(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態の縦まくらぎ構造1と、この縦まくらぎ構造1を用いた車両用軌道100の概略構成を示す斜視図であり、
図4はその断面図である。
図2は縦まくらぎ本体10と台座4,4の平面図であり、
図3は歩行板20の斜視図である。
【0017】
本実施形態の縦まくらぎ構造1は、防振材式のフローティングラダー型まくらぎ構造であり、
図1に示すように、一対のレール2の下側に平行に設けられた一対の縦梁(まくらぎ)11,11及び一対の縦梁11,11を連結する継材12を有する縦まくらぎ本体10と、縦梁11の下面側に長手方向に間隔をおいて設けられた複数の防振材16(
図4参照)を備えて構成される。一対の縦梁11,11は、取付片13が、互いの対向側(内側)に突出して設けられている。この取付片13には、着脱可能に歩行板20が取付けられる。
【0018】
本実施形態の車両用軌道100は、L型台座防振材式のフローティングラダー軌道であり、コンクリート製の路盤3上に設けられた側面視L字形の一対の台座4,4と、この一対の台座4,4上に敷設された複数の縦まくらぎ構造1と、これら複数の縦まくらぎ構造1の一対の縦梁11,11上に敷設された一対のレール2,2とを備えて構成される。各レール2,2は、板バネ等の締結部材5によって縦梁11,11に固定されている。
【0019】
以下、縦まくらぎ構造1と車両用軌道100の各構成部品の詳細を、
図1〜
図4に基づいて説明する。この説明に際して、本明細書では、レール2を基準として、レール2の長手方向(長さ方向)を長手方向、レール2の短手方向(幅方向)を幅方向、上下方向(高さ方向)を高さ方向という。したがって、縦梁11、継材12、歩行板20などの補助部材、その他の部材に関しても、各部位の長短に関わらず、敷設した状態を基準として、レール2の長手方向と平行な方向を、当該部材の長手方向とし、レール2の幅方向と平行な方向を、当該部材の幅方向とし、レール2の高さ方向と平行な方向を、当該部材の高さ方向とする。また、一対のレール2,2が対向する方向を内側、その反対方向(外方向)を外側とする。
【0020】
縦まくらぎ本体10の縦梁11は、所定の軌間間隔を介在して設けられた一対のレール2の下側に、レール2に沿ってそれぞれ設けられるものであり、所定の間隔を介在して一対設けられている。一対の縦梁11,11は、レール2,2を支持することで、鉄道車両の荷重を分散して、軌道狂いを抑制する機能を有している。各縦梁11は、PC製であり、適度の曲げ剛性を確保するため、幅方向の長さよりも高さが比較的低い矩形状の断面形状を呈している。
【0021】
また、各縦梁11,11の内側には、複数の取付片13,13,・・・が長手方向に間隔をおいて設けられている。本実施形態では、各縦梁11,11に、それぞれ10個の取付片13を設けているが、取付片13の個数が10個に限定されるものではなく、使用目的や縦梁11の長さ等に応じて適宜の個数とすることができる。
【0022】
各取付片13は、本実施形態では鋼材製であるが、これに限定されるものではない。各取付片13は、棒状の基部13aが所定長さで縦梁11のPC内に埋設され、各取付片13と縦梁11とが一体化されている。縦梁11から突出した他端部には、上下方向に貫通する取付穴13bが開口されている。なお、取付穴13bは、長手方向に貫通するように開口されていてもよく、取付片13に取付ける装置や部材、使用目的に応じて適宜の方向に開口することができる。
【0023】
また、各縦梁11,11には、レール2を固定する締結部材5を取り付けるための締結穴14が、長手方向に複数設けられているとともに、各縦梁11の外側には、位置決め用の突起部15が外側に突出して設けられている。
【0024】
継材12は、一対の縦梁11,11を連結することによって、レール2,2の軌間間隔を保持する機能を有している。継材12は、一対の縦梁11,11に対して直角方向に設けられた鋼管により構成され、
図1、
図2に示すように、一対の縦梁11の長手方向に所定間隔をおいて複数本設けられている。継材12は、両端が各縦梁11,11のPC内に埋設され、一対の縦梁11,11と一体化されている。
【0025】
