(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886959
(24)【登録日】2021年5月19日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 11/00 20060101AFI20210603BHJP
F25D 11/02 20060101ALI20210603BHJP
F25D 17/06 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
F25D11/00 101B
F25D11/02 K
F25D17/06 303
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-231601(P2018-231601)
(22)【出願日】2018年12月11日
(62)【分割の表示】特願2014-236893(P2014-236893)の分割
【原出願日】2014年11月21日
(65)【公開番号】特開2019-35583(P2019-35583A)
(43)【公開日】2019年3月7日
【審査請求日】2018年12月11日
【審判番号】不服2020-12391(P2020-12391/J1)
【審判請求日】2020年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(72)【発明者】
【氏名】高橋 由紀
【合議体】
【審判長】
林 茂樹
【審判官】
川上 佳
【審判官】
松下 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−119224(JP,A)
【文献】
特開2004−125219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 11/00, 11/02, 17/06, 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵庫本体内に形成され冷蔵温度帯及び冷凍温度帯の設定温度に切替可能な貯蔵室と、
前記貯蔵室に貯蔵された食材の温度が0℃から−5℃までの温度範囲を繰り返し上下動するように前記食材の温度を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記制御の開始時に前記食材の温度を0℃から−5℃までの温度範囲の温度へ低下させ、前記制御終了時に0℃から−5℃までの温度範囲よりも高い温度まで上昇させ、前記制御の終了時に前記食材の温度を上昇させる時の単位時間あたりの温度変化量が、前記制御の開始時に前記食材の温度を低下させる時より小さい冷蔵庫。
【請求項2】
前記制御部は、冷却器で冷却された空気を前記貯蔵室へ送風するファンの回転数を変化させて0℃から−5℃までの温度範囲で繰り返し前記食材の温度を変化させる請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記制御部は、冷却器に供給する冷媒を圧縮する圧縮機の回転数を変化させて0℃から−5℃までの温度範囲で繰り返し前記食材の温度を変化させる請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記制御部は、冷却器で生成された空気を前記貯蔵室へ吹き出す吹出口に設けられたダンパの開度を変化させて0℃から−5℃までの温度範囲で繰り返し前記食材の温度を変化させる請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
0℃から−5℃までの温度範囲で繰り返し前記食材の温度を変化させる時間が変更可能である請求項1〜4のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
食品を良好な状態で冷却するため、種々の冷却制御を行う冷蔵庫が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。しかしながら、冷蔵庫においてこのような冷却性能に対する要求は高く、更なる向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−90052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、食品を良好な状態で冷却することができる冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係る冷蔵庫は、冷蔵庫本体内に形成され冷蔵温度帯及び冷凍温度帯の設定温度に切替可能な貯蔵室と、前記貯蔵室に貯蔵された食
