特許第6886902号(P6886902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886902
(24)【登録日】2021年5月19日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】電子時計のムーブメント及び電子時計
(51)【国際特許分類】
   G04C 3/00 20060101AFI20210603BHJP
   G04C 3/14 20060101ALI20210603BHJP
   G04G 17/00 20130101ALI20210603BHJP
【FI】
   G04C3/00 K
   G04C3/14 X
   G04G17/00 H
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-172946(P2017-172946)
(22)【出願日】2017年9月8日
(65)【公開番号】特開2019-49436(P2019-49436A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2020年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂田 新之介
(72)【発明者】
【氏名】中平 大輔
(72)【発明者】
【氏名】松村 佳和
(72)【発明者】
【氏名】森田 翔一郎
(72)【発明者】
【氏名】廣田 悠介
【審査官】 細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−112991(JP,U)
【文献】 特開2017−053634(JP,A)
【文献】 特開2016−151429(JP,A)
【文献】 特開2012−163456(JP,A)
【文献】 国際公開第99/067596(WO,A1)
【文献】 特開昭55−010532(JP,A)
【文献】 特開2017−026461(JP,A)
【文献】 特開2001−108764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04C 3/00, 3/14
G04G 17/00
G04B 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ、ステータ及び導電線がコイル巻芯に巻かれたコイルを有するステップモータと
平面視で前記ステップモータの少なくとも一部を覆う耐磁板と、を有し、
前記耐磁板は、前記コイル巻芯の両端部から前記コイル巻芯の延びた方向への延長線上の部分を覆うとともに、
前記耐磁板の、前記延長線上の部分を前記コイル巻芯に向かって流れる磁気の流れを前記コイル巻芯に向かわない方向に変更する磁気流れ変更部が、前記コイル巻芯の両端部からの延長線にそれぞれ対応する部分に前記延長線と交差して形成され、
前記磁気流れ変更部は、前記耐磁板に施された、厚さ方向に貫通した孔又は前記厚さ方向の厚さが他の部分に比べて薄く形成された穴である電子時計のムーブメント。
【請求項2】
ロータ、ステータ及び導電線がコイル巻芯に巻かれたコイルを有するステップモータと、
前記ステップモータの少なくとも一部を覆う耐磁板と、を有し、
前記耐磁板は、前記コイル巻芯の両端部から前記コイル巻芯の延びた方向への延長線上の部分を覆うとともに、
前記耐磁板の、前記延長線上の部分を前記コイル巻芯に向かって流れる磁気の流れを前記コイル巻芯に向かわない方向に変更する磁気流れ変更部が、前記コイル巻芯の両端部からの延長線にそれぞれ対応する部分に前記延長線と交差して形成され、
前記磁気流れ変更部は、前記耐磁板に施された、厚さ方向に貫通した孔又は前記厚さ方向の厚さが他の部分に比べて薄く形成された穴であり、
記磁気流れ変更部が、前記ステータの一部を前記ステータの外側から囲むように延びている電子時計のムーブメント。
【請求項3】
ロータ、ステータ及び導電線がコイル巻芯に巻かれたコイルを有するステップモータと、
前記ステップモータの少なくとも一部を覆う耐磁板と、を有し、
前記耐磁板は、前記コイル巻芯の両端部から前記コイル巻芯の延びた方向への延長線上の部分を覆うとともに、
前記耐磁板の、前記延長線上の部分を前記コイル巻芯に向かって流れる磁気の流れを前記コイル巻芯に向かわない方向に変更する磁気流れ変更部が、前記コイル巻芯の両端部からの延長線にそれぞれ対応する部分に前記延長線と交差して形成され、
前記磁気流れ変更部は、前記耐磁板に施された、厚さ方向に貫通した孔又は前記厚さ方向の厚さが他の部分に比べて薄く形成された穴であり、
記耐磁板が、他の部品を支持する部分である支持部を有し、
前記磁気流れ変更部は、前記磁気の流れの向きを、前記支持部に向かうように変更する電子時計のムーブメント。
【請求項4】
ロータ、ステータ及び導電線がコイル巻芯に巻かれたコイルを有するステップモータと、
前記ステップモータの少なくとも一部を覆う耐磁板と、を有し、
前記耐磁板は、前記コイル巻芯の両端部から前記コイル巻芯の延びた方向への延長線上の部分を覆うとともに、
前記耐磁板の、前記延長線上の部分を前記コイル巻芯に向かって流れる磁気の流れを前記コイル巻芯に向かわない方向に変更する磁気流れ変更部が、前記コイル巻芯の両端部からの延長線にそれぞれ対応する部分に前記延長線と交差して形成され、
