(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886863
(24)【登録日】2021年5月19日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】軌道走行式機械のレールクランプ装置
(51)【国際特許分類】
B66C 9/18 20060101AFI20210603BHJP
B61H 7/12 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
B66C9/18
B61H7/12 A
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-106116(P2017-106116)
(22)【出願日】2017年5月30日
(65)【公開番号】特開2018-199567(P2018-199567A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2020年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石野 泰造
【審査官】
三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第02/074602(WO,A1)
【文献】
中国実用新案第203958175(CN,U)
【文献】
特開昭58−105871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 9/18
B66C 15/00
B61H 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールに沿って転動自在な走行車輪が配設された走行装置を備えた軌道走行式機械のレールクランプ装置において、
前記レールの両側面を挟持・開放自在なクランプアームの先端部に組み込まれ且つ前記レールの側面に倣うよう回動自在なシューブロックを備え、
前記シューブロックは、
前記クランプアームの先端部にレールの長手方向と平行に延びるよう取り付けられた支持軸と、
該支持軸に回動自在に嵌装されるスリーブと、
該スリーブの外周に形成され且つ前記レールの側面に当接自在なシューと
を備え、
前記クランプアームは、
前記スリーブが回動方向へ摺動自在に嵌入される凹溝と、
前記凹溝の軸線方向中間部に、前記支持軸を支承し且つ前記スリーブに作用する軸線方向への荷重を受けるよう形成されるボス部と
を備えたことを特徴とする軌道走行式機械のレールクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道走行式機械のレールクランプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図10は一般的な軌道走行式機械としてのコンテナクレーンの一例を示すものであって、1はコンテナクレーン、2はコンテナクレーン1が配備される港湾、3は港湾2における岸壁、4は岸壁3に
図10の紙面と直交する方向へ延びるよう敷設されたレールであり、コンテナクレーン1のクレーン本体5の支持脚6には、レール4に沿って転動自在な走行車輪7を有する走行装置8が取り付けられている。
【0003】
前記コンテナクレーン1は、荷役作業中に強風に煽られると、運転者の意に反して走行が止まらず、逸走してしまい、隣接する機械や近接構造物への衝突や倒壊に至る虞がある。
【0004】
このため、前述の如き軌道走行式機械の逸走を防止する装置として、従来、例えば、特許文献1に開示されているようなレールクランプ装置がある。
【0005】
前記レールクランプ装置は、先端部に挟み部(シュー)が形成された一対の接触子(クランプアーム)をその略中間部が軸を中心として回動自在となるよう連結した挟み機構と、該挟み機構における前記接触子の基端部に設けられ且つ該接触子の基端部間を狭めて前記挟み部が常時レールを挟む閉方向へ前記接触子を回動させるようにしたばね機構と、前記一対の接触子の基端部に形成されたカム受部をその内側から押し開く方向へ駆動して前記挟み部によるレールの挟み付けを解放するための回転カムとを備えている。
【0006】
又、前記レールクランプ装置と関連する一般的技術水準を示すものとしては、特許文献2もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−72690号公報
【特許文献2】特許第5781560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2に開示されているようなレールクランプ装置では、レールを両側から挟み付ける方式を採用しているため、レールの側面の精度が低く、その幅方向における中心線から側面までの寸法に左右でばらつきが生じている場合、若しくはレールの摩耗や腐食等による断面の変形が生じている場合、前記シューによる挟み付けが均一に行われずに締付力が大きく低下してしまい、充分な保持力が得られなくなる可能性があった。
