特許第6886929号(P6886929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886929
(24)【登録日】2021年5月19日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】運搬車両
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20210603BHJP
【FI】
   G05D1/02 K
   G05D1/02 S
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-1481(P2018-1481)
(22)【出願日】2018年1月9日
(65)【公開番号】特開2019-121249(P2019-121249A)
(43)【公開日】2019年7月22日
【審査請求日】2019年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻村 舜
(72)【発明者】
【氏名】石井 啓範
(72)【発明者】
【氏名】勝山 優一朗
【審査官】 堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−115259(JP,A)
【文献】 特開2016−164735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00− 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬車両の周囲にある障害物候補を検知する外界センサと、
警報器と、
前記外界センサおよび前記警報器に接続されたコンピュータからなる周囲監視装置と、
を備える運搬車両であって、
前記外界センサは、当該外界センサが前記運搬車両に取り付けられた位置を基準とする前記障害物候補の地表面からの高さを検知し、
前記周囲監視装置は、
前記障害物候補の高さと、前記障害物候補が積込機械であるか否かを判定するために用いる高さ閾値と、を比較する高さ比較部と、
前記高さ比較部での比較結果に基づき、前記障害物候補が積込機械であるか否かを判定する積込機械判定部と、
前記積込機械判定部が前記積込機械であると判定した障害物候補に対する警報指示は前記警報器へ出力せず、前記積込機械判定部が前記積込機械ではないと判定した障害物候補の警報指示は前記警報器へ出力する警報出力部と、
を備え、
前記外界センサはレーザを被検知体に対して照射し、前記被検知体から反射されたレーザを受光して、前記レーザの照射角度および前記照射角度に対応する前記被検知体までの距離を出力するライダーであり、
前記周囲監視装置は、さらに、
前記外界センサから複数の検知点を取得すると、前記複数の検知点が同一の障害物候補の検知点であるかを判定するための点間距離に基づき、検知点群を生成する検知点群生成部と、
前記検知点群の中から、高さ方向で最も低い検出点の座標を、前記障害物候補の代表値として抽出する代表値抽出部と、を備え、
前記高さ比較部は、前記代表値の高さの値と前記高さ閾値とを比較することを特徴とする運搬車両。
【請求項2】
運搬車両の周囲にある障害物候補を検知する外界センサと、
警報器と、
前記外界センサおよび前記警報器に接続されたコンピュータからなる周囲監視装置と、
を備える運搬車両であって、
前記外界センサは、当該外界センサが前記運搬車両に取り付けられた位置を基準とする前記障害物候補の地表面からの高さを検知し、
前記周囲監視装置は、
前記障害物候補の高さと、前記障害物候補が積込機械であるか否かを判定するために用いる高さ閾値と、を比較する高さ比較部と、
前記高さ比較部での比較結果に基づき、前記障害物候補が積込機械であるか否かを判定する積込機械判定部と、
前記積込機械判定部が前記積込機械であると判定した障害物候補に対する警報指示は前記警報器へ出力せず、前記積込機械判定部が前記積込機械ではないと判定した障害物候補の警報指示は前記警報器へ出力する警報出力部と、
を備え、
前記運搬車両は、車輪と、前記車輪上に搭載された車体フレームと、前記車体フレーム上に搭載された荷台とを備える運搬車両であり、
前記高さ比較部は、前記高さ閾値を前記荷台の上端近傍の高さの値とし、前記外界センサが検知した障害物候補の高さの値と当該高さ閾値とを比較することを特徴とする運搬車両。
【請求項3】
運搬車両の周囲にある障害物候補を検知する外界センサと、
警報器と、
前記外界センサおよび前記警報器に接続されたコンピュータからなる周囲監視装置と、
を備える運搬車両であって、
前記外界センサは、当該外界センサが前記運搬車両に取り付けられた位置を基準とする前記障害物候補の地表面からの高さを検知し、
前記周囲監視装置は、
前記障害物候補の高さと、前記障害物候補が積込機械であるか否かを判定するために用いる高さ閾値と、を比較する高さ比較部と、
前記高さ比較部での比較結果に基づき、前記障害物候補が積込機械であるか否かを判定する積込機械判定部と、
前記積込機械判定部が前記積込機械であると判定した障害物候補に対する警報指示は前記警報器へ出力せず、前記積込機械判定部が前記積込機械ではないと判定した障害物候補の警報指示は前記警報器へ出力する警報出力部と、
を備え、
前記運搬車両は、パーキング、若しくはニュートラルに設定することが可能なシフトレバー装置をさらに備え、
前記シフトレバー装置は前記周囲監視装置に接続され、
前記警報出力部は、前記シフトレバー装置から当該シフトレバー装置の設定値を入力し、当該設定値がパーキング、若しくはニュートラルを示す値でない場合、前記積込機械であると判定された障害物候補に対する警報指示を前記警報器へ出力するよう切り替えることを特徴とする運搬車両。
【請求項4】
運搬車両の周囲にある障害物候補を検知する外界センサと、
警報器と、
前記外界センサおよび前記警報器に接続されたコンピュータからなる周囲監視装置と、
を備える運搬車両であって、
前記外界センサは、当該外界センサが前記運搬車両に取り付けられた位置を基準とする前記障害物候補の地表面からの高さを検知し、
前記周囲監視装置は、
前記障害物候補の高さと、前記障害物候補が積込機械であるか否かを判定するために用いる高さ閾値と、を比較する高さ比較部と、
前記高さ比較部での比較結果に基づき、前記障害物候補が積込機械であるか否かを判定する積込機械判定部と、
前記積込機械判定部が前記積込機械であると判定した障害物候補に対する警報指示は前記警報器へ出力せず、前記積込機械判定部が前記積込機械ではないと判定した障害物候補の警報指示は前記警報器へ出力する警報出力部と、
を備え、
前記運搬車両の周囲を撮像し、周囲画像を出力するカメラをさらに備え、