本実施形態では、各縦梁11,11の長手方向の長さを約620mmとし、その中央と、両端部側に、約250mmの間隔をおいて3本の継材12を連結している。縦梁11の先端から端部側の継材12までの距離は、約60mmとなっている。
【0026】
歩行板20は、縦まくらぎ構造1や車両用軌道100の敷設作業や保守作業を容易とするために、取付けられる補助部材の一つである。ここで、フローティングラダー軌道の維持管理のための保守作業では、作業者が一対の縦梁11,11の内側の軌道内を歩行する。この歩行の際には、作業者は縦梁に垂直に連結された複数の継材12を跨ぐ必要がある。保守作業などは夜間に行われるのが一般的であり、複数の継材12が連続的に配置されている軌道での作業は、作業者の体力消耗の一因になるほか、作業者の円滑な歩行や作業に影響するおそれもある。
【0027】
そこで、本実施形態では、一対の縦梁11,11と継材12とで区画される2つの開口部S1をそれぞれ塞ぎ、作業者の歩行領域を確保するための歩行板20を、一対の縦梁11,11の取付片13に着脱自在に取付けている。
【0028】
歩行板20は、作業者が歩行する平面視矩形状で平坦な本体部21と、この本体部21の幅方向の両側に突出する連結片22,22とを有している。本実施形態では、各開口部S1を塞ぐことができるように、本体部21の幅方向の長さを、一対の縦梁11,11の内側の間隔よりもやや短く、長手方向の長さを、中央と端部の継材12の間隔とほぼ同等か、やや短くしている。また、作業者が歩行時に継材12を跨いだり、つまずいたりすることなく、軌道内を容易に歩行できるように、取付片13に取付けたときの本体部21の上面の高さを、継材12の高さとほぼ同等か、やや高くしている。また、本体部21の厚み(高さ)は、縦梁11の厚み(高さ)とほぼ同等か、やや薄くしている。
【0029】
なお、本実施形態では、中央と両端部の継材12との間隔が約250mmであるため、本体部21の長手方向の長さを200mm〜250mmとすることが望ましく、250mmが最も望ましい。このような長さとすることで、長手方向において継材12間を本体部21で良好に塞ぐことができる。
【0030】
また、各縦梁11の中央の継材12と両端部の継材12との間には、4つの取付片13を設けているため、歩行板20にも4対の連結片22,22を設けている。しかし、この構成に限定されるものではなく、一対の縦梁11,11に歩行板20を取付けて開口部S1を塞ぐことができれば、三対以下としてもよいし、左右同じ位置に対で設けなくても、千鳥配置としてもよい。
【0031】
各連結片22は、本体部21の側面から幅方向に向けて突出する基部22aと、この基部22aから下方に向けて突出する係合突部22bとを有している。係合突部22bは、外周に螺溝が設けられたボルト形状を呈しており、縦梁11の取付片13の取付穴13bに挿通可能となっている。この挿通によって取付穴13bから下方に突出した係合突部22bの外周に、ナット23を締結することで、連結片22と取付片13とが連結され、一対の縦梁11,11に歩行板20を取付けることができる。なお、一対の縦梁11,11と歩行板20との取付手段が、この形態に限定されるものではない。例えば、連結片22にも係合穴を設け、この連結片22の係合穴と取付片13の係合穴13bに係合突部としてのボルトを挿入し、ナットで締結してもよい。この他にも、公知の適宜の連結手段で連結することができる。
【0032】
また、車両用軌道100では、長手方向に縦まくらぎ構造1が複数敷設されているため、長手方向で隣接する端部側の継材12間にも、これらで区画される開口部S2が設けられる。この開口部S2を構成する隣接する端部側の継材12,12の長手方向の間隔は、中央の継材12と端部の継材12との間隔よりも短い(本実施形態では約120mm)。そのため、本実施形態では、開口部S1に配置する歩行板20よりも、短尺な歩行板20Aを備え、縦梁11の端部側の開口部S2も塞ぐことができるようにしている。
【0033】
この歩行板20Aは、平面視矩形状の平坦な本体部21の両側に、長手方向で隣接する一方の縦梁11,11の取付片13に連結する一対の連結片22,22と、他方の縦梁11,11の取付片13に連結する二対の連結片22,22とを有している。
【0034】
