特許第6886773号(P6886773)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6886773顔の見た目印象の決定部位の抽出方法、顔の見た目印象の決定因子の抽出方法、顔の見た目印象の鑑別方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886773
(24)【登録日】2021年5月19日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】顔の見た目印象の決定部位の抽出方法、顔の見た目印象の決定因子の抽出方法、顔の見た目印象の鑑別方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/107 20060101AFI20210603BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20210603BHJP
   A45D 44/00 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   A61B5/107
   G06T1/00 340A
   A45D44/00 AZDM
【請求項の数】39
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-15200(P2016-15200)
(22)【出願日】2016年1月29日
(65)【公開番号】特開2016-193175(P2016-193175A)
(43)【公開日】2016年11月17日
【審査請求日】2018年11月14日
(31)【優先権主張番号】特願2015-73856(P2015-73856)
(32)【優先日】2015年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】水越 興治
(72)【発明者】
【氏名】黒住 元紀
(72)【発明者】
【氏名】本郷 麻耶
(72)【発明者】
【氏名】蒲池 みゆき
【審査官】 牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−096230(JP,A)
【文献】 特開2005−235137(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/038700(WO,A1)
【文献】 特開2002−017689(JP,A)
【文献】 特開2000−261650(JP,A)
【文献】 特開2010−224681(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/005447(WO,A1)
【文献】 特開2015−005281(JP,A)
【文献】 特開2006−244387(JP,A)
【文献】 特開2001−177849(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/142069(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/043712(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00− 5/01
A61B 5/06− 5/22
G06T 7/00
A45D 44/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる複数の角度から評価対象の顔を撮影した複数の顔画像を評価者に提示し、該評価者にそれぞれの前記顔画像から顔の見た目印象の評価をさせる目視評価工程と、
前記顔画像を目視する前記評価者の視線データを解析し、それぞれの前記顔画像中において前記評価者が注視した領域の解析を行う視線解析工程と、を含むことを特徴とする、観察角度毎の顔の見た目印象の決定部位の抽出方法。
【請求項2】
前記顔の見た目印象が年齢印象であることを特徴とする、請求項1に記載の顔の見た目印象の決定部位の抽出方法。
【請求項3】
互いに異なる複数の角度から評価対象の顔を撮影した複数の顔画像を解析し、角度依存的に変化する前記顔の物理的特徴量を測定する、物理的特徴量測定工程と、
前記顔画像を目視評価して顔の見た目印象の目視評価値を得る、目視評価値取得工程と、
前記物理的特徴量と前記目視評価値との相関関係を、前記評価対象の年齢層毎に解析し、前記物理的特徴量の中から、前記顔の見た目印象と相関関係の高い因子を、前記評価対象の年齢層毎に抽出する、因子抽出工程と、を含むことを特徴とする、顔の見た目印象の決定因子の抽出方法。
【請求項4】
互いに異なる複数の角度から評価対象の顔を撮影した複数の顔画像を解析し、角度依存的に変化する前記顔の物理的特徴量を測定する、物理的特徴量測定工程と、
顔の見た目印象に関与する皮膚に関する生理学的量を、前記評価対象の皮膚から測定する、生理学的量測定工程と、
前記物理的特徴量と前記生理学的量との相関関係を解析し、前記物理的特徴量の中から、前記顔の見た目印象と相関関係の高い因子を抽出する、因子抽出工程と、を含むことを特徴とする、顔の見た目印象の決定因子の抽出方法。
【請求項5】
前記物理的特徴量測定工程が、前記顔画像より輝度値のヒストグラムを算出するヒストグラム算出工程と、
前記ヒストグラムより、歪度、尖度、最頻値の内の少なくとも1つに基づいた前記物理的特徴量を算出するヒストグラム解析工程と、を有することを特徴とする、請求項3又は請求項4に記載の顔の見た目印象の決定因子の抽出方法。
【請求項6】
前記物理的特徴量測定工程が、前記顔画像に対してガボールフィルタの適用を行うフィルタ処理工程と、
ガボールフィルタの適用結果に含まれる波長及び/又は波の方向性より前記物理的特徴量を算出するガボールフィルタ結果解析工程と、を有することを特徴とする、請求項3から請求項5の何れかに記載の顔の見た目印象の決定因子の抽出方法。
【請求項7】
評価対象の顔の顔画像から、物理的特徴量を測定する物理的特徴量測定工程と、
複数の角度から前記顔を撮影した複数の顔画像を目視評価した場合の、それぞれの顔の見た目印象の目視評価値を得る、目視評価値取得工程と、
複数の角度から撮影した前記顔画像のそれぞれの前記目視評価値と、前記物理的特徴量との相関関係の解析を前記評価対象の年齢層毎に行い、前記物理的特徴量の中から、所定の角度から見た前記顔の見た目印象と相関関係の高い因子を、前記年齢層毎に抽出する因子抽出工程と、を備えることを特徴とする、顔の見た目印象の決定因子の抽出方法。
【請求項8】
評価対象の顔の顔画像から、物理的特徴量を測定する物理的特徴量測定工程と、
顔の見た目印象に関与し、皮膚の表面物性、内部物性及び皮膚組織の組成のうち少なくとも何れかを示す生理学的量を、前記評価対象の皮膚から測定する、生理学的量測定工程と、
前記生理学的量と、前記物理的特徴量との相関関係の解析を行い、前記物理的特徴量の中から、所定の角度から見た前記顔の見た目印象と相関関係の高い因子を抽出する因子抽出工程と、を備えることを特徴とする、顔の見た目印象の決定因子の抽出方法。
【請求項9】
前記物理的特徴量測定工程が、前記顔の3次元モデルを生成する3次元モデル生成工程と、
前記3次元モデルの相同モデル化を行う相同モデル化工程と
同モデルの主成分分析を行い、前記物理的特徴量を算出する主成分分析工程と、を有することを特徴とする、請求項7又は請求項8に記載の顔の見た目印象の決定因子の抽出方法。
【請求項10】
前記顔の見た目印象が年齢印象であることを特徴とする、請求項3から請求項9の何れかに記載の顔の見た目印象の決定因子の抽出方法。
【請求項11】
観察角度に応じて角度依存的に変化する顔の物理的特徴量と、顔画像を目視評価して得られた顔の見た目印象の目視評価値との、相関関係の解析によって得られた相関関係データに基づいて、被験者の顔画像から測定した前記物理的特徴量より、該被験者の前記顔の見た目印象の目視評価値を算出することを特徴とする、顔の見た目印象の鑑別方法。
【請求項12】
観察角度に応じて角度依存的に変化する顔の物理的特徴量と、皮膚から測定される、皮膚の表面物性、内部物性及び皮膚組織の組成のうち少なくとも何れかを示す生理学的量との相関関係の解析によって得られた相関関係データに基づいて、被験者の顔画像から測定した前記物理的特徴量より、該被験者の前記生理学的量を算出し、該被験者の前記顔の見た目印象を鑑別することを特徴とする、顔の見た目印象の鑑別方法。
【請求項13】
前記物理的特徴量が、前記顔画像中の輝度、彩度、色相、周波数特性の内の少なくとも1つに関する量を含むことを特徴とする、請求項11又は請求項12に記載の顔の見た目印象の鑑別方法。
【請求項14】
前記被験者についての前記物理的特徴量を、互いに異なる角度から撮影した複数の顔画像から測定することを特徴とする、請求項11から請求項13の何れかに記載の顔の見た目印象の鑑別方法。
【請求項15】
顔の物理的特徴量と、所定の角度から顔を撮影した顔画像を目視評価して得られた顔の見た目印象の目視評価値との相関関係の解析によって得られた相関関係データに基づいて、被験者の顔画像から測定した物理的特徴量より、該被験者の前記顔の見た目印象の目視評価値を算出することを特徴とする、顔の見た目印象の鑑別方法。
【請求項16】
所定の角度から見た顔の見た目印象に関与し、皮膚から測定される皮膚の表面物性、内部物性及び皮膚組織の組成のうち少なくとも何れかを示す生理学的量と、顔の物理的特徴量との、相関関係の解析によって得られた相関関係データに基づいて、被験者の顔画像から測定した物理的特徴量より、該被験者の前記生理学的量を算出し、所定の角度から見た該被験者の前記顔の見た目印象を鑑別する、顔の見た目印象の鑑別方法。
【請求項17】
前記物理的特徴量が、前記顔の立体形状に関する値を含むことを特徴とする、請求項15又は請求項16に記載の顔の見た目印象の鑑別方法。
