(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、無負荷運転時において吐出口からの圧縮空気を吸入弁に導く無負荷運転時吐出経路の先端部において、戻し通路と逃がし通路とを形成することを開示する。戻し通路が吸入弁の下流側に連通され、逃がし通路が吸入弁の上流側に連通されている。そして、戻し通路の途中には、圧縮空気の流れを絞る絞り部が設けられている。
【0006】
特許文献1の構成では、無負荷運転時に吐出口から吐出された圧縮空気が、無負荷運転時吐出経路に導かれ、その一部が戻し通路を通じてロータ室に戻され、残りの一部が逃がし通路を通して大気中に開放される。
【0007】
特許文献1に開示された技術では、絞り部が戻し通路に設けられ、該絞り部によって、戻し流路を通過する圧縮空気の流れが規制されているため、無負荷運転時において、ロータ室に戻る圧縮空気の流量が少なくなる。他方、逃がし通路からは圧縮空気が比較的多くの流量で流出する。その結果、無負荷運転時においては、圧縮機本体での圧縮動作により、ロータ室内の圧力が望まれない負圧に低下することがある。すなわち、特許文献1の技術では、逃がし通路内の圧力が大気圧まで低下してしまう。そのため、大気圧の空気に対して絞り部で規制された少量の空気をロータ室内に供給する実質的に無負荷運転状態になる。空気の流入により、真空状態になることは緩和される。しかしながら、絞り部で流量が規制されているため、ロータ室内の圧力が、吸入弁を開いたときに大きな破裂音が生じるような望まれない負圧になるのを確実に回避することはできない。
【0008】
したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、液冷式圧縮機において、吸込調整弁が閉止しているときにおけるガス圧縮空間内の圧力が、望まれない負圧になるのを確実に回避でき、吸込調整弁を開いたときの騒音を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術的課題を解決するために、本発明によれば、以下の液冷式圧縮機が提供される。
【0012】
本発明の液冷式圧縮機は、吸込流路及び吐出流路の間に配設される圧縮機本体と、前記吸込流路に設けられ被圧縮ガスが導入される吸込調整弁と、前記吐出流路から分岐され、下流側において前記吸込調整弁の2次側に位置する前記吸込流路に接続される戻し流路と、前記戻し流路に設けられ、前記吸込調整弁の閉止に伴い開かれる開閉弁と、前記開閉弁よりも下流側に位置する前記戻し流路において分岐される大気開放流路と、前記大気開放流路に設けられた絞り部と、を備え、前記絞り部は、前記吸込調整弁が閉止してプリロード運転が行われているときにおいて、前記大気開放流路の前記戻し流路側の圧力を大気圧よりも高い所定の正圧に保つとともに、前記吸込流路の本体吸込側において平衡状態が形成されたときの本体側吸込圧を大気圧以下であって前記吸込調整弁が開いたときに生じる前記吸込調整弁からの破裂音を回避する下限負圧を上回る圧力になるように設定された流路を備えており、前記吐出流路の本体吐出側には液分離回収器が設けられ、前記液分離回収器よりも下流側に位置する前記吐出流路が、前記戻し流
路に分岐されており
、弁制御流路
が、前記開閉弁よりも上流側に位置する前記戻し流路と分岐されているとともに、当該開閉弁よりも上流側に位置する前記戻し流路と分岐した下流側において前記吸込調整弁の開閉を制御するための開弁流路および閉弁流路に通じる三方弁に接続されていることを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、戻し流路から分岐される大気開放流路に設けられる絞り部が、吸込調整弁が閉止しているときにおける大気開放流路の戻し流路側の圧力を大気圧よりも高い所定の正圧に保つ流路を備えている。したがって、吸込調整弁を開いたときに大きな破裂音が生じるような負圧(望まれない負圧)にならないよう予め絞り部で調整しておくことができる。
【0015】
当該構造によれば、液分離回収器で液の分離された圧縮ガス(例えば、空気)が、戻し流路又は弁制御流路を介して、圧縮機本体又は吸込調整弁に供給される。したがって、圧縮ガス(空気)を供給する流路をそれぞれ別途に設ける場合よりも構成の簡略化がなされる。
