特許第6886900号(P6886900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6886900半透膜支持体用不織布およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886900
(24)【登録日】2021年5月19日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】半透膜支持体用不織布およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 69/10 20060101AFI20210603BHJP
   B01D 71/48 20060101ALI20210603BHJP
   D21H 13/24 20060101ALI20210603BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   B01D69/10
   B01D71/48
   D21H13/24
   D21H27/00 E
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-166831(P2017-166831)
(22)【出願日】2017年8月31日
(65)【公開番号】特開2019-42649(P2019-42649A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2019年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241810
【氏名又は名称】北越コーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】楚山 智彦
(72)【発明者】
【氏名】小畑 進
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雄哉
(72)【発明者】
【氏名】根本 純司
【審査官】 小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5216229(JP,B2)
【文献】 特開2013−144283(JP,A)
【文献】 特開2014−180639(JP,A)
【文献】 特開2002−95937(JP,A)
【文献】 特開2008−106401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22,61/00−71/82
C02F 1/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維から構成される不織布である半透膜支持体の製造方法であって、
前記合成繊維が水に分散した繊維スラリーを得る、繊維スラリー調製工程と、
前記繊維スラリーを湿式抄紙して前記不織布を得る、湿式抄紙工程と、を有し、
前記合成繊維が、太さ0.3〜5.0デシテックス、長さ1〜8mmの主体繊維及び太さ0.3〜5.0デシテックス、長さ1〜8mmのバインダー繊維であり、
前記繊維スラリーにおける前記主体繊維と前記バインダー繊維との乾燥質量比が、前記主体繊維:前記バインダー繊維=90:10〜50:50であり、
前記繊維スラリーは、抄紙時の繊維分濃度が0.01〜0.1質量%であり、かつ、分子量500万以上の水溶性高分子粘剤を、前記繊維スラリー中の繊維分100質量部に対して0.1質量部以上3質量部未満含有し、
前記不織布は、前記湿式抄紙工程において2層以上に積層されて得られることを特徴とする半透膜支持体用不織布の製造方法。
【請求項2】
前記主体繊維がポリエステル繊維であることを特徴とする請求項1に記載の半透膜支持体用不織布の製造方法。
【請求項3】
前記バインダー繊維がポリエステル繊維であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半透膜支持体用不織布の製造方法。
【請求項4】
前記湿式抄紙工程において、2層以上に積層した抄紙シートを2枚のフェルトで挟み込んでロールプレスして、前記抄紙シートを水分含量30〜70質量%まで脱水することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の半透膜支持体用不織布の製造方法。
【請求項5】
前記湿式抄紙工程において、2層に積層した抄紙シートを、傾斜式抄紙パート及び円網式抄紙パートが連結した傾斜式/円網式抄紙機または円網式抄紙パートが2機連結した円網式/円網式抄紙機を用いて得るか、または、3層に積層した抄紙シートを、円網式抄紙パートが3機連結した円網式/円網式/円網式抄紙機を用いて得ることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の半透膜支持体用不織布の製造方法。
【請求項6】
合成繊維から構成される不織布であり、該不織布の下式(A)で表される質量分布係数Snが0.05以下であり、かつ、
前記合成繊維が、太さ0.3〜5.0デシテックス、長さ1〜8mmの主体繊維、及び、バインダー繊維であり、
前記主体繊維と前記バインダー繊維との乾燥質量比が、前記主体繊維:前記バインダー繊維=90:10〜50:50であり、
前記不織布は、分子量500万以上の水溶性高分子粘剤を、繊維分100質量部に対して0.1質量部以上3質量部未満含有し、かつ、2層以上に積層されていることを特徴とする半透膜支持体用不織布。
Sn=D/M (A)
Sn:質量分布係数 [−]
D :単位面積当たり質量の標準偏差[g/m
M :単位面積当たり質量 [g/m
【請求項7】
前記主体繊維がポリエステル繊維であることを特徴とする請求項6に記載の半透膜支持体用不織布。
【請求項8】
前記バインダー繊維がポリエステル繊維であることを特徴とする請求項6又は7に記載の半透膜支持体用不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、不織布に関し、詳しくは、限外濾過膜、精密濾過膜、逆浸透(RO)膜などの分離機能を有する半透膜の製造において、製膜のための支持体となり、半透膜を補強することを目的とした半透膜支持体用不織布及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料/工業用水中の不純物の除去、海水の淡水化、食品中の雑菌の除去、排水処理、又は生化学分野などで、半透膜が広く用いられている。
【0003】
半透膜は、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂など様々な高分子がその用途に合わせて選択される。しかし、半透膜自体は強度が弱く、単独では限外濾過や逆浸透などに使用される際の0.5〜10MPa以上という高圧には耐えられない。そこで、強度が強く通液性の高い不織布や織布などの支持体の片面に半透膜の樹脂液を塗工して半透膜が形成された形態で使用されている。工業的には、巻取りなど長尺状の支持体の片面に連続して塗工する製造装置が多く取られている。なお、本開示では、支持体において半透膜を塗工することとなる面を「半透膜の塗工面」「半透膜塗工面」又は単に「塗工面」ともいう。
【0004】
その支持体には、必要とされる通液性、引張強度、湿潤強度、耐久性を得るために、ポリエステルやポリオレフィン等の合成繊維を湿式あるいは乾式でシート状に成形し、加熱加圧処理して繊維同士を溶融接着させた合成繊維不織布が一般的に用いられる。その際に問題となるのは、これら不織布のXY方向での不均一性が、その上に設ける半透膜の不均一性を招き、結果として十分な性能が得られない、あるいは十分な性能を得る為に必要な膜厚が厚くなり、濾過効率の低下を招くことである。従って、支持体に用いられる不織布は、可能な限り均一で、ピンホール欠点などがないことが要求される。
