(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
隣り合うバルーンの双方に8[atm]の内圧を印加したときに、該隣り合うバルーン間のシャフトを55度以上曲げると隣り合うバルーン同士が接触する請求項1または2に記載のバルーンカテーテル。
前記複数のバルーンのうち、最遠位または最近位のバルーンを除くバルーンの少なくとも一つは、内圧を8[atm]としたときのアスペクト比(軸方向長さ/軸方向に垂直な方向の最大径)が2以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
前記複数のバルーンのうち、いずれかの隣り合う3つのバルーンの中で中央にあるものの最大直径が、両隣にあるいずれのバルーンの最大直径よりも小さい請求項1〜4のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
前記複数のバルーンのうち、いずれかの隣り合う3つのバルーンの中で中央にあるものの最大直径が、両隣にあるいずれのバルーンの最大直径よりも大きい請求項1〜4のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の薬剤溶出バルーンカテーテルは、血管が屈曲している箇所の病変や、血管が先細り状(テーパー状)となっている箇所の病変に対しての施術が困難であった。例えば、血管が屈曲している箇所において施術する場合、本来屈曲している血管がバルーンの拡張によって強制的に伸ばされてしまい、血管や病変部に必要以上の負荷を与えてしまう。また、先細り状となっている箇所においてバルーンが拡張すると、バルーンの遠位部分だけが内腔壁に接触し、バルーンの近位部分では内腔壁に接触せず、薬剤が内腔壁に効率よく移行しない。
【0006】
本発明は、血管の形状に沿って拡張可能であり、これにより薬剤の移行が効率的であり、血管や病変部に対して低負荷、低侵襲なバルーンカテーテルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し得た本発明のバルーンカテーテルは、シャフトと、該シャフトの軸方向の異なる位置に配置されている複数のバルーンとを有するバルーンカテーテルであって、前記複数のバルーンのうち、最遠位および最近位のバルーンを除く少なくとも1つのバルーンの外側面に薬剤が保持されているものである。
【0008】
また、上記課題を解決し得た本発明のバルーンカテーテルは、シャフトと、該シャフトの軸方向の異なる位置に配置されている複数のバルーンとを有するバルーンカテーテルであって、少なくとも1つのバルーンの外側面に薬剤が保持されており、該バルーンが配置されている部分におけるバルーンカテーテルの周方向長さは、該バルーンの周方向長さと同じであることを特徴とするものである。なお、当該バルーンカテーテルにおいて、外側面に薬剤が保持されているバルーンとして、最遠位および最近位のバルーンを除く少なくとも1つのバルーンを選択することもできる。
【0009】
上記バルーンカテーテルにおいて、隣り合うバルーンの双方に8[atm]の内圧を印加したときに、該隣り合うバルーン間のシャフトを13度曲げても隣り合うバルーン同士が接触しないことが好ましい。
【0010】
上記バルーンカテーテルにおいて、隣り合うバルーンの双方に8[atm]の内圧を印加したときに、該隣り合うバルーン間のシャフトを55度以上曲げると隣り合うバルーン同士が接触することが好ましい。
【0011】
上記バルーンカテーテルにおいて、前記複数のバルーンのうち、最遠位または最近位のバルーンを除くバルーンの少なくとも一つは、内圧を8[atm]としたときのアスペクト比(軸方向長さ/軸方向に垂直な方向の最大径)が2以下であることが好ましい。
【0012】
上記バルーンカテーテルにおいて、前記複数のバルーンのうち、いずれかの隣り合う3つのバルーンの中で中央にあるものの最大直径が、両隣にあるいずれのバルーンの最大直径よりも小さいことが好ましい。
【0013】
上記バルーンカテーテルにおいて、前記複数のバルーンのうち、いずれかの隣り合う3つのバルーンの中で中央にあるものの最大直径が、両隣にあるいずれのバルーンの最大直径よりも大きいことが好ましい。
【0014】
上記バルーンカテーテルにおいて、最遠位のバルーンの最大直径は、最近位のバルーンの最大直径よりも小さいことが好ましい。
【0015】
上記バルーンカテーテルにおいて、前記バルーンは、遠位側のものほど最大直径が小さいことが好ましい。
【0016】
