特許第6886731号(P6886731)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リガクの特許一覧

<>
  • 特許6886731-X線分析補助装置及びX線分析装置 図000002
  • 特許6886731-X線分析補助装置及びX線分析装置 図000003
  • 特許6886731-X線分析補助装置及びX線分析装置 図000004
  • 特許6886731-X線分析補助装置及びX線分析装置 図000005
  • 特許6886731-X線分析補助装置及びX線分析装置 図000006
  • 特許6886731-X線分析補助装置及びX線分析装置 図000007
  • 特許6886731-X線分析補助装置及びX線分析装置 図000008
  • 特許6886731-X線分析補助装置及びX線分析装置 図000009
  • 特許6886731-X線分析補助装置及びX線分析装置 図000010
  • 特許6886731-X線分析補助装置及びX線分析装置 図000011
  • 特許6886731-X線分析補助装置及びX線分析装置 図000012
  • 特許6886731-X線分析補助装置及びX線分析装置 図000013
  • 特許6886731-X線分析補助装置及びX線分析装置 図000014
  • 特許6886731-X線分析補助装置及びX線分析装置 図000015
  • 特許6886731-X線分析補助装置及びX線分析装置 図000016
  • 特許6886731-X線分析補助装置及びX線分析装置 図000017
  • 特許6886731-X線分析補助装置及びX線分析装置 図000018
  • 特許6886731-X線分析補助装置及びX線分析装置 図000019
  • 特許6886731-X線分析補助装置及びX線分析装置 図000020
  • 特許6886731-X線分析補助装置及びX線分析装置 図000021
  • 特許6886731-X線分析補助装置及びX線分析装置 図000022
  • 特許6886731-X線分析補助装置及びX線分析装置 図000023
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886731
(24)【登録日】2021年5月19日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】X線分析補助装置及びX線分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/201 20180101AFI20210603BHJP
   G01N 23/205 20180101ALI20210603BHJP
【FI】
   G01N23/201
   G01N23/205
【請求項の数】15
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2019-508623(P2019-508623)
(86)(22)【出願日】2018年1月25日
(86)【国際出願番号】JP2018002205
(87)【国際公開番号】WO2018179744
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2020年11月13日
(31)【優先権主張番号】特願2017-66694(P2017-66694)
(32)【優先日】2017年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
(74)【代理人】
【識別番号】100101867
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 寿武
(72)【発明者】
【氏名】谷口 やよい
(72)【発明者】
【氏名】森川 惠一
【審査官】 嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−209152(JP,A)
【文献】 特開2013−214467(JP,A)
【文献】 特開平06−074923(JP,A)
【文献】 特開2008−002966(JP,A)
【文献】 特開平08−101204(JP,A)
【文献】 特開2013−137297(JP,A)
【文献】 特開2016−126823(JP,A)
【文献】 特開2017−032521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/2276
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源からのX線を試料に入射したとき、試料で散乱又は回折するX線を2次元検出器により検出するX線分析装置を対象として、同装置の測定条件を設定するために用いられるX線分析補助装置であって、
前記試料と前記2次元検出器との間の距離Lと、
試料で散乱又は回折するX線の測定データとして取得したい検出最大範囲Xmaxと、
を設定項目に含むとともに、
前記2次元検出器の検出面がX線を検出可能な範囲をあらわすX線検出領域Aと、
前記2次元検出器の検出面を含む測定面に対し、前記検出最大範囲XmaxのX線が入射する広角側の境界をあらわす最大測定枠Hmaxと、
を表示項目に含み、
前記距離L又は前記検出最大範囲Xmaxに相当する値の一方を入力するための設定値入力手段と、
前記設定値入力手段により入力された一方の設定項目に相当する値に基づいて、他方の設定項目を自動的に設定する自動設定手段と、
前記距離L及び検出最大範囲Xmaxに基づいて、前記最大測定枠Hmaxを表示画面に表示し、かつ前記X線検出領域Aを前記表示画面に表示する表示手段と、
を備えたことを特徴とするX線分析補助装置。
【請求項2】
試料で散乱又は回折するX線の測定データとして取得したい検出最小範囲Xminを前記設定項目に含むとともに、
前記測定面に対し、前記検出最小範囲XminのX線が入射する低角側の境界をあらわす最小測定枠Hminを前記表示項目に含み、
前記設定値入力手段は、前記距離L又は前記検出最小範囲Xminの一方を入力して設定する機能を含み、
前記表示手段は、前記距離L及び検出最小範囲Xminに基づいて、前記最小測定枠Hminを前記表示画面に表示する機能を含むことを特徴とした請求項1のX線分析補助装置。
【請求項3】
前記表示画面に表示される内容を変更するための指示を出す表示変更手段を含むことを特徴とする請求項1又は2のX線分析補助装置。
【請求項4】
前記表示変更手段は、前記表示画面にグリッドを表示させる指示を出し、
当該指示に基づき、前記表示手段は、1つの升目が前記X線検出領域Aと同じ寸法形状をしたグリッドを前記表示画面に表示する機能を含むことを特徴とした請求項3のX線分析補助装置。
【請求項5】
前記表示変更手段は、前記表示画面に表示された前記X線検出領域Aを移動させる指示を出し、
当該指示に基づき、前記表示手段は、前記X線検出領域Aを前記表示画面内で移動させる機能を含むことを特徴とした請求項3又は4のX線分析補助装置。
【請求項6】
前記表示変更手段は、前記表示画面に複数個の前記X線検出領域Aを表示させる指示を出し、
当該指示に基づき、前記表示手段は、複数個の前記X線検出領域Aを前記表示画面に表示する機能を含むことを特徴とした請求項3又は4のX線分析補助装置。
【請求項7】
前記表示変更手段は、任意の個数の前記X線検出領域Aを前記表示画面の任意の位置に表示させる指示を出し、
当該指示に基づき、前記表示手段は、任意の個数の前記X線検出領域Aを前記表示画面の任意の位置に表示する機能を含むことを特徴とした請求項3又は4のX線分析補助装置。
【請求項8】
前記表示変更手段は、前記表示画面に表示された前記最大測定枠Hmaxの大きさを変更させる指示を出し、
当該指示に基づき、前記表示手段は、前記表示画面に表示された前記最大測定枠Hmaxの大きさを変更する機能を含み、
前記自動設定手段は、変更後の前記最大測定枠Hmaxに基づいて、前記距離L又は検出最大範囲Xmaxを自動的に設定する機能を含むことを特徴とした請求項3又は4のX線分析補助装置。
【請求項9】
前記表示変更手段は、前記表示画面に表示された前記X線検出領域Aの外縁に合わせて前記最大測定枠Hmaxの大きさを変更させる指示を出し、
当該指示に基づき、前記表示手段は、前記表示画面に表示された前記X線検出領域Aの外縁に合わせて前記最大測定枠Hmaxの大きさを変更する機能を含み、
前記自動設定手段は、変更後の前記最大測定枠Hmaxに基づいて、前記距離L又は検出最大範囲Xmaxを自動的に設定する機能を含むことを特徴とした請求項3乃至7のいずれか一項に記載のX線分析補助装置。
【請求項10】
前記表示変更手段は、前記表示画面に表示された前記最大測定枠Hmax内の測定領域を分割してその一部を表示させる指示を出し、
当該指示に基づき、前記表示手段は、前記表示画面に表示された前記最大測定枠Hmax内の測定領域を分割してその一部を表示する機能を含むことを特徴とした請求項3又は4のX線分析補助装置。
【請求項11】
前記自動設定手段は、分割してその一部が表示された前記最大測定枠Hmax内の測定領域を網羅するように、前記X線検出領域Aの個数と配置を自動的に設定する機能を含み、
