(54)【発明の名称】ロドストミンバリアント、ロドストミンバリアントをコードするポリヌクレオチド、当該ポリヌクレオチドを含む組換え宿主細胞、及びロドストミンバリアントを含む医薬組成物
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記インテグリン関連疾患は、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、角膜血管新生症、虚血誘発性血管新生網膜症、高度近視、及び未熟児網膜症からなる群より選択される血管形成関連眼疾患の1種である、請求項8に記載の医薬組成物。
前記インテグリン関連疾患は、転移性黒色腫、転移性前立腺がん、転移性乳がん、結腸直腸がん、肝臓がん、卵巣がん、子宮頸がん、膵臓がん、非小細胞肺がん、及び多形性膠芽腫からなる群より選択されるがんの1種である、請求項8に記載の医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0028】
背景技術ならびに本明細書全体を通して、様々な刊行物、記事、及び特許を引用あるいは記載したが、こうした参考文献の内容を参照により本明細書で援用するものとする。本明細書に含まれている文書、法令、材料、装置、記事などの議論は、本発明の文脈を提供するためのものである。こうした議論は、当該事項の何れか又は全てが、本明細書に記載の又は特許請求の範囲に記載のいずれかの発明に関する先行技術の一部を形成すると自白するものではない。
【0029】
特段の定義を設けていない限り、本願明細書で用いた全ての技術用語及び科学用語は、本発明が関連する技術分野の当業者にとって一般的に理解されるのと同じ意味である。特段の定義を設けている場合、本明細書で用いたいくつかの用語は明細書で規定したとおりの意味である。本明細書で引用した全ての特許、公開特許出願、及び公報を、それらが本明細書に記載されているかのように、参照により援用する。本明細書及び特許請求の範囲で、単数の表記は、文脈が明白にそうでないことを示していない限り、複数も包含する。
【0030】
本明細書では、『ディスインテグリン』は、インテグリンの強力な可溶性リガンドで、多くの過程(細胞−細胞間及び細胞−細胞外マトリックス間の接着、移動、及び浸潤、細胞周期の進行、分化、及び多くの後生動物門に属する生物の成長段階での細胞型スペシエーション、細胞死、並びに、アポトーシスなど)の制御に関連しているシステインリッチタンパク質の一類を指す。多くの単量体ディスインテグリンでは、RGD(Arg−Gly−Asp)アミノ酸モチーフが保存されている。このモチーフは柔軟性ループであるインテグリン結合ループの先端に位置している。このループは、ジスルフィド結合により安定化されており、ポリペプチド鎖の主体から突出している。ヘビ毒から精製したディスインテグリンの全てが、αvインテグリン、α5β1インテグリン、及びインテグリンαIIbβ3などのフィブリノゲン受容体に結合し又はそれを標的とする。この結合は、フィブリノゲン依存的血小板凝集並びにフィブリノゲン受容体により仲介されている他の生物活性の阻害をまねく。本発明に役立つディスインテグリンの例としては、これらに限定されるわけではないものの、ロドストミン、トリフラビン(triflavin)、リチスタチン(rchistatin)、トリムクリン、エレガンチン、トリグラミン(trigramin)、アプラギンが挙げられる。本発明に役立つディスインテグリンのペプチド配列の例としては、配列番号1から6のものがある。
【0031】
本明細書では、『ディスインテグリンバリアント』は、野生型ディスインテグリンに由来する又はそれを修飾した又はそれを変異させたアミノ酸配列を含む改変機能活性タンパク質、又は、ポリペプチド若しくはその誘導体を指す。ディスインテグリンバリアントは、天然ディスインテグリンと比べて、1つ以上の変異を含有する。この1つ以上の変異は、天然ディスインテグリンに対する、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、又は挿入であってもよい。一実施形態では、ディスインテグリンバリアントは、1つ以上の変異を有しない天然ディスインテグリンと比べて、αIIbβ3インテグリンへの結合活性が低減している。ディスインテグリンバリアントは、インテグリンαvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6、及びαvβ8、並びにインテグリンα5β1のうち1つ以上に特異的に結合することがさらに好ましい。ディスインテグリンバリアントは、1つ以上変異を有しない天然ディスインテグリンと比べて、インテグリンαvβ3及びインテグリンα5β1の一方又は両方への結合活性が向上していることが最も好ましい。
【0032】
いくつかの実施形態では、ディスインテグリンバリアントは、天然のRhoと比べて少なくとも1つのアミノ酸の置換、挿入、又は欠失を含有する毒由来修飾Rhoタンパク質を含む。修飾されたRhoバリアント及び/又は多種ディスインテグリンは、さらに、翻訳後修飾も受け得る。
【0033】
一実施形態では、本発明に係るディスインテグリンバリアントは変異RGDループを含む。本明細書では、『変異RGDループ』又は『変異RGD領域』は、ディスインテグリンのRGDループにまたがるアミノ酸配列に1つ以上の変異を含むペプチドを指す。野生型ディスインテグリンのRGDループはインテグリンに結合するRGD残基を含む。例えば、RhoのRGDループは配列番号333のアミノ酸配列(RIPRGDMP)を含む。本発明の好ましい実施形態では、変異RGDループは、配列番号333のアミノ酸配列の1−3、5、7、及び8番目の位置のうちに少なくとも1つの変異を含む。変異RGDループは配列番号329から331のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むことがさらに好ましい。
【0034】
別の実施形態では、本発明に係るディスインテグリンバリアントは変異リンカーを含む。本明細書では、『変異リンカー』又は『変異リンカー領域』は、ディスインテグリンのリンカー領域にまたがるアミノ酸配列に1つ以上の変異を含むペプチドを指す。ディスインテグリンのリンカー領域はRGDループに直ぐに続くN末端に位置している。例えば、Rhoのリンカー領域は配列番号332のアミノ酸配列(SRAGKIC)を含む。本発明の好ましい実施形態では、変異RGDループは、配列番号332のアミノ酸配列の1−5番目の位置のうちに少なくとも1つの変異を含む。変異リンカーは配列番号306から
317のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むことがさらに好ましい。
【0035】
さらに別の実施形態では、本発明に係るディスインテグリンバリアントは変異C末端を含む。本明細書では、『変異C末端』又は『変異C末端領域』は、ディスインテグリンのC末端領域にまたがるアミノ酸配列に1つ以上の変異を含むペプチドを指す。ディスインテグリンのC末端領域はディスインテグリンのカルボキシル末端に位置している。例えば、RhoのC末端は配列番号334のアミノ酸配列(PRYH)を含む。本発明の好ましい実施形態では、変異C末端は、配列番号334のアミノ酸配列の1−4番目の位置のうちに少なくとも1つの変異を含む。変異C末端は配列番号319から328のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むことがさらに好ましい。
【0036】
好ましい実施形態では、本発明に係るディスインテグリンバリアントは、変異RGDループと、ディスインテグリンの変異リンカー及び変異C末端のうち少なくとも1つとを含む。
【0037】
好ましい実施形態では、本発明に係るディスインテグリンバリアントは、本明細書に記載のディスインテグリンの、変異RGDループ、変異リンカー、及び変異C末端を含む。
【0038】
本発明に係るディスインテグリンバリアントは天然アミノ酸及び非天然アミノ酸を含んでもよい。天然アミノ酸の例としては、これらに限定されるわけではないものの、ペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質を一般的に形成する20種の主要天然アミノ酸が挙げられる。以下の表1は、この20種の天然アミノ酸の一覧である。
【0040】
非天然アミノ酸は、自然には生じず、或いは、化学的に合成された、非タンパク質性アミノ酸である。非天然アミノ酸の例としては、これらに限定されるわけではないものの、βアミノ酸(β3及びβ2)、ホモアミノ酸、プロリン及びピルビン酸誘導体、3−置換アラニン誘導体、グリシン誘導体、環置換フェニルアラニン及びチロシン誘導体、直鎖アミノ酸、N−メチルアミノ酸などが挙げられる。
【0041】
本明細書では、『保存的置換』とは、あるアミノ酸を正味荷電が同じで大きさと形がほぼ同じである別のアミノ酸と置換することである。脂肪族アミノ酸又は置換脂肪族アミノ酸の側鎖を有するアミノ酸は、その側鎖にある炭素とヘテロ原子の総数の違いがおよそ4つまでであれば、およそ同じ大きさである。これらのアミノ酸は、その側鎖にある分岐の数の違いが1つまでであれば、およそ同じ形である。フェニル基又は置換フェニル基を側鎖に有するアミノ酸は、およそ同じ大きさと形をしていると考えられる。以下にアミノ酸の5つのグループを示す。あるポリペプチドのあるアミノ酸を同じグループの別のアミノ酸に置換することは保存的置換である。
グループI:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、システイン、C1−C4脂肪族側鎖又はC1−C4ヒドロキシル基置換脂肪族側鎖(直鎖又は単分岐)を有する非天然アミノ酸
グループII:グルタミン酸、アスパラギン酸、カルボン酸置換C1−C4脂肪族側鎖(直鎖又は単分岐)を有する非天然アミノ酸
グループIII:リシン、オルニチン、アルギニン、及びアミン又はグアニジノ置換C1−C4脂肪族側鎖(直鎖又は単分岐)を有する非天然アミノ酸
