(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マイクロニードルが、水溶性、生体分解性又は他の生体分解可能な材料を含み、その中で前記薬剤が分散され及び/又はその上で前記薬剤が被覆される、請求項1に記載の薬剤送達デバイス。
前記押下可能部分による作動に際して、前記第2の力を加えるように構成された弾性歪みエネルギーを格納するためのデバイスをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬剤送達デバイス。
前記押下可能部分及び前記支持層のうちの少なくとも1つが、前記押下可能部分の押下に際して、前記基板に回転性の剪断力を加えるように構成されたねじ状の又はらせん状の部分を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬剤送達デバイス。
前記薬剤送達デバイスが、前記押下可能部分の押下に際して、前記押下可能部分及び前記支持層が互いに接触することを可能にするように構成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬剤送達デバイス。
前記マイクロニードルのアレイの1つ又は複数のマイクロニードルが、前記第2の力の適用に際して、前記1つ又は複数のマイクロニードルが前記基板から分離するように構成される少なくとも1つの特徴を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬剤送達デバイス。
前記少なくとも1つの特徴が、前記マイクロニードルのアレイの1つ若しくは複数のマイクロニードル及び/又は前記マイクロニードルのアレイの前記1つ若しくは複数のマイクロニードルのそれぞれに関して位置される前記基板の近位端部に、既定の折れる領域を含む、請求項12に記載の薬剤送達デバイス。
前記既定の折れる領域が、実質的に細い部分、壊れやすい部分、細かい切り目を付けられた部分、刻み目を付けられた部分、異なる材料の境界面、異方性の機械的な特性を有する1つ若しくは複数の材料、又はそれらの組合せを含む、請求項13に記載の薬剤送達デバイス。
前記押下可能部分への手動の既定の力の適用に際して、前記押下可能部分が、前記デバイス内に歪みエネルギーをインプットするように構成され、及び前記デバイスが、前記第2の力としての前記歪みエネルギーを放出するように構成される、請求項1に記載の薬剤送達デバイス。
前記第2の力が剪断力であり、前記インプット力が前記剪断力より小さく、及び前記剪断力が、前記デバイス内に格納されたエネルギーの放出によって少なくとも部分的に影響を受ける、請求項1に記載の薬剤送達デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0014】
マイクロニードルを挿入する改善された薬剤送達デバイス及び方法が開発された。実施形態において、薬剤送達デバイスは、基板から突出するマイクロニードルのアレイ及び基板への力の適用に際してマイクロニードルのアレイが基板から分離するように構成される少なくとも1つの特徴を含む。基板に加えられた力は、マイクロニードルのアレイを用いて生物学的組織を少なくとも部分的に貫通するのに効果的であり得る。明確に述べると、インプット力は、マイクロニードルに加えられる2つの異なる力をもたらす。第1の力は、主として組織内にマイクロニードルを挿入する効果を有し、第2の力は、主としてマイクロニードルを基板から分離する効果を有する。
【0015】
実施形態において、マイクロニードルのアレイの1つ又は複数のマイクロニードルは、有利にはマイクロニードルのアレイを用いて組織表面を少なくとも部分的に貫通するのに効果的である力の適用に際して基板から分離する。従って、いくつかの実施形態において、力の適用は、[1]マイクロニードルのアレイを用いて生物学的組織を貫通するのに、及び次いで、[2]マイクロニードルのアレイの1つ又は複数のマイクロニードルを基板から分離するのに効果的である。分離されたマイクロニードルは、次いで生物学的組織内に少なくとも部分的に埋め込まれたままであり得る。基板及びデバイスの残部は、有益にはマイクロニードルの分離に際して組織表面から取り除かれ得る。
【0016】
好ましい実施形態において、マイクロニードルの組織貫通及び分離は、連続的であるがほとんど同時に起こる。このようにして、例えば、使用者は手動でデバイスをその人の皮膚に当て、単純にボタン又はデバイスの他の部分を押下する、又はデバイスを回転させることにより、マイクロニードルを皮膚に挿入する、及びデバイスからマイクロニードルを分離するという双方が、単純かつ素早い動きにより可能である。この利点は、投与プロセスを簡略化し、長時間の間、例えば、薬剤放出の間又は溶解で作動される分離が起こるまでの待機の間、皮膚表面上に残されるいくつかの外部デバイスの部分を有する必要性を回避する。
【0017】
本明細書において用いられるように、本明細書に記載のデバイスの使用に関する用語「使用者」は、マイクロニードルが投与される人(すなわち、自己投与の場合)であり得、又は他の人若しくは動物にマイクロニードルを施す人であり得る。例えば、使用者は、治療又は予防のために薬剤を必要とする患者にマイクロニードルデバイスを適用する、医者若しくは看護師又は他の医療専門家であり得る。
【0018】
本明細書に記載のデバイス及びそれらの使用の実施形態において、力変位湾曲、すなわち、マイクロニードルの変位をもたらすインプット力(すなわち、デバイスに使用者によって加えられた力)における非連続性がある。一事例において、連続的なインプット力は、非連続なマイクロニードルの変位をもたらす。例えば、アウトプット力(すなわち、マイクロニードル又は基板に加えられる力)は、最初に鉛直方向に(標的組織部位の方に/内に)マイクロニードルを移動し、次いで急に横方向への移動にシフトする。代替例において、鉛直から横方向へシフトする移動は連続的に生じる。
【0019】
本明細書に記載のデバイス及び方法の重要な態様は、使用者によるインプット力の適用の間に、マイクロニードルの基板からの分離が起こることである。対照的に、従来のシステムは、マイクロニードル挿入の後及び力がマイクロニードルデバイスへ加えられなくなった後に発生する、溶解プロセスに基づいて起こる分離を説明する。そのような従来の事例において、いくらかの後の時間(例えば、数分又は数時間)に、マイクロニードル(又はマイクロニードルの部分)は、基板が組織から取り除かれ得及びマイクロニードルが組織内にとどまるように、湿性及び軟性を得並びにゲルを形成し得並びに部分的に溶解される。また対照的に、本明細書に記載のデバイス及び方法を用いたマイクロニードルの分離は、有利には組織内の水分又は吸収する水分又は溶解又は任意の他のそのようなプロセスとマイクロニードルとの相互作用によっては(全く又は実質的に)促進されない。
【0020】
開示される本デバイス及び方法のさらなる利点は、マイクロニードルの分離が、いくつかの従来のシステムとは異なり、生物学的組織からのマイクロニードルの離脱に抵抗するかかりのような特徴を有するマイクロニードルに依存しないことである。本開示のマイクロニードルは、従って、実質的に滑らかな又はまっすぐな側壁を有し得る。
【0021】
いくつかの実施形態において、剪断力などの物理的力が、マイクロニードルに加えられ、それらを壊す原因となる。他の実施形態において、マイクロニードル及び/又はそれらの分離を引き起こす基板の機械的な特性の変化があり、すなわち、基板とマイクロニードルの境界面が弱くされ、より少ない剪断又は剪断がないため、分離をもたらす。例えば、既定の折れる領域は、1つ若しくは複数の異方性の材料若しくは複合材料で形成され、又は1つ若しくは複数の異方性の材料若しくは複合材料を含み得る。いくつかの実施形態において、皮膚又は他の生物学的組織内への挿入に際して、マイクロニードルの機械的な特性を変えることができるトリガーが存在する。これらのトリガーの例としては、(i)マイクロニードルの分離を容易にする位相変化(例えば、固相から液相への位相変化、ある結晶構造から別の結晶構造への変化)を引き起こす挿入の力による圧力、(ii)マイクロニードル境界面に接触する及びそれを溶解させる又はさもなければそれを弱くする液体であって、挿入の力がデバイスに格納された液体の放出を開始し、その液体がマイクロニードル境界面を溶解し/弱くする液体、並びに(iii)デバイスの折れることの可能な領域の破壊をもたらす電界によって、マイクロニードルを機械的に壊す、又はマイクロニードルの機械的な特性(例えば、荷電分子の配列)を変化させるためのスイッチをトリガーする電気回路を終了させる(又は電気回路を切断させる)生物学的組織内にマイクロニードルを挿入するためにデバイスを押すこと、が含まれる。
【0022】
いくつかの実施形態において、生物学的組織の方へのデバイスに対して下向きの使用者の力の適用は、マイクロニードルの基板からの分離を引き起こすための基板に対する垂直な力を加える。例えば、その力は、マイクロニードルの近位端部が基板を通して押され、それを折ることを引き起こし得る。他の実施形態において、生物学的組織の方へのデバイスに対して下向きの使用者の力の適用は、マイクロニードルの基板からの分離を引き起こすように基板に対して平行な力を加える。例えば、平行な力は直線性又は回転性であってよい。
【0023】
薬剤送達デバイスの一実施形態が
図1Aに示される。 薬剤送達デバイス100は、支持層110及びマイクロニードル130のアレイが突出するところの基板120を含む。薬剤送達デバイス100のマイクロニードル130は、力の適用に際し、組織表面150を貫通し(
図1B)、折れたマイクロニードル160(
図1C)という結果をもたらす。
図1Aのマイクロニードルは既定の折れる領域140を含むが、既定の折れる領域140の存在は必要ではない。
【0024】
薬剤放出の制御を可能にする改善された薬剤送達デバイス及び方法がまた、提供される。実施形態において、薬剤送達デバイスは、薬剤を含み及び基部から突出するマイクロニードルのアレイと、マイクロニードルが少なくとも部分的に生物学的組織内に挿入された後、マイクロニードルからの及び生物学的組織内への薬剤の放出の速度の変化をトリガーするためのシステムとを含む。トリガーするためのシステムは、温度、pH、圧力などのような、状態又は状態における変化に応じて薬剤放出速度を変化し得る。一実施形態において、トリガーするためのシステムは、少なくとも1つの方向内で及び/又は既定の時間の間、マイクロニードルからの薬剤の放出を妨害するために、マイクロニードルの少なくとも部分内又は部分上に配置されるバリア材料を含む。バリア材料は、例えば、完全に又は部分的に、マイクロニードルの薬剤のすべて若しくは一部を封入し得、少なくともマイクロニードルの部分を被覆し得、又はその組合せであり得る。トリガーによる変化は、以下の3つのカテゴリー、(I)トリガーによる変化は、人的介入の結果ではない組織環境内の自己発生的な変化(例えば、分析物濃縮変化)によるものであり得る、(II)トリガーによる変化は、電界を与えること又は圧力を加えることなどの人的介入によるものであり得る、若しくは(III)トリガーによる変化は、一度十分な溶解が起こると、あらかじめ封入された薬剤が放出され得る溶解のように作用する溶解プロセスなどの、人的介入のないマイクロニードル内での変化によるものであり得る、のうちの1つに分類され得る。
【0025】
実施形態において、薬剤送達デバイスは、デバイスへの力の適用に際して分離するマイクロニードルと、マイクロニードルからの薬剤の放出の速度及び/又は配置の変化をトリガーするためのシステムとを含む。好ましい実施形態において、マイクロニードルは、分離が発生する端部分/領域からのみ薬剤の放出が起こるように、マイクロニードルを覆うバリアを含む。このようにして、薬剤の送達/放出は、分離が発生する端部分/領域に近い組織に対し、優先的に又は排他的に起こる。皮膚の場合には、マイクロニードルは、真皮表皮接合部の近くで基板から分離することができる。そうして、真皮におけるマイクロニードルの部分は、被覆され及び薬剤を放出しないが、マイクロニードルの上部(それが分離する部分)は、しばしば皮膚疾患の部位である表皮内へ薬剤を放出する。
【0026】