前記磁気流れ変更部は、前記耐磁板に施された、厚さ方向に貫通した孔又は前記厚さ方向の厚さが他の部分に比べて薄く形成された穴であり、
記ステップモータを囲むリング状の耐磁板をさらに備え、
前記リング状の耐磁板は、周方向の一部に切欠きを有し、
前記ステップモータは、前記延長線が前記切欠きと前記リング状の中心とを結ぶ方向に略平行となる姿勢で配置されている電子時計のムーブメント。
【請求項5】
前記リング状の耐磁板は、前記コイル巻芯の両端部からの延長線にそれぞれ対応する部分に形成された2つの前記磁気流れ変更部の外側に配置され、
前記リング状の耐磁板は前記耐磁板に接して配置されている請求項4に記載の電子時計のムーブメント。
【請求項6】
ロータ、ステータ及び導電線がコイル巻芯に巻かれたコイルを有するステップモータと、
前記ステップモータの少なくとも一部を覆う耐磁板と、を有し、
前記耐磁板は、前記コイル巻芯の両端部から前記コイル巻芯の延びた方向への延長線上の部分を覆うとともに、
前記耐磁板の、前記延長線上の部分を前記コイル巻芯に向かって流れる磁気の流れを前記コイル巻芯に向かわない方向に変更する磁気流れ変更部が、前記コイル巻芯の両端部からの延長線にそれぞれ対応する部分に前記延長線と交差して形成され、
前記磁気流れ変更部は、前記耐磁板に施された、厚さ方向に貫通した孔又は前記厚さ方向の厚さが他の部分に比べて薄く形成された穴であり、
記ステップモータと前記磁気流れ変更部との間に磁性部材が配置されている電子時計のムーブメント。
【請求項7】
前記ステップモータを複数有し、前記磁気流れ変更部が、前記耐磁板の、複数の前記ステップモータのそれぞれに対応して備えられている請求項1から6のうちいずれか1項に記載の電子時計のムーブメント。
【請求項8】
前記磁気流れ変更部が前記孔であり、
前記耐磁板の外形輪郭よりも内側の領域に対応した範囲の部品が、前記孔に配置されている請求項1から7のうちいずれか1項に記載の電子時計のムーブメント。
【請求項9】
請求項1から8のうちいずれか1項に記載のムーブメントをケースの内部に収容した電子時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子時計のムーブメント及び電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
ステップモータにより指針を駆動する電子時計は、外部磁界からステップモータを保護するための耐磁板をムーブメントに備えている。耐磁板は、一般に、ステップモータを厚さ方向の上下から覆うように形成されている。近年、電子時計は多機能化し、各機能に対応して多数のステップモータが装備されている。しかし、ステップモータごとに耐磁板を設けると耐磁板の数が増えてコストが増加する。
【0003】
そこで、複数のステップモータを1つの大きな耐磁板で覆うことで、コストの上昇を抑えることが行なわれている(例えば、特許文献1参照)。さらに、耐磁板に、ステップモータ以外の部品を押さえる受板の機能も持たせるように耐磁板を大きくして受板を無くし、コストをさらに低減することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−026461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、耐磁板が、ステップモータ以外の耐磁性能が不要な部品を覆う部分を含むように大きくなると、耐磁板が外部磁界に晒される領域が大きくなるため、耐磁板に流れる磁気が増えるおそれがある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、耐磁板で覆われたステップモータへの磁気の影響を低減することができる電子時計のムーブメント及び電子時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1は、ロータ、ステータ及び導電線がコイル巻芯に巻かれたコイルを有するステップモータと、前記ステップモータの少なくとも一部を覆う耐磁板と、を有し、前記耐磁板は、前記コイル巻芯の両端部からの延長線にそれぞれ対応する部分に、前記延長線と交差して形成され、前記コイル巻芯に向かう磁気の流れを前記コイル巻芯に向かわない方向に変更する磁気流れ変更部を備えている電子時計のムーブメントである。
【0008】
本発明の第2は、本発明に係る電子時計のムーブメントをケースの内部に収容した電子時計である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電子時計のムーブメント及び電子時計によれば、耐磁板で覆われたステップモータへの磁気の影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る電子時計の一実施形態を示し、裏蓋側から、二点鎖線で表したケースを仮想的に透過して実線で表したムーブメントが見えている状態を表す部分透視図である。
図2図1に示したムーブメントにおけるステップモータと耐磁板との配置を示す平面図である。
図3】特定の方向に長い形状で形成されたスリットを示す模式図である。
図4図3に示したスリットと同様に機能を発揮する、特定の方向に並んだ複数の円形の孔を示す模式図である。