上記バルーンカテーテルにおいて、最遠位のバルーンの最大直径は、最近位のバルーンの最大直径よりも大きいことが好ましい。
【0017】
上記バルーンカテーテルにおいて、前記バルーンは、遠位側のものほど最大直径が大きいことが好ましい。
【0018】
上記バルーンカテーテルにおいて、前記薬剤は、抗増殖剤または免疫抑制剤であることが好ましい。
【0019】
シャフトと、該シャフトの軸方向の異なる位置に配置されている複数のバルーンとを有し、少なくとも1つのバルーンの外側面に薬剤が保持されているバルーンカテーテルの使用方法として、バルーンカテーテルを血管内に挿入するステップと、一のバルーンの拡張を開始する第2ステップと、該第2ステップの後、前記一のバルーンより下流側のバルーンの拡張を開始する第3ステップとを有することが好ましい。
【0020】
また、その他の使用方法として、ガイドワイヤーの先端を、バルーンカテーテルを病変までデリバリーしやすい形に加工するステップと、標的病変に対してガイドワイヤーを進めるステップと、バルーンカテーテルを血管内に挿入するステップと、標的血管等の内腔が屈曲している箇所や先細り状となっている箇所、または留置されているステント等の位置に合わせてバルーンを配置するステップと、標的病変とバルーンとの血管内での位置関係を確認するステップと、標的病変に対してバルーンの位置あわせをするステップと、一のバルーンの拡張を開始するステップと、標的病変での血流が抑制されていることを確認するステップと、前記一のバルーンよりも血流方向に下流に位置したバルーンの拡張を開始するステップと、バルーンの拡張時間を計測して、標的病変に対してより多くの薬剤を移行させるステップと、拡張したバルーンをゆっくりと収縮させるステップと、バルーンが収縮していることを確認するステップと、標的病変部位からバルーンカテーテルを取り除くステップと、拡張及び薬剤を移行させた後の標的病変の状態を確認するステップを有してもよい。
【0021】
ガイドワイヤーの先端を、バルーンカテーテルを病変までデリバリーしやすい形に加工するステップとは、ガイドワイヤーが病変または病変よりも遠位側への通過性を向上させるためや、もしくはバルーンカテーテルのバルーン部分を血管等の内腔が屈曲している箇所や先細り状となっている箇所にも正確に位置あわせする際の作業性を向上させるために、術者が先端の形状を湾曲させたり、または曲げたりすることで、癖付けして加工するステップをいう。拡張したバルーンをゆっくりと収縮させるステップは、前のステップで血管壁へ移行させた薬剤が、急に血流が再開することによって、血管壁から血中に溶出・流出して失われてしまうことを抑制するために、時間をかけてバルーンを収縮させることで、このときの収縮にかける時間は、10秒以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明のバルーンカテーテルは、シャフトの軸方向の異なる位置に複数のバルーンが配置されているため、複数のバルーン間にあるシャフトが屈曲可能であり、血管等の器官が屈曲している箇所や先細り状となっている箇所においても拡張した各々のバルーンが内腔壁に沿いやすくなり、薬剤が内腔壁に効率よく移行するものであり、しかも器官や病変部に対して低負荷、低侵襲なものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0025】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1にかかるバルーンカテーテルは、シャフトと、該シャフトの軸方向の異なる位置に配置されている複数のバルーンとを有しており、複数のバルーンのうち、最遠位および最近位のバルーンを除く少なくとも1つのバルーンの外側面に薬剤が保持されているものである。本発明のバルーンカテーテルは、シャフトの軸方向の異なる位置に複数のバルーンが配置されているため、複数のバルーン間にあるシャフトが屈曲可能であり、血管等の内腔が屈曲している箇所や先細り状となっている箇所においても拡張した各々のバルーンが内腔壁に沿いやすくなり、薬剤が内腔壁に効率よく移行するものであり、しかも血管や病変部に対して低負荷、低侵襲なものである。複数のバルーンのうち、最遠位および最近位のバルーンは、施術中のシャフトおよびバルーンの位置を血管中で固定する作用があり、拡張時の径は施術箇所の血管の径に応じて設定することもできる。なお、本発明において「複数のバルーン」というのは、バルーンを構成する樹脂膜が、一のバルーンと他のバルーンとの間で途切れていることを要件とするものではなく、軸方向に連続する一の樹脂膜を用いて複数箇所に拡張区間を設けることにより複数のバルーンを形成することも可能である。
