特許第6886905号(P6886905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886905
(24)【登録日】2021年5月19日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】セラミックス部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 37/00 20060101AFI20210603BHJP
   C04B 35/64 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   C04B37/00 C
   C04B35/64
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-183853(P2017-183853)
(22)【出願日】2017年9月25日
(65)【公開番号】特開2019-59634(P2019-59634A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畑山 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敬輔
【審査官】 浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−172050(JP,A)
【文献】 特開平01−138179(JP,A)
【文献】 特開平08−187714(JP,A)
【文献】 特開平01−033080(JP,A)
【文献】 特表2015−515438(JP,A)
【文献】 特開昭63−282177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/00−37/04
C04B 35/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に開口する収容空間を内部に有する第1のセラミックス成形体と、前記収容空間に収容されるべき第2のセラミックス成形体とを準備する工程と、
前記第1のセラミックス成形体の収容空間に、前記収容空間を画定する内壁面の一部に前記第2のセラミックス成形体の外壁面が当接した部分と、前記内壁面の一部と前記第2のセラミックス成形体の外壁面とが離間した部分とを有する状態にて前記第2のセラミックス成形体を挿入し、前記離間した部分において内部空間を画定する工程と、
前記挿入した状態で、前記第1セラミックス成形体及び前記第2のセラミックス成形体を焼成して、前記当接した部分を一体化する工程とを備え、
前記第1のセラミックス成形体の前記焼成による収縮率が前記第2のセラミックス成形体の前記焼成による収縮率よりも高く、
前記第1のセラミックス成形体は外形が円筒形状であって、前記収容空間は前記第1のセラミックス成形体の少なくとも一端面において開口する円柱形状であり、
前記収容空間に挿入された状態において、前記第2のセラミックス成形体は前記第1のセラミックス成形体の軸線方向に延在する軸部と、前記軸部の外周面から径方向外側に突出し、前記第1のセラミックス成形体の内壁面と外周壁面が当接する隔壁部とを有し、
前記内壁面における前記隔壁部と当接する部分と前記第1のセラミックス成形体の外周面との間の最短距離をA[mm]、前記第1のセラミックス成形体の前記焼成による収縮率と前記第2のセラミックス成形体の前記焼成による収縮率との差をB[%]としたとき、15≦A/B≦75の関係が成立することを特徴とするセラミックス部材の製造方法。
【請求項2】
前記第1のセラミックス成形体の前記焼成による収縮率と前記第2のセラミックス成形体の前記焼成による収縮率との差が0.3%以下であることを特徴とする請求項1に記載のセラミックス部材の製造方法。
【請求項3】
前記第1のセラミックス成形体の密度が前記第2のセラミックス成形体の密度よりも低いことを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミックス部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置に用いられるセラミックス部材は、その内部に冷媒等の熱媒体や腐食性ガス等のプロセスガスが流通可能な溝、中空部などの複雑な内部空間を設ける必要がある場合がある。このような場合、外からの加工で内部空間を形成することが非常に困難又は不可能である場合がある。そこで、予め内部空間の一部となる部分を形成した複数のセラミックス成形体を接合して焼成することによって、内部空間を有するセラミックス焼結体を得ている。
【0003】