図5】変形例1のムーブメントにおけるステップモータと耐磁板との配置を示す平面図である。
図6】変形例2のムーブメントにおけるステップモータと耐磁板との配置を示す平面図である。
図7】本発明の他の実施形態である電子時計のムーブメントが2つのステップモータを有するものであるとき、2つのステップモータの配置状態と耐磁板におけるスリットの形成状態とのバリエーション(変形例3)を示す模式図である。
図8】本発明の他の実施形態である電子時計のムーブメントが2つのステップモータを有するものであるとき、2つのステップモータの配置状態と耐磁板におけるスリットの形成状態とのバリエーション(変形例4)を示す模式図である。
図9】本発明の他の実施形態である電子時計のムーブメントが2つのステップモータを有するものであるとき、2つのステップモータの配置状態と耐磁板におけるスリットの形成状態とのバリエーション(変形例5)を示す模式図である。
図10】本発明の他の実施形態である電子時計のムーブメントが2つのステップモータを有するものであるとき、2つのステップモータの配置状態と耐磁板におけるスリットの形成状態とのバリエーション(変形例6)を示す模式図である。
図11】本発明の他の実施形態である電子時計のムーブメントが2つのコイルを備えたステップモータを有するものであるとき、ステップモータの配置状態と耐磁板におけるスリットの形成状態とのバリエーション(変形例7)を示す模式図である。
図12図7における1つのステップモータに代えて、電池(磁性材料の一例)が配置された変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る電子時計のムーブメント及び電子時計の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0012】
<電子時計の構成>
図1は、本発明に係る電子時計の一実施形態である電子時計1を示し、裏蓋側から、二点鎖線で表したケース2を仮想的に透過して実線で表したムーブメント3が見えている状態を表す部分透視図である。図1の上方は12時方向、左方は3時方向である。図2は、図1に示したムーブメント3におけるステップモータ10と耐磁板50との配置を示す平面図である。
【0013】
電子時計1は、金属製のケース2の内部にムーブメント3が収容されている。電子時計1は、電波を受信し、受信した電波に基づいてムーブメント3が時刻指示用の指針を自動的に修正する機能を有する電波修正時計である。また,電子時計1は、太陽電池パネル及び二次電池を備えていて、太陽電池パネルで発電され,二次電池に蓄えられた電力によってムーブメント3を駆動している。
【0014】
<ムーブメントの構成>
ムーブメント3は、本発明に係る電子時計のムーブメントの一実施形態である。ムーブメント3は、二次電池に蓄えられた電力が供給されることで、時刻表示用の指針を回転させる輪列を駆動するステップモータ10と、電子時計1が有する各種の機能の切り替えや特定の機能の動作のために使用者の操作が入力されるプッシュボタン(PB)41,42と、PB41,42を押したときに、押した操作の反力としての節度感を発生させるPBクリックばね31,32(図2参照)と、耐磁板50と、を備えている。
【0015】
ムーブメント3は、上述した構成の他に、手動で指針の指示位置を修正するための機構やその他の機構及びその他の部材も備えているが、本実施形態の電子時計1の説明上必須ではないため説明を省略する。
【0016】
ステップモータ10は、図2に示すように、コイル11、ステータ12及びロータ13を備えている。コイル11は、直線状に延びたコイル巻芯11aに導電線11bが螺旋状に巻き付けられている。ステータ12は、コイル巻芯11aの一方の端部11cと他方の端部11dとにそれぞれ接続されている。そして、ステータ12の、コイル巻芯11aの端部11cに接続された側とは反対側の端部と、コイル巻芯11aの端部11dに接続された側とは反対側の端部とは、ロータ13を挟んで対向するように形成されている。
【0017】
耐磁板50は、図2に示すように、平面視でステップモータ10のコイル11を除いた全体を覆うように配置されている。ステップモータ10のコイル11は、ステータ12やロータ13に比べて厚さ方向の寸法が大きい。このため、耐磁板50は、コイル11との干渉防止のために、コイル11を厚さ方向に通す逃げ孔53が形成されている。
【0018】
なお、耐磁板50は、コイル11をも覆うものでもよいが、ステップモータ10の全体を覆うものでなくてもよい。具体的には、耐磁板50は、ロータ13や、コイル巻芯11aの端部11cからコイル巻芯11aの延びた方向への延長線16a及びコイル巻芯11aの端部11dからコイル巻芯11aの延びた方向への延長線16b上の部分を少なくとも覆うものであればよい。
【0019】
耐磁板50は、電子時計1の外部の磁界によって電子時計1の内部に流れ込んだ磁気がステップモータ10に流れるのを防止又は抑制するものであるため、本来は、ステップモータ10だけを覆う大きさに形成されていればよい。これに対して、本実施形態の耐磁板50は、ステップモータ10に比べて大きなサイズに形成されている。そして、ステップモータ10を覆う部分以外の部分(耐磁板50としての機能が要求されない部分)は、輪列やPBクリックばね31,32等を支持する受板として機能する。