【0005】
半透膜の支持体としての不織布については、従来その製法が公知となっている。例えば太さの異なるポリエステル繊維を用いてZ方向に粗密のある構造を作らしめ、低い通液抵抗を保ちつつ半透膜塗工液の裏抜け防止を図る方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0006】
また、特定の熱収縮応力と複屈折を持つポリエステル繊維を用いることによって、引張応力が掛かった際の寸法安定性を向上させ、表面が平滑で、裏抜けがなく、膜の付着性に優れた不織布を提供する方法が提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0007】
また、半透膜塗工時に支持体が幅方向に湾曲することが、半透膜層の不均一性の原因になるとして、繊維の配向性をコントロールすることによって均一な半透膜層を形成するという提案もなされている(例えば、特許文献3を参照。)。
【0008】
また、特殊紙の湿式抄紙法において、粘剤を用いて地合を整える方法は従来公知である。例えば、半透膜支持体ではないが、ガラス繊維シートを製造する際において分散剤としてのベタイン型両性界面活性剤によってガラス繊維を分散させ、アニオン性界面活性剤、ポリアクリルアミド系粘剤を順次添加することによってガラス繊維が良好に分散したスラリーを得て、地合の良いシートを得る方法が提案されている(例えば、特許文献4又は5を参照。)。
【0009】
また、本発明者らは、過去に合成繊維から構成される不織布であり、該不織布の下式(A)で表される質量分布係数Snが0.1以下であり、かつ、該不織布が、前記合成繊維を水に分散した繊維スラリーを湿式抄紙して不織布とする工程において、抄紙時の該繊維スラリーの繊維分濃度を0.01〜0.1質量%とし、かつ、分子量500万以上の水溶性高分子粘剤を、該繊維スラリー中の繊維分質量を基準として3〜15質量%の比率で含有して抄紙され、前記合成繊維が、太さ0.3〜5.0デシテックス、長さ1〜8mmのポリエステル繊維の主体繊維とバインダー繊維からなり、その乾燥質量比率が該ポリエステル主体繊維:ポリエステルバインダー繊維=90:10〜50:50であることを特徴とする半透膜支持体およびその製造方法を提案した(特許文献6を参照。)。
【0010】
また、半透膜塗布面と非塗布面からなる2層構造からなる半透膜支持体、あるいは不織布の各層の繊維配合割合が多層構造である半透膜支持体が提案されている(例えば、特許文献7を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭60−238103号公報
【特許文献2】特許第3153487号公報
【特許文献3】特開2002−95937号公報
【特許文献4】特開平5−123513号公報
【特許文献5】特開平8−209585号公報
【特許文献6】特開2008−238147号公報
【特許文献7】国際公開公報WO2011/049231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1の方法では、半透膜塗工液の裏抜けを防止するために支持体の多層構造が粗密構造となっているため、粗い層に塗工した際の平滑性が悪くなる問題や、粗い層と密な層のシート特性の違いによって塗工した際のカールが発生しやすい問題がある。
【0013】
特許文献2の方法によれば、確かに引張応力や熱による繊維の部分的な伸縮不均一による不織布シートの不均一性を減ずるには効果がある可能性があるが、しかし、シートの不均一性の大部分は繊維からシートが形成される際の繊維分布の粗密から来る不均一性であって、問題の根本的解決とはなり得ない。
【0014】
また、特許文献3に記載のように、仮に支持体の湾曲を極限まで減らしたとしても、支持体自体の不均一性に由来する半透膜層の不均一性を解決することはない。
【0015】
また特許文献4及び5の場合については、高分子粘剤(高分子増粘剤とも言う。)の役割を、ガラス繊維の表面に付着することによる繊維の再凝集防止効果と考えており、得られたシートの地合評価も目視による結束繊維の有無を主眼にしたもので、シートの質量分布の均一性を問題としていない。従って、以下に述べる本開示の半透膜支持体とは全く異なった技術である。
【0016】
また、特許文献6に記載の半透膜支持体の場合では、半透膜の作成方法によっては、例えば塗工液の濃度が低く塗工液粘性が低い場合においては、塗工液の裏抜けが生じやすくなることがあった。
【0017】
また、特許文献7に記載のように多層構造にすることによって仮に半透膜塗布面の平滑性や均一性は良くなる方向であったとしても、均一性を示す指標が全くなく不均一性による塗工液の裏抜けが発生しないという保証はない。
【0018】
本開示の課題は、支持体上に半透膜を形成させる際に、従来以上に塗工液の裏抜けが生じず、また必要最小限の厚みで欠陥の無い半透膜を得ることができる、優れた半透膜支持体の提供することにある。
【0019】
本開示においては、前記特許文献6に記載の発明を改良し、従来以上に塗工液の裏抜けを生じにくくすることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、鋭意検討の結果、支持体上に設けられた半透膜の性能を決定する半透膜支持体を構成する合成繊維のXY方向の質量分布の均一性をさらに向上させるべく、技術的課題が、抄紙時の繊維分散体スラリーの繊維分濃度及び非常に高分子量の粘剤により繊維分低シェアにおける粘度をコントロールすることに加え、2層以上の構成とすることで予測以上の効果が達成できることを発見して本発明に至った。すなわち、本発明に係る半透膜支持体用不織布の製造方法は、合成繊維から構成される不織布である半透膜支持体の製造方法であって、前記合成繊維が水に分散した繊維スラリーを得る、繊維スラリー調製工程と、前記繊維スラリーを湿式抄紙して前記不織布を得る、湿式抄紙工程と、を有し、前記合成繊維が、太さ0.3〜5.0デシテックス、長さ1〜8mmの主体繊維及び太さ0.3〜5.0デシテックス、長さ1〜8mmのバインダー繊維であり、前記繊維スラリーにおける前記主体繊維と前記バインダー繊維との乾燥質量比が、前記主体繊維:前記バインダー繊維=90:10〜50:50であり、前記繊維スラリーは、抄紙時の繊維分濃度が0.01〜0.1質量%であり、かつ、分子量500万以上の水溶性高分子粘剤を、前記繊維スラリー中の繊維分100質量部に対して0.1質量部以上3質量部未満含有し、前記不織布は、前記湿式抄紙工程において2層以上に積層されて得られることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る半透膜支持体用不織布の製造方法では、前記主体繊維がポリエステル繊維であることが好ましい。ポリエステル繊維は、耐熱性、耐薬品性、価格の安さ、繊維径や性状の種類の豊富さなどから、好適に用いられる。
【0022】
本発明に係る半透膜支持体用不織布の製造方法では、前記バインダー繊維がポリエステル繊維であることが好ましい。ポリエステル繊維は、耐熱性、耐薬品性、価格の安さ、繊維径や性状の種類の豊富さなどから、好適に用いられる。
【0023】
