特許第6886871号(P6886871)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6886871車両内装部材の製造方法および車両内装部材製造用圧着装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886871
(24)【登録日】2021年5月19日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】車両内装部材の製造方法および車両内装部材製造用圧着装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/54 20060101AFI20210603BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   B29C65/54
   B60R13/02 Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-117015(P2017-117015)
(22)【出願日】2017年6月14日
(65)【公開番号】特開2019-1042(P2019-1042A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博英
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英人
【審査官】 北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−121613(JP,A)
【文献】 特開平03−222727(JP,A)
【文献】 特開平05−309762(JP,A)
【文献】 特開2005−124673(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0126276(US,A1)
【文献】 米国特許第05925215(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00−65/82
B29C 69/00−69/02
B29C 43/00−43/58
B60R 13/01−13/04
B60R 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元形状で成形された基材を第1型にセットし、
前記基材に対応する三次元形状で成形されると共に、該形状の成形時に形成される段状部に沿って糸で縫ってステッチ模様が形成された表皮材を、第2型にセットし、
前記第2型に設けられた係止手段を前記段状部がなす凹みに嵌め合わせて前記表皮材を位置決めし、
前記第1型と前記第2型とを閉じて、前記基材と前記表皮材とを圧着する
ことを特徴とする車両内装部材の製造方法。
【請求項2】
前記第1型と前記第2型との型閉じ完了前に、前記係止手段を前記段状部がなす凹みから退避させて、前記基材と前記表皮材とを圧着する請求項1記載の車両内装部材の製造方法。
【請求項3】
前記第1型と前記第2型との開閉方向に対して交差する方向へ進退可能な前記係止手段を、該第2型の型面から突出させて、アンダーカットとなる前記段状部がなす凹みに対して嵌め込む請求項1または2記載の車両内装部材の製造方法。
【請求項4】
前記圧着時に前記基材と前記表皮材とを接着剤で接着する請求項1〜3の何れか一項に記載の車両内装部材の製造方法。
【請求項5】
三次元形状で形成された基材に合わせた型面を有し、該型面に前記基材をセット可能な第1型と、
前記基材に対応する三次元形状で成形された表皮材に合わせて形成された型面を有し、糸で構成されたステッチ模様が設けられた前記表皮材を該型面にセット可能な第2型と、
前記第1型と前記第2型との開閉方向に対して交差する方向へ進退可能に設けられ、該第2型の型面から突出して、前記ステッチ模様の形成予定位置に沿って形成された段状部がなす凹みに嵌合可能な係止手段とを備えている
ことを特徴とする車両内装部材製造用圧着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基材と表皮材とを圧着して得られる車両内装部材の製造方法およびこれに用いる圧着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インストルメントパネル等の車両内装部材は、当該部材の三次元的に凹凸する形状を形作る比較的硬い基材と、この基材の表側に貼り合わせられ、例えば本革等に似せた比較的柔らかい表皮材とからなる複層構造にされることがある。このような車両内装部材は、基材と表皮材とを別々に成形して用意し、接着剤を塗布した基材を第1型にセットすると共に表皮材を第2型にセットし、第1型と第2型を閉じて基材と表皮材とを圧着して貼り合わせることで製造される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−121613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した方法では、表皮材の第2型へのセット位置がずれることがある。表皮材がずれた状態で基材と表皮材とを圧着すると、表皮材にしわができ、得られる車両内装部材の品質が低下してしまう。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、品質のよい車両内装部材の製造方法およびこれに用いる圧着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明の車両内装部材の製造方法は、