前記カメラは前記周囲監視装置に接続され、
前記周囲監視装置は、さらに、
前記外界センサの座標系を、三次元座標系に変換するための座標変換データを記憶する座標変換データ記憶部と、
前記外界センサが検知した障害物候補の座標を、前記座標変換データを用いて三次元座標系に変換する三次元座標変換部と、
三次元座標系に変換された障害物候補の座標を基に、前記周囲画像に基づく表示画像内に撮像された障害物候補の中で、積込機械でないと判定された障害物候補に対してマーカ画像を重畳するマーカ付加部と、を備え、
前記警報出力部は、前記警報器に前記マーカ画像が重畳された前記表示画像を出力することを特徴とする運搬車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬車両の周囲を監視する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両近傍にある物体との接触を回避するため、カメラなどで車両周囲を撮像した映像を運転者に提示し、また近傍に物体がある場合は通知する技術がある。この技術を、鉱山などで作業を行う大型ダンプトラックなどの運搬車両に適用させた監視装置も考案されている。
【0003】
カメラの撮像範囲や画像処理の都合よって死角が生じる場合など、障害物の有無の判断が容易とならない場合、安全性と作業効率が低下する。これに対し、障害物までの水平距離に応じて、モニタの表示形態を変化させ、運転者などに報知する技術が考案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−322687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の技術は、接近してきた障害物の種別にかかわらず、水平方向距離のみに応じて表示形態を変化させる。また一方で、建設現場や鉱山などでは、ホイールローダや油圧ショベルなどの積込機械が運搬車両に近接し、積込機械のフロント作業装置を運搬車両の上方へと移動させて、荷台に土砂などを載せる積込作業が常に行われる。この場合、積込機械のフロント作業装置と運搬車両との水平方向における位置が重なる状況になるが、上記特許文献1の技術では、この積込作業時にも、積込機械が他の障害物と同様に検出されるため、過剰な報知となりオペレータの作業を妨げるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、積込機械が近接して積込作業を行う際に、過剰な報知とならないようにする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、代表的な本発明の運搬車両は、運搬車両の周囲にある障害物候補を検知する外界センサと、警報器と、前記外界センサおよび前記警報器に接続されたコンピュータからなる周囲監視装置と、を備える運搬車両であって、前記外界センサは、当該外界センサが前記運搬車両に取り付けられた位置を基準とする前記障害物候補の地表面からの高さを検知し、前記周囲監視装置は、前記障害物候補の高さと、前記障害物候補が積込機械であるか否かを判定するために用いる高さ閾値と、を比較する比較部と、前記比較部での比較結果に基づき、前記障害物候補が積込機械であるか否かを判定する積込機械判定部と、前記積込機械判定部が前記積込機械であると判定した障害物候補に対する警報指示は前記警報器へ出力せず、前記積込機械判定部が前記積込機械ではないと判定した障害物候補の警報指示は前記警報器へ出力する警報出力部と、を備え、前記外界センサはレーザを被検知体に対して照射し、前記被検知体から反射されたレーザを受光して、前記レーザの照射角度および前記照射角度に対応する前記被検知体までの距離を出力するライダーであり、前記周囲監視装置は、さらに、前記外界センサから複数の検知点を取得すると、前記複数の検知点が同一の障害物候補の検知点であるかを判定するための点間距離に基づき、検知点群を生成する検知点群生成部と、前記検知点群の中から、高さ方向で最も低い検出点の座標を、前記障害物候補の代表値として抽出する代表値抽出部と、を備え、前記高さ比較部は、前記代表値の高さの値と前記高さ閾値とを比較することを特徴とする
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、積込機械が近接して積込作業を行う際に、過剰な報知とならないようにする技術を提供することができ、作業上の確認作業が効率化され、作業全体の運用効率が向上する。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の運搬車両の側面を示す図である。
図2】実施形態の周囲監視装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】第1実施形態の周囲監視装置のブロック構成の一例を示す図である。
図4】第1実施形態の運搬車両を基準とした三次元直交座標を求める手法について説明する図である。
図5】第1実施形態の障害物座標の算出処理の内容を説明する図である。
図6】第1実施形態の積込機械判定処理の内容を説明する図である。
図7】第1実施形態の積込機械判定処理の動作例を示すフローチャートである。
図8】第1実施形態の警報器が表示する俯瞰画像の一例を示す模式図である。
図9】第1実施形態の他の表示例を示す模式図である。
図10】第2実施形態の対象物を積込機械とする場合の検知例を示した図である。
図11】第2実施形態の対象物が積込機械ではない場合の検知例を示す図である。
図12】第2実施形態の積込機械判定処理の動作例を示すフローチャートである。
図13】第3実施形態の代表となる検知点の選定方法の一例を示す図である。
図14】第4実施形態の周囲監視装置のブロック構成の一例を示す図である。
図15】第4実施形態の警報器が表示する俯瞰画像の一例を示す模式図である。
図16】検知対象物をホイールローダとした場合を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態の態様を図面を参照しながら説明する。以下の説明では、鉱山などで採掘した砕石や鉱物を運搬する、大型の運搬車両に適用した場合を例にしている。尚、大型の運搬車両に限定されるものではなく、他の建設機械や一般車両などにも、本実施形態の態様を適用させることができる。
【0011】
また以下では、障害物となり得る物体を障害物候補を検知し、その中から障害物でない積込機械を除外して障害物を確定し、障害物と積込機械とでは報知形態を変更する実装例について説明する。
【0012】
(第1実施形態)
<運搬車両構成概要>