本発明に係る半透膜支持体用不織布の製造方法では、前記湿式抄紙工程において、2層以上に積層した抄紙シートを2枚のフェルトで挟み込んでロールプレスして、前記抄紙シートを水分含量30〜70質量%まで脱水することが好ましい。多層シートがより一体化するため、より均一になり、質量分布係数を小さくすることができる。
【0024】
本発明に係る半透膜支持体用不織布の製造方法では、前記湿式抄紙工程において、2層に積層した抄紙シートを、傾斜式抄紙パート及び円網式抄紙パートが連結した傾斜式/円網式抄紙機または円網式抄紙パートが2機連結した円網式/円網式抄紙機を用いて得るか、または、3層に積層した抄紙シートを、円網式抄紙パートが3機連結した円網式/円網式/円網式抄紙機を用いて得ることが好ましい。質量分布係数を小さくすることができるとともに、設備に要するスペースをコンパクトにすることができる。
【0025】
本発明に係る半透膜支持体用不織布は、合成繊維から構成される不織布であり、該不織布の下式(A)で表される質量分布係数Snが0.05以下であり、かつ、前記合成繊維が、太さ0.3〜5.0デシテックス、長さ1〜8mmの主体繊維、及び、バインダー繊維であり、前記主体繊維と前記バインダー繊維との乾燥質量比が、前記主体繊維:前記バインダー繊維=90:10〜50:50であり、前記不織布は、分子量500万以上の水溶性高分子粘剤を、繊維分100質量部に対して0.1質量部以上3質量部未満含有し、かつ、2層以上に積層されていることを特徴とする。
Sn=D/M (A)
Sn:質量分布係数 [−]
D :単位面積当たり質量の標準偏差[g/m
M :単位面積当たり質量 [g/m
【0026】
本発明に係る半透膜支持体用不織布では、前記主体繊維がポリエステル繊維であることが好ましい。ポリエステル繊維は、耐熱性、耐薬品性、価格の安さ、繊維径や性状の種類の豊富さなどから、好適に用いられる。
【0027】
本発明に係る半透膜支持体用不織布では、 前記バインダー繊維がポリエステル繊維であることが好ましい。ポリエステル繊維は、耐熱性、耐薬品性、価格の安さ、繊維径や性状の種類の豊富さなどから、好適に用いられる。
【発明の効果】
【0028】
本開示によれば、XY方向により高い均一性を達成することによって、従来以上に塗工樹脂液の裏抜けが少ない半透膜支持体、およびその製造方法を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以降、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0030】
本実施形態に係る半透膜支持体用不織布の製造方法は、合成繊維から構成される不織布である半透膜支持体の製造方法であって、前記合成繊維が水に分散した繊維スラリーを得る、繊維スラリー調製工程と、前記繊維スラリーを湿式抄紙して前記不織布を得る、湿式抄紙工程と、を有し、前記合成繊維が、太さ0.3〜5.0デシテックス、長さ1〜8mmの主体繊維及び太さ0.3〜5.0デシテックス、長さ1〜8mmのバインダー繊維であり、前記繊維スラリーにおける前記主体繊維と前記バインダー繊維との乾燥質量比が、前記主体繊維:前記バインダー繊維=90:10〜50:50であり、前記繊維スラリーは、抄紙時の繊維分濃度が0.01〜0.1質量%であり、かつ、分子量500万以上の水溶性高分子粘剤を、前記繊維スラリー中の繊維分100質量部に対して0.1質量部以上3質量部未満含有し、前記不織布は、前記湿式抄紙工程において2層以上に積層されて得られる。半透膜支持体を製造するに当たって、合成繊維を水に分散した繊維スラリーを湿式抄紙して不織布とする工程において、抄紙時の繊維スラリーの繊維分濃度を0.01〜0.1質量%とし、かつ、抄紙時に、分子量500万以上の水溶性高分子粘剤を、繊維スラリー中の繊維分100質量部に対して0.1質量部〜3質量部未満の比率で繊維スラリー中に含有させる。
【0031】
また、本実施形態に係る半透膜支持体用不織布は、合成繊維から構成される不織布であり、該不織布の下式(A)で表される質量分布係数Snが0.05以下であり、かつ、前記合成繊維が、太さ0.3〜5.0デシテックス、長さ1〜8mmの主体繊維、及び、バインダー繊維であり、前記主体繊維と前記バインダー繊維との乾燥質量比が、前記主体繊維:前記バインダー繊維=90:10〜50:50であり、前記不織布は、分子量500万以上の水溶性高分子粘剤を、繊維分100質量部に対して0.1質量部以上3質量部未満含有し、かつ、2層以上に積層されている。本実施形態でいう質量分布係数は、下式(A)で求められる:
Sn=D/M (A)
Sn:質量分布係数 [−]
D :単位面積当たり質量の標準偏差[g/m
M :単位面積当たり質量 [g/m
式(A)中のDは、β線地合計(Beta Formation Tester BFT−1:AMBERTEC社製)を用いて測定した数値のことである。式(A)は、質量の標準偏差から、坪量の影響を除くことを目的としている。この要件を満たすことによって、後段の半透膜付与工程において、塗工液の裏抜けが生じず、さらに従来よりも薄い膜を均一に形成することができ、半透膜の性能が向上する。β線地合計による質量分布係数Snが半透膜支持体の性能と相関する理由として、β線地合計によるシート質量分布の測定は1mmφ×任意回数で行われるが、この分解能が、課題の半透膜支持体への半透膜層塗工時の裏抜けに影響を与える質量分布のスケールとほぼ一致するためであると本発明者らは推測する。
【0032】
本実施形態に係る半透膜支持体は、合成繊維からなる不織布である。合成繊維は、主体繊維とバインダー繊維の両方を含む。合成繊維の原料は、本発明の要件である質量分布係数が達成される限り、特に限定されず、用途に応じて様々な合成樹脂が用いられる。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化エチレン、ポリアラミド、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、ナイロン等の合成樹脂から紡糸された繊維を例示することができる。また、レーヨン等の再生セルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース等のセルロース誘導体、また近年生化学用途として活発に研究されているポリ乳酸、ポリ酪酸、ポリ琥珀酸等の天然物を原料ソースとした繊維も、本発明で言う合成繊維の範疇に含まれる。上記の合成繊維の中でも、ポリエステル繊維は、耐熱性、耐薬品性、価格の安さ、繊維径や性状の種類の豊富さなどから、好適に用いられる。
【0033】
本実施形態に係る合成繊維のうち、低温での溶融接着を目的としない通常の融点(100〜400℃程度)を持つ合成繊維を、主体繊維と呼ぶ。主体繊維の形状は、本発明の要件である質量分布係数が得られる限りは限定されないが、繊維径が細いものを用いれば、完成したシートの孔径はより小さくなり、繊維径が太いものを用いれば、シートの強度が増す。繊維が短いものを用いれば水中での分散性が向上し、繊維が長いものを用いればシートの強度が増す。従って、支持体に求められる強度、孔径、シート均一性などを考慮して適当な形状を選ぶ必要があり、本実施形態においては太さ0.3〜5.0デシテックス、より好ましくは0.5〜3.0デシテックス、長さ1〜8mm、より好ましくは長さ3〜6mm、の範囲のものが好適に用いられる。また、繊維の断面の形状は、必要に応じて適宜選択することが可能で、本実施形態においては限定されない。
【0034】