本体部21の長手方向の長さとしては、100mm〜120mmが望ましく、120mmが最も望ましい。このような長さとすることで、長手方向において隣接する縦梁11,11の端部側を、本体部21で良好に塞ぐことができる。なお、必ずしも2種類の歩行板20,20Aを備える必要はなく、短尺な歩行板20Aのみを備え、開口部S1に長手方向に2つの歩行板20Aを設置してもよい。
【0035】
また、歩行板20,20Aの本体部21の材料としては、例えば、樹脂、木材、鋼材、鉄筋コンクリート(RC)等が挙げられる。このような材料を用いることで、製造が容易であり、耐荷重性や耐腐食性を向上させることができる。樹脂や鋼材では、軽量で持ち運びが容易となる。木材やRCでは、より頑強となる。なお、本体部21の材料が、これらに限定されるものではなく、他の材料を用いることもできる。
【0036】
連結片22の材料としては、例えば、鋼材が好適に挙げられるが、これに限定されるものではない。本体部21が樹脂製又はRC製の場合は、鋼材製の長尺な基部22aを本体部21内に埋設して本体部21と連結片22とを一体化することができる。なお、本体部21が樹脂の場合は、連結片22も樹脂で一体に成形することもできる。本体部21が鋼材の場合は、鋼材製の短尺な基部22aを溶接等によって本体部21の側面に固定し、本体部21と一対の連結片22,22とを一体化することができる。本体部21が木材の場合は、鋼材製の連結片22を、木材に打込んだり、ネジなどの締結部材で固定したりして一体化することができる。
【0037】
また、本実施形態では、
図4に示すように、本体部21の厚みを縦梁11の厚みと同等又は薄くしているため、本体部21と路盤3との間に間隙が介在する。間隙が介在していても、前述のような材料製で、複数対の連結片22によって縦梁11,11に取付けた歩行板20,20Aは、耐荷重性に優れているため、作業者の歩行によって変形等を生じにくい。さらに本実施形態では、より耐荷重性を向上させるため、歩行板20,20Aと路盤3との間に、ポリウレタン製の緩衝材24を設けている。この緩衝材24によって、歩行板20,20Aに作用する荷重を吸収することができる。
【0038】
また、変形例として、本体部21の下面を路盤3に接触するように、本体部21の厚みを厚くすることもできる。これにより、本体部21の材料は多く必要となるが、緩衝材24を敷設しなくても、歩行板20,20Aの耐荷重性を向上させることができる。なお、緩衝材24の長手方向の長さは、歩行板20,20Aと同じ長さとしてもよいし、より長尺な緩衝材24を用いて、継材12の下方に、複数の継材12を跨いで敷設してもよい。
【0039】
台座4,4は、縦まくらぎ構造1の縦梁11,11を支持する機能を有し、路盤3上に、軌道の全長にわたって敷設されている。各台座4,4は、モルタル、コンクリートなどによって構成される。台座4,4は、縦梁11,11の下側に水平に設けられる水平部4aと、縦梁11,11の外側に、垂直に設けられる垂直部4bとを備え、
図4に示すように、側面視略L字形を呈している。また、垂直部4bには、縦梁11の突起部15を挿入する切欠き部4cが設けられている。
【0040】
図4に示すように、水平部4aと縦梁11の下面との間には、長手方向に間隔をおいて複数の防振材16が設けられている。このように防振材16を設けることで、縦まくらぎ本体10は、台座4,4から浮いた状態となっている。本実施形態では、防振材16は、ポリウレタン製としているが、これに限定されるものではなく、ポリウレタン以外にも、ゴムなどの他の弾性部材を使用することができる。
【0041】
また、
図1、
図4に示すように、垂直部4bと縦梁11の側面との間には、長手方向に間隔をおいて複数の緩衝材17aが設けられている。さらに、縦梁11の突起部15の外側面と台座4の切欠き部4cの内側面との間にも、緩衝材17bが設けられている。これらの緩衝部材17a,17bも、本実施形態ではポリウレタン製としているが、ポリウレタン以外の弾性部材を使用することもできる。
【0042】
レール2上を鉄道車両が走行するときに、車輪からの上下方向の振動は防振材16によって吸収される。また、左右方向(幅方向)の振動は緩衝材17aによって吸収され、前後方向(長手方向)の振動は、緩衝材17bによって吸収される。
【0043】
