特許第6886809号(P6886809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886809
(24)【登録日】2021年5月19日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】エンドキャップ
(51)【国際特許分類】
   E04F 19/04 20060101AFI20210603BHJP
【FI】
   E04F19/04 101Z
   E04F19/04 102Z
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-234979(P2016-234979)
(22)【出願日】2016年12月2日
(65)【公開番号】特開2018-91037(P2018-91037A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【弁理士】
【氏名又は名称】森 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100162754
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 真樹
(72)【発明者】
【氏名】川岸 克誠
【審査官】 園田 かれん
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−270550(JP,A)
【文献】 特開2016−113808(JP,A)
【文献】 特開2006−083587(JP,A)
【文献】 実開平07−010213(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 17/00−19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造作部材の上面、木口及び壁面設置時に外部に現れるその外側面の三面を覆う、硬質部材で形成された本体部分と、
本体部分の上面被覆片部及び木口被覆片部の壁面に向かう辺から延出された軟質部材からなる隙間被覆片部とで構成されることを特徴とするエンドキャップ。
【請求項2】
隙間被覆片部の先端部分が本体部分の内側に湾曲するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエンドキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面または天井面と壁面との交差部に沿って配設された造作部材の端面に装着されるエンドキャップに関し、更に詳しくは、壁面の開口部に設けられた見切枠に臨む前記造作部材の端部と見切枠表面との隙間、或いは壁面の出隅部分の突き合わせ端面の隙間を覆い隠すためのエンドキャップに係る。
【背景技術】
【0002】
上記のような造作部材としては、住宅等の建物の壁面(通常の壁や袖壁や腰壁)と床面との交差部に沿って配設される幅木や、壁面と天井面との交差部に沿って配設される廻り縁などがあり、壁面のコーナー部分(出隅部分)での突き合わせ部分に装着するためのコーナー用造作部材(エンドキャップ)が提案されている(特許文献1)。
【0003】
この特許文献1は、コーナー部分で幅木の端部に装着されるコーナー用造作部材の発明である。該コーナー用造作部材は、装着時に外部に露出する表側側面に対して両木口(端面)を直角に加工し、一方の木口の表面角部をアール加工している。
そして、このコーナー用造作部材のアール加工した木口を壁面のコーナー部分の一方の壁面から突出させて一方の交差部に於ける壁面に取り付ける。続いてこの突出した部位の側面の裏面側に、このコーナー用造作部材に直交するように壁に配設された他方の幅木の木口を突き合わせる。
さらに、面取り加工が施されていないコーナー用造作部材の木口に他の幅木の木口を突き合わせ、直交する両幅木のコーナー側の端部を納めるようにしている。
【0004】
この収め方では、コーナー部分に向けて配設される各幅木や当該コーナー用造作部材に加工誤差等があったり、施工時に位置ズレ等が生じたりした場合には、これら各幅木の木口とこの木口に突き合わせられる当該コーナー用造作部材の上記突出部位の裏面との間や、90度で両方向から突き合わせた時に、両木口の間に隙間等が生じる恐れがあり、見栄えが悪くなるという問題があった。
【0005】