本明細書において又は以下の本明細書の残りの部分において定義される場合を除いて、本明細書で用いられるすべての技術的な及び科学的な用語は、本開示が属する当業者により一般に理解される意味を有する。本明細書で用いられる専門用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであって、制限することを意図するものではないことがまた理解されるべきである。本実施形態の説明及び請求において、以下に続く用語は以下に述べる定義に従って用いられよう。
【0027】
この明細書及び添付の請求項において用いられるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が他の方法で明瞭に明記されない限り、複数の指示物を含む。従って、例えば、「バリア材料(a barrier material)」への言及は、2つ以上の構成要素の組合せを含むことができ、「既定の折れる領域(a predefined fracture region)」への言及は、2つの異なる既定の折れる領域などを含むことができる。所与の量の値を示す本明細書で用いられるような用語「約(about)」は、指定された値の10%以内、又は任意に値の5%以内、又はいくつかの実施形態において、値の1%以内の範囲の量を含むことができる。
【0028】
マイクロニードルのアレイ
マイクロニードルアレイは、ベース基板の表面から突出する2つ以上のマイクロニードルを含む。語句「ベース基板(base substrate)」及び用語「基板(substrate)」は、本明細書において入れ替え可能に用いられる。各マイクロニードルは、直接的に又は間接的に1つ又は複数の既定の折れる領域を介して、ベース基板に取り付けられる近位端部と、鋭利な及び生物学的組織を貫通するのに効果的な遠位先端部とを有する。マイクロニードルは、近位端部と遠位端部との間にテーパ形状の側壁を有し得る。
【0029】
マイクロニードルの長さ(LMN)は、約50マイクロメートルから2ミリメートルの範囲内であり得る。多くの事例において、それらは約200マイクロメートルから1200マイクロメートルの範囲内、及び理想的には約500マイクロメートルから1000マイクロメートルの範囲内である。マイクロニードルの体積(VMN)は、約1ノルマルリットルから100ノルマルリットルの範囲内であり得る。多くの事例において、それは約5ノルマルリットルから20ノルマルリットルの範囲内である。
【0030】
一実施形態において、マイクロニードルのアレイは、10から1000までのマイクロニードルを含む。好ましい実施形態において、マイクロニードルは、生物学的組織内への、例えば患者の皮膚内へのマイクロニードルの挿入に続いてインビボで可溶性になる、有効医薬成分(API)などの対象の物質を含む固体のマイクロニードルである。例えば、対象の物質は、水溶性マトリックス材料内に混合され、固体のマイクロニードルを形成し得る。対象の物質は、生体分解可能な形で提供され得る。本明細書で用いられるように、用語「生体分解可能な(bioerodible)」は、構成物/材料が、溶解、酵素結合開裂、加水分解、侵食、吸収、又はそれらの組合せによりインビボで分解することを意味する。好ましい実施形態において、対象の物質及び対象の物質が分散するマトリックス材料は、マイクロニードルの構造を形成する。好ましい実施形態において、生体分解可能なマイクロニードルのマトリックス材料は、マイクロニードル全体がインビボで分解するような水溶性である。別の実施形態において、生体分解可能なマイクロニードルのマトリックス材料は、マイクロニードルはもともと生物学的組織内に挿入される形状において可溶性でないが、化学的変化の生成物(例えば、ポリマーのモノマー又はオリゴマー)を水溶性、さもなければ体から排除可能にする体内の化学的変化(例えば、ポリマーの化学結合の破壊)を受けるように、生体分解性である。
【0031】
一実施形態において、所与のマイクロニードルのアレイ内のマイクロニードルはすべて、同様の活性剤及び賦形剤を含む。しかしながら、活性剤及び/又は賦形剤は、各マイクロニードルにおいて、マイクロニードルの異なる列又はマイクロニードルアレイの部分/領域において異なり得る。そのような区分を用いてマイクロニードル設計をすることの理由としては、i)異なる活性剤が互いに不適合であること、ii)異なる活性剤が異なる安定化賦形剤を必要とすること、及びiii)異なる放出プロフィール(例えば、迅速なボーラスに続く持続的な放出の組合せ)が単一の活性剤又は異なる活性剤を必要とすること、があり得る
【0032】
マイクロニードルのアレイはまた、薬剤、活性成分若しくは物質、又は対象の物質を含む。用語及び語句「薬剤(drug)」、「活性成分(active ingredient)」、「活性物質(active agent)」、「活性剤(active(s))」、及び「対象の物質(substance of interest)」は、本明細書において入れ替え可能に用いられる。薬剤は、マイクロニードルの表面の内側に及び/若しくは表面上に、基板の内側に及び/若しくは基板上に、又はその組合せに存在し得る。薬剤は、マイクロニードルの特定の領域内に分散され、マイクロニードル内の1つ若しくは複数の貯蔵器に配置され、高濃度の領域に配置され、又はそれらの組合せであり得る。
【0033】
既定の折れる領域
実施形態において、薬剤送達デバイスは既定の折れる領域を含む。基板及び/又は1つ又は複数のマイクロニードルは既定の折れる領域を含む。実施形態において、この領域は、マイクロニードルと基板との間の脆い境界面であるとみなされ得る。既定の折れる領域は、マイクロニードル又はマイクロニードル及び基板の一部分が所望の位置で又は所望の位置の近くで分離する可能性を増大し得る。いくつかの実施形態において、既定の折れる領域は、マイクロニードル又はマイクロニードル及び基板の一部分が所望の位置で又は所望の位置の近くで分離することを確実にする。
【0034】
一実施形態において、基板は、マイクロニードルのアレイの1つ又は複数のマイクロニードルのそれぞれについての既定の折れる領域を含む。例えば、基板は、力がデバイスに加えられると、折れるように構成された既定の折れる領域を含み得る。典型的にはマイクロニードルが少なくとも部分的に基板内に押し込まれた後、既定の折れる領域は力が加えられると折れ得る。既定の折れる領域の切断に際して、基板はマイクロニードルのアレイの保持をできなくされ得る。いくつかの実施形態において、基板の部分が、分離に際して1つ若しくは複数のマイクロニードルと連携され得、及び/又は1つ若しくは複数のマイクロニードルの部分が、分離に際して基板と連携され得る。
【0035】
一実施形態において、マイクロニードルのアレイの1つ又は複数のマイクロニードルは、既定の折れる領域を含む。既定の折れる領域は、マイクロニードルのアレイの1つ又は複数のマイクロニードルの近位端部に位置され得る。
【0036】
一実施形態において、1つ又は複数の既定の折れる領域は、基板及びマイクロニードルのアレイの1つ又は複数のマイクロニードル内に含まれる。
【0037】
実施形態において、既定の折れる領域は、例えば、1つ又は複数のマイクロニードルの分離が所望の位置で起こる可能性を増大する、構成上の又は物理的な特徴(すなわち、幾何学的な特徴)を含み、例えば、マイクロニードルを基板から分離するのに要求される力は、垂直な方向においてより大きくなり、及び横方向においてより小さくなる。例えば、既定の折れる領域は、実質的に細い部分、細かい切り目を付けられた部分、刻み目を付けられた部分、異なる材料の境界面、又はそれらの組合せを含み得る。異なる材料の境界面は、基板の少なくとも一部分及び異なる材料若しくは材料の組合せからの1つ又は複数のマイクロニードルの少なくとも一部分を形成することによって提供され得る。
【0038】
他の実施形態において、既定の折れる領域は、材料が圧縮を受けて強くなり及び剪断を受けてもろくなるように、材料特性(幾何学的な特徴よりもむしろ)に基づいて定義され/制御される。すなわち、既定の折れる領域は、異方性の機械的な特性を有する1つ又は複数の材料から成り得る。これは単一の材料を用いて達成され得、及び当技術分野において周知な方法を用いた複合材料を用いて達成され得る。
【0039】
一実施形態において、各マイクロニードルは、その近位端部に既定の折れる領域を含み、ここにおいて、マイクロニードルを基部に連結するファンネル部分を受ける。
【0040】
単一のマイクロニードルアレイは、2つ以上の既定の折れる領域を含み得る。例えば、アレイは、第1のタイプの既定の折れる領域を有するマイクロニードルの1つの列、及び第2のタイプの既定の折れる領域を有するマイクロニードルの第2の列を含むことができる。例えば、この2つの相違点は、有益には対象の2つの異なる対象の物質を送達するために設計され得る。
【0041】
既定の折れる領域の一実施形態は、
図1Aに示される。
図1Aの薬剤送達デバイス100は、支持層110及びマイクロニードル130のアレイが突出するところの基板120を含む。マイクロニードル130のそれぞれは、
図1Cに示すように、刻み目140より下のマイクロニードルの部分160の分離を容易にする刻み目140を含む。
【0042】
既定の折れる領域の一実施形態は、
図2Aに示される。デバイス200は、基板210及びそこから突出するマイクロニードル220のアレイを含む。マイクロニードル220及び基板210は異なる材料で形成され、並びにこれらの異なる材料の境界面225は既定の折れる領域である。マイクロニードル220は、マイクロニードル220を用いて組織表面230を貫通するのに効果的である力の適用時又は適用後、異なる材料の境界面225において基板210から分離する。
【0043】
既定の折れる領域の別の実施形態は、
図2Bに示される。デバイス240は、マイクロニードルのアレイが突出する基板250を含む。マイクロニードルは、ファンネル部分270、及びマイクロニードルの実質的に細い部分260が、組織表面280を貫通するのに効果的である力の適用時又は適用の後、基板250から分離することを確実にする実質的に細い部分260を含む。
【0044】
さらに別の実施形態において、マイクロニードルの基板からの分離は破壊のバックリングモードを含む。一事例において、基板とマイクロニードルとの間の境界面は柱部を含み、柱部間に開放空間を有してそれらを接続する。次いで、柱部への完全に垂直な力の適用は柱部を歪ませ、それらを壊す。柱部が歪んだ場合、垂直方向から横方向の力の転換が、柱部内で起こるように、横方向に柱部材料を歪ませる横方向の力が存在する。従って、
図4及び
図5の実施形態において記載されるようないくつかの実施形態において、垂直方向から横方向の力の転換が、基板とマイクロニードルとの間の境界面の前の力転換プロセスにおける段階で生じる一方、柱部を用いる実施形態などの他の実施形態において、力転換が、基板とマイクロニードルとの間の境界面で起こることが理解されよう。
【0045】
生物学的組織
本明細書で用いられるような語句「生物学的組織」は、一般に任意の人又は哺乳類の組織を含む。生物学的組織は、治療又は予防を必要とする人又は他の哺乳類の皮膚又は粘膜組織であり得る。本デバイス及び方法はまた、他の生物学的組織及び他の動物に適合され得ることが想定される。
【0046】
本明細書で用いられるような語句「組織表面を貫通する」は、1つ又は複数のマイクロニードルの任意の部分を用いて生物学的組織表面を貫通することを含む。マイクロニードルの基板からの分離のときに、マイクロニードルの近位端部は、組織表面の上方、実質的に組織表面と同じ水準、又は組織表面の下方にあり得る。
例えば、
図3Aは、基板310及び生物学的組織表面330を貫通したマイクロニードル320を含むデバイス300の一実施形態を示す。マイクロニードル320の基板310からの分離に際して、分離されたマイクロニードル340は、完全に組織表面330の下に位置される。さらなる例として、
図3Bは、基板360及び生物学的組織表面380を貫通するマイクロニードル320を含むデバイス350の別の実施形態を示す。マイクロニードル320の基板360からの分離に際して、分離されたマイクロニードル390の遠位部分は組織表面380の下に位置され、及び近位部分は組織表面から突出する。別の言い方をすると、分離されたマイクロニードル390は、部分的に生物学的組織に埋め込まれる。
