特許第6886788号(P6886788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886788
(24)【登録日】2021年5月19日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】耐震天井構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/18 20060101AFI20210603BHJP
   E04B 9/20 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   E04B9/18 E
   E04B9/20 C
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-157112(P2016-157112)
(22)【出願日】2016年8月10日
(65)【公開番号】特開2018-25024(P2018-25024A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2019年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】野々山 昌峰
(72)【発明者】
【氏名】川口 恵
(72)【発明者】
【氏名】藤永 直樹
(72)【発明者】
【氏名】森田 仁彦
(72)【発明者】
【氏名】藤野 宏道
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−173395(JP,A)
【文献】 特開2003−184219(JP,A)
【文献】 特開2002−013220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00−9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井裏空間の梁躯体に剛接合された建物の耐震天井構造であって、
前記梁躯体は、鉄筋コンクリート製または鉄骨鉄筋コンクリート製であり、縦断面視したときに、矩形状に形成され、下面と、当該下面の両端部から上方へと立ち上がる側面を備え、
前記建物の居室空間の上部に設けられた天井材と、
前記梁躯体の前記側面に剛接合され、前記側面から下方に延伸し、前記下面から突出するように設けられた鉛直鋼材と、
該鉛直鋼材と前記天井材とを接合させる天井材直付金物と、を備えており、
前記天井材直付金物は、前記鉛直鋼材と接合される上方に延びる壁部と、前記天井材を固定する水平部で構成されており、
前記鉛直鋼材は、ウェブとフランジを備えた鋼材であり、
前記天井材直付金物は、高さ調整用孔を備えた連結鋼材を介して、前記天井材直付金物の壁部と前記鉛直鋼材が接合されていることを特徴とする耐震天井構造。
【請求項2】
前記鉛直鋼材は、前記梁躯体の両側の前記側面に左右一対として設けられていることを特徴とする請求項1に記載の耐震天井構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の天井材と、その天井材の上方に位置する天井裏空間に設けられた天井材の吊下げ支持材を備えた耐震天井構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、クリーンルームや事務所等の天井として、上階の床躯体の下方に、野縁や野縁受を介して天井板等の天井材を取り付けることが、広く行われている。
例えば、特許文献1には、図12に示されるような吊天井下地構造101が開示されている。本吊天井下地構造101は、野縁102と、野縁102に直交して配設される野縁受け103と、野縁受け103を吊持する吊ボルト105と、野縁受け103と吊ボルト105を連結する吊金具106と、吊金具106を補強する吊金具用補強金具112と、2つ以上の吊金具用補強金具112を連結する水平材107と、水平材107と吊ボルト105とを斜めに連結するブレース材108とを備えている。
【0003】
上記のような吊天井下地構造101は、鉛直荷重や地震荷重を負担することが期待される構造とはなっていないため、地震発生時には大きく変形し、天井材が落下することがあった。
これに対し、例えば、特許文献2には、図13に示されるような天井の吊設構造110が開示されている。吊設構造110においては、上部構造111から吊下げ部材113を介して天井112が吊り下げられている。吊下げ部材113は上部構造111に剛接合されている。吊下げ部材113としては、下端部に連結した天井112が地震時に水平方向へ変位した際に履歴減衰効果を発揮する部材が用いられている。このような構成により、地震時に天井に作用する水平力(地震力)および天井の水平方向変位を低減することを可能としている。
【0004】
