(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記締結固定部は、前記座屈拘束材の長手方向と直交する短手方向において、前記ブレース心材を挟む両側に設けられている、請求項1または2に記載の座屈拘束ブレース。
前記ブレース心材を挟む両側に設けられた一対の前記締結固定部のうち、前記縦枠材と前記横枠材との固定箇所から遠い側の締結固定部は、前記固定箇所に近い側の締結固定部から前記短手方向に延びる直線を中心として両側に60°を形成する2本の直線の間の領域に配置されている、請求項3に記載の座屈拘束ブレース。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の補強を目的として、例えば、一端が柱に接続され、他端が梁に接続される棒状の補強部材(ブレース)を配置することがある。建物が変形しようとした際において、補強部材にはその長手方向に沿って圧縮力又は引っ張り力のいずれかが加わることとなる。
【0003】
補強部材がその長手方向に沿って強い圧縮力を受けて座屈してしまうと、建物を十分に補強することができない。そこで、圧縮力や引っ張り力を直接受ける部材であるブレース心材とは別に、ブレース心材の座屈を抑制するための部材である座屈拘束材を備えた構成の補強部材が提案されている。座屈拘束材は、圧縮力を受けたブレース心材がその長手方向とは垂直な方向に変形しようとした際に、当該変形を抑制する方向に力が加わるように、ブレース心材の周囲に配置される部材である。このような座屈拘束材を備えた補強部材は、「座屈拘束ブレース」と称されている。なお、座屈拘束材からブレース心材に対して加わる上記のような力を、以下では「座屈拘束力」とも称する。
【0004】
下記特許文献1には、それぞれ板状に形成された2枚の座屈拘束材の間にブレース心材を挟み込み、座屈拘束材同士を互いにボルト固定した構成の座屈拘束ブレースが記載されている。このような構成の座屈拘束ブレースは、ボルトを締結するという簡易な作業によって形成することが可能である。しかし、互いに固定された2枚の座屈拘束材は完全に一体となっているわけではない。このため、ブレース心材に加わる圧縮力の大きさによっては、2枚の座屈拘束材が互いに当接する面に沿って僅かにずれてしまう可能性がある。このため、ブレース心材が圧縮力を受けて変形しようとした際においては、当該変形を抑制するために必要な大きさの座屈拘束力をブレース心材に加えることができず、座屈の抑制を十分に行えない場合がある。
【0005】
また、特許文献2には、2つの座屈拘束材を互いに溶接固定した構成の座屈拘束ブレースが記載されている。具体的には、2つの座屈拘束材のそれぞれの表面の一部を互いに当接させて、当該当接面を部分的に溶接固定した構成の座屈拘束ブレースが記載されている。このような構成においては、ボルト固定の場合に比べて座屈拘束材同士のずれ等は抑制される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載された方法の場合であっても、ブレース心材が過大な応力を受けて座屈変形しようとした際に、2枚の座屈拘束材同士が部分的に引き剥がされてしまう可能性がある。このため、ブレース心材が圧縮力を受けた際の座屈の抑制効果という点において改善の余地があった。
【0008】
それゆえ、本発明は、互いに固定された二つの座屈拘束材が引き剥がされることを抑制し、ブレース心材に強い圧縮力が加わった場合における座屈を抑制することのできる座屈拘束ブレース、柱梁接続部の補強構造、及び建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の座屈拘束ブレースは、両端部がそれぞれ縦枠材又は横枠材に接続されるブレース心材と、
前記ブレース心材の周囲を包囲し、前記ブレース心材の座屈を抑制する座屈拘束材と、を備えた座屈拘束ブレースであって、
前記座屈拘束材は、第1拘束材と、第2拘束材とを有しており、
前記座屈拘束材には、前記ブレース心材を前記第1拘束材と前記第2拘束材との間に配置した状態で、前記第1拘束材と前記第2拘束材とを固定する固定部が設けられており、
前記固定部は、締結部材を用いて固定された締結固定部と、溶接により固定された溶接固定部と、を有することを特徴とする。
【0010】
なお、本発明の座屈拘束ブレースにあっては、前記締結固定部は、前記座屈拘束材の長手方向における端部に設けられていることが好ましい。
【0011】
また、本発明の座屈拘束ブレースにあっては、前記締結固定部は、前記座屈拘束材の長手方向と直交する短手方向において、前記ブレース心材を挟む両側に設けられていることが好ましい。