【請求項18】
前記顔の見た目印象が年齢印象であることを特徴とする、請求項11から請求項17の何れかに記載の顔の見た目印象の鑑別方法。
【請求項19】
前記相関関係データが、前記被験者の年齢層毎に実測値を解析することによって得られ、
前記顔の見た目印象の鑑別が、前記被験者の年齢層に対応する前記相関関係データに基づいて、行われることを特徴とする、請求項11から請求項18の何れかに記載の顔の見た目印象の鑑別方法。
【請求項20】
観察角度に応じて角度依存的に変化する顔の物理的特徴量と顔画像を目視評価して得られた顔の見た目印象の目視評価値との相関関係に基づいて、被験者の前記顔の見た目印象を解析する、顔印象解析装置であって、
被験者の顔画像を取得する顔画像取得手段と、
前記顔画像より前記物理的特徴量を算出する物理的特徴量算出手段と、
前記相関関係の解析によって得られた相関関係データを記憶する相関関係記憶手段と、
前記相関関係データに基づいて、被験者についての前記物理的特徴量より該被験者の顔の見た目印象の目視評価値を算出する見た目印象解析手段と、を備えることを特徴とする、顔印象解析装置。
【請求項21】
観察角度に応じて角度依存的に変化する顔の物理的特徴量と、皮膚から測定される皮膚の表面物性、内部物性及び皮膚組織の組成のうち少なくとも何れかを示す生理学的量と、の相関関係に基づいて、前記生理学的量を算出することで被験者の顔の見た目印象を解析する、顔印象解析装置であって、
被験者の顔画像を取得する顔画像取得手段と、
前記顔画像より前記物理的特徴量を算出する物理的特徴量算出手段と、
前記相関関係の解析によって得られた相関関係データを記憶する相関関係記憶手段と、
前記相関関係データに基づいて、被験者についての前記物理的特徴量より該被験者の前記生理学的量を算出し、該被験者の前記顔の見た目印象を解析する見た目印象解析手段と、を備えることを特徴とする、顔印象解析装置。
【請求項22】
前記物理的特徴量が、前記顔画像中における輝度、彩度、色相、周波数特性の内の少なくとも1つに関する量を含むことを特徴とする、請求項20又は請求項21に記載の顔印象解析装置。
【請求項23】
前記顔画像取得手段が、少なくとも2つのカメラによって撮影された被験者の顔のステレオ画像より、被験者の顔の3次元モデルを生成する手段と、前記3次元モデルの回転、あるいは前記3次元モデルを観測する視点の回転によって、前記顔画像を取得する角度を変更する手段と、を有することを特徴とする、請求項20から請求項22の何れかに記載の顔印象解析装置。
【請求項24】
前記顔画像取得手段が、前記顔画像を取得する際に、前記3次元モデルへ照射する擬似的な光源を設定する、擬似光源設定手段を有することを特徴とする、請求項23に記載の顔印象解析装置。
【請求項25】
顔画像から取得される顔の物理的特徴量と、所定の角度から顔を撮影した顔画像を目視評価して得られた顔の見た目印象の目視評価値との相関関係に基づいて、被験者の顔の見た目印象を解析する、顔印象解析装置であって、
前記物理的特徴量を算出する物理的特徴量算出手段と、
前記相関関係の解析によって得られた相関関係データを記憶する相関関係記憶手段と、
前記相関関係データに基づいて、被験者についての前記物理的特徴量より該被験者の前記顔の見た目印象の目視評価値を算出する見た目印象解析手段と、を備えることを特徴とする、顔印象解析装置。
【請求項26】
顔画像から取得される顔の物理的特徴量と、所定の角度から顔を撮影した顔画像を目視評価して得られた顔の見た目印象との相関関係に基づいて、被験者の前記顔の見た目印象を解析する、顔印象解析装置であって、
前記物理的特徴量を算出する物理的特徴量算出手段と、
前記顔の見た目印象に関与し、皮膚から測定される皮膚の表面物性、内部物性及び皮膚組織の組成のうち少なくとも何れかを示す生理学的量と、前記物理的特徴量と、の相関関係の解析によって得られた相関関係データを記憶する相関関係記憶手段と、
前記相関関係データに基づいて、被験者についての前記物理的特徴量より該被験者の前記生理学的量を算出し、該被験者の前記顔の見た目印象を解析する見た目印象解析手段と、を備えることを特徴とする、顔印象解析装置。
【請求項27】
前記物理的特徴量が、前記顔の立体形状に関する値を含むことを特徴とする、請求項25又は請求項26に記載の顔印象解析装置。
【請求項28】
前記顔の見た目印象が年齢印象であることを特徴とする、請求項20から請求項27の何れかに記載の顔印象解析装置。
【請求項29】
前記相関関係記憶手段は、前記被験者の年齢層毎に実測値を解析することによって得られた、前記年齢層毎に異なる相関関係データを記憶し、
前記見た目印象解析手段は、前記被験者の年齢層に対応する前記相関関係データに基づいて、当該被験者の前記顔の見た目印象を解析することを特徴とする、請求項20から請求項28の何れかに記載の顔印象解析装置。
【請求項30】
観察角度に応じて角度依存的に変化する顔の物理的特徴量と顔画像を目視評価して得られた顔の見た目印象の目視評価値との相関関係に基づいて、被験者の前記顔の見た目印象を解析する、顔印象解析プログラムであって、
コンピュータを、
前記被験者の顔画像を取得する顔画像取得手段と、
前記顔画像より前記物理的特徴量を算出する手段と、
前記相関関係の解析によって得られた相関関係データに基づいて、被験者についての前記物理的特徴量より該被験者の前記顔の見た目印象の目視評価値を算出する手段と、
として機能させることを特徴とする、顔印象解析プログラム。
【請求項31】
観察角度に応じて角度依存的に変化する顔の物理的特徴量と皮膚から測定される皮膚の表面物性、内部物性及び皮膚組織の組成のうち少なくとも何れかを示す生理学的量との相関関係に基づいて、前記生理学的量を算出することで被験者の顔の見た目印象を解析する、顔印象解析プログラムであって、
コンピュータを、
前記被験者の顔画像を取得する顔画像取得手段と、
前記顔画像より前記物理的特徴量を算出する手段と、
前記相関関係の解析によって得られた相関関係データに基づいて、被験者についての前記物理的特徴量より該被験者の前記生理学的量を算出し、該被験者の前記顔の見た目印象を鑑別する手段と、
として機能させることを特徴とする、顔印象解析プログラム。
【請求項32】
顔の物理的特徴量と、所定の角度から顔を撮影した顔画像を目視評価して得られた顔の見た目印象の目視評価値との相関関係に基づいて、被験者の前記顔の見た目印象を解析する、顔印象解析プログラムであって、
コンピュータを、
前記被験者の顔画像を取得する顔画像取得手段と、
前記顔画像より前記物理的特徴量を算出する手段と、
前記相関関係の解析によって得られた相関関係データに基づいて、被験者についての前記物理的特徴量より該被験者の前記顔の見た目印象の目視評価値を算出する手段と、
として機能させることを特徴とする、顔印象解析プログラム。
【請求項33】
顔の物理的特徴量と、所定の角度から顔を撮影した顔画像を目視評価して得られた顔の見た目印象との相関関係に基づいて、被験者の前記顔の見た目印象を解析する、顔印象解析プログラムであって、
コンピュータを、
前記被験者の顔画像を取得する顔画像取得手段と、
前記顔画像より前記物理的特徴量を算出する手段と、
前記顔の見た目印象に関与し、皮膚から測定される皮膚に関する生理学的量と、前記物理的特徴量と、の相関関係の解析によって得られた相関関係データに基づいて、被験者についての前記物理的特徴量より該被験者の前記生理学的量を算出し、該被験者の前記顔の見た目印象を鑑別する手段と、
として機能させることを特徴とする、顔印象解析プログラム。
【請求項34】
被験者の顔画像に基づいて該被験者の顔の見た目印象を解析する、顔画像取得手段と、物理的特徴量算出手段と、相関関係記憶手段と、見た目印象解析手段と、を備える顔印象解析装置を用いた顔の見た目印象の解析方法であって、
前記顔画像取得手段が、前記顔画像を取得するステップと、
前記物理的特徴量算出手段が、前記顔画像より前記顔の物理的特徴量を算出するステップと、
前記見た目印象解析手段が、前記相関関係記憶手段が保持する、観察角度に応じて角度依存的に変化する顔の物理的特徴量と顔画像を目視評価して得られた前記顔の見た目印象の目視評価値との相関関係データに基づいて、被験者についての前記物理的特徴量より該被験者の前記顔の見た目印象の目視評価値の算出を行うステップと、を備えることを特徴とする、顔の見た目印象の解析方法。
【請求項35】
被験者の顔画像に基づいて該被験者の顔の見た目印象を解析する、顔画像取得手段と、物理的特徴量算出手段と、相関関係記憶手段と、見た目印象解析手段と、を備える顔印象解析装置を用いた顔の見た目印象の解析方法であって、
前記顔画像取得手段が、前記顔画像を取得するステップと、
前記物理的特徴量算出手段が、前記顔画像より前記顔の物理的特徴量を算出するステップと、
前記見た目印象解析手段が、前記相関関係記憶手段が保持する、観察角度に応じて角度依存的に変化する顔の物理的特徴量と皮膚から測定される皮膚の表面物性、内部物性及び皮膚組織の組成のうち少なくとも何れかを示す生理学的量との相関関係の解析によって得られた相関関係データに基づいて、被験者についての前記物理的特徴量より前記顔の見た目印象に関与する前記生理学的量を算出することで、該被験者の前記顔の見た目印象の解析を行うステップと、を備えることを特徴とする、前記顔の見た目印象の解析方法。
【請求項36】
被験者の顔画像に基づいて該被験者の顔の見た目印象を解析する、物理的特徴量算出手段と、相関関係記憶手段と、見た目印象解析手段と、を備える顔印象解析装置を用いた顔の見た目印象の解析方法であって、
前記物理的特徴量算出手段が、前記顔の物理的特徴量を算出するステップと、
