(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886907
(24)【登録日】2021年5月19日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】タッチパネル及びタッチパネルの生産方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20210603BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
G06F3/041 430
G06F3/044 126
G06F3/041 660
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-210778(P2017-210778)
(22)【出願日】2017年10月31日
(65)【公開番号】特開2019-82926(P2019-82926A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2020年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】坂上 彰利
【審査官】
滝谷 亮一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−033279(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0117018(US,A1)
【文献】
特開2008−233976(JP,A)
【文献】
特開2009−087118(JP,A)
【文献】
特開2010−002984(JP,A)
【文献】
特開2014−078198(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/077320(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/077321(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/090446(WO,A1)
【文献】
国際公開第2013/099776(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電インキの硬化物でなる第1の導体層と、第2の導電インキの硬化物でなる第2の導体層と、前記第1の導体層と前記第2の導体層の間に介在する絶縁層とを少なくとも含む積層構造を有するセンシング領域と、前記センシング領域の外側に形成された外部接続端子とを基材の一面側に備えてなるタッチパネルであって、
前記外部接続端子は、前記第1の導電インキの硬化物でなる第1の端子層と、前記第2の導電インキの硬化物でなる第2の端子層とが直接に重畳されて構成されていることを特徴とするタッチパネル。
【請求項2】
請求項1に記載のタッチパネルにおいて、
前記第1の端子層は第1の細線のメッシュを形成し、前記第2の端子層は第2の細線のメッシュを形成していることを特徴とするタッチパネル。
【請求項3】
請求項2に記載のタッチパネルにおいて、
前記第1の細線のメッシュと前記第2の細線のメッシュは、それらの2つのピッチ方向とその各ピッチ方向ごとのピッチとが相互に一致した格子パターンを有しており、かつその各ピッチ方向ごとに1/4ピッチ以上3/4ピッチ以下のずれを有して重畳されていることを特徴とするタッチパネル。
【請求項4】
請求項3に記載のタッチパネルにおいて、
前記各ピッチ方向ごとのピッチは前記2つのピッチ方向において一致しており、
前記外部接続端子は前記2つのピッチ方向において一致したピッチの1/2以上の寸法の径を有する導電粒子を含有している異方性導電フィルムを介して外部回路の電極と接続されていることを特徴とするタッチパネル。
【請求項5】
請求項1から4までの何れかに記載のタッチパネルにおいて、
前記第1の導体層と前記第2の導体層はそれぞれ細線のメッシュを形成していることを特徴とするタッチパネル。
【請求項6】
請求項1から5までの何れかに記載のタッチパネルを生産する方法であって、
前記基材の一面側に、前記第1の導電インキによって前記第1の導体層と前記第1の端子層とを同時に印刷する第1の印刷工程と、
絶縁性インキによって前記絶縁層を印刷する第2の印刷工程と、