【0012】
また、本発明の座屈拘束ブレースにあっては、前記ブレース心材を挟む両側に設けられた一対の前記締結固定部のうち、前記縦枠材と前記横枠材との固定箇所から遠い側の締結固定部は、前記固定箇所に近い側の締結固定部から前記短手方向に延びる直線を中心として両側に60°を形成する2本の直線の間の領域に配置されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の柱梁接続部の補強構造は、上記の何れかの座屈拘束ブレースの両端部が柱又は梁に接続されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の建物は、上記の柱梁接続部の補強構造を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、互いに固定された二つの座屈拘束材が引き剥がされることを抑制し、ブレース心材に強い圧縮力が加わった場合における座屈を抑制することのできる座屈拘束ブレースを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において共通の構成には、同一の符号を付している。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態である座屈拘束ブレース1が、建物における柱2と梁3の接続部(柱梁接続部)に方杖状に取り付けられて、柱梁接続部の補強構造を形成している状態を示す図である。
図1においては、鉛直方向に沿って配置された縦枠材としての柱2と、水平方向に沿って配置された横枠材としての梁3とが、締結部材としての複数のボルト4によって締結固定されている。なお、建物とは、例えば、鉄骨造の軸組みを有する工業化住宅であり、地盤に固定された鉄筋コンクリート造の基礎と、柱2や梁3などの構造部材で構成された架構を有し基礎に固定された鉄骨造の上部構造体と、で構成されている。なお、上部構造体の架構を構成する柱2及び梁3等の構造部材は、予め規格化(標準化)されたものであり、工場にて製造され建築現場にて組み立てられる。
【0019】
柱2は、内部に空間が形成された鋼製の角柱であって、ボルト4を挿通するための複数の貫通孔2aがその側面に形成されている。
【0020】
梁3は、互いに平行な一対のフランジである上フランジ3a及び下フランジ3bと、これらを繋ぐウェブ3cとを有するH形鋼である。梁3の長手方向における端部には、上フランジ3a、下フランジ3b、及びウェブ3cのいずれに対しても垂直な固定フランジ3dが溶接固定されている。また、固定フランジ3dには、柱2に形成された複数の貫通孔2aにそれぞれ対応する位置において、複数の貫通孔3eが形成されている。梁3は、固定フランジ3dを柱2の側面に当接させた状態で、締結部材としてのボルト4を貫通孔2a及び貫通孔3eに挿入して締結することにより、柱2に対して固定されている。
【0021】
図1に示したように、座屈拘束ブレース1は、柱2と梁3との接続部において方杖として取り付けられることにより、当該接続部を補強するための部材である。座屈拘束ブレース1は、その上端部を梁3の下フランジ3bに対して下方側から当接させた状態で、締結部材としてのボルト5およびナット6により梁3に締結固定されている。また、座屈拘束ブレース1は、その下端部を柱2の側面に対して当接させた状態で、締結部材としてのボルト7により柱2に締結固定されている。
【0022】
図2は、座屈拘束ブレース1の分解組立図である。
図2に示すように、座屈拘束ブレース1は、ブレース心材10と、ブレース心材10を間に挟み込むように配置される第1拘束材11と第2拘束材12とを有している。第1拘束材11と第2拘束材12は、
図1に示すように溶接固定部13及び締結固定部14により固定され、ブレース心材10の周囲を包囲し、ブレース心材10の座屈を抑制する座屈拘束材を構成している。なお、
図3(a)、(b)は、座屈拘束ブレース1をその長手方向(z方向)に対して垂直な面で切断した様子を示す断面図であり、(a)は、
図1にA−A線で示す位置における断面図であり、(b)は、
図1にB−B線で示す位置における断面図である。
【0023】
ブレース心材10は、柱2や梁3よりも降伏点の低い鉄鋼材料で形成されており、薄板形状の軸部10aと、軸部10aの長手方向両端部にそれぞれ溶接固定された第1フランジ部10bと第2フランジ部10cとを有している。
図1に示すように、第1フランジ部10bは、梁3の下フランジ3bに対して下方から当接している。第1フランジ部10bには複数の貫通孔10dが形成されている。これら貫通孔10dにボルト5を挿通してナット6で締結することにより、ブレース心材10の上端部が梁3に対して固定される。