そこで、上記問題を解決するために特許文献2に記載のようなエンドキャップが提案された。このエンドキャップは、床面と壁面との交差部に沿って配設され、出隅で直交する2つの幅木の端面を覆い隠すように構成されている。即ち、幅木の端面に対面配置するエンドキャップの端面側面部に、幅木の端面の端面が嵌まり込む凹部を形成するというものである。
【0006】
これにより出隅に設置されたエンドキャップの凹部に直交する幅木の端部を挿入すれば幅木の端部は隠れ、仮に、上記のような加工誤差や組み立て時のズレがあったとしても凹部で隠蔽され、綺麗な外観を提供できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−240272号公報
【特許文献2】特許第5393378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、幅木や廻縁のような造作部材の端面は、上記のような出隅のみに現れるというものでなく、例えば、出入口のような開口部に臨む位置にも現れる。特に、開口部では見切枠が装着されるため、見切枠の表・裏面と壁面との間に段差ができやすく、従って、壁面に取り付けられた幅木や廻縁の見切枠に臨むその端部との間には隙間ができやすい。
【0009】
そして上記のようなエンドキャップは、通常、硬質樹脂成形品で形成されており、造作部材の端部と壁面或いは見切枠との間に発生した段差はそのまま隙間として残り、これを解消することが出来ない。
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、出隅のみならず、段差の発生しやすい開口部の見切枠に臨む幅木や廻縁などの造作部材の端部を見栄え良く納め得るエンドキャップを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載のエンドキャップAは、
造作部材10の上面10a、木口10b及び壁面設置時に外部に現れるその外側面10cの三面を覆う、硬質部材で形成された本体部分1と、
本体部分1の上面被覆片部1a及び木口被覆片部1bの壁面30に向かう辺(外側面10cの反対側の辺)から延出された軟質部材からなる隙間被覆片部5とで構成されることを特徴とする。
【0011】
このような構成とすることで、造作部材10と壁面30又は見切枠20の表面との間にできた隙間X、或いは出隅30aで直角に突きあわされた造作部材10の端面にできた隙間Xが上記隙間被覆片部5の変形によって埋められて目立たず、これによって施工性を向上させることができる。
【0012】
請求項2は、請求項1に記載のエンドキャップAにおいて、
隙間被覆片部5の先端部分5sが本体部分1の内側に湾曲するように形成されていることを特徴とする。
【0013】
これにより交差部の壁面30に取り付けられた造作部材10の先端部分10sと壁面30、又は開口部Kに装着された見切枠20、或いは壁面30の出隅30aに於ける造作部材10の先端部分10sの突き合わせ部分に発生した隙間Xを、本体部分1の内側に湾曲した軟質部材製の隙間被覆片部5が埋める。
この内側への曲がりで、エンドキャップAの隙間被覆片部5の先端部分5sが内側に隠れ露出しない。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るエンドキャップAは、上述のような構成としたことで、造作部材10の先端部分10sを見栄え良く納めることができた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)は壁面の出隅に取り付けた造作部材の一方の端部に装着したエンドキャップの取付状態の一例を示す概略斜視図、(b)は開口部の見切縦枠に臨む造作部材の端部に装着したエンドキャップの取付状態の一例を示す概略斜視図である。
図2】本発明のエンドキャップの背面方向斜め上からの斜視図である。
図3図2の平面図である。
図4図2の背面図である。
図5】装着時における図4の右側面図である。
図6】は図1(a)に於けるエンドキャップ装着状態の平面図である。
図7】は図1(b)に於けるエンドキャップ装着状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、造作部材10である幅木を、床面40と壁面30の交差部に沿って取り付けた例を代表例として示す。 以下、幅木を符号10として説明する。勿論、以下は図示していないが、廻縁にも適用できる。