グループIV:グルタミン、アスパラギン、及びアミド置換C1−C4脂肪族側鎖(直鎖又は単分岐)を有する非天然アミノ酸
グループV:フェニルアラニン、フェニルグリシン、チロシン、及びトリプトファン
【0042】
本明細書では、『高度に保存的置換』とは、あるアミノ酸を側鎖に同じ官能基を有し大きさと形がほとんど同じである別のアミノ酸と置換することである。脂肪族アミノ酸又は置換脂肪族アミノ酸の側鎖を有するアミノ酸は、その側鎖にある炭素とヘテロ原子の総数の違いが2つまでであれば、ほとんど同じ大きさである。これらのアミノ酸は、その側鎖にある分岐の数が同じであれば、ほとんど同じ形である。高度に保存的置換の例としては、ロイシンをバリンに、セリンをスレオニンに、グルタミン酸をアスパラギン酸に、フェニルアラニンをフェニルグリシンに置換することが挙げられる。
【0043】
本明細書では、『単離タンパク質』又は『単離ポリペプチド』という用語は、とりわけ、ゲノムDNA、cDNA、組換えDNA、組換えRNA、若しくは合成起源の核酸、又はこれらの組み合わせをはじめとする核酸によりコードされるタンパク質であって、(1)通常みつかるだろうタンパク質の少なくともいくつかを含まない、(2)同一起源(例えば、同一細胞又は種)に由来する他のタンパク質を本質的に含まない、(3)異なる種に由来する細胞により発言される、(4)起源細胞から単離したときに通常みつかるだろうポリヌクレオチド、脂質、炭水化物、又は他の物質の少なくとも約50%から分離されている、(5)『単離タンパク質』が天然では結合されているポリペプチドの全て又は一部に(共有結合相互作用によっても非共有結合相互作用によっても)結合されておらず、(6)天然では結合されていないポリペプチドに(共有結合相互作用又は非共有結合相互作用によって)動作可能なように結合されており、又は(7)天然では生じない、タンパク質を指す。単離タンパク質は、天然環境でみつかる、医薬、診断、予防、又は研究での使用を妨げるだろう他の混入タンパク質若しくはポリペプチド又は他の混入物質を実質的に含まないことが好ましい。
【0044】
本明細書では、『ポリヌクレオチド』、『ヌクレオチド』、『オリゴヌクレオチド』、及び『核酸』という用語は、相互に置換可能に用いられており、DNA、RNA、これらの誘導体、又はこれらの組み合わせを含む核酸を指す。
【0045】
本明細書では、『ポリペプチド』及び『タンパク質』という用語は、相互に置換可能に用いられており、天然由来及び非組換え細胞により生産されたタンパク質、遺伝子操作若しくは遺伝子組換え細胞により生産されたタンパク質、又は化学合成により生産されたタンパク質を指し、天然タンパク質のアミノ酸配列を有する分子、又は、天然配列の1つ以上のアミノ酸の欠失、追加、及び/若しくは置換を有する配列を有する分子を含む。本発明によれば、ディスインテグリンは、修飾Rhoタンパク質又はその断片又はそのバリアントを特に包含するポリペプチド又はタンパク質である。いくつかの特定の実施形態では、ディスインテグリンは、インテグリン活性を阻害するRhoタンパク質又はその断片若しくはバリアントを包含する。いくつかの特定の実施形態では、ディスインテグリンは、αvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6及びαvβ8、並びにインテグリンα5β1から選択される任意のグループなどのαvインテグリンアイソフォームを標的とする。いくつかの他の特定の実施形態では、インテグリンはαIIbβ3ではない。
【0046】
本明細書では、『宿主細胞』は、任意の組換えベクター又はポリヌクレオチドのレシピエントになり得る又はレシピエントとなっている個別の細胞又は培養細胞である。宿主細胞は、単一宿主細胞を継代したものを含み、こうした継代物は、天然な、偶発的な、又は意図的な変異及び/又は変化により、もとの親細胞と完全に(形態又は全DNA相補体が)同一でなくてもかまわない。宿主細胞は、組換えベクター又は本発明に係るポリヌクレオチドをインビトロ又はインビボで導入又は感染された細胞を含む。本発明に係る組換えベクターを含む宿主細胞は、『組換え宿主細胞』と呼ぶこともできる。適切な宿主細胞として、例えば、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、植物細胞、昆虫細胞、及び哺乳類細胞をはじめとする原核細胞又は真核細胞が挙げられる。
【0047】
本明細書では、『結合活性』という用語は、インテグリン活性の阻害、遮断、中和、低減、無効化、又は妨害の1つ以上につながるディスインテグリン又はディスインテグリンバリアントがインテグリンに結合することを指す。いくつかの実施形態では、ディスインテグリン又はディスインテグリンバリアントは、インテグリンに結合し、インテグリンを他の分子(例えば、他のECMタンパク質)との結合から隔離することで、インテグリン活性を阻害する。いくつかの他の実施形態では、ディスインテグリン又はディスインテグリンバリアントは、インテグリンに結合し、インテグリンが細胞内で下流シグナル伝達イベントを引き起こすことを防ぐことで、インテグリン活性を阻害する。
【0048】
本明細書では、『阻害』という用語は、インテグリン活性に関する文脈において、種々の機能分析(これらに限定されるわけではないものの、バインディングアッセイ、マイグレーションアッセイ、アポトーシスアッセイ、及び、細胞接着アッセイなど)により解析した際のディスインテグリン又はディスインテグリンバリアントがインテグリンの活性を減らす性質を指す。本発明に係るいくつかの実施形態では、インテグリンは、αvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6、及びαvβ8をはじめとするαvインテグリンアイソフォームである。いくつかの他の特定の実施形態では、インテグリンはα5β1である。いくつかのさらなる実施形態では、ディスインテグリン又はディスインテグリンバリアントは、これらのディスインテグリン又はディスインテグリンバリアントが存在しない対照と比べて、約0%から約100%だけインテグリン活性を阻害する。
【0049】
本明細書では、『選択的に結合する』、『選択的に阻害する』、『選択的結合』、『選択的阻害』、『特異的に結合する』、『特異的に阻害する』、『特異的結合』、又は『特異的結合』という用語は、特定の標的インテグリン分子に対して1種以上の他のインテグリンを上回る差異的特異性(differential specificity)を示すディスインテグリン又はディスインテグリンバリアントの性質を指す。例えば、本発明に係るディスインテグリンバリアントは、インテグリンαvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6、α5β1の1種以上に選択的に結合し、そして、αIIbβ3インテグリンなどの他のインテグリンよりもインテグリンαvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6、α5β1の1種以上に高い親和性を有する。いくつかの実施形態では、修飾Rho断片を含むディスインテグリンバリアントは、インテグリンαvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6、及びインテグリンα5β1からなる群より選択される1種以上のインテグリンの活性を選択的に阻害する。好ましい実施形態では、修飾Rho断片を含むディスインテグリンバリアントは、インテグリンαvβ3とインテグリンα5β1の両方、インテグリンαvβ5とインテグリンα5β1の両方、又はインテグリンαvβ6とインテグリンα5β1の両方の活性を特異的に阻害する。いくつかの代替的実施形態では、修飾Rho断片を含むディスインテグリンバリアントは、インテグリンαvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6、及びインテグリンα5β1の活性の全てを特異的に阻害する。
【0050】
本明細書では、『相同性』又は『相同(的)』という用語は、Rho断片などの対応するディスインテグリン断片間での全体的な配列の相似性及び/又は同一性の水準を指す。高い配列相同性はタンパク質活性が保存されていることを示唆する。配列相同性を求めるために数多くの公開されたアルゴリズム又はソフトウェアプログラムを使用することができる。保存的又は非保存的置換の適否と配列相同性の水準を決定することは当業者の能力の範囲である。
【0051】
本明細書では、『対象』は、任意の動物(これらに限定されるわけではないものの、ヒト、他の霊長類、齧歯類(例えば、マウス、ラット、ギニアピッグ)、ウサギ目(例えば、ウサギ)、ボバイン(Bovines)(例えば、ウシ)、オバイン(Ovines)(例えば、ヒツジ)、カプリン(Caprines)(例えば、ヤギ)、ポーキン(Porcines)(例えば、ブタ(Swine))、エキン(Equines)(例えば、ウマ)、ケイナイン(Canines)(例えば、イヌ)、フェリン(felines)(例えば、ネコ)、及び家禽(例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、カモ、ガン、他の家禽の鳥など)を含む)、並びに、野生化動物又は野生動物(これらに限定されるわけではないものの、有蹄動物(例えば、シカ)、クマ、ウサギ目、齧歯類、鳥類などの動物を含む)を指す。この用語は特定の年齢又は性別に限定されることを意図するものではない。そのため、成体及び新生児の対象並びに胎児も雌雄を問わずこの用語に包含される。『治療を必要とする』対象とは、インテグリンの活性を1種以上阻害することで、有益な治療及び/又は予防効果が得られ、治療することができる疾患及び/又は病気を有する対象のことである。有益な成果としては、症状の重症度の低下、症状の発現の遅延、寿命の延長、及び/又は、疾患若しくは病気のより急速な若しくはより完全な解消が挙げられる。
【0052】