前記表示手段は、当該自動的に設定された前記X線検出領域Aの個数と配置を前記表示画面に表示する機能を含むことを特徴とした請求項10のX線分析補助装置。
【請求項12】
前記表示変更手段は、前記表示画面の任意の位置に任意の大きさで任意の形状をした指定測定範囲Hを表示させる指示を出し、
当該指示に基づき、前記表示手段は、前記表示画面の任意の位置に任意の大きさで任意の形状をした指定測定範囲Hを表示する機能を含み、
前記自動設定手段は、前記表示画面に表示された指定測定範囲Hを網羅するように、前記X線検出領域Aの個数及び配置を自動的に設定する機能を含み、
更に、前記表示手段は、当該自動的に設定された個数の前記X線検出領域Aを自動的に設定された配置で前記表示画面に表示する機能を含むことを特徴とした請求項3又は4のX線分析補助装置。
【請求項13】
前記2次元検出器により検出されたX線情報を含む既存の測定データを読み込むデータ読込手段を有し、
前記表示手段は、前記データ読込手段により読み込まれた測定データに含まれるX線情報を前記表示画面に表示する機能を含むことを特徴とした請求項1乃至12のいずれか一項に記載のX線分析補助装置。
【請求項14】
前記X線分析装置は、前記2次元検出器として2次元半導体検出器を用いたX線小角散乱測定装置であり、
前記検出最大範囲Xmaxは、前記試料で散乱又は回折したX線の散乱又は回折ベクトルQ、前記試料への入射X線の光軸に対する前記試料で散乱又は回折したX線の散乱角2θ又は回折角2θ、もしくは前記試料の構造における大きさdのいずれかにより設定されることを特徴とした請求項1乃至13のいずれか一項に記載のX線分析補助装置。
【請求項15】
X線を試料に入射するX線源と、前記試料で散乱又は回折するX線を検出する2次元検出器と、測定条件を設定するためのX線分析補助装置と、を備えたX線分析装置であって、
前記X線分析補助装置は、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のX線分析補助装置であることを特徴とするX線分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、X線源からのX線を試料に入射したとき、試料で散乱又は回折するX線を2次元検出器により検出するX線分析装置を対象として、同装置の測定条件を設定するために用いられるX線分析補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2009−2805号公報(特許文献1)に開示された小角広角X線測定装置は、試料にX線を入射したとき当該試料で散乱するX線を検出するX線分析装置であり、同装置により得られたX線情報に基づき試料の構造を解析することができる。
この種のX線分析装置を利用して試料の構造を解析するためには、あらかじめ同装置の操作手順を知ることは勿論、ある程度は同装置の操作に習熟している必要があり、その習熟度(すなわち、経験の多さ)によって装置の条件設定等に要する時間が大きく変わり、得られるX線情報の精度も違ってくる。したがって、できるだけ短時間の測定で高精度なX線情報を得るためには、習熟したオペレータがX線分析装置を操作することが好ましい。
【0003】
一方、装置の条件設定を補助する装置があれば、経験の少ないオペレータでも短時間で適切な条件設定が行えるようになる。しかし、この種のX線分析補助装置は、従来開発されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−2805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたもので、X線分析装置の操作経験が少ないオペレータであっても、短時間で適切な測定条件の設定を実現可能とするX線分析補助装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るX線分析補助装置は、X線源からのX線を試料に入射したとき、試料で散乱又は回折するX線を2次元検出器により検出するX線分析装置を対象として、同装置の測定条件を設定するために用いられる。
対象となるX線分析装置としては、例えば、X線小角散乱測定装置がある。ただし、同装置に適用が限定されないことは勿論である。
また、2次元検出器としては、近年、高精度かつ高分解能な2次元半導体検出器を用いることが多い。2次元半導体検出器は、X線を検出できる領域が小さく、そのため、役に立つX線情報を得るための適切な測定条件の設定が特に難しい。よって、2次元半導体検出器を用いたX線分析装置に対して、本発明に係るX線分析補助装置の適用は、特に効果がある。
【0007】
本発明に係るX線分析補助装置は、試料と2次元検出器との間の距離Lと、試料で散乱又は回折するX線の測定データとして取得したい検出最大範囲Xmaxと、を設定項目に含んでいる。
ここで設定されたX線の検出最大範囲Xmaxは、測定データとして取得できる、試料から放射状に散乱又は回折するX線の広角側における最大角度範囲となる。例えば、X線小角散乱測定装置においては、検出最大範囲Xmaxを、試料で散乱又は回折したX線の散乱又は回折ベクトルQ、試料への入射X線の光軸に対する試料で散乱又は回折したX線の散乱角又は回折角2θ、もしくは試料の構造における大きさdのいずれかにより設定することができる。
【0008】
また、本発明に係るX線分析補助装置は、2次元検出器の検出面がX線を検出可能な範囲をあらわすX線検出領域Aと、2次元検出器の検出面を含む測定面に対し、検出最大範囲XmaxのX線が入射する広角側の境界をあらわす最大測定枠Hmaxと、を表示項目に含んでいる。
【0009】
そして、本発明に係るX線分析補助装置は、距離L又は検出最大範囲Xmaxに相当する値の一方を入力するための設定値入力手段と、設定値入力手段により入力された一方の設定項目に相当する値に基づいて、他方の設定項目を自動的に設定する自動設定手段と、距離L及び検出最大範囲Xmaxに基づいて、最大測定枠Hmaxを表示画面に表示し、かつX線検出領域Aを表示画面に表示する表示手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
X線分析装置において、試料にX線を入射すると試料内で放射状にX線の散乱や回折が生じる。試料の近くに2次元検出器を配置した場合は、このように放射状に散乱又は回折したX線を広い角度範囲で2次元検出器の検出面に入射させることができる。これとは逆に、試料から離して2次元検出器を配置した場合は、2次元検出器により検出できるX線の角度範囲が狭くなる。一方、2次元検出器が検出できるX線の角度分解能は、2次元検出器を試料から離すほど良好となる。
また、試料から放射状に散乱又は回折したX線の測定面に対する入射範囲が2次元検出器の検出面よりも広い場合は、測定面のどの角度位置に入射するX線を、2次元検出器で検出するかを検討する必要も生じる。
オペレータは、これらの関係を考慮して測定条件を設定しなければならないが、X線は視認することができず、またX線を試料に入射しながら調整作業をすることも通常はできない。そのため、オペレータは、実際の状況を確認できないまま測定条件を設定していかなければならず、経験の多さ(すなわち、習熟度)が測定条件設定の適否に少なからず影響を及ぼす。
【0011】
しかし、本発明に係るX線分析補助装置を用いれば、オペレータが、設定値入力手段から距離L又は検出最大範囲Xmaxに相当する値の一方を入力することで、自動設定手段がこの入力された一方の設定項目に相当する値に基づいて、他方の設定項目を自動的に設定する。そして、表示手段が、距離L及び検出最大範囲Xmaxに基づいて、最大測定枠Hmaxを表示画面に表示する。
【0012】
ここで、距離L又は検出最大範囲Xmaxに相当する値は、距離L又は検出最大範囲Xmaxに限らず、それらの値と相関関係を有する値であってもよい。
また、最大測定枠Hmaxは、2次元検出器の検出面を含む測定面に対し、検出最大範囲XmaxのX線が入射する広角側の境界である。オペレータは、この表示画面に表示された最大測定枠Hmaxを視覚的に確認することができる。さらに、表示画面には、X線検出領域Aが表示される。このX線検出領域Aは、2次元検出器の検出面がX線を検出可能な範囲である。オペレータは、このX線検出領域Aと最大測定枠Hmaxとを表示画面上で視覚的に確認することができる。このようにして、オペレータは、最大測定枠HmaxやX線検出領域Aを表示画面上で視覚的に確認しながら、距離Lや検出最大範囲Xmaxの設定の適否を検討することができるので、X線分析装置の操作経験が少ないオペレータであっても、短時間で適切な条件設定を実現することが可能となる。
【0013】
さらに、本発明に係るX線分析補助装置は、試料で散乱又は回折するX線の測定データとして取得したい検出最小範囲Xminを設定項目に含むとともに、測定面に対し、検出最小範囲XminのX線が入射する低角側の境界をあらわす最小測定枠Hminを表示項目に含み、設定値入力手段は、距離L又は検出最小範囲Xminの一方を入力して設定する機能を含み、表示手段は、距離L及び検出最小範囲Xminに基づいて、最小測定枠Hminを表示画面に表示する機能を含む構成としてもよい。