前記第2の導電インキによって前記第2の導体層と前記第2の端子層とを同時に印刷する第3の印刷工程とを有することを特徴とするタッチパネルの生産方法。
【請求項7】
請求項6に記載のタッチパネルの生産方法において、
前記第1の印刷工程は第1のブランケットを用いたグラビアオフセット印刷であり、
前記第3の印刷工程は第2のブランケットを用いたグラビアオフセット印刷であることを特徴とするタッチパネルの生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は印刷法を用いて生産されるタッチパネル及びタッチパネルの生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図7及び8はこの種のタッチパネルの従来例として特許文献1に記載されている静電容量式のタッチパネルの構成を示したものである。このタッチパネルは透明な基材(基板)10上に第1の導体層、絶縁層、第2の導体層及び保護膜が順次、積層形成された構成とされている。
図7中、矩形枠で囲まれた部分はセンサ電極が位置するセンシング領域(センサ領域)20であり、
図7ではセンサ電極の詳細図示は省略されている。
【0003】
センサ電極は第1のセンサ電極と第2のセンサ電極とよりなり、第1のセンサ電極は第1の導体層によって形成され、第2のセンサ電極は第2の導体層によって形成されている。
【0004】
第1のセンサ電極30は
図8Aに示したように、センシング領域20の長辺21と平行なX方向に配列された複数の島状電極31が連結部32によって連結されてなる電極列33がセンシング領域20の短辺22と平行なY方向に複数、並列配置されて構成されている。
【0005】
第2のセンサ電極40は
図8Bに示したように、Y方向に配列された複数の島状電極41が連結部42によって連結されてなる電極列43がX方向に複数、並列配置されて構成されている。
【0006】
これら第1のセンサ電極30及び第2のセンサ電極40はそれぞれ細線のメッシュで形成されており、電極列33と43は互いに絶縁された状態で交差され、連結部32と42は互いに重なる位置に位置されている。
【0007】
第1のセンサ電極30の各電極列33のX方向両端からは引出し配線51がそれぞれ引き出されており、第2のセンサ電極40の各電極列43のY方向一端からは引出し配線52がそれぞれ引き出されている。複数配列されてセンシング領域20から引き出されている引出し配線51,52は
図7では配列の両端に位置するもの以外の図示は省略されている。
【0008】
矩形状をなす基材10の一方の長辺の中央部分には端子53が配列形成されており、引出し配線51,52は端子53まで延びて端子53に接続されている。センシング領域20及び引出し配線51,52を囲むように基材10の周縁部に形成されているグランド配線54も端子53に接続されている。
【0009】
引出し配線51,52及び端子53は第1の導体層によって形成され、グランド配線54は第1及び第2の導体層の双方に形成されている。
【0010】
上記のような構成を有する第1及び第2の導体層は、この例では銀などの導電粒子を含む導電インキを用い、グラビアオフセット印刷によって印刷形成されるものとなっている。
【0011】
一方、
図9は特許文献2に記載されている静電容量式のタッチパネルの構成を示したものであり、このタッチパネルは
図7及び8に示したタッチパネルと同様、透明な基材上に第1の導体層、絶縁層、第2の導体層及び保護膜が順次、積層形成された構成を有している。なお、
図7及び8に示したタッチパネルの構成要素と対応する部分には同一符号を付している。
【0012】
この
図9に示したタッチパネルでは、第1のセンサ電極30の電極列33は複数の島状電極31がジャンパ線34によって連結された構成となっており、このジャンパ線34のみが第2の導体層によって形成され、第2のセンサ電極40、引出し配線51,52、端子53及び第1のセンサ電極30の島状電極31は第1の導体層によって形成されている。ジャンパ線34の両端はそれぞれ絶縁層に設けられた貫通穴35を介して島状電極31に接続されており、ジャンパ線34と第2のセンサ電極40の連結部42は互いに重なる位置に位置されている。
【0013】
図9では詳細図示が省略されているが、第2のセンサ電極40、第1のセンサ電極30の島状電極31及び端子53はそれぞれ細線のメッシュで形成されており、上記のような構成を有する第1及び第2の導体層は