図1は、実施形態の運搬車両を例示する側面図である。図1に示す運搬車両1は、大型ダンプトラックであり、頑丈なフレーム構造で形成された車体フレーム(vehicle frame)2と、車体フレーム2上に起伏可能に搭載されたベッセル(vessel:荷台)3とを備える。また運搬車両1は、車体フレーム2に装着された、左右一対の車輪である前輪4Aおよび後輪4Bを主に備えている。また車体フレーム2には、後輪4Bを駆動するエンジン(図示せず)が配設されている。
【0013】
ベッセル3は、砕石物などの荷物を積載するために設けられた容器であり、ピン結合部5などを介して車体フレーム2に対して起伏可能に連結されている。ベッセル3の下部には、車両の幅方向に所定の間隔を介して2つのホイストシリンダ6が設置されている。ホイストシリンダ6に圧油が供給/排出されると、ホイストシリンダ6が伸長/縮短してベッセル3が起伏される。
【0014】
ベッセル3の前部には庇部7が設けられている。庇部7は、その下側(すなわち車体フレーム2の前部)に設置された運転室8を岩石等の飛散物から保護するとともに、車両転倒時などに運転室8を保護する機能を備えている。運転室8の内部には、周囲監視装置9、警報器10が設置されている。また運転室8の内部には、操作装置である操舵用のハンドル(図示せず)、アクセルペダルおよびブレーキペダルなど(図示せず)とが設置されている。
【0015】
周囲監視装置9はコンピュータであり、詳細構成については後述する。警報器10は、本実施形態では、平面のディスプレイにタッチパネルの入力部が積層配置されたタッチパネルディスプレイとする。警報器10は、運搬車両1を運転しているオペレータに情報を表示したり、タッチパネル上の接触を検出し、その位置を特定して周囲監視装置9に出力する。また警報器10には、スピーカが内蔵されており、音声による操作案内や注意喚起を促すためのアラーム発報を行う。すなわち警報器10は、ディスプレイに像を映し出すことによる報知やスピーカによる音声報知を行う報知部として機能する。
【0016】
車体フレーム2の側面には、外界センサ11およびカメラ12を備える。実施形態では、外界センサ11として3Dライダー(3D−LIDER:Light Detection and Ranging)を備えている。外界センサ11は、レーザを被検知体に対して照射し、被検知体から反射されたレーザを受光して、レーザの照射角度および照射角度に対応する被検知体までの距離を出力する。外界センサ11は、水平方向、垂直方向にレーザを出力して、周囲にある障害物候補までの距離や方向を取得する。外界センサ11のスキャン範囲、解像度、フレームレートなどは、好適な値に変更することができる。尚、障害物候補の位置や方向を検出できるセンサであれば、3Dライダーに限らず、例えば2Dライダーやミリ波レーダ、ステレオカメラを単数もしくは複数備えてもよい。
【0017】
カメラ12は、広角レンズを介して得られた像の明暗を電荷量に変換し、電気信号として画像を出力するCCD(Charge Coupled Device)デバイスを有する撮像部であり、運搬車両1の周囲を撮像して周囲画像を得る。尚、夜間作業や明りの少ない坑道を走行する際にも、好適な光量を得て周囲状況を撮像するため、撮像方向を照らすライトなどが備えられてもよい。
【0018】
図1では外界センサ11およびカメラ12を1つずつ示しているが、実際には監視の必要な範囲に合わせて複数設置される。本実施形態では、外界センサ11およびカメラ12をそれぞれ前後左右の4台備えるものとし、いずれも事前に規定される位置や、地表面からの高さに設置される。
【0019】
以下、参考までに、大型ダンプトラックの仕様寸法などを例示する。種別によってサイズが異なるが、いずれのしても、通常の一般車両よりも規模の大きな構成となっている。
・車両総質量・・・320tons〜500tons
・ボディ容量(山積状態時)・・・120m〜200m
・全長・・・13.0m〜15.0m
・全幅・・・9.0m〜9.6m
・全高・・・7.0m〜7.5m
【0020】
<周囲監視装置のシステム構成>
図2は、周囲監視装置9のハードウェア構成例を示す図である。周囲監視装置9は、上記のとおりコンピュータシステムであり、外界センサ11、カメラ12、警報器10などと接続し、これらを統括的に制御する機能を備える。周囲監視装置9は、以下の構成を備える。
【0021】
CPU101(CPU:Central Processing Unit)は、ROM103やストレージ104に記憶されているプログラムを、RAM102に展開して演算実行する処理装置である。CPU101は、プログラムを演算実行することで、周囲監視装置9の内部の各ハードウェアを統括的に制御する。RAM102は揮発性メモリであり、CPU101との間で直接的にデータの入出力を行うワークメモリである。RAM102は、CPU101がプログラムを演算実行している間、必要なデータを一時的に記憶する。
【0022】
ROM103は不揮発性メモリであり、CPU101で実行されるファームウェアを記憶している。ストレージ104は、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、ハードディスクドライブなどの補助記憶装置である。ストレージ104は、CPU101が演算実行するプログラムや、パラメータなどの制御データを不揮発的に記憶する。ストレージ104は、カメラ12で撮像された画像データや、外界センサ11から得られたスキャンデータなどを蓄積してもよい。
【0023】
センサ入力I/F105(I/F:Interface)は、外界センサ11に対しスキャンデータを取得するための指示信号を出力し、また外界センサ11からスキャンデータを入力するためのインターフェイスである。映像入力I/F106は、カメラ12に撮像指示信号を出力し、またカメラ12で撮像された映像を入力するインターフェイスである。センサ入力I/F105、映像入力I/F106は、本実施形態では、例えばUSB(Universal Serial Bus)規格に準拠したシリアルバス端子を備え、この規格に準拠したデータの送受信を行うものとする。警報器接続I/F107は、表示用の画像や音声データを警報器10に出力するためのインターフェイスである。
【0024】
周囲監視装置9は、上記のような構成を備えているが、構成の一部もしくは全てを、例えばASIC(application specific integrated circuit)などの集積回路で実装してもよい。尚、一部もしくは全てが集積回路などで実装されている場合においても、当該構成はコンピュータの一形態とみなされる。
【0025】
