(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アルカリ可溶性樹脂の主鎖骨格を与える全単量体単位の総量100質量%に対し、前記構成単位(A)の含有割合は0.5〜50質量%であり、前記構成単位(B)の含有割合は10〜90質量%であることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ可溶性樹脂。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明を詳述する。以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も本発明の好ましい形態である。
【0019】
1、アルカリ可溶性樹脂
本発明のアルカリ可溶性樹脂は、Tgが60℃以下である。Tgがこの範囲にあって、かつ後述する構成単位を有し、二重結合当量が所定範囲にあるアルカリ可溶性樹脂であることによって初めて、優れた耐溶剤性及び耐熱性を両立する硬化物を与えることができる。Tgは、好ましくは58℃以下、より好ましくは55℃以下である。また、Tgの下限は特に限定されないが、耐熱性の観点から、例えば−30℃以上であることが好ましい。より好ましくは−25℃以上である。
本明細書中、Tgは、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
【0020】
上記アルカリ可溶性樹脂は、二重結合当量が200〜2000である。すなわち上記アルカリ可溶性樹脂は、側鎖に二重結合(すなわちエチレン性不飽和基)を含む重合体であって、その二重結合当量が200〜2000となるものである。二重結合当量がこの範囲内にあると、硬化物の耐溶剤性が向上されるとともに、保存安定性や光に対する感度、現像性等も向上する。二重結合当量は、好ましくは300以上、より好ましくは400以上、更に好ましくは450以上、特に好ましくは490以上である。また、好ましくは1900以下である。
なお、側鎖に二重結合を有さない重合体は、二重結合当量が存在しない。
【0021】
本明細書中、二重結合当量は、分子中に含まれる二重結合量の尺度となるものであり、重合体の二重結合1個あたりの分子量を意味する。同じ分子量の化合物であれば、二重結合当量の数値が大きいほど二重結合の導入量が少なくなる。
二重結合当量は、原料の仕込み量から計算することができ、重合体固形分の質量(g)を、重合体の二重結合量(mol)で除することにより求めることができる(詳しい求め方は、後述する実施例に記載した。)。また、滴定及び元素分析、NMR、IR等の各種分析や示差走査熱量計法を用いて測定することもできる。
【0022】
上記アルカリ可溶性樹脂はまた、酸価が20〜300mgKOH/gであることが好ましい。これにより、アルカリ可溶性がより向上し、現像性により優れる硬化物を与えることができる。また、硬化物の耐溶剤性もより向上される他、現像速度も適度なものとなって密着性がより向上したり、現像時に表面荒れが生じるおそれをより抑制したりすることができる。酸価は、より好ましくは40mgKOH/g以上、更に好ましくは60mgKOH/g以上、特に好ましくは80mgKOH/g以上である。また、より好ましくは200mgKOH/g以下、更に好ましくは150mgKOH/g以下、特に好ましくは120mgKOH/g以下である。
本明細書中、酸価は、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
【0023】
上記アルカリ可溶性樹脂は更に、重量平均分子量が5000〜20万であることが好ましい。これにより、耐溶剤性や耐熱性、現像性等の各種性能がより発揮される。より好ましくは6000以上であり、耐溶剤性が特に顕著に発揮されるため好適である。更に好ましくは7000以上、より更に好ましくは8000以上、一層好ましくは10000以上、特に好ましくは12000以上、最も好ましくは12800以上である。また、より好ましくは15万以下、更に好ましくは10万以下、特に好ましくは5万以下、最も好ましくは3万以下である。
本明細書中、重量平均分子量は、後述する実施例に記載の方法にて求めることができる。
【0024】
上記アルカリ可溶性樹脂は、上述の通り側鎖に二重結合を有するとともに、主鎖に、上記一般式(I)で表される構成単位(構成単位(A)とも称す)と、上記一般式(II)で表される構成単位(構成単位(B)とも称す)とを含み、更に酸基を含む重合体である。
ここで、酸基は、例えばアルカリ可溶性樹脂が、酸基含有単量体(c)に由来する構成単位(構成単位(C)とも称す)を含むことで、アルカリ可溶性樹脂中に導入されたものであることが好ましい。すなわち上記アルカリ可溶性樹脂は、主鎖骨格に、少なくとも構成単位(A)、(B)及び(C)を含む重合体であることが好適である。
【0025】
上記アルカリ可溶性樹脂において、構成単位(A)の含有割合は、例えば、アルカリ可溶性樹脂の主鎖骨格を与える全単量体単位の総量100質量%に対し、0.5〜50質量%であることが好ましい。これにより、耐熱性や保存安定性が向上する。より好ましくは1〜40質量%、更に好ましくは5〜30質量%である。
なお、上記一般式(I)中のnは、アルカリ可溶性樹脂中の構成単位(A)の平均繰り返し単位数を表すが、構成単位(A)の含有割合が上述した範囲内になるようにnを設定することが好適である。
【0026】
構成単位(B)の含有割合は、例えば、アルカリ可溶性樹脂の主鎖骨格を与える全単量体単位の総量100質量%に対し、10〜90質量%であることが好ましい。これにより、耐溶剤性がより向上する。より好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは30〜75質量%である。
なお、上記一般式(II)中のmは、アルカリ可溶性樹脂中の構成単位(B)の平均繰り返し単位数を表すが、構成単位(B)の含有割合が上述した範囲内になるようにmを設定することが好適である。
【0027】
構成単位(C)の含有割合は、例えば、アルカリ可溶性樹脂の主鎖骨格を与える全単量体単位の総量100質量%に対し、0.5〜50質量%であることが好ましい。これにより、アルカリ物質に対する可溶性や溶媒に対する溶解性が向上する他、重合体の粘度がより良好になる。より好ましくは2〜50質量%、更に好ましくは5〜45質量%である。
【0028】
上記アルカリ可溶性樹脂は、例えば、下記一般式(i)で表される単量体(a)と、下記一般式(ii)で表される単量体(b)と、酸基含有単量体(c)とを含む単量体成分を重合させてなる重合体(ベースポリマーとも称す)に、酸基と結合し得る官能基と重合性二重結合とを有する化合物(X)を反応させて得ることが好ましい。各反応原料は、それぞれ1種又は2種以上使用することができる。
以下、ベースポリマーを与える各単量体や化合物(X)等について更に説明する。
【0029】
1)単量体(a)
単量体(a)は、下記一般式(i)で表される単量体である。式中の記号は、式(I)における各記号と同じである。単量体(a)を重合反応に用いると、重合時に当該単量体(a)が環化反応して、重合体の構成単位中に、テトラヒドロピラン環構造が形成されると推測される。
【0031】
上記一般式(I)及び(i)中、R
1及びR
