【実施例】
【0031】
以下、本発明の実施例及び比較例を具体的に挙げ、本発明を詳細に説明する。
【0032】
(実施例1)
まず、準備工程S1において、第1及び第2のセラミックス成形体10,20の原料粉末として、Al
2O
3粉末100質量部(昭和電工株式会社製/AL−160SG−3)に対して、バインダーとして、PVA(ポリビニルアルコール)を3.0質量部(外比)、アクリル系分散剤を0.5質量部(外比)が添加されたスラリーを用意した。
【0033】
このスラリーから公知のスプレードライヤーで製作した顆粒造粒粉をCIP成形することによって、第1及び第2のセラミックス成形体10,20となる円柱形状の成形体をそれぞれ形成した。
【0034】
第1のセラミックス成形体10となる円柱形状の成形体は直径50mm、長さ60mmであった。後述の切削加工後に第1のセラミックス成形体10となる成形体を作製する際のCIP圧力は1300Kgf/cm
2であり、第1のセラミックス成形体10となる成形体の嵩密度は2.311g/cm
3であった。
【0035】
そして、この第1のセラミックス成形体10となる成形体に対して、その一端面から第1のセラミックス成形体10となる成形体と同軸に、直径40mm、長さ50mmの円柱形状の空間Tを切削により形成し、さらに、この空間Tと同軸に直径8mmの穴を切削により形成し、貫通穴Uを設けた。これにより、直径40mm、長さ50mmの円柱形状と直径8mm、長さ10mmの円柱形状とが結合した形状の収容空間11を有する第1のセラミックス成形体10が形成された。
【0036】
第2のセラミックス成形体20なる円柱形状の成形体は直径40mm、長さ50mmであった。後述の切削加工後に第2のセラミックス成形体20となる成形体を作製する際のCIP圧力は1400Kgf/cm
2であり、第2のセラミックス成形体20となる成形体の嵩密度は2.319g/cm
3であった。
【0037】
そして、この第2のセラミックス成形体20となる成形体を、その側面から切削し、直径8mmの円柱形状の軸部Vと、互いに15mmの間隔をあけて設けられて、軸部Vの外周面から径方向外側に突出する厚さ5mmの3枚の円板形状の隔壁部Wとを有する第2のセラミックス成形体20が形成された。
【0038】
これらより、第1のセラミックス成形体10の内壁面11aにおける第2のセラミックス成形体20の隔壁部Wと当接する部分と第1のセラミックス成形体10の外周面10aとの間の最短距離Aは、第1のセラミックス成形体10の厚さであり、(50−40)/2=5mmとなる。これにより、準備工程S1を完了した。
【0039】
次に、
図1Bに示すように、挿入工程S2においては、準備工程S1で形成した第1のセラミックス成形体10の収容空間11内に、準備工程S1で形成した第2のセラミックス成形体20を、第1及び第2のセラミックス成形体10,20の一端面が面一となるように挿入した。
【0040】
次に、焼成工程S3においては、挿入工程S2で第1のセラミックス成形体10の収容空間11内に第2のセラミックス成形体20を挿入した状態で、焼成炉内に入れて昇温し、大気中雰囲気で最高温度1600℃を維持した状態で2時間焼成した。
【0041】
図1Cに示すように、焼成後、焼成炉から取り出したセラミックス焼結体30には、クラックなどの不具合は発生していなかった。そして、セラミックス焼結体30を切断したところ、第1のセラミックス成形体10と第2のセラミックス成形体20とが当接していた部分が一体化していた。
【0042】
セラミックス焼結体30における外径(第1のセラミックス成形体10であった部分の外径)は平均41.46mmであり、第1のセラミックス成形体10の焼成工程S3における径方向の収縮率c1は17.09%であった。セラミックス焼結体30における内径(第2のセラミックス成形体20であった部分の外径)は平均33.20mmであり、第2のセラミックス成形体10の焼成工程S3における径方向の収縮率c2は17.01%であった。よって、第1及び第2のセラミックス成形体10,20の収縮率の差B(=c1−c2)は0.08%であった。さらに、A/Bは62.50であった。
【0043】
(実施例2,3)
実施例2は、実施例1とは、第1のセラミックス成形体10を作製する際のCIP圧力を変えて嵩密度を相違させたことのみ相違する。
【0044】
実施例2においては、第1のセラミックス成形体10を作製する際のCIP圧力は1200Kgf/cm
2であり、その嵩密度は2.306g/cm
3であった。
【0045】