なお、特許文献1には、セラミックスからなる芯材と、この芯材を巻架するセラミックスからなる絶縁層との間に抵抗発熱体が埋設されたセラミックスヒーターを製造する際に、絶縁層としてグリーンシートを用い、このグリーンシートの収縮率と芯材に用いる生成形体の収縮率との差を3%以下とすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−102156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数のセラミックス成形体を接合して焼成することによってセラミックス焼結体を得る場合、その内部空間の形状は限定されたものとなる、又は、多数のセラミックス成形体を接合する必要があり、接合工程が複雑化するという課題があった。
【0006】
本発明は、上記従来の問題に鑑みなされたものであり、接合工程が簡易でありながら、セラミックス焼結体の内部空間の形状の多様化を図ることが可能なセラミックス部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のセラミックス部材の製造方法は、表面に開口する収容空間を内部に有する第1のセラミックス成形体と、前記収容空間に収容されるべき第2のセラミックス成形体とを準備する工程と、前記第1のセラミックス成形体の収容空間に、前記収容空間を画定する内壁面の一部に前記第2のセラミックス成形体の外壁面が当接した部分と、前記内壁面の一部と前記第2のセラミックス成形体の外壁面とが離間した部分とを有する状態にて前記第2のセラミックス成形体を挿入し、前記離間した部分において内部空間を画定する工程と、前記挿入した状態で、前記第1セラミックス成形体及び前記第2のセラミックス成形体を焼成して、前記当接した部分を一体化する工程とを備え、前記第1のセラミックス成形体の前記焼成による収縮率が前記第2のセラミックス成形体の前記焼成による収縮率よりも高いことを特徴とする。
【0008】
本発明のセラミックス部材の製造方法によれば、第1のセラミックス成形体の収容空間内に挿入される第2のセラミックス成形体のほうが第1のセラミックス成形体と比較して収縮率が小さいので、第1及び第2のセラミックス成形体の互いの当接した部分は焼成しても隙間が生じず、良好に接合される。このように第1のセラミックス成形体の収容空間内に第2のセラミックス成形体を挿入したうえでこれらセラミックス成形体を接合できるという新たな接合方法により、接合工程が簡易でありながら、セラミックス焼結体の内部空間の形状の多様化を図ることが可能となる。
【0009】
本発明のセラミックス部材の製造方法において、前記第1のセラミックス成形体の前記焼成による収縮率と前記第2のセラミックス成形体の前記焼成による収縮率との差が0.3%以下であることが好ましい。
【0010】
この場合、後述する実施例及び比較例から分かるように、セラミックス焼結体にクラックなどの不具合が発生することを抑制することが可能となる。
【0011】
また、本発明のセラミックス部材の製造方法において、前記第1のセラミックス成形体の密度が前記第2のセラミックス成形体の密度よりも低いことが好ましい。
【0012】
この場合、第1のセラミックス成形体の焼成による収縮率を第2のセラミックス成形体の焼成による収縮率よりも高くすることが可能となる。
【0013】
本発明のセラミックス部材の製造方法において、前記第1のセラミックス成形体は外形が円筒形状であって、前記収容空間は前記第1のセラミックス成形体の少なくとも一端面において開口する円柱形状であり、前記収容空間に挿入された状態において、前記第2のセラミックス成形体は前記第1のセラミックス成形体の軸線方向に延在する軸部と、前記軸部の外周面から径方向外側に突出し、前記第1のセラミックス成形体の内壁面と外周壁面が当接する隔壁部とを有し、前記内壁面における前記隔壁部と当接する部分と前記第1のセラミックス成形体の外周面との間の最短距離をA[mm]、前記第1のセラミックス成形体の前記焼成による収縮率と前記第2のセラミックス成形体の前記焼成による収縮率との差をB[%]としたとき、15≦A/B≦75の関係が成立する。
【0014】
これにより、後述する実施例及び比較例から分かるように、セラミックス焼結体にクラックなどの不具合が発生せず、且つ内壁面と隔壁部とが良好に接合されたものとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るセラミックス部材の製造方法の概略断面図を示し、図1Aは準備工程、図1Bは挿入工程、図1Cは焼成工程後の状態をそれぞれ示す。
図2】本発明の実施形態に係るセラミックス部材の製造方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係るセラミックス部材の製造方法について図1及び図2を参照して説明する。本製造方法は、準備工程S1、挿入工程S2及び焼成工程S3を備える。
【0017】
まず、図1Aに示すように、第1のセラミックス成形体10と第2のセラミックス成形体20とを準備する準備工程S1を行う。
【0018】