【0017】
吸込流路及び吐出流路の間に配設される圧縮機本体と、前記吸込流路に設けられ被圧縮ガスが導入される吸込調整弁と、前記吐出流路から分岐され、下流側において前記吸込調整弁の2次側に位置する前記吸込流路に接続される戻し流路と、前記戻し流路に設けられる開閉弁と、前記開閉弁よりも下流側に位置する前記戻し流路において分岐される大気開放流路と、前記大気開放流路に設けられた絞り部と、を備えており、前記吐出流路の本体吐出側には液分離回収器が設けられ、前記液分離回収器よりも下流側に位置する前記吐出流路が、前記戻し流
路に分岐されており
、弁制御流路
が、前記開閉弁よりも上流側に位置する前記戻し流路と分岐されているとともに、当該開閉弁よりも上流側に位置する前記戻し流路と分岐した下流側において前記吸込調整弁の開閉を制御するための開弁流路および閉弁流路に通じる三方弁に接続されている、液冷式圧縮機の運転方法であって、前記吸込調整弁が閉じられるとともに前記開閉弁が開かれて、前記吸込調整弁が閉止してプリロード運転が行われているときにおいて、前記大気開放流路の前記戻し流路側の圧力を前記絞り部で大気圧よりも高い所定の正圧に保ちながら、且つ、前記吸込流路の本体吸込側において平衡状態が形成されたときの本体側吸込圧を前記絞り部で大気圧以下であって前記吸込調整弁が開いたときに生じる前記吸込調整弁からの破裂音を回避する下限負圧を上回る圧力にしながら、前記吐出流路を流れる圧縮ガスが、前記戻し流路を介して前記吸込流路に戻されるように運転される。当該方法によれば、吸込調整弁を閉じた状態から開いたときの騒音が問題となるような負圧(望まれない負圧)にならないように運転することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、吸込調整弁が閉止しているときにおける本体側吸込圧が望まれない負圧になることで引き起こされる、吸込調整弁を開いたときの騒音を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る液冷式圧縮機1について、冷却液として油を用いる油冷式スクリュ圧縮機1を用いた例で説明するが、以下、油冷式スクリュ圧縮機1を単に圧縮機1という。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る圧縮機1及びその運転方法について、
図1乃至5を参照しながら説明する。まず、
図1を参照しながら圧縮機1の概略構成を説明する。
【0021】
圧縮機1は、圧縮機本体11と、油分離回収器13と、吸気調整弁20と、保圧部15と、開閉弁16とを備えている。圧縮機本体11は、互いに噛み合う雌雄一対のスクリュロータにより、圧縮対象のガスすなわち被圧縮ガス(例えば、空気)を圧縮する。圧縮機1は、互いに噛み合う雌雄一対のスクリュロータが、ロータケーシングに形成されたガス圧縮空間(ロータ室)19内に収容されている。
【0022】
圧縮機本体11は、吸込流路10及び吐出流路12の間に配設されている。圧縮機本体11のロータ室19の吸込側に設けられた吸込口19Aには、吸込流路10が接続されている。吸込流路10は、図示しない吸込フィルタと吸込口19Aとを連通する流路であり、吸込流路10の途中には吸込調整弁20が設けられている。ロータ室19の吐出側に設けられた吐出口19Bには、吐出流路12が接続されている。吐出流路12には、液分離回収器(例えば、油分離回収器)13が配置されている。圧縮機1の場合、圧縮ガスが、冷却液を伴って吐出され、液分離回収器13によって圧縮ガス及び冷却液に分離される。冷却液の除去された圧縮ガスは、液分離回収器13の上部に接続された吐出流路12の部分から吐出され、保圧部15を通った後、需要設備に供給される。液分離回収器13で分離された冷却液は、液分離回収器13の下部に形成される液溜まり部に一旦溜められる。
【0023】