【0026】
図1および
図2を参照しながら本発明の実施の形態にかかるバルーンカテーテルの全体構成について説明する。
図1は、バルーンカテーテルの平面図であり、
図2(a)〜(d)は、それぞれ、
図1に示したバルーンカテーテルのA−A断面図、B−B断面図、C−C断面図、およびD−D断面図を示している。
図1および
図2において示したバルーンカテーテルは、シャフトの遠位側から近位側にわたってワイヤを挿通するオーバーザワイヤ型のものである。
【0027】
図1および
図2に示されるように、バルーンカテーテル1は、シャフト2と、シャフト2の軸方向の異なる位置に配置されている最近位バルーン10、中間バルーン11、および最遠位バルーン12(以下、単に「バルーン10〜12」、或いは「バルーン」と記載することがある)とをそれぞれ有している。シャフト2の近位側にはハブ5が設けられる。本発明において、バルーンカテーテルの近位側とは、シャフト2の延在方向に対して使用者(術者)の手元側の方向を指し、遠位側とは近位側の反対方向(すなわち処置対象側の方向)を指す。また、バルーンの近位側から遠位側への方向を軸方向と称する。
【0028】
バルーンカテーテル1は、ハブ5からシャフト2を通じて各バルーン10〜12の内部に圧力流体が供給されるように構成され、各バルーン10〜12の内部に圧力流体が供給されることにより各バルーン10〜12が拡張する構成となっている。また、各バルーン10〜12の内部から圧力流体を引き抜くことにより各バルーン10〜12を収縮することができる。
【0029】
シャフト2の内部には、通常、圧力流体の流路と、シャフト2の先端の進行をガイドするワイヤ(図示せず)の挿通路が設けられる。例えば、シャフト2は内管3と外管4とを有しており、内管3の内腔がワイヤの挿通路として機能し、内管3と外管4の間の空間が圧力流体の流路として機能する。シャフト2の遠位側では、内管3が外管4の遠位端から延出して最遠位バルーン12を軸方向に貫通し、最遠位バルーン12の遠位側が内管3の外側に接合され、最遠位バルーン12の近位側が外管4の外側に接合されている。したがって、内管3と外管4の間の空間が最遠位バルーン12の内側空間に繋がっており、圧力流体が最遠位バルーン12の内部に流入できる構造となっている。
【0030】
中間バルーン11および最近位バルーン10は、その遠位側でも近位側でも、外管4の外側に接合されている。そして、
図2(b)に示すように、外管4には開口部4aが形成されている。内管3と外管4の間の空間と最近位バルーン10の内側空間とは、開口部4aを介して繋がっており、圧力流体が最近位バルーン10の内部に流入できる構造となっている。
図2(c)に示すように、中間バルーン11についても同じ構成となっている。
【0031】
ハブ5は、圧力流体の流路と連通した流体注入部6Aと、ワイヤの挿通路と連通した処置部6Bを有する。処置部6Bは、ワイヤを挿通する以外に、薬剤等を注入口や、生体体腔内の流体等の吸引口として機能させることができる。
【0032】
最近位バルーン10、中間バルーン11、最遠位バルーン12とシャフト2(内管3、外管4)、シャフト2とハブ5との接合は、接着剤や熱溶着など従来公知の接合手段を用いて行うことができる。シャフト2または各バルーン10〜12には、各バルーンの位置をX線透視下で確認することを可能にするため、X線不透過マーカーを配置していてもよい。
【0033】
次に、
図3および
図4を用いて、本発明のバルーンカテーテルが有している効果について説明する。
図3(a)〜(c)は、従来のバルーンカテーテルにおいてバルーンが血管中で拡張する様子を示す過程断面図であり、蛇行している血管壁7に病変部8がいくつか存在している。他方
図4(a)〜(c)は、本発明のバルーンカテーテルにおいてバルーンが血管中で拡張する様子を示す過程断面図である。
【0034】
図3(a)および
図4(a)のように、血管には直線的な部分もあれば屈曲した部分も存在する。従来、このように屈曲した血管の箇所に、
図3(b)に示すようにバルーンカテーテル1を挿入すると、バルーン13の拡張に伴って、
図3(c)に示すように、本来屈曲している血管がバルーンによって強制的に伸ばされて、血管や病変部に必要以上の負荷を与えてしまうことになる。必要以上の負荷がかかることにより、血管や周辺組織で炎症が発生して血管病変を悪化してしまう恐れがあり、このような負荷は治療をする上で避ける必要がある。これに対して
図4(b)に示すように、バルーンが複数に分割されているバルーンカテーテル1(既に