また、鉄道車両の走行によって、各縦梁11,11には各レール2,2を介して長手方向への力が作用するが、各縦梁11,11の突起部15と台座4,4の切欠き部4cとの係合によって、長手方向への縦梁11,11の位置ずれを抑制することができる。
【0044】
次に、上述のような本実施形態の縦まくらぎ構造1及び車両用軌道100の施工方法の一手順を説明する。
【0045】
まず、工場で、一対の縦梁11,11を継材12で連結して縦まくらぎ本体10を製造する。これとは別体に、歩行板20,20Aを製造する。縦まくらぎ本体10、歩行板20,20A、その他の構成部品などを、敷設現場に運ぶ。
【0046】
コンクリート製の路盤3上に、一対(短尺の場合は複数対)の台座4,4を軌道の全長にわたって敷設する。各台座4,4の水平部4aの上面に、長手方向に間隔をおいて複数の防振材16を設ける。また、垂直部4bの内側面に、長手方向に間隔をおいて複数の緩衝材17aを設けるとともに、切欠き部4cの内側面に、緩衝材17bを設ける。
【0047】
そして、各台座4,4上に、長手方向に沿って複数の縦まくらぎ本体10を敷設する。このとき、例えば縦まくらぎ本体10をクレーンで吊り下げて敷設する場合、縦梁11,11の取付片13にワイヤーを介して又は直接にフックを掛けて吊り下げてもよい。このように、取付片13の異なる使用例として、取付片13に、フック等の縦まくらぎ本体10の運搬、敷設用の部材を取付けて使用することができ、運搬作業や敷設作業をより容易かつ効率的に行うことが可能となる。
【0048】
縦まくらぎ本体10の敷設が完了したら、縦梁11,11上にレール2,2を敷設し、締結部材5によって固定する。次に、縦梁11,11の内側であって路盤3上に、緩衝材24を敷設する。なお、緩衝材24が長尺である場合は、縦まくらぎ本体10を敷設する前に、緩衝材24を路盤3上に敷設してもよい。
【0049】
そして、各縦まくらぎ本体10の一対の縦梁11,11に、歩行板20,20Aを取付ける。このとき、歩行板20,20Aの連結片22,22の係合突部22bを、各縦梁11,11の取付片13の取付穴13bに挿通させる。これにより、歩行板20,20Aを縦梁11,11に容易に取付けることができる。そして、取付穴13bから下方に突出した係合突部22bの外周にナット23を締結することで、縦梁11,11に歩行板20,20Aを強固に取付けることができ、鉄道車両の走行時の風圧等による歩行板20,20Aのガタツキや離脱等を抑制することができる。なお、RC製の本体部21を用いるなど、重量のある歩行板20,20Aとしたときは、必ずしもナット23を締結しなくても、耐風圧性を得ることができる。
【0050】
これにより、一対の縦梁11,11の内側の開口部S1と、縦梁11,11の両端部側の開口部S2とが、それぞれ歩行板20,20Aによって塞がれるとともに、軌道内に作業者が歩行可能な歩行路が形成される。特に、連結片22を、取付片13の上面に重ねた構成とすることで、作業者の歩行によって、歩行板20,20Aに作用する荷重を、連結片22と取付片13を介して縦梁11,11や台座4,4で受けることができる。
【0051】
以上により、縦まくらぎ構造1及び車両用軌道100を施工することができる。そして、保守作業等の際には、作業者は縦梁11,11間に取付けられた歩行板20,20Aを歩行することで、継材12を跨いだり、つまずいたりすることなく、より円滑かつより容易に歩行や作業をすることができ、作業効率を向上させることができる。
【0052】
なお、本実施形態では、縦梁11,11への歩行板20,20Aの取付けを、レール2,2の敷設後に行っているが、これに限定されるものではなく、レール2,2の敷設前に行うこともできる。この場合、開口部S1,S2が歩行板20,20Aによって塞がれ、かつ作業者が歩行板20,20A上を歩行することができ、作業者は、レール2,2の敷設作業もより容易かつより円滑に行うことができる。
【0053】
また、歩行板20,20Aは、縦梁11,11に対して着脱自在であるため、敷設作業や保守作業の際に取付け、これらの作業が終了したら、速やかに取り外すこともできる。取付片13と連結片22との連結と連結解除も、取付穴13bへの係合突部22bの挿抜によって、簡単に行うことができる。
【0054】