【0024】
第2フランジ部10cは、柱2の側面に対して当接している。第2フランジ部10cには複数の貫通孔10eが形成されている。これら貫通孔10eにボルト7を挿通して、柱2のうち梁3が締結固定される貫通孔2aとは別の貫通孔2bに締結することにより、ブレース心材10の下端部が柱2に対して固定される。
【0025】
このように、ブレース心材10は一端が梁3に対して固定され、他端が柱2に対して固定される。このため、例えば柱2と梁3とのなす角度が変化するように建物が層間変形しようとした際においては、ブレース心材10の軸部10aには、その長手方向に沿った圧縮力又は引っ張り力が加わる。換言すれば、ブレース心材10の軸部10aは、柱2と梁3との接続部が変形してしまうことを抑制するように、上記の圧縮力又は引っ張り力に抗するような力を発生させるための部材である。
【0026】
ブレース心材10の軸部10aは、長手方向両端部にそれぞれ、先端に向けて徐々に幅(後述するx方向の長さ)が大きくなる第1拡大部10f及び第2拡大部10gを有する。このような第1拡大部10f及び第2拡大部10gを設けることで、軸部10aにおける座屈拘束材から露出する部分の強度を高め、この露出する部分を座屈し難くすることができる。これにより、柱梁接続部の変形を抑制する座屈拘束ブレース1の効果を高めることができる。
【0027】
ところで、軸部10aは長い板状の部材であるから、その長手方向に沿って上記のような圧縮力が加わると、当該圧縮力の大きさによっては軸部10aが座屈してしまう可能性がある。具体的には、軸部10aの表面に対して垂直な方向に軸部10aが変形するように、軸部10aの全体が円弧状に変形してしまう可能性がある(全体座屈)。又は、軸部10aの一部のみが軸部10aの表面に対して垂直な方向に変位するように、軸部10aが局所的に変形してしまう可能性がある(局所座屈)。このような座屈が生じると、柱2と梁3との接続部を十分に補強することができない。ブレース心材10を間に挟み込むように配置される第1拘束材11及び第2拘束材12は、上記のような軸部10aの座屈を抑制するための部材である。
【0028】
以下の説明においては、
図1に示すように、軸部10aの長手方向をz方向とする。また、z方向に垂直な面で軸部10aを切断した場合の断面形状は長方形となるが、当該長方形の長辺に沿った方向をx方向とする。更に、x方向及びz方向のいずれに対しても垂直な方向をy方向とする。
【0029】
第1拘束材11は鉄鋼材料によって形成されており、軸部10aに略平行な平板部11aと、平板部11aから、
図2における上側に突出する一対の突出部である第1突出部11b及び第2突出部11cとを有している。
【0030】
第1突出部11b及び第2突出部11cは、いずれも断面が矩形の棒状体を、平板部11aに対して溶接固定することによって形成されている。第1突出部11b及び第2突出部11cは、いずれもその長手方向がz方向に一致しており、両者は互いに平行である。本実施形態においては、第1突出部11bの長手方向長さが、第2突出部11cの長手方向長さよりも短くなっている。また、第1拘束材11の平板部11aは、第1突出部11b側の外縁部の長さが、第2突出部11c側の外縁部の長さよりも短い略台形状となっている。
【0031】
第1突出部11bには、後述する締結固定部14に対応する位置に、第1突出部11b及び平板部11aを貫通する貫通孔11dが形成されている。同様に、第2突出部11cには、締結固定部14に対応する位置に、第2突出部11c及び平板部11aを貫通する貫通孔11eが形成されている。
【0032】
第1突出部11bと第2突出部11cの間隔(x方向に沿った間隔)は、x方向に沿った軸部10aの幅よりも僅かに広い。また、第1突出部11b及び第2突出部11cの高さ(y方向に沿った長さ)は互いに同一であって、いずれも軸部10aの厚さよりも僅かに大きい。また、第1拘束材11及び第2拘束材12の長手方向(z方向)長さは、軸部10aの長さよりも短い。
【0033】
第1拘束材11は、平板部11aのうち第1突出部11b及び第2突出部11cが形成されている方の面を軸部10a側に向けて、第1突出部11bと第2突出部11cの間に軸部10aを収納した状態となっている。
【0034】
第2拘束材12は、第1拘束材11と同一の鉄鋼材料によって形成された平板である。第2拘束材12は、第1拘束材11の平板部11aと同一の形状であって、平板部11aに対して平行である。第2拘束材12は、y方向に沿って見た場合において平板部11aと全体が重なるように配置されている。