図1、2に示したもの)を使用すると、各バルーン10〜12が各所で個別に拡張するため、屈曲している血管がバルーンによって強制的に伸ばされる程度が非常に小さい。したがって、本発明のバルーンカテーテル1では、各々のバルーン10〜12が血管壁7に沿いやすくなり、薬剤が病変部8に効率よく移行するものであり、しかも血管壁7や病変部8に対して低負荷、低侵襲なものである。
【0035】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2にかかるバルーンカテーテルは、実施の形態1と同様に
図1および
図2を用いて説明することができる。
図1、
図2(a)〜(d)に示すように、実施の形態2にかかるバルーンカテーテルは、シャフトと、該シャフトの軸方向の異なる位置に配置されている複数のバルーンとを有するバルーンカテーテルであって、少なくとも1つのバルーンの外側面に薬剤が保持されており、該バルーンが配置されている部分におけるバルーンカテーテルの周方向長さは、該バルーンの周方向長さと同じであることを特徴とするものである。特に、
図2(b)〜(d)に示すように、バルーン10〜12の外側には何らの部材も部品も配置されていない(薬剤を除く)。したがって、バルーン10〜12が配されている部分におけるバルーンカテーテルの外形は、該バルーンの外形そのものであり、すなわち、バルーンが配置されている部分におけるバルーンカテーテルの周方向長さは、該バルーンの周方向長さと同じである。バルーン10〜12の外側には何らの部材等も配置しないことにより、バルーン10〜12が内腔壁に接触しやすく、薬剤の移行が効率的となる。また、バルーン10〜12の外側に何らの部材等も配置しないことにより、バルーン10〜12の拡張もスムーズとなる。
【0036】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3にかかるバルーンカテーテルは、中間バルーン11を複数有しているものである。
図5(a)および(b)は、バルーンカテーテルにおいて隣り合う中間バルーン11を示したものであり、これら中間バルーン11以外のバルーンの図示は省略している。
図5(a)および(b)において、該隣り合う中間バルーン間11のシャフト2が角度αをもって曲げられている。
図5(a)に示すように、本発明の実施の形態3にかかるバルーンカテーテルでは、隣り合う中間バルーン11の間にあるシャフト2が多少曲げられても隣り合う中間バルーン11同士が接触し合わない設計となっている。中間バルーン11同士が接触しないことによって、中間バルーン11同士の屈曲に対する妨げとならず、このため、屈曲している血管がバルーンによって強制的に伸ばされることを抑制することができる。好ましくは、隣り合う中間バルーン11間のシャフト2を13度曲げても隣り合う中間バルーン11同士が接触しないことであり、より好ましくは15度、さらに好ましくは、17度曲げても接触しないことである。他方、血管壁7に対して連続的に薬剤を付与するためには中間バルーン11間のシャフト2は、ある程度短く設計されていることが好ましく、この観点からは、
図5(b)に示すように隣り合う中間バルーン11間のシャフト2を55度曲げると隣り合う中間バルーン11同士が接触することが好ましく、より好ましくは50度、さらに好ましくは、45度曲げると接触することである。なお、本実施の形態においては隣り合う中間バルーン11同士の接触について説明したが、最近位バルーン10と中間バルーン11、中間バルーン11と最遠位バルーン12との間の角度についても同じことがいえる。
【0037】
シャフト2の剛性が高い場合には、屈曲が、バルーン間にあるシャフトのみならずバルーン内のシャフトにも及んでいることがあるが、本発明において「隣り合うバルーン間のシャフトの曲げ角度」というときは、隣り合うバルーンのうち、一のバルーンの近位端と遠位端とを結ぶ線分1と、他のバルーンの近位端と遠位端とを結ぶ線分2とがなす角度によって定めるものとする。また、バルーンに注入する圧力流体の圧力によって上記角度が異なるため、本発明においては、圧力流体の圧力を8atm(約0.81MPa)としたときのバルーンの外形を基準とする。
【0038】
(実施の形態4)
図6は、本発明の実施の形態4にかかるバルーンカテーテルの平面図である。
図6において、複数のバルーンのうち、最近位バルーン10と最遠位バルーン12を除くバルーン(中間バルーン11)の少なくとも一つは、内圧を8[atm]としたときのアスペクト比(軸方向長さx/軸方向に垂直な方向の最大径y)が2以下である。なお、