しかし、特許文献2に開示されている天井の吊設構造110においては、吊下げ部材113は上部構造111である上階の床躯体の下面に、該下面に対して垂直に接合されているため、地震力が大きな場合においては、天井112に作用する水平力に対して、この接合部が剛接合として機能しきれずにピン接合として機能して、天井112が水平方向に搖動し、結果として天井112が落下する可能性があった。
また、特許文献3には、天井の天井裏空間の野縁受けと、建物躯体間に架設された張力が導入されたPC鋼材が緊結された耐震天井構造が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−50784号公報
【特許文献2】特開2003−306990号公報
【特許文献3】特許第5925098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、数少ない部品数で、かつ比較的小断面積の鋼材であっても、高い剛性によって耐震安全性の高い耐震天井構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。すなわち、本発明は、天井裏空間の梁躯体に剛接合された建物の耐震天井構造であって、前記建物の居室空間の上部に設けられた天井材と、前記梁躯体の側面に剛接合された鉛直鋼材と、該鉛直鋼材と前記天井材とを接合させる天井材直付金物と、を備えており、前記天井材直付金物は、前記鉛直鋼材と接合される上方に延びる壁部と、前記天井材を固定する水平部で構成されていることを特徴とする。
上記のような構成によれば、天井材を支持する鉛直鋼材は、例えば上階の床躯体より下方に突出した当該階の梁躯体の側面に剛接合されている。すなわち、鉛直鋼材は、梁躯体の側面に沿うように設けられて、梁躯体に、ピン接合ではなく、鉛直方向の複数位置に、例えばあと施工アンカー等によって剛接合されている。
また、鉛直鋼材は、天井面と上階の床躯体下面との間に比べて、区間長の短い、天井面と当該階の梁躯体側面との間に設置されていることで、天井材に作用する水平荷重に、鉛直鋼材の長さを乗じて算出される、天井材が取り付く建物躯体(梁躯体)との接合部分に作用する曲げモーメント量が低減されることで、高い剛性を備えた耐震天井構造となっている。また、天井材は、天井裏空間の梁躯体に剛接合された鉛直鋼材に、天井材直付金物で接合されており、少ない部品数により耐震天井構造が実現されている。
言い換えると、本発明の耐震天井構造は、鉛直鋼材が梁躯体と剛接合され、一体化されていることで、梁躯体が鉛直鋼材を介して当該鉛直鋼材の下端部まで下方側に延びていると読み替えることができ、その鉛直鋼材の下端部まで延びた梁躯体に天井材直付金物が接合されていることで、高い耐震安全性が確保されたものである。
以上の効果が相乗し、高剛性で、高強度による耐震天井構造が実現された。
【0008】
また、本発明の一態様においては、天井裏空間の梁躯体に剛接合された建物の耐震天井構造にあっては、前記鉛直鋼材は、前記梁躯体の両側面に左右一対として設けられていることを特徴とする。
本態様によれば、上述の効果に加えて、梁躯体の両側面に左右一対をなすように、梁躯体幅を挟んだ両側に鉛直鋼材を配置することで、鉛直鋼材の断面積を増大させることなく、特にねじれに対する抵抗力に優れた高剛性で、高強度を有する鉛直部材(鉛直鋼材)を実現することができる。
【0009】
また、本発明の新たな態様による天井裏空間の梁躯体に剛接合された建物の耐震天井構造にあっては、前記天井材直付金物は、高さ調整用孔を備えた連結鋼材を介して、前記天井材直付金物の壁部と前記鉛直鋼材が接合されていることを特徴とする。
本態様によれば、上述の効果に加えて、天井材に接合された天井材直付金物を、高さ調整用孔を備えた連結鋼材を介して梁躯体に剛接合された鉛直鋼材と接合することで、予め天井材直付金物が接合された天井材であっても、当初計画された天井高さ位置に天井面を備えた耐震天井構造を実現することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、比較的に小断面積の鋼材を使用した少ない部品数により、高い剛性を備えた耐震安全性の高い耐震天井構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態の耐震天井構造を示す、(a)は正面縦断面図、(b)は側面図である。
図2】本発明の第1実施形態の耐震天井構造の、各々異なる高さ位置における水平断面図である。
図3】本発明の第1実施形態の耐震天井構造における連結鋼材の、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図4】本発明の第1実施形態の耐震天井構造における天井材直付金物の斜視図である。
図5】本発明の変形例1による耐震天井構造を示す、(a)は正面縦断面図、(b)は側面図である。
図6】本発明の変形例1による耐震天井構造の、各々異なる高さ位置における水平断面図である。
図7】本発明の変形例1による耐震天井構造の天井材直付金物の斜視図である。