【0017】
エンドキャップAは、図1図5〜7に示すように、上記のように床面40と壁面30との交差部に沿って配設された幅木10の長手方向の該先端端部10sに取り付けられ、これを覆い隠す構造となっている。
【0018】
この幅木10は、壁面施工時に外部に露出する外側面10cの中央よりやや上方に凹溝10mが長手方向に沿って形成されている。また、この幅木10の上面10aの手前側(反壁面側)の縁部には、床面40側に向けて傾斜する傾斜面10kが形成されている。
この幅木10は、例えば、木質系材料や合成樹脂系材料、金属系材料等から帯状に比較的長尺に形成されている。
【0019】
エンドキャップAの本体部分1は、図2図5に示すように、上面被覆片部1a、木口被覆片部1b、及び外面被覆片部1cで形成され、互いに直角に配置されている。
水平な上面被覆片部1aと垂直な外面被覆片部1cとは、これらとの各内角が135°で傾斜した傾斜片部1kを介して一体的に繋がっており、木口被覆片部1bは、外面被覆片部1c、上面被覆片部1a及び傾斜片部1kの前端から直角に伸び、本体部分1の下面、背面及び木口被覆片部1bの反対側の面が開放している。前記傾斜片部1kは幅木10の傾斜面10kに対応している。
本体部分1の正面視、平面視及び側面視の外郭形状はいずれも略長方形であり、幅木10の上面10a、木口10b及び外側面10cを覆うようになっている。
【0020】
そして、外面被覆片部1cには幅木10の凹溝10mに対応した位置に内側に突出した凸条1mが形成されている。この凸条1mは、本実施例では外面被覆片部1cの横方向の全長に亘り、木口被覆片部1bまで設けられている。
【0021】
更に必要に応じて設けられるものであるが、木口被覆片部1bの内面側で壁面30と接する(或いは近接する)壁側縁部の中央から木口被覆片部1bの反対側の開放面1dに向かって水平に伸びる薄い挟持用舌片1eが設けられている。
これら挟持用舌片1eを含む本体部分1は、硬質部材、通常は硬質樹脂(例えば、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の合成樹脂系材料を主材とする。)の成形品で形成される。
【0022】
そして、本体部分1の上面被覆片部1a及び木口被覆片部1bの壁側縁から背面視で図4のようなL形の軟質の隙間被覆片部5が一体的に延出されている。隙間被覆片部5で上面被覆片部1aから水平方向に一体的に延出されている部分を軟質上片部5a、木口被覆片部1bから木口被覆片部1bの反対側の開放面1d方向に一体的に延出されている部分を軟質木口片部5bとする。
隙間被覆片部5の軟質上片部5aと軟質木口片部5bとは、図のようにその接合部分で一体に繋がっていてもよいが、それぞれ独立して曲がることが出来るように分離していてもよい(図示せず)。そして、隙間被覆片部5は、その先端部分5sが本体部分1の内側に向けて断面円弧状に曲げられている。また、外面被覆片部1cの内面に両面テープ7を貼り付けておいてもよい。
なお、上記エンドキャップAは一方のものを説明したが、反対形状のものも用意される。
【0023】
上記隙間被覆片部5は、本体部分1とは材質が異なるので、本体部分1とは別体で形成され接着により一体化してもよいし、軟質・硬質樹脂を同時に金型に射出する2色成形(ダブルモールド)により一体成形してもよい。
【0024】
なお、当該エンドキャップAを、幅木10の模様に合わせた色調のものとしたり、または、表面に塗装等を施したりするようにしてもよい。 また、上記のような合成樹脂系材料に、木粉や無機フィラー、相溶化剤、着色剤などを所定の含有割合で含有させた木粉・プラスチック複合材(WPC)から成形するようにしてもよい。さらに、上記のような合成樹脂製に限られず、アルミニウムやステンレス等の金属材料から鋳造や切削加工等によって一体的に成形した金属製のものとしてもよい。
【0025】
次に、上記構成とされたエンドキャップAを用いた幅木10の突合せ端部の納め構造の一例を出隅施工で説明する。
まず、図1(a)に示すように、幅木10を壁面30と床面40との交差部分に於いて、出隅30aに向けて両側から設置し、幅木10の凹溝10mの部分を壁面30の下端に釘止め固定する。なお、壁面30にはクロス35が貼られている。
出隅30aにおいて、一方の幅木10の先端面は出隅30aに一致し、他方の幅木10の先端部分10sは一方の幅木10のほぼ厚みだけ出隅30aから突出する。この部分において、寸法誤差や設置誤差などで突きあわされた一方の幅木10の先端面と、他方の幅木10の壁側内側面10dとの間には隙間Xが発生する。