図1に示したバルーンカテーテルでは、中間バルーン11の数が1であるのに対して
図6のバルーンカテーテルでは、中間バルーン11の数が3であるが、バルーンカテーテルの本質的な違いではなく、いずれの実施形態においても、中間バルーン11の数はいくつであってもよい。
【0039】
従来のバルーンカテーテルでは、バルーンの寸法は、治療部位の大きさ等に応じて適宜設定されており、例えば、治療部位が血管の場合は、軸方向の長さを5mm〜300mm、外径を1mm〜12mmとすることが好ましく、治療部位が十二指腸乳頭等の消化管の場合は、軸方向長さを10mm〜100mm、外径を3mm〜30mmとしていた。本発明においては、バルーンの数を複数としているため、バルーン一つ当たりの軸方向長さは小さく設計することができる。中間バルーン11のアスペクト比(x/y)は、上記のように2以下とすることが好ましく、1.5以下がより好ましく、1以下がさらに好ましい。また、バルーンに注入する圧力流体の圧力によって上記アスペクト比が異なるため、本発明においては、圧力流体の圧力を8atm(約0.81MPa)としたときのバルーンの外形を基準とする。各々のバルーン10〜12を前記アスペクト比のバルーンとすることで、血管等の内腔が屈曲している箇所や先細り状となっている箇所においても拡張した各々のバルーンが内腔壁に沿いやすくなり、効果的に病変部の狭窄を拡張させることが可能で、薬剤が病変部に効率よく移行するものであり、しかも血管壁や病変部に対して低負荷、低侵襲なものである。
【0040】
また、血管壁7に対して連続的に薬剤を付与するためには中間バルーン11間の近接距離(
図6におけるz)は短いほうが好ましく、例えば5mm以下、より好ましくは4mm以下、さらに好ましくは3mm以下とする。他方、シャフト2の長さをある程度確保することによりバルーン同士の接触を避けることができ、バルーンカテーテルの屈曲柔軟性を高めることができるため、中間バルーン11間のシャフト2の長さは、好ましくは1mm以上とする。
【0041】
(実施の形態5)
図7は、本発明の実施の形態5にかかるバルーンカテーテルの平面図である。
図7において、隣り合う3つのバルーン10〜12の中で中央にあるもの(中間バルーン11)の最大直径が、両隣にあるいずれのバルーンの最大直径よりも小さい。両隣にあるバルーンの最大直径が大きければ、両隣にあるバルーンの拡張によって血管中でのバルーンカテーテルの軸方向の位置が固定される。これによって、中間バルーン11が所定の位置で所望の役割(薬剤を病変部に投与すること)を果たしやすくなる。なお、本実施の形態においては、隣り合う3つのバルーンとしてバルーン10〜12を例に挙げて説明したが、隣り合う3つのバルーンはどのように選択されたものであってもよく、全てが中間バルーン11であってもよい。
【0042】
(実施の形態6)
図8は、本発明の実施の形態6にかかるバルーンカテーテルの平面図である。
図8において、隣り合う3つの中間バルーン11の中で中央にあるものの最大直径が、両隣にあるいずれの中間バルーン11の最大直径よりも大きい。このようなバルーンカテーテルの適用例として、ステント13を装着した血管内で再狭窄した病変部8に薬剤を投与する場面が考えられる。ステント13内の病変部8に接する中間バルーン11は、病変部8に確実に薬剤を投与するために病変部8に大きな押圧力を加えられるもの、すなわち最大直径が大きなものであることが好ましい。これに対して、ステント13内に配置されている中間バルーン11の両隣にある中間バルーン11は、血管の健常な部分に接するものであるので、血管壁7に大きな押圧力を加える必要はないし、むしろ加えないことが望ましい。この観点から、両隣にある中間バルーン11の最大直径は、ステント13内に配置されている中間バルーン11の最大直径よりも小さくする。両隣にある中間バルーン11の最大直径を小さくすれば、これらの中間バルーン11が保持している薬剤は、血管壁7の健常部分に低い押圧力で接し、予防的に必要な程度の薬剤を投与することができる。なお、
図8において最近位のバルーン10および最遠位バルーン12は中間バルーン11と兼ねてもよく、例えば、最近位のバルーン10および最遠位バルーン12がステント13内にあっても同様の効果が得られる。
【0043】
(実施の形態7)
図9は、本発明の実施の形態7にかかるバルーンカテーテルの平面図である(血管は図示していない)。
図9に示したバルーンカテーテルは、
図6に示したバルーンカテーテルと同様に、最近位バルーン10、最遠位バルーン12、3つの中間バルーン11を有している。
図6のバルーンカテーテルとの違いは、