ここで設定されたX線の検出最小範囲Xminは、測定データとして取得できる、試料から放射状に散乱又は回折するX線の低角側における最小角度範囲となる。この検出最小範囲Xminも、例えば、X線小角散乱測定装置においては、検出最大範囲Xmaxと同様に、試料で散乱又は回折したX線の散乱又は回折ベクトルQ、試料への入射X線の光軸に対する試料で散乱又は回折したX線の散乱角又は回折角2θ、もしくは試料の構造における大きさdのいずれかにより設定することができる。
【0014】
このような構成を追加すれば、オペレータが、設定値入力手段から距離L又は検出最小範囲Xminの一方を入力することで、最小測定枠Hminが表示画面に表示される。この最小測定枠Hminは、測定面に対し検出最小範囲XminのX線が入射する低角側の境界である。この最小測定枠Hminが広角側に広がるほど、2次元検出器が検出できるX線の角度分解能が高くなる。よって、表示画面に表示された最小測定枠Hminを視覚的に確認し、測定により取得したいX線情報から許容できる角度分解能を踏まえて、試料と2次元検出器との間の距離Lについてその設定の適否を検討することができる。
【0015】
また、本発明に係るX線分析補助装置は、表示画面に表示される内容を変更するための指示を出す表示変更手段を含むことが好ましい。この表示変更手段を備えることで、以下に示すように、測定条件を設定する際に検討を補助する内容や視覚的に検討できる内容が増え、いっそう適切な条件設定を実現することが可能となる。
【0016】
かかる構成の本発明に係るX線分析補助装置において、表示変更手段は、表示画面にグリッドを表示させる指示を出し、当該指示に基づき、表示手段は、1つの升目がX線検出領域Aと同じ寸法形状をしたグリッドを表示画面に表示する機能を含む構成としてもよい。
オペレータは、表示画面に表示されたグリッドを参照して、例えば、最大測定枠Hmaxに対するX線検出領域Aの位置を検討することができる。
【0017】
また、表示変更手段を含む構成の本発明に係るX線分析補助装置において、表示変更手段は、表示画面に表示されたX線検出領域Aを移動させる指示を出し、表示手段は、当該指示に基づき、X線検出領域Aを表示画面内で移動させる機能を含む構成としてもよい。
オペレータは、X線検出領域Aを表示画面内で移動させて、例えば、最大測定枠Hmaxに対するX線検出領域Aの最適な位置を検討することができる。
【0018】
また、表示変更手段を含む構成の本発明に係るX線分析補助装置において、表示変更手段は、表示画面に複数個のX線検出領域Aを表示させる指示を出し、表示手段は、当該指示に基づき、複数個のX線検出領域Aを表示画面に表示する機能を含む構成としてもよい。
オペレータは、複数個のX線検出領域Aを表示画面に表示させて、例えば、最大測定枠Hmaxに対する最適なX線の検出領域を検討することができる。
【0019】
また、表示変更手段を含む構成の本発明に係るX線分析補助装置において、表示変更手段は、任意の個数のX線検出領域Aを表示画面の任意の位置に表示させる指示を出し、表示手段は、当該指示に基づき、任意の個数のX線検出領域Aを表示画面の任意の位置に表示する機能を含む構成としてもよい。
オペレータは、任意の個数のX線検出領域Aを表示画面の任意の位置に表示することで、
最大測定枠Hmax内の測定領域に入射するX線を適切かつ効率的に2次元検出器で検出できるよう測定条件を設定することが可能となる。
【0020】
また、表示変更手段を含む構成の本発明に係るX線分析補助装置において、表示変更手段は、表示画面に表示された最大測定枠Hmaxの大きさを変更させる指示を出し、表示手段は、当該指示に基づき、表示画面に表示された最大測定枠Hmaxの大きさを変更する機能を含み、自動設定手段は、変更後の最大測定枠Hmaxに基づいて、距離L又は検出最大範囲Xmaxを自動的に設定する機能を含む構成としてもよい。
オペレータは、最大測定枠Hmaxの大きさを変更して、例えば、X線検出領域Aに対する最適な最大測定枠Hmaxの大きさを検討することができる。そして、最大測定枠Hmaxの大きさ変更に伴い、距離L又は検出最大範囲Xmaxが自動的に設定し直されるので、オペレータは煩雑な計算からも開放される。
【0021】
また、表示変更手段を含む構成の本発明に係るX線分析補助装置において、表示変更手段は、表示画面に表示されたX線検出領域Aの外縁に合わせて最大測定枠Hmaxの大きさを変更させる指示を出し、表示手段は、当該指示に基づき、表示画面に表示されたX線検出領域Aの外縁に合わせて最大測定枠Hmaxの大きさを変更する機能を含み、自動設定手段は、変更後の最大測定枠Hmaxに基づいて、距離L又は検出最大範囲Xmaxを自動的に設定する機能を含む構成としてもよい。
オペレータは、X線検出領域Aの外縁に合わせて最大測定枠Hmaxを変更することで、例えば、X線検出領域Aに対する最適な最大測定枠Hmaxの大きさを確定することができる。この場合も、最大測定枠Hmaxの変更に伴い、距離L又は検出最大範囲Xmaxが自動的に設定し直されるので、オペレータは煩雑な計算からも開放される。
【0022】
また、表示変更手段を含む構成の本発明に係るX線分析補助装置において、表示変更手段は、表示画面に表示された最大測定枠Hmax内の測定領域を分割してその一部を表示させる指示を出し、表示手段は、当該指示に基づき、表示画面に表示された最大測定枠Hmax内の測定領域を分割してその一部を表示する機能を含む構成としてもよい。
オペレータは、最大測定枠Hmax内の測定領域を分割してその一部を表示することで、例えば、試料からのX線を検出したい範囲を調整することができる。
【0023】
かかる構成の本発明に係るX線分析補助装置において、自動設定手段は、分割してその一部が表示された最大測定枠Hmax内の測定領域を網羅するように、X線検出領域Aの個数と配置を自動的に設定する機能を含み、表示手段は、当該自動的に設定されたX線検出領域Aの個数と配置を表示画面に表示する機能を含む構成としてもよい。
このように構成することで、オペレータは、最適な最大測定枠Hmax内の測定領域に入射するX線を無駄なく効率的に2次元検出器で検出できるよう測定条件を設定することが可能となる。
【0024】
また、表示変更手段を含む構成の本発明に係るX線分析補助装置において、表示変更手段は、表示画面の任意の位置に任意の大きさで任意の形状をした指定測定範囲Hを表示させる指示を出し、表示手段は、当該指示に基づき、表示画面の任意の位置に任意の大きさで任意の形状をした指定測定範囲Hを表示する機能を含み、自動設定手段は、表示画面に表示された指定測定範囲Hを網羅するように、X線検出領域Aの個数及び配置を自動的に設定する機能を含み、更に、表示手段は、当該自動的に設定された個数のX線検出領域Aを自動的に設定された配置で表示画面に表示する機能を含む構成としてもよい。
オペレータが、表示画面の任意の位置に任意の大きさで任意の形状をした指定測定範囲Hを表示させることで、この指定測定範囲Hを網羅する個数と配置でX線検出領域Aが表示画面に表示される。オペレータは、これらの指定測定範囲HやX線検出領域Aを視覚的に確認しながら、例えば、試料からのX線を適切かつ効率的に2次元検出器で検出できるよう測定条件を設定することが可能となる。
【0025】
また、本発明に係るX線分析補助装置において、2次元検出器により検出されたX線情報を含む既存の測定データを読み込むデータ読込手段を有し、表示手段は、データ読込手段により読み込まれた測定データに含まれるX線情報を表示画面に表示する機能を含む構成としてもよい。
オペレータは、表示画面に表示されたX線情報を参照しながら、視覚的に測定条件の設定を検討することが可能となる。
【0026】
また、本発明に係るX線分析装置は、X線を試料に入射するX線源と、試料で散乱又は回折するX線を検出する2次元検出器と、測定条件を設定するためのX線分析補助装置と、を備えている。ここで、X線分析補助装置には、上述した構成の本発明に係るX線分析補助装置が適用される。
【0027】
以上説明したように、本発明に係るX線分析補助装置によれば、オペレータは、表示画面の表示内容を視覚的に確認しながら、短時間で適切に測定条件を設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1Aは、X線小角散乱測定装置の概要を模式的に示す正面図、図1Bは、X線小角散乱測定装置の光学系を示す模式図である。
図2図2Aは、X線小角散乱測定装置により試料の分析を実施する際の測定条件の設定項目を説明するための正面図、図2Bは同じく右側面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るX線分析補助装置の概略構造を示すブロック図である。
図4図4は、X線分析補助装置における表示装置の表示画面に表示される基本情報を示す図である。
図5図5は、表示内容を変更した表示画面の一例を示す図である。
図6図6は、表示内容を変更した表示画面の他の例を示す図である。
図7図7は、表示内容を変更した表示画面のさらに他の例を示す図である。