本実施形態に係る合成繊維は、シート化工程、巻き取り工程の間に十分なシート強度を得るために、バインダー繊維を混合していることが望ましい。バインダー繊維とは、一般的に主体繊維よりも融点が低い(80〜160℃程度の)合成繊維のことを指し、抄紙後の乾燥工程における加熱で表面が溶融接着し、操業を可能とする引張強度をシートに付与する効果を持つ。バインダー繊維の融点は、主体繊維の融点よりも10〜150℃低いことが好ましい。バインダー繊維は、繊維自体の引張強度は主体繊維より劣るため、主体繊維とバインダー繊維との配合比率は、操業のし易さと完成製品の強度のバランスが取れる配合比率にする必要がある。本実施形態においては、主体繊維:バインダー繊維=90:10〜50:50の範囲が好ましい。より好ましくは、80:20〜60:40の範囲である。バインダー繊維は、繊維を構成する樹脂全ての融点が低いタイプや、内側と外側の二重構造、いわゆる芯鞘構造と呼ばれる構造を持ち、表面だけが融着するタイプ、未延伸繊維タイプなどがあり、いずれも本実施形態において使用可能である。特に、ポリエステル主体繊維とバインダー繊維としてのポリエステル未延伸繊維の組み合わせは熱圧加工処理で強度を発現しやすく好適に用いられる。また、太さ、長さ、断面の形状等は、主体繊維と同様に目的に応じて選択が可能である。本実施形態において、用いられるバインダー繊維は太さ0.3〜5.0デシテックス、より好ましくは0.5〜3.0デシテックス、長さ1〜8mm、より好ましくは長さ3〜6mm、の範囲のものが好適に用いられる。なお、バインダー繊維は、不織布とされたときには、全体が融けるタイプのバインダー繊維は太さ及び長さが変化する場合があり、芯鞘構造を有するバインダー繊維は長さは変わらないが、太さが変化する場合がある。
【0035】
本実施形態に係る不織布の密度は特に限定しないが、支持体にもとめられる透液性を考慮して、0.6〜1.0g/cmの範囲が好ましく、0.8〜0.95g/cmの範囲がより好ましい。1.0g/cmを超えると支持体の孔径が小さくなりすぎ十分な通水性を得にくい。0.6g/cm未満では逆に孔径が大きくなりすぎて塗工液の裏抜けが生じやすくなってしまう。また、支持体の坪量については20g/m以上であることが好ましく、50〜100g/mであることがより好ましい。20g/m未満では厚みが薄すぎて裏抜けが生じやすくなる。
【0036】
本実施形態においては、本発明の要件である質量分布係数を得られる限りはいかなる方法で繊維をシート化しても構わないが、繊維を水中に分散したのち、抄紙ワイヤー上に繊維を積層し、ワイヤー下方から脱水してシートを形成する、いわゆる湿式抄紙法が好適に用いられる。この際用いる抄紙機の種類は、本発明の要件である質量分布係数を得られる限りは限定されず、例えば長網式抄紙機、円網式抄紙機、傾斜ワイヤー式抄紙機等を用いることができ、2層以上のシートを得るためにはこれらの抄紙機を組み合せた多層抄き抄紙機を用いる必要がある。例えば、傾斜式/円網式抄紙機、円網式/円網式抄紙機が好適に用いられ、特にスペースをコンパクトにできるため円網式の組み合わせの多層抄紙機が好適に用いられる。
【0037】
抄紙されたシートは80質量%以上の多量の水分を含有しているので30〜70質量%まで脱水される。脱水方法としては、サクション吸引で行う方法、2本のロール間でプレスして水分を絞る方法があり、後者のプレス脱水法が好ましい。本発明では抄紙シートを2枚のフェルトで挟み込んでロールプレスする方法が特に好ましく、多層シートがより一体化するためより均一になり質量分布係数を小さくすることができる。
【0038】
脱水されたシートの残り水分は乾燥ゾーンで乾燥される。このときの乾燥方法は、特に限定されないが、熱風乾燥、赤外線乾燥、多筒シリンダードライヤー乾燥、ヤンキードライヤーによる乾燥などが好適に用いられる。乾燥温度としては、100〜160℃が望ましく、105〜140℃がより望ましい。
【0039】
完成した不織布の質量分布係数に大きな影響を与えるのが水中での繊維分散の均一性であり、更に詳しくは、抄紙ワイヤー上で脱水される瞬間の繊維分散の均一性である。そのため、抄紙時の繊維スラリーは繊維分濃度を0.01〜0.1質量%の範囲に調整することが望ましい。繊維スラリーの濃度が0.01%より低い場合、抄紙速度の著しい低下を招き、繊維スラリーの濃度が0.1%より高い場合、所望の質量分布均一性を得ることが難しい。該繊維濃度は殊に0.01〜0.08%、なかでも0.02〜0.06%であるのが有利である。ここで、質量分布均一性とは、不織布中の繊維分布の均一性の指標となる質量分布係数のことである。
【0040】
また、半透膜支持体のように高度な均一性を要求される不織布については、繊維スラリーの繊維分濃度を低くしただけでは十分な均一性を得ることは難しい。本発明においては、分子量500万以上の高分子粘剤を用いることで不織布の質量分布均一性を高める、すなわち、不織布中の繊維分布の均一性の指標となる質量分布係数を小さくすることが可能となった。
【0041】
一般に、スラリー中に分散した繊維は、分散機による比較的高速流動状態での分散時は均一に分散されているが、抄紙時の低速流動状態では、繊維同士が凝集し合い、結果、得られるシートは不均一になってしまう。そこで、低シェアの繊維濃度において高粘度を示すある種の高分子粘剤を加えて低速流動時の粘度が高くなるようにコントロールすることによって、繊維同士が凝集方向に動くのを防ぎ、均一なシートを形成することができる。本発明者の検討によれば、分子量500万以上の水溶性高分子を用いることによって、低シェアの繊維濃度における繊維の分散性を向上させることが出来る。この際注意しなければならないのは、高分子粘剤は、分散機やポンプのような流体に高いシェアを掛ける装置により構造破壊され、粘性が低下する可能性があることである。
【0042】
本実施形態における高分子粘剤としては、既知の合成あるいは天然の親水性高分子が使用できるが、高分子粘剤を用いる際の注意点として、これらの高分子を過剰に添加すると、濾水性が悪化して湿紙水分が高くなることによって、あるいは高分子自体の粘性によって、抄紙ワイヤーと不織布ウェブとの離型性が悪化して紙切れが発生し抄紙効率の著しい低下を引き起こす。また、粘剤が不織布の空隙を埋めることによって、半透膜支持体として必要な透気(透液)性を損なう。従って、少ない添加量で所望の繊維分散性・質量分布均一性を得ることが望ましい。本発明者らの検討の結果、分子量500万以上の水溶性高分子粘剤を、繊維スラリー中の繊維分100質量部に対して0.1質量部以上3質量部未満の範囲で含有することが望ましい。分子量が500万未満である場合、所望の質量分布係数が得られない。高分子粘剤の分子量は好ましくは600万以上、特に好ましくは700万以上である。高分子粘剤の分子量の上限は、好ましくは2000万であり、より好ましくは1000万である。本発明においては高分子粘剤含有量が繊維スラリー中の繊維分100質量部に対して0.1質量部未満の場合、所望の質量分布係数を得難い。また、含有量が3質量部以上の場合、抄紙ワイヤーにおける不織布ウェブのワイヤー剥離性などの抄紙性及び不織布の透気性が悪化する。特に抄紙シートが多層構造である場合、1層構造に比べて1枚あたりのシート厚さが薄いため、1層構造シートより不織布ウェブのワイヤー剥離性が悪化しやすくなる。
【0043】
