(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
観測対象へ超音波を送信し、該観測対象で後方散乱された超音波を受信する超音波振動子を備えた超音波プローブが取得した超音波信号を受信する超音波観測装置において前記超音波信号を補正する超音波観測装置であって、
同一機種の前記超音波観測装置に接続する前記超音波プローブの機種による差である機種差を反映した機種差補正用の第1の基準データと、同一機種の前記超音波観測装置に接続する同一機種の前記超音波プローブの個体による差である個体差を反映した個体差補正用の第2の基準データを用いて、前記超音波信号に基づく超音波データを補正する補正部、
を備え、
前記補正部は、前記超音波信号に対して、前記第1および第2の基準データを用いて、周波数ごと、または、距離ごとに演算することによって前記超音波信号を補正する
ことを特徴とする超音波観測装置。
前記第1の基準データは、当該超音波観測装置、もしくは同一機種の異なる個体の駆動信号の周波数成分、周波数の関数、または、前記周波数成分もしくは前記周波数の関数に基づく解析値である
ことを特徴とする請求項2に記載の超音波観測装置。
観測対象へ超音波を送信し、該観測対象で後方散乱された超音波を受信する超音波振動子を備えた超音波プローブが取得した超音波信号を受信する超音波観測装置において前記超音波信号を補正する超音波観測装置の作動プログラムであって、
同一機種の前記超音波観測装置に接続する前記超音波プローブの機種による差である機種差を反映した機種差補正用の第1の基準データと、同一機種の前記超音波観測装置に接続する同一機種の前記超音波プローブの個体による差である個体差を反映した個体差補正用の第2の基準データを用いて、前記超音波信号に基づく超音波データを補正する補正手順、
を前記超音波観測装置に実行させ、
前記補正手順において、前記超音波信号に対して、前記第1および第2の基準データを用いて、周波数ごと、または、距離ごとに演算することによって前記超音波信号を補正する
ことを特徴とする超音波観測装置の作動プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を説明する。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る超音波観測装置3を備えた超音波診断システム1の構成を示すブロック図である。同図に示す超音波診断システム1は、観測対象へ超音波を送信し、該観測対象で後方散乱された超音波を受信する超音波内視鏡2(超音波内視鏡2A〜2C)と、接続された超音波内視鏡2が取得した超音波信号に基づいて超音波画像を生成する超音波観測装置3と、超音波観測装置3が生成した超音波画像を表示する表示装置4と、を備える。超音波観測装置3は、超音波内視鏡2A〜2Cのうちの一つを着脱自在に接続することができる。本実施の形態では、超音波内視鏡2が、超音波プローブとして作用する。なお、以下に示すブロック図では、実線の矢印が画像にかかる電気信号やスペクトルデータ、特徴量の伝送を示し、一点鎖線の矢印が組合せ型番データの伝送を示し、破線の矢印が制御にかかる電気信号やデータの伝送を示している。
【0025】
超音波内視鏡2Aは、その先端部に、超音波観測装置3から受信した電気的なパルス信号を超音波パルス(音響パルス)に変換して観測対象へ照射するとともに、観測対象で後方散乱された超音波エコーを電圧変化で表現する電気的なエコー信号に変換する超音波振動子21Aを有する。超音波内視鏡2Bおよび2Cについても同様に、超音波振動子21Bおよび21Cをそれぞれ有している。
【0026】
超音波内視鏡2A〜2Cは、各々が有する超音波振動子21A〜21Cの機種が互いに異なっているものとして説明する。また、超音波内視鏡2A〜2Cの各機種について、個体番号の異なる複数の超音波内視鏡がほかに存在する。例えば、超音波内視鏡2Aの機種をPとした場合、この機種Pについて、個体番号の異なる複数の超音波内視鏡2Aが存在している。同様に、超音波内視鏡2Bの機種をQ、超音波内視鏡2Cの機種をRとした場合、機種Qについて、個体番号の異なる複数の超音波内視鏡2Bがそれぞれ存在し、機種Rについて、個体番号の異なる複数の超音波内視鏡2Cがそれぞれ存在している。
【0027】
超音波内視鏡2A〜2Cは、観測対象への長尺の挿入部を有している。挿入部は、通常はその先端部に、さらに、撮像光学系および撮像素子を有しており、観測対象が人体内部の被検体である場合には、その消化管(食道、胃、十二指腸、大腸)、または呼吸器(気管、気管支)へ挿入され、消化管や呼吸器、その周囲臓器(膵臓、胆嚢、胆管、胆道、リンパ節、縦隔臓器、血管等)を撮像することが可能である。ここで、本実施の形態においては、病院等の施設において人体内部の組織等を観測した場合の観測対象を、特に、被検体と呼ぶことにする。また、挿入部は、通常は撮像時に観測対象へ照射する照明光を導く長尺のライトガイドを内蔵する。このライトガイドは、その先端部が挿入部の先端まで達している一方、基端部が照明光を発生する光源装置に接続されている。
【0028】
超音波観測装置3は、超音波内視鏡から取得したエコー信号に基づいて画像データを生成する画像生成部31と、画像生成部31が画像データを生成するための基準スペクトルデータの書き込み、または読み出しを行う書込読出部32と、基準スペクトルデータを取得する際の外部との通信を制御する外部通信制御部33と、例えば既存の公衆回線網、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などによって実現される通信ネットワークを介して基準スペクトルデータを取得するネットワーク通信部34と、超音波観測装置3に接続されるデバイスと通信するデバイス通信部35と、キーボードからの入力の受け付けを行うキーボード入力受付部36と、超音波観測装置3の動作に必要な各種情報を記憶する記憶部37と、超音波診断システム1全体を制御する制御部38と、を備える。
【0029】
画像生成部31は、超音波内視鏡2と電気的に接続され、所定の波形および送信タイミングに基づいて高電圧パルスからなる送信信号(パルス信号)を超音波振動子21へ送信するとともに、超音波振動子21から電気的な高周波(RF:Radio Frequency)信号であるエコー信号を受信し、エコー信号に後述のA/D変換処理を施してデジタルデータ(以下、RFデータという)を生成、出力する送受信部311と、送受信部311から受信したRFデータをもとにBモード画像データを生成するBモード画像データ生成部312と、送受信部311が生成したRFデータに高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を施して周波数解析を行うことにより被検体スペクトルデータを算出する周波数解析部313と、周波数解析部313が算出した被検体スペクトルデータに対し、超音波内視鏡2の機種および個体、ならびに超音波観測装置3の機種に応じた補正を施すことにより正規スペクトルデータを生成するスペクトル補正部314と、スペクトル補正部314が生成した正規スペクトルデータをもとに、正規特徴量を算出する正規特徴量算出部315と、正規特徴量算出部315が算出した正規特徴量に応じて色情報を付与し特徴量画像データを生成する特徴量画像データ生成部316と、Bモード画像データ生成部312が生成したBモード画像データ上に、特徴量画像データ生成部316が生成した特徴量画像データを合成して、合成画像データを生成する合成部317と、を有する。
【0030】
以下、超音波観測装置3のうち、画像生成部31内の各部の作用を説明する。
送受信部311は、受信したエコー信号を増幅する。
【0031】
送受信部311は、増幅したエコー信号に対してフィルタリング等の処理を施した後、適当なサンプリング周波数(例えば50MHz)でサンプリングして離散化(いわゆるA/D変換処理)する。こうして、送受信部311は、増幅後のエコー信号から離散化されたRFデータを生成し、Bモード画像データ生成部312および周波数解析部313へ出力する。なお、超音波内視鏡2が複数の素子をアレイ状に設けた超音波振動子21を電子的に走査させる構成を有する場合、送受信部311は、複数の素子に対応したビーム合成用の多チャンネル回路を有する。
【0032】
送受信部311が送信するパルス信号の周波数帯域は、超音波振動子21がパルス信号を超音波パルスへ電気音響変換をする際の線型応答周波数帯域をほぼカバーする広帯域にする。また、送受信部311におけるエコー信号の各種処理周波数帯域は、超音波振動子21が超音波エコーをエコー信号へ音響電気変換する際の線型応答周波数帯域をほぼカバーする広帯域にする。これらにより、後述する周波数スペクトルの近似処理を実行する際、精度のよい近似を行うことが可能となる。
【0033】
送受信部311には、制御部38が出力する各種制御信号を超音波内視鏡2に対して送信するとともに、超音波内視鏡2から識別用のID(例えば機種情報)などを含む各種情報を受信して制御部38へ送信する機能を付与してもよい。
【0034】
Bモード画像データ生成部312は、受信深度が大きいRFデータほど高い増幅率で増幅するSTC(Sensitivity Time Control)補正を行う。
図2は、送受信部311が行う増幅処理における受信深度と増幅率との関係を示す図である。
図2は、横軸を受信深度に、縦軸を増幅率βの常用対数をとった対数グラフである。縦軸の単位はdB(デシベル)である。
図2に示す受信深度zは、超音波の受信開始時点からの経過時間に基づいて算出される量である。
図2に示す対数グラフ上では、増幅率βは、受信深度zが閾値z
thより小さい場合、受信深度zの増加に伴ってβ
0からβ
th(>β
0)へ線型に増加する。また、増幅率βは、受信深度zが閾値z
th以上である場合、一定値β
thをとる。閾値z
thの値は、観測対象から受信する超音波信号がほとんど減衰してしまい、ノイズが支配的になるような値である。なお、
図2に示す関係は、予め記憶部37に記憶されている。
【0035】
さらに、Bモード画像データ生成部312は、RFデータに対してバンドパスフィルタ、包絡線検波を施し、エコー信号の振幅または強度を表すデータを生成する。次に、Bモード画像データ生成部312は、このデータに対数変換など公知の処理を施し、デジタルの音線データを生成する。対数変換では、エコー信号の振幅または強度を表すデータを基準電圧V
cで除した量の常用対数をとってデシベル値で表現する。この音線データは、超音波パルスの後方散乱の強さを示すエコー信号の振幅または強度のを10進数で表現した桁に比例する値が、超音波パルスの送受信方向(深度方向)に沿って並んだデータである。
【0036】
図3は、超音波振動子21の走査領域(以下、単に走査領域ということもある)と音線データとを模式的に示す図である。
図3に示す走査領域Sは扇形をなしている。なお、
図3では、超音波振動子21が、超音波が往復する経路(音線)を直線で、音線データを各音線上に並んだ点で表現している。
図3では、後の説明の都合上、各音線に、走査開始(
図3右)から順に、1、2、3・・・と番号を付している。そして、1番目の音線をSR
1、2番目の音線をSR
2、3番目の音線をSR
3、・・・、k番目の音線をSR
kと定義する。
図3は、超音波振動子21がコンベックス振動子である場合に相当している。また、
図3では、音線データの受信深度をzとして記載している。超音波振動子21の表面から照射された超音波パルスが受信深度zにある物体内で後方散乱し、超音波エコーとして超音波振動子21へ戻ってきた場合、その往復距離Lと受信深度zとの間には、z=L/2の関係がある。
【0037】
さらに、Bモード画像データ生成部312は、音線データに対してゲイン処理、コントラスト処理等の公知の技術を用いた信号処理を行う。
【0038】
