(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃焼排ガス中の窒素酸化物を窒素に還元して除去する燃焼排ガス浄化方法に用いられ、該燃焼排ガスには、該窒素酸化物を還元するための還元剤としてアルコールが添加される、排ガス浄化触媒に用いられる担体を評価する方法であって、
担体となる一つのゼオライトについて、事前に該ゼオライトの表面に含まれる水分を焼成加熱により除去したうえ、フーリエ変換赤外分光装置により、当該ゼオライト骨格内のAl−OHのスペクトルのピークを積分することによりAl−OHスペクトルのピーク面積(A)を測定し、
該ピーク面積(A)を、上記フーリエ変換赤外分光装置による測定に用いられたゼオライトの測定担体重量(W)で除した値(S)を算出し、
該値(S)の測定を、複数種のゼオライトについて同一のフーリエ変換赤外分光装置を用いて同一の測定条件下に行い、
次に、各ゼオライトを担体とする排ガス浄化触媒を調製し、調製された各排ガス浄化触媒について、窒素酸化物を還元するための還元剤としてアルコールを添加した排ガスの浄化試験を行って、その脱硝率を測定し、
各ゼオライトが有する値(S)と脱硝率との相関関係を求め、望ましい脱硝率を得るための値(S)の範囲を指標として決定する
ことを特徴とする排ガス浄化触媒に用いられる担体を評価する方法。
前記値(S)が請求項1の方法により決定される望まれる脱硝率に相当する値(S)の範囲内になるまで、不活性ガス雰囲気下においてゼオライトを焼成する処理を行う、排ガス浄化触媒に用いられる担体の調製方法。
【背景技術】
【0002】
各種の内燃機関は、石油等の天然源の燃料により駆動するものであるが、こうした燃料は、微量に窒素化合物を含有しているため、これらを燃焼させて発生する燃焼排ガス中には、微量の窒素酸化物が含まれることになる。こうした燃焼排ガス中に存在する窒素酸化物は有害であるため、大気に放出する前にこれを除去しなければならないが、そのための方法の一つとして、アンモニア選択触媒還元法が主流なものとして知られている。このアンモニア選択触媒還元法は、バナジウムやチタニアを主成分とする脱硝触媒を触媒として用い、アンモニアを還元剤として用いる方法である。
【0003】
各種の内燃機関のうち、船舶用ディーゼルエンジン等では、自動車用ディーゼルエンジンの場合と異なり、C重油等を燃焼させる。C重油等は、窒素化合物の他、硫黄化合物の含有率も高いため、これを燃焼させるとその燃焼排ガス中には、窒素酸化物と共に硫黄酸化物も無視することのできない含有率で生ずることになる。
【0004】
このような硫黄酸化物の含有率も多い燃焼排ガスに対して、上記のようなアンモニア選択触媒還元法を用いて脱硝しようとした場合、燃焼排ガス中に存在する硫黄酸化物と還元剤として投入されたアンモニアとが反応して
硫酸アンモニウム[(NH
4)
2SO
4](硫安)が生じる。そして、船舶用ディーゼルエンジン等では、過給機を通過した後の排ガス温度が約250℃程度の低温になるため、生じた硫酸アンモニウム(硫安)が排気路中の各所に析出して、例えば、排ガスの冷却のために排気路中に設置される熱交換器に閉塞が生じるといった問題があった。
【0005】
このような問題は、還元剤としてアンモニアを用いることにより生じているため、アンモニア以外の還元剤による燃焼排ガス浄化方法が検討され、このような燃焼排ガス浄化方法として、例えば、特許文献1に記載の方法がある。
【0006】
特許文献1に記載の方法では、エタノール等のアルコールを還元剤として用い、脱硝触媒として、βゼオライトに特定の金属を担持させてなるものを用いている。
【0007】
また、特許文献2には、メタノール等のアルコールを還元剤として用い、脱硝触媒としてプロトン型βゼオライトを用いる脱硝方法が記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
本発明による排ガス浄化触媒は、燃焼排ガス中の窒素酸化物を窒素に還元して除去する燃焼排ガス浄化方法に用いられるものである。