2は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜25の炭化水素基を表す。炭素数1〜25の炭化水素基としては、例えば、特開2013−61599号公報〔0037〕に例示された、直鎖状又は分岐状のアルキル基;アリール基;脂環式基;アルコキシで置換されたアルキル基;アリール基で置換されたアルキル基;等が挙げられる。中でも、メチル、エチル、シクロヘキシル、ベンジル等のような、酸や熱で脱離しにくい1級又は2級炭素の炭化水素基が耐熱性の点で好ましい。
なお、上記炭化水素基は置換基を有していてもよい。
【0032】
上記単量体(a)としては、例えば、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−プロピル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソプロピル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−ブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−アミル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ステアリル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ラウリル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−エチルヘキシル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−メトキシエチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−エトキシエチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジフェニル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチルシクロヘキシル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ジシクロペンタジエニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(トリシクロデカニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソボルニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジアダマンチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−メチル−2−アダマンチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート等が挙げられる。
【0033】
これらの中でも、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートが好ましい。着色の少なさや分散性、工業的入手の容易さ等の観点から、より好ましくは、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートである。
【0034】
上記単量体(a)の含有割合は、例えば、ベースポリマーを与える単量体成分の総量100質量%に対し、0.5〜50質量%であることが好ましい。これにより、分散性や保存安定性が向上する。より好ましくは1〜40質量%、更に好ましくは5〜30質量%である。
【0035】
2)単量体(b)
単量体(b)は、下記一般式(ii)で表される単量体である。式中の記号は、式(II)中の各記号と同じである。単量体(b)に由来して、構成単位(B)が形成される。
【0037】
上記一般式(II)及び(ii)中、R
3は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。R
4は、同一又は異なって、炭素数4〜20の直鎖状又は分岐鎖状炭化水素基を表す。この炭化水素基は置換基を有していてもよい。
【0038】
ここで、本発明では、R
4が直鎖状又は分岐鎖状炭化水素基を表すことと、その炭素数が4〜20であるという比較的長鎖であることが重要である。炭素数が20を超えると、色材と併用した場合に着色や耐熱性の低下が懸念され、また炭素数が4未満であると、硬化物が耐溶剤性を充分に発揮できないおそれがある。上記R
4で表される炭化水素基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。また炭素数は、好ましくは4〜16、より好ましくは4〜12である。
なお、上記炭化水素基は置換基を有していてもよいが、置換基を有さないことが好適である。
【0039】
上記単量体(b)としては、例えば、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート化合物;2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート化合物;2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等のエーテル基含有(メタ)アクリレート化合物;等が挙げられる。中でも、耐溶剤性向上の観点から、アルキル(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0040】
上記単量体(b)の含有割合は、例えば、ベースポリマーを与える単量体成分の総量100質量%に対し、10〜90質量%であることが好ましい。これにより、耐溶剤性がより向上する。より好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは30〜75質量%である。
【0041】
3)単量体(c)
単量体(c)は、酸基含有単量体である。
酸基としては特に限定されず、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、カルボン酸無水物基、リン酸基、スルホン酸基等、アルカリ水と中和反応する官能基が挙げられる。中でも、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基が好ましく、より好ましくはカルボキシル基であり、更に好ましくは(メタ)アクリル酸基である。
【0042】
上記単量体(c)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、ビニル安息香酸等の不飽和モノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和多価カルボン酸類;コハク酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)、コハク酸モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)等の不飽和基とカルボキシル基との間が鎖延長されている不飽和モノカルボン酸類;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和酸無水物類;ライトエステルP−1M(共栄社化学製)等のリン酸基含有不飽和化合物;等が挙げられる。これらの中でも、汎用性、入手性等の観点から、カルボン酸系単量体(不飽和モノカルボン酸類、不飽和多価カルボン酸類、不飽和酸無水物類)が好適である。より好ましくは、反応性、アルカリ可溶性等の点で、不飽和モノカルボン酸類であり、更に好ましくは(メタ)アクリル酸である。
ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。
【0043】
上記単量体(c)の含有割合は、酸価が上述した好ましい範囲内となるように設定することが好適である。例えば、ベースポリマーを与える単量体成分の総量100質量%に対し、0.5〜50質量%であることが好ましい。これにより、アルカリ物質に対する可溶性や溶媒に対する溶解性が向上する他、重合体の粘度がより良好になる。より好ましくは2〜50質量%、更に好ましくは5〜45質量%である。
【0044】
上記単量体(c)として(メタ)アクリル酸を使用した場合、本発明のアルカリ可溶性樹脂は、下記一般式(III)で表される構成単位(C)を有する重合体となる。
【0046】
式中、R
5は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。pは、一般式(III)で表される構成単位の平均繰り返し単位数を表し、1以上の数である。
【0047】
4)単量体(d)
上記アルカリ可溶性樹脂はまた、上述した単量体(a)、(b)及び/又は(c)と共重合可能なその他の単量体(単量体(d)とも称す)に由来する構成単位を1種又は2種以上含んでもよい。すなわち上記ベースポリマーを与える単量体成分は、単量体(d)を更に含んでもよい。
【0048】
単量体(d)として特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル等の炭素数1〜3のアルキル(メタ)アクリレート化合物;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;エチレン、プロピレン、塩化ビニル、アクリロニトリル等のエチレン又は置換エチレン化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル類;等が挙げられる。中でも、透明性が良好で、耐溶剤性や耐熱性を損ないにくい点で、炭素数1〜3のアルキル(メタ)アクリレート化合物を用いることが好適である。
【0049】
上記単量体(d)の含有割合は特に限定されないが、例えば、ベースポリマーを与える単量体成分の総量100質量%に対し、0〜50質量%であることが好ましい。より好ましくは0〜25質量%、更に好ましくは0〜10質量%である。
【0050】
ここで、本発明では、耐溶剤性向上の観点から、側鎖に存在する環構造の含有割合が少ないほど好適である。すなわち具体的には、ベースポリマーを与える単量体成分の総量100質量%に対し、重合体側鎖に環構造を与える単量体(例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の環状炭化水素基を有する単量体等)の含有割合が5質量%以下であることが好ましい。より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
【0051】
上記単量体成分を重合する方法としては、バルク重合、溶液重合、乳化重合等の通常用いられる手法を用いることができ、目的、用途に応じて適宜選択すればよい。中でも、溶液重合が、工業的に有利で、分子量等の構造調整も容易であるため好適である。また、上記単量体成分の重合機構は、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位重合等の機構に基づいた重合方法を用いることができるが、ラジカル重合機構に基づく重合方法が、工業的にも有利であるため好ましい。重合反応の好ましい形態は、特開2016−29151号公報〔0062〕〜〔0072〕に記載のとおりである。
【0052】
上述したように本発明のアルカリ可溶性樹脂は、上記ベースポリマーに、酸基と結合し得る官能基と重合性二重結合とを有する化合物(化合物(X)とも称す)を反応させて得ることが好ましい。
【0053】
上記化合物(X)が有する重合性二重結合としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、メタリル基等が挙げられ、当該化合物としてこれらの1種又は2種以上を有するものが好適である。中でも、反応性の点で(メタ)アクリロイル基が好ましい。また、酸基と結合し得る官能基としては、例えば、ヒドロキシ基、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基等が挙げられ、当該化合物としてこれらの1種又は2種以上を有するものが好適である。中でも、変成処理反応の速さ、耐熱性、分散性の点から、エポキシ基(グリシジル基を含む)が好ましい。
【0054】
上記化合物(X)としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸β−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸β−エチルグリシジル、ビニルベンジルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、ビニルシクロヘキセンオキシド等が挙げられる。中でも、エポキシ基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物(単量体)を用いることが好適である。特に、反応性が高く、かつ反応のコントロールがしやすいうえ、入手が容易で、ラジカル重合性二重結合だけでなく同時に水酸基も導入できる点から、(メタ)アクリル酸グリシジル、及び/又は、(メタ)アクリル酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルがより好ましい。
【0055】
上記化合物(X)の付加量は、アルカリ可溶性樹脂の二重結合当量が上述した範囲になる限り特に限定されないが、例えば、ベースポリマーを与える単量体成分の総量100質量部に対し、2〜60質量部とすることが好ましい。より好ましくは10〜55質量部、更に好ましくは10〜50質量部、特に好ましくは10〜45質量部である。
【0056】
上記ベースポリマー中の酸基(の一部)に化合物(X)を反応させる方法は、公知の付加方法等を採用すればよく特に限定されない。反応温度は、例えば60℃〜140℃が好ましい。また、トリエチルアミンやジメチルベンジルアミン等のアミン化合物;塩化テトラエチルアンモニウム等のアンモニウム塩;臭化テトラフェニルホスホニウム等のホスホニウム塩、ジメチルホルムアミド等のアミド化合物;等の公知の触媒を使用することが好ましい。
【0057】
本発明のアルカリ可溶性樹脂は、耐溶剤性や耐熱性に優れる他、硬化性や透明性にも優れる硬化物を与えることができるため、例えば、レジスト材料、各種コーティング剤、塗料等の各種用途に好適に用いることができる。良好な現像性も有するため、カラーフィルタの着色画素、ブラックマトリックス、オーバーコート、フォトスペーサーや光導波路等を作製するためのアルカリ現像型のネガ型レジスト材料等に有用である。また、良好な色材分散性も有するため、カラーフィルタ用着色硬化性樹脂組成物にも有用である。上記アルカリ可溶性樹脂は、特にカラーレジスト用バインダー樹脂やソルダーレジスト用樹脂等として使用することが好ましく、上記アルカリ可溶性樹脂は、感光性樹脂組成物の主成分として極めて有用である。
【0058】
2、感光性樹脂組成物
本発明の感光性樹脂組成物(単に「樹脂組成物」とも称す)は、上述した本発明のアルカリ可溶性樹脂を含む。必要に応じ、更に他の成分を含んでいてもよい。各含有成分は、それぞれ1種又は2種以上を使用することができる。