【0035】
第2拘束材12は、第1突出部11bの上面及び第2突出部11cの上面に、
図2では下側となる面の一部を当接させた状態で、第1拘束材11に対して固定されている。このような構成により、ブレース心材10の軸部10aは、y方向に両側から第1拘束材11と第2拘束材12とによって挟み込まれた状態となっている。また、第1拘束材11と第2拘束材12は、複数の固定部、具体的には複数の溶接固定部13及び複数の締結固定部14によって強固に固定されている。なお、第1拘束材11と第2拘束材12とは、当接していなくてもよい。すなわち、第1拘束材11と第2拘束材12との間に隙間を空けた状態で、ボルト及びナット等の締結部材により締結固定してもよい。また、第1拘束材11と第2拘束材12との隙間に溶接金属を配置して、第1拘束材11と第2拘束材12とを溶接固定してもよい。
【0036】
図2及び
図3(a)、(b)に示すように、第2拘束材12において、第1突出部11bの上面と当接する領域である当接面12aには、複数の貫通孔12bが形成されている。また、第2拘束材12において、第2突出部11cの上面と当接する領域である当接面12cには、複数の貫通孔12dが形成されている。貫通孔12b及び貫通孔12dは、ボルトが挿通可能であり、また、後述する栓溶接にも使用することができる。
【0037】
本実施形態では、締結固定部14の位置を除く全ての貫通孔12b、12dにおいて、溶接固定部13が形成されている。なお、貫通孔12b、12dのうち、締結固定部14及び溶接固定部13を形成する位置は、適宜変更可能であり、一部の貫通孔12b、12dを使用しない構成としてもよい。また、締結固定部14が有する引き剥がしを防止する効果と、溶接固定部13が有する補剛効果をバランスよく発揮させる観点から、締結固定部14よりも溶接固定部13の数が多いことが好ましい。
【0038】
溶接固定部13においては、第1突出部11bの上面に対して第2拘束材12の当接面12aを当接させた状態で、貫通孔12bの内部を溶接金属15で埋めることにより、第2拘束材12と第1突出部11bとが溶接固定されている。すなわち、第2拘束材12と第1突出部11bとは栓溶接によって固定されている。なお、
図3(a)においては、貫通孔12bの内部全体が溶接金属15で埋められているが、必ずしもこのような態様とする必要は無い。例えば、貫通孔12bの中央部分には溶接金属15が存在しないような態様であってもよい。なお、本実施形態では、溶接固定部13を栓溶接により構成しているが、これに限られるものではなく、溝溶接、隅肉孔溶接、又は隅肉溝溶接により構成してもよい。また、複数の溶接固定部13において、場所によって異なる種類の溶接を施してもよい。
【0039】
また、第2突出部11cの上面に対して第2拘束材12の当接面12cを当接させた状態で、貫通孔12dの内部を溶接金属15で埋めることにより、第2拘束材12と第2突出部11cとが溶接固定されている。
【0040】
なお、本実施形態においては、平板部11aと第1突出部11bとの溶接固定、及び、平板部11aと第2突出部11cとの溶接固定についても、以上に説明したような、第2拘束材12と第1突出部11b等との溶接固定と同様の構成により行われている。
【0041】
図3(b)に示すように、締結固定部14においては、第1突出部11bの上面に対して第2拘束材12の当接面12aを当接させた状態で、連通する貫通孔11dと貫通孔12bとにボルト16を挿通してナット17で締結することにより、第2拘束材12と第1拘束材11とが締結固定されている。また、第2突出部11cの上面に対して第2拘束材12の当接面12cを当接させた状態で、連通する貫通孔11eと貫通孔12dとにボルト16を挿通してナット17で締結することにより、第2拘束材12と第1拘束材11とが締結固定されている。締結固定部14は、ボルト16及びナット17等の締結部材を、高強度材料からなる部材とすることで、容易に固定の強度を高めることができる。一方、溶接固定部の強度を高めるためには、溶接金属の強度だけでなく、固定される材である、第1拘束材11及び第2拘束材12全体について、強度の高い材料を使用しなければならない。そのため、締結固定部14をもうけることにより、第1拘束材11及び第2拘束材12全体の強度を高めることなく、容易に座屈拘束ブレース1の座屈防止効果を高めることができる。
【0042】