次に、第1の実施形態の変形例、すなわち、縦梁11の取付片13に他の部材や装置を取付けた態様について、図面を用いて説明する。
【0055】
(変形例1)
変形例1では、
図5、
図6に示すように、一対の縦梁11,11に吸音板30を着脱自在に取付けている。
図5は吸音板30の斜視図であり、
図6は、この吸音板30を取付けた縦まくらぎ構造1と車両用軌道100の断面図である。
【0056】
吸音板30は、鉄道車両の走行時の振動等によって発生する騒音を吸収する機能を有している。
図5、
図6に示すように、吸音板30は、平面視矩形状の本体部31と、本体部31の両側から幅方向に突出する連結片32とを有している。本体部31は、ポリウレタン等の弾性部材製であり、取付片13に吸音板30を取付けたときに、
図6に示すように、本体部31の下面が路盤3に接触し、上面が縦梁11,11の上面とほぼ同じか、やや低くなるような高さとなっている。
【0057】
また、本体部31の長手方向の長さは、開口部S1を塞ぐことができるように、継材12,12の間隔とほぼ同じ(具体的には、歩行板20と同様に、200mm〜250mm)とするのが望ましい。しかし、作業者の歩行に用いるのではなく、鉄道車両走行時の騒音吸収に用いるものであるため、必ずしも開口部S1全体を塞ぐ必要はなく、継材12,12の間隔よりも短尺としてもよい。
【0058】
連結片32は、鋼材や樹脂等からなり、本体部31に固定される基部32aと、基部32aから下方に突出するボルト状の係合突部32bとを有している。この構成により、台座4,4上に敷設された縦梁11,11の取付片13の取付穴13aに、上方から係合突部32bを挿入することで、縦梁11,11に吸音板30を容易に取付けることができる。この場合も、より強固な取付けを可能とするため、係合突部32bの外周にナット33を締結している。
【0059】
なお、第1の実施形態の歩行板20Aと同様に、長手方向に隣接する縦梁11,11の端部側の継材12,12間の開口部S2にも設置できるように、開口部S1に設置する吸音板30よりも長手方向に短尺な吸音板を用いてもよい。また、短尺な吸音板を開口部S1に2つ並べて設置してもよい。
【0060】
(変形例2)
変形例2では、
図7に示すように、縦梁11,11をリフトアップする昇降部材としてのリフトアップボルト40を、取付片13に取付けている。
図7(a)はリフトアップボルト40を取付けた取付片13の近傍の一部拡大斜視図であり、
図7(b)はリフトアップボルトの締結によって、台座4から縦梁11の端部を持ち上げた状態を示す端面図である。なお、
図7では、レール2や締結部材5を省略している。
【0061】
この変形例2では、
図7(a)に示すように、路盤3上に取付片13の取付穴13bにリフトアップボルト40を挿入する。なお、取付穴13bの内周には螺溝が設けられているものとする。そして、リフトアップボルト40を締め付けることで、取付片13に対してリフトアップボルト40が下降し、その先端が路盤3に接触する。この状態で、さらにリフトアップボルト40を締め付けることで、その反力で
図7(b)に示すように縦梁11が上昇して台座4から浮き上がる。
【0062】
例えば、車両用軌道100の保守作業のときに、上述のような工程で、縦梁11のリフトアップを行う。その後、縦梁11と台座4との間に設けた防振材16、緩衝部材17a,17bの交換を行うなど、保守作業を容易かつ効率的に行うことができる。
【0063】
なお、保守作業時に限定されるものではなく、縦まくらぎ構造1及び車両用軌道100の施工作業の際に、取付片13にリフトアップボルト40を取付けて、縦梁11のリフトアップを行ってもよい。これにより、施工作業を容易かつ効率的に行うことができる。また、リフトアップボルト40を取付ける取付片13も、縦梁11の端部側に限定されるものではなく、縦梁11に設けられた複数の取付片13の中から、適宜の数の適宜のものを選択して、リフトアップボルト40を取付けることができる。
【0064】
また、リフトアップに用いるだけでなく、縦梁11の高さ調整などに用いることができる。例えば、適宜の位置の取付片13にリフトアップボルト40を、その先端が路盤3に接触するように取付ける。そして、取付穴13bへのリフトアップボルト40の挿入量を調整することで、縦梁11や台座4、防振材16などの製造誤差や摩耗などによる縦梁11のガタツキを抑制することができる。