【0059】
本明細書中、「感光性樹脂組成物(樹脂組成物)の固形分総量」とは、樹脂組成物の含有成分のうち、硬化物を形成する成分(硬化物の形成時に揮発する溶媒等を除く)の総量を意味する。
【0060】
1)アルカリ可溶性樹脂
アルカリ可溶性樹脂については上述したとおりである。なお、上述した本発明のアルカリ可溶性樹脂以外のアルカリ可溶性樹脂を併用してもよい。
これらアルカリ可溶性樹脂は、感光性樹脂組成物中でバインダー樹脂として作用し得る。
【0061】
上記アルカリ可溶性樹脂の含有割合(2種以上含む場合はその合計量)は特に限定されないが、例えば樹脂組成物の固形分総量100質量%に対し、5〜70質量%であることが好ましい。より好ましくは10〜65質量%、更に好ましくは15〜60質量%である。
【0062】
2)着色剤(色材)
上記樹脂組成物は、着色剤を含むことが好ましい。これにより、カラーフィルター用途により有用なものとなる。なお、上記樹脂組成物は、色材を含む場合に特に優れた耐溶剤性を発揮でき、色材の染みだしを充分に抑制することができる。
【0063】
着色剤(色材)としては、例えば、顔料や染料が好適に使用される。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、顔料と染料とを組み合わせてもよい。このように着色剤が顔料及び/又は染料である形態は、本発明の好適な形態の1つである。なお例えば、カラーフィルターの赤色、青色、緑色画素を形成する場合、青と紫、緑と黄等、色材を組み合わせて求める色特性を発揮させる手法が好適に使用され、ブラックマトリックスを形成する場合には黒の色材を用いて形成することができる。
【0064】
顔料及び染料の中でも、例えば耐久性の点では、顔料(例えば有機顔料又は無機顔料)が優れ、また、例えばパネル等の輝度向上の点では染料が優れることから、求められる特性に応じて適宜これらを選択又は併用すればよい。顔料の中でもより好ましくは有機顔料である。
【0065】
上記顔料としては、例えば、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、多環式顔料(例えばキナクリドン系、ペリレン系、ペリノン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ジオキサジン系、チオインジゴ系、アントラキノン系、キノフタロン系、金属錯体系、ジケトピロロピロール系等)、染料レーキ系顔料等の有機顔料;白色・体質顔料(例えば酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、クレー、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等)、有彩顔料(例えば黄鉛、カドミニウム系、クロムバーミリオン、ニッケルチタン、クロムチタン、黄色酸化鉄、ベンガラ、ジンククロメート、鉛丹、群青、紺青、コバルトブルー、クロムグリーン、酸化クロム、バナジン酸ビスマス等)、黒色顔料(例えばカーボンブラック、ボーンブラック、グラファイト、鉄黒、チタンブラック等)、光輝材顔料(例えばパール顔料、アルミ顔料、ブロンズ顔料等)、蛍光顔料(例えば硫化亜鉛、硫化ストロンチウム、アルミン酸ストロンチウム等)等の無機顔料が挙げられる。また、使用できる顔料の色としては、黄色、赤色、紫色、青色、緑色、褐色、黒色、白色等が挙げられる。
【0066】
上記顔料はまた、目的や用途に応じて、ロジン処理、界面活性剤処理、樹脂系分散剤処理、顔料誘導体処理、酸化皮膜処理、シリカコーティング、ワックスコーティング等の表面処理がなされていてもよい。
【0067】
上記顔料の具体例としては、例えば、特開2015−42697号公報の段落番号0103〜0107に記載された、C.I.ピグメントイエロー1、138等の黄色顔料;C.I.ピグメントオレンジ1等の橙色顔料;C.I.ピグメントバイオレット1等の紫色顔料;C.I.ピグメントレッド1等の赤色顔料;C.I.ピグメントブルー1等の青色顔料;C.I.ピグメントグリーン1、58等の緑色顔料;C.I.ピグメントブラウン5等の褐色顔料;アニリンブラック、カーボンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉄、チタンブラック、C.I.ピグメントブラック1等の黒色顔料;C.I.ピグメントホワイト1等の白色顔料;等が挙げられる。「C.I.」はカラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists発行)を意味し、数字はカラーインデックスナンバーを意味する。
【0068】
上記染料としては、例えば、特開2010−9033号公報、特開2010−211198号公報、特開2009−51896号公報、特開2008−50599号公報に記載されている有機染料を使用することができる。中でも、アゾ系染料、アントラキノン系染料、フタロシアニン系染料、キノンイミン系染料、キノリン系染料、ニトロ系染料、カルボニル系染料、メチン系染料等が好ましい。
【0069】
上記着色剤の含有割合(好ましくは顔料及び染料の合計割合)は、目的、用途に応じて、適宜設定することができるが、例えば、感光性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対し、3〜70質量%とすることが好ましい。より好ましくは5〜60質量%、更に好ましくは10〜50質量%である。
【0070】
3)分散剤
上記樹脂組成物が色材(着色剤)を含む場合、分散剤を更に含むことが好適である。分散剤とは、色材への相互作用部位と分散媒(例えば溶剤やバインダー樹脂)への相互作用部位とを有し、色材の分散媒への分散を安定化する働きを持つものであり、一般的には、樹脂型分散剤(例えば高分子分散剤)、界面活性剤(例えば低分子分散剤)、色素誘導体に分類される。上記樹脂組成物は、色材とともに分散剤を含むことが好適である。
【0071】
上記樹脂型分散剤としては特に限定されないが、例えば、ポリウレタン、ポリアクリレート等のポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水素基含有ポリカルボン酸エステル、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩、(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエステル系、変性ポリアクリレート、エチレンオキサイド/ポリプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0072】
上記樹脂型分散剤の構造は、主鎖が色材への相互作用部位を有するアンカー鎖で、グラフト鎖が分散媒への相互作用性を有する相溶性鎖であるようなグラフト構造の樹脂や、アンカー鎖と相溶性鎖がブロック構造になっている樹脂が、特に好ましく用いられる。
【0073】
上記樹脂型分散剤として具体的には、例えば、特開2015−42697号公報の段落番号0112に記載の商品等が挙げられる。
【0074】
上記界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレート等のノニオン性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩やそれらのエチレンオキサイド付加物等のカチオン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルベタイン、アルキルイミダゾリン等の両性界面活性剤;等が挙げられる。