Bモード画像データ生成部312は、生成した音線データに走査範囲を空間的に正しく表現できるよう並べ直す座標変換を施した後、音線データ間の補間処理を施すことによって音線データ間の空隙を埋め、Bモード画像データを生成する。Bモード画像は、色空間としてRGB表色系を採用した場合の変数であるR(赤)、G(緑)、B(青)の値を一致させたグレースケール画像である。Bモード画像データ生成部312は、生成したBモード画像データを合成部317へ出力する。Bモード画像データ生成部312は、CPU(Central Processing Unit)等の汎用プロセッサ、またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)もしくはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の特定の機能を実行する専用の集積回路等を用いて実現される。
【0039】
周波数解析部313は、送受信部311が生成した各音線のRFデータ(ラインデータ)を比較的短い所定の時間間隔で複数に区切り、区切った各部分のRFデータ(以下、「RFデータストリング」と呼ぶ)にFFT処理を施すことにより、音線の各部分における周波数スペクトルを算出する。ここでいう「周波数スペクトル」とは、RFデータストリングにFFT処理を施すことによって得られた「ある受信深度z(すなわち、或る往復距離L)における強度の周波数分布」を意味する。また、ここでいう「強度」とは、エコー信号の電圧振幅、エコー信号の電力のいずれかを指す。
【0040】
本実施の形態1では、強度としてエコー信号の電圧振幅を採用し、周波数解析部313が、電圧振幅の周波数成分V(f,L)をもとに周波数スペクトルのデータ(以下、スペクトルデータともいう)を生成するものとして説明する。fは、周波数である。周波数解析部313は、RFデータの振幅(事実上、エコー信号の電圧振幅)の周波数成分V(f,L)を基準電圧V
cで除し、常用対数(log)をとってデシベル単位で表現する対数変換処理を施した後、適当な正の定数αを乗ずることにより、次式(1)で与えられる観測対象のスペクトルデータS(f,L)を生成する。
S(f,L)=α・log{V(f,L)/V
c} ・・・(1)
【0041】
以下、周波数解析部313での周波数解析により電圧振幅の周波数成分V(f,L)を求める方法について説明する。一般に、エコー信号の周波数スペクトルは、観測対象が人体組織等の被検体である場合、超音波が走査された人体組織の性状によって異なる傾向を示す。これは、周波数スペクトルが、超音波を散乱する散乱体の大きさ、数密度、音響インピーダンス等と相関を有しているためである。ここでいう「人体組織の性状」とは、例えば悪性腫瘍(癌)、良性腫瘍、内分泌腫瘍、粘液性腫瘍、正常組織、嚢胞、脈管など、組織の特徴のことである。
【0042】
図4は、超音波信号の1つの音線SR
k上のRFデータにおけるデータ配列を模式的に示す図である。音線SR
kにおける白または黒の長方形は、1つのサンプル点におけるデータを意味している。また、音線SR
k上のRFデータにおいて、右側に位置するデータほど、超音波振動子21から音線SR
kに沿って計った場合の深い箇所からのRFデータである(
図4の矢印を参照)。音線SR
k上のRFデータは、前述の通り、送受信部311でのA/D変換処理によりエコー信号からサンプリングされ、離散化されたRFデータである。
図4では、番号kの音線SR
k上のRFデータの8番目のデータ位置を受信深度zの方向の初期値Z
(k)0として設定した場合を示しているが、初期値の位置は任意に設定することができる。周波数解析部313による算出結果は複素数で得られ、記憶部37に格納される。
【0043】
図4に示すRFデータストリングF
j(j=1、2、・・・、K)は、RFデータのうち、FFT処理の対象となる部分、である。一般に、FFT処理を行うためには、RFデータストリングが2のべき乗のデータ数を有している必要がある。この意味で、RFデータストリングF
j(j=1、2、・・・、K−1)はデータ数が16(=2
4)で正常なRFデータストリングである一方、RFデータストリングF
Kは、データ数が12であるため異常なRFデータストリングである。異常なRFデータストリングに対してFFT処理を行う際には、不足分だけゼロデータを挿入することにより、正常なRFデータストリングを生成する処理を行う。この点については、周波数解析部313の処理を説明する際に詳述する(
図4を参照)。この後、周波数解析部313は、前述の通り、FFT処理を実行し、電圧振幅の周波数成分V(f,L)を算出し、前述の式(1)に基づいて被検体スペクトルデータS(f,L)を算出し、スペクトル補正部314へ出力する。
【0044】
スペクトル補正部314は、周波数解析部313から出力された被検体スペクトルデータS(f,L)を補正することによって、正規スペクトルデータS
C(f,L)を算出する。以下の説明では、例えば、超音波内視鏡2を用いて人体、特に生体(LB)を撮像した際に得られた被検体スペクトルデータであって、パラメータが周波数fおよび受信深度zである場合の被検体スペクトルデータをS(LB;f,z)と表記する。同様に、機種Pの超音波内視鏡(P
i)と機種Bの超音波観測装置(B
m)との組み合わせにより、基準片を撮像した際に得られる基準スペクトルデータをS(P
iB
m;f,z)と表記する。なお、i、mは自然数であり、同一機種ではあるものの個体番号が異なる個体を表す。下付きの0で表記されるものは、その機種の基準個体を表す。
【0045】
スペクトル補正部314は、下式(2)に示すように、生体を撮像して得られる被検体スペクトルデータS(LB;f,z)から、基準片を撮像して得られた基準スペクトルデータS(P
iB
m;f,z)を減算することによって、正規スペクトルデータS
C(LB;f,z)を算出する。
S
C(LB;f,z)=S(LB;f,z)−S(P
iB
m;f,z) ・・・(2)
【0046】
ところで、市場に出回る機種のすべての個体について基準スペクトルデータS(P
iB
m;f,z)を取得すると、取得に多大な手間を要し、データ量も膨大なものとなる。そこで、本実施の形態1では、スペクトル補正部314が、下式(3−1)および下式(3−2)が成り立つことを利用して、基準スペクトルデータS(P
iB
m;f,z)の代わりに、式(3)もしくは式(3−2)の右辺を利用する。式(3−1)、式(3−2)が成り立つ理由については後述する。式(3−2)の機種差補正項ΔS
10と個体差補正項ΔS
20の定義も後述する。
S(P
iB
m;f,z)=S(P
0B
0;f,z)−S(P
0A
0;f,z)
+S(P
iA
0;f,z)・・・(3−1)
S(P
iB
m;f,z)=S(P
0A
0;f,z)+ΔS
10+ΔS
20 ・・・(3−2)
ここで、式(3−1)の第1項と第2項とが機種差補正項、第3項が個体差補正項と考えることができるし、第1項が機種差補正項、第2項と第3項とが個体差補正項と考えることもできる。機種差補正項は機種差補正用の第1の基準データに相当し、個体差補正項は個体差補正用の第2の基準データに相当する。
【0047】
さて、本実施の形態では、被検体スペクトルデータへの影響の大きさの見地から、超音波観測装置3と超音波内視鏡2とのそれぞれの機種差と個体差とを論じるべきである。被検体スペクトルデータへ影響する機種差とは設計の相違による差であり、個体差とはばらつきによる差である。
超音波内視鏡2に関しては、被検体スペクトルデータへ影響する要因として、超音波振動子21の感度差やその周波数特性差、超音波内視鏡2の挿入部に内蔵するケーブル等配線の周波数特性差等が挙げられる。このうち、感度差、感度の周波数特性差は影響が大きいと考えられる。通常、これらに影響を及ぼす超音波内視鏡2内の回路設計や寸法/素材等の物理設計は、機種間で等しくする必要がないためそうした努力も払われず、機種間で大きく相違する。そのため、設計の相違が被検体スペクトルデータへ影響することは十分に考えられる。
一方、上記感度や上記周波数特性のばらつきは、処理の単純なBモード画像さえも影響を及ぼしており、影響を抑えることは業界では未だ難問である。被検体スペクトルデータへの影響を抑えることも同様に難問と考えられる。これらを鑑みると、設計の相違とばらつきによる被検体スペクトルデータへの影響は双方とも無視すべきではない。従って、以下、本実施の形態では、超音波内視鏡の機種差と個体差とを無視せずに扱う。
【0048】
超音波観測装置3に関しては、被検体スペクトルデータへ影響する要因として、駆動波形差(駆動波形の違い)や送受信部311内の各種受信回路における増幅の周波数特性差等が挙げられる。このうち、駆動波形差は影響が大きいと考えられる。通常、これらに影響を及ぼす超音波観測装置3内の回路設計は、機種間で等しくする必要がないため努力も特段払われず、機種間で大きく相違する。そのため、設計の相違が被検体スペクトルデータへ影響することは十分に考えられる。
一方、上記駆動波形のばらつきや上記周波数特性のばらつきは、出荷検査を徹底している場合、設計の相違より影響が相当小さい。従って、本実施の形態では、特に断りがない限り、超音波観測装置の個体差を無視する。このとき、個体番号を表す全てのi、mについて、下式(4)が成り立つ。
S(P
iB
m;f,z)=S(P
iB
0;f,z) ・・・(4)
【0049】
図5は、超音波内視鏡の個体差および超音波観測装置の機種差に起因する被検体スペクトルデータへの影響の差を説明する概念図である。以下、この
図5と式(3−1)と式(3−2)とが成立する理由について説明する。
ここで、超音波観測装置3の機種差、機種Aと機種Bとの間の機種差について考察する。機種Aの基準個体A
0と機種Bの基準個体B
0とにそれぞれ超音波内視鏡2の機種Pの基準個体P
0を接続し、基準片から基準スペクトルデータS(P
0A
0;f,z)とS(P
0B
0;f,z)とを得たとする。前述した通り、被検体スペクトルデータへ影響する要因として、駆動波形差や送受信部311内の各種受信回路における増幅の周波数特性差等が挙げられ、超音波観測装置3においてはこれらの設計の相違が機種差となって現れる。例えば、機種Aにおける駆動波形の周波数スペクトルをV
At(f)とし、増幅の周波数特性をδ
A(f)とする。基準スペクトルデータS(P
0A
0;f,z)の基となった電圧振幅の周波数成分V(f,L)はV
At(f)とδ
A(f)とを乗算因子に含む。超音波観測装置3に関し、基準スペクトルデータS(P
0A
0;f,z)へ影響する他の要因があったとしても、要因の基となった設計値は通常、このように、V(f,L)の乗算因子として含まれる。
そして、式(1)より、S(P
0A
0;f,z)の算出には、V(f,L)の常用対数演算を用いるため、これらの因子は全て、S(P
0A
0;f,z)を構成する加算の項として含まれる。つまり、S(P
0A
0;f,z)は、α・logV
At(f)+α・logδ
A(f)+α・log(他の要因)という加算の項を含む。結局、超音波観測装置3に関し、基準スペクトルデータS(P
0A
0;f,z)へ影響する要因の基となった設計値は、S(P
0A
0;f,z)自身の加算の項として含まれる。
【0050】
同様に、例えば、機種Bにおける駆動波形の周波数スペクトルをそれぞれV
Bt(f)とし、増幅の周波数特性をδ
B(f)とする。超音波観測装置3に関し、基準スペクトルデータS(P
0B
0;f,z)へ影響する要因の基となった設計値はその加算の項として含まれる。つまり、S(P
0B
0;f,z)は、α・logV
Bt(f)+α・logδ
B(f)+α・log(他の要因)という加算の項を含む。
【0051】
両基準スペクトルデータの差ΔS
10は下式(5−1)で定義される。
ΔS
10=S(P
0B
0;f,z)−S(P
0A
0;f,z)・・・(5−1)
基準片や組み合わせる超音波内視鏡P
0が共通であることから、式(5−1)の減算の過程で共通な項は相殺され、上記設計の相違が得られる。すなわち、ΔS
10については下式(5−2)が成り立ち、ΔS
10は機種差に相当する。
ΔS
10=α・{logV
Bt(f)−logV
At(f)}
+α・{logδ
B(f)−logδ
A(f)}
+α・log{他の要因についてのAとBの設計値の差}・・・(5−2)
【0052】
このように、基準片や組み合わせる超音波内視鏡P
0が共通であることから、ΔS
10は超音波観測装置3の機種差に相当する。このことは、組み合わせる共通の超音波内視鏡をP