高分子粘剤の種類としては、合成あるいは天然を問わず使用することが可能である。例えば天然高分子としてメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系高分子、カゼイン、ゼラチン、ニカワ等のタンパク質系高分子、ペクチン等の天然多糖類、あるいはでんぷん、トロロアオイ等が例示され、合成高分子としてはポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド系高分子(PAM)、ポリエチレンオキサイド系高分子(PEO)、ポリアクリル酸系高分子(PAA)を例示できる。中でも高分子量のものが容易に扱えるという点で、PAM、PEO、PAAが好適に用いられる。本発明では、これら高分子は単体あるいは共重合体あるいは混合物であっても構わず、二種類以上を併用することも構わない。また、高分子粘剤の性能を損なわない限りは、工程内でのそれらの添加位置(添加を行う場所など)は問わない。また、合成繊維の分散工程から抄紙工程までの間に、必要に応じて他の添加剤、例えばpH調整剤、キレート剤、分散剤、消泡剤、撥水剤、濡れ剤、防腐剤、帯電防止剤などを添加することも構わない。
【0044】
本発明においては、湿式抄紙段階で2層以上に積層することによってさらに質量分布均一性が向上する。また、驚くべきことに1層では分子量500万以上の水溶性高分子粘剤を、従来、繊維スラリー中の繊維分100質量部に対して3〜15質量部の範囲で含有する必要があったが、2層以上に積層することでの水溶性高分子粘剤の含有量を0.1質量部〜3質量部未満の範囲まで減じることが可能となった。
【0045】
2層以上に積層することで質量分布均一性が向上する原因については定かではないが、各層の質量分布の不均一性について層を重ね合わせることによって各層の凹凸のような不均一な部分を相殺し合って、均一性が向上するものと考えられる。また、分子量500万以上の水溶性高分子粘剤を減ずることで繊維同士が凝集方向に動くので各層の不均一性は増大すると思われるが、前述の相殺効果のだけでなく、そのメカニズムは不明だが、水溶性高分子粘剤添加効果を少量配合でも高める効果が発揮されていると思われる。水溶性高分子粘剤の少ない添加量で所望の繊維分散性・質量分布均一性を得ることはむしろ望ましいことである。
【0046】
前述の方法で製造された湿式不織布はそのまま半透膜支持体用に使用される場合もあるが、多くの場合半透膜支持体としての強度が不足している。そこで、半透膜支持体として十分な強度を得るために、主体繊維の融点付近、あるいはバインダー繊維の融点付近の温度で熱圧加工処理することによって、繊維を熱溶着して強度を高めることが行われる。この処理は各種の熱圧加工装置が用いられるが、一般的には熱カレンダー装置が有効である。例えば、160℃以上の温度で処理可能な金属ロールニップカレンダーを用いる方法や、高い耐熱性をもつ樹脂ロールであれば金属ロール/樹脂ロールのソフトニップカレンダーを用いることも可能である。
【0047】
熱圧加工処理の温度条件は、一般的には160℃〜260℃の範囲が好ましく、180℃〜240℃の範囲がより好ましいが、使用する合成繊維の種類によっては、より低い温度やより高い温度が望ましい場合もある。例えば、主体繊維にバインダー繊維を配合する場合には、バインダー繊維の融点付近の温度で熱圧加工処理することによって、繊維同士を溶融接着して強度を高めることが行われる。線圧は、30〜250kN/m範囲が好ましく、50〜200kN/mの範囲がより好ましいが、その限りではない。また、ウェブ全体で均一な性能を発現させるためには、できるだけ均一な温度プロファイル、線圧プロファイルで処理することが望ましい。熱カレンダー装置のロール径は、熱圧加工処理される基材、ニップ圧、速度などのパラメーターによって適宜選定される。
【0048】
熱圧加工処理の複数回処理は1回目処理と2回目処理以降とで同じ熱圧装置を繰り返し使用してもよく、また複数台の熱圧装置を配して連続的に処理する方法や、熱カレンダーロールを高さ方向に多段に配したカレンダー装置も可能である。1回目処理と2回目処理以降の処理温度は、2回目以降が1回目と同じ温度かそれ以上の温度とすることが好ましい。
【0049】
2回目処理以降の処理温度を1回目処理の処理温度よりも高くする場合には、1回目の熱圧加工温度より2回目以降の熱圧加工温度を10℃以上高くすることが好ましく、13℃以上高くすることがより好ましく、15℃以上高くすることがさらに好ましい。ただし、温度差の上限は、70℃までとすることが好ましい。
【0050】
完成した半透膜支持体は、質量分布係数が0.05以下であることが、本発明の要件である。この要件を満たすことによって、後段の半透膜付与工程において塗工液の裏抜けによる欠陥と操業性の低下が生じず、さらに従来よりも薄い膜を均一に形成することができ、半透膜の性能が向上する。質量分布係数は特に好ましくは0.047以下である。
【0051】
本実施形態に係る半透膜支持体に、半透膜塗工液を塗布する方法は特に限定されない。一例を挙げると、バッキングロールに沿って走行する支持体ウェブ上に、スリットから供給される半透膜塗工液を層状に塗布する。この際に半透膜支持体の質量分布が均一でないと、支持体の薄い部分から裏側に塗工液が通過し、半透膜の欠陥となる上、バッキングロール汚れを発生する可能性があり、また均一な半透膜層を得るために必要以上の膜厚が要求される場合もある。
【0052】
次いで、半透膜層を保持した支持体ウェブを凝固液で満たされた槽内に導入して凝固せしめる。例えばポリスルフォンの半透膜を製造する場合には、塗工液はポリスルフォン樹脂のDMF(ジメチルホルムアミド)溶液を用い、凝固液には水が使用される。このようにして得られた半透膜は、そのままでも限外濾過膜として使用できるが、逆浸透膜として使用する場合には更にその表面に活性層と呼ばれる層を設ける。この活性層は、例えば酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、架橋ポリアミド酸、ポリ尿素等を界面重合によって超薄膜として支持半透膜上に形成することで得られる。ここで「支持半透膜」とは活性層の支持層となっているポリスルフォン層(半透膜)をいう。
【0053】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り「質量部」及び「質量%」を示す。
【0054】
(実施例1)
<繊維原料スラリーの調製>
太さ1.45デシテックス、カット長さ5mmの市販のポリエステル主体繊維(商品名:EP133、クラレ社製)22kgと、太さ1.2デシテックス、カット長さ5mmの市販のポリエステルバインダー繊維(商品名:TR07N、帝人フロンティア社製)8kgを、水に投入し、分散機で5分間分散し、繊維分濃度1質量%の繊維原料スラリーを得た。
<高分子粘剤1の調製>
水200kgに、分子量800万のポリエチレンオキサイド/ポリアクリルアミド(部分加水分解)共重合型高分子粘剤(商品名:パムオールP−130、明成化学工業社製)90gを投入し、プロペラミキサーで2時間攪拌して、濃度0.045%の高分子粘剤1を得た。
<繊維スラリーの調製>
前記繊維原料スラリーに、高分子粘剤1を繊維分100質量部に対して0.1質量部となるように添加した後、水を加えて全体を稀釈し、繊維分濃度0.03質量%の繊維スラリーを得た。
<シートの作製>
この繊維スラリーを、円網式抄紙パートが2機連結した円網式/円網式抄紙機のヘッドボックスに投入し繊維スラリーを各抄紙パートで抄紙した後、湿紙を重ね合わせた。次にプレス脱水パートにてこの重ね合わせた湿紙を2本のロール間でプレスして水分を絞った。この際、抄紙シートを2枚のフェルトで挟み込んで脱水を行った。不織布ウェブの脱水後の水分含有量は51質量%であった。次に、表面温度120℃のヤンキードライヤーで乾燥し、2層構造の連続の巻取り原紙を得た。
<熱圧加工処理>