前記見た目印象解析手段が、前記相関関係記憶手段が保持する前記物理的特徴量と、所定の角度から顔を撮影した顔画像を目視評価して得られた前記顔の見た目印象の目視評価値との相関関係の解析によって得られた相関関係データに基づいて、被験者についての前記物理的特徴量より該被験者の前記顔の見た目印象の目視評価値の算出を行うステップと、を備えることを特徴とする、顔の見た目印象の解析方法。
【請求項37】
被験者の顔画像に基づいて該被験者の顔の見た目印象を解析する、物理的特徴量算出手段と、前記顔の見た目印象に関与し、皮膚から測定される皮膚の表面物性、内部物性及び皮膚組織の組成のうち少なくとも何れかを示す生理学的量と、前記顔の物理的特徴量と、の相関関係の解析によって得られた相関関係データを記憶する相関関係記憶手段と、見た目印象解析手段と、を備える顔印象解析装置を用いた顔の見た目印象の解析方法であって、
前記物理的特徴量算出手段が、前記物理的特徴量を算出するステップと、
前記見た目印象解析手段が、前記相関関係データに基づいて、被験者についての前記物理的特徴量より該被験者の生理学的量を算出し、該被験者の前記顔の見た目印象の解析を行うステップと、を備えることを特徴とする、顔の見た目印象の解析方法。
【請求項38】
顔の物理的特徴量を用いた顔の見た目印象の鑑別による化粧効果の鑑別方法であって、
化粧前の顔画像を取得する工程と、
前記化粧前の顔画像に基づいて化粧前の顔の前記物理的特徴量を測定する化粧前特徴量測定工程と、
前記物理的特徴量と、所定の角度から顔を撮影した顔画像を目視評価して得られた顔の見た目の印象の目視評価値との相関関係に基づいて、化粧前の目視評価値を算出する化粧前目視評価値算出工程と、
化粧後の顔の前記物理的特徴量を測定する化粧後特徴量測定工程と、
前記相関関係の解析によって得られた相関関係データに基づいて、化粧後の目視評価値を算出する化粧後目視評価値算出工程と、
前記化粧前の目視評価値と、前記化粧後の目視評価値と、を比較し、化粧効果を評価する化粧効果評価工程と、を備えることを特徴とする、化粧効果の鑑別方法。
【請求項39】
観察角度に応じて角度依存的に変化する顔の物理的特徴量を用いた顔の見た目印象の鑑別による化粧効果の鑑別方法であって、
化粧前の顔画像を取得する工程と、
前記化粧前の顔画像に基づいて化粧前の顔の前記物理的特徴量を測定する化粧前特徴量測定工程と、
前記物理的特徴量と、顔を撮影した顔画像を目視評価して得られた顔の見た目の印象の目視評価値との相関関係に基づいて、化粧前の目視評価値を算出する化粧前目視評価値算出工程と、
化粧後の顔画像を取得する工程と、
前記化粧後の顔画像に基づいて化粧後の顔の前記物理的特徴量を測定する化粧後特徴量測定工程と、
前記相関関係の解析によって得られた相関関係データに基づいて、化粧後の目視評価値を算出する化粧後目視評価値算出工程と、
前記化粧前の目視評価値と、前記化粧後の目視評価値と、を比較し、化粧効果を評価する化粧効果評価工程と、を備えることを特徴とする、化粧効果の鑑別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔の見た目印象の決定部位の抽出方法、顔の見た目印象の決定因子の抽出方法、顔の見た目印象の鑑別方法、顔印象解析装置、顔印象解析プログラム、顔の見た目印象の解析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人は、その外観や言動などの様々な要因によって、他者に対して多種多様な印象を与える。その中でも、視覚的な情報、特に顔の見た目は、その人の印象を決める非常に大きな要因の一つであるといえる。
【0003】
そのため、人の顔の見た目の印象を客観的に推定する技術について研究がおこなわれている。例えば、特許文献1には、被験者の顔面における測定対象部位の輝度を測定し、ヒストグラムを生成して、そのヒストグラムの形状から、被験者の肌の状態を評価する技術が公開されている。
【0004】
また、特許文献2には、被験者の顔画像を取得し、そこから空間周波数の強度を算出することによって、被験者の年齢を推定する技術が公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−131336号公報
【特許文献2】再表2011−162050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先述の通り、被験者の顔の見た目の印象を客観的に推定するためのパラメータについて検討されてきたが、これらはいずれも被験者の顔をある角度から観測した際に得られたものに過ぎない。
【0007】
しかし、人の見た目の印象は、種々の因子によって形成されており、より正確な推定手段が望まれていた。
【0008】
そこで、本発明では、顔の見た目印象への影響が大きい部位、顔の見た目印象と相関関係が高い因子を抽出する方法、その因子に基づいて顔の見た目印象を鑑別する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る顔の見た目印象の決定部位の抽出方法は、
互いに異なる複数の角度から評価対象の顔を撮影した複数の顔画像を評価者に提示し、該評価者にそれぞれの前記顔画像から顔の見た目印象の評価をさせる目視評価工程と、
前記顔画像を目視する前記評価者の視線データを解析し、それぞれの前記顔画像中において前記評価者が注視した領域の解析を行う視線解析工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
このように、それぞれの角度から顔を観察する場合に評価者が注視する領域の解析を行うことにより、顔の見た目印象の判断に与える影響の大きい部位を観察角度毎に抽出することができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記顔の見た目印象が年齢印象であることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る顔の見た目印象の決定因子の抽出方法は、
互いに異なる複数の角度から評価対象の顔を撮影した複数の顔画像を解析し、角度依存的に変化する前記顔の物理的特徴量、例えば光学的特徴量や形態的特徴量を測定する、物理的特徴量測定工程と、
前記物理的特徴量の中から、顔の見た目印象と相関関係の高い因子を抽出する、因子抽出工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
これにより、後述する顔の見た目印象の鑑別において用いる物理的特徴量を特定することができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記物理的特徴量測定工程が、前記顔画像より輝度値のヒストグラムを算出するヒストグラム算出工程と、
前記ヒストグラムより、歪度、尖度、最頻値の内の少なくとも1つに基づいた前記物理的特徴量を算出するヒストグラム解析工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記物理的特徴量測定工程が、前記顔画像に対してガボールフィルタの適用を行うフィルタ処理工程と、
ガボールフィルタの適用結果に含まれる波長及び/又は波の方向性より前記物理的特徴量を算出するガボールフィルタ結果解析工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る顔の見た目印象の決定因子の抽出方法は、
評価対象の顔の物理的特徴量を測定する物理的特徴量測定工程と、
複数の角度から見た場合のそれぞれの顔の見た目印象と、前記物理的特徴量との相関関係の解析を行い、前記物理的特徴量の中から、所定の角度から見た顔の見た目印象と相関関係の高い因子を抽出する因子抽出工程と、を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記物理的特徴量測定工程が、前記顔の3次元モデルを生成する3次元モデル生成工程と、
前記3次元モデルの相同モデル化を行う相同モデル化工程と、
前記相同モデルの主成分分析を行い、前記物理的特徴量を算出する主成分分析工程と、を有することを特徴とする。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記因子抽出工程における前記因子の抽出を、前記評価対象の年齢層毎に行うことを特徴とする。
【0019】
本発明の好ましい形態では、顔の見た目印象の決定因子の抽出方法が、前記顔を目視評価して顔の見た目印象の目視評価値を得る、目視評価値取得工程を有し、
前記因子抽出工程が、前記物理的特徴量と前記目視評価値との相関関係を解析して前記因子を抽出することを含むことを特徴とする。
目視評価値を用いることによって、人が顔を目視した際に受ける印象と相関関係の高い因子を特定することができる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、顔の見た目印象の決定因子の抽出方法が、皮膚に関する生理学的量を測定する、生理学的量測定工程を有し、
前記因子抽出工程が、前記物理的特徴量と前記生理学的量との相関関係を解析して前記因子を抽出することを含むことを特徴とする。
生理学的量を用いることによって、実際に皮膚等の生体組織における生理学的現象と相関関係の高い顔の見た目印象の決定因子を特定することができる。
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記生理学的量が前記顔の皮膚表面物性及び/又は内部物性であることを特徴とする。
【0022】
本発明の好ましい形態では、前記顔の見た目印象が年齢印象であることを特徴とする。
【0023】
本発明に係る顔の見た目印象の鑑別方法は、
角度依存的に変化する顔の物理的特徴量と顔の見た目印象との相関関係に基づいて、被験者の顔画像から測定した物理的特徴量より該被験者の顔の見た目印象を鑑別することを特徴とする。