1に代えても同様である。両基準スペクトルデータの差ΔS
11は下式(6−1)で定義される。
ΔS
11=S(P
iB
0;f,z)−S(P
iA
0;f,z)・・・(6−1)
さらに、式(6−1)で定義される基準スペクトルデータの差ΔS
11についても式(5−2)と同様の理由で下式(6−2)が成り立つ。
ΔS
11=α・{logV
Bt(f)−logV
At(f)}
+α・{logδ
B(f)−logδ
A(f)}
+α・log{他の要因についてのAとBの設計値の差}・・・(6−2)
式(5−2)と式(6−2)とは右辺が等しいため下式(6−3)が成り立つ。
ΔS
10=ΔS
11 ・・・(6−3)
よって、基準スペクトルデータの差ΔS
10とΔS
11とは互いに等しく、超音波観測装置3の機種差に相当する。
【0053】
上述した式から式(3−1)を導くことができる。まず、式(6−3)に、式(5−1)と式(6−1)とを代入して下式(6−4)を得る。
S(P
iB
0;f,z)=S(P
0B
0;f,z)−S(P
0A
0;f,z)
+S(P
iA
0;f,z)・・・(6−4)
そして、式(4)より、式(6−4)の左辺はS(P
iB
m;f,z)に等しいため、式(3−1)が得られる。
【0054】
ところで、共通の観測対象を基準片から人体内部の組織に代えても、式(5−2)、式(6−2)、式(6−3)が成り立つことは自明である。つまり、上述した基準片から得る基準スペクトルデータへ影響する機種差と、人体内部の共通な観測対象から得る被検体スペクトルデータへ影響する機種差とは値が等しい。従って、式(3−1)で求めた機種差を基に被検体スペクトルデータを補正することは合理的と言える。
【0055】
次に、超音波内視鏡の個体差、機種Pの個体P
0と個体P
iとの間の個体差について考察する。機種Pの基準個体となる個体P
0と、個体P
iとにそれぞれ超音波観測装置3の機種Aの基準個体A
0を接続し、基準片から基準スペクトルデータS(P
0A
0;f,z)とS(P
iA
0;f,z)とを得たとする。前述した通り、被検体スペクトルデータへ影響する要因として、超音波振動子21の感度差やその周波数特性差、超音波内視鏡2の挿入部に内蔵するケーブル等配線の周波数特性差等が挙げられ、超音波内視鏡においてはこれらのばらつきが個体差となって現れる。例えば、個体P
0における感度の周波数特性をγ
0(f)とし、配線の周波数特性をε
0(f)とする。基準スペクトルデータS(P
0A
0;f,z)の基となった電圧振幅の周波数成分V(f,L)はγ
0(f)とε
0(f)とを乗算因子に含む。超音波内視鏡2に関し、基準スペクトルデータS(P
0A
0;f,z)へ影響する他の要因があったとしても、要因の基となった設計値は通常、このように、V(f,L)の乗算因子として含まれる。
そして、式(1)より、S(P
0A
0;f,z)の算出には、V(f,L)の常用対数演算を用いるため、これらの因子は全て、S(P
0A
0;f,z)を構成する加算の項として含まれる。つまり、S(P
0A
0;f,z)は、α・logγ
0(f)+α・logε
0(f)+α・log(他の要因)という加算の項を含む。結局、超音波内視鏡2に関し、基準スペクトルデータS(P
0A
0;f,z)へ影響する要因の基となった設計値は、S(P
0A
0;f,z)自身の加算の項として含まれる。
【0056】
同様に、例えば、個体P
iにおける感度の周波数特性をγ
i(f)とし、配線の周波数特性をε
i(f)とする。超音波内視鏡2に関し、基準スペクトルデータS(P
iA
0;f,z)へ影響する要因の基となった設計値はその加算の項として含まれる。つまり、S(P
iA
0;f,z)は、α・logγ
i(f)+α・logε
i(f)+α・log(他の要因)という加算の項を含む。
【0057】
両基準スペクトルデータの差ΔS
20は下式(7−1)で定義される。
ΔS
20=S(P
iA
0;f,z)−S(P
0A
0;f,z)・・・(7−1)
基準片や組み合わせる超音波観測装置A
0が共通であることから、式(7−1)の減算の過程で共通な項は相殺され、上記ばらつきが得られる。すなわち、ΔS
20については下式(7−2)が成り立ち、ΔS
20は個体差に相当する。
ΔS
20=α・{logγ
i(f)−logγ
0(f)}
+α・{logε
i(f)−logε
0(f)}
+α・log{他の要因についてのP
iとP
0の設計値の差}・・・(7−2)
【0058】
このように、基準片や組み合わせる超音波観測装置A
0が共通であることから、ΔS
20は超音波内視鏡2の個体差に相当した。このことは、組み合わせる共通の超音波観測装置をB
0に代えても同様である。両基準スペクトルデータの差ΔS
21は下式(8−1)で定義される。
ΔS
21=S(P
iB
0;f,z)−S(P
0B
0;f,z)・・・(8−1)
さらに、式(8−1)で定義される基準スペクトルデータの差ΔS
21についても式(7−2)と同様の理由で下式(8−2)が成り立つ。
ΔS
20=α・{logγ
i(f)−logγ
0(f)}
+α・{logε
i(f)−logε
0(f)}
+α・log{他の要因についてのP
iとP
0の設計値の差}・・・(8−2)
式(7−2)と式(8−2)とは右辺が等しいため下式(8−3)が成り立つ。
ΔS
20=ΔS
21 ・・・(8−3)
よって、基準スペクトルデータの差ΔS
20とΔS
21とは互いに等しく、超音波内視鏡2の個体差に相当する。
【0059】
上述した式からやはり式(3−1)を導くことができる。まず、式(8−3)に、式(7−1)と式(8−1)とを代入して下式(8−4)を得る。
S(P
iB
0;f,z)=S(P
0B
0;f,z)−S(P
0A
0;f,z)
+S(P
iA
0;f,z)・・・(8−4)
そして、式(4)より、式(8−4)の左辺はS(P
iB
m;f,z)に等しいため、やはり式(3−1)が得られる。
【0060】
ところで、共通の観測対象を基準片から人体内部の組織に代えても、式(7−2)、式(8−2)、式(8−3)が成り立つことは自明である。つまり、上述した基準片から得る基準スペクトルデータへ影響する機種差と、人体内部の共通な観測対象から得る被検体スペクトルデータへ影響する機種差とは値が等しい。従って、式(3−1)で求めた機種差を基に被検体スペクトルデータを補正することは合理的と言える。
【0061】
さらに、A
0、B
0、P
0は基準個体であるから、式(3−1)より、基準個体と非基準個体との組み合わせで得た基準スペクトルデータと、基準個体同士の組合せで得た基準スペクトルデータとを用いて機種差を補正可能であることがわかる。そして、その双方の基準スペクトルデータは施設への出荷前に工場等で測定することが可能である。
【0062】
次に式(3−2)が成り立つ理由について説明する。式(3−1)より、
S(P
iB
m;f,z)=S(P
0A
0;f,z)
+S(P
0B
0;f,z)−S(P
0A
0;f,z)
+S(P
iA
0;f,z)−S(P
0A
0;f,z)
=S(P
0A
0;f,z)+ΔS
10+ΔS
20
(ΔS
10の定義式(5−1)、ΔS
20の定義式(7−1)を代入した。)
よって、式(3−2)が得られた。
【0063】
さらに、
図5の説明をする。
図5の平面上で、辺の長さをそれぞれ、基準スペクトルデータの差として定義したと仮定する。このとき、式(5−1)、(6−1)、(6−3)、(7−1)、(8−1)、(8−3)より、4辺の長さはそれぞれΔP
10、ΔP
11、ΔP
20、ΔP
21に等しい。さらに、式(6−3)、(8−3)から、向かい合う2辺ΔP
10とΔP
11、ΔP
20とΔP
21は、長さが互いに等しく、長方形の定義に矛盾しない。つまり、基準スペクトルデータの差を長さと仮定し、
図5中に描かれた4点の差を表す矢印をΔP
10、ΔP
11、ΔP
20、ΔP
21としても概念図の四角形が長方形であることに矛盾せず、仮定は成立すると考えることができる。
【0064】
以上説明したように、式(3−1)もしくは式(3−2)より、工場等において基準個体を用いて取得可能なスペクトルデータS(P
0A
0;f,z)およびS(P
0B
0;f,z)と、やはり予め出荷前の時点等に工場等において基準機種Aの基準個体の超音波観測装置(ここでは超音波観測装置A
0)と超音波内視鏡の各個体P
iとを用いて取得可能なスペクトルデータS(P
iA
0;f,z)とから、基準機種とは異なる機種(ここでは機種B)の任意の超音波観測装置の個体(ここでは超音波観測装置B
m)と任意の超音波内視鏡の個体P
iとの組み合わせによる基準スペクトルデータS(P
iB
m;f,z)を求めることができる。
【0065】
図6および
図7は、予め取得するスペクトルデータについて説明する図である。機種Pの超音波内視鏡(P
1、P
2、・・・、P
N)が、機種A、B、Cの超音波観測装置に接続される場合、工場等において、機種Pの基準個体である超音波内視鏡P
0と、機種A、B、Cの基準個体である超音波観測装置A
0、B
0、C
0とを用いて、基準片からのエコー信号に基づくスペクトルデータS(P
0A
0;f,z)、S(P
0B
0;f,z)、S(P
0C
0;f,z)を予め取得しておく(
図6参照)。これにより、機種差を補正するための機種差補正用スペクトルデータが取得される。
【0066】
加えて、機種Pの各個体(超音波内視鏡P
1、P
2、・・・、P
N)と、基準機種Aの基準個体である超音波観測装置A
0とを用いて、基準片からのエコー信号に基づくスペクトルデータS(P
1A
0;f,z)、S(P
2A
0;f,z)、・・・、S(P
NA
0;f,z)を予め取得しておく(
図7参照)。これにより、個体差を補正するための個体差補正用スペクトルデータが取得される。
【0067】
機種差補正用スペクトルデータおよび個体差補正用スペクトルデータの取得に用いる基準片は、材質、質量密度、音速、音響インピーダンスが既知である媒体に、材質、質量密度、音速、音響インピーダンス、直径、数密度がやはり既知である散乱体を一様に混入させた共通のファントムを用いることができる。基準片として、アクリル板を用いてもよい。基準片としてファントムを用いる場合は、後方散乱によるエコーに基づいてスペクトルデータを生成する。基準片としてアクリル板を用いる場合は、全反射(透過波が0%、後方散乱が100%であること)によるエコーに基づいてスペクトルデータを生成する。
【0068】
取得された機種差補正用スペクトルデータおよび個体差補正用スペクトルデータは、各種記憶媒体(記憶部37や、後述する院内サーバー101、工場サーバー102、光学ドライブ103、USB(Universal Serial Bus)メモリ104など)に記憶される。
【0069】
スペクトル補正部314は、予め生成されている機種差補正用スペクトルデータおよび個体差補正用スペクトルデータを用いて、式(3−1)もしくは式(3−2)に基づき基準スペクトルデータS(P
iB
m;f,z)を算出し、さらに、被検体スペクトルデータS(LB;f,z)からこの基準スペクトルデータS(P
iB
m;f,z)を減算することによって、正規スペクトルデータS
C(f,L)を算出する。
【0070】
図8は、スペクトル補正部314により算出された正規スペクトルデータの例を示す図である。
図8では、横軸が周波数fである。また、
図8では、縦軸をφとし、式(1)で与えられる正規スペクトルデータS
C(f,L)を用いた関数φ=S
C(f,L)を描いている。
図8に示す直線L
10については後述する。なお、本実施の形態において、曲線および直線は、離散的な点の集合からなる。
【0071】
図8に示すスペクトルデータC
1において、以後の演算に使用する周波数帯域の下限周波数f
Lおよび上限周波数f
Hは、超音波振動子21の周波数帯域、送受信部311が送信するパルス信号の周波数帯域などをもとに決定されるパラメータである。以下、
図8において、下限周波数f
Lおよび上限周波数f
Hによって定まる周波数帯域を「周波数帯域U」という。
【0072】