図8図8は、表示内容を変更した表示画面のさらに他の例を示す図である。
図9図9は、表示内容を変更した表示画面のさらに他の例を示す図である。
図10図10は、表示内容を変更した表示画面のさらに他の例を示す図である。
図11図11は、図10に続く、表示内容を変更した表示画面の例を示す図である。
図12図12は、表示内容を変更した表示画面のさらに他の例を示す図である。
図13図13A図13Eは、試料で散乱又は回折するX線に対し、最大測定枠Hmax内の測定領域を分割して、その分割範囲に入るX線だけを検出対象とした各種例を示す図である。
図14図14は、表示内容を変更した表示画面のさらに他の例を示す図である。
図15図15は、図14に続く、表示内容を変更した表示画面の例を示す図である。
図16図16は、表示内容を変更した表示画面のさらに他の例を示す図である。
図17図17は、本発明に係る実施形態の応用例における表示画面を示す図である。
図18図18は、図17に続く、本発明に係る実施形態の応用例における表示画面を示す図である。
図19図19は、図17に続く、本発明に係る実施形態の応用例における他の表示画面を示す図である。
図20図20は、図17に示す本発明に係る実施形態の応用例における他の表示画面を示す図である。
図21図21は、図17に続く、本発明に係る実施形態の応用例における他の表示画面を示す図である。
図22図22は、本発明の実施形態に係るX線分析補助装置を利用して決めた設定値情報の印刷例を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1:試料台、S:試料、2:2次元検出器、3:X線発生装置、3a:X線源、4:X線集光装置、4a:X線集光要素、5:第1スリット部、5a:第1スリット、6:第2スリット部、6a:第2スリット、7:第3スリット部、7a:第3スリット、8:第1減圧パス、9:第2減圧パス、10:第3減圧パス、11:移動ステージ、12:ダイレクトビームストッパ、
20:中央処理装置、21:表示装置、22:表示画面、23:カーソル、24:入力・操作装置、25:記憶装置、26:出力装置
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態に係るX線分析補助装置は、X線小角散乱測定装置を適用対象として、同装置の測定条件の設定を想定した構成としてある。
X線小角散乱測定装置は、X線を試料Sに入射したとき、試料Sで散乱するX線のうち0°<2θ(回折角度)≦5°の低角領域に散乱するものを測定して、試料Sの構造を評価するためのX線分析装置であり、一般に数nm〜数百nm程度の大きさの構造評価に利用されている。
【0031】
図1AはX線小角散乱測定装置の概要を模式的に示す正面図である。図1BはX線小角散乱測定装置の光学系を示す模式図である。
なお、図1A図1Bにおいて、紙面の左右方向をY方向、紙面の垂直方向をX方向、紙面の上下方向をZ方向として、X線小角散乱測定装置は、X線が進行する軸方向(装置の長手方向)をY方向に合わせて設置してある。
【0032】
図1Aにおいて、X線小角散乱測定装置は、略中央の位置に試料台1を有し、この試料台1の上に測定対象である試料Sが配置される。この試料台1を挟んで、一方の側方には入射光学系が設置され、他方の側方には2次元検出器2が設置してある。
【0033】
入射側光学系は、X線発生装置3と、X線集光装置4と、第1スリット部5と、第2スリット部6と、第3スリット部7とを含んでいる。2次元検出器2には、2次元半導体検出器を用いている。
【0034】
第1スリット部5と第2スリット部6との間には第1減圧パス8が設けられ、第2スリット部6と第3スリット部7との間には第2減圧パス9が設けられている。さらに、試料台1と2次元検出器2との間には、第3減圧パス10が設けられている。
第1減圧パス8及び第2減圧パス9は、長さが一定で気密構造の管体である。また、第3減圧パス10は、1又は複数個の気密構造の筒体で構成される。複数個の筒体は、図1AのX方向に移動自在となっており、試料Sと2次元検出器2との間の距離に合わせて、適宜の個数の筒体を試料Sと2次元検出器2との間に配置できるようになっている。なお、試料Sと2次元検出器2との間の距離は、後述するように移動調整自在となっている。
各減圧パス8,9,10の内部は、図示しない減圧装置(例えば、ロータリーポンプやターボ分子ポンプ)によって減圧されて、真空又は真空に近い減圧状態に設定される。この減圧は、空気散乱現象によって不要な散乱線が発生することにより、測定データにおけるバックグラウンド成分が上昇することを防止するとともに、空気によるX線の吸収を防ぐための措置である。
【0035】
本実施形態では、2次元検出器2に2次元半導体検出器を用いている。半導体検出器は、
シリコンやゲルマニウム等の半導体にX線が当たると電子が発生することを利用したX線検出器であり、エネルギ(X線強度)に対する分解能がきわめて高く、短時間でX線を検出できることから、近年、X線分析装置に多く用いられている。しかし、現在の半導体製造技術で生成できる半導体材料の大きさには限界があり、また寸法が大きくなるほど高価格となる。そのため、X線分析装置には、縦横数cm程度の小さな矩形状をした検出面を備えた半導体検出器が一般に利用されている。
このように、2次元半導体検出器は、検出面においてX線を検出できる領域が小さく、X線小角散乱測定装置に適用したとき、試料Sから放射状に散乱するX線の全範囲を網羅できないこともある。
そこで、図1A図1Bに示すX線小角散乱測定装置では、2次元検出器2を移動ステージ11の上に載せ、移動ステージ11とともにZ方向及びX方向に移動できる構成としてある。これにより、2次元検出器2によるX線の検出位置を任意に移動させて、試料Sから放射状に散乱するX線の測定範囲を、複数回に分けて測定することができる。
【0036】
2次元検出器2の検出面の手前には、ダイレクトビームストッパ12が配置してある。ダイレクトビームストッパ12は、X線を透過させない物質によって形成され、X線源3aから試料Sに入射され、試料Sを反射又は透過してきたX線の光軸(中心軸)上に設けられている。このダイレクトビームストッパ12は、2次元検出器2の検出面にX線源3aからのX線(ダイレクトビーム)が直接入射することを防止して、試料Sの分析に必要な試料Sで散乱又は回折したX線だけを2次元検出器2の検出面に入射させる機能を有している。
【0037】
試料Sと2次元検出器2との間の距離Lは、任意に移動調整できる構造となっている。図1A図1Bに示す本実施形態のX線小角散乱測定装置では、Y方向に延びる案内レールに沿って、試料台1が移動自在となっており、試料台1を移動させることで、試料Sと2次元検出器2との間の距離Lを任意に変更することができる。なお、第3減圧パス10を構成する筒体が試料台1と干渉するおそれがあるときは、当該筒体を試料台1の移動経路から退避させる。
【0038】
次に、上述した構成のX線小角散乱測定装置の光学系と作用を説明する。
図1Bに示すように、X線発生装置3の内部にX線源3aが設けられ、X線集光装置4の内部に多層膜ミラー等で構成されたX線集光要素4aが設けられ、第1スリット部5の内部に第1スリット5aが設けられ、第2スリット部6の内部に第2スリット6aが設けられ、第3スリット部7の内部に第3スリット7aが設けられている。
【0039】
X線源3aからは、例えば、CuKα線を含むポイントフォーカスのX線が出射され、そのX線をX線集光要素4aの構成要素に反射させて特定点に集光するようにビーム成形する。このX線は第1スリット5a及び第2スリット6aによって発散を抑えられた状態で試料Sへ入射する。このとき、第3スリット7aは試料Sへ不要な散乱線が入射することを防止する。
【0040】
X線が試料Sへ入射すると、試料S内に含まれるナノ(10−9m)構造に起因して小角度領域(0°<2θ≦5°)内における試料Sに固有の散乱角度(回折角度)2θの角度位置にX線が散乱する。この散乱X線は、2次元検出器2の検出面に入射して、2次元的な入射位置とX線強度がX線情報として取得される。このX線情報を分析することにより、試料Sの内部のナノスケール(10−9m)の構造、より具体的には分子レベルの構造(1nm〜100nmのマクロ構造)から原子レベルの構造(0.2nm〜1nmのミクロ構造)を評価できる。
【0041】
なお、図1A図1Bでは特に示していないが、X線小角散乱測定装置には、試料Sに対して荷重付与装置、温度制御装置、湿度制御装置等といった付帯機器を装備することができる。荷重付与装置は、試料Sに引張り又は圧縮の荷重を加えることができる装置である。温度制御装置は、試料Sの温度を上げたり又は下げたりして制御できる装置である。湿度制御装置は、試料Sの周囲の湿度を上げたり又は下げたりして制御できる装置である。
このような付帯機器を利用して試料Sの状態を動的に変化させながらX線小角散乱測定を実施する場合は、時間とともに試料Sの状態が変化してしまうため、2次元検出器2によるX線の検出に時間を確保したり、検出位置を変えて複数回の検出を実施したりする等の操作を行うことができない。一方、試料Sの状態を変化させない静的な測定環境の場合は、X線の検出に時間を確保したり、検出位置を変えて複数回の検出を実施したりすることも自由に行うことができる。