【0047】
代替の実施形態において、生物学的組織は植物組織である。
【0048】
力
実施形態において、本明細書で提供される薬剤送達デバイスは、有利には薬剤送達デバイスに適用される力に応答するように構成される。一実施形態において、力は、マイクロニードルのアレイの1つ又は複数のマイクロニードルを用いて生物学的組織表面を貫通するのに効果的である。別の実施形態において、力は、マイクロニードルのアレイの1つ又は複数のマイクロニードルを用いて生物学的組織表面を貫通し、及びマイクロニードルのアレイの1つ又は複数のマイクロニードルを基板から分離するのに効果的である。
【0049】
一実施形態において、力の適用に際してのマイクロニードルのアレイのマイクロニードルを用いた生物学的組織表面の貫通は、マイクロニードルの基板からの分離の前に起こる。別の実施形態において、マイクロニードルのアレイのマイクロニードルを用いた生物学的組織表面の貫通及びマイクロニードルの基板からの分離は連続的に起こるが、力の適用に際して実質的に同時に起こる。本明細書で用いられるように、語句「実質的に同時に(substantially simultaneously)」は、互いに5秒、3秒、1秒内、又はより少ない時間内に起こる事象を意味する。好ましい実施形態において、挿入及び分離は使用者による連続的な動作で起こる。別の言い方をすると、マイクロニードルが組織内に貫通し及び次いで貫通の後ある時点でそれらが折れて取れる間、連続的な力が使用者によって加えられる。マイクロニードルに加えられた力は、このプロセスの間の方向(例えば、組織表面に対して垂直及び次いで横方向)において非連続的であり得るにもかかわらず、使用によって加えられた力は、実質的に方向(例えば、組織表面に対して垂直)において連続的である。この実施形態に関して多くの場合、挿入及び分離が連続的な事象であるように、マイクロニードルの垂直な移動(すなわち、生物学的組織の表面の方へ垂直な)は、実質的にマイクロニードル分離が起こる時点で停止する。
【0050】
これらの実施形態で考慮される1つの手段は、使用者からの1つのインプットがデバイスからの2つのアウトプットをもたらすことである。使用者は、少しの間連続的に押下する。この時間の間、デバイスはマイクロニードルを組織内に挿入し、組織内でそれらを折って取る。デバイスへの力の適用は一過性である。デバイスからの力のアウトプットは二過性である。力の方向における変化は二過性ではないが、力の方向における連続的な切替えを伴うこと、例えば、力は最初は垂直であり、次いで時間を通じてその角度を漸進的に約90°から約0°までシフトさせ、実質的に横方向で終わることが、また実行可能である。
【0051】
1つの好ましい実施形態において、力は使用者によって手動で適用され得る。デバイスは、既定の折れる領域に直接的に又は間接的に力を転換し得る。デバイスは、手動で適用された力の方向を変え得、例えば、デバイスの部分を押下する使用者によって適用された下向きの力(マイクロニードルを生物学的組織に貫通させるのに効果的である)を、既定の折れる領域を折るのに効果的である横方向又は回転力に変換する。別の好ましい実施形態において、力は、手動の力及びデバイス内のばね又は他の構成要素に格納された放出された機械的な力の組合せであり得る。
【0052】
別の好ましい実施形態において、力はデバイスの部分を手動で押下することによって加えられ、それによって、数秒以下の短時間で格納される歪みエネルギーをデバイスに与え、次いで回転性の又は横方向の剪断によりマイクロニードルを切り落とすように放出される。これは、下向きの力を変換し、トーションばね内に歪みエネルギーを一時的に貯えるねじメカニズムを回転させることによって達成され得る。一度所望の力(トーションばねを装入すること/曲げることによって制御される)が加えられる(すなわち、マイクロニードルを部分的に又は完全に組織内に挿入するのに十分に)と、ラッチが基板上にこの回転エネルギーを放出することによって、マイクロニードルを基板から切り落とし及び組織内に埋め込まれたそれらを残したままにする。
【0053】
概して、インプット力は、貫通、分離、又はその組合せを達成するのに効果的である任意のベクトル上に又は任意の角度で、使用者によってデバイスに加えられ得る。一実施形態において、インプット力は実質的に基板に対して垂直な力である。マイクロニードルに適用されたアウトプット力、すなわち分離を引き起こす力は、インプット力と同様のベクトル又は異なるベクトル上にあり得る。
【0054】
実施形態において、典型的にデバイスハウジングに加えられるインプット力は、マイクロニードルのアレイから1つ又は複数のマイクロニードルを分離するのに効果的であるアウトプット剪断力を、マイクロニードル及び/又は基板に与える。インプット力は、剪断力を基板に加えること、剪断力を基板に加える要素を作動すること、又はその組合せによって、剪断力を与え得る。一事例において、インプット力は実質的に一方向性であり、及びアウトプット力は少なくとも二方向性である。一実施形態において、剪断力は回転性の剪断力である。別の実施形態において、剪断力は横方向の力である。
【0055】
概して、力は、本明細書で提供される薬剤送達デバイスの任意の部分に加えられ得る。力は、例えば、本明細書に記載のデバイスの基板、支持層、又は他の部分に直接的に加えられ得る。
【0056】
ハウジング
実施形態において、本明細書において提供される薬剤送達デバイスは、ハウジングを含む。基板及び支持層のうちの少なくとも1つは、任意の手法においてハウジングと連携され得る。例えば、基板又は支持層のうちの少なくとも1つは、ハウジング内に配置され得る。さらなる例として、基板及び支持層のうちの少なくとも1つは、当技術分野において周知な任意の手段によって、ハウジング内又はハウジング上に固定可能又は移動可能に取り付けられ得る。例えば、基板及び/又は支持層は、移動可能に取り付けられる場合、トラック、中心軸、又はその組合せ上に取り付けられ得る。
【0057】
ハウジングは、力の適用に適応するように構成された部分を含み得る。一実施形態において、力の適用に適応するように構成された部分は、押下可能部分である。押下可能部分は、一般にデバイスに加えられた力を基板に移すように構成されたハウジングの任意の部分であり得る。例えば、押下可能部分は、ハウジング内に移動可能に取り付けられるピストンのような装置を含み得る。別の例において、押下可能部分は、力の適用に基づいて押下可能なハウジングの弾性部分を含み得る。押下可能部分は、力の適用の前に、支持層及び/又は基板に接触していてもよく又は接触していなくてもよい。
【0058】
押下可能部分は、実施形態において、インプット力の適用に基づいて基板に剪断力を与える。いくつかの実施形態において、インプット力は、アウトプット力を基板に与える支持層に、直接的に加えられ得る。
【0059】
押下可能部分は、実施形態において、支持層及び/又は基板と直接的に接触することによって、剪断力を支持層及び/又は基板に加える。一実施形態において、支持層及び/又は基板と接触する押下可能部分の少なくとも一部分は、接触に基づいて支持層及び/又は基板に動きを与えるように構成される。別の実施形態において、支持層及び/又は基板と接触する押下可能部分の少なくとも一部分並びに押下可能部分と接触する支持層及び/又は基板の少なくとも一部分は、支持層及び/又は基板に動きを与えるように構成される。押下可能部分、基板、支持層又はその組合せの接触する部分は、角度を付けられても、直線でなくてもなどでよく、並びに接触する表面は、支持層及び/又は基板の動きを促進する材料を用いて、滑らかにされ及び/又は被覆され若しくは構成されてもよい。
【0060】
図4は、押下可能部分410及びハウジング420を含む薬剤送達デバイス400の一実施形態を示す。ハウジング420内で、支持層430は移動可能に取り付けられる。支持層430は、マイクロニードルのアレイ450が突出するところの基板440を支持する。押下可能部分は、支持層430の傾斜した表面460に対応する傾斜した表面470を含む。押下可能部分410への力の適用に基づいて、マイクロニードル450のアレイは組織表面480を貫通し、マイクロニードル450のアレイのマイクロニードル490を折る剪断力が、基板440とともに支持層430に加えられる。
図4のデバイスは、例えば、押下可能部分及び/又は支持層(若しくは基板)上の2つ以上の傾斜した表面を一体とすることによって、回転性の剪断力を提供するように再構成され得る。
【0061】
別の実施形態において、支持層及び押下可能部分は、境界面で互いに係合する表面を有する。ここにおいて、その境界面の表面は、境界面での摩擦係合に打ち勝つ十分な力の適用に対してのみ支持層の変位及びマイクロニードルの剪断が可能になるように、それらの間に高い摩擦力(例えば、表面のでこぼこ、粘着方式のコーティング等による)を提供するように構成される。
【0062】
押下可能部分は、実施形態において、基板及び/又は支持層に剪断力を加える少なくとも1つの装置をトリガーすることによって、剪断力を作動させる。
【0063】
一実施形態において、剪断力を加える装置は、ばね又は他の弾性材料などの、剪断力を加えるように構成される弾性歪みエネルギーを格納するための1つ又は複数のデバイスを含む。装置は、ばね又は他の弾性材料を解放する特徴と連携され得る。弾性歪みエネルギーを格納するためのデバイスは、作動状態(すなわち、縮んだ若しくは伸びた状態)で、又は生物学的組織へのデバイスの適用の間の縮んでいる若しくは伸びているときのニュートラルな状態で、デバイス内に格納され得る。ばねは、押しつけられ又は引っ張られるが、解放のときに実質的にそのもとの形状に戻り得る、らせん状の金属コイル又は他の幾何学的形状を有するデバイスを含むが、それらに限定されない、弾力性のデバイスであり得る。
【0064】
図5は、ハウジング520、押下可能部分510、支持層530、及びマイクロニードル550のアレイが突出するところの基板540を有する、薬剤送達デバイス500の一実施形態を示す。デバイスはまた、ばね560及びトリガー570を含む装置を有する。押下可能部分510の押下に基づいて、マイクロニードルが組織表面580を貫通し、次いでトリガー570が作動することにより、支持層530に剪断力を加えるばね560を解放する。剪断力の適用は、分離されたマイクロニードル590という結果をもたらす。
図5のデバイスは、例えば、ばねと支持層との間の接触のポイントを変えること及び/又は複数のばねを使用することによって、回転性の剪断力を提供するように再構成され得る。トリガーは、ばねを圧縮するための作動の間に、さらに剪断力の解放の前のマイクロニードルの挿入の間に、振り動くように構成され得る。このようにして、トリガー力は制御され得、及びマイクロニードルが既定の量だけ組織内に挿入された後にのみ、剪断力が発生するのを可能にする。
【0065】
一実施形態において、剪断力を加える装置は、剪断力を加えるように構成された電子的要素を含む。電子的要素は、磁界及び電界のうちの少なくとも1つによって剪断力を生成し得る。例えば、支持層及び/又は基板は、作動に際して電子的要素により生成された磁界に応じるマグネットと連携され得る。少なくとも1つの装置は、回転性の剪断力を加えるように構成され得る。
【0066】
別の実施形態において、デバイスは、最初のデバイス構成において互いに離れて位置されるマグネットを含む。使用時において、マイクロニードルを挿入するためにデバイスを押すインプット力はまた、相互に作用して(引き付ける又は反発し合って)剪断力をトリガーするように、マグネットを互いに近づける。デバイスは転換シナリオにおいて構成され得、ここにおいて、マグネットは使用の前に相互に作用し、及びマイクロニードルを挿入するためにデバイスを押すことがマグネットを分離し、それにより剪断力を解放することがまた想定される。
【0067】