吸気調整弁20は、ボディ21と、弁体24と、ピストンロッドを介して弁体24に結合されたピストン28と、バネ27とを有する。ボディ21の内部には、流路空間22とピストン空間25とが設けられている。ピストン空間25には、加圧室25Aとバネ室25Bとが形成されている。流路空間22は、吸込流路10の一部分を構成し、弁体24によって開閉される。ピストン空間25は、隔壁29によって流路空間22から仕切られて、ピストン28及びバネ27を収容する。加圧室25Aは、ピストン28を押し動かす圧力を加えるための空間である。バネ室25Bは、ピストン28を加圧室25A側へ付勢するバネ27を収容するとともに、隔壁29に設けられた貫通孔とピストンロッドとの間の隙間を介して流路空間22と連通している。
【0024】
バネ27が、ピストン28と隔壁29との間に設けられ、当該バネ27によって、ピストン28が隔壁29から離れるように、すなわち弁体24が吸込流路10を閉じるように付勢されている。したがって、バネ27の付勢力よりも大きな加圧力が、ピストン28の加圧室25A側の受圧面に印加されない場合、吸気調整弁20が閉状態となる。これにより、起動開始時(液分離回収器13内が大気圧の状態のとき)の実質的な無負荷運転を可能にする。これに対して、バネ27の付勢力よりも大きな加圧力が、ピストン28の加圧室25A側の受圧面に印加される場合、
図1に示すように、吸気調整弁20が開状態となり、負荷運転を可能にする。
【0025】
吐出流路12から分岐された戻し流路35は、その途中で弁制御流路31にさらに分岐される。弁制御流路31は、吸込調整弁20の開閉を制御するための流路であり、三方弁18によって、加圧室25Aに通じる開弁流路33と、バネ室25Bに通じる閉弁流路32とに分岐される。図示しない制御部によって、三方弁18の切換制御が行われる。開弁流路33が戻し流路35と連通するように三方弁18を制御すると、開弁流路33からの圧縮ガスの圧力がピストン28に印加される。その結果、加圧室25Aの体積が大きくなるように弁体24が押し動かされ、吸気調整弁20が開状態になる。閉弁流路32が開弁流路33と連通するように三方弁18を制御すると、開弁流路33からの圧縮ガスがバネ室25Bと流路空間22とに流れる。その結果、バネ27の付勢力がピストン28に印加されるので、弁体24が押し上げられて、吸気調整弁20が閉状態になる。
【0026】
吐出流路12から分岐された戻し流路35は、開放分岐ポイント37において大気開放流路36にさらに分岐される。弁分岐ポイント34と開放分岐ポイント37との間に延在する戻し流路35には、開閉弁16が配設されている。戻し流路35は、吸気調整弁20の2次側に位置する吸込流路10に接続されている。本第1実施形態においては、戻し流路35は、吸気調整弁20と圧縮機本体11との間に位置する吸込合流ポイント38において、吸込流路10に接続されている。開閉弁16が開状態になると、吐出流路12から分岐された戻し流路35が吸込流路10と連通する。大気と連通する大気開放流路36には、大気開放流路36を流れる圧縮ガスの流量を規制する絞り部17が設けられている。絞り部17は、大気開放流路36を流れる圧縮ガスの流量が、開放分岐ポイント37から吸込合流ポイント38までの戻し流路35を流れる圧縮ガスの流量よりも少なくなるように規制する。絞り部17は、例えば、オリフィスであり、可変絞り弁又は流量調整弁であってもよい。絞り部17として可変絞り弁又は流量調整弁を用いた場合は、装置毎の微調整を容易に行うことができる。
【0027】
次に、
図2乃至5を参照しながら、圧縮機1の運転方法を説明する。
【0028】
図2は、圧縮機1での吸込調整弁20の開度の変化を説明する図である。
図3は本体側吸込圧P
1の変化を説明する図である。
図4は、液分離回収器13の内圧P
2の変化を説明する図である。
図5は、保圧部15の下流側の流路の内圧である圧縮機1の供給圧P
3の変化を説明する図である。
【0029】
まず、無負荷運転状態で圧縮機本体11を起動する。そのあと、
図2に示すように、吸込調整弁20を開けることで、T1の間、負荷運転が行われる。負荷運転の間、吸込流路10の本体吸込側での圧力(以下、本体側吸込圧P
1という)は、大気圧(
図3においては、P
1=0MPaG)である。負荷運転により圧縮ガスが液分離回収器13内に蓄積されるため、