金属ロール/金属ロールのハードニップで金属ロールの面長1170mm、ロール径450mmの熱カレンダー装置を用い、前述の巻取り原紙をロール表面温度トップロール/ボトムロール:185℃/185℃、ロール間クリアランス80μm、線圧100kN/m、ライン速度20m/分の条件にて、原紙を熱圧加工処理して半透膜支持体用不織布を得た。
【0055】
(実施例2)
<繊維原料スラリーの調製>
実施例1と同様とした。
<繊維スラリーの調製>
実施例1において高分子粘剤1を繊維分100質量部に対して0.5質量部となるように添加した以外は実施例1と同様にして、繊維分濃度0.03質量%の繊維スラリーを得た。
<シートの作製>
実施例1と同様とした。
<熱圧加工処理>
実施例1と同様とした。
【0056】
(実施例3)
<繊維原料スラリーの調製>
実施例1と同様とした。
<繊維スラリーの調製>
実施例1において高分子粘剤1を繊維分100質量部に対して1.0質量部となるように添加した以外は実施例1と同様にして、繊維分濃度0.03質量%の繊維スラリーを得た。
<シートの作製>
実施例1と同様とした。
<熱圧加工処理>
実施例1と同様とした。
【0057】
(実施例4)
<繊維原料スラリーの調製>
実施例1と同様とした。
<繊維スラリーの調製>
実施例1において高分子粘剤1を繊維分100質量部に対して2.8質量部となるように添加した以外は実施例1と同様にして、繊維分濃度0.03質量%の繊維スラリーを得た。
<シートの作製>
実施例1と同様とした。
<熱圧加工処理>
実施例1と同様とした。
【0058】
(実施例5)
<繊維原料スラリーの調製>
実施例1と同様とした。
<高分子粘剤2の調製>
水200kgに、分子量1000万のポリアクリルアミド(部分加水分解)高分子粘剤(商品名:パムオール、明成化学工業社製)90gを投入し、プロペラミキサーで2時間攪拌して、濃度0.045%の高分子粘剤2を得た。
<繊維スラリーの調製>
前記繊維原料スラリーに、高分子粘剤2を繊維分100質量部に対して0.5質量部となるように添加した後、水を加えて全体を稀釈し、繊維分濃度0.03質量%の繊維スラリーを得た。
<シートの作製>
実施例1と同様とした。
<熱圧加工処理>
実施例1と同様とした。
【0059】
(実施例6)
<繊維原料スラリーの調製>
実施例1と同様とした。
<繊維スラリーの調製>
前記繊維原料スラリーに、高分子粘剤2を繊維分100質量部に対して0.1質量部となるように添加した後、水を加えて全体を稀釈し、繊維分濃度0.03質量%の繊維スラリーを得た。
<シートの作製>
実施例1と同様とした。
<熱圧加工処理>
実施例1と同様とした。
【0060】
(実施例7)
<繊維原料スラリーの調製>
実施例1と同様とした。
<繊維スラリーの調製>
前記繊維原料スラリーに、高分子粘剤2を繊維分100質量部に対して0.1質量部となるように添加した後、水を加えて全体を稀釈し、繊維分濃度0.1質量%の繊維スラリーを得た。
<シートの作製>
実施例1と同様とした。
<熱圧加工処理>
実施例1と同様とした。
【0061】
(実施例8)
<繊維原料スラリーの調製>
実施例1と同様とした。
<繊維スラリーの調製>
前記繊維原料スラリーに、高分子粘剤2を繊維分100質量部に対して0.2質量部となるように添加した後、水を加えて全体を稀釈し、繊維分濃度0.03質量%の繊維スラリーを得た。
<シートの作製>
実施例1と同様とした。
<熱圧加工処理>
実施例1と同様とした。
【0062】
(実施例9)
<繊維原料スラリーの調製>
実施例1と同様とした。
<繊維スラリーの調製>
前記繊維原料スラリーに、高分子粘剤1を繊維分100質量部に対して0.1質量部となるように添加した後、水を加えて全体を稀釈し、繊維分濃度0.01質量%の繊維スラリーを得た。
<シートの作製>
実施例1と同様とした。
<熱圧加工処理>
実施例1と同様とした。
【0063】
(実施例10)
<繊維原料スラリーの調製>
実施例1と同様とした。
<繊維スラリーの調製>
前記繊維原料スラリーに、高分子粘剤2を繊維分100質量部に対して0.2質量部となるように添加した後、水を加えて全体を稀釈し、繊維分濃度0.03質量%の繊維スラリーを得た。
<シートの作製>
この繊維スラリーを、円網式抄紙パートが2機連結した円網式/円網式抄紙機のヘッドボックスに投入し繊維スラリーを各抄紙パートで抄紙した後、湿紙を重ね合わせた。次にプレス脱水パートにてこの重ね合わせた湿紙を2本のロール間でプレスして水分を絞った。この際、一方のロールは直接、湿紙に接触させ、もう一方のロールはフェルトを介して湿紙の反対面に接触させて脱水を行った。不織布ウェブの脱水後の水分含有量は58質量%であった。次に、表面温度120℃のヤンキードライヤーで乾燥し、2層構造の連続の巻取り原紙を得た。
<熱圧加工処理>
実施例1と同様とした。
【0064】
(実施例11)
<繊維原料スラリーの調製>
実施例1と同様とした。
<繊維スラリーの調製>
前記繊維原料スラリーに、高分子粘剤1を繊維分100質量部に対して1.0質量部となるように添加した後、水を加えて全体を稀釈し、繊維分濃度0.03質量%の繊維スラリーを得た。
<シートの作製>
実施例10と同様とした。
<熱圧加工処理>
実施例1と同様とした。
【0065】
(実施例12)
<繊維原料スラリーの調製>
太さ0.3デシテックス、カット長さ5mmの市販のポリエステル主体繊維(商品名:TA4N、帝人フロンティア社製)22kgと、太さ1.2デシテックス、カット長さ5mmの市販のポリエステルバインダー繊維(商品名:TR07N、帝人フロンティア社製)8kgを、水に投入し、分散機で5分間分散し、繊維分濃度1質量%の繊維原料スラリーを得た。
<繊維スラリーの調製>
前記繊維原料スラリーに、高分子粘剤1を繊維分100質量部に対して0.5質量部となるように添加した後、水を加えて全体を稀釈し、繊維分濃度0.03質量%の繊維スラリーを得た。
<シートの作製>
実施例1と同様とした。
<熱圧加工処理>
実施例1と同様とした。
【0066】
(実施例13)
<繊維原料スラリーの調製>
太さ5.0デシテックス、カット長さ5mmの市販のポリエステル主体繊維(A社製)22kgと、太さ1.2デシテックス、カット長さ5mmの市販のポリエステルバインダー繊維(商品名:TR07N、帝人フロンティア社製)8kgを、水に投入し、分散機で5分間分散し、繊維分濃度1質量%の繊維原料スラリーを得た。
<繊維スラリーの調製>
前記繊維原料スラリーに、高分子粘剤1を繊維分100質量部に対して0.5質量部となるように添加した後、水を加えて全体を稀釈し、繊維分濃度0.03質量%の繊維スラリーを得た。
<シートの作製>
実施例1と同様とした。
<熱圧加工処理>
実施例1と同様とした。
【0067】
(実施例14)
<繊維原料スラリーの調製>
太さ1.45デシテックス、カット長さ1mmの市販のポリエステル主体繊維(商品名:EP133、クラレ社製)22kgと、太さ1.2デシテックス、カット長さ5mmの市販のポリエステルバインダー繊維(商品名:TR07N、帝人フロンティア社製)8kgを、水に投入し、分散機で5分間分散し、繊維分濃度1質量%の繊維原料スラリーを得た。
<繊維スラリーの調製>
前記繊維原料スラリーに、高分子粘剤1を繊維分100質量部に対して0.5質量部となるように添加した後、水を加えて全体を稀釈し、繊維分濃度0.03質量%の繊維スラリーを得た。
<シートの作製>
実施例1と同様とした。
<熱圧加工処理>
実施例1と同様とした。
【0068】
(実施例15)
<繊維原料スラリーの調製>