焼成後、焼成炉から取り出したセラミックス焼結体30には、クラックなどの不具合は発生していなかった。そして、セラミックス焼結体30を切断したところ、第1のセラミックス成形体10と第2のセラミックス成形体20とが当接していた部分が一体化していた。
【0046】
第1のセラミックス成形体10の焼成工程S3における径方向の収縮率c1は17.17%であった。第2のセラミックス成形体20の焼成工程S3における径方向の収縮率c2は、実施例1と同じく17.01%であった。これより、第1及び第2のセラミックス成形体10,20の収縮率の差Bは0.16%であった。さらに、A/Bは31.25であった。
【0047】
実施例3においては、第1のセラミックス成形体10を作製する際のCIP圧力は1000Kgf/cm
2であり、その嵩密度は2.292g/cm
3であった。
【0048】
焼成後、焼成炉から取り出したセラミックス焼結体30には、クラックなどの不具合は発生していなかった。そして、セラミックス焼結体30を切断したところ、第1のセラミックス成形体10と第2のセラミックス成形体20とが当接していた部分が一体化していた。
【0049】
第1のセラミックス成形体10の焼成工程S3における径方向の収縮率c1は17.31%であった。第2のセラミックス成形体10の焼成工程S3における径方向の収縮率c2は、実施例1と同じく17.01%であった。よって、第1及び第2のセラミックス成形体10,20の収縮率の差Bは0.30%であった。さらに、A/Bは16.67であった。
【0050】
(実施例4)
実施例4は、実施例2とは、第1及び第2のセラミックス成形体10,20の形状を相違させたことのみ相違する。
【0051】
第1のセラミックス成形体10となる円柱状の成形体は直径30mm、長さ60mmであった。後述の切削加工後に第1のセラミックス成形体10となる成形体を作製する際のCIP圧力は1200Kgf/cm
2であり、その嵩密度は2.306g/cm
3であった。
【0052】
そして、この第1のセラミックス成形体10となる成形体に対して、その一端面から第1のセラミックス成形体10となる成形体と同軸に、直径24mm、長さ50mmの円柱形状の空間Tを切削により形成し、さらに、この穴と同軸に直径8mmの穴を切削により形成し、貫通穴Uを設けた。これにより、直径24mm、長さ50mmの円柱形状と直径8mm、長さ10mmの円柱形状とが結合した形状の収容空間11を有する第1のセラミックス成形体10が形成された。前記最短距離Aは(30−24)/2=3mmであった。
【0053】
第2のセラミックス成形体20なる円柱状の成形体は直径24mm、長さ50mmであった。後述の切削加工後に第2のセラミックス成形体20となる成形体を作製する際のCIP圧力は1400Kgf/cm
2であり、その嵩密度は2.319g/cm
3であった。
【0054】
そして、この第2のセラミックス成形体20を、その側面から切削し、直径8mmの円柱形状の軸部Vと、互いに15mmの間隔をあけて設けられて、軸部Vの外周面から径方向外側に突出する厚さ3mmの3枚の円板形状の隔壁部Wとを有する第2のセラミックス成形体20が形成された。
【0055】
焼成後、焼成炉から取り出したセラミックス焼結体30には、クラックなどの不具合は発生していなかった。そして、セラミックス焼結体30を切断したところ、第1のセラミックス成形体10と第2のセラミックス成形体20とが当接していた部分が一体化していた。
【0056】
セラミックス焼結体30における第1のセラミックス成形体10の焼成工程S3における径方向の収縮率c1は実施例2と同じく17.17%であった。第2のセラミックス成形体10の焼成工程S3における径方向の収縮率c2は実施例2と同じく17.01%であった。よって、第1及び第2のセラミックス成形体10,20の収縮率の差Bは実施例2と同じく0.16%であった。さらに、A/Bは18.75であった。
【0057】
(実施例5)
実施例5は、実施例4とは、第1のセラミックス成形体10を作製する際のCIP圧力を変えて嵩密度を相違させたことのみ相違する。
【0058】
実施例5においては、第1のセラミックス成形体10を作製する際のCIP圧力は1350Kgf/cm
2であり、その嵩密度は2.315g/cm
3であった。
【0059】
焼成後、焼成炉から取り出したセラミックス焼結体30には、クラックなどの不具合は発生していなかった。そして、セラミックス焼結体30を切断したところ、第1のセラミックス成形体10と第2のセラミックス成形体20とが当接していた部分が一体化していた。
【0060】