図4に示すように、液分離回収器13の内圧P
2が、経時的に上昇する。圧縮ガスは、所定圧を超えるまで保圧部15で保圧され、その後、需要設備に供給される。
【0030】
需要設備に供給される圧縮ガスの消費量が減少して、
図5に示すように、圧縮ガスの供給圧P
3が上昇してアンロード運転開始圧P
Uになると、
図2に示すように吸込調整弁20が閉じられる(T2)。このときの本体側吸込圧P
1は、大気圧(
図3においては、P
1=0MPaG)である。そして、吸込調整弁20の閉動作と略同時に開閉弁16が開かれる。アンロード運転開始圧P
Uとなってから、吐出流路12からの圧縮ガスに対する圧縮機本体11の圧縮動作が継続して行われている。そのため、開閉弁16の開動作で、戻し流路35からの大気圧よりも高い圧力のガスが、圧縮される。すなわち、吐出流路12からの大気圧よりも高圧の圧縮ガスが、戻し流路35を介して、圧縮機本体11によるガスの圧縮動作に供されるプリロード運転が行われている。
【0031】
圧縮機本体11において、プリロード運転時には、本体側吸込圧P
1は経時的に一旦低下する。しかしながら、本体側吸込圧P
1に対して、吐出流路12から供給される圧縮ガスによって大気圧よりも高い正圧が常に加算されるので、本体側吸込圧P
1の圧力低下幅は小さく制限される。すなわち、大気開放流路36においては、絞り部17の絞り率に応じた相対的に少量の圧縮ガスが絞り部17を介して大気に流出し、吸込流路10の本体吸込側においては、相対的に多量の圧縮ガスが流入する。ここで、絞り部17での絞り率を調節しておく(言い換えると、絞り部17の流路を設定しておく)ことにより、開放流路36内(言い換えると、絞り部17の上流側)の圧力が絞り部17の圧損と釣り合うように調節しておくことができる。このように、プリロード運転時における開放分岐ポイント37における圧力が、常に大気圧よりも高い所定の正圧となるように絞り部17の流路を設定しておくことができる。
【0032】
T2において或る時間が経過すると、吸込流路10の本体吸込側においては、大気開放流路36を含む戻し流路35から吸込流路10への流入量と、吸込流路10から圧縮機本体11への流出量とが釣り合うため、平衡状態が形成される。その結果、本体側吸込圧P
1が、或る一定の負圧になる。当該一定の負圧は、吐出流路12での圧縮ガスの正圧の分だけ正圧側にシフトされて、望まれない負圧を上回る値になる。すなわち、本体側吸込圧P
1が、
図3に示すように、望まれない負圧(≒−0.1MPaG)よりも正圧側にシフトし、吸込調整弁20を開いたときの大きな破裂音を回避することを可能にする下限負圧P
Bを上回っている。本体側吸込圧P
1が、望まれない負圧(≒−0.1MPaG)よりも、例えば、約0.025MPaGの大きさで正圧側にシフトしている。そのため、吸込調整弁20を開いたときの騒音を防止することができる。なお、圧縮機本体11のロータ室内の圧力も、吐出流路12からの圧縮ガスの正圧加算が無い場合と比べて、正圧側にシフトしている。そのため、圧縮機本体11が液圧縮して過負荷になることが回避される。
【0033】
図5に示すように、圧縮ガスの供給圧P
3が低下して負荷運転開始圧P
Lになると、
図2に示すように吸込調整弁20が開かれて、負荷運転に切り替えられる(T3)。負荷運転では、吸込流路10から大気が導入されて、本体側吸込圧P
1は、大気圧(
図3においては、P
1=0MPaG)になる。そして、吸込調整弁20の開動作と略同時に開閉弁16が閉じられる。負荷運転によって圧縮ガスが液分離回収器13内に蓄積され、
図4に示すように、液分離回収器13の内圧P
2が、上昇する。そして、圧縮ガスが、所定圧を超えるまで保圧部15で保圧され、その後、需要設備に供給される。
【0034】
上述したように、調節された絞り率を有する絞り部17を大気開放流路36に配設することにより、吸込調整弁20が閉止された状態におけるプリロード運転を行うことができる。プリロード運転時での吸込流路10の本体吸込側において、戻し流路35からのガスの流入量と、圧縮機本体11へのガスの流出量とが釣り合う。その結果、本体側吸込圧P