図3は、周囲監視装置9の機能ブロックの一例を示す図である。周囲監視装置9は、三次元座標変換部201、座標変換データ記憶部202、検知点群生成部203、代表値抽出部204、識別情報付加部205、オブジェクト記憶部206を備える。また周囲監視装置9は、高さ閾値記憶部207、高さ比較部208、積込機械判定部209、俯瞰座標変換部210を備える。周囲監視装置9は、上方視点変換部251、画像合成部252、マーカ付加部253、警報出力部254を備える。これら各ユニットは、図2に示すCPU101が、ROM103やストレージ104に記憶されているプログラムおよびデータを、RAM102に展開して演算実行し、プログラムコードに従い各種ハードウェアと協働することで実現される。
【0026】
上方視点変換部251は、カメラ12が撮像した画像データを、上方視点となる画像、すなわち運搬車両1を上方から視認した場合の画像となるように、ピクセルごとに座標変換を行う。上方視点変換部251は、カメラ12の前後左右の各位置に応じた変換パラメータを用いて、各カメラ12より得られた撮像画像を、上方視点となる画像にそれぞれ変換する。
【0027】
画像合成部252は、上方視点変換部251によって座標変換された前後左右の各画像をつなぎ合わせて、運搬車両1を中心とした1つの俯瞰画像を作成する。画像合成部252は、上方視点変換部251によって座標変換された画像から、ひずみの大きい端部領域などを除去し、これらを繋ぎ合わせて俯瞰画像を作成する。尚、上方視点変換部251や画像合成部252の各機能については、既存の技術を用いてもよい。
【0028】
三次元座標変換部201は、外界センサ11で検知された、極座標系で示される検知点を入力し、極座標系から三次元座標系に変換する。座標変換データ記憶部202は、外界センサ11から得られる極座標系の検知点を、三次元座標系の検知点に変換するための座標変換データを記憶する。
【0029】
検知点群生成部203は、座標変換後の検知点それぞれを、規定距離内に収まるようグループ分けし、検知点群を生成する。この規定距離は、各検知点が同一の障害物候補の検知点であるかを判定するための点間距離である。ここでグループ分けした検知点群は、以降、1つの障害物候補として認識される。
【0030】
代表値抽出部204は、検知点群の中の代表となる検知点を抽出し、当該検知点の値である検知位置座標(後述の検知位置座標22)を取得する。識別情報付加部205は、検知点群ごと、すなわち障害物候補ごとに識別情報を割り振る。この識別情報をオブジェクトIDと称し、以降、このオブジェクトIDが、障害物候補を判別するための情報となる。
【0031】
オブジェクト記憶部206は、上記のようにして特定された障害物候補に関するデータである障害物データを記憶する。障害物データは、検出された障害物候補ごとに作成され、オブジェクトID、検知位置座標、障害物候補の種別を判別するための種別フラグ、タイムスタンプを1つのレコードに対応付けたデータ構成となる。タイムスタンプについては、後述のフローチャートを参照しながら説明する。
【0032】
種別フラグは、当該障害物候補が積込機械であるか否かを少なくとも識別するためのデータであり、積込機械判定部209によって値が決定付けられる。積込機械に関しては、積込機械(積込中)、積込機械(掘削中)、積込機械(別作業)、積込機械(範囲外)の各状況を示す値が種別フラグに設定される。また、積込機械以外の障害物候補に関しては、通常障害物、報知範囲外を示す値が種別フラグに設定される。障害物候補が積込機械であるかの判定方法や種別フラグの設定方法については、後述する。
【0033】
高さ閾値記憶部207は、障害物候補が積込機械であるか否かを判定するための高さ閾値である基準高さ(後述の基準高さ24)の値、および基準水平距離の値を記憶する。
【0034】
高さ比較部208は、高さ閾値記憶部207に記憶されている基準高さおよび基準水平距離と、代表値抽出部204が抽出した検知位置座標とを比較し、大小関係を示した比較結果を積込機械判定部209に出力する。高さ比較部208は、オブジェクトIDごとに比較処理を行い、比較結果および代表値抽出部204から入力した検知位置座標を、オブジェクトIDに対応付けて積込機械判定部209に出力する。
【0035】
積込機械判定部209は、比較結果を高さ比較部208から入力し、この比較結果に基づき、当該障害物候補が積込機械であるかその他の障害物であるかを判定し、種別フラグの値を決定する。積込機械判定部209は、オブジェクト記憶部206内に記憶されている種別フラグを、決定した種別フラグで更新する。積込機械判定部209は、オブジェクトID、種別フラグの値、検知位置座標を対応付けて俯瞰座標変換部210に出力する。
【0036】
俯瞰座標変換部210は、入力した検知位置座標を、画像合成部252が生成する俯瞰画像と同一座標系となるように座標変換し、この変換後の座標データを、オブジェクトID、種別フラグの各値に対応付けてマーカ付加部253に出力する。
【0037】
マーカ付加部253は、画像合成部252が作成した俯瞰画像の上に、障害物を強調表示するためのマーカ画像(アイコン画像)を重ね合わせる。マーカ付加部253は、俯瞰座標変換部210によって変換された座標データの位置に、マーカ画像を重ね合わせる。マーカ付加部253は、種別フラグの値に基づき、積込機械判定部209が積込機械と判定した障害物候補に対しては、報知不要としてマーカ画像を付加しない。一方、マーカ付加部253は、画像合成部252が作成した、警報器10が表示する表示画像内に撮像された障害物候補の中で、積込機械でないと判定された障害物に対してマーカ画像を重畳する。尚、ここでは俯瞰画像を警報器10に表示される表示画像としているが、カメラ12から直接得られる画像データを表示画像としてもよい。
【0038】
警報出力部254は、マーカ付加部253が処理した後の画像を警報器10に出力し、オペレータに周囲の状況を提示する。警報器10は、積込機械と判定された障害物候補に対しては、マーカ画像が付加されない状態、すなわち報知を無効化した状態で表示する。この場合、警報出力部254は、スピーカなどを介して音声メッセージの出力などの警報指示を行わない。一方、通常の障害物に関しては、マーカ画像が付加されているため、警報器10は、報知を有効化した状態で表示する。また警報出力部254は、スピーカなどを介して音声メッセージの出力などの警報指示を行う。
【0039】
上記各ブロックの処理は、外界センサ11やカメラ12からの入力ごとに、同期をとりながら繰り返し行われる。このように繰り返し行われることで、連続した映像となり、マーカが付された俯瞰映像が警報器10に映し出される。
【0040】
<処理内容詳細>
