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特許6886777透明導電性フィルム、および、タッチパネル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886777
(24)【登録日】2021年5月19日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】透明導電性フィルム、および、タッチパネル
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20210603BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   G06F3/041 490
   H01B5/14 A
   H01B5/14 B
   G06F3/041 495
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-118326(P2016-118326)
(22)【出願日】2016年6月14日
(65)【公開番号】特開2017-224115(P2017-224115A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2019年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 寛倫
(72)【発明者】
【氏名】梅本 徹
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 仁志
(72)【発明者】
【氏名】鷹尾 寛行
【審査官】 木村 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−050100(JP,A)
【文献】 特開2015−074147(JP,A)
【文献】 特開2016−054068(JP,A)
【文献】 特開2004−345228(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/038718(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
H01B 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材を含む基材層と、中間層と、透明導電層とを順に備え、
前記中間層は、樹脂のみからなり、1.59以上2.0以下の屈折率を有し、かつ、30nm以上150nm以下の厚みを有し、
前記透明導電層は、金属酸化物から形成してなることを特徴とする、透明導電性フィルム。
【請求項2】
前記中間層は、前記基材層と接触し、
前記基材層は、60mJ/m2以上95mJ/m2以下の表面自由エネルギーを有することを特徴とする、請求項1に記載の透明導電性フィルム。
【請求項3】
前記基材層は、前記透明基材と、ハードコート層とを順に備え、
前記ハードコート層は、前記中間層と接触していることを特徴とする、請求項1または2に記載の透明導電性フィルム。
【請求項4】
前記基材層は、前記透明基材のみからなることを特徴とする、請求項1または2に記載の透明導電性フィルム。
【請求項5】
前記中間層が、光学調整層であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項6】
前記透明導電層がパターン化されており、
前記透明導電層を有するパターン部と、
前記透明導電層を有していない非パターン部とを備えることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項7】
ロール状に巻き取られた巻回体であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項8】
請求項に記載の透明導電性フィルムを備えることを特徴とする、タッチパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性フィルム、および、タッチパネルに関し、詳しくは、透明導電性フィルム、および、その透明導電性フィルムを備えるタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透明導電性フィルムは、タッチパネルなどの電極部材として用いられることが知られている。例えば、基材フィルムと、光学調整層と、透明導電層とを順に備える透明導電性フィルムが提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1の光学調整層は、有機成分と無機成分とを含む有機無機複合材料からなり、1.60以上1.90以下の屈折率を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−27294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の透明導電性フィルムでは、光学調整層が、無機成分を含有している。そうすると、非晶質の透明導電層を結晶化する場合には、無機成分に起因して、透明導電層の結晶成長が阻害され、透明導電層の比抵抗値が高くなる。そのため、タッチパネルの大型化に対応できないという不具合がある。