『医薬的に許容可能な担体』は、任意の従来の種類の、非毒性で、固体、半固体、又は液体の、充填剤、希釈剤、封入材料、製剤助剤、又は添加剤を指す。医薬的に許容可能な担体は、用いられる投薬量及び濃度でレシピエントに無毒であり、製剤の他の成分と両立し得るものである。
【0053】
本明細書では、『医薬的に許容可能な塩』は、親化合物がその酸塩又は塩基塩(acid or base salts)を作ることで修飾されている化合物誘導体を指す。
【0054】
本明細書では、『インテグリン関連疾患』は、医学的介入が必要な又は医学的介入が望ましい、インテグリンに関連する任意の病気、障害、又は症候群を指す。こうした医学的介入としては、治療、診断、及び/又は、予防を挙げることができる。
【0055】
本明細書では、『有効量』又は『十分量』は、特定の疾患、障害、病気、又は副作用の症状を阻害、予防、又は治療するために治療上有効であり得る本明細書に記載のディスインテグリンバリアントの量を指す。
【0056】
『治療』という用語は、特定の疾患、障害、病気、又は副作用の症状の頻度、程度、重症度、及び/又は持続時間を減らすことを意味する。
【0057】
『予防』という用語は、特定の疾患、障害、病気、又は副作用の症状を阻害又は防ぐことを意味する。
【0058】
(ディスインテグリンバリアント)
本発明では、ヘビ毒由来のディスインテグリン(マレーマムシ由来のロドストミン(Rho)など)のバリアントが、αvIIbβ3への結合活性は低減するものの、αvインテグリン(αvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6、及びαvβ8など)及び他のインテグリン(α5β1など)の1種以上に選択的に結合するという異なった能力を示すことを発見した。いくつかのインテグリンへの選択的結合能は、問題のディスインテグリンの、リンカー領域、RGDループ、及びC末端のうち1つ以上でのアミン酸配列を変異させることにより可能となった。
【0059】
従って、本発明の全体的態様はディスインテグリンバリアントに関する。本発明に係る一実施形態では、ディスインテグリンバリアントは、αIIbβ3との結合活性が低減しており、且つ、α5β1、αvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6、及びαvβ8のうち少なくとも1種に特異的に結合する。
【0060】
ディスインテグリンバリアントは、αIIbβ3との結合活性が低減しているものの、ディスインテグリンバリアントの由来となった野生型ディスインテグリンと比べて、α5β1及びαvβ3の少なくとも一方との結合活性が向上していることが好ましい。
【0061】
例えば、RGDループのRho変異(例えば、
46XXXRXDXX
53)がαVβ3及び/又はα5β1インテグリンへの特異性を向上させることができ、C末端領域での変異(例えば、
65XXXX
68)がαIIbβ3への結合性を低下させ(そして、血小板凝集抑制を弱め、出血副作用を低減す)ることができ、また、リンカー領域での変異(例えば、
39XXXXXIC
45)もαIIbβ3への結合性を低下させることができる。なお、上述した3つの領域はそれぞれ野生型Rhoでのアミノ酸残基番号により特定しており、本発明の実施形態に従って(例えば、挿入、欠失、又は置換により)修飾可能なアミノ酸残基をそれぞれ独立に『X』で示している。
【0062】
本発明の実施形態によれば、ディスインテグリンバリアントは、RGDループでの変異(例えば、
46XXXRXDXX
53)、即ち、変異RGDループを含む。
【0063】
一実施形態では、ディスインテグリンバリアントは、
49RXD
51のコンセンサス配列を有する変異RGDループを含む。こうしたバリアントの例としては、これらに限定されるわけではないものの、配列番号7から24のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するものが挙げられる。
【0064】
一実施形態では、ディスインテグリンバリアントは、
48XRGD
51のコンセンサス配列を有する変異RGDループを含む。こうしたバリアントの例としては、これらに限定されるわけではないものの、配列番号25から42のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するものが挙げられる。
【0065】
一実施形態では、ディスインテグリンバリアントは、
48XRGDXP
53のコンセンサス配列を有する変異RGDループを含む。こうしたバリアントの例としては、これらに限定されるわけではないものの、配列番号43から61のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するものが挙げられる。
【0066】
一実施形態では、ディスインテグリンバリアントは、
48XRGDMX
53のコンセンサス配列を有する変異RGDループを含む。こうしたバリアントの例としては、これらに限定されるわけではないものの、配列番号62から78のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するものが挙げられる。
【0067】
一実施形態では、ディスインテグリンバリアントは、
46XXPRGD
51のコンセンサス配列を有する変異RGDループを含む。こうしたバリアントの例としては、これらに限定されるわけではないものの、配列番号79から94のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するものが挙げられる。
【0068】
一実施形態では、ディスインテグリンバリアントは、
48XRXDXP
53のコンセンサス配列を有する変異RGDループを含む。こうしたバリアントの例としては、これらに限定されるわけではないものの、配列番号95から101のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するものが挙げられる。
【0069】
本発明の別の実施形態によれば、ディスインテグリンバリアントは、C末端領域での変異(例えば、
65XXXX
68)、即ち、変異C末端を含む。
【0070】
一実施形態では、ディスインテグリンバリアントは、
65PRXXXXX
71のコンセンサス配列を有するC末端を含む。こうしたバリアントの例としては、これらに限定されるわけではないものの、配列番号102から107のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するものが挙げられる。
【0071】
一実施形態では、ディスインテグリンバリアントは、
65PRXXXXX
71のコンセンサス配列を有するC末端を含み、さらに、本明細書で記載したような変異RGDループをさらに含む。例えば、変異RGDループは、
48ARGDMP
53(配列番号335)のコンセンサス配列を有していてもよい。こうしたバリアントの例としては、これらに限定されるわけではないものの、配列番号115から119のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するものが挙げられる。
【0072】
本発明のさらに別の実施形態によれば、ディスインテグリンバリアントは、リンカー領域での変異(例えば、
39XXXXXIC
45)、即ち、変異リンカーを含む。
【0073】
一実施形態では、ディスインテグリンバリアントは、
39KKKRTIC
47(配列番号306)のコンセンサス配列を有する変異リンカーを含む。ディスインテグリンバリアントは本明細書で記載したような変異RGDループをさらに含むことが好ましい。例えば、変異RGDループは、
48XRXDXP
53を有していてもよい。こうしたバリアントの例としては、これらに限定されるわけではないものの、配列番号108から114のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するものが挙げられる。
【0074】
本発明のさらなる実施形態によれば、ディスインテグリンバリアントは、リンカー領域での変異(例えば、
39XXXXXIC
45)、RGDループでの変異(例えば、
46XXXRXDXX
53)、及びC末端領域での変異(例えば、
65XXXX
68)を含む。こうしたバリアントの例としては、これらに限定されるわけではないものの、配列番号120から179のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するものが挙げられる。
【0075】
本発明に係るディスインテグリンバリアントは、本開示に鑑み、本発明の目的に適した任意の方法により、作ることができる。例えば、ディスインテグリンバリアントは、部位特異的変異導入法により構築することができる。本発明に係るディスインテグリンバリアントは、本開示に鑑み、本技術分野で周知の方法を用いて、発現させることができる。本発明のペプチドの産生には細胞系を用いた方法及び無細胞系を用いた方法が適している。細胞系を用いた方法は、一般的に、インビトロで核酸構築物を宿主細胞に導入し、この宿主細胞を発現に適した条件で培養し、その後、培地及び宿主細胞の一方又は両方から(例えば、宿主細胞の破砕などにより)ペプチドを回収することを伴う。また、本発明は、本技術分野で周知の無細胞インビトロ転写/翻訳法を用いたディスインテグリンバリアントの生産法を提供する。
【0076】
ディスインテグリンバリアントは、αIIbβ3受容体遮断活性が実質的に低減しており、並びに/又は、αvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6、及びαvβ8、並びに他のインテグリン(α5β1など)の1種以上への特異性が向上しているポリペプチドとなる修飾アミノ酸配列をコードする修飾ディスインテグリンヌクレオチド配列によりコードされ得る。ディスインテグリンバリアントのコード配列は、蛇毒由来のディスインテグリンのコード配列を修飾することで得ることができる。ディスインテグリンは、ロドストミン、アルボラブリン、アプラギン、バシリシン、バトロキソスタチン、ビチスタチン、セレベリン、セラスチン、クロタトロキシン、ズリシン、エレガンチン、フラボリジン、フラボスタチン、ハリシン、ハリスタチン、ジャララシン、ジャラスタチン、キストリン、ラチェシン、ルトシン、モロシン、サルモシン、サキサチリン、テルゲミニン、トリメスタチン、トリムクリン、トリムターゼ、ウスリスタチン、及びビリジンのいずれかから選択できる。