これらセラミックス成形体10,20は、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素などのセラミックスからなる成形体であり、同じセラミックス材料から構成されている。セラミックス成形体10,20の成形方法は何ら限定されず、CIP成形法、鋳込み成形法、押出し成形法などを適用することができる。また、セラミックス成形体10,20の原料は、セラミックス粉末の他に、バインダー、分散剤などの添加剤を適宜添加したものであってもよい。
【0019】
第1のセラミックス成形体10は、表面に開口する収容空間11を内部に有している。収容空間11の形状は限定されない。収容空間11は、第1のセラミックス成形体10の成形後に研削などで形成されるものであっても、成形時に形成されるものであってもよい。例えば、図1Aに断面図を示される第1のセラミックス成形体10においては、円柱形状の外形であり、この円柱形状と同軸に円柱形状の空間Tが形成されており、さらにこれと同軸に貫通穴Uが形成されている。
【0020】
第2のセラミックス成形体20は、第1のセラミックス成形体10の収容空間11に収容することが可能な形態に構成されている。第2のセラミックス成形体20の形状は限定されないが、成形後に研削などで形成される部分があってもよい。例えば、図1Aに断面図を示される第2のセラミックス成形体20においては、細長い円柱形状の軸部Vの外周面に3枚の円板状の隔壁部Wが径方向外側に突出した形状に形成されている。
【0021】
後述する挿入工程S2においてセラミックス成形体10,20が当接する部分は、第1のセラミックス成形体10の収容空間11に第2のセラミックス成形体20を挿入するに際して引っかかる等の影響がない表面状態及び寸法公差であれば特に限定されない。製品としての気密性が要求される場合には、セラミックス成形体10,20が当接する部分の面を研削機、研磨機等を用いて平滑にしておくことが望ましく、好ましくは表面粗さRaが5μm以下、より好ましくは1μm以下となるように研磨しておく。
【0022】
次に、図1Bに示すように、第1のセラミックス成形体10の収容空間11に、第2のセラミックス成形体20を挿入する挿入工程S2を行う。
【0023】
このとき、収容空間11を画定する第1のセラミックス成形体10の内壁面11aの一部に第2のセラミックス成形体20の外壁面20aを構成する隔壁部Wの外周壁面が当接した部分と、収容空間11を画定する内壁面11aの一部と第2のセラミックス成形体20の外壁面20aとが離間した部分とを有する状態となるように、第2のセラミックス成形体20を収容空間11内に挿入する。これにより、離間した部分において内部空間Sが画定される。
【0024】
この際、図1Bにおいて、第1のセラミックス成形体10の内壁面11aにおける第2のセラミックス成形体20の隔壁部Wと当接する部分と第1のセラミックス成形体10の外周面10aとの間の最短距離Aは、第1のセラミックス成形体10の厚さAとなる。
【0025】
次に、図1Cに示すように、第1のセラミックス成形体10の収容空間11に、第2のセラミックス成形体20を挿入した状態で、第1セラミックス成形体10及び第2のセラミックス成形体20を焼成して、当接した部分を一体化する焼成工程S3を行う。焼成は、例えば大気中で1500℃以上の温度で行えばよいが、セラミックス成形体10,20の材質に応じて定まる周知の焼成条件に基いて焼成すればよい。
【0026】
ここで、第1のセラミックス成形体10の焼成工程S3における収縮率c1は、第2のセラミックス成形体20の焼成工程S3における収縮率c2よりも高い。これにより、焼成後において、収容空間11の外形が第2のセラミックス成形体20の外形よりも小さくなり、前記当接する部分において第1のセラミックス成形体10が焼成したものと第2のセラミックス成形体20が焼成したものとの間に隙間が生じず、互いに密着したものとなる。これにより、内部に内部空間Sが存在してなるセラミックス焼成体30が形成される。セラミックス焼結体30は、本発明のセラミックス部材に相当する。
【0027】
収縮率の差B(=c1−c2)は好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.2%以下である。これは、収縮率の差Bが0.3%を超えると、後述する実施例から分かるように、セラミックス焼結体30にクラックなどの不具合が生じるおそれがあるためである。
【0028】
例えば、セラミックス成形体10,20の成形する際の成形圧力、例えば、CIP圧力、鋳込み圧力、押出し圧力などを変えて嵩密度を変えることにより、収縮率c1,c2を相違させることができる。また、セラミックス成形体10,20の素材となるセラミックス粒子径、バインダー割合などを相違させることによっても、収縮率c1,c2を相違させることができる。