【0065】
(変形例3)
変形例3では、
図8に示すように、自動列車停止装置(ATS)の地上子50を取付片13に取付けている。ATSは、レール2に沿って地上側に設けられた地上子50から、鉄道車両に設けられた車上子を介して信号を受信し、この受信した信号から得られる情報に基づいて、警報の発報や、列車のブレーキ装置の動作制御を行う装置である。
【0066】
変形例3では、地上子50に、取付片13に取付ける連結片51を突出している。この連結片51は、地上子50に一体に設けてよいし、地上子50を取付ける金具の連結片を利用してもよい。この連結片51も、歩行板20の連結片22等と同様に、基部51aと、基部51aから下方に突出し、取付片13の取付穴13bに挿入する係合突部51bを設けた構成とすることができる。そして、取付穴13bに挿入した係合突部51に、ナット等の締結部材を締結して固定する。なお、取付片13に取付ける装置が、ATSの地上子50に限定されるものではなく、車両用軌道100内に設置する適宜の装置やその構成部品を取付けることができる。
【0067】
ここで、従来は地上子を専用の取付金具や取付部材を用いて、レール2等に取付けており、取付け作業が容易ではなかった。これに対して、本実施形態では、縦梁11に取付片13を設けたことで、ATSなど、鉄道車両の走行の制御、走行状態の監視や検出などを行う装置や部品の取付け先を提供することができる。そのため、専用金具等を用いなくても、これらの装置等を容易に縦まくらぎ構造1に取付けることができ、作業効率を向上させることができる。
【0068】
以下、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態の縦まくらぎ構造1は、一対のレール2,2の下側に該レール2,2の長手方向に沿ってそれぞれ設けられた一対の縦梁11,11と、この長手方向に沿って間隔をおいて設けられて一対の縦梁11、11を連結する継材12と、一対の縦梁11,11の下面側に設けられた防振材16と、を備え、一対の縦梁11,11には、所望の装置や部品が着脱自在に取付けられる取付片13が、互いの対向方向に突出して設けられている。また、本実施形態の車両用軌道100は、コンクリート製の路盤3上に敷設された縦まくらぎ構造1を備えて構成されている。
【0069】
この構成により、取付片13に、作業者の歩行や作業を補助する装置や部材を取付けることで、施工作業や保守作業などを容易に行うことができ、作業者の負担を低減して、作業効率を向上させることが可能な縦まくらぎ構造1及び車両用軌道100を提供できる。
【0070】
また、本実施形態では、取付片13には、一対の縦梁11,11と継材12とで区画される開口部S1,S2を塞ぐ閉塞部材としての歩行板20,20Aが、着脱自在に取付けられている。歩行板20,20Aは、開口部S1,S2内に該開口部S1,S2を塞ぐように配置される本体部21と、本体部21の両側から、一対の縦梁11,11の方向に突出し、取付片13に連結する連結片22と、を有している。この構成により、開口部S1,S2を塞ぐことができ、作業者が歩行する歩行路を確保することができる。そのため、作業者が保守作業時に、継材12を跨ぐ必要がなく、体力消耗を軽減できるともに、つまずいたりするのを抑制して、円滑な歩行が可能となり、作業効率を向上させることができる。
【0071】
また、本実施形態の変形例1では、取付片13には、吸音板30が着脱自在に取付けられている。この吸音板30は、一対の縦梁11,22と継材12とで区画される開口部S1,S2に配置される本体部31と、本体部31の両側から、一対の縦梁11,11の方向に突出し、取付片13に連結する連結片32と、を有している。この構成により、取付片13に連結片32を連結するだけで、縦梁11,11に吸音板30を容易に取付けることができ、取付け作業効率を向上させることができる。
【0072】
また、本実施形態の変形例2では、取付片13には、縦梁11,11を路盤3に対して昇降させる昇降装置としてのリフトアップボルト40が取付けられている。この構成により、リフトアップボルト40の取付け先(取付片13)を提供することができ、取付けのための部材を最小限とすることができるとともに、リフトアップ作業を効率的に行うことができる。