【0020】
なお、本実施形態のムーブメント3は、1つのステップモータ10だけを備えているが、2つ以上のステップモータ10を備えていてもよく、それら2つ以上のステップモータ10を備えていても、1つの耐磁板50で2つ以上のステップモータ10を覆うことができる。したがって、耐磁板50は、複数のステップモータ10ごとに設けられる小さいサイズの耐磁板を複数備える場合に比べてコストを低減することができる。
【0021】
また、耐磁板50は、PBクリックばね31,32等をも支持するため、PBクリックばね31,32を支持するための受板を耐磁板50とは別に備えるものに比べても、コストを低減することができる。
【0022】
耐磁板50は、コイル巻芯11aの両端部11c,11dからのコイル巻芯11aの長手方向の各延長線16a,16bを覆う部分(延長線に対応する部分)に、各延長線16a,16bと交差したスリット51,52が形成されている。これらのスリット51,52は、いずれも長手方向(延長線16a,16bに対して交差した方向)の寸法が、コイル巻芯11aに導電線11bが巻かれた状態のコイル11の直径よりも大きい(長さが長い)。また、これらのスリット51,52は、幅方向(延長線16a,16bに沿った方向(コイル巻芯11aの長手方向))の延長線16a,16b上での寸法が、コイル巻芯11aの直径よりも大きい(幅が広い)。
【0023】
以上のように構成されたムーブメント3及び電子時計1によると、ステップモータ10の動作に影響が出やすい外部磁界の方向は、ステップモータ10のコイル11の長手方向である。本実施形態における耐磁板50が、図2に示すように、コイル11の延長線16aの方向からコイル11に向かう磁気の流れT1が生じる外部磁界に晒されたとき、耐磁板50における磁気の流れT1は、コイル11の直近に形成されたスリット51によって、コイル11への流れが阻害される。
【0024】
そして、その磁気の流れT1は、スリット51により、コイル11に向かわない方向、具体的にはスリット51の外側の耐磁板50の縁部に沿う方向の流れT1a,T1bに変更される。つまり、スリット51は、コイル11に向かう磁気の流れT1をコイル11に向かわない方向に変更する磁気流れ変更部の一例である。
【0025】
また、本実施形態における耐磁板50が、図2に示すように、コイル11の延長線16bの方向からコイル11に向かう磁気の流れT2が生じる外部磁界に晒されたとき、耐磁板50における磁気の流れT2は、コイル11の直近に形成されたスリット52によって、コイル11への流れが阻害される。
【0026】
そして、その磁気の流れT2は、スリット52により、コイル11に向かわない方向、具体的にはスリット52の外側の耐磁板50の縁部に沿う方向の流れT2a,T2bに変更される。つまり、スリット52は、コイル11に向かう磁気の流れT2をコイル11に向かわない方向に変更する磁気流れ変更部の一例である。
【0027】
このように、本実施形態の電子時計1のムーブメント3及び電子時計1によれば、耐磁板50で覆われたステップモータ10に、最も影響が出易い方向であるコイル11の長手方向への磁気の流れT1,T2が流れるのを防止又は抑制することができる。これにより、耐磁板50に覆われたステップモータ10が、磁気の流れT1,T2の影響を受け難くすることができる。
【0028】
スリット51により向きが変化した磁気の流れT1aは、耐磁性が要求されない部品の一例であるPBクリックばね31を支持する部分である支持部56aに向かい、スリット51により向きが変化した磁気の流れT1bは、ステップモータ10以外の部品を支持する支持部56bに向かう。したがって、本実施形態のムーブメント3及び電子時計1は、これら磁気の流れT1a,T1bを受容する部分(磁気の流れT1を迂回させる磁気流れ迂回部)を支持部56a,56bとして有効に活用することができる。
【0029】
同様に、スリット52により向きが変化した磁気の流れT2aは、耐磁性が要求されない部品の一例であるPBクリックばね32を支持する部分である支持部56cに向かい、スリット52により向きが変化した磁気の流れT2bは、ステップモータ10以外の部品を支持する支持部56dに向かう。したがって、本実施形態のムーブメント3及び電子時計1は、これら磁気の流れT2a,T2bを受容する部分(磁気の流れT2を迂回させる磁気流れ迂回部)を支持部56c,56dとして有効に活用することができる。
【0030】
本実施形態の電子時計1のムーブメント3及び電子時計1は、本発明における磁気流れ変更部として、耐磁板50の厚さ方向に貫通したスリット51,52を適用したが、磁気流れ変更部は、特定の方向に長いスリットに限定されるものではない。すなわち、本発明における磁気流れ変更部は、耐磁板50の厚さ方向に貫通した孔であってもよいし、外形輪郭が内側に切れ込んだ切欠きであってもよい。孔の形状は円形状であってもよいし、矩形状であってもよいし、その他の形状であってもよい。
【0031】
なお、スリット51,52は、図3に示すように、長手方向の寸法をLとして細長く形成されているが、このような細長いスリット51,52に代えて、例えば図4に示すように、スリット51,52よりも長手方向の寸法が小さい直径D(<L)の複数の円形の孔51aを、間隔54をあけて一列に並べるように形成してもよい。