図8】本発明の変形例2による耐震天井構造を示す、(a)は正面縦断面図、(b)は側面図である。
図9】本発明の変形例1による耐震天井構造を示す、(a)(b)各々異なる高さ位置での水平断面図、(c)天井材直付金物の斜視図である。
図10】本発明の第2実施形態の耐震天井構造の平面図である。
図11】本発明の第2実施形態の耐震天井構造の、(a)は拡大斜視図、(b)は側面図である。
図12】従来の吊天井下地構造を示す説明図である。
図13】従来の天井の吊設構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の耐震天井構造は、天井材に作用する水平荷重をブレースで抵抗させることなく、梁部材の一方側面または両側側面に剛接合させた鉛直鋼材の下端部を天井面近傍まで下げて、天井材に接合された天井材直付金物と接合させた天井構造である。本発明の特徴は、天井裏空間に斜め材(ブレース)を設置する必要がなく、天井裏空間に設けられる設備機器や設備配管の配置位置を極力限定することなく、天井構造の耐震化が実現できる。
本願発明では、天井材と天井裏空間の梁躯体との間の吊下げ接続方式として、天井材に接合された天井材直付金物と、梁躯体の両側面に剛接合された左右一対形式の鉛直鋼材との間に連結部材を配置させた第1実施形態(図1図4)と、第1実施形態による連結部材を除いた天井材直付金物と鉛直鋼材による変形例1(図5図7)と、天井材直付金物と梁躯体の片方側面のみに剛接合された鉛直鋼材による変形例2(図8、9)がある。
また、第2実施形態は、天井材に接合させた天井材直付金物を天井裏空間に架設させたPC鋼材にて支持させたものである(図10、11)。
以下、第1実施形態、変形例1、変形例2、及び第2実施形態の順に、図面を参照して、発明内容を説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1(a)は、本発明の実施形態として示した耐震天井構造1の正面縦断面図であり、図1(b)は側面図である。より詳細には、図1(a)は、図1(b)のA−A断面図である。図2(a)、(b)、(c)は、それぞれ、図1(a)、(b)の、B−B、C−C、D−D部分における水平断面図である。
耐震天井構造1は、上階の床躯体2の下面2aと、上階の床躯体2の下方に位置付けられた天井材4の上面4aとの間に形成された天井裏空間Sに設けられて、天井材4を上階の床躯体2に接合している。より厳密には、本実施形態においては、耐震天井構造1は、上階の床躯体2の下面2aから下方に突出した天井裏空間Sの梁躯体3に剛接合されている。本実施形態においては、梁躯体3は鉄筋コンクリート製であるが、鉄骨鉄筋コンクリート製であっても構わない。
耐震天井構造1は、梁躯体3の両側面3aに剛接合された左右一対の鉛直鋼材5と、天井材4の上面4aに設置された天井材直付金物7と、鉛直鋼材5と天井材直付金物7を接合させる連結鋼材6と、を備えている。ここでいう剛接合とは、鉛直鋼材を梁躯体面の鉛直方向の複数位置にアンカーボルトを使用して接合させることであり、鉛直鋼材を水平方向への移動を許容するピン接合状態で固定するのではなく、鉛直鋼材が水平方向、及び鉛直方向に移動しないように拘束させた接合状態と定義する。
以下、これらの各部材について詳細に説明する。
【0014】
鉛直鋼材5は、例えば溝形鋼を切截して形成された、長尺の鋼材である。鉛直鋼材5は、矩形形状のウェブ5aと、ウェブ5aの長さ方向、すなわち、図1における鉛直方向Zに延在する両端辺において、ウェブ5aに対して垂直に接合されている、2つのフランジ5bを備えている。2つのフランジ5bの各々は、ウェブ5aから同一の方向に向けて立ち上がるように接合されている。
図1(a)においては、梁躯体3は、紙面奥行方向Yに延在して設けられており、梁躯体3の延在する方向Yに水平面内で直交する方向X、すなわち梁躯体3の幅方向Xに、互いに反対側を向く2つの側面3aを備えている。鉛直鋼材5は、この2つの側面3aの各々に対して、ウェブ5aの、フランジ5bが立ち上がる方向とは反対側の表面である外側表面5dが、側面3aに接触して沿うように、かつ、ウェブ5aの長さ方向が鉛直方向Zに一致するように設けられている。
鉛直鋼材5のウェブ5aの、梁躯体3の側面3aに接触する部分には、図2(a)に示されるように、梁固定孔5eが開設されている。梁固定孔5eは、ウェブ5aの長さ方向に間隔を空けて、3か所に開設されている。
梁固定孔5eの各々に対応して、梁固定孔5eを挿通するように、表面に雄ネジ部が形成されたアンカーボルト10が設けられている。アンカーボルト10の一端10aは、梁躯体3を形成するコンクリートに打ち込まれており、他端である突出端10bは、梁固定孔5eを挿通して、鉛直鋼材5の2つのフランジ5b間の空間に突出している。突出端10bには、ナット11が二重に螺着されている。
【0015】