【0021】
ここで、燃焼排ガス浄化方法を実施するに際して、従来のアンモニア選択触媒還元法に従いアンモニアを還元剤として燃焼排ガスに添加した場合、添加されたアンモニアと燃焼排ガス中に含有される硫黄酸化物とが反応して硫安が生じるため、還元剤としてアンモニアではなくアルコールを添加する改良方法が提案されており、本発明に関する排ガス浄化触媒の適用においても、還元剤としてアルコールを添加する。
【0022】
添加される還元剤であるアルコールは、燃焼排ガスの還元処理時の温度において還元力を有するものであれば、特に制限されるものではないが、触媒上にコーク等が堆積して、脱硝性能が低下するという問題があるので、炭素数の少ないアルコールであるメタノール、エタノール等を用いることが好ましい。
【0023】
本発明は、低アルコール濃度域にて脱硝性能を向上させることが出来る排ガス浄化触媒であり、添加される還元剤であるアルコールの濃度は、1000〜7000ppmが好ましく、1000〜6000ppmが好ましい。
【0024】
さらに、本発明による排ガス浄化触媒は、船舶用ディーゼル、油焚きボイラー、ガスタービン等の燃焼排ガス温度が比較的低い場合に適用されることを想定したものであり、より具体的には、本発明による排ガス浄化触媒は、180〜400℃、好ましくは200〜300℃の範囲内の温度の燃焼排ガス中の窒素酸化物を窒素に還元除去するために使用される。
【0025】
本発明による排ガス浄化触媒は、担体と該担体に担持された脱硝触媒金属とからなるものである。
【0026】
本発明の触媒に用いられる担体は、フーリエ変換赤外分光装置(FT−IR)で測定されるAl−OHスペクトルのピーク面積(A)を、測定担体重量(W)で除した値(S)(以下、簡単のため「値(S)」と称する)が1500〜3500、好ましくは1530〜3260の範囲にあるゼオライトが使用される。
【0027】
Al−OHスペクトルのピーク面積(A)は、フーリエ変換赤外分光装置(FT−IR)で測定されるAl−OHスペクトルのピークを積分することによって得られるものである。ピーク面積(A)とは、ピークの両端を直線で切り取り、その切り取った直線で囲まれた部分を示す。この積分計算は、例えば、フーリエ変換赤外分光装置(FT−IR)に付属されている計算システムを用いることが出来る。
【0028】
ここで、ゼオライト中の「Al−OH」は、基本骨格中の「−O−Al−O−」の一部が切断されることにより生じるものである。
【0029】
測定担体重量(W)は、フーリエ変換赤外分光装置(FT−IR)で測定される測定サンプルの重量であり、例えば、サンプル粉末のみを金型に入れ、加圧することでペレットに成形したペレット形態の担体の重量を測定することにより決められる。
【0030】
上記値(S)が1500〜3500であるゼオライトを担体として用いることでゼオライト骨格内のAl−OHが適量となり、還元剤であるアルコールの触媒金属に到達する率(選択率)が向上し、ひいては、脱硝率が向上する。一方で、値(S)が1500より小さなゼオライトを用いると、酸点が減少し還元剤のアルコール選択率は良好となるが、反応性自体が低下するために脱硝率が低下すると考えられる。他方で、値(S)が3500より大きなゼオライトを用いると、酸点(数)が過剰となり、アルコールが浪費されるために脱硝率が低下すると考えられる。
【0031】
なお、フーリエ変換赤外分光装置(FT−IR)で測定されるAl−OHスペクトルの範囲には、ゼオライト表面に含まれる水のピーク強度も現れるため、測定前にゼオライトに対して焼成加熱(例えば真空加熱)を行い、ゼオライト表面に含まれる水分を除去することが好ましい。
【0032】
値(S)を用いているのは、フーリエ変換赤外分光装置(FT−IR)で測定されるサンプル間で異なる測定担体(ペレット)の厚みの影響を補正するためである。
【0033】