【0075】
上記色素誘導体とは、官能基を色素に導入した構造の化合物であり、官能基としては、例えば、スルホン酸基、スルホンアミド基及びその4級塩、ジアルキルアミノ基、水酸基、カルボキシル基、アミド基、フタルイミド基等が挙げられる。母体となる色素の構造としては、例えば、アゾ系、アントラキノン系、キノフタロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリン系、ジオキサジン系、インダンスレン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系等が挙げられる。
【0076】
上記分散剤(すなわち、樹脂型分散剤、界面活性剤及び/又は色素誘導体)の含有割合は、目的や用途に応じて適宜設定すればよいが、分散安定性、耐久性(耐熱性、耐光性、耐候性等)及び透明性のバランスの観点から、例えば、樹脂組成物の固形分総量100質量%に対し、0.01〜60質量%であることが好ましい。より好ましくは0.1〜50質量%、更に好ましくは0.3〜40質量%である。
【0077】
4)重合性化合物
上記樹脂組成物はまた、重合性化合物を含むことが好ましい。
重合性化合物とは、重合性単量体とも称し、フリーラジカル、電磁波(例えば赤外線、紫外線、X線等)、電子線等の活性エネルギー線の照射等により重合し得る、重合性不飽和結合(重合性不飽和基とも称す)を有する低分子化合物である。例えば、重合性不飽和基を分子中に1つ有する単官能の化合物と、2個以上有する多官能の化合物が挙げられる。
【0078】
上記単官能の重合性単量体としては、例えば、N置換マレイミド系単量体;(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド類;不飽和モノカルボン酸類;不飽和多価カルボン酸類;不飽和基とカルボキシル基の間が鎖延長されている不飽和モノカルボン酸類;不飽和酸無水物類;芳香族ビニル類;共役ジエン類;ビニルエステル類;ビニルエーテル類;N−ビニル化合物類;不飽和イソシアネート類;等が挙げられる。また、活性メチレン基や活性メチン基を有する単量体等を用いることもできる。
【0079】
上記多官能の重合性単量体としては、例えば、下記の化合物等が挙げられる。
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート化合物;
【0080】
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物;
【0081】
エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等の多官能ビニルエーテル類;
【0082】
(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸5−ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル等のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
【0083】
エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、ブチレングリコールジアリルエーテル、ヘキサンジオールジアリルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジアリルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル、グリセリントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタアリルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテル、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリアリルエーテル、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテル等の多官能アリルエーテル類;
【0084】
(メタ)アクリル酸アリル等のアリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキレンオキシド付加トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキレンオキシド付加トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等の多官能(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレート類;トリアリルイソシアヌレート等の多官能アリル基含有イソシアヌレート類;トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の多官能イソシアネートと(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類との反応で得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン等の多官能芳香族ビニル類;等。
【0085】
上記重合性化合物の中でも、樹脂組成物の硬化性をより高める観点から、多官能の重合性化合物を用いることが好適である。重合性化合物として多官能の重合性化合物を用いる場合、その官能数として好ましくは3以上であり、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上である。また、硬化収縮をより抑制する観点から、官能数は10以下が好ましく、より好ましくは8以下である。
また上記重合性化合物の分子量としては特に限定されないが、取り扱いの観点から、例えば、2000以下が好適である。
【0086】
上記重合性化合物として多官能の重合性化合物を用いる場合、当該重合性化合物の中でも、反応性、経済性、入手性等の観点から、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレート化合物等の、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いることが好適である。より好ましくは多官能(メタ)アクリレート化合物であり、これによって樹脂組成物が感光性及び硬化性により優れたものとなり、より一層高硬度で高透明性の硬化物を得ることが可能になる。更に好ましくは、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物を用いることである。
【0087】
上記樹脂組成物において、重合性化合物の含有割合は、用いる重合性化合物やアルカリ可溶性樹脂の種類の他、目的や用途等に応じて適宜設定すればよいが、現像性や製版性により優れる観点から、樹脂組成物の固形分総量100質量%に対し、2〜80質量%とすることが好ましい。より好ましくは5〜70質量%、更に好ましくは8〜60質量%、特に好ましくは10〜50質量%、最も好ましくは10〜40質量%である。
【0088】
5)光重合開始剤
上記樹脂組成物はまた、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤として好ましくは、ラジカル重合性の光重合開始剤である。