連結鋼材6は、図3に示されるように、例えばCチャンネルを切截して形成された鋼材である。連結鋼材6は、矩形形状のウェブ6aと、ウェブ6aの長さ方向に延在する両端辺において、ウェブ6aに対して垂直に接合されている、2つのフランジ6bと、2つのフランジ6bの各々の、ウェブ6aとは反対側の端辺から、互いに向かい合う方向に延在する、2つのリップ6cを備えている。2つのフランジ6bの各々は、ウェブ6aから同一の方向に向けて立ち上がるように接合されている。ウェブ6aは、鉛直鋼材5のウェブ5aと略同等の幅を備えている。
連結鋼材6は、図1、及び図2(b)に示されるように、2つの鉛直鋼材5の各々に対して、ウェブ6aの、フランジ6bが立ち上がる方向とは反対側の表面である外側表面6dが、鉛直鋼材5のウェブ5aの外側表面5dに接触して沿うように、かつ、ウェブ6aの長さ方向が鉛直方向Zに一致するように設けられている。連結鋼材6は、鉛直鋼材5の下端5g近傍に設けられており、連結鋼材6の下側が鉛直鋼材5の下端5gから下方向に突出するように設けられている。
連結鋼材6のウェブ6aの、鉛直鋼材5のウェブ5aに接触する部分には、図3(b)に示されるように、連結鋼材6の上端6h近傍の、ウェブ6aの幅方向中央位置と、これより下方において、上記中央位置を水平方向に挟んだ2か所の、計3か所に、鉛直方向に延在する長孔である固定孔(高さ調整用孔)6eが開設されている。
鉛直鋼材5のウェブ5aの、下端5g近傍には、図2(b)に示されるように、上記した固定孔6eに対応する位置に、連結部材固定孔5fが開設されており、連結鋼材6の固定孔6eと、鉛直鋼材5の連結部材固定孔5fは、互いに連通するように設けられている。六角ボルト12が、その軸部12aが連結鋼材6側からこれらの孔6e、5f間を挿通するように、設けられている。六角ボルト12の軸部12aには、鉛直鋼材5側からナット13が螺着されている。
【0016】
天井材直付金物7は、上方に延びる第1壁部と第2壁部、及び、天井材を固定する水平部で構成された、上方側に開いたコ型形状である。詳細を以下に説明する。
図4は、天井材直付金物7の斜視図である。水平部7aは、4隅が矩形状に切り欠かれた、略矩形状の鋼板である。水平部7aは、長さ方向Xにおける長さが、図1(a)の方向Xにおける梁躯体3の幅と略同等になるように形成されている。水平部7aの長さ方向Xに延在する2つの長辺7bには、それぞれ、水平部7aから垂直に立ち上がるように側壁部7cが接合されている。
水平部7aの、水平面内において長さ方向Xに直交する幅方向Yに延在する2つの短辺7dには、それぞれ、水平部7aから垂直に立ち上がるように、矩形形状の第1壁部7eと第2壁部7fが接合されている。第1壁部7eと第2壁部7fの、水平部7aの幅方向Yの長さは、図3に示される連結鋼材6のウェブ6aの幅と略同等となるように形成されている。
第1壁部7eと第2壁部7fの、鉛直方向Zに延在する各側辺7gには、それぞれ、第1壁部7eと第2壁部7fに対して垂直になるように、かつ、外側に、すなわち、水平部7aとは反対の方向に延在するように、矩形形状の補強板部7hが接合されている。
水平部7aには、複数の天井材固定孔7iが開設されている。また、第1壁部7eと第2壁部7fには、複数の連結鋼材固定孔7jが開設されている。
天井材直付金物7は、固定孔7i、7jが開設された、例えば1.6mm程度の厚さの一枚の鋼板に切込みを入れて折り曲げることによって形成されている。
【0017】
天井材直付金物7は、図1、及び図2(c)に示されるように、天井材直付金物7の長さ方向X、幅方向Y、鉛直方向Zの各々が、方向X、方向Y、及び、鉛直方向Zと一致するように方向づけられて、連結鋼材6に接合されている。
より詳細には、天井材直付金物7は、2つの連結鋼材6の各々に対して、第1壁部7eと第2壁部7fの、補強板部7hが延在する方向とは反対側の表面である内側表面7kが、連結鋼材6のウェブ6aの外側表面6dの、鉛直鋼材5の下端5gから下方向に突出している部分に沿うように位置づけられている。
そして、第1壁部7eと第2壁部7f側から連結鋼材6に向けて、連結鋼材固定孔7jを挿通させてドリリングビス14をねじ込むことで、天井材直付金物7は連結鋼材6に接合されている。
【0018】
天井材4は、図1に示されるように、天井材直付金物7の水平部7aの下面と、天井材4の上面4aが接触するように位置づけられて、天井材直付金物7の水平部7aの上方から、図2(c)に示されるように、天井材固定孔7iを挿通させてタッピングビス15をねじ込むことで、天井材直付金物7に固定されている。
【0019】
次に、上記の耐震天井構造1を構築する方法について、図1から図4を用いて説明する。
まず、梁躯体3の2つの側面3aの各々に、アンカーボルト10を打ち込む。