担体として用いるゼオライトは、値(S)について上記のような範囲を有しており、かつ、脱硝性能を発揮することができるものであれば特に制限はない。しかし、MOR型ゼオライトのように、酸強度が強い構造を有するゼオライトを用いると大量の還元剤が必要になる。また、200℃付近の低温領域でも脱硝性能を発揮させるためにはβ型ゼオライトやY型ゼオライトのように酸強度が弱いゼオライトでは、還元剤が反応し難くなるため、MOR型よりも比較的酸強度が弱く、β型ゼオライトやY型ゼオライトよりも酸強度が強い構造を有するMFI型ゼオライトを用いることが好ましい。特にFER型ゼオライトを用いることが好ましい。
【0034】
本発明に係る触媒の担体に用いられるゼオライトは、値(S)が1500〜3500の範囲内であるという特性を有するものであり、このような特性を有するゼオライトは、フーリエ変換赤外分光装置(FT−IR)で測定して得られる値(S)で表される、ゼオライト骨格内のAl−OHが適量となるまで、窒素等の不活性ガス雰囲気下においてゼオライトを焼成する処理を行うことにより得られる。その際の焼成条件は、詳しくは、ゼオライト粉末を粉砕し、反応器に充填した後、不活性雰囲気下で所定の温度・時間で焼成した。例えば、市販のゼオライトを500〜800℃で12〜36時間程度の焼成を行うことが好ましい。
【0035】
担体に担持される脱硝触媒金属は、脱硝性能を発揮することができるものであれば特に制限はないが、例えば、Co、Bi、Ag、Pbから選ばれる少なくとも1種類が挙げられる。これらの中で特に好ましい金属はBiである。
【0036】
本発明による排ガス浄化触媒は、上記の担体に上記の触媒金属を担持させることにより調製される。その際の触媒金属の前駆体化合物としては、無機酸塩(例えば硝酸塩、塩化物)や有機酸塩(例えば酢酸塩)を用いることができる。
【0037】
担体である特定のゼオライトへの触媒金属の担持は、イオン交換により行われ、そのための方法としては、例えば、触媒金属を所定の溶媒に溶かし、そこに上記の特性を有するゼオライト粒子を加えてスラリーとし、このスラリーを加温状態で撹拌し、その後、室温に冷ますことにより、ゼオライトに触媒金属が担持された排ガス浄化触媒を得ることが出来る。
【0038】
このような触媒調製に用いられる溶媒は、触媒金属を均一に溶解させるものであることが好ましい。触媒金属の前駆体化合物として硝酸ビスマスを用いる場合には、エチレングリコール、酢酸、希硝酸、2−メトキシエタノール等が好ましい溶媒として挙げられる。また、触媒金属の前駆体化合物として硝酸ビスマスを用い、溶媒として水を用いる場合には、この化合物は水に対して難溶性であるため水中に懸濁しているがゼオライトに触媒金属を担持させることは可能である。
【0039】
(本発明による排ガス浄化触媒の形態)
本発明による排ガス浄化触媒は、燃焼排ガス中の窒素酸化物と接触してこれを窒素に還元することができればいかなる形態を有していてもよく、例えば、粒状、ペレット状、ハニカム状、波状小片、板状等の形態が挙げられるが、適用する反応器やガス流通条件により任意に選定することができる。
【0040】
図1は、本発明による排ガス浄化触媒を適用した排ガス浄化装置(1)の一例を示しており、波板状の基材(2)と平板状の基材(3)とが交互に積層されて、その状態でケーシング(4)内に充填されることによりハニカム状をなしている。
【0041】
ここで、ハニカム(蜂の巣)状の構造とは、一般的には、隔壁により区画されかつ排ガスが流通可能な複数の貫通孔(セル)と当該隔壁とからなる構造のことをいい、上記貫通孔の断面形状(セルの断面形状)は特に限定されず、例えば円形、円弧形、正方形、長方形、六角形が挙げられる。
【0042】
波板状の基材(2)と平板状の基材(3)とは、交互に積層された上、相互に接触する部分で接着されることにより一体構造とされてこれによりハニカム構造体が形成されるようにしてもよく、あるいは、波板状の基材(2)と平板状の基材(3)とは、交互に接着されることなく積層された状態とし、上記の
図1に示すようにケーシング(4)内に充填することにより波板状の基材(2)と平板状の基材(3)とが相互に離間しないように固定されるようにしてもよい。したがって、