【0029】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、第1のセラミックス成形体10の収容空間11内に第2のセラミックス成形体20の他に別のセラミックス成形体を挿入してもよい。この場合、前記別のセラミックス成形体の焼成工程S3における収縮率は第2のセラミックス成形体20の収縮率c2と同様にすればよい。
【0030】
また、第2のセラミックス成形体20に収容空間を形成し、その収容空間内に別のセラミックス成形体を挿入してもよい。この場合、前記別のセラミックス成形体の焼成工程S3における収縮率は第2のセラミックス成形体20の収縮率c2よりも小さいものとすればよい。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の実施例及び比較例を具体的に挙げ、本発明を詳細に説明する。
【0032】
(実施例1)
まず、準備工程S1において、第1及び第2のセラミックス成形体10,20の原料粉末として、Al粉末100質量部(昭和電工株式会社製/AL−160SG−3)に対して、バインダーとして、PVA(ポリビニルアルコール)を3.0質量部(外比)、アクリル系分散剤を0.5質量部(外比)が添加されたスラリーを用意した。
【0033】
このスラリーから公知のスプレードライヤーで製作した顆粒造粒粉をCIP成形することによって、第1及び第2のセラミックス成形体10,20となる円柱形状の成形体をそれぞれ形成した。
【0034】
第1のセラミックス成形体10となる円柱形状の成形体は直径50mm、長さ60mmであった。後述の切削加工後に第1のセラミックス成形体10となる成形体を作製する際のCIP圧力は1300Kgf/cmであり、第1のセラミックス成形体10となる成形体の嵩密度は2.311g/cmであった。
【0035】
そして、この第1のセラミックス成形体10となる成形体に対して、その一端面から第1のセラミックス成形体10となる成形体と同軸に、直径40mm、長さ50mmの円柱形状の空間Tを切削により形成し、さらに、この空間Tと同軸に直径8mmの穴を切削により形成し、貫通穴Uを設けた。これにより、直径40mm、長さ50mmの円柱形状と直径8mm、長さ10mmの円柱形状とが結合した形状の収容空間11を有する第1のセラミックス成形体10が形成された。
【0036】
第2のセラミックス成形体20なる円柱形状の成形体は直径40mm、長さ50mmであった。後述の切削加工後に第2のセラミックス成形体20となる成形体を作製する際のCIP圧力は1400Kgf/cmであり、第2のセラミックス成形体20となる成形体の嵩密度は2.319g/cmであった。
【0037】
そして、この第2のセラミックス成形体20となる成形体を、その側面から切削し、直径8mmの円柱形状の軸部Vと、互いに15mmの間隔をあけて設けられて、軸部Vの外周面から径方向外側に突出する厚さ5mmの3枚の円板形状の隔壁部Wとを有する第2のセラミックス成形体20が形成された。
【0038】
これらより、第1のセラミックス成形体10の内壁面11aにおける第2のセラミックス成形体20の隔壁部Wと当接する部分と第1のセラミックス成形体10の外周面10aとの間の最短距離Aは、第1のセラミックス成形体10の厚さであり、(50−40)/2=5mmとなる。これにより、準備工程S1を完了した。
【0039】
次に、図1Bに示すように、挿入工程S2においては、準備工程S1で形成した第1のセラミックス成形体10の収容空間11内に、準備工程S1で形成した第2のセラミックス成形体20を、第1及び第2のセラミックス成形体10,20の一端面が面一となるように挿入した。
【0040】
次に、焼成工程S3においては、挿入工程S2で第1のセラミックス成形体10の収容空間11内に第2のセラミックス成形体20を挿入した状態で、焼成炉内に入れて昇温し、大気中雰囲気で最高温度1600℃を維持した状態で2時間焼成した。
【0041】
図1Cに示すように、焼成後、焼成炉から取り出したセラミックス焼結体30には、クラックなどの不具合は発生していなかった。そして、セラミックス焼結体30を切断したところ、第1のセラミックス成形体10と第2のセラミックス成形体20とが当接していた部分が一体化していた。
【0042】
セラミックス焼結体30における外径(第1のセラミックス成形体10であった部分の外径)は平均41.46mmであり、第1のセラミックス成形体10の焼成工程S3における径方向の収縮率c1は17.09%であった。セラミックス焼結体30における内径(第2のセラミックス成形体20であった部分の外径)は平均33.20mmであり、第2のセラミックス成形体10の焼成工程S3における径方向の収縮率c2は17.01%であった。よって、第1及び第2のセラミックス成形体10,20の収縮率の差B(=c1−c2)は0.08%であった。さらに、A/Bは62.50であった。
【0043】
(実施例2,3)