正規特徴量算出部315は、スペクトル補正部314から出力された複数の正規スペクトルデータを直線で近似することによって正規スペクトルデータの特徴量(以下、補正前特徴量という)を算出し、補正前特徴量に対して周波数に依存した減衰を補正することによって特徴量を算出する。
【0073】
正規特徴量算出部315は、所定周波数帯域におけるスペクトルデータの単回帰分析を行ってスペクトルデータを一次式(回帰直線)で近似することにより、この近似した一次式を特徴付ける補正前特徴量を算出する。単回帰分析とは、独立変数が1種類のみの場合の回帰分析である。本実施の形態での単回帰分析の独立変数は周波数fにあたる。例えば、スペクトルデータが
図8に示すスペクトルデータC
1の状態である場合、正規特徴量算出部315は、周波数帯域Uで単回帰分析を行いスペクトルデータC
1の回帰直線L
10を得る。次に、正規特徴量算出部315は、回帰直線L
10の傾きa
0、切片b
0、および周波数帯域Uの中心周波数(すなわち、「ミッドバンド」)f
M=(f
L+f
H)/2の回帰直線上の値であるミッドバンドフィット(Mid-band fit)c
0=a
0f
M+b
0を補正前特徴量として算出する。このように回帰直線L
10を特徴付ける一次式のパラメータ(傾きa
0、切片b
0、ミッドバンドフィットc
0)でスペクトルデータC
1を表現することで、スペクトルデータC
1を一次式に近似したことになる。
【0074】
3つの補正前特徴量のうち、傾きa
0、切片b
0は、超音波を散乱する散乱体の大きさ、散乱体の散乱強度、散乱体の数密度(濃度)等と相関を有していると考えられる。ミッドバンドフィットc
0は、有効な周波数帯域内の中心におけるスペクトルの強度を与える。このため、ミッドバンドフィットc
0は、散乱体の大きさ、散乱体の散乱強度、散乱体の数密度に加えて、Bモード画像の輝度とある程度の相関を有していると考えられる。なお、正規特徴量算出部315は、回帰分析によって二次以上の多項式でスペクトルデータを近似するようにしてもよい。
【0075】
次に、正規特徴量算出部315が行う補正について説明する。一般に、超音波の振幅は伝播距離に対して指数的に減衰する。従って、振幅を常用対数に対数変換し、デシベル表現にした場合、振幅は往復距離Lに対して線形に減衰し、往復距離がLになるような受信深度z(=L/2)に対しても線形に減衰する。よって、この振幅のデシベル表現下において、超音波が受信深度0と受信深度zとの間を往復する間に生じる減衰量A(f,z)は、超音波が往復する前後の振幅の線形の変化(デシベル表現での差)として表現できる。この振幅の減衰量A(f,z)は、観測対象が生体である場合には周波数に依存し、高周波では減衰が大きく、低周波では減衰が小さいことが知られている。特に、一様な組織内では周波数に比例することが経験的に知られており、以下の式(9)で表現される。
A(f,z)=2ζzf ・・・(9)
ここで、比例定数ζは減衰率と呼ばれる量である。また、zは超音波の受信深度であり、fは周波数である。減衰率ζの具体的な値は、観測対象が生体である場合、生体の部位や組織に応じて定まる。正常肝では概ね、0.55dB/cm/MHzである。なお、本実施の形態1において、減衰率ζの値は記憶部37に予め記憶されており、正規特徴量算出部315は適宜、記憶部37から減衰率ζの値を読み出して用いる。超音波観測装置3が、超音波内視鏡2による超音波の送信の前に、予め、観測対象の部位名や組織名の入力を術者から受けた場合には、正規特徴量算出部315は、部位名や組織名に対応した減衰率ζの適当な値を読み出し、以下の減衰補正に用いる。さらに、超音波観測装置3が、減衰率ζの値を術者から直接受けた場合には、正規特徴量算出部315は、その値を以下の減衰補正に用いる。超音波観測装置3が、一切の入力を術者から受けなかった場合には、正規特徴量算出部315は、上記0.55dB/cm/MHzを以下の減衰補正に用いる。
【0076】
正規特徴量算出部315は、抽出した補正前特徴量(傾きa
0、切片b
0、ミッドバンドフィットc
0)に対し、以下に示す式(10)〜(12)にしたがって減衰補正を行うことにより、補正後特徴量a、b、c(以下、正規特徴量と呼ぶ)を算出する。
a=a
0+2ζz ・・・(10)
b=b
0 ・・・(11)
c=c
0+A(f
M,z)=c
0+2ζzf
M(=af
M+b) ・・・(12)
式(10)、(12)からも明らかなように、正規特徴量算出部315は、超音波の受信深度zが大きいほど、正規補正量が大きい補正を行う。また、式(11)によれば、切片に関する補正は恒等変換である。これは、切片が周波数0(Hz)に対応する周波数成分であって減衰の影響を受けないためである。
【0077】
図9は、正規特徴量算出部315が算出した正規特徴量a、b、cをパラメータとして有する直線を示す図である。
図9の縦軸をφとすると、直線L
1の式は、
φ=af+b=(a
0+2ζz)f+b
0 ・・・(13)
で表される。この式(13)からも明らかなように、直線L
1は、減衰補正前の直線L
10と比較して、傾きが大きく(a>a
0)、かつ切片が同じ(b=b
0)である。この後、正規特徴量算出部315は、これら減衰補正された正規特徴量a、b、cを特徴量画像データ生成部316へ出力する。
【0078】
図1に戻り、特徴量画像データ生成部316は、正規特徴量算出部315が算出した正規特徴量に関連する視覚情報をBモード画像データにおける画像の各画素に対応して割り当てた特徴量画像データを生成する。特徴量画像データ生成部316は、例えば
図4に示す1つのRFデータストリングF
j(j=1、2、・・・、K)のデータ量に対応する画素領域に対し、そのRFデータストリングF
jから算出される周波数スペクトルの正規特徴量に関連する視覚情報を割り当てる。特徴量に関連する視覚情報としては、例えば色相、彩度、明度、輝度値、R(赤)、G(緑)、B(青)などの所定の表色系を構成する色空間の変数を挙げることができる。
【0079】
合成部317は、Bモード画像データ生成部312が生成したBモード画像データと、特徴量画像データ生成部316が生成した特徴量画像データとを合成して、特徴量に関連する視覚情報をBモード画像データにおける画像の各画素に対して重畳した合成画像データを生成する。
【0080】
ここで、周波数解析部313、スペクトル補正部314、正規特徴量算出部315、特徴量画像データ生成部316、合成部317は、解析範囲を、
図3に示す走査領域Sのうち、特定の深度幅および音線幅などで区切られる関心領域(Region of Interest:ROI)に限定して、上記の各処理を行っても良い。関心領域を必要な領域に限定すれば、演算量を減らすことができ、表示するための速度を向上することができる。以下、本実施の形態では関心領域を限定した場合について説明する。
【0081】
以下、超音波観測装置3のうち、画像生成部31以外の各部と各種入出力機器やサーバーの作用を説明する。
【0082】
キーボード105は、各種の情報を入力可能な複数のボタンを用いて構成され、術者からの入力を受け付ける。また、キーボード105には、表示画面を備えたタッチパネル105aが設けられている。タッチパネル105aは、例えば術者の指の接触位置に応じた入力を受け付ける。その後、キーボード105は、タッチパネル105a上で表示画面に表示される操作アイコンに従って術者がタッチ(接触)した位置(座標)や、入力があったボタンを識別するボタン番号等を含む操作信号をキーボード入力受付部36へ出力する。なお、タッチパネル105aは、超音波画像や各種情報を表示することで、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)として機能する。タッチパネルとしては、抵抗膜方式、静電容量方式および光学方式等があり、いずれの方式のタッチパネルであっても適用可能である。
【0083】
キーボード入力受付部36は、キーボード105からの操作信号に応じて、何のキー、何のメニューが選択入力されたのかの情報を含む選択信号を生成し、外部通信制御部33へ出力する。
【0084】
外部通信制御部33は、キーボード入力受付部36からの選択信号の内容に応じて、必要な場合には、超音波内視鏡2と超音波観測装置3の機種や個体を対応付けた組合せ型番データを生成し、書込読出部32に出力する。具体的には、この組合せ型番データは機種名と個体番号(一般にシリアル番号と呼ばれる)とを対応づけたデータである。また、別の必要な場合には、この選択信号自身を書込読出部32に出力する。この「必要な場合」については後述する。
【0085】
また、外部通信制御部33は、書込読出部32からの読み出し指示に基づいて、基準スペクトルデータを取得する際に接続する通信部を、ネットワーク通信部34およびデバイス通信部35から選択し、選択した通信部に組合せ型番データと読み出し指示とを出力して、基準スペクトルデータを読み出させる。
【0086】
書込読出部32は、外部通信制御部33からの選択信号の内容に応じ、必要な場合には、記憶部37から選択信号の内容に適した基準スペクトルデータ(上述した機種差補正用スペクトルデータおよび個体差補正用スペクトルデータを含む)を読み出す読出し処理を行う。このとき、書込読出部32は、該当する基準スペクトルデータが記憶部37に記憶されていない場合に、外部通信制御部33へ当該基準スペクトルデータを読み出すよう読み出し指示を出力する。読み出し指示を出力した後の外部通信制御部33の作用については上述の通りである。
【0087】
ネットワーク通信部34は、上述した通信ネットワークを介して、例えば病院内にある院内サーバー101に組合せ型番データを送信し、該組合せ型番データに対応する基準スペクトルデータを取得する。ネットワーク通信部34は、院内サーバー101からインターネットを介して工場サーバー102から基準スペクトルデータを取得する場合もある。
【0088】
デバイス通信部35は、例えば、光学ドライブ103やUSBメモリ104等の、超音波観測装置3に接続されるデバイスと通信することによって、組合せ型番データに対応する基準スペクトルデータを取得する。光学ドライブ103は、例えばCDドライブや、DVDドライブなどにより実現される。
【0089】
記憶部37は、基準スペクトルデータや、正規特徴量算出部315が周波数スペクトルごとに算出した複数の特徴量、Bモード画像データ生成部312、特徴量画像データ生成部316および合成部317が生成した画像データ、各処理の演算パラメータやデータ等を記憶するメモリ371aおよびHDD(Hard Disk Drive)371bを設けている。
【0090】
さらに、HDD371bは、上記以外にも、例えば増幅処理に必要な情報(
図2に示す増幅率と受信深度との関係)、対数変換処理に必要な情報(式(1)参照、例えばα、V
cの値)、周波数解析処理に必要な窓関数(Hamming、Hanning、Blackman等)の情報等を記憶する。
【0091】
また、記憶部37は、追加のメモリとして、超音波観測装置3の作動方法を実行するための作動プログラムを予めインストールした図示しないROM(Read Only Memory)を設けている。作動プログラムは、携帯型ハードディスク、フラッシュメモリ、CD−ROM、DVD−ROM、フレキシブルディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して広く流通させることも可能である。なお、上述した各種プログラムは、通信ネットワークを介してダウンロードすることによって取得することも可能である。ここでいう通信ネットワークは、例えば既存の公衆回線網、LAN、WANなどによって実現されるものであり、有線、無線を問わない。
【0092】
制御部38は、演算および制御機能を有するCPU等の汎用プロセッサ、またはASICもしくはFPGA等の専用の集積回路等を用いて実現される。制御部38は、記憶部37が記憶、格納する作動プログラム等の情報や各処理の演算パラメータやデータ等を記憶部37から書込読出部32経由で読み出し、超音波観測装置3の作動方法に関連した各種演算処理を実行することによって超音波観測装置3を統括して制御する。なお、制御部38を画像生成部31などと共通の汎用プロセッサまたは専用の集積回路等を用いて構成することも可能である。
【0093】