【0006】
一方、光学調整層が、無機成分を含有しない場合には、無機成分に起因する結晶成長の阻害が抑制されるので、透明導電層の比抵抗値を低くできる一方で、光学調整層の屈折率が低くなる。そのため、透明導電層をパターン化した場合には、透明導電層を有するパターン部と、透明導電層を有していない非パターン部との相違が明確化するという不具合がある。つまり、視認抑制性が低下するという不具合がある。
【0007】
本発明の目的は、視認抑制性に優れ、かつ、透明導電層の比抵抗値が低い透明導電性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(1)は、透明基材を含む基材層と、中間層と、透明導電層とを順に備え、前記中間層は、樹脂のみからなり、1.59以上の屈折率を有する、透明導電性フィルムである。
【0009】
この透明導電性フィルムでは、中間層は、1.59以上の高い屈折率を有するため、透明導電層をパターン化した場合における視認抑制性に優れる。
【0010】
また、中間層が樹脂のみからなるため、透明導電層の比抵抗値を低くできる。
【0011】
本発明(2)は、前記中間層は、前記基材層と接触し、前記基材層は、60mJ/m以上の表面自由エネルギーを有する、上記(1)に記載の透明導電性フィルムを含んでいる。
【0012】
しかるに、基材層が、60mJ/m未満の表面自由エネルギーを有する場合には、樹脂のみからなる中間層を基材層に形成する際に、樹脂のはじきが発生し、中間層を均一に形成できない場合ある。
【0013】
しかし、このような透明導電性フィルムによれば、基材層の表面自由エネルギーが、上記した下限以上であるので、樹脂のはじきを抑制し、基材層と接触し、樹脂のみからなる中間層を均一に形成でき、それに起因して、透明導電層の比抵抗値を低くできる。
【0014】
本発明(3)は、前記中間層は、30nm以上、150nm以下の厚みを有する、上記(1)または(2)に記載の透明導電性フィルムを含んでいる。
【0015】
このような透明導電性フィルムによれば、中間層の厚みが、上記した範囲内であるので、機械強度を維持しつつ、薄型化を図ることができる。
【0016】
本発明(4)は、前記基材層は、前記透明基材と、ハードコート層とを順に備え、前記ハードコート層は、前記中間層と接触している、上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の透明導電性フィルムを含んでいる。
【0017】
このような透明導電性フィルムによれば、基材層は、ハードコート層を備えているため、耐擦傷性を向上させることができる。
【0018】
本発明(5)は、前記基材層は、前記透明基材のみからなる、上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の透明導電性フィルムを含んでいる。
【0019】
このような透明導電性フィルムは、基材層が、透明基材のみからなるため、低コストで製造することができる。
【0020】
本発明(6)は、前記中間層が、光学調整層である、上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の透明導電性フィルムを含んでいる。
【0021】
このような透明導電性フィルムによれば、中間層が、光学調整層であるため、透明導電層をパターン化した場合における視認抑制性に優れる。
【0022】
本発明(7)は、前記透明導電層がパターン化されており、前記透明導電層を有するパターン部と、前記透明導電層を有していない非パターン部とを備える、上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の透明導電性フィルムを含んでいる。
【0023】
このような透明導電性フィルムによれば、パターン部と非パターン部との相違の視認が抑制され、視認抑制性に優れる。
【0024】
また、中間層が樹脂のみからなるため、透明導電層の比抵抗値を低くできる。
【0025】
本発明(8)は、ロール状に巻き取られた巻回体であることを特徴とする、上記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の透明導電性フィルムを含んでいる。