図7及び8に示したタッチパネルと同様、導電インキを用い、グラビアオフセット印刷によって印刷形成されるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2017−103317号公報
【特許文献2】特開2017−103318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述したように、タッチパネルは外部回路との接続用の端子(外部接続端子)を透明な基材の一辺に具備するものとなっており、外部接続端子は上述した特許文献1,2のいずれのタッチパネルにおいてもグラビアオフセット印刷により印刷形成される第1の導体層によって形成され、特許文献2には細線のメッシュで外部接続端子を形成することが記載されている。
【0016】
しかるに、このように印刷形成される細線のメッシュで構成される外部接続端子はベタ膜で構成される外部接続端子と比べ、一般に接触抵抗の増大は否めず、その点で良好かつ安定した電気的接続状態が得にくいといった問題があった。
【0017】
この発明の目的はこの問題に鑑み、外部接続端子の電気的接続品質を従来より向上させることができるようにしたタッチパネル及びタッチパネルの生産方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1の発明によれば、第1の導電インキの硬化物でなる第1の導体層と、第2の導電インキの硬化物でなる第2の導体層と、第1の導体層と第2の導体層の間に介在する絶縁層とを少なくとも含む積層構造を有するセンシング領域と、センシング領域の外側に形成された外部接続端子とを基材の一面側に備えてなるタッチパネルにおいて、外部接続端子は、第1の導電インキの硬化物でなる第1の端子層と、第2の導電インキの硬化物でなる第2の端子層とが直接に重畳されて構成されているものとされる。
【0019】
請求項2の発明では請求項1の発明において、第1の端子層は第1の細線のメッシュを形成し、第2の端子層は第2の細線のメッシュを形成しているものとされる。
【0020】
請求項3の発明では請求項2の発明において、第1の細線のメッシュと第2の細線のメッシュは、それらの2つのピッチ方向とその各ピッチ方向ごとのピッチとが相互に一致した格子パターンを有し、かつその各ピッチ方向ごとに1/4ピッチ以上3/4ピッチ以下のずれを有して重畳されているものとされる。
【0021】
請求項4の発明では請求項3の発明において、前記各ピッチ方向ごとのピッチは前記2つのピッチ方向において一致し、外部接続端子は前記2つのピッチ方向において一致したピッチの1/2以上の寸法の径を有する導電粒子を含有している異方性導電フィルムを介して外部回路の電極と接続されているものとされる。
【0022】
請求項5の発明では請求項1から4までの何れかの発明において、第1の導体層と第2の導体層はそれぞれ細線のメッシュを形成しているものとされる。
【0023】
請求項6の発明によれば、請求項1から5までの何れかに記載のタッチパネルを生産する方法は、基材の一面側に第1の導電インキによって第1の導体層と第1の端子層とを同時に印刷する第1の印刷工程と、絶縁性インキによって絶縁層を印刷する第2の印刷工程と、第2の導電インキによって第2の導体層と第2の端子層とを同時に印刷する第3の印刷工程とを有する。
【0024】
請求項7の発明では請求項6の発明において、第1の印刷工程は第1のブランケットを用いたグラビアオフセット印刷であり、第3の印刷工程は第2のブランケットを用いたグラビアオフセット印刷とされる。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、外部接続端子の電気的接続品質を向上させることができ、外部回路との電気的接続を良好かつ安定して行うことができるタッチパネルを提供することができる。
【0026】
また、この発明によるタッチパネルの生産方法によれば、そのようなタッチパネルを良好に生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】Aはこの発明によるタッチパネルの一実施例における第1の端子層を示す部分拡大図、Bはこの発明によるタッチパネルの一実施例における第2の端子層を示す部分拡大図。
【
図2】
図1Aに示した第1の端子層と
図1Bに示した第2の端子層が重畳された状態を示す部分拡大図。