【0042】
図2A図2BはX線小角散乱測定装置により試料Sの分析を実施する際の測定条件の設定項目を説明するための図である。
これらの図において、「Hp」は2次元検出器2の検出面を含む測定面を示しており、試料Sと2次元検出器2の間の距離Lを変えた複数の位置に測定面Hpが描かれている。
X線源3aからのX線を試料Sに入射したとき、試料Sからは入射X線の光軸Oを中心に放射状にX線が散乱する。この散乱X線を測定面Hp上で2次元検出器2により測定する場合、試料Sと2次元検出器2との間の距離Lを図2Aに示すように変更すると、距離Lが離れたL=L1の位置では、散乱X線を測定面Hp上で測定できる角度範囲Xmax−1が狭くなり、逆に距離Lが近づいたL=L3の位置では、散乱X線を測定面Hp上で測定できる角度範囲Xmax−3が広くなる。
【0043】
ここで、試料Sと2次元検出器2との間の距離Lを近付けるほど、X線が入射する微小な角度差を2次元検出器2が判別できなくなる。すなわち、角度分解能が低下する。よって、低角領域に散乱する散乱X線を高精度に検出するには、試料Sと2次元検出器2との間の距離Lを離した方が好ましい。
【0044】
オペレータは、上述した関係や事情を考慮しながら、試料Sと2次元検出器2との間の距離Lと、試料Sで散乱するX線の測定データとして取得したい検出最大範囲Xmaxと、試料Sで散乱するX線の測定データとして取得したい検出最小範囲Xminとを測定条件として設定する。
具体的には、X線小角散乱測定装置にあっては、試料Sで散乱したX線の散乱ベクトルQ、試料Sへの入射X線の光軸に対する試料Sで散乱したX線の散乱角2θ、試料Sの構造における大きさd(例えば、結晶格子面)のいずれかにより、検出最大範囲Xmax及び検出最小範囲Xminを設定することになる。
【0045】
また、検出最大範囲XmaxのX線が測定面Hpに入射する領域(最大測定枠Hmax内の領域)が、2次元検出器2の検出面がX線を検出可能な範囲(X線検出領域A)よりも広い場合は、1回の測定で最大測定枠Hmax内の全範囲におけるX線を検出することができない。そこでこの場合は、2次元検出器2を移動させ、測定面Hpに対してX線検出領域Aを複数の位置に配置し、複数回にわたり2次元検出器2によるX線の検出操作を実行する必要が生じる。
【0046】
ただし、既述したように、荷重付与装置、温度制御装置、湿度制御装置等といった付帯機器を利用して試料Sの状態を動的に変化させながらX線小角散乱測定を実施する場合は、時間とともに試料Sの状態が変化してしまうため、検出位置を変えての複数回の検出操作を実施することができない。
【0047】
そこで、付帯機器を利用して試料Sの状態を動的に変化させながらX線小角散乱測定を実施する場合と、試料Sの状態を変化させない静的な測定環境でX線小角散乱測定を実施する場合とを分け、前者の場合は、1回の検出操作で試料Sの分析に必要なX線情報を取得するために、X線検出領域Aに対する最大測定枠Hmaxの大きさを検討したり、測定面Hpに対するX線検出領域Aの位置を検討する必要がある。
また、後者の場合は、測定面Hpに対してX線検出領域Aをどのように配置し、何回の検出操作で分析に必要なX線情報を取得するのか検討する必要がある。
【0048】
次に、本実施形態に係るX線分析補助装置について詳細に説明する。
図3は、X線分析補助装置の概略構造を示すブロック図である。
X線分析補助装置は、中央処理装置20と、表示装置21と、入力・操作装置24と、記憶装置25と、出力装置26を含んでいる。
中央処理装置20(CPU)は、例えばパーソナルコンピュータで構成され、あらかじめインストールされたX線分析補助プログラムに従い動作し、必要な演算処理を実行するとともに、周辺機器を制御する。
表示装置21は、液晶ディスプレイ等で構成され、表示画面22に測定条件の設定に必要な情報を表示し、オペレータが視覚的にその情報を認識して利用できるようにするための周辺機器である。
入力・操作装置24は、マウスやキーボード等で構成され、オペレータが測定条件を設定するに際し、各種設定値を入力したり、表示装置21の表示画面22に表示された情報を操作したりするための周辺機器である。なお、表示装置21の表示画面22に、タッチ操作でデータを入力することができるタッチディスプレイを採用するときは、この表示画面22が入力・操作装置24を兼ねる。
記憶装置25は、ハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)等で構成され、X線分析補助プログラムやX線小角散乱測定装置により検出したX線情報を含む測定データや分析データを保存しておくための周辺機器である。
出力装置26は、プリンタ等で構成され、表示画面22のプリントスクリーンを印刷したり、各種設定値等を印刷したりしておくための周辺機器である。
【0049】
図4は、X線分析補助装置における表示装置21の表示画面22に表示される基本情報を示す図である。オペレータは、これらの表示画面22に表示された情報を視覚的に確認することで、それらの情報を参考にして測定条件を適切に設定していくことが可能となる。
【0050】
X線分析補助装置を起動すると、表示装置21の表示画面22に、図4に示すような情報が表示される。具体的には、設定項目と、表示項目と、操作項目とが表示画面22上に表示される。
【0051】
設定項目には、試料Sと2次元検出器2との間の距離L(以下、単に「距離L」と略すこともある)と、試料Sで散乱又は回折するX線の検出最大範囲Xmaxと、試料Sで散乱又は回折するX線の検出最小範囲Xminとが含まれる。これらの設定項目のうち、距離Lか、又は検出最大範囲Xmax及び検出最小範囲Xminのいずれか一方をオペレータが入力すれば、他方の設定項目は中央処理装置20が算出して最適な値に自動的に設定され、表示画面22の該当部分に表示される。
【0052】
すなわち、図2Aに示したように、距離Lが離れたL=L1の位置では、X線を測定面Hp上で測定できる角度範囲Xmax−1が狭く、この角度範囲Xmax−1を限度として検出最大範囲Xmaxを設定することができる。一方、距離Lが近づいたL=L3の位置では、X線を測定面Hp上で測定できる角度範囲Xmax−3が広く、この角度範囲Xmax−3を限度として検出最大範囲Xmaxを設定することができる。距離Lか検出最大範囲Xmaxのいずれか一方をオペレータが入力すれば、他方の設定項目はこれらの関係に基づいて中央処理装置20が算出して最適な値に自動的に設定される。
【0053】
また、オペレータにより検出最大範囲Xmaxとともに検出最小範囲Xminが設定されたときは、中央処理装置20は、検出最大範囲Xmaxに基づき自動設定した距離Lにおける2次元検出器2の角度分解能を求め、検出最小範囲XminのX線を検出できる角度分解能であるか否かを判別する。そして、検出最小範囲XminのX線を検出できないと判定したときは、距離Lを自動的に修正して、検出最小範囲XminのX線を検出できる値まで角度分解能を高める。このように自動修正された距離Lは、表示画面22に表示される。
【0054】
なお、表示画面22には、オペレータが希望する角度分解能を大まかに指定する項目「角度分解能」を含めることもできる。この角度分解能の項目で、角度分解能が「高」に指定されたときは、中央処理装置20は、調整可能な範囲で距離Lを長く設定する。一方、角度分解能が「低」に指定されたときは、中央処理装置20は、調整可能な範囲で距離Lを短く設定する。距離Lが短く設定されれば、検出最大範囲XmaxのX線が測定面Hpに入射する領域(最大測定枠Hmax内の領域)が相対的に小さくなるため、2次元検出器2のX線検出領域Aとの面積差が小さくなり、少ない測定回数で最大測定枠Hmax内の全領域を測定することが可能となる。
【0055】
上述したとおり、中央処理装置20は、オペレータが入力した一方の設定項目の値に基づいて、他方の設定項目を自動的に設定する自動設定手段を構成している。
また、表示装置21とこの表示装置21を制御する中央処理装置20は、各種の情報を表示画面22に表示するとともに、その表示情報を変更する機能を含む表示手段を構成している。具体的には、表示装置21及び中央処理装置20は、表示手段として次のような機能を有している。なお、これらの機能の詳細は後述する。
(1)距離L及び検出最大範囲Xmaxに基づいて、最大測定枠Hmaxを表示画面22に表示し、かつX線検出領域Aを表示画面22に表示する(図4参照)。
(2)1つの升目がX線検出領域Aと同じ寸法形状をしたグリッドを表示画面22に表示する(図4参照)。
(3)X線検出領域Aを表示画面22内で移動させる(図5参照)。
(4)複数個のX線検出領域Aを表示画面22に表示する(図6参照)。
(5)任意の個数のX線検出領域Aを表示画面22の任意の位置に表示する(図7参照)。
(6)表示画面22に表示された最大測定枠Hmaxの大きさを変更する(図8参照)。
(7)表示画面22に表示されたX線検出領域Aの外縁に合わせて最大測定枠Hmaxの大きさを変更する(図9参照)。
(8)表示画面22に表示された最大測定枠Hmax内の測定領域を分割してその一部を表示する(図10参照)。