次に、鉛直鋼材5を梁躯体3に対して相対的に移動させて、梁躯体3に固定されたアンカーボルト10を、鉛直鋼材5のウェブ5aの梁固定孔5eに挿通させながら、鉛直鋼材5を、梁躯体3の2つの側面3aの各々に対して、ウェブ5aの外側表面5dが側面3aに接触して沿うように、かつ、ウェブ5aの長さ方向が鉛直方向Zに一致するように、位置づける。そして、アンカーボルト10の突出端10bにナット11を螺着させることにより、各鉛直鋼材5を梁躯体3の両側面3aに固定する。
更に、連結鋼材6を、各鉛直鋼材5に対して、ウェブ6aの外側表面6dが、鉛直鋼材5のウェブ5aの外側表面5dに接触して沿うように、かつ、ウェブ6aの長さ方向が鉛直方向Zに一致するように、位置づける。そして、六角ボルト12の軸部12aを、連結鋼材6側から連結鋼材6の固定孔6eと鉛直鋼材5の連結部材固定孔5fに挿通させて、鉛直鋼材5側からナット13を螺着することにより、連結鋼材6を各鉛直鋼材5に固定する。
【0020】
そして、天井材直付金物7を、第1壁部7eと第2壁部7fの内側表面7kが、2つの連結鋼材6のウェブ6aの外側表面6dの各々の、鉛直鋼材5の下端5gから下方向に突出している部分に接触して沿うように位置づける。そして、第1壁部7eと第2壁部7f側から連結鋼材6に向けて、連結鋼材固定孔7jを挿通させてドリリングビス14をねじ込むことにより、天井材直付金物7を連結鋼材6に固定する。
最後に、天井材4を、天井材直付金物7の水平部7aの下面と、天井材4の上面4aが接触するように位置づけて、天井材直付金物7の水平部7aの上方から、天井材固定孔7iを挿通させてタッピングビス15をねじ込むことにより、天井材4を天井材直付金物7に固定する。
【0021】
次に、上記の耐震天井構造1の効果について説明する。
【0022】
上記のような耐震天井構造1においては、天井材4を支持する鉛直鋼材5は、上階の床躯体2などの建物躯体より下方に突出した梁躯体3の側面3aに剛接合されている。すなわち、鉛直鋼材5は、梁躯体3の側面3aに沿うように設けられて、梁躯体3に、ピン接合ではなく、鉛直方向の複数位置に、アンカーボルト10によって剛接合により接合されている。
また、鉛直鋼材5は、天井面と上階の床躯体2下面2aとの間に比べて、区間長の短い、天井面と当該階の梁躯体3側面3aとの間に設置されていることで、天井材4に作用する水平荷重に、鉛直鋼材の長さを乗じて算出される、天井材4が取り付く建物躯体(梁躯体3)との接合部分に作用する曲げモーメント量が低減されている。より詳細には、図1(a)に示される、梁躯体3の下面3bすなわち梁躯体3と鉛直鋼材5との接合部下端から下方に突出する鉛直鋼材の長さLは、建物躯体の下面2aに、該下面2aに垂直に、鉛直鋼材を接合した場合における鉛直鋼材の長さLに比べ、下方に突出した梁躯体3の梁成Hの分だけ短くなっている。これにより、天井材4に作用する水平荷重に、接合部から下方に突出する鉛直鋼材の長さを乗じることにより算出される、接合部に加わる曲げモーメント量が低減されている。これにより、高い剛性を備えた耐震天井構造1となっている。また、天井材4は、天井裏空間Sの梁躯体3に剛接合された鉛直鋼材5に、天井材直付金物7で接合されており、少ない部品数により耐震天井構造1が実現されている。
換言すれば、耐震天井構造1は、鉛直鋼材5が梁躯体3と剛接合され、一体化されていることで、梁躯体3が鉛直鋼材5を介して当該鉛直鋼材5の下端部5gまで下方側に延びていると読み替えることができ、その鉛直鋼材5の下端部5gまで延びた梁躯体3に天井材直付金物7が接合されている。
また、天井材4は、天井材直付金物7と連結鋼材6を介して、左右一対の鉛直鋼材5に接合されている。すなわち、天井材4は、天井材直付金物7を介して、左右一対の2本の鉛直鋼材5によって接合されており、天井材4に作用する水平荷重に抵抗可能な構造となっている。
また、鉛直鋼材5は、梁躯体3に対して、複数の高さ位置においてアンカーボルト10によって接合されているため、天井材4に作用する水平荷重に対して、十分に対抗することができる。
以上の効果が相乗し、高剛性で、高強度を実現可能な、耐震天井構造を実現することが可能となる。
【0023】
また、耐震天井構造1は、上記のように、高剛性で、高強度を実現可能である。したがって、水平荷重を負担させるためのブレース材を設置する必要がなく、また、作用する曲げモーメント量に抵抗するための鉛直鋼材5の断面積を小さくすることができる。更に、耐震天井構造1の構成は簡潔であり、部品数が少ない。以上により、鋼材量を低減し、施工コストを低減することが可能である。
【0024】
また、耐震天井構造1は、上記のように、ブレース材を設置する必要がないため、天井裏空間Sに設置される設備機器や設備配管との干渉が少なくなり、設計及び施工が容易となる。
【0025】
また、天井材4に接合された天井材直付金物7を、長孔である固定孔(高さ調整用孔)6eを備えた連結鋼材6を介して梁躯体3に剛接合された鉛直鋼材5と接合することで、予め天井材直付金物7が接合された天井材4であっても、当初計画された天井高さ位置に天井面を備えた耐震天井構造1を実現することができる。
【0026】
(変形例1)