【0077】
本発明の別の全体的態様は、本発明に係るディスインテグリンバリアントをコードするポリヌクレオチドに関する。本発明のさらに別の全体的態様は、本発明に係るディスインテグリンバリアントをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞に関する。
【0078】
典型的には、修飾されているか否かを問わず、異種ペプチドは、上述したようにそのまま発現させたり、或いは、融合タンパク質として発現させたりしてもよく、また、当該ペプチドは、分泌シグナルのみならず分泌リーダー配列を含んでもよい。本発明に係る分泌リーダー配列は、いくつかのタンパク質を小胞体(Endoplasmic Reticulum:ER)又はペリプラズムに向かわせることができる。ERは膜結合性タンパク質を他のタンパク質と隔てている。タンパク質は、一旦ERに集まると、さらに、分泌小胞などの小胞、原形質膜、リソソーム、及び他の細胞小器官への分配のためにゴルジ体に向かわせられ得る。ペリプラズムの場合、タンパク質は、大腸菌などのグラム陰性細菌のペリプラズム間隙内に分泌される。
【0079】
さらに、ペプチド部分構造及び/又は精製タグをディスインテグリンバリアントに付加することもできる。こうした領域は、ポリペプチドの最終調製の前に除去してもよい。分泌又は排出を新たに生じさせるために、安定性を向上させるために、精製を促進するために、或いは他の理由で、ペプチド部分構造をポリペプチドに付加することは、本技術分野で慣用されるルーチンの技術である。適した精製タグとしては、例えば、V5、ポリヒスチジン、アビジン、及びビオチンが挙げられる。ビオチン等の化合物とペプチドの結合は、本技術分野で周知の技術を用いて行うことができる(Hermanson編、『Bioconjugate Techniques』、アカデミックプレス社、1996年)。また、ペプチドは、本技術分野で周知の技術を用いて、放射性同位体、毒素、酵素、蛍光標識、コロイド金、核酸、ビノレルビン、及びドキソルビシンに結合することもできる(Hermanson編、Bioconjugate Techniques、アカデミックプレス社、1996年、及び、Stefano等、2006年)。
【0080】
本発明での使用に適した融合パートナーとしては、例えば、フェツイン、ヒト血清アルブミン、免疫グロブリンCH2/CH3ドメイン(Fc)、及び/又は、これらの断片の1つ以上が挙げられる。ポリエチレングリコール結合体などの結合タンパク質も提供される。
【0081】
本発明に係るペプチドは、本技術分野で周知の技術を用いて、化学的に合成することもできる(Hunkapiller等、Nature、310巻、105−111頁、1984年、Grant編、『Synthetic Peptides:A Users Guide』、W.H.フリーマン・アンド・カンパニー、1992年、及び米国特許第6974884号明細書を参照)。例えば、あるポリペプチドの断片に対応するポリペプチドは、ペプチド合成機を利用して、又は、本技術分野で周知の固相法の利用を介して、合成することができる。
【0082】
さらに、必要に応じて、非古典的アミノ酸又は化学的アミノ酸アナログを置換又は追加としてポリペプチド配列に導入できる。非古典的アミノ酸としては、これらに限定されるわけではないものの、普通のアミノ酸のD体、2,4−ジアミノ酪酸、a−アミノイソ酪酸、4−アミノ酪酸、Abu、2−アミノ酪酸、g−Abu、e−Ahx、6−アミノヘキサン酸、Aib、2ーアミノイソ酪酸、3−アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、b−アラニン、フルオロアミノ酸、デザイナーアミノ酸(b−メチルアミノ酸、Ca−メチルアミノ酸、Na−メチルアミノ酸など)、及び一般的なアミノ酸アナログが挙げられる。さらに、アミノ酸はD(右旋性)でもL(左旋性)でもよい。
【0083】
本発明に係るディスインテグリンバリアントは、標準的な方法により、化学合成物又は組換え培養細胞から回収精製できる。こうした方法としては、これらに限定されるわけではないものの、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、及びレクチンクロマトグラフィーが挙げられる。一実施形態では、高速液体クロマトグラフィー(『HPLC』)を精製に用いる。単離及び/又は精製中にポリペプチドが変性した場合、活性立体配座を取り戻すために、タンパク質をリフォールドするための周知技術を用いることができる。
【0084】
本発明に係るディスインテグリンバリアントは、ペプチドの可溶性と循環半減期を増すために、種々の親水性ポリマーの1つ以上で修飾されても又はこれらに共有結合されてもよい。ペプチドへの結合に適した非タンパク質性親水性ポリマーとしては、これらに限定されるわけではないものの、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールに代表されるポリアルキルエーテル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリオキシアルケン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース及びセルロース誘導体、デキストラン及びデキストラン誘導体が挙げられる。一般的に、こうした親水性ポリマーは、約500から約100000ダルトン、約2000から約40000ダルトン、又は約5000から約20000ダルトンの範囲の平均分子量を有する。S.Zallipsky、Bioconjugate Chemistry、第6巻、150−165頁、1995年、C.Monfardini等、Bioconjugate Chemistry、第6巻、62−69頁、1995年、米国特許第4640835号明細書、米国特許第4496689号明細書、米国特許第4301144号明細書、米国特許第4670417号明細書、米国特許第4791192号明細書、米国特許第4179337号明細書、又は国際公開第95/34326号に記載の方法のいずれかを用いて、ペプチドを上述したポリマーで誘導体化したり上述したポリマーに結合したりできる。
【0085】
(医薬組成物)
本発明の別の全体的態様は、本発明に係るディスインテグリンバリアントと医薬的に許容可能な担体とを含む医薬組成物に関する。必要に応じて、医薬組成物は、固体、半固体、液体、又は気体状の製剤(錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、軟膏剤、液剤、坐剤、注射剤、吸入剤、及びエアロゾル剤など)に製剤化することができる。以下に示す方法及び添加剤は単なる例示に過ぎず、これらに限定されるものではない。
【0086】
いくつかの実施形態では、本発明に係るディスインテグリンバリアントは、本技術分野で広く多くが周知である、医薬的に許容可能な、担体、添加剤、及び希釈剤を含む製剤として提供される。こうした医薬的に許容可能な、担体、添加剤、及び希釈剤としては、米国薬局方の医薬品添加剤のリスト(『USP and NF Excipients,Listed by Categories』、2404−2406頁、USP24NF19、United States Pharmacopeial Convention Inc.、メリーランド州ロックビル(ISBN1−889788−03−1))に列記されたものなどが挙げられる。医薬的に許容可能な添加剤(ビヒクル、アジュバント、担体、又は希釈剤など)は公知であり容易に利用可能である。さらに、医薬的に許容可能な補助物質(pH調節及び緩衝材、等張化剤、安定剤、湿潤剤など)も公知であり容易に利用可能である。
【0087】
適した担体としては、これらに限定されるわけではないものの、水、デキストロース、トレハロース、ヒスチジン、グリセロール、生理食塩水、エタノール、及びこれらの組み合わせが挙げられる。担体は、製剤の有効性を高める追加の剤(湿潤又は乳化剤、pH緩衝材、又はアジュバントなど)を含んでもよい。局所用担体としては、流動石油、イソプロピルパルミテートポリエチレングリコール、エタノール(95%)、ポリオキシエチレンモノラウレート水溶液(5%)、又はラウリル硫酸ナトリウム水溶液(5%)が挙げられる。他の材料(抗酸化剤、保湿剤、粘度安定剤、及び同種の剤など)を必要に応じて添加することもできる。Azoneなどの経皮浸透促進剤を配合することもできる。
【0088】
当業者にとって、こうした剤形の実際の製造法は、周知又は明白である。投与される組成物又は製剤は、いずれにせよ、治療対象を望ましい状態にするために十分な量の剤を含むだろう。
【0089】
いくつかの実施形態では、本発明に係るディスインテグリンバリアントは、水性溶媒又は非水性溶媒(植物油又は他の同種の油、合成脂肪族酸グリセリド、高級脂肪族酸又はプロピレングリコールのエステルなど)中に、溶解、懸濁、又は乳化し、必要に応じて、従来の添加物(可溶化剤、等張剤、懸濁化剤、乳化剤、安定剤、及び保存剤)を配合することで、注射用製剤に製剤化できる。経口送達又は非経口送達のための他の製剤も本技術分野で周知のとおり用いることができる。
【0090】
医薬剤形では、本発明に係る医薬組成物は、医薬的に許容可能な塩の形態で投与することができるし、また、単独で若しくは他の医薬活性化合物と適切に関連させて又は組み合わせて用いることもできる。対象組成物は将来の投与法に合わせて製剤化される。好ましい実施形態では、医薬組成物は、注射用液状形態など、非経口投与用に製剤化される。
【0091】
(治療法)