【0032】
一つの長いスリット51,52に代えて、複数個の孔51aで磁気流れ変更部を形成することにより、間隔54の部分が耐磁板50として残るため、一つのスリット51,52が形成された耐磁板50よりも耐磁板50の強度を高く保つことができる。なお、円形の孔51aを並べる数は、一つのスリット51,52の長手方向の寸法Lに対応する数にすればよい。
【0033】
スリット51,52は、長手方向の任意の位置で、幅方向の寸法が同じである形状に限定されない。幅方向の寸法が、長手方向の位置ごとに異なるものであってもよい。したがって、複数の円形の孔51aで代用する場合にも、複数の孔51aの直径Dは同じであるものでなくてもよい。また、スリット51,52は、略I字状の外形輪郭のものに限定されず、C字状、L字状等の異形の外形輪郭を有するものであってもよい。
【0034】
また、本発明における磁気流れ変更部は、コイル11の方向へ向かう磁気の流れT1,T2を、コイル11の方向へ向かわない磁気の流れT1a,T1b,T2a,T2bに流れの方向を変えさせればよい。つまり、磁気流れ変更部は、磁気が、コイル11の方向へ向かうよりもコイル11の方向とは異なる方向へ向かう方に流れ易くなっていればよい。
したがって、磁気流れ変更部として耐磁板50の厚さ方向に貫通したスリット51,52に代えて厚さ方向の厚さが他の部分に比べて薄く形成された、特定の方向に長い溝を適用してもよいし、耐磁板50の厚さ方向に貫通した孔に代えて厚さ方向の厚さが他の部分に比べて薄く形成された穴(凹部)を適用してもよい。
【0035】
本実施形態の電子時計1のムーブメント3及び電子時計1は、スリット51,52が、コイル11の両端部11c,11dの外側にそれぞれ形成されているが、このように、スリット51,52は、コイル11の両端部11c,11dの外側に対応して形成されていることが必要である。磁気の流れが一方向に固定されている環境であれば、その流れの方向の磁気にのみ適するように、スリット51,52を、コイル11の一方の端部11c側または端部11d側に対応する部分にのみ設けることもできる。
【0036】
しかし、電子時計1が、携帯されてさまざまな場所に移動される腕時計の場合は、そのように磁気の流れが一方向に固定された環境で用いられることは稀である。したがって、実用上は、耐磁板50の、コイル11の両端部11c,11dの外側にそれぞれ対応する部分に、スリット51,52を形成するのが好ましい。
【0037】
本実施形態におけるスリット51,52は、ステータ12の一部を外側から囲むように、ステータ12の外形輪郭に沿って延びているため、ステータ12に対する外部磁界の影響を効果的に排除することができる。ただし、本発明における磁気流れ変更部は、ステータの外形輪郭に沿った形状でなくてもよい。
【0038】
本実施形態におけるスリット51,52は、なお、スリット51,52の長手方向の寸法はコイル11の直径よりも大きく、スリット51,52の幅方向の寸法はコイル巻芯11aの直径よりも大きいが、本発明における磁気流れ変更部は、長手方向の寸法はコイル11の直径よりも小さくてもよいし、幅方向の寸法はコイル巻芯11aの直径よりも小さくてもよい。
【0039】
耐磁板50の支持部56a,…,56dは、PBクリックばね31,32を支持する部分に限定されず、ムーブメント3に備えられている他の部品を支持する部分であってもよい。また、支持部56a,…,56dは、部品を支持する部分でなくてもよく、スリット51,52によって向きが変えられた磁気の流れT1a,T1b,T2a,T2bを受容する部分として機能すればよい。
【0040】
なお、ムーブメントが複数のステップモータを有する場合は、駆動頻度が最も低いステップモータを覆っている部分を、支持部として磁気の流れを逃がす部分としてもよい。
【0041】
<変形例1>
図5は、本発明の他の実施形態(変形例1)である電子時計101のムーブメント103におけるステップモータ110,120と耐磁板150との配置を示す平面図である。図示の電子時計101は、ムーブメント103が異なる以外は、図1に示した電子時計1と基本的な構成は同じである。
【0042】
ムーブメント103は、ムーブメント3と異なり、2つのステップモータ110,120を有し、耐磁板150は1枚で、これら2つのステップモータ110,120を覆う。
【0043】
耐磁板150には、ステップモータ110のコイル111を逃げる逃げ孔153、ステップモータ120のコイル121を逃げる逃げ孔156の他に、コイル111のコイル巻芯111aの両端部111c,111dからコイル巻芯111aの長手方向の各延長線116a,116bを覆う部分(延長線に対応する部分)に、各延長線116a,116bと交差した孔151,152が形成されている。
【0044】
同様に、耐磁板150には、コイル121のコイル巻芯121aの両端部121c,121dからコイル巻芯121aの長手方向の各延長線126a,126bを覆う部分(延長線に対応する部分)に、各延長線126a,126bと交差した孔154,155が形成されている。
【0045】