【0026】
このような透明導電性フィルムは、ロール状に巻き取られた巻回体であるため、作業性および運搬性に優れる。
【0027】
本発明(9)は、上記(7)に記載の透明導電性フィルムを備える、タッチパネルを含んでいる。
【0028】
このようなタッチパネルは、上記した透明導電性フィルムを備えるため、視認抑制性に優れ、かつ、低い比抵抗値を有するため、大型化できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の透明導電性フィルムは、視認抑制性に優れ、かつ、透明導電層の比抵抗値を低くできる。
【0030】
本発明のタッチパネルは、本発明の透明導電性フィルムを備えるため、視認抑制性に優れ、かつ、低い比抵抗値を有するため、大型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本発明の透明導電性フィルムの第1実施形態(透明基材と、ハードコート層と、中間層と、透明導電層とを順に備える態様)の断面図を示す。
図2図2は、図1に示す透明導電性フィルムの透明導電層をパターン化した態様の断面図を示す。
図3図3は、図1に示す透明導電性フィルムの第2実施形態(透明基材と、中間層と、透明導電層とを順に備える態様)の断面図を示す。
図4図4は、図3に示す透明導電性フィルムの透明導電層をパターン化した態様の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の透明導電性フィルムの第1実施形態を、図1を参照して説明する。
【0033】
1.透明導電性フィルム
図1に示すように、この透明導電性フィルム1は、所定の厚みを有するフィルム形状(シート形状を含む)をなし、厚み方向と直交する方向(面方向)に延び、平坦な上面および平坦な下面(2つの主面)を有する。
【0034】
具体的には、透明導電性フィルム1は、透明基材5と、ハードコート層6と、中間層3と、透明導電層4とを順に備える。つまり、透明導電性フィルム1は、透明基材5と、透明基材5の上に設けられるハードコート層6と、ハードコート層6の上に設けられる中間層3と、中間層3の上に設けられる透明導電層4とを備える。好ましくは、透明導電性フィルム1は、透明基材5、ハードコート層6、中間層3および透明導電層4のみからなる。以下、各層について詳述する。
【0035】
2.透明基材
透明基材5は、透明導電性フィルム1の下層である。透明基材5は、透明導電性フィルム1の機械強度を確保する支持層(支持材)である。また、透明基材5は、面方向に延びるフィルム形状を有しており、平坦な平面および平坦な下面(2つの主面)を有する。
【0036】
透明基材5は、高分子フィルムからなる。高分子フィルムは、透明性を有する。
【0037】
高分子フィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、例えば、ポリメタクリレートなどの(メタ)アクリル樹脂(アクリル樹脂および/またはメタクリル樹脂)、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー(COP)などのポリオレフィン樹脂、例えば、ポリカーボネート樹脂、例えば、ポリエーテルスルフォン樹脂、例えば、ポリアリレート樹脂、例えば、メラミン樹脂、例えば、ポリアミド樹脂、例えば、ポリイミド樹脂、例えば、セルロース樹脂、例えば、ポリスチレン樹脂、例えば、ノルボルネン樹脂の合成樹脂などが挙げられる。
【0038】
これら高分子フィルムは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0039】
透明性、機械特性などの観点から、好ましくは、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂が挙げられ、より好ましくは、PET、COPが挙げられる。
【0040】
透明基材5の厚みは、例えば、2μm以上、好ましくは、20μm以上であり、また、例えば、300μm以下、好ましくは、200μm以下である。
【0041】
透明基材5は、後で説明するハードコート層6とともに、基材層2を構成する。透明基材5は、基材層2における下層である。
【0042】
3.ハードコート層
ハードコート層6は、透明導電性フィルム1の耐擦傷性を高める層である。ハードコート層6は、面方向に延びるフィルム形状を有しており、実質的に平坦な上面および平坦な下面(2つの主面)を有する。
【0043】
ハードコート層6は、フィルム形状(シート形状を含む)を有しており、透明基材5の上面全面に直接接触している。
【0044】