また、本発明は、治療を必要とする患者でのα5β1、αvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6、及びαvβ8からなる群より選択される1種以上のインテグリンと関連する疾患の治療及び/又は予防におけるディスインテグリンバリアントの使用に関する。こうした疾患としては、これらに限定されるわけではないものの、骨粗鬆症、骨腫瘍成長又は骨肉腫成長及びその関連症状、血管形成関連腫瘍成長及び転移、骨での腫瘍転移、悪性腫瘍誘導性高カルシウム血症、血管形成関連眼疾患、パジェット病、関節リュウマチ、及び骨関節炎が挙げられる。本方法は、医薬有効量の本発明に係るディスインテグリンバリアントと医薬的に許容可能な担体とを含む医薬組成物を治療を必要とする対象に投与することを含む。
【0092】
本発明の一実施形態では、本発明に係るディスインテグリンバリアントは、血管形成関連眼疾患の治療及び/又は予防のために使用される。こうした血管形成関連眼疾患としては、これらに限定されるわけではないものの、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、角膜血管新生症、虚血誘発性血管新生網膜症、高度近視、及び未熟児網膜症が挙げられる。
【0093】
本発明の別の実施形態では、本発明に係るディスインテグリンバリアントは、血管形成関連疾患の治療及び/又は予防のために使用される。こうした血管形成関連疾患としては、これらに限定されるわけではないものの、がん、眼関連疾患(黄斑変性症など)、浮腫が挙げられる。
【0094】
別の実施形態では、本発明に係るディスインテグリンバリアントは、角膜に存在するαvインテグリン(αvβ5、αvβ6、及びαvβ8)に結合し、形質転換成長因子β(TGFβ)の活性化を仲介し、関連疾患の治療を成し遂げる。こうした疾患としては、眼疾患、関節炎、及びがんが挙げられる。さらなる態様では、本発明に係るポリペプチドは、関節炎痛の緩和のため、並びに、病的及び破壊的な血管による骨関節破壊の予防のための、抗血管新生薬である。また、本発明に係るポリペプチドは、従来の化学療法又は放射線療法と組み合わせると、異なる戦略で同時にがんを攻撃する『多弾頭』アプローチの一環として、役立つことが明らかとなる可能性がある。
【0095】
本発明のさらに別の実施形態では、本発明に係るディスインテグリンバリアントは、骨粗鬆症の治療及び/又は予防のために使用される。骨粗鬆症は、閉経後のエストロゲンの不足、続発性骨粗鬆症、関節リュウマチ、卵巣摘出、パジェット病、骨肉腫、骨腫瘍、骨関節炎、破骨細胞形成増加、及び破骨細胞活性増加から選ばれる病状と関連している。さらに、骨粗鬆症として、これらに限定されるわけではないものの、卵巣摘出誘導性骨粗鬆症若しくは骨粗鬆、又は、閉経後骨粗鬆症若しくは骨粗鬆が挙げられる。
【0096】
本発明のさらに別の実施形態は、卵巣摘出骨粗鬆症又は閉経後骨粗鬆症により誘導されるヒトをはじめとする哺乳類での生理学的変化の治療及び/又は予防のためにディスインテグリンバリアントを使用する方法である。本方法は、インテグリンαvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6、又はα5β1受容体アンタゴニスト活性を有し、野生型ディスインテグリンと比べて、インテグリンαIIbβ3受容体遮断活性が実質的に低減している単離ポリペプチド又はその医薬的に許容可能な塩を医薬有効量でそれを必要としている哺乳類に投与し、これにより、卵巣摘出により誘導された哺乳類で生理学的変化を治療及び/又は予防することを含む。
【0097】
別態様では、本発明は、本発明に係るディスインテグリンバリアント又は本発明に係る医薬組成物をこうした治療を必要とする対象に有効量で投与することを含む、血小板凝集阻害法を提供する。
【0098】
本発明に係るディスインテグリンバリアントは、全身注射(静脈注射など)又は関連部位への注射若しくは塗布(直接の注射、若しくは、部位が手術で露出したときの当該部位への直接の塗布)又は局所的塗布(皮膚上の障害の場合)などにより、治療を必要とする対象に投与できる。
【0099】
本発明に係るディスインテグリンバリアントは、単剤療法に使用することができる。この代わりに、本発明に係るディスインテグリンバリアントを、インテグリン関連疾患を治療するために、標準レジメンと組み合わせて使用することもできる。例えば、本発明に係るペプチドは、治療有効量の1種以上の他の医薬剤との併用療法に使用することができる。別の医薬剤は、抗がん剤、抗炎症剤、免疫調節剤、及び抗骨粗鬆症剤からなる群より選択されることが好ましい。抗がん剤は、抗血管形成剤、細胞毒性剤、及び抗新生物剤からなる群より選択されることが好ましい。他の医薬剤は、本発明に係るペプチドの投与に先立って、この投与とともに、又はこの投与後に投与することができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、本発明に係るディスインテグリンバリアントは、オステオポンチンの高発現に関連するがんに対して特に有効である。好ましい実施形態では、本発明に係るポリペプチドはオステオポンチン誘導性腫瘍浸潤を阻害することができる。
【0101】
ディスインテグリンバリアントの投与は、経口投与、口腔投与、経鼻投与、経直腸投与、非経口投与、腹腔内投与、皮内投与、経皮投与、皮下投与、静脈内投与、動脈内投与、心臓内投与、脳室内投与、頭蓋内投与、気管内投与、及びくも膜下投与などをはじめとする種々の方法で、又は、他の方法としては、移植若しくは吸入により、実行することができる。
【0102】
以下の本発明の実施例は本発明の性質をさらに詳しく説明するためのものである。以下の実施例は本発明を制限するものではなく、発明の権利範囲は添付の特許請求の範囲により定められることを理解されたい。
【0103】
[実施例]
[実施例1:野生型Rho及びRho変異体(ディスインテグリンバリアント)を発現する発現ベクターの構築]
RhoをコードするDNAをピキア・パストリス(Pichia pastoris)で優先的に使用されるコドンから構成した。RhoDNAを、センスプライマー(Sense primer)5’−GAATTCGAATTCCATCATCATCATCATCATCATGGTAAGGAATGTGACTGTTCT−3’(配列番号183)を用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅した。このセンスプライマーは、EcoRI認識部位を持ち、精製を助けるための6つのヒスチジン残基をコードしている。アンチセンスプライマー(Antisense primer)は、SacII認識部位とTCA(又はTTA)停止コドンを持つ、5’−CCGCGGCCGCGGTCAGTGGTATCTTGGACAGTCAGC−3’(配列番号180)又は5’−CCGCGGCCGCGGTTAGTGGTATCTTGGACAGTCAGC−3’(配列番号184)の配列を有する。PCR産物は、精製後、酵母組換えベクターpPICZαAのEcoRI及びSacII部位にライゲートした。この組換えプラスミドを用いDH5α株を形質転換し、低塩LB(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%NaCL、1.5%寒天、pH7.0)と25μg/mlの抗生物質ゼオチンを含む寒天プレート上でコロニーを選別した。
【0104】
Rhoの変異体をコードする様々なDNA構築物を合成し、EcoRI及びSacII制限酵素認識部位を含むプライマーによる重複オリゴヌクレオチド戦略を用いたPCRにより増幅した。図示するため、表2に、本発明に係る実施形態におけるいくつかのディスインテグリンバリアントのコンセンサス配列とこうしたバリアントを構築するために用いたプライマーを列記する。プレイマー配列は、5’から3’(左から右)の順に示している。
【0105】
本発明に包含される他のバリアントをコードする発現ベクターは、本開示に鑑み、同様に構築された又は同様に構築できる。ディスインテグリンバリアントの合成又は確認に用いられる様々なプライマーを配列番号180から305に列記する。
【0106】
[実施例2:Rho変異体の発現と精製]
ピキア・パストリスでのロドストミン変異体及びバリアントのタンパク質発現を、Pichia EasyComp(商標)キットのプロトコルに従い若干の修正を加えて行った。簡単に説明すると、まず、ロドストミン又はディスインテグリンのバリアントをコードするDNAを含有するプラスミド合計10μgを精製し、プラスミドを直線化するためにSacIで切断した。インビトロジェン(登録商標)社のPichia EasyComp(商標)を用いて、ヒートショック法により、ピキア株X33を直線化構築物で形質転換した。形質転換体はシングルクロスオーバーにより5’AOX1座位が組み換えられた。Rho遺伝子がピキアゲノムに組み込まれたか否かを確かめるため、PCRを用いてピキア組み込み体を解析し、細胞をLyticase(シグマ社)により溶解させた。YPD(1%酵母エキス、2%ペプトン、2%グルコース、及び2%寒天)と100μg/mlのゼオチンを含む寒天プレート上でコロニーを選別した。複数コピーのディスインテグリン挿入を含むクローンを多数選別し、ディスインテグリンタンパク質の発現が最も高い変種のクローンを選んだ。
【0107】
組換えRho変異体を以下の手順で得た。100μg/mlのゼオチンを含有するYPD培地(1%酵母エキス、2%ペプトン、及び2%デキストロース)中、30℃で、コロニーを培養し、選別した。48時間後、細胞を遠心分離により集め、最少メタノール培地(1.34%酵母窒素ベース(硫酸アンモニウム含有、アミノ酸不含)及び4×10
−5%ビオチンを含有する培地)1リットル中で培養した。合計で1%のメタノールを24時間毎に1回添加し、Rho又はバリアントの発現を2日間誘導した。上清を遠心分離により集め、緩衝液A(5mM EDTA、8M尿素、及び10mMリン酸ナトリウム緩衝材、pH7.7)5リットルで透析を2回行った。最終溶液をニッケルキレートカラムに添加し、200mMイミダゾール勾配で溶出した。さらに、HPLC(逆相C18HPLC)により組換えロドストミンとディスインテグリンバリアントを精製した。精製した組換えディスインテグリンバリアントは、トリシンSDS−PAGEで求めて、95%超の純度を有していた。