図4は、三次元座標変換部201による、外界センサ11から得られた検知点を三次元直交座標に変換する手法について説明する図である。また図4(A)は、外界センサ11が運搬車両1に取り付けられた位置を基準とした座標系を示す図であり、図4(B)は変換用の算出式を示す図である。座標変換データ記憶部202には、外界センサ11の設置位置の座標が事前に記憶されており、この設置位置座標を(x,y,z)とする(図4(A)参照)。ここでは、外界センサ11が運搬車両1の右側端部に設置されているものとし、運搬車両1の直進時の進行方向に対して平行方向に基づく軸をx軸とし、進行方向に対し垂直方向に基づく軸をy軸とする。またx−y平面(水平面)に対し垂直方向に基づく軸をz軸とする(図4(A)参照)。
【0041】
外界センサ11を3Dライダーとする場合、外界センサ11から得られるデータは、一般的に外界センサ11から障害物候補までの距離、および外界センサ11の位置を基準とした障害物候補の方向(角度)で構成されており、極座標系のデータとなっている。図4(A)の検出点29と外界センサ11の設置位置座標(x,y,z)との距離をrとし、「検出点29と外界センサ11の設置位置座標とを結んだ線分」とz軸とがなす角をθとする。また、「検出点29と外界センサ11の設置位置座標とを結んだ線分」とx軸とがなす角をφとおくと、検出点の三次元直交座標系における座標値は、図4(B)のように表すことができる。尚、図4(B)に示す数式も、座標変換データ記憶部202に記憶されている。また図4(B)において、高さ成分については基準値(z)が加算されていることから、検出点29の変換後の高さの値は、運搬車両1が位置している地表面からの高さの値となる。
【0042】
このように三次元座標変換部201は、外界センサ11から得られる極座標値に対し、図4(B)に示す数式を座標変換データ記憶部202を適用することで、三次元直交座標に変換する。
【0043】
図5は、障害物候補座標を算出する処理の内容を説明する図である。外界センサ11の検知範囲28に障害物候補30が含まれると、障害物候補30の運搬車両1側の端面に、センサ解像度に応じて複数の検出点29が発生する。
【0044】
外界センサ11は点で検出を行うため、1つの障害物候補に対して複数の検出点29が発生する。検知点群生成部203は、複数の検出点29同士の間の距離が一定以内(点間距離内)となる場合は同一物体に関する検出点グループ(検出点群)であると判定する。尚、障害物候補が複数検知される場合、検出点グループも複数存在する。
【0045】
代表値抽出部204は、検出点グループの中から、代表とする検出点を決める。本実施形態では、最も小さな高さ値となる検出点29を代表値とし、その代表値の検出点29の座標を検知位置座標22として設定する。検知位置座標22は、運搬車両1の側面であるベッセル横端部41からの水平距離34、および運搬車両1の地表面からの高さ35の値を少なくとも含んでいる。
【0046】
そして識別情報付加部205は、検知点グループごとに一意のIDを割り振る。尚、識別情報付加部205は、オブジェクト記憶部206に既に記憶されている検知位置座標22の値と近似している検知位置座標が、今回も検出された場合、当該検出点グループは、既に過去に検出された障害物候補と同一であるものとして扱う。この場合、識別情報付加部205は、この既存のオブジェクトIDと同じIDを割り振る。
【0047】
そしてオブジェクト記憶部206は、上記のようにして検知点グループごとに割り振られたオブジェクトID、検知位置座標22、種別フラグ、タイムスタンプを1つのレコードとして登録する。この段階において、種別フラグには、初期値として報知範囲外の値が設定され、タイムスタンプにも、事前に規定される初期値の時刻が設定される(「YYYY−MM−DD HH:MM:SS」の形式)。
【0048】
図6は、高さ比較部208および積込機械判定部209における積込機械判定処理を説明するための図であり、障害物候補が積込機械である場合について示した図である。ここでは、積込機械を油圧ショベルとして説明する。
【0049】
積込機械31が運搬車両1のベッセル3に土砂を積込む際、積込機械31のバケット部32(土砂を掬う部位)の底面は、ベッセル3の上端部33より高い値を取る必要がある。また、一般的に鉱山現場には、高い構造物は少なく、運搬車両1は上記の寸法のとおり比較的大きいため(全高7.0m〜7.5m)、ベッセル3の上端部33の高さよりも高い位置となる物体は、積込機械以外にほぼ存在しない。そのため、障害物候補の検知位置座標22がベッセル3の上端部33よりも上方に位置する場合、積込機械判定部209は、当該障害物候補が積込機械であると判定する。一方、障害物候補の検知位置座標22がベッセル3の上端部33よりも下方に位置する場合、積込機械判定部209は、当該障害物候補が積込中の積込機械以外であると判定する。以上のことから、本実施形態では、基準高さ24をベッセル3の上端の高さ、もしくは上端近傍の高さとする。高さ比較部208は、基準高さ24と検知位置座標22の高さ値とを比較し、そして積込機械判定部209がこの比較結果に基づき、積込機械(積込中)であるか否かの判定処理を行う。
【0050】
図7は、高さ比較部208および積込機械判定部209による積込機械判定処理の処理内容を示すフローチャートである。高さ比較部208および積込機械判定部209は、オブジェクト記憶部206に登録されたオブジェクトIDごとに、図7に示すフローチャートを実施して、当該オブジェクトIDに対応付けられた種別フラグの値を更新する。尚、種別フラグの初期値は、上記の通り報知範囲外を示す値とする。
【0051】
高さ比較部208は、オブジェクト記憶部206に処理対象となるレコード(オブジェクトID、検知位置座標22、種別フラグ、タイムフラグのセット)を取得し、高さ閾値記憶部207に記憶されている基準高さ24および基準水平距離の各値を取得する。そして高さ比較部208は、基準水平距離値と検知位置座標22内の水平距離34の値とを比較し、積込機械判定部209は、この比較結果を受けて水平距離34の値が基準水平距離値以内であるかを判定する(S010)。水平距離34の値が基準水平距離値以内の値を取る場合(S010:Yes)、積込機械判定部209は、当該障害物候補が運搬車両1の近傍に位置するため報知が必要となる可能性があるものとし、ステップS020に処理を進める。一方、水平距離34の値が基準水平距離値より大きい値を取る場合(S010:No)、積込機械判定部209は、当該障害物候補が運搬車両1から十分離れた場所に位置するため報知が不要であるものとし、ステップS050に処理を進める。
【0052】