ハードコート層6は、例えば、熱硬化型樹脂、熱可塑型樹脂、紫外線硬化型樹脂などの樹脂を含有する樹脂組成物からなる。これらの樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。作業性の観点から、好ましくは、紫外線硬化型樹脂が挙げられる。
【0045】
紫外線硬化型樹脂としては、例えば、ポリウレタンアクリレート、ポリオールアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどのアクリル樹脂、例えば、エポキシ樹脂などが挙げられる。また、樹脂組成物は、必要により、無機粒子を適宜の割合で含有することができる。
【0046】
ハードコート層6の表面(上面)は、表面処理が施されている。具体的な表面処理については、後の製造方法において詳述する。
【0047】
ハードコート層6の表面自由エネルギーは、例えば、60mJ/m以上、好ましくは、70mJ/m以上、より好ましくは、80mJ/m以上であり、また、例えば、95mJ/m以下である。
【0048】
なお、ハードコート層6の表面自由エネルギーの測定方法は、後の実施例において詳述する。
【0049】
ハードコート層6の厚みは、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.5μm以上であり、また、例えば、10μm以下、好ましくは、5μm以下である。
【0050】
ハードコート層6は、透明基材5とともに、基材層2を構成する。つまり、基材層2は、透明基材5と、ハードコート層6とを備える。好ましくは、基材層2は、透明基材5およびハードコート層6のみからなる。ハードコート層6は、基材層2における上層である。
【0051】
4.中間層
中間層3は、基材層2と透明導電層4との間に介在される介在層である。中間層3は、ハードコート層6の上面に設けられている。中間層3は、ハードコート層6の上面全面に直接接触している。中間層3は、面方向に延びるフィルム形状を有しており、平坦な平面および平坦な下面(2つの主面)を有する。
【0052】
また、中間層3は、透明導電層4が後の工程でパターンに配置された後に、非パターン部8とパターン部7との相違が認識されないように(すなわち、パターンの視認を抑制するように)、透明導電層4の光学特性を調整する光学調整層である。
【0053】
中間層3は、樹脂のみからなる。すなわち、中間層3は、例えば、中間層3の屈折率を調整するための無機粒子(例えば、シリカなど)を実質的に含有しない。換言すれば、中間層3は、本発明の作用効果を損なわない微量な割合で、無機粒子を含有してもよく、具体的には、樹脂100質量部に対して、0.1質量%以下、好ましくは、0.01質量%以下、より好ましくは、0.001質量%以下の含有割合の無機粒子の含有を許容する。
【0054】
樹脂としては、例えば、硬化性樹脂、熱可塑性樹脂(例えば、ポリオレフィン樹脂)などが挙げられ、好ましくは、硬化性樹脂が挙げられる。
【0055】
硬化性樹脂としては、例えば、活性エネルギー線(具体的には、紫外線、電子線など)の照射により硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂、例えば、加熱により硬化する熱硬化性樹脂などが挙げられ、好ましくは、活性エネルギー線硬化性樹脂が挙げられる。
【0056】
硬化性樹脂としては、具体的には、例えば、アクリル系樹脂、例えば、ウレタン樹脂、例えば、メラミン樹脂、例えば、アルキド樹脂、例えば、シロキサン系ポリマー、例えば、有機シラン縮合物などが挙げられる。好ましくは、アクリル系樹脂が挙げられる。
【0057】
アクリル系樹脂としては、例えば、フルオレン骨格を有するアクリル系樹脂、フェニル骨格を有するアクリル系樹脂、ウレタン(メタ)アクリレートを有するアクリル系樹脂、ポリイソプレン骨格を有するアクリル系樹脂などが挙げられる。好ましくは、フルオレン骨格を有するアクリル系樹脂、フェニル骨格を有するアクリル系樹脂が挙げられる。
【0058】
硬化性樹脂は、市販品を用いることができ、例えば、フルオレン骨格を有するアクリル系樹脂として、OGSOLシリーズ(具体的には、OGSOL EA−0200P、OGSOL EA−0250P、OGSOL GA−5000、OGSOL EA−F5710、以上大阪ガスケミカルズ社製)、例えば、フェニル骨格を有するアクリル系樹脂として、KAYARADシリーズ(具体的には、KAYARAD−HRM−3000H、KAYARAD−BNP−1、以上日本化薬社製)などが挙げられる。
【0059】
これら樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0060】
樹脂の屈折率は、例えば、1.58以上、好ましくは、1.59以上、より好ましくは、1.61以上、また、例えば、2.0以下である。
【0061】