(9)自動設定手段としての中央処理装置20により自動的に設定されたX線検出領域Aの個数と配置を表示画面22に表示する(図11参照)。
(10)表示画面22の任意の位置に任意の大きさで任意の形状をした指定測定範囲Hを表示する(図14参照)。
(11)データ読込手段により読み込まれた測定データに含まれるX線情報を表示画面22に表示する(図16参照)。
【0056】
図3及び図4に戻り、表示装置21は、中央処理装置20に制御されて、距離L及び検出最大範囲Xmaxに基づき、最大測定枠Hmax、最小測定枠Hmin、X線検出領域A等を表示画面22に表示する。
ここで、最大測定枠Hmaxは、2次元検出器2の検出面を含む測定面Hpに対し、検出最大範囲XmaxのX線が入射する広角側の境界である。また、最小測定枠Hminは、2次元検出器2の検出面を含む測定面Hpに対し、検出最小範囲XminのX線が入射する低角側の境界である。そして、X線検出領域Aは、2次元検出器2の検出面がX線を検出可能な領域である。
【0057】
オペレータによる入力は、例えば、表示画面22の入力すべき項目の横に表示された入力ボックスに、マウスの操作をもって表示画面22上のカーソル23を当て、続いてマウスのクリック操作でその入力ボックスを選択状態とした後、キーボード等の入力・操作装置24で設定値を入力して行うことができる。また、表示画面22に表示されたいくつかの項目の横には、チェックボックスが配置してある。このチェックボックスは、マウスの操作をもって表示画面22上のカーソル23を当てて、マウスをクリック操作することで、該当項目を選択することができる。なお、これらは入力操作の一例を示したに過ぎず、表示画面22上の表示内容や、入力・操作装置24の種類に応じて適宜の操作をもって設定値の入力や項目の選択が行われることは勿論である。後述するマウスによるドラッグ操作についても同様である。
このように、マウスやキーボード等の入力・操作装置24が、距離L又は検出最大範囲Xmaxの一方を入力するための設定値入力手段を構成している。
【0058】
表示項目には、測定面Hpと、最大測定枠Hmaxと、最小測定枠Hminと、X線検出領域Aとが含まれる。
測定面Hpは、X線源3aから試料Sに入射され、X線の光軸(中心軸)に対して垂直に配置されるが、この測定面Hpを正面から見た状態で、表示画面22に表示される。すなわち、表示画面22上の測定面Hpは、図2A図2Bに示した測定面Hpに対応している。
【0059】
最大測定枠Hmaxは、上記のように設定された距離Lと検出最大範囲Xmaxとに基づいて中央処理装置20が大きさを算出し、測定面Hpを示す表示上に重ねて表示される。試料Sからは、検出対象となる散乱X線や回折X線等が、光軸Oを中心として放射状に散乱又は回折するので、この最大測定枠Hmaxは光軸Oを中心とする円形に表示される。
最小測定枠Hminは、上記のように設定された距離Lと検出最小範囲Xminとに基づいて中央処理装置20が大きさを算出し、測定面Hpを示す表示上に重ねて表示される。この最小測定枠Hminも光軸Oを中心とする円形に表示される。
【0060】
X線検出領域Aは、測定面Hpに入射したX線を2次元検出器2が検出できる範囲を示している。本実施形態に用いる2次元半導体検出器は、X線検出領域Aが矩形状となっている。
測定面Hpには、この矩形状をしたX線検出領域Aと同じ寸法形状のグリッド(ガイド升)Gを格子状に配列して表示できるようにしてある。グリッドGは、表示画面22に示された「グリッド表示」の項目のチェックボックスを選択することで測定面Hp上に表示され、一方、チェックボックスのチェックを外すことで非表示となる。このグリッドGは、後述するようにX線検出領域Aの配置を検討する際に役に立つ。
【0061】
オペレータは、最大測定枠Hmax及び最小測定枠HminやX線検出領域Aを表示画面22上で視覚的に確認しながら、距離Lや検出最大範囲Xmaxの設定の適否を検討することができるので、X線分析装置の操作経験が少ないオペレータであっても、短時間で適切な条件設定を実現することが可能となる。
【0062】
次に、操作項目には、検出操作回数を指定する項目「検出操作回数」と、測定範囲を変更する項目「測定範囲変更」と、X線検出領域Aの位置に連動して測定範囲を変更する項目「測定範囲連動」と、測定範囲を分割する項目「測定範囲分割」と、測定範囲を任意に指定する項目「測定範囲指定」とが含まれる。また、上述したグリッド表示の項目も操作項目に含まれる。この他にも、本実施形態に係るX線分析補助装置は、マウスによるドラッグ操作により、X線検出領域Aを測定面Hp上の任意の位置に移動させたり、最大測定枠Hmaxの大きさを変更させたり、任意の位置に任意の大きさで指定測定範囲Hを表示させたりできる機能を備えている。
【0063】
これらの操作項目を表示画面22に含む表示装置21と、表示画面22上でのドラッグ操作を実行するマウス等の入力・操作装置24とは、表示画面22に表示される内容を変更するための指示(電気信号)を出力する表示変更手段を構成している。中央処理装置20は、これらの操作項目や操作機器からの指示に従い表示装置21を制御して、表示画面22に表示される内容を変更する。
具体的には、表示装置21及び入力・操作装置24は、表示変更手段として次のような機能を有している。なお、これらの機能の詳細は後述する。
(a)表示画面22にグリッドを表示させる指示(電気信号)を中央処理装置20に出力する(図4参照)。
(b)表示画面22に表示されたX線検出領域Aを移動させる指示(電気信号)を中央処理装置20に出力する(図5参照)。
(c)表示画面22に複数個のX線検出領域Aを表示させる指示(電気信号)を中央処理装置20に出力する(図6参照)。
(d)任意の個数のX線検出領域Aを表示画面22の任意の位置に表示させる指示(電気信号)を中央処理装置20に出力する(図7参照)。
(e)表示画面22に表示された最大測定枠Hmaxの大きさを変更させる指示(電気信号)を中央処理装置20に出力する(図8参照)。
(f)表示画面22に表示されたX線検出領域Aの外縁に合わせて最大測定枠Hmaxの大きさを変更させる指示(電気信号)を中央処理装置20に出力する(図9参照)。
(g)表示画面22に表示された最大測定枠Hmax内の測定領域を分割してその一部を表示させる指示(電気信号)を中央処理装置20に出力する(図10参照)。
(h)表示画面22の任意の位置に任意の大きさで任意の形状をした指定測定範囲Hを表示させる指示(電気信号)を中央処理装置20に出力する(図14参照)。
【0064】
図5図16は表示画面の表示内容を変更するための操作を説明するための図である。
例えば、図5に示すように、表示画面22に表示されたX線検出領域Aは、測定面Hp内の任意の位置に移動させることができる。このX線検出領域Aの移動操作は、マウスを操作してX線検出領域Aにカーソル23を当て、続いてマウスをクリックしたままカーソル23を移動させる、いわゆるドラッグ操作をもって実行することができる。この操作により、中央処理装置20にX線検出領域Aを移動する旨の指示が出力され、中央処理装置20はその指示に従い表示装置21を制御して、表示画面22上に表示されたX線検出領域Aを移動させる。
このように、表示画面22上のX線検出領域Aを任意の位置へ移動させることで、オペレータは、例えば最大測定枠Hmax内の測定領域に対するX線検出領域Aの最適な位置を検討することができる。
なお、中央処理装置20は、表示画面22上に表示されたX線検出領域Aの位置に基づき、2次元検出器2をX−Z方向に移動させる移動ステージ11の移動位置(X−Z座標値)を算出する。
【0065】
また、図6に示すように、複数個のX線検出領域Aを表示画面22に表示することもできる。このように表示を変更するには、操作項目における検出操作回数を指定する項目「検出操作回数」の横に表示された入力ボックスに、マウスの操作をもって表示画面22上のカーソル23を当て、続いてマウスのクリック操作でその入力ボックスを選択状態とした後、キーボード等の入力・操作装置24で個数を示す数値(図では「3」)を入力すればよい。この操作により、中央処理装置20に指定した個数のX線検出領域Aを表示する旨の指示が出力され、中央処理装置20はその指示に従い表示装置21を制御して、表示画面22上に指定された個数のX線検出領域Aを表示させる。
2次元検出器2によるX線の検出は、表示画面22上に表示された各X線検出領域Aの位置でそれぞれ実行されることになる。そのため、図6では、検出操作回数を指定する項目「検出操作回数」としてある。勿論、当該操作項目は、X線検出領域Aの個数を指定する項目としてもよい。
上述したように、複数個のX線検出領域Aを表示画面22に表示することで、オペレータは、例えば、最大測定枠Hmax内の領域に対する最適なX線の検出領域を検討することができる。
【0066】