実施形態において、押下可能部分、基板、及び支持層のうちの少なくとも1つは、押下可能部分への力の適用に基づいて、支持層及び/又は基板に剪断力を加える、ねじ状の又はらせん状の部分を含む。剪断力は回転性であり得る。一実施形態において、押下可能部分は、支持層及び/又は基板のねじ状のオリフィスに対応するねじ状の又はらせん状のロッドを含む。別の実施形態において、基板及び/又は支持層は、押下可能部分のねじ状のオリフィスに対応するねじ状のロッドを含む。さらなる実施形態において、押下可能部分は、基板及び/又は支持層のらせん状の軌道に対応する突起を含む。別の実施形態において、基板及び/又は支持層は、押下可能部分のらせん状の軌道に対応する突起を含む。さらに別の実施形態において、回転性の動きは、基板又はマイクロニードルに回転剪断を与えるトーションばねを装填するために用いられる。明確に述べると、様々な実施形態において、回転性のアウトプット力は、インプット力の適用を通じて加えられ得る。
【0068】
代替的に、インプット力は、後で回転性のアウトプット力になる、初期段階の非回転性のアウトプット力を提供することができる。
【0069】
図6は、支持層630及び基板640が回転可能に取り付けられた押下可能部分610及びハウジング620を含む、薬剤送達デバイス600の一実施形態を示す。マイクロニードル650のアレイは、基板640から突出する。押下可能部分610は支持層630のねじ状のオリフィスに対応するねじ筋670を有するロッド660を含み、従って、押下可能部分610への力の適用が、[1]マイクロニードル650によって生物学的組織表面680を貫通し、及び[2]基板640及び支持層630に剪断力を加えて、生物学的組織の表面680の下方への分離されたマイクロニードル690の下降という結果をもたらす。
【0070】
薬剤放出速度の変化をトリガーするためのシステム
実施形態において、薬剤送達デバイスは、マイクロニードルが少なくとも部分的に生物学的組織内に挿入された後、マイクロニードルからの及び生物学的組織内への薬剤の放出の速度の変化をトリガーするためのシステムを含む。薬剤送達デバイスからの薬剤の放出は、配置時又は配置後、徐々に又は特定の時間において起こる事象をトリガーすることによって達成され得る。
【0071】
実施形態において、薬剤の放出の速度の変化をトリガーするためのシステムは、薬剤送達デバイスが配置された後、非連続な時間の間、薬剤放出が起こることを可能にする。例えば、配置の後の非連続な時間の間、薬剤送達デバイスは、任意の順序において、極少量の薬剤又は1つ若しくは複数の所望の量の薬剤を放出し得る。さらなる例のように、薬剤送達デバイスは、配置に基づいて、第1の時間の間に極少量の薬剤放出を、第2の時間の間に相当量の薬剤放出を、第3の時間の間に極少量の薬剤放出を、及び第4の時間の間に適度な薬剤放出を、可能にし得る。これらの3つの薬剤放出時間の任意の順序は、少なくとも2つの連続的な時間を通じて採用され得る。また、薬剤送達デバイスは、1つより多い薬剤を含み得、及び各薬剤は、異なる放出プロフィールを有し得る。
【0072】
実施形態において、薬剤送達デバイスは、以下の表に示されるような、t1、t2及びt3での異なる放出プロフィールを有する薬剤を含む。
【0073】
【表1】
一実施形態において、薬剤の放出をトリガーするためのシステムは、生体体液との接触に基づいて、マイクロニードルの第2の部分よりも速い速度で生体腐食するように構成されたマイクロニードルの第1の部分を含む。例えば、透過性変化は、組織液(間質液など)にマイクロニードルが貫通することを可能にし、結果として、放散を介して周囲の組織内へのマイクロニードルからの薬剤の放出を可能にし得る。また、浸透圧における変化は、薬剤の放出を引き起こし又は誘発し得る。
【0074】
周囲の環境内又はマイクロニードル内の変化は、浸透圧における変化をもたらし、そして薬剤の放出という結果をもたらし得る。例えば、生体体液などの周囲の環境からの流体は、マイクロニードル、及び薬剤送達デバイスに含まれる場合本明細書に記載されるようなバリアの中から外へ薬剤が流れるのを助け得る、浸透力によってマイクロニードルに入り得る。圧力(浸透圧を含む)差によって流れる対流性の流れはまた、マイクロニードルの中から外への薬剤輸送を容易にすることができるマイクロニードルの中から外への流れを誘引し得る。
【0075】
一実施形態において、薬剤放出をトリガーするためのシステムは、マイクロニードル内の薬剤と別の分子との間の結合の変化を含む。他の分子は賦形剤であり得る。結合は、共有結合又は非共有結合であり得る。結合は、薬剤結合における変化がマイクロニードルからの薬剤の放出を可能にするまで、マイクロニードル内に薬剤を保持し得る。薬剤とマイクロニードルとの間の結合/親和力の強度は、周囲の組織へのマイクロニードルからの緩やかな薬剤の放出を調整し得る。これは例えば、所与の放出プロフィールを達成する、イオン結合、水素結合、又はファンデルワールス力などの特定の分子間の力に依拠することにより達成され得る。
【0076】
一実施形態において、薬剤放出をトリガーするためのシステムは、薬剤の拡散率の変化を含む。拡散率における変化は、[1]マイクロニードル内の薬剤及び/若しくは別の分子の電荷(pH)、[2]マイクロニードル内の薬剤及び/若しくは別の分子の親水性又は疎水性、[3]マイクロニードル内の薬剤及び/若しくは別の分子の大きさ/形状、[4]マイクロニードル内の薬剤及び/若しくは別の分子の分子形状/配座、又は[5]それらの組合せ、の変化によって引き起こされ得る。分子の大きさ(質量)の減少は、薬剤の増大した放散をもたらし得る。分子の大きさの変化は、共有結合の破壊(例えば、分解)という結果をもたらし、又は弱い結合の破壊(例えば、非結合/結合、非凝集/凝集)という結果をもたらし得る。薬剤は、マイクロニードルの成分と共有結合的に結び付き得、及びそのような共有結合は、酵素的に、化学的に、又はpHにおける変化を介して分裂され得る。薬剤の形状/配座における変化は、その放出の速度に影響し得、配座の変化が、薬剤分子が経路を容易に通過できるかどうか決定することができるように、薬剤分子と同様の大きさをもつ細孔又は他の輸送経路が存在し得るため、ときに形状/配座における小さな変化がマイクロニードルからの放出に大きな影響を与え得るため、ときには非線形である。配座における変化はまた、薬剤分子のどの領域が分子の内側において封鎖されるかということ、及びどの領域が分子の外側の表面に曝露されるかということに影響を与え得る。分子の表面特性において結果として生じる相違は、周囲の媒体とのその相互作用に影響を与え得、それにより、粘着力及び反発力(例えば、疎水性、電荷)の変化による異なる放出速度を有する。形状/配座における変化は、温度、pH、イオン強度、当技術分野において周知な他の技術、又はそれらの組合せにおける変化により誘引され得る。結合/親和力の強度は、薬剤の放出を変えるために、すなわち増大する又は減少するために、薬剤送達デバイスの配置の間、変化され得る。これは、外部刺激(例えば、使用者が結合強度における変化をトリガーする)の結果又は内部刺激(例えば、使用者の範囲内での化学的な若しくは生物学的な変化が結合/親和力の強度における変化をトリガーする)の結果であり得る。
【0077】
一実施形態において、薬剤放出をトリガーするためのシステムは、マイクロニードルの構成上の変化を含む。構成上の変化は、本明細書で記載されたものなどの分離可能なマイクロニードルを含み得る。マイクロニードルの分離を含む構成上の変化は、構成上の変化に続く周囲の組織又は流体への曝露時又は曝露後、マイクロニードルから放出される薬剤をもたらし得る。
【0078】
一実施形態において、薬剤放出をトリガーするためのシステムは、マイクロニードルの形状における変化を含む。例えば、マイクロニードルの先端又は外層は最初に溶解され得、それにより、生物学的組織及び流体にマイクロニードル内の薬剤が曝露する。
【0079】
実施形態において、薬剤放出をトリガーするためのシステムは、配置に基づいて、薬剤送達デバイスにより標的にされ及び/又は取り囲まれる組織の1つ又は複数の特性の変化を含む。一実施形態において、血流/灌流は、マイクロニードルの挿入部位の近接性に基づいて組織内で増大され又は減少され、結果として、薬剤の放出及び摂取に影響を与え得る。血流/灌流は、[1]温度(例えば、薬剤送達デバイス及び/又は挿入部位/区域に熱を加える又はそれらを冷却する)、[2]機械的な力(例えば、圧力を加える、摩擦、振動、リング/止血帯の使用)、[3]化学的な方法(例えば、生体活性、刺激薬、血管拡張薬、血管収縮薬)、及び[4]それらの組合せ、に依拠することにより調節され得る。別の実施形態において、組織透過性及び/又は対流は、薬剤放出における増大又は減少を達成するために変化され得る。組織浸透性/対流における変化は、[1]化学的に/生化学的に(例えば、ヒアルロニダーゼが細胞外のマトリックスを分解するために用いられ得る、又は間質液圧力における変化がまた周囲の組織による活性な摂取を変えるために達成され得る)、[2]物理的に(例えば、温度、圧力、水含量、機械的なもの(マイクロニードルによってなどの組織への機械的な損傷を含む)、電気穿孔、熱的摂動/損傷、超音波、空洞化、レーザ、無線周波エネルギーはすべて、組織透過性を変えるための手段である)、又は[3]その組合せにより、達成され得る。さらなる実施形態において、生物学的組織又は細胞外マトリックスの材料は、薬剤放出速度を変えるために、マイクロニードルと相互に作用する又はマイクロニードルを覆う、マイクロニードルに入る及び/又はマイクロニードルを妨害する。例えば、水は材料を溶解するためにマイクロニードルに入り得、及び/又は組織からの分析物は結合薬剤を置換し得る。さらに別の実施形態において、マイクロニードルからの及び組織を通る薬剤を輸送する駆動力が、調節される。活性剤の放出の速度に影響を与え得る駆動力は、薬剤放出プロフィールを制御するために調節され得る。調節され得る駆動力は、[1]電気泳動、[2]電気浸透、[3]濃度勾配(増大のとき、血流、リンパ流、代謝、他の活性な及び不活性な輸送プロセス(又は転換)による組織からの薬剤の浄化を高め得る)、[4]圧力勾配(例えば、超音波、機械的な摂動、摩擦/振動、例えば対流を引き起こすための)、又は[5]それらの組合せ、を含む。
【0080】
一実施形態において、トリガーするためのシステムは、マイクロニードルの少なくとも部分内又は部分上に配置されるバリア材料を含む。バリア材料により提供されるバリアは、実施形態において、少なくとも1つの方向内で及び/又は既定の時間の間、マイクロニードルからの薬剤の放出を妨害する。
【0081】
実施形態において、トリガーするためのシステムは、分析物濃度、温度、pH、圧力、電界、磁界、電荷、電流、振動、超音波、剪断力、機械的な移動/摂動、分子/細胞結合、マイクロニードルの湿度/水含量、時間、マイクロニードルからの種の放散、溶解、分解、化学反応、当技術分野において周知な他の機構、又はそれらの組合せのうちの1つ又は複数に応じて放出の速度を変える。当技術分野において周知な他の機構は、Siepmann, J. et al., "Fundamentals and Applications of Controlled Release Drug Delivery," 1
st Edition, 2012, XIII, p. 592; Li, X., "Design of Controlled Release Drug Delivery Systems, McGraw-Hill Chemical Engineering, November 3, 2005; and Wise, Donald L., Handbook of Pharmaceutical Controlled Release Technology, CRC Press, August 24, 2000で開示されるものを含む。
【0082】
実施形態において、トリガーするためのシステムは、pHの変化に応じて薬剤放出の速度を変える。例えば、pHの変化は、増大したグルコース濃度に応じたpHの低下であり得、及びpHの結果として生じる低下は、トリガーするためのシステムに、本明細書において提供される薬剤送達デバイスからのインスリンを放出させ又は増大させ得る。
【0083】
実施形態において、トリガーするためのシステムは、温度の変化に応じて薬剤放出の速度を変える。温度の外部又は内部(組織体に対する)調節は、従って、薬剤送達デバイスからの薬剤放出を調節し得る。
【0084】