材の温度が
0℃から−5℃までの温度範囲を繰り返し上下動するように前記食材の温度を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記制御の開始時に前記食材の温度を
0℃から−5℃までの温度範囲の温度へ低下させ、
前記制御終了時に0℃から−5℃までの温度範囲よりも高い温度まで上昇させ、前記制御の終了時に前記食材の温度を上昇させる時の単位時間あたりの温度変化量が、前記制御の開始時に前記食材の温度を低下させる時より小さいである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る冷蔵庫の概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図1の冷蔵庫の冷凍サイクルを示す図である。
【
図3】
図1に示す冷蔵庫の電気構成を示すブロック図である。
【
図4】軟化調理モードの制御を示すフロー図である。
【
図5】軟化調理モードの制御を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態について説明する。
【0008】
図1に示す冷蔵庫10は、食材を柔らかくする調理機能を備えた冷蔵庫であり、前面に開口する断熱箱状の冷蔵庫本体11の内部に貯蔵空間が形成され、貯蔵空間が断熱仕切壁12によって上下に区画されている。
【0009】
断熱仕切壁12の上方の空間は、内部がさらに仕切壁21によって上下に区画され、仕切壁21の上方に複数段の載置棚を設けた冷蔵室22が設けられ、仕切壁21の下方に野菜室24が設けられている。
【0010】
冷蔵室22の開口部は、冷蔵庫本体11の一側部の上下に設けられたヒンジにより回動自在に枢支された冷蔵室扉22aにより閉塞されている。冷蔵室扉22aの前面にはこの冷蔵庫10を操作するための操作パネル25が配されている。操作パネル25は、操作スイッチ26を操作することで、各貯蔵空間の冷却強度を切り替えて設定したり、後述する食材の軟化調理モードの実行を選択や軟化調理モードの実行時間を設定するモード選択手段として機能する。
【0011】
野菜室24の開口部は、引き出し式の野菜室扉24aにより閉塞されている。野菜室扉24aの裏面側には、容器23を保持する左右一対の支持枠が固着されており、開扉動作とともに容器23が庫外に引き出されるように構成されている。
【0012】
断熱仕切壁12を介して野菜室24の下方に配置した空間には、自動製氷機を備えた製氷室と温度切替室42とが断熱仕切壁を介して左右に併設され、その下方に断熱仕切壁43を介して冷凍室44が設けられている。これにより、温度切替室42は、断熱仕切壁12,43を介して野菜室24、製氷室、及び冷凍室44と断熱区画されている。
【0013】
製氷室、温度切替室42、冷凍室44の開口部も、野菜室24と同様、引き出し式の扉42a,44aにより閉塞され、各扉42a,44aの裏面側に固着した左右一対の支持枠に収納容器45、46が保持されており、開扉動作とともに該収納容器45、46が庫外に引き出されるように構成されている。
【0014】
冷蔵室22及び野菜室24の後部には、これらの貯蔵室22、24内の空気を冷却する冷蔵冷却器62と、冷蔵冷却器62で冷却された冷気を冷蔵室22及び野菜室24へ送風する冷蔵ファン63とを収納する冷蔵冷却器室27が設けられている。
【0015】
また、製氷室、温度切替室42、及び冷凍室44の後部には、これらの貯蔵室42、44内の空気を冷却する冷凍冷却器64と冷凍冷却器64で冷却された冷気を製氷室、温度切替室42、及び冷凍室44へ送風する冷凍ファン65とを収納する冷凍冷却器室47が設けられている。
【0016】
冷蔵冷却器62及び冷凍冷却器64は、キャビネット11の背面下部に設けられた機械室13内に収納された圧縮機61や凝縮器66とともに冷凍サイクル60を構成する。冷凍サイクル60は、
