D断面図である。嵌合孔234、236は、外表面232側には貫通せず、ブリッジ248、250の角丸部分142、144の側面のみに貫通している。
図3(h)は、
図3(f)のメス部品230の正面図である。ブリッジ248、250は、
図1(h)のブリッジ148、150に比べて細い構成になっている。
図3(i)〜
図3(j)においては、嵌合孔234、236とブリッジ248、250以外は、
図1(i)〜
図1(j)のメス部品130と同様の構成である。
【0037】
図4は、鎖用手指保護具(保護具200)を鎖に取り付ける様子を示した図である。
図4(a)はオス部品202とメス部品230の嵌合前の様子であり、
図4(b)はそれらの嵌合後の様子である。
図4(a)に示すように、オス部品202とメス部品230もまた、互いのツメ216、218と嵌合孔234、236とを挿し込んで嵌合させ、鎖環162に取り付ける。これによって、
図4(b)に示すように、保護具200の取付けが完了する。
【0038】
図4(a)に示しているように、嵌合孔234、236は、メス部品230の角丸部分142、144の側面のみに貫通している。すなわち、嵌合孔234、236は、外表面232側(
図3(f)参照)には貫通していないため、ツメ216、218は外表面232には露出しない状態になる。したがって、
図4(b)のように鎖環162に取り付けた後では、隣の鎖環168、170が干渉することで、ツメ216、218に外部から到達することが難しくなる。この構成であると、もし保護具200を鎖環162から外す場合には先端の屈曲した治具などを用意する必要があり、子供の手で解除することは極めて困難である。したがって、当該保護具200は、いたずらによって外されることがより効率よく防止できる。
【0039】
(第3実施形態)
図5は、本発明の第3実施形態にかかる鎖用手指保護具(保護具300)を示した図である。当該保護具300は、オス部品302とメス部品330とがヒンジ380でつながれ、全体として1パーツになっていることに特徴がある。また、ツメ316、318や嵌合孔334の構成においても、上記実施形態と異なっている。
【0040】
図5(a)は、保護具300の平面図であり、オス部品302の外表面104およびメス部品330の外表面232を示している。オス部品302およびメス部品330は、共に角丸長方形であり、互いの角丸部分の一方側がヒンジ380でつながっている。
【0041】
図5(b)は、
図5(a)のメス部品330のE−E断面図である。
図5(b)では、手前のメス部品330に対し、奥のオス部品302(
図5(e)参照)から後述するツメ316、318が見えている。手前のメス部品330は、ツメ316、318が嵌合する部位として、1つの大きな嵌合孔334を有している。嵌合孔334は、内部にツメ316、318のかえし320、322が引っ掛かる段差348、350が設けられていて、ツメ316、318が外部に露出しない構成となっている。
【0042】
図5(c)は、
図5(a)の保護具300の正面図である。ヒンジ380は、オス部品302およびメス部品330の底面114、146側に向かって凸のアーチを形成している。オス部品302のツメ316は、長辺106にそって長手の形状に設けられている。
【0043】
図5(d)は、
図5(b)の保護具300の左側面図である。メス部品330は、
図2(h)のメス部品230とほぼ同様の構成であることが確認できる。
【0044】
図5(e)は、
図5(b)の保護具300の右側面図である。オス部品302は、底面114の短手方向の両端に(すなわち長辺106にそって)計2つのツメ316、318を有している。ツメ316、318のかえし320、322は外側を向いている。ツメ316、318の構成以外、オス部品302は、
図1(c)のオス部品102とほぼ同様の構成である。
【0045】
図5(f)は、
図5(a)の保護具300の底面図である。ツメ316、318は、オス部品302の底面146の短手方向の両端にて、長辺106、108それぞれに沿った2つの長手の範囲に設けられている。メス部品330の嵌合孔334は、底面146の主要な範囲にわたって、ツメ316、318が挿し込めるよう、長方形に設けられている。
【0046】
図5(g)は、
図5(a)の保護具300のF−F断面図である。メス部品330において、嵌合孔334の内部では、ツメ318に対応して、段差350が長手の形状に設けられている。
【0047】
図6は、
図5の鎖用手指保護具(保護具300)を鎖に取り付ける過程を示した図である。
図6(a)に示すように、保護具300は、オス部品302側またはメス部品330側から鎖環162の内部空間に対し、ヒンジ380に到達する程度にまで挿し込む。次に
図6(b)に示すように、オス部品302およびメス部品330の向きが鎖環162に沿うようにねじり、ヒンジ380を閉じてツメ316、318と嵌合孔334とを嵌合させる。これによって、
図6(c)に示すように、オス部品302およびメス部品330は、互いに鎖環162の平行部分164、166(
図6(a)参照)を両側から把持した状態となり、保護具300の取付けが完了する。
【0048】
当該保護具300は、鎖環162の内部空間に通した後、ヒンジ380を閉じるだけで、鎖環162の両側からオス部品302とメス部品330をはめ込むことができる。したがって、保護具300においても、非常に簡単な作業で、既設の鎖160にも短時間で装着することができる。また、保護具300は、ヒンジ380によってオス部品302とメス部品330とをつなぐことで、全体が1パーツになっているため、取扱い中に片方の部品を紛失するおそれがなく、取扱いがより容易になる。
【0049】
図5(c)等に示したように、本実施形態のオス部品302のツメ316、318は、長手の範囲から壁状に突出していて、はめ合いの長さが長いため剛性が高い。したがって、本実施形態であれば、オス部品302とメス部品330とをより十全にはめ合せることが可能になる。
【0050】
また嵌合孔334は、嵌合したツメ316、318が外部に露出しない。この構成であると、子供の手で解除することは極めて困難である。したがって、当該保護具300は、いたずらによって外されることがより効率よく防止できる。
【0051】
なお、メス部品の変形例として、例えば
図5(b)において、嵌合孔334をメス部品330の幅方向(丸溝152、154側)に貫通させ、段差348、350をブリッジ状の構造にすることも可能である。この構成であると、ツメ316、318は丸溝152、154の付近から露出するものの、外表面232には露出しない。また、鎖環162に取り付けた後は、平行部分164、166(
図6(a)参照)が干渉することで、ツメ316、318に外部から到達することが難しくなる。この構成においても、当該保護具を鎖環162から外す場合には先端の屈曲した治具などを用意する必要があるため、子供の手で解除することは極めて困難であり、いたずらを効率よく防止できる。
【0052】
(第4実施形態)
図7は、本発明の第4実施形態にかかる鎖用手指保護具(以下、保護具400)を示した図である。保護具400では、オス部品402の外表面104に溝部404が設けられ、外表面104に滑り止めの凹凸が形成された状態となっている。この溝部は、図示省略している反対側のメス部品の外表面にも設けることが可能である。オス部品402およびメス部品(図示省略)の外表面に凹凸を形成することで、人が鎖を把持したときに鎖160を滑り難くし、鎖160をより取扱いやすくすることができる。
【0053】
なお、溝部404は、上記説明した第1実施形態〜第3実施形態のいずれの保護具にも適用可能である。加えて、第3実施形態のヒンジ380もまた、第1実施形態または第2実施形態の保護具にも適用可能である。
【0054】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。