また、図7に示すように、任意の個数のX線検出領域Aを表示画面22の任意の位置に表示することもできる。このように表示を変更するには、まず図6を参照して上述した要領で、操作項目における検出操作回数を指定する項目「検出操作回数」の横に表示された入力ボックスに、X線検出領域Aを表示させる個数を入力して、必要個数のX線検出領域Aを表示画面22に表示する。次に、マウスによるドラッグ操作をもって、それぞれのX線検出領域Aを任意の位置へ移動させる。この操作により、中央処理装置20に指定した個数のX線検出領域Aを指定の位置へそれぞれ表示する旨の指示が出力され、中央処理装置20はその指示に従い表示装置21を制御して、表示画面22上の指定された位置へ、指定された個数のX線検出領域Aを表示させる。
このように、任意の個数のX線検出領域Aを表示画面22の任意の位置に表示することで、オペレータは、最大測定枠Hmax内に入射するX線を適切かつ効率的に2次元検出器2で検出できるよう測定条件を設定することが可能となる。
【0067】
また、図8に示すように、最大測定枠Hmaxの大きさを変更することもできる。このように表示を変更するには、まず操作項目における測定範囲の変更を指定する項目「測定範囲変更」の横に設けられたチェックボックスにチェックを入れる。次いで、マウスを操作して最大測定枠Hmaxを示す円にカーソル23を当て、続いてマウスをクリックしたままドラッグすることで、実行することができる。この操作により、中央処理装置20に最大測定枠Hmaxの大きさを変更する旨の指示が出力され、中央処理装置20はその指示に従い表示装置21を制御して、表示画面22上に表示された最大測定枠Hmaxの大きさを変更させる。
例えば、図8に示すように、最大測定枠HmaxをX線検出領域Aの外縁に合わせることで、2次元検出器2による1回の検出動作で、最大測定枠Hmax内の領域に入射する測定データとして必要なX線のほぼすべてを検出することが可能となる。
【0068】
ここで、中央処理装置20は、自動設定手段として、変更後の最大測定枠Hmaxに基づいて、距離L又は検出最大範囲Xmaxのいずれか一方を自動的に再設定する。表示画面22には設定値を固定しておきたい項目を選択するための項目「固定項目」が、設定項目に含めて表示してあり、この固定項目に示されたXmaxとLの横にあるいずれかのチェックボックスにチェックを入れることで、当該設定項目の設定値が固定され、他方の設定値が最大測定枠Hmaxに基づいて再設定される。
【0069】
また、図9に示すように、X線検出領域Aの外縁に合わせて最大測定枠Hmaxを自動的に変更させることもできる。このように表示を変更するには、まず操作項目におけるX線検出領域Aの位置に連動して測定範囲を変更する項目「測定範囲連動」の横に設けられたチェックボックスにチェックを入れる。この操作により、中央処理装置20にX線検出領域Aの外縁に合わせて最大測定枠Hmaxを自動的に変更させる旨の指示が出力され、中央処理装置20はその指示に従い表示装置21を制御して、表示画面22上に表示された最大測定枠HmaxをX線検出領域Aの外縁に合わせて変更させる。
このように、X線検出領域Aの外縁に合わせて最大測定枠Hmaxを自動的に変更させることで、オペレータは、例えば、X線検出領域Aに対する最適な最大測定枠Hmaxの大きさを確定することができる。
【0070】
このときも、中央処理装置20は、自動設定手段として、変更後の最大測定枠Hmaxに基づいて、距離L又は検出最大範囲Xmaxのいずれか一方を自動的に再設定する。再設定される項目は、表示画面22上の固定項目に設けられたチェックボックスにチェックを入れなかった項目である。
【0071】
また、図10に示すように、最大測定枠Hmax内の測定領域を分割してその一部を表示させることもできる。このように表示を変更するには、まず操作項目における測定範囲を分割する項目「測定範囲分割」に設けられたチェックボックスにチェックを入れ、さらに分割する大きさを示すチェックボックスを選択して、いずれかにチェックを入れる。また、光軸Oを中心とする対称位置に最大測定枠Hmax内の測定領域の分割片を表示したいときは、「対称」のチェックボックスにもチェックを入れる。この操作により、中央処理装置20に最大測定枠Hmax内の測定領域を分割してその一部を表示させる旨の指示が出力され、中央処理装置20はその指示に従い表示装置21を制御して、表示画面22上に表示された最大測定枠Hmax内の測定領域を分割してその一部を表示させる。例えば、図10では、1/4の大きさでかつ対称な位置に、最大測定枠Hmax内の測定領域の分割片が表示されている。
【0072】
表示画面22上に表示された最大測定枠Hmax内の測定領域の分割片は、カーソル23を当て、マウスのドラッグ操作をもって光軸Oを中心に回転させることができ、任意の角度位置へ配置することができる。
【0073】
表示画面22上に最大測定枠Hmax内の測定領域の分割片が表示されると、図11に示すように、中央処理装置20は自動設定手段として、その表示された最大測定枠Hmax内の測定領域の分割片を網羅するように、X線検出領域Aの個数と配置を自動的に設定する。そして、設定したX線検出領域Aを表示画面22に表示する。これにより、オペレータは、これらの最大測定枠Hmax内の測定領域の分割片やX線検出領域Aを視覚的に確認しながら、例えば、試料SからのX線を適切かつ効率的に2次元検出器2で検出できるよう測定条件を設定することが可能となる。
【0074】
また、本実施形態では、測定範囲を分割する項目「測定範囲分割」に「任意」の大きさに分割することを選択するチェックボックスが設けてある。図12に示すように、まず基準となる大きさのチェックボックスにチェックを入れるとともに、「任意」を選択するチェックボックスにチェックを入れる。そうすることで、表示画面22上に、選択した大きさの最大測定枠Hmax内の測定領域に分割片が表示される。この分割片にカーソル23を当て、マウスのドラッグ操作をもって当該分割片の大きさを任意に変更させることができる。
【0075】
図13A図13Eは、試料Sで散乱又は回折するX線に対し、最大測定枠Hmax内の測定領域を分割して、その分割範囲に入るX線だけを検出対象とした各種例を示している。すなわち、図13Aは最大測定枠Hmax内の測定領域を1/2に分割し、その分割片内に入射するX線を検出対象としている。図13Bは最大測定枠Hmax内の測定領域を1/4に分割し、その分割片内に入射するX線を検出対象としている。図13Cは最大測定枠Hmax内の測定領域を1/8に分割し、その分割片内に入射するX線を検出対象としている。図13Dは最大測定枠Hmax内の測定領域を任意の大きさに分割し、その分割片内に入射するX線を検出対象としている。図14Eは最大測定枠Hmax内の測定領域を1/4に分割し、かつ対称位置にそれぞれ分割片を配置し、それらの分割片内に入射するX線を検出対象としている。
【0076】
例えば、等方性を有する試料Sにあっては、光軸Oを中心とする対称な散乱が生じるため、図13A図13Cのような一部だけを測定範囲とし、その対称位置にも散乱X線が同様に入射していると想定して、測定時間を短縮することができる。
【0077】
また、図14に示すように、表示画面22の任意の位置に任意の大きさで任意の形状をした指定測定範囲Hを表示することもできる。このように表示を変更するには、まず操作項目における測定範囲を任意に指定する項目「測定範囲指定」の横に設けられたチェックボックスにチェックを入れる。次に、測定面Hp内の任意の位置にカーソル23を配置し、当該位置を起点としてマウスによるドラッグ操作を行うことで、任意の大きさで測定範囲を指定する。このようにして表示画面22上で指定した測定範囲を、指定測定範囲Hと呼ぶことにする。この操作により、表示画面22の任意の位置に任意の大きさで任意の形状をした指定測定範囲Hを表示する旨の指示が中央処理装置20に出力され、中央処理装置20はその指示に従い表示装置21を制御して、表示画面22上の指定された位置へ、指定された大きさで指定された形状の指定測定範囲Hを表示させる。
【0078】
表示画面22上に指定測定範囲Hが表示されると、図15に示すように、中央処理装置20は自動設定手段として、その指定測定範囲Hを網羅する個数と配置で、X線検出領域Aを自動的に設定する。そして、設定したX線検出領域Aを表示画面22に表示する。これにより、オペレータは、これらの指定測定範囲HやX線検出領域Aを視覚的に確認しながら、例えば、試料Sで散乱又は回折するX線を適切かつ効率的に2次元検出器2で検出できるよう測定条件を設定することが可能となる。
【0079】
また、図16に示すように、2次元検出器2により検出されたX線情報を含む既存の測定データを読み込み、その測定データに含まれるX線情報を表示画面22に表示することもできる。
表示画面22には、既存の測定データを読み込む項目「測定データの読込」が設けられている。この「測定データの読込」項目は、ファイル入力欄22aと読込ボタン22bを含んでいる。このファイル入力欄22aに、測定データが記録されたファイルの保存先を指定し、読込ボタン22bをマウスでクリックする。この操作により、中央処理装置20に指定したファイルに記録された測定データを読み込む旨の指示が出力される。中央処理装置20は、その指示に従い、指定した保存先から測定データを記録したファイルを読み込み、当該測定データに含まれるX線情報22cを表示画面22に表示する。