第1のセラミックス成形体10の焼成工程S3における径方向の収縮率c1は17.05%であった。第2のセラミックス成形体20の焼成工程S3における径方向の収縮率c2は、実施例4と同じく17.01%であった。よって、第1及び第2のセラミックス成形体10,20の収縮率の差Bは0.04%であった。さらに、A/Bは75.00であった。
【0061】
(実施例6)
実施例6は、実施例1とは、第1のセラミックス成形体10を作製する際のCIP圧力を変えて嵩密度を相違させたことのみ相違する。
実施例6は参考例である。
【0062】
実施例6においては、第1のセラミックス成形体10を作製する際のCIP圧力は800Kgf/cm
2であり、その嵩密度は2.281g/cm
3であり、第2のセラミックス成形体20のCIP圧力は1400Kgf/cm
2であり、その嵩密度は2.319g/cm
3であった。
【0063】
焼成後、焼成炉から取り出したセラミックス焼結体30は、第1のセラミックス成形体10が焼成したものと第2のセラミックス成形体20が焼成したものが一体化していた。
【0064】
第1のセラミックス成形体10の焼成工程S3における径方向の収縮率c1は17.49%であった。第2のセラミックス成形体20の焼成工程S3における径方向の収縮率c2は、実施例1と同じく17.01%であった。よって、第1及び第2のセラミックス成形体10,20の収縮率の差Bは0.48%であった。さらに、A/Bは10.42であった。
【0065】
しかし、セラミックス焼結体30にはクラックが発生していた。これは、第1のセラミックス成形体10の収容空間11に挿入した第2のセラミックス成形体20の収縮率c2が最短距離Aを考慮して第1のセラミックス成形体10の収縮率c1と比較して小さ過ぎたためであると考えられる。
【0066】
(比較例1)
比較例1は、実施例1とは、第1及び第2のセラミックス成形体10,20を作製する際のCIP圧力を変えて嵩密度を相違させたことのみ相違する。
【0067】
比較例1においては、第1のセラミックス成形体10を作製する際のCIP圧力は1400Kgf/cm
2であり、その嵩密度は2.319g/cm
3であり、第2のセラミックス成形体20を作製する際のCIP圧力は800Kgf/cm
2であり、その嵩密度は2.281g/cm
3であった。
【0068】
焼成後、焼成炉から取り出したセラミックス焼結体30は、第1のセラミックス成形体10が焼成したものと第2のセラミックス成形体20が焼成したものが一体化していなかった。これは、第1のセラミックス成形体10の収容空間11に挿入した第2のセラミックス成形体20のほうが第1のセラミックス成形体10よりも収縮率が大きいために、第1セラミックス成形体10と第2のセラミックス成形体20との間に隙間が生じたためであると考えられる。
【0069】
なお、第1のセラミックス成形体10の焼成工程S3における径方向の収縮率c1は17.01%であった。第2のセラミックス成形体20の焼成工程S3における径方向の収縮率c2は、17.49%であった。よって、第1及び第2のセラミックス成形体10,20の収縮率の差Bは−0.48%であった。さらに、A/Bは−10.42であった。
【0070】
(比較例2)
比較例2は、実施例1とは、第1のセラミックス成形体10,20を作製する際のCIP圧力を変えて嵩密度を相違させたことのみ相違する。
【0071】
比較例2においては、第1のセラミックス成形体10を作製する際のCIP圧力は1400Kgf/cm
2であり、その嵩密度は2.319g/cm
3であった。
【0072】
焼成後、焼成炉から取り出したセラミックス焼結体30には、クラックなどの不具合は発生していなかった。そして、セラミックス焼結体30は、第1のセラミックス成形体10が焼成したものと第2のセラミックス成形体20が焼成したものが一体化しているように見受けられた。
【0073】
しかし、セラミックス焼結体30を切断し、第1のセラミックス成形体10と第2のセラミックス成形体20との接合面を目視で観察したところ、多くの隙間が生じており、良好に一体化しているとは言えなかった。これは、第1のセラミックス成形体10の収容空間11に挿入した第2のセラミックス成形体20と第1のセラミックス成形体10との収縮率が同じであったために、第1セラミックス成形体10と第2のセラミックス成形体20とが良好に接合されなかったためであると考えられる。
【0074】
以上の結果を表1乃至表3にまとめた。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】