三次元形状で成形された基材を第1型にセットし、
前記基材に対応する三次元形状で成形されると共に、該形状の成形時に形成される段状部に沿って糸で縫ってステッチ模様が形成された表皮材を、第2型にセットし、
前記第2型に設けられた係止手段を前記段状部がなす凹みに嵌め合わせて前記表皮材を位置決めし、
前記第1型と前記第2型とを閉じて、前記基材と前記表皮材とを圧着することを要旨とする。
請求項1および請求項4に係る発明によれば、ステッチ模様と合わせて表皮材に形成される段状部の凹みと係止手段とを嵌め合わせて、表皮材を第2型に位置決めしているので、表皮材が位置ずれすることを防止できる。このように、表皮材が適切な位置に保持されたもとで、基材と表皮材とを圧着するので、表皮材におけるシワ等の不良の発生を抑えて、品質に優れた車両内装部材を得ることができる。
【0007】
請求項2に係る発明では、前記第1型と前記第2型との型閉じ完了前に、前記係止手段を前記段状部がなす凹みから退避させて、前記基材と前記表皮材とを圧着することを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、基材と表皮材とを圧着するときには、係止手段が段状部から退避しているので、係止手段により表皮材に痕が残るなどの不具合の発生を回避できる。
【0008】
請求項3に係る発明では、前記第1型と前記第2型との開閉方向に対して交差する方向へ進退可能な前記係止手段を、該第2型の型面から突出させて、アンダーカットとなる前記段状部がなす凹みに対して嵌め込むことを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、表皮材に形成される段状部の凹みと係止手段との嵌め合わせによって、表皮材の位置ずれをより適切に防止できる。
【0009】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項4に係る発明の圧着装置は、
三次元形状で形成された基材に合わせた型面を有し、該型面に前記基材をセット可能な第1型と、
前記基材に対応する三次元形状で成形された表皮材に合わせて形成された型面を有し、糸で構成されたステッチ模様が設けられた前記表皮材を該型面にセット可能な第2型と、
前記第1型と前記第2型との開閉方向に対して交差する方向へ進退可能に設けられ、該第2型の型面から突出して、前記ステッチ模様の形成予定位置に沿って形成された段状部がなす凹みに嵌合可能な係止手段とを備えていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る車両内装部材の製造方法によれば、品質のよい車両内装部材を得ることができる。本発明に係る圧着装置によれば、品質のよい車両内装部材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の好適な実施例に係る車両内装部材の一部を破断して示す概略斜視図である。
図2】実施例の圧着装置による車両内装部材の製造工程を示す説明図であり、基材および表皮材をセットする前である。
図3】実施例の圧着装置による車両内装部材の製造工程を示す説明図であり、基材および表皮材をセットした状況を示す。
図4】実施例の圧着装置による車両内装部材の製造工程を示す説明図であり、基材および表皮材を圧着している状況を示す。
図5】実施例の圧着装置による車両内装部材の製造工程を示す説明図であり、型開きした状況を示す。
図6】実施例の製造工程を経て得られた車両内装部材を示す断面図であり、(a)は表皮材の周縁部分処理前を示し、(b)は表皮材の周縁部分処理後を示す。
図7】変更例の車両内装部材の製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係る車両内装部材の製造方法および圧着装置につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。車両内装部材としては、インストルメントパネル、フロアコンソール、ドアトリム、ピラーガーニッシュ等、車両の車室に設置されるものが挙げられる。なお、図では、拡大図を除いてステッチ模様を省略している。
【実施例】
【0013】