樹脂の屈折率が、上記した下限以上であれば、中間層3の屈折率を後述する範囲に調整することができる。
【0062】
中間層3の厚みは、例えば、30nm以上、好ましくは、50nm以上、より好ましくは70nm以上である。中間層3の厚みが、上記した下限以上であれば、透明導電性フィルム1の機械強度を維持できる。
【0063】
また、中間層3の厚みは、例えば、150nm以下、好ましくは、100nm以下である。中間層3の厚みが、上記した上限以下であれば、透明導電性フィルム1を薄型化できる。
【0064】
なお、中間層3の厚みの測定方法は、後の実施例において詳述する。
【0065】
また、中間層3の屈折率は、樹脂の屈折率と同一、または、それより高く、具体的には、1.59以上、好ましくは、1.60以上、より好ましくは、1.61以上であり、また、2.0以下である。
【0066】
中間層3の屈折率が、上記した下限以上であれば、透明導電層4をパターン化した場合における視認抑制性に優れる。つまり、中間層3の屈折率が、上記した下限未満であれば、透明導電層4をパターン化した場合における視認抑制性が低下する。
【0067】
中間層3の屈折率が、上記した上限以下であれば、透明導電層4をパターン化した場合における視認抑制性に優れる。
【0068】
中間層3は、通常単層であるが、多層して構成することもできる。
【0069】
5.透明導電層
透明導電層4は、透明導電性フィルム1の上層である。透明導電層4は、面方向に延びるフィルム形状(シート形状を含む)を有しており、平坦な下面および平坦な上面を有している。透明導電層4は、中間層3の上面全面に直接接触している。透明導電層4は、パターン化され、タッチパネル(後述)の電極として作用できる電極層である。
【0070】
透明導電層4を形成する材料としては、例えば、In、Sn、Zn、Ga、Sb、Ti、Si、Zr、Mg、Al、Au、Ag、Cu、Pd、Wからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む金属酸化物が挙げられる。金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記した群に示された金属原子をドープすることができる。
【0071】
材料としては、好ましくは、インジウムスズ複合酸化物(ITO)、アンチモンスズ複合酸化物(ATO)などが挙げられ、より好ましくは、ITOが挙げられる。
【0072】
透明導電層4の厚みは、例えば、10nm以上、好ましくは、20nm以上であり、また、例えば、35nm以下、好ましくは、30nm以下である。
【0073】
透明導電層4の比抵抗値は、例えば、1.0×10−4Ω・cm以上、また、例えば、3.00×10−4Ω・cm以下、好ましくは、2.90×10−4Ω・cm以下、より好ましくは、2.80×10−4Ω・cm以下、さらに好ましくは、2.70×10−4Ω・cm以下、とりわけ好ましくは、2.65×10−4Ω・cm以下である。
【0074】
透明導電層4の比抵抗値が、上記した上限以下であれば、透明導電性フィルム1を備えるタッチパネル(後述)を大型化できる。
6.透明導電性フィルムの製造方法
この透明導電性フィルム1は、透明基材5の上に、ハードコート層6と、中間層3と、透明導電層4とを順に配置することにより、得られる。
【0075】
ハードコート層6を透明基材5の表面に配置するには、例えば、上記した樹脂組成物を透明基材5の表面に塗布し、樹脂が紫外線硬化型樹脂である場合には、紫外線を照射し、硬化させる。
【0076】
次いで、ハードコート層6の表面(上面)に、表面処理を施す。
【0077】
この表面処理により、ハードコート層6の表面自由エネルギーを高くする。
【0078】
表面処理としては、例えば、スパッタリング、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射、電子線照射などの乾式処理、例えば、下塗り処理などの湿式処理などが挙げられる。
【0079】
密着性の観点から、好ましくは、乾式処理、より好ましくは、コロナ処理、プラズマ処理、さらに好ましくは、プラズマ処理が挙げられる。
【0080】
プラズマ処理では、例えば、ハードコート層6の表面(上面)にプラズマを照射する。
【0081】
これによって、表面処理後のハードコート層6は、上記した表面自由エネルギーを有する。
【0082】
なお、表面処理前のハードコート層6の表面自由エネルギーは、例えば、60J/m未満、好ましくは、50J/m以下、より好ましくは、40J/m以下、さらに好ましくは、30J/m以下である。
【0083】