図9に示したバルーンカテーテルは、最近位バルーン10に隣り合う中間バルーン11と、最遠位バルーン12に隣り合う中間バルーン11が小さく形成されており、最近位バルーン10、3つの中間バルーン11、最遠位バルーン12の順に、大、小、大、小、大の関係で並べられている。ここでいう「大」と「小」の区別の基準には、(1)バルーンの軸方向の長さが所定長さ以上のものを「大」とし、バルーンの軸方向の長さが所定長さ未満のものを「小」とする基準、(2)バルーンの最大直径が所定長さ以上のものを「大」とし、バルーンの最大直径が所定長さ未満のものを「小」とする基準、(3)バルーンの軸方向の長さが所定長さ以上で、かつバルーンの最大直径が所定長さ以上のものを「大」とし、バルーンの軸方向の長さが所定長さ未満で、かつバルーンの最大直径が所定長さ未満のものを「小」とする基準がある。このうち、(2)または(3)の基準を満たす大小のバルーンが形成されている場合、バルーンカテーテル1を屈曲させた際に、最大直径の小さい「小」のバルーンを挟んで隣り合う「大」のバルーン同士が近づきやすくなるため、バルーンカテーテル1をよりいっそう屈曲させやすくなり、屈曲した血管等に対応しやすくなる。
【0044】
本発明においては、本明細書に含まれるいずれの実施形態にかかるバルーンカテーテル1においても、また、本実施の形態7の(1)〜(3)のいずれかを満たすバルーンカテーテル1においてはより一層、屈曲させることにより、屈曲した血管のアウトコース側の血管壁7よりもインコース側の血管壁7への接触面積が増え、インコース側の血管壁7に薬剤を多く付与することができるものである。このような、薬剤を保持している複数バルーンの構成により次の効果を得ることができる。すなわち、病変は、屈曲した血管の中でランダムに発生するものではなく、どちらかといえば、屈曲した血管の内側すなわちインコース側に発生しやすい。そのため、屈曲した血管のインコース側により大きな面積で接触し得る本発明の複数バルーンの構成は、インコース側に重点をおいた薬剤付与をすることを可能にするもので、病変部の治療の観点においても、病変の予防の観点においても、従来のバルーンカテーテルには存在しなかった顕著な貢献をもたらすものである。
【0045】
(実施の形態8)
図10(a)〜(c)は、本発明の実施の形態8にかかるバルーンカテーテル1においてバルーンが血管中で拡張する様子を示す過程断面図である。
図10に示すように、バルーン10〜12は、遠位側にあるものほど、最大直径は小さく構成されている。
【0046】
血管には、太さが一定である部分もあれば、
図10(a)のように、先細り状となっている部分も存在する。従来、このように先細り状の箇所にバルーンカテーテル1を挿入すると、バルーンの拡張に伴って、バルーンの遠位部分だけが血管壁7に接触し、バルーンの近位部分では血管壁に接触せず、薬剤が血管壁に効率よく移行しないという課題があったが、本発明の実施の形態8にかかるバルーンカテーテル1のようにバルーン10〜12は、遠位側にあるものほど最大直径が小さく構成されているため、
図10(b)に示すようにバルーンカテーテル1が挿入されて、
図10(c)に示すように各バルーン10〜12が拡張しても、それぞれの箇所の血管内径に応じて各バルーン10〜12がフィットするため、血管壁をより効果的に拡張させることができて、さらに薬剤が血管壁に効率よく移行し、しかも血管壁7や病変部8に対して低負荷、低侵襲な施術が可能である。また、従来であれば径の異なるバルーンカテーテルを複数回に分けて病変の拡張または病変部への薬剤を移行させる治療処置を行っていたが、本発明による治療を実施した場合には、1本のバルーンカテーテルで病変部の治療を実施することができて、術者の作業負担の観点や治療にかかるコストの観点からも利点がある。
【0047】
本発明の実施の形態8にかかるバルーンカテーテル1は、上記の特徴のほか、最遠位バルーン12の最大直径が、最近位バルーン10の最大直径よりも小さい(すなわち、最近位のバルーン10最大直径が、最遠位バルーン12の最大直径よりも大きい)という特徴も有している。最近位バルーン10の最大直径を大きく設計することによって、最近位バルーン10の拡張に伴い最近位バルーン10が血管壁7に強く押圧され、血流を止め、或いは血流の流速を落とすことができ、その他のバルーンから薬剤が血中に溶出・流出して病変部へ移行することなく失われてしまうことを抑制することができる。
【0048】
なお、図示はしていないが、各バルーン10〜12の最大直径の大小関係が