図1に示すように波板状の基材(2)と平板状の基材(3)とが積層されてなるものと、このものの周囲を取り囲み固定するケーシング(4)とからなるものは、ハニカム構造体を形成している。
【0043】
図1に示すようなハニカム構造体は、それを構成する各基材または成形前の基材に触媒を担持させる際、ケーシング(4)に充填する操作の際、使用時間の経過により基材の取り替えまたは触媒の最活性化の際等に、互いに接着させることにより一体化したものと比較して、別々の基材単位で簡単に操作を行える点において有利であり、この点で、
図1に示すような構成の方が好ましい。
【0044】
図1に示す排ガス浄化装置(1)において、ケーシング(4)は、波板状の基材(2)と平板状の基材(3)とを交互に積層した状態に維持し、かつ、処理対象となる燃焼排ガスを通気するために両端を開放したものであればよく、その断面構造としてはいかなる形状を有するものであってもよいが、上記の各基材を隙間なくかつ容易に充填することができることを考慮すれば、正方形若しくは長方形状の矩形状の断面構造を有していること、すなわち角筒形を有していることが好ましい。
【0045】
上記のような各筒形を有するケーシング(4)は、一体型を有していても2体を組み合わせてなる二体型を有してもよい。
【0046】
ケーシング(4)が一体型を有している場合、波板状および平板状の基材(2)および(3)は、これらを相互に積層した状態で、いずれかの開放端から押し入れるようにすることによりケーシング(4)内に充填される。
【0047】
ケーシング(4)が二体型を有している場合、波板状および平板状の基材(2)および(3)をハニカム構造に積層した状態のものをケーシング(4)の底面部に載置した後に、2体を接続するようにすればよいのでケーシング(4)内に各基材を充填する操作がより容易になる。
【0048】
このような二体型としては種々の形態がある。例えば、断面矩形状のうち、底辺と左右の両側辺との3辺からなる部分、すなわち、横断面略U字形のケーシング本体と、上辺をなし、ケーシング本体の開口部を覆う平板状の蓋体とよりなるものが挙げられる。
【0049】
また、断面矩形状のうち、底辺と左側辺との2辺からなる部分、すなわち、横断面略L字形のケーシング本体と、これに嵌め合わせられる横断面略倒L字形の蓋体とよりなるものであってもよい。
【0050】
本発明による排ガス浄化触媒を用いた排ガス浄化装置(1)においては、ケーシング(4)の内面に、無機繊維ブランケットが敷かれていることが好ましい。このような無機繊維ブランケットが内面に敷設されていることにより、ケーシング(4)の内面における平板状もしくは波板状の基材と無機繊維ブランケットとにより生じる摩擦力によって振動対策を行うことができる。
【0051】
基材は、波板状等に成形することができれば、いかなる素材のものであってもよいが、成形の容易さ等を考慮して好ましいものとしてガラスペーパーまたはセラミックペーパーが挙げられる。ガラスペーパーは、市販の不織布のガラスペーパーを用いることが可能である。この点について、一般的なガラスペーパーは有機バインダーを含有していることに起因してそのままでは成形し難い面も有しているが、成形工程に無機バインダーを担持させる工程を付加することでこの点の不利な点をカバーすることができる。
【0052】
ガラスペーパーの厚みは、容易に成形することができ、かつ、必要な強度を備えることができる点で、0.3〜1.5mmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.2mmである。
【0053】
上記のガラスペーパーに窒素酸化物(NOx)を還元・除去する排ガス浄化触媒を担持させる際には、このような排ガス浄化触媒と共に無機バインダーが担持される。この無機バインダーは、ガラスペーパーに排ガス浄化触媒を担持させるために機能すると共に、ガラスペーパーの形状を維持しかつ硬化性を付与するために使用されるものである。