表面処理後のハードコート層6の表面自由エネルギーの、表面処理前のハードコート層6の表面自由エネルギーに対する百分率(表面処理後のハードコート層6の表面自由エネルギー/表面処理前のハードコート層6の表面自由エネルギー×100)は、例えば、120%以上、好ましくは、140%以上、より好ましくは、160%以上であり、さらに好ましくは、180%以上であり、また、例えば、300%以下である。
【0084】
表面処理後のハードコート層6の表面自由エネルギーが、上記した下限以上であれば、樹脂のはじきを抑制し、ハードコート層6と接触し、樹脂のみからなる中間層3を均一に形成でき、それに起因して、透明導電層4の比抵抗値を低くできる。
【0085】
次いで、中間層3をハードコート層6の表面に配置する。中間層3をハードコート層6の表面に配置するには、例えば、上記した樹脂をハードコート層6の表面に塗布し、樹脂が活性エネルギー線硬化性樹脂である場合には、紫外線を照射し、硬化させる。
【0086】
次いで、透明導電層4を中間層3の表面に配置する。透明導電層4を中間層3の表面に配置するには、例えば、スパッタリングが用いられる。この透明導電層4は、例えば、非晶質である。
【0087】
これにより、透明導電性フィルム1が得られる。
【0088】
なお、透明導電性フィルム1は、例えば、ロール・トゥ・ロール法により、各層を積層することにより得ることができる。これにより、透明導電性フィルム1は、ロール状に巻き取られた巻回体として得られる。
【0089】
透明導電性フィルム1の厚みは、例えば、20μm以上、好ましくは、30μm以上であり、また、例えば、200μm以下、好ましくは、150μm以下である。
【0090】
この透明導電性フィルム1は、タッチパネルの一部品、すなわち、タッチパネルを作製するための部品であり、具体的には、後述する方法で、透明導電性フィルム1の透明導電層4をパターン化した後、タッチパネルに搭載される部品である。つまり、透明導電性フィルム1は、部品単独で流通し、産業上利用可能なデバイスである。
【0091】
図2に示すように、透明導電性フィルム1では、透明導電層4をパターン化する。透明導電層4をパターン化するには、例えば、透明導電層4を、エッチングする。これによって、透明導電性フィルム1は、透明導電層4を有するパターン部7と、透明導電層4を有していない非パターン部8とを有する。
【0092】
透明導電層4をパターン化した後、透明導電層4を、例えば、加熱して、結晶化させる。
【0093】
7.透明導電性フィルムの使用
このような透明導電性フィルム1は、例えば、画像表示装置におけるタッチパネルとして用いられる。
【0094】
タッチパネルは、画像表示装置に表示されたメニューに、指、ペンなどを接触させることにより、画像表示装置に接続されたコンピューターを操作するタッチセンサである。
【0095】
タッチパネルの形式としては、光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などの各種方式が挙げられる。透明導電性フィルム1は、特に静電容量方式のタッチパネルに好適に用いられる。
【0096】
8.作用効果
この透明導電性フィルム1では、中間層3は、1.59以上の高い屈折率を有するため、透明導電層4をパターン化した場合における視認抑制性に優れる。
【0097】
また、中間層3が樹脂のみからなり、無機粒子を実質的に含有しない。そのため、例えば、透明導電層4を結晶化する際に、無機粒子に起因する透明導電層4の結晶成長の阻害を抑制できる。そのため、透明導電層4の比抵抗値を低くできる。
【0098】
しかるに、基材層が、60mJ/m未満の表面自由エネルギーを有する場合には、樹脂のみからなる中間層を基材層に形成する際に、樹脂のはじきが発生し、中間層を均一に形成できないという場合ある。
【0099】
しかし、透明導電性フィルム1では、ハードコート層6の表面自由エネルギーが、上記した下限以上であるので、樹脂のはじきを抑制し、ハードコート層6と接触し、樹脂のみからなる中間層3を均一に形成でき、それに起因して、透明導電層4の比抵抗値を低くできる。
【0100】
透明導電性フィルム1では、中間層3の厚みが、上記した範囲内であるので、機械強度を維持しつつ、薄型化を図ることができる。
【0101】
透明導電性フィルム1では、基材層2は、ハードコート層6を備えるので、耐擦傷性を向上させることができる。
【0102】
透明導電性フィルム1では、中間層3が、光学調整層であるので、図2に示すように、透明導電層4をパターン化した場合における視認抑制性に優れる。
【0103】
透明導電性フィルム1では、透明導電層4がパターン化されており、透明導電層4を有するパターン部7と、透明導電層4を有していない非パターン部8とを備えるので、パターン部7と非パターン部8との相違の視認が抑制され、視認抑制性に優れる。
【0104】
透明導電性フィルム1が、ロール状に巻き取られた巻回体であるので、作業性および運搬性に優れる。