角度依存的に変化する物理的特徴量と顔の見た目印象との相関関係を用いることによって、他者に与える顔の見た目印象をより正確に鑑別することができる。
【0024】
本発明の好ましい形態では、前記物理的特徴量が、前記顔画像中の輝度、彩度、色相、周波数特性の内の少なくとも1つに関する量を含むことを特徴とする。
【0025】
本発明の好ましい形態では、前記被験者についての前記物理的特徴量を、互いに異なる角度から撮影した複数の顔画像から測定することを特徴とする。
【0026】
本発明に係る顔の見た目印象の鑑別方法は、
顔の物理的特徴量と、所定の角度から見た顔の見た目印象との相関関係に基づいて、被験者の顔及び/又は顔画像から測定した物理的特徴量より該被験者の顔の見た目印象を鑑別することを特徴とする。
これにより、所定の角度から見た顔の見た目印象を、より正確に鑑別することができる。
【0027】
本発明の好ましい形態では、前記物理的特徴量が、前記顔の立体形状に関する値を含むことを特徴とする。
【0028】
本発明の好ましい形態では、前記顔の見た目印象の鑑別が、前記物理的特徴量と顔の見た目印象の目視評価値の相関関係に基づいて、被験者についての前記物理的特徴量の測定値から被験者の顔の見た目印象の目視評価値を算出することを含むことを特徴とする。
【0029】
本発明の好ましい形態では、前記顔の見た目印象の鑑別が、前記物理的特徴量と皮膚に関する生理学的量の相関関係に基づいて、被験者についての前記物理的特徴量の測定値から被験者の前記生理学的量を算出することを含むことを特徴とする。
【0030】
本発明の好ましい形態では、前記顔の見た目印象が年齢印象であることを特徴とする。
【0031】
本発明の好ましい形態では、前記相関関係が、前記被験者の年齢層毎に異なることを特徴とする。
【0032】
本発明に係る顔印象解析装置は、
角度依存的に変化する顔の物理的特徴量と顔の見た目印象との相関関係に基づいて、被験者の顔の見た目印象を解析する、顔印象解析装置であって、
顔画像を取得する顔画像取得手段と、
前記顔画像より物理的特徴量を算出する物理的特徴量算出手段と、
前記相関関係を記憶する相関関係記憶手段と、
前記相関関係に基づいて、被験者についての前記物理的特徴量より該被験者の顔の見た目印象を解析する見た目印象解析手段と、を備えることを特徴とする。
このような構成の装置とすることにより、本発明に係る顔の見た目印象の鑑別方法を実施することができる。
【0033】
本発明の好ましい形態では、前記物理的特徴量が、前記顔画像中における輝度、彩度、色相、周波数特性の内の少なくとも1つに関する量を含むことを特徴とする。
【0034】
本発明の好ましい形態では、前記顔画像取得手段が、少なくとも2つのカメラによって撮影された被験者の顔のステレオ画像より、被験者の顔の3次元モデルを生成する手段と、前記3次元モデルの回転、あるいは前記3次元モデルを観測する視点の回転によって、前記顔画像を取得する角度を変更する手段と、を有することを特徴とする。
これにより、複数角度からの被験者の顔画像取得を、3次元モデルより行うことができ、多数の顔画像を取得する際にも、被験者への負担を小さく抑えることができる。
【0035】
本発明の好ましい形態では、前記顔画像取得手段が、前記顔画像を取得する際に、前記3次元モデルへ照射する擬似的な光源を設定する、擬似光源設定手段を有することを特徴とする。
これにより、取得角度の異なる複数の顔画像について、同様の照明条件とすることが容易となり、照明条件によって光学的特徴量などの物理的特徴量へと与える影響を抑えることができる。また、照明の角度や照射方向などを任意に設定し、様々な環境下の顔を想定した評価を行うことも可能となる。
【0036】
本発明に係る顔印象解析装置は、
顔の物理的特徴量と、所定の角度から見た顔の見た目印象との相関関係に基づいて、被験者の顔の見た目印象を解析する、顔印象解析装置であって、
前記顔の物理的特徴量を算出する物理的特徴量算出手段と、
前記相関関係を記憶する相関関係記憶手段と、
前記相関関係に基づいて、被験者についての前記物理的特徴量より該被験者の顔の見た目印象を解析する見た目印象解析手段と、を備えることを特徴とする。
【0037】
本発明の好ましい形態では、前記物理的特徴量が、前記顔の立体形状に関する値を含むことを特徴とする。
【0038】
本発明の好ましい形態では、前記顔の印象が年齢印象であることを特徴とする。
【0039】
本発明の好ましい形態では、前記相関関係が、前記被験者の年齢層毎に異なることを特徴とする。
【0040】
本発明の好ましい形態では、前記相関関係記憶手段が、前記物理的特徴量と顔を目視評価して得られた顔の見た目印象の目視評価値との相関関係を保持し、
前記見た目印象解析手段が、前記物理的特徴量と前記顔の見た目印象の目視評価値との相関関係に基づいて、被験者についての物理的特徴量より該被験者の見た目印象の目視評価値を算出することを特徴とする。
【0041】
本発明の好ましい形態では、前記相関関係記憶手段が、前記物理的特徴量と皮膚に関する生理学的量との相関関係を保持し、
前記見た目印象解析手段が、前記物理的特徴量と皮膚に関する生理学的量との相関関係に基づいて、被験者についての物理的特徴量より該被験者の皮膚に関する生理学的量を算出することを特徴とする。
【0042】
本発明の好ましい形態では、前記生理学的量が、被験者の顔の皮膚表面物性及び/又は内部物性であることを特徴とする。
【0043】
本発明に係る顔印象解析プログラムは、
角度依存的に変化する顔の物理的特徴量と顔の見た目印象との相関関係に基づいて、被験者の顔の見た目印象を解析する、顔印象解析プログラムであって、
コンピュータを、
被験者についての前記物理的特徴量を抽出する手段と、
前記相関関係に基づいて、被験者についての前記物理的特徴量より該被験者の見た目印象を鑑別する手段と、
として機能させることを特徴とする。
【0044】
本発明に係る顔印象解析プログラムは、
顔の物理的特徴量と、所定の角度から見た顔の見た目印象との相関関係に基づいて、被験者の顔の見た目印象を解析する、顔印象解析プログラムであって、
コンピュータを、
被験者についての前記物理的特徴量を抽出する手段と、
前記相関関係に基づいて、被験者についての前記物理的特徴量より該被験者の見た目印象を鑑別する手段と、
として機能させることを特徴とする。
【0045】
本発明に係る顔の見た目印象の解析方法は、
被験者の顔画像に基づいて該被験者の顔の見た目印象を解析する、顔画像取得手段と、物理的特徴量抽出手段と、相関関係記憶手段と、見た目印象解析手段と、を備える顔印象解析装置を用いた顔の見た目印象の解析方法であって、
前記顔画像取得手段が、前記顔画像を取得するステップと、
前記物理的特徴量抽出手段が、前記顔画像より前記顔の物理的特徴量を抽出するステップと、
前記見た目印象解析手段が、前記相関関係記憶手段が保持する角度依存的に変化する顔の物理的特徴量と顔の見た目印象との相関関係に基づいて、被験者についての前記物理的特徴量より該被験者の顔の見た目印象の解析を行うステップと、を備えることを特徴とする。
【0046】
本発明に係る顔の見た目印象の解析方法は、
被験者の顔画像に基づいて該被験者の顔の見た目印象を解析する、物理的特徴量抽出手段と、相関関係記憶手段と、見た目印象解析手段と、を備える顔印象解析装置を用いた顔の見た目印象の解析方法であって、
前記物理的特徴量抽出手段が、前記顔の物理的特徴量を抽出するステップと、
前記見た目印象解析手段が、前記相関関係記憶手段が保持する前記物理的特徴量と、所定の角度から見た顔の見た目印象との相関関係に基づいて、被験者についての前記物理的特徴量より該被験者の顔の見た目印象の解析を行うステップと、を備えることを特徴とする。
【0047】
本発明に係る化粧効果の鑑別方法は、
顔の物理的特徴量を用いた顔の見た目印象の鑑別による化粧効果の鑑別方法であって、
化粧前の顔の前記物理的特徴量を抽出する化粧前特徴量測定工程と、
前記物理的特徴量と、所定の角度から見た顔の見た目の印象の目視評価値と、の相関関係に基づいて、化粧前の目視評価値を算出する化粧前目視評価値算出工程と、
化粧後の顔の前記物理的特徴量を抽出する化粧後特徴量測定工程と、
前記相関関係に基づいて、化粧後の目視評価値を算出する化粧後目視評価値算出工程と、
前記化粧前の目視評価値と、前記化粧後の目視評価値と、を比較し、化粧効果を評価する化粧効果評価工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0048】
角度依存的に変化する因子と顔の見た目印象との相関関係を用いて顔の見た目印象を鑑別することにより、顔の見た目印象をより正確に鑑別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本発明に係る顔の見た目印象の決定因子の抽出方法を示すフローチャートである。
図2】本発明に係る顔印象解析装置の機能ブロック図である。
図3】本発明に係る顔印象解析装置による顔の見た目印象の鑑別方法を示すフローチャートである。
図4】本発明に係る顔印象解析装置による目視評価値/生理学的量の算出処理を示すフローチャートである。
図5】目視評価値の取得に用いる顔画像の例を示す図である。(図面代用写真)
図6】目視評価値の取得の際の評価者への顔画像の提示方法を示す図である。(図面代用写真)
図7】顔画像に対する目視評価値の集計結果を示す図である。
図8】評価者の視線解析の集計に用いる顔画像上の領域分割を示す図である。(図面代用写真)
図9】顔画像に対する評価者の視線解析の集計結果を示す図である。
図10】60歳代の評価対象の主成分分析結果と年齢印象の目視評価値の相関関係の解析結果を示す図である。
図11】20歳代の評価対象の主成分分析結果と年齢印象の目視評価値の相関関係の解析結果を示す図である。