このように構成されたムーブメント103及び電子時計101によっても、コイル111の延長線116a,116bの方向からコイル111に向かう磁気の流れT1,T2が生じる外部磁界に晒されたとき、耐磁板150における磁気の流れT1,T2は、コイル111の直近に形成された矩形の孔151や円形の孔152によって、コイル111への流れが阻害され、コイル111に向かわない方向の流れT1a,T1b,T2a,T2bに変更される。
【0046】
耐磁板150は、そのようなコイル111に向かわない方向の流れT1a,T1b,T2a,T2bを受容する部分として、ステップモータ110,120以外の他の部品を支持する支持部157a,157b,157c,157d(支持部は、実際に具体的な部品を支持していなくてもよく、部品を支持し得る領域を有する部分であればよい。)を備えているが、これら磁気の流れT1a,T1b,T2a,T2bを受容する部分を支持部157a,157b,157c,157dとして有効に活用することができる。
【0047】
同様に、コイル121の延長線126a,126bの方向からコイル121に向かう磁気の流れT3,T4が生じる外部磁界に晒されたとき、耐磁板150における磁気の流れT3,T4は、コイル121の直近に形成された矩形の孔154,155によって、コイル121への流れが阻害され、コイル121に向かわない方向の流れT3a,T3b,T4a,T4bに変更される。
【0048】
耐磁板150は、そのようなコイルに向かわない方向の流れT3a,T3b,T4a,T4bを受容する部分として、ステップモータ110,120以外の他の部品を支持する支持部157e,157f,157g,157h(支持部は、実際に具体的な部品を支持していなくてもよく、部品を支持し得る部分であればよい。)を備えている。
【0049】
このように、電子時計101のムーブメント103及び電子時計101によれば、耐磁板150で覆われたステップモータ110に、最も影響が出易い方向であるコイル111の長手方向への磁気の流れT1,T2が流れるのを防止又は抑制し、耐磁板150で覆われたステップモータ120に、最も影響が出易い方向であるコイル121の長手方向への磁気の流れT3,T4が流れるのを防止又は抑制することができる。これにより、耐磁板150に覆われたステップモータ110が、磁気の流れT1,T2の影響を受け難くし、耐磁板150に覆われたステップモータ120が、磁気の流れT3,T4の影響を受け難くすることができる。
【0050】
また、電子時計101のムーブメント103及び電子時計101によれば、1枚の耐磁板150によって2つのステップモータ110,120を覆うため、1枚の耐磁板で1つのステップモータをそれぞれ独立して覆うために2枚の耐磁板を用いる場合に比べて、コストを下げることができる。
【0051】
また、各ステップモータ110,120に対応して、それぞれ磁気流れ変更部として機能する孔151,152,154,155が耐磁板150に形成されているため、複数のステップモータ110,120の全てについて、外部磁界の影響を抑制することができる。
【0052】
なお、ムーブメント103は、磁気流れ変更部として機能する孔152には、耐磁板150の外形輪郭よりも内側領域に対応した範囲に配置された他の部品104(例えば、アラーム用の導通ばね)を配置してもよい。このように、孔152に他の部品104を配置する構成により、孔152を磁気流れ変更部としてのみに用いる場合に比べて、スペースの有効利用を図ることができる。
【0053】
<変形例2>
図6は、本発明の他の実施形態(変形例2)である電子時計201のムーブメント203におけるステップモータ210と耐磁板250との配置を示す平面図である。図示の電子時計201は、ムーブメント203が異なる以外は、図1に示した電子時計1と基本的な構成は同じである。
【0054】
ムーブメント203は、ムーブメント3と異なり、ステップモータ210を覆う耐磁板250が、ムーブメント203の外周部分を覆うリング状の耐磁板(以下、リング状耐磁板)250aと、リング状耐磁板250aも含めて、ムーブメント203の全体を覆う板状の耐磁板(以下、板状耐磁板)250bとによって構成されている。
【0055】
リング状耐磁板250aは、ムーブメント203の外形に沿うように形成されている。リング状耐磁板250aはリングの一部(時計201の例えば3時の位置)が切り欠かれている。この切り欠かれた部分(切欠き)250a1に対応した部分(切欠き250a1と平面視で重なる部分)には、リング状耐磁板250aの外側から、ムーブメント203の中心C(リング状耐磁板250aのリングの中心)に向かう方向に延びて、リング状耐磁板250aの内側まで貫通した巻真205が配置されている。
【0056】
リング状耐磁板250aは、厚さ方向には、ステップモータ210と重ならないが、ムーブメント203の半径方向の外側から囲んで配置され、ムーブメント203の外部磁界に対してはムーブメント203に対する磁気の流れを遮蔽する機能を発揮する。したがって、リング状耐磁板250aは、ステップモータ210や後述する板状耐磁板250bに形成された2つのスリット251,252の外側に配置されている。一方、板状耐磁板250bは、厚さ方向に、ステップモータ210と重なってステップモータ210を覆っている。また、板状耐磁板250bは、厚さ方向に、巻真205にも重なって、巻真205も覆っている。
【0057】