【
図3】外部回路のFPCと接続されたタッチパネルを示す図。
【
図4】この発明によるタッチパネルの一実施例におけるセンシング領域の第1の導体層を示す部分拡大図。
【
図5】この発明によるタッチパネルの一実施例におけるセンシング領域の第2の導体層を示す部分拡大図。
【
図6】
図4に示した第1の導体層と
図5に示した第2の導体層が重畳された状態を示す部分拡大図。
【
図8】Aは
図7に示したタッチパネルの第1の導体層を示す部分拡大図、Bは
図7に示したタッチパネルの第2の導体層を示す部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この発明の実施形態を図面を参照して実施例により説明する。
【0029】
図1及び2はこの発明によるタッチパネルの一実施例が有する外部接続端子の詳細を示したものであり、
図3は外部接続端子に外部回路のFPCが接続された、この発明によるタッチパネルの一実施例を示したものである。
【0030】
タッチパネルはこの例では
図7に示した従来例のタッチパネルと、基材10の一方の長辺の中央部分に配列形成される外部接続端子の構成及びセンシング領域20内の構成が異なるものとなっており、他の構成は
図7に示した構成と基本的に同じである。なお、センシング領域20内の構成の詳細図示は
図3では省略している。
【0031】
タッチパネルは透明な基材10の一面側に、第1の導電インキの硬化物でなる第1の導体層、絶縁層、第2の導電インキの硬化物でなる第2の導体層及び保護膜が順次、形成された構成を有する。絶縁層及び保護膜は透明材よりなる。
【0032】
センシング領域20の外側に位置する外部接続端子60は第1の導電インキの硬化物でなる第1の端子層61と、第2の導電インキの硬化物でなる第2の端子層62とが直接に重畳されて構成されている。第1の端子層61は
図1Aに示したように第1の細線のメッシュを形成し、第2の端子層62は
図1Bに示したように第2の細線のメッシュを形成している。
【0033】
第1の端子層61の第1の細線のメッシュと第2の端子層62の第2の細線のメッシュは、それらの2つのピッチ方向とその各ピッチ方向ごとのピッチとが相互に一致した格子パターンを有するものとされ、この例では1辺の長さが20μmの正方形を単位格子とし、2つのピッチ方向のピッチが共に20μmの格子パターンをそれぞれ有するものとされている。なお、メッシュを構成する細線の幅は7μmとされている。
【0034】
上記のような細線のメッシュよりなる第1の端子層61の幅及び長さを
図1A中に示したようにW1,L1とし、第2の端子層62の幅及び長さを
図1B中に示したようにW2,L2とする時、この例では、
L1=L2 , W1>W2
とされ、即ち第2の端子層62の幅W2は第1の端子層61の幅W1より狭くされている。
【0035】
第1の端子層61に第2の端子層62が直接に重畳されることによって外部接続端子60は
図2に示したような構成となる。この例では第1の端子層61と第2の端子層62とは格子パターンの2つのピッチ方向に1/2ピッチずつずらして重畳され、これにより
図2に示したように10μmピッチの細密なメッシュが形成された構成となる。なお、上述したように第2の端子層62の幅W2を第1の端子層61の幅W1より狭くすることによって、例えば第2の端子層62の印刷時に、印刷ずれによって第2の端子層62が、重畳対象の第1の端子層61ではない隣接する第1の端子層61に接触して短絡するといった不具合の発生を防止することができる。
【0036】
上記のような構成を有する外部接続端子60はこの例では
図3に示したように異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)65を介して外部回路のFPC66の電極と接続される。なお、FPC66の電極の図示は
図3では省略している。
【0037】
外部接続端子60とFPC66の電極との接続に用いる異方性導電フィルム65は例えば樹脂粒子にAuメッキが施されてなる導電粒子を含有するもので、この例では異方性導電フィルム65は10μm以上の径を有する導電粒子を含有するものとされる。
【0038】