図12】20歳代の評価対象の主成分分析結果と年齢印象の目視評価値の相関関係の解析結果を示す図である。
図13】20歳代の評価対象の主成分分析結果と年齢印象の目視評価値の相関関係の解析結果を示す図である。
図14】20歳代の評価対象の主成分分析結果と年齢印象の目視評価値の相関関係の解析結果を示す図である。
図15】20歳代の評価対象の主成分分析結果と年齢印象の目視評価値の相関関係の解析結果を示す図である。
図16】30歳代の評価対象の主成分分析結果と年齢印象の目視評価値の相関関係の解析結果を示す図である。
図17】30歳代の評価対象の主成分分析結果と年齢印象の目視評価値の相関関係の解析結果を示す図である。
図18】30歳代の評価対象の主成分分析結果と年齢印象の目視評価値の相関関係の解析結果を示す図である。
図19】30歳代の評価対象の主成分分析結果と年齢印象の目視評価値の相関関係の解析結果を示す図である。
図20】40歳代の評価対象の主成分分析結果と年齢印象の目視評価値の相関関係の解析結果を示す図である。
図21】40歳代の評価対象の主成分分析結果と年齢印象の目視評価値の相関関係の解析結果を示す図である。
図22】50歳代の評価対象の主成分分析結果と年齢印象の目視評価値の相関関係の解析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
[1]本発明の顔の見た目印象の決定部位の抽出方法及び顔の見た目印象の決定因子の抽出方法
本発明は、互いに異なる角度より評価対象の顔を撮影した複数の顔画像の解析を行い、角度依存的に変化する顔の物理的特徴量を測定して、その中から顔の見た目印象と相関関係の高い因子を抽出する、顔の見た目印象の決定因子の抽出方法である。また、互いに異なる角度より評価対象の顔を撮影した複数の顔画像の解析により、顔の物理的特徴量を測定して、その中から、所定の角度から見た顔の見た目印象と相関関係の高い因子を抽出する、顔の見た目印象の決定因子の抽出方法を含む。
【0051】
本発明にいう「顔の見た目印象」とは、評価対象の顔を他者が見た際に、視覚的に受ける印象である。例えば、年齢印象について着目すれば、実年齢よりも若く見える、といった若々しさや、あるいは老けて見える、といった老化印象などの印象が挙げられる。また、他にも、評価対象を見た際に感じる魅力など、種々の印象が挙げられる。また、「角度依存的に変化する顔の物理的特徴量」とは、すなわち、顔を観察する角度によって変化する物理的特徴量である。
【0052】
図1は、本発明の顔の見た目印象の決定因子の抽出方法を示すフローチャートである。これを参照して、本発明の顔の見た目印象の決定因子の抽出方法について、詳細に説明する。
【0053】
<顔画像の取得>
まず、ステップS11において、評価対象の顔画像を取得する。ここでは、先に述べたように、互いに異なる角度より評価対象の顔を撮影した複数の顔画像を用いる。
【0054】
顔画像の取得は、評価対象の顔の角度を変えながら、あるいはカメラを移動しながら、評価対象の顔画像を撮影することによって取得する。この際、複数の顔画像における照明条件が同一となるように撮影を行うことが好ましい。
【0055】
あるいは、評価対象の顔の3次元モデルを作成し、そこから複数の顔画像を取得する構成としてもよい。この場合には、まず、2つ以上のカメラによって評価対象の顔のステレオ画像の撮影を行い、そこから3次元モデルを作成する。そして、その3次元モデルを回転しながら、あるいは3次元モデルを観測する視点を回転しながら、複数の角度からの評価対象の顔画像の取得を行う。
【0056】
このように、3次元モデルを用いることにより、多くの顔画像の取得を行う場合においても、実際に評価対象を撮影するのはステレオ画像を取得する一回のみでよいため、実際に角度を変えながら評価対象の顔画像を撮影する方法と比較して、負担を軽減することができる。
【0057】
また、撮影角度の設定の面においても、3次元モデル、あるいは3次元モデルを観測する視点の回転を機械的に行うことができるため、評価対象の顔の角度やカメラの位置を変更しながら撮影するよりも、意図した角度からの顔画像を容易に得ることができる。
【0058】
さらに、照明についても、3次元モデルへと擬似的な光源を照射することによって、それぞれの角度から取得する評価対象の顔画像について、同一の照明条件とすることも容易である。
【0059】
なお、評価対象の顔を実際に撮影することで得た画像、3次元モデルより得た画像のどちらの場合についても、それぞれの角度からの顔画像についての解析をより正確に行うために、平均輝度の調整などの補正処理を行ってもよい。
【0060】
また、評価対象の顔が与える見た目印象をより正確に抽出するために、顔画像に写りこんだ髪や首などの部位の削除を行う補正や、顔の中でも特にその見た目印象に大きく影響する部分を特定するために、顔画像より顔の任意の部位のみを抽出した画像とする補正などを行ってもよい。
【0061】
<顔画像の解析>
顔画像を取得した後に、ステップS12においてその解析を行い、物理的特徴量の抽出を行う。
【0062】
物理的特徴量としては、例えば、顔画像の輝度のヒストグラムのような、光学的特徴量が挙げられる。具体的には、顔画像の各画素の有する輝度値の集計を行い、横軸を輝度値、縦軸をその輝度値を持つ画素数としてグラフを描くことで、輝度値のヒストグラムを得ることができる。さらに、ヒストグラムの歪度や尖度などの値を算出してもよい。
【0063】
なお、輝度のヒストグラムは、カラーの顔画像中のRGB成分のそれぞれについて求めてもよいし、モノクロの顔画像の、あるいはカラーの顔画像にモノクロ化処理を行った顔画像の輝度について求めてもよい。
【0064】
また、光学的特徴量の他の例としては、顔画像中に含まれる角度性因子に関する値が挙げられる。具体的には、顔画像に任意の方向のガボールフィルタを適用すれば、顔画像中に含まれる線の水平成分や垂直成分、斜方成分などを抽出することができる。さらに、ガボールフィルタ適用後の画像の平均輝度や、輝度のヒストグラムなどを算出することによって、角度性因子の定量化を行うなどの手法がある。
【0065】
その他にも、顔画像の周波数特性の算出など、様々な光学的特徴量を抽出する構成としてもよい。
【0066】
また、光学的特徴量の他にも、顔画像中の各点についての三次元的もしくは二次元的な位置に関する形態的特徴量など、種々の物理量を算出する構成としてもよい。
【0067】
形態的特徴量としては、より具体的には、評価対象の顔の立体形状に関するものが挙げられる。これは、例えば、先に述べたような評価対象の顔の3次元モデルの相同モデリングを行い、主成分分析を行うことによって得ることができる。このようにして得られる顔の立体形状に関する物理量は、各顔画像のヒストグラムやガボールフィルタによる解析によって得られる光学的特徴量とは異なり、顔の観察角度によらないものである。
【0068】
また、例えば、物理的特徴量として光学的特徴量を用いず、形態的特徴量のみを用いる、といった場合においては、ステップS11における顔画像の取得に代えて、他の測定機器によって評価対象の顔の立体形状の測定を行い、その測定結果を物理的特徴量として採用するような構成としてもよい。
【0069】
<目視評価値の取得>
ステップS13では、顔画像に対する目視評価値の取得を行う。これは、ステップS11で取得した顔画像を、評価者へと提示し、評価者がその顔画像より受けた印象を評価することによって行う。
【0070】
例えば、顔の見た目印象のうち、年齢印象の決定因子の抽出を目的とする場合であれば、それぞれ取得角度の異なる複数の顔画像を評価者へと提示し、その中で若く見える顔画像と、老けて見える顔画像の選択を求めるなどの方法がある。また、別の例として、魅力に関する顔の見た目印象の決定因子の抽出を目的とするのであれば、年齢印象の場合と同様にそれぞれ取得角度の異なる複数の顔画像を評価者へと提示した後に、その中で最も魅力的に感じた顔画像の選択を求める方法が挙げられる。このようにして得た目視評価値は、評価対象の顔の見た目印象を直接示す値であるといえる。
【0071】
なお、顔画像を評価者へと提示する際には、評価者の視線情報を取得し、評価者が評価対象の顔のどの領域に何回、何秒間視線を滞留させたかといった情報を取得する。
【0072】
<印象決定部位の抽出>
ステップS13における目視評価値の取得の後には、顔画像を評価者へと提示した際の、評価者の視線情報を解析し、印象決定部位の抽出を行う。
【0073】
ある印象の評価を課した評価者が顔画像を観測する際に、多くの回数、また、長時間視線を滞留させた領域は、意識的、無意識的に関わらず、評価者がその印象を判断する際に注視する領域、すなわち、その印象の決定部位を含んでいるといえる。
【0074】
例えば、顔画像に表示された対象の推定年齢の回答を求めることを評価者へ伝え、顔画像を提示した際に、評価者の視線が多くの回数、長時間滞留した領域は、年齢印象の決定部位を含んでいる。
【0075】
ここでは、上記のように、目視評価の際に評価者の視線が多く滞留した領域とその周辺を、その見た目印象の決定部位として抽出する。
【0076】
なお、ステップS13において評価者へと提示した取得角度の異なる複数の顔画像のそれぞれについて、評価者の視線情報の解析を行い、それぞれの角度から観察した場合の見た目印象の決定部位の抽出を行うことが好ましい。
【0077】
<生理学的量の測定>
ステップS14では、評価対象の顔の皮膚に関する生理学的量の測定を行う。
皮膚に関する生理学的量としては、皮膚表面物性及び/又は内部物性、皮膚組織の組成等が挙げられ、顔の見た目印象と相関のあることが知られているものを用いることができる。例えば、顔の見た目印象が年齢印象である場合には、老化への関与メカニズムが明らかにされている皮膚に関する生理学的量を用いることができる。このような生理学的量として、皮膚表面の物性、例えば皮膚表面粗さ、角層表皮の物性、例えば角層水分量、真皮の物性、例えばコラーゲン線維束量や構造、脂肪層の物性、例えば脂肪体の位置、大きさなど、乳頭層もしくは乳頭層の物性、例えば、乳頭構造の単位面積あたりの個数、高さなどが挙げられる。前記生理学的量は、好ましくは、前記印象決定部位の生理学的量である。