板状耐磁板250bは、本来は、この板状耐磁板250bの上面に配置されるフィルム状のソーラーセルを支持する受板であるが、この受板を、耐磁板としても機能させたものである。そして、板状耐磁板250bは、ステップモータ210のコイル211のコイル巻芯211aの両端部211c,211dからコイル巻芯211aの長手方向の各延長線216a,216bを覆う部分(延長線に対応する部分)に、各延長線216a,216bと交差したスリット251,252が形成されている。リング状耐磁板250aと板状耐磁板250bとは、厚さ方向に、図示を略した地板を挟んで配置されている。なお、リング状耐磁板250aと板状耐磁板250bとは接して配置されてもよい。
【0058】
このように構成されたムーブメント203及び電子時計201によっても、コイル211の延長線216a,216bの方向からコイル211に向かう磁気の流れT1,T2が生じる外部磁界に晒されたとき、板状耐磁板250bにおける磁気の流れT1,T2は、コイル211の直近に形成されたスリット251,252によって、コイル211への流れが阻害され、コイル211に向かわない方向の流れT1a,T1b,T2a,T2bに変更される。
【0059】
板状耐磁板250bは、そのようなコイル211に向かわない方向の流れT1a,T1b,T2a,T2bを受容する部分として、ステップモータ210以外の他の部品を支持する支持部257a,257bを備えているが、これら磁気の流れT1a,T1b,T2a,T2b,を受容する部分を支持部257a,257bとして有効に活用することができる。
【0060】
このように、電子時計201のムーブメント203及び電子時計201によれば、板状耐磁板250bで覆われたステップモータ210に、最も影響が出易い方向であるコイル211の長手方向への磁気の流れT1,T2が流れるのを防止又は抑制することができる。これにより、板状耐磁板250bに覆われたステップモータ210が、磁気の流れT1,T2の影響を受け難くすることができる。
【0061】
なお、電子時計201は、コイル巻芯211aの延長線216a,216bが、巻真205を通すために周方向の一部に形成されたリング状耐磁板250aの切欠き250a1の方向(切欠き250a1とリング状耐磁板250aのリングの中心Cとを結ぶ方向)と平行又は略平行(以下、単に略平行という。)になる姿勢でステップモータ210が配置された構成となっている。このように、ステップモータ210の配置を、コイル巻芯211aの延長線216a,216bがリング状耐磁板250aの切欠き250a1の方向と略平行になる姿勢とすることにより、リング状耐磁板250a及び板状耐磁板250bによるステップモータ210への耐磁性能を一層向上させることができる。
【0062】
すなわち、図6に示すように、外部磁界によるコイル巻芯211aに略平行な磁気の流れT1は、板状耐磁板250bの他にリング状耐磁板250aにも流れる。具体的には、磁気の流れT1の一部は、リング状耐磁板250aの、切欠き250a1を挟んで対向する各端部250a2,250a3からそれぞれリング状耐磁板250aの内部に誘導される。端部250a2からリング状耐磁板250aの内部に誘導された磁気の流れT11aは、時計回りにリング状耐磁板250aの内部を流れ、端部250a3からリング状耐磁板250aの内部に誘導された磁気の流れT11bは、反時計回りにリング状耐磁板250aの内部を流れる。
【0063】
したがって、コイル巻芯211aに略平行な磁気の流れT1は、板状耐磁板250bに誘導された分は、スリット251,252によってコイル巻芯211aから遠ざけられ、板状耐磁板250bに誘導されなかった分も、リング状耐磁板250aに誘導されて、コイル巻芯211aから遠ざけられる。これにより、電子時計201のムーブメント203及び電子時計201によれば、コイル巻芯211aに略平行な磁気の流れT1に対して、ステップモータ210への耐磁性能を一層向上させることができる。
【0064】
一方、仮に、リング状耐磁板250aの切欠き250a1の方向が、コイル巻芯211aの延長線216a,216bに略直交する姿勢でステップモータ210が配置されている場合(図6において、リング状耐磁板250aの切欠き250a1が、12時の位置(図示の上側)又は6時の位置(図示の下側)に形成されている場合)、磁気の流れT1の一部は、リング状耐磁板250aの内部に誘導されて、リング状耐磁板の250aの内部で時計回り方向の流れT11a及び反時計回り方向の流れT11bとなる。
【0065】
しかし、12時の位置に切欠き250a1が形成されている場合は、時計回り方向の磁気の流れT11aが切欠き250a1によって阻害され、切欠き250a1から板状耐磁板250bに流れて、コイル巻芯211aに向かう磁気の流れとなり、コイル巻芯211aに影響を与える可能性がある。また、6時の位置に切欠き250a1が形成されている場合は、反時計回り方向の磁気の流れT11bが切欠き250a1によって阻害され、切欠き250a1から板状耐磁板250bに流れて、コイル巻芯211aに向かう磁気の流れとなり、コイル巻芯211aに影響を与える可能性がある。なお、磁気の流れT1と向きが反対の磁気の流れT2についても、上述した磁気の流れT1の場合と同様の作用となる。
【0066】