【0089】
上記ラジカル重合性の光重合開始剤とは、電磁波や電子線等の活性エネルギー線の照射により重合開始ラジカルを発生させるものであり、通常使用されるものを1種又は2種以上使用することができる。また、必要に応じて、光増感剤や光ラジカル重合促進剤等を1種又は2種以上併用してもよい。光重合開始剤とともに、光増感剤及び/又は光ラジカル重合促進剤を使用してもよいし、使用しなくてもよい。光増感剤及び/又は光ラジカル重合促進剤を併用しなくても本願発明の効果は充分に発揮されるが、併用した場合は感度や硬化性がより向上される。
【0090】
上記光重合開始剤として具体的には、例えば、下記の化合物等が挙げられる。
2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−〔(4−メチルフェニル)メチル〕−1−〔4−(4−モルホリニル)フェニル〕−1−ブタノン等のアルキルフェノン系化合物;ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系化合物;チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;
【0091】
2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシカルボキニルナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロメチル化トリアジン系化合物;2−トリクロロメチル−5−(2’−ベンゾフリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−〔β−(2’−ベンゾフリル)ビニル〕−1,3,4−オキサジアゾール、4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−フリル−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチル化オキサジアゾール系化合物;2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物;1,2−オクタンジオン,1−〔4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)〕、エタノン,1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−,1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル系化合物;オキシムエーテル系化合物;ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム等のチタノセン系化合物;p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジエチルアミノ安息香酸等の安息香酸エステル系化合物;9−フェニルアクリジン等のアクリジン系化合物;等。
【0092】
上記光重合開始剤の中でも、アルキルフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物、及び/又は、オキシムエーテル系化合物を用いることが好適である。オキシムエステル系化合物及びオキシムエーテル系化合物を「オキシム系化合物」と総称するが、オキシム系化合物を用いた場合には、樹脂組成物の硬化性が著しく向上し、得られる硬化物の耐溶剤性が飛躍的に向上する。
【0093】
上記樹脂組成物において、光重合開始剤の含有量は、目的、用途等に応じて適宜設定すればよく特に限定されないが、光重合開始剤を除く樹脂組成物の固形分総量100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好適である。これにより、密着性により優れた硬化物を得ることができる。より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上、特に好ましくは2質量部以上である。また、光重合開始剤の分解物が与える影響や経済性等とのバランスを考慮すると、30質量部以下であることが好ましい。より好ましくは25質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。
【0094】
上記光重合開始剤と併用してもよい光増感剤や光ラジカル重合促進剤としては、例えば、キサンテン色素、クマリン色素、3−ケトクマリン系化合物、ピロメテン色素等の色素系化合物;4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル等のジアルキルアミノベンゼン系化合物;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール等のメルカプタン系水素供与体;等が挙げられる。
【0095】
上記光増感剤及び光ラジカル重合促進剤は、上述したように使用しなくてもよいが、使用する場合は、硬化性、分解物が与える影響及び経済性のバランスの観点から、樹脂組成物の固形分総量100質量%に対し、0.001〜20質量%であることが好ましい。より好ましくは0.01〜15質量%、更に好ましくは0.05〜10質量%である。
【0096】
6)溶剤
上記樹脂組成物はまた、溶剤を含むことが好ましい。溶剤は、希釈剤等として好ましく使用される。すなわち具体的には、粘度を下げ取扱い性を向上する;乾燥により塗膜を形成する;色材の分散媒とする;等のために好適に使用され、樹脂組成物中の各含有成分を溶解又は分散することができる、低粘度の有機溶媒又は水である。
【0097】
溶剤としては、通常使用するものを1種又は2種使用することができ、目的、用途に応じて適宜選択すればよく特に限定されない。例えば、モノアルコール類;グリコール類;環状エーテル類;グリコールモノエーテル類;グリコールエーテル類;グリコールモノエーテルのエステル類;アルキルエステル類;ケトン類;芳香族炭化水素類;脂肪族炭化水素類;アミド類;水;等が好ましい。これらの溶媒の具体例として、特開2015−42697号公報〔0042〕に記載の化合物等が挙げられる。例えば、グリコールモノエーテルのエステル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等が挙げられる。
【0098】
上記溶剤の使用量としては、目的、用途に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、樹脂組成物の総量100質量%中に、10〜90質量%含まれるようにすることが好ましい。より好ましくは20〜80質量%である。
【0099】
7)その他の成分
上記樹脂組成物は更に、それが適用される各用途の要求特性に応じて、例えば、耐熱向上剤;レベリング剤;現像助剤;シリカ微粒子等の無機微粒子;シラン系、アルミニウム系、チタン系等のカップリング剤;フィラー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルフェノール等の熱硬化性樹脂;多官能チオール化合物等の硬化助剤;可塑剤;重合禁止剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;艶消し剤;消泡剤;帯電防止剤;スリップ剤;表面改質剤;揺変化剤;揺変助剤;キノンジアジド化合物;多価フェノール化合物;カチオン重合性化合物;酸発生剤;等を更に含んでいてもよい。