【0054】
無機バインダーは、ジルコニア、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、チタニアから選択される少なくとも1種からなるものが好適なものとして例示することができるが、特に、無機バインダーは、ジルコニア、またはアルミナであることが好ましい。
【0055】
例えば無機バインダーとしてシリカを用いる場合には、シリカゾルが出発物質として用いられる。このようなシリカゾルとしては、シリカを20重量%程度含む酸性タイプ(中性、塩基性タイプでも使用可能)のものを用いることができる。また、ゼオライト、水、および無機バインダーとしてのシリカゾルの重量比は、例えば100:75:46であり、これらを混合し撹拌することによりスラリーに調整される。
【0056】
このようなスラリーにより基材であるガラスペーパーに排ガス浄化触媒および無機バインダーを担持させる場合、概して、浸漬法、塗布法が適用される。
【0057】
浸漬法は、上記のスラリーに基材であるガラスペーパーを所定時間にわたって浸漬した後、ガラスペーパーを引き上げ、乾燥および焼成を順次行うことによるものである。
【0058】
塗布法では、最初に、上記のスラリーをガラスペーパーに塗布する。塗布する際には、従来公知の任意の方法を用いてよいが、例えば、いわゆるどぶ漬け方法、刷毛塗り方法、スプレー塗り方法、滴下塗布方法などが挙げられる。ガラスペーパーへの塗布を行った後、焼成がなされる。
【0059】
また、本発明による排ガス処理触媒が適用される構造の例として、上記のように本発明により排ガス処理触媒を担持した2種の基材の組み合わせからなるハニカム構造としたものの他、
図2に示すように、このような波板状の基材の小片からなるものであっても良い。
【0060】
このような基材の小片は、凹溝が1回以上繰り返す波板状を有するとした場合に、その凹溝1つ当たりの幅寸法(Aで示す)、幅方向の繰り返し回数(nで示す)、高さ寸法(Bで示す)および奥行き(Cで示す)のいずれも小さい値を有している。幅寸法(A)は、例えば、2.0〜100mmである。高さ寸法(B)は、例えば1.0〜50mmである。奥行き寸法(C)は、例えば3.0〜200mmである。幅方向の繰り返し回数(n)は、例えば、1〜10回である。
【0061】
(実施例)
以下に、本発明による排ガス処理触媒について具体的に実施例を用いて説明し、併せて、実施例との比較のための比較例を示すが、本発明は、実施例に示すものに限定されるものではない。
【0062】
(触媒担体の調製)
本発明によ
る排ガス処理触媒は、Al−OHに関して特定の性質を有する担体が用いられていることを特徴とする。下記実施例1〜4の排ガス処理触媒の担体として、FER型ゼオライトに由来し、かつ、フーリエ変換赤外分光装置(FT−IR)で測定されるAl−OHスペクトルのピーク面積(A)を、測定担体重量(W)で除した値(S)が1500〜3500であるゼオライトを用いた。
【0063】
上記処理後のゼオライトについて所定の治具を用いてペレットに成型し、これをサンプルとし、450℃で3時間にわたる真空加熱を行うことによりゼオライト表面に含まれる水分を除去し、FT−IR測定に供した。
【0064】
FT−IR測定は、透過法により1000〜4000cm
−1の範囲で行い、3500〜3700cm
−1の範囲にあるピークをAl−OHのピークとして使用した。
【0065】
比較例1の排ガス処理触媒の担体は
、上記のFT−IR測定により、値(S)は1242であり、1500より小さい値を有していた。
【0066】
(排ガス処理触媒の調製)
(実施例1)
値(S)が1528である、FER型ゼオライト(東ソー製)を使用した。
【0067】
イオン交換水40gに硝酸ビスマス6水和物1.45gを加え懸濁液とし、この懸濁液を80℃に加温した。この温度に保たれた懸濁液に、上記のゼオライト10gを、15時間にわたって浸漬しイオン交換した。イオン交換の後、水溶液から取り出し、これを440mLのイオン交換水で水洗した後、80℃で12時間にわたって乾燥させ、目的とする触媒を得た。