ステップS020において、高さ比較部208は、検知位置座標22の高さ35と基準高さ24とを比較し、この比較結果に基づき、積込機械判定部209は、検知位置座標22の高さ35が基準高さ24よりも高いか否かを判定する(S020)。検知位置座標22の高さ35が基準高さ24より大きい値をとる場合(S020:Yes)、積込機械判定部209は、当該障害物候補が積込作業中の積込機械であると判定する。そして積込機械判定部209は、オブジェクト記憶部206に登録されている種別フラグを、積込機械(積込中)に更新し、タイムスタンプを現在の時刻に更新する(S021)。ステップS021で当該障害物候補についての処理が終了し、ステップS010に処理を戻して別の障害物候補(別のオブジェクトID)についての処理を行う。
【0053】
検知位置座標22の高さ35が基準高さ24以下をとる場合(S020:No)、積込機械判定部209は、当該障害物候補が積込作業中の積込機械以外の障害物であると判定し、ステップS030に処理を進める。
【0054】
積込機械判定部209は、当該障害物候補(処理中のオブジェクトID)に対応付けられている現在の種別フラグの値が、通常障害物もしくは報知範囲外を示す値であるかを判定する(S030)。現在の種別フラグが通常障害物もしくは報知範囲外を示す値である場合(S030:Yes)、積込機械判定部209は、当該障害物候補を積込機械以外であると判定する。そして積込機械判定部209は、オブジェクト記憶部206に登録されている種別フラグを、通常障害物を示す値に更新する(S031)。その後積込機械判定部209は、ステップS010に処理を戻して別の障害物候補(別のオブジェクトID)についての処理を行う。
【0055】
種別フラグが通常障害物または報知範囲外のどちらでもない場合(S030:No)、積込機械判定部209は、当該障害物候補(処理中のオブジェクトID)に対応付けらているタイムスタンプと現在時刻の差分が所定値以内かを判定する(S040)。ステップS040は、当該障害物候補が規定時間(掘削動作に係る標準時間)内に積込動作から掘削動作に変化した積込機械であるかを、タイムスタンプに基づき判定している。タイムスタンプと現在時刻の差分が所定値以内の場合(S040:Yes)、積込機械判定部209は、当該障害物候補が掘削動作により一時的に検知位置座標22が低くなっている積込機械であると判定する。この場合、積込機械判定部209は種別フラグを積込機械(掘削中)に更新する(S041)。一方、タイムスタンプと現在時刻の差分が所定値以内ではない場合(S040:No)、積込機械判定部209は、当該障害物候補が一定時間積込作業を行っておらず、待機中もしくは積込以外の作業を行っている積込機械であると判定する。そして積込機械判定部209は、種別フラグを積込機械(別作業)に更新する(S042)。ステップS041、S042の後も、処理はステップS010に戻り、別のオブジェクトIDに対する処理を引き続き行う。
【0056】
ステップS050において、積込機械判定部209は、当該障害物候補(処理中のオブジェクトID)の現在の種別フラグの値が、通常障害物もしくは報知範囲外を示す値か否かを判定する(S050)。種別フラグが通常障害物もしくは報知範囲外を示す値である場合(S050:Yes)、積込機械判定部209は、積込機械以外の障害物候補が報知不要な範囲に位置するものと判定し、種別フラグを報知範囲外に更新する(S051)。一方、種別フラグが通常障害物または報知範囲外のいずれでもない場合(S050:No)、積込機械判定部209は、積込機械が報知の不要な範囲に存在するものと判定し、種別フラグを積込機械(範囲外)に更新する(S052)。ステップS051、S052の後も、処理はステップS010に戻り、別のオブジェクトIDに対する処理を引き続き行う。
【0057】
このように運搬車両1は、検知位置座標22の高さ35と基準高さ24とを比較し、比較した結果、高さ35が基準高さ24を超えている場合(S020:Yes)、当該障害物候補を積込機械と判定する。また、一度積込機械と判定された障害物候補は、種別フラグが初期値から更新される。よって一度積込機械と判定されると、たとえ高さの値が下がっていても、次回以降の処理ではステップS030、S050により積込機械用の判定(S041/S042/S052)に割り振られるようになる。これとは逆に、ステップS020で積込機械と一度も判定されていない障害物候補は、ステップS030、S050により積込機械以外用の判定(S031/S051)に割り振られる。
【0058】
また、積込機械については、積込みを行っている最中の状態(積込機械(積込中)、積込機械(掘削中))と、それ以外(積込機械(別作業))とにさらに分類される。これは、積込みを行っている最中は衝突リスクが高く、ダンプが静止している必要がある、などを考慮し、個別に種別フラグを設けている。
【0059】
引き続き、俯瞰座標変換部210、マーカ付加部253の処理内容について説明する。上記のおとり、カメラ12が送信した周囲映像データは、上方視点変換部251、画像合成部252により必要な範囲に切り出され、座標変換と配置とが行われ、俯瞰映像となる。一方、俯瞰座標変換部210は、検知位置座標22から高さ35のz軸成分を取り除いた(x,y)の平面座標値を抽出し、距離をピクセル単位に換算するための値を用いて、俯瞰映像のサイズと合致するように平面座標値に対して変換処理を行う。マーカ付加部253は、俯瞰座標変換部210から変換後の平面座標値、および種別フラグを取得し、種別フラグに応じたマーカ(アイコン画像)を俯瞰映像に重畳する。
【0060】
図8は、このようにして得られた俯瞰画像の一例を示す模式図である。図8の例では、マーカ付加部253により、俯瞰画像内の運搬車両1の位置に、運搬車両1を示すマーカ1Aが付される。また図8の例では、運搬車両1(マーカ1A)の左方に乗用車37が存在し、運搬車両1の右方に積込機械31が存在する場合を示している。
【0061】
乗用車37は、基準高さ24より低い位置に存在するため、通常の障害物と判定される。マーカ付加部253の処理としては、種別フラグを参照し、通常障害物もしくは通知範囲外である場合は、障害物に対する通常の表示として、強調表示用の円状マーカ38を、乗用車37の周囲に付加する。一方バケット部32は、基準高さ24より高い位置に存在するため、積込機械と判定されている。マーカ付加部253の処理としては、種別フラグを参照し、積込機械(積込中)、積込機械(掘削中)、積込機械(別作業)、積込機械(範囲外)のいずれかである場合、図8の例では、検知表示を不要としてマーカを付加しない。
【0062】