実施形態において、トリガーするためのシステムは、機械的な移動/摂動、振動又はその組合せに応じて薬剤放出の速度を変える。機械的な移動/摂動及び/又は振動は、薬剤放出を調節するために、薬剤送達デバイス又は外部の使用者によって薬剤送達デバイス及び/又は周囲の組織に加えられ得る。
【0085】
実施形態において、薬剤放出の速度の変化をトリガーするためのシステムは、部分的にマイクロニードルのアレイの1つ又は複数のマイクロニードルを挿入することによって、マイクロニードルの第1の部分からの薬剤放出を可能にし、次いで、完全に又はさらに、1つ又は複数のマイクロニードルを挿入することによって、マイクロニードルの第2の部分からの薬剤放出を可能にすることを含む。生物学的組織内へのマイクロニードルの部分的な挿入は、マイクロニードルの部分的な溶解、例えば挿入されたマイクロニードルの部分のみの溶解を可能にするが、その他のマイクロニードルは、組織液がまだ挿入されていない皮膚表面上の又は皮膚表面上方のマイクロニードルの部分に放散又は毛管力によって到達するとき、溶解し得る。部分的な挿入が起こるとき、マイクロニードルの部分と連携される薬剤が放出され得る。これらの技法は、薬剤送達デバイス内の1つ又は複数の薬剤の量及び放出動態を調節するために用いられ得る。例えば、最初のマイクロニードルの部分的な挿入及び溶解は、最初の薬剤の放出/破裂を可能にし、続いて特定の時点で又は一定の時間を通じた連続的な若しくは半連続的な方法において、追加的な放出を可能にし得る。これらの技法はまた、マイクロニードルの異なる部分が異なる薬剤を含む場合、順に異なる薬剤を送達するために用いられ得る。例えば、マイクロニードルの先端は薬剤「A」を含むことができ、及びマイクロニードル本体の残りの部分は薬剤「A」又は異なる薬剤、薬剤「B」を含むことができる。先端の挿入に続いてのみ、薬剤「A」は放出され、さらに挿入は、追加的な量の薬剤「A」の放出又は薬剤「B」の放出を可能にし得る。それぞれの上述のシナリオにおいて、マイクロニードル挿入の量/程度及び部分的な又は完全なマイクロニードル挿入が起こる時間は、変わり得る。
【0086】
上述の機構のそれぞれは、薬剤放出の変化をトリガーするためのシステムにおいて、単独で又は任意の組合せで用いられ得る。上述の機構のそれぞれはまた、マイクロニードル内の薬剤及び/又は賦形剤の濃度を増大すること又は減少することを含み得る。そうすることは、放散によって輸送を至らせる濃度勾配を変化し得、並びに対流性の及び電気的な駆動輸送などの他の機構によって移動する薬剤の量を変えることもできる。賦形剤の濃度を増大すること又は減少することは、薬剤の拡散率/移動度、媒体粘度、媒体多孔性及び他の要素が変化するなどの、賦形剤を含む周囲環境を通じて薬剤が移動する速度を、変えることができる。
【0087】
バリア
一実施形態において、トリガーするためのシステムは、少なくとも1つの方向内で及び/又は既定の時間の間、マイクロニードルからの薬剤の放出を妨害するために、マイクロニードルの少なくとも部分内又は部分上に配置され得るバリアである。一実施形態において、バリアは、(i)注入時又は注入後の非連続な時間の薬剤放出、(ii)薬剤が放出されるところのマイクロニードルの領域の制御、若しくは(iii)その組合せを可能にするように構成される。用語「バリア」及び語句「バリア材料」は、本明細書において入れ替え可能に用いられる。
【0088】
実施形態において、バリアは、バリアが薬剤の放出を妨害しなくなるまで、マイクロニードルからの薬剤の放出を遅らせる。バリアにより提供される妨害は、恒久的であり、又は徐々に若しくは実質的に即座に弱くされ得る。
【0089】
バリアは、マイクロニードル内に、マイクロニードル上に、又はその組合せで配置され得る。例えば、バリアは、少なくとも部分的にマイクロニードル内に薬剤を封入し、1つ若しくは複数のマイクロニードルのマトリックス内に分散配置され、1つ若しくは複数のマイクロニードルの表面上に及び/若しくは表面に配置され、又はそれらの組合せであり得る。1つ若しくは複数のマイクロニードルのマトリックス内に分散配置されるとき、バリアはマトリックス内の個別の領域を含み得る。バリアが薬剤を封入するとき、薬剤送達デバイスは、1つ若しくは複数のバリア材料の異なる量/濃度を用いて封入された1つの薬剤、同様の若しくは異なるバリア材料の異なる量/濃度を用いて封入された2つ以上の薬剤、又はその組合せを含み得る。
【0090】
図7は、マイクロニードルの表面上に配置されたバリアを含む薬剤送達デバイス700の一実施形態を示す。薬剤送達デバイスは、支持層710、基板720、及び基板720から突出する薬剤730を含むマイクロニードル740のアレイを含む。各マイクロニードル740は、その表面上に配置されるバリア材料750を有する。
【0091】
実施形態において、マイクロニードル自体は、薬剤が基板内に配置されるとき、バリアとして働く。
【0092】
実施形態において、バリアの少なくとも一部分は、恒久的になるように構成される。別の言い方をすると、バリアは、配置時及び配置後、適所にとどまるように構成され、並びにバリアにより提供される妨害を取り除き又は弱め得るすべての機構に、実質的に耐え得る。
【0093】
バリア又はバリア材料は、1つ又は複数の異なる材料を含み得る。バリアは、薬剤送達デバイスの同様の又は異なる部分とそれぞれ連携される2つ以上の異なる材料を含み得る。薬剤送達デバイスの同様の部分と連携される場合、2つ以上の材料は多層のバリア材料を形成する。代替的に、バリアは、マイクロニードルの分離する部分をそれぞれ被覆する2つの材料を含み得、又はバリアは、固体である第2の材料と第2の材料内に配置される液体である第1の材料との2つの材料を含み得る。
【0094】
単一のマイクロニードルアレイは、2つ以上の種類のバリアを含み得る。例えば、アレイは、第1のタイプのバリアを有するマイクロニードルの1つの列、及び第2のタイプのバリアを有するマイクロニードルの第2の列を含むことができる。例えば、相違点は、有益には2つの異なる対象の物質を送達するために設計され得る。
【0095】
一実施形態において、バリア材料は、マイクロニードルのアレイの1つ又は複数のマイクロニードルの少なくとも第1の部分内に又は部分上に配置される第1のコーティングを含む。第1のコーティングは、生体体液(例えば、不溶性の)内で少なくとも実質的に不活性であり、配置時及び配置後、変化せず、並びにマイクロニードルのアレイの1つ又は複数のマイクロニードルの第1の部分からの薬剤放出を防ぎ得る。代替的に、バリア材料は、透過性又は多孔性などの1つ又は複数の特性を有する第1のコーティングを含み、生体体液との接触時又は接触後変化し、従って、マイクロニードルのアレイの1つ又は複数のマイクロニードルの第1の部分からの薬剤放出を可能にする。第1のコーティングは、例えば、生体体液内で少なくとも部分的に可溶性であり得る。別の実施形態において、バリア材料はまた、マイクロニードルのアレイの1つ又は複数のマイクロニードルの第2の部分内に又は部分上に配置される第2のコーティングを含む。第1のコーティングは、不活性(例えば、不溶性)であり、生物学的組織及び液体内への配置時及び配置後変化しなくてよく、並びに第2のコーティングは、多孔性及び/又は透過性などの1つ又は複数の特性を有し、配置のとき変化し、従って、マイクロニードルのアレイの1つ又は複数のマイクロニードルの第2の部分からのみ薬剤放出が起こることを可能にし得る。
【0096】
一実施形態において、バリア材料は、マイクロニードルのアレイの1つ又は複数のマイクロニードルの少なくとも第1の部分内に又は部分上に配置される第1のコーティング、及びマイクロニードルのアレイの1つ又は複数のマイクロニードルの第2の部分内に又は部分上に配置される第2のコーティングを含む。第1の及び第2のコーティングは、配置のとき異なる時間で薬剤放出を可能にし、従って2つの薬剤が、同時に、連続的に又はその組合せで放出されることを可能にし得る。
【0097】
実施形態において、バリアの少なくとも一部分によって提供される妨害は、徐々に又は完全に、バリア材料の分解の発生、バリア材料の膨張/拡張、バリア材料の化学反応/分解、バリア材料の気化、バリア材料の固体化、バリア材料の溶解、バリア材料のゲル化、バリア材料の変形/破壊/崩壊/収縮、バリア材料の電荷状態の変化、若しくはそれらの組合せのときに又はそれらの後、取り除かれる。バリア材料の合成は、その分解速度がバリア材料に所望の薬剤放出プロフィールを達成させるように、選択され又は形成され得る。
【0098】
実施形態において、バリアの少なくとも一部分により提供される妨害は、徐々に又は完全に、バリアと薬剤との間の結合/親和力の変化時又は変化後、取り除かれる。薬剤とバリアとの間の結合/親和力は、従って、特定の薬剤放出プロフィールを達成する又は薬剤放出プロフィールを調節するために用いられ得る。バリアと薬剤との間の結合/親和力は、当技術分野において周知な任意の技法によって達成され得る。例えば、結合/親和力は、すなわち各成分のそれぞれの電荷状態に基づいて、電荷媒介され得る。電荷状態は、本明細書において説明されるように、pHを調節することによって変化され得る。pHの変化は、薬剤及び/又はバリア材料の電荷状態を増大する又は減少するために用いられ得る。pHが減少するにつれて、塩基性の薬剤はより多く荷電するようになり、酸性の薬剤はより少なく荷電するようになり得る。また、電圧又は電界が薬剤送達デバイスの少なくとも一部分に加えられ得、結合強度/親和力の変化をもたらす薬剤上の電荷分布の変化が結果として生じる。さらなる例として、バリア材料との薬剤の結合は、他の分子又は薬剤よりもバリア材料について高い親和力をもつ種の存在又は導入に基づいて変化し得る。結合/親和力はまた、pH、温度、圧力、イオン強度、競合的結合、化学反応、又はそれらの組合せにより調節され得る。
【0099】
一実施形態において、バリアの少なくとも一部分により提供される妨害は、徐々に又は完全に、バリア材料の分解の発生時又は発生後取り除かれる。従って、バリアは、挿入の組織部位における生体体液への曝露に基づいて溶解する塩又は加水分解を介して分解するポリマーなどのバリア材料で形成され得る。例えば、低い水溶解度を有する塩は、活性剤の放出を遅らせ得る。実施形態において、バリア材料の溶解に基づいて、マイクロニードルの少なくとも一部分は、生物学的組織及び/又は液体に曝露され、それにより、バリア材料と連携されるマイクロニードルの部分からの薬剤の放出を可能にする。さらなる実施形態において、バリア材料の溶解に基づいて、マイクロニードル内の多孔性が増大され得、それにより薬剤の放出を可能にする。
【0100】
生体分解可能なバリア材料を含む薬剤送達デバイスの一実施形態が、
図8A及び
図8Bに示される。薬剤送達デバイス800は、支持層810及びマイクロニードル825が突出するところの基板820を含む。マイクロニードル825は、薬剤830及び生体分解可能なバリア材料840の個別の部分を含む。マイクロニードルが組織表面845を貫通した後のバリア材料840の溶解又は他の分解のときに、細孔850がマイクロニードル内に生成され、薬剤830の放出を可能にする。
【0101】
生体分解可能な部分及び(比較的に)非生体分解可能な部分を有するバリアを含む薬剤送達デバイスの一実施形態が、
図9A及び
図9Bに示される。
図9Aは、支持層910及びマイクロニードル930が突出するところの基板920を有する薬剤送達デバイス900を示す。マイクロニードルは、薬剤940を含み、生体体液内で恒久的な及び不溶性の第1のコーティング950並びに生体体液内で可溶性の第2のコーティング960を含むバリア材料と連携される。皮膚の貫通のとき、第2のコーティング960は溶解し、
図9Bに示されるように、それにより薬剤940が真皮で放出されることが可能になり、一方第1のコーティング950は状態を損なわれていないので、表皮での薬剤放出を妨げる。代替の実施形態において、表皮と連携されるバリア950の部分は生体体液内で可溶性であり、並びに真皮と連携されるバリア960の部分は不溶性及び恒久的であり、従って表皮内でのみ薬剤の放出がもたらされる。
【0102】