図10は、以上の構成を有する超音波観測装置3が行う処理の概要を示すフローチャートである。ここでは、術者が属している病院等の施設が既に機種Pの超音波内視鏡2(個体P
1およびP
2)と、機種Aの超音波観測装置3を保有しており、かつ、新規に機種Bの観測装置3を購入した場合を想定して説明する。概要は、術者の操作により、必要な基準スペクトルデータを指定し、ダウンロードし、その基準スペクトルデータを用いて被検体スペクトルデータを正規スペクトルデータへ補正するという場合に必要な作用である。
【0094】
ステップS1において、まず、外部通信制御部33は、キーボード入力受付部36から基準スペクトルデータを取得するための選択モードに入るための選択信号の入力があるか否かを判断する。選択モードとは、後述の超音波観測装置の機種と個体を指定するためのユーザーインターフェースのモードであり、選択モードでは
図11で説明する機種選択画面、
図12で説明する個体選択画面を表示させる。超音波観測装置3は、外部通信制御部33へ選択モードを起動するための選択信号の入力があれば(ステップS1:Yes)、ステップS2に移行する。これに対し、超音波観測装置3は、外部通信制御部33へ選択モードを起動するための選択信号の入力がなければ(ステップS1:No)、選択信号の確認を繰り返す。
【0095】
ステップS2において、外部通信制御部33は、書込読出部32へ機種リストや接続可否情報の読み出し指示を出力する。書込読出部32は、記憶部37を検索してその内部に記憶されている超音波観測装置3の機種リスト、超音波内視鏡2の機種リストおよび各機種間の接続可否情報を読み出し、外部通信制御部33へ出力する。外部通信制御部33は、各機種リストと接続可否情報とを基に超音波内視鏡2および超音波観測装置3の機種選択画面を生成し、キーボード入力受付部36を経由してキーボード105のタッチパネル105aに表示させる。こうして選択モードが起動する。この機種リストは、必要に応じ、ネットワーク通信部34、院内サーバー101、工場サーバー102からダウンロードし、販売中の最新の機種リストに更新できる。
【0096】
図11は、この超音波内視鏡2および超音波観測装置3の機種選択画面について説明する図である。
図11に示すように、機種選択画面には、超音波観測装置3の機種と、超音波内視鏡2の機種とが表示される。
図11では、説明のため、機種選択画面には、機種がA、B、P、Q、Rで表現されているが、実際には機種名が表示される。また、この機種選択画面には、接続可否情報から接続できない機種間の組合せが「接続不可」という文字で表示される。術者は、施設において設置されている機種と、使用する組合せに応じて、該当する組合せに応じたマスにタッチする(例えば
図11中のハッチングでしめす箇所)。このとき、複数のマスをタッチすることで複数選択が可能である。キーボード105は、タッチパネル105a上の接触位置に対応する座標情報を操作信号としてキーボード入力受付部36へ出力する。キーボード入力受付部36は、選択されたマスに相当する超音波観測装置の機種と超音波内視鏡の機種の組合せを特定し、その情報を選択信号として外部通信制御部33に出力する。これにより、外部通信制御部33には、超音波内視鏡2の機種と、超音波観測装置3の機種とに関する情報が入力される。術者が機種選択が終了した旨のメニューをタッチしたら、超音波観測装置3は、ステップS3へ移行する。例えば、術者が
図11中のハッチングで示した1箇所をタッチして終了した場合には、超音波内視鏡の機種Pと超音波観測装置の機種Bとが選択されたことになる。
【0097】
ステップS3において、書込読出部32は、記憶部37を検索し、その内部に記憶されている基準スペクトルデータのリスト(以下、単に「基準スペクトルデータリスト」と呼ぶ)を生成して、外部通信制御部33へ出力する。基準スペクトルデータリストには、各基準スペクトルデータのファイル名に、その基となった超音波内視鏡2および超音波観測装置3の機種名および個体番号が関連づけられている。外部通信制御部33は、基準スペクトルデータリストを基に超音波内視鏡2の個体選択画面を生成し、キーボード入力受付部36を経由してキーボード105のタッチパネル105aに表示させる。
【0098】
図12は、この超音波内視鏡2の個体選択画面について説明する図である。
図12に示すように、個体選択画面には、超音波観測装置3の機種と、超音波内視鏡2の個体とが表示される。
図12では、説明のため、個体選択画面には、機種がA、Bで、個体がP
1、P
2、P
3で表現されているが、実際には機種には機種名が、個体には個体番号が表示される。
図12には、術者が
図11中のハッチングで示した1箇所をタッチして機種選択を終了した例の個体選択画面が示されており、超音波内視鏡の機種Pの個体P
1、P
2、P
3と超音波観測装置の機種Bとが表示される。また、この個体選択画面には、基準スペクトルデータリストから既に記憶済みである基準スペクトルデータの組合せが「既存」という文字で表示される。術者は、施設に備わっている超音波内視鏡の個体番号と、接続する超音波観測装置3の機種との組合せに応じて、該当する組合せに応じたマスにタッチする(例えば
図12中のハッチングで示す箇所)。このとき、複数のマスをタッチすることで複数選択が可能である。キーボード105は、タッチパネル105a上の接触位置に対応する座標情報を操作信号としてキーボード入力受付部36へ出力する。キーボード入力受付部36は、選択されたマスに相当する超音波観測装置の機種と超音波内視鏡の機種および個体の組合せを特定し、その情報を選択信号として外部通信制御部33に出力する。これにより、外部通信制御部33には、超音波内視鏡2の同一機種における個体と、超音波観測装置3の機種とに関する情報が入力される。術者が超音波内視鏡の個体選択が終了した旨のメニューをタッチしたら、超音波観測装置3は、ステップ4へ移行する。例えば、術者が
図12中のハッチングで示した2箇所をタッチして終了した場合には、超音波内視鏡の機種Pの個体P
1、P
2と超音波観測装置の機種Bとが選択されたことになる。選択モードはここで終了する。
【0099】
外部通信制御部33は、個体選択画面で機種および個体に関する情報が入力されると、超音波内視鏡2の機種と超音波観測装置3の機種に関する情報、および、超音波内視鏡2の個体と超音波観測装置3の機種に関する情報を含む組合せ型番データを生成し、書込読出部32に出力する。
【0100】
ステップS4において、書込読出部32は、組合せ型番データを取得し、記憶部37から基準スペクトルデータを取得するか、ネットワーク通信部34および/またはデバイス通信部35に、選択された機種、個体に関する基準スペクトルデータを取得させる制御を行うことによって基準スペクトルデータを読み出し、スペクトル補正部314に入力する。書込読出部32は、記憶部37に該当する基準スペクトルデータが記憶されていない場合、外部通信制御部33を介してネットワーク通信部34および/またはデバイス通信部35のいずかから基準スペクトルデータを読み出させる。ここで取得するスペクトルデータとしては、予め算出されている基準スペクトルデータS(P
iB
0;f,z)、または、例えば、基準スペクトルデータを算出するためのスペクトルデータS(P
0A
0;f,z)およびS(P
0B
0;f,z)、ならびに超音波観測装置の基準機種Aの基準個体A
0を用いたスペクトルデータS(P
iA
0;f,z)である。以下、基準スペクトルデータを算出するためのスペクトルデータS(P
0A
0;f,z)およびS(P
0B
0;f,z)、ならびに超音波観測装置の基準機種Aの基準個体A
0を用いたスペクトルデータS(P
iA
0;f,z)を取得したものとして説明する。
【0101】
ステップS1〜S4は、超音波観測装置3を初めて立ち上げた際、または、キーボード105等を介して機種および個体を指定する選択モードが起動された場合に実行される。超音波観測装置3の二回目以降の立ち上げ時や、選択モードが起動されない場合、超音波観測装置3は、以降のステップS5〜ステップS14の処理を実行する。
【0102】
ステップS5において、施設において人体内部の組織等、被検体に対する観測が始まる。超音波振動子21は被検体を走査し、被検体から受信したエコーを電気的なエコー信号へ変換する。送受信部311は、エコー信号を超音波内視鏡2を経由して受信する。送受信部311は、そのエコー信号の増幅を行う。次に、送受信部311は、適当なサンプリング周波数(例えば50MHz)で増幅されたエコー信号をサンプリングして離散化してRFデータを生成し、Bモード画像データ生成部312および周波数解析部313へ出力する。
【0103】
ステップS6において、Bモード画像データ生成部312は、例えば
図2に示す増幅率と受信深度との関係に基づいてRFデータの増幅(STC補正)を行う。Bモード画像データ生成部312は、送受信部311から出力されたRFデータを用いてBモード画像データを生成し、合成部317へ出力する。
【0104】
ステップS7において、合成部317はBモード画像データには処理を施さず、そのまま、表示装置4へ出力する。Bモード画像データを受信した表示装置4は、そのBモード画像データに対応するBモード画像を表示する。
【0105】
ステップS8において、制御部38は、術者からキーボード105の図示しないボタンもしくはメニューを介して、特徴量画像の「表示」もしくは「非表示」のどちらが予め選択されているのか確認する。制御部38は、「表示」の選択を確認した場合には画像生成部31を構成する各部へ特徴量画像作成開始命令を出力する(ステップS8:Yes)。一方、「非表示」の選択を確認した場合は、特徴量画像作成開始命令を出さない(ステップS8:No)。
【0106】
画像処理部31は、特徴量画像作成開始命令を受信すると、後述のステップS9以降の処理を実行する。なお、特徴量画像作成開始命令の有無に関わらず、超音波観測装置3の送受信部311およびBモード画像データ生成部312は上記ステップS5からS7までの処理を繰り返す。そのため、術者がキーボード105を介して特徴量画像の『非表示』を指示している間は、Bモード画像が超音波振動子21による被検体の走査のたびに繰り返し表示装置4に表示される。
【0107】
ステップS9において、画像処理部31の各部が特徴量画像作成開始命令を受信した場合、まず、周波数解析部313は、各音線のRFデータ(ラインデータ)を比較的短い所定の時間間隔で複数に区切り、区切った各部分のRFデータにFFT演算による周波数解析を行う。そして、ことによって全てのRFデータストリングに対するスペクトルデータを算出する(周波数解析ステップ)。
【0108】
図13は、ステップS9において周波数解析部313が実行する処理の概要を示すフローチャートである。以下、
図13に示すフローチャートを参照して、周波数解析処理を詳細に説明する。
【0109】
ステップS21において、周波数解析部313は、解析対象の音線を識別するカウンタkをk
0とする。この初期値k
0は、
図3中、解析範囲の最右の音線の番号である。
【0110】
ステップS22において、周波数解析部313は、FFT演算用に取得する一連のRFデータストリングを代表するデータ位置(受信深度に相当)Z
(k)の初期値Z
(k)0を設定する()。例えば、
図4では、上述したように、音線SR
kの8番目のデータ位置を初期値Z
(k)0として設定した場合を示している。この初期値Z
(k)0は、音線SR
k上での解析範囲の最浅の受信深度である。
【0111】
その後、周波数解析部313は、RFデータストリングを取得し(ステップS23)、取得したRFデータストリングに対し、記憶部37が記憶する窓関数を作用させる(ステップS24)。このようにRFデータストリングに対して窓関数を作用させることにより、RFデータストリングが境界で不連続になることを回避し、アーチファクトが発生するのを防止することができる。
【0112】
続いて、周波数解析部313は、データ位置Z
(k)のRFデータストリングが正常なRFデータストリングであるか否かを判定する(ステップS25)。
図4を参照した際に説明したように、RFデータストリングは、2のべき乗のデータ数を有している必要がある。以下、正常なRFデータストリングのデータ数を2