以上、この発明によるタッチパネルの一実施例が有する外部接続端子60の構成及び外部接続端子60とFPC66との接続について説明したが、この例では外部接続端子60を従来のように第1の導体層のみの単層で形成するのではなく、第1の導体層よりなる第1の端子層61と第2の導体層よりなる第2の端子層62とを絶縁層を介することなく重ね印刷して2層で構成するものとなっており、さらに細線のメッシュよりなる第1及び第2の端子層61,62を同じ格子パターンを有するものとして格子パターンの2つのピッチ方向に1/2ピッチずつずらして重畳するものとなっている。
【0039】
これにより、この例では外部接続端子60を構成するメッシュはより細密なものとなり、配線密度が増大して異方性導電フィルム65の導電粒子との接触面積が増大するため、接触抵抗を下げることができ、電気的接続品質を従来より向上させることができる。なお、上述したように、10μmピッチのメッシュをなす外部接続端子60に対し、10μm以上の径を有する導電粒子を含有する異方性導電フィルム65を接続に用いれば、導電粒子がメッシュの細線に接触する確率を顕著に増大させることができ、接触抵抗をより一層下げることが可能となる。
【0040】
上述した例では格子パターンをなす第1の端子層61の細線のメッシュと第2の端子層62の細線のメッシュとを格子パターンの2つのピッチ方向に1/2ピッチずつずらして重畳しているが、格子パターンのずれは必ずしも1/2ピッチでなくてもよく、例えば格子パターンの重畳におけるずれは2つのピッチ方向の各ピッチ方向ごとに1/4ピッチ以上3/4ピッチ以下であってもよい。なお、第1の端子層61の格子パターンと第2の端子層62の格子パターンがずれなく、重畳される場合を排除するものではなく、ずれなく重畳される場合であっても細線の断面積が2倍に増大するため、電気抵抗が半減する効果が得られ、また機械的強度が向上するといった効果を得ることができる。
【0041】
また、第1の端子層61及び第2の端子層62がなす格子パターンの単位格子の形状は正方形に限るものではなく、菱形等の他の形状であってもよい。
【0042】
次に、センシング領域20内の構成について、
図4〜6を参照して説明する。
図4〜6は
図3における左上部の詳細を示したものである。
【0043】
図4は第1の導体層の印刷配線の詳細を示したものであり、センシング領域20には第1のセンサ電極70と第1のダミー配線80とが形成されている。第1のセンサ電極70はX方向に配列された複数の島状電極71が連結部72によって連結されてなる電極列73がY方向に複数、並列配置されて構成されており、第1のダミー配線80はセンシング領域20において第1のセンサ電極70が設けられた領域以外の領域に第1のセンサ電極70と絶縁されて設けられている。
【0044】
第1のセンサ電極70と第1のダミー配線80はいずれも細線のメッシュで構成されており、これら第1のセンサ電極70と第1のダミー配線80は相互の境界に細線の断絶した隙間91が形成されて配されながら単一の連続した周期的メッシュパターンである第1のメッシュパターン90を共有している。第1のメッシュパターン90の単位格子はこの例では1辺の長さが400μmの菱形とされており、メッシュを構成する細線の線幅は7μmとされている。なお、第1のセンサ電極70と第1のダミー配線80とを絶縁する隙間91は20μm程度とされている。
図4ではこの隙間91は相対的に拡大して示している。
【0045】
一方、
図5は第2の導体層の印刷配線の詳細を示したものであり、センシング領域20には第2のセンサ電極100と第2のダミー配線110とが形成されている。第2のセンサ電極100はY方向に配列された複数の島状電極101が連結部102によって連結されてなる電極列103がX方向に複数、並列配置されて構成されており、第2のダミー配線110はセンシング領域20において第2のセンサ電極100が設けられた領域以外の領域に第2のセンサ電極100と絶縁されて設けられている。
【0046】
第2のセンサ電極100と第2のダミー配線110はいずれも細線のメッシュで構成されており、これら第2のセンサ電極100と第2のダミー配線110は相互の境界に細線の断絶した隙間121が形成されて配されながら単一の連続した周期的メッシュパターンである第2のメッシュパターン120を共有している。第2のメッシュパターン120はこの例では第1のメッシュパターン90と同じメッシュパターンとされ、メッシュを構成する細線がセンシング領域20の長辺21となす角度も同じとされている。なお、
図4と同様、隙間121は相対的に拡大して示している。
【0047】
図6は
図4に示した第1の導体層の印刷配線と