図1に示すように、実施例に係る製造方法で製造される車両内装部材10は、該車両内装部材10の土台となる基材12と、この基材12の表側に設けられ、該車両内装部材10の意匠面を構成する表皮材14とを備えている。車両内装部材10は、概略的な全体形状が、上部および下部と比べて上下方向中央部を車室側に膨らませるように湾曲させた三次元形状で形成されている。車両内装部材10は、基材12と表皮材14とが互いに対応する形状で形成されて、基材12の表面と表皮材14の裏面とを接着して一体化することで、厚み方向に重なる複層構造の板状体として構成される。
【0014】
図1に示すように、車両内装部材10は、表皮材14を糸で縫うことで意匠面に現れる複数の縫い目で構成されるステッチ模様16が、左右方向に延在するように設けられている。また、車両内装部材10には、縫い目が左右に並ぶステッチ模様16に沿って延在する段状部18が設けられ、2枚の本革等の皮状物を縫製した際に現れる皮状物材同士の繋ぎ目を当該段状部18によって表現している。なお、基材12および表皮材14には、段状部18に対応して形状がそれぞれ設けられており、表皮材14の段状部18がなす凹みがアンダーカット形状になっている。車両内装部材10は、実際に縫製して得られるステッチ模様16と成形で疑似的に設けられた段状部18によって、本物に近い風合いを出すことを狙っている。なお、実施例のステッチ模様16は、シングルステッチである。
【0015】
図1および図2に示すように、基材12は、得るべき車両内装部材10の形状に応じて、上部および下部と比べて上下方向中央部を車室側に膨らませるように湾曲させた三次元形状で基本的に形成されている。基材12は、車両内装部材10の形状を保持し得る剛性を有する比較的硬質な樹脂成形品であり、車両内装部材10において車体側に配置される。基材12は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリカーボネート/アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(PC/ABS)などの熱可塑性樹脂で構成される。
【0016】
図1および図2に示すように、表皮材14は、得るべき車両内装部材10の形状に応じて、上部および下部と比べて上下方向中央部を車室側に膨らませるように湾曲させた三次元形状で基本的に形成されている。表皮材14は、基材12と比べて軟質な樹脂成形品であり、車両内装部材10において車室側に配置される。また、表皮材14は、可撓性を有している。
【0017】
図1に示すように、実施例の表皮材14は、車両内装部材10の表面側を構成する表皮層20と、この表皮層20の裏側に設けられ、基材12と接合されるクッション層22とを有する複層構造になっている。表皮層20は、可撓性を有するソリッドの合成樹脂で構成され、クッション層22は、弾力性を有する発泡体で構成されている。表皮層20上で発泡体を発泡成形することで表皮層20とクッション層22とを接合したり、シート状の表皮層20とシート状のクッション層22とを接着剤やフレームラミネーション等で接合したりすること等によって、表皮層20とクッション層22とが積層化される。実施例の表皮層20は、熱可塑性エラストマーから形成されている。表皮層20をなす熱可塑性エラストマーとしては、 オレフィン系エラストマー(TPO)や塩化ビニール系エラストマーやスチレン系エラストマーなどがあるが、この中でも、ポリプロピレン(PP)等のオレフィン系樹脂にエチレン‐プロピレンゴム(EPDM,EPM)等のゴムを分散して得られるオレフィン系エラストマーが好ましい。クッション層22としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系材料、ポリウレタンあるいはスチレンなどを発泡させたものがあるが、その中でもポリエチレン発泡体(PEF)が好ましい。
【0018】
図2図5に示すように、実施例に係る製造方法で用いる圧着装置30は、基材12をセット可能な第1型32と、表皮材14をセット可能な第2型34とを備え、第1型32と第2型34とが相対的に進退移動可能に構成されている。実施例では、第1型32の下側に第2型34が配置され、第1型32を第2型34に対して進退させて、型閉じおよび型開きを行う。
【0019】
図2図5に示すように、第1型32は、基材12の裏側の凹形状に合わせて凸状に形成された基材セット部(型面)36を有し、基材セット部36に基材12を嵌め合わせて、基材12の表側を第2型34に向けた状態でセット可能になっている。第2型34は、表皮材14の表側に向けた凸形状に合わせて凹状に形成された表皮材セット部(型面)38を有し、表皮材セット部38に表皮材14を嵌め合わせて、表皮材14の裏側を第1型32に向けた状態でセット可能になっている。また、第2型34は、真空吸引等によって表皮材14のセット状態を保持する負圧保持手段(図示せず)を有している。実施例の第2型34は、表皮材セット部38に開口する吸引孔から空気を吸引して、表皮材セット部38にセットされた表皮材14の本体部分14aとの間に負圧を発生させる負圧保持手段によって、本体部分14aを表皮材セット部38の型面に引きつけて保持している。