一実施形態において、バリアの少なくとも一部分により提供される妨害は、徐々に又は完全に、バリア材料の膨張/拡張の発生のとき又は発生の後、取り除かれる。従って、バリアは、生体体液への曝露、温度、他の刺激又はそれらの組合せに基づいて拡張するゲルなどのバリア材料で形成され得、それにより生物学的材料の透過性を増大し、薬剤の放出を可能にする。例えば、マイクロニードルを含む薬剤送達デバイスは、少なくとも部分的にゲルで満たされたチャネルを含み得、従って、チャネルを通り抜けるための薬剤の能力が、ゲルが収縮し又は拡張するにつれてそれぞれ増大され又は減少される。
【0103】
一実施形態において、バリアの少なくとも一部分により提供される妨害は、徐々に又は完全に、バリア材料の化学反応及び/又は分解の発生とき又は発生の後、取り除かれる。生体体液への曝露時き又は曝露後、バリア材料は、生物学的組織との化学的な、物理的な、機械的な、及び/又は生物学的な相互作用の結果としての、その物理化学的な特性の変化を受け得る。従って、バリア材料の分解が起こり得る。実施形態において、バリア材料は高分子材料であり、生体体液との接触時又は接触後、分解が開始され得、高分子鎖の加水分解分裂によって、ポリマーのバルク分解及び/又は表面侵食をもたらし得る。分解はまた、酵素的分解によって起こり得る。
【0104】
一実施形態において、バリアの少なくとも一部分により提供される妨害は、徐々に又は完全に、バリア材料に含まれる液体の気化の発生のとき又は発生の後、取り除かれる。液体の気化は、バリア材料の透過性及び/若しくは多孔性を変化し、又はマイクロニードル内の細孔を生成し若しくは露出することができる。気化は、蒸発、煮沸、音響液滴蒸発によって、又は当技術分野において周知な他の手段によって、トリガーされ得る。気化する液体は、薬剤送達デバイスの配置前のバリア、又は配置時若しくは配置後、バリア材料を貫通する生体体液内に形成され得る。
【0105】
一実施形態において、バリアの少なくとも一部分により提供される妨害は、徐々に又は完全に、典型的に機械的な又は化学的な入力を含む抑制された圧力入力を通じて、ある温度での凝固を可能にする自然に水和した高分子材料である水溶解物などのバリア材料の固体化のとき又は固体化の後、取り除かれる。キチン、フィブロイン、又はそれらの組合せから成る水溶解物が、用いられ得る。固体化は、生体体液への曝露時若しくは曝露後又は配置の前の周囲環境への曝露時若しくは曝露後、開始され得る。固体化のとき又は固体化の後、バリア材料の透過性が増大される。
【0106】
一実施形態において、バリアの少なくとも一部分により提供される妨害は、徐々に又は完全に、バリア材料の溶解のとき又は溶解の後、取り除かれ得る。溶解は、それらの包装からの取出しのとき又は取出しの後の周囲環境へのマイクロニードルの曝露に基づいて、外力又はその組合せによる熱の適用によって、生物学的組織内へのマイクロニードルの挿入に続いて開始され得る。例えば、凍結状態で格納された薬剤送達デバイスは、バリア材料のような水、及び周囲状況への曝露に基づく水溶解物、生体体液、又はそれらの組合せを含み得る。
【0107】
一実施形態において、バリアにより提供される妨害は、徐々に又は完全に、バリア材料の電荷状態の変化のとき又は変化の後、取り除かれ得る。例えば、バリア材料は、配置の前又は配置の後それぞれ荷電され又は荷電状態になり得、次いで、バリア材料の電荷は変化し又は失われる。バリア材料の電荷状態の変化は、薬剤放出を制御するために用いられ得る。実施形態において、バリア材料及び薬剤は対向する電荷状態を有し、並びに反発力が、バリア材料の電荷が変化され又は失われるまで、マイクロニードル内に薬剤を保持するために用いられる。さらなる実施形態において、バリア材料及び薬剤は同一の電荷状態を有し、並びにバリア材料と薬剤との間の親和力が、バリア材料の電荷状態が変化され又は失われるまで、マイクロニードル内に薬剤を保持するために用いられる。
【0108】
また、バリア及び/又は薬剤の電荷状態における変化は、電界の影響のもとに薬剤の放出を変化し得る。放出はまた、電界における変化の適用により引き起こされ得る。例えば、電界は、マイクロニードル及び標的にされた組織に渡って、並びに任意に放出の動態に影響を与えるために別々の時点において、加えられ得る。
【0109】
電界の適用又は電界の強度及び/若しくは方向における変化は、荷電された薬剤のマトリックスからの放出をトリガーし得る。電荷の変化は、pH又はイオン強度(電荷を覆う)又は他の要素の変化によってもたらされ得る。また、電気泳動が、マイクロニードルから及び/又はバリアを通じて、荷電された粒子又は薬剤を動かすためにも用いられ得る。電気浸透がまた、荷電されたバリアに渡って、活性剤を含む液体を動かすために用いられ得る。
【0110】
一実施形態において、バリアの少なくとも一部分により提供される妨害は、徐々に又は完全に、バリア材料の変形、破壊、崩壊及び/若しくは収縮のとき又はそれらの後、取り除かれる。バリア材料は、圧縮、緊張、剪断、回転、振動、超音波、又はそれらの組合せへの曝露に基づいて、変形され、破壊され、崩壊され及び/又は収縮され得る。これらの力の1つ又は複数は、薬剤送達デバイスの任意の部分に加えられ得る。例えば、
図9Aに示されるデバイスにおいて、真皮と連携されるバリア960の部分は、分解と対照したものとして、破壊、変形、崩壊又は収縮により機能を果たさないように構成され得る。
【0111】
一実施形態において、バリアの少なくとも一部分によって提供される妨害は、恒久的である。恒久的なバリアは、例えば、1つ又は複数のマイクロニードルが恒久的なバリアと連携される領域から薬剤を放出するのを防ぎ得る。従って、恒久的なバリアは、マイクロニードルがマイクロニードルの分離によって露出される区域を含む恒久的なバリアによって妨害されない区域からのみ薬剤を放出するのを可能にすることを、確実にし得る。
【0112】
分離可能なマイクロニードル及び恒久的なバリアを有する薬剤送達デバイスの一実施形態が、
図10A及び
図10Bに示される。
図10Aの薬剤送達デバイス1000は、支持層1010及び基板1020から突出するマイクロニードル1030を含む。マイクロニードルは薬剤1040を含み、及びそれぞれのマイクロニードル1030は恒久的なバリア1050を用いて被覆され、従って、マイクロニードルの分離のときに、
図10Bに示されるように、薬剤1040は、バリア1050が適所にとどまるので組織表面1060に主として放出される。それにより、組織表面1060の下方への薬剤放出が妨げられる。
【0113】
支持層
支持層は、接着剤を含む当技術分野において周知な任意の手段によって、基板に付着され得る。一実施形態において、付着層は、基板に支持層を付着するために用いられる。
【0114】
支持層は、多種の材料から作られ得る。いくつかの実施形態において、支持層は、所望の特性及び作用を提供するための様々な特性をもつ材料を含む複合材料又は多層の材料であり得る。例えば、支持層は、特定の適用に応じて、軟体、半剛体又は剛体であり得る。別の例として、支持層は、実質的に不透過性であり、1つ若しくは複数のマイクロニードル(又は他の構成要素)を湿気、気体及び汚染物質から保護し得る。
【0115】
代替的に、支持層は、要求される所望のレベルの保護に基づく、他の度合いの透過性及び/又は多孔性を有し得る。支持層に関して用いられ得る材料の非限定的な例は、様々なポリマー、エラストマー、発泡体、紙ベース材料、箔ベース材料、金属蒸着フィルム、並びに不織布及び織布材料を含む。
【0116】
任意の機械力インジケーターが支持層と基板との間に配置され得、又はそれは支持層の複合的な部分内に位置され若しくは複合的な部分であり得る。機械力インジケーターは、その使用の間、薬剤送達デバイスに加えられた力及び/又は圧力の量を、人に示すために用いられ得る。例えば、一実施形態において、インジケーターは、人によって薬剤送達デバイスに加えられた力(患者の皮膚内に1つ又は複数のマイクロニードルを挿入するために、患者の皮膚に薬剤送達デバイスを利用している過程において)が、既定のしきい値にあう又は既定のしきい値を超える場合に、信号を提供するように構成される。既定のしきい値は、最小の力又は患者の皮膚に効果的に利用されるべき特定の薬剤送達デバイスに関して要求される最小の力より大きいいくらかの量であり得る。別の言い方をすると、それは、例えば部分的に若しくは完全に、患者の皮膚内に挿入される特性をマイクロニードルにもたせる必要がある力であり得、又はそれは、例えば部分的に若しくは完全に、患者の皮膚内に挿入され及びマイクロニードルを基板から分離する特性を、マイクロニードルにもたせる必要がある力であり得る。
【0117】
薬剤送達デバイスを使用するための方法
本明細書で用いられるように、語句「組織表面を貫通する(penetrate a tissue surface)」又は用語「貫通する(penetrate)」若しくは「貫通(penetration)」は、生物学的組織内への、マイクロニードルの少なくとも先端又は遠位端部を含むマイクロニードルのアレイのマイクロニードルの少なくとも50%及び典型的に実質的にすべての挿入を、意味する。好ましい実施形態において、マイクロニードルの少なくとも先端部は、実行可能な表皮内に存在し又は実行可能な表皮を通り抜けるように、「貫通(penetration)」はヒト患者の皮膚の角質層を貫通することを含む。
【0118】
本明細書において提供される薬剤送達デバイスは、自己利用され又は別の個人(例えば、親、保護者、最低減訓練された医療従事者、専門的に訓練された医療従事者、及び/若しくは他人)によって利用され得る。
【0119】
従って、本明細書において提供される実施形態はさらに、薬剤送達デバイスを用いて対象の物質を投与するための、簡単な及び効果的な方法を含む。本明細書において提供される方法は、適用部位を特定すること、及び好ましくは、薬剤送達デバイスの適用の前に区域を衛生的にすること(例えば、アルコール布巾を用いて)を含み得る。薬剤送達デバイスは、次いで本明細書に記載されるような力を加えることによって、患者の皮膚/組織に加えられ、及び手動で(例えば、親指又は指を用いて)患者の皮膚/組織に押しつけられる。
【0120】
投与が終わった後、基板、支持層、ハウジング、及び/又は押下可能部分は、分離可能なマイクロニードルを有する実施形態において、患者の皮膚/組織から取り除かれ得る。実施形態において、本明細書に記載の薬剤送達デバイスは、1つ又は複数の対象の物質(例えば、ワクチン、治療薬、ビタミン)を、体、組織、細胞及び/又は臓器内へ送達するために用いられる。一実施形態において、薬剤送達デバイスは、角質層(経皮的な輸送にとって障害である、皮膚の10〜20ミクロン外側の)を超えて並びに実行可能な表皮及び真皮内にマイクロニードルを挿入することによって、皮膚内に活性剤を送達するために用いられる。小型のマイクロニードルは、それらが痛みを与えずに及び皮内の空間を標的にするのを可能にする。皮内の空間は、多くの新生血管が形成され及び免疫細胞を多く含んでおり、並びにワクチン及び治療薬の両方を投与するための親和性の経路を提供する。マイクロニードルは、好ましくは溶解可能であり、及び皮内の空間においてそれらが間質液内に溶解されると、皮膚内に活性剤を放出する。分離可能なマイクロニードルを含む実施形態において、基板は、マイクロニードルの分離のとき又は分離の後、好ましくは挿入時とほとんど即時に、取り除かれ及び廃棄され得る。
【0121】
一実施形態において、方法は、本明細書に記載のマイクロニードルアレイの1つを提供することを含む患者へ対象の物質を投与すること、及び患者の組織表面へアレイのマイクロニードルを利用することのために提供され、ここにおいて、皮膚内へのアレイのマイクロニードルの挿入は、別個の又は固有のアプリケータデバイスの使用なしに手動で行われる。この特定の文脈において、用語「アプリケータデバイス」は、組織表面に対してマイクロニードルアレイを動かすための主要な力として役立ち、組織表面に対するデバイス及び/又はマイクロニードルの保持において使用者が与え得る任意の力とは区別される、例えばばね作用等による、それらの特有な力を提供する機械的なデバイスである。
【0122】
対象の物質/有効医薬成分