生理学的量の測定は、従来知られている方法により行うことができる。本発明では、非侵襲的方法(手術を伴わない方法)により行う場合に限定される。
【0078】
ステップS11〜S14の各工程は、次の相関関係の解析を行うのに十分な、複数の異なる顔を対象として行う。
【0079】
<見た目印象決定因子の抽出>
ステップS15では、ステップS12において顔画像より取得した物理的特徴量より、顔の見た目印象の決定因子の抽出を行う。
【0080】
ここでは、ステップS12で取得した物理的特徴量と、ステップS13で取得した目視評価値、又はステップS14で測定した生理学的量との相関関係の解析を行い、物理的特徴量の中で、目視評価値又は生理学的量を決定する因子となるものを抽出する。
【0081】
例えば、目視評価値の異なる評価対象の、それぞれ異なる角度から取得した2つの顔画像を比較し、それらの顔画像からそれぞれ取得した物理的特徴量の中で、2つの顔画像において差異があるものは、目視評価値との相関関係を有することが予測される。そして、さらに別の角度からの顔画像についても同様の比較を行うことで、目視評価値と相関関係を持ち、見た目印象の決定因子となっている物理的特徴量、そしてその物理的特徴量と目視評価値との相関関係を明らかにすることができる。
相関関係の解析は、従来知られている方法を用いて行うことができる。
【0082】
また、同一の評価対象の顔について、それぞれ異なる角度からの顔画像に対する目視評価値を比較した場合に差異があれば、それは、所定の角度から顔を見た際にその見た目印象に相関する因子があると考えることができる。そこで、所定の角度から見た顔の見た目印象の目視評価値と、先に説明した顔の立体形状のように、角度に依存しての変化のない物理的特徴量との相関関係を解析することも有効である。
【0083】
同様に、顔画像から得られた物理的特徴量と皮膚に関する生理学的量との相関関係を解析することにより、皮膚に関する生理学的量と相関の高い物理的特徴量を決定することができる。当該生理学的量について、顔の見た目印象に関与することが知られていれば、顔の見た目の印象の決定因子であると推定できる。
【0084】
以上のように、本発明によれば、互いに異なる角度より取得した複数の顔画像より物理的特徴量を抽出し、それらを解析することによって、顔の見た目印象の決定因子を抽出することができる。
【0085】
なお、目視評価値の取得及び物理的特徴量との相関関係の解析と、生理学的量の測定及び物理的特徴量との相関関係の解析は、それら両方を行ってもよいし、必要に応じてどちらか一方のみを行ってもよい。また、さらに異なる評価値や量を用い、それと角度の異なる複数の顔画像より抽出した物理的特徴量との相関関係の解析を行ってもよい。
【0086】
また、顔の見た目印象の決定因子の抽出を、例えば20歳代、30歳代、40歳代、といったように、評価対象の年齢層毎に行ってもよい。このように、年齢層毎の解析を行えば、物理的特徴量と見た目印象との間の相関関係の解析を、より詳細に行うことができる。
【0087】
[2]本発明の顔の見た目印象の鑑別方法及び顔印象解析装置
本発明は、被験者の顔画像を取得し、それを解析することによって物理的特徴量を算出して、被験者の顔の見た目印象を鑑別する方法、及び顔の見た目印象を鑑別する顔印象解析装置である。
【0088】
図2に機能ブロック図を示すように、本発明に係る顔印象解析装置は、顔画像取得手段1と、物理的特徴量算出手段2と、相関関係記憶手段3と、目視評価値算出手段4と、生理学的量算出手段5と、を備える。
【0089】
顔画像取得手段1は、さらに、ステレオ画像取得手段11と、3次元モデル生成手段12、及び3次元モデル回転手段13を有する。
【0090】
相関関係記憶手段3は、顔の見た目印象の決定因子の抽出の過程において、物理的特徴量と目視評価値とを解析して得られた相関関係を示す式や、物理的特徴量と生理学的量とを解析して得られた相関関係を示す式などの情報を保持する。
【0091】
なお、本発明に係る顔印象解析装置は、演算装置と、主記憶装置と、補助記憶装置と、各種の入出力装置と、を備える、汎用的なコンピュータ装置を用い、その補助記憶装置に、コンピュータ装置を先述した各手段として機能させるための顔印象解析プログラムを記憶させることで実現する。そして、該コンピュータ装置を顔印象解析装置として機能させる際には、顔印象解析プログラムを必要に応じて主記憶装置上に展開し、演算装置による処理を行う。
【0092】
また、顔画像取得手段1としてカメラ装置を用い、それによって得た顔画像を物理的特徴量算出手段2へと受け渡す構成や、相関関係記憶手段3を汎用的なサーバ装置によって実現する構成など、任意の複数機器を、USB(Universal Serial Bus)接続や記録メディアを用いたデータの受け渡し、インターネットやLAN(Local Area Network)などのネットワーク経由での通信を可能に構成してもよい。
【0093】
<顔画像の取得>
図3は、顔印象解析装置による、被験者の顔の見た目印象の鑑別方法を示すフローチャートである。まず、ステップS21において、顔画像取得手段1を用いて被験者の顔画像を取得する。
【0094】
ここでは、顔の見た目印象の決定因子が強く表れる角度より被験者の顔画像を取得することが好ましい。また、顔の見た目印象の決定因子の抽出方法における顔画像取得工程と同様、被験者の顔の角度を変えながら、あるいはカメラを移動しながら、被験者の顔を複数回撮影し、複数の顔画像を取得してもよい。
【0095】
また、被験者の顔の3次元モデルを作成し、そこから一枚、あるいは複数の顔画像を取得してもよい。この場合には、ステレオ画像取得手段11を用いて被験者の顔を2つ以上のカメラによって撮影したステレオ画像を取得し、3次元モデル生成手段12を用いて3次元モデルを作成する。そして、3次元モデル回転手段13を用いてその3次元モデルに回転処理を行うことによって被験者の顔を観測する角度を設定し、顔画像を取得する。
【0096】
このように、3次元モデルを用いる構成とした場合には、顔画像の取得角度を容易に設定できるほか、さらに3次元モデルへと擬似的な光源を照射することによって、様々な照明状況下を想定した被験者の顔画像を取得することもできる。
【0097】
<物理的特徴量の算出>
そして、ステップS22において、物理的特徴量算出手段2を用いて、ステップS21で取得した顔画像より物理的特徴量の算出を行う。ここでは特に、先述した顔の見た目印象の決定因子の抽出方法によって、顔の見た目印象の決定因子として抽出された物理的特徴量の算出を行う。
【0098】
例えば、顔の見た目印象の決定因子の抽出において算出したように、顔画像の輝度のヒストグラムや、ガボールフィルタを用いた角度性因子の抽出などの光学的特徴量の抽出や、形態的特徴量などの抽出を行う。
【0099】
形態的特徴量として、顔の3次元モデルの立体形状を用いる場合には、予め顔の3次元モデル群を用意しておき、それらとの相同モデリングを行い、主成分分析を行う。
【0100】
また、例えば、物理的特徴量として光学的特徴量を用いず、形態的特徴量のみを用いる、といった場合においては、ステップS21における顔画像の取得に代えて、他の測定機器によって評価対象の顔の立体形状の測定を行い、ステップS22で、その測定結果から物理的特徴量を算出するような構成としてもよい。
【0101】
<顔の見た目印象の解析>
ステップS23では、ステップS12で算出した物理的特徴量より、顔の見た目印象の解析を行う。それにより、被験者の顔の見た目印象の目視評価値と、被験者の顔の皮膚に関する生理学的量のうちの、少なくとも1つの算出を行う。
【0102】
図4(a)は、目視評価値算出手段4による目視評価値の算出処理を示すフローチャートである。まず、ステップS31で、相関関係記憶手段3より、物理的特徴量と目視評価値との相関関係データを取得する。なお、ここで、相関関係データとして、被験者の年齢層毎のデータを用意しておき、それを用いてもよい。
【0103】
そして、ステップS32において、ステップS22で取得した物理的特徴量と、ステップS31で取得した相関関係データとに基づいて、目視評価値の算出を行う。算出された目視評価値から、被験者の顔の見た目印象の鑑別を行うことができる。
【0104】
図4(b)は、生理学的量算出手段5による生理学的量の算出処理を示すフローチャートである。こちらについても、上述の目視評価値の算出処理と同様の処理であり、まずステップS41で、相関関係記憶手段3より、物理的特徴量と生理学的量との相関関係データを取得する。
【0105】
そして、ステップS42において、ステップS22で取得した物理的特徴量と、ステップS41で取得した相関関係データとに基づいて、生理学的量の算出を行う。算出された生理学的量から、被験者の顔の見た目印象の鑑別を行うことができる。
【0106】
以上のように、物理的特徴量と目視評価値又は生理学的量との相関関係に基づいて、被験者の顔画像から抽出した物理的特徴量より目視評価値及び/又は生理学的量を算出し、被験者の顔の見た目印象の鑑別を行うことができる。
【0107】
なお、ステレオ画像取得手段11、3次元モデル生成手段12、及び3次元モデル回転手段13を用いれば、上述したように、一つ、あるいは複数の任意の角度からの被験者の顔画像を容易に取得することができるが、ステレオ画像取得手段11は一般的な単眼カメラなどと比較して高価である。そのため、ステレオ画像取得手段11を省略し、一般的な単眼カメラなどを顔画像取得手段1として備え、被験者の顔画像を取得する構成としてもよい。このような構成とすることにより、顔印象解析装置を低コストに実現することができる。