【0073】
また、本実施形態の変形例3では、取付片13には、鉄道車両の走行を制御する装置としてのATSの地上子50が着脱自在に取付けられている。地上子50には、取付片13に連結する連結片51が設けられている。この構成により、地上子50の取付け先(取付片13)を提供することができ、取付けのための部材を最小限とすることができるとともに、取付作業を効率的に行うことができる。
【0074】
また、本実施形態では、取付片13は、上下方向に開口する係合穴13bを有し、連結片22,32,51は、下方に突出し係合穴13bに挿入する係合突部22b,32b,51bを有している。この構成により、係合穴13bに上から係合突部22b,32b,51bを挿入するだけで、取付片13と連結片22,32,51を容易に連結することができ、各作業効率をより向上させることができる。
【0075】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について、
図9を参照しながら説明する。
図9は、第2の実施形態の縦まくらぎ構造1A及び車両用軌道100Aの斜視図である。
【0076】
第2の実施形態の縦まくらぎ構造1A及び車両用軌道100Aは、突起部15を有する縦梁11に代えて突起部15のない縦梁11Aを用い、この縦梁11Aを、台座4に代えて路盤3上に設けた防振装置6上に敷設した防振装置式のフローティングラダー型まくらぎ構造及び防振材式のフローティングラダー軌道である。なお、第1の実施形態と同一の部材には同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0077】
第2の実施形態の縦まくらぎ構造1Aは、一対の縦梁11A,11A、これらを連結する継材12及び一対の縦梁11,11の内側に突設された複数の取付片13を有する縦まくらぎ本体10Aを備えている。取付片13には、一対の縦梁11A,11Aと継材12とで仕切られる開口部S1に設けられる歩行板20及び長手方向に隣接する縦梁11A,11Aと継材12とで仕切られる開口部S2に設けられる歩行板20Aとが、着脱自在に取付けられている。
【0078】
第2実施形態の車両用軌道100Aでは、縦まくらぎ構造1の各縦梁11A,11Aと路盤3との間に、長手方向に間隔をおいて複数の防振装置6を設けている。この防振装置6は、ゴム状弾性体等を備え、鉄道車両の走行によって生じる振動を吸収する装置であり、従来公知の適宜のものを用いることができる。
【0079】
以上のような構成の第2の実施形態の縦まくらぎ構造1A及び車両用軌道100Aにおいても、各縦梁11,11に設けた取付片13に、歩行板20,10Aを取付けることで、作業者が歩行板20,20Aを歩行しながら保守作業等を行うことができる。したがって、作業者が継材12を跨いだり、つまずいたりすることがなく、作業者の体力消耗を軽減できるともに、円滑な作業が可能となり、作業効率を向上させることができる。
【0080】
なお、第2の実施形態の変形例として、取付片13に、
図5に示す吸音板30を取付けることもできる。また、
図7に示すように、取付片13にリフトアップボルト40を取付けて、縦梁11Aをリフトアップしたり、高さ調整したりすることもできる。また、取付片13に、
図8に示すようなATSの地上子50などの監視や検査に用いる装置やその部品を取付けることもできる。また、縦まくらぎ本体10Aの運搬や敷設のため、縦まくらぎ本体10Aをクレーン等で吊り下げるときに、取付片13を利用することもできる。
【0081】
以上、図面を参照して、本発明の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0082】
例えば、第1の実施形態では、一対の縦梁11,11を側面視L字形のコンクリート製の台座4,4上に敷設した構成としているが、この構成に限定されるものではない。例えば、L字形のコンクリート製の台座4,4に代えて、ダクタイル鋳鉄製の短尺な台座を、路盤3上に間隔をおいて複数配置し、その上面に防振材を介在して一対の縦梁を敷設した、ダクタイル台座防振材式のフローティングラダー型軌道とすることもできる。