図5図7に、第1実施形態の変形例1による耐震天井構造を示す。図5(a)は、変形例1として示した耐震天井構造30の正面縦断面図であり、図5(b)は側面図である。より詳細には、図5(a)は、図5(b)のE−E断面図である。図6(a)、(b)、(c)は、それぞれ、図5(a)、(b)の、F−F、G−G、H−H部分における水平断面図である。図7は、耐震天井構造30において使用される天井材直付金物17の斜視図である。変形例1の耐震天井構造は、第1実施形態における連結部材を除いたものであり、梁躯体3に剛接合させた鉛直鋼材5と天井材4に接合させた天井直付金物17が直接接合させたものである。
本変形例1による構成とその構成上の特徴について、第1実施形態と比較し、相違点に着目して述べる。
変形例1の耐震天井構造では、図5図7に示すように、天井材4と天井裏空間Sの梁躯体3は、梁躯体3の両側面3aに剛接合させた左右一対の鉛直鋼材5に、天井材4に接合された天井直付金物17が接合されたものである。
天井材直付金物17は、上方に延びる第1壁部17eと第2壁部17f、及び、天井材4を固定する水平部17aで構成された、上方側に開いたコ型形状である。
天井直付金物17は、当該天井直付金物17の各壁部17e、17fに設けられた高さ調整用の長孔(高さ調整用孔)17jと鉛直鋼材5に設けられた連結部材固定孔5fにボルト12を貫通させ、その高さ調整用の長孔17jを貫通するボルト12の高さ位置を調整した後、そのボルト12両端部に設けられた其々のナット13を締付け、天井直付金物17と鉛直鋼材5を接合させた。
【0027】
変形例1によれば、天井直付金物17の各壁部17e、17fに長孔17jを設けて、梁躯体3に剛接合された鉛直鋼材5と高さ調整を行いながら双方同士を接合させることで、第1実施形態の耐震天井構造を構成する連結部材を省略することができ、部材数を削減し、作業工程を短縮することが可能である。
また、変形例1では、連結部材を配することなく、天井材4に接合された天井材直付金物17が梁躯体3に接合されることで、第1実施形態より天井材4と梁躯体3との間の区間長さが短くなり、天井構造が接合される梁躯体3の接合部に作用する曲げモーメント量はより小さくなる。したがって、耐震安全性を更に高めることができる。
変形例1の耐震天井構造30を構築する場合は、梁躯体3に剛接合させた鉛直鋼材5の下端5g側に対して、予め天井材直付金物17が接合された天井材4を、前記天井材直付金物17の各壁部17e、17fに設けられた長孔17jを貫通するボルト12の高さ位置を確認しながら締付け固定する方法と、鉛直鋼材5の下端5g側に天井材直付金物17を取り付けた後、その天井材直付金物17の水平部17aに天井材4を貼り付ける場合がある。
両方向による変形例1の耐震天井構造30の構築方法では、前記天井材直付金物17の高さ調整用の長孔17jを介して天井材直付金物17と鉛直鋼材5を接合させることで、天井材4を所定の高さ位置に容易に取り付けることができる。
変形例1の耐震天井構造30が、上記第1実施形態の耐震天井構造1が奏する他の効果を同様に奏することは言うまでもない。
【0028】
(変形例2)
図8、9に、第1実施形態の変形例2による耐震天井構造を示す。図8(a)は、変形例2として示した耐震天井構造40の正面縦断面図であり、図8(b)は側面図である。より詳細には、図8(a)は、図8(b)のI−I断面図である。図9(a)、(b)は、それぞれ、図8(a)、(b)の、J−J、K−K部分における水平断面図である。図9(c)は、耐震天井構造40において使用される天井材直付金物37の斜視図である。変形例2耐震天井構造は、梁躯体3の片方の側面3aのみに剛接合させた鉛直鋼材5があり、その鉛直鋼材5の最下端部5gに、天井材4に接合させた天井直付金物37が設けられている。
本変形例2による構成とその構成上の特徴について、第1実施形態、及び変形例1と比較し、その相違点に着目して述べる。
変形例2の耐震天井構造40では、図8、9に示すように、天井材4と天井裏空間Sの梁躯体3は、梁躯体3の片方の側面3aのみに剛接合させた鉛直鋼材5に、天井材4に接合された逆T型状の天井直付金物37が接合されたものである。
天井材直付金物37は、上方に延びる壁部37eと、天井材4を固定する水平部37aで構成されている。
天井直付金物37の壁部37eには、変形例1と同様に、高さ調整用の長孔(高さ調整用孔)37jが設けられ、この長孔37jに挿通されたボルト12よって、鉛直鋼材5と接合されている。
また、天井直付金物37は、図9(c)に示すように、壁部37eの両側に水平部37aが形成されており、その水平部37aの直下に天井材4が設けられ、水平部37aに設けられた天井材固定孔を貫通させたタッピングビスで天井材4が固定されている。
【0029】
変形例2の天井直付金物37は、壁部37eの両側に水平部37aが設けられているために、天井直付金物37に偏心荷重を作用させることなく、水平部37aに天井材4を接合させることができる。