広範囲に有効な物質は、本マイクロニードル及び方法を用いた生物学的組織への送達のために形成され得る。本明細書で用いられるように、用語「対象の物質」は、生物学的組織内に取り入れるのに望ましい、有効医薬成分、アレルゲン、ビタミン、美容用薬品、薬用化粧品、診断用薬品、標識(例えば、着色された染料又は放射性物質の染料又は標識)、及び他の材料を含む。「対象の物質」は、ときには本明細書において、「活性剤」又は「API」又は「薬剤」と言及される。
【0123】
一実施形態において、対象の物質は、医学又は獣医学への適用に有用な、予防薬、治療薬、又は診断用薬である。一実施形態において、対象の物質は、APIとして本明細書において言及され得る、予防的な又は治療上の物質である。ある特定の実施形態において、APIは、自然に発生し、合成され又は組換えで生成され得る、適切なタンパク質、ペプチド及びその断片から選択される。送達のためのAPIの種類の典型的な例としては、抗生物質、抗ウイルス物質、鎮痛薬、麻酔薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症剤、抗凝固剤、アレルゲン、ビタミン、抗悪性腫瘍薬が挙げられる。
【0124】
一実施形態において、対象の物質はワクチンを含む。ワクチンの例としては、伝染病用のワクチン、がん、神経障害、アレルギー及び禁煙又は他の依存症用の治療ワクチンが挙げられる。炭疽、子宮頚がん(ヒト乳頭腫ウイルス)、デング熱、ジフテリア、エボラ熱、肝炎A、肝炎B、肝炎C、インフルエンザ菌タイプb(Hib)、HIV/AIDS、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、インフルエンザ(季節的な及び流行性の)、日本脳炎(JE)、ライム病、マラリア、麻疹、髄膜炎菌、サル痘、流行性耳下腺炎、百日咳、肺炎球菌、ポリオ、狂犬病、ロタウイルス、風疹、帯状疱疹(帯状ヘルペス)、痘瘡、破傷風、腸チフス、結核(TB)、水痘(水ぼうそう)、ウエストナイル熱並びに黄熱病の予防のための、現在の及び未来のワクチンのいくつかの例がある。
【0125】
別の実施形態において、対象の物質は治療薬を含む。治療薬は、小分子及び生物工学で生成された又は精製された大分子(例えば、ペプチド、タンパク質、DNA、RNA)から選択され得る。それらの類似化合物及び拮抗薬を含み得る治療薬の例としては、限定されないが、インスリン、インスリン様成長因子、インスルトロピン、上皮小体ホルモン、プラムリンチド酢酸塩、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出因子、メカセルミン、第8因子、第9因子、アンチトロンビンIII、タンパク質C、タンパク質S、ベータグルコセレブロシダーゼ、アルグルコシダーゼアルファ、ラロニダーゼ、イズルスルファーゼ、ガルスルファーゼ、アガルシダーゼベータ、アルファ−1プロテイナーゼ阻害因子、ラクターゼ、膵酵素、アデノシンデアミナーゼ、プール免疫グロブリン、ヒトアルブミン、エリスロポエチン、ダルベポエチンアルファ、フィルグラスチム、ペグフィルグラスチム、サルグラモスチン、オプレルベキン、ヒト卵胞刺激ホルモン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ルトロピンアルファ、インターフェロン(アルファ、ベータ、ガンマ)、アルデスロイキン、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、ウロキナーゼ、因子ヴィラ、ドロトレコギンアルファ、サケカルシトニン、エキセナチド、オクトレオチド、ジボテルミンアルファ、組換えヒト骨形成タンパク質7、ヒストレリン酢酸塩、パリフェルミン、ベカプレルミン、トリプシン、ネシリチド、ボツリヌス毒素(タイプA及びタイプB)、コラゲナーゼ、ヒトデオキシリボヌクレアーゼI、ヒアルウロニダーゼ、パパイン、1−アスパラギナーゼ、peg−アスパラギナーゼ、ラスブリカーゼ、レピルジン、ビバリルジン、ストレプトキナーゼ、アニストレプラーゼ、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、アレムツズマブ、リタキシマブ、トラスツズマブ、アバタセプト、アナキンラ、アダリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、アレファセプト、エファリズマブ、ナタリズマブ、エクリズマブ、抗胸腺細胞グロブリン、バシリキシマブ、ダクリズマブ、ムロモナブ−CD3、オマリズマブ、パリビズマブ、エンフビルチド、アブシキシマブ、ペグビソマント、クロタリデン多価fab(ヒツジ)、ジゴキシン免疫血清fab(ヒツジ)、ラニビズマブ、デニロイキンジフチトクス、イブリツモマブチウキセタン、ゲムツズマブオゾガマイシン、トシツモマブ、I−トシツモマブ、抗アカゲザル(rh)免疫グロブリンG、デスモプレシン、バソプレシン、デアミノ[Val4、D−Arg8]アルギニンバソプレシン、ソマトスタチン、ソマトトロピン、ブラジキニン、硫酸ブレオマイシン、キモパパイン、グルカゴン、エポプロステノール、コレシストキニン、オキシトシン、コルチコトロピン、プロスタグランジン、ペンチガテーゼ、サイモシンアルファ−1、アルファ−1抗トリプシン、フェンタニール、リドカイン、エピネフリン、スマトリプタン、メシル酸ベンズトロピン、リラグルチド、フォンダパリヌクス、ヘパリン、ヒドロモルホン、オマセタキシンメペサクシネート、プラムリンチド酢酸塩、チロトロピン−アルファ、グリコピロレート、メシル酸ジヒドロエルゴタミン、ボルテゾミブ、トリプトレリンパモ酸塩、テデュグルチド、臭化メチルナルトレキソン、パシレオチド、塩酸オンダンセトロン、ドロペリドール、トリアムシノロン(ヘキス)アセトニド、アリピプラゾール、吉草酸エストラジオール、モルヒネ硫酸塩、オランザピン、メタドン塩酸塩、並びにメトトレキサートが挙げられる。
【0126】
さらに別の実施形態において、対象の物質は、当技術分野において周知なビタミン、ハーブ又は栄養補助食品である。非限定的な例としては、5−HTP(5−ヒドロキシトリプトファン)、アサイー、アセチル−L−カルニチン、活性炭、アロエベラ、アルファリポ酸、りんご酢、アルギニン、アシタバ、アシュワガンダ、アスタキサンチン、オオムギ、ビーポーレン、ベータアラニン、ベータカロチン、ベータグルカン、ビオチン、ゴーヤ、ブラックチェリー、ブラックコホッシュ、クロフサスグリ、紅茶、分枝鎖アミノ酸、ブロメライン(ブロメリン)、カルシウム、ショウノウ、ローマカミルレ、チェストベリー、キトサン、クロレラ、クロロフィル、コリン、コンドロイチン、クロム、シナモン、シチコリン、ココナッツ水、コエンザイムQ10、共役リノール酸、ノムシタケ属、クランベリー、クレアチン、D−マンノース、ダミアナ、シカベルベット、DHEA、DMSO、ムラサキバレンギク、EDTA、ニワトコの実、エミューオイル、マツヨイグサ油、コロハ、ナツシロギク、葉酸、フォルスコリン、GABA(ガンマアミノ酪酸)、ゼラチン、ショウガ、イチョウ葉エキス、チョウセンニンジン、グリシン、グルコサミン、硫酸グルコサミン、グルタチオン、ツボクサ属、ブドウ種子エキス、グリーンコーヒー、ガラナ、グッグル、ギムネマ属、サンザシ、ハイビスカス、ホーリーバジル、角ヤギ草、イヌリン、鉄、オキアミオイル、L−カルニチン、L−シトルリン、L−トリプトファン、乳酸桿菌、マグネシウム、モクレン、オオアザミ、MSM(メチルスルホニルメタン)、ナイアシン、オリーブ、オメガ−3脂肪酸、ウーロン茶、オレガノ、トケイソウ、ペクチン、フェニルアラニン、ホスファチジルセリン、カリウム、プロバイオティクス、プロゲステロン、ケルセチン、リボース、紅麹、万年茸、レスベラトロール、バラの実、サフラン、SAM−e、ノコギリパルメット、マツブサ属、ヒッポファエ、セレン、センナ、アカニレ、セイヨウオトギリソウ、トゲイラクサ、ティーツリー油、テアニン、ハマビシ、ウコン(クルクミン)、チロシン、カノコソウ、ビタミンA、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、乳清タンパク質、ウイッチヘーゼル、キサンタンガム、キシリトール、ヨヒンベ、及び亜鉛が挙げられる。
【0127】
マイクロニードルアレイは、単一の対象の物質を含み得、又は2つ以上の対象の物質を含み得る。後者の場合、異なる物質は、1つのマイクロニードル又は1つの対象の物質を含むマイクロニードルのアレイにおけるいくつかのマイクロニードル内で、ともに提供され得、一方他のマイクロニードルは別の対象の物質を含む。
【0128】
APIは、望ましくは安定した形成又は合成において提供される(すなわち、一点では、生物学的活性材料はここにおいて、貯蔵のとき、その物理的な安定性及び/若しくは化学的な安定性並びに/又は生物学的な活性を本質的に保持する)。安定性は、選択した期間の間、選択した温度で測定され得る。傾向分析は、材料がその期間の間、実際に貯蔵状態に置かれる前に、予期の貯蔵寿命期間を推定するために用いられ得る。
【0129】
実施形態において、対象の物質は、1つ又は複数のマイクロニードルを形成するために「乾燥する(dry)」又は「乾燥した(dried)」固体として提供され、及び患者の生物学的組織内へのマイクロニードルの挿入の後に、インビボで可溶性になる。本明細書で用いられるように、用語「乾燥する(dry)」又は「乾燥した(dried)」は、任意の水の実質的な部分が合成の固体位相を生成するために取り除かれる合成を意味する。用語は、湿気の完全な不存在を要求しない(例えば、APIは、約0.1重量%から約25重量%までの含水量を有し得る)。
【0130】
対象の物質は、後述するように、1つ又は複数の賦形剤及び他の添加剤を用いた形成において含まれ得る。
【0131】
マトリックス材料/賦形剤
マトリックス材料は、マイクロニードル及び基板のバルクを形成する。それは、典型的に、単独に又は他の材料との組合せにおいて、生体適合性の高分子材料を含む。実施形態において、少なくともマイクロニードルのマトリックス材料は水溶性である。ある特定の好ましい実施形態において、マトリックス材料は、ポリビニルアルコール、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、マルトデキストリン、スクロース、トレハロース、及び他の糖の1つ又はそれらの組合せを含む。本明細書で用いられるように、用語「マトリックス材料」及び「賦形剤」は、マイクロニードル及び基板の乾燥及び形成の間に揮発されない任意の賦形剤について言及される場合、入れ替え可能に用いられる。
【0132】