【0100】
本発明の感光性樹脂組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば、上述した含有成分を、各種の混合機や分散機を用いて混合分散することによって調製することができる。混合・分散工程は特に限定されず、通常の手法により行えばよい。また、通常行われる他の工程を更に含むものであってもよい。なお、上記樹脂組成物が色材を含む場合は、色材の分散処理工程を経て製造することが好適である。
【0101】
上記色材の分散処理工程としては例えば、まず色材(好ましくは有機顔料)、分散剤及び溶剤を各所定量秤量し、ペイントコンディショナー、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ニーダー、ブレンダー等の分散機を用い、色材を微粒子分散させて液状の色材分散液(ミルベースとも称す)とする手法が挙げられる。好ましくは、ロールミル、ニーダー、ブレンダー等で混練分散処理をしてから、0.01〜1mmのビーズを充填したビーズミル等のメディアミルで微分散処理をする。得られたミルベースに、別途攪拌混合しておいたアルカリ可溶性樹脂等を含む組成物(好ましくは透明液)を加えて混合、均一な分散溶液とし、樹脂組成物を得ることができる。
なお、得られた樹脂組成物は、フィルター等によって濾過処理をして微細なゴミを除去することが好ましい。
【0102】
3、硬化物
本発明の感光性樹脂組成物は、耐溶剤性や耐熱性、感光性に優れる硬化物を与えるものである。この硬化物はまた、硬化性、現像性、基板との密着性、透明性、画像形成性及び表面平滑性等にも優れ、例えば、現像後に未露光部の残渣や地汚れ等がないものである。このような上記樹脂組成物を硬化してなる硬化物は、本発明の1つである。
【0103】
上記硬化物(硬化膜)は、その膜厚(厚み)が0.1〜20μmであることが好適である。これにより、上記硬化物を用いた部材や表示装置等の低背化要求に充分に応えることができる。より好ましくは0.5〜10μm、更に好ましくは0.5〜8μmである。
【0104】
上記硬化物は、例えば、液晶表示装置や固体撮像素子等に用いられるカラーフィルター、インキ、印刷版、プリント配線板、半導体素子、フォトレジスト等の、各種の光学部材や電機・電子機器等の用途に好ましく使用される。中でも、カラーフィルターに用いることが好ましい。このように上記樹脂組成物を用いてなるカラーフィルター、すなわち具体的には、基板上に上記硬化物を有するカラーフィルターもまた、本発明の1つである。
以下では、カラーフィルターについて更に説明する。
【0105】
4、カラーフィルター
本発明のカラーフィルターは、基板上に、上記硬化物を有する形態からなる。
上記カラーフィルターにおいて、本発明の感光性樹脂組成物により形成される硬化物は、例えば、ブラックマトリクスや、赤色、緑色、青色、黄色等の各画素のような着色が必要なセグメントとして特に好適であるが、フォトスペーサー、保護層、配向制御用リブ等の着色が必ずしも必要としないセグメントとしても好適である。
【0106】
上記カラーフィルターに使用される基板としては、例えば、白板ガラス、青板ガラス、アルカリ強化ガラス、シリカコート青板ガラス等のガラス基板;ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリスルホン、環状オレフィンの開環重合体やその水素添加物等の熱可塑性樹脂からなるシート、フィルム又は基板;エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂からなるシート、フィルム又は基板;アルミニウム板、銅板、ニッケル板、ステンレス板等の金属基板;セラミック基板;光電変換素子を有する半導体基板;表面に色材層を備えるガラス基板(例えばLCD用カラーフィルタ)等の各種材料から構成される部材;等が挙げられる。中でも、耐熱性の点から、ガラス基板や、耐熱性樹脂からなるシート、フィルム又は基板が好ましい。また、上記基板は透明基板であることが好適である。上記基材には、必要に応じて、コロナ放電処理、オゾン処理、シランカップリング剤等による薬品処理等を行ってもよい。
【0107】
上記カラーフィルターを得るには、例えば、画素一色につき(すなわち、一色の画素ごとに)、基板上に、上記樹脂組成物を配置する工程(配置工程とも称す)と、該基板上に配置された樹脂組成物に光を照射する工程(光照射工程とも称す)と、現像液により現像処理する工程(現像工程とも称す)と、加熱処理する工程(加熱工程とも称す)とを含む手法を採用し、これと同じ手法を各色で繰り返す製造方法を採用することが好適である。なお、各色の画素の形成順序は、特に限定されるものではない。
【0108】
上記各工程の好ましい形態は、特開2016−29151号公報〔0125〕〜〔0137〕に記載のとおりである。なお、上記現像工程では、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒又はアルカリ性水溶液を現像液として用いることが好ましく、アルカリ性水溶液は、アルカリ剤として無機のアルカリ剤やアミン類を含むことが好ましい。アルカリ性水溶液を用いる場合は、現像後、水で洗浄することが好適である。
【0109】
5、表示装置用部材又は表示装置
本発明はまた、上記カラーフィルターを備える表示装置用部材又は表示装置でもある。
上記樹脂組成物により形成される硬化物(硬化膜)は、耐溶剤性や耐熱性に優れるうえ、高い透過率を有するものであるから、透明部材として特に好適であり、また、各種表示装置における保護膜や絶縁膜としても有用である。
【0110】
上記表示装置としては、例えば、液晶表示装置、固体撮像素子、タッチパネル式表示装置等が好適である。
なお、上記硬化物(硬化膜)を表示装置用部材として用いる場合、当該部材は、上記硬化膜から構成されるフィルム状の単層又は多層の部材であってもよいし、該単層又は多層の部材に更に他の層が組み合わされた部材であってもよいし、また、上記硬化膜を構成中に含む部材であってもよい。
【実施例】
【0111】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」をそれぞれ意味する。なお、各種物性等は以下のようにして測定した。
【0112】
1、重合体物性
1)重量平均分子量(Mw)
ポリスチレンを標準物質とし、テトラヒドロフランを溶離液として、HLC−8220GPC(東ソー社製)、カラム:TSKgel SuperHZM−M(東ソー社製)によるGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法にて重量平均分子量を測定した。
【0113】
2)酸価(AV)
樹脂溶液3gを精秤し、アセトン90gと水10gとの混合溶媒に溶解し、0.1規定のKOH水溶液を滴定液として用いて、自動滴定装置(平沼産業社製、商品名:COM−555)により、重合体溶液の酸価を測定し、溶液の酸価と溶液の固形分とから固形分1g当たりの酸価(AV)を求めた。
【0114】
3)固形分
重合体溶液をアルミカップに約1gはかり取り、アセトン約3gを加えて溶解させた後、常温で自然乾燥させた。そして、真空乾燥機(東京理化器械社製、商品名:VOS−301SD型)を用い、真空下120℃で1.5時間乾燥した後、デシケータ内で放冷し、質量を測定した。その質量減少量から、重合体溶液の固形分(質量%)を計算した。
【0115】
4)二重結合当量
重合体溶液の固形分量(g)を、化合物(X)(下記合成例ではメタクリル酸グリシジル)の量(mol)で除することで、二重結合当量を算出した。