【0109】
[実施例3:Rho変異体による異なるαvインテグリン及びα5β1インテグリンにより仲介される細胞接着の阻害]
Rho変異体及びバリアントの阻害活性を周知の細胞接着阻害アッセイにより評価した(Zhang等、J Biol Chem、第73巻、7345−7350頁、1998年)。CHO−αIIbβ3細胞のフィブリノゲンへの接着、CHO−αvβ3細胞のフィブリノゲンへの接着、K562細胞のフィブロネクチンへの接着、HT−29細胞のビトロネクチンへの接着、及びHT−29細胞のフィブロネクチンへの接着を用いて、αIIbβ3、αvβ3、α5β1、αvβ5、及びαvβ6への被験タンパク質の阻害活性を求めた。簡単に説明すると、まず、96ウェルのImmulon−2マイクロタイタープレート(Costar、Corning社、ニューヨーク)を50−500nMの濃度で基質を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS:10mMリン酸緩衝剤、0.15M NaCl、pH7.4)100μlでコートし、4℃で一晩インキュベートした。基質とコーティング濃度は、フィブリノゲン(Fg)200μg/ml、ビトロネクチン(Vn)50μg/ml、及びフィブロネクチン(Fn)25μg/mlである。各ウェルに熱変性した1%ウシ血清アルブミン(BSA)(Calbiochem社製)200μlを加え室温で1.5時間インキュベートすることで非特異的タンパク質結合部位をブロックした。熱変性BSAを捨て、各ウェルをPBS200μlで2回洗った。
【0110】
インテグリンαvβ3(CHO−αvβ3)とαIIbβ3(CHO−αIIbβ3)を発現するCHO細胞は、Y.Takada博士(スクリプス研究所所属)のご厚意により提供頂いたものであり、DMEM中で維持した。ヒト赤白血病K562細胞及び結腸直腸腺癌HT−29細胞は、ATCCから購入し、5%FCSを含有するロズウェルパーク記念研究所(RPMI)−1640培地で培養した。採取したK562及びHT−29細胞を1mMのEDTAを含有するPBS緩衝液で洗い、1mMのMgSO
4、2mMのCaCl
2、及び500μMのMnCl
2を含有するタイロード緩衝液(150mM NaCl、5mM KCl、及び10mM Hepes)[pH7.35]に再懸濁した。細胞(CHO、K562、及びHT−29)を3×10
5細胞/mLに希釈し、100μLの細胞をアッセイに用いた。Rho及びその変異体を培養細胞に添加し、37℃、5%CO
2で、15分間、インキュベートした。Rho及びそのバリアントは0.001−500μMの濃度で阻害剤として用いた。その後、被験細胞をコートしたプレートに加え、37℃、5%CO
2で、1時間、反応させた。その後、インキュベーション溶液を捨て、接着していない細胞を200μLのPBSで2回洗い除去した。
【0111】
接着している細胞をクリスタルバイオレット染色により定量化した。簡単に説明すると、まず、ウェルを100μLの10%ホルマリンで10分間固定し、乾燥した。その後、50μLの0.05%クリスタルバイオレットを室温で20分間ウェルに加えた。各ウェルを200μLの蒸留水で4回洗い、乾燥した。発色は150μLの発色液(50%アルコール及び0.1%酢酸)を加えて行った。この結果得られる吸光度を600nmで測定し、測定値と接着細胞数の相関を求めた。阻害活性は、%阻害=100−[OD
600(Rho野生型又はディスインテグリン処理サンプル)/OD
600(未処理サンプル)]×100として求めた。
【0112】
IC
50は、特定のインテグリンにより仲介される細胞接着の50%阻害に必要なディスインテグリンバリアントの濃度(nM)として求めた。従って、IC
50が低いことは、対応するインテグリンの細胞接着活性を阻害するディスインテグリンバリアントの特異性又は有効性が高く、そして、対応するインテグリンへのディスインテグリンバリアントの結合活性(又は選択性)が高いことを意味する。IC
50の結果は以下の表3から14にまとめて示す。
【0113】
RGDループ領域(R
50XD、
48XRGD、ARGD
52XP、ARGDM
53X、
46X
47XPRGD、及びARGD
51X
52X)、リンカー領域(
39X
40X
41X
42X
43X)、及びC末端領域(
66X
67Χ
68Χ
69Χ
70Χ、
66XLYG、D
67XY)に関する一連のRho変異体を、組み換え発現し、精製して、均質物を得た。細胞接着アッセイ及び血小板凝集アッセイを用い、インテグリン結合親和性を求めた。これらの領域に1つ以上の修飾を有するロドストミン又はディスインテグリンのバリアントが、αvβ3、αvβ5、αvβ6、α5β1、及びαIIbβ3に異なる選択的結合親和性を有することが分かった(表3から14)。
【0114】
例えば、RXDモチーフにいくつかの変異を持つRhoバリアント(『Gly50(G)』残基が、Leu(L)、Val(V)、Ile(I)、Glu(E)、Asp(D)、Gln(Q)、Phe(F)、Trp(W)、His(H)、Lys(K)、又はArg(R)で置換されたもの)は以下の順番でインテグリンに最大効果を示した。αIIbβ3(≒1686倍)>α5β1(≒586倍)>αvβ5(≒348倍)>αvβ6(≒179倍)>αvβ3(≒26倍)。即ち、αvβ3への結合選択性が示された(表3)。XRGDモチーフに変異を持つRhoバリアント(P
48残基が他のアミノ酸に置換されたもの)は以下の順番でインテグリンに最大効果を示した。α5β1(≒71倍)>αIIbβ3(≒41倍)>αvβ3(≒5倍)(表4)。ARGDXPモチーフに変異を持つRhoバリアント(M
52残基が他のアミノ酸に置換されたもの)は以下の順番でインテグリンに最大効果を示した。αIIbβ3(≒209倍)>α5β1(≒122倍)>αvβ3(≒14倍)(表5)。ARGDMXモチーフに変異を持つRhoバリアント(P
53残基が他のアミノ酸に置換されたもの)は以下の順番でインテグリンに最大効果を示した。αIIbβ3(≒258倍)>α5β1(≒45倍)>αvβ3(≒40倍)(表6)。XXPRGDモチーフに変異を持つRhoバリアント(R
46及びI
47残基が他のアミノ酸に置換されたもの)は以下の順番でインテグリンに最大効果を示した。αIIbβ3(≒73倍)>α5β1(≒19倍)>αvβ3(≒10倍)(表7)。以上の結果から、RGDループの変異は、インテグリンαIIbβ3及びα5β1での阻害活性に顕著な効果を示すものの、αvβ3インテグリンには示さないことが分かった。
【0115】
RGDモチーフに加えて、例えば、リンカー領域又はC末端に、1つ以上の修飾を持つロドストミン又はディスインテグリンの変異体は、αvβ3、αvβ5、αvβ6、α5β1、又はαIIbβ3への選択的結合能を示した(表8から14)。例えば、リンカー領域(
39X
40X
41X
42X
43X)に変異を持つRhoバリアント(SRAGKが、KKKRT、KKART、MKKGT、IEEGT、MKEGT、AKKRT、KAKRT、KKART、KKKAT、KKKRA、KAKRA、及びSKAGTといったアミノ酸に置換されたもの)は以下の順番でインテグリンに最大効果を示した。αIIbβ3(≒2倍)>α5β1(≒5倍)>αvβ3(≒14倍)(表8)。以上の結果から、Rhoのリンカー領域の変異は、インテグリンαvβ3での阻害活性に顕著な効果を示すことが分かった。
【0116】
C末端領域(
66X
67X
68X
69X
70X)に変異を持つRhoバリアント(RYHが、RYH、RNGL、RGLYG、RGLY、RDLYG、RDLY、RNGLYG、及びRNPWNGといったアミノ酸に置換されたもの)は以下の順番でインテグリンに最大効果を示した。αIIbβ3(≒13倍)>αvβ5(≒8倍)=αvβ6(≒8倍)>αvβ3(≒4倍)>α5β1(≒2倍)(表9)。以上の結果から、RhoのC末端領域の変異は、インテグリンαIIbβ3、αvβ5、及びαvβ6での阻害活性に顕著な効果を示すことが分かった。
【0117】
C末端領域(
66XLYG)に変異を持つRhoバリアント(66位がG、P、R、K、Y、D、及びEアミノ酸に置換されたもの)は以下の順番でインテグリンに最大効果を示した。αIIbβ3(≒6493倍)>α5β1(≒40倍)>αvβ5(≒8倍)>αvβ6(≒6倍)>αvβ3(≒1倍)。即ち、インテグリンαIIbβ3及びα5β1への顕著な効果が示された(表10)。
【0118】
RhoのRGDループ領域、リンカー領域、及びC末端領域を修飾することで、インテグリンαvβ3及びα5β1に特異的なディスインテグリン(Rho)バリアントが成功裏に得られた。例えば、変異体
39KKART−
46ARGRGDNP−
66DLYGは、インテグリンαvβ3及びα5β1への素晴らしい阻害活性を示したものの、αIIβ3、αvβ5、及びαvβ6には示さなかった(表11)。RGDループ及びリンカー領域の変異は、インテグリンαvβ3及びα5β1での阻害活性を増加させ、インテグリンαIIbβ3での阻害活性を顕著に減少させた。C末端領域の変異は、インテグリンαvβ5及びαvβ6を阻害する活性を減少させた。
【0119】
RhoのRGDループ領域、リンカー領域、及びC末端領域を修飾することで、インテグリンαvβ3、αvβ5、及びα5β1に特異的なディスインテグリン(Rho)バリアントが成功裏に得られた。例えば、変異体
39KKART−
46ARARGDDL−
66GLYGは、インテグリンαvβ3、αvβ5、及びα5β1への素晴らしい阻害活性を示したものの、αIIβ3及びαvβ6には示さなかった(表12)。リンカー領域でSRAGKをKKARTに変える変異は、RGD結合インテグリンを阻害する活性を増加させた。RGDループでのR46A、I47R、P48A、M52D、及びP53Lといった変異は、インテグリンαIIbβ3及びαvβ6を阻害する活性を減少させた。C末端領域の