【0108】
また、本発明に係る顔の見た目印象の鑑別方法及び顔印象解析装置の利用方法として、化粧効果の鑑別方法が挙げられる。これはすなわち、被験者の化粧前の顔の画像を用いて行った見た目印象の解析結果と、被験者の化粧後の顔の画像を用いて行った見た目印象の解析とを比較することにより、化粧が見た目印象へ及ぼした効果を鑑別するものである。
【0109】
以下に、見た目の年齢印象の目視評価値の取得、印象決定部位の抽出、及び物理的特徴量の測定についての実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がこの実施例にのみ限定されないことは言うまでもない。
【実施例】
【0110】
[1]目視評価値の取得
<顔画像の取得>
20歳代から60歳代の各年齢層につき56人ずつ、合計280人の評価対象について、ステレオカメラを用いて撮影した顔のステレオ画像より、評価対象の顔の3次元モデルを作成した。なお、ここで、髪や耳、首などの部分は除去し、評価対象の顔面のみを表す3次元モデルとした。
【0111】
そして、3次元モデルを回転し、日常生活において他人の顔を見る際に頻出する6つの角度を設定して、顔画像を作成した。図5に、(a)〜(g)の7つの顔画像を例示する。
【0112】
図5(a)は、評価対象の顔を真正面より見た場合の顔画像である。この状態の3次元モデルに対して、それぞれ異なる回転処理を行い、図5(b)〜(g)の角度付きの顔画像を取得した。図5(b)は、垂直方向に回転軸をとって3次元モデルを回転して取得したものであり、評価対象の顔を右45度の角度から見た場合の顔画像である。図5(c)は、水平方向に回転軸をとって3次元モデルを回転して取得したものであり、評価対象の顔を正面上側から見下ろした場合の顔画像である。図5(d)は、水平方向に回転軸をとって3次元モデルを回転して取得したものであり、対象の顔を正面下側から見上げた場合の顔画像である。図5(e)は、図5(b)と図5(d)の両方の回転を3次元モデルに加えたものであり、評価対象の顔を右斜め下方より見上げた顔画像である。図5(f)は、図5(b)と図5(c)の両方の回転を3次元モデルに加えたものであり、評価対象の顔を右斜め上方より見下ろした顔画像である。そして、図5(g)は、垂直方向に回転軸をとって3次元モデルを回転して取得したものであり、評価対象の顔を右90度の角度から見た場合の顔画像である。
【0113】
<目視評価値の取得>
上記の通り3次元モデルより取得した評価対象の顔画像を、モニターを用いて112人の評価者へと提示し、顔の見た目の年齢印象の目視評価値の取得を行った。評価者への顔画像の提示の際には、視線解析装置を用いて、評価者の視線が顔画像のどの領域に何回、何秒間滞留するかの解析を行った。図6に、評価者への顔画像の提示方法の模式図を示す。
【0114】
まず、モニターに図6(a)に示すように、この後に2つの画像を表示することと、そして、それらを見てどちらの画像の方が年齢が高く見えるかの回答を求める指示とを提示した。
【0115】
次いで、図6(b)に示すように、画面中央へ固視点とする記号を表示し、評価者へとそれを見るように促した後、図6(c)に示すように、図5(a)のような評価対象の顔を真正面から見た場合の顔画像を提示した。このように固視点を表示した後に顔画像を表示することで、それぞれの顔画像を提示する際の評価者の視線の初期位置を同一として、評価者の視線解析をより正確に行うことができる。
【0116】
一定時間経過後に、図6(d)に示すように、再度図6(b)と同様の固視点を表示した後、図6(e)に示すように、図5(b)〜(g)のような正面以外から評価対象の顔を見た場合の顔画像のうちの1つを表示した。そして、図6(c)で表示した正面からの顔画像と、図6(e)で表示した角度付きの顔画像との、どちらの方が評価対象の年齢が高く見えたかの回答を得た。
【0117】
図7に、各評価対象の顔画像に対して、112人の評価者より取得した目視評価値の集計結果を示す。これは、図5(b)〜(g)のそれぞれの角度付きの顔画像について、真正面から見た顔画像よりも老けて見えると回答された割合を示したものである。すなわち、縦軸が、評価者が受けた年齢印象を表す指数となっており、この値が大きければ、その角度から見た顔画像の年齢印象は正面の顔よりも高く、値が小さければ、その角度から見た顔画像の年齢印象は正面の顔よりも低いといえる。
【0118】
この集計結果によれば、正面の顔の印象に比べ年齢印象が低かったのは、図5(d)のような、評価対象の顔を下方より見た場合の顔画像であった。
【0119】
この結果より、図5(b)、(d)、(e)、(f)、(g)のような角度のついた顔画像は、真正面からの顔画像と異なる物理的特徴量を有し、それが評価者の感じる年齢印象へと影響を及ぼしていること、すなわち、角度依存的に変化する物理的特徴量の中に、見た目の年齢印象の決定因子となっているものが存在することが推察される。
【0120】
[2]印象決定部位の抽出
ここでは、先に説明したように、図5に示した、正面(a)、右45度(b)、上側(c)、下側(d)、右下(e)、右上(f)、右90度(g)の7つの角度から評価対象の顔を見た場合のそれぞれの顔画像を提示した際に、視線解析装置によって取得した評価者の視線情報の解析を行った。
【0121】
図8は、視線解析結果の集計のために、図5に示した7つの角度からの顔画像のそれぞれについて設定した、目元の領域L1、鼻の領域L2、口元の領域L3、目の周囲の領域L4、頬の領域L5、額の領域L6の6つの領域を示す図である。
【0122】
これらのL1〜L6の各領域への評価者の視線の停留時間の測定を行い、集計した結果を図9に示す。これを見ると、図5(a)に示した正面からの顔画像については、評価者の視線は目元の領域L1への視線の停留時間が長いのに対し、その他の角度からの顔画像については、頬の領域L5への視線の停留時間が長い、という結果が得られた。
【0123】
この結果から、評価対象の顔を正面以外の角度から見る場合において、頬部位が年齢印象の判断に重要な領域であることが示唆された。
【0124】
[3]物理的特徴量の測定
先に説明したように、図5(a)〜(g)に示したような7角度の顔画像についての年齢印象の目視評価値を取得した、20歳代から60歳代の各年齢層につき56人ずつ、合計280人の評価対象について、顔の立体形状を表す3次元モデルを作成した。そして、物理的特徴量の測定処理として、年齢層毎に相同モデリングと主成分分析を行い、観察角度毎の年齢印象の目視評価値と主成分分析によって得られた主成分得点との相関関係を解析した。
【0125】
図10に、60歳代の評価対象について、主成分分析によって得られた第9主成分と、図5(a)〜(g)の各角度から見た場合の年齢印象の目視評価値との関係を示す。図10(a)に、年齢印象の目視評価値と、第9主成分との相関係数を示す。
【0126】
図10(b)は、縦軸を正面(図5(a))から顔を見た場合の年齢印象の目視評価値、横軸を第9主成分の主成分得点として、目視評価値と主成分得点との関係を示す図である。これを見ると、正面から見た場合の年齢印象の目視評価値と第9主成分との相関は弱いと言える。図10(a)に示す相関係数も0.179と低い値となっている。また、図10(c)は、第9主成分の主成分得点が低い場合の顔の3次元モデルを、図10(d)は、第9主成分の主成分得点が高い場合の顔の3次元モデルを正面から見た場合の画像をそれぞれ示している。
【0127】
図10(e)は、縦軸を右45度の角度(図5(b)から顔を見た場合の年齢印象の目視評価値、横軸を第9主成分の主成分得点として、目視評価値と主成分得点との関係を示す図である。これを見ると、第9主成分の主成分得点が高い場合に、目視評価値が低くなっている傾向が読み取れる。図10(a)に示す相関係数も、−0.490と、正面から見た場合よりも大きな絶対値を持っている。図10(f)は、第9主成分の主成分得点が低い場合の顔の3次元モデルを、図10(g)は、第9主成分の主成分得点が高い場合の顔の3次元モデルを右45度の角度から見た場合の画像をそれぞれ示している。図10(c)、(d)に示した正面から見た場合と比較すると、主成分得点が低い場合には頬の起伏の激しさが、主成分得点が高い場合には、頬が張った印象が、より強く感じられるものとなっている。
【0128】
これより、60歳代の評価対象について、顔の三次元モデルを右45度の角度から観察した場合、あるいは、顔を右45の角度から撮影した顔画像の解析を行い、頬の起伏に関する値を抽出することで、年齢印象の鑑別を行うことができるものと考えられる。
【0129】
図10(h)は、縦軸を下側(図5(d))から顔を見た場合の年齢印象の目視評価値、横軸を第9主成分の主成分得点として、目視評価値と主成分得点との関係を示す図である。これを見ると、上記の右45度の角度から見た場合と同様、第9主成分の主成分得点が高い場合に、目視評価値が低くなっている傾向が読み取れる。図10(a)に示す相関係数も、−0.288と、正面から見た場合よりも大きな絶対値を持っている。図10(i)は、第9主成分の主成分得点が低い場合の顔の3次元モデルを、図10(j)は、第9主成分の主成分得点が高い場合の顔の3次元モデルを下側から見た場合の画像をそれぞれ示している。図10(c)、(d)に示した正面から見た場合と比較すると、図10(f)、(g)と同様、主成分得点が低い場合には頬の起伏の激しさが、主成分得点が高い場合には、頬が張った印象が、より強く感じられるものとなっている。
【0130】
これより、60歳代の評価対象について、顔の三次元モデルを下側から観察した場合、あるいは、顔を下側から撮影した顔画像の解析を行い、頬の起伏に関する値を抽出することが、年齢印象の鑑別に有効であると考えられる。