太さ1.45デシテックス、カット長さ8mmの市販のポリエステル主体繊維(商品名:EP133、クラレ社製)22kgと、太さ1.2デシテックス、カット長さ5mmの市販のポリエステルバインダー繊維(商品名:TR07N、帝人フロンティア社製)8kgを、水に投入し、分散機で5分間分散し、繊維分濃度1質量%の繊維原料スラリーを得た。
<繊維スラリーの調製>
前記繊維原料スラリーに、高分子粘剤1を繊維分100質量部に対して0.5質量部となるように添加した後、水を加えて全体を稀釈し、繊維分濃度0.03質量%の繊維スラリーを得た。
<シートの作製>
実施例1と同様とした。
<熱圧加工処理>
実施例1と同様とした。
【0069】
(実施例16)
<繊維原料スラリーの調製>
太さ1.45デシテックス、カット長さ5mmの市販のポリエステル主体繊維(商品名:EP133、クラレ社製)27kgと、太さ1.2デシテックス、カット長さ5mmの市販のポリエステルバインダー繊維(商品名:TR07N、帝人フロンティア社製)3kgを、水に投入し、分散機で5分間分散し、繊維分濃度1質量%の繊維原料スラリーを得た。
<繊維スラリーの調製>
前記繊維原料スラリーに、高分子粘剤1を繊維分100質量部に対して0.5質量部となるように添加した後、水を加えて全体を稀釈し、繊維分濃度0.03質量%の繊維スラリーを得た。
<シートの作製>
実施例1と同様とした。
<熱圧加工処理>
実施例1と同様とした。
【0070】
(実施例17)
<繊維原料スラリーの調製>
太さ1.45デシテックス、カット長さ5mmの市販のポリエステル主体繊維(商品名:EP133、クラレ社製)15kgと、太さ1.2デシテックス、カット長さ5mmの市販のポリエステルバインダー繊維(商品名:TR07N、帝人フロンティア社製)15kgを、水に投入し、分散機で5分間分散し、繊維分濃度1質量%の繊維原料スラリーを得た。
<繊維スラリーの調製>
前記繊維原料スラリーに、高分子粘剤1を繊維分100質量部に対して0.5質量部となるように添加した後、水を加えて全体を稀釈し、繊維分濃度0.03質量%の繊維スラリーを得た。
<シートの作製>
実施例1と同様とした。
<熱圧加工処理>
実施例1と同様とした。
【0071】
(実施例18)
<繊維原料スラリーの調製>
実施例1と同様とした。
<繊維スラリーの調製>
前記繊維原料スラリーに、高分子粘剤1を繊維分100質量部に対して0.5質量部となるように添加した後、水を加えて全体を稀釈し、繊維分濃度0.03質量%の繊維スラリーを得た。
<シートの作製>
この繊維スラリーを、円網式抄紙パートが3機連結した円網式/円網式/円網式抄紙機のヘッドボックスに投入し繊維スラリーを各抄紙パートで抄紙した後、湿紙を重ね合わせた。次にプレス脱水パートにてこの重ね合わせた湿紙を2本のロール間でプレスして水分を絞った。この際、抄紙シートを2枚のフェルトで挟み込んで脱水を行った。不織布ウェブの脱水後の水分含有量は52質量%であった。次に、表面温度120℃のヤンキードライヤーで乾燥し、2層構造の連続の巻取り原紙を得た。
<熱圧加工処理>
実施例1と同様とした。
【0072】
(実施例19)
<繊維原料スラリーの調製>
太さ1.7デシテックス、カット長さ5mmの市販のレーヨン主体繊維(商品名:コロナSB、ダイワボウレーヨン社製)15kgと、太さ1.2デシテックス、カット長さ5mmの市販のポリエステルバインダー繊維(商品名:TR07N、帝人フロンティア社製)15kgを、水に投入し、分散機で5分間分散し、繊維分濃度1質量%の繊維原料スラリーを得た。
<繊維スラリーの調製>
前記繊維原料スラリーに、高分子粘剤1を繊維分100質量部に対して0.5質量部となるように添加した後、水を加えて全体を稀釈し、繊維分濃度0.03質量%の繊維スラリーを得た。
<シートの作製>
実施例1と同様とした。
<熱圧加工処理>
実施例1と同様とした。
【0073】
(実施例20)
<繊維原料スラリーの調製>
太さ1.45デシテックス、カット長さ5mmの市販のポリエステル主体繊維(商品名:EP133、クラレ社製)15kgと、太さ1.7デシテックス、カット長さ5mmの市販の芯鞘バインダー繊維(芯:ポリエステル,鞘:ポリエチレン、商品名:TJ04EN、帝人フロンティア社製)15kgを、水に投入し、分散機で5分間分散し、繊維分濃度1質量%の繊維原料スラリーを得た。
<繊維スラリーの調製>
前記繊維原料スラリーに、高分子粘剤1を繊維分100質量部に対して0.5質量部となるように添加した後、水を加えて全体を稀釈し、繊維分濃度0.03質量%の繊維スラリーを得た。
<シートの作製>
実施例1と同様とした。
<熱圧加工処理>
金属ロール/金属ロールのハードニップで金属ロールの面長1170mm、ロール径450mmの熱カレンダー装置を用い、前述の巻取り原紙をロール表面温度トップロール/ボトムロール:130℃/130℃、ロール間クリアランス80μm、線圧50kN/m、ライン速度20m/分の条件にて、原紙を熱圧加工処理して半透膜支持体用不織布を得た。
【0074】
(比較例1)
<繊維原料スラリーの調製>
太さ1.45デシテックス、カット長さ5mmの市販のポリエステル主体繊維(商品名:EP133、クラレ社製)22kgと、太さ1.2デシテックス、カット長さ5mmの市販のポリエステルバインダー繊維(商品名:TR07N、帝人フロンティア社製)8kgを、水に投入し、分散機で5分間分散し、繊維分濃度1質量%の繊維原料スラリーを得た。
<繊維スラリーの調製>
前記繊維原料スラリーに、高分子粘剤1を繊維分100質量部に対して4.0質量部となるように添加した後、水を加えて全体を稀釈し、繊維分濃度0.03質量%の繊維スラリーを得た。
<シートの作製>
この繊維スラリーを、円網式抄紙機のヘッドボックスに投入し繊維スラリーを各抄紙パートで抄紙し湿紙を得た。次にプレス脱水パートにてこの重ね合わせた湿紙を2本のロール間でプレスして水分を絞った。この際、抄紙シートを2枚のフェルトで挟み込んで脱水を行った。不織布ウェブの脱水後の水分含有量は48質量%であった。次に、表面温度120℃のヤンキードライヤーで乾燥し、1層構造の連続の巻取り原紙を得た。
<熱圧加工処理>
金属ロール/金属ロールのハードニップで金属ロールの面長1170mm、ロール径450mmの熱カレンダー装置を用い、前述の巻取り原紙をロール表面温度トップロール/ボトムロール:185℃/185℃、ロール間クリアランス80μm、線圧100kN/m、ライン速度20m/分の条件にて、原紙を熱圧加工処理して半透膜支持体用不織布を得た。
【0075】
(比較例2)
<繊維原料スラリーの調製>
比較例1と同様とした。
<繊維スラリーの調製>
前記繊維原料スラリーに、高分子粘剤2を繊維分100質量部に対して4.0質量部となるように添加した後、水を加えて全体を稀釈し、繊維分濃度0.03質量%の繊維スラリーを得た。
<シートの作製>
比較例1と同様とした。
<熱圧加工処理>
比較例1と同様とした。
【0076】
(比較例3)
<繊維原料スラリーの調製>
比較例1と同様とした。
<繊維スラリーの調製>
前記繊維原料スラリーに、高分子粘剤1を繊維分100質量部に対して10.0質量部となるように添加した後、水を加えて全体を稀釈し、繊維分濃度0.03質量%の繊維スラリーを得た。
<シートの作製>
比較例1と同様とした。
<熱圧加工処理>
比較例1と同様とした。
【0077】
(比較例4)
<繊維原料スラリーの調製>
比較例1と同様とした。
<繊維スラリーの調製>
前記繊維原料スラリーに、高分子粘剤1を繊維分100質量部に対して0.5質量部となるように添加した後、水を加えて全体を稀釈し、繊維分濃度0.03質量%の繊維スラリーを得た。
<シートの作製>
比較例1と同様とした。
<熱圧加工処理>
比較例1と同様とした。
【0078】