図2に示すように、高温高圧のガス状の冷媒を吐出する圧縮機61と、圧縮機61から吐出されるガス状の冷媒を受けて放熱液化する凝縮器66と、凝縮器66の出口側に設けられ冷媒流路を切り換える切替弁67と、冷蔵冷却器62及び冷凍冷却器64と、これらの冷却器62,64のための絞り手段としての冷蔵減圧装置68及び冷凍減圧装置69と、逆止弁70とを備え、これらを冷媒パイプによって配管接続することで、圧縮機61から吐出された冷媒を循環させて冷蔵冷却器62及び冷凍冷却器64を冷却する。
【0017】
冷蔵冷却器62は冷蔵冷却器室27内の空気と熱交換してこれを冷却し、冷蔵ファン63の回転駆動によって冷蔵冷却器62で生成された冷気を吹出口より冷蔵室22及び野菜室24に導入することで、冷蔵室22の背面に設けられた冷蔵温度センサ33の検出温度に基づいて各貯蔵室22,24を所定温度に冷却する。冷蔵室22及び野菜室24を冷却し終えた冷気は、吸込口から再び冷蔵冷却器室27に戻され冷蔵冷却器62と熱交換して再び冷却される。
【0018】
冷凍冷却器64は冷凍冷却器室47内の空気と熱交換して冷却し、冷凍ファン65の回転駆動によって冷凍冷却器64で生成された冷気を吹出口より製氷室、温度切替室42及び冷凍室44に導入することで、冷凍室44の背面に設けられた冷凍温度センサ51の検出温度に基づいて各貯蔵室42、44を所定温度に冷却する。製氷室、温度切替室42及び冷凍室44を冷却し終えた冷気は、吸込口から再び冷凍冷却器室47に戻され冷凍冷却器64と熱交換して冷却される。
【0019】
温度切替室42については、収納容器45に収容された食材の温度を赤外線センサ49で検出するとともに、赤外線センサ49の検出温度があらかじめ設定された温度になるように冷凍サイクル60の運転、及び温度切替室42に冷気を吹き出す吹出口の開度を変更するダンパ50を制御して温度切替室42への冷気導入量を調整する。ことにより、収納容器45に収容された食材が、−17℃以下の冷凍温度帯や、−5℃から−1℃までの最大氷結晶生成温度帯や、1℃から5℃までの冷蔵温度帯など、任意に切り替えて所定の設定温度になるよう制御する。
【0020】
冷蔵庫本体11の背面上部に設けられた機械室13には、圧縮機61及び凝縮器66とともに、冷蔵庫10の動作全般を制御する制御部14が設けられている。
【0021】
制御部14は、
図3に示すように、操作スイッチ26、冷蔵温度センサ33、赤外線センサ49、冷凍温度センサ51などの各種センサやタイマ52等から入力される信号や、EEPROM等の不揮発性記録媒体からなるメモリ53に記憶された制御プログラムに基づいて、ダンパ50、圧縮機61、冷蔵ファン63、冷凍ファン65などの各種電気部品を制御する。
【0022】
このような構成の冷蔵庫10において、使用者が操作パネル25の操作スイッチ26を操作して軟化調理モードを選択すると、制御部14は、温度切替室42の収納容器45に収納された食材を柔らかくする調理を行う軟化調理モードを実行する。
【0023】
詳細には、操作パネル25の操作スイッチ26より軟化調理モードが選択されると、制御部14は、圧縮機61を駆動して冷凍冷却器64を低温化しダンパ50を開放した状態で冷凍ファン65を駆動させて、冷凍冷却器64で冷却された空気を温度切替室42に供給し温度切替室42を冷却する(
図4、5のSTEP1参照)。制御部14は、赤外線センサ49によって検出される温度切替室42に収容された食材の温度Tmが、
0℃から−5℃までの温度帯に達すると(
図4のSTEP2参照)、
0℃から−5℃までの温度範囲内で食材の温度を変化させる。この例では、ダンパ50の開閉を複数回繰り返すことで、
0℃から−5℃までの温度範囲内で食材の温度を繰り返し上下動させる(
図4、5のSTEP3参照)。
【0024】
なお、軟化調理モードにおいて
0℃から−5℃までの温度範囲内で食材の温度を変化させる時間は、一定時間であってもよく、また、使用者の操作スイッチ26の操作などにより変更することができてもよい。
【0025】
また、
0℃から−5℃までの温度範囲内で食材の温度を繰り返し上下動させるために、ダンパ50を開閉しダンパ50の開度を調整したが、圧縮機61の回転数や冷凍ファン65の回転数を変化させて食材温度を上下動させてもよい。
【0026】
そして、制御部14は、所定時間t継続して