変形例1の耐震天井構造40が、上記第1実施形態の耐震天井構造1が奏する他の効果を同様に奏することは言うまでもない。
【0030】
(第2実施形態)
図10、11に、第2実施形態による耐震天井構造20の構成とその特徴を示す。
図10は、耐震天井構造20を、天井裏空間から見下ろした平面図である。図11(a)は、図10のM部分を拡大した斜視図であり、図11(b)は図11(a)の側面図である。
耐震天井構造20は、建物の壁躯体21(21A、21B、21C、21D)に定着された第1及び第2のPC鋼材22、23を備えている。この第1及び第2のPC鋼材22、23と、後述する天井材直付金物27を介して、天井材26が、コンクリートにより形成された壁躯体21に固定されている。ここでいうPC鋼材とは、PC鋼線、PC鋼より線、ねじ節鉄筋である。
【0031】
第1のPC鋼材22は、図10における左右方向Xにおいて対向する壁躯体21A、21B間に架設されている。本実施形態においては、第1のPC鋼材22は、例えば直径20mmのねじ節鉄筋である。第1のPC鋼材22の、壁躯体21A側の端部は、壁躯体21Aに固定されたアンカーボルト24に接合されている。壁躯体21B側の端部は、壁躯体21B近傍に設けられたPC定着具25によって緊張が与えられて、壁躯体21Bに固定されたアンカーボルト24に接合されている。第1のPC鋼材22は、図10における上下方向Yに間隔を置いて、複数本設けられている。
第2のPC鋼材23は、図10における上下方向Yにおいて対向する壁躯体21C、21D間に架設されている。本実施形態においては、第2のPC鋼材23は、例えば第1のPC鋼材22より小径の、PC鋼線またはPC鋼より線である。第2のPC鋼材23の、壁躯体21D側の端部は、壁躯体21Dに固定されたアンカーボルト24に接合されている。壁躯体21C側の端部は、壁躯体21C近傍に設けられたPC定着具25によって緊張が与えられて、壁躯体21Cに固定されたアンカーボルト24に接合されている。第2のPC鋼材23は、図10における左右方向Xに間隔を置いて、複数本設けられている。
図11に示されるように、第2のPC鋼材23は、第1のPC鋼材22に接触する程度に第1のPC鋼材22より下方に、第1のPC鋼材22に対して直交するように設けられている。
【0032】
天井材26は、天井材直付金物27を介して、第1のPC鋼材22に固定されている。天井材直付金物27は、図11に示されるように、上方に延びる第1壁部27eと第2壁部27f、及び天井材26を固定する水平部27aで構成されている。
水平部27aは略矩形形状を成しており、水平部27aの互いに反対側に位置する2つの短辺の各々から、水平部27aに対して垂直に、上方に立ち上がるように、第1壁部27eと第2壁部27fが接合されている。これにより、天井材直付金物27は、上方側に開いたコ型形状を成している。
第1壁部27eと第2壁部27fには、それぞれ、鉛直方向Zに延在するように長孔27lが開設されている。
水平部7aには、複数の天井材固定孔が開設されている。
【0033】
天井材直付金物27は、水平部27aの長さ方向が、第1のPC鋼材22が架設された方向Xと一致するように方向づけられている。天井材直付金物27の、第1壁部27eと第2壁部27fの各々に開設された長孔27lには、第1のPC鋼材22が挿通されている。第1壁部27eと第2壁部27fの各々の両側面には、各壁部27e、27fを挟み込むように、ナット28が設けられている。ナット28は、ねじ節鉄筋である第1のPC鋼材22の表面上に形成された雄ネジ部に螺着されており、各壁部27e、27fの各々を、各々の両側面から壁部27e、27fに向かって締め付けることにより、天井材直付金物27を第1のPC鋼材22に固定している。
第2のPC鋼材23は、天井材直付金物27の第1壁部27eと第2壁部27fの間を通り、水平部27a上を幅方向に横切るように位置づけられている。
【0034】
天井材26は、天井材直付金物27の水平部27aの下面と、天井材26の上面26aが接触するように位置づけられて、天井材直付金物27の水平部27aの上方から、天井材固定孔を挿通させてタッピングビス29をねじ込むことで、天井材直付金物27に固定されている。
【0035】
次に、上記の耐震天井構造20を構築する方法について、図10、11を用いて説明する。
まず、壁躯体21(21A、21B、21C、21D)に、アンカーボルト24を打ち込む。
次に、第1のPC鋼材22を、複数の天井材直付金物27と、ナット28に挿通させる。ナット28は、各天井材直付金物27に対して4個を用意し、各壁部27e、27fを両側面から挟み込むように位置づけて、第1のPC鋼材22を挿通させる。
このように天井材直付金物27とナット28を挿通させた第1のPC鋼材22の一端を、図10における左右方向Xにおいて対向する壁躯体21A、21Bの中の、一方の壁躯体21Aに固定されたアンカーボルト24に接合した後、他端をPC定着具25によって引っ張ることにより緊張を与えて、壁躯体21Aに対向する壁躯体21Bに固定されたアンカーボルト24に接合する。