図10とは反対にすること、すなわち、遠位側のバルーンほど最大直径が大きい構成とすることによって、血管の径が近位側ほど狭くなっている逆テーパー状血管に対する施術でも、血管壁をより効果的に拡張することができて、さらに薬剤が血管壁に効率よく移行し、しかも血管壁7や病変部8に対して低負荷、低侵襲な施術が可能となる効果を奏する。また、このバルーンカテーテルは、最遠位バルーン12の最大直径は、最近位バルーン10の最大直径よりも大きいという特徴も有している。最遠位バルーン12の最大直径を大きく設計することによって、最遠位バルーン12の拡張に伴い最遠位バルーン12が血管壁7に強く押圧され、血流を止め、或いは血流の流速を落とすことができ、その他のバルーンから薬剤が血中に溶出・流出して病変部へ移行することなく失われてしまうことを抑制することができる。
【0049】
(実施の形態9)
図11(a)〜(d)は、本発明のバルーンカテーテルにおいてバルーンが血管中で拡張する様子を示す過程断面図である。実施の形態9においては、バルーンカテーテルを血管内に挿入するステップと、一のバルーンの拡張を開始する第2ステップと、該第2ステップの後、前記一のバルーンより下流側のバルーンの拡張を開始する第3ステップを備えている方法について説明する。
【0050】
まず第1ステップとして、
図11(a)に示すように、血管内に本発明のバルーンカテーテル1を挿入する。なお
図11(a)に示されている矢印は、血流の方向を示すものであり、最近位バルーン10が最上流側に位置している。
【0051】
次に第2ステップとして、最近位バルーン10内に圧力流体を注入することにより、
図11(b)に示すように最近位バルーン10の拡張を開始する。最近位バルーン10の拡張によって最近位バルーン10が血管を閉塞すれば、血流を止め、或いは血流の流速を落とすことができ、これにより、その他のバルーンから薬剤が血中に溶出・流出して病変部へ移行することなく失われてしまうことを抑制することができる。
【0052】
次に第3ステップとして、先述の第2ステップの後、最近位バルーン10より下流側のバルーン(中間バルーン11・最遠位バルーン12)内に圧力流体を注入することにより、
図11(c)に示すように中間バルーン11・最遠位バルーン12の拡張を開始する。中間バルーン11・最遠位バルーン12の拡張開始は、最近位バルーン10の拡張開始時(第2ステップ)よりも後であればいつでも良いが、好ましくは、最近位バルーン10が血管を閉塞する時よりも後であることが好ましい。血流が残っている段階で中間バルーン11・最遠位バルーン12の拡張を開始すると、拡張の動きにより中間バルーン11・最遠位バルーン12から少量の薬剤が溶出・流出するからである。
【0053】
最後には、
図11(d)に示すように中間バルーン11・最遠位バルーン12が血管壁7に接触し、所定の薬剤投与が行なわれる。
【0054】
実施の形態9においては、最近位バルーン10を最初に拡張させる例について説明したが、最初に拡張させるバルーンは最近位バルーン10でなくても同様に実施することができる。また、実施の形態9においては、一のバルーンの拡張を開始する第2ステップと、該第2ステップの後、前記一のバルーンより下流側の他のバルーンの拡張を開始する第3ステップにおいて、一のバルーンと他のバルーンとを別のタイミングで拡張を開始するための構成が必要となる。例えば、一のバルーンを拡張させるためのルーメンと、他のバルーンを拡張させるためのルーメンとは、独立して別々に設けることにより実現できる。
【0055】
なお、一のバルーンを拡張させるためのルーメンと、他のバルーンを拡張させるためのルーメンとが共通する場合には、血管の上流で血流を抑制するためバルーンと、隣り合うバルーンとの距離が5mm以上、20mm以下であることが好ましい。5mm以上にすることで、上流のバルーンが拡張した後に、下流のバルーンが拡張するまでの時間差を設けることが期待できるため、上流側から先に血流を確実に抑制することにつながり、血流によって薬剤が溶出・流出して失われてしまうことが抑制できる。また、20mm以下にすることで、治療する血管が分岐血管であったとしても、血流を確実に抑制することにつながり、血流によって薬剤が溶出・流出して失われてしまうことが抑制できる。以上の構成により、実施の形態9では、薬剤を保持したバルーンから血中に溶出・流出して病変部へ移行することなく失われてしまう薬剤の量を低減することができるバルーンカテーテルの使用方法が提供される。
【0056】
(共通事項)
次に、上述の各実施の形態におけるいずれのバルーンカテーテルにおいても共通して採用し得る詳細事項について説明する。
【0057】