図9は、他の俯瞰画像の一例を示す模式図であり、積込機械特有の検知表示を行う場合を示した図である。また図8と同様に、運搬車両1(マーカ1A)の左方に乗用車37が存在し、運搬車両1の右方に積込機械31が存在する場合を例示している。乗用車37には、上記図8の例と同様に円状マーカ38が重畳表示される。一方積込機械31について、マーカ付加部253は、積込機械の存在する方向を示すために、俯瞰映像の右辺に積込機械特有の検知表示39を付加する。
【0063】
警報出力部254は、このようにして得られた俯瞰画像を警報器10に出力する。警報器10は、マーカ付加部253が生成した俯瞰画像(俯瞰映像)を連続して表示するとともに、積込機械以外の障害物が近接位置に存在する場合、注意喚起を促すため、音声を発報する。尚、積込機械31のみが近接位置に存在する場合、発報は行わないように制御される。この制御は、各オブジェクトIDに対応付けられた種別フラグの値に基づき行われる。このように、積込機械とその他の障害物とで異なる報知を行うことで、不要な報知を抑制し、運搬車両1のオペレータは、積込機械とその他の障害物の判別をより容易に行うことができる。
【0064】
上記の実施形態によれば、周囲の障害物候補が積込機械か否かを判別することで、積込機械である場合は報知形態を変更できるため、積込機械の接近に対して適切に報知を行うことができる。これにより、作業上の安全を確保するための確認作業が効率化され、作業全体の運用効率が向上する。
【0065】
(第2実施形態)
第2実施形態では、積込機械ではない障害物が高所に存在する場合において、積込機械と高所の障害物とを判別する実装例について説明する。
【0066】
図10は、検知位置座標22が基準高さ24よりも上方に存在する場合において、障害物候補が積込機械である場合を示した図である。積込機械31は、積込みを行う際にバケット部32が運搬車両1に接近するが、その際に積込機械31の本体40は、バケット部32よりベッセル横端部41から遠い位置に存在する。第2実施形態では、基準高さ24より上方に存在する検知位置座標22とは別に、基準高さ24より低い位置に存在する検知位置座標である下方検知位置座標42を新たに設ける。また第2実施形態では、下方検知位置座標42とベッセル横端部41との水平方向距離である下方水平距離値43を設ける。このとき、積込機械31の本体40は、バケット部32より遠い位置に存在するため、下方水平距離値43は水平距離34の値より大きな値をとる。
【0067】
図11は、検知位置座標22が基準高さ24より上方に存在する場合において、検知対象物が積込機械ではない場合を示した概念図である。基準高さ24より高い位置に存在する障害物として、例えば地形や建物が挙げられる。これらが基準高さ24より高い位置に存在する場合、検知位置座標22が基準高さ24より高い位置に発生する。このとき、地形や建物は垂直もしくは下側の幅が広くなる構造になる事が多いため、下方水平距離値43は水平距離34の値より大きな値をとりにくい。
【0068】
図12は、第2実施形態における積込機械判定処理の処理内容を示すフローチャートである。ステップS060以外に関しては、図7に示す第1実施形態の積込機械判定処理の処理内容と同様のため、説明を省略する。
【0069】
ステップS060において、積込機械判定部209は、下方水平距離値43から水平距離34の値を差し引いた差分を算出する。そして、この差分値が所定値以上の場合(S060:Yes)、下方水平距離値43の方が相当長いことから、積込機械判定部209は、当該障害物候補が積込機械であると判定し、ステップS021に処理を進める。差分値が所定値より小さい場合(S060:No)、当該障害物候補が積込機械以外の通常の障害物であると判断し、ステップS031に処理を進める。
【0070】
第2実施形態によれば、周囲に位置する障害物が積込機械であるか否かの判別を、より高精度に行うことができるため、積込機械の接近に対して適切な報知を行うことができる。これにより、作業上の安全を確保するための確認作業が効率化され、作業全体の運用効率が向上する。
【0071】
(第3実施形態)
第3実施形態では、積込機械をより高精度に判別する方法について説明する。
【0072】
図13は、障害物候補が積込機械である場合において、バケット部32Aが運搬車両1の車体フレーム2の近傍に存在する場合を示した図である。このとき、積込機械31Aに対し検出点29が複数発生するが、そのうち車体フレーム2に最も近い検出点29を最近傍検出点44とする。そして第3実施形態では、最近傍検出点44から所定値の水平方向距離45以内となる検出点29のうち、最も低い検出点29を代表として検知位置座標22とする。この検知位置座標22の決定手法以外の動作については、第1、第2実施形態の態様を適用させることができる。
【0073】
第3実施形態によれば、広範囲に検出点が存在する場合でも、周囲に位置する障害物が積込機械であるか否かの判別を、より高精度に行うことができ、積込機械の接近に対して適切な報知を行うことができる。これにより、作業上の安全を確保するための確認作業が効率化され、作業全体の運用効率が向上する。
【0074】
(第4実施形態)
積込作業を行う場合、運搬車両1が停止している状態で行われる。一方、運搬車両1が走行している際に積込機械が近接しているときは、通常の障害物とみなして注意喚起を行った方が好ましい。第4実施形態の運搬車両1は、運搬車両1が停止している状態、すなわちシフトレバーがパーキング(P)、もしくはニュートラル(N)に設定されている場合、上記図8図9に示す態様で俯瞰画像を表示する。また第4実施形態の運搬車両1は、シフトレバーがパーキング(P)もしくはニュートラル(N)以外に設定されている場合、積込機械に対しても強調表示用の円状マーカを付した表示となるように切り替え制御する。
【0075】
図14は、第4実施形態での周囲監視装置9の機能ブロックの構成を示す図であり、図15は、第4実施形態の態様により表示可能な俯瞰画像の一例を示す図である。
【0076】
第4実施形態のマーカ付加部253Aは、上記図8図9に示す俯瞰画像に加え、通常の障害物と同様の強調表示用の円状マーカ38Aを積込機械31に付した俯瞰画像を作成する(図15参照)。この場合、マーカ付加部253Aは、種別フラグの値にかかわらず、積込機械31に対しても通常の障害物として扱うことで、円状マーカ38Aを重畳させる処理を行う。
【0077】