【0020】
図2図5に示すように、第1型32は、凸形状の基材セット部36の周り(外側)に設けられた基材面部40を備えている。また、第2型34は、凹形状の表皮材セット部38の周り(外側)に設けられた表皮材面部42を備え、基材面部40と表皮材面部42とが圧着装置30を閉じた際に相対する。第2型34は、表皮材14において表側に露出する部分となる本体部分14aを表皮材セット部38で支持し、表皮材14において本体部分14aの外側に延びる周縁部分14bを表皮材面部42で支持するようになっている。第2型34には、表皮材14の段状部18に対応して、凹形状の表皮材セット部38に凸状部43が形成されている。凸状部43は、表皮材セット部38の底側から開口側へ向けて延在する縦型面が、第1型32と第2型34との開閉方向に沿って延在している。
【0021】
図2図5に示すように、圧着装置30は、第2型34に表皮材セット部38の凸状部43に対応して設けられ、表皮材セット部38にセットされた表皮材14の段状部18がなす凹みに嵌合可能な係止手段44を備えている。係止手段44は、表皮材セット部38の型面から突出する突出状態(図3)と、第2型34に収納されて該型面から突出しないように退避した退避状態(図2および図4)とに進退移動可能に設けられている。係止手段44を進退させる手段としては、シリンダ等の駆動手段や、第1型32と第2型34との開閉に機械的にリンクする手段などが用いられる。
【0022】
図2図5に示すように、係止手段44は、板面が自身の進退方向に延在する板状に形成されて、表皮材セット部38の型面から出没する先端面の長手が、凸状部43の頂に沿って延在している。また、係止手段44は、表皮材14の段状部18がなす凹みに嵌まる先端面が、半円状(実施例)等の湾曲した滑らかな形状や、角が面取りされた平面などで形成されている。第2型34には、表皮材セット部38にセットされた表皮材14の段状部18がなす凹みの全長または一部範囲に、1つまたは複数の係止手段44が対応するように設けられる。係止手段44は、第1型32と第2型34との開閉方向に対して交差する方向へ進退移動するように構成される。表皮材セット部38にセットされた表皮材14は、段状部18がなす凹みが第1型32と第2型34との開閉方向に対してアンダーカットになるが、表皮材セット部38の凸状部43は、開閉方向に沿って突出しており、第2型34への表皮材14の着脱に際して、段状部18に凸状部43が引っ掛からないようになっている。係止手段44は、段状部18のアンダーカットとなる凹みの開口側から底側へ向けて突出し(図3)、当該凹みの開口から抜けるように退避する(図4)。
【0023】
次に、前述した圧着装置30を用いた実施例に係る製造方法について説明する。射出成形等の成形方法により、所定の三次元形状に成形された基材12を用意する(図2)。また、真空成形等の成形方法により、所定の三次元形状に成形された表皮材14を得て、この表皮材14の所定箇所をミシンで縫うことでステッチ模様16を形成しておく(図2)。このように、表皮材14は、所定形状に賦形すると共にステッチ模様16が形成されたものが用意される。ここで、基材12は、得るべき車両内装部材10の外形形状に合わせて基本的に形成されるのに対して、表皮材14は、基材12に被さる本体部分14aから周縁部分14bが四方に延出するように、基材12よりも大きく形成される。
【0024】
表側の面に接着剤を塗布した基材12を、裏側の面が基材セット部36に面するように該基材セット部36に嵌め合わせて、第1型32にセットする(図3)。また、表皮材14については、本体部分14aの表側の面が型面に面するように、本体部分14aを表皮材セット部38に嵌め合わせると共に、表皮材セット部38からはみ出る周縁部分14bを表皮材面部42に配置する(図3)。
【0025】
退避状態にあった係止手段44を突出させて、表皮材セット部38に配置された表皮材14の段状部18がなす凹みに係止手段44を嵌め合わせる(図3)。なお、係止手段44を突出状態にしたもとで、表皮材14を第2型34に配置してもよい。段状部18の凹みの底が係止手段44の先端面に近づく方向(図3の矢印方向)へ表皮材14を引っ張ることで、該凹みが係止手段44に引っ掛かって、表皮材14が第2型34に対して位置決めされる。次に、第1型32を第2型34に近づけるように移動させて、第1型32と第2型34とを閉じる(図4)。第1型32と第2型34との型閉じ完了前に、係止手段44を段状部18がなす凹みから退避させ、係止手段44を退避状態とした後に、基材12と表皮材14とを圧着する。このように、係止手段44は、型開きから型閉じ途中まで突出状態にあり、型閉じしたときに退避状態にある。
【0026】
前記第2型34において負圧保持手段による表皮材14の保持開始のタイミングは、本体部分14aを表皮材セット部38にセットした後や、係止手段44で段状部18を係止した以降など、基材12と表皮材14の本体部分14aとが圧着される前の適宜時期を選択可能である。なお、実施例では、本体部分14aを表皮材セット部38にセットした後、型閉じを開始する前に、第2型34において負圧保持手段による表皮材14の保持を開始し、型閉じするまでに亘って負圧保持手段による表皮材14の保持を維持している。