1が一定に保たれる。そして、プリロード運転時での本体側吸込圧P
1が、望まれない負圧を上回る下限負圧P
B以上になる。そのため、吸込調整弁20を開いたときの騒音を防止することができる。なお、プリロード運転時での圧縮機本体11のロータ室内の圧力も、吐出流路12からの圧縮ガスの正圧加算が無い場合と比べて、正圧側にシフトしている。そのため、プリロード運転時において、圧縮機本体11が液圧縮して過負荷になることが回避される。
【0035】
比較例に係る圧縮機1及びその本体側吸込圧P
1Cの変化を、
図6及び7を参照しながら説明する。
図6は、比較例に係る圧縮機1の本体側吸込圧P
1Cの変化を説明する図であり、
図7は、比較例に係る圧縮機1の概略構成を示す図である。
【0036】
図7に示す比較例に係る圧縮機1では、戻し流路35が大気開放流路36に分岐される開放分岐ポイント37と、戻し流路35が本体吸込側の吸込流路10に合流する吸込合流ポイント38との間に延在する戻し流路35において、絞り部17が配設されている。そして、大気開放流路36には絞り部17等の流量規制手段が何ら配設されておらず、それ以外の構成は、
図1に示した圧縮機1と同様である。したがって、
図7に示す比較例に係る圧縮機1は、絞り部17が戻し流路35に配設されるという観点から、特許文献1で説明した構成と実質的に対応している。
図1に示した本発明の圧縮機1と
図7に示した比較例の圧縮機1との相違点を中心に説明する。
【0037】
図7に示した比較例に係る圧縮機1では、吸込流路10の本体吸込側での圧力(以下、比較例の本体側吸込圧P
1Cという)が、
図6に示すような挙動になる。
【0038】
吸込調整弁20を閉じて無負荷運転に切り替えられると(T2)、比較例の本体側吸込圧P
1Cは、大気圧(
図6においては、P
1C=0MPaG)である。そして、吸込調整弁20の閉動作と略同時に開閉弁16が開かれる。吸込調整弁20が閉止された状態においても、圧縮機本体11のプリロード運転が継続して行われているため、開閉弁16の開動作で、戻し流路35からのガスが、圧縮される。
【0039】
戻し流路35に配設された絞り部17によって、大気開放流路36を含む戻し流路35を流れる圧縮ガスの流量が規制されるため、戻し流路35からの圧縮ガスの流入量が少なくなる。そのため、プリロード運転時での吸込流路10の本体吸込側において、圧縮機本体11へのガスの流出量に対する戻し流路35からのガスの流入量が少なくなる。これにより、比較例の本体側吸込圧P
1Cの負圧側への圧力低下幅が、大きくなる。また、大気開放流路36の大気の圧力と、吐出流路12からの圧縮ガスの一部の圧力とが絞り部17の上流側で釣り合い、絞り部17で圧力損失した圧縮ガスが圧縮機本体11によるガスの圧縮動作に供される。そのため、第1実施形態の本体側吸込圧P
1と比べて、本体側吸込圧P
1Cの負圧側への圧力低下幅が大きくなる。すなわち、T2において或る時間が経過すると、吸込流路10の本体吸込側においては、戻し流路35から吸込流路10への流入量と、吸込流路10から圧縮機本体11への流出量とが釣り合って、平衡状態が形成される。しかしながら、戻し流路35に絞り部17があるため、圧力損失が増え、吸込流路10への流入量よりも圧縮機本体11への流出量が多くなる。そのため、無負荷運転時での比較例の本体側吸込圧P
1Cが、プリロード運転時の第1実施形態の本体側吸込圧P
1と比べて、より真空側に近い或る一定の負圧(
図6においては、P
1C≒−0.1MPaG)になる。無負荷運転時での比較例の圧縮機本体11のロータ室内の圧力も、プリロード運転時の第1実施形態と比べて、より真空側に近い負圧になっているため、吸込調整弁20からの破裂音が生じてしまい、騒音を防止することができない。
【0040】
以上のように、
図7に示した比較例に係る圧縮機1では、絞り部17を戻し流路35に配設することによって、吸込調整弁20を開いたときに破裂音が生じることになってしまう。
【0041】
(第2実施形態)
図8は、本発明の第2実施形態に係る圧縮機1の概略構成を示し、
図1に示す第1実施形態に係る圧縮機1と共通する部分については、同一番号を付して説明を省略する。
【0042】