0℃から−5℃までの温度範囲内で食材の温度を繰り返し上下動させ(
図4のSTEP4参照)、その後、温度切替室42の温度を冷蔵温度帯(1℃〜5℃)まで上昇させる(
図4、5のSTEP5参照)。
【0027】
なお、温度切替室42の温度を最大氷結晶生成温度帯から冷蔵温度帯へ昇温する際、温度切替室42の冷却を停止して温度切替室42内の温度を上昇させてもよいが、例えば、圧縮機61や冷凍ファン65の回転数あるいはダンパ50の開度を温度切替室42内の温度を低下させる場合に比べて小さく設定したり、温度切替室42を断続的に冷却したりして、温度切替室42の冷却を完全に停止する場合に比べて温度切替室42内の温度を緩やかに上昇させてもよい。
【0028】
また、この例では、所定時間t継続して
0℃から−5℃までの温度範囲内で食材の温度を繰り返し上下動させた後、温度切替室42の温度を冷蔵温度帯(1℃〜5℃)まで上昇させる場合について説明したが、温度切替室42の温度を冷凍温度帯まで低下させてもよい。
【0029】
また、食材によって柔らかくなるまでに必要な時間が異なるため、食材によって所定時間tを変更させてもよい。すなわち、繊維の量が多いレンコンやゴボウといった食材は所定時間tを4時間に設定し、ニンジンやブロッコリー、大根といった食品の場合は所定時間tを2時間に設定するなどしてもよい。これによれば、食材に応じて適切な柔らかさにすることができる。
【0030】
以上のような本実施形態の冷蔵庫10では、
0℃から−5℃までの温度範囲内で食材の温度を繰り返し上下動させることにより、小さい温度変化幅で食材内部において氷結晶の成長と融解を繰り返すことができ、短時間で食材の細胞組織を破壊して食材を柔らかくすることができる。
【0031】
また、温度切替室42の温度を最大氷結晶生成温度帯から冷蔵温度帯へ昇温する際に温度切替室42内の温度を緩やかに上昇させることで、冷蔵温度帯への昇温時にも食材の細胞組織を破壊することができ、より一層、食材を柔らかくすることができる。
【0032】
なお、上記した実施形態では、温度切替室42の収納容器45に収納された食材の温度を赤外線センサ49で検出する場合について説明したが、例えば、温度切替室42の庫内温度や冷却時間や食材の重量を測定しこれらの測定値から食材の温度を検出してもよい。
【0033】
なお、上記した実施形態では、冷蔵庫内に複数ある貯蔵室のうち、一つの貯蔵室を温度切替室とする場合について説明を行ったが、温度切替室のみを備えた専用の冷蔵庫であってもよい。
【0034】
また、本実施形態の冷蔵庫には、次のような背景技術と、この背景技術に存在する解決課題が含まれる。
【0035】
つまり、介護食や離乳食のような柔らかい料理を提供したり、肉や根菜類などの硬い食材を柔らかくするためには、食材を十分に煮込む必要があり時間も手間もかかる。
【0036】
そこで、特開2002−90052号には、調理対象の被調理食材を凍結させることにより該食材を軟化させる調理機能を付与した冷蔵庫が提案されている。
【0037】
この冷蔵庫は、被調理食材を凍結させ凍結素材とする凍結処理工程と、凍結素材を融解させ融解素材とする融解処理工程とからなり、凍結処理工程と融解処理工程とを一回以上繰り返すことで、冷蔵保存中の被調理食材が凍結と融解を数回繰り返す事により、原形質分離を確実に起こさせて被調理食材を柔らかくするものである。
【0038】
しかしながら、上記構成の冷蔵庫では、凍結処理工程において被調理食材を最大氷結晶生成温度帯より低い温度まで冷却して被調理素材を凍結させた後、これを0℃より高い温度に昇温し融解する工程を繰り返すため、処理時間を要する問題がある。
【0039】
このような背景技術に存在する解決課題として、調理対象の食材を短時間で柔らかくすることができる冷蔵庫を提供することを目的とする。
【0040】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0041】
10…冷蔵庫、11…冷蔵庫本体、12…断熱仕切壁、13…機械室、14…制御部、21…仕切体、22…冷蔵室、24…野菜室、25…操作パネル、26…操作スイッチ、27…冷蔵冷却器室、33…冷蔵温度センサ、42…温度切替室、43…仕切壁、44…冷凍室、45…収納容器、46…収納容器、47…冷凍冷却器室、49…赤外線センサ、50…ダンパ、51…冷凍温度センサ