【0027】
基材12と表皮材14の本体部分14aとを圧着した後に、第1型32と第2型34とを開き(図5)、得られた圧着物を取り出し(図6(a))、表皮材14の周縁部分14bを基材12の裏側に巻き込んで接着したり、表皮材14の周縁部分14bを切断したりするなど、所定の後処理を施すことで、車両内装部材10が得られる(図6(b))。
【0028】
前述したように、表皮材14を第2型34にセットする際に、ステッチ模様16と合わせて表皮材14に形成される段状部18の凹みと、第2型34に設けた係止手段44とを嵌め合わせて、表皮材14を第2型34に位置決めしている。これにより、表皮材が適正なセット位置からずれることを防止できる。このように、表皮材14が適切な位置に保持されたもとで、基材12と表皮材14とを圧着するので、表皮材14におけるシワ等の不良の発生を抑えて、品質に優れた車両内装部材10を得ることができる。
【0029】
表皮材14の段状部18は、ステッチ模様16のために設けられる形状であり、この段状部18を利用して位置決めしているので、表皮材14の形状を変更する必要はない。しかも、段状部18は、本物に近づけるために凹みがアンダーカットになっているが、係止手段44を型面から突出させているので、係止手段44により段状部18を適切に係止できる。また、基材12と表皮材14とを圧着して得られた車両内装部材10を第2型34から取り外すときは、係止手段44を退避させることで、係止手段44および凸状部43が段状部18に引っ掛かることが回避され、表皮材14を傷つけることを防止できる。そして、基材12と表皮材14とを圧着するときには、係止手段44が段状部18の凹みから退避しているので、圧着時に係止手段44に押されて、表皮材14に痕が残るなどの不具合の発生を回避できる。
【0030】
(変更例)
前述した構成に限定されず、例えば以下のようにも変更することができる。
【0031】
(1)図7に示すように、第2型34の表皮材面部42にシール材48を固定し、表皮材14を第2型34にセットする際に、表皮材14の周縁部分14bをシール材48に重ねるように配置してもよい。シール材48は、接着剤や両面テープ等によって固定される。シール材48は、低通気性で、かつ弾力性を有する材料で、表皮材14と略同じ硬さまたは表皮材14よりも柔らかくなるように構成される。シール材48を構成する材料としては、例えば、独立気泡構造を有するゴムスポンジ、独立気泡構造を有するポリエチレンフォーム、低通気性のウレタンフォームなどを用いることができる。
【0032】
前記表皮材14を第2型34にセッ卜すると、シール材48に表皮材14の周縁部分14bが重ねられ、柔軟で弾力性を有するシール材48によって、表皮材14の周縁部分14bと第2型34の表皮材面部42との間が隙間なく埋められる。これにより、第2型34の負圧保持手段により表皮材14を吸引したとき、表皮材14の本体部分14aと表皮材セット部38との密着性を向上させることが可能となり、表皮材14におけるシワの発生を抑えることが可能となる。このように、三次元形状の基材12と該基材12に対応した形状の表皮材14とを第1型32と第2型34とにセットし、表皮材14を真空吸引しながら型閉じして、表皮材14を基材12に接着する際に、表皮材14を第2型34にセットするにあたり、表皮材14の周縁部分14bを第2型34の表皮材面部42に重ねると共に、その表皮材面部42と表皮材14の周縁部分14bとの間をシール材48によりシールしている。なお、表皮材14の周縁部分14bには、シール材48への押し付けに起因する凹凸が形成されるが、この凹凸が形成された部分は、切断によって除去されるか、または基材12の裏側に巻き込まれる。従って、製造過程でシール材48に起因する凹凸が表皮材14の周縁部分14bに形成されても、その凹凸が使用者の目に付くことはない。
【0033】
(2)圧着装置は、実施例に限らず、第1型と第2型との配置が逆であっても、横方向または斜め方向に第1型と第2型とが配置されてもよい。また、第2型を移動させて圧着装置を開閉してもよい。
(3)基材ではなく、表皮材に接着剤を塗布しておいても、基材および表皮材の両方に接着剤を塗布してもよい。
(4)係止手段は、実施例のように板状に限らず、表皮材における段状部がなす凹みと係止可能な棒状など、適宜形状を採用し得る。
(5)ステッチ模様としては、シングルステッチ、ダブルステッチなど様々な形態に対応できる。
【符号の説明】
【0034】
12 基材,14 表皮材,16 ステッチ模様,18 段状部,32 第1型,
34 第2型,36 基材セット部(型面),38 表皮材セット部(型面),44 係止手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7