第2実施形態の圧縮機1では、吐出流路12から分岐された弁制御流路31から、戻り流路35がさらに分岐されている。液分離回収器(油分離回収器)13の下流側の吐出流路12では、吸込調整弁20の開閉を制御する弁制御流路31が分岐されている。弁制御流路31は、その下流側に位置する戻し分岐ポイント44において、戻し流路35に分岐されている。戻し流路35は、開放分岐ポイント47において、大気と連通する大気開放流路36に分岐されている。大気開放流路36には、大気開放流路36を流れるガスの流量を規制する絞り部17が設けられている。絞り部17は、大気開放流路36を流れるガスの流量が、開放分岐ポイント47から吸込合流ポイント48までの戻し流路35を流れるガスの流量よりも少なくなるように規制する。絞り部17は、例えば、オリフィスであり、可変絞り弁又は流量調整弁であってもよい。絞り部17として可変絞り弁又は流量調整弁を用いた場合は、装置毎の微調整を容易に行うことができる。
【0043】
弁制御流路31は、戻し分岐ポイント44よりも下流側において、三方弁18に接続されている。弁制御流路31は、三方弁18によって、加圧室25Aに通じる開弁流路33と、流路空間22に通じる閉弁流路32とに切り替えられる。閉弁流路32は、開放分岐ポイント47よりも吸込調整弁20側の戻し流路35に合流して、吸込調整弁20の吸込合流ポイント48で吸込流路10に接続されている。
【0044】
図示しない制御部によって、三方弁18の切換制御が行われる。開閉弁16を閉じるに伴い、開弁流路33が弁制御流路31と連通するように三方弁18を制御すると、弁制御流路31からの圧縮ガスの圧力がピストン28に印加される。その結果、加圧室25Aが拡大するように弁体24が押し動かされ、吸気調整弁20が開いた状態になり、負荷運転を可能にする。閉弁流路32が開弁流路33と連通するように三方弁18を制御すると、開弁流路33からの圧縮ガスが吸込流路10と大気開放流路36に流れる。そのため、バネ27の付勢力によって弁体24が押し上げられて、吸気調整弁20が閉じた状態になり、プリロード運転を可能にする。
【0045】
開閉弁16を開くに伴い、閉弁流路32が開弁流路33と連通するように三方弁18を制御すると、吸気調整弁20が閉じた状態になり、プリロード運転が可能になる。弁制御流路31からの圧縮ガスが、戻し流路35を流れる。戻し流路35を流れる圧縮ガスの一部は、大気開放流路36から大気に開放されるが、絞り部17によって、大気に開放されるガスの流量が規制される。そのため、大気開放流路36から大気に開放されるガスの量は少なく、戻し流路35を流れる圧縮ガスの残部の量は多い。戻し流路35を流れる圧縮ガスの残部が、吸込合流ポイント48を通じて、弁体24の下流側の流路空間22に流入する。そして、吸込流路10に流入した圧縮ガスが、圧縮機本体11によるガスの圧縮動作に供される。
【0046】
吸込流路10の本体吸込側においては、戻し流路35から吸込流路10への流入量と、吸込流路10から圧縮機本体11への流出量とが釣り合って平衡状態が形成される。その結果、本体側吸込圧P
1が、或る一定の負圧になる。本体側吸込圧P
1が、
図3に示すように、望まれない負圧を上回り、吸込調整弁20を開いたときの大きな破裂音を回避することを可能にする下限負圧P
B以上になっている。そのため、吸込調整弁20を開いたときの騒音を防止することができる。なお、圧縮機本体11のロータ室内の圧力も、弁制御流路31からの圧縮ガスの正圧加算が無い場合と比べて、正圧側にシフトしている。そのため、圧縮機本体11が液圧縮して過負荷になることが回避される。
【0047】
なお、本発明の理解を容易にするために、具体的な構成や数字を用いて説明したが、この発明は、上述した各実施形態の具体的な構成や数字に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した内容を逸脱しない範囲で考えられる各種の変形例を含むことができる。
【0048】
冷却液として油を例示したが、冷却液は水であってもよい。また、圧縮対象のガス(被圧縮ガス)として空気を例示したが、圧縮対象のガスは、窒素ガス、蒸気等であってもよい。