実施例2は、実施例1とは、第1のセラミックス成形体10を作製する際のCIP圧力を変えて嵩密度を相違させたことのみ相違する。
【0044】
実施例2においては、第1のセラミックス成形体10を作製する際のCIP圧力は1200Kgf/cmであり、その嵩密度は2.306g/cmであった。
【0045】
焼成後、焼成炉から取り出したセラミックス焼結体30には、クラックなどの不具合は発生していなかった。そして、セラミックス焼結体30を切断したところ、第1のセラミックス成形体10と第2のセラミックス成形体20とが当接していた部分が一体化していた。
【0046】
第1のセラミックス成形体10の焼成工程S3における径方向の収縮率c1は17.17%であった。第2のセラミックス成形体20の焼成工程S3における径方向の収縮率c2は、実施例1と同じく17.01%であった。これより、第1及び第2のセラミックス成形体10,20の収縮率の差Bは0.16%であった。さらに、A/Bは31.25であった。
【0047】
実施例3においては、第1のセラミックス成形体10を作製する際のCIP圧力は1000Kgf/cmであり、その嵩密度は2.292g/cmであった。
【0048】
焼成後、焼成炉から取り出したセラミックス焼結体30には、クラックなどの不具合は発生していなかった。そして、セラミックス焼結体30を切断したところ、第1のセラミックス成形体10と第2のセラミックス成形体20とが当接していた部分が一体化していた。
【0049】
第1のセラミックス成形体10の焼成工程S3における径方向の収縮率c1は17.31%であった。第2のセラミックス成形体10の焼成工程S3における径方向の収縮率c2は、実施例1と同じく17.01%であった。よって、第1及び第2のセラミックス成形体10,20の収縮率の差Bは0.30%であった。さらに、A/Bは16.67であった。
【0050】
(実施例4)
実施例4は、実施例2とは、第1及び第2のセラミックス成形体10,20の形状を相違させたことのみ相違する。
【0051】
第1のセラミックス成形体10となる円柱状の成形体は直径30mm、長さ60mmであった。後述の切削加工後に第1のセラミックス成形体10となる成形体を作製する際のCIP圧力は1200Kgf/cmであり、その嵩密度は2.306g/cmであった。
【0052】
そして、この第1のセラミックス成形体10となる成形体に対して、その一端面から第1のセラミックス成形体10となる成形体と同軸に、直径24mm、長さ50mmの円柱形状の空間Tを切削により形成し、さらに、この穴と同軸に直径8mmの穴を切削により形成し、貫通穴Uを設けた。これにより、直径24mm、長さ50mmの円柱形状と直径8mm、長さ10mmの円柱形状とが結合した形状の収容空間11を有する第1のセラミックス成形体10が形成された。前記最短距離Aは(30−24)/2=3mmであった。
【0053】
第2のセラミックス成形体20なる円柱状の成形体は直径24mm、長さ50mmであった。後述の切削加工後に第2のセラミックス成形体20となる成形体を作製する際のCIP圧力は1400Kgf/cmであり、その嵩密度は2.319g/cmであった。
【0054】
そして、この第2のセラミックス成形体20を、その側面から切削し、直径8mmの円柱形状の軸部Vと、互いに15mmの間隔をあけて設けられて、軸部Vの外周面から径方向外側に突出する厚さ3mmの3枚の円板形状の隔壁部Wとを有する第2のセラミックス成形体20が形成された。
【0055】
焼成後、焼成炉から取り出したセラミックス焼結体30には、クラックなどの不具合は発生していなかった。そして、セラミックス焼結体30を切断したところ、第1のセラミックス成形体10と第2のセラミックス成形体20とが当接していた部分が一体化していた。
【0056】
セラミックス焼結体30における第1のセラミックス成形体10の焼成工程S3における径方向の収縮率c1は実施例2と同じく17.17%であった。第2のセラミックス成形体10の焼成工程S3における径方向の収縮率c2は実施例2と同じく17.01%であった。よって、第1及び第2のセラミックス成形体10,20の収縮率の差Bは実施例2と同じく0.16%であった。さらに、A/Bは18.75であった。
【0057】
(実施例5)
実施例5は、実施例4とは、第1のセラミックス成形体10を作製する際のCIP圧力を変えて嵩密度を相違させたことのみ相違する。
【0058】
実施例5においては、第1のセラミックス成形体10を作製する際のCIP圧力は1350Kgf/cmであり、その嵩密度は2.315g/cmであった。
【0059】
焼成後、焼成炉から取り出したセラミックス焼結体30には、クラックなどの不具合は発生していなかった。そして、セラミックス焼結体30を切断したところ、第1のセラミックス成形体10と第2のセラミックス成形体20とが当接していた部分が一体化していた。
【0060】