第4実施形態の警報出力部254Aは、シフトレバー装置301から現在の設定値を取得する。警報出力部254Aは、この設定値に応じて、図8または図9、もしくは図15のいずれの俯瞰画像を表示するかを判定し、警報器10に出力する。シフトレバー装置301から取得する設定値が、運搬車両1の停止状態であることを意味するパーキング(P)、もしくはニュートラル(N)である場合、警報出力部254Aは、図8または図9に示す俯瞰画像を表示するように切り替え制御する。一方、パーキング(P)、もしくはニュートラル(N)以外である場合、警報出力部254Aは、図15に示す俯瞰画像を表示するように切り替える。警報出力部254Aは、積込機械に対しても、スピーカなどを介して音声メッセージで注意喚起の報知を行うように制御する。
【0078】
上記例では、運搬車両1の停止状態であるか否かをシフトレバー装置301の設定値を用いて判別しているが、運搬車両1の現在速度に基づき判別してもよい。この場合、警報出力部254Aは、運搬車両1の現在の速度値を入力し、この値がゼロである場合、図8または図9に示す俯瞰画像を表示するように切り替える。一方、速度がゼロ以外である場合、警報出力部254Aは、図15に示す俯瞰画像を表示するように切り替え、スピーカなどを介して音声メッセージで注意喚起の報知を行うように制御する。
【0079】
第4実施形態により、運搬車両1が停止状態か走行状態であるかに従い、積込機械に関しての報知内容を切り替えることができ、走行時においてはオペレータに対して注意喚起を促す報知内容とすることができる。このことから、より安全を確保することができる。
【0080】
(その他の態様例)
上記各実施形態の説明では、積込機械を油圧ショベルとして説明したが、積込作業を行う機械であれば、これに限られない。図16は、検知対象物をホイールローダとした場合について示した図である。障害物候補がホイールローダ46である場合でも、積込作業を行う時はバケット部32Bが基準高さ24より高所に位置する。また、運搬車両1に対しバケット部32Bがホイールローダ46の本体47よりも接近するため、下方水平距離値43が水平距離34の値より大きな値となる。すなわち、ホイールローダ46についても、上記各実施形態と同様に積込機械の判別を行うことができる。
【0081】
上記各実施形態では、種別フラグを積込機械(積込中)、積込機械(掘削中)、積込機械(別作業)、積込機械(範囲外)、通常障害物、報知範囲外と設定したが、これに限定されない。種別フラグを少なくとも積込機械とその他の障害物とを区別できるように設定する態様であればよい。
【0082】
障害物座標算出処理において、検出点29の中から代表とする検出点を選定しているが、この選定方法は、上記各実施形態の態様に限されない。例えば、水平距離値が小さくなる点を代表点としてもよいし、水平方向座標と高さ方向座標とで別々に代表点を設定し、水平方向の代表点の水平座標と、高さ方向の代表点の高さ座標とを組み合わせて検知位置座標22にしてもよい。また検出点29の中から代表点を選定せずに、例えば検出点29の座標の平均を算出して用いてもよいし、複数の検出点を全て含む様な領域を設定し、領域に含まれる任意の座標を用いてもよい。
【0083】
積込機械判定処理において、基準高さ24の設定は任意であり、ベッセル3の上端部33とは異なる高さに設定しても構わない。
【0084】
積込機械判定処理において、検知位置座標以外の他の方法と組み合わせて、種別フラグを決定しても良い。例えば、GPS(Global Positioning System)などによる位置情報を積込機械から運搬車両に送っておくことにより、検知位置座標が基準高さより高くなる前に、予め種別フラグを積込機械と判定しておくことができる。
【0085】
積込機械判定処理において、上記各実施形態ではタイムスタンプにより積込機械(掘削中)と積込機械(別作業)の判別を行ったが、他の条件を用いて判別してもよい。例えば距離を条件とし、運搬車両から一定距離以上離れた積込機械を、積込機械(別作業)と判別してもよい。
【0086】
合成映像生成処理において、上記各実施形態の表示方法や発報方法は一例であり、積込機械およびその状態と、積込機械以外の障害物を区別できる報知であればよい。
【0087】
上記各実施形態ではスピーカにより音声発報を行うものとしたが、作業者の注意を喚起できる装置であれば、スピーカに限らず、例えばランプ点灯もしくはアイコンによる色の変化や光の点滅など、光を用いた報知でもよい。
【0088】
第2実施形態において、下方検知位置座標42の設定条件を基準高さ24より低いこととしたが、下方検知位置座標の高さの設定条件は任意であり、例えば検知位置座標22より高さの値が一定値以上低い点として定めてもよい。このとき、バケット部32などを地形や建物と誤認識しないように、バケット部32の高さ方向の幅以上など十分低い点を定めることが望ましい。
【0089】
また、検知位置座標22と下方検知位置座標42のセンサ横方向(図4図6などにおける手前/奥側方向)の位置関係については、任意に設定してよい。一例としては、基準高さ24より下方に存在する障害物候補の座標が、検知位置座標22に対しバケット部32のセンサ横方向側の幅よりもセンサ横方向にずれていた場合、下方検知位置座標42として使用しない。
【0090】
積込機械31の本体40とバケット部32の位置関係や、外界センサの検知範囲によっては、基準高さ24の下方に障害物候補が検出されず下方検知位置座標42が設定されないことがある。この場合、下方水平距離値43が十分大きいものとし、障害物候補を積込機械と判定する。尚、センサの検知範囲が十分広い場合においては、浮遊物やエラー値の様な積込機械以外として判別してもよい。
【0091】
以上に詳説したように、本実施形態によって、積込機械が近接して積込作業を行う際に、過剰な報知を低減させることができる。よって、作業上の確認作業が効率化され、作業全体の運用効率を向上させることができる。
【0092】
尚、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【符号の説明】
【0093】
1:運搬車両
2:車体フレーム
3:ベッセル
4A:前輪
4B:後輪
9:周囲監視装置
10:警報器
11:外界センサ
12:カメラ
31、31A:積込機械
201:三次元座標変換部
202:座標変換データ記憶部
203:検知点群生成部
204:代表値抽出部
205:識別情報付加部
206:オブジェクト記憶部
207:高さ閾値記憶部
208:高さ比較部
209:積込機械判定部
210:俯瞰座標変換部
251:上方視点変換部
252:画像合成部
253、253A:マーカ付加部
254、254A:警報出力部
301:シフトレバー装置
図1
図2
図3
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図5
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