バルーンは、樹脂を成形することにより製造することができる。例えば、押出成形によって押出された樹脂チューブを金型に配置し、二軸延伸ブロー成形することによりバルーンを製造することができる。バルーンは、金型の形状によって任意の形状に形成することができる。また、ディップ成形、射出成形、圧縮成形などの公知の成形方法によりバルーンを製造することができる。
【0058】
バルーンを構成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂が好適に用いられる。これらの樹脂は、バルーンの薄膜化や柔軟性の点からエラストマー樹脂を用いることが好ましい。例えばポリアミド系樹脂の中でバルーンに好適な材料として、ナイロン12、ナイロン11等が挙げられ、ブロー成形する際に比較的容易に成形可能である点から、ナイロン12が好適に用いられる。また、バルーンの薄膜化や柔軟性の点から、ポリエーテルエステルアミドエラストマー、ポリアミドエーテルエラストマー等のポリアミドエラストマーが好ましく用いられる。なかでも、降伏強度が高く、バルーンの寸法安定性が良好な点から、ポリエーテルエステルアミドエラストマーが好ましく用いられる。
さらに石灰化などにより硬化した狭窄病変に対しての拡張性能や拡張圧に対する寸法安定性を高めるために、バルーンに一体に補強を設けてもよい。例えば、押出成形された樹脂チューブから金型を配置し、ブロー成形加工した後に、補強材を接着剤で接合することにより補強バルーンを得ることができる。補強材としては、例えば繊維材料を用いることができて、具体的にはポリアリレート繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、PBO繊維、炭素繊維等が好適に用いられる。これらの繊維材料は、モノフィラメントであっても、マルチフィラメントであってもよい。
【0059】
バルーンに保持される薬剤は、薬理活性物質であれば特に限定されず、例えば、遺伝子治療薬、非遺伝子治療薬、小分子、細胞等の医薬として許容される薬剤が挙げられる。特に、バルーンカテーテルを血管形成術における治療後の血管の再狭窄を抑制する目的で使用する場合は、薬剤として抗増殖剤や免疫抑制剤などの抗再狭窄剤を好ましく用いることができ、具体的には、パクリタキセル、シロリムス(ラパマイシン)、エベロリムス、ゾタロリムス等の薬剤を用いることができる。これらの薬剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0060】
薬剤は、薬剤層としてバルーンに保持されていてもよく、またマイクロカプセル等の形態でバルーンに保持されていてもよい。また薬剤には、薬理活性物質とともに、薬剤の分散性、溶解性、内腔壁への移行性、保存安定性を向上させるための助剤が含まれていてもよい。助剤としては、安定化剤、基剤、結合剤、賦形剤、崩壊剤、防湿剤、防腐剤、溶解剤、溶解補助剤などが用いられる。具体的には乳糖、白糖、デキストリン、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、カルボキシメチルセルロース、酸化セルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどの糖類、安息香酸塩類、エチレンジアミン、ヨウ化カリウム、尿素、ポリソルベート、ジブチルヒドロキシトルエン、ピロ亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、トコフェロール、安息香酸、パラオキシ安息香酸エステル類、ベンザルコニウム塩化物、アラビアゴム、アルギン酸塩、グリセリン等が挙げられる。
【0061】
薬剤は、デリバリー中に薬剤が血液中に溶出したり脱落することを抑制するために、被覆層で保護された状態でバルーンに保持されていてもよい。被覆層は、水溶性高分子や疎水性高分子、糖類、脂質、界面活性剤などから形成することができる。助剤または被覆層はバルーン上に薬剤をより多量にかつ効率的に配置させる目的で用いることができる。バルーン上の意図した部分に多くの薬剤を配置することで、デリバリー中の配置した薬剤の溶出または脱落を抑制すると共に標的病変に対してより多くの薬剤を運ぶことができる。用量依存的に治療効果を発揮する薬剤もあるため、薬剤をバルーン上に多く配置することで治療効果の向上に貢献できる。
【0062】
本発明は、シャフトの遠位側から近位側に至る途中までワイヤを挿通するラピッドエクスチェンジ型のバルーンカテーテルにも適用できる。その場合は、ワイヤの挿通路をシャフトの遠位側を含むシャフトの一部に設け、ハブには処置部を設けないようにすることもできる。