【0131】
上記のように、60歳代の評価対象について、顔を正面から観察した場合には得られず、右45度の角度や下側などから観察した場合に得られる、年齢印象の決定因子が存在することが考察できる。
【0132】
図10に示した60歳代の場合と同様に、各年齢層について、年齢印象の目視評価値との間に相関関係が見られた主成分と、それに伴う顔の見た目について、以下に示す。
【0133】
図11(a)は、20歳代の評価対象の第8主成分得点と、図5(f)に示した角度からの年齢印象の目視評価値との対応を示すグラフである。ここに示すように20歳代の評価対象については、第8主成分得点が高いほど、推定年齢が高くなるという結果が得られた。また、第8主成分得点の平均から−3SD方向へ変形させた場合の顔を図11(b)に、+3SD方向へ変形させた場合の顔を図11(c)に示す。これらを見ると、主成分得点が高い場合に、眉骨、頬骨の大きさが大きく、頬がこけて見える様子が見受けられる。
【0134】
図12(a)は、20歳代の評価対象の第6主成分得点と、図5(c)に示した角度からの年齢印象の目視評価値との対応を示すグラフである。ここに示すように20歳代の評価対象については、第6主成分得点が高いほど、推定年齢が高くなるという結果が得られた。また、第6主成分得点の平均から−3SD方向へ変形させた場合の顔を図12(b)に、+3SD方向へ変形させた場合の顔を図12(c)に示す。これらを見ると、主成分得点が高い場合に、顔のほりが深く、鼻、口が前方へ突出して見える様子が見受けられる。
【0135】
図13(a)は、20歳代の評価対象の第9主成分得点と、図5(e)に示した角度からの年齢印象の目視評価値との対応を示すグラフである。ここに示すように20歳代の評価対象については、第9主成分得点が低いほど、推定年齢が高くなるという結果が得られた。また、第9主成分得点の平均から−3SD方向へ変形させた場合の顔を図16(b)に、+3SD方向へ変形させた場合の顔を図16(c)に示す。これらを見ると、主成分得点が低い場合には、鼻よりも口が前方へ突出して、主成分得点が高い場合には、口よりも鼻が前方へ突出して見える様子が見受けられる。
【0136】
図14(a)は、20歳代の評価対象の第3主成分得点と、図5(d)に示した角度からの年齢印象の目視評価値との対応を示すグラフである。ここに示すように20歳代の評価対象については、第3主成分得点が低いほど、推定年齢が高くなるという結果が得られた。また、第3主成分得点の平均から−3SD方向へ変形させた場合の顔を図14(b)に、+3SD方向へ変形させた場合の顔を図14(c)に示す。これらを見ると、主成分得点が低い場合には、顎の位置が口よりも後方に、主成分得点が高い場合には、顎の位置が口よりも前方に位置して見える様子が見受けられる。
【0137】
図15(a)は、20歳代の評価対象の第10主成分得点と、図5(b)に示した角度からの年齢印象の目視評価値との対応を示すグラフである。ここに示すように20歳代の評価対象については、第10主成分得点が高いほど、推定年齢が高くなるという結果が得られた。また、第10主成分得点の平均から−3SD方向へ変形させた場合の顔を図15(b)に、+3SD方向へ変形させた場合の顔を図15(c)に示す。これらを見ると、主成分得点が低い場合は、鼻は低く顎は大きく、主成分得点が高い場合には、鼻は高く顎は小さく見える様子が見受けられる。
【0138】
以上より、20歳代の評価対象について、顔を右上から観察した場合の頬のこけの様子、顔を上から観察した場合の顔のほりの深さ、顔を右下から観察した場合の口と鼻の前後の位置関係、顔を下から観察した場合の顎と口の前後の位置関係などの解析を行うことにより、年齢印象の鑑別ができる可能性が示唆された。
【0139】
図16(a)は、30歳代の評価対象の第1主成分得点と、図5(b)に示した角度からの年齢印象の目視評価値との対応を示すグラフである。ここに示すように30歳代の評価対象については、第1主成分得点が高いほど、推定年齢が高くなるという結果が得られた。また、第1主成分得点の平均から−3SD方向へ変形させた場合の顔を図16(b)に、+3SD方向へ変形させた場合の顔を図16(c)に示す。これらを見ると、主成分得点が低い場合よりも高い場合の方が、顔の大きさが大きく見える様子が見受けられる。
【0140】
図17(a)は、30歳代の評価対象の第4主成分得点と、図5(b)に示した角度からの年齢印象の目視評価値との対応を示すグラフである。ここに示すように30歳代の評価対象については、第4主成分得点が低いほど、推定年齢が高くなるという結果が得られた。また、第4主成分得点の平均から−3SD方向へ変形させた場合の顔を図17(b)に、+3SD方向へ変形させた場合の顔を図17(c)に示す。これらを見ると、主成分得点の大小により、顎の大きさの差異が大きく見える様子が見受けられる。
【0141】
図18(a)は、30歳代の評価対象の第1主成分得点と、図5(c)に示した角度からの年齢印象の目視評価値との対応を示すグラフである。ここに示すように30歳代の評価対象については、第1主成分得点が高いほど、推定年齢が高くなるという結果が得られた。また、第1主成分得点の平均から−3SD方向へ変形させた場合の顔を図18(b)に、+3SD方向へ変形させた場合の顔を図18(c)に示す。これらを見ると、主成分得点が低い場合よりも高い場合の方が、顔の大きさが大きく見える様子が見受けられる。
【0142】
図19(a)は、30歳代の評価対象の第9主成分得点と、図5(d)に示した角度からの年齢印象の目視評価値との対応を示すグラフである。ここに示すように30歳代の評価対象については、第9主成分得点が低いほど、推定年齢が高くなるという結果が得られた。また、第9主成分得点の平均から−3SD方向へ変形させた場合の顔を図19(b)に、+3SD方向へ変形させた場合の顔を図19(c)に示す。これらを見ると、主成分得点の大小により、頬の形状に特に大きな差異が現れる様子が見受けられる。
【0143】
以上より、30歳代の評価対象について、顔を右45度の角度から観察した場合の顔の大きさ、同じく顔を右45度の角度から観察した場合の顎の大きさ、顔を上側から観察した場合の顔の大きさ、顔を下側から観察した場合の頬の形状などの解析を行うことにより、年齢印象の鑑別ができる可能性が示唆された。
【0144】
図20(a)は、40歳代の評価対象の第5主成分得点と、図5(e)に示した角度からの年齢印象の目視評価値との対応を示すグラフである。ここに示すように40歳代の評価対象については、第5主成分得点が低いほど、推定年齢が高くなるという結果が得られた。また、第5主成分得点の平均から−3SD方向へ変形させた場合の顔を図20(b)に、+3SD方向へ変形させた場合の顔を図20(c)に示す。これらを見ると、主成分得点が高い場合に、顔が長く見える様子が見受けられる。
【0145】
図21(a)は、40歳代の評価対象の第2主成分得点と、図5(c)に示した角度からの年齢印象の目視評価値との対応を示すグラフである。ここに示すように40歳代の評価対象については、第2主成分得点が低いほど、推定年齢が高くなるという結果が得られた。また、第2主成分得点の平均から−3SD方向へ変形させた場合の顔を図21(b)に、+3SD方向へ変形させた場合の顔を図21(c)に示す。これらを見ると、主成分得点が高い場合に、顔のほりが深く見える様子が見受けられる。
【0146】
以上より、40歳代の評価対象について、顔を右下から観察した場合の顔の長さ、顔を上側から観察した場合の顔のほりの深さなどの解析を行うことにより、年齢印象の鑑別をできる可能性が示唆された。
【0147】
図22(a)は、50歳代の評価対象の第4主成分得点と、図5(d)に示した角度からの年齢印象の目視評価値との対応を示すグラフである。ここに示すように50歳代の評価対象については、第4主成分得点が高いほど、推定年齢が高くなるという結果が得られた。また、第4主成分得点の平均から−3SD方向へ変形させた場合の顔を図22(b)に、+3SD方向へ変形させた場合の顔を図22(c)に示す。これらを見ると、主成分得点が低い場合には、顎の位置が口よりも前方に、主成分得点が高い場合には、顎の位置が口よりも後方に位置して見える様子が見受けられる。
【0148】
これより、50歳代の評価対象について、顔を下側から観察した場合の顎の位置などの解析を行うことにより、年齢印象の鑑別ができる可能性が示唆された。
【0149】
なお、本実施例においては、左右方向については、図5に示した右45度(b)、右下(e)、右上(f)、右90度(g)のように、右側から顔を観察した場合の顔画像を用いたが、左側から顔を観察した場合においても同様の結果が得られるものと考えられる。したがって、本発明に係る年齢印象の鑑別は、左右方向についてはどちら側から顔を観察した場合の顔画像を用いても、同様に行うことができる。
【0150】
このように、同一の立体形状を持つ顔であっても、それを見る角度によって年齢印象の目視評価値は異なり、そして特定の角度から見た場合に年齢印象との相関関係を示す因子の存在が示唆された。このような因子を用いることで、年齢層毎の、また、顔を観察する角度毎の、詳細な年齢印象の鑑別を行うことができると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明は、化粧品販売、カウンセリング、エステティック等の場面で、顧客の見た目の年齢印象等を簡便かつ正確に鑑別することなどに利用できる。
【符号の説明】
【0152】
1 顔画像取得手段
11 ステレオ画像取得手段
12 3次元モデル生成手段
13 3次元モデル回転手段
2 物理的特徴量算出手段
3 相関関係記憶手段
4 目視評価値算出手段
5 生理学的量算出手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22