【0009】
又、前記シューによる挟み付けが均一に行われていないと、レールの側面並びにシューの偏摩耗が発生しやすくなり、レールクランプ装置の寿命短縮につながる虞があった。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、安定した保持力を得ることができ、且つ接触面の偏摩耗を抑えて寿命延長を図り得る軌道走行式機械のレールクランプ装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の軌道走行式機械のレールクランプ装置は、レールに沿って転動自在な走行車輪が配設された走行装置を備えた軌道走行式機械のレールクランプ装置において、
前記レールの両側面を挟持・開放自在なクランプアームの先端部に組み込まれ且つ前記レールの側面に倣うよう回動自在なシューブロックを備え
、
前記シューブロックは、
前記クランプアームの先端部にレールの長手方向と平行に延びるよう取り付けられた支持軸と、
該支持軸に回動自在に嵌装されるスリーブと、
該スリーブの外周に形成され且つ前記レールの側面に当接自在なシューと
を備え、
前記クランプアームは、
前記スリーブが回動方向へ摺動自在に嵌入される凹溝と、
前記凹溝の軸線方向中間部に、前記支持軸を支承し且つ前記スリーブに作用する軸線方向への荷重を受けるよう形成されるボス部と
を備えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の軌道走行式機械のレールクランプ装置によれば、安定した保持力を得ることができ、且つ接触面の偏摩耗を抑えて寿命延長を図り得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の軌道走行式機械のレールクランプ装置の実施例を示す要部側断面図である。
【
図2】本発明の軌道走行式機械のレールクランプ装置の実施例を示す要部正面図であって、
図1のII−II矢視図である。
【
図3】本発明の軌道走行式機械のレールクランプ装置の実施例を示す要部平断面図であって、
図1のIII−III断面図である。
【
図4】本発明の軌道走行式機械のレールクランプ装置の実施例を示す概要正面図である。
【
図10】軌道走行式機械としてのコンテナクレーンの一例を示す全体側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0017】
図1〜
図9は本発明の軌道走行式機械のレールクランプ装置の実施例であって、図中、
図10と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0018】
図4に示す如く、レール4に沿って転動自在な走行車輪7を有する走行装置8が取り付けられている軌道走行式機械としてのコンテナクレーン1のクレーン本体5の支持脚6間には、該支持脚6をつなぐようレール4に沿って延びる下部フレーム6aが設けられている。該下部フレーム6aの底面側には、クランプブラケット10が垂下され、該クランプブラケット10の下部には、レール4に沿って転動自在な車輪11aを有するクランプ台車11が取り付けられている。該クランプ台車11には、レールクランプ装置12と油圧ユニット等の流体圧ユニット13とが搭載されている。
【0019】
前記レールクランプ装置12は、
図5〜
図9に示す如く、スプリング14と、クランプアーム15と、流体圧シリンダ16とを備えている。
【0020】
前記スプリング14は、圧縮バネで構成され、
図6及び
図7に示す如く、前記クランプ台車11上に所要間隔をあけて四本、各々の軸線が上下方向へ延びるよう配設され、前記スプリング14上には、支持ボルト17及びロックナット18を介してアーム支持フレーム19が設けられている。前記アーム支持フレーム19上には、レール4と平行に延びるリンクプレート用ピンボルト20が軸支されている。
【0021】
前記クランプアーム15は、
図8に示す如く、二個一組で構成される部材であって、前記クランプ台車11にレール4と平行に延びるよう軸支されたメインピン21に対し下端部が枢着され、その上端部は、前記アーム支持フレーム19に対しリンクプレート用ピンボルト20とリンクプレート22とシリンダ支持ピンボルト23とを介して連結されている。
【0022】
前記流体圧シリンダ16は、
図7及び
図9に示す如く、前記レール4と直交する水平方向へ延びて前記シリンダ支持ピンボルト23の間に掛け渡すように配設され、前記流体圧ユニット13から給排される作動流体により伸縮するようになっている。
【0023】
図5〜