図5に示した第2の導体層の印刷配線とが絶縁層を挟んで積層された状態を示したものであり、第1の導体層の第1のメッシュパターン90と第2の導体層の第2のメッシュパターン120とは互いに単位格子の菱形の辺を200μmずつに2分する中点で交差するように重畳されており、これにより1辺の長さが200μmの菱形の格子が
図6に示したようにセンシング領域20の全面に極めて均一に形成された状態となっている。なお、第1のセンサ電極70の電極列73と第2のセンサ電極100の電極列103は連結部72と102が互いに重なる位置に位置されて交差されている。
【0048】
このように、この例では第1のセンサ電極70が形成される第1の導体層のセンシング領域20には第1のメッシュパターンが一様に存在し、第2のセンサ電極100が形成される第2の導体層のセンシング領域20にも第2のメッシュパターン120が一様に存在する状態となっている。よって、第1の導体層及び第2の導体層にはいずれも細線のメッシュの有無に基因する視覚的なコントラストは発生せず、第1の導体層と第2の導体層が重畳された状態においても当然に視覚的なコントラストは発生せず、センシング領域20のコントラストを完全に解消することができるものとなっている。
【0049】
以下、上述したタッチパネルの生産方法について説明する。
1)第1の印刷工程
基材10の一面側に、第1の導電インキによってセンシング領域20の第1の導体層(第1のメッシュパターン90)と第1の端子層61とを同時に印刷する。この際、引出し配線51,52及びグランド配線54も同時に印刷する。
2)第2の印刷工程
絶縁性インキによってセンシング領域20の第1の導体層上に絶縁層を印刷する。
3)第3の印刷工程
第2の導電インキによってセンシング領域20の第2の導体層(第2のメッシュパターン120)と第2の端子層62とを同時に印刷する。
4)第4の印刷工程
第1及び第2の端子層61,62よりなる外部接続端子60が配列形成されている部分を除いて基材10の一面側全面に絶縁性インキによって保護膜を印刷する。
【0050】
このような工程によってタッチパネルが生産される。なお、第1の印刷工程で用いる第1の導電インキと第3の印刷工程で用いる第2の導電インキは銀などの導電粒子を含むものであって同じインキとされ、この例では印刷法としてグラビアオフセット印刷を用いる。そしてグラビアオフセット印刷で用いるブランケットを第1の印刷工程と第3の印刷工程とで変えるようにし、2つのブランケットを交互に使用するようにする。これは以下に示すような理由による。
【0051】
即ち、
図2に示したような細密のメッシュの外部接続端子60を一度の印刷で形成すると、極めて配線密度の高い配線材料の印刷によってブランケットが急速に膨潤してしまうという問題が発生する。第1の印刷工程と第3の印刷工程でブランケットを変え、2つのブランケットを交互に使用するのはこの問題に対処するものであり、外部接続端子60を印刷するのに2つのブランケットを交互に使用することで、同じ配線密度の外部接続端子を1つのブランケットで印刷する場合と比べてブランケットの膨潤を十分に(ほぼ2倍に)遅くすることができ、これによりタッチパネルの量産性を向上させることができる。
【0052】
以上、この発明によるタッチパネル及びタッチパネルの生産方法について説明したが、例えばタッチパネルの生産において導電インキの印刷工程が第1のセンサ電極の印刷工程、第2のセンサ電極の印刷工程、引出し配線(額縁配線)の印刷工程というように3工程あるような場合には、外部接続端子を3回重ね印刷して構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 基材 20 センシング領域
21 長辺 22 短辺
30 第1のセンサ電極 31 島状電極
32 連結部 33 電極列
34 ジャンパ線 35 貫通穴
40 第2のセンサ電極 41 島状電極
42 連結部 43 電極列
51,52 引出し配線 53 端子
54 グランド配線 60 外部接続端子
61 第1の端子層 62 第2の端子層
65 異方性導電フィルム 66 FPC
70 第1のセンサ電極 71 島状電極
72 連結部 73 電極列
80 第1のダミー配線 90 第1のメッシュパターン
91 隙間 100 第2のセンサ電極
101 島状電極 102 連結部
103 電極列 110 第2のダミー配線
120 第2のメッシュパターン 121 隙間