n(nは正の整数)とする。本実施の形態では、データ位置Z
(k)が、できるだけZ
(k)が属するRFデータストリングの中心になるよう設定される。具体的には、RFデータストリングのデータ数は2
nであるので、Z
(k)はそのRFデータストリングの中心に近い2
n/2(=2
n-1)番目の位置に設定される。この場合、RFデータストリングが正常であるとは、データ位置Z
(k)より浅い側に2
n-1−1(=Nとする)個のデータがあり、データ位置Z
(k)より深い側に2
n-1(=Mとする)個のデータがあることを意味する。
図4に示す場合、RFデータストリングF
1、F
2、F
3、・・・、F
K-1はともに正常である。なお、
図4ではn=4(N=7,M=8)の場合を例示している。
【0113】
ステップS25における判定の結果、データ位置Z
(k)のRFデータストリングが正常である場合(ステップS25:Yes)、周波数解析部313は、後述するステップS27へ移行する。
【0114】
ステップS25における判定の結果、データ位置Z
(k)のRFデータストリングが正常でない場合(ステップS25:No)、周波数解析部313は、不足分だけゼロデータを挿入することによって正常なRFデータストリングを生成する(ステップS26)。ステップS25において正常でないと判定されたRFデータストリング(例えば
図5のRFデータストリングF
K)は、ゼロデータを追加する前に窓関数が作用されている。このため、RFデータストリングにゼロデータを挿入してもデータの不連続は生じない。ステップS26の後、周波数解析部313は、後述するステップS27へ移行する。
【0115】
ステップS27において、周波数解析部313は、RFデータストリングにFFT演算を施すことにより、エコー信号の電圧振幅の周波数分布に相当するV(f,L)を算出する。その後、周波数解析部313は、V(f,L)に対数変換処理を施して、スペクトルデータS(f,L)を得る(ステップS27)。
【0116】
ステップS28において、周波数解析部313は、データ位置Z
(k)をステップ幅Dで変化させる。ステップ幅Dについて、キーボード105を経由した術者の入力値を記憶部37が予め記憶しているものとする。
図4では、D=15の場合を例示している。
【0117】
その後、周波数解析部313は、データ位置Z
(k)が音線SR
kにおける最大値Z
(k)maxより大きいか否かを判定する(ステップS29)。この最大値Z
(k)maxは、音線SR
k上での解析範囲の最深の受信深度である。データ位置Z
(k)が最大値Z
(k)maxより大きい場合(ステップS29:Yes)、周波数解析部313はカウンタkを1増加させる(ステップS30)。これは、処理をとなりの音線へ移すことを意味する。一方、データ位置Z
(k)が最大値Z
(k)max以下である場合(ステップS29:No)、周波数解析部313はステップS23へ戻る。
【0118】
ステップS30の後、周波数解析部313は、カウンタkが最大値k
maxより大きいか否かを判定する(ステップS31)。カウンタkがk
maxより大きい場合(ステップS31:Yes)、周波数解析部313は一連の周波数解析処理を終了する。一方、カウンタkがk
max以下である場合(ステップS31:No)、周波数解析部313はステップS22に戻る。この最大値k
maxは、
図3中、解析範囲の最左の音線の番号である。
【0119】
このようにして、周波数解析部313は、解析対象領域内の(k
max−k
0+1)本の音線の各々について深度別に複数回のFFT演算を行う。FFT演算の結果は、受信深度および受信方向とともに記憶部37に格納される。
【0120】
なお、これら4種の値k
0、k
max、Z
(k)0、Z
(k)maxについては、
図3の全走査範囲を含むようなデフォルト値が記憶部37にあらかじめ記憶されており、周波数解析部313は適宜これらの値を読み取って、
図13の処理を行う。デフォルト値を読み取った場合、周波数解析部313は全走査範囲に対して周波数解析処理を行う。しかし、この4種の値k
0、k
max、Z
(k)0、Z
(k)maxは、キーボード105を通じた術者による関心領域の指示入力によって変更可能である。変更されていた場合、周波数解析部313は指示入力された関心領域においてのみ周波数解析処理を行う。
【0121】
ステップS10において、以上説明したステップS7の周波数解析処理に続いて、スペクトル補正部314は、周波数解析部313が算出した複数のスペクトルデータの補正を行う。スペクトル補正部314は、ステップS2において取得された基準スペクトルデータと、ステップS7で算出された被検体スペクトルデータとを用いて、式(2)、(3−1)、(3−2)より正規スペクトルデータを生成する。例えば、スペクトル補正部314は、まず、スペクトルデータS(P
0A
0;f,z)およびS(P
0B
0;f,z)と、超音波観測装置の基準機種Aの基準個体A
0を用いたスペクトルデータS(P
iA
0;f,z)とから、式(3−1)もしくは式(3−2)により基準スペクトルデータS(P
iB
0;f,z)を求める。その後、スペクトル補正部314は、式(2)より、被検体スペクトルデータS(LB;f,z)から基準スペクトルデータS(P
iB
m;f,z)を減算することによって、正規スペクトルデータS
C(LB;f,L)を算出する。なお、基準スペクトルデータS(P
iB
0;f,z)は、ステップS2においてスペクトルデータを取得した際に、予め算出しておいてもよい。
【0122】
ステップS11において、正規特徴量算出部315は、スペクトル補正部314が生成した正規スペクトルデータを用いて、正規特徴量を算出する。正規特徴量算出部315は、スペクトル補正部314が生成した解析範囲内の位置に応じた複数の正規スペクトルデータをそれぞれ単回帰分析することにより、各スペクトルデータに対応する補正前特徴量を算出する。具体的には、正規特徴量算出部315は、各スペクトルデータを単回帰分析することによって一次式で近似し、補正前特徴量として傾きa
0、切片b
0、ミッドバンドフィットc
0を算出する。例えば、
図8に示す直線L
10は、正規特徴量算出部315が周波数帯域UのスペクトルデータC
1に対し単回帰分析によって近似した回帰直線である。
【0123】
続いて、正規特徴量算出部315は、各スペクトルデータに対して近似して得た補正前特徴量に対し、減衰率ζを用いて減衰補正を行うことにより、減衰補正後の特徴量を算出し、記憶部37に格納する。この減衰補正後の特徴量が、正規特徴量となる。
図9に示す直線L
1は、正規特徴量算出部315が減衰補正処理を行うことによって得られる直線の例である。
【0124】
正規特徴量算出部315は、上述した式(10)、(12)における受信深度zに、超音波信号の音線のデータ配列を用いて得られるデータ位置Z=(v
S/(2・f
sp)・D・n+Z
0を代入することによって補正後特徴量aとcとを算出する。ここで、f
spはデータのサンプリング周波数、v
sは音速、Dはデータステップ幅、nは処理対象のRFデータストリングのデータ位置までの音線の1番目のデータからのデータステップ数、Z
0は解析範囲の最浅の受信深度である。例えば、データのサンプリング周波数f
spを50MHzとし、音速v
sを1530m/secとし、
図4に示すデータ配列を採用してデータステップ幅Dを15とすると、z=0.2295n+Z
0(mm)となる。
【0125】
ステップS12において、特徴量画像データ生成部316は、正規特徴量算出部315が算出した正規特徴量に関連する視覚情報をBモード画像データにおける画像の各画素に対応して割り当てた特徴量画像データを生成する。
【0126】
ステップS13において、合成部317は、Bモード画像データ生成部312が生成したBモード画像データと、特徴量画像データ生成部316が生成した特徴量画像データとを合成して、特徴量に関連する視覚情報をBモード画像データにおける画像の各画素に対して重畳した合成画像データを生成する。
【0127】
ステップS14において、表示装置4は、制御部38の制御のもと、合成部317が生成した合成画像データに対応する合成画像を表示する。
図14に、この表示例示す。同図に示す画面201は、合成画像を表示する合成画像表示部202と、観測対象の識別情報などを表示する情報表示部203とを有する。なお、情報表示部203に、特徴量の情報、近似式の情報、ゲインやコントラスト等の情報等をさらに表示するようにしてもよい。また、合成画像に対応するBモード画像を合成画像と並べて表示してもよい。
【0128】
以上説明してきた一連の処理(ステップS1〜S14)において、ステップS5〜S7の処理とステップS9〜S13の処理とを並行して行うようにしてもよい。
【0129】
以上説明した本発明の実施の形態1では、周波数解析部313により算出された被検体スペクトルデータS(LB;f,z)に対し、基準片を撮像して得られる基準スペクトルデータS(P
iB
m;f,z)(=S(P
iB
0;f,z))を用いて正規スペクトルデータS
C(LB;f,z)を算出し、この正規スペクトルデータから正規特徴量を求めるようにした。本発明の実施の形態1によれば、超音波プローブ間の機種差および個体差、ならびに超音波観測装置間の機種差によらず高精度な超音波データを得ることができる。
【0130】
ここで、超音波内視鏡2の機種および個体、これら超音波内視鏡2と超音波観測装置3の機種ごとに基準スペクトルデータを用意しようとすると、基準スペクトルデータを取得する処理に手間がかかり、記憶すべきデータ量も膨大になる。例えば、一つの機種の超音波内視鏡について1000台の個体があり、それぞれが3機種の超音波観測装置のいずれかと接続可能な場合、すべての組み合わせで3000個のスペクトルデータを取得する必要がある。さらに、新しい機種や個体が導入される都度、スペクトルデータを取得しなければならない。これに対し、本実施の形態1によれば、3機種の超音波観測装置から取得される3個の機種差補正用のスペクトルデータと、各個体と所定の機種の超音波観測装置との組み合わせによる1000個の個体差補正用のスペクトルデータとの1003個のスペクトルデータを取得すればよく、新しい機種についてのスペクトルデータの取得も不要である。
【0131】
なお、本発明の実施の形態1において、Bモード画像データの生成時に、上述した超音波内視鏡の感度の個体差の補正を行ってもよい。この場合、Bモード画像データ生成部312が、上述したΔS
2を用いた補正を行うことになる。
【0132】
また、本発明の実施の形態1において、特徴量を算出する際の解析帯域を、超音波内視鏡の機種(または個体)と、超音波観測装置の機種との組み合わせにより決定するようにしてもよい。基準スペクトルデータに合わせて、解析帯域の上限周波数および下限周波数、中心周波数ならびに帯域幅等の解析帯域情報を基準スペクトルデータと対応付けて記憶し、補正時に使用してもよい。
【0133】
(実施の形態1の変形例)
続いて、本発明の実施の形態1の変形例について説明する。
図15および
図16は、超音波観測装置の基準スペクトルデータの取得について説明する図である。上述した実施の形態1では、超音波観測装置の個体差が無いという前提で説明した。すなわち、式(4)が成り立つことを前提に説明したが、さらに、超音波観測装置の個体を補正してもよいここで、式(6−1)、式(7−1)、式(6−3)より、上述した実施の形態1では、下式(14)が成り立つ。
S(P
iB
0;f,z)=S(P
0A
0;f,z)+ΔS
10+ΔS
20 ・・・(14)
式(6−1)、式(7−1)、式(6−3)は、式(4)が成り立たない場合でも成り立つ式であるため、式(14)も、式(4)が成り立たない場合でも成り立つ。また、
図16は、やはり、
図5が成り立つのと同様に成り立つ。なお、ΔS
21は、
図5と
図16とで共通である。
【0134】
図5と
図16を比較して、式(14)も同様に考えると、下式(15)が成り立つ。さらに、下式(16)は、ΔS
30を定義する式である。本変形例1では、下式(15)、(16)に基づいて基準スペクトルデータを取得する。