【0068】
(実施例2)
値(S)が1766であるFER型ゼオライト(東ソー製)を担体とする触媒を調製した。そのための調製手順は、ゼオライトを替えた以外は実施例1と同様とした。
【0069】
(実施例3)
値(S)が2323であるFER型ゼオライト(東ソー製)を担体とする触媒を調製した。そのための手順は、ゼオライトを替えた以外は実施例1と同様とした。
【0070】
(実施例4)
値(S)が3265であるFER型ゼオライト(東ソー製)を担体とする触媒を調製した。そのための手順は、ゼオライトを替えた以外は実施例1と同様とした。
【0071】
(比較例1)
値(S)が1242であるFER型ゼオライト(東ソー製)を担体とする触媒を調製した。そのための手順は、ゼオライトを替えた以外は実施例1と同様とした。
【0072】
(触媒性能試験)
上記の実施例1〜4および比較例1の各触媒について触媒性能試験を行った。上記の実施例1〜4および比較例1の各触媒についてプレス成形を行い、その後に成形物を粉砕し、メッシュサイズ26から16に整粒した。
【0073】
図3に、触媒性能試験に用いられる試験装置の概要を示す。
【0074】
上記のようにして得られた粒状の触媒を、脱硝反応器(11)に充填した。
【0075】
上記の触媒が充填された脱硝反応器(11)には、その上部から下記の表1に詳細を示す試験用のガスが導入されるようになっており、その下部から排ガス処理触媒による処理を終えたガスが排出されるようになっている。
【0076】
脱硝反応器(11)に導入される試験用のガスは、空気およびN
2ガスおよび窒素中NOガスを混合することにより調製される。これらのガスを供給するためのラインにはそれぞれバルブが設けられており、これらの開度をそれぞれ調整することによって各ガスの流量および混合比が調整されるようになっている。
【0077】
混合後のガスは、蒸発器(12)の上部に導入されるようになっている。この蒸発器(12)には、所定量の還元剤を含有する水が別経路にて供給される。すなわち、水槽(14)には、還元剤であるメタノールを所定濃度に含有する水がポンプ(13)により汲み上げられて蒸発器(12)の上部に供給される。
【0078】
上記の混合ガスおよびメタノール含有水は、蒸発器(12)において加熱されかつ水およびメタノールが蒸気化されて、脱硝反応器(11)に供給されるようになっている。
【0079】
脱硝反応器(11)から排出された処理済みのガスをガス分析に供した。
【0080】
図3に示す試験装置を用いて試験を行うに際して、その試験条件を下記表1にまとめる。
【0082】
表1における「バランス」は、ガス組成がトータルで100%になるようにN
2が添加されることを表したものである。
【0083】
上記表1において、空間速度(SV)は、脱硝反応器(11)に流入する処理対象のガス量(m
3/h)を、触媒が設置されている脱硝反応器(11)が占める体積(m
3)で除算して得られる値であり、その値が大きければ触媒と接触する効率も良いことになる。
【0084】
なお、反応器出口のガス分析は、窒素酸化物(NOx)計を用いて、出口NOx濃度を測定した。NOx計での測定値から、下記の数式(1)によって触媒のNOx除去性能である脱硝率を算出した。
【0085】
脱硝率(%)
=(NOxin−NOxout)/NOxin×100…(1)
【0088】
表2に示すように、値(S)が1500〜3500であるゼオライトを担体とする排ガス処理触媒により、それぞれ、89%、92%、93%、82%の高い脱硝率が得られた。これに対して、比較例1では26%程度であり、実施例1〜4と比べて脱硝率において大きな差異が確認された。
【0089】
なお、本実施例では、値(S)が適正値にあるFER型ゼオライトを使用したが、ゼオライト骨格内のAl−OHが適量となるまで、窒素等の不活性ガス雰囲気下においてゼオライトを焼成する処理を行うことにより得ることも可能である。