本実施形態の座屈拘束ブレース1にあっては、溶接固定部13を設けたことにより、第1拘束材11と第2拘束材12との位置ずれを抑制することができる。また、締結固定部14を設けたことにより、座屈拘束ブレース1のブレース心材10が過大な圧縮力を受けた場合に第1拘束材11と第2拘束材12とが引き剥がされることを抑制することができる。このような構成であるから、ブレース心材10に強い圧縮力が加わり、ブレース心材10が座屈する方向に変形しようとした際において、強い座屈拘束力が第1拘束材11又は第2拘束材12からブレース心材10へと加えられる。その結果、ブレース心材10の座屈が抑制される。
【0043】
また、本実施形態の座屈拘束ブレース1では、
図3(a)に示すように、第2拘束材12に形成された複数の貫通孔12bは、いずれも、当接面12aのうちx方向に中央となる位置に形成されている。また、第2拘束材12に形成された複数の貫通孔12dは、いずれも、当接面12cのうちx方向に中央となる位置に形成されている。換言すれば、溶接固定部13が、第1拘束材11と第2拘束材12とが当接する当接面12a、12cのうち、当該当接面12a、12cの外縁よりも中央寄りの部分に設けられている。すなわち、第1拘束材11と第2拘束材12との溶接箇所が、両者の当接面12a、12cの外縁とは重なっておらず、溶接箇所が当接面12a、12cに囲まれている状態となっている。
【0044】
このため、例えば当接面12a、12cの外縁の一部のみを溶接したような場合と比べると、当接面12a、12cのうち、互いに当接しているだけで一体とはなっていない領域(溶接箇所以外の領域)は比較的狭い。その結果、第1拘束材11と第2拘束材12とが相対的に変位してしまうような変形の自由度は小さくなっており、第1拘束材11と第2拘束材12とが当接面12a、12cに沿って(例えばx方向に沿って)ずれてしまうこと、及び、当接面12a、12cとは垂直な方向(y方向)に第1拘束材11及び第2拘束材12の少なくとも一方が変形して互いに離間してしまうことを抑制する効果が高い。
【0045】
なお、締結固定部14は、座屈拘束材の長手方向における端部に形成されていることが好ましい。ここで、座屈拘束材の「長手方向における端部」とは、例えば、座屈拘束材を長手方向に3等分した場合における、中央の領域を除いた両側の3分の1の領域とする。座屈拘束材の長手方向における端部には、中央部に比べて、ブレース心材10の座屈変形により第1拘束材11と第2拘束材12とを引き剥がそうとする力が特に加わり易く、座屈変形した場合の曲率が大きくなる。このような端部に、第1拘束材11と第2拘束材12とを引き剥がす離間方向への力に強い締結固定部14を配置することにより引き剥がしを抑制し、その結果、座屈拘束力を高めることができる。なお、座屈拘束材の長手方向の長さは、一方の端と他方の端の中心点同士を結んだ長さとする。
【0046】
また、締結固定部14は、長手方向(z方向)に直交する短手方向(本実施形態ではx方向)において、ブレース心材10を挟んだ両側に配置されていることが好ましく、これによれば、第1拘束材11と第2拘束材12とが、より引き剥がされ難くなる。本実施形態では、座屈拘束材の長手方向の両側端部においてそれぞれ、ブレース心材10を挟んで両側に位置する一対の締結固定部14が設けられている。締結固定部14は、ブレース心材10を挟んだ短手方向の両側に設けることが好ましいが、必ずしも両側に設ける必要はなく、座屈拘束材が変位して破断が始まる箇所だけに設けられていてもよく、例えば、柱2と梁3とが固定される固定箇所に近い側(略台形状となる第2拘束材12の短辺側)だけでもよい。また、短手方向における固定箇所に近い側に、複数の締結固定部14を設けたり、片側の端部だけに締結固定部14を設けたりしてもよい。また、
図1に示すように本実施形態において座屈拘束材は台形状となっている。本実施形態のように、短い上辺と長い下辺の台形である場合、上辺の両側端部から下辺にそれぞれ下した垂線の近傍に締結固定部14を設けると、台形の座屈拘束材の変形を効果的に抑制することができる。
【0047】
本実施形態において締結固定部14は、柱2と梁3とが固定される固定箇所に近い側(略台形状となる第2拘束材12の短辺側)の当接面12aにおいては、長手方向の両端にある貫通孔12bに設けられている。
【0048】
ここで、本実施形態では、
図1に示すように、座屈拘束ブレース1の柱2に対する角度θ1が、45°よりも小さい、具体的には約20°となるように取り付けられている。このような場合、柱2と梁3との固定箇所から遠い側(略台形状となる第2拘束材12の長辺側)の当接面12cにおける、柱2側(下側)の締結固定部14は、長手方向の端にある貫通孔12dよりも中央側に位置する貫通孔12dに設けられており、梁3側(上側)の締結固定部14は、長手方向の端にある貫通孔12dに設けられていることが好ましい。