【0105】
透明導電性フィルム1を備えたタッチパネルであれば、視認抑制性に優れ、かつ、低い比抵抗値を有するため、大型化できる。
【0106】
9.第2実施形態
以下の第2実施形態において、上記した各部に対応する部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0107】
第1実施形態では、図1に示すように、透明導電性フィルム1では、基材層2はハードコート層6を備えるが、この第2実施形態では、図3に示すように、基材層2はハードコート層6を備えず、透明基材5のみから構成することもできる。
【0108】
つまり、この第2実施形態では、透明導電性フィルム1は、透明基材5と、中間層3と、透明導電層4とを順に備える。基材層2は、透明基材5のみからなる。中間層3は、透明基材5の上面全面に直接接触している。
【0109】
この透明導電性フィルム1は、透明基材5の上に、中間層3と、透明導電層4とを順に配置することにより、製造することができる。
【0110】
第2実施形態の透明導電性フィルム1の製造方法では、まず、透明基材5の表面(上面)に、表面処理を施す。
【0111】
表面処理としては、第1実施形態と同じ方法が挙げられる。
【0112】
上記した表面処理により、透明基材5の表面自由エネルギーを高くする。
【0113】
表面処理後の透明基材5の表面自由エネルギーは、例えば、60mJ/m以上、好ましくは、70mJ/m以上、より好ましくは、80mJ/m以上であり、また、例えば、95mJ/m以下である。
【0114】
また、表面処理前の透明基材5の表面自由エネルギーは、例えば、60J/m未満、好ましくは、50J/m以下、より好ましくは、40J/m以下、さらに好ましくは、30J/m以下である。
【0115】
表面処理後の透明基材5の表面自由エネルギーの表面処理前の透明基材5の、表面自由エネルギーに対する百分率(表面処理後の透明基材5の表面自由エネルギー/表面処理前の透明基材5の表面自由エネルギー×100)は、例えば、120%以上、好ましくは、140%以上、より好ましくは、160%以上であり、さらに好ましくは、180%以上であり、また、例えば、300%以下である。
【0116】
表面処理後の透明基材5の表面自由エネルギーが、上記した下限以上であれば、樹脂のはじきを抑制し、透明基材5と接触し、樹脂のみからなる中間層3を均一に形成でき、それに起因して、透明導電層4の比抵抗値を低くできる。
【0117】
なお、透明基材5の表面自由エネルギーの測定方法は、ハードコート層6の表面自由エネルギーの測定方法と同じである。
【0118】
次いで、中間層3を透明基材5の表面に配置する。中間層3を透明基材5の表面に配置するには、例えば、上記した樹脂を透明基材5の表面に塗布し、樹脂が活性エネルギー線硬化性樹脂である場合には、紫外線を照射し、硬化させる。
【0119】
次いで、透明導電層4を中間層3の表面に配置する。透明導電層4を中間層3の表面に配置するには、例えば、スパッタリングが用いられる。この透明導電層4は、例えば、非晶質である。
【0120】
これにより、透明導電性フィルム1が得られる。
【0121】
次いで、図4に示すように、透明導電性フィルム1では、エッチングにより、透明導電層4をパターン化する。
【0122】
次いで、透明導電層4を、例えば、加熱して、結晶化させる。
【0123】
第2実施形態によっても、図1に示す第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0124】
また、基材層2が、透明基材5のみからなるため、基材層2が、さらに、ハードコート層6を備える図1に示す第1実施形態に比べて、透明導電性フィルム1を低コストで製造できる。
【0125】
10.変形例
第1実施形態では、ハードコート層6の表面(上面)に、表面処理を施したが、例えば、表面処理を施さなくてもよい。
【0126】
第2実施形態では、透明基材5の表面(上面)に、表面処理を施したが、例えば、表面処理を施さなくてもよい。
【0127】
第1実施形態では、樹脂組成物を透明基材5の表面に塗布して、ハードコート層6を透明基材5の表面に配置したが、例えば、予め表面処理したシート状のハードコート層6を
用意し、これを透明基材5の表面に貼り付けることもできる。
【0128】
第1実施形態および第2実施形態では、中間層3は光学調整層として説明したが、目的に応じた機能性を付与する機能層であってもよく、例えば、ロール・トゥ・ロール法において、重なり合う透明導電性フィルム1が密着して剥がれにくくなることを抑制するためのブロッキング層であってもよい。
【0129】