本明細書に記載の型を充填するプロセスにおいて用いられる流体溶液は、任意の多種の賦形剤を含み得る。賦形剤は、新奇な調剤上の形成などにおいて広く用いられるものから成り得る。好ましい実施形態において、賦形剤は、FDA承認された製剤(http://www.accessdata.fda.gov/scripts/cder/iig/index.Cfmにおける承認された薬剤に関する不活性成分調査を参照)におけるものである。賦形剤の以下、安定剤、緩衝剤、増量剤又は充填剤、アジュバント、界面活性剤、崩壊剤、酸化防止剤、可溶化剤、分散予防保護剤、抗菌剤、粘着防止剤、染料、潤滑剤、粘着促進剤、促進剤、防腐剤、送達を延長する又は制御するための材料(例えば、生体分解可能なポリマー、ゲル、材料を形成する貯蔵物質、及び他のもの)、のカテゴリーのうちの、いずれでもない、1つ又は1つより多い賦形剤が用いられ得る。また、単一の賦形剤は、1つより多い形成機能を実行し得る。例えば、糖は安定剤として用いられ得、及び増量剤又は緩衝剤は、pHを緩衝すること及び酸化から活性剤を保護することの両方を行うために用いられ得る。賦形剤のいくつかの例としては、限定されないが、ラクトーゼ、スクロース、グルコース、マンニトール、ソルビトール、トレハロース、フルクトース、ガラクトース、デキストロース、キシリトール、マルチトール、ラフィノース、デキストラン、シクロデキストリン、コラーゲン、グリシン、ヒスチジン、炭酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、血清アルブミン(ヒト及び/又は動物源)、ゼラチン、キトサン、DNA、ヒアルロン酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリエチレングリコール(PEG、PEG300、PEG400、PEG600、PEG3350、PEG4000)、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アカシア、レシチン、ポリソルベート20、ポリソルベート80、プルロニックF−68、ソルビタントリオレート(スパン85)、EDTA、ヒドロキシプロピルセルロース、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、苛性ソーダ、炭酸ナトリウム、トリス塩基65、トリスアセテート、トリスHCl−65、クエン酸緩衝、タルク、シリカ、脂質、メチルパラベン、プロピルパラベン、セレン、ビタミン(A、E、C、レチニルパルミテート、及びセレン)、アミノ酸(メチオニン、システイン、アルギニン)、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、クレゾール、フェノール、チメロサール、EDTA、アセトン硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸パルミテート、アスコルビン酸塩、ヒマシ油、綿実油、ミョウバン、アルミニウム水酸化物、リン酸アルミニウム、カルシウムリン酸塩水酸化物、パラフィン油、スクアレン、クイルA、IL−1、IL−2、IL−12、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、死滅百日ぜき菌、ウシ型結核菌、並びにトキソイドが挙げられる。1つ又は複数の選択された賦形剤は、マイクロニードルデバイスの乾燥及び貯蔵の間、対象の物質の安定性を向上するために選択され得、また、マイクロニードルアレイにバルク及び/若しくは機械的な特性を提供し、並びに/又はワクチンに対する免疫反応を向上するためのアジュバントとして役立つ。
【0133】
製造
マイクロニードルのアレイは、当技術分野において周知な任意の方法で作られ得る。例えば、マイクロニードルのアレイは、有利には高度に拡張可能な成形プロセスを用いて作られ得る。プロセスは、適切に流体化された材料を用いて適切な型を充填すること、マイクロニードル、含まれる場合には既定の折れる領域及びベース基板を形成するために流体化された材料を乾燥すること、並びに次いで、形成された部分を型から取り除くことを含み得る。これらの充填する及び乾燥するステップは、当技術分野において「鋳造」として言及され得る。
【0134】
好ましくは、マイクロニードルを製造するための方法は、最小のISO7(クラス10,000)プロセス又はISO5(クラス100)プロセスに基づいて実行される。
【0135】
一実施形態において、固体の生体分解可能なマイクロニードルの製造は、対象の物質の水溶性の又は非水溶性の鋳造溶液を用いて1つ又は複数のマイクロニードルの陰性の型を充填すること、及び1つ又は複数の固体のマイクロニードルを提供するために鋳造溶液を乾燥することを含む。他の実施形態において、他の溶解又は無溶解システムが用いられ得る。陰性の型を充填するための方法の非限定的な例は、沈着、被覆、捺染、噴霧及びマイクロ充填技法を含む。鋳造溶液は、冷凍より低い周囲温度で又は乾燥固形マイクロニードルを形成するための約5秒から約1週間までの期間の間の周囲より高い温度(例えば、30〜60℃以上)で、乾燥され又は硬化され得る。いくつかの実施形態において、乾燥又は硬化時間は、約10秒から約24時間まで、約30分から約12時間まで、約10分から約1時間まで、又は約1分から約30分までである。好ましい実施形態において、乾燥又は硬化時間は約10秒から約30分までである。
【0136】
代替的に、鋳造溶液は、非真空充填及び真空充填の組合せを用いて、型内に真空充填又は充填され得る。例えば、実施形態において、陰性の型は、それを通じて後部真空が適用され得る非多孔性であるが気体透過性の材料(例えば、PDMS)を含む。陰性の型は固体であるが、それは、型がそのような材料で形成される場合に、十分な真空が後部を通じて適用され得ることを決定する。いくつかの実施形態において、後部真空は、単独で又は急速な充填のために型の上部に加えられた正圧との組合せで、用いられ得る。そのような実施形態は、有利には要求される時間を減少し、並びに鋳造溶液を用いて型を充填する場合に、正確に及び完全に改善され得る。例えば、鋳造溶液は、約3分から約6時間まで、約3分から約3時間まで、約3分から約1時間まで、又は約3分から約30分までの時間の間、後部真空を用いて真空充填され得る。
【0137】
様々な温度及び湿度レベルが鋳造溶液を乾燥するために用いられ得るが、形成は、好ましくは約1℃から約150℃まで(例えば、約5℃から約99℃まで、約15℃から約45℃まで、約25℃から約45℃まで、又は約周囲温度で)の温度、及び約0〜約40%の相対湿度、例えば約0〜約20%の相対湿度で、乾燥される。
【0138】
いくつかの実施形態において、マイクロニードル及び基板を形成するために多段階の鋳造プロセスを用いることが望ましい。例えば、マイクロニードルの先端は、対象の物質を含む鋳造溶液を用いる第1のステップに続く、同一の又は異なる対象の物質とともに又はその物質なく容量の大きいポリマーの鋳造溶液を用いる、1つ又は複数の連続する充填ステップにおいて、部分的に充填され得る。陰性の型における充填及び少なくとも部分的なマイクロニードルの乾燥の後、付着層及び裏側層が、型からのマイクロニードルの除去の前に、ベース基板に取り付けられ得る。いくつかの実施形態において、付着層及び/又は裏側層は、ベース基板への取付け前に前もって形成され、一方他の実施形態において、付着層及び/又は裏側層は、直接的に1列に並べられた状態で形成され得る。
【0139】
一実施形態において、多段階の鋳造プロセスは、(1)マイクロニードルを形成するための賦形剤におけるAPIの第1の鋳造、(2)折れる領域を形成するための折れやすくする材料の第2の鋳造、並びに(3)裏側及び/又はベース基板を形成するためのマトリックス材料の第3の鋳造を含む。
【0140】
少なくとも部分的なマイクロニードルの乾燥の後、マイクロニードルは型から取り除かれ得る。例えば、マイクロニードルは、完全な乾燥の前(例えば、まだ弾性のある状態のとき)に型から取り除かれ得るが、皮を剥がされるべく十分な固さのとき、次いでさらにマイクロニードルを固体化する/強固にするために乾燥され、さらに直ちに型から取り除かれる。そのような技法は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、糖及び他の材料がマイクロニードル内で容量の大きいポリマー(マトリックス材料)として用いられる場合、有用であり得る。そのような実施形態において、マイクロニードルは、包装の前又は包装の後に完成され得る。
【0141】
上述のデバイス及び方法はさらに、以下の非限定的な実施例と関連して理解され得る。
【0142】
実施例1
マイクロニードルアレイは、以下のように製造された。第1の溶液(リン酸カリウム緩衝液において、10重量%のスクロース、1重量%のカルボキシメチルセルロースをもつ)が、ポリジメチルシロキサン(PDMS)マイクロニードル型内に真空下で鋳造され、及びマイクロニードルを形成するために、10分間周囲状況下で乾燥された。次いで、第2の溶液(リン酸カリウム緩衝液において、10重量%のスクロース、1重量%のカルボキシメチルセルロースをもつ)が、PDMSマイクロニードル型内に真空下で鋳造され、及び基板/基層を形成するために、35℃で一晩中乾燥された。次いで、付着裏側(支持層)(3M1503褐色片面コートポリエチレン医療テープ)が、マイクロニードルパッチを形成するために、マイクロニードルアレイの基部に取り付けられた。マイクロニードルアレイは、次いで型から取り除かれ、及び箔パウチ内に乾燥剤とともに包装された。
【0143】
実施例2
実施例1において作られたマイクロニードルアレイが、皮膚内にマイクロニードルを挿入するために、切除されたブタの皮膚に加えられた。次いで、パッチを、組織表面に対するパッチの固定を保つように下向きの力を持続しながら、横方向に(水平に、皮膚の表面と平行に)引っ張った。パッチを次いで皮膚から引き離し、撮像した。親水性染料(ゲンチアナバイオレット、1%)が、次いでマイクロニードル挿入の区域でブタの皮膚に加えられた。染料が、30秒の間ブタの皮膚の表面上にとどまることが可能にされ、次いでそれはイソプロパノール布巾を用いて拭き取られた。次いで、ブタの皮膚の表面が撮像され、及び染色のために評価された。
【0144】
概ね10lbfの下向きに加えられた力が、即時にパッチに加えられ、続いて皮膚に渡って水平にパッチを引っ張った。これはマイクロニードルの基板からの分離をもたらしたが、それはまた、処置されたブタの皮膚上へのゲンチアナの染色によって明らかにされるように、角質層/表皮の表面引裂きをもたらした。
【0145】
今度は、わずかな下向きの力(5lbf未満)が加えられ、次いで、パッチを皮膚に渡って水平に引っ張った。これは角質層/表皮のより少ない引裂きをもたらしが、またマイクロニードル貫通を減少させた。
【0146】
実施例3
別のマイクロニードルアレイが、以下のように製造された。第1の溶液(リン酸カリウム緩衝液において、10重量%のスクロース、1重量%のカルボキシメチルセルロース、及び0.1%のスルホローダミンB(赤色色素)をもつ)が、ポリジメチルシロキサン(PDMS)マイクロニードル型内に真空下で鋳造され、及びマイクロニードルを形成するために、40℃で30分間乾燥された。次いで、第2の液体(2部分のポリウレタン高ジュロメーターエラストマー(60D液体ウレタン、フォルシュポリマー社)の混合物が、PDMSマイクロニードル型内に真空下で鋳造され、及びテーパ形状の基板/基層を形成するために、一晩中硬化させた。次いで、付着裏側(支持層)(3M1503褐色片面コートポリエチレン医療テープ)が、マイクロニードルパッチを形成するために、マイクロニードルアレイの基部に取り付けられた。マイクロニードルアレイは、次いで型から取り除かれ、及び箔パウチ内に乾燥剤とともに包装された。
【0147】
実施例4
実施例3において作られたマイクロニードルアレイが、皮膚内にマイクロニードルを挿入するために、切除されたブタの皮膚に加えられた。次いで、パッチを、組織表面に対するパッチの固定を保つように下向きの力を持続しながら、横方向に(水平に、皮膚の表面と平行に)引っ張った。マイクロニードルに入れられた染料が皮膚内に放出され、第2の染色は実行されなかった。次いで、ブタの皮膚の表面が撮像され、及び染色のために評価された。パッチを皮膚から引き離し、また撮像した。
【0148】
すべてのマイクロニードルが、マイクロニードルアレイ及びブタの皮膚の残りの部分の光マイクログラフ(マイクロニードル染料ペイロードの送達を示した)によって明らかにされるように、基板から分離され及び皮膚内に埋め込まれたままにされた。皮膚表面の最小の引裂きが存在していた。
【0149】
実施例1〜2及び実施例3〜4の結果の比較は、実施例3〜4のアレイが、第1の及び第2の鋳造の2つの分離及び別個の材料の境界であった分離の明確に定義されたポイントを有したことを、示した。第1のアレイは混合する2つの水溶性の鋳造溶液で作られ、及びこれは明白な分離/境界をもたらさなかった。アレイが、第1の及び第2の鋳造の2つの材料の境界で放物線状(すなわち、半径)であった、実施例1〜2のアレイとは異なり、実施例3〜4のアレイはまた、明白な角度を定義するために交差する2つの異なる傾斜する壁によって明確に定義された境界を有した。従って、マイクロニードルと基板との間の境界の幾何学的形状が、この実施例における分離プロセスに関して重要であった。
【0150】
実施例3〜4のアレイはまた、高いジュロメーターを有するにもかかわらず、マイクロニードルを基板/ファンネルから分離するための剪断力の適用の間、より簡単なマイクロニードル分離を可能にし及び皮膚の引裂きを最小にしたエラストマー材料を有した。
【0151】
本明細書において引用された刊行物及びそれらが引用する材料は、明確に参照により組み込まれる。本明細書において記載される方法及びデバイスの修正及び変形は、上述の説明から当業者には明らかであろう。そのような修正及び変形は、添付の特許請求の範囲内に現れることが意図される。