【0116】
5)ガラス転移温度(Tg)
共重合体溶液をガラス基板に塗布し、室温、減圧下にて4時間乾燥することにより揮発成分を除去して得られた固形分について、DSC(示差走査熱量計;BRUKER AXS社製、商品名:DSC3100S)を用いて窒素気流下で測定した。
【0117】
2、耐溶剤性(NMP溶出試験)
樹脂組成物を5cm角のガラス基板上にスピンコートし、90℃で3分間乾燥後、高圧水銀灯にて100mJで露光を行い、230℃で30分間熱処理を行い、膜厚5μmの薄膜を得た。その後、1−メチル−2−ピロリドン(N−メチルピロリドン;「NMP」とも称す)20gに55℃で5分間浸漬し、塗膜から溶出したNMPの色相を分光光度計UV3100(島津製作所社製)で測定して、670nmの吸光度を求めた。
なお、耐溶剤性の評価に用いたNMPは高い溶解性を持つため、高分子化学の分野を中心に様々な物質に対する溶媒として用いられるものである。
【0118】
3、耐熱性試験
樹脂を5cm角のガラス基板上にスピンコートし、100℃で3分間乾燥後、230℃で3時間熱処理を行った。室温に冷却した後、測色色差計(「ZE−6000」、日本電色工業社製)を用いて、耐熱性試験後のイエローインデックス(YI)値を測定し、着色の程度を下記基準で評価した。
<評価>
○:YI値が5以下
△:YI値が5〜10
×:YI値が10以上
【0119】
合成例1(重合体A)
反応槽として冷却管を付けたセパラブルフラスコを準備し、他方、モノマー滴下槽として、ジメチル−2,2'−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート(以下「MD」と称す)10部、メタクリル酸(以下「MAA」と称す)40部、メタクリル酸ラウリル(以下「LMA」と称する)48.5部、メタクリル酸メチル(以下「MMA」と称す)1.5部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(商品名「パーブチルO」、日本油脂製、以下「PBO」と称す)2部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下「PGMEA」と称す)29部をよく攪拌混合したものを準備し、連鎖移動剤滴下槽として、n−ドデカンチオール(以下「n−DM」と称す)5.5部、PGMEA33部をよく攪拌混合したものを準備した。
反応槽にPGMEAを101部仕込み、窒素置換した後、攪拌しながらオイルバスで加熱して反応槽の温度を90℃まで昇温した。反応槽の温度が90℃に安定してから、モノマー滴下槽及び連鎖移動剤滴下槽から滴下を開始した。滴下は、温度を90℃に保ちながら、それぞれ150分間かけて行った。滴下が終了してから60分後に昇温を開始して反応槽を110℃にした。3時間110℃を維持した。
一旦室温まで内温を冷却した後、セパラブルフラスコにガス導入管を付け、酸素/窒素=5/95(v/v)混合ガスのバブリングを開始した。次いで、反応槽に、メタクリル酸グリシジル(以下「GMA」と称する)41.3部、6−t−ブチル−2,4−キシレノール 0.05部、トリエチルアミン(以下「TEA」と称する)0.4部を仕込み、そのまま110℃で9時間反応させた。その後、室温まで冷却し、濃度が44%の重合体溶液Aを得た。重合体Aの物性を表1に示す。
【0120】
合成例2〜10(重合体B〜J)
表1に示すモノマー(単量体)を使用し、かつGMAの添加量を表1に示す量としたこと以外は、合成例1と同様にして、重合体溶液B〜Jをそれぞれ得た。各重合体の物性を表1に示す。
【0121】
作製例1(顔料分散体1)
PGMEAを18.2部、分散剤としてDISPERBYK−2001(BYK Additives&Instruments社製)を1.43部、色材として顔料(Clariant社製、商品名「C.I.ピグメントバイオレット23」)を1部、及び、染料(MP Biomnedicals社製、商品名「C.I.ソルベントブルー35」)4部を混合し、ペイントシェーカーにて3時間分散することで顔料分散体1を得た。
【0122】
実施例1
合成例1で得た重合体溶液Aを2.0部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを0.89部、イルガキュア907(BASFジャパン社製)を0.30部、作製例1で得た顔料分散体1を4.36部、PGMEAを7.22部混合し、樹脂組成物を得た(全て固形分量である。)。この樹脂組成物を上述した耐溶剤試験に供した。色材が溶出したNMP溶液の吸光度を表2に示す。
【0123】
実施例2〜5、比較例1〜4
重合体溶液Aの代わりに重合体溶液B〜Iをそれぞれ用いたこと以外は、実施例1と同様にして各樹脂組成物を作製し、上述した試験に供した。結果を表2に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
【表2】
【0126】
表1中の記号は、下記のとおりである。
MD:ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート
BzMI:N−ベンジルマレイミド
BzMA:メタクリル酸ベンジル
CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル
2−EHMA:メタクリル酸2−エチルヘキシル(ホモポリマーのTg:−10℃)
LMA:メタクリル酸ラウリル(ホモポリマーのTg:−65℃)
nBMA:メタクリル酸n−ブチル(ホモポリマーのTg:20℃)
MMA:メタクリル酸メチル
MAA:メタクリル酸
GMA:メタクリル酸グリシジル
【0127】
実施例及び比較例の結果より、以下の事項を確認した。
合成例1〜5で得た重合体A〜Eは、上記構成単位(A)及び(B)を含み、更に酸基を含む重合体であって、ガラス転移温度が60℃以下であり、二重結合当量が200〜2000であるという本発明のアルカリ可溶性樹脂に該当する。一方、合成例6で得た重合体FはTgが本発明よりも高く、かつ上記構成単位(B)を含まない点で、合成例7で得た重合体Gは二重結合当量が本発明よりも大きい点で、合成例8で得た重合体Hは上記構成単位(B)を含まず、かつ側鎖に二重結合を有さない点で、合成例9で得た重合体Iは側鎖に二重結合を有さない点で、重合体A〜Eとは相違する。
【0128】
このような相違の下、色材と併用した際の耐溶剤性を比較すると、重合体F〜Iを用いた比較例1〜4に対し、重合体A〜Eを用いた実施例1〜5では、吸光度が著しく小さいことが分かる(表2参照)。色材の溶出が大きいほど溶出液の吸光度は高くなるため、吸光度が著しく小さいということはすなわち、耐溶剤性に優れていると判断することができる。従って、本発明のアルカリ可溶性樹脂は、耐溶剤性に優れることが分かった。
なお、本発明のアルカリ可溶性樹脂は、上記で使用した色材とは異なる色材(顔料、染料)を使用した場合にも溶出を充分に抑制することができるものである。
【0129】
表等には示していないが、実施例1で得た樹脂組成物を上述した耐熱性試験に供したところ、「〇」となり、耐熱性に優れることを確認した。これに対し、重合体溶液Aの代わりに重合体溶液Jを用いたこと以外は実施例1と同様にして得た樹脂組成物について、上述した耐熱性試験に供したところ、「×」となり、耐熱性に差があることを確認した。また実施例1〜5で得た樹脂組成物の硬化物は、透明性、現像性、基板との密着性等の各種物性にも優れるものであった。