S(P
iB
m;f,z)=S(P
0B
0;f,z)+ΔS
20+ΔS
30・・・(15)
ΔS
30=S(P
0B
m;f,z)−S(P
0B
0;f,z) ・・・(16)
さらに、式(15)に式(5−1)を代入して、下式(17)を得る。
S(P
iB
m;f,z)=S(P
0A
0;f,z)+ΔS
10+ΔS
20+ΔS
30
・・・(17)
【0135】
ここで、ΔS
10は、超音波観測装置の機種差を表し、ΔS
20は、機種Pの超音波内視鏡の個体差を表し、ΔS
30は、機種Bの超音波観測装置3の個体差を表している。
さらに、式(17)に式(5−1)、式(7−1)、式(16)を代入して下式(18)を得る。
S(P
iB
m;f,z)=S(P
0A
0;f,z)
+S(P
0B
0;f,z)−S(P
0A
0;f,z)
+S(P
iA
0;f,z)−S(P
0A
0;f,z)
+S(P
0B
m;f,z)−S(P
0B
0;f,z)
∴S(P
iB
m;f,z)=−S(P
0A
0;f,z)+S(P
0B
m;f,z)
+S(P
iA
0;f,z) ・・・(18)
ここで、式(18)の第1項が機種差補正項、第2項が超音波観測装置3の個体差補正項、第3項が超音波内視鏡2の個体差補正項と考えることができる。
【0136】
以上説明したように、式(18)もしくは式(17)より、基準個体A
0、B
0、P
0と非基準個体B
m、P
iとの組み合わせで得た基準スペクトルデータと、基準個体同士の組合せで得た基準スペクトルデータとを用いて機種差を補正可能であることがわかる。そして、その双方の基準スペクトルデータは施設への出荷前に工場等で測定することが可能である。そして、その双方の基準スペクトルデータを用いて、基準機種とは異なる機種(ここでは機種B)の任意の超音波観測装置の個体(ここでは超音波観測装置B
m)と任意の超音波内視鏡の個体P
iとの組み合わせによる基準スペクトルデータS(P
iB
m;f,z)を、超音波観測装置の個体差が存在しても、求めることができる。
【0137】
本変形例では、基準片を撮像して得られる基準スペクトルデータS(P
iB
m;f,z)について、超音波観測装置の機種差を示すΔS
10、および超音波内視鏡の個体差を示すΔS
20に加え、超音波観測装置3の個体差を示すΔS
30を考慮したものとすることができる。本変形例においても、上述した実施の形態1と同様に、超音波プローブの機種差および個体差、ならびに超音波観測装置の機種差および個体差に応じた超音波信号の補正を行うことができる。
【0138】
(実施の形態2)
続いて、本発明の実施の形態2について説明する。
図17は、本発明の実施の形態2に係る超音波観測装置を備えた超音波診断システムの構成を示すブロック図である。上述した実施の形態1では、スペクトル補正部314により被検体スペクトルデータを正規スペクトルデータに補正し、正規スペクトルデータから正規特徴量を算出するものとして説明したが、本実施の形態2では、被検体スペクトルデータから被検体特徴量を算出し、この被検体特徴量を補正することによって、正規特徴量を算出する。
【0139】
本実施の形態2に係る超音波診断システム1Aは、上述した実施の形態1に係る超音波診断システム1の構成に対し、超音波観測装置3に代えて超音波観測装置3Aを備える。超音波観測装置3Aは、上述した画像生成部31に代えて画像生成部31Aを有している。超音波観測装置3Aにおいて、画像生成部31A以外の構成は、上述した超音波観測装置3の構成と同じである。
【0140】
画像生成部31Aは、上述した送受信部311、Bモード画像データ生成部312および周波数解析部313と、周波数解析部313が算出した被検体スペクトルデータをもとに被検体特徴量を算出する被検体特徴量算出部318と、被検体特徴量算出部318が算出した被検体特徴量に対し、超音波内視鏡2の機種および個体、ならびに超音波観測装置3Aの機種に応じた補正を施すことにより正規特徴量を算出する特徴量補正部319と、特徴量補正部319が算出した正規特徴量に応じて色情報を付与し特徴量画像データを生成する特徴量画像データ生成部316と、Bモード画像データ生成部312が生成したBモード画像上に、特徴量画像データ生成部316が生成した特徴量画像を合成して、合成画像データを生成する合成部317と、を有する。
【0141】
被検体特徴量算出部318は、周波数解析部313から出力された複数の被検体スペクトルデータを直線で近似することによって被検体スペクトルデータの特徴量(補正前特徴量)を算出し、補正前特徴量に対して周波数に依存した減衰を補正することによって特徴量を算出する。特徴量の算出方法については、上述した実施の形態1と同様である。
【0142】
特徴量補正部319は、被検体特徴量補正部318が算出した被検体特徴量に対して、基準特徴量を用いて補正することによって、正規特徴量を算出する。この際の基準特徴量は、上述した機種差補正用のスペクトルデータを回帰分析して得られた機種差補正用の基準特徴量(本実施の形態2に係る機種差補正用の第1の基準データに相当)、および上述した個体差補正用のスペクトルデータを回帰分析して得られた個体差補正用の基準特徴量(本実施の形態2に係る個体差補正用の第2の基準データに相当)からなる。特徴量補正部319は、上述した式(3−1)に倣い、被検体特徴量から、機種差補正用の基準特徴量および個体差補正用の基準特徴量を加算または減算することによって正規特徴量を算出する。
【0143】
上述した実施の形態1において、式(3−1)より、工場等において基準個体を用いて取得可能なスペクトルデータS(P
0A
0;f,z)およびS(P
0B
0;f,z)と、出荷前の時点等に工場等において基準機種Aの基準個体の超音波観測装置(ここでは超音波観測装置A
0)と超音波内視鏡の各個体P
iとを用いて取得可能なスペクトルデータS(P
iA
0;f,z)とから、基準機種とは異なる機種(ここでは機種B)の任意の超音波観測装置の個体(ここでは超音波観測装置B
m)と任意の超音波内視鏡の個体P
iとの組み合わせによる基準スペクトルデータS(P
iB
m;f,z)を求められることが証明された。本実施の形態2では、スペクトルデータS(P
0A
0;f,z)、S(P
0B
0;f,z)から算出される機種差補正用の基準特徴量と、スペクトルデータS(P
iA
0;f,z)から算出される個体差補正用の基準特徴量とを用いて被検体特徴量を補正することにより、機種差および個体差によらない正規特徴量を得ることができる。機種差補正用の基準特徴量および個体差補正用の基準特徴量は、記憶部37や外部の記憶媒体(上述した院内サーバー101や光学ドライブ103など)に予め記憶されている。
【0144】
図18は、以上の構成を有する超音波観測装置3Aが行う処理の概要を示すフローチャートである。まず、超音波観測装置3Aは、上述した
図10に示すステップS1と同様に、キーボード入力受付部36から基準特徴量を取得するための選択モードに入るための選択信号の入力があるか否かを判断する(ステップS41)。超音波観測装置3Aは、外部通信制御部33へ選択モードを起動するための選択信号の入力があれば(ステップS41:Yes)、ステップS42に移行する。これに対し、超音波観測装置3Aは、外部通信制御部33へ選択モードを起動するための選択信号の入力がなければ(ステップS41:No)、選択情報の確認を繰り返す。
【0145】
ステップS42において、外部通信制御部33は、書込読出部32へ機種リストや接続可否情報の読み出し指示を出力する。書込読出部32は、記憶部37を検索してその内部に記憶されている超音波観測装置3の機種リスト、超音波内視鏡2の機種リストおよび各機種間の接続可否情報を読み出し、外部通信制御部33へ出力する。外部通信制御部33は、各機種リストと接続可否情報とを基に超音波内視鏡2および超音波観測装置3の機種選択画面を生成し、キーボード入力受付部36を経由してキーボード105のタッチパネル105aに表示させる。
【0146】
ステップS43において、書込読出部32は、記憶部37を検索し、その内部に記憶されている基準特徴量のリスト(以下、単に「基準特徴量リスト」と呼ぶ)を生成して、外部通信制御部33へ出力する。基準特徴量リストには、各基準特徴量のファイル名に、その基となった超音波内視鏡2および超音波観測装置3の機種名および個体番号が関連づけられている。外部通信制御部33は、基準特徴量リストを基に超音波内視鏡2の個体選択画面を生成し、キーボード入力受付部36を経由してキーボード105のタッチパネル105aに表示させる。
【0147】
外部通信制御部33は、個体選択画面で機種および個体に関する情報が入力されると、超音波内視鏡2の機種と超音波観測装置3の機種に関する情報、および、超音波内視鏡2の個体と超音波観測装置3の機種に関する情報を含む組合せ型番データを生成し、書込読出部32に出力する。
【0148】
ステップS44において、書込読出部32は、組合せ型番データを取得し、記憶部37から基準特徴量を取得するか、ネットワーク通信部34および/またはデバイス通信部35に、選択された機種、個体に関する基準特徴量を取得させる制御を行うことによって基準特徴量を読み出し、スペクトル補正部314に入力する。書込読出部32は、記憶部37に該当する基準特徴量が記憶されていない場合、外部通信制御部33を介してネットワーク通信部34および/またはデバイス通信部35のいずかから基準特徴量を読み出させる。ここで取得する基準特徴量としては、例えば、上述した基準スペクトルデータS(P
iB
0;f,z)に基づいて算出される特徴量である。
【0149】
ステップS41〜S44は、超音波観測装置3を初めて立ち上げた際、または、キーボード105等を介して機種および個体を指定する選択モードが起動された場合に実行される。超音波観測装置3の二回目以降の立ち上げ時や、選択モードが起動されない場合、超音波観測装置3は、以降のステップS45〜ステップS54の処理を実行する。
【0150】
ステップS45において、送受信部311は、超音波振動子21を経由して受信する。送受信部311は、そのエコー信号の増幅を行う。次に、送受信部311は、適当なサンプリング周波数(例えば50MHz)で増幅されたエコー信号をサンプリングして離散化してRFデータを生成し、Bモード画像データ生成部312および周波数解析部313へ出力する。
【0151】
ステップS46において、Bモード画像データ生成部312は、例えば
図2に示す増幅率と受信深度との関係に基づいてエコー信号の増幅(STC補正)を行う。Bモード画像データ生成部312は、STC補正後のRFデータを用いてBモード画像データを生成し、合成部317へ出力する。
【0152】
ステップS47において、合成部317はBモード画像データには処理を施さず、そのまま、表示装置4へ出力する。Bモード画像データを受信した表示装置4は、そのBモード画像データに対応するBモード画像を表示する。
【0153】
ステップS48において、制御部38は、術者からキーボード105の図示しないボタンもしくはメニューを介して、特徴量画像の「表示」もしくは「非表示」のどちらが選択されているのか確認する。制御部38は、「表示」の選択を確認した場合には画像生成部31Aを構成する各部へ特徴量画像作成開始命令を出力する(ステップS48:Yes)。一方、「非表示」の選択を確認した場合は、特徴量画像作成開始命令を出さない(ステップS48:No)。
【0154】
画像処理部31Aは、特徴量画像作成開始命令を受信すると、後述のステップS49以降の処理を実行する。なお、特徴量画像作成開始命令の有無に関わらず、超音波観測装置3Aの送受信部311およびBモード画像データ生成部312は上記ステップS45からS47までの処理を繰り返す。そのため、術者がキーボード105を介して特徴量画像の『非表示』を指示している間は、Bモード画像が超音波振動子21による観測対象内の走査のたびに繰り返し表示装置4に表示される。
【0155】
画像処理部31Aの各部が物理量画像作成開始命令を受信した場合、まず、周波数解析部313は、RFデータにFFT演算による周波数解析を行うことによって全てのRFデータストリングに対するスペクトルデータを算出する(ステップS49:周波数解析ステップ)。周波数解析処理は、