66RYHを
66GLYGに変える変異はαIIbβ3を阻害する活性を減少させた。
【0120】
RhoのRGDループ領域、リンカー領域、及びC末端領域を修飾することで、インテグリンαvβx及びα5β1に特異的なディスインテグリン(Rho)バリアントが成功裏に得られた。例えば、変異体
39KKART−
46ARGRGDNP−
66DLYGは、インテグリンαvβ3及びα5β1への素晴らしい阻害活性を示すものの、αIIβ3、αvβ5、及びαvβ6には示さない(表11)。RGDループ及びリンカー領域の変異は、インテグリンαvβ3及びα5β1での阻害活性を増加させ、インテグリンαIIbβ3での阻害活性を顕著に減少させた。C末端領域の変異は、インテグリンαvβ5及びαvβ6を阻害する活性を減少させた。
【0121】
[実施例4:Rho変異体による血小板凝集の抑制]
ディスインテグリン(Rho)バリアントがαIIbβ3により仲介される血小板凝集を抑制する能力にちついても試験した。静脈血サンプル(9部)を、少なくとも2週間一切投薬を受けていない健康なドナーから採取し、3.8%クエン酸ナトリウム(1部)に溶かし集めた。多血小板血漿(PRP)を得るために、血液サンプルを、150×gで10分間遠心分離し、5分静置し、PRPを集めた。残りの血液を2000×gで25分間遠心分離し、少血小板血漿(PPP)を採取した。PPP血小板を血液分析機で測定し250000血小板/μlに希釈した。190μlのPRP及び10μlのRho又はPBS緩衝液をHema Tracer601血小板凝集計内で37℃で5分間インキュベートした。光透過率により血小板凝集の応答を測定するため、10mLの200μMアデノシン二リン酸(ADP)をさらに加えた。血小板凝集の抑制についての結果は以下の表3から14にまとめて示す。
【0134】
[実施例5:ディスインテグリンバリアント及び野生型ロドストミンによる細胞移動の阻害]
Transwellフィルターは、使用前に、DMEM含有血清中で2時間平衡化したDMEM含有10%FBSを移動フィルターの下部コンパートメントに加えた。100mlの無血清DMEMに溶かして、2×10
4A375ヒト黒色腫細胞をTranswellフィルター毎に撒いた。細胞を、37℃、5%CO
2で、6時間、移動するに任せ、その後、フィルターを室温で15分間メタノールに浸けることで固定した。ロドストミン、AR−NP(コンセンサス配列は表13を参照)、又はPBS緩衝液を上部チャンバに加えた。フィルターを水で1回洗い、20%メタノール/水に溶かした0.2%クリスタルバイオレットの溶液で10分間染色した。膜の上部表面から綿棒で細胞を除去した。膜の下面に移動した細胞を、各膜につきランダムに選んだ5箇所の領域で、200倍の倍率で計数した。
【0135】
この研究でのRho、AR−NP、又はPBS緩衝液の阻害活性を
図2に示す。簡単に説明すると、AR−NPはA375ヒト黒色腫細胞の移動を著しく阻害した。
【0136】
[実施例6:Matrigel血管形成アッセイでのディスインテグリンバリアントによる血管形成の阻害]
VEGF(100ng/ml)及びヘパリン(24−26U/ml)を含有するMatrigelをB6マウスに皮下注射した。5日後にゲルを回収し、計量し、周知のヘモグロビン定量法又は組織学により処理した。ヘモグロビン含量はDrabkin試薬キット525(シグマ社)で測定した。組織学的解析は、Matrigelペレットを4%パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィンに包埋し、4ミクロンの切片を標準的手法でヘマトキシリン−エオシン染色することにより行った。
【0137】
VEGF(150ng)及びヘパリン(30IU)を含有するMatrigel(商標)(Becton Dickinson Lab.製)のアリコート(300μl)を6−8週齢のC57BL/6マウスの背部に皮下注射した。Matrigel(商標)は迅速にプラグを形成した。AR−NP(1mg/kg)又はARLDDL(1mg/kg)(コンセンサス配列は表13を参照)を24時間後に1回静脈内に投与した。5日後に、プラグを採取し、撮影した(上部パネル)。Drabkin法及びDrabkin試薬キット525(シグマ社)を用いて、血管形成の指標として、プラグのヘモグロビンを測定し、新生血管を定量化した(B及びC)。この解析により、5日の血管形成期間の間に1回だけ薬剤を注射する場合、AR−NPがARLDDLよりも効果的であることが示された。
図3参照。
【0138】
[実施例7:未熟児網膜症(ROP)の高酸素状態/正常酸素状態モデルによる血管形成阻害]
1週齢のC57BL/6jマウス又はICRマウス及びこれらの母親を5日間75%±2%の酸素に曝し(高酸素状態)、その後、相対的な高酸素状態を誘導するため、さらに5日間正常酸素正常に戻し(高酸素期間、P7からP12)、その後、さらに7日間大気中で飼育した(高酸素状態誘導性血管形成期、P12からP19)。AR−NP(1pg)を12日目に硝子体経路を介して投与し、マウスを19日目に殺処分した。非曝露対照動物は大気中で飼育した。動物は21±1℃の一定温度及び12時間の明暗周期で飼育した。酸素濃度は酸素濃度計で測定した。酸素曝露の終わり(12日目)と正常酸素正常への復帰の5日後(17日目)に、仔を殺し、新生血管及び内皮細胞により網膜血管新生を評価した。
【0139】
この研究の結果を
図4に示す。この解析により、AR−NPが網膜症マウスモデルでの血管形成を顕著に減少させることが示された。
【0140】
[実施例8:マウス大動脈環でのディスインテグリンバリアントによる血管形成の阻害]
8から12週齢のマウスの胸大動脈を摘出し、およそ0.5mm幅の環状に切断した。。大動脈環を200mlのMatrigel内に埋設した。このMatrigelはDMEMでコートされている。このDMEMは、適切な阻害剤又は対照剤の有無を問わず、2.5%のFCS及び30ng/mlのVEGFが足されている。実験はCO
2インキュベーター内で37℃で行った。培養後7日後に、大動脈環を4%ホルムアルデヒドで固定しクリスタルバイオレットで染色した。倒立顕微鏡を用いて、各環から成長した萌芽(sprout)を計数した。
【0141】
マウス大動脈環を100mg/mlのフィブロネクチンを含有するMatrigel中でVEGF及び0.1μM AR−NPとともに培養した。培地は3日毎に交換した。図は、培養7日後の微小血管の発芽を示している。AR−NPが血管発芽を顕著に減少させることに注目されたい(
図5参照)。
【0142】
[実施例9:乳がん細胞でのディスインテグリンバリアントによるコロニー形成の阻害]
図6の代表的な写真はコロニー形成アッセイの結果を示している。4−T1乳がん細胞を、上層が0.35%寒天で下層が0.7%寒天の培地が入った6ウェルディッシュにまいた。0.3mLの培地を3日毎に足した。18日後に、ディッシュ毎の培養細胞数をクリスタルバイオレット染色で同定し計数した。この解析により、ARLDDL(0.1μM及び1μM)及びAR−NP(0.1μM及び1μM)の両方が4−T1乳がん細胞のコロニー形成を阻害したことが示された。
【0143】
[実施例10:ディスインテグリンバリアントによる破骨細胞形成の阻害]
6から8週齢のSDラットを、米国国立研究所動物センターから入手し、22±1℃の室温及び12時間の明暗周期をはじめとする管理された条件下で飼育した。動物は、Purina Laboratory Rodent Dietを給餌し、蒸留水を随意に与えた。大腿骨と脛骨から髄腔を取り除き、20mM HEPES、10%加熱不活性化FBS、2mMグルタミン、ペニシリン(100U/ml)、及びストレプトマイシン(100g/ml)を足したDMEM(インビトロジェン社、カールズバッド、カリフォルニア州)を髄腔に流すことにより、骨髄細胞を準備した。非接着性細胞(造血細胞)を24時間後に集め、破骨細胞前駆体として用いた。細胞を、ヒト組換え可溶性RANKL(50ng/ml)及びM−CSF(20ng/ml)が入った24ウェルプレートに、1×10
6細胞/ウェルの濃度でまいた。培地は3日毎に交換した。8日目に破骨細胞形成をTRAP染色により測定した。簡単に説明すると、付着細胞を10%ホルムアルデヒドPBS溶液で3分間固定し、ナフトールAS−MXリン酸塩と酒石酸塩溶液とを用いて37℃で1時間染色した。各ウェルの破骨細胞様細胞を、TRAP陽性で3つより多くの核を含む多核細胞の数を計数することで、得点化した。
【0144】
タンパク薬物を1から7日目に加えた。α5β1及びαvβ3の二重インテグリンAR−NPの破骨細胞形成のIC
50は3.61nMであった。
図7に示すように、AR−NPタンパク質又はARLDDLタンパク質は、未処理対照群と比べて、RANKL誘導性破骨細胞形成を阻害した。
【0145】
[実施例11:ディスインテグリンによる神経膠腫浸潤の阻害]
ヒト神経膠腫細胞(U251)を、100g/mlのヒアルロナンを含有するMatrigelを含む上部チャンバで培養した。ディスインテグリンバリアントを上部チャンバと下部チャンバの両方に加えた。24時間後、下部チャンバの細胞をクリスタルバイオレットを用いて染色し計数した。
図8に示すように、ARLDDL(0.1μM)及びAR−NP(0.1μM)は両方とも神経膠腫の浸潤を著しく阻害した。
【0146】
[実施例12:血圧及び心拍数へのAR−NPの影響]
イソフルラン麻酔下のウィスターラットで非侵襲的方法を用いて尻尾から血圧及び心拍数を記録した。安定した測定値が得られた後に、AR−NPを尾静脈から投与した。5mg/kgのAR−NPがウィスターラットの血圧及び心拍数に有意な影響を及ぼさなかったことに注目されたい(
図9)。薬理作用をもたらすAR−NPの通常の投与量は1mg/kgである。
【0147】
[実施例13:AR−NPによるA375黒色腫成長の阻害]
A375腫瘍細胞(5×10