【0026】
次いで、出隅30aから突出している他方の幅木10の先端部分10sにエンドキャップAを被せる。この時、両面テープ7が設けられている場合には、前もって離形紙を剥がしておき、装着部分である幅木10の先端部分10sの外側面10cに貼着する。また、挟持用舌片1eが設けられておれば、壁面30と該幅木10の先端部分10sとの間に差し込んでエンドキャップAを固定する。この時、外面被覆片部1cの凸条1mは幅木10の凹溝10mに嵌め込まれる。
【0027】
エンドキャップAの本体部分1の縦横の内寸(或いは内面形状)は、幅木10の縦横の外寸(或いは外形形状)に等しく形成されているので、上記のように外面被覆片部1cの凸条1mは幅木10の凹溝10mに嵌め込まれると、上面被覆片部1aは幅木10の上面10aに密着し、外面被覆片部1cは幅木10の外側面10cに密着する。エンドキャップAはその木口被覆片部1bが幅木10の木口10bに当接するまで押し込まれる。
これにより上面被覆片部1aは壁面30に近接し、木口被覆片部1bと外面被覆片部1cの下辺は床面40に接触する。木口被覆片部1bの外面は、エンドキャップAに直交して配置される一方の幅木10の先端面にほぼ一致する。
【0028】
そして、木口被覆片部1bと上面被覆片部1aから延出した隙間被覆片部5は上記一方の幅木10の先端面及び壁面30に接触して内側に曲がり(或いは、内側に曲がるように施工され)、上記隙間Xに入り込んでこれを覆う。なお、隙間Xが微小で隙間被覆片部5が入り込めない場合は、隙間Xが露出しない位置で切除してもよい。
なお、エンドキャップAの内面に接着剤を塗布し、装着時に幅木10の先端部分10sに接着してもよい。
これにより、当該エンドキャップAを介して突きあわされた幅木10の露出面が連なるような沿面となり、見栄え良く幅木10の端部を納めることができる。
【0029】
図1(b)は、開口部Kに臨む位置に幅木10の先端部分10sが来るように設置され、且つこの部分にエンドキャップAを設置した例で、開口部Kの内側面に見切枠20が取り付けられている。見切枠20は左右一対の見切縦枠21(図では一方だけを示す。)と、見切縦枠21の前・背面に取り付けられる2対4個の見切材25とで構成される(図では一方だけを示す。)。
ここで使用される見切材25は、図7に示すようなL形の樹脂成形部材で、見切縦枠21の前・背面に上下方向に凹設された見切取付溝22にその見切取付部27が嵌め込まれて接着固定され、見切縦枠21から調整間隙Rを越えて壁面30の端部を覆う被覆片部26が壁面30に取り付けられている。そして壁面30には前記同様にクロス35が貼られ、その端部が見切取付溝22に押し込まれ、その上からコーキング剤29が充填されて上記端部を覆っている。
【0030】
この場合、見切縦枠21の前面(背面)と壁面30とがほぼ面一であるため、被覆片部26とクロス35の厚みの和が、幅木10と見切縦枠21との間の隙間Xとなって現れる。
そこで、幅木10に先端部分10sに上記のようにエンドキャップAを被せると、隙間被覆片部5が見切縦枠21やクロス35に接触して内側に曲がり(或いは内側に曲がるように施工し)、前記隙間Xを隠す。
【0031】
以上に説明したエンドキャップAは、本発明のほんの一例を示すに過ぎない。エンドキャップAは、発明の趣旨を変更しない範囲で、例えば、袖壁、腰壁などの端部の被覆など種々変更することができる。この場合、造作部材10は幅木と同様、壁本体に読み替えるものとする。
【符号の説明】
【0032】
A:エンドキャップ、K:開口部、R:調整間隙、X:隙間、1:本体部分、1a:上面被覆片部、1b:木口被覆片部、1c:外面被覆片部、1d:開放面、1e:挟持用舌片、1k:傾斜片部、1m:凸条、5:隙間被覆片部、5a:軟質上片部、5b:軟質木口片部、5s:隙間被覆片部の先端部分、7:両面テープ、10:造作部材(幅木)、10a:上面、10b:木口、10c:外側面、10d:壁側内側面、10k:傾斜面、10m:凹溝、10s:造作部材の先端部分、20:見切枠、21:見切縦枠、22:見切取付溝、25:見切材、26:被覆片部、27:見切取付部、29:コーキング剤、30:壁面、30a:出隅、35:クロス、40:床面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7