【0049】
図1に示すように、ブレース心材10を挟む両側に設けられた一対の締結固定部14のうち、柱2と梁3との固定箇所から遠い側の当接面12cに位置する締結固定部14は、固定箇所に近い側の当接面12aに位置する締結固定部14からx方向に延びる直線Cを中心として両側に60°を形成する直線Dと直線Eの間の領域に配置されていることが好ましい。当接面12cにおいて直線Dと直線Eの間の領域には、ブレース心材10が過大な圧縮力を受けた場合に、第1拘束材11と第2拘束材12とを引き剥がそうとする力が特に加わり易い。このため、当該領域に締結固定部14を配置することで、第1拘束材11と第2拘束材12とが引き剥がされることを抑制する効果を高めることができる。
【0050】
以下に、本発明の他の実施形態について説明する。なお、上述した実施形態と基本的な機能が同一である部分は、図中、同一の符号を付して説明を省略する。
【0051】
図4は、柱2に対する角度θ2が、約45°となるように取り付けられた状態の座屈拘束ブレース20を示している。このような場合、柱2と梁3との固定箇所から遠い側の当接面12cにおける、柱2側(下側)の締結固定部14は、長手方向の端にある貫通孔12dよりも中央側に位置する貫通孔12dに設けられており、梁3側(上側)の締結固定部14は、長手方向の端にある貫通孔12dよりも中央側に位置する貫通孔12dに設けられていることが好ましい。
【0052】
なお、本実施形態においても、柱2と梁3との固定箇所から遠い側の当接面12cに位置する締結固定部14は、固定箇所に近い側の当接面12aに位置する締結固定部14からx方向に延びる直線Cを中心として両側に60°を形成する直線Dと直線Eの間の領域に配置されていることが好ましい。
【0053】
図5は、柱2に対する角度θ3が、約70°となるように取り付けられた状態の座屈拘束ブレース30を示している。このような場合、柱2と梁3との固定箇所から遠い側の当接面12cにおける、柱2側(下側)の締結固定部14は、長手方向の端にある貫通孔12dに設けられており、梁3側(上側)の締結固定部14は、長手方向の端にある貫通孔12dよりも中央側に位置する貫通孔12dに設けられていることが好ましい。
【0054】
なお、本実施形態においても、柱2と梁3との固定箇所から遠い側の当接面12cに位置する締結固定部14は、固定箇所に近い側の当接面12aに位置する締結固定部14からx方向に延びる直線Cを中心として両側に60°を形成する直線Dと直線Eの間の領域に配置されていることが好ましい。
【0055】
本発明に係る座屈拘束ブレース、補強構造及び建物は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲で記載された内容を逸脱しない範囲で、様々な構成により実現することが可能である。例えば、先の実施形態では、締結固定部14は、締結部材としてボルト16及びナット17を用いているが、これに限られるものではなく、例えば、リベット、クランパー等の他の締結部材を用いてもよい。
【0056】
また、先の実施形態では、柱2と梁3の接続部に座屈拘束ブレース1を取り付けた場合について説明したが、これに限らず、他の種々の縦枠材及び横枠材の接続部に取り付けることも可能である。また、本発明は、柱2と梁3を面接合する場合の接続部に限らず、柱に設けた梁連結部に対して梁を面接合する場合にも適用可能である。柱に設けた梁連結部とは、具体的には、柱の側面に溶接またはボルト固定等により予め設けられた、梁を連結するための金物部材(ブラケット)とすることができる。当該梁連結部は、柱の側面から水平方向に突出するものであり、その端面に梁の端面を面接触させてボルト固定等により固定することで、梁を面接合することができる。また、本発明は、面接合以外の固定方法で固定された柱と梁の接続部にも適用可能である。
【0057】
また、先の実施形態では、第1拘束材11側に2つの突出部(第1突出部11b及び第2突出部11c)を設けているが、何れか一方、又は両方を第2拘束材12に設けてもよい。また、第1拘束材11及び第2拘束材12の両方に半分の高さの突出部を設けてもよい。また、第1突出部11b及び第2突出部11cは、第1拘束材11または第2拘束材12に対して一体に設けられていなくてもよい。すなわち、第1突出部11b及び第2突出部11cを別部材として構成してもよい。
【0058】
本補強構造は、建物だけでなく、工作物、駐車場、橋梁、鉄塔などその他構造物および機械にも適用可能である。