更に、第2のPC鋼材23の一端を、図10における上下方向Yにおいて対向する壁躯体21C、21Dの中の、一方の壁躯体21Dに固定されたアンカーボルト24に接合した後、他端をPC定着具25によって引っ張ることにより緊張を与えて、壁躯体21Dに対向する壁躯体21Cに固定されたアンカーボルト24に接合する。このとき、第2のPC鋼材23は、第1のPC鋼材22に接触する程度に第1のPC鋼材22より下方に、第1のPC鋼材22に対して直交するように位置づける。
【0036】
そして、天井材26を、天井材直付金物27の水平部27aの下面と、天井材26の上面26aが接触するように位置づけて、天井材直付金物27の水平部27aの上方から、天井材固定孔を挿通させてタッピングビス29をねじ込むことにより、天井材26を天井材直付金物27に固定する。
最後に、壁躯体21に固定された第1のPC鋼材22に対する天井材直付金物27の相対高さ位置を、天井材直付金物27を上下に移動することにより微調整する。第1のPC鋼材22が挿通している、天井材直付金物27の第1壁部27eと第2壁部27fに開設されている孔は、鉛直方向Zに延在する長孔27lとなっているため、長孔27l内の第1のPC鋼材22の挿通位置を上下方向に変更することで、このような高さ位置の微調整が可能である。高さ位置を調整した後に、ナット28を各壁部27e、27fの両側面に向かって締め付け、天井材直付金物27を第1のPC鋼材22に固定する。
【0037】
次に、上記の耐震天井構造20の効果について説明する。
【0038】
上記のような耐震天井構造20においては、天井材26を支持する第1のPC鋼材22は、PC定着具25により緊張を与えられて、壁躯体21に剛接合されている。
また、天井材26を支持する第1のPC鋼材22は、その下方から、第1のPC鋼材22に直交するように設けられている第2のPC鋼材23によって支持されている。
また、天井材26は、そのわずかに上方で、天井材直付金物27を介して第1のPC鋼材22に接合されている。すなわち、天井材26を支持する第1のPC鋼材22と天井材直付金物27との接合部と、天井材26との高さ方向の距離Lが非常に小さくなっている。これにより、接合部に加わる曲げモーメント量が低減され、天井材26に作用する水平荷重に対抗できる構造となっている。
以上の効果が相乗されることで、比較的に小断面積の鋼材を使用した天井材直付金物27と、当該天井材直付金物27を貫通させた少なくとも1方向に架設されたPC鋼材22によって、耐震安全性の高い耐震天井構造を提供することができる。
【0039】
また、耐震天井構造20は、上記のように、高剛性で、高強度を実現可能である。したがって、水平荷重を負担させるために、天井裏空間にブレース材を設置する必要がない。更に、耐震天井構造20の構成は簡潔であり、部品数が少ない。以上により、鋼材量を低減し、施工コストを低減することが可能である。
【0040】
また、耐震天井構造20は、上記のように、ブレース材を設置する必要がないため、天井裏空間に設置される設備機器や設備配管との干渉が少なくなり、設計及び施工が容易となる。
【0041】
なお、本発明の耐震天井構造は、図面を参照して説明した上述の各実施形態及び各変形例に限定されるものではなく、その技術的範囲において他の様々な変形例が考えられる。
【0042】
例えば、上記の耐震天井構造1、20は、建物を新築する際の構造として適用可能であるのは勿論であるが、例えば、図12等を用いて説明した既存の天井構造を補強する目的で、既存の天井材を存置したまま、天井材の上面に天井材直付金物を取り付け、その天井材直付金物を、第1実施形態、または変形例1、2或いは第2実施形態による梁躯体に剛接合された鉛直鋼材や壁躯体に固定されたPC鋼材にて支持されてもよい。
また、上階の床躯体から下方に突出した梁が少ない場所があり、耐震天井構造1では天井材を十分に支持できないような場合には、部分的に耐震天井構造20を導入して突出した梁が少ない場所においてはPC鋼材で天井材を支持するようにするなど、耐震天井構造1と耐震天井構造20を組み合わせて使用しても構わない。
【0043】
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記各実施形態及び各変形例で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0044】
S 天井裏空間 5 鉛直鋼材
1 耐震天井構造 6 連結鋼材
2 上階の床躯体 6e 固定孔(高さ調整用孔)
3 梁躯体 7、17、27、37 天井材直付金物
3a 側面 7a 水平部
4 天井材 7e 第1壁部
4a 上面 7f 第2壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13