(比較例5)
<繊維原料スラリーの調製>
比較例1と同様とした。
<繊維スラリーの調製>
前記繊維原料スラリーに、高分子粘剤1を繊維分100質量部に対して4.0質量部となるように添加した後、水を加えて全体を稀釈し、繊維分濃度0.2質量%の繊維スラリーを得た。
<シートの作製>
この繊維スラリーを、円網式抄紙パートが2機連結した円網式/円網式抄紙機のヘッドボックスに投入し繊維スラリーを各抄紙パートで抄紙した後、湿紙を重ね合わせた。次にプレス脱水パートにてこの重ね合わせた湿紙を2本のロール間でプレスして水分を絞った。この際、抄紙シートを2枚のフェルトで挟み込んで脱水を行った。不織布ウェブの脱水後の水分含有量は47質量%であった。次に、表面温度120℃のヤンキードライヤーで乾燥し、2層構造の連続の巻取り原紙を得た。
<熱圧加工処理>
比較例1と同様とした。
【0079】
(比較例6)
<繊維原料スラリーの調製>
比較例1と同様とした。
<高分子粘剤3の調製>
水200kgに、分子量400万のポリエチレンオキサイド系高分子粘剤(商品名:アルコックスSP、明成化学工業社製)90gを投入し、プロペラミキサーで2時間攪拌して、濃度0.045%の高分子粘剤3を得た。
<繊維スラリーの調製>
前記繊維原料スラリーに、高分子粘剤3を繊維分100質量部に対して4.0質量部となるように添加した後、水を加えて全体を稀釈し、繊維分濃度0.03質量%の繊維スラリーを得た。
<シートの作製>
比較例4と同様とした。
<熱圧加工処理>
比較例1と同様とした。
【0080】
(比較例7)
<繊維原料スラリーの調製>
比較例1と同様とした。
<繊維スラリーの調製>
前記繊維原料スラリーに、高分子粘剤1を繊維分100質量部に対して3.5質量部となるように添加した後、水を加えて全体を稀釈し、繊維分濃度0.03質量%の繊維スラリーを得た。
<シートの作製>
比較例4と同様とした。
<熱圧加工処理>
比較例1と同様とした。
【0081】
(比較例8)
<繊維原料スラリーの調製>
比較例1と同様とした。
<繊維スラリーの調製>
前記繊維原料スラリーに、高分子粘剤1を繊維分100質量部に対して5.0質量部となるように添加した後、水を加えて全体を稀釈し、繊維分濃度0.03質量%の繊維スラリーを得た。
<シートの作製>
比較例4と同様とした。
<熱圧加工処理>
比較例1と同様とした。
【0082】
(比較例9)
<繊維原料スラリーの調製>
比較例1と同様とした。
<繊維スラリーの調製>
前記繊維原料スラリーに、高分子粘剤1を繊維分100質量部に対して10.0質量部となるように添加した後、水を加えて全体を稀釈し、繊維分濃度0.03質量%の繊維スラリーを得た。
<シートの作製>
比較例4と同様とした。
<熱圧加工処理>
比較例1と同様とした。
【0083】
(比較例10)
<繊維原料スラリーの調製>
比較例1と同様とした。
<繊維スラリーの調製>
前記繊維原料スラリーに、高分子粘剤1を繊維分100質量部に対して0.05質量部となるように添加した後、水を加えて全体を稀釈し、繊維分濃度0.03質量%の繊維スラリーを得た。
<シートの作製>
比較例4と同様とした。
<熱圧加工処理>
比較例1と同様とした。
【0084】
以上の実施例及び比較例において得られた半透膜支持体について、表1に評価結果を示す。
【0085】
【表1】
【0086】
(評価方法)
<ワイヤー剥離性>
抄紙機の抄紙した湿紙について、抄紙パートのプラスチックワイヤから剥がした際のワイヤーからの湿紙の剥がれ方(剥がれ抵抗、ワイヤーへの繊維の取られ)を目視評価した。評価は下記の要領で行った。
◎…ほとんど抵抗なく剥がれ、繊維も取られない。
○…軽く抵抗があるが繊維は取られない。(実用レベル)
△…抵抗が大きく、輪郭部などにわずかに繊維の残りがある。(実用下限レベル)、
×…抵抗が大きく剥がれにくく、部分的にワイヤー上に残る。(実用に適さない。)。
<坪量の測定>
JIS P 8124:1998「紙及び板紙−坪量測定方法」に準じて行った。単位はg/mとした。
【0087】
<厚さ、密度の測定>
JIS P 8118:1998「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準じて行った。単位はμmとした。
【0088】
<フラジール透気度>
フラジール透気度は、JIS L1096に記載の通気性試験A法(フラジール形法)に準拠し、スイス テクステスト社製通気性試験機FX3300にて測定した。
【0089】
<質量分布均一性Sn>
得られた半透膜支持体を23℃、50%RHの環境で24時間調湿したのち、β線地合計(Beta Formation Tester BFT−1:AMBERTEC社製)を用いて質量分布標準偏差を測定し、式(A)に基づいて質量分布均一性Snを求めた。
【0090】
<裏抜け試験[1]>
得られた半透膜支持体用不織布からA4判サイズの試料を切り出し、ポリスルフォン樹脂のDMF(ジメチルホルムアミド)20質量%溶液についてギャップアプリケーションを用いて半透膜支持体上に塗工したのち、水に浸漬して塗工層を固化して半透膜を形成した。半透膜の膜厚はギャップアプリケーションの隙間を調整して、乾燥後で50μmとした。支持体を裏面から観察して塗工液の裏抜けの程度を目視評価した。評価は下記の要領で行った。
◎…裏抜けはない。(実用レベル)
○…裏抜けはないが、地合の薄い部分で塗工液の浸透が見られる。(実用レベル)
△…何枚も塗工すると、裏抜けする場合がある。(実用下限レベル)
×…裏抜けがある。(実用に適さない)
【0091】
<裏抜け試験[2]>
裏抜け試験[1]におけるポリスルフォン樹脂のDMF(ジメチルホルムアミド)の溶液濃度を15%と薄くし、半透膜の膜厚を乾燥後で50μmとなるようギャップアプリケーションの隙間を調整した以外は裏抜け試験[1]と同様にして処理を行った。支持体を裏面から観察して塗工液の裏抜けの程度を目視評価した。評価は下記の要領で行った。なお、裏抜け試験[1]に比べ樹脂溶液濃度が薄いので樹脂液が支持体により浸透しやすいため、裏抜け試験[1]より厳しい評価となる。
◎…裏抜けはない。(実用レベル)
○…裏抜けはないが、地合の薄い部分で塗工液の浸透が見られる。(実用レベル)
△…何枚も塗工すると、裏抜けする場合がある。(実用下限レベル)
×…裏抜けがある。(実用に適さない)
【0092】
実施例1〜20の半透膜支持体は、いずれも、質量分布係数Snが0.05以下であって、樹脂塗工液の裏抜け試験[1]、[2]のいずれも良好であった。2層構造と粘剤添加の相乗効果があったと考えられる。また、抄紙の際、抄紙シートを2枚のフェルトで挟み込んで脱水を行った実施例3と湿紙の片面のみフェルトを接触させて脱水を行った実施例11とを比べると、実施例3の方が、質量分布係数Snが小さくなり、より均一性が良好になった。また、抄紙の際、抄紙シートを2枚のフェルトで挟み込んで脱水を行った実施例8と湿紙の片面のみフェルトを接触させて脱水を行った実施例10とを比べると、実施例8の方が、質量分布係数Snが小さくなり、より均一性が良好になった。
【0093】
一方、比較例1〜4は1層構造で粘剤添加量を添加しても質量分布係数Snは0.05以下にはならず、裏抜け試験[1]、[2]の両方を良好とすることはできなかった。比較例4〜10は2層構造であるが、比較例4は繊維分濃度が高いため、比較例5は粘剤分子量が低いため、比較例10は粘剤添加量が少ないため、いずれも質量分布係数Snが0.05より大きく裏抜け試験[1]、[2]が不良であった。また、比較例7、8、9は粘剤添加量が多すぎてワイヤー剥離性が悪化した。