第1のセラミックス成形体10の焼成工程S3における径方向の収縮率c1は17.05%であった。第2のセラミックス成形体20の焼成工程S3における径方向の収縮率c2は、実施例4と同じく17.01%であった。よって、第1及び第2のセラミックス成形体10,20の収縮率の差Bは0.04%であった。さらに、A/Bは75.00であった。
【0061】
(実施例6)
実施例6は、実施例1とは、第1のセラミックス成形体10を作製する際のCIP圧力を変えて嵩密度を相違させたことのみ相違する。実施例6は参考例である。
【0062】
実施例6においては、第1のセラミックス成形体10を作製する際のCIP圧力は800Kgf/cmであり、その嵩密度は2.281g/cmであり、第2のセラミックス成形体20のCIP圧力は1400Kgf/cmであり、その嵩密度は2.319g/cmであった。
【0063】
焼成後、焼成炉から取り出したセラミックス焼結体30は、第1のセラミックス成形体10が焼成したものと第2のセラミックス成形体20が焼成したものが一体化していた。
【0064】
第1のセラミックス成形体10の焼成工程S3における径方向の収縮率c1は17.49%であった。第2のセラミックス成形体20の焼成工程S3における径方向の収縮率c2は、実施例1と同じく17.01%であった。よって、第1及び第2のセラミックス成形体10,20の収縮率の差Bは0.48%であった。さらに、A/Bは10.42であった。
【0065】
しかし、セラミックス焼結体30にはクラックが発生していた。これは、第1のセラミックス成形体10の収容空間11に挿入した第2のセラミックス成形体20の収縮率c2が最短距離Aを考慮して第1のセラミックス成形体10の収縮率c1と比較して小さ過ぎたためであると考えられる。
【0066】
(比較例1)
比較例1は、実施例1とは、第1及び第2のセラミックス成形体10,20を作製する際のCIP圧力を変えて嵩密度を相違させたことのみ相違する。
【0067】
比較例1においては、第1のセラミックス成形体10を作製する際のCIP圧力は1400Kgf/cmであり、その嵩密度は2.319g/cmであり、第2のセラミックス成形体20を作製する際のCIP圧力は800Kgf/cmであり、その嵩密度は2.281g/cmであった。
【0068】
焼成後、焼成炉から取り出したセラミックス焼結体30は、第1のセラミックス成形体10が焼成したものと第2のセラミックス成形体20が焼成したものが一体化していなかった。これは、第1のセラミックス成形体10の収容空間11に挿入した第2のセラミックス成形体20のほうが第1のセラミックス成形体10よりも収縮率が大きいために、第1セラミックス成形体10と第2のセラミックス成形体20との間に隙間が生じたためであると考えられる。
【0069】
なお、第1のセラミックス成形体10の焼成工程S3における径方向の収縮率c1は17.01%であった。第2のセラミックス成形体20の焼成工程S3における径方向の収縮率c2は、17.49%であった。よって、第1及び第2のセラミックス成形体10,20の収縮率の差Bは−0.48%であった。さらに、A/Bは−10.42であった。
【0070】
(比較例2)
比較例2は、実施例1とは、第1のセラミックス成形体10,20を作製する際のCIP圧力を変えて嵩密度を相違させたことのみ相違する。
【0071】
比較例2においては、第1のセラミックス成形体10を作製する際のCIP圧力は1400Kgf/cmであり、その嵩密度は2.319g/cmであった。
【0072】
焼成後、焼成炉から取り出したセラミックス焼結体30には、クラックなどの不具合は発生していなかった。そして、セラミックス焼結体30は、第1のセラミックス成形体10が焼成したものと第2のセラミックス成形体20が焼成したものが一体化しているように見受けられた。
【0073】
しかし、セラミックス焼結体30を切断し、第1のセラミックス成形体10と第2のセラミックス成形体20との接合面を目視で観察したところ、多くの隙間が生じており、良好に一体化しているとは言えなかった。これは、第1のセラミックス成形体10の収容空間11に挿入した第2のセラミックス成形体20と第1のセラミックス成形体10との収縮率が同じであったために、第1セラミックス成形体10と第2のセラミックス成形体20とが良好に接合されなかったためであると考えられる。
【0074】
以上の結果を表1乃至表3にまとめた。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【符号の説明】
【0078】
10…第1のセラミックス成形体、 10a…外周面、 11…収容空間、 11a…内壁面、 20…第2のセラミックス成形体、 20a…外壁面、 30…セラミックス焼結体(セラミックス部材)、 S…内部空間、 T…空間、 U…貫通穴、 V…軸部、 W…隔壁部、 S1…準備工程、 S2…挿入工程、 S3…焼成工程。
図1
図2