図9に示すレールクランプ装置12では、前記スプリング14の付勢力によってアーム支持フレーム19を
図8の矢印で示す如く押し上げ、リンクプレート22を介してクランプアーム15の上端部を、互いの間隔が広がるよう押し広げることによって、前記レール4の両側面をクランプアーム15の下端部で挟持するようになっている。一方、前記流体圧シリンダ16を
図9の矢印で示す如く収縮させ、前記スプリング14の付勢力に抗してクランプアーム15の上端部を、互いの間隔が狭まるよう引き縮めることによって、前記レール4の両側面のクランプアーム15による挟持を開放するようになっている。
【0024】
そして、本実施例の場合、
図1〜
図3に示す如く、前記レール4の両側面を挟持・開放自在なクランプアーム15の先端部に、前記レール4の側面に倣うよう回動自在なシューブロック30を組み込んだ点を特徴としている。
【0025】
前記シューブロック30は、支持軸31と、スリーブ32と、シュー33とを備えている。
【0026】
前記支持軸31は、前記クランプアーム15の先端部にレール4の長手方向と平行に延びるよう取り付けられている。前記支持軸31は、
図2及び
図3に示す例では、ボルトで構成され、該ボルトで構成される支持軸31の先端部にナット31aを螺合させることによって、クランプアーム15の先端部に固定されている。
【0027】
前記スリーブ32は、前記支持軸31に回動自在に嵌装されている。
【0028】
前記シュー33は、前記スリーブ32の外周に、前記レール4の側面に当接自在となるよう形成されている。前記シュー33は、前記スリーブ32と一体に形成されているが、別体としてスリーブ32に固着するようにしても良い。
【0029】
又、前記クランプアーム15は、凹溝34と、ボス部35とを備えている。
【0030】
前記凹溝34は、前記クランプアーム15の先端部に凹設され、前記スリーブ32が回動方向へ摺動自在に嵌入されるようになっている。
【0031】
前記ボス部35は、前記凹溝34の軸線方向中間部に、前記支持軸31を支承し且つ前記スリーブ32に作用する軸線方向への荷重を受けるよう形成されている。
【0032】
尚、前記スリーブ32には、
図3に示す如く、前記クランプアーム15のボス部35と係合する係合溝36が形成されている。
【0034】
前記スプリング14の付勢力によってアーム支持フレーム19を
図8の矢印で示す如く押し上げ、リンクプレート22を介してクランプアーム15の上端部を、互いの間隔が広がるよう押し広げることによって、前記レール4の両側面をクランプアーム15の下端部で挟持する際、クランプアーム15の先端部に組み込まれたシューブロック30は、レール4の側面に倣うよう回動する。
【0035】
ここで、前記シューブロック30の支持軸31に嵌装されたスリーブ32は、前記クランプアーム15の先端部にレール4の長手方向と平行に延びるよう取り付けられた支持軸31を中心として回動し、前記スリーブ32の外周に形成されたシュー33が、前記レール4の側面に追従する形で当接する。
【0036】
これにより、本実施例の場合、レール4を両側から挟み付ける方式を採用しているものの、レール4の側面の精度が低く、その幅方向における中心線から側面までの寸法に左右でばらつきが生じていたり、或いはレール4の摩耗や腐食等による断面の変形が生じていたりしたとしても、特許文献1、2に開示されているようなレールクランプ装置とは異なり、前記シュー33による挟み付けが均一に行われることから、締付力が大きく低下してしまうことがなく、充分な保持力が得られる。
【0037】
又、前記シュー33による挟み付けが均一に行われるため、レール4の側面並びにシュー33の偏摩耗が発生しにくくなり、レールクランプ装置の寿命を延長することが可能となる。
【0038】
しかも、前記スリーブ32は、クランプアーム15の凹溝34に回動方向へ摺動自在に嵌入され、前記スリーブ32に作用する軸線方向への荷重は、前記凹溝34の軸線方向中間部に形成されたボス部35によって受けることが可能となるため、単にスリーブ32の両端で軸線方向への荷重を受けるのに比べ保持力をより安定させる上で有効となる。
【0039】
こうして、安定した保持力を得ることができ、且つ接触面の偏摩耗を抑えて寿命延長を図り得る。
【0040】
尚、本発明の軌道走行式機械のレールクランプ装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、特許文献1、2に開示されたレールクランプ装置にも適用可能なこと等、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0041】
1 コンテナクレーン(軌道走行式機械)
4 レール
7 走行車輪
8 走行装置
12 レールクランプ装置
15 クランプアーム
30 シューブロック
31 支持軸
32 スリーブ
33 シュー
34 凹溝
35 ボス部