図13に示す処理と同様である。
【0156】
ステップS49の周波数解析処理に続いて、被検体特徴量算出部318は、周波数解析部313が生成した被検体スペクトルデータを用いて、被検体特徴量を算出する(ステップS50)。被検体特徴量算出部318は、周波数解析部313が生成した解析範囲内の位置に応じた複数の被検体スペクトルデータをそれぞれ単回帰分析することにより、各スペクトルデータに対応する補正前特徴量を算出する。その後、被検体特徴量算出部318は、各スペクトルデータに対して近似して得た補正前特徴量に対し、減衰率ζを用いて減衰補正を行うことにより、減衰補正後の特徴量を算出し、記憶部37に格納する。この減衰補正後の特徴量が、被検体特徴量となる。
【0157】
ステップS51において、特徴量補正部319は、被検体特徴量算出部318が算出した被検体特徴量を補正することによって、正規特徴量を算出する。特徴量補正部319は、式(3−1)に倣い、被検体特徴量から、ステップS44において取得した機種差補正用の基準特徴量および個体差補正用の基準特徴量を加算または減算して補正することによって正規特徴量を算出する。
【0158】
ステップS52において、特徴量画像データ生成部316は、特徴量補正部319が算出した正規特徴量に関連する視覚情報をBモード画像データにおける画像の各画素に対応して割り当てた特徴量画像データを生成する。
【0159】
ステップS53において、合成部317は、Bモード画像データ生成部312が生成したBモード画像データと、特徴量画像データ生成部316が生成した特徴量画像データとを合成して、特徴量に関連する視覚情報をBモード画像データにおける画像の各画素に対して重畳した合成画像データを生成する。
【0160】
ステップS54において、表示装置4は、制御部38の制御のもと、合成部317が生成した合成画像データに対応する合成画像を表示する。
【0161】
以上説明してきた一連の処理(ステップS41〜S54)において、ステップS45〜S47の処理とステップS49〜S52の処理とを並行して行うようにしてもよい。
【0162】
以上説明した本発明の実施の形態2では、周波数解析部313により算出された被検体スペクトルデータから被検体特徴量を算出し、その後、基準片を撮像して得られる基準スペクトルデータから求まる基準特徴量を用いて被検体特徴量を補正して正規特徴量を求めるようにした。本発明の実施の形態2によれば、超音波プローブの機種差および個体差、ならびに超音波観測装置3Aの機種差に応じた超音波信号の補正を行うことができる。
【0163】
(実施の形態3)
続いて、本発明の実施の形態3について説明する。
図19は、本発明の実施の形態3に係る超音波観測装置を備えた超音波診断システムの構成を示すブロック図である。本実施の形態3では、超音波内視鏡2が、フラッシュメモリ(Flash Memory:FM)を備えている。
【0164】
本実施の形態3に係る超音波診断システム1Bは、超音波内視鏡2(超音波内視鏡2A〜2C)が、フラッシュメモリ(FM22A、FM22B、FM22C)をそれぞれ備えている。
【0165】
また、超音波診断システム1Bは、上述した実施の形態1に係る超音波診断システム1の構成に対し、超音波観測装置3に代えて超音波観測装置3Bを備える。超音波観測装置3Bは、上述した超音波観測装置3の構成に対し、第2書込読出部39をさらに備えている。超音波観測装置3Bにおいて、第2書込読出部39以外の構成は、上述した超音波観測装置3の構成と同じである。
【0166】
第2書込読出部39は、ネットワーク通信部34および/またはデバイス通信部35から取得した基準スペクトルデータ(上述した機種差補正用スペクトルデータおよび個体差補正用スペクトルデータを含む)を、書込読出部32を介して取得する読み出し処理や、取得した基準スペクトルデータ等を超音波内視鏡2のフラッシュメモリに書き込ませる処理を行う。
【0167】
以上説明した本発明の実施の形態3では、超音波内視鏡2のフラッシュメモリ(FM22A、FM22B、FM22C)が基準スペクトルデータを記憶するようにしたので、基準データを記憶後にこの超音波内視鏡2を接続した超音波観測装置3Bが、超音波内視鏡2から基準スペクトルデータを取得することができる。この結果、術者のキーボード105への入力作業を省略して基準スペクトルデータを取得することが可能となる。本発明の実施の形態3によれば、上述した実施の形態1の効果を得ることができるとともに、術者の負担を軽減することができる。
【0168】
(実施の形態4)
続いて、本発明の実施の形態4について説明する。
図20は、本発明の実施の形態4に係る超音波観測装置を備えた超音波診断システムの構成を示すブロック図である。本実施の形態4では、超音波内視鏡2が、ROMを備えている。
【0169】
本実施の形態4に係る超音波診断システム1Cは、超音波内視鏡2(超音波内視鏡2A〜2C)が、ROM(ROM23A、ROM23B、ROM23C)をそれぞれ備えている。各ROMには、当該超音波内視鏡2の機種を示す機種コードおよび個体番号が記憶されている。
【0170】
また、超音波診断システム1Cは、上述した実施の形態1に係る超音波診断システム1の構成に対し、超音波観測装置3に代えて超音波観測装置3Cを備える。超音波観測装置3Cは、上述した超音波観測装置3の構成に対し、第2書込読出部39Aをさらに備えている。超音波観測装置3Cにおいて、第2書込読出部39A以外の構成は、上述した超音波観測装置3の構成と同じである。
【0171】
第2書込読出部39Aは、超音波内視鏡2が接続されると、接続された超音波内視鏡2のROMから機種コードおよび個体番号を読み出す。第2書込読出部39Aは、読み出した機種コードを、外部通信制御部33に出力する。
【0172】
外部通信制御部33は、第2書込読出部39Aから入力された機種コードおよび個体番号と、自身(超音波観測装置3C)の機種コードとに基づいて、超音波内視鏡2と超音波観測装置3Cとの機種や個体を対応付けた組合せ型番データを生成し、書込読出部32に出力する。外部通信制御部33は、書込読出部32からの通信部からの読み出し指示に基づいて、基準スペクトルデータを取得する際に接続する通信部を、ネットワーク通信部34およびデバイス通信部35から選択し、選択した通信部に基準スペクトルデータを読み出させる制御を行う。その後の処理は、上述した実施の形態1のステップS5〜S14と同様である。
【0173】
以上説明した本発明の実施の形態4では、超音波内視鏡2のROM(ROM23A、ROM23B、ROM23C)が自身の機種コードおよび個体番号を記憶するようにしたので、この超音波内視鏡2を接続した超音波観測装置3Cが、超音波内視鏡2からの機種コードおよび個体番号を取得し、この接続された超音波内視鏡の機種コードおよび個体番号と、自身の機種コードとに基づき、自動的に組合せ型番データを生成して、対応する基準スペクトルデータを取得することができる。この結果、術者のキーボード105への入力作業を省略して、基準スペクトルデータを自動的に取得することが可能となる。本実施の形態3によれば、上述した実施の形態1の効果を得ることができるとともに、術者の負担を軽減することができる。
【0174】
(実施の形態5)
続いて、本発明の実施の形態5について説明する。
図21は、本発明の実施の形態5に係る超音波観測装置を備えた超音波診断システムの構成を示すブロック図である。本実施の形態5では、超音波内視鏡2が、基準片110を用いて個体差補正用の基準スペクトルデータを取得する。この際に用いられる基準片110は、例えば、予め取得されている基準スペクトルデータに用いられたのと同じファントムやアクリル板である。
【0175】
本実施の形態5に係る超音波診断システム1は、上述した実施の形態1と同様の構成を備えている。以下、実施の形態1とは異なる部分について説明する。
【0176】
スペクトル補正部314は、超音波内視鏡2が基準片110からのエコー信号を取得した場合に、周波数解析部313が生成した被検体スペクトルデータを補正せずに正規スペクトルデータとして書込読出部32に出力する。
【0177】
書込読出部32は、スペクトル補正部314から正規スペクトルデータが入力されると、この正規スペクトルデータを個体差補正用スペクトルデータとして記憶部37に記憶させる。記憶部37では、この個体差補正用スペクトルデータが、超音波内視鏡2の機種および個体番号と対応付けて記憶される。このようにして、例えば病院等の施設において、個体差補正用スペクトルデータを取得することができる。画像生成部31における処理は、上述した個体差補正用スペクトルデータが予め記憶部37に記憶されている以外は、実施の形態1と同じである。
【0178】
以上説明した本発明の実施の形態5では、市場に出回っている超音波内視鏡2と、基準片110とを用いて個体差補正用スペクトルデータを取得するようにしたので、病院などの施設において感度異常等が発生した場合であっても、その施設で基準片110を用いて個体差補正用スペクトルデータを取得し、スペクトル補正部314が、この個体差補正用スペクトルデータを含む基準スペクトルデータを用いて正規スペクトルデータを生成することによって、感度補正の応急処置を行うことが可能となる。
【0179】
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は、上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、超音波観測装置において、各機能を有する回路同士をバスで接続することによって構成してもよいし、一部の機能が他の機能の回路構造に内蔵されるように構成してもよい。
【0180】
なお、上述した実施の形態1〜5において、基準片は、材質、質量密度、音速、音響インピーダンスが既知である媒体に、材質、質量密度、音速、音響インピーダンス、直径、数密度がやはり既知である散乱体を一様に混入させたファントムを例に挙げて説明した。しかし、散乱体の直径、散乱体の散乱強度、散乱体の数密度等の物理量が既知で、かつ、分布が一様な対象であればファントムをこれに代えることができる。例えば、物理量を既知ないし正確に測定できれば動物の肝臓等、特定組織を用いてもよい。この際、機種差補正用の基準データおよび個体差補正用の基準データのうちの少なくとも一方が、基準片からのエコー信号により取得されることが好ましい。
【0181】
また、本実施の形態1〜5では、超音波プローブとしてライトガイド等の光学系を有する超音波内視鏡2を用いて説明したが、超音波内視鏡2に限らず、撮像光学系および撮像素子を有しない超音波プローブであってもよい。さらに、超音波プローブとして、光学系のない細径の超音波ミニチュアプローブを適用してもよい。超音波ミニチュアプローブは、通常、胆道、胆管、膵管、気管、気管支、尿道、尿管へ挿入され、その周囲臓器(膵臓、肺、前立腺、膀胱、リンパ節等)を観察する際に用いられる。
【0182】
また、超音波プローブとして、観測対象の体表から超音波を照射する体外式超音波プローブを適用してもよい。体外式超音波プローブは、通常、腹部臓器(肝臓、胆嚢、膀胱)、乳房(特に乳腺)、甲状腺を観察する際に体表に直接接触させて用いられる。
【0183】
また、超音波振動子21(超音波振動子21A〜21C)は、互いに機種が異なっていれば、リニア振動子でもラジアル振動子でもコンベックス振動子でも構わない。超音波振動子がリニア振動子である場合、その走査領域は矩形(長方形、正方形)をなし、超音波振動子がラジアル振動子やコンベックス振動子である場合、その走査領域は扇形や円環状をなす。また、超音波内視鏡は、超音波振動子をメカ的に走査させるものであってもよいし、超音波振動子として複数の素子をアレイ状に設け、送受信にかかわる素子を電子的に切り替えたり、各素子の送受信に遅延をかけたりすることで、電子的に走査させるものであってもよい。
【0184】
また、超音波プローブと超音波観測装置とは別体で設けられているものとして説明したが、超音波プローブと超音波観測装置とを一体化した構成としてもよい。
【0185】
このように、本発明は、特許請求の範囲に記載した技術的思想を逸脱しない範囲内において、様々な実施の形態を含みうるものである。