6)を4から5週齢のオスのSCIDマウスの脇腹に皮下注射した。細胞移植1週間後に、AR−NP(KKART−ARGRGDNP)(2mg/kg、5日/週、腹腔注射)をマウスに注射した。腫瘍体積を2日毎に測定した。薬物処理18日後に腫瘍を摘出し計量した。スケールバーは1cmである。AR−NP処理により腫瘍成長が著しく阻害されたことに注目されたい(
図10参照)。
【0148】
[実施例14:K−rasG12DトランスジェニックマウスでのKG(AR−NP)による腫瘍成長の阻害]
肺がんを誘導するため、K−Ras
G12Dマウスに400mg/Lのドキシサイクリンを給餌した。3.5ヶ月後、TG(トランスジェニック)マウスに、1月の間、2日おきに、2mg/kgのAR−NPを腹腔注射した。15回目の処理の2週間後にマウスを殺処分した。肺に墨汁を注入しフェケテ溶液で固定した。肺上の腫瘍小結節を計数した。**はP値<0.001を示す。
図11に示すように、ディスインテグリンバリアント(AR−NP)はK−rasG12Dトランスジェニックマウスでの腫瘍成長を阻害した。
【0149】
[実施例15:KGによるU87保持マウスでの脳腫瘍成長の阻害]
NOD−SCIDマウスは、購入したものに由来し、特定病原体未感染の飼育場で、12時間/12時間の明/暗周期並びに制御された湿度及び温度の良く制御された環境下、繁殖飼育したものである。8から10週齢で22から25gのマウスを用いた。マウスを、デクスドミトール/ゾレチル(20μg/kg/2mg/kg)の混合物で腹腔麻酔し、定位固定フレームにのせ、頭蓋を切開して露出させた。U87−MG細胞を採取し、注射前に、リン酸緩衝生理食塩水で2.5×10
5細胞/μLの濃度に調節した。マイクロインフュージョンポンプと30Sゲージニードルの付いた10mlハミルトンシリンジを用いてl2μLのU87−MG細胞をブレグマから線条体の所定座標に注射した。頭蓋をきれいにして、穴を骨蝋で塞ぎ、切開部を縫合した。
【0150】
80μsで300mT/mのアクティブシールディンググラディエントを有する水平型7.0−T分光計内でMRIを行った。腫瘍組織と脳組織との間のT2WIsによりもたらされるコントラストに基づいて腫瘍の輪郭を描画した。MR Visionソフトウェアを用いて、腫瘍にカバーされたスライスを横断する腫瘍面積を合計することで全腫瘍体積(mm
3)を計算した。各時間での腫瘍体積の変化として成長曲線をプロットした。腫瘍移植後23日から始めて、1週間に5日、1日当り1回、5mg/kgで、ディスインテグリンバリアント(AR−NP)単独又は混合物を、尾静脈を介して、マウスに静脈注射した。
図12に示すように、ディスインテグリンバリアント(AR−NP)もU87保持マウスでの腫瘍成長を阻害した。
【0151】
詳細に且つ特定の実施形態を参照して本発明について説明したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明の様々な変形例及び修正例が可能であることは、当業者にとって自明であろう。
【0152】
(関連出願の相互参照)
本出願は、合衆国法典第35編第119条(e)に基づき、2014年8月22日に出願された米国仮出願第62/040503号の優先権の利益を主張する。当該仮出願の内容を参照により本明細書で援用する。
【0153】
(電子的に提出された配列表の参照)
本出願は配列表を含む。この配列表は、ファイル名が「688947-1 PCT Sequence Listing.txt」、作成日時が2015年8月20日、サイズが157219バイトのASCII形式の配列表としてEFS−Webを介して電子的に提出された。EFS−Webを介して提出された配列表は本明細書の一部であり、その内容を参照により本明細書で援用する。
【0154】
[付記]
[付記1]
(a)配列番号332のアミノ酸配列(SRAGKIC)の1から5番目の位置に少なくとも1つの変異を含む変異リンカー、
(b)配列番号329から331のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む変異RGDループ、及び
(c)配列番号334のアミノ酸配列(PRYH)の1から4番目の位置に少なくとも1つの変異を含む変異C末端、
からなる群より選択される少なくとも1つを含み、
前記変異リンカー、前記変異RGDループ、及び前記変異C末端からなる群より選択される前記少なくとも1つを有しないディスインテグリンと比べて、αIIbβ3インテグリンへの低下した結合活性、並びに、αvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6、αvβ8、及びα5β1インテグリンの少なくとも1つへの向上した結合活性の少なくとも1つを有する、ディスインテグリンバリアント。
【0155】
[付記2]
前記ディスインテグリンは、ロドストミン(rhodostomin)、アルボラブリン(albolabrin)、アプラギン(applagin)、バシリシン(basilicin)、バトロキソスタチン(batroxostatin)、ビチスタチン(bitistatin)、セレベリン(cereberin)、セラスチン(cerastin)、クロタトロキシン(crotatroxin)、ズリシン(durissin)、エレガンチン(elegantin)、フラボリジン(flavoridin)、フラボスタチン(flavostatin)、ハリシン(halysin)、ハリスタチン(halystatin)、ジャララシン(jararacin)、ジャラスタチン(jarastatin)、キストリン(kistrin)、ラチェシン(lachesin)、ルトシン(lutosin)、モロシン(molossin)、サルモシン(salmosin)、サキサチリン(saxatilin)、テルゲミニン(tergeminin)、トリメスタチン(trimestatin)、トリムクリン(trimucrin)、トリムターゼ(trimutase)、ウスリスタチン(ussuristatin)、及びビリジン(viridin)からなる群より選択される、付記1に記載のディスインテグリンバリアント。
【0156】
[付記3]
配列番号333のアミノ酸配列(RIPRGDMP)の1−3、5、7、及び8番目の位置のうちに少なくとも1つの変異を含む変異RGDループと、前記変異リンカー及び前記変異C末端の少なくとも1つとを含む、付記1又は2に記載のディスインテグリンバリアント。
【0157】
[付記4]
前記変異リンカーは配列番号306から
317のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、付記1から3のいずれか1つに記載のディスインテグリンバリアント。
【0158】
[付記5]
前記変異C末端は配列番号319から328のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、付記1から4のいずれか1つに記載のディスインテグリンバリアント。
【0159】
[付記6]
配列番号329から配列番号331のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する前記変異RGDループと、配列番号306から配列番号
317のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する前記変異リンカー及び配列番号319から配列番号328のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する前記変異C末端の少なくとも1つとを含む、付記1から6のいずれか1つに記載のディスインテグリンバリアント。
【0160】
[付記7]
前記変異RGDループ、前記変異リンカー、及び前記変異C末端を含む、付記6に記載のディスインテグリンバリアント。
【0161】
[付記8]
配列番号123、124、147、149、及び171のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、付記1に記載のディスインテグリンバリアント。
【0162】
[付記9]
PEG化されている、又は、アルブミン若しくはFCと結合されている、付記1から8のいずれか1つに記載のディスインテグリンバリアント。
【0163】
[付記10]
付記1から9のいずれか1つに記載のディスインテグリンバリアントをコードするポリヌクレオチド。
【0164】
[付記11]
付記1から9のいずれか1つに記載のディスインテグリンバリアントをコードするポリヌクレオチドを含む組換え宿主細胞。
【0165】
[付記12]
付記1から9のいずれか1つに記載のディスインテグリンバリアントと、医薬的に許容可能な担体とを含む、医薬組成物。
【0166】
[付記13]
αvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6、αvβ8、及びα5β1インテグリンの少なくとも1つに関連するインテグリン関連疾患を、治療を必要とする対象において、治療するための方法であって、付記12に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【0167】
[付記14]
前記インテグリン関連疾患は、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、角膜血管新生症、虚血誘発性血管新生網膜症、高度近視、及び未熟児網膜症からなる群より選択される血管形成関連眼疾患の1種である、付記13に記載の方法。
【0168】
[付記15]
前記インテグリン関連疾患は、転移性黒色腫、転移性前立腺がん、転移性乳がん、結腸直腸がん、肝臓がん、卵巣がん、子宮頸がん、膵臓がん、非小細胞肺がん、及び多形性膠芽腫からなる群より選択されるがんの1種である、付記13に記載の方法。
【0169】
[付記16]
αvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6、αvβ8、及びα5β1インテグリンの少なくとも1つに関連する疾患を、治療を必要とする対象において、治療するための薬剤の製造における、付記1から9のいずれか1つに記載のディスインテグリンバリアントの使用。