「測定データの読込」項目を表示画面22に含む表示装置21と、この「測定データの読込」項目を操作するマウスやキーボード等の入力・操作装置24と、これらを制御する中央処理装置20は、X線情報を含む既存の測定データを読み込むデータ読込手段を構成している。
このように、既存の測定データを読み込み、その測定データに含まれるX線情報22cを表示画面22に表示することで、オペレータは、表示画面22に表示されたX線情報22cを参照しながら、視覚的に測定条件の設定を検討することが可能となる。X線情報22cとしては、試料Sで散乱又は回折するX線のピークを記録した画像情報等がある。
【0080】
さらに、既存の測定データを読み込む構成の実施形態から、次のような応用例を展開することもできる。
すなわち、図17に示すように、測定データを記録したファイルを読み込み、当該測定データに含まれるX線情報22cを表示画面22に表示する。このX線情報22cを表示画面22に表示するための操作は、図16を参照して上述したとおりである。
このとき、中央処理装置20は、読み込んだ測定データに含まれる当該測定データを取得した際の測定条件(距離L、検出最大範囲Xmax、検出最小範囲Xmin)を、表示画面22の該当する各設定項目に表示する。
【0081】
図17に示す応用例では、表示画面22の設定項目に「検出領域指定」の項目が追加してある。この「検出領域指定」項目は、オペレータがX線を検出したい検出領域を指定するための項目である。同図に示す応用例では、「検出領域指定」項目に、同項目による設定を選択するためのチェックボックスと、X線を検出したい領域の大きさを数値で指定するための入力ボックスとが設けてある。
【0082】
「検出領域指定」項目の入力ボックスには、試料Sからの散乱X線又は回折X線が広がる光軸Oを中心とした径方向rの角度範囲と、当該角度範囲に垂直な幅方向βの範囲とを数値で入力する。具体的には、「検出領域指定」項目のチェックボックスにチェックを入れるとともに、入力ボックスに、キーボード等の入力・操作装置24を利用して、径方向rと幅方向βの各範囲を数値入力する。径方向rの角度範囲は、例えば、ベクトルQや2θ角度の数値で入力するように設定すればよい。また、幅方向βの範囲は、光軸Oを中心とした円弧状の角度範囲で指定するが、図17等の表示画面22では、これを直線で近似して表示してある。ただし、範囲指定の方法はこれに限定されず、任意に設計することができることは勿論である。
【0083】
さらに、マウス等の入力・操作装置24を利用して表示画面22上のカーソル23を操作し、表示画面22に表示されているX線情報22cに対して、X線を検出したい領域の中心点にカーソル23を当て、マウスのクリック操作等によりその位置を指定する。
これらの操作を受けて、中央処理装置20は、カーソル23で指定された位置を中心として、チェックボックスに入力された数値で指定された範囲の指定検出領域Adを、表示画面22に表示する(図17参照)。
例えば、X線情報22cに表された散乱X線又は回折X線のピーク位置Pの一つに着目して、当該ピーク位置Pを含む領域を指定検出領域Adに指定する等の操作を容易に行うことができる。
【0084】
表示画面22上に指定検出領域Adが表示されると、図18に示すように、中央処理装置20は、その指定検出領域Adを囲むようにX線検出領域Aを表示画面22上に配置する。ここで、X線検出領域Aの大きさは測定面Hpで一定である。この応用例では、かかるX線検出領域Aに対して指定検出領域Adを拡大又は縮小し、指定検出領域AdがX線検出領域Aに接する状態で当該X線検出領域A内に収まるように調整される。
【0085】
このとき、測定面Hp上での指定検出領域Adの拡大又は縮小に伴い、試料Sと2次元検出器2との間の距離Lも変更される。すなわち、距離Lが短くなれば検出最大範囲Xmaxが大きくなり(例えば、図2AのL=L3とXmax−3)、それに伴い測定面Hp上で指定検出領域Adは縮小して表示される。一方、距離Lが長くなれば検出最大範囲Xmaxが小さくなり(例えば、図2AのL=L1とXmax−1)、それに伴い測定面Hp上で指定検出領域Adは拡大して表示される。
このように、指定検出領域Adの大きさと距離Lの値との間には相関関係があり、ゆえに本応用例では、表示画面22に表示される指定検出領域Adは、「距離Lに相当する値」となる。そして、指定検出領域Adを指定するために用いた「検出領域指定」項目を表示画面22に含む表示装置21及びマウス等の入力・操作装置24は、距離Lに相当する値を入力するための設定値入力手段を構成する。
【0086】
指定検出領域Adの大きさをX線検出領域Aに合わせて変更する動作に伴い、距離Lが設定され、さらに距離Lに対応して検出最大範囲Xmaxと検出最小範囲Xminも設定される。これらの距離L、検出最大範囲Xmax及び検出最小範囲Xminは、表示画面22に表示される。
【0087】
なお、図18に示す応用例では距離Lの変化に合わせて、表示画面22に表示したX線情報22cの画像も光軸Oを中心に拡大又は縮小させる構成としてあるが、指定検出領域Adを表示画面22上で拡大又は縮小するタイミングに合わせて、X線情報22cの画像を表示画面22から消すようにしてもよい。
【0088】
オペレータは、指定検出領域AdやX線検出領域Aを視覚的に確認しながら、例えば、試料Sで散乱又は回折するX線を適切かつ効率的に2次元検出器2で検出できるよう測定条件(距離Lや検出最大範囲Xmax等)を設定することが可能となる。
【0089】
また、図19に示すように、表示画面22の設定項目に表示された距離L、検出最大範囲Xmax及び検出最小範囲Xmin等の値がオペレータによって変更され、それに伴い指定検出領域Adが拡大してX線検出領域Aからはみ出てしまったときは、中央処理装置20が、その指定検出領域Adを網羅するように、X線検出領域Aの個数と配置を自動的に設定する。そして、設定したX線検出領域Aを表示画面22に表示するように構成することもできる。
【0090】
また、図20に示すように、マウス等の入力・操作装置24を使って表示画面22上のカーソル23を操作し、表示画面22に表示されているX線情報22cに対して、X線を検出したい領域をカーソル23の移動によって範囲指定することもできる。このように構成したときは、マウス等の入力・操作装置24が、距離Lに相当する値(指定検出領域Adの大きさと位置)を入力する設定値入力手段を構成することになる。
【0091】
また、図17に示したように指定検出領域Adを示す四角形が、表示画面22上で水平及び垂直方向から傾いて配置されているとき、この指定検出領域Adを光軸Oを中心に回転させて、水平配置させる機能を付加することもできる。
例えば、図21に示すように、表示画面22の操作項目に指定検出領域Adを水平配置するための項目「指定検出領域水平配置」を設け、この項目のチェックボックスにチェックを入れたとき、中央処理装置20が水平軸に対する指定検出領域Adの傾き角を算出し、その算出結果に基づいて光軸Oを中心に指定検出領域Adを回転させ、当該指定検出領域Adを水平位置に配置する。
このように指定検出領域Adを回転させた角度に対応して、X線分析装置に装着した試料を面内回転させることで、当該試料から散乱又は回折するX線の方向を、上記指定検出領域Adを水平配置した表示画面22の状態に合致させることが可能となる。
【0092】
上述したような操作と検討をもって決定した試料Sと2次元検出器2との間の距離L、試料Sで散乱又は回折するX線の検出最大範囲Xmax、試料Sで散乱又は回折するX線の検出最小範囲Xminの各設定値や、X線検出領域Aの個数(検出操作の回数)と位置(移動ステージ11の移動位置:X−Z座標値)等の情報は、操作終了後に、例えば、中央処理装置20に接続されたプリンタ等の出力装置26を用いて、図22に示すように用紙に印刷し、X線小角散乱測定装置(X線分析装置)における分析条件の設定の際に参照することができる。また、それらの情報は、操作終了後に、表示画面22に表示することもできる。さらにまた、それらの情報は、操作終了後に、設定ファイルに記録して記憶装置に保存することもできる。
【0093】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論である。すなわち、上述した実施形態は本発明を具体化した一構成例に過ぎない。したがって、例えば、表示装置21の表示画面22のレイアウトや表示項目、さらには表示変更の内容は、図4図21図13A図13Eを除く)に示したものに限定されず、適宜に設計変更することができる。
【0094】
また、本発明のX線分析補助装置は、X線小角散乱測定装置に適用が限定されるものではなく、試料Sと2次元検出器2との間の距離Lと、試料Sで散乱又は回折するX線の検出最大範囲Xmaxとを測定条件の設定項目に含む各種のX線分析装置(例えば、粉末X線回折装置)を適用対象とすることができる。
【0095】
さらに、本発明のX線分析補助装置をX線分析装置に組み込んで、測定条件を設定する際の補助機能を備えたX線分析装置を構成することもできる。その場合は、X線分析補助装置により設定した設定項目の値をX線分析装置の制御部に出力してそのまま利用してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22