第1実施形態および第2実施形態では、非晶質の透明導電層4をエッチングして、その後、結晶化したが、例えば、非晶質の透明導電層4を、結晶化した後、エッチングすることもできる。
【0130】
第1実施形態および第2実施形態では、透明導電性フィルム1は、ロール・トゥ・ロール法で製造しているが、例えば、一部または全部をバッチ方式で製造することもできる。
【実施例】
【0131】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0132】
なお、以下の実施例および比較例に用いる各成分の略号を下記に示す。
OGSOL EA−0250P:商品名、アクリル系樹脂(活性エネルギー線硬化性樹脂)、屈折率1.62、大阪ガスケミカルズ社製
KAYARAD−HRM−3000H:商品名、アクリル系樹脂(活性エネルギー線硬化性樹脂)、屈折率1.62、日本化薬社製
KAYARAD−BNP−1:商品名、アクリル系樹脂(活性エネルギー線硬化性樹脂)、屈折率1.62、日本化薬社製
オプスターZ7412:商品名、有機無機複合材料(無機材料として、ZrOを含む。)、屈折率1.62、JSR社製
DPHA:商品名「M−400」、ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレート、屈折率1.53、東亞合成社製
1.透明導電性フィルムの製造
実施例1
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート100質量部(新中村化学社製 商品名「A−DPH」)と、光重合開始剤として、ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン(チバスペシャリティケミカルズ社製 商品名「Irgacure184」)5質量部とを配合し、次いで、メチルイソブチルケトン100質量部で希釈し、ハードコート剤を調製した。
【0133】
次いで、透明基材としてのCOP(厚み100μm、日本ゼオン社製 商品名「ゼオノア」)を用意し、その表面に、樹脂組成物を、バーコーターを用いて塗布し、乾燥し、紫外線を照射して、樹脂組成物を硬化させ、これにより、透明基材の表面に、厚み5μmのハードコート層を配置した。表面処理前のハードコート層の表面の表面自由エネルギーは、30mJ/mであった。
【0134】
次いで、ハードコート層の表面にプラズマを照射した(周波数20kHz、処理電力150V、処理時間20秒)。表面処理後のハードコート層の表面の表面自由エネルギーは、60mJ/mであった。
【0135】
次いで、ハードコート層の表面に、樹脂としてのOGSOL EA−0250Pを、スピンコーターを用いて塗布し、乾燥し、紫外線を照射して、樹脂を硬化させ、これにより、ハードコート層の表面に中間層を配置した。
【0136】
得られた中間層の厚みは、85nmであり、屈折率1.63であった。
【0137】
なお、中間層の厚みは、HITACHI製 U4100によって、反射スペクトルを測定し、光学シミュレーションによる計算値とスペクトル形状とを比較することにより算出した。
【0138】
その後、巻き取り式スパッタ装置を用いて、中間層の表面に、厚み20nmのITOからなる透明導電層を配置した。
【0139】
これにより、透明導電性フィルムを製造した。
【0140】
なお、表面自由エネルギーの測定は、協和界面科学社製の「全自動接触角計DM700」を用いて、ハードコート層に対する、水の接触角、および、ヘキサデカンの接触角をそれぞれ測定し、これらの値を解析ソフトFAMASにて解析し、表面自由エネルギーを算出した。算出方法は、Kitazaki−Hat理論による成分解析を用いた。
【0141】
実施例2および3、比較例1および2
表1に従って変更した以外は、実施例1と同様の手順で透明導電性フィルムを製造した。
【0142】
【表1】
【0143】
2.評価
2−1.比抵抗
4端子法(JIS K7194(1994年))を用いて、各透明導電性フィルムの透明導電層の表面抵抗(Ω/cm)を測定した。次に、蛍光X線分析装置(リガク社製)にて透明導電層の厚みを測定し、測定した表面抵抗と厚みから比抵抗を算出した。
【0144】
結果を表1に示す。
【0145】
2−2.視認抑制性
透明導電層をエッチングして、透明導電層をパターン化した。
【0146】
次いで、透明基材の下面に黒色のアクリル板を貼り合わせた。次いで、透明導電層の上側から、目視にて、パターン部の視認抑制性を評価した。そして、パターン部がほとんど視認されなかった場合を「○」、パターン部がはっきりと視認された場合を「×」として評価した。
【0147】
結果を表1に示す。
【符号の説明】
【0148】
1 透明導電性フィルム
2 基材層
3 中間層
4 透明導電層
5 透明基材
6 ハードコート層
7 パターン部
8 非パターン部
図1
図2
図3
図4