以上、詳細に説明したように、ステップモータ210の配置を、コイル巻芯211aの延長線216a,216bがリング状耐磁板250aの切欠き250a1の方向と略平行になる姿勢とすることにより、ステップモータ210の配置を、コイル巻芯211aの延長線216a,216bがリング状耐磁板250aの切欠き250a1の方向と略平行にしない姿勢(例えば、ステップモータ210の配置を、コイル巻芯211aの延長線216a,216bがリング状耐磁板250aの切欠き250a1の方向と略直交する姿勢)としたものに比べて、リング状耐磁板250a及び板状耐磁板250bによるステップモータ210への耐磁性能を一層向上させることができる。
【0067】
なお、本発明に係る電子時計及びムーブメントは、上述した実施形態のように、ステップモータの配置を、コイル巻芯の延長線がリング状耐磁板の切欠きの方向と平行になる姿勢のものに限定されない。
【0068】
<その他の変形例>
図7,8,9,10,11は、本発明の他の実施形態である電子時計のムーブメントが2つのステップモータ310,320を有するものであるとき、2つのステップモータ310,320の配置状態と耐磁板350におけるスリット351,352,353の形成状態とのバリエーション(変形例3−7)を示す模式図である。
【0069】
2つのステップモータ310,320が、それぞれのコイル311,321が概略平行に並ぶ配置の場合(図7,8,9)は、耐磁板350の磁気流れ変更部としてのスリット351,352が、図7,8に示すように、2つのコイル311,321にそれぞれ共用されるように形成したり、図9に示すように、2つのコイル311,321の間のスリット352だけを共用されるように形成したりすることができる。
【0070】
具体的には、図7,8に示すように、スリット351が、ステップモータ310のコイル311の長手方向の延長線316a及びステップモータ320のコイル321の長手方向の延長線326aに交差するように形成され、スリット352が、ステップモータ310のコイル311の長手方向の延長線316b及びステップモータ320のコイル321の長手方向の延長線326bに交差するように形成されていればよい。
【0071】
また、図9に示すように、スリット351が、ステップモータ310のコイル311の長手方向の延長線316aに交差するように形成され、スリット352が、ステップモータ310のコイル311の長手方向の延長線316b及びステップモータ320のコイル321の長手方向の延長線326aに交差するように形成され、スリット353が、ステップモータ320のコイル321の長手方向の延長線326bに交差するように形成されていればよい。
【0072】
一方、2つのステップモータ310,320が、コイル311,321同士が概略直交するように並ぶ配置の場合(図10)は、それぞれのステップモータ310,320ごとに2つのスリットが形成される。具体的には、スリット351が、ステップモータ310のコイル311の長手方向の延長線316aに交差するように形成され、スリット352が、ステップモータ310のコイル311の長手方向の延長線316bに交差するように形成され、スリット353が、ステップモータ320のコイル321の長手方向の延長線326aに交差するように形成され、スリット354が、ステップモータ320のコイル321の長手方向の延長線326bに交差するように形成される。
【0073】
ただし、ステップモータ320のコイル321の長手方向の延長線326bが、ステップモータ310のコイル311に交差する配置の場合、耐磁板350には、コイル311を通す逃げ孔が形成されるため、この逃げ孔をスリット354とすることができる。
【0074】
なお、図11に示すように、ステップモータ310が2つのコイル311A,311Bを有するものであるときは、スリット351が、コイル311Aの長手方向の延長線316a及びコイル311Bの長手方向の延長線316cに交差するように形成され、スリット352が、コイル311Aの長手方向の延長線316b及びコイル311Bの長手方向の延長線316dに交差するように形成されていればよい。
【0075】
また、ステップモータに隣接して、磁性部材、特に電池等の大型磁性部材が配置されている構成の場合、この大型磁性部材の、ステップモータと隣接する側とは反対の近接部分に対応して、磁気流れ変更部(スリット等)を設けてもよい。この磁気流れ変更部が、大型磁性部材による外部磁気の誘導を防ぐことができ、隣接するステップモータに、大型磁性部材の誘導による外部磁気が流れるのを防ぐことができる。
【0076】
例えば図7に示す構成で、ステップモータ320に代えて電池380が配置されている構成(図12参照)の場合、その電池380の図示右側のスリット352が、電池380による外部磁気の誘導を防ぐ磁気流れ変更部として機能する。この構成は、ステップモータ320とスリット352との間に、電池380が配置されているという例である。
【符号の説明】
【0077】
1 電子時計
3 ムーブメント
10 ステップモータ
11 コイル
11a コイル巻芯
11b 導電線
11c,11d 端部
16a,16b 延長線
31,32 PBクリックばね
50 耐磁板
51,52 スリット
56a,56b,56c,56d 支持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12